(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056492
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ワイヤ式巻取り装置
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20240416BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B60R5/04 T
B60J5/10 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163395
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶田 義人
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA03
3D022BB04
3D022BC12
(57)【要約】
【課題】 リアゲートの車室側の美観を損ねることなく、ワイヤ導出部の開口からリアゲート内部に物が入り込んだり、ラゲッジルーム内の物をリアゲート内部に巻き込んだりすることを防止するワイヤ式巻取り装置の提供。
【解決手段】 ワイヤ式巻取り装置10は、カバー部材5を掛止するフック13を有するワイヤ12を胴部44に巻回するドラム41と、胴部44に形成されたワイヤ巻回溝42と、軸部材45に設けられ、ワイヤ巻回溝42と同じピッチP1,P2が設定されたネジ溝46と、軸部材45に螺合して、ドラム41を軸部材45の長手軸Xに沿った方向に送り移動する軸受けナット23,26と、ワイヤ12を巻き取る方向にドラム41にトルクを発生する動力装置30と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のリアゲートの開扉時に荷室を覆うカバー部材を吊り上げるワイヤ式巻取り装置であって、
前記リアゲートに設けられたワイヤ導出部に挿通し、前記カバー部材を掛止するフックが設けられたワイヤと、
ネジ溝が外周に設けられた軸部材と、
前記ワイヤを胴部に巻回し、前記軸部材の長手軸回りに回動するドラムと、
巻き付けられた前記ワイヤが係合するように前記胴部に形成され、前記ネジ溝と同じピッチが設定されたワイヤ巻回溝と、
前記ドラムを前記軸部材の前記長手軸に沿った方向に送り移動するための軸受けナットと、
前記ドラムから繰り出された前記ワイヤを巻き取る方向に前記ドラムにトルクを発生する動力装置と、
を備えたことを特徴とするワイヤ式巻取り装置。
【請求項2】
前記ワイヤは、前記ワイヤ巻回溝に係合する一層のみ前記胴部に巻回される長さが設定されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ式巻取り装置。
【請求項3】
前記ワイヤ導出部の開口の大きさは、前記ワイヤの太さと同等であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤ式巻取り装置。
【請求項4】
前記軸部材は、前記ワイヤの最大巻取り位置から最大繰り出し位置に移動する前記ドラムの最大移動量に応じた長さを有して、前記軸受けナットと螺合することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤ式巻取り装置。
【請求項5】
前記動力装置は、前記ワイヤが前記ドラムから引き出された状態において、弾性エネルギを蓄積して前記ワイヤを巻き取る方向の前記トルクを与えるバネを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤ式巻取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のラゲッジルームに設けられたトノカバーなどのカバー部材をリアゲートのオープン時に吊り上げるワイヤ式巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワゴン車などに採用されるリアゲート(リアハッチゲート、リハハッチドアなどとも言う)を備えた車両は、ラゲージルームにカバー部材のトノカバー、トノボードなどが設けられるものが周知である。