(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056463
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】搬送補助装置および医療用ベッド
(51)【国際特許分類】
A61G 7/08 20060101AFI20240416BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20240416BHJP
B60B 19/00 20060101ALI20240416BHJP
A61G 5/04 20130101ALI20240416BHJP
A61G 1/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61G7/08
B62B3/00 B
B60B19/00 G
A61G5/04 701
A61G5/04 703
A61G5/04 707
A61G1/02 705
A61G1/02 706
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163353
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000167222
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトマシンシステム
(71)【出願人】
【識別番号】599045903
【氏名又は名称】学校法人 久留米大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 寛之
(72)【発明者】
【氏名】大江 洋希
(72)【発明者】
【氏名】友枝 博
【テーマコード(参考)】
3D050
4C040
【Fターム(参考)】
3D050AA04
3D050BB02
3D050DD03
3D050EE09
3D050EE18
3D050HH07
4C040AA28
4C040BB03
4C040JJ08
(57)【要約】
【課題】搬送者を移動させることなく、メカナムホイールによる横移動のアシストを適切に開始させる。
【解決手段】搬送補助装置1は、後側から手押しされる医療用ベッド10に取り付けられるように構成されており、後輪14Bよりも前側に配置される2つのメカナムホイール21R,21Lと、各メカナムホイール21R,21Lを駆動するモータ22R,22Lと、2つのメカナムホイール21R,21Lを支点としかつ左右方向に沿った所定方向Atに後輪14Bが移動する第1旋回動作を検出する慣性センサ5と、慣性センサ5及びモータ22R,22Lと電気的に接続される制御装置4とを備える。制御装置4は、第1旋回動作が検出された場合、後輪14Bを支点として所定方向Atに前輪14Fを移動させる第2旋回動作を実行するように、モータ22R,22Lを介して2つのメカナムホイール21R,21Lを作動させる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および後輪を有する複数のキャスタを備えかつ後側から手押しされるように構成された対象物に取り付けられ、該対象物の搬送をアシストする搬送補助装置であって、
前記対象物の下面に取り付けられるとともに、前記後輪よりも前側に配置される複数のメカナムホイールと、
前記複数のメカナムホイールの各々に設けられ、各メカナムホイールを作動させるモータと、
前記複数のメカナムホイールを支点として左右方向に沿った所定方向に前記後輪が移動する第1旋回動作を検出する第1センサと、
前記第1センサおよび前記モータと電気的に接続された制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記第1センサによって前記第1旋回動作が検出された場合、前記後輪を支点として前記所定方向に前記前輪を移動させる第2旋回動作を実行するように、前記モータを介して前記複数のメカナムホイールのうちの少なくとも1つを作動させる
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載された搬送補助装置において、
前記複数のメカナムホイールは、前記対象物の左右方向に並んだ2つのメカナムホイールによって構成され、
前記第1センサは、前記2つのメカナムホイールの間に配置されているとともに、前記対象物を基準としたヨー軸まわりの角速度を検出可能に構成されている
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項3】
請求項2に記載された搬送補助装置において、
前記制御装置は、前記第1センサの検出結果と、前記第1旋回動作の動作時間とに基づいて、前記第1旋回動作における前記後輪の旋回角度を算出し、
前記制御装置は、前記第2旋回動作の実行に際し、前記第1旋回動作における前記後輪の旋回角度の大きさと、前記第2旋回動作における前記前輪の旋回角度の大きさとを一致させるよう、前記モータを介して前記複数のメカナムホイールのうちの少なくとも1つを作動させる
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項4】
請求項1に記載された搬送補助装置において、
前記複数のメカナムホイールそれぞれの回転数を検出する第2センサを備え、
前記制御装置は、前記第1センサによって前記第1旋回動作が検出された場合、
前記回転数の大きさが第1閾値未満のときには、前記第2旋回動作を実行する一方、
前記回転数の大きさが前記第1閾値以上のときには、前記第2旋回動作を実行する代わりに、斜め方向への前記対象物の搬送をアシストするように、前記モータを介して前記複数のメカナムホイールのうちの少なくとも1つを作動させる
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項5】
請求項1に記載された搬送補助装置において、
前記後輪は、前記対象物の左右方向に沿って2つ設けられ、
前記制御装置は、前記第2旋回動作の実行に際し、前記2つの後輪のうち前記所定方向の先端側に位置する一方の後輪を支点とする
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項6】
請求項1に記載された搬送補助装置において、
前記制御装置は、前記対象物に横移動を指示するための操作入力を受け付ける操作スイッチと電気的に接続され、
前記制御装置は、前記操作スイッチを介して第2の所定方向への横移動が指示された場合、前記第2の所定方向に推進力を発揮させる第3旋回動作を実行するように、前記モータを介して前記複数のメカナムホイールのうちの少なくとも1つを作動させる
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項7】
請求項6に記載された搬送補助装置において、
前記制御装置は、前記第2旋回動作を実行可能とするか否かと、前記第3旋回動作を実行可能とするか否かと、を個別に切り替えられるように構成されている
ことを特徴とする搬送補助装置。
【請求項8】
請求項1に記載された搬送補助装置が取り付けられた医療用ベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送補助装置および医療用ベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、駆動部にメカナムホイール(Mecanum車輪)を用いた補助推進システムが開示されている。この補助推進システムは、シャーシに結合されかつメカナムホイールによって構成された左右一対の駆動部と、駆動部の加速度を監視するセンサと、を備えており、センサから受信したデータに基づいて、駆動部の動作を制御するように構成されている。
【0003】
