(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000564
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】電動式昇降装置
(51)【国際特許分類】
B66F 7/06 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
B66F7/06 Z
B66F7/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099284
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】592089799
【氏名又は名称】メタルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】下村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】船木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】金平 諭三
(57)【要約】 (修正有)
【課題】昇降動作の際に生じる横荷重を小さくすることが可能な電動式昇降装置を提供する。
【解決手段】電動式昇降装置1は、電動モーター6と、電動モーター6の回転駆動軸9の軸心周りに回転する回転アーム30と、上下方向に延びるガイドロッド26に支持され昇降する昇降部材5と、一端部が回転アーム30に回動可能に連結され、他端部が昇降部材5に回動可能に連結されたリンク部材35と、を備え、昇降部材5を所定のストロークで昇降させる。回転駆動軸9の中心9aは、回転アーム30が水平位置に回転した際の回転アーム30の先端部32からみて、昇降部材5とリンク部材35との連結中心38aを通る仮想鉛直線41を跨いで反対側の位置に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モーターと、
該電動モーターの回転駆動軸の軸心周りに回転する回転アームと、
上下方向に延びるガイドロッドに支持され昇降する昇降部材と、
一端部が前記回転アームに回動可能に連結され、他端部が前記昇降部材に回動可能に連結されたリンク部材と、
を備え、前記昇降部材を所定のストロークで昇降させる電動式昇降装置であって、
前記回転駆動軸の中心は、前記回転アームが水平位置に回転した際の前記回転アームの先端部からみて、前記昇降部材と前記リンク部材との連結中心を通る仮想鉛直線を跨いで反対側の位置に配置されている、電動式昇降装置。
【請求項2】
前記ガイドロッドの、前記昇降部材と結合している上端よりも下方の部位に外嵌して、その内周面を上下方向所定長さに亘って前記ガイドロッドの外周面と対向させたガイドロッド抱持部材を更に備えている、請求項1に記載の電動式昇降装置。
【請求項3】
前記回転アームにおける前記リンク部材との連結中心と前記回転駆動軸中心とを結ぶ線分が水平である場合において生じる前記ガイドロッドの曲げモーメントと、前記線分が鉛直である場合において生じる前記ガイドロッドの曲げモーメントと、が略等しくなるように、前記仮想鉛直線と前記回転駆動軸中心との距離が定められている、請求項1,2の何れかに記載の電動式昇降装置。
【請求項4】
前記昇降部材の下降端位置および上昇端位置において、前記昇降部材と前記リンク部材との連結中心、前記回転駆動軸中心、および、前記回転アームと前記リンク部材との連結中心が、同一線上となるように構成された、請求項1,2の何れかに記載の電動式昇降装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を上下方向に移動させる電動式昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モーターを使用した電動式昇降装置としては、クランク機構を利用して昇降部材を一定のストロークで上下方向に移動させるものが知られている(例えば下記特許文献1参照)。このような昇降装置は電動モーターの回転駆動軸の中心位置に昇降部材の重心位置を一致させるとともに、電動モーターの回転駆動軸の軸心周りに回転する回転アームを一方向に回転させて上昇端(上死点)と下降端(下死点)の位置で停止するのが一般的である。尚、上昇端と下降端との間の中間位置で昇降部材を停止させた場合でも昇降部材の高さを維持することができるように、また上昇端の位置で外力により回転アームが回転しないように、電動モーターにはブレーキ装置を付属させるのが一般的である。
