(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056404
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】開閉装置並びにこの開閉装置を用いた事務機器
(51)【国際特許分類】
G03B 27/62 20060101AFI20240416BHJP
E05F 1/12 20060101ALI20240416BHJP
F16C 11/10 20060101ALI20240416BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20240416BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G03B27/62
E05F1/12
F16C11/10 C
F16C11/04 F
H04N1/00 519
H04N1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163257
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 覚司
【テーマコード(参考)】
2E050
2H012
3J105
5C062
【Fターム(参考)】
2E050AA04
2E050BA01
2E050CA04
2E050EB01
2H012CA02
2H012CB01
2H012CB12
3J105AA04
3J105AB02
3J105AB14
3J105AB24
3J105AC10
3J105BC03
3J105BC13
3J105BC32
3J105DA13
3J105DA23
5C062AA05
5C062AD02
5C062AD06
(57)【要約】
【課題】開閉体の経年に及ぶ開閉動作に伴い発生する支持部材と摺動部材間のグリス切れを防止した開閉装置を提供する。
【解決手段】
事務機器の装置本体に取り付ける取付部材と、前記取付部材にヒンジシャフトを介して回動可能に取り付けられたところの開閉体を支持する支持部材と、前記支持部材の自由端側と前記取付部材側に取り付けたカム部材との間に、前記支持部材内部にスライド可能に収容され前記開閉体の開閉操作に伴い前記支持部材内部をスライドするところの弾性部材を作用させたスライダーを有するものにおいて、前記支持部材の内側及び又は前記スライダーの外側に潤滑用グリスを溜めるグリス溝を設けたことで解決した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
事務機器の装置本体に取り付ける取付部材と、前記取付部材にヒンジシャフトを介して回動可能に取り付けられたところの開閉体を支持する支持部材と、前記支持部材の自由端側と前記取付部材側に取り付けたカム部材との間に、前記支持部材内部にスライド可能に収容され前記開閉体の開閉操作に伴い前記支持部材内部をスライドするところの弾性部材を作用させたスライダーを有するものにおいて、前記支持部材の内側及び又は前記スライダーの外側に潤滑用グリスを溜めるグリス溝を設けたことを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記スライダーは、前記支持部材の前記自由端側に設けられた第1スライダーと、前記カム部材側に設けられた第2スライダーとで構成されていることを特徴する、請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記グリス溝は、前記スライダーのスライド方向に直交する方向に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記支持部材の前記自由端側には、さらにヒンジシャフトを介して前記開閉体を支持するリフト部材が取り付けられており、前記第1スライダーと前記第2スライダーは前記リフト部材に設けた作動部材と前記カム部材との間に弾性部材を作用させて設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記第1スライダーには、前記支持部材の上板側に接する側に所定間隔を開けて逃がし溝部が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の開閉装置。
【請求項6】
前記第2スライダーには、前記支持部材の前記上板側と接する側に突部を設けてあることを特徴とする、請求項2に記載の開閉装置。
【請求項7】
前記請求項1に記載の開閉装置を用いたことを特徴とする、事務機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、複合機、印刷機、ファクシミリ、及びスキャナー等の事務機器に用いて好適な開閉装置並びにこの開閉装置を用いた事務機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、複合機、印刷機、ファクシミリ、及びスキャナー等の事務機器の装置本体には、その装置本体の上面後部に対し原稿圧着板が開閉装置を介して開閉可能に取り付けられている。この開閉装置は、原稿圧着板開閉装置とも称せられるが、一種のヒンジ機構であり、例えば下記特許文献1に記載されたように、原稿圧着板をヒンジ軸まわりに開閉可能に軸支して、装置本体の上面のコンタクトガラス面上に原稿を圧着させることができると共に、そのコンタクトガラス上面を露出させることができる。原稿をコンタクトガラス面上にセットするには、原稿圧着板を回動させて(上方に開いて)コンタクトガラス面を露出(開放)させ、そのコンタクトガラスの面上に原稿を載置した後、原稿圧着板を回動させて(下方に閉じて)、原稿圧着板で原稿をコンタクトガラス面上に圧着させる。