このようなトノカバー、トノボードなどは、ラゲッジルームの荷物などを車外から見えないように覆い隠すものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、リアゲートの開閉操作に連繋してトノカバー本体をワイヤ式巻き取り装置によって自動的にケース内に収容および引き出しを可能にするトノカバー装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両のワイヤ式巻き取り装置は、ワイヤを巻き取るドラムの幅に応じて、リアゲートの車室側に設けられるワイヤ出口となるワイヤ導出部の開口の幅を大きくする必要がある。これは、ワイヤ導出部の開口から引き出されるワイヤのドラムから繰り出される位置がドラムの幅方向に移動するためである。このような大きな開口を有するワイヤ導出部は、リアゲートの車室側の美観を損ねるという課題があった。
【0006】
さらに、ワイヤ導出部の開口から小さな物がリアゲート内部に落ちたり、ラゲッジルーム内の物をワイヤ導出部からリアゲート内部に巻き込んだりする虞があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、その目的とするところは、リアゲートの車室側の美観を損ねることなく、ワイヤ導出部の開口からリアゲート内部に物が入り込んだり、ラゲッジルーム内の物をリアゲート内部に巻き込んだりすることを防止するワイヤ式巻取り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のワイヤ式巻取り装置は、車両のリアゲートの開扉時に荷室を覆うカバー部材を吊り上げるワイヤ式巻取り装置であって、前記リアゲートに設けられたワイヤ導出部に挿通し、前記カバー部材を掛止するフックが設けられたワイヤと、ネジ溝が外周に設けられた軸部材と、前記ワイヤを胴部に巻回し、前記軸部材の長手軸回りに回動するドラムと、巻き付けられた前記ワイヤが係合するように前記胴部に形成され、前記ネジ溝と同じピッチが設定されたワイヤ巻回溝と、前記ドラムを前記軸部材の前記長手軸に沿った方向に送り移動するための軸受けナットと、前記ドラムから繰り出された前記ワイヤを巻き取る方向に前記ドラムにトルクを発生する動力装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リアゲートの車室側の美観を損ねることなく、ワイヤ導出部の開口からリアゲート内部に物が入り込んだり、ラゲッジルーム内の物をリアゲート内部に巻き込んだりすることを防止するワイヤ式巻取り装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】リアゲートが閉じられた車両のリア側を示すと共に、ラゲッジルームに設けられるトノカバーを示す平面図
【
図2】リアゲートが閉じられた車両のリア側を示すと共に、ラゲッジルームに設けられるトノカバーを示す側面図
【
図3】リアゲートが開けられた車両のリア側を示すと共に、ラゲッジルームに設けられるトノカバーが吊り上げられた状態を示す側面図
【
図5】ワイヤを最大に巻き取った状態のワイヤ式巻取り装置の構成を示す断面図
【
図7】ワイヤを途中まで引き出した状態のワイヤ式巻取り装置の構成を示す断面図
【
図8】ワイヤを最大まで引き出した状態のワイヤ式巻取り装置の構成を示す断面図
【
図9】リアゲートトリムに設けられたプロテクタを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1から
図3に示すように、ワゴン車などの車両1は、後方に開閉部となるリアゲート2が設置される。車両1の後方には、荷物などを収容する荷室のラゲッジルーム4が設けられる。
【0012】
車両1は、ラゲッジルーム4の荷物などを出し入れする際に、閉じたリアゲート2が上方に開けられる。なお、ラゲッジルーム4には、荷物などを車外から見えないように覆い隠すカバー部材のトノカバー5が設けられる。
【0013】
ここでのトノカバー5は、リアゲート2の開扉時に、リアゲート2内に設けられる2つのワイヤ式巻取り装置10のワイヤ12によって、吊り上げられる(
図3参照)。このとき、ワイヤ式巻取り装置10のワイヤ12が所定に引き出される。
【0014】
なお、トノカバー5は、リアゲート2が閉じられたときに、ラゲッジルーム4を覆うように配置される(
