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特開2024-56437コーティング装置、およびコーティング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056437
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】コーティング装置、およびコーティング方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/34 20060101AFI20240416BHJP
   B05B 1/02 20060101ALI20240416BHJP
   B05B 7/10 20060101ALI20240416BHJP
   B05B 13/02 20060101ALI20240416BHJP
   B05B 15/60 20180101ALI20240416BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20240416BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B05B1/34 101
B05B1/02
B05B7/10
B05B13/02
B05B15/60
B05D1/02 Z
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163304
(22)【出願日】2022-10-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「研究総括」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼川 大司
(72)【発明者】
【氏名】明永 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】宮地 計二
(72)【発明者】
【氏名】星野 友
【テーマコード(参考)】
4D073
4D075
4F033
4F035
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB01
4D073BB03
4D073CA20
4D073CB02
4D073CB06
4D075AA01
4D075AA39
4D075AA51
4D075AA71
4D075AA76
4D075AA81
4D075BB57Y
4D075BB91Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DC19
4D075EA05
4D075EA45
4F033AA01
4F033BA03
4F033CA01
4F033DA05
4F033EA06
4F033JA08
4F033KA03
4F033NA01
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB13Y
4F033QB18
4F033QC03
4F033QD02
4F033QD10
4F033QD19
4F033QE05
4F033QE14
4F033QE23
4F033QF07Y
4F033QF08X
4F035CA02
4F035CA04
4F035CB01
4F035CB13
4F035CC01
4F035CC04
(57)【要約】
【課題】塗膜の膜厚のバラつきを抑制できる。
【解決手段】所定の搬送方向に搬送される作業対象物50の主面50Aにコーティングを施すコーティング装置10であって、搬送方向に交わる幅方向に沿って設けられ、主面50Aに塗布液を噴霧する複数のノズル30を備え、複数のノズル30の各々は、塗布液が主面50Aと交わる軸周りに旋回する旋回流を含んで噴霧されるように構成されており、複数のノズル30は、第1回転方向に旋回する旋回流を噴霧する複数の第1ノズル30Aと、第1回転方向と反対向きの第2回転方向に旋回する旋回流を噴霧する複数の第2ノズル30Bと、を含んでいる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送方向に搬送される作業対象物の主面にコーティングを施すコーティング装置であって、
前記搬送方向に交わる幅方向に沿って設けられ、前記主面に塗布液を噴霧する複数のノズルを備え、
前記複数のノズルの各々は、前記塗布液が前記主面と交わる軸周りに旋回する旋回流を含んで噴霧されるように構成されており、
前記複数のノズルは、第1回転方向に旋回する前記旋回流を噴霧する複数の第1ノズルと、前記第1回転方向と反対向きの第2回転方向に旋回する前記旋回流を噴霧する複数の第2ノズルと、を含んでいるコーティング装置。
【請求項2】
