(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056479
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】球体駆動装置
(51)【国際特許分類】
A63F 5/04 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A63F5/04 511A
A63F5/04 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163378
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴広
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 昌昭
(72)【発明者】
【氏名】工藤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】阿形 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】足立 達哉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瞬
【テーマコード(参考)】
2C182
【Fターム(参考)】
2C182CC01
2C182CC11
(57)【要約】
【課題】回転に不要な少なくとも1つのローラと球体との接触を無くすことができる球体駆動装置を実現することを目的とする。
【解決手段】球体駆動装置(30)は、球体リール(20)に当接して球体リール(20)を回転させる複数の駆動ローラと、複数の駆動ローラをそれぞれ回転駆動する複数のモータ(50,51)と、を備える。複数の駆動ローラの少なくとも1つは、異径ローラ(34)であり、周方向に沿ってローラ径が大きい大径部(34a)とローラ径が小さい小径部(34b)とを有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体に当接して前記球体を回転させる複数の駆動ローラと、
前記複数の駆動ローラをそれぞれ回転駆動する複数の駆動源と、
を備え、
前記複数の駆動ローラの少なくとも1つは、周方向に沿ってローラ径が大きい大径部とローラ径が小さい小径部とを有する球体駆動装置。
【請求項2】
前記球体には、主たる回転方向が設定されており、
前記複数の駆動ローラのうち、前記主たる回転方向に前記球体を回転させる駆動ローラは一定のローラ径を有し、その他の駆動ローラは前記大径部と前記小径部とを有する請求項1に記載の球体駆動装置。
【請求項3】
前記複数の駆動ローラの全てが、周方向に沿ってローラ径が大きい大径部とローラ径が小さい小径部とを有する請求項1に記載の球体駆動装置。
【請求項4】
前記大径部と前記小径部とを有する駆動ローラの前記小径部の位置を検出するセンサ部を備える請求項1又は2に記載の球体駆動装置。
【請求項5】
前記大径部および前記小径部は、周方向に沿ってそれぞれ複数形成されている請求項1又は2に記載の球体駆動装置。
【請求項6】
前記大径部および前記小径部は、周方向に沿ってそれぞれ1つ形成されており、
前記大径部は、周方向において前記小径部よりも大きい請求項1又は2に記載の球体駆動装置。
【請求項7】
前記球体を備える請求項1又は2に記載の球体駆動装置。
【請求項8】
前記球体に当該球体に向きを付与する図柄が形成されている請求項7に記載の球体駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球体を駆動する球体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、球体の中心に対して2方向(2軸)又は3方向(3軸)にローラを配置し、それぞれのローラの回転速度を変化させることで球体を任意の方向へ回転させる球体駆動装置の技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、球体に対して2つの駆動輪を当接させる2軸の球体駆動モジュールが記載されている。これにおいて、駆動機構は、平面視して球体の中心に向けて直交する方向から球体に当接する第1,第2の駆動輪と、第1,第2の駆動輪をそれぞれ回転駆動する第1,第2の回転駆動源とを備えている。第1,第2の駆動輪はそれぞれゴムや樹脂からなるタイヤ部材を備えており、タイヤ部材(ローラに相当)が球体に接触している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
