(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056390
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】コールドヘッド装着構造、極低温装置、コールドヘッド、およびコールドヘッドのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
F25B9/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163221
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】出村 健太
(57)【要約】
【課題】コールドヘッド装着構造に対するコールドヘッドの傾きを抑制する。
【解決手段】極低温冷凍機20のコールドヘッド22を真空容器12に装着するためのコールドヘッド装着構造が提供される。コールドヘッド装着構造は、真空容器12に設置され、コールドヘッド22が取り付けられるスリーブ50であって、真空容器12内の真空領域13から隔離された気密領域18をコールドヘッド22との間に形成するスリーブ50と、スリーブ50の中心軸Cに対して片側に配置され、中心軸Cに対するコールドヘッド22の傾動を拘束するとともに中心軸Cの方向にコールドヘッド22の移動を案内するように構成された主ガイド70と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温冷凍機のコールドヘッドを真空容器に装着するためのコールドヘッド装着構造であって、
前記真空容器に設置され、前記コールドヘッドが取り付けられるコールドヘッド収容スリーブであって、前記真空容器内の真空領域から隔離された気密領域を前記コールドヘッドとの間に形成するコールドヘッド収容スリーブと、
前記コールドヘッド収容スリーブの中心軸に対して片側に配置され、前記中心軸に対する前記コールドヘッドの傾動を拘束するとともに前記中心軸の方向に前記コールドヘッドの移動を案内するように構成された主ガイドと、を備えることを特徴とするコールドヘッド装着構造。
【請求項2】
前記主ガイドは、前記コールドヘッド収容スリーブの中心軸に対して前記コールドヘッドの駆動モータとは反対側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のコールドヘッド装着構造。
【請求項3】
前記コールドヘッド収容スリーブは、前記コールドヘッドの取付フランジと結合されるスリーブ側フランジを備え、
前記主ガイドは、前記取付フランジおよび前記スリーブ側フランジのうち一方に設けられ、前記中心軸の方向に延在する主ガイドピンと、前記取付フランジおよび前記スリーブ側フランジのうち他方に設けられた主ガイド穴とを備え、前記主ガイドピンが前記主ガイド穴に前記中心軸の方向に摺動可能に係合することを特徴とする請求項1に記載のコールドヘッド装着構造。
【請求項4】
前記コールドヘッドの前記取付フランジは、板状部と、前記板状部から前記中心軸の方向に突出する突出部を備え、
前記主ガイドピンは、前記スリーブ側フランジに設けられ、前記主ガイド穴は、前記取付フランジの前記突出部に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のコールドヘッド装着構造。
【請求項5】
前記コールドヘッド収容スリーブの中心軸と平行な前記主ガイドの中心軸まわりの前記コールドヘッドの回転を拘束するとともに前記中心軸の方向に前記コールドヘッドの移動を許容するように構成された副ガイドをさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のコールドヘッド装着構造。
【請求項6】
前記副ガイドは、前記真空容器の周囲環境から前記気密領域をシールするように前記コールドヘッドと前記コールドヘッド収容スリーブとの間に設けられたシール部材を備えることを特徴とする請求項5に記載のコールドヘッド装着構造。
【請求項7】
前記副ガイドは、前記コールドヘッド収容スリーブの中心軸に対して前記主ガイドとは反対側に配置され、
前記副ガイドの副ガイドピンと副ガイド穴との間の副クリアランスが、前記主ガイドの主ガイドピンと主ガイド穴との間の主クリアランスよりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のコールドヘッド装着構造。
【請求項8】
前記コールドヘッド収容スリーブに前記コールドヘッドを締結する締結ボルトと、前記締結ボルトと前記コールドヘッド収容スリーブまたは前記コールドヘッドとの間に挟み込まれた球面座金とを備える締結構造をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコールドヘッド装着構造。
【請求項9】
コールドヘッドと、
真空領域を内部に定める真空容器と、
前記真空容器に設置され、前記コールドヘッドが取り付けられるコールドヘッド収容スリーブであって、前記コールドヘッドとの間に前記真空領域から隔離された気密領域を形成するコールドヘッド収容スリーブと、
前記コールドヘッド収容スリーブの中心軸に対して片側に配置され、前記中心軸に対する前記コールドヘッドの傾動を拘束するとともに前記中心軸の方向に前記コールドヘッドの移動を案内するように構成された主ガイドと、を備えることを特徴とする極低温装置。
【請求項10】
前記コールドヘッドは、
前記コールドヘッドを駆動する駆動モータと、
前記コールドヘッド収容スリーブと結合される取付フランジと、
前記駆動モータが取り付けられ、前記取付フランジ上に設けられた駆動部ハウジングと、
前記駆動モータとは反対側で前記取付フランジ及び/または前記駆動部ハウジングに取り外し可能に取り付けられた錘部材と、を備えることを特徴とする請求項9に記載の極低温装置。
【請求項11】
駆動モータと、
取付フランジと、
前記駆動モータが取り付けられ、前記取付フランジ上に設けられた駆動部ハウジングと、を備え、
