(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056513
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/52 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B60N2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163447
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 竜誠
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BB22
3B087DD03
3B087DD11
(57)【要約】
【課題】車両の走行中にロック機構がロック解除位置へ変位された場合に、車両の走行中にシートの高さが変化することを抑制する。
【解決手段】、サスペンションは、車両用シート10の高さの変更を指示するためのハイトスイッチの操作に応じて、車両用シート10の車両下方に配置されたエアスプリングの空気室への給排気を行うことで車両用シート10の高さを変更可能とされている。ロック機構は車両用シート10の高さの変化をロックするロック位置またはロックを解除するロック解除位置へ変位可能とされ、サスロックACTはロック機構を変位させる。そして制御部は、車両用シート10からの離席が検出されてから第1所定時間以上経過した後に、車両用シート10への着座が検出された場合に、サスロックACTによりロック機構をロック解除位置に変位させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの高さの変更を指示するための第1スイッチの操作に応じて、前記シートの車両下方に配置された空気室への給排気を行うことで前記シートの高さを変更可能なエアサスペンション機構と、
前記シートの高さの変化をロックするロック位置または前記ロックを解除するロック解除位置へ変位可能なロック機構と、
前記ロック機構を変位させるアクチュエータと、
前記シートからの離席が検出されてから第1所定時間以上経過した後に、前記シートへの着座が検出された場合に、前記アクチュエータにより前記ロック機構をロック解除位置に変位させる制御部と、
を含む車両用シート。
【請求項2】
前記制御部は、前記アクチュエータにより前記ロック機構を前記ロック解除位置に変位させてから第2所定時間以上経過した後に、前記アクチュエータにより前記ロック機構をロック位置に変位させる請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記アクチュエータに組み込まれ、前記アクチュエータの出力軸の位置を検出することで、前記ロック機構がロック位置かロック解除位置かを間接的に検出するロックセンサを更に含み、
前記制御部は、前記ロックセンサからの信号に基づいて前記ロック機構の位置を認識する請求項1または請求項2記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定のスイッチの操作に応じて、シートの車両下方に配置された空気室への給排気を行うことで前記シートの高さを変更可能なエアサスペンション機構と、前記シートの高さの変化をロックするロック位置または前記ロックを解除するロック解除位置へ変位可能なロック機構と、を含む車両用シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用シートは、車両の走行中に乗員によってロック機構をロック解除位置へ変位させる操作が行われた場合に、車両の走行中にシートの高さが変化することがある。
【0005】
例えば、第1の乗員が着座状態でロック機構をロック位置へ変位させた後、第1の乗員から体重差のある第2の乗員へ運転を交代して第2の乗員が着座した場合、第1の乗員と第2の乗員の体重差により、シートを介してエアサスペンション機構に加わる車両下方への荷重と、エアサスペンション機構の空気室の内圧と、のバランスが崩れた状態(以下、これを「ウエイトギャップ」という)になる。そして、ウエイトギャップが生じている状態で、車両の走行中に第2の乗員によってロック機構がロック解除位置へ変位されると、車両の走行中にシートの高さが変化するので、第2の乗員による車両の運転に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
本開示は上記事実を考慮して成されたもので、車両の走行中にロック機構がロック解除位置へ変位された場合に、車両の走行中にシートの高さが変化することを抑制できる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る車両用シートは、シートの高さの変更を指示するための第1スイッチの操作に応じて、前記シートの車両下方に配置された空気室への給排気を行うことで前記シートの高さを変更可能なエアサスペンション機構と、前記シートの高さの変化をロックするロック位置または前記ロックを解除するロック解除位置へ変位可能なロック機構と、前記ロック機構を変位させるアクチュエータと、前記シートからの離席が検出されてから第1所定時間以上経過した後に、前記シートへの着座が検出された場合に、前記アクチュエータにより前記ロック機構をロック解除位置に変位させる制御部と、を含んでいる。
【0008】
第1の態様では、シートからの離席が検出されてから第1所定時間以上経過した後に、シートへの着座が検出された場合に、アクチュエータによりロック機構をロック解除位置に変位させる。これにより、シートに着座する乗員が交代した場合には、シートからの離席からシートへの再着座までに第1所定時間以上が経過することで、車両が走行を開始するよりも前にウエイトギャップが解消される。従って、第1の態様によれば、車両の走行中にロック機構がロック解除位置へ変位された場合に、車両の走行中にシートの高さが変化することを抑制することができる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、前記制御部は、前記アクチュエータにより前記ロック機構を前記ロック解除位置に変位させてから第2所定時間以上経過した後に、前記アクチュエータにより前記ロック機構をロック位置に変位させる。
【0010】
シートに着座する乗員が交代してシートベルトが装着された場合、続いて第1のスイッチが操作されてシートの高さ調節が行われることがある。第2の態様では、ロック機構をロック解除位置に変位させてから、第1スイッチが操作されない状態が第2所定時間以上継続した後に、ロック機構をロック位置に変位させるので、シートの高さ調節が完了した適切なタイミングで、ロック機構をロック位置に変位させることができる。
【0011】
