(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056481
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】鉄筋状態判定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240416BHJP
G01B 11/26 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01B11/26 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163380
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000223056
【氏名又は名称】東陽建設工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 章
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA32
2F065BB12
2F065DD03
2F065FF04
2F065GG02
2F065GG03
2F065GG04
2F065GG07
2F065HH05
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM03
2F065QQ18
2F065QQ28
2F065QQ29
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】複数本の鉄筋の配置状態を詳細に判定できる鉄筋状態判定方法を提供する。
【解決手段】鉄筋状態判定方法は、方向Yに並べて配置された5本の鉄筋2のそれぞれの方向Xにおける異なる位置に、方向Xに延びる線状光31、32、33を照射する第1工程(ステップS1)と、線状光31、32、33が照射された状態の5本の鉄筋2の撮影画像を取得する第2工程(ステップS3)と、取得した撮影画像に含まれる線状光31、32、33の画像310、320、330の関係に基づいて、鉄筋群2Gの配置状態を判定する第3工程(ステップS5、ステップS6)と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並べて配置された複数本の鉄筋のそれぞれの前記第1方向に直交する第2方向における複数の位置に、前記第1方向に延びる直線状の光を照射する第1工程と、
前記直線状の光が照射された状態の前記複数本の鉄筋の撮影画像を取得する第2工程と、
前記撮影画像に含まれる前記複数の位置のそれぞれに照射された前記直線状の光の画像の関係に基づいて、前記複数本の鉄筋の配置状態を判定する第3工程と、を備える、鉄筋状態判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄筋状態判定方法であって、
前記第3工程では、前記複数本の鉄筋のそれぞれの軸線の傾きを、前記複数本の鉄筋の配置状態として判定する、鉄筋状態判定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の鉄筋状態判定方法であって、
前記画像は、前記複数本の鉄筋のそれぞれに対応する弧状画像を含み、
前記第3工程では、同じ前記鉄筋に対応する前記複数の位置毎の前記弧状画像の位置に基づいて、当該鉄筋の軸線の傾きを判定する、鉄筋状態判定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の鉄筋状態判定方法であって、
前記第3工程では、前記撮影画像において、前記複数本の鉄筋が存在しない場合に前記直線状の光が撮影される位置を示す基準線を前記画像毎に設定し、前記弧状画像のうちの前記基準線から最も離れた箇所の前記基準線の延びる方向の位置を、当該弧状画像の位置とする、鉄筋状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋等の棒状の長尺体を加工装置等に受け渡す途中で、その本数を計測する技術として、例えば特許文献1-3に示すものが知られている。
【0003】
