(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056499
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】混練機
(51)【国際特許分類】
B01F 27/952 20220101AFI20240416BHJP
B01F 27/091 20220101ALI20240416BHJP
B01F 23/60 20220101ALI20240416BHJP
B01F 35/53 20220101ALI20240416BHJP
B01F 101/32 20220101ALN20240416BHJP
【FI】
B01F27/952
B01F27/091
B01F23/60
B01F35/53
B01F101:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163416
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【弁理士】
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】福永 聖二
(72)【発明者】
【氏名】小田木 克明
(72)【発明者】
【氏名】新田 拓也
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G035AB48
4G035AE19
4G037DA30
4G037EA04
4G078AA06
4G078AB01
4G078AB03
4G078BA11
4G078CA08
4G078CA09
4G078CA13
4G078DA30
4G078DB05
(57)【要約】
【課題】少量の材料を処理する場合の歩留りを向上可能な混練機を提供する。
【解決手段】混練機1は、底部21及び側部22を有する混練槽4と、底部21から混練槽4内に突出する公転軸5と、混練槽4内に配置され、底部21上において、自転可能に公転軸5の周りを公転するマラーホイール7と、公転軸5の軸方向から見て、マラーホイール7の公転軌道の内側において、公転軸5を囲むように底部21上に設けられた環状の第1側壁11と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部及び側部を有する混練槽と、
前記底部から前記混練槽内に突出する公転軸と、
前記混練槽内に配置され、前記底部上において、自転可能に前記公転軸の周りを公転するマラーホイールと、
前記公転軸の軸方向から見て、前記マラーホイールの公転軌道の内側において、前記公転軸を囲むように前記底部上に設けられた環状の第1側壁と、を備える、
混練機。
【請求項2】
前記第1側壁は、前記底部に着脱可能に取り付けられている、
請求項1に記載の混練機。
【請求項3】
前記底部には、前記第1側壁の外側において、前記公転軸の周りを囲むように環状の溝部が設けられている、
請求項1に記載の混練機。
【請求項4】
前記側部の内側において、前記軸方向から見て、前記公転軌道を囲むように前記底部上に設けられた環状の第2側壁を更に備える、
請求項1に記載の混練機。
【請求項5】
前記第2側壁は、前記底部に着脱可能に取り付けられている、
請求項4に記載の混練機。
【請求項6】
前記底部には、前記第1側壁の外側、かつ、前記第2側壁の内側において、前記公転軸の周りを囲むように環状の溝部が設けられている、
請求項4に記載の混練機。
【請求項7】
前記溝部は、
前記第1側壁の前記第2側壁と対向する面から連続する第1側面と、
前記第2側壁の前記第1側壁と対向する面から連続する第2側面と、
前記第1側面と前記第2側面とを接続する底面と、を有する、
請求項6に記載の混練機。
【請求項8】
前記第1側面及び前記第2側面は、それぞれ前記底面と接続される曲面部分を含んでいる、
請求項7に記載の混練機。
【請求項9】
前記第2側壁の高さは、前記第1側壁の高さよりも高い、
請求項4に記載の混練機。
【請求項10】
前記底部は、前記側部と接続された本体と、前記本体上に設けられ、前記本体に着脱可能に取り付けられた底板材と、を有し、
前記第1側壁は、前記底板材に取り付けられている、
請求項1~9のいずれか一項に記載の混練機。
【請求項11】
