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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056444
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】小動物捕獲器及び小動物捕獲器梱包体
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/00 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A01M23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163313
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉丸 勝郎
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 直輝
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA02
2B121BA03
2B121BA12
2B121BA42
2B121BA43
2B121BA51
2B121EA01
2B121FA20
(57)【要約】
【課題】梱包状態からハウス形態に変えて使用する際の手間を低減した小動物捕獲器を提供する。
【解決手段】小動物捕獲器1は、板状部材2の一端部に設けられた第1係合部17と、板状部材2の他端部に設けられ、第1係合部17に係合する第2係合部18とを備えている。板状部材2を折り曲げ部21~23で折り曲げた状態で第1係合部17と第2係合部18とを係合させることにより、ハウス形態とされる。板状部材2が三角筒状となるように、2つの折り曲げ部を折り曲げ、かつ、第1係合部17と第2係合部18とを係合させることにより、梱包状態とされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部にのみ粘着部を有する板状部材を3か所以上の折り曲げ部で折り曲げることにより、四角以上の多角形断面を有するとともに内部に前記粘着部が配置される筒状のハウス形態と、前記ハウス形態とは異なる梱包形態とを採り得るように構成され、前記ハウス形態にあるときに内部に侵入した小動物を前記粘着部によって捕獲する一方、前記梱包形態にあるときに梱包される小動物捕獲器であって、
前記板状部材の一端部に設けられた第1係合部と、
前記板状部材の他端部に設けられ、前記第1係合部に係合する第2係合部とを備え、
前記板状部材を前記3か所以上の折り曲げ部で折り曲げた状態で前記第1係合部と前記第2係合部とを係合させることにより、前記ハウス形態とされる一方、
前記板状部材が三角筒状となるように、前記3か所以上の折り曲げ部のうちの2か所の折り曲げ部を折り曲げ、かつ、前記第1係合部と前記第2係合部とを係合させておくことにより、前記梱包状態とされることを特徴とする小動物捕獲器。
【請求項2】
請求項1に記載の小動物捕獲器において、
前記折り曲げ部は、3か所設けられており、
前記ハウス形態では、全ての前記折り曲げ部が折り曲げられて前記板状部材が四角筒状をなし、
前記梱包形態では、任意の一の前記折り曲げ部が非折り曲げ状態とされることを特徴とする小動物捕獲器。
【請求項3】
請求項2に記載の小動物捕獲器において、
前記ハウス形態では、前記板状部材が断面台形の四角筒状とされることを特徴とする小動物捕獲器。
【請求項4】
請求項3に記載の小動物捕獲器において、
前記ハウス形態では、前記台形の互いに平行な2辺のうち、長辺が床となるように設置されることを特徴とする小動物捕獲器。
【請求項5】
請求項4に記載の小動物捕獲器において、
前記ハウス形態では、前記第1係合部及び前記第2係合部が天井側に配置されることを特徴とする小動物捕獲器。
【請求項6】
請求項1に記載の小動物捕獲器において、
前記梱包状態では、前記板状部材が鈍角三角形の断面を持った三角筒状とされることを特徴とする小動物捕獲器。
【請求項7】
請求項1に記載の小動物捕獲器を梱包状態にして箱体に収容した小動物捕獲器梱包体であって、
第1の小動物捕獲器を構成している三角筒状の前記板状部材の底辺部と、第2の小動物捕獲器を構成している三角筒状の前記板状部材の底辺部とを合わせた状態で、第1の小動物捕獲器と第2の小動物捕獲器とが前記箱体に収容されていることを特徴とする小動物捕獲器。
【請求項8】
請求項7に記載の小動物捕獲器梱包体において、
第1の小動物捕獲器の前記第1係合部及び前記第2係合部が前記底辺部側に配置され、