球体の回転駆動において、1軸方向にのみ回転させたい場合がある。その場合、複数のローラのうちの1つのローラのみが球体に回転を加える。しかしながら、上述した従来技術のような、球体に複数のローラが常に接触している構成では、回転に不要なローラも球体と接触しているため、回転に不要なローラと球体との間に摩擦が発生する。
【0006】
この摩擦は、不要な摩擦であり電力ロスの原因となる。また、摩擦にて、ローラ又は球体の表面を摩耗させる恐れもある。例えば、球体に図柄等が施されるなどして、1軸方向に回転させる球体の向きが決まる場合がある。その場合、向きに応じて回転に不要なローラと接触する球体上の位置が固定されるため、球体の特定の位置に摩擦が生じ、図柄が摩耗するなどの問題が発生する。
【0007】
なお、このような不具合自体は、アクチュエータなどを用いたローラ退避機構を設けて、回転に不要なローラを球体から離間させることで解消できる。しかしながら、その場合、球体駆動装置は複雑な構成となり、コスト高にもなるといった別の課題がある。
【0008】
本発明の一態様は、ローラ退避機構を設けることなく、回転に不要な少なくとも1つのローラと球体との接触を無くすことができる球体駆動装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る球体駆動装置は、球体に当接して前記球体を回転させる複数の駆動ローラと、前記複数の駆動ローラをそれぞれ回転駆動する複数の駆動源と、を備え、前記複数の駆動ローラの少なくとも1つは、周方向に沿ってローラ径が大きい大径部とローラ径が小さい小径部とを有する。
【0010】
上記構成により、ローラ退避機構を設けることなく、回転に不要な少なくとも1つの駆動ローラと球体との接触を無くすことができ、電力ロス、および摩擦による駆動ローラ又は球体の摩耗を防止できる。
【0011】
前記球体駆動装置においては、前記球体には、主たる回転方向が設定されており、前記複数の駆動ローラのうち、前記主たる回転方向に前記球体を回転させる駆動ローラは一定のローラ径を有し、その他の駆動ローラは前記大径部と前記小径部とを有する構成としてもよい。これにより、球体の主たる回転方向の回転において、不要な摩擦が無い状態で球体を回転させることができる。
【0012】
前記球体駆動装置においては、前記複数の駆動ローラの全てが、周方向に沿ってローラ径が大きい大径部とローラ径が小さい小径部とを有する構成としてもよい。これにより、球体の任意の回転方向の回転において、不要な摩擦が無い状態で球体を回転させることができる。
【0013】
前記球体駆動装置においては、前記大径部と前記小径部とを有する駆動ローラの前記小径部の位置を検出するセンサ部を備える構成としてもよい。これにより、駆動ローラの大径部が球体に当接しているか否かを判断して制御することができる。
【0014】
前記球体駆動装置においては、前記大径部および前記小径部は、周方向に沿ってそれぞれ複数形成されている構成としてもよい。これにより、駆動ローラを球体に接触させない角度に移動させる際の回転量を小さくすることができる。また、大径部の間隔が狭くなるので、球体との接触は間欠的であるが、慣性による回転を利用することで、連続的な回転も可能になる。
【0015】
前記球体駆動装置においては、前記大径部および前記小径部は、周方向に沿ってそれぞれ1つ形成されており、前記大径部は、周方向において前記小径部よりも大きい構成としてもよい。これにより、駆動ローラの一回転あたりの球体の回転量を大きくできる。
【0016】
前記球体駆動装置においては、前記複数の駆動ローラにて回転される前記球体を備える構成としてもよい。
【0017】
前記球体駆動装置においては、前記球体に当該球体に向きを付与する図柄が形成されている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、回転に不要な少なくとも1つのローラと球体との接触を無くすことができる球体駆動装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1に係る球体駆動装置が適用された図柄変動表示装置を備える遊技機の一例を示す外観図である。