【0003】
上記公知構成の事務機器においては、原稿圧着板を開閉すると、当該原稿圧着板を装置本体に開閉可能に取り付けている開閉装置を構成する支持部材がヒンジシャフトを支点に回転し、この支持部材内部に圧入されスライド可能に収容させたスライダーがスライドする。この時スライダーの摺動に抗う圧縮コイルスプリングが設けられており、かつ、スライダーが取付部材側に設けたカム部材と圧接しているので、原稿圧着板の開閉操作の際に適度な負荷が発生する。このため開閉装置によって装置本体に対して原稿圧着板は、閉成状態で閉成方向へ付勢され、中間開閉角度で原稿圧着板を保持でき、さらに全開状態で自然落下しないように保持される。そして、スライダーは原稿圧着板の開閉操作ごとに支持部材内部を圧接状態で摺動することになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-8038号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来公知の開閉装置は、当然にスライダーと支持部材のスライド面に潤滑用グリスを塗布させた状態で出荷されるが、経年使用されるうちにグリス切れを起こし、原稿圧着板(以下、本願発明に係る原稿圧着板開閉装置が、複写機や複合機以外に事務機器に用いられることを考慮し、単に開閉体という)の開閉操作に支障を来たし、また、異音が発生するという問題が生じた。この問題は、支持部材に対するスライダーの圧入嵌合が強かった場合には、より早く顕在化する傾向があった。本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、開閉体の経年に渡る開閉操作の後においても、開閉操作不良を起こさず。且つ、異音の発生を防止することのできる開閉装置並びにこの開閉装置を用いた事務機器を提供せんとするにある。尚、本願発明において、開閉装置は、スライダーを1個用いる実施の形態と、2個用いて第1スライダーと第2スライダーとする実施の形態があることから、特許請求の範囲において、単にスライダーと記載した場合には、2つの形態のスライダーを含むものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、事務機器の装置本体に取り付ける取付部材と、前記取付部材にヒンジシャフトを介して回動可能に取り付けられたところの開閉体を支持する支持部材と、前記支持部材の自由端側と前記取付部材側に取り付けたカム部材との間に、前記支持部材内部にスライド可能に収容され前記開閉体の開閉操作に伴い前記支持部材内部をスライドするところの弾性部材を作用させたスライダーを有するものにおいて、前記支持部材の内側及び又は前記スライダーの外側に潤滑用グリスを溜めるグリス溝を設けたことを特徴とする。
【0007】
次に、請求項2に記載の発明は、前記スライダーが、前記支持部材の前記自由端側に設けられた第1スライダーと、前記カム部材側に設けられた第2スライダーとで構成されていることを特徴する。
【0008】
次に、請求項3に記載の発明は、前記グリス溝が、前記スライダーのスライド方向に直交する方向に設けられていることを特徴とする。
【0009】
次に、請求項4に記載の発明は、前記支持部材の前記自由端側には、さらにヒンジシャフトを介して前記開閉体を支持するリフト部材が取り付けられており、前記第1スライダーと前記第2スライダーは前記リフト部材に設けた作動部材と前記カム部材との間に弾性部材を作用させて設けられていることを特徴とする。
【0010】
次に、請求項5に記載の発明は、前記第1スライダーには、前記支持部材の上板側に接する側に所定間隔を開けて逃がし溝部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
次に、請求項6に記載の発明は、前記第2スライダーには、前記支持部材の前記上板側と接する側に突部を設けてあることを特徴とする。
【0012】
そして、請求項7に記載の発明は、上記に記載の各開閉装置を用いたことを特徴とする事務機器である。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明によれば、支持部材とスライダーの少なくともいずれか一方或いは双方の摺動面にグリス溜まり用溝を設けたので、開閉体の繰り返しの開閉操作に伴い発生する支持部材とスライダー間のグリス切れを防止して、経年使用の後においても開閉体の開閉操作時の不具合を抑制し、或いは異音の発生を防止した開閉装置並びにこの開閉装置を用いた事務機器を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る開閉装置を用いた事務機器の一例としての複写機の斜視図である。