第2の小動物捕獲器の前記第1係合部及び前記第2係合部が前記底辺部側に配置され、
第1の小動物捕獲器の前記第1係合部及び前記第2係合部と、第2の小動物捕獲器の前記第1係合部及び前記第2係合部とが互い違いになるように、第1の小動物捕獲器の前記底辺部と、第2の小動物捕獲器の前記底辺部とが合わされていることを特徴とする小動物捕獲器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばネズミ等の小動物を捕獲する小動物捕獲器及び小動物捕獲器梱包体に関し、特に小動物を粘着剤によって捕獲する構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えばネズミ等の小動物を捕獲する小動物捕獲器として、矩形状のシートの一部の捕獲エリアに粘着剤を塗布しておき、この捕獲エリアに侵入した小動物を粘着剤の粘着作用によって捕獲するように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1、2の捕獲器は、シートを平面状に広げた状態(以下、「フラット形態」という)と、シートを数か所で折り曲げて筒状にした状態(以下、「ハウス形態」という)との何れかをユーザが設置場所等の条件に応じて任意に選択して使用可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5679764号公報
【特許文献2】登録実用新案第3002148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2の捕獲器をフラット形態で使用すると平面的な占有面積が大きくなるが立体的には嵩張らずに済み、ハウス形態で使用すると立体的に嵩張るが平面的な占有面積は小さくなるという特徴がある。一方で、小動物捕獲器の流通・販売時においては面積的にも体積的にもコンパクトであることが求められるところ、フラット形態とハウス形態はいずれも流通・販売時の形態としては適さない。
【0006】
そこでこの種の捕獲器においては、フラット形態ともハウス形態とも異なる第3の状態(以下、「梱包形態」とする)で梱包しておき、流通・販売に供することが考えられる。
【0007】
しかし従来の捕獲器において、ハウス形態で使用をする場合には、まず梱包形態の捕獲器を展開してフラット形態とした後、改めてハウス形態へと組み立てる必要があり、手間がかかる。
【0008】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、梱包状態からハウス形態に変えて使用する際の手間を低減した小動物捕獲器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、一部にのみ粘着部を有する板状部材を3か所以上の折り曲げ部で折り曲げることにより、四角以上の多角形断面を有するとともに内部に前記粘着部が配置される筒状のハウス形態と、前記ハウス形態とは異なる梱包形態とを採り得るように構成され、前記ハウス形態にあるときに内部に侵入した小動物を前記粘着部によって捕獲する一方、前記梱包形態にあるときに梱包可能な小動物捕獲器を前提とすることができる。
【0010】
前記小動物捕獲器は、前記板状部材の一縁部に設けられた第1係合部と、前記板状部材の他縁部に設けられ、前記第1係合部に係合する第2係合部とを備えている。前記板状部材を前記3か所以上の折り曲げ部で折り曲げた状態で前記第1係合部と前記第2係合部とを係合させることにより、前記ハウス形態とすることができる。一方、前記板状部材が三角筒状となるように、前記3か所以上の折り曲げ部のうちの2か所の折り曲げ部を折り曲げ、かつ、前記第1係合部と前記第2係合部とを係合させた状態とすることにより、前記梱包状態とすることができる。
【0011】
この構成によれば、ハウス形態では四角以上の多角形断面を有する筒状になるので、立体的な捕獲器にして小動物を捕獲器内に誘導し易くなる。一方、梱包形態では三角筒状になるので、フラット形態にするよりも平面的な占有面積が小さくなり、ハウス形態にするよりも立体的な嵩張りが小さくなる。よって、流通・販売に適した形態になる。梱包形態となっているときに三角筒状であることから、四角筒状等に比べて強度が高くなり、例えば流通時の衝撃等が作用したときの板状部材の変形が抑制される。これにより、小動物捕獲器の型崩れが起こりにくくなる。
【0012】
また、梱包形態からハウス形態に変形させる際には、既に第1係合部と第2係合部とが係合しているので、係合作業は不要であり、折り曲げていない折り曲げ部を折り曲げるという簡単な作業で済む。
【0013】