第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、前記アクチュエータに組み込まれ、前記アクチュエータの出力軸の位置を検出することで、前記ロック機構がロック位置かロック解除位置かを間接的に検出するロックセンサを更に含み、前記制御部は、前記ロックセンサからの信号に基づいて前記ロック機構の位置を認識する。
【0012】
第3の態様では、ロックセンサが、アクチュエータの出力軸の位置を検出することでロック機構の位置を間接的に検出するので、ロックセンサ、ひいてはロック機構を小型化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示は、車両の走行中にロック機構がロック解除位置へ変位された場合に、車両の走行中にシートの高さが変化することを抑制できる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】ロック機構を備えたリンク機構を示す斜視図である。
【
図4】ロック機構を備えたリンク機構を分解して示す分解斜視図である。
【
図5】ロック機構本体が取付けられた備えたリンク機構を示す側面図である。
【
図7】ロック機構本体を分解して示す分解斜視図である。
【
図8】カムプレート及びカムを分解して示す分解斜視図である。
【
図9】ロック機構のロック解除状態を示す平面図である。
【
図10】ロック機構のロック状態を示す平面図である。
【
図11】シートECUおよびその周辺の構成を示すブロック図である。
【
図13】ロック機構がロック解除状態でエアスプリングに給排気が行われた場合の動作を示すイメージ図である。
【
図14】ロック機構がロック状態でエアスプリングに給排気が行われた後、ロック機構がロック解除状態に切り替わった場合の動作を示すイメージ図である。
【
図15】ロック機構がロック解除状態に切り替わることで、シートクッションの高さが急激に変化する場合の一例を示すイメージ図である。
【
図16】ロックスイッチオン時処理を示すフローチャートである。
【
図17】ハイト操作時処理を示すフローチャートである。
【
図18】ベルト取り外し時処理を示すフローチャートである。
【
図19】ベルト装着時処理を示すフローチャートである。
【
図20】乗員交代監視処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本開示の実施形態の一例を詳細に説明する。なお、以下の実施形態では本開示に支障のない数値を用いて説明するが、本開示は以下の実施形態に記載した数値に限定されるものではない。また、以下で説明する図において、矢印FRはシート前方側を示し、矢印UPはシート上方側を示し、矢印Wはシート幅方向を示している。また、シート幅方向は、シート左方向およびシート右方向と一致している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。
【0016】
図1に示す車両用シート10は、図示しない車両に設置されて車両に乗車した乗員が着座する。車両用シート10のシート本体12は、着座する乗員の大腿部および臀部を支持するシートクッション12A、乗員の背部を支持するシートバック12B、および、乗員の頭部を支持するヘッドレスト12Cを備えている。シートクッション12Aは、骨格部材としてのシートフレーム(図示省略)の上側にクッションパッドが取付けられている。また、シートバック12Bは、骨格部材としてのバックフレーム(図示省略)の前側にバックバッドが取付けられ、シートバック12Bの上部にヘッドレスト12Cが取付けられている。
【0017】
車両用シート10では、シートフレームの後端にバックフレームの下端部が回動可能に連結されており、シートクッション12Aに対してシートバック12Bが傾動可能とされている(リクライニング機構)。また車両用シート10は、車体に対して前後方向に移動可能とするスライド機構およびシートクッション12Aと共にシートバック12Bおよびヘッドレスト12Cを一体で上下移動可能とする昇降機構(リフト機構)が設けられている。
【0018】
車両用シート10は、所謂サスペンションシートとされており、シート本体12の下方側にサスペンション14が設けられている。
図2に示すように、サスペンション14は、ロアフレーム16と、ロアフレーム16の上方側に配置されたアッパフレーム18と、ロアフレーム16とアッパフレーム18とを上下方向に連結するサスペンションリンク機構20と、を備えている。また、サスペンション14は、シート本体12を下方側から支持すると共に、作動されることでシート本体12を上方側へ上昇させるかまたはシート本体12を下方側へ下降させ、シート本体12側への衝撃を緩衝する昇降および緩衝部材としてのエアスプリング22(
図4参照)と、ダンパ24と、を備えている。なお、エアスプリング22を含むサスペンション14は、本開示におけるサスペンション機構の一例である。
【0019】
図2に示すように、ロアフレーム16は、下方側の部分がシートレールを介して車室の床部(どちらも図示省略)に固定されている。ロアフレーム16は、左右方向の両端部において前後方向に沿って延在された左右一対のレールメンバー16Aと、その前後端において左右方向に沿って延在されると共にレールメンバー16Aの前端同士および後端同士を連結する前後一対の横メンバー16Bと、を備えている。このため、ロアフレーム16は、平面視で略枠状に形成されている。
【0020】
ロアフレーム16の上方側には、アッパフレーム18が配置されている。アッパフレーム18は、左右方向両端部において前後方向に沿って延在された左右一対のレールメンバー18Aと、その前後端において左右方向に沿って延在されると共にレールメンバー18Aの前端同士および後端同士を連結する前後一対の横メンバー18Bを備えている。このため、アッパフレーム18は、平面視で略枠状に形成されている。アッパフレーム18は、シート本体12(
図1参照)の下方側に配置されている。これにより、シート本体12は、サスペンション14によって下方側から支持されている。
【0021】
(サスペンションリンク機構の構成)
図2、
図3および
図4に示すように、サスペンションリンク機構20は、ロアフレーム16およびアッパフレーム18の左右方向両端部側に各々配置されるリンクとしての左右一対のXリンク28を備えている。左右一対のXリンク28は、左右方向内側に配置された第1リンク部材としての内側リンクアーム30と、内側リンクアーム30に対して左右方向外側に配置された第2リンク部材としての外側リンクアーム32と、を含んで構成されている。内側リンクアーム30は、前方側へ向かうにつれて上方側へ傾斜している。外側リンクアーム32は、前方側へ向かうにつれて下方側へ傾斜している。内側リンクアーム30の長手方向の中央部と外側リンクアーム32の長手方向の中央部とは、左右方向を回転軸方向とする回転軸部としてのリンク軸34を介して連結されている。これにより、リンク軸34を回転中心として内側リンクアーム30と外側リンクアーム32とが相対回転可能となっている。