図2参照)。このとき、ワイヤ12は、ワイヤ式巻取り装置10に巻き取られてリアゲート2内に収容される。
【0015】
なお、本実施の形態では、ワイヤ式巻取り装置10が吊り上げるカバー部材をトノカバー5として例示しているが、これに限定されることなく、ワイヤ式巻取り装置10が吊り上げるカバー部材がトノボードにも適用される。
【0016】
ここで、本実施の形態のワイヤ式巻取り装置10の構成について、以下に詳しく説明する。ワイヤ式巻取り装置10は、
図4に示すように、巻取り装置本体11と、ワイヤ12と、このワイヤ12の端部に設けられたフック13を有している。
【0017】
フック13は、トノカバー5の後方の縁辺に設けられた図示しないフック受けと着脱自在である。即ち、フック13は、フック受け(不図示)に引っ掛けることでトノカバー5に接続される。
【0018】
巻取り装置本体11は、
図5に示すように、ワイヤドラム装置20と、動力装置30と、を有する。ワイヤドラム装置20は、ドラムケース本体21と、カバー体25と、を有する。
【0019】
ドラムケース本体21は、一方の端部および側周部の一部分が開口した略筒状体をしている。ドラムケース本体21には、ワイヤ12を巻回するドラム41が回動自在に設けられる。
【0020】
ドラムケース本体21は、側周部から延設されたワイヤゲート22を有する。ワイヤゲート22は、ドラム41に巻かれたワイヤ12の繰り出しを案内するワイヤガイド部である。
【0021】
カバー体25は、略円板状をした蓋体である。カバー体25は、ドラム41が収容されたドラムケース本体21の一方の開口を塞ぐようにビスなどの固定部材によって組付けられる。ドラム41は、
図6に示すように、ワイヤ12を巻回する胴部44と、この胴部44の両端に接合された円板状のフランジ部41a,41bと、を有する。
【0022】
ドラム41には、中央を貫通するように軸部材の回動軸45が装着される。ドラム41の胴部44には、螺旋状に形成されたワイヤ巻回溝42が設けられる。
【0023】
ワイヤ巻回溝42には、ワイヤ12が係合する。即ち、ワイヤ12は、ドラム41の胴部44にワイヤ巻回溝42に沿って螺旋状に巻き取られる。
【0024】
なお、ワイヤ12は、ドラム41の胴部44に一層だけ巻回される。即ち、ワイヤ12は、ワイヤ巻回溝42に係合した一層のみドラム41の胴部44に巻回する。そして、ワイヤ12は、胴部44に重畳して巻き取られないように所定の長さが設定されている。
【0025】
そのため、ドラム41は、巻取るワイヤ12の所定の長さに応じた胴部44の幅DWおよび直径Ddが所定に設定される。
【0026】
ワイヤ12は、フック13が取り付けられる一端部と反対側の他端部がドラム41の一方のフランジ部41bに設けられたワイヤ接続部43に接続固定される。そして、ワイヤ12は、一端部側がワイヤゲート22に通されて延出する。ワイヤ12は、ワイヤゲート22を挿通後、リアゲート2の内張りであるラゲッジルーム4側(車室側)のリアゲートトリム3に取り付けられたワイヤ導出部であるプロテクタ6に挿通される。
【0027】
プロテクタ6は、ワイヤ12が挿通する孔部であるワイヤ挿通路7を有している。プロテクタ6は、リアゲートトリム3の表面に当接するフランジを有している。このプロテクタ6は、図示しないスナップフィットなどによってリアゲートトリム3に固定される。
【0028】
なお、ワイヤ式巻取り装置10は、ワイヤゲート22がプロテクタ6に対向するように、リアゲート2内に配置される。このとき、ワイヤ12の繰り出される位置がプロテクタ6のワイヤ挿通路7と一致している。
【0029】
ところで、ワイヤ12は、プロテクタ6からラゲッジルーム4側に延出する端部に上述したフック13が取り付けられる。このフック13には、ワイヤ12の端部を挟み込んで固定するためのビス13aが設けられる。即ち、フック13は、ビス13aによりネジ込むワイヤ留め機構によってワイヤ12を本体と板体などにより挟持して外れないように固定する。
【0030】
回動軸45は、外周に雄ネジのネジ溝46が設けられる。回動軸45は、ドラム送り機構を構成するためのネジ軸であるスライドシャフトとなる。回動軸45は、動力装置30側の端部からドラム41に近接した中途部まで軸方向に沿って形成されたスリット状の溝47を有する。