別の態様では、前記折り曲げ部が3か所設けられていてもよい。この場合、前記ハウス形態では、全ての前記折り曲げ部が折り曲げられて前記板状部材が四角筒状をなし、前記梱包形態では、任意の一の前記折り曲げ部が非折り曲げ状態とされる。
【0014】
別の態様に係るハウス形態は、板状部材が断面台形の四角筒状とされてもよい。すなわち、ハウス形態時に断面台形となるように3か所の折り曲げ部を設けておくことで、梱包状態で確実に三角筒状になり、その三角筒状を維持できる。
【0015】
さらに別の態様に係るハウス形態では、前記台形の互いに平行な2辺のうち、長辺が床となるように設置されてもよい。これにより、ハウス形態で使用する際に小動物捕獲器が安定する。
【0016】
さらに別の態様に係るハウス形態では、前記第1係合部及び前記第2係合部が天井側に配置されるので、小動物捕獲器を設置面に設置した際に第1係合部や第2係合部が設置面に接触することはなく、小動物捕獲器が安定する。
【0017】
別の態様に係る梱包状態では、板状部材が鈍角三角形の断面を持った三角筒状とされてもよい。すなわち、鈍角三角形の断面とすることで、梱包状態の形状が扁平に近い形状になり、鋭角三角形の断面とする場合に比べて立体的な嵩張りが小さくなる。
【0018】
また、本開示には、小動物捕獲器梱包体も含まれる。小動物捕獲器梱包体は、前記小動物捕獲器を梱包状態にして箱体に収容したものであり、第1の小動物捕獲器を構成している三角筒状の前記板状部材の底辺部と、第2の小動物捕獲器を構成している三角筒状の前記板状部材の底辺部とを合わせた状態で、第1の小動物捕獲器と第2の小動物捕獲器とが前記箱体に収容されている。これにより、箱体内のデッドスペースを小さくしてスペース効率を向上させながら、複数の小動物捕獲器をまとめて梱包して流通・販売することができる。
【0019】
また、第1の小動物捕獲器の前記第1係合部及び前記第2係合部と、第2の小動物捕獲器の前記第1係合部及び前記第2係合部とが互い違いになるように、第1の小動物捕獲器の前記底辺部と、第2の小動物捕獲器の前記底辺部とが合わされていてもよい。これにより、第1の小動物捕獲器の底辺部と第2の小動物捕獲器の底辺部とを合わせる際に第1係合部や第2係合部が邪魔にならず、両者をぴったりと合わせることができるので、スペース効率がより一層向上する。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、板状部材が三角筒状となるように2か所の折り曲げ部を折り曲げて梱包状態としておき、この梱包状態からハウス形態に変形する場合には、折り曲げていない折り曲げ部で折り曲げるという簡単な作業で済むので、梱包状態からハウス形態に変形する際の手間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る小動物捕獲器がハウス状態にある場合を示す斜視図である。
図2】ハウス状態にある小動物捕獲器の側面図である。
図3】ハウス状態にある小動物捕獲器の端面図である。
図4】ハウス状態にある小動物捕獲器の平面図である。
図5】ハウス状態にある小動物捕獲器の使用状態を説明する断面図である。
図6】小動物捕獲器の展開図である。
図7】フラット状態にある小動物捕獲器の平面図である。
図8】フラット状態にある小動物捕獲器を連結して使用する場合を示す斜視図である。
図9】梱包状態にある小動物捕獲器の斜視図である。
図10】梱包状態にある小動物捕獲器の側面図である。
図11】梱包状態にある小動物捕獲器の端面図である。
図12】2つの小動物捕獲器を箱体に収容する様子を示す斜視図である。
図13】2つの小動物捕獲器の箱体への梱包が完了した様子を示す平面図である。
図14】ハウス状態にある小動物捕獲器を梱包した比較例を示す図である。
図15】捕獲試験1で用いた試験装置の平面図である。
図16】捕獲試験1の試験結果を示すグラフである。
図17】捕獲試験2で用いた試験装置の平面図である。
図18】捕獲試験2の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1~5は、本発明の実施形態に係る小動物捕獲器1がハウス状態にある場合を示すものであり、図6は展開図である。また、図7及び図8は、小動物捕獲器1がフラット状態にある場合を示している。さらに、図9~11は、小動物捕獲器1が梱包状態にある場合を示している。このように、小動物捕獲器1は、ハウス状態、フラット状態及び梱包状態の3つの状態を採り得るように構成されており、これら3つの状態は互いに異なっている。小動物捕獲器1で小動物を捕獲する際には、小動物捕獲器1がハウス状態か、フラット状態で使用される。小動物捕獲器1を流通・販売する際には、小動物捕獲器1が梱包状態とされる。捕獲対象の小動物は、ネズミを挙げることができるが、ネズミ以外にも例えばイタチ等であってもよい。ネズミの場合、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミ、ハタネズミ等が捕獲対象となり得る。
