(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056458
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車両データ管理装置、車両データ管理プログラムおよび車両データ管理方法
(51)【国際特許分類】
G06F 11/07 20060101AFI20240416BHJP
G06F 11/34 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G06F11/07 160
G06F11/34 152
G06F11/07 140R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163338
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】大野 允裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅典
(72)【発明者】
【氏名】吉田 琢也
(72)【発明者】
【氏名】本江 政司
(72)【発明者】
【氏名】野村 竜也
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042JJ06
5B042JJ29
5B042MA08
5B042MA09
5B042MA14
5B042MC08
5B042MC22
5B042MC35
5B042MC40
(57)【要約】
【課題】後の解析において必要となる可能性のある車両データを他の車両データと区別して管理することができる車両データ管理装置を提供する。
【解決手段】車両データ管理装置は、車両から収集した車両データに対して予め設定された処理を実行する処理部と、車両データの種類に応じて設定された観測対象から、処理の実行によって変動する観測値を取得する取得部と、観測値に基づいて車両データの異常性を評価する評価値を算出する算出部と、評価値に基づいて車両データを分別する分別部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両から収集した車両データに対して予め設定された処理を実行する処理部と、
前記車両データの種類に応じて設定された観測対象から、前記処理の実行によって変動する観測値を取得する取得部と、
前記観測値に基づいて前記車両データの異常性を評価する評価値を算出する算出部と、
前記評価値に基づいて前記車両データを分別する分別部と
を備える車両データ管理装置。
【請求項2】
前記分別部による分別に基づいて前記車両データを記憶装置へ記憶するか否かを決定する記録制御部を備える請求項1に記載の車両データ管理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記処理を実行するハードウェア資源の使用率、使用時間およびエラー発生頻度の少なくともいずれかを前記観測値として取得する請求項1または2に記載の車両データ管理装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記観測値を予測値および実績値の少なくともいずれかと比較することにより前記評価値を算出する請求項1または2に記載の車両データ管理装置。
【請求項5】
前記分別部による分別に基づいて前記異常性が高いと判断される前記車両データに関するログを作成するログ作成部を備える請求項1または2に記載の車両データ管理装置。
【請求項6】
車両から収集した車両データに対して予め設定された処理を実行する処理ステップと、
前記車両データの種類に応じて設定された観測対象から、前記処理の実行によって変動する観測値を取得する取得ステップと、
前記観測値に基づいて前記車両データの異常性を評価する評価値を算出する算出ステップと、
前記評価値に基づいて前記車両データを分別する分別ステップと
をコンピュータに実行させる車両データ管理プログラム。
【請求項7】
車両から収集した車両データに対して予め設定された処理をコンピュータに実行させる処理ステップと、
前記車両データの種類に応じて設定された観測対象から、前記処理の実行によって変動する観測値をコンピュータに取得させる取得ステップと、
前記観測値に基づいて前記車両データの異常性を評価する評価値をコンピュータに算出させる算出ステップと、
前記評価値に基づいて前記車両データをコンピュータに分別させる分別ステップと
を有する車両データ管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両データ管理装置、車両データ管理プログラムおよび車両データ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、車両に通信装置が搭載され、センサ等によって取得される様々な車両データが車両メーカのサーバ等に送信されるようになってきた。サーバは、受け取った車両データを解析することのより、例えば当該車両の故障を予測したり運転者の運転支援を行ったりする。また、このように収集された車両データは記憶装置に蓄積され、後に故障等が発生した場合にその原因解析等に用いられることもある。