【
図2】上記図柄変動表示装置を備えた遊技機の別の例を示す外観図である。
【
図5】上記図柄変動表示装置に備えられた球体リールの外観図である。
【
図6】上記球体リールを正六面体としてみた場合における、図柄の展開図である。
【
図7】上記球体駆動装置の外観を示す斜視図である。
【
図8】上記球体駆動装置の第1駆動部に備えられる円ローラおよび第2駆動部に備えられる異径ローラの断面形状を示す図である。
【
図9】上記異径ローラが球体リールに当接している状態を示す図である。
【
図10】上記異径ローラが球体リールに当接していない状態を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態2に係る球体駆動装置の外観を示す斜視図である。
【
図12】
図11に示す球体駆動装置において、第1駆動部の異径ローラが球体リールに当接していない状態を示す図である。
【
図13】
図11に示す球体駆動装置において、第1駆動部の異径ローラが球体リールに当接している状態を示す図である。
【
図14】実施形態1、2に係る球体駆動装置において採用できる異径ローラの断面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0021】
§1.適用例
図3、
図7に示すように、本実施形態に係る球体駆動装置30は、例えば、球体である球体リール20を回転させるリール駆動装置として、複数の球体リール20を備えた図柄変動表示装置10に適用できる。
【0022】
図5、
図6に示すように、球体リール20の外面(表面)には複数の図柄が施されている。本実施形態では、6個の図柄が正六面体状に施されており、図柄に基づいた向きを有する。
【0023】
図7に示すように、球体駆動装置30は第1駆動部31と第2駆動部32とを備える。第1駆動部31は、球体リール20を縦方向に回転させる。一方、第2駆動部32は、球体リール20を横方向に回転させる。
【0024】
第1駆動部31は、駆動ローラとして、断面円形の円ローラ33(
図8の符号801参照)を備え、球体リール20に常時当接している。一方、第2駆動部32は、周方向にローラ径の大きい大径部34aとローラ径の小さい小径部34bとを有する異径ローラ34(
図8の符号802参照)を備えている。
図9、
図10に示すように、第2駆動部32では、大径部34aのみが球体リール20に当接して回転力を付与し、小径部34bは非接触となる。
【0025】
このような構成の球体駆動装置30では、円ローラ33と異径ローラ34とを共に回転させることで、球体リール20は、円ローラ33にて常時縦回転されると共に、異径ローラ34による間欠的な横回転が加わることで、斜め方向を含む様々な方向に回転させることができる。
【0026】
そして、例えば所定の図柄を正面に向けて球体リール20を停止させたい場合など、球体リール20を縦方向のみ回転させる。その場合は、異径ローラ34を、小径部34bが球体リール20と向かい合う離間位置にて停止させる(
図10参照)。
【0027】
これにより、不要な摩擦が無い状態で、球体リール20を円ローラ33のみにて回転させることができ、電力ロスを防止できる。また、不要な摩擦による球体リール20および異径ローラ34の摩耗等を防止できる。
【0028】
§2.構成例
(遊技機1の構成)
図1は、本実施形態に係る球体駆動装置30が適用された図柄変動表示装置10を備える遊技機の一例を示す外観図である。遊技機1は、図柄変動表示装置10と、第1表示部2と、第2表示部3と、操作部4と、を備えている。
【0029】
遊技者は、操作部4を操作し、遊技価値(コインまたはメダルなど)をベットし、遊技を行う。操作部4は、ベットボタンおよび抽選を開始させる回転スタートボタンなどを備える。遊技機1は、抽選を行い、図柄変動表示装置10にてその抽選のうちのメイン抽選の結果を表示する。抽選結果は、遊技機1の種類によって、遊技機1側で決定される構成もあれば、遊技者による操作にて変化させることができる構成もある。後者の構成では、操作部4に回転停止ボタンなどが備えられる。
【0030】