前記特許文献1によると、シャーシが所定方向に横移動(側方移動)される場合、それと同じ方向への力が、搬送者によって手動で印加される。この手動の力によるシャーシの横移動に伴って駆動部が回転すると、その回転が感知されて制御システムに入力される。制御システムは、感知した回転に基づいて駆動部の電動回転を始動させる。この電動回転によって、シャーシの横移動がアシストされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示されているような手法を用いた場合、メカナムホイールによるアシストを開始させるためには、シャーシ等の対象物に対して横方向の力を加え、この対象物を手動で横移動させることが考えられる。
【0006】
ところが、医療用ベッド等の高重量な対象物の場合、その後端側に設けられたヘッドボード等に力を加えるだけでは、対象物をスムースに横移動させることができず、メカナムホイールによるアシストに不都合を来す可能性がある。この場合、メカナムホイールによるアシストを確実に開始させるためには、搬送者が対象物の側方に回り込み、これを横方向に押し込む必要がある。
【0007】
しかしながら、エレベータ等の狭い環境下の場合、対象物の側方に回り込むことができず、これを横方向に押すこと自体が困難になる虞がある。このことは、メカナムホイールによるアシストを行うには不都合である。
【0008】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送者を移動させることなく、メカナムホイールによる横移動のアシストを適切に開始させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、前輪および後輪を有する複数のキャスタを備えかつ後側から手押しされるように構成された対象物に取り付けられ、該対象物の搬送をアシストする搬送補助装置に係る。この搬送補助装置は、前記対象物の下面に取り付けられるとともに、前記後輪よりも前側に配置される複数のメカナムホイールと、前記複数のメカナムホイールの各々に設けられ、各メカナムホイールを作動させるモータと、前記複数のメカナムホイールを支点として左右方向に沿った所定方向に前記後輪が移動する第1旋回動作を検出する第1センサと、前記第1センサおよび前記モータと電気的に接続された制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1センサによって前記第1旋回動作が検出された場合、前記後輪を支点として前記所定方向に前記前輪を移動させる第2旋回動作を実行するように、前記モータを介して前記複数のメカナムホイールのうちの少なくとも1つを作動させる。
【0010】
前記第1の態様によると、第1旋回動作および第2旋回動作は、それぞれ後輪および前輪を同じ所定方向に移動させつつも、互いに反対方向に旋回する動作となる。ゆえに、第1旋回動作後に第2旋回動作を続けて行うことで、各旋回動作によって生じる対象物の傾きを相殺し、対象物の姿勢を略一定に保つことができる。ここで、第2旋回動作に際しては、第1旋回動作による横移動後の後輪が支点となるため、その後輪をそれ以上横移動させることなく、前輪を積極的に横移動させることができる。
【0011】
したがって、第1旋回動作および第2旋回動作を続けて行うことで、旋回による対象物の傾きを抑制しつつ、前輪および後輪を双方とも所定方向に横移動させることができる。前輪および後輪を横移動させることで、対象物全体を所定方向に横移動させることが可能となる。
【0012】
また、対象物の後端部に対して所定方向に力を加えた場合、複数のメカナムホイールが横移動のブレーキになると考えられる。この場合、複数のメカナムホイールを支点とした旋回動作、つまり第1旋回動作が行われることになる。すなわち、この第1旋回動作は、搬送者を対象物の側方に回り込ませることなく実現可能な旋回動作である。ゆえに、その第1旋回動作を契機とした第2旋回動作もまた、搬送者を移動させることなく開始させることができる。この第2旋回動作は、モータを介してメカナムホイールを作動させることで行われるものであるから、搬送者に過度な力を求めることなく、メカナムホイールによる横移動のアシストを開始させることができる。
【0013】
このように、前記第1の態様によると、搬送者を移動させることなく、メカナムホイールによる横移動のアシストを適切に開始させることが可能になる。また、第1旋回動作にはスイッチ操作が求められないため、より直感的な操作を通じて対象物の横移動をアシストさせることができる。
【0014】
また、本開示の第2の態様によれば、前記複数のメカナムホイールは、前記対象物の左右方向に並んだ2つのメカナムホイールによって構成され、前記第1センサは、前記2つのメカナムホイールの間に配置されているとともに、前記対象物を基準としたヨー軸まわりの角速度を検出可能に構成されている、としてもよい。
【0015】
前記第2の態様によると、2つのメカナムホイールの間に第1センサを配置することで、2つのメカナムホイールの重心と、第1センサとを近接させることができる。これにより、2つのメカナムホイールの重心を回転中心とした第1旋回動作が行われるときに、その回転中心まわりの角速度を精度よく検出することができる。これにより、より適切なタイミングで横移動のアシストを開始させることができる。
【0016】
また、本開示の第3の態様によれば、前記制御装置は、前記第1センサの検出結果と、前記第1旋回動作の動作時間とに基づいて、前記第1旋回動作における前記後輪の旋回角度を算出し、前記制御装置は、前記第2旋回動作の実行に際し、前記第1旋回動作における前記後輪の旋回角度の大きさと、前記第2旋回動作における前記前輪の旋回角度の大きさとを一致させるよう、前記モータを介して前記複数のメカナムホイールのうちの少なくとも1つを作動させる、としてもよい。
【0017】
前記第3の態様によると、第1旋回動作および第2旋回動作によって生じる対象物の傾きを精度よく相殺し、対象物の姿勢を略一定に保つ上で有利になる。これにより、横移動のアシストをより適切に行うことができる。
【0018】
また、本開示の第4の態様によれば、前記搬送補助装置は、前記複数のメカナムホイールそれぞれの回転数を検出する第2センサを備え、前記制御装置は、前記第1センサによって前記第1旋回動作が検出された場合、前記回転数の大きさが第1閾値未満のときには、前記第2旋回動作を実行する一方、前記回転数の大きさが前記第1閾値以上のときには、前記第2旋回動作を実行する代わりに、斜め方向への前記対象物の搬送をアシストするように、前記モータを介して前記複数のメカナムホイールのうちの少なくとも1つを作動させる、としてもよい。
【0019】
前記第4の態様によると、搬送者が横移動を求めているか、あるいは、斜め移動を求めているかを適切に判断し、対象物をより適切にアシストすることが可能になる。
【0020】
また、本開示の第5の態様によれば、前記後輪は、前記対象物の左右方向に沿って2つ設けられ、前記制御装置は、前記第2旋回動作の実行に際し、前記2つの後輪のうち前記所定方向の先端側に位置する一方の後輪を支点とする、としてもよい。
【0021】
前記第5の態様は、第1旋回動作と第2旋回動作とを組み合わせた横移動のアシストに資する。
【0022】
また、本開示の第6の態様によれば、前記制御装置は、前記対象物に横移動を指示するための操作入力を受け付ける操作スイッチと電気的に接続され、前記制御装置は、前記操作スイッチを介して第2の所定方向への横移動が指示された場合、前記第2の所定方向に推進力を発揮させる第3旋回動作を実行するように、前記モータを介して前記複数のメカナムホイールのうちの少なくとも1つを作動させる、としてもよい。
【0023】
前記第6の態様によると、第3旋回動作においては、対象物を横移動させるような推進力が発揮される。ここで、搬送者が対象物の後端部を支持している場合、前述の如き推進力を発揮させることで、搬送者を支点としかつ対象物の前端部を旋回させるような動作が実現される。対象物の後側に位置する搬送者を支点としたことで、対象物を壁面に沿わせた状況下にあっても、対象物と壁面との衝突を招くことなく、対象物の横移動をアシストすることが可能になる。
【0024】
また、本開示の第7の態様によれば、前記制御装置は、前記第2旋回動作を実行可能とするか否かと、前記第3旋回動作を実行可能とするか否かと、を個別に切り替えられるように構成されている、としてもよい。
【0025】