前記取付フランジ及び/または前記駆動部ハウジングは、錘部材を取付可能な取付構造を前記駆動モータとは反対側に備えることを特徴とするコールドヘッド。
【請求項12】
コールドヘッドがコールドヘッド収容スリーブに支持された状態で、錘部材を前記コールドヘッドに取り付けることと、
前記錘部材を取り付けた状態で前記コールドヘッドを前記コールドヘッド収容スリーブに対して移動させることと、を備えることを特徴とするコールドヘッドのメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドヘッド装着構造、極低温装置、コールドヘッド、およびコールドヘッドのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温冷凍機は、例えば超伝導装置など極低温で動作する機器を極低温に冷却するために利用されている。極低温冷凍機は、被冷却物(例えば超伝導コイル)を収容した真空容器に設置される。このような極低温装置を長期的に運転するなかで、極低温冷凍機の点検や修理、交換などメンテナンスが必要になることがある。
【0003】
従来、いわゆるメンテナンススリーブを介して極低温冷凍機のコールドヘッドを真空容器に装着することが知られている。メンテナンススリーブは、真空容器の気密性を保つように構成され、真空容器の壁から内部へと延びており、このスリーブの内側にコールドヘッドが取り外し可能に装着される。これにより、真空容器内の被冷却物を極低温に冷却したままで、コールドヘッドを真空容器から取り外し、コールドヘッドにメンテナンスをして、再び真空容器に取り付けることができる。スリーブが無かった場合コールドヘッドのメンテナンスには、事前に被冷却物の常温(例えば300K程度)への昇温とメンテナンス後に極低温への再冷却が必要となるが、これには相当の時間がかかり、とくに大型の被冷却物では数日またはそれ以上にもなることがある。メンテナンススリーブを採用することで昇温と再冷却の時間は不要となり、メンテナンスを短時間で済ませることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、上記のスリーブ型のコールドヘッド装着構造について検討し、以下の課題を独自に認識した。コールドヘッドの装着はたいてい、極低温冷凍機が使用される現場で作業員によって行われる。装着作業は、コールドヘッドが正規の姿勢をとるように(例えば、コールドヘッドの中心軸が鉛直方向に一致するように)細心の注意を払って行われる。しかしながら、場合によっては、コールドヘッドが正規の姿勢からわずかに傾いてコールドヘッド装着構造に装着されることがあることが判明した。装着されたコールドヘッドは、良好な熱接触を実現するために、強い力で装着構造に押し付けられている。従って、コールドヘッドの傾きは、コールドヘッドに働く応力分布を不均一にし、コールドヘッドに歪みをもたらし、望ましくないことに、冷凍能力に悪影響が出るかもしれない。また、コールドヘッドの傾きは、コールドヘッドと装着構造との接触状態に影響し、両者間の接触熱抵抗の増加をもたらすかもしれない。
【0006】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、コールドヘッド装着構造に対するコールドヘッドの傾きを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機のコールドヘッドを真空容器に装着するためのコールドヘッド装着構造が提供される。コールドヘッド装着構造は、真空容器に設置され、コールドヘッドが取り付けられるコールドヘッド収容スリーブであって、真空容器内の真空領域から隔離された気密領域をコールドヘッドとの間に形成するコールドヘッド収容スリーブと、コールドヘッド収容スリーブの中心軸に対して片側に配置され、中心軸に対するコールドヘッドの傾動を拘束するとともに中心軸の方向にコールドヘッドの移動を案内するように構成された主ガイドと、を備える。
【0008】
本発明のある態様によると、極低温装置は、コールドヘッドと、真空領域を内部に定める真空容器と、真空容器に設置され、コールドヘッドが取り付けられるコールドヘッド収容スリーブであって、コールドヘッドとの間に真空領域から隔離された気密領域を形成するコールドヘッド収容スリーブと、コールドヘッド収容スリーブの中心軸に対して片側に配置され、中心軸に対するコールドヘッドの傾動を拘束するとともに中心軸の方向にコールドヘッドの移動を案内するように構成された主ガイドと、を備える。
【0009】
本発明のある態様によると、コールドヘッドは、駆動モータと、取付フランジと、駆動モータが取り付けられ、取付フランジ上に設けられた駆動部ハウジングと、を備える。取付フランジ及び/または駆動部ハウジングは、錘部材を取付可能な取付構造を駆動モータとは反対側に備える。
【0010】
本発明のある態様によると、コールドヘッドのメンテナンス方法は、コールドヘッドがコールドヘッド収容スリーブに支持された状態で、錘部材をコールドヘッドに取り付けることと、錘部材を取り付けた状態でコールドヘッドをコールドヘッド収容スリーブに対して移動させることと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コールドヘッド装着構造に対するコールドヘッドの傾きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ある実施の形態に係る極低温装置およびコールドヘッド装着構造を模式的に示す図である。
【
図2】ある実施の形態に係る極低温装置およびコールドヘッド装着構造を模式的に示す図である。
【
図3】ある実施の形態に係り、極低温冷凍機のコールドヘッドを模式的に示す上面図である。
【
図4】ある実施の形態に係り、コールドヘッド装着構造に設けられたガイド構造を模式的に示す図である。
【
図5】ある実施の形態に係り、コールドヘッド装着構造に設けられたガイド構造の他の一例を模式的に示す図である。
【
図6】ある実施の形態に係り、コールドヘッド装着構造に設けられたガイド構造の他の一例を模式的に示す図である。
【