図柄変動表示装置10で表示した抽選結果が所定の条件を満たすことによって、追加のサブ抽選が行われてもよい。サブ抽選の結果は、例えば第1表示部2に表示される。第1表示部2は、メインまたはサブの抽選結果を表示するディスプレイである。第2表示部3は、現在の所持している遊技価値の表示、現在の遊技の状態などを表示する。
【0031】
また、図柄変動表示装置10と、第1表示部2と、第2表示部3と、の配置は
図1に限定されず、
図2に示す遊技機1Aのような配置をしていてもよい。すなわち、遊技者の正面に設けられた第1表示部2にてメイン抽選の結果の表示を行い、図柄変動表示装置10にてサブ抽選の結果の表示を行ってもよい。
【0032】
図3は、図柄変動表示装置10の外観図である。図柄変動表示装置10は、複数の球状の球体リール20を備えている。本実施形態では、球体リール20が、3行3列に並べられている。なお、行数および列数は、それぞれ3に制限されず任意の自然数であればよい。球体リール20の外面には、複数の図柄が施されている。
【0033】
抽選が開始されると、複数の球体リール20が回転し、抽選結果を示す向き(姿勢)で停止する。複数の球体リール20は、球体リール20ごとに備えられる後述する球体駆動装置30(
図7参照)にて回転駆動される。球体駆動装置30は、複数のローラ(駆動ローラ)を備えており、ロール・ピッチ・ヨーの3軸のうちの少なくとも2自由度で球体リール20を回転させる。球体リール20は、本体部40で保持されるため、球体駆動装置30による回転に伴い、意図しない位置ずれや脱落などは生じない。
【0034】
球体駆動装置30によって、球体リール20は360°自由自在に回転することができるため、複雑な回転を機械的に実現し、任意の図柄を遊技者に提示することができる。そのため、遊技機1は、遊技者を魅了することができる。
【0035】
(図柄変動表示装置10の構成)
図4は、図柄変動表示装置10の分解斜視図である。図柄変動表示装置10は、複数の球体リール20と、複数の球体駆動装置30と、本体部40と、リール制御部(不図示)とを備える。
【0036】
球体リール20の球体の外面(表面)には、上述したように、複数の図柄が施されている。詳細についは後述するが、本実施形態では、6個の図柄が正六面体状に施されており、図柄に基づいた向きを有する。つまり、球体リール20には、球体リール20に向きを付与する図柄が形成されている。以下、球体リールの向きを姿勢とも表現する。なお、図柄の施し方は正六面体に制限されず、任意の正多角形であればよい。
【0037】
球体駆動装置30は、球体リール20を任意方向に回転させるものであり、上述したように球体リール20ごとに設けられる。詳細についは後述するが、本実施形態では、球体駆動装置30は、球体リール20に縦方向の回転を付与する第1駆動部31と、球体リール20に横方向の回転を付与する第2駆動部32と、を備える。なお、球体駆動装置30は、球体リール20を備え、球体リール20が球体駆動装置30の一部であってもよい。
【0038】
本体部40は、カバー部41と、ベース部42と、ガイド部材43と、ブラケット44とを備える。カバー部41は、遊技者が見る図柄変動表示装置10の装飾用の枠体および表面を覆う透明板を含む。
【0039】
ベース部42は、背面側より複数のガイド部材43が取り付けられるパネル45を備える筐体である。パネル45には、内側に球体リール20を収容したガイド部材43が、3行3列で合計9個取り付けられる。パネル45におけるガイド部材43の取り付け位置には、それぞれ開口部45aが備わっており、当該開口部45aから球体リール20の図柄を確認できるようになっている。開口部45aの直径は、球体リール20の直径よりも小さく設計されており、開口部45aから球体リール20が抜け落ちないようになっている。
【0040】
ガイド部材43は、球体リール20ごとに1個設けられ、球体リール20が収容される空洞を有する、有底円筒状の部材である。ベース部42とガイド部材43との間に、球体リール20を収容する。球体リール20が滑らかに摺動できるように、球体とガイド部材43との間には、適切なクリアランスが設けられる。また、ガイド部材43には、後述する円ローラ33および異径ローラ34(
図7参照)が球体リール20に当接するための開口部43a,43b(
図7参照)が設けられている。
【0041】
