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特開2024-56496化粧シート、化粧材、化粧シートの製造方法、化粧材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056496
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】化粧シート、化粧材、化粧シートの製造方法、化粧材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240416BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163402
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 祐介
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AB19B
4F100AB24B
4F100AC04B
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK15A
4F100AK15D
4F100AK17B
4F100AK52B
4F100AR00A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100AT00E
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10E
4F100CA12B
4F100CA18B
4F100DD01B
4F100DE01B
4F100EJ19
4F100EJ65E
4F100HB00A
4F100HB01B
4F100JB13B
4F100JB14B
4F100JC00B
4F100JK12
4F100JL10A
4F100JN01D
4F100YY00B
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】表面保護層の厚さに発生するばらつきを低減させることが可能な、化粧シート、化粧材、化粧シートの製造方法、化粧材の製造方法を提供する。
【解決手段】化粧材10が、基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備え、化粧シート1は、着色原反層2と、着色原反層2の一方の面に積層された表面保護層6とを備え、表面保護層6は、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を含む第一表面保護層6aを有し、表面保護層6の100質量%に対する抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内であり、抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下の範囲内であり、表面保護層6には、エンボス7が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色原反層と、
前記着色原反層の一方の面に積層された表面保護層と、を備え、
前記表面保護層は、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を含む第一表面保護層を有し、
前記表面保護層の100質量%に対する前記抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内であり、
前記抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下の範囲内であり、
前記表面保護層には、エンボスが形成されている化粧シート。
【請求項2】
前記エンボスの深さは、20μ以上200μ以下の範囲内である請求項1に記載した化粧シート。
【請求項3】
前記抗ウイルス剤は、銀系抗ウイルス剤、抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア、ジンクピリチオン、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、10、10-オキシビスフェノキサルシン、有機窒素硫黄ハロゲン系、ピリジン-2-チオール-オキシド、のうち少なくとも一つを含有する請求項1に記載した化粧シート。
【請求項4】
JIS K 5600の規定による鉛筆硬度試験で測定した前記第一表面保護層の硬度は、4B以上2H以下の範囲内である請求項1に記載した化粧シート。
【請求項5】
前記第一表面保護層は、前記化粧シートの表面を形成する層であり、
前記表面保護層は、前記第一表面保護層と前記着色原反層との間に配置された第二表面保護層をさらに有する請求項1に記載した化粧シート。
【請求項6】
前記第一表面保護層の厚さと、前記第二表面保護層の厚さとの合計値は、3μm以上15μm以下の範囲内である請求項5に記載した化粧シート。
【請求項7】
前記抗ウイルス剤の平均粒径は、前記表面保護層の厚さの0.5倍以上2倍以下の範囲内である請求項1に記載した化粧シート。
【請求項8】
前記抗ウイルス剤は、無機材料により担持されている請求項1に記載した化粧シート。
【請求項9】
前記第一表面保護層は、シリコン系成分及びフッ素系成分のうち少なくとも一方が含まれている請求項1に記載した化粧シート。
【請求項10】
前記第一表面保護層は、界面活性剤が添加されている請求項1に記載した化粧シート。
【請求項11】
前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤のうち少なくとも一つを含む請求項10に記載した化粧シート。
【請求項12】
前記着色原反層と前記表面保護層との間に配置された透明樹脂層をさらに備える請求項1に記載した化粧シート。
【請求項13】
前記透明樹脂層の厚さは、30μm以上200μm以下の範囲内である請求項12に記載した化粧シート。
【請求項14】
前記透明樹脂層にエンボスが形成されている請求項12に記載した化粧シート。
【請求項15】
前記着色原反層の他方の面に積層されたプライマー層を備える請求項1に記載した化粧シート。
【請求項16】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項1から請求項15のうちいずれか1項に記載した化粧シートと、を備える化粧材。
【請求項17】
着色原反層と、前記着色原反層の一方の面に積層された表面保護層と、を備える化粧シートの製造方法であって、
前記表面保護層を、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を添加した第一表面保護層を有する層として形成し、
前記表面保護層の100質量%に対し、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内で、平均粒径を1μm以上10μm以下の範囲内とした前記抗ウイルス剤を、前記表面保護層へ添加し、
前記表面保護層に、前記抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、前記紫外線硬化型樹脂及び前記電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を添加した後に、前記表面保護層にエンボスを形成する化粧シートの製造方法。
【請求項18】
着色原反層と、前記着色原反層の一方の面に積層された表面保護層と、を備える化粧シートと、
前記化粧シートを少なくとも一方の面に積層した基材と、を備える化粧材の製造方法であって、
前記表面保護層を、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を添加した第一表面保護層を有する層として形成し、
前記表面保護層の100質量%に対し、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内で、平均粒径を1μm以上10μm以下の範囲内とした前記抗ウイルス剤を、前記表面保護層へ添加し、