図7】ある実施の形態に係り、コールドヘッド装着構造に設けられたガイド構造の他の一例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8(a)は、ある実施の形態に係る極低温冷凍機のコールドヘッドの一部と錘部材とを模式的に示す斜視図であり、
図8(b)は、この実施の形態に係る錘部材を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図8(a)および
図8(b)に示される実施の形態に係る錘部材の使用方法を示すフローチャートである。
【
図10】ある実施の形態に係るコールドヘッド装着構造の一部を模式的に示す図である。
【
図11】ある実施の形態に係るコールドヘッド装着構造の一部を模式的に示す図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1および
図2は、ある実施の形態に係る極低温装置およびコールドヘッド装着構造を模式的に示す図である。
図1には、極低温装置内の被冷却物が極低温装置に設けられた極低温冷凍機のコールドヘッドと熱的に結合された状態が示され、
図2には、コールドヘッドの移動によりコールドヘッドと被冷却物の熱的な結合が解除された状態が示されている。また、
図3は、ある実施の形態に係り、極低温冷凍機のコールドヘッドを模式的に示す上面図である。
図4は、ある実施の形態に係り、コールドヘッド装着構造に設けられたガイド構造を模式的に示す図である。
【0015】
極低温装置10は、クライオスタットとも呼ばれる真空容器12に設置され、真空容器12内に極低温環境を提供する冷却源として使用される。真空容器12内には、極低温装置10によって冷却される被冷却物14が配置される。極低温装置10は、真空容器12および被冷却物14とともに、極低温利用機器の一部を構成しうる。極低温利用機器は、例えば単結晶引き上げ装置、NMRシステム、MRIシステム、サイクロトロンなどの加速器、核融合システムなどの高エネルギー物理システム、またはその他の高磁場利用機器であってもよく、この場合、被冷却物14は、超伝導コイルであってもよい。
【0016】
極低温装置10は、コールドヘッド22と圧縮機24とを有する極低温冷凍機20と、コールドヘッド装着構造としてのコールドヘッド収容スリーブ(以下では単に、スリーブともいう)50とを備える。スリーブ50は、真空容器12と組み合わされて真空容器12内に真空領域13を区画するように真空容器12に設置される。コールドヘッド22は、スリーブ50内に挿入された状態でスリーブ50に装着される。コールドヘッド22とスリーブ50との間には、周囲環境16から隔離された気密領域18が形成される。周囲環境16は例えば室温の大気圧環境である。気密領域18は、真空に排気されてもよい。
【0017】
極低温冷凍機20の圧縮機24は、極低温冷凍機20に作動ガス(例えばヘリウムガス)を循環させるために設けられている。圧縮機24は、周囲環境16に配置される。圧縮機24は、高圧の作動ガスをコールドヘッド22に供給し、コールドヘッド22内の膨張空間での断熱膨張により減圧された低圧の作動ガスをコールドヘッド22から回収して再び昇圧するよう構成されている。
【0018】
極低温冷凍機20は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機である。よって、コールドヘッド22は、取付フランジ26、一段シリンダ28、一段冷却ステージ30、二段シリンダ32、二段冷却ステージ34を備える。コールドヘッド22のこれら構成要素は、コールドヘッド22の中心軸Cに沿ってこの記載の順に配置されている。取付フランジ26は、周囲環境16に配置され、一段シリンダ28、一段冷却ステージ30、二段シリンダ32、および二段冷却ステージ34は、気密領域18に配置される。
【0019】
一段シリンダ28は、取付フランジ26を一段冷却ステージ30と接続し、二段シリンダ32は、一段冷却ステージ30を二段冷却ステージ34と接続する。典型的に、一段シリンダ28および二段シリンダ32は、コールドヘッド22の中心軸Cと同軸に延在する中空の円筒状部材であり、一段シリンダ28が二段シリンダ32よりも大径である。取付フランジ26、一段シリンダ28および二段シリンダ32は、例えばステンレスなどの金属で形成されている。
【0020】
一段冷却ステージ30は、取付フランジ26とは軸方向反対側で一段シリンダ28の端部に固着されており、その軸方向長さは一段シリンダ28よりも短い。二段冷却ステージ34は、一段冷却ステージ30とは軸方向反対側で二段シリンダ32の端部に固着されており、その軸方向長さは二段シリンダ32よりも短い。一段冷却ステージ30および二段冷却ステージ34は典型的に、コールドヘッド22の中心軸Cと同軸の円柱状の外形を有し、一段冷却ステージ30が二段冷却ステージ34よりも大径である。一段冷却ステージ30および二段冷却ステージ34は、例えば銅(例えば純銅)などの高熱伝導金属、またはその他の熱伝導材料で形成されている。冷却ステージを形成する熱伝導材料の熱伝導率は、シリンダを形成する材料の熱伝導率より高い。
【0021】
さらに、コールドヘッド22は、互いに端部で連結された一段ディスプレーサ36および二段ディスプレーサ38と、これらディスプレーサを軸方向に駆動する駆動部40とを備える。
【0022】
一段ディスプレーサ36および二段ディスプレーサ38は、コールドヘッド22の中心軸Cと同軸に延在し、それぞれ一段シリンダ28および二段シリンダ32内に軸方向に移動可能に配置されている。一段ディスプレーサ36と二段ディスプレーサ38には、蓄冷材が内蔵されている。一段シリンダ28内で一段ディスプレーサ36と一段冷却ステージ30との間に作動ガスの一段膨張空間が形成され、二段シリンダ32内で二段ディスプレーサ38と二段冷却ステージ34との間に作動ガスの二段膨張空間が形成される。
【0023】