前記底部は、前記側部と接続された本体と、前記本体上に設けられ、前記本体に着脱可能に取り付けられた底板材と、を有し、
前記溝部は、前記底板材に設けられている、
請求項3又は6に記載の混練機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、混練機に関する。
【背景技術】
【0002】
マラー形又はホイール形とよばれる混練機が知られている(例えば、特許文献1又は非特許文献1参照)。この混練機は、一種類以上の粉粒体を含む材料を一部粉砕又は複合化させながら、混合、混練する。材料は、添加剤としてバインダー等の液体を含んでもよい。この混練機では、マリングの三要素と呼ばれるニーディング(圧縮力)、スメアリング(せん断力)、スパチュレイティング(へらなで力)によって材料に複合的な外力が与えられる。これにより、粒子の凝集体を解砕しながら、粒子表面に他の粒子あるいはバインダー等の液体を均一に付着(コーティング)させることができる。この混練機は、鋳物砂、耐火物、フェライト、建材、窯業原料、合成樹脂、研磨剤、鉄鉱石、化成肥料、セラミックス、バッテリーペースト、製鋼原料、炭素化合物等の幅広い分野で利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】橋本健次,“混練技術と混練機の選び方”,テクノシステム,1990年,P.97-115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記混練機では、材料を処理する混練槽の内部に複雑な機械構造物が設置されている。特に少量の材料を処理する場合、材料が機械構造物に付着すると、歩留り(回収率)の低下が問題となる。
【0006】
本開示は、少量の材料を処理する場合の歩留りを向上可能な混練機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る混練機は、底部及び側部を有する混練槽と、底部から混練槽内に突出する公転軸と、混練槽内に配置され、底部上において、自転可能に公転軸の周りを公転するマラーホイールと、公転軸の軸方向から見て、マラーホイールの公転軌道の内側において、公転軸を囲むように底部上に設けられた環状の第1側壁と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、少量の材料を処理する場合の歩留りを向上可能な混練機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る混練機を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1の混練機の一部をIII-III線に沿って断面視した図である。
【
図4】
図4は、
図1の混練機の一部をIV-IV線に沿って断面視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の概要]
最初に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0011】
(条項1)本開示の一態様に係る混練機は、底部及び側部を有する混練槽と、底部から混練槽内に突出する公転軸と、混練槽内に配置され、底部上において、自転可能に公転軸の周りを公転するマラーホイールと、公転軸の軸方向から見て、マラーホイールの公転軌道の内側において、公転軸を囲むように底部上に設けられた環状の第1側壁と、を備える。
【0012】
上記混練機では、公転軸を囲むように第1側壁が設けられているので、公転軸を含む機械構造物に材料が付着することが抑制される。よって、少量の材料を処理する場合の歩留りを向上することができる。
【0013】
(条項2)上記条項1に記載の混練機において、第1側壁は、底部に着脱可能に取り付けられていてもよい。この場合、第1側壁を取り外すことにより、材料を処理する処理領域を拡げることができるので、多量の材料でも効率よく処理することができる。
【0014】
(条項3)上記条項1又は2に記載の混練機において、底部には、第1側壁の外側において、公転軸の周りを囲むように環状の溝部が設けられていてもよい。この場合、溝部により処理領域の深さが増すので、材料が処理領域外に飛散することや、異物が処理領域内に混入することを抑制できる。
【0015】
