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  • 特開-ジフェニル尿素類の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056494
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ジフェニル尿素類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 273/18 20060101AFI20240416BHJP
   C07C 275/28 20060101ALI20240416BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C07C273/18
C07C275/28
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163398
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(72)【発明者】
【氏名】冨重 圭一
(72)【発明者】
【氏名】中川 善直
(72)【発明者】
【氏名】藪下 瑞帆
(72)【発明者】
【氏名】進藤 学
(72)【発明者】
【氏名】安藤 英児
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC57
4H006BA08
4H006BB14
4H006BB15
4H006BB20
4H006BB21
4H006BB22
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC19
4H006BE41
4H039CF30
4H039CG10
(57)【要約】
【課題】容易に連続製造することができるジフェニル尿素類の製造方法を提供する。
【解決手段】アニリンと、二酸化炭素とを原料とし、酸化セリウムを触媒、N-メチル-2-ピロリドン等を溶媒、2-シアノピリジンを脱水剤とし、流通式反応装置用い、常圧においてジフェニル尿素を合成する。例えば、反応管11に酸化セリウムを充填し、二酸化炭素と、N-メチル-2-ピロリドンに溶解させたアニリン類及び2-シアノピリジンとを流通させて、常圧において加熱して反応させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニリン及びアニリン誘導体からなる群のうちの少なくとも1種のアニリン類と、二酸化炭素とを原料とし、酸化セリウムを触媒、2-シアノピリジンを脱水剤として、溶媒を用い、常圧において、前記触媒に前記原料、脱水剤及び溶媒を流通させてジフェニル尿素類を合成することを特徴とするジフェニル尿素類の製造方法。
【請求項2】
反応温度は、398K以上428K以下とすることを特徴とする請求項1記載のジフェニル尿素類の製造方法。
【請求項3】
アニリン類と2-シアノピリジンとの流量の比は、アニリン類:2-シアノピリジンのモル比で1:16から1:1の範囲内とすることを特徴とする請求項1記載のジフェニル尿素類の製造方法。
【請求項4】
酸化セリウムに対するアニリン類の接触時間は、アニリン類1mol当たり40000g・h/molanilineから4200g・h/molanilineの範囲内とすることを特徴とする請求項1記載のジフェニル尿素類の製造方法。
【請求項5】
アニリン類と溶媒との流量の比は、アニリン類:溶媒のモル比で1:3から1:30の範囲内とすることを特徴とする請求項1記載のジフェニル尿素類の製造方法。
【請求項6】
二酸化炭素の流量は、3ml/minから60ml/minの範囲内とすることを特徴とする請求項1記載のジフェニル尿素類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェニル尿素類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフェニル尿素類は主に農薬の中間原料であり、両端の官能基を適宜変えることで、使用目的に応じた中間原料の製造が可能である。ジフェニル尿素の工業的な製造方法としては、例えば、アニリンとホスゲンとを反応させてジフェニル尿素を合成する方法が知られている(例えば、非特許文献1~3参照)。しかし、この製造方法は、原料に猛毒のホスゲンを使用すること、また、ホスゲンは移動制限があるためにジフェニル尿素を生産する工場内でホスゲンを生産する必要があり、ホスゲンを生産する限られたメーカーしか合成することができないこと、更には、バッチ式のため連続的に製造ができないという問題があった。
【0003】
また、ジフェニル尿素の工業的な他の製造方法としては、例えば、アニリンと尿素とを反応させてジフェニル尿素を合成する方法もある(例えば、非特許文献4参照)。この合成反応は平衡的には不利な反応であるが、ジフェニル尿素とともに副生成物として生成されるアンモニアを気体として系外に除去することで比較的高い収率を得ることが可能となる。そのため、バッチ式反応が多いと考えられ、連続的に製造することが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Pure Appl. Chem., Vol. 84, No. 3, pp. 827-860, 2012.