前記第7の態様によると、第2旋回動作および第3旋回動作をそれぞれ有効とするか無効とするかを個別に切り替えることができるため、多岐にわたるニーズに対応させると同時に、搬送者による誤操作を抑制する上でも有利になる。
【0026】
また、本開示の第8の態様は、前記第1の態様に係る搬送補助装置が取り付けられた医療用ベッドに係る。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本開示によれば、搬送者を移動させることなく、メカナムホイールによる横移動のアシストを適切に開始させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】搬送補助装置および医療用ベッドの全体構成を例示する側面図である。
【
図2】搬送補助装置および医療用ベッドの全体構成を例示する底面図である。
【
図3】搬送補助装置の構成を例示する斜視図である。
【
図4】搬送補助装置の構成を例示する側面図である。
【
図5】搬送補助装置の制御系の構成を例示するブロック図である。
【
図6】メカナムホイールの構成について説明するための図である。
【
図7】メカナムホイールの動作について説明するための図である。
【
図8】第1旋回動作および第2旋回動作について説明するための図である。
【
図9】第3旋回動作について説明するための図である。
【
図10】第2旋回動作に関連した処理を例示するフローチャートである。
【
図11】第1旋回動作における移動距離について説明するための図である。
【
図12】第3旋回動作に関連した処理を例示するフローチャートである。
【
図13】第2旋回動作の変形例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は搬送補助装置1および医療用ベッド10の全体構成を例示する側面図であり、
図2は搬送補助装置1および医療用ベッド10の全体構成を例示する底面図である。
【0031】
また、
図3は搬送補助装置1の構成を例示する斜視図であり、
図4は搬送補助装置1の構成を例示する側面図である。また、
図5は、搬送補助装置1の制御系の構成を例示するブロック図である。
【0032】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る搬送補助装置1は、対象物としての医療用ベッド(以下、単に「ベッド」と呼称する)10に取り付けられている。このベッド10は、前輪14Fおよび後輪14Bを有する複数のキャスタ14を備え、後側から手押しされるように構成されている。後述のように、この搬送補助装置1は、手押しによるベッド10の搬送をアシストすることができる。
【0033】
以下、ベッド10の長手方向一方(頭側)を「後」と呼称し、長手方向他方(足先側)を「前」と呼称する。同様に、ベッド10の短手方向一方を「右」と呼称し、短手方向他方を「左」と呼称する。また、前記長手方向をY軸に沿った「前後方向」と呼称し、前記短手方向をX軸に沿った「横方向」または「左右方向」と呼称する場合もある。
【0034】
ベッド10は、
図1に示すように、不図示のマットレスが載置されるベッド本体11と、ベッド本体11を下方から支持するフレーム12と、フレーム12に対してベッド本体11を昇降させる昇降具13と、ベッド10の下面に配置された複数(図例では4つ)のキャスタ14と、を備えている。本実施形態に係るベッド10は、いわゆる「キャスタ付医療用ベッド」である。このベッド10は、例えば60kg以上300kg以下である。
【0035】
ここで、ベッド本体11は、ベッド10の後側に配置されるヘッドボード11hと、ベッド10の前側に配置されるフットボード11fと、ベッド10の左右両側に配置されるサイドレール11sと、を有している。
【0036】
このうち、ヘッドボード11hは、ベッド10を手押し移動させるべく、搬送者によって後側から力が加えられる手押し部として機能する。ヘッドボード11hにハンドル、グリップ等の部材を取り付けて、それらの部材を手押し部として用いてもよい。
【0037】
また、フレーム12は、
図2に示すように矩形枠状に構成されており、左右方向に沿って延びかつベッド10の前側に配置される前フレーム12Fと、前後方向に沿って延びかつベッド10の右側に配置される右フレーム12Rと、前後方向に沿って延びかつベッド10の左側に配置される左フレーム12Lと、左右方向に沿って延びかつベッド10の後側に配置される後フレーム12Bと、を有している。
【0038】
また、
図1及び
図2に示すように、複数のキャスタ14を構成する前輪14Fおよび後輪14Rは、ベッド10下面の4隅に配置されており、左右方向に沿って2つずつ設けられている。複数のキャスタ14は、床面に対してフレーム12、昇降具13およびベッド本体11を支持する。各キャスタ14は、いわゆるフリーキャスタであって、ベッド10の下面に固定される取付部14aと、取付部14aに対して旋回軸Ocまわりに旋回可能なフォーク部14bと、フォーク部14bによって回転可能に支持された車輪14cと、を有している。
【0039】
そして、搬送補助装置1は、前述の各キャスタ14を介して支持されるフレーム12において、右フレーム12Rの前後方向中央部と、左フレーム12Lの前後方向中央部と、を架け渡すように配置されている。搬送補助装置1は、左右方向においては中央に配置されているとともに、前後方向においては前輪14Fと後輪14Bの間に配置されている。
【0040】
図2に示すように、搬送補助装置1は、複数のモータ付メカナムホイール2と、バッテリ3と、制御装置4と、後述の第1旋回動作を検出する第1センサとしての慣性センサ5と、を備えている。
【0041】
ここで、
図5に示すように、複数(図例では2つ)のモータ付メカナムホイール2は、複数のメカナムホイール21R,21Lと、モータ22R,22Lと、を有している。複数のメカナムホイール21R,21Lは、ベッド10の下面に取り付けられるとともに、後輪14Bの前側に配置される。モータ22R,22Lは、複数のメカナムホイール21R,21Lの各々に設けられ、各メカナムホイール21R,21Lを作動させる。
【0042】
特に、本実施形態に係る複数のメカナムホイール21R,21Lは、
図2等に示すように、ベッド10の左右方向に沿って並んだ2つのメカナムホイール21R,21Lによって構成されている。なお、2つのメカナムホイール21R,21Lは、ベッド10の前後方向に沿って並ぶように配置してもよいし、前後方向および左右方向の双方に傾斜した斜め方向に沿って並ぶように配置してもよい。各メカナムホイール21R,21Lおよびモータ22R,22Lの詳細は後述する。
【0043】
一方、バッテリ3、制御装置4および慣性センサ5は、
図2に例示するように収容ボックス6に収容されている。バッテリ3は、リチウムバッテリによって構成されている。このバッテリ3には、電圧監視機能が搭載されている。
【0044】
また、慣性センサ5は、少なくとも、ベッド10を基準としたヨー軸(つまり、ベッド10の上下方向に沿ったZ軸)Ozまわりの角速度を検出可能に構成されている。
【0045】
詳しくは、本実施形態に係る慣性センサ5は、ヨー軸Ozまわりの角速度に加え、ベッド10の前後方向、左右方向および上下方向からなる3方向の加速度と、ベッド10を基準としたロール軸(前後方向に沿ったY軸)まわりの角速度と、ピッチ軸(左右方向に沿ったX軸)まわりの角差速度と、を検出することができる。慣性センサ5の検出信号は、制御装置4に入力される。後述のように、慣性センサ5は、複数のメカナムホイール21R,21Lを支点とした旋回動作を検出することができる。
【0046】
制御装置4は、CPU、メモリ、入出力バス等を有する制御基板によって構成されており、慣性センサ5の検出信号に基づいて、種々の演算を行うことができる。制御装置4は、慣性センサ5およびモータ22R,22Lと電気的に接続されている。
【0047】
例えば、制御装置4は、前記3方向の加速度に基づいて、搬送者によって加えられた力の方向および大きさを判断することができる。制御装置4はまた、3方向の加速度を時間について積分することで、ベッド10の移動方向および移動速度を判断することもできる。
