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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005645
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240110BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240110BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D101:00
B62D119:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105910
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 雄吾
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐志
(72)【発明者】
【氏名】梶澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一馬
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼台 尭資
(72)【発明者】
【氏名】山下 正治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功史
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋介
(72)【発明者】
【氏名】片山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】高山 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 豊大
(72)【発明者】
【氏名】富澤 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】中島 信頼
(72)【発明者】
【氏名】田邊 隼希
(72)【発明者】
【氏名】岩名 毅
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC21
3D232CC26
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA64
3D232DA65
3D232DA90
3D232DA99
3D232DC07
3D232DC08
3D232DC34
3D232DD03
3D232DE09
3D232EA01
3D232EB04
3D232EB11
3D232EB12
3D232EC23
3D232FF10
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】車両の状態に応じて、適切に操舵力の発生を停止することができる車両用制御装置を提供する。
【解決手段】駆動制御装置50は、車両の始動スイッチ91Aがオンになることを契機として第1の電源線L1を通じて給電される。駆動制御装置50は、車両に走行用の駆動力を発生させるための第1の処理を実行する、操舵制御装置40は、始動スイッチ91Aがオンになることを契機として第2の電源線L2を通じて給電される。操舵制御装置40は、車両に操舵用の操舵力を発生させるための第2の処理を実行する。操舵制御装置40は、車両の走行中、第2の電源線L2を通じた給電が停止したと判定される場合、駆動制御装置50が第1の処理を実行できる状態ではないと判定されるとき、第2の処理の実行停止を許可する。操舵制御装置40は、駆動制御装置50が第1の処理を実行できる状態であると判定されるとき、第2の処理の実行停止を許可しない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の始動スイッチがオンになることを契機として第1の電源線を通じて給電される駆動制御装置であって、車両に走行用の駆動力を発生させるための第1の処理を実行するように構成される駆動制御装置と、
前記始動スイッチがオンになることを契機として第2の電源線を通じて給電される操舵制御装置であって、車両に操舵用の操舵力を発生させるための第2の処理を実行するように構成される操舵制御装置と、を有し、
前記操舵制御装置は、車両の走行中、前記第2の電源線を通じた給電が停止したと判定される場合、前記駆動制御装置が前記第1の処理を実行できる状態ではないと判定されるとき、前記第2の処理の実行停止を許可する一方、前記駆動制御装置が前記第1の処理を実行できる状態であると判定されるとき、前記第2の処理の実行停止を許可しないように構成される車両用制御装置。
【請求項2】
前記操舵制御装置は、前記第2の処理の実行停止を許可した場合、車両の走行が停止し、かつ、車両のステアリングホイールが操舵されていないと判定されるとき、前記第2の処理の実行を停止するように構成される請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記操舵制御装置は、前記第1の電源線の電圧レベルに基づき、前記駆動制御装置が前記第1の処理を実行できる状態であるかどうかを判定するように構成される請求項1または請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記駆動制御装置は、車両の始動スイッチがオンになることを契機として、定められた起動準備を実行開始するとともに、前記起動準備が完了した後、前記第1の処理を実行するように構成され、
前記操舵制御装置は、前記起動準備が完了しているかどうかに基づき、前記駆動制御装置が前記第1の処理を実行できる状態であるかどうかを判定するように構成される請求項1または請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記第2の処理は、車両の転舵輪との間の動力伝達が分離されたステアリングホイールに付与される操舵反力と、
前記転舵輪を転舵させるための転舵力と、を発生させるための処理である請求項1または請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記第2の処理は、車両の転舵輪に動力伝達可能に連結されたステアリングホイールの操舵を補助するためのアシスト力を発生させるための処理である請求項1または請求項2に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の操舵機構に付与される操舵力の発生源であるモータを制御する制御装置が存在する。制御装置は、車載のセンサを通じて検出される操舵トルクおよび車速に応じて、モータに対する給電を制御する。操舵力は、車両の進行方向を変更する際にモータが発生する操舵用のトルクである。