【0003】
このような昇降装置は、昇降部材が上昇端に位置するときに回転アームが回転中心を下にして垂直に立った状態となり、上死点位置で昇降部材の重量が加わっても回転アームには回転力が作用せず駆動モーターに付属するブレーキ装置に大きな負荷が加わることが無く、正確に高さを位置決めすることができる優れた方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらクランク機構を利用した昇降装置では、昇降動作の際に回転アームを回転させると、回転アームが横向きになるに従って、昇降部材と回転アームとの間に介在させた棒状のリンクが鉛直方向に延びる状態から斜めに傾いた状態となり、この傾きに起因する横荷重が発生する。例えば、この横荷重が横揺れ防止用のガイド部に作用する場合には、ガイド部に横荷重を考慮した強度が必要とされていた。また、昇降部材が上下方向に延びるガイドロッドに支持されている構造の昇降装置であれば、横荷重は上方に延び出したガイドロッドに作用するので、ガイドロッドには曲げモーメントが加わる。このためガイドロッドについては、曲げモーメントを考慮した強度および摩耗対策が必要とされていた。
【0006】
本発明は以上のような事情を背景とし、昇降動作の際に生じる横荷重を小さくすることが可能な電動式昇降装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記のように本発明に想到した。
この発明の第1の局面の電動式昇降装置は次のように規定される。即ち、
電動モーターと、
該電動モーターの回転駆動軸の軸心周りに回転する回転アームと、
上下方向に延びるガイドロッドに支持され昇降する昇降部材と、
一端部が前記回転アームに回動可能に連結され、他端部が前記昇降部材に回動可能に連結されたリンク部材と、
を備え、前記昇降部材を所定のストロークで昇降させる電動式昇降装置であって、
前記回転駆動軸の中心は、前記回転アームが水平位置に回転した際の前記回転アームの先端部からみて、前記昇降部材と前記リンク部材との連結中心を通る仮想鉛直線を跨いで反対側の位置に配置されている。
【0008】
このように規定される第1の局面の電動式昇降装置によれば、回転アームが水平になった場合でのリンク部材の傾きが抑えられるため、リンク部材の傾きに起因して発生する横荷重を小さくすることができる。これにより横荷重を受ける部位の強度が軽減でき、コストダウンを図ることができる。
【0009】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面で規定の電動式昇降装置において、前記ガイドロッドの、前記昇降部材と結合している上端よりも下方の部位に外嵌して、その内周面を上下方向所定長さに亘って前記ガイドロッドの外周面と対向させたガイドロッド抱持部材を更に備えている。
【0010】
このように規定される第2の局面の電動式昇降装置によれば、ガイドロッド抱持部材により、昇降途中及び昇降端でのガイドロッドが伸びた位置で作用する横荷重を小さくしてガイドロッドに加わる曲げモーメントを小さくできる。これによりガイドロッドの強度ダウンと摺動部の摩耗軽減と併せてコストダウンを図ることができる。
【0011】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面または第2の局面で規定の電動式昇降装置において、前記回転アームにおける前記リンク部材との連結中心と前記回転駆動軸中心とを結ぶ線分が水平である場合において生じる前記ガイドロッドの曲げモーメントと、前記線分が鉛直である場合において生じる前記ガイドロッドの曲げモーメントと、が略等しくなるように、前記仮想鉛直線と前記回転駆動軸中心との距離が定められている。
