(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056408
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】穀粒のロール粉砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 4/06 20060101AFI20240416BHJP
B02C 4/40 20060101ALI20240416BHJP
B02C 4/44 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B02C4/06 Z
B02C4/40
B02C4/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163265
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】591095708
【氏名又は名称】株式会社新井機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】新井 進二
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063CC01
4D063CC09
4D063GA04
4D063GC31
4D063GD04
4D063GD22
(57)【要約】
【課題】スクレーパー装置の粉剥がしブレード交換や加圧調整等のメンテナンスが容易で、またロールの冷却効率の向上を図る穀粒のロール粉砕機の提供。
【解決手段】
穀粒のロール粉砕機1は、ロールユニット3を構成する一対のロール11、12のロール本体11a、12a内部に形成したロール通水空間内に冷却水をロール軸の軸方向一端部から給水して他端部に排水する際、ロール通水空間の内周面に向けて径方向に冷却水を通水して撹拌し、撹拌された冷却水を軸中心側から排水する冷却水通水部を備え、さらにロール11、12の表面に付着した付着物をブレード52により剥離するスクレーパー装置8、9は、首振り部66において係合ロッド67の旋回で係合フック部68がスクレーパー50の係合孔54cから係脱可能とし、全ての係合フック部68が係合孔54cから係合が外れると、スクレーパー50が粉砕機1から取り外し可能としている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧接触する一対のロールが互いに向かい合う方向に回転し、加圧接触部を通過する穀粒を粉砕して下方に落下させるロールユニットを1または上下方向に複数配置し、前記ロール内部に冷却水をロール軸の軸方向一端部から給水してロール軸の軸方向他端部に排水する冷却水通水部と、前記ロール表面に付着した穀粒の粉砕により生じたカス等の付着物を前記ロールの表面に接触するブレードにより剥離するスクレーパー装置と、を備える穀粒のロール粉砕機であって、
前記冷却水通水部は、筒状に形成されたロール本体内のロール通水空間と、前記ロール軸の軸方向一端部から前記ロール通水空間内の軸方向一方側を終端部として延び、前記ロール通水空間の軸中心上に設けられると共に、前記ロール通水空間に臨む給水孔を備えた給水用通水路と、前記ロール軸の軸方向他端部から前記ロール通水空間内の軸方向他端側を始端部として延び、前記ロール通水空間の軸中心上に設けられると共に、前記ロール通水空間に臨む排水孔を備えた排水用通水路と、を有する穀粒のロール粉砕機。
【請求項2】
請求項1に記載の穀粒のロール粉砕機において、
前記スクレーパー装置は、前記ロールの軸方向に沿って延びるスクレーパー軸に対してブレードを回転可能に保持し、前記ブレードの前面側に係合孔を備えた複数の係合部を軸方向に沿って間隔を有して設ける共に、前記スクレーパー軸を穀粒のロール粉砕機のフレームから取り外し可能とするスクレーパーと、前記複数の係合部に対応してそれぞれ前記フレームに設けられたアクチュエータにより前記係合孔に係合する係合フック部を先端部に備えた係合ロッドを伸縮可能に駆動すると共に、首振り部により前記係合ロッドを旋回させて前記係合孔と前記係合フック部との係合と係合解除を可能とするブレード押圧機構と、を有する穀粒のロール粉砕機。
【請求項3】
請求項1に記載の穀粒のロール粉砕機において、
前記冷却水通水部は、前記ロール通水空間の軸中心上で前記ロール通水空間内に設けた中央軸部を有し、前記中央軸部内の軸方向一方側まで前記給水用通水路の終端部が形成され、前記中央軸部内の軸方向他端側まで前記排水用通水路の始端部が形成され、前記中央軸部に前記給水用通水路の終端部と前記ロール通水空間を連通する給水孔と、前記排水用通水路の始端部と前記ロール通水空間を連通する排水孔を径方向に形成したことを特徴とする穀粒のロール粉砕機。
【請求項4】
請求項3に記載の穀粒のロール粉砕機において、
前記給水孔と前記排水孔は前記中央軸部の軸心の回りに等間隔に複数形成されると共に、軸方向にずらして配置したことを特徴とする穀粒のロール粉砕機。
【請求項5】
請求項2に記載の穀粒のロール粉砕機において、
前記ブレード押圧機構の首振り部は、前記アクチュエータのアクチュエータロッドの先端部に固定した支持体と、前記係合ロッドの基端部を固定した旋回体と、前記支持体に対して前記旋回体を旋回可能に取り付ける首振り支軸と、前記係合フック部が前記係合孔に係合する係合位置で前記支持体に対して前記旋回体の旋回を阻止するロック手段と、を有することを特徴とする穀粒のロール粉砕機。
【請求項6】
請求項2または5に記載の穀粒のロール粉砕機において、
前記スクレーパーの複数の係合部の近傍に設けた圧力センサーの検出情報と、設定された前記ブレードがロール表面に接する設定押圧力とを比較し、前記検出情報が設定押圧力と一致するように前記複数のアクチュエータを駆動する押圧力制御部を有することを特徴とする穀粒のロール粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は米、麦などの穀粒、特に洗米、浸漬された米を一対のロール間に供給して粉砕し粉状にするロール粉砕機に関し、ロールの冷却技術、ロール表面に付着した粉を掻き落とすスクレーパー技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、洗米、浸漬された米、麦などの穀粒(ワーク)を粉砕するロール粉砕機としては、水平方向に対向配置した加圧接触する一対のロール間に上方からワークを供給し、一対のロール間でワークを粉砕し、粉砕処理された粉砕処理物が落下する構成が提案されている(特許文献1)。一対のロール表面には粉砕処理物の一部が落下せずに付着するため、各ロールに対応して設けたスクレーパー装置のブレードによりロール表面に付着したワークの粉砕により生じたカス等の付着物を剥離し、下方に落下させる。
