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特開2024-56469設計支援システム、設計支援方法及び設計支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056469
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】設計支援システム、設計支援方法及び設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20240416BHJP
   F24F 11/63 20180101ALI20240416BHJP
   G06F 111/06 20200101ALN20240416BHJP
【FI】
G06F30/20
F24F11/63
G06F111:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163366
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小山 兼司
(72)【発明者】
【氏名】中澤 祥映
(72)【発明者】
【氏名】横瀬 清識
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 正史
(72)【発明者】
【氏名】汐崎 梨紗
(72)【発明者】
【氏名】布川 賢一
【テーマコード(参考)】
3L260
5B146
【Fターム(参考)】
3L260BA75
3L260EA22
5B146AA21
5B146DC01
5B146DC04
5B146DJ11
5B146DL01
5B146DL08
(57)【要約】
【課題】空気調和システムの設計効率を向上させる。
【解決手段】複数の部品が組み合わされた空気調和システムを設計するための設計支援システムであって、前記設計支援システムが有する制御部は、前記空気調和システムの各部品の種別を取得し、前記空気調和システムの性能指標に影響を与える因子を算出するための複数のモデルの一部に、取得した前記種別を割り当てることで前記複数のモデルを動作させ、前記複数のモデルにより算出された因子に基づき、前記空気調和システムの性能指標を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品が組み合わされた空気調和システムを設計するための設計支援システムであって、
前記設計支援システムが有する制御部は、
前記空気調和システムの各部品の種別を取得し、
前記空気調和システムの性能指標に影響を与える因子を算出するための複数のモデルの一部に、取得した前記種別を割り当てることで前記複数のモデルを動作させ、
前記複数のモデルにより算出された因子に基づき、前記空気調和システムの性能指標を算出する、
設計支援システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記空気調和システムの各部品の種別を取得した場合に、各部品の種別に応じたパラメータを読み出し、対応する前記一部のモデルに割り当てる、請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記各部品の種別に応じたパラメータが格納されたデータベースを参照することで、各部品の種別に応じたパラメータを読み出す、請求項2に記載の設計支援システム。
【請求項4】
前記各モデルには、
前記空気調和システムの冷凍サイクル性能を算出するモデル、
前記空気調和システムの送風性能を算出するモデル、
前記空気調和システムの振動を算出するモデル、
前記空気調和システムの放熱器サイズを算出するモデル、
前記空気調和システムのファン騒音または圧縮機騒音を算出するモデル、
前記空気調和システムのコストを算出するモデル、
前記空気調和システムのインバータ損失を算出するモデル、
のうちの少なくとも1つが含まれる、請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項5】
前記空気調和システムの性能指標には、
前記空気調和システムのコスト、または、前記空気調和システムの通年エネルギ消費効率が含まれる、請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項6】
前記空気調和システムの性能指標には、
前記空気調和システムの冷房時のエネルギ消費効率及び暖房時のエネルギ消費効率、または、前記空気調和システムの運転音のうちの少なくとも1つが更に含まれる、請求項5に記載の設計支援システム。
【請求項7】
前記制御部は、
部品ごとに1つ以上の種別の入力を受け付け、
受け付けた各部品の種別の組み合わせリストを生成し、
前記種別の組み合わせリストに含まれる全ての組み合わせに対して、前記性能指標を算出し、算出した性能指標から最適な種別の組み合わせを探索する、請求項3に記載の設計支援システム。
【請求項8】
前記制御部は、
算出した前記性能指標に基づいて、前記種別の組み合わせリストから次の前記種別の組み合わせを取得し、次の前記種別の組み合わせに対応する性能指標を算出する処理を、所定の条件を満たすまで繰り返すことで、最適な種別の組み合わせを探索する、請求項7に記載の設計支援システム。
【請求項9】
前記制御部は、
前記所定の条件の入力を受け付け、
入力を受け付けた前記所定の条件を満たした際の種別の組み合わせを、前記最適な種別の組み合わせとして出力する、請求項8に記載の設計支援システム。
【請求項10】
前記制御部は、
多目的遺伝的アルゴリズム、多目的焼きなまし法、または、実験計画法を用いることにより、前記最適な種別の組み合わせを探索する、請求項8に記載の設計支援システム。
【請求項11】
複数の部品が組み合わされた空気調和システムを設計するための設計支援システムの制御部が、
前記空気調和システムの各部品の種別を取得する工程と、
前記空気調和システムの性能指標に影響を与える因子を算出するための複数のモデルの一部に、取得した前記種別を割り当てることで前記複数のモデルを動作させる工程と、
前記複数のモデルにより算出された因子に基づき、前記空気調和システムの性能指標を算出する工程と
を実行する設計支援方法。
【請求項12】
複数の部品が組み合わされた空気調和システムを設計するための設計支援システムの制御部に、
前記空気調和システムの各部品の種別を取得する工程と、
前記空気調和システムの性能指標に影響を与える因子を算出するための複数のモデルの一部に、取得した前記種別を割り当てることで前記複数のモデルを動作させる工程と、
前記複数のモデルにより算出された因子に基づき、前記空気調和システムの性能指標を算出する工程と
を実行させるための設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設計支援システム、設計支援方法及び設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和システム等のように、複数の部品(圧縮機、熱交換器等)が組み合わされたシステムを設計する場合、例えば、各部品の解析、各部品の作り込み→システムの試作→実機試験による試作システムの性能評価、といった手順で進められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/147104号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、上記手順によれば、試作システムでしかわからない問題が試作後に発覚し、試作システムの性能評価が、目標とする評価結果に至らなかった場合に、例えば、各部品の解析からやり直す必要があり、手戻りが大きい。
【0005】
本開示は、空気調和システムの設計効率を向上させる設計支援システム、設計支援方法及び設計支援プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、複数の部品が組み合わされた空気調和システムを設計するための設計支援システムであって、
前記設計支援システムが有する制御部は、
前記空気調和システムの各部品の種別を取得し、
前記空気調和システムの性能指標に影響を与える因子を算出するための複数のモデルの一部に、取得した前記種別を割り当てることで前記複数のモデルを動作させ、
前記複数のモデルにより算出された因子に基づき、前記空気調和システムの性能指標を算出する。
【0007】
本開示の第1の態様によれば、空気調和システムの設計効率を向上させる設計支援システムを提供することができる。