【0012】
仮想鉛直線と回転駆動軸中心との距離が長くなるに従って、回転アームにおけるリンク部材との連結中心と回転駆動軸中心とを結ぶ線分が水平である場合に生じるガイドロッドの曲げモーメントは小さくなるが、前記線分が鉛直である場合に生じるガイドロッドの曲げモーメントは逆に大きくなる。第3の局面の電動式昇降装置によれば、これら2種の曲げモーメントが略等しくなるように、仮想鉛直線と回転駆動軸中心との距離を定めることで、ガイドロッドの曲げモーメントが平均化され、最小限の強度でガイドロッドの太さを設定することができる。
【0013】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面または第2の局面で規定の電動式昇降装置において、前記昇降部材の下降端位置および上昇端位置において、前記昇降部材と前記リンク部材との連結中心、前記回転駆動軸中心、および、前記回転アームと前記リンク部材との連結中心が同一線上となるように構成されている。
【0014】
このように規定される第4の局面の電動式昇降装置によれば、昇降部材の下降端位置および上昇端位置において、回転アームを回転させるように働く外力が回転アームや回転駆動軸に及ぶのを防止することができる。これにより、電動モーターに付属するブレーキへの負荷が軽減され、ブレーキライニングの寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動式昇降装置の縦断面図である。
【
図2】
図1とは異なる方向から示した同電動式昇降装置の縦断面図である。
【
図4】
図1の電動式昇降装置の回転アームを水平になるまで回転させた状態を示した図である。
【
図5】
図1の電動式昇降装置の回転アームを更に上向きになるまで回転させた状態を示した図である。
【
図6】同実施形態の電動式昇降装置に生じる横荷重および曲げモーメントを比較例の電動式昇降装置の場合と比較して示した図である。
【
図7】下降端位置における回転アームの停止位置を異ならせた変形例である。
【
図8】上昇端位置における回転アームの停止位置を異ならせた変形例である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る電動式昇降装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0017】
先ず、本発明の一実施形態に係る電動式昇降装置1について、
図1~
図6を用いて説明する。電動式昇降装置1は、架台フレーム4と、昇降部材5と、電動モーター6と、駆動力伝達手段7と、横揺れ防止手段8と、を備え、所定の下降端位置と上昇端位置との間を昇降部材5が昇降可能に構成されている。
【0018】
架台フレーム4は、下部フレーム10と、下部フレーム10からそれぞれ上向きに延びる4本の支柱11と、支柱11の上端に結合された上部フレーム12とにより、略矩形状に構成されている。架台フレーム4の下部フレーム10および上部フレーム12に、以下で述べる電動式昇降装置1の主要構成部材が取り付けられ、また支持されている。
【0019】
昇降部材5は、架台フレーム4の上部フレーム12よりも上方において昇降する部材である。昇降部材5上には搬送物Wが保持可能とされ、必要に応じて隣接して設けられたコンベア装置15との間で搬送物Wの受渡しを行うことができる。
昇降部材5は、ベース部材20と、ベース部材20の上面から上向きに突出させた一対のローラ支持部材21と、一対のローラ支持部材21の内側に互いに対向して設けられた複数のガイドローラ22と、を備えており、
図1,2で示すようにガイドローラ22にて搬送物Wが保持されている。
【0020】
昇降部材5のベース部材20は平面視略四角板状とされており、
図3で示すようにその四隅の隅角部近傍にはそれぞれ上下方向に延びるガイドロッド26の上端が結合されて、昇降部材5はガイドロッド26とともに上下方向に沿って昇降可能に構成されている。
【0021】
本実施形態では、
図1で示すように、電動式昇降装置1に隣接して2段構造のコンベア装置15が設けられており、昇降部材5は、その下降端位置(