【
図4】本発明に係る開閉装置の開閉体を閉じた時の断面図である。
【
図5】本発明に係る開閉装置の開閉体の中間開閉角度の時の断面図である。
【
図6】本発明に係る開閉装置の開閉体をさらに全開成角度まで開いた時の断面図である。
【
図7】本発明に係る支持部材を
図3に示した状態とは別角度で見た斜視図である。
【
図8】本発明に係る第1のスライダー斜視図であり、(a)は
図3に示した状態とは別角度で見た斜視図であり、(b)はさらに(a)とは別角度で見た斜視図である。
【
図9】本発明に係る第2の斜視図であり、(a)
図3に示した状態とは別角度で見た斜視図であり、(b)はさらに(a)とは別角度で見た斜視図である。
【
図10】本発明に係る支持部材と第2スライダーの摺動部分の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る開閉装置並びにこの開閉装置を用いた事務機器を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例0016】
図1は、本発明に係る開閉装置を用いた事務機器の一例としての複写機を示す。図面によれば、複写機Aの装置本体a上には、本発明に係る開閉装置Bとこの開閉装置Bとは構成の異なる簡単な構成の開閉装置B’を介して、開閉体Cが開閉可能に取り付けられている。そして開閉装置BとB’により開閉体Cは、装置本体aの上面に接触する閉位置から最大使用開成角度まで開閉可能となっている。
【0017】
図2乃至
図6は、本発明の実施例に係る開閉装置Bの一例を具体的に示す図である。
図2の斜視図に示すように本発明の開閉装置は取付部材4、支持部材5、リフト部材6を有している。そして、支持部材5には摺動部材である第1スライダー31,第2スライダー32および第1スライダー31と第2スライダー32を互いに離間する方向に付勢する圧縮コイルスプリング21が収められている。取付部材4と支持部材5は第1ヒンジシャフト11により互いに回動可能に連結されている。また、支持部材5とリフト部材6は第2ヒンジシャフト12により互いに回動可能に取り付けられている。取付部材4収められた調整板71は装置本体aに対する取付部材4の取付位置を調整するために設けられている。
【0018】
図3の分解斜視図において取付部材4は、装置本体aに取り付けられる底板41と、底板41の両側端部からそれぞれ底板41に対して直交する方向(略直交する方向も含む)に延びる両側板42、42と、底板41の一端部(後端部)から底板41に対して直交する方向(略直交する方向も含む)に延びる略矩形状の後板43と、両側板42の一側部に形成された湾曲凹部44と、から構成され、両側板42の後板43側にストッパー部48,48が設けられている。
【0019】
底板41は略矩形状に形成され、ビス等で装置本体aに取り付けるための取付孔45が設けられている。両側板42、42は、略L字状に形成され、先端部(上部)に第1ヒンジシャフト孔46が設けられている。第1ヒンジシャフト孔46より底板41側(下方)で、かつ、内側(前方)に偏した位置にはカム部材孔47が設けられている。カム部材孔47にはカム部材13が挿通されている。尚、このカム部材13は、実施例ではシャフト状であるが、このものに限定されず、取付部材4の両側板42、42の間に設けたその他の形状のものが含まれる。
【0020】
取付部材4における底板41の上には調整板71が互いに摺動可能に設けられている。調整板71の一端部(後端部)から調整板71に対して直交する方向(略直交する方向も含む)に延びる略矩形状の後板75には
図4に示すように取付部材4の後板43を通した調整ネジ74が螺合されている。調整板71の取付孔72、73及び76は調整板71を装置本体aに取り付けるための取付孔である。調整板71は取付部材4の底板41を挟んで装置本体aにねじ止めされる。そして、開閉体Cを開閉装置Bに取り付け、開閉体を装置本体aに対して閉じた状態にして互いの位置が適正になるように調整ネジ74を回す。互いの位置が適正になったことが確認出来たら取付孔72、73のねじ締めトルクを強くすると共に取付部材4の底板41に設けられた取付孔45を通して取付部材4と装置本体aもねじ止めする。底板41には、調整板71の取付孔72および73より、径の大きな調整孔49a、49bが、取付孔72及び73と重なり合うように設けられており、取付部材4の取付位置のスライド調整を可能にしている。尚、とくに
図3において、指示記号81と82は、底板41と調整板71を装置本体aへ取付けるための取付ネジであり、指示記号83で示されたものは、取付ボタンネジである。
【0021】
支持部材5は、
図3の分解斜視図において、上板51と、上板51の両側端部からそれぞれ上板51に対して直交する方向(略直交する方向も含む)に垂設された両側板52、52と、両側板52、52の先端部を互いに対向する側に90°折り曲げてなる抱持片53、53とで構成されている。
【0022】