特許文献1には、直線のレーザビームを搬送中の棒鋼に照射し、その照射によって棒鋼の表面上に形成された三日月状のレーザ軌跡をカメラで撮影し、その撮影画像を処理することで、棒鋼の本数を計測することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、搬送テーブル上に並べられた複数の丸棒に照射光を照射したときの反射光を撮影し、撮影された画像に含まれる反射光を複数の抽出感度で抽出し、各抽出感度における反射光の個数をそれぞれカウントし、各抽出感度における反射光の個数の最大値を丸棒の本数と判断することが記載されている。
【0005】
特許文献3には、発光部と受光部を備える光センサを、複数本の長尺体に対してその併設方向に移動させている状態で、長尺体からの反射光を受光部で受光しているときだけ、光センサの移動距離を計測し、その移動距離の計測値を長尺体の幅で除して、長尺体の本数を割り出すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-305737号公報
【特許文献2】特許第5077093号公報
【特許文献3】特開2010-182172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鉄筋切断機や鉄筋曲機等の加工装置に鉄筋を受け渡す際には、その加工装置における加工に適した状態で鉄筋を受け渡す必要がある。鉄筋に対して適切な加工を行うためには、例えば、鉄筋の本数が適切であるかといったことの他に、鉄筋の姿勢が適切であるか、又は、鉄筋の種類が統一されているか、等といった判断を行う必要がある。特許文献1-3によれば、鉄筋の本数を判定することはできるが、より細かな鉄筋の状態の判定を行うことは難しい。
【0008】
本発明の目的は、載置されている複数本の鉄筋の状態を詳細に判定可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の技術は以下の通りである。
[1]
第1方向に並べて配置された複数本の鉄筋のそれぞれの前記第1方向に直交する第2方向における複数の位置に、前記第1方向に延びる直線状の光を照射する第1工程と、
前記直線状の光が照射された状態の前記複数本の鉄筋の撮影画像を取得する第2工程と、
前記撮影画像に含まれる前記複数の位置のそれぞれに照射された前記直線状の光の画像の関係に基づいて、前記複数本の鉄筋の配置状態を判定する第3工程と、を備える、鉄筋状態判定方法。
【0010】
[2]
[1]に記載の鉄筋状態判定方法であって、
前記第3工程では、前記複数本の鉄筋のそれぞれの軸線の傾きを、前記複数本の鉄筋の配置状態として判定する、鉄筋状態判定方法。
【0011】
[3]
[2]に記載の鉄筋状態判定方法であって、
前記画像は、前記複数本の鉄筋のそれぞれに対応する弧状画像を含み、
前記第3工程では、同じ前記鉄筋に対応する前記複数の位置毎の前記弧状画像の位置に基づいて、当該鉄筋の軸線の傾きを判定する、鉄筋状態判定方法。
【0012】
[4]
[3]に記載の鉄筋状態判定方法であって、
前記第3工程では、前記撮影画像において、前記複数本の鉄筋が存在しない場合に前記直線状の光が撮影される位置を示す基準線を前記画像毎に設定し、前記弧状画像のうちの前記基準線から最も離れた箇所の前記基準線の延びる方向の位置を、当該弧状画像の位置とする、鉄筋状態判定方法。
【発明の効果】
【0013】
[1]によれば、鉄筋の長手方向の複数の位置に直線状の光が照射され、各位置に照射された光の画像が取得される。このようにして取得される画像同士の関係として、例えば、各位置で取得される画像の形状や位置の類似性等を判断することで、単一の画像では判定が困難な鉄筋の配置状態を判定できる。
【0014】
[2]によれば、鉄筋の軸線の傾きを判定できるため、加工に適した傾きとなっていない状態で加工が開始されるのを防ぐことができる。換言すると、加工に適した傾きで鉄筋の加工を開始することができる。
【0015】
[3]によれば、例えば、同じ鉄筋に対応する複数の位置毎の弧状画像の位置が一致している場合には、鉄筋の軸線の傾きが許容できる状態と判断でき、同じ鉄筋に対応する複数の位置毎の弧状画像の位置が不一致の場合には、鉄筋の軸線の傾きが許容できない状態と判断できる。このように、弧状画像の位置の相違によって鉄筋の軸線の傾きを容易且つ正確に判定可能となる。
【0016】
[4]によれば、鉄筋の軸線の傾きの状態を高精度に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】鉄筋加工設備100の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】線状光31、32、33が照射された状態の鉄筋群2Gを撮影装置4により撮影して得られる撮影画像IMGの一例を模式的に示す図である。