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society 1922, 44, 11, 2595-2604
【非特許文献3】有機合成化学 第15巻第3号(1957)140-143 ホスゲンと芳香族アミンによるイソシアネートの生成反応について
【非特許文献4】有機合成化学 第20巻第11号(1962)993-997 尿素およびその誘導体と各種アミンとの反応(第1報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、容易に連続製造することができるジフェニル尿素類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のジフェニル尿素類の製造方法は、アニリン及びアニリン誘導体からなる群のうちの少なくとも1種のアニリン類と、二酸化炭素とを原料とし、酸化セリウムを触媒、2-シアノピリジンを脱水剤とし、溶媒を用い、常圧において、触媒に原料、脱水剤及び溶媒を流通させてジフェニル尿素類を合成するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のジフェニル尿素類の製造方法によれば、二酸化炭素を目的物質であるジフェニル尿素類に直接変換することができるので、毒物を使用せずにジフェニル尿素類を合成することができる。また、常圧において連続製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係るジフェニル尿素類の製造方法において用いる反応装置の一構成例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本発明の一実施の形態に係るジフェニル尿素類の製造方法は、アニリン及びアニリン誘導体からなる群のうちの少なくとも1種のアニリン類と、二酸化炭素とを原料とし、酸化セリウムを触媒、N-メチル-2-ピロリドンを溶媒、2-シアノピリジンを脱水剤として、ジフェニル尿素類を合成するものである。ジフェニル尿素類というのは、化1に示したジフェニル尿素及びその誘導体であり、ジフェニル尿素誘導体としては、例えば、ジフェニル尿素の両端のフェニル基の水素が他の官能基で置換されたものが挙げられる。具体的には、例えば、ジフェニル尿素の両端のフェニル基の水素がメチル基やエチル基などのアルキル基、メトキシ基などのアルコキシ基、又は、アミノ基で置換されたものが挙げられる。
【0011】
【化1】
【0012】
反応式は、例えば、化2で表される。化2に示したように、アニリン類と二酸化炭素と2-シアノピリジンとから、ジフェニル尿素類が合成されると共に、副生成物として2-ピコリンアミドが生成される。なお、化2では、アニリン類としてアニリンを用い、ジフェニル尿素を合成する場合を示している。
【0013】
【化2】
【0014】
原料のアニリン誘導体としては、例えば、アニリンのフェニル基の水素がアルキル基に置換されたメチルアニリン(別名トルイジン),エチルアニリンなど、アニリンのフェニル基の水素がアルコキシ基で置換されたメトキシアニリン(別名アニシジン)など、又は、アニリンのフェニル基の水素がアミノ基で置換されたフェニレンジアミンなどが代表的に挙げられる。これらのアニリン誘導体を用いることにより、例えば、化3に示したように、ジフェニル尿素の両端のフェニル基の水素が他の官能基で置換されたジフェニル尿素誘導体を得ることができる。なお、化3においてRは置換基である。
【0015】
【化3】
【0016】
本実施の形態に係るジフェニル尿素類の製造方法では、常圧において合成することができる。反応装置は、例えば、所定の温度、所定の圧力に保たれた装置内に、原料を連続的に供給して反応を行わせ、生成物を連続的に抜き出す方式の装置であり、例えば、流通式反応装置が挙げられる。常圧は地球の通常の圧力であり、1013.25hPa(1気圧)である。
【0017】