図1で示す昇降部材5の位置)においてパスラインの高さがコンベア装置15の下側コンベア16Bと同じになり、また上昇端位置(
図5で示す昇降部材5の位置)においてパスラインの高さが上側コンベア16Aと同じになる。これによりコンベア16Aもしくは16Bとの間で搬送物Wの受渡しが可能となる。
【0022】
駆動力伝達手段7は、回転アーム30と、第1の軸ピン33と、リンク部材35と、第2の軸ピン38と、を含んで構成されており、電動モーター6と昇降部材5との間に介在して電動モーター6の駆動力を昇降部材5に伝達する。
【0023】
回転アーム30は、平面視略長円形状の2つの板材30aが板厚方向に間隔を隔てて一体に結合された部材である。回転アーム30は、長手方向の一方の端部近傍において電動モーター6の出力軸である回転駆動軸9に結合されており、回転駆動軸9の軸心周りに一体に回転する。回転アーム30の他方の端部近傍であって、回転アーム30の回転中心9aから距離R(
図4参照)だけ離れた位置には、2つ板材30a,30aを跨ぐように円柱状の第1の軸ピン33が取り付けられており、第1の軸ピン33を介してリンク部材35の一端側が回動可能に連結されている。
また、これは2つの板材30aに第1の軸ピン33の両端が支持された両端支持梁の構造となっている。
【0024】
リンク部材35は断面四角形状をなして、上下方向に延びる棒状部材で、上部および下部において、所定長さに範囲が「くの字状」に屈曲されている。これらのくの字状の屈曲は、回転アーム30が回転する仮想平面に沿って曲げられている。
これらのくの字状の屈曲によって回転アーム30が鉛直方向に垂下されたときに、リンク部材35が回転駆動軸9に接触しないよう構成されている。
本実施形態では、前述のように両端支持梁の構造であって、回転アーム30とリンク部材35とが仮想上の同一平面内で相対的に正逆方向に回動するように構成されている(
図2参照)。そのため、従来例として存在する回転アームにあるような、連結軸の一端を回転アームに固定した片持ち梁構造よりも、第1の軸ピン33における曲げモーメントの発生が抑制されている。
リンク部材35の他端側は上向きに延びて、円柱状の第2の軸ピン38を介して昇降部材5の連結片部23に回動可能に連結されている。ここで、昇降部材5の連結片部23は昇降部材5の重心位置もしくはその近傍位置においてベース部材20の下面から下向きに延び出している。
【0025】
本実施形態では、電動モーター6としてブレーキ付きの電動モーターを用いている。ここでのブレーキトルクは、昇降動作に際し電動モーターが発生させる駆動用回転トルクよりも1.5倍程度大きくすることが望ましい。電動モーター6は、
図1で示す下降端位置から昇降部材5を上昇させる場合に、回転駆動軸9を時計回転方向に180°回転させる。また
図5で示す上昇端位置から昇降部材5を下降させる場合に、回転駆動軸9を反時計方向に180°回転させる。従って電動モーター6の動作は、回転駆動軸9の回転角度に基づいて制御される。回転角度の検出は、例えば、回転駆動軸9に回転角度検出器を設けて行うことができる。また回転アーム30の先端部分に突起(検出部)を設けて、これを近接スイッチ、リミットスイッチ等により検出することも可能である。
【0026】
ここで本実施形態では、
図1で示すように、回転駆動軸9の軸方向に沿った方向から視認したとき、回転駆動軸9の中心9aは、回転アーム30が水平位置に回転した際の回転アーム30の先端部32からみて、昇降部材5とリンク部材35との連結中心38aを通る仮想鉛直線41を跨いで反対側の位置に配置されている。詳しくは、回転駆動軸中心9aが仮想鉛直線41から図中右側に水平方向距離δだけ離れた位置に配置されている。このようにすることで、
図4で示す回転アーム30が水平位置に回転した状態(詳しくは、回転アーム30におけるリンク部材35との連結中心33aと、回転駆動軸中心9aとを結ぶ線分が水平となった状態)において、リンク部材35の両端に設けられた2つの連結中心33a,38aの水平方向距離αが(回転駆動軸9を図中右側に距離δずらした分だけ)短くなり、リンク部材35の傾きθが抑えられるため、リンク部材35の傾きに起因して発生する横荷重を小さくすることができる。