【0003】
ところで、車両メーカが市場に供給する車両数は膨大であり、それぞれの車両が生成する様々な車両データを全てサーバに蓄積しようとすると、データ収集に費やされるコストやリソースが爆発的に増大してしまう。そこで、車両が生成する車両データに対して収集条件を設定し、蓄積する車両データのデータ量を削減する工夫なども試みられるようになってきている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
設定された条件に合致するものに限って車両データを収集すると、例えば故障を引き起こす原因が判明している車両データのみが収集されることになり、後の解析において未知の原因を究明するための材料となる車両データが収集されていないといった事態を招く恐れがある。また、一旦はすべての車両データを蓄積しておき、一定期間が経過したものや利用実績のないものを適宜削除するなどの対策が講じられる場合もあるが、やはり必要となる時点で対象の車両データが消失している可能性がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、後の解析において必要となる可能性のある車両データを他の車両データと区別して管理することができる車両データ管理装置等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様における車両データ管理装置は、車両から収集した車両データに対して予め設定された処理を実行する処理部と、車両データの種類に応じて設定された観測対象から、処理の実行によって変動する観測値を取得する取得部と、観測値に基づいて車両データの異常性を評価する評価値を算出する算出部と、評価値に基づいて車両データを分別する分別部とを備える。
【0008】
また、本発明の第2の態様における車両データ管理プログラムは、車両から収集した車両データに対して予め設定された処理を実行する処理ステップと、車両データの種類に応じて設定された観測対象から、処理の実行によって変動する観測値を取得する取得ステップと、観測値に基づいて車両データの異常性を評価する評価値を算出する算出ステップと、評価値に基づいて車両データを分別する分別ステップとをコンピュータに実行させる。
【0009】
また、本発明の第3の態様における車両データ管理方法は、車両から収集した車両データに対して予め設定された処理をコンピュータに実行させる処理ステップと、車両データの種類に応じて設定された観測対象から、処理の実行によって変動する観測値をコンピュータに取得させる取得ステップと、観測値に基づいて車両データの異常性を評価する評価値をコンピュータに算出させる算出ステップと、評価値に基づいて車両データをコンピュータに分別させる分別ステップとを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、後の解析において必要となる可能性のある車両データを他の車両データと区別して管理することができる車両データ管理装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る管理サーバの構成と、管理サーバが利用される全体環境を説明する図である。
【
図4】分別部に編集された異常推定ログの例を示す図である。
【
図5】評価値を算出する算出概念を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る車両データ管理装置の一態様である管理サーバ100の構成と、管理サーバ100が利用される全体環境を説明する図である。管理サーバ100は、例えば、車両メーカによって運用されるサーバであり、当該車両メーカが市場に供給した車両から車両データを収集する。
【0014】
具体的には、車両データの収集対象となるそれぞれの車両は、通信装置を搭載しており、当該車両の状態や挙動等を監視する車載センサからの検出信号を車両データに調製し、通信ネットワークを介して管理サーバ100へ送信する。なお、管理サーバ100は、対象車両から直接的に車両データを収集する場合に限らず、例えば、道路脇に設置されたセンサ設備によって検出され調製された対象車両の車両データを当該センサ設備から収集してもよい。通信ネットワークは、インターネットや5G回線が用いられる。
【0015】
車両データは、車両に固有の識別情報(Vehicle ID)と、車両の検出対象を監視する車載センサの検出信号から調整された検出データを含み、車載センサごとに設定された、例えば一定周期や特定状態の検出時、管理サーバ100からの要求時に生成される。検出データは、検出信号が検出された時刻情報を含む。
【0016】