【0003】
特許文献1の
図1および
図4に示すように、スクレーパー装置(粉剥がし用ナイフ部25)は、金属等の硬質材で構成される粉剥がし用のブレードの先端をロール回転方向と向かい合う方向(カウンター方向)に向けてロール表面に当接させる。ブレードは、ロールの全幅と略等長の長さを有してロールの軸方向に沿って配置され、ロールの回転軸中心と平行な支軸を中心として旋回可能にロール粉砕機のフレームに取り付けられている。ブレードには、ロールの軸方向に沿って間隔を有して当接圧調整用の複数の調整ネジ棒(粉剥がし用ナイフ調整ネジ)の一端が取り付けられている。調整ネジ棒は、他端側のネジ部がロール粉砕機のフレーム部に設けた固定部の挿通孔に挿通される。固定部を挟んで調整ネジ棒のネジ部には調整ナットがそれぞれ螺合し、調整ナットの締付により固定部に対する調整ネジ棒の長さを調整し、ロール表面に対する粉剥がしブレードの当接圧を調整する。
【0004】
一対のロールは、ロール表面が互いに接触するニップ部において下方に向けて回転すると共に、ニップ部における周速を異ならせ、ワークをすり潰すように粉砕して粉状とする。ロール粉砕機は、水平配置される一対のロール等で構成されるロールユニットを上下方向に複数段配置し、最上段のロールユニットに供給されたワークが下段のロールユニットに順次供給されて粉砕処理され、最下段のロールユニットから下方に所定粒度の粉砕処理物が排出される。
【0005】
また、一対のロールは周速差によりワークをすり潰すように粉砕処理し、また粉剥がしブレードの先端がロール表面に当接するため、ロールには大きな摩擦熱が発生し、ワークに影響を及ぼす恐れがある。このため、特許文献1の
図2示すように、各ロールのロール本体内に冷却水が供給される筒状の冷却水通水部を形成し、ロール本体の軸方向両側に設けた回転軸部に冷却水通水部に連通する給水孔と排水孔を対向して回転軸中心上に設けた構成としている。ロールの給水孔を通して冷却水通水部に通水された冷却水は、排水孔を通してロール外に排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の穀粒のロール粉砕機において、ロール表面に対するブレードの当接圧の調整は、手作業で調整ナットの締付調整を行う構成とし、しかも複数の調整ネジ棒について調整操作を行わなければならず、時間と手間を要していた。また、粉剥がしブレードを交換するためには、複数の調整ネジ棒を取り外す必要があり、粉剥がしブレードの交換作業は手間と時間を要していた。
【0008】
一方、ロールの冷却構造は、ロール本体内の冷却水通水部を円筒状空間とし、両回転軸部に給水孔と排水孔を対向して設けた構成としている。このような冷却構造によれば、冷却水通水部内の冷却水は、全体的にロールの長手方向に沿った流れとなり、冷却水通水部の内周面に沿った高温の冷却水と中心側の低温の冷却水とが十分に混ざり合わず、冷却効率が悪かった。
【0009】
本発明の目的は、スクレーパー装置の粉剥がしブレード交換や加圧調整等のメンテナンスを容易に行うことができ、またロールの冷却効率を向上させることができる穀粒のロール粉砕機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題を解決する第1発明の穀粒のロール粉砕機は、加圧接触する一対のロールが互いに向かい合う方向に回転し、加圧接触部を通過する穀粒を粉砕して下方に落下させるロールユニットを1または上下方向に複数配置し、前記ロール内部に冷却水をロール軸の軸方向一端部から給水してロール軸の軸方向他端部に排水する冷却水通水部と、前記ロール表面に付着した穀粒の粉砕により生じたカス等の付着物を前記ロールの表面に接触するブレードにより剥離するスクレーパー装置と、を備える穀粒のロール粉砕機であって、前記冷却水通水部は、筒状に形成されたロール本体内のロール通水空間と、前記ロール軸の軸方向一端部から前記ロール通水空間内の軸方向一方側を終端部として延び、前記ロール通水空間の軸中心上に設けられると共に、前記ロール通水空間に臨む給水孔を備えた給水用通水路と、前記ロール軸の軸方向他端部から前記ロール通水空間内の軸方向他端側を始端部として延び、前記ロール通水空間の軸中心上に設けられると共に、前記ロール通水空間に臨む排水孔を備えた排水用通水路と、を有する構成とすることができる。
【0011】
本発明の課題を解決する第2発明の穀粒のロール粉砕機は、第1発明の穀粒のロール粉砕機において、前記スクレーパー装置は、前記ロールの軸方向に沿って延びるスクレーパー軸に対してブレードを回転可能に保持し、前記ブレードの前面側に係合孔を備えた複数の係合部を軸方向に沿って間隔を有して設ける共に、前記スクレーパー軸を穀粒のロール粉砕機のフレームから取り外し可能とするスクレーパーと、前記複数の係合部に対応してそれぞれ前記フレームに設けられたアクチュエータにより前記係合孔に係合する係合フック部を先端部に備えた係合ロッドを伸縮可能に駆動すると共に、首振り部により前記係合ロッドを旋回させて前記係合孔と前記係合フック部との係合と係合解除を可能とするブレード押圧機構と、を有する構成とすることができる。
【0012】
本発明の課題を解決する第3発明の穀粒のロール粉砕機は、第1発明の穀粒のロール粉砕機において、前記冷却水通水部は、前記ロール通水空間の軸中心上で前記ロール通水空間内に設けた中央軸部を有し、前記中央軸部内の軸方向一方側まで前記給水用通水路の終端部が形成され、前記中央軸部内の軸方向他端側まで前記排水用通水路の始端部が形成され、前記中央軸部に前記給水用通水路の終端部と前記ロール通水空間を連通する給水孔と、前記排水用通水路の始端部と前記ロール通水空間を連通する排水孔を径方向に形成した構成とすることができる。
【0013】
本発明の課題を解決する第4発明の穀粒のロール粉砕機は、第3発明の穀粒のロール粉砕機において、前記給水孔と前記排水孔は前記中央軸部の軸心の回りに等間隔に複数形成されると共に、軸方向にずらして配置した構成とすることができる。
【0014】
本発明の課題を解決する第5発明の穀粒のロール粉砕機は、第2発明の穀粒のロール粉砕機において、前記ブレード押圧機構の首振り部は、前記アクチュエータのアクチュエータロッドの先端部に固定した支持体と、前記係合ロッドの基端部を固定した旋回体と、前記支持体に対して前記旋回体を旋回可能に取り付ける首振り支軸と、前記係合フック部が前記係合孔に係合する係合位置で前記支持体に対して前記旋回体の旋回を阻止するロック手段と、を有する構成とすることができる。