駆動部40は、コールドヘッド22を駆動する駆動モータ40aと、駆動モータ40aが取り付けられた駆動部ハウジング40bとを備える。駆動モータ40aは、例えば、回転を出力する電気モータである。図示されるように、駆動モータ40aは、コールドヘッド22(およびスリーブ50)の中心軸Cに対して片側で、駆動部ハウジング40bに取り付けられている。駆動部ハウジング40bは、取付フランジ26上に設けられている。駆動部ハウジング40bは、コールドヘッド22内の気密性を保つように取付フランジ26(後述のメインフランジ42)に固定されている。駆動部ハウジング40bには、駆動モータ40aの回転を直線的な往復動に変換するスコッチヨーク機構などの運動変換機構が収容されている。この運動変換機構は、二段ディスプレーサ38とは軸方向反対側で一段ディスプレーサ36に連結されている。よって、電気モータの駆動により、運動変換機構を介して一段ディスプレーサ36および二段ディスプレーサ38を軸方向に往復動させることができる。
【0024】
また、駆動部40には、膨張空間の圧力を制御するバルブが内蔵されている。この圧力制御バルブは、圧縮機24から蓄冷材を介した膨張空間への高圧作動ガス供給と、膨張空間から蓄冷材を介した圧縮機24への低圧作動ガス回収とを交互に切り替えるよう構成されている。駆動部40は、一段ディスプレーサ36および二段ディスプレーサ38の軸方向往復動による膨張空間の容積変化と、圧力制御バルブによる膨張空間の圧力変化とを適切に同期させるよう構成されている。このような極低温冷凍機20の動作によって、一段冷却ステージ30は、第1冷却温度、例えば30K~80Kに冷却され、二段冷却ステージ34は、第1冷却温度よりも低い第2冷却温度、例えば3K~20Kに冷却される。
【0025】
駆動部40は、取付フランジ26とともに周囲環境16に配置され、例えばボルト等の締結部材(図示せず)によって一段シリンダ28とは反対側で取付フランジ26に固定される。極低温冷凍機20のメンテナンスをするときには、駆動部40と取付フランジ26の締結を解除することができる。これにより、一段ディスプレーサ36および二段ディスプレーサ38をそれぞれ一段シリンダ28および二段シリンダ32から引き抜き、駆動部40を一段ディスプレーサ36および二段ディスプレーサ38とともに一体的にコールドヘッド22から取り外すことができる。
【0026】
極低温冷凍機20が二段式である場合、これに対応して、スリーブ50も二段式に構成される。よって、スリーブ50は、スリーブ側フランジ52、一段スリーブ体54、一段伝熱ステージ56、二段スリーブ体58、二段伝熱ステージ60を備える。スリーブ50のこれら構成要素は、コールドヘッド22の中心軸Cに沿ってこの記載の順に配置されている。
【0027】
一段スリーブ体54は、スリーブ側フランジ52を一段伝熱ステージ56と接続し、二段スリーブ体58は、一段伝熱ステージ56を二段伝熱ステージ60と接続する。一段スリーブ体54および二段スリーブ体58は、コールドヘッド22の中心軸Cと同軸に延在する中空の円筒状部材であり、一段スリーブ体54が二段スリーブ体58よりも大径である。よって、スリーブ50の中心軸Cは、コールドヘッド22の中心軸Cに一致する。スリーブ側フランジ52、一段スリーブ体54および一段伝熱ステージ56は、例えばステンレスなどの金属で形成されている。
【0028】
一段スリーブ体54および二段スリーブ体58はそれぞれ、一段シリンダ28および二段シリンダ32を囲むように配置されている。一段スリーブ体54の径は一段シリンダ28の径よりいくらか大きく、一段スリーブ体54と一段シリンダ28との間には隙間があり互いに接触していない。同様に、二段スリーブ体58の径は二段シリンダ32の径よりいくらか大きく、二段スリーブ体58と二段シリンダ32との間には隙間があり互いに接触していない。
【0029】
一段伝熱ステージ56は、スリーブ側フランジ52とは軸方向反対側で一段スリーブ体54の端部に固着され、二段伝熱ステージ60は、一段伝熱ステージ56とは軸方向反対側で二段スリーブ体58の端部に固着されている。一段伝熱ステージ56の中心部には、一段スリーブ体54の内部空間を二段スリーブ体58の内部空間に接続する貫通開口部が形成されている。コールドヘッド22の二段シリンダ32および二段冷却ステージ34はこの開口部から二段スリーブ体58の内部空間へと挿入される。一段伝熱ステージ56および二段伝熱ステージ60は、例えば銅(例えば純銅)などの高熱伝導金属、またはその他の熱伝導材料で形成されている。伝熱ステージを形成する熱伝導材料の熱伝導率は、スリーブ体を形成する材料の熱伝導率より高い。
【0030】
一段伝熱ステージ56は、一段冷却ステージ30との物理的接触により一段冷却ステージ30と熱的に結合される。二段伝熱ステージ60は、二段冷却ステージ34との物理的接触により二段冷却ステージ34と熱的に結合される。この実施の形態では、伝熱ステージと冷却ステージの接触面は平坦面とされている。ただし、冷却ステージは、テーパ面、傾斜面、または凹凸面などの非平坦面が冷却ステージに設けられてもよく、この非平坦面に対応する非平坦面が伝熱ステージに設けられてもよい。また、伝熱ステージと冷却ステージは、直に接触してもよいし、あるいは、例えばインジウムシートのような、良好な伝熱に役立つ軟質介在層を挟んで熱接触してもよい。
【0031】
真空領域13に露出される一段伝熱ステージ56の外面には、被冷却物14とは別の被冷却物(例えば、被冷却物14を囲む熱シールド)が取り付けられ、または適宜の伝熱部材を介して熱的に結合される。よって、この一段の被冷却物は、一段冷却ステージ30が一段伝熱ステージ56と接触しているとき、一段冷却ステージ30によって一段伝熱ステージ56を介して第1冷却温度に冷却されることができる。また、真空領域13に露出される二段伝熱ステージ60の外面には、被冷却物14が取り付けられ、または適宜の伝熱部材を介して熱的に結合される。よって、被冷却物14は、二段冷却ステージ34が二段伝熱ステージ60と接触しているとき、二段冷却ステージ34によって二段伝熱ステージ60を介して第2冷却温度に冷却されることができる。
【0032】