【0031】
回動軸45は、ドラムケース本体21およびカバー体25の中央に形成された雌ネジのネジ溝が形成された軸受けナット部23,26と螺合する。回動軸45は、ドラムケース本体21およびカバー体25に貫挿して配置される。即ち、ドラム41は、回動軸45の中途に配置される。この回動軸45は、ドラム41に貫通して設けられる構成の他、ドラム41の両側中央において、個々に接続されて突出する構成であってもよい。
【0032】
なお、ドラム41の胴部44に形成されたワイヤ巻回溝42の螺旋ピッチP1と、回動軸45の外周に形成されたネジ溝46のネジピッチP2とが同じ間隔となるように設定される。
【0033】
また、回動軸45は、所定の全長RLを有し、ドラム41の両端から延出する所定の長さRL1,RL2が設定されている。
【0034】
詳しくは、回動軸45は、ドラム41の動力装置30側の一方のフランジ部41aから所定の長さRL1を有して延設される。また、回動軸45は、ドラム41の他方のフランジ部41bから所定の長さRL2を有して延設される。
【0035】
回動軸45の所定の全長RLとドラム41の両端からの所定の長さR1,R2は、ドラム41がドラムケース本体21内における移動量に応じて設定される。即ち、回動軸45は、ドラム41が動力装置30側に最も移動するワイヤ最大繰り出し位置と、動力装置30とは反対側に最も移動するワイヤ最大巻取り位置と、に移動しても、ネジ溝46がドラムケース本体21およびカバー体25の軸受けナット部23,26と螺合する長さが設定される。
【0036】
動力装置30は、バネケース本体31と、カバーケース34と、付勢部材の渦巻バネ(ゼンマイバネ)35と、を有する。バネケース本体31は、バネ収容室32と、バネ押さえ33と、を有する。
【0037】
バネ収容室32は、渦巻バネ35を収容する円柱状の凹部である。バネ押さえ33は、渦巻バネ35の外周側の端部を挟み込むように係止するスリット状の溝である。なお、渦巻バネ35の外周側の端部は、バネ押さえ33から外れないように折れ目、折り返しなどが付けられる。また、渦巻バネ35の外周側の端部は、バネ押さえ33にビス留めなどにより固定されてもよい。
【0038】
動力装置30は、渦巻バネ35をバネ収容室32に収容したバネケース本体31にカバーケース34が組み付けられる。このとき、渦巻バネ35は、内周側の端部が回動軸45の溝47に挿入される。
【0039】
渦巻バネ35の内周側の端部は、回動軸45の溝47に沿ってスライド自在に挿入される。また、渦巻バネ35の内周側の端部も、溝47から抜け落ちないように折れ目、折り返しなどが付けられている。
【0040】
動力装置30は、ワイヤ12をドラム41から繰り出す際の回動軸45の回動によって渦巻バネ35が内側に巻き取られて弾性エネルギが蓄積される。そして、動力装置30は、弾性エネルギが蓄積された渦巻バネ35が元に戻ろうとする復元力によって、ワイヤ12をドラム41に巻き取る方向に回動するトルクを回動軸45に発生させる。
【0041】
なお、ドラムケース本体21およびカバー体25は、中央に回動軸45が所定のクリアランスを有して貫通する孔部を有している。また、ワイヤドラム装置20および動力装置30は、ビスなどの固定部材によって連結される。
【0042】
以上に説明したワイヤ式巻取り装置10は、
図5に示したように、ワイヤドラム装置20のドラム41にワイヤ12が最大に巻回された状態が初期状態となる。この初期状態において、ワイヤ式巻取り装置10の動力装置30は、略0(ゼロ)または若干にワイヤ12を巻き取る方向に回動軸45にトルクが生じるように、渦巻バネ35が弾性エネルギを蓄積した状態となる。
【0043】
即ち、ワイヤ式巻取り装置10の初期状態において、ワイヤ12は、リアゲート2側へ略0(ゼロ)または若干の張力が生じた状態である。なお、フック13は、リアゲートトリム3のプロテクタ6と当接してストッパとなる。
【0044】
そして、ワイヤ式巻取り装置10は、フック13がトノカバー5に引っ掛けられている状態で、リアゲート2が開扉されると、トノカバー5を吊り上げるワイヤ12がドラム41から繰り出されて、リアゲート2から引き出される。
【0045】
このとき、ワイヤ式巻取り装置10は、例えば、
図5の初期状態から