【0022】
サスペンションリンク機構20は、左右の内側リンクアーム30の前方側の端部を左右方向に連結する前上側連結軸36を備えている。また、サスペンションリンク機構20は、左右の外側リンクアーム32の前方側の端部を左右方向に連結する前下側連結軸38を備えている。さらに、サスペンションリンク機構20は、左右の内側リンクアーム30の後方側の端部を左右方向に連結する後下側連結軸40を備えている。また、サスペンションリンク機構20は、左右の内側リンクアーム30の後方側の部分の上縁を左右方向に連結する板状の連結板41を備えている。さらに、サスペンションリンク機構20は、左右の外側リンクアーム32の後方側の端部を左右方向に連結する後上側連結軸42を備えている。そして、前上側連結軸36および後上側連結軸42は、アッパフレーム18の各レールメンバー18Aに支持されている。また、前下側連結軸38および後下側連結軸40は、ロアフレーム16の各レールメンバー16Aに支持されている。
【0023】
アッパフレーム18は、左右のXリンク28が同期して伸縮することにより上下方向に沿って昇降する。具体的には、アッパフレーム18を上方側へ向けて変位(上昇)させる際には、内側リンクアーム30と外側リンクアーム32の傾斜方向が上下方向に近づくように変位される(立ち上げられる)。これにより、Xリンク28が上方側へ向けて伸張するため、アッパフレーム18が上方側へ向けて変位(上昇)する。
【0024】
アッパフレーム18を下方側へ向けて変位(下降)させる際には、内側リンクアーム30と外側リンクアーム32の傾斜方向が前後方向に近づくように変位される(折り畳まれる)。これにより、Xリンク28が下方側へ向けて縮小され、アッパフレーム18は、下方側へ向けて変位(下降)する。
【0025】
(エアスプリング、ダンパ)
図4に示すように、エアスプリング22は、アッパフレーム18とロアフレーム16の間でかつ左右のXリンク28の間に設けられている。エアスプリング22には、例えば、車両のエアブレーキ装置を構成するエアコンプレッサ(空気供給源)から、内部の空気室へ圧縮空気が供給されるように構成されている。エアスプリング22は、アッパフレーム18を上方側へ向けて付勢すると共にシート本体12側(上方側)から作用する荷重に対する反力を生じさせる。また、エアスプリング22の振動は、油圧シリンダ式のダンパ24によって吸収される。そして、サスペンションリンク機構20は、エアスプリング22の膨張および縮小に伴って上下方向に対して伸縮する。これにより、アッパフレーム18およびシート本体12を上下方向に沿って変位させることができる。この構成により、アッパフレーム18上に設置されたシート本体12に着座する乗員の荷重(自重)は、エアスプリング22に伝達(負荷)される。Xリンク28が後述するロック機構50によって拘束されていない場合は、エアスプリング22に負荷された荷重は、ダンパ24の振動吸収作用と共に緩衝される。エアスプリング22は、内部の空気室へ空気が供給されると上方側へ向けて膨出されるため、アッパフレーム18が上昇されると共にシート本体12の高さ位置が上方側へ調整される。また、エアスプリング22の空気室から空気が排気されると下方側へ向けて縮小されるため、アッパフレーム18が下降されると共にシート本体12の高さ位置が下方側へ調整される。
【0026】
(ロック機構)
図3、
図4および
図5に示すように、本実施形態の車両用シート10は、サスペンション14によるシート本体12の上下方向への変位をロックするロック機構50を備えている。ロック機構50は、一対のXリンク28のうち一方のXリンク28に沿って配置された状態で一方のXリンク28に支持されたロック機構本体53と、ロック機構本体53を作動させるモータとしてのサスロックACT(actuator:アクチュエータ)64と、を備えている。なお、本実施形態では、ロック機構本体53が右側のXリンク28に支持されている。
【0027】
図5、
図6および
図7に示すように、ロック機構本体53は、Xリンク28の回転軸に対して前方側に配置されている。ロック機構本体53は、外側リンクアーム32に支持される第1変位部材としてのギヤ65を備えている。また、ロック機構本体53は、内側リンクアーム30に支持される第2変位部材としてのパウル67、第3変位部材としてのロータ69、第4変位部材としてのカムプレート71、第5変位部材としてのカム73を備えている。さらに、ロック機構本体53は、パウル67、ロータ69、カムプレート71およびカム73を支持するリターンブラケット75およびカバー77を備えている。また、ロック機構本体53は、カムプレート71を一方側へ回転付勢する付勢部材としてのリターンスプリング79を備えている。
【0028】
図5に示すように、ギヤ65は、左側から見て略C字状に湾曲した形状となっている。ギヤ65は、後方側の面および前方側の面がXリンク28の回転軸を中心とする円筒面状に形成されたギヤ本体部65Aを備えている。ギヤ本体部65Aの下方側の端部は、締結部材81を介して外側リンクアーム32に固定されている。また、ギヤ本体部65Aの上方側の端部は、内側リンクアーム30を貫通する締結部材81を介して外側リンクアーム32に固定されている。なお、締結部材81は、内側リンクアーム30に形成された長孔30Aに挿通されることで、内側リンクアーム30を貫通している。また、長孔30Aの寸法は、Xリンク28の伸縮を妨げない寸法に設定されている。すなわち、Xリンク28の伸縮範囲においては、長孔30Aに挿通された締結部材81が、長孔30Aの縁に当接しないようになっている。ギヤ本体部65Aの前方側の面からは複数の係合歯65Bが突出している。複数の係合歯65Bは、ギヤ本体部65Aの前方側の面に沿って等間隔に配置されている。なお、ギヤ本体部65Aの後方側の面は、内側リンクアーム30に固定されたガイド部材91に摺動可能に支持されている。
【0029】
図6および
図7に示すように、パウル67は、
図5に示されたギヤ65に対して前方側に配置されている。パウル67は、左右方向を厚み方向とすると共に左側または右側から見て上下方向を長手方向とする矩形の板状に形成されている。パウル67の上端部には、カラー83が挿入されるカラー挿入孔67Aが形成されている。パウル67の上端部は、後述するリターンブラケット75およびカバー77にカラー83を介して回転可能に支持されている。なお、パウル67とカバー77との間には、スペーサ93が介在している。
図6においては、リターンブラケット75の図示を省略している。パウル67の下端部におけるカバー77側の面からは、円柱状に形成された係合突起67Bがカバー77側へ向けて突出している。さらに、パウル67の下端部における後方側の面からは、複数の係合歯67Cが突出している。複数の係合歯67Cは、パウル67の下端部における後方側の面に沿って等間隔に配置されている。また、パウル67の下端部における前方側の面は、後述するカム73が当接するカム当接面67Dとなっている。
