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  • 特開-ナノ潤滑方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056462
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ナノ潤滑方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/02 20060101AFI20240416BHJP
   F04B 43/04 20060101ALI20240416BHJP
   F16N 7/36 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F04B43/02 D
F04B43/04 B
F16N7/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163351
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】509311780
【氏名又は名称】上野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 弘
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077AA03
3H077BB10
3H077CC02
3H077DD06
3H077EE05
3H077EE27
3H077EE40
3H077FF14
3H077FF36
(57)【要約】
【課題】ナノリットルレベルの超微少量の潤滑油を潤滑対象に均一かつ安定的に供給する。
【解決手段】
圧電素子33によって駆動される圧電ポンプ3から吐出されたナノリットルレベルの超微少量の潤滑油Xを、ノズル2を通して潤滑対象に供給するナノ潤滑方法である。
前記ノズル2に前記超微少量の潤滑油Xを所定時間ごとに送給して、ノズル先端21から前記超微少量の潤滑油Xを押し出し、この押し出した潤滑油Xを、その表面張力を利用してノズル2の先端21に保持するステップと、前記潤滑対象に設けられ、前記ノズル2に対して非接触状態で相対移動する潤滑対象を、前記ノズル先端21に保持した潤滑油Xに接触させて、前記当該潤滑油Xの一部を前記潤滑対象へ供給するステップと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子によって駆動される圧電ポンプから吐出されたナノリットルレベルの超微少量の潤滑油を、ノズルを通して、当該ノズルに対して非接触状態で相対移動する潤滑対象に供給するナノ潤滑方法であって、
前記ノズルに前記超微少量の潤滑油を所定時間ごとに送給して、前記ノズルの先端から前記超微少量の潤滑油を押し出し、この押し出した潤滑油を、その表面張力を利用してノズルの先端に保持するステップと、
前記潤滑対象を前記ノズルの先端に保持した潤滑油に接触させて、当該潤滑油の一部を前記潤滑対象へ供給するステップと、
を備える、
ナノ潤滑方法。
【請求項2】
前記圧電ポンプとして、潤滑油の吐出量が100nl以下10nl以上のものを用いる、
請求項1に記載のナノ潤滑方法。
【請求項3】
前記圧電ポンプの圧電素子を1回だけ変形させる、
請求項2に記載のナノ潤滑方法。
【請求項4】
前記ノズルの先端と前記潤滑対象との間の最小隙間は、前記ノズルの先端の外径の4分の1以下である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のナノ潤滑方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナノ潤滑方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種機械装置に構成された回転部や摺動部等の潤滑対象を潤滑する方式として、オイルミスト潤滑やオイルエア潤滑が知られている。オイルミスト潤滑は、油槽から吸い上げた油滴にエアを吹き付けることで、潤滑油をミスト化させた状態で潤滑対象に供給する潤滑方式である。オイルエア潤滑は、大量のエアとともに潤滑油を潤滑対象に供給する潤滑方式である。
前記の潤滑方式のいずれにおいても、潤滑油をノズルから勢いよく飛翔(噴射)させる必要があるので、必要量以上の潤滑油が供給されることになる。このため、微少量の潤滑油を供給する潤滑には不向きである。特に、ナノリットルレベルの量の潤滑油を前記の潤滑方式で供給することは不可能であると考えられる。また、潤滑油が過剰に供給されるので、潤滑対象の回転トルクや摺動抵抗が増加する。さらに、飛翔した余分な潤滑油が潤滑対象に弾かれて、潤滑対象の周囲にミストとして飛散するので、クリーンルーム等の塵埃を嫌う空間では使用し難い。
【0003】
