(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056398
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】真贋判定装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20240416BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240416BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G06K7/10 436
G06K7/10 248
G06T7/00 300M
G06K19/077 256
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163242
(22)【出願日】2022-10-11
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】下所 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴大
(72)【発明者】
【氏名】小松 和磨
(72)【発明者】
【氏名】人見 泰史
(72)【発明者】
【氏名】松下 雄史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA20
(57)【要約】
【課題】流通する商品の真正性を保証することができる流通管理システムに用いる情報処理方法、真贋判定装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】細線パターンに対して光を走査する照射装置と、前記細線パターンから反射された反射光が通過して、光学像を結像するフーリエ変換レンズと、前記光の走査に応じて、前記光学像に関する光学像情報を取得する撮像装置と、前記光の走査に応じて得られる光学像情報と、前記光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する照合部と、前記照合結果に基づいて、前記細線パターンの真贋判定結果を出力する判定部と、を有する、真贋判定装置。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細線パターンに対して光を走査する照射装置と、
前記細線パターンから反射された反射光が通過して、光学像を結像するフーリエ変換レンズと、
前記光の走査に応じて、前記光学像に関する光学像情報を取得する撮像装置と、
前記光の走査に応じて得られる光学像情報と、前記光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する照合部と、
前記照合結果に基づいて、前記細線パターンの真贋判定結果を出力する判定部と、を有する、
真贋判定装置。
【請求項2】
前記撮像装置は、前記光の走査に応じて、複数の前記光学像情報を取得し、
前記照合部は、複数の前記光学像情報と、前記正解情報と、を照合して、複数の照合結果を出力し、
前記判定部は、複数の前記照合結果に基づいて、前記真贋判定結果を出力する、
請求項1に記載の真贋判定装置。
【請求項3】
所定の停止条件を満たすまで、前記撮像装置が、前記光の走査に応じて前記光学像情報を取得し、前記照合部が、取得した前記光学像情報と前記正解情報との前記照合結果を出力することを繰り返し、
前記停止条件が満たされると、前記撮像装置による前記光の走査に応じた前記光学像情報の取得が停止する、
請求項1に記載の真贋判定装置。
【請求項4】
前記停止条件は、前記照合結果が所定の一致条件を満たすことである、
請求項3に記載の真贋判定装置。
【請求項5】
前記停止条件は、所定数の照合処理を行ったことである、
請求項3に記載の真贋判定装置。
【請求項6】
前記停止条件は、所定数の前記走査を行ったことである、
請求項3に記載の真贋判定装置。
【請求項7】
前記細線パターンは、透明基材上に形成されている、
請求項1に記載の真贋判定装置。
【請求項8】
前記細線パターンは、線幅が5μm以下の細線を含む回折格子である、
請求項1に記載の真贋判定装置。
【請求項9】
前記細線パターンの開口率は、80~99.9面積%である、
請求項1に記載の真贋判定装置。
【請求項10】
前記光学像は、前記細線パターンによって形成される反射回折像である、
請求項1に記載の真贋判定装置。
【請求項11】
前記正解情報は、他の情報処理装置から受信したものである、
請求項1に記載の真贋判定装置。
【請求項12】
前記細線パターンが付された照合対象製品に対して付されたシリアルコード又は前記照合対象製品の画像情報から、前記照合対象製品を特定可能な製品特定情報を取得する製品情報読取装置と、有する、
請求項1に記載の真贋判定装置。
【請求項13】
前記照合結果を表示制御する表示制御部をさらに有する、
請求項1に記載の真贋判定装置。
【請求項14】
真贋判定装置が、
細線パターンに対して光を走査する照射ステップと、
前記細線パターンから反射された反射光がフーリエ変換レンズを通過することで光学像を結像し、前記光の走査に応じて、該光学像に関する光学像情報を取得する撮像ステップと、
前記光の走査に応じて得られる光学像情報と、前記光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する照合ステップと、
前記照合結果に基づいて、前記細線パターンの真贋判定結果を出力する判定ステップと、を実行する、
情報処理方法。
【請求項15】
真贋判定装置に、
細線パターンに対して光を走査する照射ステップと、
前記細線パターンから反射された反射光がフーリエ変換レンズを通過することで光学像を結像し、前記光の走査に応じて、該光学像に関する光学像情報を取得する撮像ステップと、
前記光の走査に応じて得られる光学像情報と、前記光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する照合ステップと、
前記照合結果に基づいて、前記細線パターンの真贋判定結果を出力する判定ステップと、を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真贋判定装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
偽造品の流通防止策として、商品に二次元コードやRF(Radio Frequency IDentification)タグを付し、商品が正規品であることを判定するようなシステムが知られている。例えば、特許文献1には、携帯端末で対象物の識別情報を読み取ることで、その情報を用いて対象物が正規品であるかを判定できるようにし、また、その対象物の流通情報についても確認できるようにする真贋判定装置が開示されている。また、例えば、特許文献2には、回折パターンにより形成されたホログラム画像の真偽を判定する判定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-123108号公報
【特許文献2】特開2001-307172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したRFタグのICチップ情報を読み取り、偽造防止手段とするためには、RFタグのICチップ情報を読み取る専用のデータ読み書き装置が必要であり、特に最終顧客である一般消費者が、高価な専用データ読み書き装置を整備することは現実的ではなかった。
【0005】
そして、二次元コードやホログラム画像は容易に複製でき、また、RFタグにおいても容易に情報を読み取ることができ、さらに書き換えることができるため、なりすましや複製が可能である。このように、従来の偽造品の流通防止策には未だセキュリティ上の問題がある。一方で、RFタグの中には認証や暗号の機能を備えた高機能タグも存在するが、そのようなコスト低減が強く求められる流通市場においてはなじまない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、読み取り対象が複製困難かつ読み取りが容易な方式で真贋判定が可能な情報処理方法および当該方法に用いられる真贋判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
細線パターンに対して光を走査する照射装置と、
前記細線パターンから反射された反射光が通過して、光学像を結像するフーリエ変換レンズと、
前記光の走査に応じて、前記光学像に関する光学像情報を取得する撮像装置と、
前記光の走査に応じて得られる光学像情報と、前記光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する照合部と、