【0027】
但し、水平方向距離δを長くした場合は、
図5で示す回転アーム30が鉛直方向上向きとなった状態(詳しくは、回転アーム30におけるリンク部材35との連結中心33aと、回転駆動軸中心9aとを結ぶ線分が鉛直方向上向きとなった状態)におけるガイドロッド26の曲げモーメントは大きくなる。このため本実施形態では、これら2種の曲げモーメントが略等しくなるように、水平方向距離δが定められている。
ここで曲げモーメントが略等しいとは、回転アーム30が水平位置に回転した状態において生じるガイドロッド26の曲げモーメント対比で、回転アーム30が鉛直方向上向きとなった状態において生じるガイドロッド26の曲げモーメントが、前記水平となった状態での曲げモーメントの例えば90%~110%の範囲内であることを意味する。
【0028】
横揺れ防止手段8は、ガイドロッド26と、ガイドロッド26に外嵌するガイドロッド抱持部材50とで構成されている。
ガイドロッド26は、上下方向に延びる円柱状部材で、その一端(上端)が昇降部材5に結合されており、昇降部材5とともに上下方向に移動可能とされている。昇降部材5が下降端位置にあるとき、
図1で示すように、ガイドロッド26の下端部は下部フレーム10に形成された逃がし穴27内に収容され、ガイドロッド26の下端部と下部フレーム10との干渉が回避されている。
【0029】
ガイドロッド抱持部材50は、鍔部51を有する略円筒状の部材で、鍔部51の下面を上部フレーム12の上面に当接させた状態で上部フレーム12に取り付けられており、ガイドロッド抱持部材50の内部をガイドロッド26が挿通する。
【0030】
ガイドロッド抱持部材50は、上部フレーム12に取り付けられた状態で、上部フレーム12の上面よりも上方に延び出し、また上部フレーム12の下面よりも下方に延び出している。ガイドロッド抱持部材50は、ガイドロッド26が下降端(
図1参照)、上昇端(
図5参照)の何れにある場合でも、ガイドロッド抱持部材50の内周面が上下方向所定長さに亘ってガイドロッド26の外周面と対向しており、ガイドロッド26の上下方向の移動を許容する一方、ガイドロッド26の横方向の移動を規制する。またガイドロッド抱持部材50は、昇降途中及び昇降端でのガイドロッド26が伸びた位置で作用する横荷重を小さくしてガイドロッド26に加わる曲げモーメントを小さくできるので、ガイドロッド26の強度ダウンと摺動部の摩耗軽減と併せてコストダウンを図ることができる。
【0031】
次に、電動式昇降装置1の昇降動作について説明する。
図1で示すように、昇降部材5が下降端位置にある状態において、軸ピン33は電動モーター6の回転駆動軸9の略真下に位置している。この状態から電動モーター6により時計回転方向(正転方向)に回転アームを回転させると、駆動力伝達手段7を介して昇降部材5が上昇する。回転アーム30は、
図4で示す横向き(水平)の状態を経て、
図5で示す上向きの状態まで回転する。このときの
図5で示す昇降部材5の位置が上昇端位置である。下降端位置から上昇端位置までのストロークは、回転アーム30の軸間距離R(
図4参照)の2倍である。上昇端位置に到達した後は、電動モーター6のブレーキ力を働かせることでその位置が維持され、上側コンベア16Aとの間での搬送物Wの受渡しが実施される。
その後、この上昇端位置から回転アーム30を反時計方向(逆転方向)に回転させることで、昇降部材5を当初の下降端位置まで下降させることができる。
【0032】
図6は本実施形態の電動式昇降装置1に生じる横荷重および曲げモーメントを比較例の電動式昇降装置の場合と比較して示した図である。同図において(イ)は本実施形態の電動式昇降装置1を示し、(ロ)は比較例としての電動式昇降装置100を示している。
【0033】
比較例としての電動式昇降装置100は、昇降部材5とリンク部材35との連結中心38aと、回転駆動軸中心9aとが同一鉛直線上に配置されていること、および、昇降動作時における回転アーム30の回転方向が1方向(正転方向)のみであること、が電動式昇降装置1との相違点である。
