(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056517
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム、情報処理装置及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240416BHJP
F24F 11/43 20180101ALI20240416BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20240416BHJP
F24F 11/33 20180101ALI20240416BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20240416BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B5/00 102C
F24F11/43
F24F11/89
F24F11/33
G08B25/04 K
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163459
(22)【出願日】2022-10-11
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】大井 聡美
【テーマコード(参考)】
3L260
4C117
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
3L260AA05
3L260BA07
3L260BA08
3L260BA25
3L260CA04
3L260CA12
3L260CA13
3L260EA07
3L260JA14
4C117XA07
4C117XB02
4C117XC26
4C117XE13
4C117XE23
4C117XE26
4C117XE30
4C117XE56
4C117XF22
4C117XH16
4C117XJ12
4C117XJ48
4C117XL01
4C117XL10
4C117XQ19
4C117XR02
5C086AA22
5C086BA30
5C086CA30
5C086CB01
5C086CB07
5C086DA40
5C086FA17
5C086FA18
5C087AA02
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA21
5C087AA25
5C087BB02
5C087BB20
5C087DD03
5C087DD49
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087FF16
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG84
(57)【要約】
【課題】より精度の高い熱中症危険度を特定することが可能となる情報処理方法等を提供すること。
【解決手段】一つの側面に係る情報処理方法は、作業者の心拍数、及び、前記作業者が作業するエリアに設けられたセンサにより検出された温度及び湿度を取得し、取得した心拍数、温度及び湿度に基づき前記作業者の熱中症危険度を特定する処理を実行させることを特徴とする。これによって、より精度の高い熱中症危険度を特定することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の心拍数、及び、前記作業者が作業するエリアに設けられたセンサにより検出された温度及び湿度を取得し、
取得した心拍数、温度及び湿度に基づき前記作業者の熱中症危険度を特定する
情報処理方法。
【請求項2】
前記心拍数と、前記湿度及び温度とを異なる受信間隔で受信し、
心拍数が上昇した場合に、上昇前の第1受信間隔よりも短い第2受信間隔で、前記心拍数を受信する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
エリアごとに分散配置された複数の中継ユニットを通じて、前記作業者を特定する識別ID、前記心拍数、前記温度及び湿度を取得する
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記中継ユニットは照明器具であり、
前記照明器具が設置されたエリアを特定するエリアIDに対応付けて、前記識別IDを記憶する
請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記作業者に取り付けられた心拍数センサから第1の通信方式により心拍数を受信し、
前記センサから第2の通信方式により温度及び湿度を受信する前記中継ユニットを通じて、前記心拍数と、前記温度及び湿度とを取得する
請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記作業者に取り付けられた心拍数センサから送信された心拍数、及び、前記心拍数センサに対応付けられた前記作業者を特定する識別IDを受信し、
受信した識別IDに対応付けて、受信した心拍数を記憶する
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記作業者に取り付けられた加速度センサから加速度データを受信し、
前記心拍数と、受信した加速度データとに基づき前記作業者の熱中症危険度を特定する
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記作業者を特定する識別IDを含む時系列データを、エリアごとに分散配置された複数の中継ユニットを通じて受信し、
受信した時系列データから、前記識別IDに対応する作業者毎に各時点での中継ユニットを特定し、
特定した中継ユニットに対応する位置情報から、作業者毎の移動履歴を取得し、
取得した各作業者の移動履歴に基づき、各作業者の活動状況を分類し、
前記心拍数と、分類した活動状況とに基づき各作業者の熱中症危険度を特定する
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記温度及び湿度に基づき、暑さ指数を示すWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)を推定し、
推定したWBGT及び前記心拍数に基づき熱中症危険度を特定する
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記WBGTが閾値を超えた場合に、前記閾値を超える前の第1送信間隔よりも短い第2送信間隔で、前記センサに対し前記温度及び湿度を送信する命令を出力する
請求項9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記エリアに空調機器が設置されており、
前記作業者に対し熱中症危険度が高いと判定した場合に、前記作業者が作業しているエリアを特定し、
特定したエリアの温度を低下させるか、前記作業者への送風方向を変更させるか、または、前記空調機器が吹き出す風量が大きくなるように、特定したエリアに設置された空調機器を制御する命令を出力する
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記作業者が着用する空調服に送風機が取り付けられており、
前記作業者に対し熱中症危険度が高いと判定した場合に、前記作業者への風量が大きくなるように、前記送風機の駆動を制御する命令を出力する
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項13】
作業者の心拍数、及び、前記作業者が作業するエリアに設けられたセンサにより検出された温度及び湿度を取得し、
取得した心拍数、温度及び湿度に基づき前記作業者の熱中症危険度を特定する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項14】
作業者の心拍数、及び、前記作業者が作業するエリアに設けられたセンサにより検出された温度及び湿度を取得する取得部と、
取得した心拍数、温度及び湿度に基づき前記作業者の熱中症危険度を特定する特定部と
を備える情報処理装置。
【請求項15】
作業者に取り付けられた心拍数センサと、前記作業者が作業するエリアに設けられたセンサとを通信する、前記エリアに分散配置された複数の中継ユニットと、前記中継ユニットと通信する制御装置と、前記制御装置と連携するクラウドサーバとを備える情報処理システムであって、
前記中継ユニットは、
前記心拍数センサから送信された前記作業者の心拍数、及び、前記センサから送信された温度及び湿度を受信する第1受信部と、
