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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056402
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ポリエステル製スクイズボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B65D1/02 220
B65D1/02 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163254
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 将
(72)【発明者】
【氏名】村屋 美子
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 正敏
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 要
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA14
3E033BA17
3E033BA18
3E033BB08
3E033CA16
3E033DA04
3E033DB01
3E033EA04
3E033FA03
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】ポリエステル製スクイズボトルに特有のスクイズ後の胴部の原形復帰の問題を有効に解消すること。
【解決手段】首部1、肩部3、胴部5、およびカップ形状の底部7を備えているポリエステル製スクイズボトル20において、胴部5は、下端が最大外径Dを示し、肩部3の下端外径dが、胴部5の最大外径Dの60~80%の範囲にあり、胴部5は、胴部5の下端から上方に延びているスクイズ部SQを有しており、スクイズ部SQの上端が肩部3の下端外径dと同じ外径を有していると共に、胴部5の上端と下端とを結ぶ仮想基準直線Yに対しての最大間隔tが2.0~5.0mmとなるように、スクイズ部SQの外面Xはくびれた湾曲形状を有しており、スクイズ部SQの軸方向長さhは、底部7の下端の接地部7’から肩部3の上端までのハイトHに対して10~90%の範囲にあることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
首部、該首部に連なる肩部、肩部の下端に連なる胴部、および胴部の下端に連なるカップ形状の底部を備えているポリエステル製スクイズボトルにおいて、
前記胴部は、下端が最大外径Dを示し、前記肩部の下端外径dが、該胴部の最大外径Dの60~80%の範囲にあり、
前記胴部は、該胴部の下端から上方に延びているスクイズ部を有しており、該スクイズ部の上端が前記肩部の下端外径dと同じ外径を有していると共に、
前記胴部の上端と該胴部の下端とを結ぶ仮想基準直線に対しての最大間隔tが2.0~5.0mmとなるように、該スクイズ部の外面はくびれた湾曲形状を有しており、
前記スクイズ部の軸方向長さhは、前記底部の下端の接地部から前記肩部の上端までのハイトHに対して10~90%の範囲にあることを特徴とするスクイズボトル。
【請求項2】
ポリエステル製スクイズボトルが300mL以下の容量である請求項1に記載のスクイズボトル。
【請求項3】
前記スクイズ部の下端と前記底部の上端との間には、下部変形規制領域となる周状溝が形成されている請求項1に記載のスクイズボトル。
【請求項4】
前記スクイズ部の全面にわたって、曲線状または直線状のリブから外周線が形成されている形状の基本単位面が周方向および/または軸方向に配列されている請求項1に記載のスクイズボトル。
【請求項5】