【0003】
たとえば、特許文献1の制御装置は、給電経路を第1の給電経路と第2の給電経路との間で切り替えることが可能である。第1の給電経路は、イグニッションスイッチを含む給電経路である。第2の給電経路は、車載のバッテリから直接的に引き込まれるパワーラインを含む給電経路である。イグニッションスイッチは、車両の始動スイッチである。
【0004】
制御装置は、車両の走行中、給電経路を第1の給電経路に維持する。制御装置は、車両の走行中、たとえばイグニッションスイッチがオフされることによって第1の給電経路を介した給電が遮断されたとき、給電経路を第1の給電経路から第2の給電経路へ切り替える。制御装置は、第1の給電経路を介した給電が遮断されてから所定の期間だけ経過した後、第2の給電経路を介した給電を遮断する。
【0005】
このため、車両の走行中、第1の給電経路を介した給電が遮断されたとき、即時に操舵力の発生が停止されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-1143048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の制御装置は、第1の給電経路を介した給電が遮断されてから所定の期間だけ経過した後、車両の状態にかかわらず、第2の給電経路を介した給電を遮断する。車両の状態によっては、操舵力の発生を停止することが好ましくない状況が想定される。
【0008】
たとえば、イグニッションスイッチがオフされることによって、走行用の駆動力の発生が停止された後も、車両が慣性によって走行を継続するおそれがある。このような状況下において、操舵力の発生を停止することは好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決し得る車両用制御装置は、車両の始動スイッチがオンになることを契機として第1の電源線を通じて給電される駆動制御装置であって、車両に走行用の駆動力を発生させるための第1の処理を実行するように構成される駆動制御装置と、前記始動スイッチがオンになることを契機として第2の電源線を通じて給電される操舵制御装置であって、車両に操舵用の操舵力を発生させるための第2の処理を実行するように構成される操舵制御装置と、を有している。前記操舵制御装置は、車両の走行中、前記第2の電源線を通じた給電が停止したと判定される場合、前記駆動制御装置が前記第1の処理を実行できる状態ではないと判定されるとき、前記第2の処理の実行停止を許可する一方、前記駆動制御装置が前記第1の処理を実行できる状態であると判定されるとき、前記第2の処理の実行停止を許可しないように構成される。
【0010】
この構成によれば、車両の走行中に第2の電源線を通じた給電が停止したと判定される場合、車両が走行用の駆動力を発生可能な状態であるにもかかわらず、車両に操舵用の操舵力を発生させるための第2の処理の実行が停止されることが回避される。すなわち、車両の状態に応じて、適切に操舵力の発生を停止することが可能となる。また、車両の状態に応じて、適切に操舵機能を維持することが可能となる。
【0011】
上記の車両用制御装置において、前記操舵制御装置は、前記第2の処理の実行停止を許可した場合、車両の走行が停止し、かつ、車両のステアリングホイールが操舵されていないと判定されるとき、前記第2の処理の実行を停止するように構成されてもよい。
【0012】
この構成によれば、車両の走行中、あるいは、ステアリングホイールが操舵されているときに、車両に操舵用の操舵力を発生させるための第2の処理の実行が停止されることが回避される。
【0013】
上記の車両用制御装置において、前記操舵制御装置は、前記第1の電源線の電圧レベルに基づき、前記駆動制御装置が前記第1の処理を実行できる状態であるかどうかを判定するように構成されてもよい。
【0014】
この構成によれば、第1の電源線の電圧レベルに基づき、駆動制御装置が第1の処理を実行できる状態であるかどうかを判定することができる。
上記の車両用制御装置において、前記駆動制御装置は、車両の始動スイッチがオンになることを契機として、定められた起動準備を実行開始するとともに、前記起動準備が完了した後、前記第1の処理を実行するように構成されてもよい。この場合、前記操舵制御装置は、前記起動準備が完了しているかどうかに基づき、前記駆動制御装置が前記第1の処理を実行できる状態であるかどうかを判定するように構成されてもよい。
【0015】
この構成によれば、駆動制御装置の起動準備が完了しているかどうかに基づき、駆動制御装置が第1の処理を実行できる状態であるかどうかを判定することができる。
上記の車両用制御装置において、前記第2の処理は、車両の転舵輪との間の動力伝達が分離されたステアリングホイールに付与される操舵反力と、前記転舵輪を転舵させるための転舵力と、を発生させるための処理であってもよい。
【0016】
上記の車両用制御装置において、前記第2の処理は、車両の転舵輪に動力伝達可能に連結されたステアリングホイールの操舵を補助するためのアシスト力を発生させるための処理であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両用制御装置によれば、車両の状態に応じて、適切に操舵力の発生を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両用制御装置の一実施の形態が搭載されるステアバイワイヤ式の操舵装置の構成図である。
図2】一実施の形態にかかる車両制御システムの構成を示すブロック図である。
図3】(a),(b),(c),(d)は、車両の状態遷移の比較例を示す模式図である。
図4】(a),(b),(c),(d),(e)は、一実施の形態にかかる車両の状態遷移を示す模式図である。
図5】他の実施の形態にかかる車両用制御装置の搭載される電動パワーステアリング装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、操舵制御装置をステアバイワイヤ式の操舵装置に具体化した一実施の形態を説明する。
図1に示すように、車両の操舵装置10は、ステアリングホイール11に連結されたステアリングシャフト12を有している。また、操舵装置10は、車幅方向(図1中の左右方向)に沿って延びる転舵シャフト13を有している。転舵シャフト13の両端には、それぞれタイロッド14を介して転舵輪15が連結される。転舵シャフト13が直線運動することにより、転舵輪15の転舵角θwが変更される。ステアリングシャフト12および転舵シャフト13は車両の操舵機構を構成する。なお、図1では片側の転舵輪15のみを図示する。