スリーブ側フランジ52は、周囲環境16に配置され、取付フランジ26に結合されている。一例として、スリーブ側フランジ52は真空容器12の天板に形成された開口部に固定され、一段スリーブ体54と二段スリーブ体58がこの開口部から真空容器12内に延びている。よって、コールドヘッド22は、その中心軸Cを鉛直方向に平行とするようにして、駆動部40を上方にかつ冷却ステージを下方に向けて、真空容器12に設置される。ただし、コールドヘッド22の設置の向きはこのような縦向きに限定されず、横向きや斜めなど他の向きで設置されてもよい。スリーブ50は、真空容器12の側面や底面など任意の面に形成されてもよい。
【0033】
スリーブ側フランジ52は、例示的な構成として、取付フランジ26が取り付けられる円環状の第1フランジ52aと、真空容器12に固定される円環状の第2フランジ52bと、第1フランジ52aと第2フランジ52bを接続する円筒状の外筒部52cとを備える。第1フランジ52a、第2フランジ52b、および外筒部52cは、コールドヘッド22の中心軸Cと同軸に配置される。第2フランジ52bは一段スリーブ体54の端部から径方向外側に延出し、外筒部52cは第2フランジ52bから一段スリーブ体54とは軸方向反対側に延出し、第1フランジ52aは、第2フランジ52bとは軸方向反対側で外筒部52cの端部から径方向外側に延出している。
【0034】
取付フランジ26は、2つのフランジ、すなわち、メインフランジ42とトランジションフランジ44の結合体である。メインフランジ42は、一段冷却ステージ30とは軸方向反対側で一段シリンダ28の端部から径方向外側に延出している。メインフランジ42は、一段シリンダ28と一体形成されていてもよい。
【0035】
トランジションフランジ44は、メインフランジ42に固定されるとともにスリーブ側フランジ52と組み合わされ、スリーブ50とコールドヘッド22との間に気密領域18を形成する。トランジションフランジ44は、円環状のフランジ部44aと、円筒状の内筒部44bとを有する。フランジ部44aは、例えばボルト等の締結部材(図示せず)によってメインフランジ42の下面(駆動部40とは軸方向反対側の面)に固定され、スリーブ側フランジ52の第1フランジ52aと軸方向に間隔をあけて対向している。内筒部44bは、フランジ部44aの内周部からメインフランジ42とは軸方向反対側に延出し、スリーブ側フランジ52の外筒部52cに挿し込まれている。内筒部44bは、一段シリンダ28の上端部を囲んでいる。
【0036】
コールドヘッド22とスリーブ50との間には、真空容器12の周囲環境16から気密領域18をシールするシール部材46が設けられている。スリーブ側フランジ52の外筒部52cはトランジションフランジ44の内筒部44bのすぐ外側に隣接して配置されている。外筒部52cの径は、内筒部44bの径よりも例えば数mm程度大きく、外筒部52cの内周面と内筒部44bの外周面との間に隙間があり互いに接触していない。気密領域18の気密性を保持するためのシール部材46は、外筒部52cと内筒部44bの間に配置されている。シール部材46は、例えば、内筒部44bに形成された周溝に配置されたOリングなどのシール部材である。図示される例では、シール部材46は内筒部44bに装着されているが、外筒部52cに装着されていてもよい。
【0037】
極低温装置10のコールドヘッド装着構造は、主ガイド70を備える。主ガイド70は、コールドヘッド22およびスリーブ50の中心軸Cに対して片側に配置されている。この実施の形態では、主ガイド70は、中心軸Cに対してコールドヘッド22の駆動モータ40aとは反対側に配置される。
図3に示されるように、主ガイド70は、取付フランジ26上で1箇所のみに設けられている。
【0038】
主ガイド70は、中心軸Cに対するコールドヘッド22の傾動を拘束するとともに中心軸Cの方向にコールドヘッド22の移動を案内するように構成されている。主ガイド70は、スリーブ側フランジ52に設けられるガイド部と、取付フランジ26に設けられ、ガイド部によってガイドされる被ガイド部とを備え、スリーブ側フランジ52に対する取付フランジ26の移動をガイドする。この実施形態では、ガイド部として、スリーブ側フランジ52に主ガイドピン72が設けられる。また、被ガイド部として、主ガイドピン72が挿し込まれる主ガイド穴74が取付フランジ26に設けられる。
【0039】
図4に示されるように、主ガイドピン72は、スリーブ側フランジ52の第1フランジ52aに立設され、取付フランジ26に向かって延出している円柱状の突起である。主ガイドピン72は、中心軸Cの方向に延在する。よって、主ガイド70の中心軸は中心軸Cと平行である。主ガイド穴74は、主ガイドピン72が挿し込まれる円形状の貫通穴であり、メインフランジ42およびトランジションフランジ44に設けられている。主ガイドピン72が主ガイド穴74に中心軸Cの方向に摺動可能に係合する。また、主ガイドピン72と主ガイド穴74の係合により、中心軸Cに対するコールドヘッド22の傾動が拘束される。
【0040】
主ガイド70は、中心軸C(すなわち主ガイド70の中心軸)に垂直な横方向のクリアランスd
Gを主ガイドピン72と主ガイド穴74との間に有する。すなわち、クリアランスd
Gは、主ガイドピン72と主ガイド穴74の径方向隙間である。主ガイド70のクリアランスd
Gは、シール部材46におけるクリアランスC
1、すなわちトランジションフランジ44の内筒部44bとスリーブ側フランジ52の外筒部52cとの間の径方向隙間よりも小さい。クリアランスd
Gは、例えば、0.5mmより小さく、または0.3mmより小さく、または0.1mmより小さくてもよい。また、主ガイドピン72と主ガイド穴74を摺動を可能にしつつコールドヘッド22の傾動を最小限とするために、クリアランスd
Gは、例えば、0.01mmより大きく、または0.03mmより大きく、または0.05mmより大きくてもよい。なお、
図4では説明の便宜上、クリアランスd
Gを誇張して大きく描いている。
【0041】
この実施の形態では、上述のように主ガイド70が取付フランジ26上で1箇所のみに設けられているため、コールドヘッド22は主ガイド70まわりに回転しうる。そこで、極低温装置10のコールドヘッド装着構造は、回転止めとして副ガイド76をさらに備える。副ガイド76は、主ガイド70の中心軸まわりのコールドヘッド22の回転を拘束するとともに中心軸の方向にコールドヘッド22の移動を許容するように構成されている。この実施の形態では、上述のシール部材46がこの副ガイド76として機能する。