【
図3】鉄筋2の傾き状態を判定する場合の制御装置のプロセッサの動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一態様を実現可能な鉄筋加工設備について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、鉄筋加工設備100の概略構成を模式的に示す斜視図である。鉄筋加工設備100は、複数本(
図1の例では5本)の鉄筋2からなる鉄筋群2Gを図示省略の鉄筋加工機(切断機や曲機等)に向かって搬送する搬送面1Aを有する搬送部1と、光源装置3と、撮影装置4と、制御装置(図示しない)と、を備える。
【0020】
以下では、搬送部1による鉄筋群2Gの搬送方向を方向Xと記載し、方向Xのうち搬送方向の上流から下流に向かう方向を方向X1と記載し、方向X1の反対方向を方向X2と記載する。また、方向Xに垂直且つ搬送面1Aに垂直な方向を方向Zと記載し、方向Xに垂直且つ搬送面1Aに平行な方向を方向Yと記載する。方向Yのうちの一方を方向Y1と記載し、方向Yのうちの他方を方向Y2と記載する。
【0021】
鉄筋2は、丸鋼又は異形鉄筋等の棒状の長尺体であり、その径方向(幅方向)と方向Yとが一致するように、換言すると、その長手方向と方向Xとが一致するように、搬送面1Aに載置される。鉄筋群2Gを構成する5本の鉄筋2は、搬送面1Aにおいて、方向Yに並べて配置されている。本形態において、方向Yは第1方向を構成し、方向Xは、第1方向に直交する第2方向を構成している。
【0022】
光源装置3は、搬送面1Aに載置されている鉄筋群2Gに対して、方向Yに延びる直線状の光(以下、線状光と記載)を照射する。光源装置3は、鉄筋群2Gにおける方向Xの複数の位置(
図1の例では、3つの位置)のそれぞれに、線状光を照射する。線状光の照射角度は、特に限定されるものではないが、線状光の進む方向と方向Zとが一致する状態を照射角度0度と定義し、線状光の進む方向と方向Xとが一致する状態を照射角度90度と定義すると、例えば、0度より大きく90度より小さい値に設定される。
【0023】
図1には、光源装置3から照射される線状光として、線状光31、32、33が示されており、これらは、搬送面1Aにおいて方向Xの異なる位置に照射される。線状光を発生させる光源としては、レーザ光源、LED(Light-Emitting Diode)光源、ハロゲンランプ、蛍光灯、又は白熱灯等を用いることができる。線状光31、32、33がそれぞれ鉄筋群2Gに照射されると、鉄筋群2Gの各鉄筋2の外周面と各線状光との交差部分に、各鉄筋2の外周面の形状に沿った形の照射ライン31A、32A、33Aが形成される。
【0024】
撮影装置4は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子を含み、搬送面1Aに載置された鉄筋群2Gのうちの線状光31、32、33が照射された領域を少なくとも撮影可能に配置されている。撮影装置4に含まれる撮影光学系の光軸は、各線状光31、32、33の進む方向に対して交差するように配置されることが好ましい。
【0025】
制御装置は、CPU等のプロセッサと、メモリとを備えており、例えばパーソナルコンピュータで構成される。制御装置は、光源装置3及び撮影装置4と通信可能に接続されている。制御装置のプロセッサは、光源装置3及び撮影装置4をそれぞれ制御する。なお、制御装置と撮影装置4は同一の筐体内に設けられていてもよい。制御装置のプロセッサは、線状光31、32、33が照射された状態の鉄筋群2Gを撮影して得られる撮影画像を撮影装置4から取得し、この撮影画像に基づいて、鉄筋群2Gの配置状態を判定する。
【0026】
図2は、線状光31、32、33が照射された状態の鉄筋群2Gを撮影装置4により撮影して得られる撮影画像IMGの一例を模式的に示す図である。撮影画像IMGを構成する各画素の座標は、方向Xの位置と方向Yの位置との組み合わせで定義される。なお、
図2に示す撮影画像IMGは、フィルタ処理等を施すことで、線状光31、32、33の画像のみを抽出した状態(5本の鉄筋2に対応する画像と搬送部1に対応する画像が含まれないように加工された状態)を示している。なお、フィルタ処理は必須ではない。例えば、線状光31、32、33の照度を十分に高くしたり、色を調整したりすることで、鉄筋2や搬送部1を撮影した画像と、鉄筋2に照射された線状光31、32、33を撮影した画像とを含む撮影画像IMGから、線状光31、32、33の画像の位置を特定することは可能である。