両側板52、52の一端部(前端部)には、第2ヒンジシャフト12が挿通される第2ヒンジシャフト孔55が設けられていると共に、後述する作動部材14が入り込む切り欠き部54が設けられている。両側板52の他端部(後端部)には、第1ヒンジシャフト挿通孔56が設けられている。両側板52の第1ヒンジシャフト挿通孔56と取付け部材4の第1ヒンジシャフト孔46とが軸合わせされてこれらの孔に軸受部材84が挿通される。第1ヒンジシャフト11は軸受部材84の軸受部に挿通され、ワッシャ85を介して第1ヒンジシャフト両端に設けられて周溝11aに係止させたEリング86で抜け止め規制されている。このように支持部材5が取付部材4に第1ヒンジシャフト11を軸に回動自在に連結されている。
【0023】
リフト部材6は、開閉体Cの後端側にビス等で取付けられる上板61と、この上板61の両端部からそれぞれ上板61に対して直交する方向(略直交する方向も含む)に垂設された両側板62,62とから成る略コ字形状のものであって、支持部材5を覆うように形成されている。リフト部材6の一端部(先端部)の中央より上板61側の箇所には第2ヒンジシャフト挿通孔63が設けられていると共に、第2ヒンジシャフト挿通孔63の下方に設けられたシャフト状の作動部材14が挿通される作動部材孔64が設けられている。両側板62の作動部材孔64に作動部材14が挿通されて固定されている。尚、この作動部材14は、シャフト状でなくとも良く、リフト部材6の上板61から垂下される図示してない作動部材、或いはこの作動部材に取り付けた同じく図示してない押圧部材であっても良い。リフト部材6の両側板62の第2ヒンジシャフト挿通孔63と支持部材5の両側板52の第2ヒンジシャフト孔55とが軸合わされてこれらの孔に第2ヒンジシャフト12が挿通されることによって、リフト部材6が支持部材5の回動方向とは逆方向へ回動するように第2ヒンジシャフト12によって連結されている。また、上板61には、その先端部を支持部材5の上板51に当接させてリフト部材6に取り付けられる開閉体Cの原稿載置台a1に対する平行を調節するための調節ネジ65が設けられている。尚、指示記号67、67は、開閉体Cを取り付ける際に用いる取付板部である。
【0024】
支持部材5内には、一対の第1スライダー31と第2スライダー32が摺動可能に収装されている。この一対の第1スライダー31と第2スライダー32は、断面矩形の有底筒体状に形成されている。第1スライダー31と第2スライダー32は、互いの開口部が向き合うように支持部材5内にそれぞれ抱持片53、53に抱えられることによって支持部材5との間で個別に摺動自在に収装されている。この一対の第1スライダー31と第2スライダー32との間に圧縮コイルスプリング21が設けられている。即ち、第1スライダー31と第2スライダー32の凹状の内部が圧縮コイルスプリング21を収容するスプリング収容部31g(
図8)、32c(
図3)として形成されている。圧縮コイルスプリング21は、1個でも2個以上でもよく、例えば2個並列、或は重合して設けられ、実施例のものは、一対の第1スライダー31と第2スライダー32をそれぞれ互いに離間する方向に付勢している。尚、本明細書、特許請求の範囲においては、圧縮コイルスプリングを弾性部材と称する場合がある。
【0025】
一対の第1スライダー31と第2スライダー32は、
図4に示すように開閉体が閉じた状態である底板41と支持部材5(上板51)が略平行になっているとき支持部材5内に嵌合される長さで形成されている。
【0026】
先端部側の第1スライダー31の底面である閉塞面31aの外表面は平坦面に形成されている。この閉塞面31aが圧縮コイルスプリング21の付勢力によって作動部材14を押圧して、支持部材5とリフト部材6が重なり合うようになっている。即ち、圧縮コイルスプリング21の付勢力によってリフト部材6の上板61に設けられた調節ネジ65が支持部材5の上板51に当接して、支持部材5の上板51とリフト部材6の上板61が略平行で、かつ近接するようになっている。
【0027】
後端部側の第2スライダー32の閉塞面の外表面の略中央部には突部33が設けられている(
図9)。そして、突部33の抱持片53側は漸次傾斜された傾斜部34が形成されている。そして開閉体が閉じているときは突部33が固定部材例えばカム部材13に当接し、リフト部材6が第2ヒンジシャフト12を軸に回動することによって、カム部材13が当接する箇所は突部33から傾斜部34に徐々に摺動する。このカム部材13の外周には通常潤滑用のグリスが塗布されている。第2スライダー32の下部側から前記カム部材13より後側に突出させて延出片38が設けられている。
【0028】
図4に示す開閉体Cが閉じた状態において支持部材5の抱持片53の部分が、取付部材4の湾曲凹部44内に嵌入し、延出片38はカム部材13の周囲、とくに装置本体a側を覆っている。これはカム部材13に塗布されたグリスが装置本体aに付着することを防ぐためである。この状態から開閉体Cの開閉装置Bが取り付けられた辺とは反対側の辺を手に持って、装置本体aの上面から離間する方向(上方)に第1ヒンジシャフト11を軸に回動させると、