【0020】
操舵装置10は、反力モータ21および減速機構22を有している。反力モータ21は、たとえば三相のブラシレスモータである。反力モータ21は、操舵反力の発生源である。操舵反力とは、運転者によるステアリングホイール11の操作方向と反対方向へ向けて作用する力をいう。操舵反力は、車両の進行方向を変更する際に反力モータ21が発生する操舵用の操舵力である。
【0021】
反力モータ21の回転軸は、減速機構22を介してステアリングシャフト12に連結されている。反力モータ21のトルクは、操舵反力としてステアリングシャフト12に付与される。操舵反力をステアリングホイール11に付与することにより、運転者に適度な手応え感を与えることが可能である。
【0022】
操舵装置10は、転舵モータ31および減速機構32を有している。転舵モータ31は、たとえば三相のブラシレスモータである。転舵モータ31は転舵力の発生源である。転舵力とは、転舵輪15を転舵させるための動力をいう。転舵力は、車両の進行方向を変更する際に転舵モータ31が発生する操舵用の操舵力である。
【0023】
転舵モータ31の回転軸は、減速機構32を介してピニオンシャフト33に連結されている。ピニオンシャフト33のピニオン歯33aは、転舵シャフト13のラック歯13aに噛み合わされている。転舵モータ31のトルクは、転舵力としてピニオンシャフト33を介して転舵シャフト13に付与される。転舵モータ31の回転に応じて、転舵シャフト13は車幅方向に沿って移動する。
【0024】
操舵装置10は、操舵制御装置40を有している。操舵制御装置40は、車両用制御装置を構成する。操舵制御装置40は、つぎの3つの構成A1,A2,A3のうちいずれか一を含む処理回路を有している。
【0025】
A1.ソフトウェアであるコンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを含む。
A2.各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)などの1つ以上の専用のハードウェア回路。ASICは、CPUおよびメモリを含む。
【0026】
A3.構成A1,A2を組み合わせたハードウェア回路。
メモリは、コンピュータで読み取り可能とされた媒体であって、コンピュータに対する処理あるいは命令を記述したプログラムを記憶している。本実施の形態では、コンピュータは、CPUである。メモリは、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を含む。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを定められた演算周期で実行することによって各種の制御を実行する。
【0027】
操舵制御装置40は、反力制御装置40Aおよび転舵制御装置40Bを含んでいる。
反力制御装置40Aは、制御対象である反力モータ21の駆動を制御する。反力制御装置40Aは、操舵トルクThに応じた操舵反力を反力モータ21に発生させるための反力制御を実行する。反力制御装置40Aは、トルクセンサ23を通じて検出される操舵トルクThに基づき目標操舵反力を演算する。トルクセンサ23は、ステアリングシャフト12に設けられている。反力制御装置40Aは、ステアリングシャフト12に付与される実際の操舵反力を目標操舵反力に一致させるべく反力モータ21への給電を制御する。
【0028】
なお、反力制御装置40Aと反力モータ21とを一体的に設けることにより、いわゆる機電一体型の反力アクチュエータを構成してもよい。
転舵制御装置40Bは、制御対象である転舵モータ31の駆動を制御する。転舵制御装置40Bは、操舵状態に応じて転舵輪15を転舵させるための転舵力を転舵モータ31に発生させるための転舵制御を実行する。転舵制御装置40Bは、舵角センサ24を通じて検出される操舵角θs、およびストロークセンサ34を通じて検出される転舵シャフト13のストロークXwを取り込む。ストロークXwは、転舵シャフト13の中立位置を基準とする変位量であって、転舵角θwが反映される状態変数である。舵角センサ24は、ステアリングシャフト12のトルクセンサ23と減速機構22との間に設けられている。ストロークセンサ34は、転舵シャフト13の近傍に設けられている。
【0029】
転舵制御装置40Bは、舵角センサ24を通じて検出される操舵角θsに基づき、転舵輪15の目標転舵角を演算する。転舵制御装置40Bは、ストロークセンサ34を通じて検出される転舵シャフト13のストロークXwに基づき転舵角θwを演算する。転舵制御装置40Bは、ストロークXwに基づき演算される転舵角θwを目標転舵角に一致させるべく転舵モータ31への給電を制御する。
【0030】
なお、転舵制御装置40Bと転舵モータ31とを一体的に設けることにより、いわゆる機電一体型の転舵アクチュエータを構成してもよい。また、転舵制御装置40Bと反力制御装置40Aとは、通信を行うことが可能である。転舵制御装置40Bと反力制御装置40Aとは、通信により、互いに情報を授受することが可能である。
【0031】
車両は、駆動制御装置50を有している。駆動制御装置50は、車両用制御装置を構成する。駆動制御装置50は、基本的には操舵制御装置40と同様の構成を有している。反力制御装置40Aと車載の駆動制御装置50とは、車載ネットワーク51を介して相互に接続されている。車載ネットワーク51は、たとえばCAN(Controller Area Network)である。反力制御装置40Aと駆動制御装置50とは、車載ネットワーク51を介して、互いに情報を授受する。
【0032】
駆動制御装置50は、車両の走行を制御する。具体的には、駆動制御装置50は、たとえば車両のパワートレインを制御する。パワートレインは、車両の走行用駆動源および動力伝達機構を含む。走行用駆動源は、車両を走行させるための駆動力を発生する。走行用駆動源は、たとえばエンジンあるいはモータを含む。走行用駆動源がエンジンである場合、駆動制御装置50は、燃料噴射装置を含む。動力伝達機構は、走行用駆動源が発生する駆動力を駆動輪に伝達するための機構である。反力制御装置40Aは、駆動制御装置50との間で授受される情報に基づき、反力モータ21の駆動を制御する。
【0033】
なお、駆動制御装置50が実行する車両のパワートレインの制御は、車両に走行用の駆動力を発生させるための第1の処理に相当する。操舵制御装置40が実行する反力制御および転舵制御は、車両に操舵用の操舵力を発生させるための第2の処理に相当する。
【0034】
<車両の制御システムの構成>
つぎに、車両の制御システムの構成について説明する。