【0008】
また、本開示の第2の態様は、第1の態様に記載の設計支援システムであって、
前記制御部は、
前記空気調和システムの各部品の種別を取得した場合に、各部品の種別に応じたパラメータを読み出し、対応する前記一部のモデルに割り当てる。
【0009】
また、本開示の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の設計支援システムであって、
前記制御部は、
前記各部品の種別に応じたパラメータが格納されたデータベースを参照することで、各部品の種別に応じたパラメータを読み出す。
【0010】
また、本開示の第4の態様は、第1乃至第3のいずれかの態様に記載の設計支援システムであって、
前記各モデルには、
前記空気調和システムの冷凍サイクル性能を算出するモデル、
前記空気調和システムの送風性能を算出するモデル、
前記空気調和システムの振動を算出するモデル、
前記空気調和システムの放熱器サイズを算出するモデル、
前記空気調和システムのファン騒音または圧縮機騒音を算出するモデル、
前記空気調和システムのコストを算出するモデル、
前記空気調和システムのインバータ損失を算出するモデル、
のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0011】
また、本開示の第5の態様は、第1乃至第4のいずれかの態様に記載の設計支援システムであって、
前記空気調和システムの性能指標には、
前記空気調和システムのコスト、または、前記空気調和システムの通年エネルギ消費効率が含まれる。
【0012】
また、本開示の第6の態様は、第5の態様に記載の設計支援システムであって、
前記空気調和システムの性能指標には、
前記空気調和システムの冷房時のエネルギ消費効率及び暖房時のエネルギ消費効率、または、前記空気調和システムの運転音のうちの少なくとも1つが更に含まれる。
【0013】
また、本開示の第7の態様は、第3の態様に記載の設計支援システムであって、
前記制御部は、
部品ごとに1つ以上の種別の入力を受け付け、
受け付けた各部品の種別の組み合わせリストを生成し、
前記種別の組み合わせリストに含まれる全ての組み合わせに対して、前記性能指標を算出し、算出した性能指標から最適な種別の組み合わせを探索する。
【0014】
また、本開示の第8の態様は、第7の態様に記載の設計支援システムであって、
前記制御部は、
算出した前記性能指標に基づいて、前記種別の組み合わせリストから次の前記種別の組み合わせを取得し、次の前記種別の組み合わせに対応する性能指標を算出する処理を、所定の条件を満たすまで繰り返すことで、最適な種別の組み合わせを探索する。
【0015】
また、本開示の第9の態様は、第8の態様に記載の設計支援システムであって、
前記制御部は、
前記所定の条件の入力を受け付け、
入力を受け付けた前記所定の条件を満たした際の種別の組み合わせを、前記最適な種別の組み合わせとして出力する。
【0016】
また、本開示の第10の態様は、第8の態様に記載の設計支援システムであって、
前記制御部は、
多目的遺伝的アルゴリズム、多目的焼きなまし法、または、実験計画法を用いることにより、前記最適な種別の組み合わせを探索する。
【0017】
また、本開示の第11の態様は、設計支援方法であって、
複数の部品が組み合わされた空気調和システムを設計するための設計支援システムの制御部が、
前記空気調和システムの各部品の種別を取得する工程と、
前記空気調和システムの性能指標に影響を与える因子を算出するための複数のモデルの一部に、取得した前記種別を割り当てることで前記複数のモデルを動作させる工程と、
前記複数のモデルにより算出された因子に基づき、前記空気調和システムの性能指標を算出する工程とを実行する。
【0018】
本開示の第11の態様によれば、空気調和システムの設計効率を向上させる設計支援方法を提供することができる。
【0019】
また、本開示の第12の態様は、設計支援プログラムであって、
複数の部品が組み合わされた空気調和システムを設計するための設計支援システムの制御部に、
前記空気調和システムの各部品の種別を取得する工程と、
前記空気調和システムの性能指標に影響を与える因子を算出するための複数のモデルの一部に、取得した前記種別を割り当てることで前記複数のモデルを動作させる工程と、
前記複数のモデルにより算出された因子に基づき、前記空気調和システムの性能指標を算出する工程とを実行させる。
【0020】
本開示の第12の態様によれば、空気調和システムの設計効率を向上させる設計支援プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】設計支援システムのシステム構成の一例を示す第1の図である。
図2】設計支援システムを構成する装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3A】設計支援システムにおいて用いられる情報の一例を示す第1の図である。
図3B】設計支援システムにおいて用いられる情報の一例を示す第2の図である。
図3C】設計支援システムにおいて用いられる情報の一例を示す第3の図である。
図3D】設計支援システムにおいて用いられる情報の一例を示す第4の図である。
図4】設計支援画面の一例を示す図である。
図5】設計支援装置の機能構成の一例を示す図である。
図6】冷凍サイクル算出モデルの概要を説明するための図である。
図7】インバータ損失算出モデルの概要を説明するための図である。
図8】送風性能算出モデル及びファン騒音算出モデルの概要を説明するための図である。
図9】配管振動算出モデルの概要を説明するための図である。
図10】放熱器サイズ算出モデルの概要を説明するための図である。
図11】圧縮機騒音算出モデルの概要を説明するための図である。
図12】コスト算出モデルの概要を説明するための図である。
図13】多目的最適化処理の流れを示すフローチャートである。
図14】設計支援システムのシステム構成の一例を示す第2の図である。
図15】最適化部による処理結果の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0023】
[第1の実施形態]
<設計支援システムのシステム構成>
はじめに、第1の実施形態に係る設計支援システムのシステム構成について説明する。図1は、設計支援システムのシステム構成の一例を示す第1の図である。図1に示すように、設計支援システム100は、設計支援装置110と操作端末120とを有する。設計支援システム100において、設計支援装置110と操作端末120とは、例えば、不図示のネットワークを介して通信可能に接続される。
【0024】
設計支援装置110には、設計支援プログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、設計支援装置110は、説明変数取得部111、シミュレーション部112、目的変数出力部113として機能する。
【0025】
説明変数取得部111は、複数の部品を組み合わせて空気調和システムを構築する際、操作端末120より、空気調和システムを構成する各部品の種別及び運転条件を含む説明変数を受信する。また、説明変数取得部111は、受信した説明変数を、シミュレーション部112に入力する。
【0026】
シミュレーション部112は、説明変数取得部111により入力された説明変数に基づいて、空気調和システムの性能指標に影響を与える因子を算出するための複数のモデルを動作させ、空気調和システムの性能指標を算出する。なお、シミュレーション部112が動作させる複数のモデルは、モデル格納部116に格納され、また、複数のモデルを動作させる際に設定されるパラメータは、パラメータ一覧格納部117(データベースの一例)に格納されているものとする。
【0027】
また、シミュレーション部112は、性能指標の算出結果を、目的変数として、目的変数出力部113に出力する。
【0028】
目的変数出力部113は、シミュレーション部112により出力された目的変数を、操作端末120に送信する。
【0029】
操作端末120は、設計支援装置110のシミュレーション部112において複数のモデルを動作させる際に用いられる各種情報について、入力を受け付けるとともに、設計支援画面を表示する。具体的には、操作端末120は、入力部121及び表示部122として機能する。
【0030】