前記複数の第1ノズル及び前記複数の第2ノズルは、前記幅方向について交互に配置されている請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記複数の第1ノズル及び前記複数の第2ノズルは、前記幅方向について交互に千鳥配列で配置されている請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項4】
前記複数の第1ノズル及び前記複数の第2ノズルは、各々が第1間隔を空けて配置されており、前記複数の第1ノズルは、前記複数の第2ノズルから前記搬送方向について第2間隔を空けて配置されており、前記第2間隔は、前記第1間隔に0.25を乗じた値以上である請求項3に記載のコーティング装置。
【請求項5】
前記複数のノズルの各々と接続され、これらに前記塗布液を供給する液供給路と、
前記複数のノズルの各々と接続され、これらに圧縮ガスを供給するガス供給路と、を備え、
前記複数のノズルの各々は、
前記液供給路からの前記塗布液を噴出する液噴出口と、
前記ガス供給路からの前記圧縮ガスを噴出する複数のガス噴出口と、
前記圧縮ガスの流通方向について前記ガス噴出口の上流側に設けられ、前記ガス噴出口と連通する複数のガス中継口であって、その数が前記ガス噴出口の数よりも多いガス中継口と、を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【請求項6】
長尺状の前記作業対象物を前記複数のノズルに向かって送り出す第1ロールと、
前記複数のノズルによってコーティングが施された前記作業対象物を巻き取る第2ロールと、を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコーティング装置。
【請求項7】
作業対象物を所定の搬送方向に搬送し、
搬送される前記作業対象物の主面に対して、前記主面と交わる軸周りに旋回する旋回流に沿って塗布液を噴霧し、
前記旋回流は、前記搬送方向に交わる幅方向に沿って複数形成されており、
前記複数の旋回流は、第1回転方向に旋回する第1旋回流と、前記第1回転方向と反対向きの第2回転方向に旋回する第2旋回流と、を含むように形成されているコーティング方法。
【請求項8】
前記第1旋回流及び前記第2旋回流は、前記幅方向について交互に並んで形成されている請求項7に記載のコーティング方法。
【請求項9】
前記第1旋回流及び前記第2旋回流は、前記幅方向について交互に千鳥配列で並んで形成されている請求項7に記載のコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、コーティング装置、およびコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続的に搬送されるフィルム状等の作業対象物(ワーク)に対して塗布液を噴霧することで、撥水膜、絶縁膜、光学膜等の薄膜を成膜するコーティング技術が知られている。このようなスプレー法によるコーティングは、ワークの表面に微細な凹凸加工が施されている場合であっても、凹凸に追従した緻密な成膜が可能であり、生産性にも優れている利点がある。
【0003】
特許文献1には、その一例として、フレキシブルプリント配線板用基板をロールtoロール方式で水平方向に沿って搬送しつつ、当該基板に各薬液(現像液、エッチング液、剥離液)を噴霧するスプレー式水平搬送処理装置が開示されている。特許文献1に記載の処理装置は、基板に噴霧される各薬液の接触時間を調整するために、薬液を遮蔽する可動性の遮蔽板を備える。遮蔽板によれば、各工程の処理時間を容易に調整できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-283101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでスプレー法によるコーティングにおいて、ワークに塗布液を噴霧するノズルは、一つだけではなく、複数設けられる。塗布液は、各ノズルから噴霧されるため、複数のノズルからの微粒化された塗布液の流れが互いに干渉すると、塗りムラが生じてしまうことがある。その結果、ワークに成膜された薄膜(塗膜)は、膜厚にバラつきが生じ、機能低下や欠陥の原因となってしまう。
【0006】
本願明細書に記載の技術は上記のような実情に基づいて完成されたものであって、塗膜の膜厚のバラつきを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願明細書に記載の技術に関わるコーティング装置は、所定の搬送方向に搬送される作業対象物の主面にコーティングを施すコーティング装置であって、前記搬送方向に交わる幅方向に沿って設けられ、前記主面に塗布液を噴霧する複数のノズルを備え、前記複数のノズルの各々は、前記塗布液が前記主面と交わる軸周りに旋回する旋回流を含んで噴霧されるように構成されており、前記複数のノズルは、第1回転方向に旋回する前記旋回流を噴霧する複数の第1ノズルと、前記第1回転方向と反対向きの第2回転方向に旋回する前記旋回流を噴霧する複数の第2ノズルと、を含んでいる。