【0015】
本発明の課題を解決する第6発明の穀粒のロール粉砕機は、第2発明または第5発明の穀粒のロール粉砕機において、前記スクレーパーの複数の係合部の近傍に設けた圧力センサーの検出情報と、設定された前記ブレードがロール表面に接する設定押圧力とを比較し、前記検出情報が設定押圧力と一致するように前記複数のアクチュエータを駆動する押圧力制御部を有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
第1発明の穀粒のロール粉砕機によれば、ロール本体内のロール通水空間の冷却水は、ロール通水空間の軸心側から径方向外方に向けてロール通水空間の内周壁面に当たり、ロール通水空間の他端側に向けて移動し、ロール通水空間の軸中心に向かって移動しながら排水用通水路に集水されてロール外に排水される。このため、オール通水空間内で冷却水が強制的に撹拌され、冷却効果が向上する。
【0017】
第2発明の穀粒のロール粉砕機によれば、スクレーパーの交換は、複数の係合ロッドを旋回させると複数の係合ロッドに設けた係合フック部がスクレーパーに設けた各係合部の係合孔との係合が解除される。このため、フレームからスクレーパー軸を取り外せばスクレーパーの交換が可能となる。その際、各アクチュエータをフレームから取り外す作業は不要なのでスクレーパーの交換作業が非常に容易となる。
【0018】
第3発明の穀粒のロール粉砕機によれば、ロール本体内に中央軸部を設けることで、給水用通水路と排水用通水路を設けることができ、また中央軸部に給水孔と排水孔を設けることでロール通水空間と給水用通水路と排水用通水路とを連通させることができる。
【0019】
第4発明の穀粒のロール粉砕機によれば、ロール通水空間内に均等に冷却水を撹拌させることができる。
【0020】
第5発明の穀粒のロール粉砕機によれば、係合位置に置いて係合フック部が係合孔から外れるのを確実に防ぐことができる。
【0021】
第6発明の穀粒のロール粉砕機によれば、ロール表面の全面に対してブレードを所定の押圧力で加圧接触させることができ、付着物の剥がし残りを防止することができる。また、押圧力を設定するだけで所望する押圧力でブレードをロール表面の全面に対して加圧接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明による穀粒のロール粉砕機の実施形態を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す穀粒のロール粉砕機の右側面図である。
【
図3】
図1に示す穀粒のロール粉砕機の上面図である。
【
図5】
図1に示す穀粒のロール粉砕機に設けられているロールユニットの斜視図である。
【
図6A】
図1に示す穀粒のロール粉砕機に設けられているロールユニットの固定ロールとスライドロールとの隙間を調整するロール間距離調整機構を示し、固定ロールに対してスライドロールの隙間を長くした状態の右側面図である。
【
図6B】
図6Aに示す状態からハンドルを回してスライドロールを固定ロールに近づけて隙間を狭くした状態の右側面図である。
【
図7】
図1に示すロールユニットの回転軸中心に沿った横断面図で、ロールの冷却構造を示している。
【
図8】
図7に示すロールユニットの軸受構造を示す回転軸中心に沿った横断面図である。
【
図9】
図5に示すロールユニットにスクレーパー装置を設けた右側面図である。
【
図10】
図7に示すロールユニットの固定ロールとスライドロールに対してスクレーパー装置をそれぞれ設けた右側面図を示し、粉剥がしブレードをロール表面に当接させた粉剥がし状態を示す。
【
図11】粉剥がしブレードを
図10に示すロール表面に当接させた位置から退避する退避位置に旋回移動させた状態の右側面図である。
【
図12】
図13に示すブレード部の一部を示す拡大斜視図である。
【
図18】
図16に示すブレード押圧機構によるスクレーパー装置の継脱動作を説明する図である。
【
図19】ブレードを所定の押圧力で固定ロールおよびスライドロールの表面に押圧させる押圧力制御回路を示す回路図である。
【
図20】
図19に示す押圧力制御回路における押圧力制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0024】
本発明による穀粒のロール粉砕機の構成を
図1~
図9に示す実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態において、ロールユニットを構成する一対の並列に設置したロールの軸方向を左右方向とし、一対のロールの並設方向を前後方向とする。
【0025】
図1~
図3において、穀粒のロール粉砕機1は、フレーム2に複数(本実施形態では4基)基のロールユニット3を上下方向に設置している。最上段のロールユニット3(3A)の上方に、穀粒として例えば洗米、浸漬された米粒(ワーク)が投入されるホッパー4が取り付けられ、最下段のロールユニット3(3D)の下方に排出ガイド部5を設けている。ロールユニット3は、前後方向に並設した固定ロール11とスライドロール12を含む。
【0026】
4基のロールユニット3の右側には、ロールユニット3を回転駆動する駆動部6がそれぞれ配置され、各駆動部6はフレーム2に固定され、外装板7により覆われている。
【0027】
固定ロール11とスライドロール12には、
図2、
図4、
図9に示すように、固定ロール本体11aの表面に付着したワーク粉砕時に生じたカス等の付着物をブレードで剥ぎ取る固定ロール用の第1スクレーパー装置8と、スライドロール本体12aの表面に付着したワーク粉砕時に生じたカス等の付着物をブレードで剥ぎ取るスライドロール用の第2スクレーパー装置9が固定ロール11およびスライドロール12の軸方向に沿って間隔を有して複数基(本実施形態ではそれぞれ5基)設けられる。
【0028】
【0029】
ロールユニット3は、後方に配置した固定ロール11に対し、前方に配置したスライドロール12を前後方向にスライド可能としている。固定ロール11は、固定ロール本体11aから左右両側にそれぞれ支出される左軸部11bと右軸部11cが左固定軸受ボックス13aと右固定軸受ボックス13bに回転自在に軸支される。左固定軸受ボックス13aと右固定軸受ボックス13bは、フレーム2に固定される。スライドロール12は、スライドロール本体11aから左右両側にそれぞれ支出される左軸部12bと右軸部12cが左スライド軸受ボックス14aと右スライド軸受ボックス14bに回転自在に軸支される。
【0030】