【0034】
また、比較例の電動式昇降装置100場合、回転アーム30を一方向に回転させるため、回転アーム30とリンク部材35とを同一平面内でなく連結軸(第1の軸ピン33の軸心)方向にずらした片持ち梁構造の構成としなければならない。さらに、比較例では、図示はしないが、電動モータ6の出力軸に対して先端側に回転駆動軸9が取り付けられ、回転駆動軸9のさらに先端側端部に回転アーム30が組付けられる。この回転アーム30が組付けられる位置は、本件電動式昇降装置1と比較して、電動モータ6の出力軸の先端側のより遠い位置になっている。そのため、比較例では、電動モータ6の出力軸に大きな曲げモーメントが負荷される。その結果、連結軸や電動モータ6の出力軸に剛性の大きなものが必要となって、装置の大型化や製造コストアップを生じる。
なお、
図6の各例において、リンク部材35に作用する下向きの積載荷重は、いずれも15kNである。
【0035】
まず回転アーム30が水平である場合における横荷重および曲げモーメントを比較してみる。
図6(A)の(ロ)で示すように、比較例の電動式昇降装置100におけるリンク部材35の傾きは17°で、この傾きによって生じる横荷重は4.46kNである。また上方に延び出したガイドロッド26に作用する曲げモーメントは124.9kN・cmである。なお比較例の電動式昇降装置100の場合、上昇時と下降時で逆向きの横荷重(共に4.46kN)が発生している。
【0036】
これに対し、
図6(A)の(イ)で示すように、本実施形態の電動式昇降装置1におけるリンク部材35の傾きは11°である。比較例に比べて傾きが小さく抑えられており、この傾きによって生じる横荷重は2.96kNである。またガイドロッド26に作用する曲げモーメントは82.9kN・cmである。即ち、リンク部材35の傾きに起因して生じる横荷重は、比較例の66%にまで抑えられていることが分かる。
【0037】
次に、回転アーム30が鉛直方向上向きである場合における横荷重および曲げモーメントを比較してみる。
図6(B)の(ロ)で示すように、比較例の電動式昇降装置100の場合、回転駆動軸中心9aとリンク部材両端の連結中心33a,38aが同一鉛直線上に位置しているため横荷重は発生しない。
【0038】
これに対し、
図6(B)の(イ)で示すように、本実施形態の電動式昇降装置1におけるリンク部材35の傾きは6°で、この傾きによって生じる横荷重は1.5kNである。このときガイドロッド26に作用する曲げモーメントは81kN・cmである。
図6(B)の(イ)の例は、昇降部材5が上昇端位置にあるため、ガイドロッド抱持部材50の上端から延び出すガイドロッド26の長さは最大である。このため、横荷重が発生する場合には曲げモーメントも大きくなり易いが、本実施形態の電動式昇降装置1における曲げモーメントは81kN・cmであり、回転アーム30が水平である場合の曲げモーメント82.9kN・cmと略同等レベルである。
【0039】
図6で示されたこれらの結果から、本実施形態の電動式昇降装置1によれば、比較例の電動式昇降装置100に比べて、リンク部材の傾きによって生じる最大横荷重およびガイドロッドに作用する最大曲げモーメントが、いずれも低く抑えられていることが分かる。
【0040】
以上のように本実施形態の電動式昇降装置1によれば、回転アーム30が水平になった場合でのリンク部材35の傾きが抑えられるため、リンク部材35の傾きに起因して発生する横荷重を小さくすることができる。これにより横荷重を受ける部位の強度を軽減でき、コストダウンを図ることができる。
【0041】
本実施形態の電動式昇降装置1によれば、ガイドロッド26の、昇降部材5と結合している上端よりも下方の部位に外嵌するガイドロッド抱持部材50により、ガイドロッド26の外周面が上下方向所定長さに亘って支持されているため、ガイドロッド26における曲げモーメントが働く部位の長さLが短くなり、ガイドロッド26に加わる曲げモーメントを小さくすることができる。これによりや摺動部の摩耗を軽減することができ、ガイドロッド26における強度や摩耗対策の軽減によるコストダウンを図ることができる。