なお、本実施形態では、球体リール20を個々に収容するガイド部材43を設けたが、複数の球体リール20を回転自在に収容する複数の収容部が1つの部材に組み込まれた形であってもよい。
【0042】
ブラケット44は、球体駆動装置30を本体部40に固定するための部材であり、球体リール20の1行毎に1枚あり、合計で3枚配置されている。
【0043】
(球体リール)
図5は、図柄変動表示装置10に備えられた球体リール20の外観図である。球体リール20は、球体形状のケーシング21を有し、ケーシング21に、前述した図柄が施されている。ケーシング21の内部に、検出部(不図示)、出力部(不図示)、および電源部(不図示)を備える。これら検出部、出力部、および電源部は、ケーシング21の内部に固定されている。
【0044】
検出部は、球体リール20の姿勢を検出するセンサであり、例えば、XYZの3軸加速度センサ、6軸ジャイロセンサである。検出部で検出した姿勢は、出力部に出力される。なお、本明細書では、検出部は3軸加速度センサの前提で記載する。
【0045】
出力部は、検出部で検出した姿勢を、リール制御部に出力する。出力部は、任意の通信規格を用いて無線通信をすればよい。電源部は、検出部および出力部に電源を供給する。電源部としては、非接触給電のコイル(受電部)であってもよいし、バッテリであってもよい。電源部と出力部とが、共通のコイルを用いたRFID(Radio Frequency Identifier)を用いたものでもよい。つまり、出力部は、RFIDにおけるメッセージで出力することになる。
【0046】
図6は、球体リール20を正六面体としてみた場合における、図柄の展開図である。球体リール20の図柄は正六面体状に施されている。そのため、球体リール20の図柄は展開することができる。本実施形態では、図柄としては、「スイカ」(符号61)、「プラム」(符号62)、「チェリー」(符号63)、「セブン」(符号64)、「ベル」(符号65)、および「クローバ」(符号66)がある。図柄としてはこれらに限定されず、任意の図柄であってもよい。
【0047】
(球体駆動装置)
図7は、球体駆動装置30の外観を示す斜視図である。
図8は、球体駆動装置30の第1駆動部31に備えられる円ローラ33および第2駆動部32に備えられる異径ローラ34の断面形状を示す図である。
【0048】
第1駆動部31と第2駆動部32とを備えており、第1駆動部31と第2駆動部32にて、ロール・ピッチ・ヨーの3軸のうちの2自由度で球体リール20を回転させる。第1駆動部31および第2駆動部32はそれぞれ、球体リール20と接触して球体リール20を回転させる駆動ローラを備えている。駆動ローラは、摩擦力にて球体リール20を連れ回りさせるものである。そのため、ゴムや樹脂など、球体リール20の表面をしっかりと捉えることができる材質で形成されている。球体駆動装置30は、球体リール20ごとに設けられている。
【0049】
<第1駆動部>
第1駆動部31は、モータ(駆動源)50と、複数の歯車52a~52eと、駆動ローラである円ローラ33とを有する。モータ50は、円ローラ33を駆動させる駆動源であり、可逆回転可能な双方向モータである。複数の歯車52a~52eは、駆動力伝達機構である。モータ50の駆動力を、歯車52a~52dを介して円ローラ33の軸に固定された歯車52eに伝達し、円ローラ33を回転させる。モータ50と、複数の歯車52a~52eは、ブラケット44に螺子止め等で固定された第1支持体54に固定されている。
【0050】
なお、駆動力伝達機構を構成する歯車の枚数は上記構成に限るものではない。また、駆動力伝達機構は、プーリーと無端ベルトの組み合わせにて構成されていてもよい。モータ50の駆動軸に円ローラ33の軸が直接固定された駆動力伝達機構を備えない構成であってもよい。
【0051】
円ローラ33の回転平面は、球体リール20の中心を通る鉛直平面である。円ローラ33は、ガイド部材43に形成された開口部43aを介して球体リール20に当接する。
球体リール20は円ローラ33によって、縦方向に回転させられる。
【0052】
図8の符号801に示すように、円ローラ33は、回転軸と直交する方向に切った断面が円形状をなす、ローラ径が一定のローラである。そのため、円ローラ33は、周方向全域が球体リール20に接触(当接)する接触領域であり、球体リール20に常に当接する。
【0053】