図7のワイヤ12が途中まで引き出された状態となり、さらに
図8のワイヤ12が最大に引き出された状態となった後、ラゲッジルーム4を覆うトノカバー5を吊り上げる。
【0046】
なお、ワイヤ式巻取り装置10は、リアゲート2が閉扉しているときに、
図5の初期状態ではなく、ワイヤ12が若干、引き出された状態となっている場合もある。
【0047】
そして、ワイヤ式巻取り装置10は、リアゲート2の開扉過程において、ワイヤ12が図中の矢印で示すPr方向に引き出される。すると、ドラム41および回動軸45は、軸X回り図中の矢印で示すRr方向に回動される。
【0048】
このとき、回動軸45は、軸受けナット部23,26との螺合による送りねじ機構によってRr方向に回動しながら動力装置30側に送られてスライド移動する。具体的には、回動軸45は、長手軸(X軸)方向の直線軌道に沿った図中の矢印で示すMr方向にスライド移動する。これに伴い、回動軸45に連動するドラム41も、Rr方向に回動しながら、動力装置30側のMr方向に送られてスライド移動する。
【0049】
なお、ワイヤ式巻取り装置10は、胴部44に形成されたワイヤ巻回溝42の螺旋ピッチP1と、回動軸45のネジ溝46のネジピッチP2と、が同じ間隔に設定されており、ドラム41からのワイヤ12の繰り出し位置が変わることなく、ドラム41が動力装置30側にスライド移動する。
【0050】
このとき、ワイヤ12は、回動軸45の長手軸Xに沿った方向であるドラム41の幅方向において、常に同じ位置からドラム41から繰り出されて引き出される。即ち、ワイヤ12は、ドラム41が回動軸45の長手軸Xに沿ったRr方向にスライド移動するため、胴部44のワイヤ巻回溝42からの導出位置が変わらず繰り出される。
【0051】
そして、ワイヤ12は、ドラム41から繰り出される位置が変わることなくプロテクタ6のワイヤ挿通路7に挿通して、リアゲート2から導出する。
【0052】
なお、動力装置30は、ワイヤ12が引き出されてドラム41および回動軸45がRr方向に回動すると、渦巻バネ35が内側に向けて絞られるように回動軸45に巻き付けられて弾性エネルギが蓄積される。即ち、動力装置30は、ドラム41にワイヤ12を巻き付ける方向(図中Pt方向)に回動軸45にトルクを与える。
【0053】
そのため、ワイヤ12に所定の張力が与えられる。このとき、ワイヤ12は、トノカバー5を吊り上げており、トノカバー5の重みによって、渦巻バネ35が蓄積する弾性エネルギに抗して、リアゲート2からラゲッジルーム4側に引き出された状態となる。
【0054】
一方、ワイヤ式巻取り装置10は、開扉されたリアゲート2が閉扉される際、
図8のワイヤ12が最大に引き出された状態から、
図7のワイヤ12が途中まで引き出された状態を経由して、
図5のドラム41にワイヤ12が巻回された初期状態となる。
【0055】
なお、ここでも、リアゲート2が閉じられると、ワイヤ式巻取り装置10は、
図5の初期状態ではなく、ワイヤ12が若干、引き出された状態となっている場合もある。
【0056】
ワイヤ式巻取り装置10は、ワイヤ12をPr方向と反対のPt方向へリアゲート2内に引き込む際、動力装置30の弾性エネルギが蓄積された渦巻バネ35が元に戻ろうとする復元力によって、回動軸45が軸X回りのRr方向とは反対側のRt方向に回動される。これにより、ドラム41は、回動軸45と共に、軸X回りのRr方向に回動される。
【0057】
即ち、回動軸45と共にドラム41も、Rr方向に回動しながら、軸受けナット部23,26と螺合する回動軸45による送りねじ機構によって、動力装置30側とは反対側の回動軸45の長手軸Xに沿ったMt方向にスライドして送り移動する。
【0058】
そのため、トノカバー5を吊り上げているワイヤ12は、胴部44のワイヤ巻回溝42に係合しながらドラム41に巻き取られる。この時においても、ワイヤ式巻取り装置10は、ドラム41の胴部44に形成されたワイヤ巻回溝42の螺旋ピッチP1と、回動軸45のネジ溝46のネジピッチP2と、が同じ間隔に設定されているため、ドラム41がMt方向に送られてスライド移動する。
【0059】
これにより、ワイヤ12は、ドラム41が回動軸45の長手軸Xに沿ったRt方向にスライド移動することにより、胴部44のワイヤ巻回溝42への係合位置が変わらず巻き取られる。即ち、ワイヤ12は、回動軸45の長手軸Xに沿った方向であるドラム41の幅方向において、常に同じ位置からドラム41に巻き取られる。