前記第1受信部が受信した前記心拍数と、前記温度及び湿度とを前記制御装置に送信する第1送信部とを備え、
前記制御装置は、
前記第1送信部が送信した前記心拍数と、前記温度及び湿度とを受信する第2受信部と、
前記第2受信部が受信した前記心拍数と、前記温度及び湿度とを前記クラウドサーバに送信する第2送信部とを備え、
前記クラウドサーバは、
前記第2送信部が送信した前記心拍数と、前記温度及び湿度とを受信する第3受信部と、
前記第3受信部が受信した前記心拍数と、前記温度及び湿度とに基づき前記作業者の熱中症危険度を特定する特定部と
を備える情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、プログラム、情報処理装置及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザの熱中症事故を未然に防ぐため、熱中症危険度等に関する検知技術の開発が盛んに進められている。例えば特許文献1には、ユーザの複数の生体指標(体内の温度である深部体温等)に基づき、ユーザの熱中症リスク(熱中症危険度)を評価する熱中症リスク評価システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、ユーザ(作業者)の生体指標以外の環境データ(温度及び湿度等)を考慮していない。
【0005】
一つの側面では、より精度の高い熱中症危険度を特定することが可能となる情報処理方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面に係る情報処理方法は、作業者の心拍数、及び、前記作業者が作業するエリアに設けられたセンサにより検出された温度及び湿度を取得し、取得した心拍数、温度及び湿度に基づき前記作業者の熱中症危険度を特定する処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、より精度の高い熱中症危険度を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】熱中症危険度特定システムの概要を示す説明図である。
【
図2】クラウドサーバの構成例を示すブロック図である。
【
図3】作業者DB及び中継ユニットDBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図4】測定データDB及び熱中症危険度DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図5】制御装置及び中継ユニットの構成例を示すブロック図である。
【
図6】ウェアラブル端末及び端末の構成例を示すブロック図である。
【
図7】熱中症危険度を特定する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】熱中症危険度を特定する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】心拍数の上昇判定処理を説明する説明図である。
【
図10】心拍数の受信間隔を変更する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態2における測定データDBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図12】心拍数及び加速度データにより熱中症危険度を特定する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】心拍数及び移動履歴により熱中症危険度を特定する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】実施形態4における熱中症危険度DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図15】WBGT及び心拍数により熱中症危険度を特定する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図16】温度及び湿度の送信間隔を変更する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図17】空調機器を制御する命令を出力する際の処理手順を示すフローチャートである。
【
図18】送風機の駆動を制御する命令を出力する際の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0010】
(実施形態1)
実施形態1は、作業者(作業員)の心拍数、温度及び湿度に基づき当該作業者の熱中症危険度を特定(判定)する形態に関する。心拍数は、一定の時間内に心臓が拍動する回数である。
図1は、熱中症危険度特定システムの概要を示す説明図である。本実施形態のシステムは、情報処理装置1、制御装置2、中継ユニット3、ウェアラブル端末4、情報処理端末5及び温湿度センサ6を含む。情報処理装置1、制御装置2及び情報処理端末5はインターネット等のネットワークNを介して情報の送受信を行う。制御装置2及び中継ユニット3は、制御装置2、中継ユニット3及びウェアラブル端末4から構成された無線通信ネットワークを介して情報の送受信を行う。
【0011】
情報処理装置1は、種々の情報に対する処理、記憶及び送受信を行う情報処理装置である。情報処理装置1は、例えばネットワークNに接続されるクラウドサーバ等のサーバ装置、パーソナルコンピュータまたは汎用のタブレットPC(パソコン)等である。本実施形態において情報処理装置1はクラウドサーバであるものとし、以下では簡潔のためクラウドサーバ1と読み替える。
【0012】
制御装置2は、クラウドサーバ1または中継ユニット3等との間の通信を行う情報処理装置である。また、制御装置2は、クラウドサーバ1から送信された情報に応じて、中継ユニット3への制御信号等を出力する。通信は有線通信、無線通信、その両方を利用する通信の構成であっても良く、中継ユニット3及びクラウドサーバ1をつなぐゲートウェイとして機能するものである。制御装置2は、例えばパーソナルコンピュータまたは汎用のタブレットPC等である。ゲートウェイ機能を有していればよく、表示機能のない情報処理装置であってもよい。
【0013】
中継ユニット3は、作業者が作業するエリア(施設)に分散配置され、無線通信ネットワークを介して中継ユニット3同士で信号のやり取りを行う中継器(機器)である。中継ユニット3は、例えば、無線LAN(Local Area Network)ルータ、無線信号を中継する機能を有する照明器具(照明装置)、空調機器、テレビジョンまたはレコーダー等である。また、中継ユニット3は、作業者に配布したウェアラブル端末4と通信する。
【0014】
ウェアラブル端末4は、例えば腕時計型のウェアラブルデバイスであり、作業者の心拍数、血圧または血糖値等の生体情報を計測する。ウェアラブル端末4は、中継ユニット3に無線通信ネットワークで接続されており、中継ユニット3を介して計測結果をクラウドサーバ1に送信する。
【0015】
なお、ウェアラブル端末4は、心拍数センサが搭載されたスマートフォン、携帯電話、アップルウォッチ(Apple Watch:登録商標)等のウェアラブルデバイスまたはタブレット等であっても良い。なお、心拍数センサをウェアラブル端末4に内蔵せず、作業者の手首または耳たぶ等の部位に取り付けられる心拍数センサを利用しても良い。
【0016】
情報処理端末5は、各作業者の熱中症危険度を特定した特定結果の受信及び表示等を行う端末装置である。情報処理端末5は、例えばスマートフォン、携帯電話、アップルウォッチ等のウェアラブルデバイス、タブレット、またはパーソナルコンピュータ端末等の情報処理機器である。以下では簡潔のため、情報処理端末5を端末5と読み替える。
【0017】
温湿度センサ6は、作業者が作業するエリア内の温度及び湿度等の環境データを検出するためのセンサである。温湿度センサ6は、中継ユニット3に無線通信ネットワークで接続されており、中継ユニット3を介して温度及び湿度をクラウドサーバ1に送信する。なお、温湿度センサ6は、ウェアラブル端末4と一体型に構成されても良い。この場合、ウェアラブル端末4は、作業者の心拍数、エリア内の温度及び湿度を計測する。なお、本実施形態では、温湿度センサ6の例を説明したが、これに限るものではない。例えば、温度センサ及び湿度センサを別々に利用して構成することも可能である。
【0018】
なお、本実施形態のシステムの構成については、
図1に示すものに限定されない。例えば、クラウドサーバ1及び制御装置2の機能を有する一体型の情報処理装置を利用しても良い。
【0019】