図2に示すように、車両の制御システムは、先の操舵制御装置40および駆動制御装置50に加えて、様々な制御装置あるいはシステムを有している。制御システムは、たとえば、ボディ制御装置60、配電制御装置70、および、その他のシステム80を有している。その他のシステム80は、車両のパワートレインに走行用の駆動力を発生させる際に動作することが要求される各種のシステムを含む。
【0035】
操舵制御装置40、駆動制御装置50、ボディ制御装置60、および、その他のシステム80を含む各種の制御装置には、車載の直流電源90から電力が供給される。直流電源90は、たとえばバッテリである。トルクセンサ23、舵角センサ24、およびストロークセンサ34を含む各種のセンサにも、直流電源90から電力が供給される。
【0036】
操舵制御装置40、駆動制御装置50、ボディ制御装置60、および、その他のシステム80は、車載ネットワーク51を介して相互に接続されている。ボディ制御装置60と配電制御装置70とは、基板対基板コネクタ61を介して、互いに通信可能に接続されている。ボディ制御装置60と配電制御装置70との間の通信規格は、たとえば、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)である。
【0037】
駆動制御装置50、ボディ制御装置60、配電制御装置70、および、その他のシステム80は、第1の電源線L1を介して、直流電源90に接続されている。操舵制御装置40は、第2の電源線L2および配電制御装置70を介して、直流電源90に接続されている。
【0038】
第1の電源線L1は、始動スイッチ91A、および第1のリレー91Bを有している。始動スイッチ91Aは、第1のリレー91Bよりも直流電源90に近い位置に配置されている。
【0039】
始動スイッチ91Aは、たとえばイグニッションスイッチあるいはパワースイッチである。始動スイッチ91Aは、エンジンなどの車両の走行用駆動源を始動または停止させる際に操作される。始動スイッチ91Aがオンされたとき、直流電源90の電力を、各制御装置(40,50,60,70)および、その他のシステム80へ供給可能となる。始動スイッチ91Aがオンすることは、車両電源がオンすることである。始動スイッチ91Aがオフすることは、車両電源がオフすることである。
【0040】
第1のリレー91Bは、第1の電源線L1を開閉する。第1のリレー91Bは、コイルおよび接点を有する。コイルが励磁されるとき、接点が閉じる。コイルが励磁されないとき、接点が開く。
【0041】
ボディ制御装置60は、第1の電源線L1の第1の接続点P1に接続されている。第1の接続点P1は、第1の電源線L1における始動スイッチ91Aと第1のリレー91Bとの間に位置している。
【0042】
配電制御装置70は、第1の電源線L1の第2の接続点P2に接続されている。第2の接続点P2は、第1の電源線L1における第1の接続点P1と第1のリレー91Bとの間に位置している。
【0043】
駆動制御装置50は、第1の電源線L1の第3の接続点P3に接続されている。第3の接続点P3は、第1のリレー91Bに対して、第2の接続点P2の反対側に位置している。
【0044】
その他のシステム80は、第1の電源線L1の第4の接続点P4に接続されている。第4の接続点P4は、第3の接続点P3に対して、第1のリレー91Bの反対側に位置している。
【0045】
第1の電源線L1において、始動スイッチ91A、第1の接続点P1、第2の接続点P2、第1のリレー91B、第3の接続点P3、および第4の接続点P4は、この順序で直流電源90から離れている。
【0046】
ボディ制御装置60は制御回路60Aを有している。制御回路60Aは、CPUである。制御回路60Aは、車両のボディ全般の機能を制御する。制御回路60Aは、たとえば、車室内の空調、車室内外の照明、ドア、窓、ミラー、およびワイパーを集中制御する。
【0047】
配電制御装置70は、制御回路70Aおよび第2のリレー70Bを有している。制御回路70Aは、CPUである。制御回路70Aは、直流電源90から供給される電力の配電を制御する。制御回路70Aは、制御回路60Aと通信することが可能である。
【0048】
第2のリレー70Bは、第1のリレー91Bと同様の構成を有している。第2のリレー70Bの入力端子は、接続線LCを介して、第1の電源線L1の第2の接続点P2に接続されている。第2のリレー70Bの出力端子は、第2の電源線L2に接続されている。接続線LCは、逆流防止用のダイオード70Cを有している。ダイオード70Cのアノードは、第2の接続点P2に接続されている。ダイオード70Cのカソードは、第2のリレー70Bの入力端子に接続されている。
【0049】
なお、操舵制御装置40は、第2の電源線L2の第5の接続点P5に接続されている。駆動制御装置50は、第1の電源線L1のみならず、第2の電源線L2の第6の接続点P6にも接続されている。
【0050】
制御回路70Aは、第1のリレー91Bおよび第2のリレー70Bの開閉を制御する。第1のリレー91Bがオンされるとき、第2の接続点P2と第3の接続点P3との間の第1の電源線L1の部分が導通される。第1のリレー91Bがオフされるとき、第2の接続点P2と第3の接続点P3との間の第1の電源線L1の部分の導通が遮断される。また、第2のリレー70Bがオンされるとき、接続線LCと第2の電源線L2とが導通される。第2のリレー70Bがオフされるとき、接続線LCと第2の電源線L2との導通が遮断される。
【0051】
制御回路70Aは、第1の入力端子70Dおよび第2の入力端子70Eを有している。
第1の入力端子70Dは、第1の引込線LW1を介して、接続線LCの第7の接続点P7に接続されている。第7の接続点P7は、接続線LCの第2の接続点P2とダイオード70Cとの間に位置している。第1の入力端子70Dと第1の引込線LW1とは、たとえばコネクタにより接続される。
【0052】
第2の入力端子70Eは、第2の引込線LW2を介して、接続線LCの第8の接続点P8に接続されている。第8の接続点P8は、接続線LCのダイオード70Cと第2のリレー70Bとの間に位置している。第2の入力端子70Eと第2の引込線LW2とは、たとえばコネクタにより接続される。
【0053】
制御回路70Aは、接続線LCおよび第1の引込線LW1を介して、第1のリレー91Bに供給される電力を取り込む。制御回路70Aは、接続線LCおよび第2の引込線LW2を介して、第2のリレー70Bに供給される電力を取り込む。制御回路70Aは、第1の入力端子70Dの電圧レベル、および、第2の入力端子70Eの電圧レベルを監視する。
【0054】