前記照合結果に基づいて、前記細線パターンの真贋判定結果を出力する判定部と、を有する、
真贋判定装置。
〔2〕
前記撮像装置は、前記光の走査に応じて、複数の前記光学像情報を取得し、
前記照合部は、複数の前記光学像情報と、前記正解情報と、を照合して、複数の照合結果を出力し、
前記判定部は、複数の前記照合結果に基づいて、前記真贋判定結果を出力する、
〔1〕に記載の真贋判定装置。
〔3〕
所定の停止条件を満たすまで、前記撮像装置が、前記光の走査に応じて前記光学像情報を取得し、前記照合部が、取得した前記光学像情報と前記正解情報との照合結果を出力することを繰り返し、
前記停止条件が満たされると、前記撮像装置による前記光の走査に応じた前記光学像情報の取得が停止する、
〔1〕に記載の真贋判定装置。
〔4〕
前記停止条件は、前記照合結果が所定の一致条件を満たすことである、
〔3〕に記載の真贋判定装置。
〔5〕
前記停止条件は、所定数の前記照合を行ったことである、
〔3〕に記載の真贋判定装置。
〔6〕
前記停止条件は、所定数の前記走査を行ったことである、
〔3〕に記載の真贋判定装置。
〔7〕
前記細線パターンは、透明基材上に形成されている、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の真贋判定装置。
〔8〕
前記細線パターンは、線幅が5μm以下の細線を含む回折格子である、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の真贋判定装置。
〔9〕
前記細線パターンの開口率は、80~99.9面積%である、
〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の真贋判定装置。
〔10〕
前記光学像は、前記細線パターンによって形成される反射回折像である、
〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の真贋判定装置。
〔11〕
前記正解情報は、他の情報処理装置から受信したものである、
〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の真贋判定装置。
〔12〕
前記細線パターンが付された照合対象製品に対して付されたシリアルコード又は前記照合対象製品の画像情報から、前記照合対象製品を特定可能な製品特定情報を取得する製品情報読取装置と、有する、
〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の真贋判定装置。
〔13〕
前記判定結果を表示制御する表示制御部をさらに有する、
〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の真贋判定装置。
〔14〕
真贋判定装置が、
細線パターンに対して光を走査する照射ステップと、
前記細線パターンから反射された反射光がフーリエ変換レンズを通過することで光学像を結像し、前記光の走査に応じて、該光学像に関する光学像情報を取得する撮像ステップと、
前記光の走査に応じて得られる光学像情報と、前記光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する照合ステップと、
前記照合結果に基づいて、前記細線パターンの真贋判定結果を出力する判定ステップと、を実行する、
情報処理方法。
〔15〕
真贋判定装置に、
細線パターンに対して光を走査する照射ステップと、
前記細線パターンから反射された反射光がフーリエ変換レンズを通過することで光学像を結像し、前記光の走査に応じて、該光学像に関する光学像情報を取得する撮像ステップと、
前記光の走査に応じて得られる光学像情報と、前記光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する照合ステップと、
前記照合結果に基づいて、前記細線パターンの真贋判定結果を出力する判定ステップと、を実行させる、
プログラム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、読み取り対象が複製困難かつ読み取りが容易な方式で真贋判定が可能な情報処理方法および当該方法に用いられる真贋判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のRFタグの一態様を示す平面図である。
【
図2A】本実施形態における真贋判定装置を示す概略図である。
【
図2B】本実施形態における真贋判定装置の構成の一態様を示すブロック図である。
【
図2C】本実施形態における真贋判定装置が光学像情報を取得する際の一態様を示す模式図である。
【
図2D】本実施形態における真贋判定装置が光学像情報を取得する際の別態様を示す模式図である。
【
図2E】本実施形態における正解データの一態様を示す図である。
【
図2F】本実施形態における光学像データの一態様を示す図である。
【
図2G】本実施形態における照合結果と判定結果の概念図である。
【
図3A】本実施形態における動作処理の一態様を示すフローチャートである。
【
図3B】本実施形態における動作処理の他の態様を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0011】
本実施形態では、真贋判定装置が、細線パターンから反射された反射光をフーリエ変換レンズにより結像して得られる光学像に関する光学像情報(以下、単に「光学像情報」ともいう。)を取得し、その光学像情報と光学像に関する正解情報(以下、単に「正解情報」ともいう。)とを用いて照合処理を行う。
【0012】
以下、本実施形態において用いる用語について説明してから、真贋判定装置の構成について説明する。
【0013】
1.細線パターン
初めに、本実施形態の真贋判定装置100が光学像情報を取得する対象である細線パターンについて説明する。
図1には細線パターンの一つの態様として、細線パターンをアンテナ部として有するRFタグ300の一態様を平面図で示す。
図1においては、RFタグ300のアンテナとして機能する細線パターン330を示しているが、細線パターン330はこのような機能を果たす必要はなく、RFタグでなくてもよい。すなわち、細線パターン330は、単に透明基材310上に細線320から構成されるパターンであってもよい。
【0014】
なお、本実施形態におけるRFタグとは、「Radio Frequencyタグ」の略称であって、電子タグ、ICタグ、無線タグ、RFタグ等、他の名称で呼称されることもある。RFタグは、対応するRFリーダ装置とともに用いられ、リーダとの間で非接触にてデータを送信または送受信できるものをいう。なお、RFリーダ装置は、ライタ(書き込み)を兼ねていてもよい。
【0015】
以下では、RFタグとして、電池を内蔵しておらず、リーダ・ライタから受信した電波をエネルギー源として動作するパッシブタグを例に本実施形態について説明するが、本実施形態のRFタグは、電池を内蔵するアクティブタグや、その他センサやセンサの電源としての電池を内蔵するセミパッシブタグであってもよい。
【0016】
RFタグ300は、透明基材310と、透明基材310上に形成されたアンテナ(細線パターン330)と、アンテナ(細線パターン330)に電気的に接続された半導体素子340を有する。アンテナ(細線パターン330)と半導体素子340とは、電気的に接続されている。
【0017】
RFタグ300のアンテナ(細線パターン330)は、金属製の細線320による所望のパターンとして形成されていてもよい。
図1には、金属製の細線320により構成されるグリッドパターンからなるアンテナ(細線パターン330)を示す。
【0018】
なお、細線パターン330は、
図1に示すような細線320から構成される任意のパターンであって、三角形、四角形、又は六角形等のグリッドパターン(メッシュパターン)であってもよいし、ラインパターンであってもよい。また、細線320は、直線に限られず曲線や波線であってもよい。
【0019】
このような細線パターン330に対して照射装置131から所定の光を照射すると、細線パターン330は所定の反射光を反射する。ここで、細線パターンが回折格子のように作用してもよく、反射光は回折光であってもよい。このような反射光がフーリエ変換レンズ132を通過することで、撮像装置133側から見ると所定の光学像を得ることができる。
【0020】
例えば、細線パターン330において、線幅5μm以下の複数の細線が、数百μm程度の周期のピッチで等間隔に配列されていると、反射光に回折像が観察され、光学像はこのような回折像を含む。なお、この場合において、発生する回折像には、回折スポット像や回折縞模様が含まれてもよい。