円ローラ33を備えた第1駆動部31は、円ローラ33を回転させることで、常時、球体リール20に対して摩擦によって動力を伝達することができる。
【0054】
<第2駆動部>
第2駆動部32は、モータ(駆動源)51と、複数の歯車53a~53eと、駆動ローラである異径ローラ34を備えている。モータ51は、異径ローラ34を駆動させる駆動源であり、可逆回転可能な双方向モータである。複数の歯車53a~53eは、駆動力伝達機構である。モータ51の駆動力を、歯車53a~53dを介して異径ローラ34の軸に固定された歯車53eに伝達し、異径ローラ34を回転させる。モータ51と、複数の歯車53a~53eは、ブラケット44に螺子止め等で固定された第2支持体55に固定されている。
【0055】
なお、駆動力伝達機構を構成する歯車の枚数は上記構成に限るものではない。また、駆動力伝達機構は、プーリーと無端ベルトの組み合わせにて構成されていてもよい。モータ51の駆動軸に異径ローラ34の軸が直接固定された駆動力伝達機構を備えない構成であってもよい。
【0056】
異径ローラ34の回転平面は、球体リール20の中心を通る水平平面である。異径ローラ34は、ガイド部材43に形成された開口部43bを介して球体リール20に当接する。球体リール20は異径ローラ34によって、横方向に回転させられる。
【0057】
図8の符号802に示すように、異径ローラ34は、回転軸と直交する方向に切った断面が円形状を成さない、周方向にローラ径が異なるローラである。異径ローラ34は、周方向に沿ってローラ径の大きい大径部34aとローラ径の小さい小径部34bとを有する。大径部34aは、球体リール20に接触(当接)する接触領域であり、回転力を付与することができる。小径部34bは、球体リール20に接触しない非接触領域である。
【0058】
異径ローラ34を備えた第2駆動部32は、異径ローラ34を回転させることで、間欠的に、球体リール20に対して摩擦によって動力を伝達する回転させる。
【0059】
第1駆動部31における円ローラ33の回転軸が第1軸であり、第2駆動部32における異径ローラ34の回転軸が第1軸と異なる第2軸である。第1軸と第2軸が異なる軸であるため、2自由度で球体リール20を回転させることができる。
【0060】
本実施形態では、球体リール20の主たる回転方向が縦方向である。複数の駆動ローラのうち、主たる縦方向に球体リール20を回転させる第1駆動部31の駆動ローラが、一定のローラ径を有する円ローラである。そして、その他の駆動ローラ、つまり第2駆動部32の駆動ローラが大径部34aと小径部34bとを有する異径ローラ34である。
【0061】
主たる回転方向とは、球体リール20が最も多く回転される方向と定義することもできる。
【0062】
<ホームポジションセンサ>
また、本実施形態に示すように、第2駆動部32には、ホームポジションセンサ35(センサ部)が含まれていてもよい。ホームポジションセンサ35は、大径部34aと小径部34bとを有する異径ローラ34の小径部34bの位置を検出するセンサ部である。
【0063】
ホームポジションセンサ35は、異径ローラ34と一体に回転する検出片36を読み取り、検出片36を読み取っている期間、オン又はオフとなる信号を出力するセンサであり、異径ローラ34が一回転する度に1パルス発生させる。そのため、ホームポジションセンサ35を用いることによって、異径ローラ34の原点位置、およびその点からの変化を利用して求められる異径ローラ34の回転角を検出して、小径部34bの位置を検出することができる。
【0064】
なお、ここでは、異径ローラ34の原点位置を基準に回転角にて小径部34bの位置を検出しているが、小径部34bが球体リール20と対向している非接触の期間にのみセンサ部に読み取られるように検出片を配置してもよい。その場合は、検出片を読み取っているか否かを示す信号にて、異形ローラ34の球体リール20への接触/非接触を検出できる。
【0065】
(球体駆動装置の動作)
図9は、異径ローラ34が球体リール20に当接している状態を示す図である。
図10は、異径ローラ34が球体リール20に当接していない状態を示す図である。
【0066】
図9のように、異径ローラ34が球体リール20に当接している状態で、異径ローラ34は球体リール20に対して摩擦によって動力を伝達することができる。この状態では、円ローラ33による縦回転と異径ローラ34による横回転とで、球体リール20を、斜め方向を含む様々な方向に回転させることができる。