図示のように、施設には複数のエリア(例えば、エリア1、エリア2及びエリア3)が含まれる。例えば、作業者1の作業エリアがエリア1であり、作業者2の作業エリアがエリア2であり、作業者3の作業エリアがエリア3である。施設内に複数の中継ユニット3(例えば、中継ユニットa、中継ユニットb及び中継ユニットc)が分散配置される。
【0020】
図示のように、エリア1に中継ユニットaが設置され、エリア2に中継ユニットbが設置され、エリア3に中継ユニットcが設置される。各エリア内に、温度及び湿度を検出するための温湿度センサ6が設置される。
【0021】
施設内に設置された各中継ユニット3は、所定の受信間隔(例えば、10分)で、各作業者に配布したウェアラブル端末4から送信された無線信号を受信する。各中継ユニット3は、受信した無線信号から、各作業者を特定するためのウェアラブル端末4の識別ID、及び、各作業者の心拍数を取得する。各中継ユニット3は、所定の受信間隔(例えば、15分)で、エリア内に設置された温湿度センサ6から送信された無線信号を受信する。各中継ユニット3は、受信した無線信号から温度及び湿度を取得する。
【0022】
中継ユニット3は、中継ユニット3を特定する中継ユニットIDに対応付けて、取得したウェアラブル端末4の識別ID、作業者の心拍数、並びに、エリア内の温度及び湿度を制御装置2に送信する。制御装置2は、中継ユニット3から送信された中継ユニットID、識別ID、心拍数、温度及び湿度を取得してクラウドサーバ1に送信する。クラウドサーバ1は、制御装置2から送信された中継ユニットID、識別ID、心拍数、温度及び湿度を受信する。
【0023】
クラウドサーバ1は、中継ユニット3が設置されたエリアを特定するエリアIDに対応付けて、識別ID、作業者の心拍数、エリア内の温度及び湿度を記憶する。クラウドサーバ1は、受信した作業者の心拍数、温度及び湿度に基づき、各作業者の熱中症危険度を特定(判定)する。クラウドサーバ1は、特定した熱中症危険度を端末5に送信する。
【0024】
端末5は、クラウドサーバ1から送信された各作業者の熱中症危険度を受信して表示する。図示のように、作業者1の熱中症危険度が「1(問題なし)」であり、作業者2の熱中症危険度が「2(注意)」であり、且つ、作業者3の熱中症危険度が「3(警告)」であることを示す情報が端末5の画面に表示される。なお、熱中症危険度特定システムの動作処理の詳細は後述する。
【0025】
図2は、クラウドサーバ1の構成例を示すブロック図である。クラウドサーバ1は、制御部11、記憶部12、通信部13、読取部14及び大容量記憶部15を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0026】
制御部11はCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、または量子プロセッサ等の演算処理装置を含む。制御部11は、記憶部12に記憶された制御プログラム1P(プログラム製品)を読み出して実行することにより、クラウドサーバ1に係る種々の情報処理または制御処理等を行う。
【0027】
なお、制御プログラム1Pは、単一のコンピュータ上で、または1つのサイトにおいて配置されるか、もしくは複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。なお、
図2では制御部11を単一のプロセッサであるものとして説明するが、マルチプロセッサであっても良い。
【0028】
記憶部12はRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ素子を含み、制御部11が処理を実行するために必要な制御プログラム1P又はデータ等を記憶している。また、記憶部12は、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。通信部13は通信に関する処理を行うための通信モジュールである。
【0029】
読取部14は、CD(Compact Disc)-ROM又はDVD(Digital Versatile Disc)-ROMを含む可搬型記憶媒体1aを読み取る。制御部11が読取部14を介して、制御プログラム1Pを可搬型記憶媒体1aより読み取り、大容量記憶部15に記憶しても良い。また、ネットワークN等を介して他のコンピュータから制御部11が制御プログラム1Pをダウンロードし、大容量記憶部15に記憶しても良い。さらにまた、半導体メモリ1bから、制御部11が制御プログラム1Pを読み込んでも良い。
【0030】
大容量記憶部15は、例えばHDD(Hard disk drive:ハードディスク)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)等の記録媒体を備える。大容量記憶部15は、作業者DB(database)151、中継ユニットDB152、測定データDB153及び熱中症危険度DB154を含む。
【0031】
作業者DB151は、作業者に関する情報を記憶している。中継ユニットDB152は、中継ユニット3に関する情報を記憶している。測定データDB153は、作業者の心拍数、温度及び湿度等の測定データを記憶している。熱中症危険度DB154は、熱中症危険度のレベル及び判定基準等の情報を記憶している。
【0032】
なお、本実施形態において記憶部12及び大容量記憶部15は一体の記憶装置として構成されていても良い。また、大容量記憶部15は複数の記憶装置により構成されていても良い。更にまた、大容量記憶部15はクラウドサーバ1に接続された外部記憶装置であっても良い。
【0033】
クラウドサーバ1は、種々の情報処理及び制御処理等をコンピュータ単体で実行しても良いし、複数のコンピュータで分散して実行しても良い。また、クラウドサーバ1は、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されても良いし、通常のサーバを用いて実現されても良い。
【0034】
図3は、作業者DB151及び中継ユニットDB152のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
作業者DB151は、日付列、識別ID列、会社列、社員番号列及び氏名列を含む。日付列は、作業者が作業する作業日を記憶している。識別ID列は、各作業者を識別するために、一意に特定される、各作業者に配布したウェアラブル端末4の識別IDを記憶している。ウェアラブル端末4の識別IDは、例えば、ウェアラブル端末4のMAC(Media Access Control)アドレスまたは型番等であっても良い。
【0035】
会社列は、作業者が属する会社のIDまたは名称を記憶している。社員番号列は、作業者の社員番号を記憶している。氏名列は、作業者の氏名を記憶している。
【0036】
中継ユニットDB152は、エリアID列、エリア名称列、中継ユニットID列、設置位置列及び種類列を含む。エリアID列は、各エリアを識別するために、一意に特定されるエリアのID(番号)を記憶している。
【0037】
エリア名称列は、エリアの名称を記憶している。中継ユニットID列は、各中継ユニット3を識別するために、一意に特定される中継ユニット3のIDを記憶している。設置位置列は、エリアに設置された中継ユニット3の詳細位置情報(例えば、経度及び緯度等)を記憶している。種類列は、中継ユニット3の種類(中継器または照明器具等)を記憶している。
【0038】
図4は、測定データDB153及び熱中症危険度DB154のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
測定データDB153は、エリアID列、エリア名称列、識別ID列、心拍数列、温度列、湿度列、熱中症危険度列及び日時列を含む。エリアID列は、エリアを特定するエリアIDを記憶している。エリア名称列は、エリアの名称を記憶している。識別ID列は、作業者に配布したウェアラブル端末4の識別IDを記憶している。
【0039】
心拍数列は、作業者の心拍数を記憶している。温度列は、エリア内の温度を記憶している。湿度列は、エリア内の湿度を記憶している。熱中症危険度列は、特定された作業者の熱中症危険度を記憶している。日時列は、心拍数、温度及び湿度を受信した日時情報を記憶している。
【0040】
熱中症危険度DB154は、熱中症危険度列、説明列、心拍数列、温度列及び湿度列を含む。熱中症危険度列は、熱中症危険度のレベルを記憶している。例えば、心拍数、温度及び湿度の組み合わせに基づき、熱中症危険度が、レベル1(問題なし)、レベル2(注意)及びレベル3(警告)を含む。
【0041】