【0048】
また、制御装置4は、3軸まわりの角速度に基づいて、ベッド10の姿勢を判断したり、後述の第1旋回動作および第2旋回動作の開始および終了を判断したり、坂道を走行しているか否かを判断したりすることもできる。
【0049】
また、制御装置4は、慣性センサ5の検出信号に加えて、後述のエンコーダ22bの検出信号も参照することで、モータ22R,22Lの制御パラメータを決定することができる。制御装置4は、そうして決定した制御パラメータに対応した信号をモータ22R,22Lに入力することで、各モータ22R,22L、ひいては対応するメカナムホイール21R,21Lを個別に制御することができる。
【0050】
その他、制御装置4は、
図1に示す操作スイッチ8とも電気的に接続されている。この操作スイッチ8は、いわゆるリモートコントローラであって、ベッド10の横移動を指示するための操作入力を受け付けるように構成されている。制御装置4と操作スイッチ8は、無線通信によって信号を送受するように構成してもよいし、有線通信によって信号を送受するように構成してもよい。詳細な図示は省略するが、本実施形態に係る操作スイッチ8は、ヘッドボード11h、サイドレール11sおよびフットボード11fのそれぞれに対して着脱可能に構成されている。
【0051】
そして、各モータ付メカナムホイール2と収容ボックス6は、双方とも取付具7に組み付けられており、この取付具7を介してベッド10の下面に取り付けられるようになっている。取付具7は、ベッド10の下面に対して着脱可能である。すなわち、本実施形態に係る搬送補助装置1は、ベッド10に対して後付可能であって、必要に応じて取り外し可能とされている。
【0052】
詳しくは、本実施形態に係る取付具7は、
図3に示すように、右フレーム12R及び左フレーム12Lに対して着脱可能な前側レール部材71fおよび後側レール部材71bと、各モータ付メカナムホイール2を回転自在に支持する第1ブラケット72と、第1ブラケット72を介して各モータ付メカナムホイール2を付勢する引張バネ75と、を有している。
【0053】
前側レール部材71fおよび後側レール部材71bは、前後方向に間隔を空けて配置されており、それぞれ、右フレーム12Rの前後方向中央部と、左フレーム12Lの前後方向中央部と、を架け渡している。収容ボックス6及び2つのモータ付メカナムホイール2は、前側レール部材71fと後側レール部材71bとの間のスペースに配置されることになる。
【0054】
ここで、収容ボックス6は、専用のブラケットを介して前側レール部材71fおよび後側レール部材71bに固定されている。収容ボックス6は、
図2に示すように左右方向中央部に配置されており、その左右両脇には、モータ付メカナムホイール2が1つずつ設けられている。すなわち、収容ボックス6、並びに、該収容ボックス6に収容された制御装置4、バッテリ3及び慣性センサ5は、左右方向において、2つのモータ付メカナムホイール2の間、さらに詳細には2つのメカナムホイール21R,21Lの間に配置されるようになっている。なお、慣性センサ5を2つのメカナムホイール21R,21Lの間に配置することは、必須ではない。
【0055】
以下、2つのモータ付メカナムホイール2のうち、右側に位置する一方を「第1のモータ付メカナムホイール2R」と呼称し、左側に位置する他方を「第2のモータ付メカナムホイール2L」と呼称する場合がある。
【0056】
図3に示すように、右側に位置する第1ブラケット72は、その後端部に配置された第1回転軸73を介して後側レール部材71bに連結されている。この第1ブラケット72は、後側レール部材71bに対し、第1回転軸73まわりに揺動可能に支持されている。また、第1ブラケット72の前端部は、第2回転軸74を介して第1のモータ付メカナムホイール2Rに連結されている。第1のモータ付メカナムホイール2Rは、第1ブラケット72に対し、第2回転軸74まわりに回転可能に支持されている。
【0057】
また、第1ブラケット72の上端部には、引張バネ75の一端部が係止されている。この引張バネ75の他端部は、前側レール部材71fに固定された第2ブラケット76に係止されている(
図4も参照)。
【0058】
第1ブラケット72は、引張バネ75を原動体とし、第1のモータ付メカナムホイール2Rを従動体とし、第1回転軸73まわりの回転を用いたベルクランクと見なすことができる。すなわち、引張バネ75の一端部が第1ブラケット72の上端部を引っ張ると、第1ブラケット72が第1回転軸73まわりに回転し、第1のモータ付メカナムホイール2Rを床面に押し付けることになる。第1ブラケット72および引張バネ75は、第1ブラケット72に対するサスペンションとして機能する。これにより、段差を容易に乗り越えることができる。
【0059】
以上、取付具7の構成要素のうち、第1のモータ付メカナムホイール2Rに関連した構成要素について説明したが、前述した説明は、第2のモータ付メカナムホイール2Lに関連した構成要素についても同様である。前記説明において、「第1のモータ付メカナムホイール2R」を適宜「第2のモータ付メカナムホイール2L」と読み替えればよい。
【0060】
また、前側レール部材71fおよび後側レール部材71b、左右の第1ブラケット72、ならびに、左右の第2ブラケット76は、いずれもアルミ合金製である。前側レール部材71fおよび後側レール部材71b等をアルミフレームとすることで、軽量化を図り、ベッド10に対して容易に取り付けることができるようになる。
【0061】
続いて、各モータ付メカナムホイール2の詳細について説明する。
【0062】
図6は、メカナムホイール21R,21Lの構成について説明するための図であり、
図7は、メカナムホイール21R,21Lの動作について説明するための図である。
図7は、ベッド10を上方から見た平面図に相当する。
【0063】
まず、2つのモータ付メカナムホイール2のうち、右側に位置する第1のモータ付メカナムホイール2Rは、第1のメカナムホイール21Rと、このメカナムホイール21Rを駆動する第1モータ22Rと、を備えている(第1モータ22Rは、
図5にのみ図示)。
【0064】
同様に、2つのモータ付メカナムホイール2のうち、左側に位置する第2のモータ付メカナムホイール2Lは、第2のメカナムホイール21Lと、このメカナムホイール21Lを駆動する第2モータ22Lと、を備えている(第2モータ22Lは、
図5にのみ図示)。
【0065】
第1および第2のメカナムホイール21R,21Lは、それぞれ、
図6に示すように、ホイール本体の円周上に、そのホイール本体の中心に対して45°傾けた複数の樽型ローラを取り付けてなる。
【0066】
また、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lは、それぞれ、
図6および
図7に示すように、前後方向に沿って延びる鏡映面に対し、樽型ローラが互いに鏡映対称となるように配置される(樽型ローラの傾斜方向が互いに反対方向となるように配置される)。
【0067】
さらに、
図7に示すように上方から見た場合、各樽型ローラの傾斜方向は、前後方向に沿って後側から前側に向かうに従って、左右方向の内側から外側(左右方向の中央部から右側または左側)へ向かって延びている。なお、各樽型ローラの傾斜方向は、
図7等に示す例には限定されない。
【0068】
なお、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lは、
図3等に示した前側レール部材71fおよび後側レール部材71bを介して相互に連結されている。したがって、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lは、前後方向および左右方向に一体的に移動したり、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lを支点として一体的に回転したりする。
【0069】