【0042】
また、
図3に示されるように、例えばボルト等のフランジ締結部材48がコールドヘッド22の駆動部40を囲むようにして取付フランジ26の複数箇所に設けられる。フランジ締結部材48は、取付フランジ26に形成された挿通穴または切り欠き部を通じてスリーブ側フランジ52のボルト穴に螺合され、取付フランジ26とスリーブ側フランジ52を締結することができる。フランジ締結部材48の締結が解除されたとき、取付フランジ26は、スリーブ側フランジ52に対して主ガイド70に沿って軸方向に移動可能となる。
【0043】
例示的な配置として、フランジ締結部材48は、取付フランジ26上で主ガイド70と同じ円周上に配置されてもよい。なお、簡単のため
図3では図示を省略しているが、取付フランジ26には、メインフランジ42とトランジションフランジ44を締結する締結部材も設けられる。
【0044】
実施の形態に係る極低温装置10においては以下に述べるように、一段冷却ステージ30および二段冷却ステージ34がそれぞれ、スリーブ側フランジ52に対する取付フランジ26の移動により一段伝熱ステージ56および二段伝熱ステージ60と接触または離間する。
【0045】
極低温冷凍機20のメンテナンスが許容されるタイミングが到来すると、極低温冷凍機20の冷却運転が停止される。このとき、
図1に示されるように、一段冷却ステージ30は一段伝熱ステージ56と物理的かつ熱的に接触し、二段冷却ステージ34は二段伝熱ステージ60と物理的かつ熱的に接触している。
【0046】
まず、作業者によってフランジ締結部材48が取り外され、取付フランジ26とスリーブ側フランジ52との締結が解除される。取付フランジ26が主ガイド70に沿ってスリーブ側フランジ52から持ち上げられ、コールドヘッド22がスリーブ50から引き上げられる。この持ち上げ高さL
Cは数mm程度、例えば2~3mm程度である。
図2に示されるように、一段冷却ステージ30および二段冷却ステージ34はそれぞれ、一段伝熱ステージ56および二段伝熱ステージ60から離間され、熱接触が解除される。取付フランジ26とスリーブ側フランジ52の間にはシール部材46が設けられているので、周囲環境16からの気密領域18の隔離は保持される。被冷却物14を低温に保ちつつ、コールドヘッド22を昇温することができる。
【0047】
極低温冷凍機20のメンテナンスが行われる。コールドヘッド22の駆動部40が一段ディスプレーサ36および二段ディスプレーサ38とともにコールドヘッド22から取り外される。一段シリンダ28、一段冷却ステージ30、二段シリンダ32、および二段冷却ステージ34はそのままスリーブ50に設置されている。そして、メンテナンスが施された(または新品の)駆動部およびディスプレーサがコールドヘッド22に取り付けられる。そして、極低温冷凍機20の冷却運転が再開される。
【0048】
その後、取付フランジ26が主ガイド70に沿ってスリーブ側フランジ52へと押し込まれ、一段冷却ステージ30および二段冷却ステージ34はそれぞれ、一段伝熱ステージ56および二段伝熱ステージ60と再び接触する。フランジ締結部材48により取付フランジ26とスリーブ側フランジ52とが再び締結され、コールドヘッド22がスリーブ50に固定され、
図1に示されるように、一段冷却ステージ30および二段冷却ステージ34はそれぞれ、一段伝熱ステージ56および二段伝熱ステージ60に押し付けられ、再び熱接触する。
【0049】
極低温冷凍機が使用される現場でのこのようなコールドヘッド装着作業は、コールドヘッド22が正規の姿勢をとるように(例えば、コールドヘッド22の中心軸Cが鉛直方向に一致するように)細心の注意を払って行われる。しかしながら、本発明者の検討によると、場合によっては、コールドヘッド22が正規の姿勢からわずかに傾いてスリーブ50に装着されることがあることが判明した。
【0050】
装着されたコールドヘッド22の一段冷却ステージ30および二段冷却ステージ34はそれぞれ、良好な熱接触を実現するために、強い力でスリーブ50の一段伝熱ステージ56および二段伝熱ステージ60に押し付けられている。そのため、コールドヘッド22の傾きは、たとえそれがわずかな傾きであっても、コールドヘッド22に働く応力分布を不均一にし、コールドヘッド22に歪みをもたらすかもしれない。その結果、望ましくないことに、冷凍能力に悪影響が出るかもしれない。例えば、二段シリンダ32と二段ディスプレーサ38との隙間が局所的に拡大するかもしれない。そうすると、本来は二段ディスプレーサ38内の蓄冷材を通過すべき二段シリンダ32内の作動ガス流れが、蓄冷材を迂回してこの隙間を通るようになり、コールドヘッド22の二段の冷凍能力を低下させるかもしれない。冷凍能力の低下がもし大きければ、被冷却物14の冷却に悪影響が出ることも懸念される。
【0051】
また、コールドヘッド22の傾きは、コールドヘッド22の冷却ステージとスリーブ50の伝熱ステージとの接触状態に影響し、両者間の接触熱抵抗の増加をもたらすかもしれない。これも、被冷却物14の冷却に影響しうる。
【0052】
ところで、コールドヘッドの装着のための既存のスリーブの典型的な設計として、スリーブに対するコールドヘッドのガイドをコールドヘッドまわりに複数箇所を等間隔に(例えば、コールドヘッドの駆動部を囲むようにして4箇所のガイドを90度おきに)配置することが考えられる。この設計において、上述のコールドヘッド装着作業において発生しうるコールドヘッドのわずかな傾斜を防ぐには、各ガイドのクリアランスをできるだけ小さくすることが考えられる。しかしながら、こうした極小のクリアランスを複数のガイドの各々に実際に採用した場合、製造上の誤差など諸要因により、各ガイドの競合およびそれによる過剰拘束が生じ、その結果、ガイドでの摺動が妨げられてコールドヘッドがスリーブに対して移動できなくなりうる。したがって、ガイドのクリアランス極小化は、典型的な既存設計においては、必ずしもコールドヘッドの傾き防止のための有効な解決策ではない。