図示のように、例えば、作業者の心拍数が70~80bpm(beat per minutes)であり、温度が25℃以下であり、且つ、湿度が20%~24%である場合、熱中症危険度をレベル1と判断しても良い。なお、心拍数、温度及び湿度に応じて、任意の熱中症危険度のレベルが設けられても良い。
【0042】
説明列は、熱中症危険度のレベルに対する説明情報を記憶している。心拍数列は、熱中症危険度の特定時に用いられる心拍数の基準値を記憶している。温度列は、熱中症危険度の特定時に用いられる温度の基準値を記憶している。湿度列は、熱中症危険度の特定時に用いられる湿度の基準値を記憶している。
【0043】
なお、上述した各DBの記憶形態は一例であり、データ間の関係が維持されていれば、他の記憶形態であっても良い。
【0044】
図5は、制御装置2及び中継ユニット3の構成例を示すブロック図である。
制御装置2は、制御部21、記憶部22、通信部23及び表示部24を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0045】
制御部21はCPU、MPU等の演算処理装置を含み、記憶部22に記憶された制御プログラム2P(プログラム製品)を読み出して実行することにより、制御装置2に係る種々の情報処理または制御処理等を行う。なお、
図5では制御部21を単一のプロセッサであるものとして説明するが、マルチプロセッサであっても良い。
【0046】
記憶部22はRAM、ROM等のメモリ素子を含み、制御部21が処理を実行するために必要な制御プログラム2P又はデータ等を記憶している。また、記憶部22は、制御部21が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。
【0047】
通信部23は通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、ネットワークNを介して、クラウドサーバ1等と情報の送受信を行う。また、通信部23は、制御装置2、中継ユニット3及びウェアラブル端末4から構成された無線通信ネットワークを介して、中継ユニット3等と情報の送受信を行う。表示部24は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、制御部21の指示に従い各種情報を表示する。
【0048】
中継ユニット3は、制御部31、記憶部32、無線モジュール33及び電源部34を含む。制御部31はCPU等の演算処理装置を含み、記憶部32に記憶された制御プログラム3P(プログラム製品)を読み出して実行することにより、中継ユニット3に係る種々の情報処理または制御処理等を行う。記憶部32は、中継ユニット3を特定する中継ユニットID及び時間情報等を記憶する。なお、中継ユニットIDは、MACアドレスであっても良い。また、記憶部32は、制御部31が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。
【0049】
無線モジュール33は、通信に関する処理を行うための無線通信モジュールであり、ウェアラブル端末4、制御装置2または中継ユニット3同士等と情報の送受信を行う。無線通信は、無線周波数(RF)通信(例えば、無線自動識別(RFID))、Zigbee通信プロトコル、WiFi、赤外線、無線ユニバーサル・シリアル・バス(USB)、ウルトラワイドバンド(UWB)、Bluetooth(登録商標)通信プロトコルまたは移動体通信を含むがこれらに限定されない。
【0050】
無線モジュール33は、ビーコン受信部331及び無線通信部332を含む。ビーコン受信部331による通信は第1の通信方式とし、無線通信部332による通信は第2の通信方式とする。
【0051】
ビーコン受信部331は、ウェアラブル端末4から出力されたビーコン信号を受信する。ビーコン信号は、例えば、低消費電力の通信モードであるBLEを利用するウェアラブル端末4から出力(発信)された信号である。なお、本実施形態では、BLEを利用するウェアラブル端末4の例を説明するが、これに限るものではない。ウェアラブル端末4の通信プロトコルについて、任意の通信プロトコルを利用することができる。
【0052】
無線通信部332は、中継ユニット3同士間または制御装置2と通信を行うプロトコルを利用した無線通信の受信及び送信を行う。なお、無線通信部332は、中継ユニット3同士を経由せずに、制御装置2との間の無線通信を直接行っても良い。
【0053】
第2の通信方式のプロトコルは、例えば、BLEとは異なるメッシュリンク(登録商標)であっても良い。メッシュリンクは、空いている周波数チャネルを自動で検索する適応型周波数ホッピング(AFH: Adaptive Frequency Hopping)で、耐障害性を強化したオリジナル通信方式である。中継ユニット3同士間、温湿度センサ6または制御装置2とバケツリレー方式で信号を伝達し、信号を伝える最適ルートを自動で選択するため、安定的な通信の維持を実現することが可能となる。
【0054】
電源部34は、制御部31または無線モジュール33等に電力を供給する。
【0055】
また、中継ユニット3が、室内灯、室外灯または門灯等を含む照明器具である場合、中継ユニット3は、光源部(図示なし)を含む。光源部は、基板及び基板に実装されたLED(Light Emitting Diode)等の光源を有する。電源部34は、光源部にLEDの点灯に必要な電力を供給する。制御部31は、点灯、消灯または減光指示(命令)に応じて、電源部34が光源部に供給する電力を制御する。
【0056】
図6は、ウェアラブル端末4及び端末5の構成例を示すブロック図である。
ウェアラブル端末4は、制御部41、記憶部42、無線通信部43、表示部44及び心拍数センサ45を含む。制御部41はCPU等の演算処理装置を含み、記憶部42に記憶された制御プログラム4P(プログラム製品)を読み出して実行することにより、ウェアラブル端末4に係る種々の情報処理または制御処理等を行う。
【0057】
記憶部42は、ウェアラブル端末4の識別ID及び時間情報等を記憶する。また、記憶部42は、制御部41が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。無線通信部43は、通信に関する処理を行うための無線通信モジュールである。表示部44は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、制御部41の指示に従い各種情報を表示する。心拍数センサ45は、作業者の心拍数等の生体情報を計測するセンサである。
【0058】
端末5は、制御部51、記憶部52、通信部53、入力部54及び表示部55を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0059】
制御部51はCPU、MPU等の演算処理装置を含み、記憶部52に記憶された制御プログラム5P(プログラム製品)を読み出して実行することにより、端末5に係る種々の情報処理または制御処理等を行う。なお、
図6では制御部51を単一のプロセッサであるものとして説明するが、マルチプロセッサであっても良い。
【0060】
記憶部52はRAM、ROM等のメモリ素子を含み、制御部51が処理を実行するために必要な制御プログラム5P又はデータ等を記憶している。また、記憶部52は、制御部51が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。
【0061】
制御プログラム5Pは、複数の作業者の作業位置、及び熱中症危険度を時間毎に表示部55に表示させて、特に熱中症危険度の高い作業者が一目でわかるように強調表示させるように制御部51に実行させる。現場を監督する管理者の所有するスマートフォン等の自身の通信端末に制御プログラム5Pをインストールすることで各作業者の作業状態を確認することができる。
【0062】
通信部53は通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、ネットワークNを介して、クラウドサーバ1等と情報の送受信を行う。入力部54は、キーボード、マウスまたは表示部55と一体化したタッチパネルでも良い。表示部55は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、制御部51の指示に従い各種情報を表示する。
【0063】
続いて、
図1に戻り、熱中症危険度特定システムの動作を詳しく説明する。
【0064】