【0024】
まず、図1~5に基づいてハウス状態について説明する。小動物捕獲器1は、図6に展開図として示すように、1枚の板状部材2で構成されている。板状部材2は、例えば硬質樹脂、ボール紙、厚紙等で構成されており、略矩形状とされている。板状部材2を構成する材料は、硬質樹脂と紙とを組み合わせたものであってもよい。板状部材2の厚みは、5.5mm以下が好ましく、または2.0mm以下が更に好ましく、全体が均一な厚みとなっている。板状部材2の厚みを所定以下とすることにより、小動物捕獲器1の存在を小動物に察知されにくくなり、捕獲率を向上させることができる。なお、本実施形態の板状部材2の厚みは1mmである。板状部材2の厚みの下限は特に限定されるものではないが、例えば0.3mm以上、または0.5mm以上とすることができる。これにより、ハウス状態や梱包状態で十分な剛性を確保できる。板状部材2の厚みは、部位によって変えてもよい。
【0025】
板状部材2は長手方向と短手方向とを有する長方形をなしているが、これに限らず正方形であってもよい。この実施形態では、板状部材2が長方形であるため、長手方向の一端部2aと他端部2bとを定義するとともに、短手方向の一端部2cと他端部2dとを定義する。尚、この定義は説明の便宜を図るためだけであり、本発明を限定するものではない。
【0026】
板状部材2は、3か所の折り曲げ部として第1~第3折り曲げ部21~23を有している。第1~第3折り曲げ部21~23は、破線で示しているように、板状部材2の短手方向に延びる直線状をなしており、板状部材2の長手方向に互いに間隔をあけて設けられている。各折り曲げ部21~23は、例えば板状部材2の表面側のみまたは裏面側のみをカット(ハーフカット)して折り曲げ起点部とした部分で構成されており、各折り曲げ部21~23に沿って板状部材2を容易に折り曲げることができるようになっている。折り曲げ起点部の形成方法は、ハーフカットに限られるものではなく、予め付与された折り目、ミシン目等であってもよい。
【0027】
板状部材2には、その表面にのみ粘着剤が塗布されており、この粘着剤によって粘着部3が構成されている。粘着部3を構成している粘着剤は、特に限定されるものではないが、小動物の脚や毛等に強く粘着して小動物を逃がさないようにすることができる程度の粘着力を持っている。粘着部3は、面状に設けられているが、これに限らず、例えば複数の筋状に設けられていてもよい。
【0028】
板状部材2の4辺のうち、少なくとも1辺において、縁から粘着部3までの距離が、所定値以下に設定されている。この距離を所定以下とすることにより、小動物捕獲器1を後述のフラット状態で壁際に設置した際に、壁から粘着部3までの距離を所定距離以下とすることができるので、壁際を走行する習性を有する小動物を捕獲しやすくなる。所定距離は3.5cm以下が好ましく、1cm以下が更に好ましい。
【0029】
本実施形態では、長手方向の一端部2aの縁から粘着部3までの距離Aが1cmとされ、また短手方向の一端部2cの縁から粘着部3までの距離Bが1cmとされ、また短手方向の他端部2dの縁から粘着部3までの距離Cが1cmとされている。距離A、B、Cのうち、1つのみが所定距離以下であってもよいし、任意の2つのみが所定距離以下であってもよい。また、距離A、B、Cは、全て同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、距離A、B、Cが短かすぎると、粘着部3を塗布することが困難になるのに加え、小動物捕獲器1をユーザが手で持ったときに指に粘着部3が付着する可能性がある。そこで、距離A、B、Cの下限は、例えば1mm、または3mmとすることができる。
【0030】
第1折り曲げ部21は、板状部材2の一端部2aから他端部2b側へ第1の距離L1だけ離れており、板状部材2の一端部2aと平行である。第2折り曲げ部22は、第1折り曲げ部21から他端部2b側へ第2の距離L2だけ離れている。第3折り曲げ部23は、第2折り曲げ部22から他端部2b側へ第3の距離L3だけ離れており、板状部材2の他端部2bと平行である。また、第3折り曲げ部23と板状部材2の他端部2bとの距離は、第4の距離L4とされている。この実施形態では、第1~第4の距離L1~L4のうち、第2の距離L2が最も長く設定されている。また、第1の距離L1と第3の距離L3とは同じである。第4の距離L4は、第1の距離L1よりも短く設定されていてもよいし、第1の距離L1よりも長く設定されていてもよい。このようにすることで、小動物捕獲器1をハウス状態としたときに、略台形の断面形状を有することになる。