前記基本単位面の外周線は、軸方向に延びている直線を含んでいない請求項4に記載のスクイズボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル製スクイズボトルに関するものであり、より詳細には、胴部の上端径が下端径よりも小さい鶴首形状を有するポリエステル製スクイズボトルに関し、特に300mL以下の小容量のボトルに好適に使用されるポリエステル製スクイズボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年において、スポーツドリンクなどの飲料を喫飲するためのボトルとしてスクイズボトルが汎用されている。このようなボトルは、胴部を押圧して凹ますことにより、ボトル内の飲料がボトル口部より排出されるため、ボトルを傾けることなく、ボトル内の飲料を喫飲することができるというものである。このようなスクイズボトルでは、胴部の押圧を解除すると、凹まされた胴部が原形(凹む前の形態)に弾性復帰することとなる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の様なスクイズボトルは、所謂エアレスボトルの外容器としても使用されている(例えば、特許文献2,3参照)。
エアレスボトルは、内袋容器と外容器とからなる二重構造を有しており、醤油等の調味液が収容される容器として、逆止弁付のキャップと組み合わせで使用されている。即ち、スクイズボトルである外容器の胴部壁を外部からスクイズして凹ませることにより、内袋容器に充填されている内容液がキャップに形成されている注出路から排出される。ボトル(外容器)の胴部壁の押圧を停止することにより内容液の排出を終了させると、逆止弁の作用により、空気は内袋容器には導入されず、キャップの注出路とは異なる流路を通って、内袋容器と外容器との間の空間に導入されることとなる。これにより、内袋容器は、内容液が排出された分だけ収縮することとなり、内容液を排出する毎に、内袋容器が収縮していく。このような方法により内容液が排出されるエアレスボトルでは、内容液を小出しできると共に、内容液が充填されている内袋容器への空気の侵入が有効に防止されるため、内容液の酸化劣化を有効に回避でき、内容液の鮮度を長期間にわたって保持できるという利点がある。
【0004】
ところで、上述したスクイズボトルは、特許文献2のように、スクイズする胴部がストレートな直胴形状となっているタイプのものは少なく、一般的には、特許文献1,3のように、スクイズする胴部がくびれて凹んだ部分となっているタイプのものが一般的である。しかるに、胴部形状にかかわらず、ポリエステル製のスクイズボトルでは、スクイズを繰り返すうちに、スクイズ終了後の原形復帰が困難になるという問題があり、特にボトル容積が小容量の場合には、この問題が顕著となる。例えば、ポリエステル製スクイズボトルでは、スクイズして胴部を凹ませた後、スクイズを終了させたとき(押圧停止)、凹ませた部分がきれいに原形復帰せず、歪んだ形に不規則に変形したり、折り目もしくはシワがついてしまうなどの不都合が生じており、特にボトル容量が300mL以下の小容量ボトルでは、この問題が顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-107779号公報
【特許文献2】特許第6879226号公報
【特許文献3】特開2022-26891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、ポリエステル製スクイズボトルに特有のスクイズ後の胴部の原形復帰の問題が有効に解消されたスクイズボトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、首部、該首部に連なる肩部、肩部の下端に連なる胴部、および胴部の下端に連なるカップ形状の底部を備えているポリエステル製スクイズボトルにおいて、
前記胴部は、下端が最大外径Dを示し、前記肩部の下端外径dが、該胴部の最大外径Dの60~80%の範囲にあり、
前記胴部は、該胴部の下端から上方に延びているスクイズ部を有しており、該スクイズ部の上端が前記肩部の下端外径dと同じ外径を有していると共に、
前記胴部の上端と該胴部の下端とを結ぶ仮想基準直線に対しての最大間隔tが2.0~5.0mmとなるように、該スクイズ部の外面はくびれた湾曲形状を有しており、
前記スクイズ部の軸方向長さhは、前記底部の下端の接地部から前記肩部の上端までのハイトHに対して10~90%の範囲にあることを特徴とするスクイズボトルが提供される。
【0008】
本発明においては、次の態様が好適に採用される。
(1)前記ポリエステル製スクイズボトルが300mL以下の容量である。