工事現場または物流倉庫等の施設において、元請けまたはゼネコンの現場管理者、従業員の他に、施設に入場した協力会社またはサブコンの作業者(社員、契約社員、パートまたはアルバイト等)が日々入れ替える場合が通常である。また、作業(工事)に係る工程計画または進捗状況に応じて、鳶、大工、左官、鉄筋工またはコンクリート打設工等の現場工事の職種が日替わりで変動する場合がある。工事現場等の施設で作業をする作業者が熱中症になりやすいため、日々変わる作業者の安否確認を行い、各作業者の熱中症危険度を特定(判定)することが必要である。
【0065】
各作業者に配布するウェアラブル端末4の識別IDは、予め各作業者の作業日及び作業者情報に対応付けて作業者DB151に記憶される。
【0066】
具体的には、端末5は、作業者に配布するウェアラブル端末4の識別ID及び作業者情報の入力を受け付ける。作業者情報は、作業者が属する会社の名称、社員番号または氏名等を含む。端末5は、受け付けた識別ID及び作業者情報をクラウドサーバ1に送信する。クラウドサーバ1は、端末5から送信された識別ID及び作業者情報を受信する。クラウドサーバ1は、受信した識別IDに対応付けて、作業者の作業日、会社の名称、社員番号及び氏名を一つのレコードとして作業者DB151に記憶する。
【0067】
なお、本実施形態では、識別ID及び作業者情報を端末5からクラウドサーバ1に送信した例を説明したが、これに限るものではない。例えばクラウドサーバ1は、識別ID及び作業者情報を直接受け付けても良い。
【0068】
各作業者に配布したウェアラブル端末4は、所定の時間間隔(例えば、10分)ごとに、作業者を特定可能なウェアラブル端末4の識別ID、及び当該作業者の心拍数を含むビーコン信号を一定値(例えば、-40dBm~+10dBmの範囲の値)の電波強度(RSSI)の無線信号を出力する。中継ユニット3は、ウェアラブル端末4から出力された無線信号を受信する。中継ユニット3は、受信した無線信号から識別ID及び心拍数を取得する。
【0069】
各作業者が作業するエリアに配置された温湿度センサ6は、所定の時間間隔(例えば、15分)ごとに、温度及び湿度を含む無線信号を出力する。中継ユニット3は、温湿度センサ6から出力された無線信号を受信する。中継ユニット3は、受信した無線信号からエリア内の温度及び湿度を取得する。
【0070】
中継ユニット3は、隣接する中継ユニット3同士の通信状態を評価することにより、通信状態が良い中継ユニット3を送信先中継ユニット3として特定(選択)する。通信状態評価について、例えばRSSI(Received Signal Strength Indicator)を利用しても良い。RSSIは、無線通信機器が受信する信号(電波)の強度を測定するための回路または信号である。例えば中継ユニット3は、RSSI強度値が所定の閾値(例えば、-35dBm)以上である隣接の中継ユニット3を送信先中継ユニット3として特定しても良い。または、中継ユニット3は、複数の隣接する中継ユニット3から、RSSI強度値の大きい中継ユニット3を送信先中継ユニット3として特定しても良い。
【0071】
中継ユニット3は、所定の時間間隔ごとに、受信した識別ID、心拍数、温度、湿度、当該中継ユニット3を特定する中継ユニットID、及び送信時の日時(タイムスタンプ)を、特定した送信先中継ユニット3に送信する。所定の時間間隔は、例えば100ms(1秒間に10回程度)~500msの範囲の値に応じて設けられても良い。
【0072】
このように、複数の中継ユニット3同士を経由して、識別ID、心拍数、温度、湿度、中継ユニットID及び送信時の日時は、制御装置2と通信可能な中継ユニット3に送信される。制御装置2と通信可能な中継ユニット3は、識別ID、心拍数、温度、湿度、中継ユニットID及び日時を制御装置2に送信する。
【0073】
制御装置2は、中継ユニット3から送信された識別ID、心拍数、温度、湿度、中継ユニットID及び日時を受信する。制御装置2は、受信した識別ID、心拍数、温度、湿度、中継ユニットID及び日時をクラウドサーバ1に送信する。クラウドサーバ1は、制御装置2から送信された識別ID、心拍数、温度、湿度、中継ユニットID及び日時を受信する。
【0074】
クラウドサーバ1は、受信した心拍数、温度及び湿度に基づき、熱中症危険度を特定する。具体的には、クラウドサーバ1は、受信した心拍数、温度及び湿度を、熱中症危険度DB154に記憶された心拍数、温度及び湿度の基準値と照合することにより、熱中症危険度のレベルを特定する。例えば、クラウドサーバ1は、受信した心拍数が「70~80bpm」であり、温度が「24℃」であり、且つ、湿度が「22%」である場合、レベル1(問題なし)である熱中症危険度を特定する。
【0075】
クラウドサーバ1は、受信した中継ユニットIDに基づき、当該中継ユニット3が設置されたエリアのID及び名称を中継ユニットDB152から取得(特定)する。クラウドサーバ1は、取得したエリアIDに対応付けて、エリア名称、ウェアラブル端末4の識別ID、作業者の心拍数、温度、湿度、特定した熱中症危険度及び受信日時を一つのレコードとして測定データDB153に記憶する。
【0076】
クラウドサーバ1は、作業者に配布したウェアラブル端末4の識別IDに対応付けて、当該作業者を特定した熱中症危険度(レベル及び説明情報)を端末5に送信する。端末5は、クラウドサーバ1から送信された識別ID及び熱中症危険度を受信して表示する。
【0077】
図7及び
図8は、熱中症危険度を特定する際の処理手順を示すフローチャートである。制御装置2と通信可能な中継ユニット3の制御部31は、無線モジュール33のビーコン受信部331(第1の通信方式)を介して、エリアに作業する作業者に配布したウェアラブル端末4から送信された当該ウェアラブル端末4の識別ID及び作業者の心拍数を受信する(ステップS301)。
【0078】
制御部31は、無線モジュール33の無線通信部332(第2の通信方式)を介して、エリアに設置された温湿度センサ6から送信された温度及び湿度を受信する(ステップS302)。なお、本実施形態では、心拍数と、温度及び湿度とを異なる通信方式で送受信したが、これに限るものではない。例えば、心拍数と、温度及び湿度とを同一の通信方式で送受信しても良い。
【0079】
制御部31は、無線モジュール33の無線通信部332を介して、受信したウェアラブル端末4の識別ID、心拍数、温度、湿度、中継ユニット3を特定する中継ユニットID及び送信時の日時を制御装置2に送信する(ステップS303)。
【0080】
制御装置2の制御部21は、中継ユニット3から送信された識別ID、心拍数、温度、湿度、中継ユニットID及び送信時の日時を通信部23により受信する(ステップS201)。制御部21は、受信した識別ID、心拍数、温度、湿度、中継ユニットID及び送信時の日時を通信部23によりクラウドサーバ1に送信する(ステップS202)。
【0081】
クラウドサーバ1の制御部11は、制御装置2から送信された識別ID、心拍数、温度、湿度、中継ユニットID及び送信時の日時を通信部13により受信する(ステップS101)。制御部11は、受信した心拍数、温度及び湿度を、大容量記憶部15の熱中症危険度DB154に記憶された心拍数、温度及び湿度の基準値と照合することにより、熱中症危険度を特定する(ステップS102)。
【0082】
制御部11は、受信した中継ユニットIDに基づき、当該中継ユニット3が設置されたエリアのID及び名称を大容量記憶部15の中継ユニットDB152から特定する(ステップS103)。制御部11は、特定したエリアIDに対応付けて、エリア名称、ウェアラブル端末4の識別ID、作業者の心拍数、温度、湿度、特定した熱中症危険度及び送信時の日時を一つのレコードとして、大容量記憶部15の測定データDB153に記憶する(ステップS104)。
【0083】
制御部11は、ウェアラブル端末4の識別IDに基づき、当該ウェアラブル端末4を配布した作業者の氏名を大容量記憶部15の作業者DB151から取得する(ステップS105)。制御部11は、通信部13を介して、識別IDに対応付けて、作業者の氏名、エリア名称、及び当該作業者の熱中症危険度(レベル及び説明情報)を端末5に送信する(ステップS106)。
【0084】
端末5の制御部51は、クラウドサーバ1から送信された識別ID、作業者の氏名、エリア名称及び熱中症危険度を通信部53により受信する(ステップS501)。制御部51は、受信した識別ID、作業者の氏名、エリア名称及び熱中症危険度を表示部55により表示し(ステップS502)、処理を終了する。
【0085】
本実施形態によると、作業者の心拍数、温度及び湿度に基づき当該作業者の熱中症危険度を特定することが可能となる。
【0086】
<変形例1>
心拍数が上昇した場合、上昇前の第1受信間隔よりも短い第2受信間隔で心拍数を受信する処理を説明する。