前記表面保護層に、前記抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、前記紫外線硬化型樹脂及び前記電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を添加した後に、前記表面保護層にエンボスを形成する化粧材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート、化粧材、化粧シートの製造方法、化粧材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内装用の化粧シートに関する技術としては、例えば、特許文献1に開示されているように、化粧シートの最表面を形成するコーティング樹脂の中に、銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤を配合した抗ウイルス性を有する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-080887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、意匠性を向上させるために、例えば、絵柄模様層を保護するための透明樹脂層にエンボスを付与することで、化粧シートの表面に凹凸形状を形成する場合がある。しかしながら、特許文献1に開示されている技術を含め、従来の技術では、透明樹脂層にエンボスを付与した後に、化粧シートの最表面を形成する表面保護層を形成する。このため、エンボスの深さによっては、表面保護層の材料を塗工する際に、エンボスが深い部分まで表面保護層の材料を均一に塗工することが困難となり、表面保護層の厚さにばらつきが発生して、抗ウイルス性能や抗菌性能が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点を鑑み、表面保護層の厚さに発生するばらつきを低減させることが可能な、化粧シート、化粧材、化粧シートの製造方法、化粧材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、着色原反層と、表面保護層とを備える化粧シートである。表面保護層は、着色原反層の一方の面に積層された層であり、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を含む第一表面保護層を有する。また、表面保護層の100質量%に対する抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内であり、抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下の範囲内である。そして、表面保護層には、エンボスが形成されている。
【0007】
また、上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、基材と、基材の少なくとも一方の面に積層された化粧シートとを備える化粧材である。
【0008】
また、上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、着色原反層と、着色原反層の一方の面に積層された表面保護層とを備える化粧シートの製造方法である。そして、化粧シートの製造方法では、表面保護層を、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を添加した第一表面保護層を有する層として形成する。さらに、表面保護層の100質量%に対し、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内で、平均粒径を1μm以上10μm以下の範囲内とした抗ウイルス剤を、表面保護層へ添加する。これに加え、表面保護層に、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方とを添加した後に、表面保護層にエンボスを形成する。
【0009】
また、上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、着色原反層と、着色原反層の一方の面に積層された表面保護層とを備える化粧シートと、化粧シートを少なくとも一方の面に積層した基材とを備える化粧材の製造方法である。そして、化粧材の製造方法では、表面保護層を、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方とを添加した第一表面保護層を有する層として形成する。さらに、表面保護層の100質量%に対し、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内で、平均粒径を1μm以上10μm以下の範囲内とした抗ウイルス剤を、表面保護層へ添加する。これに加え、表面保護層に、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を添加した後に、表面保護層にエンボスを形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、表面保護層の厚さに発生するばらつきを低減させることが可能な、化粧シート、化粧材、化粧シートの製造方法、化粧材の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施形態における化粧シートの構成を示す断面図である。
図2】表面保護層の具体的な構成を示す断面図である。
図3】第一実施形態の変形例における表面保護層の構成を示す断面図である。
図4】第二実施形態における化粧材の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0013】
(第一実施形態)
以下、図1を参照して、第一実施形態における化粧シート1の構成について説明する。
化粧シート1は、図1に示すように、着色原反層2と、絵柄模様層3と、接着性樹脂層4と、透明樹脂層5と、表面保護層6を備える。
【0014】
<着色原反層>
着色原反層2は、化粧シート1の基材となる層である。
第一実施形態では、一例として、着色原反層2の材料を、熱可塑性樹脂を用いた場合について説明する。
【0015】
熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いは、それらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を用いることが可能である。
【0016】
ここで、着色原反層2に使用可能な熱可塑性樹脂として、多数の熱可塑性樹脂を挙げたが、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、ポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは望ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが望ましい。特に、各種物性や、加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)を使用することが最も望ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、既に列挙した多くの種類から、化粧シートの使用目的等に応じて適宜選択して使用すればよい。特に、一般的な用途に最も好適なのは、ポリプロピレン系樹脂、すなわち、プロピレンを主成分とする単独又は共重合体である。例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独、又は適宜配合、それらに更にアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を用いることが可能である。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1又はオクテン-1のコモノマーの1種又は2種以上を15モル%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等を例示することが可能である。また、通常、ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体又はその水素添加物等の改質剤を適宜添加することが可能である。