その際、2つのメカナムホイール21R,21Lの間に慣性センサ5が配置されていることから、この慣性センサ5は、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lを支点とした旋回動作(より詳細には、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lの中央位置を通過するヨー軸Ozまわりの旋回動作)における角速度を検出することになる。ここでの中央位置とは、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lの平面視での重心位置を示す。
【0070】
一方、各メカナムホイール21R,21Lを作動させるためのモータ22R,22Lは、それぞれ、エンコーダ付DCブラシレスモータとして構成されている。第1および第2モータ22R,22Lは、双方とも制御装置4と電気的に接続されており、この制御装置4から信号が入力されることで作動するようになっている。
【0071】
ここで、第1モータ22Rは第1のメカナムホイール21Rに内蔵されており、第2モータ22Lは第2のメカナムホイール21Lに内蔵されている。第1および第2モータ22R,22Lを、それぞれ対応するメカナムホイール21R,21Lに内蔵させることで、装置全体の簡素化およびコンパクト化を図ることができる。
【0072】
具体的に、第1および第2モータ22R,22Lは、それぞれ、不図示のステータおよびロータを有しかつ回転動力を発生させるモータ本体22aと、モータ本体22aの回転数および回転角度を検出するエンコーダ22bと、を有している。このエンコーダ22bは、例えば、搬送者が加えた力によってメカナムホイール21R,21Lが回転した場合に、対応するメカナムホイール21R,21Lの回転数および回転角度を検出する。各エンコーダ22bは、2つのメカナムホイール21R,21Lそれぞれの回転数を検出する第2センサとして機能する。エンコーダ22bの検出信号は、適宜、制御装置4に入力されるようになっている。
【0073】
そして、第1モータ22Rが回転することで第1のメカナムホイール21Rが回転し、第2モータ22Lが回転することで第2のメカナムホイール21Lが回転する。各モータ22Rの回転方向を変更することで、対応するメカナムホイール21R,21Lを前転と後転とに切り替えることができる。
【0074】
慣性センサ5等の検出信号に基づいて第1および第2モータ22R,22Lを作動させることで、各メカナムホイール21R,21Lを個別に前転または後転させることができる。これにより、第1及び第2のメカナムホイール21R,21Lに推進力を発揮させることができ、その推進力によってベッド10の搬送をアシストすることができる。
【0075】
例えば、
図7の左上に示すように、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lを双方とも前転させると、ベッド10の前進をアシストすることができる。同様に、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lを双方とも後転させると、ベッド10の後退をアシストすることができる(図示省略)。
【0076】
また、
図7の右上に示すように、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lのうちの一方を前転させ、他方を後転させると、ベッド10の横移動(左右方向に沿った移動)をアシストすることができる。例えば、第1のメカナムホイール21Rを後転させて第2のメカナムホイール21Lを前転させると、右方向へのベッド10の横移動をアシストすることができる。この場合、前転させる一方のホイール回転量と、後転させる他方のホイール回転量とを等しくすることが好ましい。
【0077】
また、
図7の左下に示すように、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lのうちの一方のみを前転または後転するように駆動させると、ベッド10の斜め移動をアシストすることができる。例えば、第2のメカナムホイール21Lのみを前転させると、右斜め方向へのベッド10の前進をアシストすることができる。一方、第1のメカナムホイール21Rのみを前転させると、左斜め方向へのベッド10の前進をアシストすることができる(図示省略)。
【0078】
また、
図7の右下に示すように、斜め移動のアシストと同様の動作によって、2つの後輪14Bのうちの一方を支点とした旋回動作をアシストすることもできる。例えば、第2のメカナムホイール21Lのみを前転させると、右側の後輪14Bを支点とした時計回り方向の旋回動作をアシストすることができる。一方、第2のメカナムホイール21Lのみを後転させると、左側の前輪14Fを支点とした時計回り方向の旋回動作をアシストすることができる。
【0079】
なお、ベッド10の斜め移動または旋回動作のアシストは、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lのうちの一方の回転量(=回転数×動作時間)と、他方の回転量とを異ならせることによって実現することもできる。例えば、第1のメカナムホイール21Rを前転させて第2のメカナムホイール21Lを後転させるとともに、第1のメカナムホイール21Rの回転量を第2のメカナムホイール21Lの回転量と比べて小さくすることで、右斜め方向へのベッド10の前進をアシストすることもできる。その際の斜め方向の傾斜角(前後方向または左右方向に対する傾斜角)は、2つのメカナムホイール21R,21Lの回転量の差を通じて調整することができる。一方、ベッド10の旋回動作のアシストに際しては、2つのメカナムホイール21R,21Lの回転量の差を通じて、回転中心の位置を調整することができる。
【0080】
なお、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lによるアシストは、搬送者がベッド10(具体的にはヘッドボード11h)に力を加えたときに、その力と同じ方向に推進力を及ぼすよう実行される。
【0081】
例えば、本実施形態では、搬送者がベッド10に力を加えたことで各メカナムホイール21R,21Lが回転したときに、その回転数および回転方向をエンコーダ22bによって検出し、その検出結果に基づいて制御装置4が生成した制御信号をモータ22R,22Lに入力することでアシストを実行する。これに代えて、搬送者がベッド10に力を加えたときに、その力に対応した加速度を慣性センサ5によって検出し、その検出結果に基づいて制御装置4が生成した制御信号をモータ22R,22Lに入力することでアシストを実行してもよい。加速度を用いる場合、振動によるバラツキを抑制すべく、ディジタルフィルタによって余分なデータをカットしてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、第1および第2モータ22R,22Lのモータトルク(電流値)には上限が設けられている。これにより、過度の推進力に起因したベッド10の自走を抑制することが可能になる。
【0083】
また、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lは、対応するモータ22R,22Lを駆動していない場合も前転および後転が許容される。これにより、ベッド10を手押し移動する際のふらつきを抑制し、ベッド10の搬送を安定させることができる。
【0084】
以下、
図8および
図9を参照して搬送補助装置1を用いたベッド10の横移動について説明する。ここで、
図8は第1旋回動作および第2旋回動作について説明するための図であり、
図9は第3旋回動作について説明するための図である。
【0085】
前述の手法によると、
図7の右上に例示したような横移動のアシストを開始させるためには、ベッド10に対して横方向の力を加え、このベッド10を手動で横移動させることが考えられる。
【0086】
これに対し、本実施形態に係る搬送補助装置1は、
図7の右上に例示したような横移動の代わりに、同図の右下に例示したような旋回動作を用いることで、ベッド10の横移動をアシストすることができる。
【0087】
具体的に、