【0030】
図7に示すように、ロータ69は、左右方向を厚み方向とすると共に左側または右側から見て楕円形の板状に形成されている。このロータ69の一端部には、左側または右側から見て縁部がD字状に形成されたシャフト挿入孔が形成されている。シャフト85は、左右方向を軸方向とする棒状に形成されている。シャフト85におけるリターンブラケット75側の端部は、ロータ69のシャフト挿入孔に挿入されるロータ係合部となっている。このロータ係合部の形状がシャフト挿入孔の内部と対応する形状となっていることにより、ロータ69とシャフト85とが、相対回転不能に結合される。また、シャフト85においてロータ69が係合される側とは反対側の端部は、サスロックACT64が係合するACT係合部85Bとなっている。そして、シャフト85がリターンブラケット75およびカバー77に挿通されることで、ロータ69がリターンブラケット75およびカバー77に回転可能に支持されている。なお、プッシュナット87がシャフト85の右側の端部に係合されることで、シャフト85がリターンブラケット75から抜け出さないようになっている。
【0031】
図7および
図8に示すように、カムプレート71は、ロータ69とパウル67との間に設けられている。カムプレート71は、左右方向を厚み方向とすると共に左側または右側から見て前後方向を長手方向とする矩形の板状に形成された第1基板部71Aと、第1基板部71Aの前端部から上方側へ向けて突出する第2基板部71Bと、を備えている。第1基板部71Aと第2基板部71Bとの境目には、カラー83が挿入されるカラー挿入孔71Cが形成されている。カムプレート71は、リターンブラケット75およびカバー77にカラー挿入孔71Cに挿通されたカラー83を介して回転可能に支持されている。第1基板部71Aの後端部には、上下方向を長手方向とする長孔状の作動孔71Dが形成されている。この作動孔71Dの内部には、パウル67の係合突起67Bが配置されるようになっている。これにより、カムプレート71の回転変位に伴い、パウル67がギヤ65側またはギヤ65とは反対側へ変位するようになっている。第1基板部71Aの前後方向の中央部には、後述するカム73が係合するカム係合孔71Eが形成されている。第2基板部71Bの後方側の面は、ロータ69が係合するロータ係合面71Fとなっている。また、カムプレート71は、第2基板部71Bの上端の前端側からカバー77側へ向けて突出するスプリング係止部71Gを備えている。
【0032】
カム73は、カムプレート71に対してリターンブラケット75側に配置されている。カム73は、左右方向を厚み方向とすると共に左側または右側から見て前後方向を長手方向とする矩形の板状に形成されている。カム73の前方側の端部には、カラー83が挿入されるカラー挿入孔73Aが形成されている。そしてカム73は、カムプレート71と共にリターンブラケット75およびカバー77にカラー挿入孔73Aに挿通されたカラー83を介して回転可能に支持されている。また、カム73の後方側の端部におけるカムプレート71側の面からは、円柱状に形成された係合突起73Bがカムプレート71側へ向けて突出している。この係合突起73Bがカムプレート71のカム係合孔71E内に配置されることで、カム73とカムプレート71とが相対回転不能に結合される。
【0033】
リターンブラケット75は、左右方向を厚み方向とすると共に左側または右側から見て上下方向を長手方向とする矩形の板状に形成されたリターンブラケット本体部75Aと、リターンブラケット本体部75Aの上端部からカバー77側へ向けて屈曲して延びるカバー係合部75Bと、を備えている。リターンブラケット本体部75Aには、カラー83が挿入される2つのカラー挿入孔75C、シャフト85が挿入されるシャフト挿入孔75D、リベット89が挿入されるリベット挿入孔75Eが形成されている。
【0034】
カバー部材としてのカバー77は、左右方向を厚み方向とすると共に左側または右側から見て上下方向を長手方向とする矩形の板状に形成されていると共にパウル67、ロータ69、カムプレート71等の大部分を左側から覆うカバー本体部77Aと、カバー本体部77Aの上端部からリターンブラケット75とは反対側へ向けて屈曲して延びるスプリング係止部77Bと、を備えている。また、カバー77は、カバー本体部77Aの後端部から後方側へ向けて突出する支持片部77Cを備えている。カバー本体部77Aには、カラー83が挿入される2つのカラー挿入孔77D、シャフト85が挿入されるシャフト挿入孔77E、リベット89が挿入されるリベット挿入孔77Fが形成されている。
【0035】
リターンスプリング79は、引張コイルスプリングである。リターンスプリング79の一方側の端部は、カムプレート71のスプリング係止部71Gに係止されている。また、リターンスプリング79の他方側の端部は、カバー77のスプリング係止部77Bに係止されている。これにより、引張コイルスプリングが、カバー77とカムプレート71との間に掛け渡されている。このリターンスプリング79の付勢力により、カムプレート71が後述する第2位置側へ回転付勢されている。
【0036】
サスロックACT64は、通電されることにより作動されて図示しない出力部が回転するように構成されている。サスロックACT64の出力部には、シャフト85のACT係合部85Bが係合される。これにより、シャフト85はサスロックACT64の出力軸として機能する。そして、サスロックACT64が作動されることで、シャフト85がロータ69と共に一方側または他方側へ回転するようになっている。
【0037】
(ロック機構50の作動)
次に、ロック機構50の作動について説明する。
図9には、ロータ69におけるシャフト85とは反対側の端部が、カムプレート71のロータ係合面71Fに当接している状態が示されている。この状態では、カムプレート71が第1位置A1に配置されると共に、パウル67がロック解除位置B1に配置される。パウル67がロック解除位置B1に配置されている状態では、パウル67の係合歯67Cがギヤ65の係合歯65Bと離間している。なお、以下ではロック機構50の各部材が
図9に示す位置に位置している状態をロック解除状態と称する。
【0038】
サスロックACT64が作動されることにより、
図9に示すように、ロータ69がシャフト85と共に一方側(矢印C1方向側)へ回転変位されると、ロータ69とカムプレート71のロータ係合面71Fとの当接位置が変化する。ここで、ロータ69がシャフト85と共に一方側(矢印C1方向側)へ回転変位される際においては、ロータ69の一方側への回転角度が増すにつれて、ロータ69の回転中心からロータ69とカムプレート71のロータ係合面71Fとの当接位置までの距離が次第に短くなる。これにより、カムプレート71がリターンスプリング79の付勢力によって一方側(矢印D1方向側)へ回転変位される。カムプレート71が一方側へ回転変位されると、パウル67の係合突起67Bがカムプレート71の作動孔71Dの縁に押圧されながら作動孔71Dに沿って一方側へ移動する。