(2)前記スクイズ部の下端と前記底部の上端との間には、下部変形規制領域となる周状溝が形成されている。
(3)前記スクイズ部の全面にわたって、曲線状または直線状のリブから外周線が形成されている形状の基本単位面が周方向および/または軸方向に配列されている。
(4)前記基本単位面の外周線は、軸方向に延びている直線を含んでいない。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリエステル製スクイズボトルは、スクイズ後の原形復帰が不規則にならず、安定して変形前の形状に復帰する。即ち、常に同じ形態のボトル胴部をスクイズ(押圧)することにより、内容液を排出することができるため、スクイズによる内容液の排出を安定的に行うことができる。特に容量が300mL以下と小容量の場合にも、原形復帰は安定して規則的に行われる。
【0010】
本発明は、単一壁構造の通常の飲料用スクイズボトルに適用できるが、特に容量が300mL以下でも原形復帰の問題が解決されていることから、内容液の小出しに適したエアレスボトル(二重壁構造)の外容器としての用途に極めて適している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のスクイズボトルの代表的な形態を示す側面図。
図2図1のスクイズボトルのスクイズ部を拡大して示す図。
図3】従来公知のスクイズボトルの形態を示す側面図。
図4】本発明のスクイズボトルの形態の例を示す側面図。
図5】本発明のスクイズボトルの形態の他の例を示す側面図。
図6】本発明のスクイズボトルを外容器として用いた二重構造容器の概略側断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、本発明のスクイズボトルは、全体として20で示されており、基本形態として、直胴形状の首部1、首部1に連なる肩部3、肩部3の下端に連なる胴部5、胴部5の下端に連なる底部7とを備えている。また、かかるスクイズボトル20では、その平断面形状は、円形或いはほぼ円形に近い楕円形状となっている。
【0013】
上記の首部1は、これに装着するキャップ(図示せず)の形態に応じて、外面にネジが形成されていてもよいし、また、図1で示されているよりも長いものであってよい。
【0014】
また、肩部3は、首部1の下端から下方に延びている湾曲した形状を有しており、下端の外径dが最も大きい。即ち、肩部3の下端の外面は、変曲点となっている。
【0015】
さらに、肩部3の下端に連なる胴部5は、その上端外径が肩部3の下端外径dに相当し、胴部5の下端外径Dが、胴部5での最大外径となっている。
【0016】
上記胴部5の下端に連なる底部7は、カップ形状を有しており、その下端面7’が接地面となっている。また、図示されていないが、底部7の下端面7’は、通常、周縁部が接地面となっており、中央部分が若干盛り上がった上げ底形状を有している。
【0017】
上記の様な基本形態を有する本発明のスクイズボトル20では、胴部5には、湾曲形状のスクイズ部SQが形成されており、このスクイズ部SQを手で押圧して凹ませ、同時にボトルを下方に傾けることにより、ボトル内に収容された内容物が首部1を通して排出される。押圧を停止すると、胴部5のスクイズ部SQは、凹んだ形態から原形に復帰するという基本特性を示す。
【0018】
上記の様な形態のスクイズボトル20は、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステル等を用いてのブロー成形、チューブ成形等の公知の方法によって製造できる。
【0019】
さらに、スクイズボトル20は、ポリエステルを用いての単層構造に限定されるものではなく、エチレン-ビニルアルコール共重合体や芳香族ポリアミドなどのガスバリア性に優れた樹脂を中間層とする多層構造を有していてもよい。勿論、多層構造を形成するにあたっては、必要に応じて、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸によって編成された酸変性オレフィン系樹脂を接着剤層として用いることもできる。
【0020】