(条項4)上記条項1~3のいずれか1つに記載の混練機において、混練機は、側部の内側において、軸方向から見て、公転軌道を囲むように底部上に設けられた環状の第2側壁を更に備えてもよい。この場合、側部の内側に第2側壁が設けられているので、処理領域を限定することができる。よって、少量の材料を効率よく処理することができる。
【0016】
(条項5)上記条項4に記載の混練機において、第2側壁は、底部に着脱可能に取り付けられてもよい。この場合、第2側壁を取り外すことにより、処理領域を拡げることができるので、多量の材料でも効率よく処理することができる。
【0017】
(条項6)上記条項4又は5に記載の混練機において、底部には、第1側壁の外側、かつ、第2側壁の内側において、公転軸の周りを囲むように環状の溝部が設けられていてもよい。この場合、溝部により処理領域の深さが増すので、材料が処理領域外に飛散することや、異物が処理領域内に混入することを抑制できる。
【0018】
(条項7)上記条項6に記載の混練機において、溝部は、第1側壁の第2側壁と対向する面から連続する第1側面と、第2側壁の第1側壁と対向する面から連続する第2側面と、第1側面と第2側面とを接続する底面と、を有してもよい。この場合、溝部により処理領域の深さが確実に増すので、材料が処理領域外に飛散することや、異物が処理領域内に混入することを確実に抑制できる。
【0019】
(条項8)上記条項7に記載の混練機において、第1側面及び第2側面は、それぞれ底面と接続される曲面部分を含んでいてもよい。この場合、材料が溝部内の角部に入り込むことが抑制される。よって、少量の材料を処理する場合の歩留りを更に向上することができる。
【0020】
(条項9)上記条項4~8のいずれか1つに記載の混練機において、第2側壁の高さは、第1側壁の高さよりも高くてもよい。材料は遠心力により外側に飛散し易い。第2側壁の高さを高くすることにより、材料が処理領域外に飛散することを効果的に抑制することができる。
【0021】
(条項10)上記条項1~9のいずれか1つに記載の混練機において、底部は、側部と接続された本体と、本体上に設けられ、本体に着脱可能に取り付けられた底板材と、を有し、第1側壁は、底板材に取り付けられていてもよい。この場合、第1側壁を底板材ごと混練槽に取り付けることができる。
【0022】
(条項11)上記条項3、6~8のいずれか1つに記載の混練機において、底部は、側部と接続された本体と、本体上に設けられ、本体に着脱可能に取り付けられた底板材と、を有し、溝部は、底板材に設けられていてもよい。この場合、溝部を底板材ごと混練槽に取り付けることができる。
【0023】
[本開示の実施形態の例示]
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0024】
図1~
図5を参照して、実施形態に係る混練機1について説明する。混練機1は、マラー形又はホイール形の混練機であり、処理対象となる材料を混合、混練する。混練機1は、台車2と、駆動部3、混練槽4と、公転軸5(回転駆動軸)と、一対の自転軸6と、一対のマラーホイール7と、支持部材8と、漏斗9と、一対の押圧機構10と、第1側壁11と、第2側壁12と、第1プロー13と、第2プロー14と、第1側壁スクレーパ15と、第2側壁スクレーパ16と、一対のマラースクレーパ17と、を備える。
【0025】
図中のX方向及びY方向が水平方向であり、Z方向が鉛直方向である。X方向、Y方向及びZ方向は、3次元空間の直交座標系における互いに直交する軸方向である。なお、
図3及び
図4では、混練槽4、第1側壁11及び第2側壁12のみが断面図で示され、その他の構成は側面図で示されている。
【0026】
台車2は、鉛直方向に延びる4本の脚部を備える。各脚部の下端部には、車輪が設けられている。台車2は、混練槽4が載置される載置面2aを有している。駆動部3は、台車2に配置されている。駆動部3は、載置面2aの下方に配置されている。混練槽4は、載置面2a上に載置されている。混練槽4は、混練槽4の内部空間Sを形成する底部21及び側部22と、公転軸5が挿通される挿通部23と、を有する。
【0027】