【0067】
対して、
図10のように、異径ローラ34が球体リール20に当接していない状態では、異径ローラ34は球体リール20に対して摩擦によって動力を伝達することができない。そのため、この状態では、円ローラ33による縦回転のみとなり、球体リール20は、異径ローラ34の大径部34aが離れた時点から縦方向のみ回転する。
【0068】
以下に、動作例1)~4)を説明する。なお、例1)~4)は、球体リール20の慣性による回転が無い場合の例である。つまり、球体リール20は、円ローラ33が回転しているときのみ縦回転し、異径ローラ34の回転時は、大径部34aが接触しているときのみ横回転する。
【0069】
1)円ローラ33および異径ローラ34を共に回転させることで、球体リール20は、縦回転→斜め回転→縦回転→斜め回転…というように、向きを回転させながら回転する。円ローラ33および異径ローラ34の回転方向の組み合わせを切り換えることで、右斜め下に向かった斜め回転、左斜め上に向かった斜め回転を、右斜め上に向かった斜め回転、左斜め下に向かった斜め回転を実現できる。
【0070】
2)円ローラ33を停止させて、異径ローラ34を回転させることで、球体リール20は、横回転→停止→横回転→停止…というように、横方向に間欠的な動きで回転する。異径ローラ34の回転方向を切り換えることで、右から左に向かった間欠横回転、左から右に向かった間欠横回転を実現できる。
【0071】
3)円ローラ33を回転させて、異径ローラ34を小径部34bが球体リール20に向き合った非接触状態で停止させることで、球体リール20は、縦方向のみに回転する。円ローラ33の回転方向を切り換えることで、上から下に向かった縦回転、下から上に向かった縦回転を実現できる。
【0072】
このとき、不要な摩擦が無い状態で円ローラ33(第1駆動部31)にて球体リール20を回転させることができる。また、摩擦にて、ローラ又は球体リール20の摩耗を防止できる。
【0073】
つまり、球体リール20の主たる回転方向である縦方向の回転において、不要な摩擦が無い状態で球体リール20を回転させることができる。
【0074】
4)円ローラ33を回転させながら、球体リール20の姿勢の検出値を基に、異径ローラ34を、タイミングを見て適宜回転させて横回転を付与することで、加速度センサの3軸の中の任意の何れかの軸にて縦回転するように、球体リール20の回転を収束させることができる。そして、
図6に示す、球体リール20に施された図形の一つを、パネル45に形成されたれ開口部45aより正面を向いた状態で停止させることができる。
【0075】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0076】
図11は、本実施形態に係る球体駆動装置30Aの外観を示す斜視図である。
図12は、第1駆動部31の異径ローラ34’が球体リール20に当接していない状態を示す図である。
図13は、第1駆動部31の異径ローラ34’が球体リール20に当接している状態を示す図である。
【0077】
図11に示すように、本実施形態に係る球体駆動装置30Aでは、第1駆動部31が、駆動ローラとして、円ローラ33に代えて異径ローラ34’を備えている、つまり、球体駆動装置30Aが備える複数の駆動ローラの全てが、周方向に沿って大径部34aと小径部34bとを有する構成である。
【0078】
これにより、前述した動作例の2)のように、球体リール20を、横方向に間欠的な動きで回転させる場合にも、第1駆動部31の異径ローラ34’を球体リール20と接触しない位置で停止させておくことで、不要な摩擦が無い状態で、第2駆動部32にて球体リール20を回転させることができる。
【0079】
また、第1駆動部31および第2駆動部32を、異径ローラ34'および異径ローラ34の各大径部34aが球体リール20に交互に接触するように回転させることで、不要な摩擦が無い状態で、例えば、
図6に示した図柄が1コマずつ縦→横→縦→横…に切り換わるような回転も可能となる。
【0080】
<ホームポジションセンサ>
また、本実施形態に示すように、第1駆動部31には、ホームポジションセンサ37(センサ部)が含まれていてもよい。ホームポジションセンサ37は、大径部34aと小径部34bとを有する異径ローラ34’の小径部34bの位置を検出するセンサ部である。