管理サーバ100は、計算機(コンピュータ)で構成され、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、メモリ、記憶デバイス、ネットワークユニット等を備える。CPUは、GPU等と協働して、記憶デバイスに記憶されたプログラムをメモリに展開し実行することにより、各種処理を実行する。メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリで構成され、記憶デバイスは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発メモリによって構成される。ネットワークユニットは、通信ネットワークへの接続および車両とのデータ授受を担い、例えばLANユニットによって構成されている。
【0017】
CPUは、車両データ管理プログラムが指示する処理に応じて様々な演算を実行する機能演算部としての役割を担う。CPUは、主に、データ処理部110、観測値取得部120、評価値算出部140、分別部160、記録制御部190として機能し得る。なお、車両データ管理装置が複数のサーバによって構成されている場合には、それぞれのサーバが備えるCPUが上記の機能演算部としての機能を分担して担ってもよい。
【0018】
また、記憶デバイスは、様々な種類のデータをそれぞれ蓄積する蓄積部としての役割を担う。記憶デバイスは、主に、観測値蓄積部130、評価値蓄積部150、異常推定ログ蓄積部170、処理ログ蓄積部180として機能し得る。なお、記憶デバイスは、管理サーバ100とは独立した構成であってもよく、また、複数の記憶装置によって構成されていてもよい。
【0019】
データ処理部110は、収集した車両データに対して予め設定された処理である各種のサービス処理を実行する。例えば、ある車両からアクセル操作データ、ブレーキ操作データ、ハンドル操作データを収集した場合には、異常運転に関する挙動解析処理が実行すべきサービス処理として設定されており、データ処理部110は、当該サービス処理を実行する。データ処理部110は、挙動解析処理の結果、例えば急ハンドルやふらつき走行を判定した場合には、当該車両に対して事故発生の確認や居眠り警告などの応答処理を行う。
【0020】
また、車両データとして対象車両の現在位置を示すGPSデータを収集した場合には、最適ルートを探索する探索処理や安全運転を支援する進路確認処理が実行すべきサービス処理として設定されており、データ処理部110は、それらのサービス処理を実行する。進路確認処理の結果、例えば進路方向において自然災害が発生していることを検知した場合には、当該車両に対して進路変更の勧告などの応答処理を行う。
【0021】
また、車両データとして走行中の周辺画像データを収集した場合には、カメラユニットが正常に機能しているかを確認する画像確認処理が実行すべきサービス処理として設定されており、データ処理部110は、当該サービス処理を実行する。データ処理部110は、画像確認処理の結果、例えば露出調整や焦点調整の不備を判定した場合には、例えば周辺画像データを利用する歩行者検出機能や標識検出機能に対して機能制限などを施す応答処理を行う。
【0022】
データ処理部110は、車両データのそれぞれに対してこのようなサービス処理を実行し、必要に応じて応答処理を実行したら、車両データと共にそのサービス処理の処理結果を記録制御部190へ引き渡す。また、サービス処理の記録として処理ログを生成し、処理ログ蓄積部180へ蓄積する。
【0023】
ここで、車両データの処理ログを集積した処理ログテーブルの例について説明する。
図2は、車両データの処理ログテーブルの例を示す図である。車両データの処理ログテーブルは、実行したサービス処理ごとの実行日時、サービス処理ID、当該サービス処理を実行する主要レイヤ、対象車両ID、サービスログを記録する記録ファイルである。
【0024】
処理の実行日時は、サービス処理を実行した日時情報であり、一定期間に亘って取得された車両データや一定期間に亘る複数の車両データを用いるサービス処理であれば、その期間が記述される。サービス処理IDは、いずれのサービス処理を実行したかを示す識別情報である。サービス処理を実行する主要レイヤは、例えば予め設定された、当該サービス処理が主に負荷を発生させるレイヤである。レイヤは、車両データを処理する機能を構成する階層単位として定められており、具体的にはOSI参照モデルの各レイヤが採用され得る。OSI参照モデルの各レイヤを採用する場合であれば、物理層、ネットワーク層、アプリケーション層などに区分され、アプリケーション層は、さらに、ミドルウェア層や個別アプリケーション層などに区分される場合もある。
【0025】
対象車両IDは、車両データに含まれる車両固有の識別情報(Vehicle ID)であり、サービス処理を実行した対象車両を表す。サービスログは、処理ステータスとサービス処理に関する情報が記述される。処理ステータスは、正常、異常、エラー、不明などが記述され、例えば「異常」のステータスについては、関連情報として処理の結果である異常値などが記述される。