そこで、特許文献1に示される圧電ポンプ(マイクロポンプ)を、潤滑装置として用いることが考えられる。この圧電ポンプは、圧電素子に電圧を印加してダイヤフラムを変形させることで、微少量の液体を吐出させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-38693号公報([0049]段落、図13および図14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、機械装置のさらなる小型化、高速化および低トルク化等の要請が高まっている。このため、潤滑対象に対してさらに微少量の潤滑油を確実に供給することができる潤滑方式が要望されている。より具体的には、例えば100nl(ナノリットル)以下の超微少量の潤滑油を、均一かつ安定的に供給することができるナノ潤滑方式が要望されている。
【0006】
特許文献1に記載の圧電ポンプを潤滑装置に用いた場合、オイルミスト潤滑やオイルエア潤滑に比べて、潤滑対象に対する潤滑油の供給量を少なくすることができる。しかし、この圧電ポンプについても、潤滑油をノズルから飛翔させる必要があるので、潤滑油の供給量をより効果的に少なくするには限界がある。現に、特許文献1に記載の実施例には、単位時間当たりの流量が42.0μl/minのものが開示されているに過ぎない(特許文献1[0066]段落参照)。したがって、特許文献1に記載のマイクロポンプをナノ潤滑に用いることは不可能である。
【0007】
かかる課題に鑑み、本開示の目的は、ナノリットルレベルの超微少量の潤滑油を、均一かつ安定的に潤滑対象に供給可能なナノ潤滑方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のナノ潤滑方法は、圧電素子によって駆動される圧電ポンプから吐出されたナノリットルレベルの超微少量の潤滑油を、ノズルを通して、当該ノズルに対して非接触状態で相対移動する潤滑対象に供給するナノ潤滑方法であって、
前記ノズルに前記超微少量の潤滑油を所定時間ごとに送給して、前記ノズルの先端から前記超微少量の潤滑油を押し出し、この押し出した潤滑油を、その表面張力を利用してノズルの先端に保持するステップと、
前記潤滑対象を前記ノズルの先端に保持した潤滑油に接触させて、当該潤滑油の一部を前記潤滑対象へ供給するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ナノリットルレベルの超微少量の潤滑油を、均一かつ安定的に潤滑対象に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るナノ潤滑方法を説明する概略図である。
図2図2は、実施形態に係るナノ潤滑方法に用いられる圧電ポンプの一例を示す拡大概略図である。
図3図3は、実施形態に係るノズルと、ノズルの配置状態を示す拡大図である。
図4図4は、潤滑油が掻き取られた状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態には、その要旨として、以下の構成が含まれる。なお、本実施形態における「ナノリットルレベル」とは、100nl以下10nl以上をいう。
【0012】
(1)圧電素子によって駆動される圧電ポンプから吐出されたナノリットルレベルの超微少量の潤滑油を、ノズルを通して、当該ノズルに対して非接触状態で相対移動する潤滑対象に供給するナノ潤滑方法であって、
前記ノズルに前記超微少量の潤滑油を所定時間ごとに送給して、前記ノズルの先端から前記超微少量の潤滑油を押し出し、この押し出した潤滑油を、その表面張力を利用してノズルの先端に保持するステップと、
前記潤滑対象を前記ノズルの先端に保持した潤滑油に接触させて、当該潤滑油の一部を前記潤滑対象へ供給するステップと、を備えるナノ潤滑方法。
【0013】
このナノ潤滑方法によれば、ノズルの先端に保持したナノリットルレベルの超微少量の潤滑油を、潤滑対象に接触させて、当該潤滑油の一部を前記潤滑対象へ供給するので、潤滑対象に対して、ナノリットルレベルの超微少量の潤滑油を、均一かつ安定的に供給することができる。
【0014】
(2)前記(1)のナノ潤滑方法においては、前記圧電ポンプとして、潤滑油の吐出量が100nl以下10nl以上のものを用いる。
これによって、潤滑対象へ供給する潤滑油の量を、より効果的に少なくすることができる。
【0015】
(3)前記(2)のナノ潤滑方法は、ダイヤフラムを1回だけ変形させるのが好ましい。
このようにすることで、潤滑油を潤滑対象に対してより均一かつ安定的に供給することができる。
【0016】
(4)前記(1)から(3)のいずれかのナノ潤滑方法において、前記ノズルの先端と前記潤滑対象との間の最小隙間は、前記先端の外径の4分の1以下であるのが好ましい。
このようにすることで、ノズルの先端に保持した潤滑油を、より確実に潤滑対象に供給することができる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。
【0018】
[1.潤滑装置の構成]
図1は、実施形態に係るナノ潤滑方法を説明するための概略図であり、図2は実施形態に係るナノ潤滑方法に用いる圧電ポンプの拡大概略図である。