中継ユニット3は、制御装置2を通じて、ウェアラブル端末4から送信された作業者の心拍数と、当該作業者が作業するエリアに配置された温湿度センサ6から送信された温度及び湿度とを、異なる受信間隔でクラウドサーバ1に送信する。
【0087】
例えば、中継ユニット3は、所定の時間間隔(例えば、10分)ごとに、ウェアラブル端末4から送信された作業者の心拍数を受信し、受信した心拍数をクラウドサーバ1に送信する。また、中継ユニット3は、所定の時間間隔(例えば、15分)ごとに、温湿度センサ6から送信された温度及び湿度を受信し、受信した温度及び湿度をクラウドサーバ1に送信する。
【0088】
クラウドサーバ1は、制御装置2を通じて、中継ユニット3から送信された作業者の心拍数を受信する。クラウドサーバ1は、受信した作業者の心拍数と、測定データDB153に蓄積された所定期間(例えば、1時間)内の複数回の当該作業者の心拍数とに基づき、当該作業者の心拍数が上昇したか否かを判定する。なお、心拍数の上昇判定処理に関しては後述する。
【0089】
クラウドサーバ1は、当該作業者の心拍数が上昇していないと判定した場合、心拍数の受信間隔を変更しない。クラウドサーバ1は、当該作業者の心拍数が上昇したと判定した場合、上昇前の心拍数の第1受信間隔(例えば、10分)よりも短い心拍数の第2受信間隔(例えば、1分)で心拍数を受信する受信間隔の変更命令(コマンド)を制御装置2に送信する。受信間隔の変更命令には、心拍数の第2受信間隔等が含まれる。
【0090】
制御装置2は、クラウドサーバ1から送信された受信間隔の変更命令を各中継ユニット3に送信する。各中継ユニット3は、制御装置2から送信された受信間隔の変更命令を受信する。各中継ユニット3は、受信した受信間隔の変更命令に応じて、制御装置2を通じて、受信間隔の変更命令に含まれる心拍数の第2受信間隔で、ウェアラブル端末4から送信された心拍数をクラウドサーバ1に送信する。
【0091】
図9は、心拍数の上昇判定処理を説明する説明図である。クラウドサーバ1は、制御装置2を通じて、ウェアラブル端末4から送信された心拍数を測定データDB153に記憶(蓄積)する。クラウドサーバ1は、作業者の心拍数を受信した場合、受信した作業者の心拍数を、測定データDB153に蓄積された所定期間(例えば、1時間)内の複数回(例えば、3回)の当該作業者の心拍数と比較する。
【0092】
例えば、クラウドサーバ1は、受信した心拍数が、所定期間内の複数回の心拍数を超えた場合、当該作業者の心拍数が上昇したと判定する。または、クラウドサーバ1は、受信した作業者の心拍数と、測定データDB153に蓄積された所定期間内の複数回の当該作業者の心拍数とが、所定の心拍数の閾値(例えば、140bpm)を超えた場合、当該作業者の心拍数が上昇したと判定する。
【0093】
図示のように、心拍数の変化を示すグラフ11aにおいて、横軸は時間を示し、単位は秒であり、縦軸は心拍数を示し、単位はbpmである。クラウドサーバ1は、T1、T2、T3、T4及びT5のそれぞれの時間点に、制御装置2及び中継ユニット3を通じて、ウェアラブル端末4から作業者の心拍数を取得する。なお、T1、T2、T3、T4及びT5の間の間隔は、例えば10分であっても良い。
【0094】
クラウドサーバ1は、T1、T2、T3、T4及びT5のそれぞれに対応する心拍数が所定の心拍数の閾値以上であるか否かを判定する。クラウドサーバ1は、例えば、所定の心拍数の閾値以上である心拍数が、所定の回数(例えば、3回)を連続して超えたと判定した場合、当該作業者の心拍数が上昇したと判定しても良い。
【0095】
また、所定の期間内の心拍数の変化量に基づき、作業者の心拍数が上昇したか否かを判定しても良い。期間は、例えば、時刻T1から時刻T2までの期間、時刻T2から時刻T3までの期間、時刻T3から時刻T4までの期間、または、時刻T4から時刻T5までの期間等である。クラウドサーバ1は、所定の期間内の心拍数の変化量を求め、求めた心拍数の変化量が所定の変化量の閾値を超えたか否かを判定する。クラウドサーバ1は、求めた心拍数の変化量が所定の変化量の閾値を超えた場合、作業者の心拍数が上昇したと判定する。
【0096】
図10は、心拍数の受信間隔を変更する際の処理手順を示すフローチャートである。制御装置2の制御部21は、中継ユニット3から送信された識別ID及び心拍数を通信部23により受信する(ステップS211)。制御部21は、受信した識別ID及び心拍数を通信部23によりクラウドサーバ1に送信する(ステップS212)。クラウドサーバ1の制御部11は、制御装置2から送信された識別ID及び心拍数を通信部13により受信する(ステップS111)。
【0097】
制御部11は、受信した識別IDに基づき、該当する作業者の所定期間(例えば、1時間)内の複数回の心拍数を大容量記憶部15の測定データDB153から取得する(ステップS112)。制御部11は、受信した心拍数と、測定データDB153から取得された複数回の心拍数とに基づき、当該作業者の心拍数が上昇したか否かを判定する(ステップS113)。
【0098】
制御部11は、当該作業者の心拍数が上昇していないと判定した場合(ステップS113でNO)、ステップS111の処理に戻る。制御部11は、当該作業者の心拍数が上昇したと判定した場合(ステップS113でYES)、通信部13を介して、上昇前の心拍数の第1受信間隔(例えば、10分)よりも短い心拍数の第2受信間隔(例えば、1分)で心拍数を受信する受信間隔の変更命令を制御装置2に送信する(ステップS114)。
【0099】
制御装置2の制御部21は、クラウドサーバ1から送信された受信間隔の変更命令を通信部23により受信する(ステップS213)。制御部21は、受信した受信間隔の変更命令を通信部23により各中継ユニット3に送信する(ステップS214)。制御部21は、ステップS211の処理に戻る。
【0100】
本変形例によると、心拍数が上昇した場合に、心拍数の受信間隔を短縮することにより、各作業者の熱中症危険度の判定精度を向上することが可能となる。
【0101】
(実施形態2)
実施形態2は、作業者の心拍数と、加速度センサにより得られた加速度データとに基づき、当該作業者の熱中症危険度を特定する形態に関する。なお、実施形態1と重複する内容については説明を省略する。
【0102】
本実施形態のウェアラブル端末4には、更に加速度センサ46(図示なし)が含まれる。加速度センサ46は、例えば、3軸加速度センサであり、x軸、y軸及びz軸それぞれの加速度(重力加速度)を取得することができる。加速度センサ46を有するウェアラブル端末4を配布した作業者の行動または体の変化に関する情報を検出することができる。ウェアラブル端末4は、無線通信部43を介して、加速度センサ46により検出された加速度データを各中継ユニット3に送信する。
【0103】
図11は、実施形態2における測定データDB153のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。なお、
図4と重複する内容については説明を省略する。測定データDB153は、加速度データ列を含む。加速度データ列は、加速度センサ46により検出された加速度データを記憶している。
【0104】
各作業者に配布したウェアラブル端末4は、所定の時間間隔(例えば、10分)ごとに、ウェアラブル端末4の識別ID、当該作業者の心拍数及び加速度データを中継ユニット3に送信する。中継ユニット3は、ウェアラブル端末4から送信された識別ID、心拍数及び加速度データを受信する。
【0105】
各作業者が作業するエリアに配置された温湿度センサ6は、所定の時間間隔(例えば、15分)ごとに、温度及び湿度を各中継ユニット3に送信する。各中継ユニット3は、温湿度センサ6から送信されたエリア内の温度及び湿度を受信する。
【0106】
中継ユニット3は、隣接する中継ユニット3同士の通信状態を評価することにより、通信状態が良い中継ユニット3を送信先中継ユニット3として特定する。中継ユニット3は、所定の時間間隔ごとに、受信した識別ID、心拍数、加速度データ、温度、湿度、当該中継ユニット3を特定する中継ユニットID、及び送信時の日時を、特定した送信先中継ユニット3に送信する。
【0107】
制御装置2と通信可能な中継ユニット3は、受信した識別ID、心拍数、加速度データ、温度、湿度、中継ユニットID及び送信時の日時を制御装置2に送信する。制御装置2は、中継ユニット3から送信された識別ID、心拍数、加速度データ、温度、湿度、中継ユニットID及び送信時の日時をクラウドサーバ1に送信する。クラウドサーバ1は、制御装置2から送信された識別ID、心拍数、加速度データ、温度、湿度、中継ユニットID及び送信時の日時を受信する。
【0108】
クラウドサーバ1は、受信した作業者の心拍数及び加速度データに基づき、当該作業者の熱中症危険度を特定する。