左スライド軸受ボックス14aと右軸受ボックス14bは、左ガイドレール部15aと右ガイドレール部15bにガイドされて前後方向に移動可能としている。左ガイドレール部15aと右ガイドレール部15bは、前後方向に延びる上下に対向した上レール15cと下レール15dとの間に装着され、前後方向に移動可能としている。左ガイドレール部15aの前面に左調整ネジ取り付け部16aが設けられ、右ガイドレール部15bの前面に右調整ネジ取り付け部16bが設けられている。
【0031】
左調整ネジ取り付け部16aと右調整ネジ取り付け部16bに設けた雌ねじ孔(不図示)に左調整ネジ17aと右調整ネジ17bが取り付けられる。左調整ネジ17aと右調整ネジ17bは、左調整ネジ取り付け部16aと右調整ネジ取り付け部16bを前後方向に貫通する。左調整ネジ17aの前端部に左調整ハンドル18aが取り付けられ、右調整ネジ17bの前端部に右調整ハンドル18bが取り付けられる。左調整ネジ17aの後端と、左固定軸受ボックス13aの前端部の間に、左スライド軸受ボックス14aを左固定軸受ボックス13aに向けて弾性的に押す左押圧力付与機構19aが配置されている。同様に、右調整ネジ17bの後端と、右固定軸受ボックス13bの前端部の間に、右スライド軸受ボックス14bを右固定軸受ボックス13bに向けて弾性的に押す右押圧力付与機構19bが配置されている。
【0032】
左押圧力付与機構19aと右押圧力付与機構19bは同一に構成で、以下の構成を有する。左押圧力付与機構19a(右押圧力付与機構19b)は、左スライド軸受ボックス14a(右スライド軸受ボックス14b)の前端と、左調整ネジ17a(右調整ネジ17b)の後端部に回転自在に取り付けたバネ当接体20aの後端との間に配置した第1バネ20bと、左固定軸受ボックス13a(右固定軸受ボックス13b)の前端部に形成された凹部13cと左スライド軸受ボックス14a(右スライド軸受ボックス14b)の後端との間に配置した第2バネ20cとを有する。左調整ネジ17a(右調整ネジ17b)には、締付ナット21が螺着し、左調整ネジ取り付け部16a(右調整ネジ取り付け部16b)の前面に当接するように締付ナット21を締め付けることにより、左調整ネジ17aの螺進を阻止し、左調整ネジ取り付け部16a(右調整ネジ取り付け部16b)の螺進位置を任意の位置に固定する。
【0033】
ロールユニット3は、
図6Aに示すように右調整ハンドル18bが手前側に位置する状態から左調整ハンドル18a(右調整ハンドル18b)を例えば右回り方向に回転すると、
図6Bに示すように左調整ネジ17a(右調整ネジ17b)は後方に向けて螺進し、左押圧力付与機構19a(右押圧力付与機構19b)の作用により、左スライド軸受ボックス14a(右スライド軸受ボックス14b)を左固定軸受ボックス13a(右固定軸受ボックス13b)に向けて弾性的に押す。その結果、スライドロール12が固定ローラ11に押し付けられてニップ圧が増加する。左調整ハンドル18aと右調整ハンドル18bの回転数を調整して、固定ロール11とスライドロール12のニップ圧を所望の値に調整する。
【0034】
固定ロール11の右軸部11cには、駆動部6の回転動力が無端状の駆動チェーン6aを介して伝達される入力ギア6bが取り付けられている。駆動部6は、
図1、
図2に示すように、電動モータ6cモータ軸に取り付けられたモータギア6dに駆動チェーン6aが掛け回され、電動モータ6cの回転により固定ロール11を回転駆動する。
【0035】
ロールユニット3の更なる構成を
図7に基づいて説明する。
【0036】
固定ロール11とスライドロール12は加圧接触するニップ部で互いに向かい合う方向に回転する。固定ロール11の左軸部11bに取り付けた第1連結ギア22aと、スライドロール12の左軸部12bに取り付けた第2連結ギア22bが互いに噛合し、固定ロール11の回転をスライドロール12に伝達する。
図5において、ワークの粉砕処理は、入力ギア6bを反時計回り方向に回転させて固定ロール11を反時計回り方向に回転させ、スライドロール12を時計回り方向に回転させる。本実施形態において、第1連結ギア22aと第2連結ギア22bは、スライドロール12の1回転に対し、固定ロール11を1.3回転させるギア比に設定し、ニップ部における固定ロール11とスライドロール12の回転方向は下向きになる。したがって、ニップ部の上方から供給されたワークは、ニップ部においてすり潰されるように粉砕されて下方に落下する。
【0037】
次に、
図7に基づいて固定ロール11とスライドロール12の構造を説明する。なお、スライドロール12の構造は固定ロール11と略同一の構造とし、異なるのはスライドロール12の右軸部12cの長さが固定ロール11の右軸部11cよりも軸方向の長さが短い点だけで、冷却水の通水経路である冷却水通水部の構成も固定ロール11と同様である。
【0038】
固定ロール11は、円筒形状の固定ロール本体11aの左右両側に、回転軸中心L1と同一軸心上に軸方向外方に向けて回転軸をなす左軸部11bと右軸部11cが設けられる。また、固定ロール本体11aは、回転軸中心L1と同一軸心上に、中央軸部23が設けられ、中央軸部23の外周面と固定ロール本体11aの内周壁面との間に冷却水(CW)が通水される固定ロール通水空間24が形成される。右軸部11cの端面から中央軸部23の右側の一部をなす右一部領域(終端部)23aまでには、回転軸中心L1と同一軸心上に冷却水(CW)が通水される給水用通水路25が軸方向に沿って形成され、左軸部11bの端面から中央軸部23の左側の一部をなす左一部領域(始端部)23bまでには、回転軸中心L1と同一軸心上に冷却水が通水される排水用通水路26が軸方向に沿って形成される。給水用通水路25と排水用通水路26は固定ロール中央軸部23の左右の途中まで形成され、給水用通水路25と排水用通水路26の先端は閉じられ、給水用通水路25と排水用通水路26とは非連通状態となっている。
【0039】
すなわち、給水用通水路25は、固定ロール通水空間24内まで終端部23aが延びていて、排水用通水路26は固定ロール通水空間24内の始端部23bから左軸部11bの端部まで延びている。
【0040】
中央軸部23の右一部領域23aには、給水用通水路25に通じる複数の給水孔27が径方向に形成され、給水用通水路25と固定ロール通水空間24とを複数の給水孔27で連通させている。複数の給水孔27は、回転軸中心L1を中心として周方向に異なる角度位置に形成されると共に、軸方向において異なる位置に形成されている。例えば2個の給水孔27を設けた場合、2個の給水孔27は周方向に180度の角度間隔を有して設け、3個の給水孔27を設けた場合には周方向に120度の角度間隔を有して設ける。