底部21は、側部22に接続された本体24と、本体24上に設けられ、本体24に着脱可能に取り付けられた底板材25と、を有する。本体24及び底板材25は、いずれも板状、具体的には円板状であり、互いに同等の外径を有している。本体24及び底板材25は、互いに面接触するように、重ねられている。つまり、底部21は、二重構造又は二層構造を有している。底部21は、全体として板状、具体的には円板状である。本体24及び底板材25は、例えば、ボルト(不図示)により互いに固定されている。
【0028】
底部21には、公転軸5の周りを囲むように環状、具体的には円環状の溝部26が設けられている。Z軸方向から見て、溝部26は、側部22及び公転軸5のそれぞれから離間して設けられている。Z軸方向から見て、溝部26は、第1側壁11の外側、かつ、第2側壁12の内側に設けられている。溝部26は、Z軸方向から見たマラーホイール7の内軌道及び外軌道と同心円状に設けられている。Z軸方向から見たマラーホイール7の公転軌道(公転軌跡)は、所定の幅を有しており、内軌道は公転軌道の内縁、外軌道は公転軌道の外縁である。
【0029】
本実施形態では、溝部26は、彫り込みにより底板材25に設けられている。溝部26は、底板材25においてマラーホイール7と接触しないように設けられている。溝部26は、マラーホイール7の幅寸法が完全に収まる幅を有している。溝部26は、Z軸方向から見てマラーホイール7の内軌道及び外軌道と接触しないように構成されている。底板材25の上面25aからの溝部26の深さは、例えば、3mm以上50mm以下であり、5mm以上10mm以下であることがより好ましい。
【0030】
溝部26は、
図5に示されるように、第1側面26aと、第2側面26bと、底面26cと、を有する。第1側面26aは、上面25aと底面26cの内縁とを接続している。第2側面26bは、上面25aと底面26cの外縁とを接続している。第1側面26a及び第2側面26bは、それぞれ底面26cと接続される曲面部分26dを含んでいる。底面26cは、第1側面26aと第2側面26bとを接続している。
【0031】
側部22は、筒状、具体的には円筒状である。側部22の下端部には、本体24の外縁部が接続されている。本実施形態では、本体24の外縁部は、側部22の下端から離間した位置に接続されている。つまり、側部22は、本体24から載置面2aに向かって突出する部分22aを含む。これにより、本体24は、載置面2aから浮いた状態で保持されている。本体24の中央部には、挿通部23が接続された貫通孔24aが設けられている。底板材25の中央部には、貫通孔24aよりも大きな直径を有する貫通孔25bが設けられている。
【0032】
側部22の内径は、例えば、610mmである。側部22の高さ(上面25aからの側部22の高さ)は、例えば、172mm以上219mm以下である。挿通部23は、貫通孔24aに接続されている。挿通部23は、公転軸5が挿通可能な内径を有している。挿通部23は、本体24から載置面2aに向かって突出している。挿通部23及び側部22が本体24から載置面2aに向かって突出する長さは、互いに同等である。挿通部23の下端は、載置面2aに接している。挿通部23は、側部22と共に本体24を支持している。
【0033】
公転軸5は、挿通部23に挿通され、底部21の中央部から混練槽4内に突出している。公転軸5の軸方向は、Z軸方向と一致している。公転軸5は、底部21に対して垂直に設けられている。公転軸5は、底部21の中央部を貫通し、駆動部3と接続されている。公転軸5は、駆動部3の駆動により回転される。一対の自転軸6は、公転軸5に取り付けられている。一対の自転軸6は、公転軸5に対して垂直、かつ、底部21に対して平行に設けられている。一対の自転軸6は、公転軸5を挟んで互いに対向している。一対の自転軸6は、互いに同軸とならないようにずれて配置されている。
図1に示される状態では、自転軸6の軸方向は、X軸方向と一致している。
【0034】
一対のマラーホイール7は、混練槽4内に配置されている。各マラーホイール7は、対応する自転軸6の端部に自転可能に取り付けられている。一対のマラーホイール7は、公転軸5を介して互いに対向して配置されている。材料が混練槽4内に投入され、公転軸5が駆動部3により回転駆動されると、自転軸6が公転軸5の周りを回転(公転)する。これにより、マラーホイール7は、底部21上において、自転軸6の周りを回転(自転)可能に保持された状態で公転軸5の周りを回転(公転)する。