【0031】
板状部材2の一端部2aから第1折り曲げ部21までの間の部分は、図1に示すハウス状態にある小動物捕獲器1の第1側壁11を構成する部分である。板状部材2の第2折り曲げ部22から第3折り曲げ部23までの間の部分は、ハウス状態にある小動物捕獲器1の第2側壁12を構成する部分である。板状部材2の第1折り曲げ部21から第2折り曲げ部22までの間の部分は、ハウス状態にある小動物捕獲器1の床13を構成する部分である。板状部材2の第3折り曲げ部23から他端部2bまでの間の部分は、ハウス状態にある小動物捕獲器1の天井14を構成する部分である。粘着部3は、ハウス状態とした時に小動物捕獲器1の内部に配置され、床13と、第1側壁11及び第2側壁12とにそれぞれ設けられている。小動物捕獲器1の内部に侵入した小動物は、粘着部3によって捕獲される。尚、粘着部3は、床13にのみ設けられていてもよい。
【0032】
図6に示す板状部材2を第1~第3折り曲げ部21~23で折り曲げるとともに第1係合部17を第2係合部18に係合させることにより、四角形断面を有しかつ内部に粘着部3が配置される筒状のハウス状態にすることができる。ハウス状態にすることで、小動物捕獲器1を部屋の隙間等に設置することが可能になるとともに、粘着部3が板状部材2で覆われていることにより、人が触れそうなところに設置することもできる。
【0033】
小動物捕獲器1を構成する四角筒状の軸方向両端は、それぞれ開放されており、この両端の開放部分(開放口)から小動物の侵入が可能になっている。小動物捕獲器1が四角筒状であることから、両端の開放口の形状は四角形となる。尚、図示しないが、第4の折り曲げ部や第5の折り曲げ部を設けてもよい。第4の折り曲げ部を設けることで、小動物捕獲器1が五角形の筒状になり、第4の折り曲げ部及び第5の折り曲げ部を設けることで、小動物捕獲器1が六角形の筒状になる。
【0034】
第2の距離L2が第4の距離L4のよりも長く、第1の距離L1及び第3の距離L3が同じに設定されているので、図3に示すようにハウス形態では、板状部材2が断面台形の四角筒状とされる。台形の互いに平行な2辺のうち、長辺が床13となるように設置面100(図3にのみ仮想線で示す)に設置される。この床13と天井14とが互いに平行である。第1側壁11と第2側壁12とは、上へ行くほど互いに接近するように傾斜している。尚、設置面100は、例えば住居や倉庫等の床面等である。
【0035】
板状部材2の長手方向の一端部2aには、2つの第1係合部17が短手方向に互いに間隔をあけて設けられている。第1係合部17は、突片で構成されており、短手方向に所定の長さを持っている。尚、第1係合部17の数は2つに限られるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0036】
板状部材2の長手方向の他端部2bには、2つの第2係合部18が短手方向に互いに間隔をあけて設けられている。各第2係合部18は、板状部材2を厚み方向に貫通する貫通孔で構成されており、第1係合部17が差し込まれた状態で係合するようになっている。第2係合部18の数は、第1係合部17の数と同じであり、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、第1係合部17を貫通孔にし、第2係合部18を突片にしてもよい。また、第2係合部18が切欠部で構成されていてもよく、この場合、第1係合部17を第2係合部18に嵌めることによって係合できる。板状部材2を第1~第3折り曲げ部21~23で折り曲げた状態で第1係合部17と第2係合部18とを係合させることにより、ハウス形態とすることができ、その形状を維持できる。
【0037】
ハウス状態では、第1係合部17及び第2係合部18が天井14側に配置される。これにより、第1係合部17が設置面100に接触することはなく、ハウス状態の小動物捕獲器1が安定する。尚、設置面100に接触しないように第1係合部17や第2係合部18を形成している場合には、第1係合部17及び第2係合部18が床13側に配置されてもよい。
【0038】
図5等に示すように、ハウス状態では、天井14に小動物の侵入口14aが形成されている。侵入口14aは、天井14の長手方向中央部に形成されており、捕獲対象の小動物が容易に侵入可能な大きさとされている。侵入口14aの形状は、天井14の長手方向に長い矩形状とされている。侵入口14aの数は2つ以上であってもよい。例えばネズミなどは垂直方向に移動する習性があるため、ハウス状態の小動物捕獲器1の上に乗ることがある。このような小動物を侵入口14aによって捕獲することができる。
【0039】