【0017】
さらに、着色原反層2には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を添加してもよい。
着色原反層2の厚さは、40[μm]以上150[μm]以下の範囲内であることが好ましく、50[μm]以上130[μm]以下の範囲内であることがより好ましい。これは、着色原反層2の厚さが40[μm]以上である場合、下地となる床材の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。これに加え、着色原反層2の厚さが150[μm]以下である場合、着色原反層2を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減すること可能であることに起因する。
【0018】
<絵柄模様層>
絵柄模様層3は、着色原反層2の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。なお、絵柄模様層3は、着色原反層2の着色で代用することが可能である場合には、省略することも可能である。
また、絵柄模様層3は、印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。絵柄模様層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散させて形成される。
【0019】
絵柄模様層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
絵柄模様層3の乾燥後の重量は、好ましくは0.1[g/m]以上15[g/m]以下の範囲内、より好ましくは3[g/m]以上10[g/m]以下の範囲内、さらに好ましくは6[g/m]以上9[g/m]以下の範囲内である。
【0020】
絵柄模様層3の絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いることが可能である。
また、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、絵柄模様層3と着色原反層2との間に、隠蔽層を設けてもよい。隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を用いて形成する。
【0021】
また、絵柄模様層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
絵柄模様層3の厚さは、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、より好ましくは0.5[μm]以上5[μm]以下の範囲内、さらに好ましくは0.7[μm]以上3[μm]以下の範囲内に設定する。これは、絵柄模様層3の厚さが1[μm]以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄模様層3の厚さが10[μm]以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
【0022】
なお、絵柄模様層3は、化粧シート1に複数設けられていてもよい。
また、絵柄模様層3には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
また、絵柄模様層3は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色原反層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄模様層とを有する構成としてもよい。
【0023】
<接着性樹脂層>
接着性樹脂層4は、絵柄模様層3の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、絵柄模様層3と透明樹脂層5との接着に用いられる層である。
接着性樹脂層4の材料としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等を用いることが可能である。特に、透明樹脂層5との接着性から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0024】
<透明樹脂層>
透明樹脂層5は、接着性樹脂層4の一方の面(図1では、上側の面)に積層された層である。
透明樹脂層5の厚さは、例えば、10[μm]以上200[μm]以下の範囲内、30[μm]以上150[μm]以下の範囲内、好ましくは55[μm]以上100[μm]以下の範囲内、より好ましくは60[μm]以上80[μm]以下の範囲内とする。
これは、透明樹脂層5の厚さが10[μm]以上である場合、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にすることが可能であることに起因する。また、透明樹脂層5の厚さが150[μm]以下である場合、透明樹脂層5を必要以上に厚く形成することがなく、化粧シート1の製造コストを削減することが可能であることに起因する。
【0025】
透明樹脂層5の密度は、0.90[g/cm]以上0.96[g/cm]以下の範囲内であることが好ましく、好ましくは0.90[g/cm]以上0.91[g/cm]以下の範囲内であることがより好ましい。
これは、透明樹脂層5の密度が0.90[g/cm]以上である場合、透明樹脂層5の剛性を高めることが可能であることに起因する。また、透明樹脂層5の密度が0.96[g/cm]以下である場合、透明樹脂層5の透明性や機械的強度を高めることが可能であることに起因する。
【0026】
また、透明樹脂層5の密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。
透明樹脂層5を製造する方法は、特に限定されず、従来から公知の方法を用いることが可能である。第一実施形態では、透明樹脂層5を押出成形で形成する場合について説明する。また、押出成形は、Tダイ法又はインフレーション法により行われることが好ましい。
【0027】
透明樹脂層5には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上を添加してもよい。
なお、透明樹脂層5は、化粧シート1の表面(上面)から絵柄模様層3の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
【0028】
<表面保護層>
表面保護層6は、透明樹脂層5の一方の面(図1では、上側の面)に積層されており、化粧シート1に対して、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するために設けられた層である。すなわち、表面保護層6は、着色原反層2の一方の面に積層された層である。また、透明樹脂層5は、着色原反層2と表面保護層6との間に配置された層である。
また、表面保護層6は、曲げ加工性、耐候性、耐傷付性や清掃性に関して、優劣を左右する重要な役割を有する。表面保護層6は、硬化型樹脂(硬化性樹脂)を主成分とする。すなわち、樹脂成分が実質的に硬化型樹脂から構成されることが好ましい。実質的とは、例えば、樹脂全体を100質量部とした場合に、80質量部以上を示す。
【0029】
表面保護層6の乾燥後の重量は、好ましくは0.1[g/m]以上15[g/m]以下の範囲内、より好ましくは3[g/m]以上10[g/m]以下の範囲内、さらに好ましくは6[g/m]以上9[g/m]以下の範囲内である。