【0027】
図2に示すように、撮影画像IMGには、鉄筋群2G及び搬送部1に照射された線状光31の画像310と、鉄筋群2G及び搬送部1に照射された線状光32の画像320と、鉄筋群2G及び搬送部1に照射された線状光33の画像330と、が含まれている。
【0028】
なお、鉄筋2の表面に線状光を照射すると、その線状光の撮影画像の輝度は、鉄筋2の頂部(搬送面1Aと当接している底部とは方向Zの反対側の部分)が最も高くなり、鉄筋2の底部に近づくほど低くなる。また、鉄筋2同士の隙間に入射した線状光の撮影画像の輝度は、鉄筋2に入射した線状光の撮影画像の輝度よりも低くなる。
【0029】
本形態では、一例として、撮影画像IMGに含まれる線状光31、32、33の画像のうち、所定のしきい値以上の輝度を持つ部分だけを抽出するものとしている。これにより、撮影画像IMGに含まれる画像310は、方向Yに間隔を空けて並ぶ5つの弧状画像31aと、5つの弧状画像31aよりも方向X2にずれた位置にある直線状画像31bと、を含むものとなる。弧状画像31aは、5本の鉄筋2のそれぞれの外周面に照射された線状光31を撮影して得られるものであり、5本の鉄筋2のそれぞれに対応して得られる。直線状画像31bは、搬送面1Aのうちの鉄筋群2Gの方向Y2の隣にある空き領域に照射された線状光31を撮影して得られるものである。
【0030】
同様に、撮影画像IMGに含まれる画像320は、方向Yに間隔を空けて並ぶ5つの弧状画像32aと、この5つの弧状画像32aよりも方向X2にずれた位置にある直線状画像32bと、を含むものとなる。弧状画像32aは、5本の鉄筋2のそれぞれの外周面に照射された線状光32を撮影して得られるものであり、5本の鉄筋2のそれぞれに対応して得られる。直線状画像32bは、上記空き領域に照射された線状光32を撮影して得られるものである。
【0031】
同様に、撮影画像IMGに含まれる画像330は、方向Yに間隔を空けて並ぶ5つの弧状画像33aと、5つの弧状画像33aよりも方向X2にずれた位置にある直線状画像33bと、を含むものとなる。弧状画像33aは、5本の鉄筋2のそれぞれの外周面に照射された線状光33を撮影して得られるものであり、5本の鉄筋2のそれぞれに対応して得られる。直線状画像33bは、上記空き領域に照射された線状光33を撮影して得られるものである。
【0032】
制御装置のプロセッサは、撮影画像IMGに含まれる画像310、320、330の関係に基づいて、鉄筋群2Gの配置状態を判定する。画像310、320、330の関係とは、例えば、3つの画像における特徴点(後述の第1頂部、第2頂部、第3頂部)の位置関係や、その特徴点の数の関係等である。鉄筋群2Gの配置状態とは、鉄筋群2Gに含まれる鉄筋2の総本数と、鉄筋群2Gに含まれる各鉄筋2の姿勢と、鉄筋群2Gに含まれる鉄筋2の径の統一状態と、の少なくとも1つを含む。鉄筋2の姿勢には、鉄筋2の軸線の方向Xに対する傾きが少なくとも含まれる。以下、鉄筋群2Gの配置状態の判定方法の具体例を説明する。
【0033】
まず、制御装置のプロセッサは、撮影画像IMGにおいて、画像310に対応させて
図2に示す基準線31Lを設定し、画像320に対応させて
図2に示す基準線32Lを設定し、画像330に対応させて
図2に示す基準線33Lを設定する。
【0034】
基準線31L、32L、33Lは、搬送面1Aに鉄筋群2Gが載置されていない状態で線状光31、32、33を搬送面1Aに照射して撮影装置4で撮影を行った場合に、搬送面1Aに照射された線状光31、32、33が結像される撮影画像上の位置に設定される。
【0035】
搬送部1と撮影装置4と光源装置3の位置関係は固定であるため、基準線31L、32L、33Lの座標は予め決めておくことができる。ただし、撮影画像IMGには、搬送面1Aに鉄筋群2Gが載置されていない状態で線状光31、32、33を照射した場合のその線状光31、32、33の撮影画像に相当する直線状画像31b、32b、33bが含まれている。このため、制御装置のプロセッサは、直線状画像31b、32b、33bのそれぞれを方向Y1に向かって延長した線を、基準線31L、32L、33Lとして設定してもよい。
【0036】