【0026】
図1に戻って説明を続ける。データ処理部110は、収集した車両データに対して予め設定されたサービス処理を実行する場合に、上述のレイヤに負荷を発生させる。観測値取得部120は、車両データの種類に応じて設定された観測対象としてのレイヤの状態を観測し、サービス処理の実行によって変動する観測値を取得する。
【0027】
レイヤの状態を示す観測値は、いわゆるメトリクスとして特定の期間のデータの集計として取得し得る。例えば、観測対象のレイヤにおける処理時間、エラー割合、リソース利用割合が観測値となる。より具体的には、例えば、あるサービス処理を完遂するまでのハードウェア資源の使用率(CPU使用率やメモリ使用率)、ハードウェア資源の使用時間、入出力データ量、エラー発生頻度等が、取得すべき観測値になり得る。観測値取得部120は、実行したサービス処理ごとの実行日時、サービス処理ID、当該サービス処理を実行する主要レイヤ、観測対象を示すメトリクスID、取得した観測値等を纏めてデータ化し、観測値蓄積部130へ蓄積する。
【0028】
評価値算出部140は、予め設定されたタイミングにおいて観測値蓄積部130から観測値データを読み出し、当該観測値データに含まれる観測値に基づいて、そのサービス処理の実行対象となった車両データの異常性を評価する評価値を算出する。「車両データの異常性」は、収集された車両データに含まれる検出データそのものやサービス処理の処理結果の異常性をいうが、本実施形態における評価値算出部140は、そのような検出データや処理結果を直接的に評価する評価値を算出するのではなく、対象となるサービス処理を実行する場合の設定されたレイヤの状態を示す観測値を用いて、車両データの異常性を推定する評価値を算出する。本実施形態における評価値は、いわゆるアノマリスコアであり、異常性が推定される場合ほど大きな値が付与されるに算出式が定義されている。
【0029】
評価値算出部140は、実際に観測された観測値を、例えば、そのサービス処理を実行する場合に正常な車両データであれば算出されるはずの予測値および実績値の少なくともいずれかと比較することにより評価値を算出する。予測値は、例えば正常な車両データを選別して実行されるサービス処理のシミュレーション結果や実験結果から生成される。実績値は、過去の車両データのうち正常と判断された車両データに対してサービス処理を実行した場合に観測された観測値を収集して生成される。具体的な評価値の算出概念については後述する。
【0030】
評価値算出部140は、算出した評価値を処理ログに纏め、評価値蓄積部150へ蓄積する。ここで、評価値の処理ログを集積した処理ログテーブルの例について説明する。
図3は、評価値の処理ログテーブルの例を示す図である。評価値の処理ログテーブルは、実行したサービス処理ごとの実行日時、サービス処理ID、当該サービス処理を実行する主要レイヤ、観測対象を示すメトリクスID、取得した観測値、評価値(anomaly score)を記録する記録ファイルである。
【0031】
処理の実行日時、サービス処理ID、サービス処理を実行する主要レイヤは、車両データの処理ログテーブルの例と同様である。観測対象を示すメトリクスIDは、主要レイヤのハードウェア資源や処理ブロックの観測対象を表す。観測値は、上述の通りであり、観測対象で観測された値である。観測値は、例えば、CPUの使用率が11.11%のように記述される。評価値は、上述の通りであり、観測値から算出された値である。評価値は、例えば、0以上1以下の数値に正規化された値として記述される。
【0032】
図1に戻って説明を続ける。分別部160は、予め設定されたタイミングにおいて評価値蓄積部150から評価値の処理ログテーブルを読み出し、評価値に基づいてそれぞれの処理ログを少なくとも異常と推定されるログと正常と推定されるログに分別する。分別部160は、具体的には、評価値の多寡によって処理ログを分別し得る。例えば、サービス処理ごとに閾値が設定されており、その閾値よりも大きい値の評価値を有する処理ログは、異常推定ログへ分別される。
【0033】
分別部160は、さらに、処理ログ蓄積部180から車両データの処理ログテーブルを読み出し、異常推定ログへ分別した処理ログに対応する処理ログのみを抽出して異常推定ログテーブルに編集する。分別部160は、編集した異常推定ログテーブルを異常推定ログ蓄積部170へ蓄積する。
【0034】
ここで、異常推定ログを集積した異常推定ログテーブルの例について説明する。
図4は、分別部160に編集された異常推定ログテーブルの例を示す図である。具体的には、
図2に示す車両データの処理ログテーブルから、
図3に示す評価値の処理ログテーブルの評価値に基づいて、異常が推定される処理ログを抽出したものである。
【0035】
例えば、サービス処理IDにおいて「service003」で表されるサービス処理に対し、その観測対象である「spark_012」の評価値の閾値が0.5に設定されている場合、