【0041】
中央軸部23の左一部領域23bには、右一部領域23aと同様に、排水用通水路26に通じる複数の排水孔28が径方向に形成され、排水用通水路26と固定ロール通水空間24とを複数の排水孔28で連通させている。複数の排水孔28は、回転軸中心L1を中心として周方向に異なる角度位置に形成されると共に、軸方向において異なる位置に形成されている。例えば2個の排水孔28を設けた場合、2個の排水孔28は、周方向に180度の角度間隔を有して設け、3個の排水孔28を設けた場合には周方向に120度の角度間隔を有している。
【0042】
固定ロール11の左軸部11bの軸端部には、左ロータリージョイント29aが取り付けられ、固定ロール11の右軸部11cの軸端部には右ロータリージョイント29bが取り付けられる。右ロータリージョイント29bは冷却水給水配管(不図示)に接続され、左ロータリージョイント29aは冷却水排水配管(不図示)に接続される。前記冷却水給水配管から右ロータリージョイント29bを介して給水用通水路25に給水された冷却水(CW)は、複数の給水孔27を通して固定ロール通水空間24内に通水される。固定ロール通水空間24内に通水された冷却水は、複数の排水孔28を介して排水用通水路26に集水され、左ロータリージョイント29aを介して前記冷却水排水配管に排水される。
【0043】
複数の給水孔27から固定ロール通水空間24内には固定ロール通水空間24の内周壁面に向かって放射方向に冷却水が通水されながら左一部領域23bに向けて移動する。固定ロール通水空間24の内周壁面に向けて冷却水が放射方向に通水されると、固定ロール通水空間24の内周壁面に当たった冷却水は中央軸部23側に向かい、固定ロール通水空間24内で撹拌されながら左一部領域23bの複数の排水孔28を介して排水用通水路26に集水されて前記冷却水排水配管に排水される。固定ロール通水空間24内の冷却水は、固定ロール11の固定ロール本体11aの内壁面に接触して冷却し、高温となった冷却水が中央軸部23に向かい、低温の冷却水が固定ロール本体11aの内壁面に接触するため、冷却効果が向上する。
【0044】
固定ロール11には、固定ロール本体11aの両外側端にドーナツ盤状のフランジ30がそれぞれ固定され、両フランジ30によりスライドロール本体12aと固定ロール本体11aとのニップ部を覆うようにしている。
【0045】
スライドロール12は、スライドロール本体12aの左右両側に、回転軸中心L2と同一軸心上に左軸部12bと右軸部12cが設けられる。スライドロール本体12aは、回転軸中心L2と同一軸心上に、スライドロール中央軸部31が設けられ、スライドロール中央軸部31の外周面とスライドロール本体12aの内周壁面との間に冷却水(CW)が通水されるスライドロール通水空間32が形成される。右軸部12cの端面からスライドロール中央軸部31の右側の一部の領域をなす右一部領域(終端部)33aまでには、回転軸中心L2と同一軸心上に冷却水(CW)が通水される給水用通水路34が軸方向に沿って形成される。左軸部12bの端面からスライドロール中央軸部31の左側の一部の領域をなす左一部領域(始端部)33bまでには、回転軸中心L2と同一軸心上に冷却水が通水される排水用通水路35が軸方向に沿って形成される。給水用通水路34と排水用通水路35はスライドロール中央軸部31の左右の途中まで形成され、スライドロール中央軸部31に形成される給水用通水路34と排水用通水路35の先端は閉じられ、給水用通水路34と排水用通水路35とは非連通状態となっている。
【0046】
すなわち、給水用通水路34は、スライドロール通水空間32内まで終端部33aが延びていて、排水用通水路35はスライドロール通水空間32内の始端部33bから左軸部12bの端部まで延びている。
【0047】
スライドロール中央軸部31の右一部領域33aには、給水用通水路34に通じる複数の給水孔36が径方向に形成され、給水用通水路34とスライドロール通水空間32とを複数の給水孔36で連通させている。複数の給水孔36は、回転軸中心L2を中心として周方向に異なる角度位置に形成されると共に、軸方向において異なる位置に形成されている。例えば2個の給水孔36を設けた場合、2個の給水孔36は周方向に180度の角度間隔を有して設け、3個の給水孔36を設けた場合には周方向に120度の角度間隔を有して設ける。
【0048】
スライドロール中央軸部31の左一部領域33bには、右一部領域33aと同様に、排水用通水路35に通じる複数の排水孔37が径方向に形成され、排水用通水路35とスライドロール通水空間32とを複数の排水孔37で連通させている。複数の排水孔37は、回転軸中心L2を中心として周方向に異なる角度位置に形成されると共に、軸方向において異なる位置に形成されている。例えば2個の排水孔37を設けた場合、2個の排水孔37は、周方向に180度の角度間隔を有して設け、3個の排水孔37を設けた場合には周方向に120度の角度間隔を有している。
【0049】
スライドロール12の左軸部12bの軸端部には、左ロータリージョイント38aが取り付けられ、スライドロール12の右軸部12cの軸端部には右ロータリージョイント38bが取り付けられる。右ロータリージョイント38bは冷却水給水配管(不図示)に接続され、左ロータリージョイント38aは冷却水排水配管(不図示)に接続される。前記冷却水給水配管から右ロータリージョイント38bを介して給水用通水路34に給水された冷却水(CW)は、複数の給水孔36を通してスライドロール通水空間32内に通水される。スライドロール通水空間32内に通水された冷却水は、複数の排水孔37を介して排水用通水路35に集水され、左ロータリージョイント38aを介して前記冷却水排水配管に排水される。
【0050】
複数の給水孔36からスライドロール通水空間32内にはスライドロール通水空間32の内周壁面に向かって放射方向に冷却水が通水されながら左一部領域33b側に向けて移動する。スライドロール通水空間32の内周壁面に向けて冷却水が放射方向に通水されると、スライドロール通水空間32の内周壁面に当たった冷却水はスライドロール中央軸部31側に向かい、スライドロール通水空間32内で撹拌されながら左一部領域33bの複数の排水孔37を介して排水用通水路35に集水されて前記冷却水排水配管に排水される。スライドロール通水空間32内の冷却水は、スライドロール12のスライドロール本体12aの内壁面に接触して冷却し、高温となった冷却水がスライドロール中央軸部31に向かい、低温の冷却水がスライドロール本体12aの内壁面に接触するため、冷却効果が向上する。
【0051】