図1に示すナノ潤滑方法は、歯車機構1に潤滑油Xを供給する場合を示している。この場合、潤滑油Xは、歯車機構1の潤滑対象である歯車11に直接供給される。
【0019】
潤滑装置Aは、ノズル2と、ノズル2に潤滑油Xを送給する圧電ポンプ3と、圧電ポンプ3の駆動を制御する制御部4と、圧電ポンプ3に供給する潤滑油Xを貯める貯油タンク5とを含む。
【0020】
図3も参照して、ノズル2は圧電ポンプ3から送給された潤滑油Xを、その内部を通して、その先端21に導くものである。ノズル2は外径が細い平行円筒状のものである。ノズル2の外径D1および内径D2は、特に限定されないが、例えば外径D1は1mmであり、内径D2は0.2mmである。ノズル2の基端部は、圧電ポンプ3に接続されている。
【0021】
後述するが、ノズル2の先端21(以下「ノズル先端21」ともいう)から押し出された潤滑油Xは、その表面張力によってノズル先端21に保持される。このため、ノズル先端21は、所定の濡れ性に調整されているのが好ましい。例えば、ノズル先端21における潤滑油Xの接触角を大きくするために、ノズル先端21に撥水処理が施されてもよい。
【0022】
圧電ポンプ3は、ダイヤフラム32と、圧電素子33と、ポンプ室34と、第1チェック弁35と、第2チェック弁36とを備えている。これらはケース31の内部に配置されている。
圧電素子33は、矩形のピエゾ素子からなり、制御部4に電気的に接続されている。ダイヤフラム32は、例えば厚みが30~100μmの矩形の金属薄板からなり、圧電素子33の下面に接着されている。
【0023】
ポンプ室34は、ダイヤフラム32と、これに対向してケース31に設けられた仕切り面31aとの間に形成されている。ポンプ室34は密封された微小隙間であり、その容積は圧電ポンプ3の吐出量に応じて設定される。なお、図2においては、ポンプ室34の微小隙間を拡大して表示している。ポンプ室34は給油路51を介して貯油タンク5に連通されている。貯油タンク5は、ケース31と一体に設けられていてもよい。
【0024】
第1チェック弁35は、ポンプ室34と給油路51とを連通させる吸入路38の途中に介在している。第1チェック弁35は貯油タンク5内の潤滑油Xがポンプ室34に吸入されるのを許容する。第2チェック弁36は、ポンプ室34とノズル2とを連通する吐出路39の途中に介在している。第2チェック弁36は、ポンプ室34の潤滑油Xがノズル2に送給されるのを許容する。
【0025】
前記圧電ポンプ3において、圧電素子33に電圧を印加すると、ダイヤフラム32が下方に変形(湾曲)する。これにより、予めポンプ室34に吸入されている潤滑油Xが、第2チェック弁36を通してノズル2へ送給される。また、圧電素子33に対する電圧の印加が停止すると、ダイヤフラム32が原位置に復帰する。これにより、第1チェック弁35を通して貯油タンク5側からポンプ室34に潤滑油Xが導入される。
【0026】
圧電ポンプ3は、例えば長さおよび幅が10~15mm、高さが7~10mm程度の極小サイズのものである。圧電ポンプ3は、圧電素子33を1回変形させるごとに、100nl以下10nl以上であるナノリットルレベルの超微少量の潤滑油Xを吐出してノズル2に送給する。
【0027】
制御部4は、例えばプロセッサおよびメモリを含むICチップ等のコンピュータ装置である。制御部4は、圧電素子33に対して所定時間T1ごとに電気信号を出力する(定期出力)。この電気信号により、圧電素子33に電圧が印加される。所定時間T1は、潤滑対象に供給する潤滑量に応じて選択されるが、例えば0.1~120秒である。電気信号は直流電圧信号であり、単発のパルス信号である。したがって、制御部4から電気信号が出力されるごとに、圧電素子33は上下1回ずつ(1往復)変形する。
【0028】
[2.ノズルの配置]
図3に示すように、ノズル2は、その先端21を歯車11に近接させた状態で配置される。このとき、歯車11の外接円13の一点を通る法線S1に、ノズル2の軸線S2を沿わせる。図3においては、水平方向に延びる法線S1に、ノズル2の軸線S2を沿わせている。この状態で、ノズル先端21を、歯車11の外接円13に対して微小隙間Cを設けて対向させる。この微小隙間Cは、ノズル先端21に保持された半球状の潤滑油Xに、歯車11の歯部11aの外周が接触し、かつノズル先端21が歯車11に接触しない範囲に設定される。
【0029】
より具体的には、ノズル先端21と歯車11の歯部11aとが最も近接する距離L1は、0より大きい値であり、かつノズル先端21の外径D1の4分の1以下である(1/4×D1≧L1>0)。すなわち、距離L1は、ノズル先端21に保持される半球状の潤滑油Xの最大半径R1に対して半分以下である(1/2×R1≧L1)。このため、歯車11の歯部11aは、ノズル先端21に保持される潤滑油Xに対して、より確実に接触することができる。例えば、外径D1が0.75mmである場合、距離L1は0.188mmとされる。
【0030】
[3.ナノ潤滑方法]
以上のようにノズル2を配置した状態で、制御部4から圧電ポンプ3の圧電素子33に対して、電気信号を1パルスだけ出力する。つまり、圧電素子33に1回だけ瞬間的に電圧を印加する。