【0008】
また、本願明細書に記載の技術に関わるコーティング方法は、作業対象物を所定の搬送方向に搬送し、搬送される前記作業対象物の主面に対して、前記主面と交わる軸周りに旋回する旋回流に沿って塗布液を噴霧し、前記旋回流は、前記搬送方向に交わる幅方向に沿って複数形成されており、前記複数の旋回流は、第1回転方向に旋回する第1旋回流と、前記第1回転方向と反対向きの第2回転方向に旋回する第2旋回流と、を含むように形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本技術によれば、塗膜の膜厚のバラつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係るコーティング装置の模式図
図2】スプレーユニットの斜視図
図3】スプレーユニットの底面図
図4】スプレーユニットの供給部の分解斜視図
図5図2のA-A線断面図(液供給路を示す断面図)
図6図2のB-B線断面図(ガス供給路を示す断面図)
図7】ノズル接続部の上面図
図8】ノズル本体部の上面図
図9】ノズル本体部の下面図
図10】第1ノズルのノズル本体を図2のC-C線位置で切断した断面図
図11】第2ノズルのノズル本体を図2のC-C線位置で切断した断面図
図12】実施例1によって形成される旋回流の説明図
図13】実施例2によって形成される旋回流の説明図
図14】実施例3によって形成される旋回流の説明図
図15】比較例1によって形成される旋回流の説明図
図16】比較例2によって形成される旋回流の説明図
図17】比較例3によって形成される旋回流の説明図
図18A】実施例1によって噴霧された塗布液の写真
図18B】実施例2によって噴霧された塗布液の写真
図18C】比較例1によって噴霧された塗布液の写真
図18D】比較例2によって噴霧された塗布液の写真
図19A】実施例1によって塗布された塗膜の膜厚のバラつきを示すグラフ
図19B】実施例2によって塗布された塗膜の膜厚のバラつきを示すグラフ
図19C】比較例1によって塗布された塗膜の膜厚のバラつきを示すグラフ
図19D】比較例2によって塗布された塗膜の膜厚のバラつきを示すグラフ
図20A】実施例3によって塗布された塗膜の膜厚のバラつきを示すグラフ
図20B】比較例3によって塗布された塗膜の膜厚のバラつきを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
実施形態1に係るロールtoロール薄膜コーティング装置10(以下、単に「コーティング装置10」と言う)について図1から図20Bを参照して説明する。一部の図面には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、各軸方向が各図で共通した方向となるように描かれている。また、X軸方向を搬送方向、Y軸方向を幅方向、Z軸方向を上下方向とする。
【0012】
コーティング装置10は、搬送される長尺状のワーク50(作業対象物、例えばフィルム状のフレキシブル基板)に対して、複数のスプレー式のノズル30から塗布液(例えばカラーレジスト液)を噴霧することで、ワーク50に薄膜である塗膜(例えばレジスト膜)を形成するコーティングを施す。コーディング装置10は、図1に示すように、ワーク50をノズル30に向かって送り出す巻き出しロール11(第1ロール)と、ノズル30によってコーティングが施されたワーク50を巻き取る巻き取りロール12(第2ロール)と、を備える。2つのロール11、12によって、ワーク50の主面50Aが上方を向いた状態で、所定の搬送方向(X軸方向)に連続的に搬送される。
【0013】
またコーディング装置10は、図1に示すように、2つのロール11、12の間に設置されるスプレーユニット15と、第1供給管13と、第2供給管14と、塗布液が貯留される液容器16と、液ポンプ17と、液バルブ18と、制御部19と、を備える。スプレーユニット15は、複数のノズル30を有し、塗布液を噴霧するユニットである。第1供給管13は、スプレーユニット15に塗布液を供給し、第2供給管14は、スプレーユニット15に高圧の圧縮ガス(具体的には圧縮エア)を供給するための配管である。第2供給管14に対しては、外部の供給源(ガスタンク等)から圧縮ガスが供給されるものとされる。液ポンプ17は、第1供給管13の経路上に設けられ、液容器16から塗布液をくみ上げて送液する、塗布液の搬送動力源である。液バルブ18は、第1供給管13の経路上において液ポンプ17より下流側(スプレーユニット15側)に設けられる、塗布液の供給と停止の切替手段である。制御部19は、第2供給管14への圧縮ガスの供給、及び液バルブ18の開閉を制御する制御基板である。
【0014】