左固定軸受ボックス13a、右固定軸受ボックス13b、左スライド軸受ボックス14a、右スライド軸受ボックス14bは、いずれも自動調心玉軸受構造で、ボールベアリング39を1列に設けた内側軸受部40とボールベアリング39を2列に設けた外側に設けた外側軸受部41を連設した構成とし、左スライド軸受ボックス14aの拡大図を
図8に示す。内側軸受部40の内側にリップシール42が設けられ、固定ロール本体11aとスライドロール本体12aとにより粉砕された粉が内側軸受部40と外側軸受部41内に入り込まないようにしている。左固定軸受ボックス13a、右固定軸受ボックス13b、左スライド軸受ボックス14a、右スライド軸受ボックス14bを自動調心玉軸受構造とすることにより、固定ロール本体11aとスライドロール本体12aに対して軸方向に沿って等分布に荷重が加わらず、回転軸中心L1、L2が撓んでも適正に左軸部11b、12b、右軸部11c、12cを軸支して固定ロール11とスライドロール12をスムーズに回転させることができ、所望する粒度にワークを粉砕させることができる。
【0052】
固定ロール用の第1スクレーパー装置8と、スライドロール用の第2スクレーパー装置9は同一構造とし、
図9に示すように、前後方向に略対称に配置している。なお、第1スクレーパー装置8と第2スクレーパー装置9の同じ構成要素には同じ符号を付し、第2スクレーパー装置9の構成についてはその説明を省略する。
【0053】
第1スクレーパー装置8は、固定ロール本体11aの表面に付着した付着物をブレードで剥ぎ取るスクレーパー50と、スクレーパー50のブレードを固定ロール本体11aの表面に押圧するブレード押圧機構60とを有し、ブレード押圧機構60を駆動して、スクレーパー50を
図10に示す押圧位置から、固定ロール本体11aの表面から退避した
図11に示す退避位置との間を移動可能とすると共に、押圧力を調整可能とする。
【0054】
スクレーパー50の構成を
図12~
図15に基づいて説明する。なお、
図12の説明において、紙面の略左右方向(固定ロール本体11aの軸方向)を長手方向、紙面の上下方向を上下方向(又は短手方向)とし、前記長手方向と前記上下方向と互いに直交する方向を前後方向として説明する。
【0055】
スクレーパー50は、例えば金属製の板材により固定ロール本体11の軸方向に沿って細長い矩形形状に形成された基板51と、基板51の前面側に取り付けられたブレード52を有する。基板51は、固定ロール本体11aの全長と略等長とし、複数のだるま孔51aが長手方向に適当間隔に形成されている。ブレード52は、例えば金属製の板材により固定ロール本体11aの軸方向に沿って細長い矩形平板形状に形成され、短手方向の先端52aを尖らした刃形状に形成され、先端52aが固定ロール本体11aの外表面に当接する。ブレード52の後面側には基板51のだるま孔51aに対応して係合ボルト52bが取り付けられ、だるま孔用ボルト52bが対応するだるま孔51aに挿入されて係合することによりブレード52が基板51に固定される。
【0056】
基板51にブレード52が固定された状態において、基板51とブレード52に上下方向に細長い第1の長孔(不図示)を重ねて形成しており、前記第1の長孔を長手方向に沿って間隔を有して複数個所(本実施形態では5箇所)に設けている。基板51の後面側には、前記第1の長孔に対応してL型ブラケット53が設けられる。L型ブラケット53は第1片53aに前記第1の長孔に対応して第2の長孔53bが形成されている。第2の長孔53b側からボルト54aが前記第1の長孔を貫通し、ボルト54aの貫通部にフック係合ナット54bが螺着される。係合ナット54bの前端面には係合孔54cが形成されており、係合孔54cが左右方向に向くように係合ナット54bがボルト54aに固定される。
【0057】
L型ブラケット53の第2片53cの下面には、軸受けブロック55が固定される。
図15および
図9に示すように、軸受けブロック55の下面には、スカート58が取り付けられ、粉砕された粉が拡散せずに下方に落下排出されるように案内する。
【0058】
軸受けブロック55には、長手方向に沿って軸孔55aが形成されている。長手方向に沿って配置される5個の軸受ブロックの軸孔55aには、スクレーパー軸56が回転自在に装着されている。
図13および
図14に示すように、スクレーパー軸56の両端部56a、56bは、基板51の長手方向両端よりも外方に向けて延び、左軸受け部57aと右軸受け部57bに軸支されている。左軸受け部57aと右軸受け部67bはフレーム2に対して不図示のボルト、ナットにより取り外し可能に取り付けられる。したがって、穀粒のロール粉砕機1の後側(背面側)の外装板7を取り外し又は開閉ドア(不図示)を開き、左軸受け部57aと右軸受け部57bをフレーム2から取り外すと、スクレーパー50をロール粉砕機1の外部に取り出すことができ、スクレーパー50の交換が可能となる。但し、後記するブレード押圧機構60の係合フックを係合ナット54bに設けた係合孔54cから係合解除することが必要となる。
【0059】
【0060】
ブレード押圧機構60は、不図示の圧縮空気が供給されるアキュムレータに接続されるアクチュエータであるエアシリンダー61と、エアシリンダー61の前部に固定された連結アダプター62に設けた左右の傾動支軸63a、63bにそれぞれ傾動可能に軸支された左右の取り付けブラケット64a、64bを有する。左右の取り付けブラケット64a、64bはフレーム2に固定され、エアシリンダー61が左右の傾動支軸63a、63bを中心に傾動可能としている。
【0061】
エアシリンダー61のピストンロッド(アクチュエータロッド)65の先端部に首振り部66が取り付けられ、首振り部66の前部に係合ロッド67が首振り可能(旋回可能)に取り付けられている。係合ロッド67の先端部に係合フック部68が形成されている。係合フック部68は、スクレーパー50の係合ナット54bに設けた係合孔54cに係合可能としている。
【0062】
首振り部66は、後端部にピストンロッド65の先端部がねじ結合される支持体70と、係合ロッド67の後端部がねじ結合される旋回体71とを首振り支軸72を中心に旋回可能に取り付けている。係合ロッド67の後端部に螺合するロックナット67aにより、係合ロッド67は係合フック部68を所定の向きに向けた状態で固定される。
【0063】
支持体70は、直方体形状に形成され、前部側の高さを低くした段付き形状とし、高さが低い低床部73に旋回体71が首振り支軸72により旋回可能に配置されており、首振り支軸72の両端部を固定ナット72aにより固定している。