【0053】
これに対して、実施の形態では、単一の主ガイド70が中心軸Cに対して片側に配置されている。そのため、主ガイド70におけるクリアランスdGをできるだけ小さくしたとしても、上述の過剰拘束の問題は起こらない。よって、コールドヘッド装着作業において発生しうるコールドヘッド22の傾きを抑制することができる。
【0054】
駆動モータ40aが中心軸Cに対して片側に配置されているため、駆動モータ40aに働く重力は、コールドヘッド装着作業におけるコールドヘッド22の傾きの一因となりうる。また、駆動モータ40aの近傍には通例、コールドヘッド22に作動ガスを給排するためのフレキシブルホースが接続される。これらフレキシブルホースからコールドヘッド22の駆動部40に働きうる引張力も、コールドヘッド22の傾きの一因となりうる。
【0055】
この実施の形態では、主ガイド70は、中心軸Cに対してコールドヘッド22の駆動モータ40aとは反対側に配置される。したがって、主ガイド70は、駆動モータ40a側へのコールドヘッド22の傾きを効果的に抑制することができる。
【0056】
なお、駆動モータ40aと主ガイド70との干渉が問題とはならない場合には、主ガイド70は、中心軸Cに対してコールドヘッド22の駆動モータ40aと同じ側に配置されてもよい。
【0057】
図5は、ある実施の形態に係り、コールドヘッド装着構造に設けられたガイド構造の他の一例を模式的に示す図である。ガイド構造は、上述の実施の形態と同様に、主ガイド70および副ガイド76(シール部材46)を備える。
【0058】
コールドヘッド22の取付フランジ26、具体的にはメインフランジ42は、板状部42aと突出部42bとを備える。板状部42aは、フランジとしてトランジションフランジ44と結合される部分であり、突出部42bは、主ガイド70を中心軸C(すなわち主ガイド70の中心軸)の方向に延長するために設けられている。突出部42bは、トランジションフランジ44とは反対側で、中心軸の方向に板状部42aから突出する。主ガイドピン72は、スリーブ側フランジ52に設けられ、主ガイド穴74は、板状部42aおよび突出部42bを軸方向に貫通して設けられている。このようにすれば、主ガイド70の軸方向長さを長くとることができる。これにより、主ガイド70は、コールドヘッド22の傾きをより効果的に抑制することができる。
【0059】
図6は、ある実施の形態に係り、コールドヘッド装着構造に設けられたガイド構造の他の一例を模式的に示す図である。この実施の形態では、周囲環境16から気密領域18をシールするために、シール部材46に代えて、取付フランジ26(例えばトランジションフランジ44)とスリーブ側フランジ52とを接続する伸縮可能な気密隔壁(例えばベローズ)78が設けられている。
【0060】
コールドヘッド装着構造のガイド構造は、主ガイド70および副ガイド76を備える。主ガイド70は、上述の実施の形態と同様に、主ガイドピン72と主ガイド穴74とを備える。副ガイド76は、スリーブ50の中心軸C(
図1参照)に対して主ガイド70とは反対側に配置され、すなわち駆動モータ40a側に配置されている。副ガイド76は、主ガイド70の中心軸まわりのコールドヘッド22の回転止めとして働くとともに中心軸の方向にコールドヘッド22の移動を許容するように構成されている。
【0061】
一例として、副ガイド76は、主ガイド70と同様に、副ガイドピン76aおよび副ガイド穴76bを備える。副ガイドピン76aは、スリーブ側フランジ52の第1フランジ52aに立設され、取付フランジ26に向かって延出している円柱状の突起である。副ガイド穴76bは、副ガイドピン76aが挿し込まれる円形状の貫通穴であり、取付フランジ26に設けられている。
【0062】
副ガイド76の副ガイドピン76aと副ガイド穴76bとの間の副クリアランスC2は、主ガイド70の主ガイドピン72と主ガイド穴74との間の主クリアランスdGよりも大きい。これは、主ガイド70と副ガイド76の競合による過剰拘束を避けることに役立つ。
【0063】
なお、
図5に示される軸方向に延長された主ガイド70が、
図6の実施の形態に適用されてもよい。
【0064】
上述の実施の形態では、ガイド部としてスリーブ側フランジ52に主ガイドピン72が設けられ、被ガイド部として取付フランジ26に主ガイド穴74が設けられている。しかし、以下に述べるように、ガイドピンとガイド穴の位置関係は逆であってもよい。
【0065】
図7は、ある実施の形態に係り、コールドヘッド装着構造に設けられたガイド構造の他の一例を模式的に示す図である。図示されるように、主ガイド70の主ガイドピン72は、取付フランジ26に設けられてもよい。主ガイドピン72が挿し込まれる主ガイド70の主ガイド穴74は、スリーブ側フランジ52に設けられてもよい。
【0066】
図6に示される実施の形態における副ガイド76においても同様である。すなわち、副ガイドピン76aが取付フランジ26に設けられ、副ガイド穴76bがスリーブ側フランジ52に設けられてもよい。
【0067】
コールドヘッド装着構造に対するコールドヘッドの傾きを抑制するための他の方策も考えられる。例えば、駆動モータ40aがコールドヘッド22の片側に取り付けられているためにコールドヘッド22に生じうる偏荷重とバランスをとるべく、
図8(a)および
図8(b)を参照して以下に述べるように、錘部材80がコールドヘッド22に取り付けられてもよい。
【0068】
図8(a)は、ある実施の形態に係る極低温冷凍機のコールドヘッドの一部と錘部材とを模式的に示す分解斜視図であり、
図8(b)は、この実施の形態に係る錘部材を模式的に示す斜視図である。コールドヘッド22は、コールドヘッド22を駆動する駆動モータ40aと、スリーブ50と結合される取付フランジ26と、駆動モータ40aが取り付けられ、取付フランジ26上に設けられた駆動部ハウジング40bと、駆動モータ40aとは反対側で駆動部ハウジング40bに取り外し可能に取り付けられた錘部材80と、を備える。錘部材80の重さは、例えば、5kgから10kgの範囲内にあってもよい。