制御回路70Aは、第1の入力端子70Dの電圧レベルが第1の電圧しきい値以上であるとき、第1のリレー91Bをオンにする。すなわち、制御回路70Aは、第1のリレー91Bのコイルを励磁するための電気信号を第1のリレー91Bへ供給する。第1のリレー91Bのコイルが励磁されることにより、第1のリレー91Bの接点が閉じる。第1のリレー91Bがオンになることにより、直流電源90からの電力が、第1の電源線L1を介して、駆動制御装置50、および、その他のシステム80へ供給される。
【0055】
なお、第1の電圧しきい値は、始動スイッチ91Aがオンされたとき、第1の入力端子70Dに印加される電圧を基準として設定される。第1の入力端子70Dの電圧レベルは、第1の電源線L1の電圧レベルに相当する。
【0056】
制御回路70Aは、第1の入力端子70Dの電圧レベルに応じて、第1のフラグの値をセットする。制御回路70Aは、第1の入力端子70Dの電圧レベルが第1の電圧しきい値以上であるとき、第1のフラグの値を「1(=Hi)」にセットする。制御回路70Aは、第1の入力端子70Dの電圧レベルが第1の電圧しきい値未満であるとき、第1のフラグの値を「0(=Lo)」にセットする。第1のフラグは、始動スイッチ91Aのオンオフの状態を示す情報でもある。
【0057】
制御回路70Aは、第2の入力端子70Eの電圧レベルが第2の電圧しきい値以上であるとき、第2のリレー70Bをオンにする。すなわち、制御回路70Aは、第2のリレー70Bのコイルを励磁するための電気信号を第2のリレー70Bへ供給する。第2のリレー70Bのコイルが励磁されることにより、第2のリレー70Bの接点が閉じる。第2のリレー70Bがオンになることにより、直流電源90からの電力が、第2の電源線L2を介して、操舵制御装置40および駆動制御装置50へ供給される。
【0058】
なお、第2の電圧しきい値は、始動スイッチ91Aがオンされたとき、第2の入力端子70Eに印加される電圧を基準として設定される。第2の入力端子70Eの電圧レベルは、第2の電源線L2の電圧レベルに相当する。
【0059】
制御回路70Aは、第2の入力端子70Eの電圧レベルに応じて、第2のフラグの値をセットする。制御回路70Aは、第2の入力端子70Eの電圧レベルが第2の電圧しきい値以上であるとき、第2のフラグの値を「1(=Hi)」にセットする。制御回路70Aは、第2の入力端子70Eの電圧レベルが第2の電圧しきい値未満であるとき、第2のフラグの値を「0(=Lo)」にセットする。第2のフラグは、始動スイッチ91Aのオンオフの状態を示す情報でもある。
【0060】
ボディ制御装置60は、第1のフラグの値および第2のフラグの値を取り込む。第1のフラグの値および第2のフラグの値は、車載ネットワーク51を介して、各種の制御装置あるいはシステムで共有される。制御装置は、操舵制御装置40、駆動制御装置50、ボディ制御装置60、およびその他のシステム80の制御装置を含む。
【0061】
なお、操舵制御装置40は、図示しない電源リレーを介して、直流電源90に接続されている。電源リレーがオンしたとき、直流電源90からの電力が、電源リレーを介して、操舵制御装置40に供給される。電源リレーがオフしたとき、電源リレーを介した電力供給が遮断される。操舵制御装置40は、電源リレーのオンオフを制御する。操舵制御装置40は、始動スイッチ91Aがオンしたとき、電源リレーをオンにする。操舵制御装置40は、始動スイッチ91Aがオフしたとき、電源リレーをオフにする。
【0062】
ちなみに、操舵制御装置40は、始動スイッチ91Aがオフしたとき、定められた期間だけ電源リレーをオンした状態に維持するパワーラッチ制御を実行するように構成してもよい。このようにすれば、始動スイッチ91Aがオフされた後であれ、操舵制御装置40は、動作することが可能である。操舵制御装置40は、定められた期間だけ経過したとき、電源リレーをオフにすることによって自身への給電を遮断する。
【0063】
電源リレーを介した操舵制御装置40への給電が遮断されると、操舵制御装置40による反力制御および転舵制御の実行が停止される。
<走行中の始動スイッチのオフ操作について>
車両においては、つぎのようなことが懸念される。すなわち、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされることが想定される。しかしながら、車両が走行中であるため、電源リレーを介した操舵制御装置40への給電が遮断されることにより操舵制御装置40による反力制御および転舵制御の実行が即座に停止されることは好ましくない。
【0064】
そこで、走行中の始動スイッチ91Aのオフ操作に対処するため、操舵制御装置40をつぎのように構成することが考えられる。
操舵制御装置40は、たとえば、つぎの3つの条件B1~B3がすべて成立するとき、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定する。操舵制御装置40は、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定されるとき、反力制御および転舵制御の実行を継続する。
【0065】
B1.「V<V2th
ただし、「V」は、第2の電源線L2の電圧レベルである。「V2th」は、電圧しきい値である。電圧しきい値は、始動スイッチ91Aがオフされたかどうかを判定する際の基準であって、たとえば、始動スイッチ91Aがオフされているときの第2の電源線L2の電圧レベルを基準として設定される。
【0066】
B2.「V>Vth1
ただし、「V」は、車載ネットワーク51を介して取得される車速の値である。「Vth1」は、第1の車速しきい値である。第1の車速しきい値Vth1は、車両が走行しているかどうかを判定する際の基準であって、たとえば、数Km/hの極低速を基準として設定される。
【0067】
B3.「FG2=0」
ただし、「FG2」は、配電制御装置70によりセットされる第2のフラグの値である。第2のフラグFG2の値が「0」であることは、第2の入力端子70Eの電圧レベルが、第2の電圧しきい値未満であることを示す。操舵制御装置40は、車載ネットワーク51を介して、第2のフラグFG2の値を取得する。
【0068】
操舵制御装置40は、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定されるとき、反力制御および転舵制御の実行停止を許可する。ただし、操舵制御装置40は、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定される場合、つぎの2つの条件C1,C2がすべて成立するとき、反力制御および転舵制御の実行を停止する。
【0069】
C1.「V≦Vth2」かつ「T1≧T1th