具体的には、クラウドサーバ1は、受信した心拍数を、測定データDB153に蓄積された所定期間(例えば、30分)内の複数回の当該作業者の心拍数と比較する。例えば、クラウドサーバ1は、受信した心拍数が所定期間内の複数回の心拍数を超えた場合、当該作業者の心拍数が上昇したと判定する。
【0109】
クラウドサーバ1は、受信した作業者の加速度データに基づき、当該作業者の活動量の変化を検出する。例えば、クラウドサーバ1は、所定期間(例えば、15分)内の作業者の加速度データを周波数解析する。クラウドサーバ1は、例えば周波数の高低が活動頻度の高低に対応付けられ、所定頻度以上の活動を検出した場合、作業者の活動量が多くなると判定する。
【0110】
クラウドサーバ1は、作業者の活動量が多くなると判定した場合、当該作業者が作業中であると推定する。クラウドサーバ1は、作業者の活動量が少なくなるか、または、活動量が変化しないと判定した場合、当該作業者が休憩中であると推定する。
【0111】
通常、作業者の活動量が多くなっている場合、当該作業者の心拍数が上昇するため、作業者の活動の後に、所定期間(例えば、10分)内の心拍数が下降したか否かを判定することが必要である。クラウドサーバ1は、制御装置2を通じて、中継ユニット3から送信された作業者の心拍数に基づき、作業者の活動の後に、所定期間内の心拍数が下降したか否かを判定する。
【0112】
クラウドサーバ1は、所定期間内の心拍数が下降したと判定した場合、熱中症危険度の通知を端末5に送信しない。クラウドサーバ1は、所定期間内の心拍数が上昇した状態を継続している場合、作業者の心拍数、当該作業者が作業しているエリア内の温度及び湿度に基づき、当該作業者の熱中症危険度を特定する。なお、心拍数と、温度及び湿度とによる熱中症危険度の特定処理に関しては、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0113】
クラウドサーバ1は、特定した作業者の熱中症危険度を識別IDに対応付けて端末5に送信する。端末5は、クラウドサーバ1から送信された識別ID及び熱中症危険度を受信して表示する。
【0114】
図12は、心拍数及び加速度データにより熱中症危険度を特定する際の処理手順を示すフローチャートである。クラウドサーバ1の制御部11は、制御装置2を通じて、中継ユニット3から送信された、作業者に配布したウェアラブル端末の識別ID、当該作業者の心拍数及び加速度データを通信部13により受信する(ステップS121)。
【0115】
制御部11は、受信した作業者の加速度データに基づき、当該作業者が活動中であるか否かを判定する(ステップS122)。具体的には、制御部11は、所定期間(例えば、15分)内の作業者の加速度データを周波数解析する。制御部11は、周波数の高低が活動頻度の高低に対応付けられ、所定頻度以上の活動を検出した場合、作業者が活動中であると判定する。
【0116】
なお、加速度データに基づく機械学習を利用しても良い。例えば、制御部11は、作業者の時系列の加速度データを入力した場合、当該作業者が活動中であるか否かを示す情報を出力するよう学習された活動状態出力モデルを利用しても良い。なお、活動状態出力モデルには、加速度の周波数スペクトル、または加速度振幅の確率分布等が入力されても良い。
【0117】
制御部11は、当該作業者が活動中であると判定した場合(ステップS122でYES)、ステップS121の処理に戻る。制御部11は、当該作業者が活動中でないと判定した場合(ステップS122でNO)、当該作業者の心拍数が上昇したか否かを判定する(ステップS123)。例えば制御部11は、所定期間(例えば、15分)内の複数回の作業者の心拍数が所定の心拍数の閾値を超えた場合、当該作業者の心拍数が上昇したと判定する。
【0118】
制御部11は、当該作業者の心拍数が上昇していないと判定した場合(ステップS123でNO)、ステップS121の処理に戻る。制御部11は、当該作業者の心拍数が上昇したと判定した場合(ステップS123でYES)、制御装置2を通じて、中継ユニット3から送信されたウェアラブル端末4の識別ID及び作業者の心拍数を通信部13により受信する(ステップS124)。
【0119】
制御部11は、所定期間(例えば、10分)が経過したか否かを判定する(ステップS125)。制御部11は、所定期間が経過していない場合(ステップS125でNO)、ステップS124の処理に戻る。制御部11は、所定期間が経過した場合(ステップS125でYES)、当該作業者の心拍数が下降したか否かを判定する(ステップS126)。
【0120】
制御部11は、当該作業者の心拍数が下降したと判定した場合(ステップS126でYES)、ステップS121の処理に戻る。制御部11は、当該作業者の心拍数が下降していないと判定した場合(ステップS126でNO)、制御装置2を通じて、中継ユニット3から送信されたエリア内の温度及び湿度を通信部13により受信する(ステップS127)。
【0121】
制御部11は、作業者の心拍数、エリア内の温度及び湿度に基づき、熱中症危険度を特定する(ステップS128)。制御部11は、ウェアラブル端末4の識別IDに対応付けて、特定した熱中症危険度を通信部13により端末5に送信する(ステップS129)。端末5の制御部51は、クラウドサーバ1から送信された識別ID及び熱中症危険度を通信部53により受信する(ステップS521)。制御部51は、受信した識別ID及び熱中症危険度を表示部55により表示し(ステップS522)、処理を終了する。
【0122】
本実施形態によると、作業者の心拍数と加速度データとに基づき、当該作業者の熱中症危険度を特定することが可能となる。
【0123】
本実施形態によると、活動による作業者の心拍数の上昇を熱中症の兆候として誤検知することを防止できる。
【0124】
(実施形態3)
実施形態3は、作業者の移動履歴に基づき活動状況を分類し、当該作業者の心拍数と、分類した活動状況とに基づき熱中症危険度を特定する形態に関する。なお、実施形態1~2と重複する内容については説明を省略する。
【0125】
クラウドサーバ1は、制御装置2を通じて、作業者に配布したウェアラブル端末4の識別ID、及び中継ユニット3を特定する中継ユニットIDを含む時系列データを、エリアごとに分散配置された複数の中継ユニット3から受信する。クラウドサーバ1は、受信した時系列データから、識別IDに対応する作業者毎に各時点での中継ユニット3を特定する。
【0126】
クラウドサーバ1は、特定した中継ユニット3に対応する位置情報から、作業者毎の移動履歴を取得する。移動履歴には、移動の動線または距離等が含まれる。クラウドサーバ1は、取得した各作業者の移動履歴に基づき、各作業者の活動状況を分類する。
【0127】
例えば、単位時間内の移動の距離に応じて、活動状況を「高」、「中」及び「低」に分類しても良い。例えば、移動の距離が20メートル以上である場合、活動状況が「高」である。移動の距離が10メートル以上であり、且つ、移動の距離が20メートル未満である場合、活動状況が「中」である。移動の距離が10メートル未満である場合、活動状況が「低」である。
【0128】
なお、移動履歴に基づく機械学習を利用しても良い。例えば、制御部11は、動線または距離を含む作業者の移動履歴を入力した場合、当該作業者の活動状況(「高」、「中」または「低」)を推定した推定結果を出力するよう学習された活動状況推定モデルを利用しても良い。
【0129】
クラウドサーバ1は、作業者の心拍数と、分類した活動状況とに基づき各作業者の熱中症危険度を特定する。例えば、クラウドサーバ1は、作業者の心拍数が上昇し、且つ、活動状況が「中」または「低」である場合、作業者の心拍数と、エリア内の温度及び湿度とに基づき、作業者の熱中症危険度を特定する。なお、心拍数と、温度及び湿度とによる熱中症危険度の特定処理に関しては、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0130】
クラウドサーバ1は、特定した作業者の熱中症危険度を識別IDに対応付けて端末5に送信する。端末5は、クラウドサーバ1から送信された識別ID及び熱中症危険度を受信して表示する。
【0131】
図13は、心拍数及び移動履歴により熱中症危険度を特定する際の処理手順を示すフローチャートである。クラウドサーバ1の制御部11は、制御装置2を通じて、中継ユニット3から送信された所定期間(例えば、10:00~12:00)内の時系列データを通信部13により受信する(ステップS131)。時系列データには、作業者に配布したウェアラブル端末4の識別ID、当該作業者の心拍数、及び中継ユニット3を特定する中継ユニットID等が含まれる。