表面保護層6の厚さは、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、より好ましくは3[μm]以上10[μm]以下の範囲内、さらに好ましくは6[μm]以上9[μm]以下の範囲内である。
【0030】
また、表面保護層6には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。また、表面保護層6には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
なお、表面保護層6は単層で構成しても、複数の層を重ねて構成してもよい。
【0031】
第一実施形態では、図1に示すように、表面保護層6の構成を、第一表面保護層6aの一層から構成される構造(単層構造)とした場合について説明する。
第一表面保護層6aを有する表面保護層6を形成する際には、第一表面保護層6aの主成分として用いる硬化型樹脂の種類に応じて、既知の装置である、コーティング装置、熱乾燥装置、紫外線照射装置等を用いて、塗布及び塗膜の硬化を行う。
【0032】
[第一表面保護層]
第一表面保護層6aは、表面保護層6を構成する層のうち、最表面(最外面)に位置する層(最表層)である。すなわち、第一表面保護層6aは、化粧シート1の表面を形成する層である。
JIS K 5600の規定による鉛筆硬度試験で測定した第一表面保護層6aの硬度は、4B以上2H以下の範囲内であり、より好ましくは、3B以上H以下の範囲内である。
【0033】
これは、第一表面保護層6aの硬度が4B以上2H以下の範囲内であれば、後述するエンボス7を表面保護層6に形成した際に、表面保護層6の塗膜割れや、エンボス7を形成した際に表面保護層6の塗膜に発生するクラックを抑制することが可能であることに起因する。
また、第一表面保護層6aは、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一つとを含む。なお、以降の説明では、電子線硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂とを、まとめて、電離放射線硬化型樹脂と記載する場合がある。
【0034】
第一表面保護層6aは、一般的に、反応性樹脂を塗工することにより塗膜を形成した後に、加熱や電離放射線照射により塗膜を硬化させる方法で形成することが可能である。
第一表面保護層6aの厚さは、3[μm]以上15[μm]以下の範囲内が望ましい。
これは、第一表面保護層6aの厚さが3[μm]以上であれば、耐傷性、耐摩耗性、耐候性等、各種耐性が向上することに起因する。これに加え、第一表面保護層6aの厚さが15[μm]以下であれば、必要以上に多くの量の樹脂材料を使用する必要がなくコストを低減することが可能であることに起因する。
【0035】
また、第一表面保護層6aにおいては、硬化方法の違いによる特性差もある。例えば、一般的に、電離放射線硬化型樹脂で形成された第一表面保護層6aは、硬化反応後の架橋度が高いことから硬度も高く、耐傷性に優れる傾向にある。一方で、熱硬化型樹脂で形成された第一表面保護層6aは、比較的架橋度が低いために硬度が低く、折り曲げや基材への追従等の柔軟性に優れる傾向にある。
なお、第一表面保護層6aは、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂のいずれか1種を主成分としてもよい。つまり、第一表面保護層6aの主成分は、熱硬化型樹脂単体であってもよいし、紫外線硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂単体であってもよい。
【0036】
例えば、化粧シート1を、部材として複雑な形状が多い建具に用いる場合は、柔軟性(例えば、加工適正)が要求されることが多い。このため、例えば、建具に用いる化粧シート1において、第一表面保護層6aの主成分には、熱硬化型樹脂を用いることが好ましい。また、化粧シート1において柔軟性よりも耐傷性が求められる場合、第一表面保護層6aの主成分には、電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
また、第一表面保護層6aの主成分は、熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂との混合物であってもよい。混合物を主成分とする場合、化粧シート1を使用する用途によって、第一表面保護層6aにおける、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂の比率をコントロールすることで、化粧シート1を、各種用途の要求に応じて使い分けることが可能となる。
【0037】
例えば、化粧シート1を建具に用いる場合、第一表面保護層6aの主成分となる混合物は、熱硬化型樹脂を最も多く含有することが好ましい。具体的には、混合物において、熱硬化型樹脂が50重量[%]を超えていればよく、70重量[%]以上を占めることが好ましく、75重量[%]以上を占めることがより好ましく、80重量[%]以上を占めることがさらに好ましい。
また、例えば、化粧シート1に耐傷性が求められる場合、第一表面保護層6aの主成分となる混合物は、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂を最も多く含有することが好ましい。具体的には、混合物において、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂が50重量[%]を超えていればよく、70重量[%]以上を占めることが好ましく、75重量[%]以上を占めることがより好ましく、80重量[%]以上を占めることがさらに好ましい。
【0038】
このように、表面保護層6の最表層である第一表面保護層6aの主成分を、熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂との混合物とすることで、第一表面保護層6aの耐傷性を向上させることが可能となる。これに加え、曲げ加工において、第一表面保護層6aの白化や割れの発生を抑制することが可能となる。
ただし、第一表面保護層6aに用いる樹脂の硬化方法の違いのみで、耐傷付性や加工適性といった化粧シート1の性能が決まるわけではない。化粧シート1の性能(ここでは、耐傷付性や加工適性)は、樹脂自体の材料設計やフィラー等の添加剤の添加作用、つまり第一表面保護層6aに含まれる各種成分の物性が、性能に大きく寄与する。このため、第一表面保護層6a全体としての設計が重要である。
【0039】
〔抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂〕
第一表面保護層6aが含む熱硬化型樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、2液硬化型ウレタン系樹脂を用いることが可能である。2液硬化型ウレタン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものを用いることが可能である。また、熱硬化型樹脂としてはこれらに限られず、1液反応硬化型のポリウレタン系樹脂や、1液又は2液反応硬化型のエポキシ系樹脂等を用いてもよい。
【0040】
また、第一表面保護層6aには、界面活性剤が添加されている。
界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤のうち少なくとも一つを含む。界面活性剤が添加されていることにより、銀系抗ウイルス剤と表面保護層のバインダ中の相溶性が良好となり、塗工中の抗ウイルス剤の沈殿等による濃度のばらつきが抑制された化粧シート1を得ることが可能となる。
【0041】
〔抗ウイルス剤〕
第一表面保護層6aが含む熱硬化型樹脂は、抗ウイルス性を向上させる抗ウイルス剤を含む。