ただし、「Vth2」は、第2の車速しきい値である。第2の車速しきい値Vth2は、第1の車速しきい値Vth1と同じであってもよい。「T1」は、車速Vが第2の車速しきい値Vth2以下の値に低下してからの経過時間である。「T1th」は、第1の時間しきい値である。第1の時間しきい値は、車両が停車しているかどうかを判定する際の基準である。
【0070】
C2.「Th≦Thth」かつ「T2≧T2th
ただし、「Th」は、操舵トルクである。「Thth」は、トルクしきい値である。トルクしきい値は、ステアリングホイール11が操舵されていないかどうかを判定する際の基準である。「T2」は、操舵トルクThがトルクしきい値以下の値に低下してからの経過時間である。「T2th」は、第2の時間しきい値である。第2の時間しきい値は、ステアリングホイール11の操舵が行われない状況であるかどうかを判定する際の基準である。
【0071】
なお、条件C1として、つぎの条件を採用してもよい。
C1.「T3≧T3th
ただし、「T3」は、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされてからの経過時間である。「T3th」は、第3の時間しきい値である。第3の時間しきい値T3thは、第1の時間しきい値T1thと比べ十分に大きい値に設定される。第3の時間しきい値T3thは、車両が停車しているかどうかを判定する際の基準である。
【0072】
このようにすれば、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされた場合であれ、操舵制御装置40による反力制御および転舵制御の実行が即時に停止されることがない。車両が走行を停止し、ステアリングホイール11の操舵も行われなくなったとき、操舵制御装置40による反力制御および転舵制御の実行が停止される。
【0073】
ところが、車両においては、つぎのような事象が発生するおそれがある。
図3(a)に示すように、車両の走行中、配電制御装置70の第2の入力端子70Eと第2の引込線LW2とを接続するコネクタ100が外れることが想定される。この場合、始動スイッチ91Aがオフされていないにもかかわらず、操舵制御装置40は、反力制御および転舵制御の実行を停止するおそれがある。
【0074】
すなわち、コネクタ100が外れたとき、第2の入力端子70Eの電圧レベルが第2の電圧しきい値未満の値に低下する。このため、配電制御装置70は、第2のフラグFG2の値を「0」にセットする。また、配電制御装置70は、第2の入力端子70Eの電圧レベルが第2の電圧しきい値未満の値に低下することによって、第2のリレー70Bをオフにする。これにより、直流電源90から第2の電源線L2への給電が停止する。
【0075】
したがって、車両が走行中であって、車速Vの値が第1の車速しきい値Vth1よりも大きい場合、操舵制御装置40は、先の3つの条件B1~B3がすべて成立するとして、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと誤判定する。
【0076】
図3(b),(c)に示すように、この後、車両が走行を停止することによって先の条件C1が成立し、かつステアリングホイール11の操舵が行われなくなることによって先の条件C2が成立するとき、操舵制御装置40は、反力制御および転舵制御の実行を停止する。
【0077】
図3(d)に示すように、操舵制御装置40が反力制御および転舵制御の実行を停止した場合であれ、駆動制御装置50は正常に動作を継続している。すなわち、車両としては走行可能な状態であるにもかかわらず、操舵機能を失うおそれがある。操舵機能は、ステアリングホイール11の操作量に応じて、転舵輪15を転舵させる機能である。
【0078】
なお、車両の走行中、第2の引込線LW2または第2の電源線L2に、断線または地絡が発生した場合においても、コネクタ100が外れたときと同様の事象が発生するおそれがある。
【0079】
<走行中の始動スイッチの状態判定処理>
そこで、本実施の形態では、操舵制御装置40として、つぎの構成を採用している。すなわち、操舵制御装置40は、車両の走行中に始動スイッチ91Aの状態を判定するための条件として、先の3つの条件B1~B3に加え、つぎの条件B4を有している。
【0080】
B4.「FG1=0」
ただし、「FG1」は、配電制御装置70によりセットされる第1のフラグの値である。第1のフラグFG1の値が「0」であることは、第1の入力端子70Dの電圧レベルが、第1の電圧しきい値未満であることを示す。操舵制御装置40は、車載ネットワーク51を介して、第1のフラグFG1の値を取得する。
【0081】
操舵制御装置40は、先の4つの条件B1~B4がすべて成立するとき、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定する。操舵制御装置40は、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定されるとき、反力制御および転舵制御の実行停止を許可する。ただし、操舵制御装置40は、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定される場合、先の2つの条件C1,C2がすべて成立するとき、反力制御および転舵制御の実行を停止する。
【0082】
<実施の形態の作用>
つぎに、本実施の形態の作用を説明する。
図4(a)に示すように、車両の走行中、配電制御装置70の第2の入力端子70Eと第2の引込線LW2とを接続するコネクタ100が外れることが想定される。この場合、第2の入力端子70Eの電圧レベルが第2の電圧しきい値未満の値に低下する。このため、配電制御装置70は、第2のフラグFG2の値を「0」にセットする。また、配電制御装置70は、第2の入力端子70Eの電圧レベルが第2の電圧しきい値未満の値に低下することによって、第2のリレー70Bをオフにする。これにより、直流電源90から第2の電源線L2への給電が停止する。したがって、車両が走行中であって、車速Vの値が第1の車速しきい値Vth1よりも大きい場合、先の3つの条件B1~B3が成立する。
【0083】
しかし、実際には始動スイッチ91Aがオフにされていない場合、第1の入力端子70Dの電圧レベルは、第1の電圧しきい値以上の値に維持される。すなわち、第1のフラグFG1の値は「1」に維持される。先の条件B4が成立しないため、操舵制御装置40が、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定することはない。
【0084】
このため、操舵制御装置40は、たとえ先の2つの条件C1,C2がすべて成立するときであれ、反力制御および転舵制御の実行を停止することはない。したがって、駆動制御装置50が正常に動作を継続することにより、車両が走行可能な状態であるにもかかわらず、操舵機能を失うことが回避される。操舵制御装置40が反力制御および転舵制御の実行を継続することにより、操舵機能が維持される。