【0035】
支持部材8は、公転軸5に対して垂直、かつ、底部21に対して平行に延在している。
図1に示される状態では、支持部材8の長さ方向は、Y軸方向と一致している。支持部材8の長さ方向の中央部は、公転軸5の上端部に固定されている。漏斗9は、混練槽4に所定の薬液を添加するために用いられる。漏斗9は、公転軸5の上方に固定されている。漏斗9は、支持部材8の長さ方向の中央部に固定されている。
【0036】
各押圧機構10は、対応する自転軸6と支持部材8との間に設けられている。一対の押圧機構10は、公転軸5を中心として対称に配置されている。各押圧機構10は、リンク部材及びコイルばね等を含み、対応する自転軸6をZ軸方向に移動させる。これにより、マラーホイール7がZ軸方向に移動し、底部21上に配置された材料に押圧力を付与する。押圧機構10の構成は、特許文献1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0037】
第1側壁11は、
図5に示されるように、溝部26の第1側面26aを延長するカバーとして機能している。第2側壁12は、
図5に示されるように、溝部26の第2側面26bを延長するカバーとして機能している。第1側壁11及び第2側壁12は、溝部26と共に、材料の混合、混練を行う処理領域Rを画成している。処理領域Rは、混練槽4の内部空間Sの一部領域である。処理領域Rには、一対のマラーホイール7が配置される。第1側壁11及び第2側壁12は、材料が処理領域R外に飛散することや、処理領域R内の材料に外部からの異物が混入することを抑制する。
【0038】
第1側壁11は、環状又は筒状であり、底部21上に設けられている。第1側壁11は、公転軸5の軸方向から見て、マラーホイール7の公転軌道の内側に設けられている。第1側壁11とマラーホイール7の内軌道との間の隙間(クリアランス)は、例えば3mm以上10mm以下であり、本実施形態では、5mm程度である。第1側壁11は、公転軸5を囲むように、公転軸5の外側に設けられている。第1側壁11は、公転軸5から離間している。
【0039】
第1側壁11は、断面L字状であり、側部31及び取付部32を有している。側部31及び取付部32は、例えば、溶接により一体的に形成されている。側部31は、環状又は筒状、具体的には円環状又は円筒状である。側部31は、Z軸方向に延在し、底部21に対して垂直に設けられている。側部31の高さ(上面25aからの側部31の高さ)は、材料が飛散しない高さに設定されている。側部31の高さは、例えば、30mm以上である。側部31の高さの上限は、自転軸6と干渉しない高さである。側部31の高さは、側部22の高さよりも低い。側部31は、第2側壁12と対向する対向面31aを有している。第1側壁11は、溝部26の第1側面26aが対向面31aから連続するように、溝部26の位置に合わせて配置されている。
【0040】
取付部32は、側部31の下端にフランジ状に設けられている。取付部32は、側部31の下端から公転軸5に向かって延在し、底部21と面接触している。取付部32は、例えば、ボルト33により底部21に取り付けられている。これにより、第1側壁11は、底部21に着脱可能に取り付けられている。本実施形態では、取付部32は、底板材25に取り付けられている。取付部32は、例えば、Oリング(不図示)を介して底板材25に液密に取り付けられていてもよい。
【0041】
第2側壁12は、環状又は筒状であり、底部21上に設けられている。第2側壁12は、側部22の内側に設けられている。第2側壁12は、公転軸5の軸方向から見て、公転軸5、第1側壁11、及び、マラーホイール7の公転軌道を囲むように、これらの外側に設けられている。第2側壁12とマラーホイール7の外軌道との間の隙間(クリアランス)は、例えば3mm以上10mm以下であり、本実施形態では、5mm程度である。第2側壁12は、側部22から離間している。
【0042】
第2側壁12は、断面L字状であり、側部34及び取付部35を有している。側部34及び取付部35は、例えば、溶接により一体的に形成されている。側部34は、環状又は筒状、具体的には円環状又は円筒状である。側部34は、Z軸方向に延在し、底部21に対して垂直に設けられている。側部34の高さ(上面25aからの側部34の高さ)は、材料が飛散しない高さに設定されている。本実施形態では、側部34の高さは、側部31の高さと同等であり、例えば、30mm以上である。側部34は、第1側壁11と対向する対向面34aを有している。第2側壁12は、溝部26の第2側面26bが対向面34aから連続するように、溝部26の位置に合わせて配置されている。