抗ウイルス剤は、銀系材料(銀系抗ウイルス剤)であることが好ましい。抗ウイルス剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニア等の物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤を用いることが可能である、また、抗ウイルス剤としては、ジンクピリジオン、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、10、10-オキシビスフェノキサノジン、有機窒素硫黄ハロゲン系、ピリジン-2-チオール-オキシド等を用いることが可能であるが、抗ウイルス効果の点で、銀系抗ウイルス剤が優れている。
【0042】
また、抗ウイルス剤は、例えば、銀系材料が無機材料に担持されている構成であってもよい。これにより、ウイルス効果の持久性に優れた化粧シート1を得ることが可能となる。
第一表面保護層6aにおける抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量[%]以上10質量[%]以下の範囲内である。これは、抗ウイルス剤の添加量が0.2質量[%]以上である場合、抗ウイルス剤が効果的に作用し、抗ウイルス性が向上することと、抗ウイルス剤の添加量が10質量[%]以下である場合、耐傷性が向上することに起因する。
【0043】
抗ウイルス剤の平均粒径は、表面保護層6(第一表面保護層6a)の厚さの0.5倍以上2倍以下の範囲内であることが望ましい。すなわち、抗ウイルス剤の平均粒径をΦとし、表面保護層の厚さをDとしたときに、0.5≦Φ≦2Dの関係が成立することが望ましい。
これは、抗ウイルス剤の平均粒径が表面保護層6の0.5倍以上2倍以下の範囲内である場合、抗ウイルス剤との接触面積を拡大させることが可能であるとともに、抗ウイルス剤自体の表面積を拡大させることにより、抗ウイルス性が良好になることに起因する。
【0044】
また、抗ウイルス剤の平均粒径は、1[μm]以上10[μm]以下であることが望ましい。
これは、抗ウイルス剤の平均粒径が1[μm]以上である場合、ウイルスと抗ウイルス剤との接触面積が向上して、抗ウイルス性が良好になることに起因する。これに加え、抗ウイルス剤の平均粒径が10[μm]以下である場合、耐傷性が向上することに起因する。
【0045】
また、第一実施形態では、例えば、耐汚染性向上策として、化粧シート1の最表面(第一表面保護層6a)に、シリコン系成分(例えば、シリコン樹脂)や、フッ素系成分(例えば、フッ素樹脂)を設定してもよい。
【0046】
〔シリコン樹脂〕
シリコン樹脂を用いる場合は、周囲との密着性や相溶性の問題から変性シリコンを用いることが好ましい。第一表面保護層6aを構成する硬化型樹脂が、紫外線硬化型樹脂又は電子線硬化型樹脂から形成される場合には、変性シリコンは、電離放射線反応性の変性シリコン樹脂であることが好ましい。また、第一表面保護層6aを構成する硬化型樹脂が、熱硬化型樹脂から形成される場合には、変性シリコンは、熱反応性の変性シリコン樹脂であることが好ましい。また、第一表面保護層6aを構成する硬化型樹脂が、電離放射線硬化型樹脂及び熱硬化型樹脂の混合から形成される場合には、変性シリコンは、電離放射線反応性及び熱反応性のうち少なくとも一方を有する変性シリコン樹脂であることが好ましい。
変性シリコンは、反応性変性シリコンと非反応性シリコンとに分類することが可能である。熱反応性の変性シリコンとしては、モノアミン変性シリコン、ジアミン変性シリコン、エポキシ変性シリコン、カルビノール変性シリコン、カルボキシ変性シリコン、メルカプト変性シリコン、シラノール変性シリコン、アルコール変性シリコン、ジオール変性シリコンが例示される。また、電離放射線反応性の変性シリコンとしては、アクリル変性シリコン、メタクリル変性シリコンが例示される。また、非反応性変性シリコンであるポリエーテル変性シリコン、アラルキル変性シリコン、長鎖アルキル変性シリコン、高級脂肪酸エステル変性シリコンが例示される。変性シリコン製造メーカーとしては、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング株式会社、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社、旭化成ワッカーシリコーン株式会社等が挙げられる。
【0047】
〔フッ素樹脂〕
フッ素樹脂は、最小レベルの表面張力を示すことが広く知られており、耐汚染材料として好適である。第一表面保護層6aが含有するフッ素樹脂としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン‐エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等が挙げられ、これら以外にも多くの誘導体を用いることが可能である。また、これらのフッ素樹脂のメーカーとしては、ダイキン工業株式会社、三井・デュポンフロロケミカル株式会社等が挙げられる。第一表面保護層6aが含有するフッ素樹脂の量は、10質量部以上100質量部以下の範囲内が好ましく、より好ましくは20質量部以上100質量部以下の範囲内である。ここで、フッ素樹脂自体が硬化型樹脂であっても良い。すなわち、フッ素樹脂の一部が、第一表面保護層6aの主成分である硬化型樹脂の一部を兼ねていても良い。
このように、第一実施形態に係る化粧シート1において、表面保護層6の最表層、すなわち、第一表面保護層6aに、シリコン系成分又はフッ素系成分のうち少なくともいずれか一方が含まれていてもよい。これにより、化粧シート1の耐汚染性を向上することが可能となる。耐汚染性が向上されると、ウイルスが化粧シート1の表面に長期間存在することを抑制することが可能となり、結果として、抗ウイルス性をさらに向上させることが可能となる。
【0048】
〔電離放射線硬化型樹脂〕
第一表面保護層6aに用いる電離放射線硬化型樹脂(紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂を含む)としては、特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及びモノマーのうち少なくとも一方を主成分とする透明性樹脂を用いることが可能である。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して用いることが可能である。電離放射線硬化型樹脂における硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
具体的には、上述したプレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0049】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250~100000程度が好ましい。
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。
また、上述したプレポリマーとして、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0051】
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源を用いることが可能である。紫外線の波長としては、通常、190[nm]以上380[nm]以下の範囲内が好ましい。
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることが可能である。その中でも、特に100[keV]以上1000[keV]以下の範囲内のエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましく、100[keV]以上300[keV]の範囲内のエネルギーをもつ電子を照射できるものがより好ましい。
【0052】
以上説明したように、表面保護層6は、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方とを含む第一表面保護層6aを有する。
なお、図1に示すように、透明樹脂層5と表面保護層6には、複数の箇所にエンボス7が形成されている。すなわち、エンボス7は、透明樹脂層5と表面保護層6における複数の箇所に設けた凹部によって形成されている。