【0021】
また、細線パターン330が、線幅5μm以下の複数の細線320で構成され、数百μm程度のピッチで等間隔に配列されていると、個々の細線320は不可視であり、細線パターン330は透明となる。そのため、照合対象製品又はそのパッケージに対して細線パターン330を付したとしても、その意匠性や掲示情報が損なわれることがない。一方で、前記したように、このような透明な細線パターン330であっても、光を走査する過程で、所定角度の光が照射された時にのみ発生する反射光から、回折像を取得することができる。
【0022】
細線320は、金属を含む細線であることが好ましい。金属としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウムが挙げられる。これらの中でも、銀又は銅が好ましく、銅がより好ましい。
【0023】
上記のような観点から、細線320は肉眼により視認されにくいものが好ましい。例えば、細線320の線幅Wは、好ましくは5.0μm以下であり、より好ましくは0.1~5.0μmであり、さらに好ましくは0.3~5.0μmである。線幅Wが5.0μm以下であることにより、細線320の視認性が低下する。これにより、照合対象製品の意匠を損なわず細線パターン330を付することができる。また、このような視認性の低い細線はそれ自体製造することが困難であり、複製され難さを担保する要因ともなる。ここで、本実施形態の線幅W1とは、透明基材310の細線320が配された面側から、細線320を透明基材310の表面上に投影したときの細線320の線幅をいう。
【0024】
また、所定面積の細線パターン330のうち細線320が形成されていない部分の面積の比率である開口率ORは、好ましくは80~99.9面積%であり、より好ましくは85~99.8面積%であり、さらに好ましくは90~99.6面積%であり、よりさらに好ましくは95~99.5面積%である。なお、開口率ORは透過率とも言い換えることができる。これにより、細線パターンを付したとしても、照合対象製品又はそのパッケージの意匠性や掲示情報を損なうことを回避できる。
【0025】
細線320を構成する導電性細線の厚さH1は、好ましくは10nm以上1000nm以下であり、より好ましくは50nm以上あり、さらに好ましくは75nm以上である。細線320の厚さH1が10nm以上であることにより、導電性がより向上する傾向にある。他方、細線320の厚さH1が1000nm以下であることにより、広い視野角において視認性が低下する。
【0026】
細線320の線幅W1に対する細線320の厚さH1で表されるアスペクト比(H1/W1)は、好ましくは0.05以上1.00以下である。アスペクト比の下限は、より好ましくは0.08以上、さらに好ましく0.10以上である。アスペクト比が0.05以上であることにより、透過率を低下させることなく、導電性をより向上できる傾向にある。
【0027】
細線320のピッチP1は、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上である。細線320のピッチP1が5μm以上であることで、良好な透過率を得ることができる。また、細線320のピッチP1は、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは500μm以下であり、さらに好ましくは250μm以下である。細線320のピッチP1が1000μm以下であることにより、導電性をより向上できる傾向にある。なお、細線320の正方形のグリッドパターンである場合には、線幅1μmの細線320のピッチP1を200μmとすることにより、開口率99%とすることができる。さらに、ピッチP1が上記範囲であると、細線320の非視認性を高めると共に、細線パターン330による回折像が明瞭となり好ましい。なお、ピッチP1は、線幅W1と細線320間の距離の和を意味する。
【0028】
占有面積率A1は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1.0%以上であり、さらに好ましくは2%以上である。占有面積率A1を当該値以上とすることで、細線パターン330の導電性がより向上する傾向にある。また、占有面積率A1は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは7%以下である。占有面積率A1を当該値以下とすることにより、細線パターン330の可視光透過率がより向上する傾向にある。
なお、パターンにおける「占有面積率」とは、透明基材310上の細線パターン330が形成されている領域について以下の式で算出することができる。
占有面積率(%)=(細線パターンの占める面積/透明基材の細線パターンが形成されている領域の面積)×100
【0029】
開口部の開口幅W2は、好ましくは40μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、さらに好ましくは60μm以上である。当該範囲とすることで、細線パターン330の視認性をより低下させることができる傾向にある。開口部の開口幅W2は、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは300μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下である。当該範囲とすることで、細線パターン330の電気抵抗を減らし、アンテナの機能をより良好にすることができる。
【0030】
「開口幅」とは、開口部の短手方向の幅を意味する。なお、開口が正方形である場合には、いずれか一辺の幅である。
【0031】
細線パターン330の可視光透過率T1は、好ましくは75%以上99.0%以下であり、より好ましくは80%以上99.0%以下である。可視光透過率は、JIS K 7361-1:1997の全光線透過率に準拠して、その可視光(360~830nm)の範囲の透過率を算出することで測定することができる。
【0032】
本実施形態における好ましい態様として、細線パターン330が透明基材310上に形成されているとよい。このような構成であると、RFタグ300を商品パッケージに対して貼合してもその意匠性や掲示情報を損なわないため、好ましい。
【0033】
また、細線パターン330は、細線320による周期的なパターンとして形成されていることが好ましい。このような構成であると、細線パターン330は回折格子を構成し、光を照射することで、その微細構造を反映した反射回折像が得られる。
【0034】
2.光学像情報
光学像情報は、上記のような細線パターン330から取得できる光学像に関する情報であり、より具体的には、細線パターン330に所定の角度で光を照射したときに生じる反射回折像に関する情報であってもよい。反射回折像は、細線320が所定の周期で等間隔に配列された細線パターン330に対して、所定の角度で光を照射したときに、その反射光に観察される像であって、回折スポット像や回折縞模様が含まれる。
【0035】
また、光学像情報は、これら光学像のイメージデータであってもよいし、非イメージデータであってもよいし、その両方であってもよい。ここで、「イメージデータ」とは画像そのもののデータをいい、「非イメージデータ」とは、イメージデータの特徴を示す情報であって、照合処理においてイメージデータと同等に使用できる情報をいう。
【0036】
非イメージデータとしては、特に制限されないが、例えば、回折格子の配置をより具体的に特定するためのパラメータ情報が挙げられる。さらに、非イメージデータには、光学像を生じさせるために用いた条件に関する情報が含まれてもよい。このような条件に関する情報としては、例えば、光の照射角度などの照射条件に関する情報が挙げられる。
【0037】
このような光学像情報の具体例としては、例えば、前記した回折格子を有するRFタグ300へ光を照射して得られる反射光を、フーリエ変換レンズを透過して得られる反射回折像の回折点画像のイメージデータや、反射0次光中心に対する各次回折点の距離、反射0次光中心から減衰する次数回折点までの距離、回折像の交差角度などの非イメージデータが挙げられる。これらイメージデータや非イメージデータは、細線パターン330のピッチ、線幅、正方形や矩形などの開口形状、RFタグ300を構成する材料により一意的に決定される。これら光学像情報は、微細構造から形成された偽造困難な固有値であるため、光学像情報を用いることで、RFタグ300を構成する細線パターン330が真正なものであるかの判定を行うことができる。
【0038】