図1に反応装置の一構成例を示す。この反応装置は、例えば、内部に触媒である酸化セリウムを充填した反応管11を有している。反応管11の内部は、所定の温度及び所定の圧力に保つことができるように構成されている。反応管11には、配管12を介して二酸化炭素を供給する気体供給源13と、配管12を介してアニリン類及び2-シアノピリジンを溶媒のN-メチル-2-ピロリドンと共に供給する液体供給源14とが接続されている。気体供給源13と反応管11との間には、例えば、バルブ13a、減圧レギュレーター13b、圧力計13c、流量調節器13d、及び、逆止弁13eが配設されている。液体供給源14は、アニリン類と2-シアノピリジンとN-メチル-2-ピロリドンとを混合して供給するものであり、シリンジポンプ等により構成することができる。液体供給源14と反応管11との間には、例えば、バルブ14aが配設されている。また、反応管11には、生成物を回収する回収部15が配管16を介して接続されている。回収部15は、例えば、冷却部17により冷却したエタノールにより生成物を回収するように構成されている。
【0018】
本実施の形態に係るジフェニル尿素類の製造方法では、例えば、図1に示したような反応装置を用い、触媒である酸化セリウムを充填した反応管11に、二酸化炭素と、N-メチル-2-ピロリドン等の溶媒に溶解させたアニリン類及び2-シアノピリジンとを流通させて、常圧において加熱して反応させ、ジフェニル尿素類を合成する。反応時間は、例えば、5時間から7時間程度である。
【0019】
反応温度は398K以上458K以下とすることが好ましく、398K以上428K以下の範囲内とすればより好ましい。この範囲内においてジフェニル尿素類の収率及び選択率を高くすることができるからである。
【0020】
アニリン類と2-シアノピリジンとの流量の比、例えば、アニリン類と2-シアノピリジンとの混合比は、アニリン類:2-シアノピリジンのモル比で1:16から1:1の範囲内とすることが好ましく、1:12から1:4の範囲内とすればより好ましい。この範囲内においてジフェニル尿素類の収率が向上し、反応が高選択的に進むからである。
【0021】
触媒である酸化セリウムに対するアニリン類の接触時間は、アニリン類1mol当たり、40000g・h/molanilineから4200g・h/molanilineの範囲内とすることが好ましく、20000g・h/molanilineから9100g・h/molanilineの範囲内とすればより好ましい。この範囲内において、ジフェニル尿素類の収率及び選択率を高くすることができるからである。
【0022】
溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、2-プロパノール、ジグリム、及び、ジメチルスルホキシドが挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いてもよく、これらのうちの少なくとも1種以上を混合して用いてもよい。中でも、溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。アニリン類と溶媒との流量の比は、アニリン類:溶媒のモル比で1:3から1:30の範囲内とすることが好ましい。すなわち、アニリン類に対して溶媒を3倍程度と溶媒量を少なくしても、良好に反応を進めることができる。
【0023】
二酸化炭素の流量は、3ml/minから60ml/minの範囲内とすることが好ましい。この範囲内において良好に反応を進めることができるからである。なお、二酸化炭素は窒素で希釈して導入するようにしてもよいが、希釈しない方が好ましい。二酸化炭素の分圧が低くなると反応が進行し難くなるので好ましくない。
【0024】
このように本実施の形態によれば、二酸化炭素を目的物質であるジフェニル尿素類に直接変換することができるので、毒物を使用せずにジフェニル尿素類を合成することができる。また、常圧において触媒に原料、溶媒及び脱水剤を流通させてジフェニル尿素類を連続製造することができる。
【実施例0025】
(実施例1-1~1-10)
図1に示した反応装置を用い、反応管11に触媒である酸化セリウム4gを充填し、二酸化炭素と、溶媒に溶解させたアニリン及び2-シアノピリジンとを流通させ、溶媒を各実施例及び各比較例で変化させて、ジフェニル尿素を合成した。反応圧力は常圧(約0.1Mpa)、反応温度は398K、428K、又は、458Kとした。二酸化炭素の流量は3ml/min、アニリンと2-シアノピリジンと溶媒とのモル比はアニリン:2-シアノピリジン:溶媒=1:8:15、触媒である酸化セリウムに対するアニリンの接触時間はアニリン1mol当たり、4200g・h/molaniline、反応時間は7時間とした。
【0026】