次に、制御装置のプロセッサは、基準線31Lに対応する5つの弧状画像31aのそれぞれにおいて、基準線31Lから方向Xに最も離れている部分(以下、第1頂部と記載)を、線状光31の照射位置における5本の鉄筋2のそれぞれの頂部として判定する。
【0037】
また、制御装置のプロセッサは、基準線32Lに対応する5つの弧状画像32aのそれぞれにおいて、基準線32Lから方向Xに最も離れている部分(以下、第2頂部と記載)を、線状光32の照射位置における5本の鉄筋2のそれぞれの頂部として判定する。
【0038】
また、制御装置のプロセッサは、基準線33Lに対応する5つの弧状画像33aのそれぞれにおいて、基準線33Lから方向Xに最も離れている部分(以下、第3頂部と記載)を、線状光33の照射位置における5本の鉄筋2のそれぞれの頂部として判定する。
【0039】
(鉄筋2の姿勢の判定例)
制御装置のプロセッサは、同じ鉄筋2に対応する3つの弧状画像31a、32a、33aにおける第1頂部、第2頂部、第3頂部のそれぞれの位置を、横軸を方向Xの位置とし、縦軸を方向Yの位置としてグラフ化したときの、そのグラフの傾きを最小二乗法等によって求める。制御装置5のプロセッサは、その傾きの大きさ(絶対値)と“0”との差が閾値TH1以下の場合(すなわち、傾きの大きさがほぼ“0”の場合)には、上記鉄筋2は、その軸線が方向Xに平行な状態で配置されており、加工に適した姿勢で配置されていると判定する。一方、制御装置のプロセッサは、上記差が閾値TH1を超える場合には、上記鉄筋2は、その軸線が方向Xに対して加工の際に許容できないほど傾斜した状態で配置されており、加工に適さない姿勢で配置されていると判定する。制御装置のプロセッサは、同様の判定を、鉄筋群2Gの各鉄筋2について行い、その判定結果を、例えばディスプレイ等に表示させる。
【0040】
(鉄筋2の配置本数の判定例)
制御装置のプロセッサは、上述のようにして判定した第1頂部の総数、第2頂部の総数、及び第3頂部の総数を比較し、例えば、これらが全て一致する場合に、その総数を、鉄筋群2Gに含まれる鉄筋2の総数として判定する。
【0041】
(鉄筋2の重なり状態又は径の統一状態の判定例)
制御装置のプロセッサは、基準線31Lから各第1頂部までの距離の平均値を取得し、基準線31Lからの距離が、この平均値よりも閾値TH2以上大きくなる第1頂部(以下、第1特定頂部と記載)の有無を判定する。制御装置のプロセッサは、基準線32Lから各第2頂部までの距離の平均値を取得し、基準線32Lからの距離が、この平均値よりも閾値TH2以上大きくなる第2頂部(以下、第2特定頂部と記載)の有無を判定する。制御装置のプロセッサは、基準線33Lから各第3頂部までの距離の平均値を取得し、基準線33Lからの距離が、この平均値よりも閾値TH2以上大きくなる第3頂部(以下、第3特定頂部と記載)の有無を判定する。
【0042】
例えば、5本の鉄筋2のうちの特定の鉄筋2が、隣接する2つの鉄筋2の境界の上に乗り上げている状態や、5本の鉄筋2のうちの特定の鉄筋2だけが大きい径となっている状態では、この特定の鉄筋2に対応する第1頂部、第2頂部、及び第3頂部の基準線31L、32L、33Lからの距離は、上記平均値を大きく超えることになる。
【0043】
制御装置のプロセッサは、第1特定頂部、第2特定頂部、及び第3特定頂部のうちの2つ以上が存在すると判定した場合には、鉄筋2に重なりが発生している状態(特定の鉄筋2が加工に適さない姿勢となっている状態)、或いは、鉄筋群2Gの鉄筋径が統一されていない状態(鉄筋群2Gに異なる径の鉄筋2が混在している状態)であると判定する。制御装置のプロセッサは、第1特定頂部、第2特定頂部、及び第3特定頂部のうちの2つ以上が存在しないと判定した場合には、鉄筋2に重なりが発生していない、或いは、鉄筋群2Gの鉄筋径が統一されていると判定する。
【0044】
図3は、鉄筋2の傾き状態を判定する場合の制御装置のプロセッサの動作を説明するためのフローチャートである。制御装置のプロセッサは、光源装置3を制御して線状光31、32、33を照射させる(ステップS1)。次に、制御装置のプロセッサは、撮影装置4を制御して、線状光31、32、33が照射された状態の鉄筋群2Gを撮影させる(ステップS2)。
【0045】
制御装置のプロセッサは、ステップS2の撮影が終了すると、撮影装置4から撮影画像を取得し(ステップS3)、取得した撮影画像に含まれる各画像310、320、330から、各鉄筋2の第1頂部、第2頂部、及び第3頂部の位置を判定する(ステップS4)。次に、制御装置のプロセッサは、同一の鉄筋2に対応する第1頂部、第2頂部、及び第3頂部の方向Yの位置関係に基づいて、その鉄筋2の傾き状態を判定する(ステップS5)。制御装置のプロセッサは、他の鉄筋2についても同様にステップS5の判定を行い(ステップS6)、その後、判定結果を出力する(ステップS7)。