細線パターン330から取得できる光学像は、反射回折像であることが好ましい。光学像が反射回折像であると、光学像情報を習得する空間を広くとる必要がないため、好ましい。また、光学像が反射回折像であると、細線パターン330表面からの反射光だけでなく、RFタグ300を貼合した照合対象製品の表面からの反射光によっても反射回折像が得られるため、回折像の光強度が増加して光学像情報の取得精度が向上し、好ましい。例えば、細線パターン330表面の反射率が3%、照合対象製品表面の反射率が20%であると、反射回折像の光強度は、細線パターン330表面のみからの反射回折像の1.5倍程度となる。
【0039】
3.正解情報
後述するように、例えば、真贋判定装置100の照合部113は、正解情報と光学像情報とを照合することで、その細線パターンが、真正なものであるという判定を行うことができる。ここで、正解情報は、細線パターンから得られる光学像情報に対応する情報であり、光学像情報のもととなる細線パターンの真贋を判定するための情報である。
【0040】
正解情報は、例えば、光学像情報と一致する情報、又は、所定の変換処理を施すことにより光学像情報と一致する情報が挙げられる。このような観点から、正解情報は、光学像情報と同様に、イメージデータであってもよいし、非イメージデータであってもよいし、その両方であってもよい。なお、ここで、「一致する」には、後述する類似度なども含まれる。
【0041】
正解情報は、細線パターンから得られる光学像についての多様な情報を含むことができる。例えば、正解情報は、回折像などの光学像を示す回折スポットの位置などの少なくとも1つのパラメータであってもよいし、複数のパラメータの組み合わせであってもよい。このような、正解情報における、光学像情報と照合するパラメータの種類や数は、照合処理の精度や、細線パターンの模倣の困難性、あるいは照合処理の速度などに応じて、適宜決めることができる。
【0042】
また、例えば、ある正解情報が複数の回折スポットの位置という複数のパラメータを有するものであったとしても、後述する照合処理においては、その一部のパラメータ、例えば1つの回折スポットの位置のみを照合に使用するようにしてもよい。照合処理においては、正解情報に含まれるより多くのパラメータを使用することで、真贋判定の精度を向上したり、あるいは、より少ないパラメータを使用することで判定の処理速度を向上したりすることができる。
【0043】
正解情報は、複数の製品特定情報のうち、2以上の製品特定情報に対して共通して設定されたものであってもよい。つまり、異なる照合対象製品に同一の細線パターンが付されていてもよい。
【0044】
正解情報には、光学像を生じさせるために用いた条件に関する情報が含まれてもよい。このような条件に関する情報としては、例えば、光学像が回折像である場合には、光の照射角度などの照射条件に関する情報が挙げられる。
【0045】
4.製品特定情報
製品特定情報は、細線パターンが付された照合対象製品を特定可能な情報である。製品特定情報は、照合対象製品に付されたシリアルコード、又は照合対象製品の画像情報から取得してもよい。製品特定情報は照合対象製品を一意に識別するための情報であってもよいし、同一の商品からなる群を示す情報であってもよいし、同一の商品からなる群のうち任意の共通項を有する小群を示す情報であってもよい。
【0046】
例えば、商品名Sで販売されているスニーカーがある場合、「同一の商品からなる群を示す情報」とは、商品名Sに相当する情報であり、商品名Sという名称で販売される商品全体をさす情報をいう。また、同様の例において、「同一の商品からなる群のうち任意の共通項を有する小群を示す情報」とは、商品名Sのスニーカーのうち、特定の製造ロットに該当する商品の群や、特定の地域で販売される商品の群など、同じ商品として販売されたものの中で更に任意のカテゴリーに関する情報が付与された情報をいう。さらに、同様の例において、「一意に識別するための情報」とは、商品名Sのスニーカーのうち、特定の一つの商品を示す情報をいう。
【0047】
さらに、製品特定情報は、製品メーカを示す情報であってもよい。例えば、製品特定情報は、フットウェアメーカA、フットウェアメーカB、フットウェアメーカC、あるはその他のメーカを識別可能な情報であってもよい。この場合、ある製品特定情報が示す照合対象製品は、その製品特定情報に対応する製品メーカにより製造されたものと理解することができる。一例として、このような製品メーカを示す製品特定情報は、シリアルコードであってもよいし、画像情報として把握される商標であってもよい。
【0048】
シリアルコードとは、特に限定されないが、例えば、照合対象製品に付されたRFタグ等のICチップに記録された情報や、QRコードなどの二次元コード若しくはバーコードから読み取ることのできる情報をいう。このようなシリアルコードから取得できる製品特定情報としては、特に限定されないが、例えば、GTIN(Global Trade Item Number)や、その他に、製品メーカ、流通拠点、流通業者、又は小売店などが商品の分類や判別のために付す情報が挙げられる。また、製品特定情報には、シリアルコードそのものの他に、そのようなシリアルコードを管理するデータベースにおいて、シリアルコードと対応付けて記録された製品に関する情報が含まれてもよい。
【0049】
照合対象製品には、
図1に示すRFタグのように、半導体素子340に記録されたシリアルコードとアンテナとして構成された細線パターンが一体になって付されていてもよいし、シリアルコードと細線パターンが別々に付されていてもよい。
【0050】
シリアルコードと細線パターンが一体になったものを、「タグ」ともいう。このようなタグの例としては、特に限定されないが、例えば、RFタグ(Radio Frequencyタグ)において、ICチップにシリアルコードが記録され、アンテナ部分が金属の細線パターンで構成されたものが挙げられる。また、タグの他の例としては、二次元コード若しくはバーコードと細線パターンが一面に横並びに配置されて一体となったものや、二次元コード若しくはバーコードと透明性の高い細線パターンが重ねて配置されて一体となったものなども挙げられる。
【0051】
また、照合対象製品の画像情報から取得できる製品特定情報は、製品の画像情報から、その画像に映っている製品を検索して得られる情報が挙げられる。照合対象製品の画像情報から取得できる製品特定情報についても、シリアルコードと同様に、画像情報そのものの他に、画像情報から特定される製品に関する情報が含まれてもよい。
【0052】
5.真贋判定装置
5.1.装置構成
真贋判定装置100は、細線パターンに対して光を走査する照射装置と、細線パターンから反射された反射光が通過して、光学像を結像するフーリエ変換レンズと、光の走査に応じて、光学像に関する光学像情報を取得する撮像装置と、光の走査に応じて得られる光学像情報と、光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する照合部と、照合結果に基づいて、細線パターンの真贋判定結果を出力する判定部と、を有する。
【0053】
細線パターンから反射された反射光は、回折光であってもよい。回折光がフーリエ変換レンズ132を通過することで、撮像装置133側から見ると所定の光学像を得ることができる。
【0054】
図2Aに、本実施形態における真贋判定装置の概略図を示す。
図2Aに示すように、真贋判定装置100は、筐体170と、情報処理装置180と、を備えていてもよい。
【0055】
筐体170は、照射装置131、フーリエ変換レンズ132、及び撮像装置133などの光学像情報を取得するための装置を収容してもよい。また、筐体170は、窓171を有してもよい。照射装置131からの入射光LLは、窓171を通って、細線パターン330上をF方向に走査してもよく、細線パターン330からの反射光RLも、窓171を通って、フーリエ変換レンズ132に到達してもよい。入射光LLのF方向への走査に応じて、反射光RLは経時的に変化し得る。
【0056】
さらに、筐体170は、持ち手172と、トリガー173を有していてもよい。トリガー173を引くことにより、照射装置131が細線パターン330に対して入射光LLを走査してもよい。
【0057】
情報処理装置180は、照合部113のほか、後述する送受信部111、制御部112、判定部114、表示制御部115等の各種機能部を有してもよいし、入出力装置を有していてもよい。情報処理装置180は、限定ではなく例として、タブレット、スマートフォン、ハンドヘルドコンピュータデバイス、ウェアラブル端末等であってもよい。
【0058】
真贋判定装置100はこれに限定されるものではなく、照射装置131、フーリエ変換レンズ132、及び撮像装置133などの光学像情報を取得するための装置を備え、照合処理を実行する照合部113と判定処理を実行する判定部114を有するものであれば、特に制限されない。
【0059】