【0053】
また、図2に示すように、表面保護層6のうち、エンボス7が形成されていない部分の厚さAは、表面保護層6のうち、エンボス7が形成されている部分の厚さBよりも大きい。
具体的に、厚さAと厚さBには、以下の関係式(1)が成立している。
【0054】
0.1A≦B≦0.9A … (1)
【0055】
また、エンボス7の深さ(最大深さ)は、例えば、20[μ]以上200[μ]以下の範囲内である。
以上説明したように、表面保護層6には、エンボス7が形成されている。これに加え、透明樹脂層5には、エンボス7が形成されている。
【0056】
(化粧シートの製造方法)
以下、図1及び図2を参照して、化粧シート1の製造方法について説明する。
化粧シート1の製造方法では、表面保護層6を、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方とを添加した第一表面保護層6aを有する層として形成する。さらに、表面保護層6の100質量[%]に対し、0.2質量[%]以上10質量[%]以下の範囲内で、平均粒径を1[μm]以上10[μm]以下の範囲内とした抗ウイルス剤を、表面保護層6に添加する。これに加え、表面保護層6に、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方とを添加した後に、表面保護層6にエンボス7を形成する。
【0057】
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この第一実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0058】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)着色原反層2と、着色原反層2の一方の面に積層された表面保護層6とを備える。そして、表面保護層6は、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方とを含む第一表面保護層6aを有する。これに加え、表面保護層6の100質量%に対する抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内であり、抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下の範囲内であり、表面保護層6には、エンボス7が形成されている。
その結果、抗ウイルスや抗菌の機能を付与するとともに、表面保護層6の厚さに発生するばらつきを低減させることが可能な、化粧シート1を提供することが可能となる。
【0059】
また、第一実施形態における化粧シート1の製造方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(2)表面保護層6を、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方とを添加した第一表面保護層6aを有する層として形成する。さらに、表面保護層6の100質量[%]に対し、0.2質量[%]以上10質量[%]以下の範囲内で、平均粒径を1[μm]以上10[μm]以下の範囲内とした抗ウイルス剤を、表面保護層6に添加する。これに加え、表面保護層6に、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方とを添加した後に、表面保護層6にエンボス7を形成する。
その結果、抗ウイルスや抗菌の機能を付与するとともに、表面保護層6の厚さに発生するばらつきを低減させることが可能な、化粧シート1の製造方法を提供することが可能となる。
【0060】
<第一実施形態の変形例>
(1)第一実施形態では、表面保護層6の構成を、第一表面保護層6aを備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、表面保護層6の構成を、図3に示すように、第一表面保護層6aと、第二表面保護層6bを備える構成としてもよい。
以下、第二表面保護層6bの構成について説明する。
【0061】
[第二表面保護層]
第二表面保護層6bは、表面保護層6を構成する層(第一表面保護層6a、第二表面保護層6b)のうち、第一表面保護層6aと絵柄模様層3との間に形成された層(内側層)である。すなわち、表面保護層6の構成を、第一表面保護層6aと着色原反層2との間に配置された第二表面保護層6bをさらに有する構成としてもよい。
第二表面保護層6bは、例えば、第一表面保護層6aと同様、熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方を含む。なお、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂については、第一表面保護層6aが含む硬化型樹脂と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
第二表面保護層6bは、第一表面保護層6aと同様、抗ウイルス剤及び界面活性剤を含んでいてもよい。このとき、第二表面保護層6bが含む抗ウイルス剤は、第一表面保護層6aが含む抗ウイルス剤と同様の材料でもよいし、第一表面保護層6aが含む抗ウイルス剤とは異なる材料でもよい。
第一表面保護層6aの厚さと、第二表面保護層6bの厚さとの合計値は、例えば、3[μm]以上15[μm]以下の範囲内である。
【0063】
(第二実施形態)
以下、図1から図3を参照しつつ、図4を用いて、第二実施形態における化粧材10の構成について説明する。
化粧材10は、図4に示すように、化粧シート1と、基材9を備える。なお、化粧シート1の具体的な構成については、後述する。
基材9は、例えば、木質ボード類、無機質ボード類、金属板等を用いて板状に形成されており、一方の面(図4では、上側の面)に、化粧シート1が積層されている。すなわち、化粧材10は、基材9と、基材9の一方の面に積層された化粧シート1を備える。
【0064】
(化粧シートの構成)
化粧シート1は、図4に示すように、着色原反層2と、絵柄模様層3と、接着性樹脂層4と、透明樹脂層5と、表面保護層6と、エンボス7と、プライマー層8を備える。なお、プライマー層8以外の構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
<プライマー層>
プライマー層8は、下地となる層であって、着色原反層2と基材9との密着性・耐食性を向上させるための層である。
また、プライマー層8は、着色原反層2の他方の面(図4では、下側の面)に積層されている。
【0066】
さらに、プライマー層8は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成されている。
なお、プライマー層8には、耐食性を向上させる目的で防錆顔料を配合しても良い。
プライマー層8の厚さは、例えば、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内である。
【0067】
(化粧材の製造方法)
以下、図4を参照して、化粧材10の製造方法について説明する。
化粧材10の製造方法では、表面保護層6を、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方とを添加した第一表面保護層6aを有する層として形成する。さらに、表面保護層6の100質量[%]に対し、0.2質量[%]以上10質量[%]以下の範囲内で、平均粒径を1[μm]以上10[μm]以下の範囲内とした抗ウイルス剤を、表面保護層6に添加する。これに加え、表面保護層6に、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方とを添加した後に、表面保護層6にエンボス7を形成する。
【0068】