図8(a)に示すように、搬送者100から見て左方に位置する壁Wに寄せるようにベッド10を横移動させるケースを例示する。こうしたケースにおいては、ベッド10の側方からベッド10に力を加えるようにすることが通例だったところ、搬送者100を移動させずに、ベッド10の後端部(例えば、
図1に示したヘッドボード11h)に横方向の力を加える場合を考える。
【0088】
この場合、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lがブレーキとなり、横移動の妨げとなる。その結果、ベッド10は、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lを支点として旋回することになる。これにより、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lの重心位置を回転中心P1とし、かつ、左右方向に沿った所定方向Atに後輪14Bが移動する第1旋回動作が実現される(
図8(a)の矢印A1を参照)。所定方向Atは、左右方向に沿った一方向である。
図8の例では、所定方向Atは左方向(紙面上での下方向)に一致する。
【0089】
この第1旋回動作は、前述のように第1および第2のメカナムホイール21R,21Lを支点としたものであるため、慣性センサ5によって検出可能である。その際、制御装置4は、慣性センサ5によって検出された角速度の正負に基づいて、左右どちらの後輪14Bを壁Wに寄せたかを判断することができる。
【0090】
そして、
図8(b)に示すように、本実施形態に係る制御装置4は、慣性センサ5によって第1旋回動作が検出された場合、後輪14Bを支点(回転中心P2)としかつ、第1旋回動作と同じ所定方向Atに前輪14Fを移動させる第2旋回動作を実行するように、モータ22R,22Lを介して2つのメカナムホイール21R,21Lのうちの少なくとも1つを作動させる(
図8(b)の矢印A2を参照)。
【0091】
より詳細には、制御装置4は、第2旋回動作の実行に際し、2つの後輪14Bのうち、所定方向Atの先端側に位置する一の後輪14Bを回転中心P2とする。
図8の例では、所定方向Atの先端側は、左右方向の左側に一致する。そのため、この例では、左側の後輪14Bが回転中心P2となる。なお、所定方向Atが仮に右方向だった場合、所定方向Atの先端側は、左右方向の右側に一致することになる。
【0092】
ここで、左側の後輪14Bを回転中心P2とした旋回は、その後輪14Bに対して左右方向の反対側(
図8の例では右側)に位置するメカナムホイール21Rを所定の回転量で前転させることで実現することができる(
図8(b)の矢印Arを参照)。その際、回転中心P2の位置調整等を図るべく、もう一方のメカナムホイール21Lを相対的に小さな回転量で前転または後転させてもよい(
図8(b)の矢印Alを参照)。
【0093】
この場合、搬送補助装置1が後輪14Bの前側に配置されていることから、第2旋回動作の旋回方向は、第1旋回動作の旋回方向に対して反対になる。例えば、
図8(a)および(b)の例では、第1旋回動作は時計周り方向の旋回となり、第2旋回動作は反時計回り方向の旋回となる。反対方向の旋回動作を続けて行うことで、
図8(c)に示すように、結果的にベッド10を横方向にスライドさせることが可能となる。また、第2旋回動作に際し、左側の後輪14Bを回転中心P2とすることで、ベッド10を壁Wから離間させることなく、横方向へのスライドを実現することができる。
【0094】
ところで、ベッド10の後端部には、これを斜め方向に前進または後退させる場合にも横方向の力が加わることになる。この場合、第2旋回動作の要否にかかわらず、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lを支点とした第1旋回動作が検出されることになる。ベッド10を斜め方向に手押し移動しようとしたときに、意図せずして第2旋回動作が実行されてしまっては不都合である。
【0095】
ここで、ベッド10を横移動させるための第1旋回動作は、その場での回転動作になるため、斜め方向に前進または後退させるための第1旋回動作に比して、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lはさほど回転しない。
【0096】
そこで、制御装置4は、慣性センサ5によって第1旋回動作が検出された場合、エンコーダ22bを通じて各メカナムホイール21R,21Lの回転数を取得し、取得した回転数の大きさ、または、左右の回転数の差が所定の第1閾値Δv1未満のときには第2旋回動作を実行する。一方、制御装置4は、回転数の大きさ、または、左右の回転数の差が第1閾値Δv1以上のときには、第2旋回動作を実行する代わりに、斜め方向へのベッド10の搬送をアシストするように、モータ22R,22Lを介して2つのメカナムホイール21R,21Lのうちの少なくとも1つを作動させる。
【0097】
なお、エンコーダ22bの代わりに、または、エンコーダ22bに加えて、慣性センサ5の検出信号を用いた場合分けを行ってもよい。これにより、その場での方向転換と横移動とを区別して、方向転換に際して第2旋回動作の実行を抑制することができる。この場合、制御装置4はまず、慣性センサ5によって第1旋回動作が検出された場合、その慣性センサ5を通じて第1旋回動作における角速度を取得する。その後、制御装置4は、取得した角速度の変化量が所定の第2閾値未満のときには第2旋回動作を実行する一方、角速度の変化量が閾値以上のときには第2旋回動作を未実行とする。
【0098】
なお、後述の
図10および
図11に示すように、第1および第2モータ22R,22Lそれぞれの回転量(=回転数×動作時間)は、第1旋回動作における回転中心P1を基準とした後輪14Bの旋回角度θと、第1旋回動作の動作時間tと、前記回転中心P1からヘッドボード11hまでの距離等、ベッド10の各種寸法とに基づいて決定することができる。そうした構成に代えて、第1および第2モータ22R,22Lそれぞれの回転量(=回転数×動作時間)を一定にしてもよい。
【0099】
続いて、壁W等からベッド10を離間させる際のアシストについて説明する。
【0100】
例えば、
図9(a)のようにベッド10と壁Wとが近接している場合(ベッド10を壁に沿わせた場合)、ベッド10の後端部に対し、壁Wから離間する横方向に力を加えることが考えられる。ところが、そのような力を加えた場合、前述の第1旋回動作と同様に第1および第2のメカナムホイール21R,21Lを支点とした旋回動作が生じてしまい、ベッド10の前端部(フットボード11f側部分)が壁Wに向かって移動する可能性がある。ベッド10と壁Wとの衝突を抑制するためには、そうした移動は可能な限り避けることが好都合である。
【0101】
そこで、
図9(a)および(b)に示すように、本実施形態に係る制御装置4は、操作スイッチ8を介して第2の所定方向Auへの横移動が指示された場合、その第2の所定方向Auに推進力を発揮させる第3旋回動作を実行するように、モータ22R,22Lを介して2つのメカナムホイール21R,21Lのうちの少なくとも1つを作動させる(
図9(b)の矢印A3を参照)。ここで第2の所定方向Auは、ベッド10を基準とした左右方向における一方向である。
図9の例では、第2の所定方向Auは、紙面上での斜め上方向に一致する。
【0102】
第2の所定方向Auへの推進力は、
図7の右上に例示したように、2つのメカナムホイール21R,21Lのうちの一方を所定の回転量で前転させ、他方を同じ回転量で後転させることで実現することができる(
図9(b)の矢印Ar’および矢印Al’を参照)。このように各メカナムホイール21R,21Lを作動させることで、
図9(b)の矢印A3に示すように、ヘッドボード11hを支持する搬送者100を回転中心P3とした旋回が実現される。
【0103】
なお、各メカナムホイール21R,21Lは、操作スイッチ8への操作入力中のみ駆動されるようになっている。したがって、第3旋回動作における旋回角度は、操作スイッチ8の操作時間に応じて調整することができる。
【0104】
そして、第3旋回動作の実行後にベッド10を後方から手押し移動させることで、