【0039】
これにより、パウル67がギヤ65側(矢印E1側)へ回転変位されて、
図10にも示すように、パウル67の係合歯65Bがギヤ65の係合歯65Bに係合する(噛合う)。なお、パウル67の係合歯65Bのギヤ65の係合歯65Bへの係合が完了している状態の当該パウル67の位置をロック位置B2と呼び、カムプレート71の位置を第2位置A2と呼ぶ。また、以下ではロック機構50の各部材が
図10に示す位置に位置している状態をロック状態と称する。
【0040】
また、カムプレート71がリターンスプリング79の付勢力によって一方側(矢印D1方向側)へ回転変位される際においては、カム73がカムプレート71と共に一方側へ回転変位される。この過程では、カム73がパウル67のカム当接面67Dに当接した後に、当該カム73がパウル67のカム当接面67Dに当接し続ける。
【0041】
パウル67がロック位置B2に配置されていると共に、カムプレート71が第2位置A2に配置されているロック状態で、
図10に示すように、サスロックACT64が作動されて、ロータ69がシャフト85と共に他方側(矢印C2方向側)へ回転変位されると、ロータ69とカムプレート71のロータ係合面71Fとの当接位置が変化する。ここで、ロータ69がシャフト85と共に他方側(矢印C2方向側)へ回転変位される際においては、ロータ69の他方側への回転角度が増すにつれて、ロータ69の回転中心からロータ69とカムプレート71のロータ係合面71Fとの当接位置までの距離が次第に長くなる。これにより、カムプレート71がリターンスプリング79の付勢力に抗して他方側(矢印D2方向側)へ回転変位される。カムプレート71が他方側へ回転変位されると、パウル67の係合突起67Bがカムプレート71の作動孔71Dの縁に押圧されながら作動孔71Dに沿って他方側へ移動する。これにより、パウル67がギヤ65とは反対側(矢印E2側)へ回転変位されて、パウル67の係合歯65Bがギヤ65の係合歯65Bと離間する。このようにして、カムプレート71が第1位置A1へ戻ると共に、パウル67がロック解除位置B1に戻る(
図9参照)。
【0042】
また、カムプレート71がリターンスプリング79の付勢力に抗して他方側(矢印D2方向側)へ回転変位される際においては、カム73がカムプレート71と共に他方側へ回転変位される。この過程では、カム73がパウル67のカム当接面67Dから離間する。
【0043】
一方、
図11には、シートECU(Electronic Control Unit)100およびその周辺の構成が示されている。シートECU100には、着座センサ122、バックルセンサ120、ロックセンサ124、ハイトスイッチ128、ロックスイッチ126、エアスプリング22およびサスロックACT64が各々電気的に接続されている。
【0044】
着座センサ122は、シートクッション12Aの内部に配置されている。着座センサ122は、例えば、圧電素子のような電極を備え、シートクッション12Aの着座乗員により押圧される(荷重が加えられる)部位に電極が位置するように配置されている。なお、着座センサ122は、圧電素子に代えて歪みゲージ式のセンサ、静電容量式のセンサ、カメラなどで構成してもよい。また、車両用シート10には、シートベルト130およびシートベルトバックル132を含むシートベルト装置が取り付けられている(
図1参照)。バックルセンサ120は、シートベルトバックル132において、シートベルト130の着脱を検出する。
【0045】
ロックセンサ124は、サスロックACT64に組み込まれたリミットスイッチまたはホールICであり、サスロックACT64の出力軸の位置を検知することで、ロック機構50がロック状態かロック解除状態かを間接的に検出する。ロックスイッチ126は、例えば、シートクッション12Aの右側部に設けられた操作部134内に設けられ、ロック機構50をロック状態からロック解除状態へ切り替える場合、または、ロック機構50をロック解除状態からロック状態へ切り替える場合に、乗員によってオン操作される。ロックスイッチ126は、プッシュスイッチでもトグルスイッチでもよく、モーメンタリスイッチでもオルタネートスイッチでもよい。ハイトスイッチ128は、例えば操作部134に設けられ、車両用シート10の座面の高さの変更を指示する場合に乗員によって操作される。ハイトスイッチ128は、例えばリミットスイッチ、可変抵抗器などで構成される。ハイトスイッチ128は本開示における第1スイッチの一例である。
【0046】
シートECU100は、ハイトスイッチ128の操作に応じて、エアスプリング22の内部の空気室への給排気を制御することで、車両用シート10の座面の高さを変更する。シートECU100は、ロック機構50をロック解除状態からロック状態へ切り替える場合、および、ロック機構50をロック状態からロック解除状態へ切り替える場合に、サスロックACT64を作動させる。
【0047】
シートECU100は、CPU(Central Processing Unit)102と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ104と、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部106と、を含んでいる。またシートECU100は、I/F(InterFace)部108を含んでおり、I/F部108には着座センサ122、バックルセンサ120、ロックセンサ124、ハイトスイッチ128、ロックスイッチ126、エアスプリング22およびサスロックACT64が各々接続されている。CPU102、メモリ104、記憶部106およびI/F部108は、内部バス110に各々接続され相互に通信可能とされている。
【0048】
また、シートECU100の記憶部106には、シート制御プログラム112が記憶されている。シートECU100は、シート制御プログラム112が記憶部106から読み出されてメモリ104に展開され、メモリ104に展開されたシート制御プログラム112がCPU102によって実行されることで、
図12に示す判定部114および制御部116として機能し、後述するロックスイッチオン時処理(
図16)、ハイト操作時処理(
図17)、ベルト取り外し時処理(
図18)、ベルト装着時処理(
図19)、乗員交代監視処理(
図20)を行う。
【0049】
判定部114は、車両用シート10に乗員が着座しているか否かを判定する。制御部116は、車両用シート10からの離席が検出されてから第1所定時間以上経過した後に、車両用シート10への着座が検出された場合に、サスロックACT64によりロック機構50をロック解除位置に変位させる。なお、制御部116は、本開示における制御部の一例である。
【0050】
次に本実施形態の作用を説明する。車両用シート10に乗員が着座しておりかつロック機構50がロック解除状態である場合、車両用シート10のシートクッション12Aの高さは、