【0069】
駆動部ハウジング40bは、錘部材80を取付可能な取付構造82を駆動モータ40aとは反対側に備える。錘部材80は、例えばねじまたはボルトなどの取付部材で駆動部ハウジング40bに取り付けられてもよく、取付構造82は、こうした取付部材を取り付けるために駆動部ハウジング40bに設けられた例えばねじ穴またはボルト穴などの取付穴を有してもよい。対応する取付構造(取付穴)84が錘部材80にも設けられている。錘部材80は、コールドヘッド22に一時的に取り付けられてもよい。あるいは、錘部材80は、コールドヘッド22に常設であってもよい。
【0070】
錘部材80は、駆動部ハウジング40bへの取付に代えて、取付フランジ26に取り付けられてもよい。この場合、取付フランジ26に取付構造82が設けられてもよい。あるいは、駆動部ハウジング40bに錘部材80を取り付けるとともに、追加の錘部材が取付フランジ26に取り付けられてもよい。
【0071】
錘部材80は、
図1から
図7を参照して説明した実施の形態に適用されてもよい。
【0072】
図9は、
図8(a)および
図8(b)に示される実施の形態に係る錘部材80の使用方法を示すフローチャートである。この方法は、
図1および
図2を参照して上述したコールドヘッド22のメンテナンス方法の一部を構成しうる。
図9に示されるように、この使用方法は、コールドヘッド22がスリーブ50に支持された状態で、錘部材80をコールドヘッド22に取り付けることと(S10)、錘部材80を取り付けた状態でコールドヘッド22をスリーブ50に対して移動させることと(S11)、を備える。移動させることは、
図1および
図2を参照して上述したように、コールドヘッド22をスリーブ50から引き上げること、及び/または、コールドヘッド22をスリーブ50に押し込むことを備えてもよい。また、本方法は、コールドヘッド22をスリーブ50に再び固定することと(S12)、スリーブ50へのコールドヘッド22の再固定後に錘部材80をコールドヘッド22から取り外すことと(S13)、をさらに備える。
【0073】
このようにすれば、駆動モータ40aと錘部材80とで重量バランスをとることができ、コールドヘッド装着作業において発生しうるコールドヘッド22の傾きを抑制することができる。
【0074】
図10は、ある実施の形態に係るコールドヘッド装着構造の一部を模式的に示す図である。
図10には、スリーブ50にコールドヘッド22を締結するための締結構造86が示されている。締結構造86は、スリーブ50にコールドヘッド22を締結する締結ボルト86aと、締結ボルト86aとスリーブ50との間に挟み込まれた球面座金86bとを備える。図示の例では、締結ボルト86aは、ボルト頭部がスリーブ側フランジ52側に、ボルト先端が取付フランジ26側に位置するようにして、スリーブ側フランジ52と取付フランジ26を締結する。球面座金86bは、締結ボルト86aの頭部とスリーブ側フランジ52の間に挟み込まれている。取付フランジ26のメインフランジ42とトランジションフランジ44、およびスリーブ側フランジ52には、締結ボルト86aに対応するボルト穴86cが形成されている。
【0075】
このようにすれば、スリーブ50に対してコールドヘッド22がわずかに傾いていたとしても、締結構造86は、球面座金86bを利用してこの傾きを吸収し、コールドヘッド22とスリーブ50との締結を可能にする。
【0076】
なお、締結ボルト86aは、ボルト頭部が取付フランジ26側に、ボルト先端がスリーブ側フランジ52側に位置するようにして、スリーブ側フランジ52と取付フランジ26を締結してもよい。この場合、球面座金86bは、締結ボルト86aとスリーブ50との間、より具体的には締結ボルト86aの頭部と取付フランジ26との間に挟み込まれてもよい。
【0077】
図11は、ある実施の形態に係るコールドヘッド装着構造の一部を模式的に示す図である。コールドヘッド22をスリーブ50に装着するためにスリーブ50内へと押し込む作業において、例えば油圧ジャッキなどの加圧装置90の押圧力をコールドヘッド22に伝達するために、コールドヘッド22の駆動部40の上面にジグ88が設置される場合がある。ジグ88は、加圧装置90とコールドヘッド22の駆動部40との間に挟み込まれている。コールドヘッド22の駆動部40の上面に突起がある場合には、この突起を受ける凹部がジグ88に設けられてもよい。
【0078】
図示されるように、加圧装置90に対するジグ88の接触面を球面または凸曲面とすることにより、スリーブ50に対してコールドヘッド22がわずかに傾いていたとしても、加圧装置90の押圧力を面内で均一化してコールドヘッド22の冷却ステージをスリーブ50の伝熱ステージに均一に押し当てることができる。
【0079】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0080】
上述の実施の形態では、極低温冷凍機20が二段式のGM冷凍機である場合を例として説明しているが、極低温冷凍機20は、単段式のGM冷凍機であってもよい。この場合、コールドヘッド装着構造は、コールドヘッド22が1つの冷却ステージをもつことに対応して、1つの伝熱ステージを有する。また、極低温冷凍機20は、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの極低温冷凍機であってもよい。
【0081】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0082】
10 極低温装置、 12 真空容器、 13 真空領域、 16 周囲環境、 18 気密領域、 20 極低温冷凍機、 22 コールドヘッド、 26 取付フランジ、 40 駆動部、 40a 駆動モータ、 40b 駆動部ハウジング、 42a 板状部、 42b 突出部、 46 シール部材、 50 スリーブ、 52 スリーブ側フランジ、 70 主ガイド、 72 主ガイドピン、 74 主ガイド穴、 76 副ガイド、 80 錘部材、 82,86 締結構造、 86a 締結ボルト、 86b 球面座金。