【0085】
なお、車両の走行中、第2の引込線LW2または第2の電源線L2に、断線または地絡が発生した場合においても、コネクタ100が外れたときと同様の処理が実行される。
図4(b)に示すように、車両の走行中に始動スイッチ91Aが実際にオフにされた場合、第1の入力端子70Dの電圧レベルが第1の電圧しきい値未満の値に低下する。このため、配電制御装置70は、第1のフラグFG1の値を「0」にセットする。また、配電制御装置70は、第1の入力端子70Dの電圧レベルが第1の電圧しきい値未満の値に低下することによって、第1のリレー91Bをオフにする。これにより、直流電源90から第1の電源線L1への給電が停止する。したがって、駆動制御装置50、および、その他のシステム80の動作が停止することにより、車両のパワートレインが走行用の駆動力を発生することもない。ただし、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフにされた場合、車両は慣性により走行を継続することが可能である。
【0086】
また、車両の走行中に始動スイッチ91Aが実際にオフにされた場合、第2の入力端子70Eの電圧レベルが第2の電圧しきい値未満の値に低下する。このため、配電制御装置70は、第2のフラグFG2の値を「0」にセットする。また、配電制御装置70は、第2の入力端子70Eの電圧レベルが第2の電圧しきい値未満の値に低下することによって、第2のリレー70Bをオフにする。これにより、直流電源90から第2の電源線L2への給電が停止する。したがって、車両が走行中であって、車速Vの値が第1の車速しきい値Vth1よりも大きい場合、先の4つの条件B1~B4がすべて成立する。
【0087】
操舵制御装置40は、先の4つの条件B1~B4がすべて成立することにより、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定する。
図4(c),(d),(e)に示すように、この後、車両が走行を停止することによって先の条件C1が成立し、かつステアリングホイール11の操舵が行われなくなることによって先の条件C2が成立するとき、操舵制御装置40は、反力制御および転舵制御の実行を停止する。駆動制御装置50、その他のシステム80、および車両のパワートレインは、動作を停止した状態に維持される。
【0088】
<実施の形態の効果>
本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)操舵制御装置40は、車両の走行中、第2の電源線L2を通じた給電が停止したと判定される場合、駆動制御装置50が走行用の駆動力を発生させるための処理を実行できる状態ではないと判定されるとき、反力制御および転舵制御の実行停止を許可する。これに対し、操舵制御装置40は、車両の走行中、第2の電源線L2を通じた給電が停止したと判定される場合、駆動制御装置50が走行用の駆動力を発生させるための処理を実行できる状態であると判定されるとき、反力制御および転舵制御の実行停止を許可しない。
【0089】
このため、車両の走行中に第2の電源線L2を通じた給電が停止したと判定される場合、車両が走行用の駆動力を発生可能な状態であるにもかかわらず、反力制御および転舵制御の実行が停止されることが回避される。すなわち、車両の状態に応じて、反力制御および転舵制御の実行を停止することにより、適切に操舵機能を停止することが可能となる。また、車両の状態に応じて、反力制御および転舵制御の実行を継続することにより、適切に操舵機能を維持することが可能となる。
【0090】
(2)たとえば、コネクタ100が外れることにより、第2の電源線L2を通じた給電が停止されることが想定される。コネクタ100が外れた場合、第1の電源線L1を通じた給電は継続される一方、第2の電源線L2を通じた給電のみが停止される。これに対し、始動スイッチ91Aがオフにされた場合、第1の電源線L1を通じた給電、および第2の電源線L2を通じた給電の両方が停止される。
【0091】
この観点から、操舵制御装置40は、車両の走行中に第2の電源線L2を通じた給電が停止したと判定される場合、駆動制御装置50が走行用の駆動力を発生させるための処理を実行できる状態であると判定されるとき、反力制御および転舵制御の実行停止を許可しない。すなわち、操舵制御装置40は、先の条件B1~B3が成立しても、条件B4が成立しなければ、反力制御および転舵制御の実行停止を許可しない。このため、始動スイッチ91Aがオフにされたかどうかを、より正確に判定することができる。したがって、コネクタ100が外れることに起因して、操舵制御装置40が、反力制御および転舵制御の実行が誤って停止されることを抑制することができる。
【0092】
なお、第2の引込線LW2または第2の電源線L2に、断線あるいは地絡が発生した場合についても同様である。
(3)操舵制御装置40は、反力制御および転舵制御の実行停止を許可した場合、先の2つの条件C1,C1の両方が成立することにより、車両の走行が停止し、かつ、ステアリングホイール11が操舵されていないと判定されるとき、反力制御および転舵制御の実行を停止する。このようにすれば、車両の走行中、あるいは、ステアリングホイール11が操舵されているときに、反力制御および転舵制御の実行が停止されることが回避される。
【0093】
(4)操舵制御装置40は、第1の電源線L1の電圧レベルに基づき、駆動制御装置50が走行用の駆動力を発生させるための処理を実行できる状態であるかどうかを簡単に判定することができる。第1の電源線L1の電圧レベルは、配電制御装置70によりセットされる第1のフラグFG1の値に基づき、認識することが可能である。
【0094】
(5)ステアバイワイヤ式の操舵装置10においては、ステアリングホイール11と転舵輪15との間の動力伝達が分離されている。このため、操舵装置10には、車両の状態に応じて、適切に操舵機能を維持すること、あるいは、適切に操舵機能を停止することが要求される。この点、操舵制御装置40は、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定される場合であれ、車両の走行中、あるいは、ステアリングホイール11が操舵されているときには、反力制御および転舵制御の実行を停止しない。このため、本実施の形態は、ステアバイワイヤ式の操舵装置10に好適である。