図5に示すように第2スライダー32においてカム部材13に当接する箇所が突部33から傾斜部34へと徐々に摺動すると共に、第2スライダー32が圧縮コイルスプリング21によって支持部材5内を後端部側へと押圧されて摺動し、圧縮コイルスプリング21が徐々に伸びる。そして
図6に示すように開閉体Cが装置本体aの上面に対する最大使用開放位置になると、圧縮コイルスプリング21が最も伸びた状態になる。
【0029】
ここで第2スライダー32と支持部材5の摺動面には、摺動を円滑にするためのグリスが塗布されている。そして本発明では摺動を続けて行くことで塗布されたグリスが不足するグリス切れを抑制する対策が施されている。
【0030】
図7において支持部材5の上板51の裏面である第2スライダー32と摺動する摺動面58には半貫のプレス加工や切削などで設けられたグリス溝57が設けられている。グリス溝57は第2スライダー32の摺動方向とは略直交する方向の溝として形成され、このグリス溝57内にグリスを留める構造になっている。また一方向の摺動で広がったグリスも逆方向の摺動により再びグリス溝57に戻る為に摺動を継続した場合でもグリス切れを抑制することができる。
【0031】
第1スライダー31はリフト部材6の姿勢安定化のために支持部材5内を摺動する構成になっている。そこで
図8(a)、(b)において第1スライダー31の支持部材5の上板51との摺動面31dおよび抱持片53との摺動面31cにはそれぞれグリス溝31b、31eと逃げ溝31fがモールド成形されている。これらグリス溝31b、31eは支持部材5との摺動方向とは略直交する方向の溝として形成され、このグリス溝31b、31e内にグリスが留まる構成になっている。また、逃げ溝31fは摺動方向に沿ってグリス溝31bより深い溝として形成されている。
【0032】
第2スライダー32は開閉体の開閉トルク制御のために支持部材5内を摺動する構成になっている。そこで
図9(a)、(b)において、第2スライダー32の支持部材5の上板51と摺動する摺動面32dおよび抱持片53と摺動する摺動面32fにもそれぞれグリス溝32e、32e・32g、32gとがモールド成形されている。第2スライダー32における支持部材5の上板51との摺動面は全面接触せずに摺動面32dのみを接触させている。
図9(b)において摺動面32d以外の面32hは摺動面32dより低くして摺動摩擦から逃げている。これらグリス溝32e、32e・32g、32gも支持部材5との摺動方向とは略直交する方向の溝として形成され、これらのグリス溝32e、32e・32g、32g内にグリスが留まる構成になっている。
【0033】
図10は支持部材5における上板51と第1スライダー31及び第2スライダー32の摺動部断面拡大図である。
図10において指示記号91、91はグリス溝31b、31b内に溜められているグリスであり、指示記号92、92はグリス溝32e、32e内に溜められているグリスである。さらに指示記号93、93は上板51に設けられたグリス溝57、57内部に溜められているグリスである。尚、不図示ではあるが、第1スライダー31のグリス溝31e、31e内にもグリスが溜められ、第2スライダーのグリス溝32g、32g内にもグリスが溜められるものである。第1スライダー31および第2スライダー32と支持部材5は圧入嵌合で当接しているため互いの隙間が少ないことからグリス切れが起きやすい。しかしながら互いの隙間が大きく設けられたグリス溝32e、57には十分なグリスが溜められており、開閉体Cの開閉動作により支持部材5内で第1スライダー31と第2スライダー32が摺動することでグリス溝に溜められているグリスが摺動面に塗布される。このように開閉体Cの開閉操作により第1スライダー31ト第2スライダー32は支持部材5内で摺動するので、開閉操作を繰り返す度にグリスは再塗布されて常に円滑な摺動状態を保つことができる。
【0034】
上記したグリス溝57、31b、31e、32e、32gは全て設ける必要はなく、例えば支持部材5側のグリス溝57のみ設ける、或は第2スライダー32側のグリス溝32e、32gのみ設けることでもグリス切れ抑制の効果は得られる。
【0035】
このように開閉装置において、支持部材5と第2スライダー32、第1スライダー31の少なくとも何れかにグリス溝を設けることで、開閉体Cを繰り返し開閉しても開閉装置のグリス切れを抑制することができて長期に渡り円滑な開閉操作を行うことができる。
【0036】
上記した実施例に示された開閉装置Bは、支持部材5の自由端側にリフト部材6を支持部材5とは反対方向へ回動可能となるように取り付けたものが示されているが、本発明に係る開閉装置は、このものに限定されず、リフト部材を省略して支持部材に開閉体Cを取り付ける構成のものにも適用できる。その場合にはスライダーは、第2スライダーだけとなり、支持部材の自由端側とカム部材の間に設けられるものである。この場合、圧縮バネの一端は支持部材の自由端側に圧接することになる。本発明に係る開閉装置には、このような構成の開閉装置も含まれる。
本発明は、以上のように構成したので、経年使用の後においても開閉体の開閉操作に不具合が発生したり、異音が発生することを防止した開閉装置並びにこの開閉装置を用いた事務機器を提供できるものである。