本発明において、このようなスクイズボトル20の容量は、300mL以下の小容量であることが好適である。この容量は、通常、内容物の収容空間となる首部1の下端よりも下方のボトル内空間を意味する。即ち、上述したポリエステルを用いて成形されたスクイズボトル20では、スクイズ部SQを押圧して凹ませて内容物を排出した後、押圧(スクイズ)を停止したとき、スクイズ部SQが原形に復帰せず、不規則に変形してしまったり、場合によっては折り目もしくはシワがついてしまうなどの不都合が生じ易い。さらには、スクイズして凹ませたときの変形も不規則となる傾向がある。このような不都合は、ポリオレフィン製のスクイズボトルではほとんど問題とならないが、ポリエステル製のスクイズボトルは、ポリオレフィン製のボトルに比して可撓性が乏しく、このような性質の相違により、上記の様な不都合が生じるものと考えられる。特に、ボトル容量が少量となるほど(例えば300mL以下)、この傾向が顕著である。本発明では、このような不都合を改善するために、以下に述べるような種々の手段を採用する。
【0021】
先ず、スクイズ部SQを有する胴部5の下端の外径Dは、胴部5(或いはスクイズボトル20)での最大外径となっており、肩部3の下端外径d(胴部5の上端外径に相当)よりもかなり大きく、肩部3の下端外径dは、最大外径Dの60~80%、特に65~75%となっている。即ち、内容物が排出される首部1側が小径であり、底部7側が大径であり、所謂、鶴首形態を有している。
【0022】
即ち、スクイズボトル20では、胴部5を凹ませると、胴部5の全体が変形する。このような変形が大きくなるほど、押圧を停止したときの原形復帰が阻害され、不規則変形や折り目もしくはシワの形成をもたらすものと考えられる。例えば、ボトル容量が300mL以下のように小容量となると、内容物排出のために押圧される胴部5の領域(スクイズ部SQ)が占める割合が大きくなるため、胴部5の全体が大きく変形し、塑性変形となり、原形復帰がより困難となる。本発明では、ボトル20の形態を上記の様な鶴首形態とすることにより、胴部5を押圧して凹ませたときの変形の程度を小さくし、これにより、上記の様な不規則変形や折り目もしくはシワの形成を抑制するものである。
【0023】
例えば、肩部3の下端外径d(胴部5の上端外径)の最大外径Dに対する割合が上記範囲よりも大きくなると(最大外径Dに近くなる)、鶴首形態が損なわれ、胴部5(スクイズ部SQ)を所定の押圧で凹ませたときの胴部5の変形量が小さくなり、所定の変形量を超えると塑性変形が発生しやすくなり、押圧を停止したときの原形復帰が阻害され、不規則変形や折り目もしくはシワが生じ易くなってしまう。また、外径dの最大外径Dに対する割合が上記範囲よりも小さくなると、首部1が過度に絞られた形態となり、内容物の排出性が損なわれるおそれがある。
【0024】
また、胴部5に形成されているスクイズ部SQは、胴部5の下端から延びており、湾曲したくびれ形状を有しており(即ち、ストレートな部分を有していない)、その上端の外径は、肩部3の下端外径d(胴部5の上端外径)と同じである。即ち、図1に示されているように、肩部3の下端からスクイズ部SQの上端までの領域は、胴部5の上部領域5’であり、この領域5’では、胴部5の外面は、基本的にストレートな形態となっている。勿論、このようなストレートな領域5’が存在せず、スクイズ部SQの上端が胴部5の上端(肩部3の下端)であってよい。特に小容量ボトルでは、スクイズ部SQを大きくとれるという点で、ストレートな領域5’が存在しない形態が好ましい。
【0025】
本発明において、上記のスクイズ部SQの外面Xは、図2の拡大図に示されているように、胴部5の上端と下端とを結ぶ仮想基準直線Yに対して内側に位置するように湾曲しており、外面Xと仮想基準直線Yとの最大間隔tが2.0~5.0mmとなるように、外面Xのくびれ形状が設定されている。
尚、この外面Xと仮想基準直線Yとの間隔とは、仮想基準直線Yから引いた垂線で示される外面Xと仮想基準直線Yとの距離を意味する。また、後述する基本単位面がスクイズ部SQに配列されている場合、突出している部分を外挿した湾曲線が側面Xを示すものとする。
【0026】