本実施形態では、液ポンプ17、巻き出しロール11、巻き取りロール12は、制御部19とは別の制御装置によって制御されているが、同一の制御部によって制御されていても構わない。また圧縮ガスの種類は、大気と同成分を有するエア以外(窒素ガス(N2)、アルゴンガス(Ar)等)であっても構わず、塗布液の種類は、現像液、エッチング液、剥離液等の薬液以外であっても構わない。
【0015】
スプレーユニット15は、図1及び図2に示すように、ワーク50の搬送方向と交わる幅方向(Y軸方向)に横長に延出しており、ワーク50の主面50Aの上方に配置されている。スプレーユニット15はおおまかには、塗布液を噴霧する複数(本実施形態では10つ)のノズル30と、供給部40と、支持部20と、から構成されている。ノズル30、支持部20、及び供給部40は、この順に下から上に上下方向(Z軸方向)に接続されている。ノズル30は、全体として略円筒状をなし、幅方向に沿って複数設けられている。供給部40には、第1供給管13及び第2供給管14が接続されている。供給部40は、第1供給管13からの塗布液、及び第2供給管14からの圧縮ガスをノズル30に供給する。支持部20は、ノズル30及び供給部40が接続され、これらを支持している。以下、各部について詳しく説明する。
【0016】
供給部40は、図4から図6に示すように、第1供給ブロック41と、複数(本実施形態では8つ)の第2供給ブロック42と、複数(本実施形態では10つ)の第3供給ブロック43と、2つのエンドプレート44と、を備え、これらが幅方向に締結部材によって連結されている。
【0017】
第1供給ブロック41は、図4から図6に示すように、板面(主面)がX-Z面に沿う板状のブロック体であり、供給部40の幅方向の略中央に1つ配置されている。第1供給ブロック41には、その板厚方向(Y軸方向)に沿って貫通する第1液流通口41A、及び第1ガス流通口41Bが形成されている。また第1供給ブロック41の側面には、第1供給管13が接続されており、第1供給管13からの塗布液は、第1液流通口41Aに流入するようになっている。さらに第1供給ブロック41の上面には、第2供給管14が接続されており、第2供給管14からの圧縮ガスは、第1ガス流通口41Bに流入するようになっている。
【0018】
第2供給ブロック42は、図4から図6に示すように、板面(主面)がX-Z面に沿う板状のブロック体であり、後述する第3供給ブロック43の間に8つ配置されている。第2供給ブロック42には、その板厚方向に沿って直線状に貫通する第2液流通口42A、及び第2ガス流通口42Bが形成されている。
【0019】
第3供給ブロック43は、図4から図6に示すように、板面がX-Z面に沿う板状のブロック体である。第3供給ブロック43は、ノズル30の液噴出口31B(図3)と上下方向に重なる位置に10つ配置されている。第3供給ブロック43には、その板厚方向(Y軸方向、幅方向と一致)に沿って直線状に貫通する第3液流通口43A、及びV字状に貫通する第3ガス流通口43Bが形成されている。第3液流通口43Aは、第1供給ブロック41の第1液流通口41A、及び第2供給ブロック42の第2液流通口42Aと連通している。また第3ガス流通口43Bは、第1供給ブロック41の第1ガス流通口41B、及び第2供給ブロック42の第2ガス流通口42Bと連通している。
【0020】
エンドプレート44は、図4から図6に示すように、板面がX-Z面に沿う板状のブロック体であり、供給部40の幅方向の両端部に1つずつ配置される。エンドプレート44は、第1供給ブロック41から最も離れた位置にある第3供給ブロック43に締結部材によって接続されている。エンドプレート44は、当該第3供給ブロック43の第3液流通口43A及び第3ガス流通口43Bを塞いでいる。
【0021】
支持部20は、図3及び図4に示すように、板面がX-Y面方向に沿う板状の支持ブロック21から構成されている。支持ブロック21は、搬送方向(X軸方向)と交わるY軸方向に沿って複数(本実施形態では10つ)配置されている。支持ブロック21の上面には、供給部40の供給ブロック41、42、43、及びエンドプレート44が載置されており、これらと支持ブロック21は締結部材によって接続されている。支持ブロック21の上面側には、第4液流通口21Aが形成されている。また支持ブロック21の下面には、ノズル30の後述するノズル接続部32が下方から挿入されている。第4液流通口21Aは、ノズル接続部32の第5液流通口32Bと上下方向に重なって連通している。第4液流通口21A内には、内径を部分的に減少させて圧損を生じさせるために、オリフィス(微細な貫通孔)を組み付ける構造が形成されている。
【0022】
また支持ブロック21の上面側には、図4に示すように、円柱状の空洞である、ガス溜まり21Fが形成されている。ガス溜まり21Fは、供給部40からの圧縮ガスが一時的に貯留されるようになっている。さらに支持ブロック21には、挿入されたノズル接続部32を取り囲むように、円環状の第4ガス流通口21Dが形成されている。圧縮ガスは、ガス溜まり21Fを通った後に、第4ガス流通口21Dに向かって流れるようになっている。