図13(A)に示すように、乗員の体重などサスペンション14にかかる荷重と、サスペンション14のエアスプリング22の空気室の内圧と、が釣り合う高さで安定する。また、シートクッション12Aの高さが高くなるように乗員がハイトスイッチ128を操作すると、
図13(B)に示すように、ハイトスイッチ128の操作に応じてエアスプリング22へ給気されてエアスプリング22の内圧が高くされる。これに伴い、サスペンション14にかかる荷重と、エアスプリング22の内圧と、のバランスが崩れ、サスペンション14にかかる荷重と、エアスプリング22の空気室の内圧と、が釣り合う位置(ウエイトギャップが解消される位置)までサスペンション14が上方側へ伸び、
図13(C)に示すようにシートクッション12Aの高さが高くなる。
【0051】
また、
図13(D)に示す安定状態から、シートクッション12Aの高さが低くなるように乗員がハイトスイッチ128を操作すると、
図13(E)に示すように、ハイトスイッチ128の操作に応じてエアスプリング22から排気されてエアスプリング22の内圧が低くされる。これに伴い、サスペンション14にかかる荷重と、エアスプリング22の内圧と、のバランスが崩れ、サスペンション14にかかる荷重と、エアスプリング22の内圧と、が釣り合う位置(ウエイトギャップが解消される位置)までサスペンション14が下方側へ縮み、
図13(F)に示すようにシートクッション12Aの高さが低くなる。
【0052】
一方、ロック機構50がロック状態である間にエアスプリング22に対する給排気が行われてウエイトギャップが生じた後、ロック機構50をロック解除状態へ切り替えた場合、シートクッション12Aの高さが急激に変化し、乗員に違和感を与えるという課題がある。
【0053】
すなわち、ロック機構50がロック状態である間に、
図14(A)に示すように、「サスペンション14にかかる荷重≪エアスプリング22の内圧」となるウエイトギャップが生じた場合、この状態でロック機構50をロック解除状態へ切り替えると、
図14(B)にも示すようにシートクッション12Aの高さが急激に高くなる。上記の現象が生ずる一例としては、
図15に示すように、体重が比較的重い第1の乗員が車両用シート10を使用した後、ロック機構50をロック状態にしたままで降車し、体重が比較的軽い第2の乗員が車両用シート10に着座し(これにより、サスペンション14にかかる荷重が第1の乗員と第2の乗員の体重差の分だけ減少するウエイトギャップが生じる)、ロック機構50をロック解除状態に切り替えた場合が挙げられる。特に、ロック機構50をロック解除状態に切り替えたタイミングが車両の走行中である場合には、シートクッション12Aの高さの急激な変化が車両の運転に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0054】
また、ロック機構50がロック状態である間に、
図14(C)に示すように、「サスペンション14にかかる荷重≫エアスプリング22の内圧」となるウエイトギャップが生じた場合、この状態でロック機構50をロック解除状態へ切り替えると、
図14(D)にも示すようにシートクッション12Aの高さが急激に低くなる。上記の現象が生ずる一例としては、
図15に示すパターンにおいて、第1の乗員の体重≪第2の乗員の体重である場合が挙げられる。
【0055】
上記課題を解決するため、本実施形態に係るシートECU100は、以下で説明する処理を行う。すなわち、まず
図16を参照し、乗員によってロックスイッチ126がオン操作された場合にシートECU100によって実行されるロックスイッチオン時処理について説明する。
【0056】
ロックスイッチオン時処理のステップ200において、判定部114は、着座センサ122のオンオフの状態を表す情報を着座センサ122から取得する。そしてステップ202において、判定部114は、着座センサ122がオン状態か否かを判定する。本実施形態において、着座センサ122は、シートクッション12Aに荷重が加わっている場合にオン状態となり、シートクッション12Aに荷重が加わっていない場合はオフ状態となる。ステップ202の判定が否定された場合はロックスイッチオン時処理を終了する。
【0057】
また、ステップ202の判定が肯定された場合はステップ204へ移行する。ステップ204において、判定部114は、バックルセンサ120のオンオフの状態を表す情報をバックルセンサ120から取得する。そしてステップ206において、判定部114は、バックルセンサ120がオフ状態か否かを判定する。本実施形態において、バックルセンサ120は、シートベルト130が装着されている場合にオフ状態になり、シートベルト130が未装着の場合にオン状態になる。ステップ206の判定が否定された場合はロックスイッチオン時処理を終了する。
【0058】
上記のロックスイッチオン時処理により、車両用シート10に着座している状態でロック機構50をロック位置へ変位させる操作を行った乗員が、一旦車両から降車した後、再度乗車する際にロック機構50をロック解除位置へ変位させる誤操作を着座前に行ってしまった場合にも、ロック機構50がロック解除位置へ変位することが防止される。なお、上記のロックスイッチオン時処理において、ステップ200、202と、ステップ204、206と、の実行順序は
図16に示す順序に限られるものではなく、ステップ200、202よりも前にステップ204、206を行うようにしてもよい。
【0059】
また、ステップ206の判定が肯定された場合はステップ208へ移行する。ステップ208において、制御部116は、ロック機構50の状態を表す情報をロックセンサ124から取得する。ステップ210において、制御部116は、ロック機構50の状態がロック状態かロック解除状態かを判定し、判定結果に応じて分岐する。ロック機構50がロック解除状態であった場合にはステップ210からステップ212へ移行する。ステップ212において、制御部116は、ロック機構50がロック解除状態からロック状態へ変位するように、サスロックACT64の作動を制御する。また、ロック機構50がロック状態であった場合にはステップ210からステップ214へ移行し、ステップ214において、制御部116は、ロック機構50がロック状態からロック解除状態へ変位するように、サスロックACT64の作動を制御する。
【0060】
ステップ212またはステップ214の処理を行うとステップ216へ移行する。そして、ステップ216において、制御部116は、ロック機構50の現在の状態を着座時状態としてメモリ104へ書き込み、ロックスイッチオン時処理を終了する。このロックスイッチオン時処理により、判定部114によって車両用シート10に乗員が着座していると判定されている状態でのロック機構50の位置(着座時状態)がメモリ104に記憶される。
【0061】
次に