また、スクイズ部SQを押圧して凹ませたとき、これに伴い、外方に突出する部分が生じるが、このような外方突出部において、最大に突出する部分は、曲線Zで示される。この曲線Zからも理解されるように、鶴首形態とし、外面Xと仮想基準直線Yとの最大間隔tが上記範囲に設定されている本発明のスクイズボトル20では、スクイズ部SQを押圧して凹ませたときに生じる変形の度合が非常に小さく設定される。このため、押圧を停止したときの原形復帰がスムーズとなり、不規則変形や折り目もしくはシワの形成を有効に抑制できる。なお、ボトル肩部と下胴部を結ぶ接線を境にしてスクイズによる最大間隔(t)との変位量(XとZ)をなるべく同等にする必要がある。そのため、くびれ量(YからXまでの距離)を大きくして最大変形位置から曲線まで(ZからYまでの距離)を少なくすることで復元をし易くすることができる。
本発明において、最大間隔tが上記範囲よりも大きいと、スクイズ部SQを押圧して凹ませたときのスクイズ部SQの外方への変形も大きくなってしまい、押圧を停止したときの原形復帰が損なわれ、不規則変形が生じたり、折り目もしくはシワが形成され易くなる。また、最大間隔tが上記範囲よりも小さいと、凹みも小さくなり、スクイズによる内容物の排出性が損なわれてしまう。
【0027】
尚、図3には、スクイズ部SQの上端径dと下端径Dとが同一となっている従来公知のスクイズボトル(即ち、鶴首形態を有していないボトル)を示したが、このようなボトルでは、良好なスクイズ性を確保しようとすると、上記の様な曲線Zが大きく外側に膨らみ、スクイズ部SQを所定の押圧で凹ませたときの胴部5の変形量が大きくなり、所定の変形量を超えると塑性変形が発生しやすくなるため、スクイズ部SQの外方への変形が大きくなってしまう。即ち、押圧を停止したときの原形復帰が損なわれ、不規則変形が生じたり、折り目もしくはシワが形成されやすくなってしまう。
【0028】
本発明において、上述したスクイズ部SQの軸方向長さhは、底部7の下端の接地部7’から肩部3の上端(首部1の下端)までのハイトHに対して、10~90%、特に15~85%の範囲にあることが必要である。即ち、この長さhが必要以上に短いと、スクイズによる内容物の排出が困難となり、長さhが過度に長いと、スクイズしたとき、肩部3までもが凹んでしまうなどの不都合を生じ易く、この場合にも、スクイズ(押圧)を停止したときの原形復帰が損なわれ易くなってしまう。
【0029】
また、スクイズ部SQの下端(胴部5の下端に相当)と底部7の上端7”との間には、図1に示されているように、周状溝9を形成することができる。かかる周状溝9は、スクイズ部SQを押圧して凹ませたとき、下部(底部7)の変形を確実に抑制する下部変形規制領域として機能する。
【0030】
さらに、スクイズ部SQの上端と肩部3の下端(胴部5の上端に相当)との間の胴部外面Xにも、周状溝11を設けることができる。かかる周状溝11は、スクイズ部SQを押圧して凹ませたとき、上部(肩部3)の変形を確実に抑制する上部変形規制領域として機能する。
【0031】
上記の様な周状溝9,11は、一本に限定されず、複数本設けることもできる。因みに、図1では、下部変形規制領域として機能する周状溝9は1本設けられているが、上部変形規制領域として機能する周状溝11は3本設けられている。
本発明において、スクイズボトル20の容量が300mL以下の小容量であるときには、周状溝11が形成されている上部変形領域が設けられていないことが好適である。
【0032】
本発明においては、さらに、スクイズ部SQの全面にわたって、曲線状または直線状のリブから外周線が形成されている形状の基本単位面が周方向および/または軸方向に配列されていることが好ましい。このような基本単位面が多数配列されている場合には、スクイズ部SQを押圧して凹ませたとき、応力が種々の方向に分散され、一定の方向に集中し難いため、スクイズ(押圧)を停止したときの原形復帰がスムーズになり、折り目もしくはシワも形成され難くなる。また、スクイズ(押圧)に際しても適度な触感を与え、滑り止めにもなるため、常に一定の押圧力で凹ませることができ、スクイズ性が良好となり、内容物を安定に排出することができる。
【0033】
図4及び図5には、このようなリブによって形成された基本単位面の形態の種々の例を示す。
図4及び図5においては、スクイズ部SQの形態以外の部分は、全て同一の形態のボトルが示されている。
【0034】
図4において、(a)は、スクイズ部SQに基本単位面が配列されていないプレーン模様の例である。