【0023】
上記した供給部40及び支持部20によれば、第1供給管13内の塗布液は、図5に矢線で示すように、第1供給ブロック41の液流入口41Cから第1液流通口41Aに流入し、第1液流通口41Aと幅方向に連通する第2供給ブロック42の第2液流通口42A、及び第3供給ブロック43の第3液流通口43Aに流れ込む。第3液流通口43Aに流れ込んだ塗布液の一部は分岐して、支持ブロック21の第4液流通口21Aに流入する。そして塗布液は、オリフィスを含む第4液流通口21Aを通って、ノズル30のノズル接続部32に流出する。このような液流入口41Cから第4液流通口21Aまでの経路が、スプレーユニット15においてノズル30に塗布液を供給する液供給路15Aとなる。
【0024】
また、上記した供給部40及び支持部20によれば、第2供給管14内の圧縮ガスは、図6に矢線で示すように、第1供給ブロック41の第1ガス流通口41Bに流入し、第1ガス流通口41Bと幅方向に連通する第2供給ブロック42の第2ガス流通口42B、及び第3供給ブロック43の第3ガス流通口43Bに流れ込む。第3ガス流通口43Bに流れ込んだ圧縮ガスの一部は分岐して、下方の支持ブロック21に流れる。そして、圧縮ガスは支持ブロック21のガス溜まり21Fを通って第4ガス流通口21Dに向かって流れ、第4ガス流通口21Dからノズル30のノズル接続部32に流出する。このような第1ガス流通口41Bから第4ガス流通口21Dまでの経路が、スプレーユニット15においてノズル30に圧縮ガスを供給するガス供給路15Bとなる。
【0025】
このように液供給路15A、及びガス供給路15Bを形成すれば、供給部40及び支持部20の構成部品の組み合わせ、及び部品点数を調整することで、ノズル30の数に合わせて液供給路15A、及びガス供給路15Bの長さを容易に調整できる。また、図3に示すように、ノズル30を千鳥配列で配置するにあたって、第3供給ブロック43、及び支持ブロック21は、同一仕様品をZ軸周りに180°回転すればよく、部品の仕様を共通化できる。その結果、スプレーユニット15の拡張性を高められる。
【0026】
また液供給路15Aにおいて、第4液流通口21A内のオリフィスによって圧損を形成することで、塗布液を複数のノズル30に対してより均一に分配できる。さらに、ガス供給路15Bにガス溜まり21Fを形成することで、圧縮ガスを複数のノズル30に対してより均一に分配できる。
【0027】
続いて、ノズル30について詳しく説明する。各ノズル30は、図2に示すように、塗布液を噴出する液噴出口31Bを有するノズル本体部31と、ノズル接続部32と、を備える。ノズル接続部32は、図2に示すように、支持部20とノズル本体部31との間に設けられ、これらを上下方向に接続する中継部材である。ノズル接続部32は、支持ブロック21に下方から挿入される。ノズル接続部32に対しては、下方からノズル本体部31が挿入される。またノズル接続部32は、図7に示すように、同一円周上に等間隔に並ぶ8つの第5ガス流通口32C(ガス中継口の一例)を有する。第5ガス流通口32Cは、ノズル接続部32を上下方向に直線状に貫通しており、支持ブロック21の円環状の第4ガス流通口21Dと上下方向に重なって連通している。
【0028】
ノズル本体部31は、図8から図9に示すように、塗布液が噴出される液噴出口31B、及び圧縮ガスが噴出される複数(本実施形態では4つ)のガス噴出口31Dを有する部材である。塗布液は液噴出口31Bを通って、その下端部31Aから噴出するようになっている。ガス噴出口31Dは、図8から図9に示すように、ノズル本体部31の上面31Eと略円錐状の外周面31Cとを連通している。4つのガス噴出口31Dは、ノズル接続部32の8つの第5ガス流通口32Cと連通している。第5ガス流通口32Cの数をガス噴出口31Dに比べて多くすることで、圧縮ガスをガス噴出口31Dに対してより均等に流入できるようになっている。
【0029】
第5ガス流通口32Cからの圧縮ガスは、図10に示すように、ガス噴出口31Dの形状に沿って流れ、水平方向に沿う速度成分を含んで外周面31Cから噴出される。噴出された圧縮ガスは、ノズル30の外装カバーの内面に当たりつつ螺旋状に降下し、斜め下方に噴出される。外部に噴出された圧縮ガスは、液噴出口31Bから噴出された塗布液に当たって塗布液を微粒化(霧化)する。これにより、塗布液が噴霧されることとなる。また塗布液は、4つのガス噴出口31Dから噴出される圧縮ガスによって、Z軸周りに旋回しつつ、螺旋状に広がりながら下降する旋回流として噴霧される(図2)。
【0030】