図2Bに、真贋判定装置100の構成を示すブロック図を示す。真贋判定装置100は、典型的には、1つ又は複数のプロセッサ110、通信インタフェース120、入出力インタフェース130、メモリ140、ストレージ150及びこれらの構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス160を含む。
【0060】
1つ又は複数のプロセッサ110は、メモリ140に記憶されるプログラムに含まれるコード、または、命令によって実現する処理、機能、または、方法を実行する。プロセッサ110は、限定でなく例として、1又は複数のCPUやGPUを含む。
【0061】
プロセッサ110は、ストレージ150に記憶されるプログラムに含まれるコード、
又は、命令によって実現する処理、機能、又は、方法を実行する。
図2Bに示すように
、本実施形態のプロセッサ110は、送受信部111、制御部112、照合部113、
判定部114、及び表示制御部115として機能するよう構成されてもよい。これら機
能部については後述する。
【0062】
通信インタフェース120は、ネットワークNを介して他の情報処理装置と各種データの送受信を行う。当該通信は、有線、無線のいずれで実行されてもよく、互いの通信が実行できるのであれば、どのような通信プロトコルを用いてもよい。例えば、通信インタフェース120は、ネットワークアダプタ等のハードウェア、各種の通信用ソフトウェア、又はこれらの組み合わせとして実装される。
【0063】
入出力インタフェース130は、照射装置131、フーリエ変換レンズ132、撮像装置133の他、必要に応じて、スクリーン137や、製品情報読取装置134、真贋判定装置100に対する各種操作を入力する入力装置、および、真贋判定装置100で処理された処理結果を出力する表示装置135などの出力装置を含んでいてもよい。
【0064】
照射装置131、フーリエ変換レンズ132、及び撮像装置133は、制御部112によって制御され、細線パターンに対して光を走査して、光学像情報を取得するモジュールを構成する。
図2Cに、真贋判定装置100が光学像情報を取得する際の模式図を示す。
図2Cは、真贋判定装置100のxy面と平行な面で切断した断面図を示す。
図2Cは、入射光LLと反射光RLの光路を示す断面図である。
【0065】
図2Cでは、照射装置131が細線パターン330に対して入射光LLを走査する。その走査の過程で所定の照射角θで光が照射されると、細線パターン330から反射した反射光RLがフーリエ変換レンズ132を通過し、結像した光学像が形成される。そして、撮像装置133は所定の光学像情報を取得する。
【0066】
照射装置131は、細線パターン330に対して入射光LLを走査できれば特に制限されるものではない。照射装置131における光源は、必要とする波長帯を含む発光波長強度分布を有する光を発光するものであってもよい。光源としては、例えば、ハロゲンランプ、LED及び半導体レーザー等などであってもよく、照射装置131はこれら光源から放射された光を導光する導光路、光ファイバなどを含んでいてもよい。このなかでも、照射装置131としては、小型化、発熱特性、寿命及びコストの点からLEDの使用が好ましい。さらに好ましくは、照射装置131がLDレーザーである。これにより、入射光LLの位相が揃うため、細線パターン330から得られる光学像としての回折パターンが得られやすくなり、特定方向以外の光の拡散が抑制されるため、特に好ましい。
【0067】
また、照射装置131は、特定方向以外の光の拡散を抑制すると共に、所定の光学純度を得るためのスリット(不図示)を含んでもよく、細線パターン330に集光させるコリメータレンズ(不図示)を含んでもよい。この場合、コリメータレンズは、必ずしも細線パターン330の面上に焦点を合わせる必要はなく、光源からの光強度を上げ、細線パターン330から反射された反射光の信号強度を向上できれば特に制限されるものではない。
【0068】
さらに、照射装置131は、入射光LLを走査するために、光を所定の方向に反射させるためのミラーと、ミラーの傾きを制御するアクチュエータを有していてもよい。例えば、制御部112が、アクチュエータを制御してミラーを駆動することにより、光源から放出された光を任意の方向に反射することができる。これにより、照射装置131は、所定の方向に入射光LLを走査することができる。ミラーはMEMSミラーであってもよい。但し、入射光LLの走査手段はこれに制限されず、任意の走査機構を用いることができる。
【0069】
フーリエ変換レンズ132は、細線パターン330から反射される反射光RLを受光し、光学像を撮像装置133に導光できれば特に制限されるものではない。フーリエ変換レンズ132は、焦点距離Fを有し、撮像装置133上にフーリエ変換された反射光RLによる光学像を結像するものである。また、フーリエ変換レンズ132の光路前後には、図示しないスリット、ミラー、フィルタを設けてもよく、複数のフーリエ変換レンズを組み合わせて、フーリエ変換レンズ132としてもよい。複数のフーリエ変換レンズを組み合わせると、撮像装置133上に結像する光学像の解像度が上がり、好ましい。
【0070】
フーリエ変換レンズ132を用いることにより、照射装置131と、細線パターン330と、フーリエ変換レンズ132の距離が変わったとしても、撮像装置133に同様に結像することが可能となる。特に細線パターン330が、線幅5μm以下の複数の細線320で構成され、数百μm程度のピッチで等間隔に配列され、細線パターン330が透明となる場合には、所定角度の光を照射した時に発生する反射光強度は非常に弱くなるが、フーリエ変換レンズ132を用いることにより撮像装置133に集光できるため、光学像情報を安定して取得することができる。
【0071】
撮像装置133は、光の走査に応じて、光学像情報を取得する。また、撮像装置133は、光の走査に応じて、複数の光学像情報を取得するように構成されていてもよい。これにより、撮像装置133は、細線パターン330上の異なる位置で反射した反射光RL、又は、細線パターン330に異なる角度で入射して反射した反射光RLが、結像した複数の光学像から複数の光学像情報を取得できる。
【0072】
例えば、細線パターン330の一部が欠損や欠落等していると、その部分から得られる光学像情報が、欠損等がないとした場合の本来の細線パターン330から得られる光学像情報と異なってしまうということがあり得る。そのような場合であっても、光を走査して、複数の光学像情報を取得することにより、本来の細線パターン330から得られる光学像情報と一致するものが得られる確率が高くなる。そのため、光を走査することにより、欠損等による判定の誤りを回避することが可能となり、細線パターン330の真贋をより正確に判定することができる。
【0073】
撮像装置133は、フーリエ変換レンズ132によって結像された光学像を、光学的な画像信号を電気信号に変換して出力できれば、特に制限されるものではなく、CMOSセンサや、CCDセンサ、ラインセンサなどが挙げられる。
【0074】
また、撮像装置133として、光学像を直接電気信号に変換する機構ではなく、所定の投影面に結像する光学像を撮像して光学像情報を取得する機構でもよい。
図2Dに、真贋判定装置100が光学像情報を取得する際の他の模式図を示す。
図2Cでは、フーリエ変換レンズ132により結像した光学像から光学像情報を撮像装置133が直接取得するのに対して、
図2Dにおいては、フーリエ変換レンズ132を通過した反射光RLがスクリーン137上に結像し、撮像装置133がスクリーン137上に結像された光学像から光学像情報を取得する。
【0075】
この場合、スクリーン137に結像した光学像を撮像する撮像装置133としては、CCDカメラや撮像管などを用いることができる。
図2Dにおいては、照射装置131から照射された光が、細線パターン330から反射され、フーリエ変換レンズ132によりスクリーン137上に結像される。そして、結像された光学像を撮像装置133(CCDカメラ)で撮像する。
【0076】
撮像装置133は、
図2Dに示すようにフーリエ変換レンズ132の軸から外れた位置にあってもよく、
図2Cに示すように軸上に位置してもよい。フーリエ変換レンズ132の軸から外れて位置すると、真贋判定装置100を小型化でき好ましく、フーリエ変換レンズ132の軸上に位置すると、スクリーン137上に結像された反射回折像が歪まないために、正解情報との照合が容易であるため、好ましい。
【0077】
撮像装置133が取得した光学像に関する光学像情報は、真贋判定装置100の照合部113により正解情報と照合される。
【0078】