(b)では、軸方向に延びている直線状のリブ13が周方向に間隔を置いて形成されており、縦長形状の基本単位面15が周方向に配列されている(縦リブ模様)。
(c)では、多数の直線状のリブ13が斜めにクロスして形成されており、菱形形状の基本単位面15が軸方向及び周方向に配列されている(斜めリブクロス模様)。
(d)では、多数の直線状のリブ13により三角形状の構成単位面15が軸方向及び周方向に配列されている(三角形模様)。
【0035】
図5において、(e)は、多数の直線状のリブ13により五角形及び六角形状の構成単位面15が軸方向及び周方向に配列されている(五角形・六角形模様)。
(f)では、多数の直線状のリブ13により六角形状の構成単位面15が軸方向及び周方向に配列されている(六角形模様)。
(g)では、多数の曲線状のリブ13により丸形状の基本単位面15が軸方向及び周方向に配列されており、所謂丸模様が直列に配列された形態となっている(丸模様直列配列)。
(h)では、多数の曲線状のリブ13により丸形状の構成単位面15が軸方向及び周方向に配列されているが、上下の構成端面の配列に位相差があり、所謂丸模様が千鳥状に配列された形態となっている(丸模様千鳥配列)。
【0036】
上述した図4及び図5に示された各種の形態のスクイズボトルについて、繰り返しスクイズ(押圧)及びスクイズの停止動作を行い、図示しないが胴部ストレート形状のボトルと比較して、シワの発生状況を評価した。
その結果、(a)のプレーン模様では、シワの発生はかなり改善されていた(評価△)。
(b)の縦リブ模様では、シワの発生はさらに改善されていたが大きく凹ませると、しばしばシワの発生が観察された(評価〇)。
(c)の斜めリブクロス模様、(d)の三角模様、(h)の丸模様千鳥配列では、より一層シワの発生が抑制されており、大きく凹ませた時にもシワはほとんど発生しなかった(評価◎)。
一方、(e)の五角形・六角形模様、(f)の六角形模様、(g)の丸模様直列配列では、(b)の縦リブ模様と同程度のシワの発生状況であった(評価△)。
【0037】
以上の結果から考察すると、基本単位面15の形状(外周縁)を画定するリブ13は、シワ(若しくは折り目)の発生防止には効果的であるが、軸方向を指向しているリブ13が存在していない模様が、シワの発生防止に最も効果的である。即ち、スクイズ部SQを押圧して凹ませたとき、スクイズ部SQの平面形態が円形であるため、周方向には折れ線が発生し難く、軸方向に折れ線が発生し易い。この結果、軸方向を指向しているリブ13はシワの発生防止にはあまり効果が無く、軸方向を指向しているリブ13が存在せずに基本単位面15が形成されていることが、シワ(或いは折り目)の発生防止に最も効果的であると本発明者等は推察している。
また、(h)の丸模様千鳥配列は、(g)の丸模様直列配列よりも効果的にシワの発生が防止されているが、これは、千鳥配列により、軸方向を指向しているリブ13が曲線状のリブによって分断されているためと考えられる。このような分断により、軸方向のシワの発生が抑制されると考えているわけである。
【0038】
また、上述した各種のボトルについて、スクイズ部SQを押圧して凹ませたとき、変形の形状を観察したところ、プレーン模様の(a)のスクイズボトルは、変形形態が不規則であったが(スクイズ性評価△)、リブ13が形成され、基本単位面15が配列されている(b)~(h)のスクイズボトルは、何れも変形がほぼ規則的であった(スクイズ性評価〇)。即ち、(b)~(h)のスクイズボトルは、特に二重構造容器の外容器として特に有効であり、常に少量の内容物を安定に排出することができる。
【0039】
<二重構造容器>
上述したように、本発明のポリエステル製小容量スクイズボトル20は、特に二重構造容器(エアレスボトル)の外容器として好適に使用される。
図6には、このような二重構造容器が示されている。
【0040】
図6において、全体として40で示される二重構造容器は、前述したスクイズボトル20から形成されている外容器(スクイズボトルと同様、20で示す)と、外容器20内に収容されている内袋容器30とから形成されている。
【0041】
内袋容器30は、首部31と袋状部33とからなり、袋状部33内に内容物が収容されている。内袋容器30は、特に制限されるものではないが、通常、外容器20(スクイズボトル)と同様、ポリエステル製である。