【0046】
以上のように、本形態の鉄筋加工設備100によれば、搬送部1で搬送される鉄筋群2Gの長手方向の複数の位置に線状光31、32、33が照射され、照射された線状光31、32、33が画像310、320、330として取得される。このようにして取得される画像310、320、330同士の関係として、例えば、画像310、320、330のそれぞれの頂部の位置関係や数の関係を判断することで、鉄筋群2Gの配置状態を詳細に判定できる。特に、鉄筋群2Gに含まれる鉄筋2の軸線の傾き状態を判定できることで、加工に適した状態で鉄筋2の加工を開始でき、適切な加工を実施することができる。また、鉄筋加工設備100によれば、単一の線状光を鉄筋群2Gに照射し、その状態で鉄筋群2Gを撮像して得らえる画像に基づいて鉄筋群2Gの配置状態を判定する参考例と比べると、この参考例では判定できない鉄筋2の傾き状態の判定が可能となる。また、鉄筋2の本数、鉄筋2同士の重なりの有無、鉄筋2の異種混合の有無を判定する場合でも、複数の位置に照射された線状光の画像を用いることで、その判定精度を、参考例と比較して高めることができる。
【0047】
また、本形態では、画像310、320、330のそれぞれに対応させて基準線31L、32L、33Lを設定し、基準線31L、32L、33Lを基準として、各鉄筋2の長手方向の3つの位置における頂部の方向Yの位置を判定している。このように基準線を用いて鉄筋2の頂部の方向Yの位置を判定することで、鉄筋2の頂部の位置を精度よく判定でき、鉄筋2の傾き状態の判定を高精度に行うことができる。また、鉄筋2の頂部の位置を判定できることで、例えば、基準線から第1頂部、第2頂部、又は第3頂部までの距離と、線状光の照射角度との関係から、鉄筋2の径を導出することもできる。
【0048】
以上、本発明の一態様について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、本発明の範疇において適宜変更することができる。例えば、以上の説明では、3つの線状光31、32、33を鉄筋群2Gに照射する構成としたが、これに限らない。光源装置3から照射される線状光の数は2つとしてもよし、4つ以上としてもよい。
【0049】
また、例えば、光源装置3から、搬送部1の方向Xにおける既定位置に、単一の線状光を照射する構成とし、鉄筋群2Gを方向X1に移動させる過程で、撮影装置4により、異なるタイミングで複数回の撮影を行うことで、鉄筋群2Gにおける方向Xの異なる位置に照射された線状光の画像を含む撮影画像を取得するようにしてもよい。或いは、光源装置3から照射する線状光の照射位置を方向Xで変更可能に構成し、線状光の照射位置を変えるごとに、撮影装置4で撮影を行うことで、鉄筋群2Gにおける方向Xの異なる位置に照射された線状光の画像を含む撮影画像を取得するようにしてもよい。
図1に示したように、複数の位置に同時に線状光を照射して撮影する構成によれば、鉄筋群2Gの配置状態の判定を高速に行うことができる。また、
図1の構成によれば、撮影装置4と光源装置3の位置が固定化されるため、これらが移動する時間を待つ必要はなく、鉄筋群2Gの配置状態の判定を高速に行うことができると共に、設備の構造の簡略化及び小型化が可能となる。設備の構造が簡略化されることで、機器の調整に必要な工数を削減でき、鉄筋加工を効率的に行うことが可能となる。
なお、特許文献3に記載された方法で鉄筋群2Gに含まれる鉄筋2の総本数を判定した場合と、本形態の方法で鉄筋群2Gに含まれる鉄筋2の総本数を判定した場合とで、判定に要する時間を比べたところ、本形態では、特許文献3に記載の方法に対して約10倍以上のスピードで本数を判定することができた。このように、本形態の鉄筋加工設備100は、コスト、設置スペース、鉄筋加工の効率、鉄筋群2Gの配置状態の判定精度等で高い優位性を有している。
【符号の説明】
【0050】
1A 搬送面
1 搬送部
2G 鉄筋群
2 鉄筋
3 光源装置
4 撮影装置
31A、32A、33A 照射ライン
31L,32L,33L 基準線
31a,32a,33a 弧状画像
31b,32b,33b 直線状画像
31,32,33 線状光
100 鉄筋加工設備
310,320,330 画像
IMG 撮影画像