溶媒は、実施例1-1~1-3はN-メチル-2-ピロリドン、実施例1-4はアセトニトリル、実施例1-5,1-6はテトラヒドロフラン、実施例1-7,1-8は1,4-ジオキサン、実施例1-9は2-プロパノール、実施例1-10はジグリム、実施例1-11,1-12はジメチルスルホキシドとした。また、実施例1-1,実施例1-4、実施例1-5、実施例1-7、実施例1-9、実施例1-10及び実施例1-11の反応温度は398Kとし、実施例1-2、実施例1-6、実施例1-8及び実施例1-12の反応温度は428Kとし、実施例1-3の反応温度は458Kとした。
【0027】
各実施例について、ジフェニル尿素の収率、選択率を算出した。ジフェニル尿素の収率は、{ジフェニル尿素の生成量(mmol)/アニリン投入量(mmol)}×100から求め、ジフェニル尿素の選択率は、{ジフェニル尿素の生成量(mmol)/アニリン由来生成物の量の和(mmol)}×100から求めた。得られた結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示したように、いずれもジフェニル尿素の収率及び選択率について高い値が得られた。特に、溶媒にN-メチル-2-ピロリドンを用いた実施例やジメチルスルホキシドを用いた実施例によれば、反応温度398K及び428Kにおいて、安定して高い値が得られた。
【0030】
すなわち、常圧において、触媒に原料、脱水剤及び溶媒を流通させることにより、二酸化炭素を目的物質であるジフェニル尿素類に直接変換することができ、かつ、ある程度の温度範囲において、高い収率及び選択率が得られることが分かった。この場合の反応温度は398K以上428K以下とすることが好ましいことが分かった。
【0031】
(実施例2-1~2-9)
実施例2-1~2-9として、原料であるアニリンの流量を一定とし、2-シアノピリジンの流量を変化させたことを除き、他は、実施例1-1と同様にしてジフェニル尿素を合成した。アニリンと2-シアノピリジンとの流量の比は、アニリン:2-シアノピリジンのモル比で、実施例2-1は1:16、実施例2-2は1:12、実施例2-3は1:8、実施例2-4は1:4、実施例2-5は1:2、実施例2-6は1:1、実施例2-7は1:0.5、実施例2-8は1:0.2、実施例2-9は1:0.1とした。
【0032】
各実施例は、反応温度398Kでの結果であり、ジフェニル尿素の収率、選択率は、実施例1-1と同様にして求めた。得られた結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示したように、ジフェニル尿素の収率は、アニリンと2-シアノピリジンのモル比が1:16から1:8と小さくなるに従い向上し、アニリン:2-シアノピリジンのモル比が1:8よりもさらに小さくなると低下する傾向が見られた。また、ジフェニル尿素の選択率は、アニリンに対する2-シアノピリジンの比が小さい(アニリン過剰)の場合に低くなった。すなわち、アニリン類と2-シアノピリジンとの流量の比は、アニリン類:2-シアノピリジンのモル比で1:16から1:1の範囲内とすることが好ましく、1:12から1:4の範囲内とすればより好ましいことが分かった。
【0035】
(実施例3-1~3-8)
実施例3-1~3-8として、触媒である酸化セリウムの充填量を変化させて酸化セリウムに対するアニリンの接触時間を変化させたことを除き、他は、実施例1-1と同様にしてジフェニル尿素を合成した。酸化セリウムに対するアニリンの接触時間は、アニリン1mol当たりで、実施例3-1は40000g・h/molaniline、実施例3-2は20000g・h/molaniline、実施例3-3は14100g・h/molaniline、実施例3-4は9100g・h/molaniline、実施例3-5は7000g・h/molaniline、実施例3-6は4200g・h/molaniline、実施例3-7は2000g・h/molaniline、実施例3-8は800g・h/molanilineとした。
【0036】
各実施例は、反応温度398Kでの結果であり、ジフェニル尿素の収率、選択率は、実施例1-1と同様にして求めた。得られた結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