このような内袋容器において、首部31は、外容器(スクイズボトル20)の首部1に位置固定されており、このような首部31及び外容器の首部1に被せて逆止弁付きキャップ(図示せず)が装着される。
【0042】
上述した構造の二重構造容器40は、それ自体公知の方法によって製造され、例えば特開2019-142186号公報にも記載されているスタックプリフォーム法により製造される。
【0043】
この製造方法は、予め、射出成形により外容器20(スクイズボトル20)用のプリフォームと内袋容器用のプリフォームとが組み立てられる。これらのプリフォームは、何れも試験管形状を有しており、非延伸成形部である首部と延伸成形部である胴部とを有している。これらのプリフォームを成形した後、内袋容器用のプリフォームを外容器用のプリフォーム内に挿入してスタックプリフォームを作製する。スタックプリフォームにおいては、内袋用プリフォームの首部が外容器用プリフォームの首部内に固定される。
【0044】
このようなスタックプリフォームをブロー成形型内に配置し、延伸成形温度に加熱された後、内袋容器用プリフォーム内にブロー流体(例えばエア)を供給し、ブロー成形が行われる。即ち、内袋容器用プリフォームの胴部(延伸成形部)がブロー流体によって押し広げられ、これにより、外容器用プリフォームの胴部も押し広げられ、ブロー成形型の型面に押し付けられて外容器20(スクイズボトル)の形態に賦形される。一方、内袋容器用プリフォームの胴部(延伸成形部)は、外容器20の内面(肩部3,胴部5及び底部7)の内面に密着した状態で袋状部に成形される。即ち、成形直後では、二重構造容器40は、図6(a)に示されているように、袋状部33が外容器20(スクイズボトル)の内面に密着している。
【0045】
上記の様にして成形された二重構造容器40は、図6(a)の状態で内袋容器30に内容液(例えば、醤油等の調味液)が充填され、図示されていない逆止弁付きキャップが装着され、使用に供される。
【0046】
即ち、内容液の排出にあたっては、キャップを開けた状態で容器40を傾けながら、図6(b)に示されているように、スクイズボトルである外容器20のスクイズ部SQを外部からスクイズ(押圧)して凹ませることにより、内袋容器30の袋状部33に充填されている内容液が排出される。
【0047】
次いで、図6(c)に示されているように、外容器20のスクイズ部SQの押圧を停止して内容液の排出を終了させると、逆止弁の作用により、空気は内袋容器には導入されず、内容液の注出路とは異なる流路を通って、内袋容器30と外容器20との間の空間に導入されることとなる。これにより、内袋容器30の袋状部33は、内容液が排出された分だけ収縮することとなり、内容液を排出する毎に、袋状部33が収縮していく。即ち、外容器20と収縮した袋状部33との間には、常に空気層が存在しているため、内容液の排出に伴って袋状部33が大きく収縮した場合にも、スクイズ部SQを押圧することにより、初期と同様、袋状部33内から内容液を排出することができる。
【0048】
このような方法により内容液が排出される二重構造容器40では、内容液を小出しできると共に、内容液が充填されている内袋容器30の袋状部33内への空気の侵入が有効に防止されるため、内容液の酸化劣化を有効に回避でき、内容液の鮮度を長期間にわたって保持できる。
特に本発明では、外容器20(ポリエステル製スクイズボトル)が小容量であるにもかかわらず、鶴首形状の形態を有しており、スクイズによる変形が規則的であり、しかも原形復帰が速やかに行われ、不規則な形態に変形することがなく、シワや折り目の発生も有効に抑制されているため、安定して内容液を排出することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:首部
3:肩部
5:胴部
7:底部
9,11:周状溝
13:リブ
15:基本単位面
20:スクイズボトル(外容器)
SQ:スクイズ部
X:スクイズ部の外面
30:内袋容器
31:内袋容器の首部
33:内袋容器の袋状部
40;二重構造容器(エアレスボトル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6