入力部121は、種別一覧格納部114に格納された、空気調和システムを構成する各部品の種別の一覧を取得し、ユーザにより選択された種別の選択指示を受け付ける。また、入力部121は、運転条件一覧格納部115に格納された、空気調和システムの運転条件の一覧を取得し、ユーザにより選択された運転条件の選択指示を受け付ける。
【0031】
また、入力部121は、ユーザが空気調和システムを設計するにあたって入力する、目標スペックを受け付ける。
【0032】
更に、入力部121は、選択指示された各部品の種別及び運転条件を、説明変数として、設計支援装置110に送信する。
【0033】
表示部122は、入力部121が、説明変数を設計支援装置110に送信したことに応じて設計支援装置110より目的変数を受信する。また、表示部122は、受信した目的変数に含まれる、空気調和システムの性能指標の算出結果を、説明変数及び目標スペックと対応付けることで設計支援画面を生成し、生成した設計支援画面をユーザに表示する。
【0034】
このように、第1の実施形態に係る設計支援システム100では、空気調和システムの試作、実機試験による試作システムの性能評価を行うことなく、事前に、シミュレーションにより空気調和システムの性能指標を算出する。これにより、空気調和システムを試作して実機試験を行ったが目標とする評価結果が得られない、といった事態が生じるのを回避することができる。
【0035】
この結果、第1の実施形態に係る設計支援システム100によれば、空気調和システムの設計効率を向上させることができる。
【0036】
<設計支援システムを構成する装置のハードウェア構成>
次に、設計支援システムを構成する装置(設計支援装置110、操作端末120)のハードウェア構成について説明する。図2は、設計支援システムを構成する装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0037】
図2に示すように、設計支援装置110は、プロセッサ201、メモリ202、補助記憶装置203、通信装置204、ドライブ装置205を有する。なお、設計支援装置110の各ハードウェアは、バス206を介して相互に接続されている。
【0038】
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit)等の各種演算デバイスを有する。プロセッサ201は、各種プログラム(例えば、設計支援プログラム等)をメモリ202上に読み出して実行する。
【0039】
メモリ202は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶デバイスを有する。プロセッサ201とメモリ202とは、いわゆるコンピュータ(「制御部」ともいう)を形成し、プロセッサ201が、メモリ202上に読み出した各種プログラムを実行することで、当該コンピュータは上記各機能を実現する。
【0040】
補助記憶装置203は、各種プログラム(モデル)や、各種プログラムがプロセッサ201によって実行される際に用いられる各種情報を格納する。なお、種別一覧格納部114、運転条件一覧格納部115、モデル格納部116、パラメータ一覧格納部117は、補助記憶装置203において実現される。
【0041】
通信装置204は、不図示のネットワークに接続し、操作端末120と通信するためのデバイスである。ドライブ装置205は記録媒体207をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体207には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体207には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0042】
なお、補助記憶装置203にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体207がドライブ装置205にセットされ、該記録媒体207に記録された各種プログラムがドライブ装置205により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置203にインストールされる各種プログラムは、通信装置204を介してネットワークからダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0043】
また、図2に示すように、操作端末120は、プロセッサ211、メモリ212、補助記憶装置213、操作装置214、表示装置215、通信装置216を有する。なお、操作端末120の各ハードウェアは、バス217を介して相互に接続されている。
【0044】
図2に示すように、操作端末120のハードウェア構成は、設計支援装置110のハードウェア構成と概ね同じであるため、ここでは、設計支援装置110との相違点を中心に説明する。
【0045】
操作装置214は、ユーザが各部品の種別の選択指示、運転条件の選択指示、目標スペック等を入力する際に用いるデバイスである。
【0046】
表示装置215は、ユーザが各部品の種別の選択指示、運転条件の選択指示、目標スペック等を入力する際の入力画面や、設計支援画面等を表示するためのデバイスである。
【0047】
<設計支援システムにおいて用いられる情報>
次に、設計支援システム100において用いられる情報の一例について説明する。
【0048】
(1)種別一覧及び運転条件一覧
はじめに、種別一覧格納部114に格納された種別一覧と、運転条件一覧格納部115に格納された運転条件一覧について説明する。
【0049】
図3Aは、設計支援システムにおいて用いられる情報の一例を示す第1の図である。図3Aにおいて、符号310は、種別一覧格納部114に格納される種別一覧の具体例を示している。符号310に示すように、種別一覧には、情報の項目として、"部品名"、"種別1"、"種別2"、"種別3"等が含まれる。
【0050】
"部品名"には、空気調和システムを構成する部品の名称が格納される。"種別1"、"種別2"、"種別3"、・・・等には、各部品の種別が格納される。各部品の種別とは、例えば、部品名=インバータの場合、Inv1、Inv2、Inv3を指す。Inv1のインバータと、Inv2のインバータと、Inv3のインバータとは、互いに異なる諸元情報を有するインバータである。
【0051】
なお、符号310に示す種別一覧の場合、部品として、5種類の部品が格納された例を示しているが、種別一覧に格納される部品の数は、5種類に限定されない。また、符号310に示す部品一覧の場合、部品名として、「インバータ」、「圧縮機」、「熱交換器」、「筐体」、「室外ファン」が格納された例を示しているが、これらの部品名以外の部品名が格納されてもよい。あるいは、これらの部品名のいずれかは種別一覧に含まれていなくてもよい。
【0052】
また、符号310に示す種別一覧の場合、各部品が、いずれも、3つの種別を有する例を示しているが、各部品が有する種別の数は3つに限定されない。また、部品ごとに有する種別の数は異なっていてもよい。
【0053】
図3Aにおいて、符号320は、運転条件一覧格納部115に格納される運転条件一覧の具体例を示している。符号320に示すように、運転条件一覧には、情報の項目として、"運転項目"、"条件1"、"条件2"、"条件3"等が含まれる。
【0054】
"運転項目"には、空気調和システムの運転の際に制御すべき項目が格納される。"条件1"、"条件2"、"条件3"、・・・等には、空気調和システムの運転の際の制御目標値が格納される。
【0055】
なお、符号320に示す運転条件一覧の場合、運転項目として、2種類の項目が格納された例を示しているが、運転条件一覧に格納される運転項目の数は、2種類に限定されない。また、符号320に示す運転条件一覧の場合、運転項目として、「室外ファン回転数」、「トルク制御量」が格納された例を示しているが、これらの運転項目以外の運転項目が格納されてもよい。あるいは、これらの運転項目のいずれかは運転条件一覧に含まれていなくてもよい。
【0056】
また、符号320に示す運転条件一覧の場合、各運転項目が、いずれも、3種類の条件を有する例を示しているが、各運転項目が有する条件の数は3種類に限定されない。また、運転項目ごとに条件の数は異なっていてもよい。
【0057】
(2)モデル
次に、モデル格納部116に格納されたモデルについて説明する。図3Bは、設計支援システムにおいて用いられる情報の一例を示す第2の図である。図3Bにおいて、符号330は、モデル格納部116に格納されるモデルの一覧を示している。符号330に示すように、モデルの一覧には、情報の項目として、"用途"、"モデル名"が含まれる。