製品情報読取装置134は、細線パターンが付された照合対象製品に対して付されたシリアルコード、照合対象製品の画像情報から、照合対象製品を特定可能な製品特定情報を取得する。このような製品情報読取装置134は、読取対象によって、適宜選択することができる。シリアルコードから製品特定情報を取得する製品情報読取装置134は、例えば、RFタグからシリアルコードを読み取る場合であればRFタグリーダであり、QRコードからシリアルコードを読み取る場合であれば撮像装置であり、バーコードからシリアルコードを読み取る場合であればバーコードリーダである。また、照合対象製品の画像情報から製品特定情報を取得する製品情報読取装置134は、例えば、画像情報を取得するための撮像装置である。
【0079】
図2Aにおいては、筐体170の窓171と同じ面に、RFタグリーダである製品情報読取装置134が配置された例を示す。このように、本実施形態の真贋判定装置100は、光学像情報の取得と製品特定情報の取得を並行して実行できるように構成されていてもよい。
【0080】
なお、製品情報読取装置134が撮像装置である場合には、製品情報読取装置134と光学像情報を取得するための撮像装置133とを同一の装置とすることができる。本明細書においては、製品情報読取装置134と撮像装置133とが同一の撮像装置であるとしても、これらを分けて呼称する。
【0081】
メモリ140は、ストレージ150からロードしたプログラムを一時的に記憶し、プロセッサ110に対して作業領域を提供する。メモリ140には、プロセッサ110がプログラムを実行している間に生成される各種データも一時的に格納される。メモリ140は、限定でなく例として、DRAM、SRAM、DDR RAM又は他のランダムアクセス固体記憶装置などの高速ランダムアクセスメモリ等であってよく、これらが組み合わせられてもよい。
【0082】
ストレージ150は、プログラム、各種機能部、及び各種データを記憶する。ストレージ150は、限定でなく例として、磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性固体記憶装置などの不揮発性メモリ等であってよく、これらが組み合わせられてもよい。ストレージ150の他の例としては、プロセッサ110から遠隔に設置される1つ又は複数の記憶装置を挙げることができる。
【0083】
ストレージ150には、正解情報が格納される正解データ151や、光学像データ152が記録されてもよい。
【0084】
正解データ151には、正解情報が格納されており、ある照合対象製品の製品特定情報と、その照合対象製品に付された細線パターンから取得できる光学像の正解情報と、が対応付けられて格納されていてもよい。
【0085】
図2Eに、正解データ151の一例を示す。「正解情報ID」は、正解情報を一意に特定するためのIDである。「正解情報」は、前述のとおり、光学像のイメージデータであってもよいし、光学像から特定される回折パターンやその他光学像の特徴を表現する非イメージデータであってもよいし、その両方であってもよい。上記のように、「イメージデータ」とは画像そのもののデータをいい、「非イメージデータ」とは、イメージデータの特徴を示す情報であって、照合処理においてイメージデータと同等に使用できる情報をいう。
【0086】
正解情報は他の情報処理装置から受信したものであってもよい。例えば、真贋判定装置100の照合部113は、他の情報処理装置(サーバ)から正解情報を事前に受信し、正解データ151に記憶しておいてもよい。
【0087】
「製品特定情報」は、前述のとおり、細線パターンが付された照合対象製品を特定可能な情報である。正解データ151において、製品特定情報と正解情報は、一対一に対応してもよいし、複数の製品特定情報のうち、2以上の製品特定情報に対して共通の正解情報が対応してもよい。2以上の製品特定情報に対して共通の正解情報が設定されることにより、正解データ151に記憶される正解情報のデータ量を低減することができ、また、正解情報の検索等に要する時間が短くなり照合処理の高速化を図ることができる。
【0088】
正解データ151における製品特定情報と正解情報の対応付けは、細線パターンを照合対象製品に貼り付けた者が行うことができる。例えば、メーカが照合対象製品に細線パターンを付している場合には、メーカが製品特定情報と正解情報の対応付けデータを作成してもよい。また、真贋判定装置100の送受信部111は、例えば、そのように対応付けられたデータを、ネットワークNを介して取得し、正解データ151に記録してもよい。
【0089】
光学像データ152には、光学像情報が格納されており、光学像情報を取得した日付情報及び位置情報、真贋判定をした端末ID、製品特定情報、及び照合結果が対応付けられて格納されていてもよい。
【0090】
図2Fに、光学像データ152の一例を示す。「光学像ID」は、光学像情報を一意に特定するためのIDである。「光学像情報」は、前述のとおり、光学像のイメージデータであってもよいし、光学像から特定される回折パターンやその他光学像の特徴を表現する非イメージデータであってもよいし、その両方であってもよい。非イメージデータの具体例としては、例えば、前記した回折格子を有するRFタグ300へ光を走査して得られる光学像において、反射0次光中心に対する各次回折点の距離、反射0次光中心から減衰する次数回折点までの距離、回折像の交差角度などが挙げられる。また、光学像データ152の「光学像情報」には、走査により得られた複数の光学像情報がまとめて含まれてもよい。
【0091】
光学像データ152の「日時情報」は、真贋判定装置100が光学像情報を取得した日時に関する情報である。「位置情報」は、真贋判定装置100が光学像情報を取得した場所に関する情報である。位置情報は、端末が備えるGPSにより特定される位置情報であってもよいし、IPアドレスによる位置推定、Wi-Fiを利用した位置推定等により特定される位置情報であってもよい。「端末ID」は、例えば、真贋判定装置100を一意に特定するIDであってもよい。このような情報を光学像情報と対応付けて記録することにより、照合対象製品の流通経路のトレースに利用することができる。
【0092】
光学像データ152の「製品特定情報」は、前述のとおり、細線パターンが付された照合対象製品を特定可能な情報である。光学像データ152における製品特定情報は、製品情報読取装置134が、照合対象製品に付されたシリアルコード、又は照合対象製品の画像情報から取得して、正解データ151に記録してもよい。これにより、製品特定情報と正解情報とを対応して記録できる。製品特定情報を光学像情報と対応付けて記録することにより、照合対象製品の流通経路のトレースに利用することができる。
【0093】
光学像データ152の「照合結果」には、光学像情報と正解情報を照合した結果に関する情報が格納される。光学像データ152における照合結果は、照合部113が、光学像情報と正解情報を照合して照合結果を生成して、正解データ151に記録してもよい。
【0094】
光学像データ152の「判定結果」には、照合結果に基づいて、出力した細線パターンの真贋判定結果が格納される。光学像データ152における判定結果は、判定部114が、光学像データ152の照合結果に基づいて、真贋判定結果を出力し、正解データ151に記録してもよい。
【0095】
図2Gに、照合結果と判定結果との関係の概念図を示す。照合処理は一つの光学像情報と正解情報とを対象として行われる。したがって、
図2Gに示すように、光学像データ152の「光学像情報」に走査により得られた複数の光学像情報がまとめて含まれる場合、個々の光学像情報が正解情報とそれぞれ照合され、光学像情報と同数の照合結果が出力され得る。そのため、「光学像情報」に走査により得られた複数の光学像情報がまとめて含まれる場合、光学像データ152の「照合結果」には、その複数の光学像情報に対して複数の照合結果が記録されてもよい。
【0096】
これに対して、判定処理は、上記のような照合処理により出力された一又は複数の照合結果を対象として行われ、正解情報との一致性を満たす照合結果が一つでも存在すれば「真判定」をし、存在しなければ「贋判定」をしてもよい。したがって、
図2Gに示すように、光学像データ152の「照合結果」に複数の照合結果がまとめて含まれるとしても、光学像データ152の「判定結果」には、「真判定」又は「贋判定」のいずれか一方が記録され得る。
【0097】
送受信部111は、例えば、通信インタフェース120とネットワークNを介して、他の装置に各種情報を送信する送信部、又は他の装置から各種情報を受信する受信部として機能してもよい。
【0098】