図17を参照し、乗員によってハイトスイッチ128が操作された場合にシートECU100によって実行されるハイト操作時処理について説明する。ハイト操作時処理のステップ230において、制御部116は、ロック機構50の状態を表す情報をロックセンサ124から取得する。ステップ232において、制御部116は、ロック機構50の状態がロック状態かロック解除状態かを判定し、判定結果に応じて分岐する。ロック機構50がロック解除状態であった場合、制御部116は、乗員によるハイトスイッチ128の操作に応じて、エアスプリング22の空気室への給気または空気室からの排気が行われるように制御し、ハイト操作時処理を終了する。
【0062】
一方、ロック機構50がロック状態であった場合には、ステップ232からステップ234へ移行する。ステップ234において、制御部116は、ロック機構50がロック状態からロック解除状態へ変位するように、サスロックACT64の作動を制御する。そして制御部116は、ロック機構50をロック解除状態へ切り替えた後に、乗員によるハイトスイッチ128の操作に応じて、エアスプリング22の空気室への給気または空気室からの排気が行われるように制御する。
【0063】
上記のハイト操作時処理により、ロック機構50がロック位置に位置している状態でハイトスイッチ128が操作された場合に、エアスプリング22の空気室への給排気が行われる前にサスロックACT64によりロック機構50をロック解除位置へ変位させるので、ウエイトギャップが生じることが抑制され、車両用シート10の高さが急激に変化することを抑制することができる。
【0064】
ステップ236において、制御部116は、乗員によってハイトスイッチ128が操作されていないか否かを判定する。ステップ236の判定が否定された場合は、ステップ236の判定を繰り返す。この間、制御部116は、乗員によるハイトスイッチ128の操作に応じて、エアスプリング22の空気室への給気または空気室からの排気が行われるように制御する。
【0065】
また、ステップ236の判定が肯定されるとステップ238へ移行する。ステップ238において、制御部116は、乗員によるハイトスイッチ128の操作が終了してからの時間(無操作時間)の計時を開始する。ステップ240において、制御部116は、無操作時間が所定時間に達する前にハイトスイッチ128が再操作されたか否か判定する。ステップ240の判定が肯定された場合にはステップ236に戻る。無操作時間が所定時間に達した場合には、ステップ240の判定が否定されてステップ242へ移行する。
【0066】
ステップ242において、制御部116は、メモリ104に書き込まれているロック機構50の状態(着座時状態)をメモリ104から読み出す。ステップ244において、制御部116は、メモリ104から読み出した着座時状態がロック状態かロック解除状態かを判定し、判定結果に応じて分岐する。着座時状態がロック状態である場合には、ステップ244からステップ246へ移行する。ステップ246において、制御部116は、ロック機構50がロック解除状態からロック状態へ変位するように、サスロックACT64の作動を制御し、ハイト操作時処理を終了する。また、着座時状態がロック解除状態の場合には、ステップ246をスキップしてハイト操作時処理を終了する。
【0067】
続いて
図18を参照し、乗員がシートベルトバックル132を操作してシートベルト130を取り外したことがバックルセンサ120によって検出された場合にシートECU100によって実行されるベルト取り外し時処理について説明する。ベルト取り外し時処理のステップ260において、判定部114は、着座センサ122のオンオフの状態を表す情報を着座センサ122から取得し、次のステップ262において、判定部114は、着座センサ122がオン状態(着座検出状態)か否かを判定する。ステップ262の判定が否定された場合はベルト取り外し時処理を終了する。
【0068】
一方、着座センサ122がオン状態の場合は、ステップ262の判定が肯定されてステップ264へ移行する。ステップ264において、制御部116は、ロック機構50の状態を表す情報をロックセンサ124から取得する。ステップ266において、制御部116は、ロック機構50の状態がロック状態かロック解除状態かを判定し、判定結果に応じて分岐する。ロック機構50の状態がロック解除状態である場合には、ステップ266からステップ268へ分岐する。そしてステップ268において、制御部116は、ロック機構50がロック解除状態からロック状態へ変位するように、サスロックACT64の作動を制御し、ベルト取り外し時処理を終了する。また、ロック機構50がロック状態であった場合には、ステップ268をスキップしてベルト取り外し時処理を終了する。
【0069】
上記のベルト取り外し時処理により、シートベルト130が取り外された場合にサスロックACT64によりロック機構50がロック位置に変位されるので、着座している乗員が立ち上がる際に車両用シート10が浮き上がることが防止される。
【0070】
次に
図19を参照し、乗員がシートベルト130を装着したことがバックルセンサ120によって検出された場合にシートECU100によって実行されるベルト装着時処理について説明する。ベルト装着時処理のステップ280において、判定部114は、着座センサ122のオンオフの状態を表す情報を着座センサ122から取得する。ステップ282において、判定部114は、着座センサ122がオン状態(着座検出状態)か否かを判定する。ステップ282の判定が否定された場合はベルト装着時処理を終了する。
【0071】
一方、着座センサ122がオン状態の場合は、ステップ282の判定が肯定されてステップ284へ移行する。ステップ284において、制御部116は、メモリ104に書き込まれているロック機構50の状態(着座時状態)をメモリ104から読み出す。ステップ286において、制御部116は、メモリ104から読み出した着座時状態がロック状態かロック解除状態かを判定し、判定結果に応じて分岐する。
【0072】
着座時状態がロック解除状態である場合には、ステップ286からステップ288へ移行する。ステップ288において、制御部116は、ロック機構50がロック解除状態へ変位するようにサスロックACT64の作動を制御し、ベルト装着時処理を終了する。また、着座時状態がロック状態である場合には、ステップ286からステップ290へ移行する。ステップ290において、制御部116は、ロック機構50がロック状態へ変位するようにサスロックACT64の作動を制御し、ベルト装着時処理を終了する。
【0073】
上記のベルト装着時処理により、着座中にシートの高さを変更することを乗員が所望している場合(着座時状態がロック解除状態である場合)に、着座時に乗員がロック機構50をロック解除位置へ変位させるための操作を行う必要がなくなり、操作性が悪化することを抑制することができる。
【0074】
次に