【0058】
"用途"には、シミュレーション部112において用いられるモデルの用途が格納される。"モデル名"には、シミュレーション部112において用いられるモデルの名称が格納される。
【0059】
なお、符号330に示すモデルの一覧の場合、8個のモデルが格納された例を示しているが、シミュレーション部112において用いられるモデルの数は、8個に限定されない。また、符号330に示すモデルの一覧の場合、「冷凍サイクル算出モデル」、「インバータ損失算出モデル」、「送風性能算出モデル」、「配管振動算出モデル」、・・・、「コスト算出モデル」が格納された例を示している。しかしながら、シミュレーション部112では、これらのモデル以外のモデルが用いられてもよい。あるいは、これらのモデルのうちのいずれかは、シミュレーション部112において用いられなくてもよい。
【0060】
(3)パラメータ一覧
次に、パラメータ一覧格納部117に格納されたパラメータ一覧について説明する。図3Cは、設計支援システムにおいて用いられる情報の一例を示す第3の図である。図3Cにおいて、符号340は、パラメータ一覧格納部117に格納されるパラメータ一覧の具体例を示している。符号340に示すように、パラメータ一覧には、情報の項目として、"部品名"、"種別"、"冷凍サイクル算出モデル"、"インバータ提供算出モデル"、"送風性能算出モデル"、"配管振動算出モデル"が含まれる。更に、パラメータ一覧には、情報の項目として、"放熱器サイズ算出モデル"、"ファン騒音算出モデル"、"圧縮機騒音算出モデル"、"コスト算出モデル"が含まれる。
【0061】
"部品名"には、空気調和システムを構成する各部品の名称が格納される。"種別"には、対応する部品が有する全ての種別が格納される。
【0062】
"冷凍サイクル算出モデル"には、シミュレーション部112において冷凍サイクル算出モデルを動作させる際に設定されるパラメータであって、部品名及び種別が特定されることで一意に定まるパラメータである。例えば、部品名=インバータとして、種別=Inv1が選択された場合、シミュレーション部112では、インバータに関連するパラメータとして、パラメータ1_1を読み出して設定したうえで冷凍サイクル算出モデルを動作させる。
【0063】
以下、"インバータ損失算出モデル"から"コスト算出モデル"までも、同様に、部品名及び種別が特定されることで、シミュレーション部112では、対応するパラメータを読み出して設定したうえで各モデルを動作させる。
【0064】
なお、図3Cの例では、説明の簡略化のため、各部品名及び各種別に対して、モデルごとに1種類のパラメータが設定される場合について示した。しかしながら、パラメータの設定方法はこれに限定されない。例えば、モデルによっては、複数の部品名及び複数の種別の組み合わせに対して、1種類のパラメータが設定されてもよい。
【0065】
(4)組み合わせリスト及び目標スペック
次に、ユーザにより選択指示される各部品の種別及び運転条件の組み合わせリスト、及び、ユーザにより入力される目標スペックについて説明する。図3Dは、設計支援システムにおいて用いられる情報の一例を示す第4の図である。
【0066】
図3Dにおいて、符号350は、組み合わせリストの具体例を示している。符号350に示すように、組み合わせリストには、情報の項目として、"番号"、"インバータ"、"圧縮機"、"熱交換器"、"筐体"、"室外ファン"、"室外ファン回転数"、"トルク制御量"が含まれる。
【0067】
"番号"には、各部品の種別及び運転条件の組み合わせを識別する番号が格納される。"インバータ"~"室外ファン"には、ユーザにより選択指示された各部品の種別の組み合わせが格納される。"室外ファン回転数"、"トルク制御量"には、各運転項目についてユーザにより選択指示された運転条件の組み合わせが格納される。
【0068】
図3Dの例は、番号="1"により識別される組み合わせが、
・インバータの種別="Inv1"、
・圧縮機の種別="CompA"、
・熱交換器の種別="HeX1"、
・筐体の種別="S1"、
・室外ファンの種別="F1"、
・室外ファン回転数="R2"、
・トルク制御量="T3"であることを示している。
【0069】
また、図3Dにおいて、符号360は、目標スペックの具体例を示している。符号360に示すように、目標スペックには、情報の項目として、"コスト"、"冷房COP及び暖房COP"、"APF"、"運転音"が含まれる。
【0070】
"コスト"には、空気調和システムを構築するうえで必要なコストの目標値が入力される。"冷房COP及び暖房COP"には、空気調和システムが実現すべき冷房時のCOP及び暖房時のCOPの目標値が格納される。なお、COPとは、Coefficient Of Performanceの略称であり、エネルギ消費効率を指す。冷房時のCOP(冷房COPと称す)は、冷房能力(kw)/冷房消費電力により算出される。また、暖房時のCOP(暖房COPと称す)は、暖房能力(kw)/暖房消費電力により算出される。
【0071】
"APF"には、空気調和システムを設計するにあたって、目標とするAPFが入力される。なお、APFとは、Annual Performance Factorの略称であり、通年エネルギ消費効率を指す。通年エネルギ消費効率は、(1年間で必要な冷暖房能力の総和)/(期間消費電力量)により算出される。
【0072】
"運転音"には、空気調和システムを設計するにあたって、目標とする運転音が入力される。運転音にはファン騒音と圧縮機騒音とが含まれる。
【0073】
このように、操作端末120において入力される目標スペックには複数の項目が含まれ、設計支援装置110では、空気調和システムの性能指標の算出結果として、当該複数の項目に対応する算出結果を出力する。つまり、設計支援システム100は、空気調和システムが目標スペックに含まれる複数の項目を充足するように、各部品の種別及び運転条件を最適化する、「多目的最適化処理」を実行する。
【0074】
なお、符号360に示す目標スペックの場合、4つの性能指標について示したが、空気調和システムを設計する際に用いる性能指標の数は、4つに限定されない。また、符号360に示す目標スペックの場合、「コスト」、「冷房COP及び暖房COP」、「APF」、「運転音」を用いる例を示しているが、空気調和システムを設計する際に用いるこれらの性能指標以外の性能指標を用いてもよい。あるいは、これらの性能指標のいずれかは用いなくてもよい。
【0075】
<設計支援画面>
次に、操作端末120により表示される設計支援画面の具体例について説明する。図4は、設計支援画面の一例を示す図である。
【0076】
図4に示すように、設計支援画面400には、目標スペック表示領域410と、多目的最適化表示領域420とを有する。
【0077】
目標スペック表示領域410には、ユーザにより入力された目標スペックが表示される。多目的最適化表示領域420には、ユーザにより選択指示された各部品の種別及び運転条件(つまり、組み合わせリスト)と、設計支援装置110より受信した、性能指標の算出結果とが表示される。
【0078】
なお、図4の例は、ユーザにより選択指示された各部品の種別及び運転条件として、100通りの組み合わせが入力されたことを示している。また、図4の例は、符号421に示す各部品の種別及び運転条件の組み合わせの場合に、性能指標の算出結果が、いずれの項目においても、目標スペックを充足したことを示している。
【0079】
<設計支援装置の機能構成>
次に、設計支援装置110の機能構成の詳細について説明する。図5は、設計支援装置の機能構成の一例を示す図である。上述したように、設計支援装置110は、説明変数取得部111、シミュレーション部112、目的変数出力部113として機能する。
【0080】
このうち、説明変数取得部111は、図5に示すように、更に、
・種別取得部511、
・運転条件取得部512、
を有する。また、シミュレーション部112は、図5に示すように、更に、
・冷凍サイクル算出モデル521(インバータ損失算出モデル531を含む)、
・送風性能算出モデル522、
・配管振動算出モデル523、
・放熱器サイズ算出モデル524、
・ファン騒音算出モデル525、
・圧縮機騒音算出モデル526、
・コスト算出モデル527、
・冷房COP/暖房COP算出部528、
・APF算出部529、
・運転音算出部530、
を有する。
【0081】