制御部112は、照射装置131を制御して、細線パターンに対して光を走査することができる。例えば、ユーザが持ち手172をもって、細線パターン330に向けてトリガー173を引く。それにより、制御部112は、所定の走査プロトコルを実行し、それに応じて、照射装置131は光源を発光させ、アクチュエータを駆動してミラーの向きを変える。これにより、制御部112は、照射装置131から細線パターン330へ照射する光の角度や強度、或いは、細線パターン330に光を当てる位置などを変更するように、照射装置131を制御してもよい。結果として、細線パターン330に対して光を走査することができる。
【0099】
入射光LLが細線パターン330上を走査すると、細線パターン330への入射光LLの進入角度が変化する。入射光LLの進入角度の変化によって、フーリエ変換レンズ132を介して、撮像装置133が取得する反射光RLの光学像も変化し得る。また、制御部112は、フーリエ変換レンズ132と撮像装置133の位置や、フーリエ変換レンズ132とスクリーン137の位置を変更するように、各装置の位置関係を制御してもよい。
【0100】
反射光RLが回折光である場合には、その回折パターンが入射光LLの走査に応じて変化し得る。したがって、撮像装置133は、光の走査に応じて、複数の光学像情報を取得することができる。そして、このように取得した複数の光学像情報を、後述する照合部113が正解情報と照合することで、複数の照合結果を出力することができる。また、
図2Gに示すように、後述する判定部114は、複数の照合結果に基づいて、真贋判定結果を出力することができる。
【0101】
また、所定の停止条件を満たすまで、撮像装置が、光の走査に応じて光学像情報を取得し、照合部が、取得した光学像情報と正解情報との照合結果を出力することを繰り返し、停止条件が満たされると、撮像装置による光の走査に応じた光学像情報の取得が停止するようにしてもよい。
【0102】
なお、この場合、一回目の照合結果が、正解情報と光学像情報とが所定の一致関係を満たすものであり、これにより真判定ができる場合には、撮像装置が取得する光学像情報は一つである。
【0103】
所定の停止条件として、制御部112は、後述する照合部113が照合処理において正解情報と光学像情報とが所定の一致関係を満たすと判断した場合に、照射装置131が走査を停止するように制御してもよい。また、制御部112は、後述する照合部113が照合処理において正解情報と光学像情報とが所定の一致関係を満たさないと判断した場合に、照射装置131が走査を継続するように制御してもよい。所定の一致関係としては、完全一致のほか、照合部113が一致性の判断を正解情報と光学像情報との類似度により行う場合には、類似度がある閾値以上若しくは以下、又は、ある値域に入る場合などであってもよい。
【0104】
所定の停止条件として、制御部112は、後述する照合部113が所定数の照合を行った場合に、照射装置131が走査を停止するように制御してもよい。例えば、後述する照合部113は照合処理の回数をカウントし、その回数が一定回数に達しても、正解情報と所定の上記一致関係を満たす光学像情報が得られない場合には、照射装置131は走査を停止してもよい。
【0105】
所定の停止条件として、制御部112は、照射装置131が所定数の走査を行った場合に、照射装置131は、走査を停止するように制御してもよい。例えば、
図2Aに示すように入射光LLが方向Fに一定の幅で細線パターン330上を走査するとき、方向Fの端から端までの走査を1回として、1~4回の走査をしたときに、照射装置131は走査を停止してもよい。
【0106】
さらに、制御部112は、撮像装置133が取得した光学像情報を、光学像データ152に記録してもよい。この際、制御部112は、撮像装置133が取得した光学像に基づいて、光学像情報としてイメージデータを記録してもよいし、非イメージデータを記録してもよい。非イメージデータを記録することにより、照合部113は、イメージデータに基づく照合処理に代えて、非イメージデータに基づく照合処理を実行することができる。これにより、後述する照合部113の照合処理速度をより向上することができる。
【0107】
また、制御部112は、撮像装置133が撮像した光学像の特定の領域のイメージデータまたは非イメージデータを、光学像情報として、光学像データ152に記録してもよい。なお、制御部112は、光学像のイメージデータを非イメージデータに変換する処理を実行してもよい。
【0108】
照合部113は、光の走査に応じて得られる光学像情報と、光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する照合処理を実行する。この際、照合部113は、光学像データ152に記録された光学像情報のイメージデータと正解データ151に記録された正解情報におけるイメージデータとを照合してもよいし、光学像データ152に記録された光学像情報の非イメージデータと正解データ151に記録された正解情報における非イメージデータとを照合してもよいし、光学像データ152に記録された光学像情報の非イメージデータと正解データ151に記録された正解情報におけるイメージデータとを照合してもよいし、光学像データ152に記録された光学像情報のイメージデータと正解データ151に記録された正解情報における非イメージデータとを照合してもよい。
【0109】
なお、イメージデータと非イメージデータとの照合においては、照合部113は、一方のイメージデータ又は非イメージデータを、非イメージデータ又はイメージデータへ変換してもよい。
【0110】
照合部113は、照合結果として、光学像情報と正解情報とが所定の一致条件を満たすという結果、又は、所定の一致条件を満たさないという結果を出力することができる。
【0111】
所定の一致条件としては、例えば、完全一致のほか、所定の類似性を満たすことが挙げられる。例えば、照合部113は、光学像情報と正解情報に基づいて、光学像情報と正解情報の類似度を算出し、類似度に基づいて、照合結果を生成するようにしてもよい。なお、照合部113は、類似度がある閾値以上若しくは以下、又は、ある値域に入る場合などに、光学像情報と正解情報が一致する又は一致しないという結果を生成してもよい。このような照合に用いる類似度の閾値又は値域は、正解データ151に記憶される正解情報の一部として含まれていてもよい。
【0112】
例えば、照合部113は、光学像情報と正解情報を参照し、光学像情報の特徴量と正解情報の特徴量とを比較することで、類似度を算出してもよい。例えば、光学像情報や正解情報としてイメージデータを用いる場合には、照合部113は、画像処理により、特徴量を算出してから、類似度を算出してもよい。具体的には、光学像情報と正解情報中のイメージデータとの、画素値の差分の二乗和、画素値の差分の絶対値の和、正規化相互相関、画像均一度比、相互情報量、カルバック・ライブラー情報量などを類似度として用いることができる。
【0113】
また、光学像情報と正解情報として、例えば、回折スポット像や回折縞模様等を表すパラメータなどの非イメージデータを用いる場合には、これら非イメージデータを上記特徴量として、類似度の算出に用いることができる。具体的には、照合部113は、光学像情報と正解情報との特徴量の差や比、或いはこれらを変数とする関数などにより類似度を算出してもよい。
【0114】
撮影条件によっては取得する光学像情報に揺らぎが生じることが考えられるため、完全一致の場合にのみ細線パターンが真正品であるとの照合結果を生成すると、本来は一致しているにもかかわらず光学像情報と正解情報が一致しないという照合結果が出力される可能性がある。これに対して、上記のように類似度を用いることにより、光学像情報に揺らぎが生じるような場合においても、光学像情報と正解情報の一致性を適切に判断することができる。この際の照合結果には、光学像情報と正解情報が一致又は不一致あるいはその類似度に関する情報が含まれていてもよい。
【0115】
照合部113は、上記のように出力した照合結果を、光学像情報と対応づけて、光学像データ152に記憶してもよい。
【0116】
判定部114は、照合結果に基づいて、細線パターンの真贋判定結果を出力する。例えば、照合結果が一つでも所定の一致条件を満たす場合には、判定部114は、細線パターンが真であるとの判定結果を出力してもよい。また、照合結果が全て一致しない場合には、判定部114は、細線パターンが真であるとの判定結果を出力してもよい。
【0117】
細線パターンの真贋判定をすることは、その細線パターンが付された照合対象製品の真贋判定をすることを意味してもよい。また、生成された照合結果は照合対象製品の真贋判定結果を意味してもよい。
【0118】
表示制御部115は、判定結果を表示装置135に表示制御してもよい。また、表示制御部115は、走査を停止した際には場合には、その旨を表示装置135に表示制御してもよいし、走査を継続中には、その旨を表示装置135に表示制御してもよい。これにより、ユーザは、光の走査に応じて得られる光学像情報に基づいて、上記照合処理と上記判定処理が実行されていることを確認することができる。