圧電素子33に対する電圧の印加に伴い、ダイヤフラム32が下方へ変形する。すると、ポンプ室34の容積が減少するので、予めポンプ室34内に導入された潤滑油Xが、ノズル2に送給される。これにより、潤滑油Xは、ノズル2内からノズル先端21へ押し出される。この押し出された潤滑油Xは、その表面張力によって半球状になって、ノズル先端21に保持される。
【0031】
例えば、ノズル先端21の外径D1が0.75mmであり、ノズル先端21の内径D2が0.2mmである場合を考える。このとき、完全な半球形の潤滑油Xがノズル先端21に形成されるとすれば、その潤滑油Xの半径R1は外径D1の半分の0.375mmとなり(R1=1/2×D1)、半球の潤滑油Xの体積は、理論上110nl(=0.11ml)となる。
【0032】
圧電ポンプ3による潤滑油Xの吐出量は、1回の電圧印加時間を変更することによって調整される。1回の電圧印加時間は、例えば50~200msecであり、潤滑対象の潤滑に必要な潤滑油Xの量、および潤滑油Xの粘度等に応じて選択される。また、ダイヤフラム32の変形量は、その中央部において例えば1.5~5.0μmに設定される。なお、圧電ポンプ3の吐出量は、歯車11の潤滑機能を確保するのに最低限必要な量に設定される。
【0033】
本実施形態において、圧電ポンプ3は、ダイヤフラム32の1回の変形で、潤滑油Xをノズル先端21から押し出すので、ダイヤフラム32を複数回連続的に変形させて、小刻みに押し出す場合に比べて、潤滑油Xの押し出し量がばらつくのを抑制することができる。したがって、歯車11に対してより均一かつ安定的にナノリットルレベルの潤滑油Xを供給することができる。
【0034】
圧電素子33に対する電圧の印加が停止すると、下方へ変形したダイヤフラム32が原位置に復帰する。これにより、ポンプ室34が負圧になって、貯油タンク5側の潤滑油Xがポンプ室34に導入される。
【0035】
なお、ノズル先端21からの潤滑油Xの押し出し量が過剰になると、ノズル先端21から余分な潤滑油Xが滴下するおそれがある。このため、圧電素子33に対する通電時間を事前に調整することにより、潤滑油Xの押し出し量を最適な値に設定しておくのが好ましい。
【0036】
次に、ノズル先端21に半球状の潤滑油Xを保持した状態で、歯車11を回転させる。すると、歯車11の歯部11aの外周側が、半球状の潤滑油Xに接触するので、その潤滑油Xの一部を掻き取ることができる(図4参照)。これにより、ナノリットルレベルの超微少量の潤滑油Xを歯部11aに順次供給することができる。このような歯部11aへの潤滑油Xの供給を、一定時間ごとに繰り返すことにより、歯車11を潤滑することができる。
【0037】
以上のように、本実施形態に係るナノ潤滑方法は、ノズル先端21に保持したナノリットルレベルの潤滑油Xを、歯車11に接触させて供給するので、潤滑油を高圧で飛翔させる従来の潤滑方法に比べて、潤滑油Xの供給量を飛躍的に削減することができる。例えば圧電ポンプ3において、潤滑油Xの吐出量を20nlとし、吐出間隔を20秒とした場合、潤滑油Xを50,000回(連続稼働時間278時間分に相当)供給しても、潤滑油Xの必要量はわずか1,000,000nl(1ml)に過ぎない。
【0038】
このように、本実施形態に係るナノ潤滑方法は、歯車11の潤滑機能を確保するのに最低限必要なナノリットルレベルの超微少量の潤滑油Xを供給することができるので、潤滑対象の回転トルクや摺動抵抗が増加するのを効果的に抑制することができる。このため、潤滑対象の発熱を抑制することができる。また、潤滑油が潤滑対象の周囲にミストとして飛散するのを効果的に抑制することもできるので、クリーンルーム等の塵埃を嫌う空間にも支障なく使用することができる。
【0039】
[4.変形例]
前記実施形態においては、制御部4により圧電素子33に対して一定間隔ごとに直流信号を供給するようにしているが、これに代えて、歯車11の動作をセンサ(図示省略)により検知し、歯車11の潤滑が低下したことを判定した場合に、圧電素子33に電気信号を出力してもよい(オンデマンド出力)。
【0040】
また、前記実施形態においては、ノズル2の軸線S2を、水平方向に延びる法線S1に沿わせた状態でノズル2を配置しているが、斜め方向や鉛直方向へ延びる任意の法線に沿わせてノズル2を配置してもよい。
【0041】
さらに、前記実施形態において、制御部4は、ノズル2に対する1回の給油動作で電気信号を1パルスだけ出力するものであるが、複数パルス出力するものであってもよい。
【0042】
本発明に係るナノ潤滑方法は、前記した歯車11以外に、リニアガイド、軸受、回転ローラ、摺動軸等の種々の潤滑対象に適用して実施することができる。なお、潤滑対象が回転ローラである場合には、ノズル先端に押し出された潤滑油Xの形状は、先端面が球面でなく、図4に示されるようなローラの外周面に沿った形状となる。
【符号の説明】
【0043】
2 ノズル 3 圧電ポンプ 4 制御部
5 貯油タンク 11 歯車(潤滑対象) 21 ノズル先端
A 潤滑装置 X 潤滑油
図1
図2
図3
図4