種別取得部511は、操作端末120より取得した説明変数に含まれる各部品の種別をコスト算出モデル527に通知する。また、種別取得部511は、操作端末120より取得した説明変数に含まれる各部品の種別のうち、インバータの種別、圧縮機の種別、熱交換器の種別を、冷凍サイクル算出モデル521に通知する。なお、種別取得部511は、圧縮機の種別を、更に圧縮機騒音算出モデル526にも通知する。
【0082】
また、種別取得部511は、操作端末120より取得した説明変数のうち、筐体の種別、室外ファンの種別を送風性能算出モデル522に通知する。なお、種別取得部511は、筐体の種別を、更に圧縮機騒音算出モデル526にも通知する。
【0083】
運転条件取得部512は、操作端末120より取得した説明変数に含まれる運転条件のうち、室外ファン回転数を送風性能算出モデル522に通知する。また、運転条件取得部512は、操作端末120より取得した説明変数に含まれる運転条件のうち、トルク制御量を冷凍サイクル算出モデル521に通知する。
【0084】
冷凍サイクル算出モデル521には、種別取得部511より通知されたインバータの種別、圧縮機の種別、熱交換器の種別により特定されるパラメータが、パラメータ一覧格納部117より読み出されて設定される。また、冷凍サイクル算出モデル521は、設定されたパラメータのもと、運転条件取得部512より通知されたトルク制御量及び送風性能算出モデル522より通知された風量/軸動力を用いて動作することで、冷凍サイクルをシミュレーションする。これにより、冷凍サイクル算出モデル521は冷凍サイクル性能を算出する。具体的には、冷凍サイクル算出モデル521は、冷凍サイクル性能として、圧縮比、圧縮機回転数、冷房能力、冷房消費電力、暖房能力、暖房消費電力、期間消費電力量等を算出する。
【0085】
なお、冷凍サイクル算出モデル521には、更に、インバータ損失算出モデル531が含まれる。インバータ損失算出モデル531は、冷凍サイクル算出モデル521による冷凍サイクルのシミュレーション中に、冷凍サイクル算出モデル521により算出される圧縮機電流及び圧縮機電力に基づいて、インバータ損失を算出する。
【0086】
送風性能算出モデル522には、種別取得部511より通知された筐体の種別及び室外ファンの種別により特定されるパラメータが、パラメータ一覧格納部117より読み出されて設定される。また、送風性能算出モデル522は、設定されたパラメータのもと、運転条件取得部512より通知された室外ファンの回転数を用いて動作することで、送風性能を算出する。具体的には、送風性能算出モデル522は、送風性能として、風量と軸動力とを算出し、冷凍サイクル算出モデル521に通知する。また、送風性能算出モデル522は、送風性能として、放熱器前面風速を算出し、放熱器サイズ算出モデル524に通知する。更に、送風性能算出モデル522は、送風性能として算出した風量を、室外ファン回転数、グリル種、ファン種とともに、ファン騒音算出モデル525に通知する。
【0087】
配管振動算出モデル523は、冷凍サイクル算出モデル521による冷凍サイクルのシミュレーション中に、冷凍サイクル算出モデル521により、
・圧縮比、
・圧縮機回転数、
・トルク制御量、
を取得し、配管振動を算出するとともに配管振動を抑えるためのパテ及び錘を特定する。また、配管振動算出モデル523は、特定したパテ及び錘をコスト算出モデル527に通知する。
【0088】
放熱器サイズ算出モデル524は、冷凍サイクル算出モデル521による冷凍サイクルのシミュレーション中にインバータ損失算出モデル531より算出されるインバータ損失を取得する。また、放熱器サイズ算出モデル524は、送風性能算出モデル522より通知された放熱器前面風速を取得する。
【0089】
更に、放熱器サイズ算出モデル524は、取得したインバータ損失、取得した放熱器前面風速等を用いて放熱器サイズを算出し、算出した放熱器サイズをコスト算出モデル527に通知する。
【0090】
ファン騒音算出モデル525は、送風性能算出モデル522より通知された風量、室外ファン回転数、グリル種、ファン種に基づいて、ファン騒音を算出する。また、ファン騒音算出モデル525は、算出したファン騒音を運転音算出部530に通知する。
【0091】
圧縮機騒音算出モデル526には、種別取得部511より通知された圧縮機の種別、筐体の種別により特定されるパラメータが、パラメータ一覧格納部117より読み出されて設定される。また、圧縮機騒音算出モデル526は、設定されたパラメータのもと、冷凍サイクル算出モデル521より通知された圧縮比、圧縮機回転数で圧縮機を動作させた場合の圧縮機騒音を算出する。また、圧縮機騒音算出モデル526は、算出した圧縮機騒音を運転音算出部530に通知する。
【0092】
コスト算出モデル527は、種別取得部511より通知される各部品の種別に基づいて各部品のコストを特定する。また、コスト算出モデル527は、配管振動算出モデル523より通知されるパテ及び錘に基づいてパテ及び錘コストを特定する。また、コスト算出モデル527は、放熱器サイズ算出モデル524より通知される放熱器サイズに基づいて、放熱器コストを特定する。更に、コスト算出モデル527は、特定した各部品のコスト、パテ及び錘コスト、放熱器コストを和算することで、空気調和システムを構築するうえで必要なコストを算出し、目的変数出力部113に通知する。
【0093】
冷房COP/暖房COP算出部528は、冷凍サイクル算出モデル521による冷凍サイクルのシミュレーション中に、冷凍サイクル算出モデル521により算出される冷房消費電力、暖房消費電力に基づいて、冷房COP及び暖房COPを算出する。また、冷房COP/暖房COP算出部528は、算出した冷房COP及び暖房COPを目的変数出力部113に通知する。
【0094】
APF算出部529は、冷凍サイクル算出モデル521による冷凍サイクルのシミュレーション中に、冷凍サイクル算出モデル521により算出される冷房能力、暖房能力、期間消費電力量に基づいて、APFを算出する。また、APF算出部529は、算出したAPFを目的変数出力部113に通知する。
【0095】
運転音算出部530は、ファン騒音算出モデル525より通知されるファン騒音と、圧縮機騒音算出モデル526より通知される圧縮機騒音とに基づいて、空気調和システム全体の運転音を算出する。
【0096】
目的変数出力部113は、
・コスト算出モデル527より通知されたコスト、
・冷房COP/暖房COP算出部528より入力された冷房COP/暖房COP、
・APF算出部529より入力されたAPF、
・運転音算出部530より入力された運転音、
を性能指標の算出結果として、操作端末120に送信する。
【0097】
このように、シミュレーション部112では、空気調和システムの性能指標に影響を与える因子を算出するための複数のモデルの一部に、取得された各部品の種別及び運転条件を割り当てる。そして、シミュレーション部112では、割り当てた各部品の種別に応じたパラメータ及び割り当てた運転条件のもとで当該一部のモデルを動作させる。
【0098】
これにより、シミュレーション部112では、複数のモデルにより算出された因子に基づいて、取得された各部品の種別及び運転条件に対応する、空気調和システムの性能指標を算出することができる。
【0099】
<冷凍サイクル算出モデルの概要>
次に、冷凍サイクル算出モデル521の概要について説明する。図6は、冷凍サイクル算出モデルの概要を説明するための図である。本実施形態において、冷凍サイクル算出モデル521には、冷凍サイクルをシミュレーションするための既知のモデルが用いられるものとする。
【0100】
図6に示すように、冷凍サイクル算出モデル521には、インバータの種別、圧縮機の種別、熱交換器の種別に応じたパラメータが設定される。つまり、冷凍サイクル算出モデル521は、インバータの種別に応じた特性、圧縮機の種別に応じた特性、熱交換器の種別に応じた特性が反映されたシミュレーションが行われるように構成されている。
【0101】
つまり、冷凍サイクル算出モデル521は、空気調和システムの冷媒回路の特性が反映されたシミュレーションが行われるように構成されている。
【0102】
また、冷凍サイクル算出モデル521には、冷凍サイクル制御パラメータが設定されており、冷凍サイクルのシミュレーション中、所定の動作点でのエネルギ効率が最大となるように圧縮機回転数が制御される。また、冷凍サイクル算出モデル521では、中間条件でトルク制御が実行される圧縮機周波数において、トルク制御によりエネルギ効率が悪化することを考慮してシミュレーションが行われるよう構成されている。なお、上述したように、トルク制御量は、運転条件取得部512より通知される。