噴霧される旋回流の回転方向は、ガス噴出口31Dの形状によって調整可能である。本実施形態に係る複数のノズル30は、ガス噴出口31Dの水平面(X-Y面)に沿う延出方向が図11、又は図12に示す2種類に半数ずつ異なっている。以下において、複数のノズル30のうち、図11に示すガス噴出口31Dを備えるものを第1ノズル30A、図12に示すガス噴出口31Dを備えるものを第2ノズル30Bと、区別して説明することがある。第1ノズル30Aは、下面(ワーク50側)から視て時計回り(右巻き、第1回転方向の一例)に旋回する旋回流として塗布液を噴霧する。一方、第2ノズル30Bは、下面(ワーク50側)から視て反時計回り(左巻き、第2回転方向の一例)に旋回する旋回流として塗布液を噴霧する。
【0031】
複数(10つ)のノズル30は、図3に示すように、複数(5つ)の第1ノズル30Aと、複数(5つ)の第2ノズル30Bとが、幅方向について交互に並ぶように配置されている。これにより、反時計回り、又は時計回りに回転方向が異なる2種類の旋回流が幅方向について交互に形成されることとなる。このように旋回流を形成することで、複数のノズル30を幅方向に並べて配置した場合であっても、各ノズル30からの微粒化された塗布液の流れの干渉を抑制し、ワーク50の主面50Aへの塗りムラを抑制できる。その結果、後述する比較実験1の結果で示すように、コーディングされた塗膜の膜厚のバラつきを抑制できる。
【0032】
第1ノズル30A、及び第2ノズル30Bはそれぞれ、図3に示すように、幅方向について一定の第1間隔L1(中心間(液噴出口31B間)の距離)を開けて並んで配置されている。また第2ノズル30Bは、幅方向について第1ノズル30Aから(第1間隔L1)/2の位置に配置されており、第1ノズル30A、及び第2ノズル30Bは千鳥配列されている。第1ノズル30Aは、第2ノズル30Bから搬送方向(X軸方向)について一定の第2間隔L2(中心間(液噴出口31B間)の距離)を開けて配置されている。第1ノズル30A、及び第2ノズル30Bは、第2間隔L2が第1間隔L1に0.25を乗じた値以上となるように配置されることが好ましい。
【0033】
このように第1ノズル30A、及び第2ノズル30Bを配置することで、図13に示すように、反時計回り、又は時計回りに回転方向が異なる2種類の旋回流が幅方向について千鳥配列で交互に形成され、これらの旋回流がカルマン渦列の形成条件を満たしやすくなる。これにより、各ノズル30からの微粒化された塗布液の流れが流体力学的に安定化し、ワーク50の主面50Aへの塗りムラをより一層抑制できる。その結果、コーディングされた塗膜の膜厚のバラつきをより一層抑制できるようになる。
【0034】
<比較実験1>
上記した作用及び効果を実証するため、比較実験1を行った。比較実験1では、ノズル30が第1ノズル30A、及び第2ノズル30Bを共に含んでいる例を実施例1から実施例3とし、第1ノズル30Aのみを含んでいる例を比較例1から比較例3とした。また、これらの実施例及び比較例によって噴霧された塗布液をレーザー照射して写真撮影して、微粒化された塗布液の流れの干渉を確認した。また、塗布された塗膜の膜厚を測定し、膜厚のバラつきを評価した。
【0035】
<実施例1から実施例3>
実施例1は、4つの第1ノズル30A、及び4つの第2ノズル30Bが幅方向について同一直線状に交互に配置されており、これにより下面(ワーク50側)から視て図12に示す旋回流が形成される実施例である。実施例2は、4つの第1ノズル30A、及び4つの第2ノズル30Bが幅方向について千鳥配列で交互に配置されており、これにより図13に示す旋回流が形成される実施例である。実施例3は、4つの第1ノズル30A、及び4つの第2ノズル30Bの配置が実施例2と同一であり、塗布液を2回塗り重ねた実施例である。実施例3では、塗膜が形成されたワーク50を再度搬送して塗布液を噴霧することで、塗布液を2回塗り重ねた。また2回目に塗布液を噴霧する際には、ワーク50の幅方向における位置を(第1間隔L1)/4だけ変位させ、図14に示す旋回流が形成されるようにした。
【0036】
<比較例1から比較例3>
比較例1は、8つの第1ノズル30Aのみが幅方向について同一直線状に配置されており、これにより図15に示す旋回流が形成される比較例である。比較例2は、8つの第1ノズル30Aのみが幅方向について千鳥配列で配置されており、これにより図16に示す旋回流が形成される比較例である。比較例3は、8つの第1ノズル30Aの配置が比較例2と同一であり、塗布液を2回塗り重ねた実施例である。比較例3では、実施例3と同様に、塗膜が形成されたワーク50を再度搬送して塗布液を噴霧することで、塗布液を2回塗り重ねた。また2回目に塗布液を噴霧する際には、ワーク50の幅方向における位置を(第1間隔L1)/4だけ変位させ、図17に示す旋回流が形成されるようにした。
【0037】
<実験条件>
・第1間隔L1=60mm
・第2間隔L2=16.8mm
・各ノズル30の圧縮ガスの流量:20NL/min.