【0081】
ホームポジションセンサ37は、異径ローラ34’と一体に回転する検出片38を読み取り、検出片38を読み取っている期間、オンとなる信号を出力するセンサであり、異径ローラ34’が一回転する度に1パルス発生させる。そのため、ホームポジションセンサ37を用いることによって、異径ローラ34’の原点位置、およびその点からの変化を利用して求められる異径ローラ34’の回転角を検出して、小径部34bの位置を検出することができる。
【0082】
§3.変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0083】
<3.1>
実施形態1,2では、球体リール20の慣性による回転が無い場合の例を示したが、異径ローラ34にて回転力を付与する構成については慣性による回転が有ってもよい。球体駆動装置30の場合は、常に球体リール20に接触している円ローラ33が抵抗になるため、球体リール20が慣性にて横回転する効果は小さい。対して、縦回転および横回転の両駆動ローラが共に異径ローラ34、34’である球体駆動装置30Aでは、縦回転、横回転共に慣性による回転が有ってもよい。
【0084】
<3.2>
球体駆動装置30,30Aは、ロール・ピッチ・ヨーの3軸のうちの2自由度で球体リール20を回転させる構成であったが、3自由度で球体リール20を回転させる構成であってもよい。つまり、球体駆動装置に、回転平面は球体リール20の中心を通る鉛直平面であり、第1駆動部31とは、回転面が平面視で45度異なる第3駆動部を備えさせる。
【0085】
これにより、パネル45に形成されたれ開口部45aより正面を向いた状態で、正面視した球体リール20の中心として、時計方向、反時計方向に回転させることがきる。この場合も、第1~第3駆動部の駆動ローラとして異径ローラ34を採用することで、不要な摩擦が無い状態で、一方向にのみ回転させることができる。
【0086】
この場合も、球体リール20の主たる回転方向を縦方向とすると、縦方向に球体リール20を回転させる第1駆動部31を円ローラとし、第2駆動部32および第3駆動部の駆動ローラを異径ローラ34としてもよい。これにより、球体リール20の主たる回転方向である縦方向の回転において、不要な摩擦が無い状態で球体リール20を回転させることができる。
【0087】
<3.3>
図14は、球体駆動装置30,30Aにおいて採用できる異径ローラ34,34’の断面形状を示す図である。
【0088】
符号1401に示すように、大径部34aおよび小径部34bは、周方向に沿ってそれぞれ1つ形成されており、大径部34aは周方向において小径部34bよりも大きい構成としてもよい。このような形状とすることで、異径ローラ34の一回転あたりの球体リール20の回転量を大きくできる。
【0089】
また、符号1402に示すように、大径部34aおよび小径部34bは、周方向に沿ってそれぞれ1つ形成されており、大径部34aは周方向において小径部34bよりも小さい構成としてもよい。このような形状とすることで、異径ローラ34の一回転あたりの球体リール20の回転量を小さくできる。
【0090】
また、符号1403、1404に示すように、大径部34aおよび小径部34bは、周方向に沿ってそれぞれ複数形成されている構成であってもよい。このような形状とすることで、異径ローラ34を球体リール20に接触させない角度に移動させる際の回転量を小さくできる。また、大径部34aの間隔が狭くなるので、球体リール20との接触は間欠的であるが、慣性による回転を利用することで、連続的な回転も可能になる。
【0091】
小径部34bが複数ある場合、複数の小径部34bに応じて、非接触の期間にのみセンサ部に読み取られる検出片を複数配置することで、異形ローラ34の球体リール20への接触/非接触を細かく制御することが可能である。
【0092】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
20 球体リール(球体)
30、30A 球体駆動装置
31 第1駆動部
32 第2駆動部
33 円ローラ(駆動ローラ)
34、34’ 異径ローラ(駆動ローラ)
34a 大径部
34b 小径部
35、37 ホームポジションセンサ(センサ部)
50、51 モータ(駆動源)