【0103】
また、冷凍サイクル算出モデル521には、送風性能として風量、軸動力が入力される。つまり、冷凍サイクル算出モデル521は、室外ファンの特性が反映されたシミュレーションが行われるように構成されている。
【0104】
かかる構成のもとで、多目的最適化処理の際に、冷凍サイクル算出モデル521が動作することで、冷凍サイクル算出モデル521では、冷凍サイクル性能として、
・圧縮比、
・圧縮機回転数、
・冷房消費電力、
・暖房消費電力、
・冷房能力、
・暖房能力、
・期間消費電力量、
を算出する。
【0105】
<インバータ損失算出モデルの概要>
次に、インバータ損失算出モデル531の概要について説明する。図7は、インバータ損失算出モデルの概要を説明するための図である。図7に示すように、インバータ損失算出モデル531を生成するにあたっては、予め実験測定値として、
・圧縮機電流(I_out)、
・圧縮機電力(W_out)、
・インバータ損失、
を測定し、当該実験測定値を用いて回帰計算を行うことで、インバータ損失を算出するための近似式の係数をインバータの種別ごとに求めておく。これにより、インバータ損失算出モデル531をインバータの種別ごとに生成することができる。
【0106】
この結果、多目的最適化処理の際に、インバータ損失算出モデル531が動作することで、インバータ損失算出モデル531では、冷凍サイクル算出モデル521により算出された圧縮機電流及び圧縮機電力に基づいて、インバータ損失を算出することができる。
【0107】
<送風性能算出モデル及びファン騒音算出モデルの概要>
次に、送風性能算出モデル522の概要について説明する。図8は、送風性能算出モデル及びファン騒音算出モデルの概要を説明するための図である。
【0108】
上述したように、送風性能算出モデル522は、筐体の種別、室外ファンの種別、室外ファンの回転数を入力とし、室外ファンの回転数、グリル種、ファン種に応じた風量、軸動力、放熱器前面風速を送風性能として出力する。
【0109】
このうち、図8(a)に示すように、風量、放熱器前面風速を出力するにあたっては、送風性能算出モデル522は、以下の手順で生成される。
・室外ファンの種別ごとに特定されるファン種ごと、及び、筐体の種別ごとに特定されるグリル種ごとに、室外ファンの各回転数における、吹出風量と放熱器前面の複数の位置での風速を、CFDにより算出する。なお、CFDとは、Computational Fluid Dynamics(数値流体解析)の略称である。
・吹出風量と放熱器前面の全領域の風速を算出できるよう、多次元回帰式を用いて応答曲面を作成する。
【0110】
なお、多次元回帰式に含まれる係数は、室外ファンの種別と筐体の種別との組み合わせごとに求められる。かかる構成のもとで、多目的最適化処理の際に、送風性能算出モデル522が動作することで、送風性能算出モデル522には、室外ファンの種別と筐体の種別との組み合わせに対応する応答曲面に、室外ファンの各回転数が入力される。これにより、送風性能算出モデル522では、吹出風量と放熱器前面の全領域の風速、風量を算出することができる。
【0111】
また、図8(a)に示すように、軸動力を出力するにあたっては、送風性能算出モデル522は、以下の手順で生成される。
・室外ファンの種別ごとに特定されるファン種ごとに、室外ファンの各回転数における軸動力を算出する理論式を生成する。
【0112】
かかる構成のもとで、多目的最適化処理の際に、送風性能算出モデル522が動作することで、送風性能算出モデル522には、室外ファンの種別ごとに生成した理論式に、室外ファンの各回転数が入力される。これにより、送風性能算出モデル522では、軸動力を算出することができる。
【0113】
また、上述したように、ファン騒音算出モデル525は、風量、室外ファンの回転数、グリル種、ファン種を入力とし、ファン騒音を出力する。
【0114】
図8(b)に示すように、ファン騒音を出力するにあたっては、ファン騒音算出モデル525は、以下の手順で生成される。
・室外ファンの種別ごとに特定されるファン種ごと、及び、筐体の種別ごとに特定されるグリル種ごとに、室外ファンの各回転数における、複数の位置でのファン騒音を、CFDにより算出する。
・各位置でのファン騒音を算出できるよう、多次元回帰式を用いて応答曲面を作成する。
【0115】
なお、多次元回帰式に含まれる係数は、室外ファンの種別と筐体の種別との組み合わせごとに求められる。かかる構成のもとで、多目的最適化処理の際に、ファン騒音算出モデル525が動作することで、ファン騒音算出モデル525には、室外ファンの種別と筐体の種別との組み合わせに対応する応答曲面に、室外ファンの各回転数が入力される。これにより、ファン騒音算出モデル525では、各位置でのファン騒音を算出することができる。
【0116】
<配管振動算出モデルの概要>
次に、配管振動算出モデル523の概要について説明する。図9は、配管振動算出モデルの概要を説明するための図である。本実施形態において、配管振動算出モデル523には、既知のモデルが用いられるものとする。図9に示すように、配管振動算出モデル523には、圧縮機の種別、筐体の種別に応じたパラメータが設定される。つまり、配管振動算出モデル523は、圧縮機の種別に応じた特性、筐体の種別に応じた特性、冷媒回路の特性が反映された振動解析が行われるように構成されている。
【0117】
かかる構成のもとで、多目的最適化処理の際に、配管振動算出モデル523が動作することで、配管振動算出モデル523には、冷凍サイクル算出モデル521により算出された圧縮比、圧縮機回転数、トルク制御量が入力される。これにより、配管振動算出モデル523では、冷凍サイクルの所定の動作点での配管振動を算出することができる。
【0118】
この結果、配管振動算出モデル523では、算出した配管振動を所定の閾値以下に抑えるためのパテ及び錘を特定することができる。
【0119】
<放熱器サイズ算出モデルの概要>
次に、放熱器サイズ算出モデル524の概要について説明する。図10は、放熱器サイズ算出モデルの概要を説明するための図である。図10に示すように、放熱器サイズ算出モデル524を生成するにあたっては、予め実験測定値として、
・筐体の種別、室外ファンの種別、室外ファンの回転数ごとに放熱器前面風速(v)、
を測定し、当該実験測定値と文献値とを用いて回帰計算を行うことで、放熱器熱抵抗と風速の関係式の係数(A(v)、B(v))を算出するための近似式1030を求めておく。
【0120】
これにより、近似式1030を、筐体の種別、室外ファンの種別ごとに生成することができる。
【0121】
なお、放熱器サイズ算出モデル524には、当該近似式1030のほか、数式1010、1020、1040が含まれており、多目的最適化処理の際に、放熱器サイズ算出モデル524が動作することで、放熱器サイズ算出モデル524では、
・近似式1030に、筐体の種別、室外ファンの種別に応じた係数を設定したうえで、送風性能算出モデル522により算出された放熱器前面風速を入力することで、放熱器熱抵抗と風速の関係式の係数(A(v)、B(v))を算出し、
・数式1010に、インバータ損失算出モデル531により算出されたインバータ損失INV_Lossを入力することで、発熱量Wを算出し、
・数式1020に、パッケージ熱抵抗(Rth1)、グリス熱抵抗(Rth2)、周囲温度(Ta)、ジャンクション温度(Tj)、算出した発熱量Wを入力することで、放熱器への熱抵抗要求値(Rth3)を算出し、
・数式1040に、算出した放熱器熱抵抗と風速の関係式の係数(A(v)、B(v))と、算出した放熱器への熱抵抗要求値(Rth3)とを入力することで、放熱器サイズ(V)を算出する。
【0122】
<圧縮機騒音算出モデルの概要>
次に、圧縮機騒音算出モデル526の概要について説明する。図11は、圧縮機騒音算出モデルの概要を説明するための図である。図11に示すように、圧縮機騒音算出モデル526は、以下の手順で生成される。
・予め実験測定値として、圧縮機の種別ごとに圧縮比、圧縮機回転数のもとで、圧縮機の単体音を複数の位置で測定し、測定した単体音から、各圧縮比、圧縮機回転数での単体音を算出できるよう、多次元回帰式を用いて応答曲面を作成する。
・筐体の種別ごとに特定される筐体のサイズ及び防音材のもとで、各筐体内に、圧縮機を配置した場合の、圧縮機騒音の減衰度合いを、予め実験測定値として測定する。
【0123】