図3に示す「2022/03/30 15:01:30-15:02:30」の実行日時に実行された「service003」のサービス処理に関する処理ログは、「spark_012」の評価値が0.6であるので、異常推定ログに分別される。そして、「2022/03/30 15:01:30-15:02:30」の実行日時に実行された「service003」の処理ログを
図2に示す処理ログテーブルから抽出する。抽出された処理ログは、異常推定ログテーブルの末尾に追加される。このように、異常推定ログが分別されるたびに、異常推定ログテーブルは更新される。
【0036】
図1に戻って説明を続ける。分別部160は、抽出した異常推定ログの情報を記録制御部190へ引き渡す。記録制御部190は、データ処理部110がサービス処理を実行した車両データのうち、異常推定ログに対応する車両データを選別し、選別した車両データに限ってそのサービス処理の処理結果と共に処理データ蓄積装置200へ記憶させる。処理データ蓄積装置200は、管理サーバ100に接続された記憶装置であり、例えばHDDやSSDなどの不揮発メモリによって構成される。
【0037】
また、管理サーバ100には表示装置300が接続されており、管理者が管理サーバ100の処理状況を確認できるよう、表示装置300は、例えば異常推定ログ蓄積部170に蓄積された異常推定ログテーブルなどを表示する。表示装置300は、管理者が携帯する携帯端末の表示器であってもよい。
【0038】
このように異常推定ログに対応する車両データを選別して処理データ蓄積装置200に蓄積するように構成すれば、管理サーバ100に送られてくる膨大な車両データに対して蓄積する車両データの数を大幅に削減できる。したがって、データ収集に費やされるコストやリソースの低減に寄与する。また、収集された車両データに含まれる検出データそのものやサービス処理の処理結果そのものを直接的に異常判断の材料としないので、後の解析において未知の原因を究明するための車両データが収集されていないといった事態を防ぐことが期待できる。すなわち、後の解析において必要となる可能性のある車両データを他の車両データと区別して管理することができる。
【0039】
なお、上記の実施形態においては、異常推定ログに対応する車両データとその処理結果に限って処理データ蓄積装置200へ記憶させたが、車両データとその処理結果の取扱いは、これに限らない。異常推定ログに対応する車両データ以外の車両データとその処理結果は、例えば、一定期間の後に削除処理が実行される他の処理データ蓄積装置に記憶させてもよい。また、異常推定ログに対応する車両データには、例えばその旨を示すタグ情報を付与して他の車両データと分別し得る処理を施し、その上ですべての車両データとその処理結果を処理データ蓄積装置200に記憶させてもよい。
【0040】
次に、評価値の算出概念について具体的に説明する。
図5は、評価値を算出する算出概念を説明する図である。上図は観測対象となるCPUの使用率の時間推移を示し、横軸が経過時間を表し、縦軸が使用率(%)を表す。下図は算出される評価値の時間推移を示し、横軸は上図の横軸と一致する経過時間を表し、縦軸が評価値を表す。
【0041】
上図において、実線は実際に観測された観測値の推移を示し、点線は事前に予測された予測値の推移を示す。図示するように、観測値の推移と予測値の推移は、時折乖離が生じていることがわかる。正常な車両データであれば算出されるはずの予測値に対して実際に観測された観測値が乖離している場合には、取得した車両データを処理するために正常な処理とは異なる処理が必要であった、あるいは行うべき処理が省かれたと考えられ、そのような車両データには何らかの異常を含むと推定される。
【0042】
観測値と予測値の推移を下図の評価値の推移と比較すると、観測値と予測値に乖離が生じている時点で評価値が大きくなっていることがわかる。換言すれば、観測値と予測値に乖離が生じた場合に評価値が大きくなるように算出式が設定されていることがわかる。例えば、評価値の閾値として0.6が設定されているとすると(下図の点線)、評価値が点線以上となる時間帯に対応する車両データの処理ログは異常推定ログに分別される。
【0043】
以上説明した本実施形態においては、管理サーバ100は車両メーカによって運用され、車両データの収集対象は当該車両メーカが市場に供給した車両を想定したが、管理サーバ100の運用はこの形態に限らない。管理サーバ100を複数の車両メーカで管理してもよいし、車両メーカとは独立した通信事業者や行政が管理してもよい。また、車両は、自家用車に限らず、バスやトラックの公共車両を含めてもよい。
【符号の説明】
【0044】
100…管理サーバ、110…データ処理部、120…観測値取得部、130…観測値蓄積部、140…評価値算出部、150…評価値蓄積部、160…分別部、170…異常推定ログ蓄積部、180…処理ログ蓄積部、190…記録制御部、200…処理データ蓄積装置、300…表示装置