【0042】
本実施形態の電動式昇降装置1によれば、回転アーム30における連結中心33aと回転駆動軸中心9aとを結ぶ線分が水平である場合において生じるガイドロッド26の曲げモーメントと、前記線分が鉛直である場合において生じるガイドロッド26の曲げモーメントと、が略等しくなるように、水平方向距離δが定められている。これにより、ガイドロッド26の曲げモーメントが平均化され、最小限の強度でガイドロッド26の太さを設定することができる。
【0043】
なお本実施形態では、回転アーム30とリンク部材35との連結中心33aが真下に位置する状態を下降端位置、連結中心33aが真上に位置する状態を上昇端位置としたが、下降端位置および上昇端位置における回転アーム30の停止位置(即ち、連結中心33aの周方向の位置)は変更可能である。
例えば、
図7で示すように、昇降部材5が所定の下降端位置にある場合において、昇降部材5とリンク部材35との連結中心38a、回転駆動軸中心9a、および、回転アーム30とリンク部材35との連結中心33aが同一線上となるように構成することも可能である。
【0044】
更に、
図8で示すように、昇降部材5が所定の上昇端位置にある場合においても同様に、昇降部材5とリンク部材35との連結中心38a、回転駆動軸中心9a、および、回転アーム30とリンク部材35との連結中心33aが同一線上となるように構成することも可能である。
【0045】
このようにすることで、昇降部材5の下降端位置および上昇端位置において、回転アーム30を回転させるように働く外力が回転アーム30や回転駆動軸9に及ぶのを防止することができる。これにより、電動モーター6に付属するブレーキへの負荷を軽減され、ブレーキライニングの寿命を延ばすことができる。
【0046】
次に、
図9は本発明の他の実施形態に係る電動式昇降装置の縦断面図である。
同図で示す電動式昇降装置1Bは、架台フレーム4Bと、昇降部材5Bと、電動モーター6と、駆動力伝達手段7Bと、横揺れ防止手段8と、を備えている。これらの構成各部のうち、上記実施形態に係る電動式昇降装置1の構成と共通する構成については同じ符号を用いて示すとともに、その説明を省略する。
【0047】
本実施形態の電動式昇降装置1Bでは、搬送物Wを保持して、隣接するコンベア装置15との間で搬送物Wの受渡しを行う昇降部材5Bが、架台フレーム4Bの下方に設けられている。電動モーター6、駆動力伝達手段7B、横揺れ防止手段8等の主要構成部品は、基台13上に設けられた架台フレーム4Bに取り付けられ、また支持されている。
【0048】
図9は、昇降部材5Bが下降端位置にある状態を示している。昇降部材5Bには駆動力伝達手段7Bを介して電動モーター6の駆動力が伝達されるように構成されており、駆動力伝達手段7Bの一部を構成する回転アーム30を同図における時計回転方向に回転させることにより、昇降部材5Bを上昇端位置まで移動させることができる。
【0049】
ここで本実施形態では、
図9で示すように、回転駆動軸9の軸方向に沿った方向から視認したとき、回転駆動軸9の中心9aは、回転アーム30が水平位置に回転した際の回転アーム30の先端部32からみて、昇降部材5Bとリンク部材35との連結中心38aを通る仮想鉛直線41を跨いで反対側の位置に配置されている。詳しくは、回転駆動軸中心9aが仮想鉛直線41から図中右側に水平方向距離δだけ離れた位置に配置されている。このため、本実施形態においても回転アーム30を水平した場合におけるリンク部材35の傾きが抑えられ、リンク部材35の傾きに起因して発生する横荷重を小さくすることができる。
【0050】
以上本発明の実施形態について詳述したが、本発明はこれらの説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1,1B…電動式昇降装置
5…昇降部材
6…電動モーター
9…回転駆動軸
9a…回転駆動軸中心
26…ガイドロッド
30…回転アーム
32…先端部(回転アームが水平位置に回転した際の)
33a…連結中心
35…リンク部材
38a…連結中心
41…仮想鉛直線
50…ガイドロッド抱持部材