・各ノズル30の塗布液の噴出量:4.0mL/min.
・圧縮ガスの種類:圧縮エア
・塗布液の種類:カラーレジスト液
【0038】
<微粒化された塗布液の流れの干渉確認方法>
噴霧された塗布液に対してレーザーを水平照射して視認できる状態とし、液噴出口31Bからの上下方向(Z軸方向)の距離が50mmの位置におけるX-Y面の写真を撮影した。写真において塗布液は高輝度点(白黒表示における白点)となる。
【0039】
<塗膜の膜厚測定、及び膜厚のバラつき評価方法>
ワーク50の主面50Aにおいて、8つのノズル30の幅方向(Y軸方向)の中央位置と上下方向に重なる位置(実施例3及び比較例3においては1回目の塗布において、8つのノズル30の幅方向の中央位置と上下方向に重なる位置)を測定位置0mmとした。そして、幅方向について5mm毎に膜厚を測定し、測定位置0mmから-Y軸方向に45mm、+Y軸方向に45mmとなる範囲(すなわち、-45mmから+45mmの範囲)の膜厚のバラつきについて評価した。具体的には、この範囲の測定値について、以下の式でバラつきを算出した。バラつきの値が低い方が膜厚の均一性が高いと評価される。なお、膜厚測定結果を示す図19Aから図19D、及び図20Aから図20Bにおいて、点線で囲まれた範囲は、バラつきの算出に用いられた測定位置-45mmから+45mmの範囲を示し、一点鎖線は、膜厚の最大値/2の値を示している。
バラつきUni.={(膜厚の最大値-膜厚の最小値)/(2×膜厚の平均値)}×100%
【0040】
比較実験1の実験結果について説明する。微粒化された塗布液の流れの干渉については、図18Aに示す実施例1の結果と、図18Cに示す比較例1の結果とを比較すると、実施例1の方が、塗布液を示す高輝度点のバラつきが抑えられており、より均一に噴霧されていることが確認できた。また、図18Bに示す実施例2と、図18Dに示す比較例2の結果とを比較すると、実施例2の方が、塗布液を示す高輝度点のバラつきが抑えられており、より均一に噴霧されていることが確認できた。
【0041】
膜厚のバラつきについては、実施例1は図19Aに示す膜厚測定結果に基づき20%、比較例1は図19Cに示す膜厚測定結果に基づき21%と算出された。実施例1は、比較例1に比べて膜厚のバラつきが抑えられていることが確認できた。また、実施例2の膜厚のバラつきは、図19Bに示す膜厚測定結果に基づき22%、比較例2の膜厚のバラつきは、図19Dに示す膜厚測定結果に基づき25%と算出された。実施例2は、比較例2に比べて膜厚のバラつきが抑えられていることが確認できた。また、実施例3の膜厚のバラつきは、図20Aに示す膜厚測定結果に基づき10%、比較例3は図20Bに示す膜厚測定結果に基づき29%と算出された。実施例2は、比較例2に比べて膜厚のバラつきが大幅に抑えられていることが確認できた。
【0042】
<他の実施形態>
本技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本技術の技術的範囲に含まれる。
【0043】
(1)ワーク50の搬送方向は、水平方向に限定されない。また搬送手段は、ロールtoロール方式以外であっても構わない。
【0044】
(2)液供給路15A、ガス供給路15Bは、細長状の配管を組み合わせること等で構成されていても構わない。
【符号の説明】
【0045】
10…ロールtoロール薄膜コーティング装置(コーティング装置)、11…巻き出しロール(第1ロール)、12…巻き取りロール(第2ロール)、15A…液供給路、15B…ガス供給路、30…ノズル、30A…第1ノズル、30B…第2ノズル、31B…液噴出口、31D…ガス噴出口、32C…第5ガス流通口(ガス中継口)、50…ワーク(作業対象物)、50A…主面、L1…第1間隔、L2…第2間隔
図1
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図20A
図20B