図9(c)の矢印A4に示すように、ベッド10全体を壁Wから離間させることができる。
【0105】
なお、第3旋回動作は、ベッド10のその場での方向転換にも用いることができる。また、第3旋回動作の実行時に、ベッド10の後端部に第2の所定方向Auへの力を加えることで、壁Wに対して平行な姿勢を保持したスライド移動を実現することもできる。
【0106】
また、制御装置4は、第1旋回動作を契機とした第2旋回動作を実行可能とするか否かと、操作スイッチ8に対する操作入力を契機とした第3旋回動作を実行可能とするか否かと、を個別に切り替えられるように構成されている。すなわち、制御装置4は、第2旋回動作および第3旋回動作のオン・オフを個別に切り替えることで、一方の動作のみを有効にしたり、両方の動作を有効または無効にしたりすることができる。
【0107】
続いて、第1旋回動作、第2旋回動作および第3旋回動作に関連した処理の具体例について説明する。ここで、
図10は第2旋回動作に関連した処理を例示するフローチャートであり、
図11は第1旋回動作における移動量について説明するための図であり、
図12は第3旋回動作に関連した処理を例示するフローチャートである。
【0108】
まず、第2旋回動作に関連した処理に際し、制御プロセスは、
図10のステップS11に進む。このステップS11において、制御装置4は、慣性センサ5およびエンコーダ22b等の検出信号を読み込む。
【0109】
続くステップS12において、制御装置4は、慣性センサ5が検出したヨー軸Ozまわりの角速度に基づいて、第1旋回動作が検出されたか否かを判定する。この判定がNOの場合、制御プロセスはリターンする。一方、ステップS12の判定がYESの場合、制御プロセスはステップS13に進む。
【0110】
ステップS13において、制御装置4は、エンコーダ22bを通じて各メカナムホイール21R,21Lの回転数を取得し、取得した回転数の大きさ(絶対値)が所定の第1閾値Δv1未満であるか否かを判定する。この判定がNOの場合、制御装置4は、第2旋回動作を実行する代わりにベッド10の斜め移動をアシストすべく、制御プロセスをステップS18に進める。ステップS18において、制御装置4は各種検出信号に基づいて各モータ22R,22Lの駆動トルク、駆動時間等の制御パラメータを決定する。その後、そうして決定した制御パラメータに基づいて各モータ22R,22Lを作動させ、ベッド10の斜め移動をアシストする(ステップS19)。
【0111】
一方、ステップS13の判定がYESの場合、制御装置4は、第2旋回動作を実行するために、制御プロセスをステップS14に進める。ステップS14において、制御装置4は、第2旋回動作が有効であるか否かを判定する。この判定がNOの場合(第2旋回動作が無効化されていた場合)、制御プロセスはリターンする。一方、ステップS14の判定がYESの場合、制御プロセスはステップS15に進む。
【0112】
ステップS15において、制御装置4はまず、慣性センサ5の検出結果であるヨー軸Ozまわりの角速度ωと、制御装置4に内蔵されたタイマによって取得された第1旋回動作の動作時間tとに基づいて、第1旋回動作における後輪14Bの旋回角度θ(=ω・t)を算出する。
【0113】
ここで、制御装置4には、前後方向における2つのメカナムホイール21R,21Lとベッド10の後端部(例えばヘッドボード11h)との距離Laが事前に記憶されている。したがって、この距離Laと前述の旋回角度θとを組み合わせることで、左右方向(X方向)におけるベッド10の移動距離Lb(=La・sinθ)を算出することができる。
【0114】
続くステップS16において、制御装置4は、ステップS15で算出した旋回角度θおよび移動距離Lbに基づいて、第1および第2モータ22R,22Lそれぞれの回転量(=回転数×動作時間)を決定する。各回転量は、各モータ22R,22Lの回転数、動作時間および回転方向を通じて決定することができる。その際、前後方向における2つのメカナムホイール21R,21Lからフットボード11fまでの距離を参照したり、前後方向におけるベッド10の全長を参照したり、前後方向における前輪14Fから後輪14Bまでの距離を参照したりしてもよい。
【0115】
続くステップS17において、制御装置4は、ステップS16で決定した左右の回転量がそれぞれ実現されるように、第2旋回動作を実行する。第2旋回動作では、左右いずれかの後輪14Bを回転中心P2とし、かつ前輪14Fを所定方向Atに横移動させるような旋回が実現される。この第2旋回動作に際し、制御装置4は、第1旋回動作における後輪14Bの旋回角度θの大きさと、第2旋回動作における前輪14Fの旋回角度の大きさとを一致させるよう、モータ22R,22Lを介して2つのメカナムホイール21R,21Lのうちの少なくとも1つを作動させる。
【0116】
また、ステップS17において、制御装置4は、第1旋回動作の開始前に、ベッド10が前方に移動していたか、後方に移動していたか、左方に移動していたか、あるいは右方に移動していたかを示す情報を読み込む。この情報は、慣性センサ5の検出信号に基づいて、制御装置4に適宜記憶されるようになっている。制御装置4は、そうして読み込んだ情報に基づいて、前輪14Fの車輪14cの姿勢を判定する。
【0117】
例えば、第1旋回動作の開始前に前方または後方にベッド10が移動していた場合、制御装置4は、前輪14Fの車輪14cが縦向きであると判定する(
図7の左上および右下を参照)。また、第1旋回動作の開始前に左方または右方にベッド10が移動していた場合、制御装置4は、前輪14Fの車輪14cが横向きであると判定する(
図7の右上を参照)。また、第1旋回動作の開始前に斜め方向にベッド10が移動していた場合、制御装置4は、前輪14Fの車輪14cが斜め向きであると判定する(
図7の左下を参照)。
【0118】
車輪14cが横向きの場合、車輪14cの姿勢を整えることなく、前輪14Fを所定方向Atに移動させることができる。一方、車輪14cが縦向きまたは斜め向きの場合、車輪14cの姿勢が整った後に、所定方向Atへの前輪14Fの移動が開始されることになる。
【0119】
そこで、制御装置4は、車輪14cが縦向きまたは斜め向きの場合には、各モータ22R,22Lの回転数および動作時間のうちの少なくとも一方を調整する。例えば、制御装置4は、車輪14cが縦向きまたは斜め向きの場合には、車輪14cが横向きまたは斜め向きの場合と比べて動作時間を長くする。これにより、車輪14cの姿勢にかかわらず、良好なアシストを実現することができる。
【0120】
続いて、第3旋回動作に関連した処理に際し、制御プロセスは、
図12のステップS21に進む。このステップS21において、制御装置4は、第3旋回動作が有効であるか否かを判定する。この判定がNOの場合(第3旋回動作が無効化されていた場合)、制御プロセスはリターンする。一方、ステップS21の判定がYESの場合、制御プロセスはステップS22に進む。
【0121】
ステップS22において、制御装置4は、慣性センサ5およびエンコーダ22b等の検出信号の代わりに、または、これの検出信号に加えて、操作スイッチ8の操作入力に対応した信号を読み込む。
【0122】
続くステップS23において、制御装置4は、ステップS22の読込内容に基づいて、操作スイッチ8に対する操作入力を検出したか否かを判定する。この判定がNOの場合(操作スイッチ8が未操作の場合)、制御プロセスはリターンする。一方、ステップS23の判定がYESの場合、制御プロセスはステップS24に進む。
【0123】
ステップS24において、制御装置4は、第1および第2モータ22R,22Lそれぞれの回転量を決定する。各回転量は、各モータ22R,22Lの回転数、動作時間および回転方向を通じて決定することができる。ここで、各モータ22R,22Lの動作時間は、操作スイッチ8の操作時間に応じて決定される。
【0124】
続くステップS25において、制御装置4は、ステップS24で決定した左右の回転量がそれぞれ実現されるように、第3旋回動作を実行する。第3旋回動作では、搬送者100を回転中心P3とした旋回が実現される。
【0125】