天井14には、侵入口14aの縁部から下降傾斜する第1スロープ部14b及び第2スロープ部14cが設けられている。第1スロープ部14bは、侵入口14aの長手方向の一方の縁部から下降傾斜しており、また第2スロープ部14cは、侵入口14aの長手方向の他方の縁部から下降傾斜している。図6に示すように、展開図上では、第1スロープ部14bを形成する部分と、第2スロープ部14cを形成する部分とが板状部材2に一体成形されている。板状部材2に切れ込み200を形成しており、ハウス状態にしたときに、第1スロープ部14bを下に押して折り曲げるとともに、第2スロープ部14cを下に押して折り曲げることで、侵入口14aが開口する。第1スロープ部14b及び第2スロープ部14cは、ネズミが乗るとその体重によって容易に下へ折れ曲がり、これによりネズミが小動物捕獲器1内に落下するようになっている。尚、仮に第1スロープ部14b及び第2スロープ部14cを省略した場合(進入口14aが単なる開口になっている場合)、ネズミは侵入口14aを警戒するので落下しにくくなってしまう。つまり、第1スロープ部14b及び第2スロープ部14cを設けることにより、侵入口14aを落とし穴のように利用することができる。また、第1スロープ部14b及び第2スロープ部14cが下降傾斜していない場合(水平な場合)に比べて、下降傾斜していることにより、ネズミが第1スロープ部14bまたは第2スロープ部14cに前脚をかけて侵入口14a内をのぞき込むような行動を誘発しやすくなり、侵入口14a内に誘い込みやすくなる効果が得られる。尚、侵入口14aは省略してもよい。また、スロープ部は1つであってもよい。
【0040】
また、図6等に示すように、小動物捕獲器1の板状部材2の4つの端部2a~2dには、いずれも「折り返し片(折り曲げ片)」が形成されていない。なお、折り返し片(折り曲げ片)とは、例えば特許文献1のように小動物捕獲器の縁部を折り曲げることで、折りたたんだ時に粘着剤同士が付着しないようにしたものである。このように、本実施形態では板状部材2が折り返し片を有していないので、図1に示すハウス状態にしたときに、小動物の入口となる両端の開放口には折り返し部が存在しなくなり、バリアフリーとなる。本例のバリアフリーとは、小動物が小動物捕獲器1に侵入する際の障壁となるような部分が開放口になく、設置面100(図3に示す)から小動物捕獲器1に向けて小動物をスムーズに誘導可能になっていることである。障壁となるような部分としては、折り曲げ片の形成よる突出部、突起部、突条部等を挙げることができ、このような部分が無いことで、後述するように捕獲率が向上する。
【0041】
特に、本例では板状部材2の厚みが1mmであるため、小動物が乗り越えなければならない段差は1mm程度になる。よって、小動物が段差を警戒しにくくなり、小動物の捕獲率を一層向上させることができる。
【0042】
次に、図7に示すフラット状態について説明する。フラット状態の場合、図3に示す載置面100に載置する場合を想定すると、小動物捕獲器1の板状部材2が載置面100に沿って延びる平板状(図6に示す展開図の状態)で使用される。このため、平面視で小動物捕獲器1の設置面積が広くなるので、大きなネズミであっても捕獲できる。
【0043】
フラット状態の小動物捕獲器1は、例えば短手方向の一端部2cおよび他端部2dの形状が直線状なので、一端部2cまたは他端部2dが壁(図示せず)に沿うように設置することができる。ここで前述のように、本実施形態では、図6に示す距離Bおよび距離Cが1cmに設定されている。これにより、小動物捕獲器1をフラット状態にして壁際に設置した場合、壁と粘着部3との距離を長くても1cm程度にすることができる。すなわち、ネズミは壁際を走行する習性があるため、壁と粘着部3との距離を1cm程度もしくはそれ以下にしておくことで、壁際を走行するネズミを粘着部3によって効果的に捕獲することができる。
【0044】
また前述のように、小動物捕獲器1の板状部材2の4つの端部2a~2dには、いずれも「折り返し片(折り曲げ片)」が形成されていない。これにより、フラット状態においては全周がバリアフリーとなるので、小動物が段差を警戒しにくくなり、更に捕獲率を上げることができる。また、仮に、板状部材2の端部に折り返し片が存在していると、粘着剤を塗布できる範囲が限られてしまうが、本実施形態では折り返し片が存在していないので、板状部材2の端部から所定距離(本実施形態では距離Bおよび距離Cが1cm)まで粘着剤を塗布することができる。
【0045】