【0095】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・反力モータ21は、第1系統の巻線群および第2系統の巻線群を有していてもよい。第1系統の巻線群および第2系統の巻線群は、共通のステータに巻回される。第1系統の巻線群および第2系統の巻線群の電気的な特性は同等である。反力制御装置40Aは、反力モータ21における2系統の巻線群に対する給電を系統ごとに独立して制御する。
【0096】
この場合、反力制御装置40Aは、第1系統回路および第2系統回路を有していてもよい。第1系統回路は、トルクセンサ23を通じて検出される操舵トルクThに応じて、反力モータ21における第1系統の巻線群に対する給電を制御する。第2系統回路は、トルクセンサ23を通じて検出される操舵トルクThに応じて、反力モータ21における第2系統の巻線群に対する給電を制御する。
【0097】
・転舵モータ31は、第1系統の巻線群および第2系統の巻線群を有していてもよい。第1系統の巻線群および第2系統の巻線群は、共通のステータに巻回される。第1系統の巻線群および第2系統の巻線群の電気的な特性は同等である。転舵制御装置40Bは、転舵モータ31における2系統の巻線群に対する給電を系統ごとに独立して制御する。
【0098】
この場合、転舵制御装置40Bは、第1系統回路および第2系統回路を有していてもよい。第1系統回路は、舵角センサ24を通じて検出される操舵角θsおよびストロークセンサ34を通じて検出される転舵シャフト13のストロークXwに基づき、転舵モータ31における第1系統の巻線群に対する給電を制御する。第2系統回路は、舵角センサ24を通じて検出される操舵角θsおよびストロークセンサ34を通じて検出される転舵シャフト13のストロークXwに基づき、転舵モータ31における第2系統の巻線群に対する給電を制御する。
【0099】
・駆動制御装置50は、始動スイッチ91Aがオンにされたとき、すなわち車両電源がオンされたとき、定められた起動準備を実行開始する。駆動制御装置50は、起動準備が完了した後、車両のパワートレインを始動させる。駆動制御装置50は、パワートレインの始動処理の実行が完了したとき、準備完了信号をオンする。準備完了信号は、車両のパワートレインが走行用の駆動力を発生可能な状態であることを示す情報である。準備完了信号は、第3のフラグであってもよい。駆動制御装置50は、車両のパワートレインが走行用の駆動力を発生可能な状態であるとき、第3のフラグの値を「1」にセットする。駆動制御装置50は、車両のパワートレインが走行用の駆動力を発生可能な状態ではないとき、第3のフラグの値を「0」にセットする。
【0100】
このことを前提として、操舵制御装置40は、車両の走行中に始動スイッチ91Aの状態を判定するための条件として、先の条件B4に代えて、つぎの条件B5を採用してもよい。
【0101】
B5.「FG3=0」
ただし、「FG3」は、駆動制御装置50によりセットされる第3のフラグの値である。操舵制御装置40は、車載ネットワーク51を介して、第3のフラグFG3の値を取得する。
【0102】
このようにすれば、操舵制御装置40は、駆動制御装置50の起動準備が完了しているかどうかに基づき、駆動制御装置50が走行用の駆動力を発生させるための処理を実行できる状態であるかどうかを判定することができる。また、操舵制御装置40は、先の4つの条件B1~B3,B5のすべてが成立するかどうかに基づき、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたかどうかを判定することができる。操舵制御装置40は、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定されるとき、反力制御および転舵制御の実行停止を許可する。操舵制御装置40は、先の2つの条件(C1),(C2)がすべて成立するとき、反力制御および転舵制御の実行を停止する。
【0103】
・操舵制御装置40を電動パワーステアリング装置に具体化してもよい。電動パワーステアリング装置200において、先の図1に示されるステアリングホイール11と転舵輪15とは機械的に連結されている。すなわち、ステアリングシャフト12、ピニオンシャフト33および転舵シャフト13は、ステアリングホイール11と転舵輪15との間の動力伝達経路として機能する。ステアリングホイール11の操舵に伴い転舵シャフト13が直線運動することにより、転舵輪15の転舵角θwが変更される。
【0104】
電動パワーステアリング装置200は、アシストモータ201およびアシスト制御装置202を有している。アシストモータ201は、先の図1に示される反力モータ21または転舵モータ31と同じ位置に設けられる。図5では、一例として、アシストモータ201は、図1に示される反力モータ21と同じ位置に設けられている。アシスト制御装置202は、操舵制御装置に相当する。アシスト制御装置202は、制御対象であるアシストモータ201の駆動を制御する。アシスト制御装置202は、アシストモータ201にアシスト力を発生させるためのアシスト制御を実行する。アシスト力は、ステアリングホイール11の操作を補助するためのトルクであって、ステアリングホイール11の操舵方向と同じ方向のトルクである。また、アシスト力は、車両の進行方向を変更する際にアシストモータ201が発生する操舵用の操舵力である。
【0105】
アシスト制御装置202は、先の4つの条件B1~B4のすべてが成立するかどうかに基づき、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたかどうかを判定する。アシスト制御装置202は、先の4つの条件B1~B4がすべて成立するとき、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定する。アシスト制御装置202は、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと判定される場合、先の2つの条件C1,C2がすべて成立するとき、アシスト制御の実行を停止する。
【0106】
車両の走行中にコネクタ100が外れた場合、先の条件B4が成立しない。このため、車両の走行中にコネクタ100が外れた場合、アシスト制御装置202は、車両の走行中に始動スイッチ91Aがオフされたと誤って判定することがない。アシスト制御装置202は、先の2つの条件C1,C2がすべて成立するときであれ、アシスト制御の実行を継続する。したがって、車両が走行可能な状態であるにもかかわらず、操舵機能を失うことが回避される。
【符号の説明】
【0107】
11…ステアリングホイール
15…転舵輪
40…車両用制御装置を構成する操舵制御装置
50…車両用制御装置を構成する駆動制御装置
91A…始動スイッチ
L1…第1の電源線
L2…第2の電源線
図1
図2
図3
図4
図5