<横移動のアシストについて>
従来知られた手法によると、100kg以上の高重量なベッド10を搬送対象とした場合、その後端側に設けられたヘッドボード11h等に力を加えるだけでは、ベッド10をスムースに横移動させることができず、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lによるアシストに不都合を来す可能性がある。この場合、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lによるアシストを確実に開始させるためには、搬送者がベッド10の側方に回り込み、これを横方向に押し込む必要がある。
【0126】
しかしながら、ベッド10から検査台または手術台に患者を移動させたり、エレベータ等の狭い環境下で横移動させたりする場合、ベッド10の側方に回り込むことができず、これを横方向に押すこと自体が困難になる虞がある。この場合、切り返し動作が必要になるため、第1および第2のメカナムホイール21R,21Lによるアシストを行うには不都合である。
【0127】
これに対し、本実施形態に係る第1旋回動作および第2旋回動作は、
図8を用いて説明したように、それぞれ後輪14Bおよび前輪14Fを同じ所定方向Atに移動させつつも、互いに反対方向に旋回する動作となる。ゆえに、第1旋回動作後に第2旋回動作を続けて行うことで、各旋回動作によって生じるベッド10の傾きを相殺し、ベッド10の姿勢を略一定に保つことができる。ここで、第2旋回動作に際しては、第1旋回動作による横移動後の後輪14Bが支点となるため、その後輪14Bをそれ以上横移動させることなく、前輪14Fを積極的に横移動させることができる。
【0128】
したがって、第1旋回動作および第2旋回動作を続けて行うことで、旋回によるベッド10の傾きを抑制しつつ、前輪14Fおよび後輪14Bを双方とも所定方向Atに横移動させることができる。前輪14Fおよび後輪14Bを横移動させることで、ベッド10全体を所定方向Atに横移動させることが可能となる。
【0129】
また、ヘッドボード11h等、ベッド10の後端部に対し所定方向Atの力を加えた場合、2つのメカナムホイール21R,21Lが横移動のブレーキになると考えられる。この場合、2つのメカナムホイール21R,21Lを支点とした旋回動作、つまり第1旋回動作が行われることになる。すなわち、この第1旋回動作は、搬送者100をベッド10の側方に回り込ませることなく実現可能な旋回動作である。ゆえに、その第1旋回動作を契機とした第2旋回動作もまた、搬送者100を移動させることなく開始させることができる。この第2旋回動作は、モータ22R,22Lを介してメカナムホイール21R,21Lを作動させることで行われるものであるから、搬送者100に過度な力を求めることなく、メカナムホイール21R,21Lによる横移動のアシストを開始させることができる。
【0130】
このように、本実施形態によると、搬送者100を移動させることなく、メカナムホイール21R,21Lによる横移動のアシストを開始させることが可能になる。また、第1旋回動作にはスイッチ操作が求められないため、より直感的な操作を通じてベッド10の横移動をアシストさせることができる。
【0131】
また、
図2に例示したように2つのメカナムホイール21R,21Lの間に慣性センサ5を配置することで、2つのメカナムホイール21R,21Lの重心と、慣性センサ5とを近接させることができる。これにより、2つのメカナムホイール21R,21Lの重心を回転中心P1とした第1旋回動作が行われるときに、その回転中心P1まわりの角速度を精度よく検出することができる。これにより、横移動のアシストをより適切に行うことができる。
【0132】
また、
図10のステップS17に際して説明したように、第1旋回動作と第2旋回動作とで旋回角度の大きさを一致させることで、各旋回動作によって生じるベッド10の傾きを精度よく相殺し、ベッド10の姿勢を略一定に保つ上で有利になる。これにより、横移動のアシストをより適切に行うことができる。
【0133】
また、
図10のステップS13に例示したように、回転数の大きさに基づいた判定を行うことで、搬送者100が横移動を求めているか、あるいは、斜め移動を求めているかを適切に判断し、ベッド10の横移動をより適切にアシストすることが可能になる。
【0134】
また、
図9を用いて説明したように、第3旋回動作においては、ベッド3を第2の所定方向Auに横移動させるような推進力が発揮される。ここで、搬送者100がベッド10の後端部(例えばヘッドボード11h)を支持している場合、前述の如き推進力を発揮させることで、搬送者100を支点(回転中心P3)としかつベッド10の前端部を旋回させるような動作が実現される。ベッド10に後側に位置する搬送者100を支点としたことで、ベッド10を壁面に沿わせた状況下にあっても、ベッド10と壁面との衝突を招くことなく、ベッド10の横移動をアシストすることが可能になる。
【0135】
また、
図10のステップS14および
図12のステップS21に例示したように、第2旋回動作および第3旋回動作をそれぞれ有効とするか無効とするかを個別に切り替えることができる。これにより、多岐にわたるニーズに対応させると同時に、搬送者100による誤操作を抑制する上でも有利になる。
【0136】
<他の実施形態>
前記実施形態では、引張バネ75を用いたサスペンションが例示されていたが、本開示は、引張バネ75には限定されない。例えば、キャスタ14を床面に押し付けるように伸長する圧縮バネを用いてサスペンションを構成してもよい。
【0137】
また、前記実施形態では、旋回角度θおよび移動距離Lbに基づいて第1および第2モータ22R,22Lそれぞれの回転量が決定されるように構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。以下に示す変形例(1)および(2)のように構成することもできる。
【0138】
-第2旋回動作の変形例(1)-
例えば、旋回角度θおよび移動距離Lbに基づいて第1および第2モータ22R,22Lそれぞれの回転量を決定する代わりに、各回転量の大きさを一定量としてもよい。この場合、各回転量の符号(つまり回転方向)については、旋回角度θの正負に応じて変更されるように構成される。
【0139】
そのように構成した場合、制御装置4は、第2旋回動作の実行に際し、第1旋回動作における後輪14Bの移動距離にかかわらず、第2旋回動作における前輪14Fの移動量が一定量となるように2つのメカナムホイール21R,21Lをそれぞれ作動させることになる。この場合、第2旋回動作の実行時に、搬送者100がベッド10の左端部を押し込みつつ右端部を引き込んだり、ベッド10の左端部を引き込みつつ右端部を押し込んだりすることで、ベッド10の姿勢を適宜コントロールすることができる。
【0140】
-第2旋回動作の変形例(2)-
図13は、第2旋回動作の変形例について説明するための図である。
図13に示すように、第1旋回動作におけるヨー軸Ozまわりの角速度の推移を制御装置4に記憶するとともに、その記憶内容に基づいて各モータ22R,22Lを制御してもよい。
【0141】
この場合、制御装置4は、第2旋回動作に際し、第1旋回動作における角速度と同じ大きさであって、かつ、その符号を正負反転させた角速度を実現するように第1および第2モータ22R,22Lそれぞれを作動させることになる。このように構成することで、前記実施形態と同様に好適な第2旋回動作を実現することができる。
【符号の説明】
【0142】
1 搬送補助装置
14 キャスタ
14F 前輪
14B 後輪
2 モータ付メカナムホイール
21R 第1のメカナムホイール(メカナムホイール)
21L 第2のメカナムホイール(メカナムホイール)
22R 第1モータ(モータ)
22L 第2モータ(モータ)
22b エンコーダ(第2センサ)
4 制御装置
5 慣性センサ(第1センサ)
8 操作スイッチ
10 医療用ベッド(対象物)
100 搬送者
At 所定方向
Au 第2の所定方向
Oz ヨー軸
P1 支点(回転中心)
P2 支点(回転中心)
Δv1 第1閾値
θ 旋回角度