図8に示すように、フラット状態の小動物捕獲器1を複数連結して使用することもできる。連結する際には、一方の小動物捕獲器1の第1係合部17を他方の小動物捕獲器1の第2係合部18に係合させることができる。これにより、複数の小動物捕獲器1を一体化して設置できる。連結可能な小動物捕獲器1の数は、2つに限られるものではなく、3つ以上であってもよい。また、複数の小動物捕獲器1を例えばテープや接着剤を用いて一体化してもよい。このように連結して広い面積に設置することにより、比較的大型の小動物をも捕獲しやすくなる。
【0046】
次に、図9図11に示す梱包状態について説明する。梱包状態にあるときには、後述するように包装材としての箱体300によって梱包される。梱包状態では、板状部材2が三角筒状となるように、第1~第3折り曲げ部21~23のうちの第1折り曲げ部21及び第2折り曲げ部22を折り曲げ、第3折り曲げ部23を折り曲げずに、第1係合部17と第2係合部18とを係合させる。このように、第1~第3折り曲げ部21~23のうち、第3折り曲げ部23のみ非折り曲げ状態にすることで、第3の距離L3及び第4の距離L4を合わせた長い第1面部(底辺部)41が得られる。梱包状態における底面部41は、図6における板状部材2の第2折り曲げ部22から他端部2bまでの範囲で構成されている。また、板状部材2の第2折り曲げ部22から第1折り曲げ部21までの範囲で第2面部42が構成される。さらに、板状部材2の第1折り曲げ部21から一端部2aまでの範囲で第3面部43が構成される。第1面部41の寸法が第2面部42及び第3面部43よりも長いので、梱包状態では、板状部材2が鈍角三角形の断面を持った三角筒状になる。
【0047】
梱包形態では板状部材2が三角筒状になるので、板状部材2をフラット形態にするよりも平面的な占有面積が小さくなり、ハウス形態にするよりも立体的な嵩張りが小さくなる。よって、流通・販売に適した形態になる。また、本実施形態の梱包形態は、断面三角形状に折り曲げ、第1係合部17と第2係合部18とを係合させることにより、強固な三角筒状構造が構成されている。なお、ここで言う「三角筒状」とは、単に二箇所で折り曲げて断面三角状になっているだけでなく、第1係合部17と第2係合部18とを係合させることで三角形の辺同士が接続されている状態を言う。
【0048】
梱包形態となっているときに三角筒状であることから、四角筒状に比べて強度が高くなり、例えば流通時の衝撃等が作用したときの板状部材2の変形が抑制される。これにより、小動物捕獲器1の型崩れが起こりにくくなる。型崩れが起こりにくくなるということは、三角筒状の軸方向端部に対応する部分に折り返し片が無くても、粘着部3同士の接着や粘着部3の他の部分への接着が回避される。結果として、小動物の入口付近に段差が無くなるとともに、粘着部3を構成している粘着剤の塗布範囲を拡大することができるので、小動物の捕獲率を向上させることができる。
【0049】
図12及び図13に示すように、梱包状態にした第1の小動物捕獲器1Aと第2の小動物捕獲器1Bとを箱体300に収容することで、小動物捕獲器梱包体400が構成される。具体的には、第1の小動物捕獲器1Aを構成している三角筒状の板状部材2の第1面部41と、第2の小動物捕獲器1Bを構成している三角筒状の板状部材2の第1面部41とを合わせた状態で、第1の小動物捕獲器1Aと第2の小動物捕獲器1Bとが箱体300に収容されている。これにより、箱体300内のデッドスペースを小さくしてスペース効率を向上させながら、複数の小動物捕獲器1A、1Bをまとめて梱包して流通・販売することができる。箱体300は、例えばボール紙や樹脂等で構成されている。
【0050】
また、第1の小動物捕獲器1Aの第1係合部17及び第2係合部18が第1面部41側に配置されている。同様に、第2の小動物捕獲器1Bの第1係合部17及び第2係合部18が第1面部41側に配置されている。そして、第1の小動物捕獲器1Aの第1係合部17及び第2係合部18と、第2の小動物捕獲器1Bの第1係合部17及び第2係合部18とが互い違いになるように、第1の小動物捕獲器1Aの第1面部41と、第2の小動物捕獲器1Bの第1面部41とが合わされている。これにより、第1係合部17や第2係合部18が邪魔になることなく、第1の小動物捕獲器1Aの第1面部41と、第2の小動物捕獲器1Bの第1面部41とをぴったりと合わせることができるので、スペース効率がより一層向上する。
【0051】
図14は、ハウス状態にある第1の小動物捕獲器1Aと、ハウス状態にある第2の小動物捕獲器1Bを箱体300Aに梱包した比較例を示すものである。この図に示すように、ハウス状態のままで梱包すると、図13に示す梱包状態にした場合に比べて大きな箱体300Aが必要になることが分かる。
【0052】
(使用要領)