図20を参照し、例えば車両のイグニッションスイッチがオンとなっている間、シートECU100によって実行される乗員交代監視処理について説明する。乗員交代監視処理のステップ300において、制御部116は、着座センサ122のオンオフの状態を表す情報を着座センサ122から取得する。ステップ302において、制御部116は、着座センサ122の状態がオンからオフに変化したか否かを判定する。ステップ302の判定が否定された場合はステップ300に戻り、ステップ302の判定が肯定される迄、ステップ300,302を繰り返す。
【0075】
ステップ302の判定が肯定された場合はステップ304へ移行する。ステップ304において、制御部116は、車両用シート10に乗員が着座していない時間(未着座時間)の計時を開始する。ステップ306において、制御部116は、着座センサ122のオンオフの状態を表す情報を着座センサ122から取得する。ステップ308において、制御部116は、着座センサ122の状態がオフからオンに変化したか否かを判定する。ステップ308の判定が否定された場合はステップ306に戻り、ステップ308の判定が肯定される迄、ステップ306,308を繰り返す。
【0076】
ステップ308の判定が肯定された場合はステップ310へ移行する。ステップ310において、制御部116は、未着座時間が第1所定時間以上か否かを判定する。第1所定時間には、車両用シート10に着座している乗員が交代した場合の最小所要時間が設定され、一例としては6秒である。ステップ310の判定が否定された場合、車両用シート10に着座している乗員が交代した可能性は非常に低いので、ステップ300に戻り、ステップ300以降の処理を繰り返す。
【0077】
また、ステップ310の判定が肯定された場合には、車両用シート10に着座している乗員が交代した可能性がある。このため、ステップ312へ移行し、第2所定時間待機する。第2所定時間には、車両用シート10に一旦着座した乗員の座り直しを行った場合の所要時間が設定され、一例としては1秒である。ステップ314において、制御部116は、ロック機構50がロック状態からロック解除状態へ変位するようにサスロックACT64の作動を制御する。なお、車両用シート10に着座している乗員が交代した場合、ステップ314におけるロック機構50のロック解除状態への変位に伴い、乗員の体重差に応じて車両用シート10の高さが変化するが、車両の走行を開始する前であるので影響は小さい。また、乗員の交代が無かった場合にはウエイトギャップが発生しないので車両用シート10の高さは変化しない。
【0078】
ステップ316において、制御部116は、第3所定時間待機する。第3所定時間にはウエイトギャップが解消される迄の所要時間が設定され、一例としては0.2秒である。そしてステップ318において、制御部116は、ロック機構50がロック解除状態からロック状態へ変位するようにサスロックACT64の作動を制御し、乗員監視処理を終了する。
【0079】
上記の乗員交代監視処理により、車両用シート10に着座する乗員が交代した場合には、車両用シート10からの離席から車両用シート10への再着座までに第1所定時間以上が経過することで、車両が走行を開始するよりも前にウエイトギャップが解消される。従って、車両の走行中にロック機構がロック解除位置へ変位された場合に、車両の走行中にシートの高さが変化することを抑制することができる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態において、サスペンション14は、車両用シート10の高さの変更を指示するためのハイトスイッチ128の操作に応じて、車両用シート10の車両下方に配置されたエアスプリング22の空気室への給排気を行うことで車両用シート10の高さを変更可能とされている。ロック機構50は車両用シート10の高さの変化をロックするロック位置またはロックを解除するロック解除位置へ変位可能とされ、サスロックACT64はロック機構50を変位させる。そして制御部116は、車両用シート10からの離席が検出されてから第1所定時間以上経過した後に、車両用シート10への着座が検出された場合に、サスロックACT64によりロック機構50をロック解除位置に変位させる。これにより、車両用シート10に着座する乗員が交代した場合には、車両用シート10からの離席から車両用シート10への再着座までに第1所定時間以上が経過することで、車両が走行を開始するよりも前にウエイトギャップが解消される。従って、車両の走行中にロック機構がロック解除位置へ変位された場合に、車両の走行中にシートの高さが変化することを抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態において、制御部116は、サスロックACT64によりロック機構50をロック解除位置に変位させてから第2所定時間以上経過した後に、サスロックACT64によりロック機構50をロック位置に変位させる。これにより、ロック機構50をロック解除位置に変位させてから、ハイトスイッチ128が操作されない状態が第2所定時間以上継続した後に、ロック機構50をロック位置に変位させるので、車両用シート10の高さ調節が完了した適切なタイミングで、ロック機構50をロック位置に変位させることができる。
【0082】
また、本実施形態において、ロックセンサ124はサスロックACT64に組み込まれ、サスロックACT64の出力軸の位置を検出することで、ロック機構50がロック位置かロック解除位置かを間接的に検出し、制御部116は、ロックセンサ124からの信号に基づいてロック機構50の位置を認識する。これにより、ロックセンサ124、ひいてはロック機構50を小型化することができる。
【0083】
なお、上記の実施形態では、乗員交代監視処理(
図20)において、車両用シート10に乗員が着座していない時間(未着座時間)が第1所定時間以上の場合に、車両用シート10に着座する乗員が交代したと判定し、ロック機構50をロック解除状態へ切り替える態様を説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではなく、車両用シート10に着座する乗員が交代したか否かを検出可能なセンサを設け、未着座時間が第1所定時間以上になったことに加えて、前記センサによって乗員の交代が検出された場合に、ロック機構50をロック解除状態へ切り替えるようにしてもよい。前記センサとしては、例えば着座した乗員を撮影するカメラが挙げられるが、これに代えて、着座センサ122を、車両用シート10に着座した乗員の体重も検出可能な構成とすることによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 車両用シート
14 サスペンション(エアサスペンション機構)
22 エアスプリング
50 ロック機構
64 サスロックACT(アクチュエータ)
100 シートECU
104 メモリ(記憶部)
114 判定部
116 制御部
120 バックルセンサ
122 着座センサ
124 ロックセンサ
126 ロックスイッチ(第2スイッチ)
128 ハイトスイッチ(第1スイッチ)
130 シートベルト