なお、上述した第二実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第二実施形態に限定されることはなく、この第二実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0069】
(第二実施形態の効果)
第二実施形態の化粧材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)基材9と、基材9の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
その結果、抗ウイルスや抗菌の機能を付与するとともに、表面保護層6の厚さに発生するばらつきを低減させることが可能な、化粧材10を提供することが可能となる。
【0070】
また、第二実施形態における化粧材10の製造方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(2)表面保護層6を、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方とを添加した第一表面保護層6aを有する層として形成する。さらに、表面保護層6の100質量[%]に対し、0.2質量[%]以上10質量[%]以下の範囲内で、平均粒径を1[μm]以上10[μm]以下の範囲内とした抗ウイルス剤を、表面保護層6に添加する。これに加え、表面保護層6に、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方とを添加した後に、表面保護層6にエンボス7を形成する。
その結果、抗ウイルスや抗菌の機能を付与するとともに、表面保護層6の厚さに発生するばらつきを低減させることが可能な、化粧材10の製造方法を提供することが可能となる。
【0071】
<第二実施形態の変形例>
(1)第二実施形態では、化粧材10の構成を、基材9の一方の面に積層された化粧シート1を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、化粧材10の構成を、基材9の一方の面に加え、基材9の他方の面(図4では、下側の面)に積層された化粧シート1を備える構成としてもよい。
【実施例0072】
第一実施形態及び第二実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から3の化粧シートと、比較例1から5の化粧シートについて説明する。
【0073】
(実施例1)
着色原反層は、塩化ビニル素材の熱可塑性樹脂を用いて形成した。
絵柄模様層は、着色原反層の一方の面に、木目柄をグラビア印刷機で印刷して形成した。
透明樹脂層は、塩化ビニル素材の透明シートを用いて、厚さを80[μm]として形成した。
【0074】
表面保護層は、第一表面保護層のみを有する構成とし、JIS K 5600の規定による鉛筆硬度試験で測定した硬度がHBの熱硬化型樹脂を用いて、厚さを3[μm]として形成した。
また、熱硬化型樹脂には、抗ウイルス剤として、銀系の無機添加剤を、固形分の比率で0.2質量[%]配合した。なお、抗ウイルス剤は、無機系の材料に銀イオンを担持させた構造となっている。
【0075】
次に、深さが120[μ]のエンボス版を用いて、エンボスを形成した。
以上により、実施例1の化粧シートを形成した。
【0076】
(実施例2)
深さが30[μ]のエンボス版を用いてエンボスを形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例2の化粧シートを形成した。
【0077】
(実施例3)
表面保護層の構成を、第一表面保護層と、第一表面保護層と絵柄印刷層との間に配置した第二表面保護層とを有する構成とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例3の化粧シートを形成した。
なお、第二表面保護層は、JIS K 5600の規定による鉛筆硬度試験で測定した硬度がHBの熱硬化型樹脂を用いて、厚さを3[μm]として形成した。
【0078】
(比較例1)
深さが120[μ]のエンボス版を用いてエンボスを形成した点を除き、実施例2と同様に形成して、比較例1の化粧シートを形成した。
【0079】
(比較例2)
第一表面保護層を、厚さを2[μm]として形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例2の化粧シートを形成した。
【0080】
(比較例3)
表面保護層を、JIS K 5600の規定による鉛筆硬度試験で測定した硬度が6Bの熱硬化型樹脂を用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例3の化粧シートを形成した。
【0081】
(比較例4)
表面保護層を、JIS K 5600の規定による鉛筆硬度試験で測定した硬度が4Hの熱硬化型樹脂を用いて形成した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例4の化粧シートを形成した。
【0082】
(比較例5)
表面保護層の構成を、抗ウイルス剤を、固形分の比率で0.1質量[%]配合した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例5の化粧シートを形成した。
【0083】
(性能評価、評価結果)
実施例1から3の化粧シートと、比較例1から5の化粧シートに対し、それぞれ、抗ウイルス性、耐傷性、曲げ加工性を評価した。
評価方法としては、以下に記載した方法を用いた。
【0084】
<抗ウイルス性>
実施例の化粧シートと、比較例の化粧シートに対し、ISO 21702に準じて、抗ウイルス試験を実施することで、抗ウイルス性(抗ウイルス性能)を評価した。
具体的には、50[mm]四方の供試試料を滅菌シャーレの内部に配置し、0.4[mL]のウイルス液を、試料の上に接種させた。ウイルス液としては、エンペローブウイルス(インフルエンザウイルス)を含むウイルス液を使用した。
【0085】
その後、試料の上に40[mm]四方のポリエチレンフィルムを被せ、さらに、シャーレに蓋をした後、温度が25[℃]であり湿度が90[%]以上の条件下において、試料にウイルスを接種させた。
そして、所定の時間(24時間)が経過した後、10[mL]のSCDLP培地をシャーレに注いでウイルスを洗い出し、ウイルスを洗い出した液に対して、プラーク法を用いてウイルス感染価を測定した。
【0086】
〈ウイルス感染価の測定(プラーク法)〉
宿主細胞を6ウェルプレートの上に単層で培養し、階段希釈した洗い出し液を、それぞれのウェルに0.1[mL]接種させた。そして、濃度が5[%]であり温度37[℃]であるCOの条件下で1時間培養し、細胞にウイルスを吸着させた後、6ウェルプレートに寒天培地を注いで2~3日培養した。その後、細胞を固定・染色し、形成したプラークの数を計測した。
【0087】
〈ウイルス感染価の算出〉
以下の式を用いて、試料1[cm]当たりのウイルス感染価を算出した。
【0088】
V=(10×C×D×N)/A
【0089】
V:試料1cm当たりのウイルス感染価(PFU/cm
C:計測したプラーク数
D:プラークを計測したウェルの希釈倍率
N:SCDLP量
A:試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
【0090】
〈抗ウイルス活性値の算出〉
以下の式を用いて、抗ウイルス活性値を算出した。ここで、抗ウイルス活性値が2log10以上の場合、抗ウイルス効果が有ると判定した。
【0091】
抗ウイルス活性値=log(Vb)-log(Vc)
【0092】
Log(Vb):24時間後の無加工試料1[cm]当たりのウイルス感染価の常用対数値
Log(Vc):24時間後の抗ウイルス加工試料1[cm]当たりのウイルス感染価の常用対数値
【0093】
算出した抗ウイルス活性値を以下の「〇」と「×」の二段階で評価した。
【0094】
<評価基準>
○:抗ウイルス活性値2log10以上である場合
×:抗ウイルス活性値2log10未満である場合
【0095】
<耐傷性>