図16に示すように、旋回体71の後端縁は湾曲形状に形成され、旋回体71が旋回する際に支持体70の段付き面と干渉しないようにしている。低床部73の左右両側部74、75を1段の段付き形状に形成している。
【0064】
低床部73の前端部にロック手段をなす矩形形状のキャップ76が取り外し可能に装着されている。キャップ76は後端面が開口し、前端面に設けた壁部77に係合ロッド67がガタなく挿通するロッド挿通孔78が形成されている。キャップ76の左側壁部79に固定ネジ80が挿通されるネジ挿通孔81が形成されている。低床部73の左側部74には、キャップ76が低床部73の前端部に装着された状態で、ネジ挿通孔81に対応して固定ネジ80が螺合するネジ穴82が形成されている。
【0065】
図17Bに示すように、キャップ76内の左右両側の内側壁部83、84は、低床部73の段付き形状の左側部74と右側部75と嵌合する左嵌合凹部85と右嵌合凹部86が形成されている。キャップ76が低床部73の前端部に装着された状態において、キャップ76の左右の嵌合凹部85、86が低床部73の左右の側部74、75に嵌合しているため、キャップ76は左右方向への移動が阻止されると共に、係合ロッド76の軸回り方向への回転も阻止される。そして、固定ネジ80をネジ穴82にネジ挿通孔81を通してねじ込むと、キャップ76の前後方向の移動も阻止され、キャップ76が支持体70に完全に固定される。
【0066】
係合ロッド67はキャップ76のロッド挿通孔78に予め挿通されているため、キャップ76が低床部73の前端部に装着された状態では、係合ロッド67の旋回が阻止される。これに対し、固定ネジ80を取り外してキャップ76を低床部73の前端部から取り外して前方に移動させると、係合ロッド67の旋回動作が可能となる。
【0067】
図16において、係合ロッド67がピストンロッド65と略同一軸心上に存在する位置を係合位置とし、係合ロッド67がピストンロッド65に対して傾斜した位置を係合解除位置とする。
図18に示すように、係合ロッド67が係合位置に位置する状態で、係合フック部68は、スクレーパー50の係合ナット54bに設けた係合孔54cに係合する。キャップ76を低床部73の前端部から取り外し、手動操作で係合ロッド67を係合解除方向に旋回させると、係合フック部68が係合孔54cから抜け出て係合が解除される。
【0068】
第1スクレーパー装置8と第2スクレーパー装置9の取り付け位置を
図10および
図11に示す。第1スクレーパー装置8のスクレーパー50は、固定ロール本体11aの下方で、スライドロール本体12aとのニップ部寄りに配置され、ブレード52の先端(刃先)52aが固定ロール本体11aの回転方向に向かう方向に向けて固定ロール本体1aの表面に接触する。スクレーパー軸56は係合ロッド67よりも下方に位置する。固定ロール本体11aの表面に対するブレード52の押圧力を高くするには、ピストンロッド65が縮む方向にエアシリンダー61を駆動する。逆に、ピストンロッド65が伸びる方向にエアシリンダー61を駆動すると、
図11に示すように、ブレード52は固定ロール本体11aの表面から離れて略水平位置までスクレーパー軸56を中心に回転する。
【0069】
図11に示すように、ブレード52が略水平な位置に移動した状態で、係合ロッド67を係合位置から係合解除位置に旋回させることにより、係合フック部68を係合孔54cから容易に取り外すことができる。エアシリンダー61はピストンロッド65を伸縮させると、左右の傾動支軸63a、63bを中心に傾動し、
図11に示す係合解除位置では略水平となる。このため、スクレーパー50の取り出しが容易となる。スクレーパー50を取り出す際に、エアシリンダー61を含むブレード押圧機構60をフレーム2から取り外す必要がない。
【0070】
本実施形態の首振り部66は、ピストンロッド65に対し、係合ロッド67を係合位置に旋回不能に保持し、旋回不能状態を解除して係合ロッド67を旋回可能として係合フック部68を係合孔54cから係合を抜け出すことを可能とする。すなわち、首振り部66は、支持体70に対し、旋回体77を首振り支軸72により旋回可能に取り付け、旋回ロック手段であるキャップ76により係合ロッド67を係合位置で旋回不能に保持し、キャップ76を低床部73の前端部から取り外すロック解除操作を行うことにより、係合ロッド67を手動により係合位置から係合解除位置へ移動可能とする。首振り部66において、旋回ロック手段は、キャップ76を用いた構成に限定されるものではなく、例えば旋回体71を支持体70にネジ等で固定する構成であっても良い。
【0071】
図19に示す回路図に基づいて、ブレードを所定の押圧力で固定ロール11の固定ロール本体11aおよびスライドロール12のスライドロール本体12aの表面に押圧させる押圧力制御回路100を説明する。押圧力制御回路100は、上下に4段配置された各ロールユニット3の固定ロール11およびスライドロール12毎に押圧力を制御する。本実施形態において、スクレーパー50の基板51の裏面側でL型ブラケット53の近傍に圧電素子等の圧力センサー90を配置する。ブレード押圧機構60の駆動でブレード52の押圧力が正確に反映できる箇所としてL型ブラケット53の近傍を選択しているが、この箇所に限定されるものではない。圧縮空気源であるアキュムレータ91からの圧縮空気は、エアシリンダー61の吸排気口に電磁弁92を介して供給され、電磁弁92の切り替え操作によりピストンロッド65の伸縮方向が切り替えられる。
【0072】
押圧力制御回路100は、各圧力センサー90からの検出信号を取得する押圧力制御部101と、制御対象のロールを段毎で、固定ロール11またはスライドロール12別に選択するロール選択部102と、押圧力を設定する押圧力設定部103と、ロール選択部102で選択したロールと、押圧力設定部103で設定した押圧力と、圧力センサー90で検出した圧力を表示する表示部104を有する。
【0073】
押圧力制御部101は、CPU等のプロセッサー105と、ROM106およびRAM107を備えたメモリ108を有する。プロセッサー105は、ROM106に記録された押圧力制御システム全体の動作を行うプログラムおよびストレージ109に記録された押圧力制御プログラムをRAM107に展開し、各圧力センサー90で検出した圧力情報を取得して、押圧力設定部103で設定した押圧力となるように各電磁弁92に押圧力制御信号を出力する。各エアシリンダー61は、電磁弁92によりピストンロッド65が伸縮し、ブレード52が長手方向の全長において、例えば固定ロール本体11aの長手方向の全長において、ブレード52が設定した押圧力で加圧接触する。したがって、固定ロール本体11aの表面に付着した付着物を残らず剥ぎ取ることが可能となる。