【0043】
取付部35は、側部34の下端にフランジ状に設けられている。取付部35は、側部34の下端から側部22に向かって延在し、底部21と面接触している。取付部35は、例えば、ボルト36により底部21に取り付けられている。これにより、第2側壁12は、底部21に着脱可能に取り付けられている。本実施形態では、取付部35は、底板材25に取り付けられている。取付部35は、例えば、Oリング(不図示)を介して底板材25に液密に取り付けられていてもよい。
【0044】
第1プロー13及び第2プロー14は、底面26c上でマラーホイール7により踏みしめられ、固化・付着した材料を底面26cから引き剥がし、小片に崩して処理領域R内に再度分布させる。第1プロー13は、底面26cの内側部分に付着した材料を引き剥がすように構成されている。第2プロー14は、底面26cの外側部分に付着した材料を引き剥がすように構成されている。第1プロー13及び第2プロー14は、支持部材8の互いに異なる端部にアームを介して取り付けられている。第1プロー13及び第2プロー14は、公転軸5が回転することにより、支持部材8と共に回転しながら、材料を引き剥がす。
【0045】
第1側壁スクレーパ15は、対向面31aに付着した材料を掻き落とすように構成されている。第2側壁スクレーパ16は、対向面34aに付着した材料を掻き落とすように構成されている。第1側壁スクレーパ15及び第2側壁スクレーパ16は、支持部材8の互いに異なる端部にアームを介して取り付けられている。本実施形態では、支持部材8の一方の端部に第1プロー13及び第2側壁スクレーパ16が取り付けられている。支持部材8の他方の端部に第2プロー14及び第1側壁スクレーパ15が取り付けられている。第1側壁スクレーパ15及び第2側壁スクレーパ16は、公転軸5が回転することにより、支持部材8と共に回転しながら、材料を掻き落とす。
【0046】
各マラースクレーパ17は、対応するマラーホイール7の外周面に付着した材料を掻き落とすように構成されている。各マラースクレーパ17は、対応するマラーホイール7に接続された自転軸6の軸受に固定されている。マラーホイール7が自転軸6の周りを回転することにより、マラーホイール7の外周面に付着した材料がマラースクレーパ17により掻き落とされる。
【0047】
以上説明したように、混練機1では、公転軸5を囲むように混練槽4の底部21上に第1側壁11が設けられている。このため、混練槽4の中央部に配置された公転軸5をはじめとする機械構造物に材料が付着することが抑制される。よって、少量の材料を処理する場合の歩留りを向上することができる。
【0048】
混練機1は、特に、少量の材料を処理する必要がある開発初期において、高価な材料や入手困難な材料を処理する際に有効である。混練機を単に小型化することも考えられるが、マラー形の混練機を小型化すると、機械的強度の低下に伴い、混合力・混練力や複合化機能が低下する。混練機1によれば、機械的強度を低下させずに、少量の材料を高い歩留りで処理することができる。基本的な機械の混練能力(マラーホイール7の圧縮・せん断力)は大きく変わっていないので、少量の材料でも混練品質に影響が出難い。
【0049】
第1側壁11によれば、機械構造物から処理領域Rに潤滑油等の異物が混入し、コンタミネーション(コンタミ)が発生することが防止される。なお、従来の混練機でも機械構造物からの異物の混入は十分に防止されているが、第1側壁11によれば、機械構造物と処理領域Rとが物理的に遮断されるので、より容易にコンタミの発生を防止することができる。
【0050】
第1側壁11によれば、材料が流動し得る処理領域Rを限定することができる。これにより、処理領域Rの体積が減少するので、処理に必要な材料を低減することができる。実用的な小型のマラー形混練機として、例えば、新東工業製MSG-0Lがある。この混練機では、混練槽の内部空間に相当する処理容積部の外径が610mmであり、内径が83mmである。この処理容積部で材料を効果的に処理するには、経験上最低でも材料の堆積量を20mm~30mm(体積に換算すると約6L~9L)とする必要がある。これは、通常の混練機では、マラーホイールから離れた場所における材料の偏在が避けられないためである。スクレーパやプローの撹拌作用によっても材料の偏在を解消できるが、時間がかかる。