【0119】
以上のような構成を有する真贋判定装置100により、照合対象製品の真贋判定を行うことが可能となる。また、RFタグや二次元コードなどの照合対象製品に付されたシリアルコードが複製された場合であっても、細線パターンの真贋判定をすることにより、照合対象製品の真贋判定を行うことも可能となる。
【0120】
照合部113は、照合結果を製品情報読取装置134が取得した製品特定情報とともに商品管理サーバに送信してもよい。商品管理サーバが照合結果を商品管理データに保存することで、各流通拠点の真贋判定装置100から収集した照合結果が記録された商品管理データを構築できる。そして、そのような商品管理データを参照することで、メーカなどは照合対象製品を発送した段階から照合対象製品を追跡することが可能となり、流通過程全体において照合対象製品の真正性を保証することが可能となる。
【0121】
5.2.動作処理
本実施形態の真贋判定装置100は、細線パターンに対して光を走査する照射ステップと、前記細線パターンから反射された反射光がフーリエ変換レンズを通過することで光学像を結像し、前記光の走査に応じて、該光学像に関する光学像情報を取得する撮像ステップと、前記光の走査に応じて得られる光学像情報と、前記光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する照合ステップと、前記照合結果に基づいて、前記細線パターンの真贋判定結果を出力する判定ステップと、を実行する。
【0122】
図3Aに、本実施形態の真贋判定装置100の動作処理のフローチャートの一例を示す。
【0123】
ステップA01において、真贋判定装置100の制御部112は、照射装置131を制御して、照合対象製品に付された細線パターンに対して光を走査する。
【0124】
ステップA02において、この光の走査に応じて細線パターンから反射された反射光がフーリエ変換レンズ132を通過し、真贋判定装置100の撮像装置133は、結像した光学像情報を取得する。ステップA02において、制御部112は、撮像装置133が取得した光学像情報を光学像データ152に記録してもよい。
【0125】
ステップA03において、所定数の走査を行っていない場合には、真贋判定装置100の制御部112は、ステップA01とA02を繰り返して光学像情報をさらに取得し、所定数の走査を行っている場合には、真贋判定装置100の照合部113は、ステップA04を実行する。
【0126】
ステップA01~A03において、真贋判定装置100の製品情報読取装置134は、照合対象製品に付された製品特定情報を取得し、製品特定情報を光学像データ152に記録してもよい。
【0127】
ステップA04において、真贋判定装置100の照合部113は、光の走査に応じて得られる光学像情報と、光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する。この際、照合部113は、正解データ151に記録された正解情報と、光学像データ152に記録された光学像情報と、を照合し、照合結果を出力してもよい。また、照合部113は、光学像データ152に記録された製品特定情報に基づいて、正解データ151に記録された正解情報のなかからその製品特定情報に対応する正解情報を特定し、正解データ151の中から特定した正解情報と、光学像データ152に記録された光学像情報と、を照合し、照合結果を出力してもよい。
【0128】
そして、ステップA05において、真贋判定装置100の判定部114は、照合結果に基づいて、細線パターンの真贋判定結果を出力する。例えば、真贋判定装置100の判定部114は、照合結果の少なくとも一つが所定の一致関係を有する場合に真判定を出力し、照合結果の全てが所定の一致関係を有しない場合に贋判定を出力してもよい。
【0129】
ステップA04において、真贋判定装置100の照合部113が、停止条件を満たすまでで得られた光学像情報のすべてについて照合結果を出力し、ステップA05において、真贋判定装置100の判定部114がそれら照合結果に基づいて細線パターンの真贋判定結果を出力してもよい。
【0130】
また、これに代えて、一つの照合結果を出力して、それについて判定結果を出力するように、ステップA04とステップA05を繰り返してもよい。例えば、ステップA04において、真贋判定装置100の照合部113が一つの光学像情報に対して一つの照合結果を出力し、ステップA05において、真贋判定装置100の判定部114が一つの照合結果に基づいて細線パターンの真贋判定結果を出力する。そして、真判定のときは判定処理を停止し、その結果を真贋判定結果として出力し、贋判定のときはステップA04を繰り返して新たに一つの照合結果を出力し、ステップA05を繰り返して新たな照合結果に基づいて判定処理を実行してもよい。この際、照合結果の少なくとも一つが所定の一致関係を有する場合に、真贋判定装置100の判定部114は判定処理を停止して、真判定を出力する。また、真贋判定装置100の判定部114はすべての照合結果について判定処理を実行しても、照合結果の全てが所定の一致関係を有しない場合に贋判定を出力する。
【0131】
図3Bに、本実施形態の真贋判定装置100の動作処理のフローチャートの他の例を示す。
【0132】
ステップB01において、真贋判定装置100の制御部112は、照射装置131を制御して、照合対象製品に付された細線パターンに対して光を走査する。
【0133】
ステップB02において、この光の走査に応じて細線パターンから反射された反射光がフーリエ変換レンズ132を通過し、真贋判定装置100の撮像装置133は、結像した光学像情報を取得する。ステップB02において、制御部112は、撮像装置133が取得した光学像情報を光学像データ152に記録してもよい。
【0134】
ステップB03において、真贋判定装置100の照合部113は、光の走査に応じて得られる光学像情報と、光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する。具体的な処理については、ステップA04と同様にすることができる。
【0135】
ステップB04において、照合結果が所定の一致関係を満たす照合結果がない場合には、ステップB05において、所定数の走査や照合を行っていない場合には、真贋判定装置100の制御部112と照合部113は、ステップB01~B03を繰り返して、照合結果をさらに取得してもよい。一方で、ステップB05において、所定数の走査や照合を行っている場合には、真贋判定装置100の判定部114は、ステップB06を実行する。
【0136】
また、ステップB04において、照合結果が所定の一致関係を満たす照合結果がある場合には、真贋判定装置100の判定部114は、ステップB06を実行する。
【0137】
ステップB06において、真贋判定装置100の判定部114は、照合結果に基づいて、細線パターンの真贋判定結果を出力する。例えば、真贋判定装置100の判定部114は、照合結果の少なくとも一つが所定の一致関係を有する場合に真判定を出力し、照合結果の全てが所定の一致関係を有しない場合に贋判定を出力してもよい。
【0138】
6.プログラム
本実施形態のプログラムは、真贋判定装置に、細線パターンに対して光を走査する照射ステップと、前記細線パターンから反射された反射光がフーリエ変換レンズを通過することで光学像を結像し、前記光の走査に応じて、該光学像に関する光学像情報を取得する撮像ステップと、前記光の走査に応じて得られる光学像情報と、前記光学像に関する正解情報と、の照合結果を出力する照合ステップと、前記照合結果に基づいて、前記細線パターンの真贋判定結果を出力する判定ステップと、を実行させる。
【0139】
プログラムは、読み取り可能な記録媒体に記録された物であってもよい。なお、本実施形態のプログラムが実行する処理の具体的態様については、上記動作処理で述べているため、ここでは詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0140】
100…真贋判定装置、110…プロセッサ、111…送受信部、112…制御部、113…照合部、114…判定部、115…表示制御部、120…通信インタフェース、130…入出力インタフェース、131…照射装置、132…フーリエ変換レンズ、133…撮像装置、134…製品情報読取装置、135…表示装置、137…スクリーン、140…メモリ、150…ストレージ、151…正解データ、152…光学像データ、160…通信バス、170…筐体、171…窓、172…持ち手、173…トリガー、180…情報処理装置、300…RFタグ、310…透明基材、320…細線、330…細線パターン、340…半導体素子