【0074】
前記押圧力制御プログラムによる押圧力制御処理を
図20に示すフローチャートに基づいて説明する。なおステップをSと略す。
【0075】
図20に示すフローチャートは、例えば最上段のロールユニット3を構成する1本の固定ロール11の固定ロール本体11aに対して左右方向に配置した5基のエアシリンダー61の中で1基のエアシリンダー61に対してエアーを供給する場合を示し、設定押圧力の設定が終了すると、残りのエアシリンダー61へのエアー供給を順次制御する。
【0076】
図20において、押圧力制御処理がスタートすると、先ずS1において、押圧力の制御対象となるロールを選択し、S2に進む。S2において押圧力の設定が行われると、S3において圧力センサー90の検出情報を取得してS4に進む。
【0077】
S4において、設定圧力と取得した検出情報である検出圧力とが等しいか否かを比較する。設定圧力と検出圧力が等しいとこの処理を終了し、次のエアシリンダー61に対する処理を行う。S4において、設定圧力と検出圧力が等しくないと、S5に進み、検出圧力が設定圧力未満か否かを判断する。検出圧力が設定圧力に達していないとS6に進み、検出圧力が設定圧力を超えている場合にはS7に進む。
【0078】
S6において、ロール表面に対するブレード52の加圧力が不足しているので、圧力センサー90に対応するエアシリンダー61のピストンロッド65が縮む方向へ移動するように電磁弁92のソレノイドにエアー供給の切り替え信号を出力し、S4に戻り、設定圧力と検出圧力が等しくなるまでのこのルーチンを繰り返す。そして、設定圧力と検出圧力が等しくなると、この処理を終了する。
【0079】
S7において、ロール表面に対するブレード52の加圧力がオーバーしているので、圧力センサー90に対応するエアシリンダー61のピストンロッド65が伸びる方向へ移動するように電磁弁92のソレノイドにエアー供給の切り替え信号を出力し、S4に戻り、設定圧力と検出圧力が等しくなるまでのこのルーチンを繰り返す。そして、設定圧力と検出圧力が等しくなると、この処理を終了する。エアシリンダー61等を含む5基のブレード押圧機構60は機械の歪等の物理的性質が個々に異なることから、例えば加圧力を増加するために縮み方向に同じ空気圧を5基のエアシリンダー61に供給しても各エアシリンダー61に対応するブレード52がロール表面に接触する加圧力は異なり、所望する加圧力よりも低い部分のロール表面にカスが残りやすい。しかし、本実施形態において、実際にブレード52によってロール表面が加圧される加圧力を各圧力センサー90が検出(実測値)し、検出圧力が設定圧力となるように制御している。したがって、5基のブレード押圧機構60において、機械歪等の物理的性質が個々に異なっていても、ブレード52はロール表面に設定圧力で加圧接触し、ロール表面にカスを残すことなくブレード52により掻きとることができる。
【0080】
なお、5基のエアシリンダー61に対して同時にエアー供給の制御を行うようにしても良い。
【0081】
また、同じロールユニット3の固定ロール11とスライドロール12に対して配置した10基のエアシリンダー61へのエアー供給を順次制御するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、米、麦等の穀粒を粉砕して粉状にする粉砕機に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1:穀粒のロール粉砕機 2:フレーム 3(3A、3D):ロールユニット
4:ホッパー 5:排出ガイド部
6:駆動部 6a:駆動チェーン 6b:入力ギア 6c:電動モータ
6d:モータギア 7:外装板
8:第1スクレーパー装置 9:第2スクレーパー装置
11:固定ロール 11a:固定ロール本体 11b:左軸部
11c:右軸部
12:スライドロール 12a:スライドロール本体 12b:左軸部
12c:右軸部
13a:左固定軸受ボックス 13b:右固定軸受ボックス 13c:凹部
14a:左スライド軸受ボックス 14b:右スライド軸受ボックス
15a:左ガイドレール部 15b:右ガイドレール部
15c:上レール 15d:下レール 16a:左調整ネジ取り付け部
16b:右調整ネジ取り付け部 17a:左調整ネジ 17b:右調整ネジ
18a:左調整ハンドル 18b:右調整ハンドル
19a:左押圧力付与機構 19b:右押圧力付与機構
20a:バネ当接体 20b:第1バネ 20c:第2バネ
21:締付ナット 22a:第1連結ギア 22b:第2連結ギア
23:中央軸部 23a:右一部領域(終端部) 23b:左一部領域(始端部)
24:固定ロール通水空間 25:給水用通水路 26:排水用通水路
27:給水孔 28:排水孔
29a:左ロータリージョイント 29b:右ロータリージョイント
30:フランジ
31:スライドロール中央軸部 32:スライドロール通水空間
33a:右一部領域(終端部) 33b:左一部領域(始端部)
34:給水用通水路 35:排水用通水路 36:給水孔 37:排水孔
38a:左ロータリージョイント 38b:右ロータリージョイント
39:ボールベアリング 40:内側軸受部 41:外側軸受部
42:リップシール
50:スクレーパー 51:基板 52:ブレード
51a:だるま孔 52a:先端 52b:だるま孔用ボルト
53:L型ブラケット 53a:第1片 53b:第2の長孔 53c:第2片
54a:ボルト 54b:フック係合ナット 54c:係合孔
55:軸受けブロック 55a:軸孔
56:スクレーパー軸 56a、56b:端部
57a:左軸受け部 57b:右軸受け部 58:スカート
60:ブレード押圧機構 61:エアシリンダー 62:連結アダプター
63a、63b:傾動支軸 64a、64b:取り付けブラケット
65:ピストンロッド 66:首振り部 67:係合ロッド 67a:固定ナット
68:係合フック部 70:支持体 71:旋回体
72:首振り支軸 72a:固定ナット
73:低床部 74:左側部 75:右側部 76:キャップ
77:壁部 78:ロッド挿通孔 79:左側壁部 80:固定ネジ
81:ネジ挿通孔 82:ネジ穴 83、84:内側壁部
85:左嵌合凹部 86:右嵌合凹部 90:圧力センサー
91:アキュムレータ 92:電磁弁
100:押圧力制御回路 101:押圧力制御部 102:ロール選択部
103:押圧力設定部 104:表示部 105:プロセッサー
106:ROM 107:RAM 108:メモリ 109:ストレージ
L1:回転軸中心 L2:回転軸中心