かかる構成のもとで、多目的最適化処理の際に、圧縮機騒音算出モデル526が動作することで、圧縮機騒音算出モデル526では、圧縮機の種別に対応する応答曲面と、筐体の種別に対応する減衰度合いとを用いて、筐体周辺の各位置での圧縮機騒音を算出する。
【0124】
<コスト算出モデルの概要>
次に、コスト算出モデル527の概要について説明する。図12は、コスト算出モデルの概要を説明するための図である。図12に示すように、コスト算出モデル527は、コストテーブル1210に基づいて生成される。
【0125】
本実施形態において、コストテーブル1210には、
・部品名と種別との組み合わせごとのコスト、
・パテ及び錘のコスト、
・放熱器サイズごとのコスト、
が格納されている。かかる構成のもとで、多目的最適化処理の際に、コスト算出モデル527が動作することで、コスト算出モデル527では、
・種別取得部511より通知された各部品の種別と、
・配管振動算出モデル523より通知されたパテ及び錘と、
・放熱器サイズ算出モデル524より通知された放熱器サイズと、
に基づいて、空気調和システムを構築するうえで必要なコストを算出することができる。
【0126】
<多目的最適化処理の流れ>
次に、設計支援システム100による多目的最適化処理の流れについて説明する。図13は、多目的最適化処理の流れを示すフローチャートである。
【0127】
ステップS1301において、操作端末120は、各部品の種別の選択指示及び運転条件の選択指示を受け付けることで、説明変数を取得し、設計支援装置110に送信する。これにより、設計支援装置110では、説明変数に含まれる各部品の種別に応じたパラメータを、対応するモデルに割り当てる。また、設計支援装置110では、説明変数に含まれる運転条件を、対応するモデルに割り当てる。また、操作端末120は、目標スペックを受け付ける。
【0128】
ステップS1302において、設計支援装置110は、送風性能算出モデル522を動作させ、送風性能を算出する。
【0129】
ステップS1303において、設計支援装置110は、冷凍サイクル算出モデル521を動作させ、冷凍サイクル性能を算出する。設計支援装置110は、冷凍サイクル算出モデル521を動作させる際、定格条件から中間条件への能力合わせのための計算を行うことで、圧縮機を中間条件で制御した場合の冷凍サイクルをシミュレーションする。
【0130】
ステップS1304において、設計支援装置110は、トルク制御補正の計算を行う。
【0131】
ステップS1305において、設計支援装置110は、冷凍サイクル算出モデル521による冷凍サイクルのシミュレーション中に、冷凍サイクル算出モデル521により算出された冷房能力、冷房消費電力に基づいて、冷房COPを算出する。また、設計支援装置110は、冷凍サイクル算出モデル521による冷凍サイクルのシミュレーション中に、冷凍サイクル算出モデル521により算出された暖房能力、暖房消費電力に基づいて、暖房COPを算出する。
【0132】
ステップS1306において、設計支援装置110は、冷凍サイクル算出モデル521による冷凍サイクルのシミュレーション中に、冷凍サイクル算出モデル521により算出された冷房能力、暖房能力、期間消費電力量に基づいて、APFを算出する。
【0133】
ステップS1307において、設計支援装置110は、配管振動算出モデル523を動作させ、パテ及び錘を特定する。なお、設計支援装置110は、配管振動算出モデル523を動作させる際、冷凍サイクル算出モデル521による冷凍サイクルのシミュレーション中に算出された、圧縮比、圧縮機回転数及びトルク制御量を用いる。
【0134】
ステップS1308において、設計支援装置110は、放熱器サイズ算出モデル524を動作させ、放熱器サイズを算出する。なお、設計支援装置110は、放熱器サイズ算出モデル524を動作させる際、冷凍サイクル算出モデル521による冷凍サイクルのシミュレーションにインバータ損失算出モデル531により算出されたインバータ損失を用いる。また、設計支援装置110は、放熱器サイズ算出モデル524を動作させる際、送風性能算出モデル522により算出された放熱器前面風速を用いる。
【0135】
ステップS1309において、設計支援装置110は、取得した説明変数に含まれる各部品の種別と、ステップS1307において特定したパテ及び錘と、ステップS1308において算出した放熱器サイズとに基づいて、コストを算出する。
【0136】
ステップS1310において、設計支援装置110は、ファン騒音算出モデル525及び圧縮機騒音算出モデル526をそれぞれ動作させ、ファン騒音及び圧縮機騒音を算出することで、運転音を算出する。なお、設計支援装置110は、ファン騒音算出モデル525及び圧縮機騒音算出モデル526を動作させる際、圧縮比と圧縮機回転数と風量とを用いる。圧縮比と圧縮機回転数とは、冷凍サイクル算出モデル521による冷凍サイクルのシミュレーション中に算出される。また、風量は、送風性能算出モデル522により算出される。
【0137】
ステップS1311において、設計支援装置110は、所定の終了条件を満たすか否かを判定する。例えば、説明変数の入力回数が、所定の閾値未満であった場合、設計支援装置110は、ステップS1311において所定の終了条件を満たさないと判定し(ステップS1311においてNOと判定し)、ステップS1301に戻る。つまり、設計支援装置110では、説明変数の入力回数が所定の閾値以上となるまで、ステップS1301~S1310までの処理を繰り返す。
【0138】
一方、ステップS1311において、説明変数の入力回数が、所定の閾値以上であった場合、設計支援装置110は、ステップS1311において所定の終了条件を満たすと判定し(ステップS1311においてYESと判定し)、多目的最適化処理を終了する。
【0139】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、第1の実施形態に係る設計支援システム100は、
・空気調和システムの各部品の種別を取得する。
・空気調和システムの性能指標(コスト、冷房COP/暖房COP、APF、運転音)に影響を与える因子を算出するための各モデルの一部のモデルに、取得した種別に応じたパラメータを割り当てることで、各モデルを動作させる。
・各モデルにより算出された因子に基づき、空気調和システムの性能指標を算出する。
【0140】
このように、第1の実施形態に係る設計支援システム100によれば、空気調和システムの試作、実機試験による試作システムの性能評価を行うことなく、シミュレーションにより空気調和システムの性能指標を算出する。つまり、空気調和システムの試作を行う前に事前にシミュレーションを行うことで、空気調和システムを試作して実機試験を行ったが、目標とする評価結果が得られない、といった事態が生じるのを回避することができる。
【0141】
この結果、第1の実施形態に係る設計支援システム100によれば、空気調和システムの設計効率を向上させることができる。
【0142】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、性能指標の算出結果に基づいて、ユーザが部品の種別及び運転条件を変更することで、各部品の最適な種別及び最適な運転条件の組み合わせを探索するケースについて説明した。しかしながら、各部品の最適な種別及び最適な運転条件の組み合わせは、例えば、遺伝的アルゴリズムや、焼きなまし法等を用いて探索してもよい。以下、第2の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0143】
<設計支援システムのシステム構成>
はじめに、第2の実施形態に係る設計支援システムのシステム構成について説明する。図14は、設計支援システムのシステム構成の一例を示す第2の図である。図1を用いて説明した設計支援システム100とは、操作端末1400により実現される機能が異なる。
【0144】
具体的には、第2の実施形態において、操作端末1400には、最適化プログラムがインストールされており、操作端末1400は、当該最適化プログラムを実行することで、入力部121、表示部122に加えて、最適化部1401として機能する。
【0145】
最適化部1401は、はじめに、デフォルトの説明変数として、ユーザにより選択指示された各部品の種別及び運転条件が設計支援装置110に送信されると、設計支援装置110から、性能指標の算出結果を受信する。続いて、最適化部1401は、受信した性能指標の算出結果が目標スペックを充足していない場合に、目標スペックを充足するよう、説明変数のうちの各部品の種別または運転条件のいずれか一方または両方を変更する。また、最適化部1401は、変更後の説明変数を入力部121に入力する。これにより、入力部121では、変更後の説明変数を設計支援装置110に送信する。