図13に示す形態で流通・販売された後、ユーザが使用する際には、まず、梱包状態にある小動物捕獲器1A、1Bを箱体300から取り出す。その後、ハウス状態で使用する場合には、第1係合部17と第2係合部18とを係合させたまま、第3折り曲げ部23を折り曲げることで板状部材2を図1に示すような四角筒状にする。このように小動物捕獲器1A、1Bを箱体300から取り出した後、第3折り曲げ部23を折り曲げるだけでハウス状態にすることができるので、ユーザの手間が低減される。
【0053】
フラット状態で使用する場合には、第1係合部17を第2係合部18から抜いて板状部材2を平板状に広げればよい。この場合もユーザは容易な作業で済む。
【0054】
(小動物の捕獲試験1)
次に、小動物の捕獲試験1について説明する。供試動物はネズミ(ラットおよびマウス)である。捕獲試験1で使用した小動物捕獲器1は、板状部材2の厚みを1.0mmとした実施例1と、2.0mmとした実施例2と、3.5mmとした実施例3と、5.5mmとした実施例4との4種類である。なお、供試動物がラットの場合は小動物捕獲器1をフラット状態とし、マウスの場合は小動物捕獲器1をハウス形態とした。
【0055】
また、図15に示すように、試験装置として1辺の長さが1mの容積1mのボックス500を用意した。ボックス500の内部には、小さなボックス501を入れ、ボックス501の外面とボックス500の内面との間にネズミの歩行が可能な通路502を形成した。通路502に供試動物を1匹放ち、2時間馴化させた後、通路502に実施例1~4の小動物捕獲器1をそれぞれ設置した。
【0056】
実施例1~4の各々について、小動物捕獲器1の設置後、30分間、ネズミが小動物捕獲器1内に入ろうとした回数(接近回数)と、ネズミが小動物捕獲器1を通過した回数(通過回数)とをカウントした。以下の式で侵入率を算出した。尚、本試験では動物保護の観点から粘着部3を設けていないが、粘着部3がある状態でネズミが侵入すると、ほぼ100%の確率で粘着部3によって捕獲されるので、侵入率は、捕獲率とほぼ同じである。
【0057】
侵入率(%)=通過回数/接近回数
【0058】
図16は、捕獲試験1の試験結果を示すものである。このグラフから明らかなように、板状部材2の厚みが薄いほど侵入率が向上しており、特に板状部材2の厚みが2.0mmの実施例2では、板状部材2の厚みが3.5mmの実施例3に比べて2倍以上の侵入率となっている。さらに、板状部材2の厚みが1.0mmの実施例1では、侵入率が90%近くになる。要するに、板状部材2の厚みを1mm以下とすることで、ネズミが段差を警戒しにくくなり、ネズミの侵入率、即ち捕獲率を一層向上させることができる。
【0059】
(小動物の捕獲試験2)
次に、小動物の捕獲試験2について説明する。供試動物はネズミ(ラット)である。捕獲試験2で使用した小動物捕獲器1は、図6に示す距離A、B、Cを1.0cmとした実施例5と、1.9cmとした実施例6と、3.5cmとした実施例7との3種類である。なお、板状部材2の厚みは1.0mmとした。
【0060】
また、図18に示すように、試験装置として補角試験1で使用した1mのボックス500を用意した。ボックス500の内部に供試動物を1匹放ち、2時間馴化させた後、ボックス500の内部に実施例5~7の小動物捕獲器1をそれぞれ設置した。小動物捕獲器1はフラット状態にし、ボックス501の内壁面に沿って設置した。実施例5~7の各々について、1晩後のネズミの脱出の有無を確認した。この試験は4回繰り返した。以下の式により捕獲成功率を算出した。
【0061】
捕獲成功率(%)=捕獲成功数/4
【0062】
図18は、捕獲試験2の試験結果を示すものである。このグラフから明らかなように、距離A、B、Cが短いほど捕獲成功率が向上しており、特に1.0cmの実施例5では、捕獲成功率が100%になっている。このように、距離A、B、Cを短くすることで、壁に沿って走行するネズミを捕獲しやすくなる。
【0063】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えばハウス状態からフラット状態、フラット状態からハウス状態へ変えて使用することもできる。また、ハウス状態で側壁11、12に侵入口を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本開示に係る小動物捕獲器は、例えばネズミ等の小動物を捕獲する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 小動物捕獲器
2 板状部材
3 粘着部
13 床
14 天井
14a 侵入口
14b スロープ部
17 第1係合部
18 第2係合部
21 第1折り曲げ部
22 第2折り曲げ部
23 第3折り曲げ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18