【0060】
そして、ワイヤ12は、ドラム41への巻取り位置が変わることなくプロテクタ6のワイヤ挿通路7に挿通して、ラゲッジルーム4側からリアゲート2内に導入される。
【0061】
なお、リアゲート2が閉扉されると、ワイヤ式巻取り装置10が
図5の初期状態となり、ワイヤ12がリアゲート2側へ略0(ゼロ)または若干の張力が生じた状態となる。このとき、フック13は、リアゲートトリム3のプロテクタ6と当接してストッパとなる。
【0062】
以上のように構成されたワイヤ式巻取り装置10は、ワイヤ12がドラムから繰り出される位置と、ドラム41に巻き取られる位置とが常に同じ位置となる。即ち、車両1のリアゲート2に設けられるワイヤ式巻き取り装置10は、ドラム41がスライド移動することにより、ワイヤ12の繰り出し位置と巻取り位置が一定となる。
【0063】
これにより、
図9に示すように、リアゲート2のラゲッジルーム4側(車室側)のリアゲートトリム3に設けられるプロテクタ6のワイヤ挿通路7および開口6aの径をワイヤ12の径に合わせて最小化することができる。即ち、プロテクタ6は、ワイヤ12の径と同等のワイヤ挿通路7および開口6aの径とすることができる。
【0064】
その結果、ワイヤ式巻取り装置10は、プロテクタ6のワイヤ挿通路7および開口6aをワイヤ12の太さと同等にすることができ、プロテクタ6の開口6aから小さな物がリアゲート2内部に落ちたり、ラゲッジルーム4内の物をプロテクタ6からリアゲート2内部に巻き込んだりすることを防止することができる。
【0065】
さらに、ワイヤ式巻取り装置10は、プロテクタ6の開口6aを最小化できるため、リアゲート2の車室側のリアゲートトリム3の美観を損ねることなく、見栄えが悪くなることも防止することができる。
【0066】
以上に記載したように、本実施の形態のワイヤ式巻取り装置10は、リアゲート2の車室側の美観を損ねることなく、ワイヤ導出部であるプロテクタ6の開口6aからリアゲート2内部に物が入り込んだり、ラゲッジルーム4内の物をリアゲート2内部に巻き込んだりすることを防止する構成となる。
なお、ワイヤ式巻取り装置10は、軸部材の回動軸45がドラム41と共に、この回動軸45が軸受けナット部23,26と螺合する送りねじ機構によって、長手軸Xに沿ってスライド移動する構成を例示したが、これに限定されることはない。
例えば、回動軸45を軸部材の固定軸として、この固定軸が挿通するドラム41の孔部に軸受けナットとなるネジ溝を形成した送りねじ機構によって、ドラム41が固定軸に対して長手軸Xに沿った方向にスライド移動する構成としてもよい。
なお、この構成の場合、動力装置30の渦巻バネ35は、ドラム41側に設けられており、ドラム41がワイヤ12を巻き取る方向へ回動するトルクを与える構成となる。
【0067】
以上の実施の形態に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記各形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0068】
例えば、各形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0069】
1・・・車両
2・・・リアゲート
3・・・リアゲートトリム
4・・・ラゲッジルーム(荷室)
5・・・トノカバー
6・・・プロテクタ
6a・・・開口
7・・・ワイヤ挿通路
10・・・巻取り装置
11・・・巻取り装置本体
12・・・ワイヤ
13・・・フック
13a・・・ビス
20・・・ワイヤドラム装置
21・・・ドラムケース本体
22・・・ワイヤゲート
23,26・・・軸受けナット部
25・・・カバー体
30・・・動力装置
31・・・バネケース本体
32・・・バネ収容室
34・・・カバーケース
35・・・渦巻バネ(ゼンマイバネ)
41・・・ドラム
41a,41b・・・フランジ部
42・・・ワイヤ巻回溝
43・・・ワイヤ接続部
44・・・胴部
45・・・回動軸
46・・・ネジ溝
47・・・溝
DW・・・幅
Dd・・・直径
P1・・・螺旋ピッチ
P2・・・ネジピッチ
RL・・・全長
X・・・軸(長手軸)