【0146】
続いて、最適化部1401は、説明変数の入力回数が所定の閾値以上になった場合に、それまでに取得した性能指標の算出結果の中から、目標スペックを充足する算出結果を、対応する説明変数及び目標スペックとともに、設計支援画面に表示する。
【0147】
なお、本実施形態において最適化部1401は、説明変数を変更するにあたり、多目的遺伝的アルゴリズムまたは多目的焼きなまし法を用いる。これにより、性能指標の算出結果が目標スペックを充足する説明変数を探索するまでの、設計支援システム100全体の計算負荷を削減し、計算時間を短縮することができる。
【0148】
<最適化部による処理の結果>
次に、最適化部1401による処理の結果について説明する。図15は、最適化部による処理結果の一例を説明するための図である。
【0149】
このうち、図15(a)は、最適化部1401が多目的遺伝的アルゴリズムを用いて処理を行った場合の探索結果を示している。図15(a)において、横軸はコストを、縦軸はAPFを示している。また、図15(a)において、白長丸は、全ての説明変数(各部品の種別及び運転条件の全ての組み合わせ)について設計支援装置110により算出されたコスト及びAPFを示したものである。具体的には、各部の種別及び運転条件の組み合わせごとに、対応するコスト及びAPFの位置に白丸をプロットしたのち、縦方向に連なる一塊の白丸群について、白長丸として示したものである。
【0150】
例えば、同じコストでAPFが異なる複数の白丸を示した白長丸は、各部品の種別が同じであるため、コストは同じであるが、運転条件が異なるため、APFが異なる結果となっている。
【0151】
一方、図15(a)において黒四角は、多目的遺伝的アルゴリズムを用いて処理を行った際に探索された説明変数のもとで、設計支援装置110により算出されたコスト及びAPFを示している。
【0152】
図15(a)によれば、最適化部1401が多目的遺伝的アルゴリズムを用いることで、コストが最小で、APFが最大となる説明変数(各部品の最適な種別及び最適な運転条件の組み合わせ)を、少ない探索回数で探索することができる。
【0153】
また、図15(b)は、最適化部1401が多目的焼きなまし法を用いて処理を行った場合の探索結果を示している。図15(b)において、横軸はコストを、縦軸はAPFを示している。また、図15(b)において、白長丸は、全ての説明変数(各部品の種別及び運転条件の全ての組み合わせ)について設計支援装置110により算出されたコスト及びAPFを示している。一方、図15(b)において黒四角は、多目的焼きなまし法を用いて処理を行った際に探索された説明変数のもとで、設計支援装置110により算出されたコスト及びAPFを示している。
【0154】
図15(b)によれば、最適化部1401が焼きなまし法を用いることで、取りこぼしなく、最適な説明変数を探索することができる。
【0155】
<まとめ>
以上の説明から明らかなように、第2の実施形態に係る設計支援システム100は、
・多目的遺伝的アルゴリズム、多目的焼きなまし法を用いることにより、最適な説明変数を探索する。
【0156】
これにより、第2の実施形態に係る設計支援システム100によれば、上記第1の実施形態と同様の効果を享受しつつ、更に、最適な説明変数を効率的に探索することができる。
【0157】
[その他の実施形態]
上記第1の実施形態では、最適な説明変数を探索する際、ユーザが各部品の種別及び運転条件を選択指示するものとして説明した。しかしながら、操作端末120では、例えば、はじめに各部品の種別及び運転条件の全ての組み合わせが列記された組み合わせリストを生成してもよい。そして、操作端末120では、組み合わせリストに記載された全ての組み合わせについて、設計支援装置110に順次送信することで、性能指標の算出結果を受信してもよい。更に、操作端末120では、受信した性能指標の算出結果の中から、目標スペックを充足する1または複数の説明変数をユーザに表示してもよい。
【0158】
また、上記第2の実施形態では、最適化部1401が多目的遺伝的アルゴリズムまたは多目的焼きなまし法を用いて最適な説明変数を探索する場合について説明した。しかしながら、最適化部1401が最適な説明変数を探索するのに用いるアルゴリズムは、多目的遺伝的アルゴリズムまたは多目的焼きなまし法に限定されない。例えば、最適化部1401は、実験計画法を用いて最適な説明変数を探索してもよい。
【0159】
また、上記第2の実施形態では、最適化部1401を操作端末1400において実現する場合について説明した。しかしながら、最適化部1401は、設計支援装置110において実現されてもよい。
【0160】
つまり、図1及び図14で示したシステム構成は一例であり、操作端末120、1400において実現される機能の一部は、設計支援装置110において実現されてもよい。また、反対に、設計支援装置110において実現される機能の一部は、操作端末120、1400において実現されてもよい。同様に、設計支援装置110に格納された各格納部のうちの一部の格納部は、操作端末120において格納されてもよい。
【0161】
あるいは、設計支援装置110と、操作端末120または1400とは、一体の装置として構成されてもよい。
【0162】
また、上記各実施形態では、説明変数の入力回数が所定の閾値以上となった場合に、多目的最適化処理を終了する構成としたが、多目的最適化処理の終了条件はこれに限定されない。例えば、性能指標の算出結果が、いずれも、目標スペックを充足したと判定された場合に、多目的最適化処理を終了するように構成してもよい。つまり、設計支援装置110は、目標スペックを充足する説明変数が見つかるまで、探索を繰り返すように構成されてもよい。
【0163】
また、上記各実施形態では、シミュレーション部112が、
・冷凍サイクル算出モデル521、
・送風性能算出モデル522、
・配管振動算出モデル523、
・放熱器サイズ算出モデル524、
・ファン騒音算出モデル525、
・圧縮機騒音算出モデル526、
・コスト算出モデル527、
・インバータ損失算出モデル531、
を有するものとして説明した。しかしながら、シミュレーション部112は、上記8個のモデルのうちの少なくとも1つが含まれていればよい。
【0164】
また、上記各実施形態では、目的変数出力部113が、
・コスト算出モデル527より通知されたコスト、
・冷房COP/暖房COP算出部528より入力された冷房COP/暖房COP、
・APF算出部529より入力されたAPF、
・運転音算出部530より入力された運転音、
を出力する場合について説明した。しかしながら、目的変数出力部113は、例えば、上記4個の性能指標のうちの、コスト算出モデル527より通知されたコスト、APF算出部529より通知されたAPFのみを出力するように構成してもよい。
【0165】
また、上記各実施形態では、操作端末120が1台であるとして説明したが、設計支援システム100において、設計支援装置110に接続される操作端末は複数台であってもよい。
【0166】
また、上記各実施形態では、設計支援装置110が単体で設計支援プログラムを実行するものとして説明した。しかしながら、設計支援装置110は、例えば、複数台のコンピュータにより構成されてもよく、それぞれに設計支援プログラムをインストールすることで、設計支援プログラムが、分散コンピューティングの形態で実行されてもよい。
【0167】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0168】
100 :設計支援システム
110 :設計支援装置
111 :説明変数取得部
112 :シミュレーション部
113 :目的変数出力部
120 :操作端末
121 :入力部
122 :表示部
400 :設計支援画面
511 :種別取得部
512 :運転条件取得部
521 :冷凍サイクル算出モデル
522 :送風性能算出モデル
523 :配管振動算出モデル
524 :放熱器サイズ算出モデル
525 :ファン騒音算出モデル
526 :圧縮機騒音算出モデル
527 :コスト算出モデル
528 :冷房COP/暖房COP算出部
529 :APF算出部
530 :運転音算出部
1400 :操作端末
1401 :最適化部
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15