化粧材に対し、硬度の異なる鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面(表面保護層)に発生した損傷(抉れ)を確認して、鉛筆硬度による表面硬度を評価した。
そして、硬度が3B以上の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「○」と評価した。これに加え、硬度が2B以下の鉛筆を用いて鉛筆硬度試験を実施した後に、表面に損傷が発生した場合を「×」と評価した。
【0096】
<曲げ加工性>
建具基材である、厚さが3[mm]のMDF(広葉樹)の表面に、接着剤として2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業(株)製:「リカボンド」(重量比BA-10L/BA-11B=100:2.5))を、ウエット状態で100[g/m]に塗工した。その後、実施例の化粧シートと、比較例の化粧シートを、MDFにそれぞれ貼り合わせ、24時間養生することで、実施例の化粧材と、比較例の化粧材を形成した。
【0097】
そして、形成した化粧材にVカット加工を実施し、折り曲げた頂上部を目視で確認することで、外観の状態を確認した。Vカット加工は、化粧材のうち化粧シートが張り付けられていない面の側から、建具基材と化粧シートとを貼り合わせている境界まで、化粧シートにキズが付かないようにV型の溝を入れる加工である。
次に、化粧シートを貼り付けた面を山折りとして折り曲げて、建具基材をV型の溝に沿って90度まで折り曲げ、曲げ加工性を評価した。
【0098】
<評価基準>
〇:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れや白化等がほとんど無し。
×:折り曲げ頂上部に、表面保護層の割れや白化発生。
【表1】
【0099】
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1から3の化粧シートは、全ての評価試験に対して、優れた性能を示した。一方、比較例1から5の化粧シートは、全ての評価試験に対しては、優れた性能を示すことが不可能であった。
【0100】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることが可能である。
(1)
着色原反層と、
前記着色原反層の一方の面に積層された表面保護層と、を備え、
前記表面保護層は、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を含む第一表面保護層を有し、
前記表面保護層の100質量%に対する前記抗ウイルス剤の添加量は、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内であり、
前記抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下の範囲内であり、
前記表面保護層には、エンボスが形成されている化粧シート。
(2)
前記エンボスの深さは、20μ以上200μ以下の範囲内である前記(1)に記載した化粧シート。
(3)
前記抗ウイルス剤は、銀系抗ウイルス剤、抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア、ジンクピリチオン、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、10、10-オキシビスフェノキサルシン、有機窒素硫黄ハロゲン系、ピリジン-2-チオール-オキシド、のうち少なくとも一つを含有する前記(1)又は(2)に記載した化粧シート。
(4)
JIS K 5600の規定による鉛筆硬度試験で測定した前記第一表面保護層の硬度は、4B以上2H以下の範囲内である前記(1)~(3)のいずれかに記載した化粧シート。
(5)
前記第一表面保護層は、前記化粧シートの表面を形成する層であり、
前記表面保護層は、前記第一表面保護層と前記着色原反層との間に配置された第二表面保護層をさらに有する前記(1)~(4)のいずれかに記載した化粧シート。
(6)
前記第一表面保護層の厚さと、前記第二表面保護層の厚さとの合計値は、3μm以上15μm以下の範囲内である前記(5)に記載した化粧シート。
(7)
前記抗ウイルス剤の平均粒径は、前記表面保護層の厚さの0.5倍以上2倍以下の範囲内である前記(1)~(6)のいずれかに記載した化粧シート。
(8)
前記抗ウイルス剤は、無機材料により担持されている前記(1)~(7)のいずれかに記載した化粧シート。
(9)
前記第一表面保護層は、シリコン系成分及びフッ素系成分のうち少なくとも一方が含まれている前記(1)~(8)のいずれかに記載した化粧シート。
(10)
前記第一表面保護層は、界面活性剤が添加されている前記(1)~(9)のいずれかに記載した化粧シート。
(11)
前記界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤のうち少なくとも一つを含む前記(10)に記載した化粧シート。
(12)
前記着色原反層と前記表面保護層との間に配置された透明樹脂層をさらに備える前記(1)~(11)のいずれかに記載した化粧シート。
(13)
前記透明樹脂層の厚さは、30μm以上200μm以下の範囲内である前記(12)に記載した化粧シート。
(14)
前記透明樹脂層にエンボスが形成されている前記(12)又は(13)に記載した化粧シート。
(15)
前記着色原反層の他方の面に積層されたプライマー層を備える前記(1)~(14)のいずれかに記載した化粧シート。
(16)
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された前記(1)~(15)のいずれかに記載した化粧シートと、を備える化粧材。
(17)
着色原反層と、前記着色原反層の一方の面に積層された表面保護層と、を備える化粧シートの製造方法であって、
前記表面保護層を、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を添加した第一表面保護層を有する層として形成し、
前記表面保護層の100質量%に対し、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内で、平均粒径を1μm以上10μm以下の範囲内とした前記抗ウイルス剤を添加し、
前記表面保護層に、前記抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、前記紫外線硬化型樹脂及び前記電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を添加した後に、前記表面保護層にエンボスを形成する化粧シートの製造方法。
(18)
着色原反層と、前記着色原反層の一方の面に積層された表面保護層と、を備える化粧シートと、
前記化粧シートを少なくとも一方の面に積層した基材と、を備える化粧材の製造方法であって、
前記表面保護層を、抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂及び電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を添加した第一表面保護層を有する層として形成し、
前記表面保護層の100質量%に対し、0.2質量%以上10質量%以下の範囲内で、平均粒径を1μm以上10μm以下の範囲内とした前記抗ウイルス剤を添加し、
前記表面保護層に、前記抗ウイルス剤を含む熱硬化型樹脂と、前記紫外線硬化型樹脂及び前記電子線硬化型樹脂のうち少なくとも一方と、を添加した後に、前記表面保護層にエンボスを形成する化粧材の製造方法。
【符号の説明】
【0101】
1…化粧シート、2…着色原反層、3…絵柄模様層、4…接着性樹脂層、5…透明樹脂層、6…表面保護層、7…エンボス、8…プライマー層、9…基材、10…化粧材、A…表面保護層のうちエンボスが形成されていない部分の厚さ、B…表面保護層のうちエンボスが形成されている部分の厚さ
図1
図2
図3
図4