表3に示したように、ジフェニル尿素の収率は接触時間が長くなるに従い増加し、接触時間20000g・h/molanilineで最大となり、それよりも接触時間を長くしても増加は見られなかった。一方、ジフェニル尿素の選択率は、接触時間が長くなると副生物の生成が増え、徐々に低下した。すなわち、酸化セリウムに対するアニリン類の接触時間は、アニリン類1mol当たり、40000g・h/molanilineから4200g・h/molanilineの範囲内とすることが好ましく、20000g・h/molanilineから91000g・h/molanilineの範囲内とすればより好ましいことが分かった。
【0039】
(実施例4-1~4-4)
実施例4-1~4-4として、原料であるアニリンの流量を一定とし、溶媒であるN-メチル-2-ピロリドンの流量を変化させたことを除き、他は、実施例1-1と同様にしてジフェニル尿素を合成した。アニリンとN-メチル-2-ピロリドンとの流量の比は、アニリン:N-メチル-2-ピロリドンのモル比で、実施例4-1は1:3、実施例4-2は1:7.5、実施例4-3は1:15、実施例4-4は1:30とした。
【0040】
各実施例は、反応温度398Kでの結果であり、ジフェニル尿素の収率、選択率は、実施例1-1と同様にして求めた。得られた結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
表4に示したように、ジフェニル尿素の収率は、アニリンと溶媒との流量の比が、アニリン:溶媒のモル比で1:3から1:30の範囲内において、少ない溶媒量でも反応が進行することが確認された。また、アニリン:溶媒のモル比を1:30とした実施例4-4では、アニリンの濃度が低下し、ジフェニル尿素の収率が低下したので、アニリン類と溶媒との流量の比は、アニリン類:溶媒のモル比で1:3から1:15の範囲内がより好ましいことが分かった。
【0043】
(実施例5-1~5-6)
実施例5-1~5-5として、二酸化炭素の流量を変えたことを除き、他は、実施例1-1と同様にしてジフェニル尿素を合成した。二酸化炭素の流量は、実施例5-1が3ml/min、実施例5-2が5ml/min、実施例5-3が15ml/min、実施例5-4が30ml/min、実施例5-5が60ml/minとした。また、実施例5-6として、二酸化炭素を窒素で希釈して流通させたことを除き、他は、実施例1-1と同様にしてジフェニル尿素を合成した。実施例5-6における二酸化炭素の流量は3ml/min、窒素の流量は57ml/minとした。
【0044】
各実施例は、反応温度398Kでの結果であり、ジフェニル尿素の収率、選択率は、実施例1-1と同様にして求めた。得られた結果を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
表5に示したように、ジフェニル尿素の収率及び選択率は、二酸化炭素の流量が3ml/minから60ml/minの範囲内においてほぼ影響が見られなかったので、二酸化炭素の流量は、3ml/minから60ml/minの範囲内が好ましいことが分かった。また、実施例5-6を見れば分かるように、二酸化炭素の分圧を低くするとジフェニル尿素の収率は低下したため、窒素などとの混合ガスとして用いるより二酸化炭素の純ガスとして用いる方が好ましい。
【0047】
(実施例6-1)
実施例6-1として、アニリン類としてアニリンに変えてアニリン誘導体を用いたこと除き、他は、実施例1-1と同様にして、ジフェニル尿素類としてジフェニル尿素誘導体を合成した。アニリン誘導体は、実施例6-1ではp-アニシジンを用いた。
【0048】
各実施例は、反応温度398Kでの結果であり、ジフェニル尿素誘導体の収率、選択率は、実施例1-1と同様にして求めた。得られた結果を表6に示す。表6に示したように、いずれも、ジフェニル尿素誘導体の収率は低いものの、選択率について高い値が得られた。アニリン誘導体としては、他に1,4-フェニレンジアミン及びo-トルイジンを用いることができる。
【0049】
【表6】
【0050】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。
【符号の説明】
【0051】
11…反応管、12…配管、13…気体供給源、13a…バルブ、13b…減圧レギュレーター、13c…圧力計、13d…流量調節器、13e…逆止弁、14…液体供給源、14a…バルブ、15…回収部、16…配管、17…冷却部
図1