【0051】
混練機1では、処理領域Rの幅を規定する第1側壁11及び第2側壁12を、マラーホイール7の公転軌道に近づけることにより、処理領域R内の材料の偏在を大幅に抑制することができる。このため、材料の堆積量を0.5mm~20mm程度(体積に換算すると約0.8L~3L)としても効果的な混練が行われる。混練機1では、材料が混練槽4内で飛散することなく、処理領域R内に留まることにより、単に処理に必要な材料を少なくできるだけでなく、単位時間あたりにマラーホイール7が材料を踏みしめて圧縮力を与える回数、及び、単位時間あたりにマラーホイール7と底板材25との間で材料にせん断応力を与える回数を増やすことができる。すなわち、マラーホイール7が材料に混合力・混練力・複合化力を付与する頻度を上げることができる。この結果、処理効率が向上し、処理時間が短縮される。
【0052】
混練機1では、第1側壁11及び第2側壁12は底部21に対して着脱可能である。このため、混練機1は、第1側壁11及び第2側壁12を取り外すことにより、多量の材料を混合、混練する通常の用途にも用いることができる。この場合、内部空間Sのうち、公転軸5を除いた領域の全体が処理領域を構成する。各プロー及び各スクレーパは、処理領域に合わせて適宜される。
【0053】
混練機1では、溝部26により処理領域Rの深さが増すので、材料が処理領域R外に飛散することや、異物が処理領域R内に混入することを抑制できる。溝部26の第1側面26a及び第2側面26bは、底面26cと接続される曲面部分26dを含むので、材料が溝部26内の角部に入り込むことが抑制される。よって、少量の材料を処理する場合の歩留りを更に向上することができる。また、曲面部分26dによれば、清掃性を向上させることができる。
【0054】
混練機1では、底部21は本体24及び底板材25を有し、第1側壁11及び第2側壁12は底板材25に取り付けられている。このため、既存の混練機に対し、第1側壁11及び第2側壁12ごと底板材25を取り付ければ、容易に混練機1を構成することができる。
【0055】
本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0056】
処置対象となる材料がコンタミに対して厳しい制限を有する場合、マラーホイール7及び底板材25を耐摩耗材料により構成することができる。これにより、マラーホイール7と底板材25との間で発生する圧縮力やせん断力によって、マラーホイール7及び底板材25が摩耗してコンタミが発生することを抑制できる。この場合の耐摩耗材料は、金属であってもよいし、セラミックであってもよい。あるいは、マラーホイール7及び底板材25の表面に、熱処理を施してもよいし、金属、セラミック、又はDLC等の耐摩耗材料によるコーティングを施してもよい。必要に応じて、第1プロー13、第2プロー14、第1側壁スクレーパ15、第2側壁スクレーパ16、及び、マラースクレーパ17の表面にも同様の処理を施してもよい。
【0057】
側部34の高さは、側部31の高さよりも高くてもよい。遠心力により、材料は内側よりも外側に飛散し易い。側部34を高くすることにより、効果的に材料の飛散を抑制できる。側部34は、自転軸6と干渉し得ないので、自転軸6の高さ位置にかかわらず、側部34の高さを適宜設定できる。
【0058】
混練機1では、マラーホイール7の数は1以上であればよく、限定されない。混練機1は、第1側壁11及び第2側壁12を備えるが、第2側壁12を備えなくてもよい。この場合であっても、第1側壁11により、機械構造物に材料が付着することが抑制される。混練機1では、溝部26が設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…混練機、4…混練槽、5…公転軸、7…マラーホイール、11…第1側壁、12…第2側壁、21…底部、22…側部、25…底板材、26…溝部、26a…第1側面、26b…第2側面、26c…底面、31a…対向面、34a…対向面。