【0132】
制御部11は、受信した時系列データから、ウェアラブル端末4の識別IDに対応する作業者の各時点での中継ユニット3の中継ユニットIDを取得する(ステップS132)。制御部11は、取得した各中継ユニットIDに基づき、各中継ユニットの位置情報を取得する(ステップS133)。具体的には、制御部11は、各中継ユニットIDに基づき、大容量記憶部15の中継ユニットDB152から各中継ユニット3の位置情報(設置位置)を取得する。
【0133】
制御部11は、取得した各中継ユニットIDに対応する位置情報から、移動の動線または距離等を含む当該作業者の移動履歴を取得する(ステップS134)。制御部11は、取得した作業者の移動履歴に基づき、各作業者の活動状況(「高」、「中」または「低」等)を分類する(ステップS135)。制御部11は、分類した活動状況が「高」であるか否かを判定する(ステップS136)。
【0134】
制御部11は、活動状況が「高」であると判定した場合(ステップS136でYES)、ステップS131の処理に戻る。制御部11は、活動状況が「高」以外であると判定した場合(ステップS136でNO)、所定期間(例えば、15分)内の作業者の複数回の心拍数に基づき、当該作業者の心拍数が上昇したか否かを判定する(ステップS137)。
【0135】
制御部11は、作業者の心拍数が上昇していないと判定した場合(ステップS137でNO)、ステップS131の処理に戻る。制御部11は、作業者の心拍数が上昇したと判定した場合(ステップS137でYES)、制御装置2を通じて、中継ユニット3から送信されたエリア内の温度及び湿度を通信部13により受信する(ステップS138)。
【0136】
制御部11は、作業者の心拍数、エリア内の温度及び湿度に基づき、熱中症危険度を特定する(ステップS139)。制御部11は、ウェアラブル端末4の識別IDに対応付けて、特定した熱中症危険度を通信部13により端末5に送信する(ステップS140)。端末5の制御部51は、クラウドサーバ1から送信された識別ID及び熱中症危険度を通信部53により受信する(ステップS531)。制御部51は、受信した識別ID及び熱中症危険度を表示部55により表示し(ステップS532)、処理を終了する。
【0137】
なお、より精度の高い位置情報を取得するために、GPS(Global Positioning System)により取得された位置情報を利用しても良い。例えば、GPSモジュールを有するウェアラブル端末4は、識別IDに対応付けて、GPSモジュールにより取得された位置情報を各中継ユニット3に送信しても良い。
【0138】
本実施形態によると、作業者の心拍数と活動状況とに基づき熱中症危険度を特定することが可能となる。
【0139】
本実施形態によると、活動による作業者の心拍数の上昇を熱中症の兆候として誤検知することを防止できる。
【0140】
(実施形態4)
実施形態4は、温度及び湿度に基づき、暑さ指数を示すWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)を推定し、推定したWBGT及び心拍数に基づき熱中症危険度を特定する形態に関する。なお、実施形態1~3と重複する内容については説明を省略する。
【0141】
図14は、実施形態4における熱中症危険度DB154のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。なお、
図4と重複する内容については説明を省略する。熱中症危険度DB154は、WBGT列を含む。WBGT列は、暑さ指数を示すWBGTの基準値を記憶している。例えば、WBGTの基準値において、「31以上:運動は原則中止、28~31:厳重警戒、25~28:警戒、21~25:注意、21未満:ほぼ安全」であっても良い。
【0142】
屋内のWBGTは、湿球温度及び黒球温度に基づいて推定され、以下の式(1)で表される。
WBGT=0.7×湿球温度 + 0.3×黒球温度 …(1)
エリアに設置された温湿度センサ6から検出された温度を乾球温度とし、屋内の黒球温度は、乾球温度と近似している。また、温湿度センサ6から検出された温度及び湿度から湿球温度への近似換算を行うことにより、湿球温度を算出することができる。
湿球温度は、以下の式(2)により算出される。
4.18v0.444(Ta-Tnw)+10-8[(Tr+273)4-(Tnw+273)4]-77.1v0.421(Pas(tnw)-RHpas(Ta))=0 …(2)
Tnwは湿球温度(℃)を示し、Taは気温(℃)を示し、Trは平均放射温度(℃)を示し、vは風速(m/s)を示し、RHは相対湿度を示す。pas(Ta)は気温(Ta)における飽和水蒸気圧(kPa)を示し、Pas(Tnw)は湿球温度(Tnw)での飽和水蒸気圧(kPa)を示す。
【0143】
クラウドサーバ1は、制御装置2及び中継ユニット3を通じて、作業者が作業しているエリアに設置された温湿度センサ6から温度及び湿度を取得する。クラウドサーバ1は、取得した温度を黒球温度として取得する。クラウドサーバ1は、取得した温度及び湿度に基づき、上述した式(2)を用いて、湿球温度を近似的に算出する。クラウドサーバ1は、取得した黒球温度と、算出した湿球温度とに基づき、上述した式(1)を用いて、WBGTの値を推定する。
【0144】
クラウドサーバ1は、推定したWBGTの値及び作業者の心拍数に基づき熱中症危険度を特定する。具体的には、クラウドサーバ1は、推定したWBGTの値及び作業者の心拍数を、熱中症危険度DB154に記憶されたWBGT及び心拍数の基準値と照合することにより、熱中症危険度のレベルを特定する。例えば、クラウドサーバ1は、受信した心拍数が「75bpm」であり、且つ、WBGTの値が「20」である場合、レベル1(問題なし)である熱中症危険度を特定する。
【0145】
図15は、WBGT及び心拍数により熱中症危険度を特定する際の処理手順を示すフローチャートである。クラウドサーバ1の制御部11は、制御装置2を通じて、中継ユニット3から送信された、作業者に配布したウェアラブル端末の識別ID、及び当該作業者の心拍数を通信部13により受信する(ステップS151)。制御部11は、制御装置2を通じて、中継ユニット3から送信された、当該作業者が作業しているエリアに設置された温湿度センサ6により検出されたエリア内の温度及び湿度を通信部13により受信する(ステップS152)。
【0146】
制御部11は、受信した温度を黒球温度として取得する(ステップS153)。制御部11は、受信した温度及び湿度に基づき、上述した式(2)を用いて、湿球温度を近似的に算出する(ステップS154)。制御部11は、取得した黒球温度と、算出した湿球温度とに基づき、上述した式(1)を用いて、WBGTの値を推定する(ステップS155)。
【0147】
制御部11は、推定したWBGTの値及び作業者の心拍数に基づき、熱中症危険度DB154に記憶されたWBGT及び心拍数の基準値と照合することにより、熱中症危険度を特定する(ステップS156)。制御部11は、ウェアラブル端末4の識別IDに対応付けて、特定した熱中症危険度を通信部13により端末5に送信する(ステップS157)。
【0148】
端末5の制御部51は、クラウドサーバ1から送信された識別ID及び熱中症危険度を通信部53により受信する(ステップS551)。制御部51は、受信した識別ID及び熱中症危険度を表示部55により表示し(ステップS552)、処理を終了する。
【0149】
続いて、WBGTの値が所定の閾値を超えた場合に、温度及び湿度の送信間隔を変更する処理を説明する。クラウドサーバ1は、WBGTの値が所定の閾値(例えば、25)を超えた場合に、制御装置2を通じて、当該閾値を超えた前の第1送信間隔(例えば、10分)よりも短い第2送信間隔(例えば、5分)で、温湿度センサ6に対し温度及び湿度を送信する命令を出力する。
【0150】
図16は、温度及び湿度の送信間隔を変更する際の処理手順を示すフローチャートである。制御装置2の制御部21は、通信部23を介して、エリアに設置された温湿度センサ6により検出された温度及び湿度を中継ユニット3から受信する(ステップS261)。制御部21は、受信した温度及び湿度を通信部23によりクラウドサーバ1に送信する(ステップS262)。
【0151】
クラウドサーバ1の制御部11は、ステップS161~164の処理を実行する。なお、ステップS161~S164の処理に関しては、ステップS152~S155の処理と同様であるため、説明を省略する。制御部11は、推定したWBGTの値が所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS165)。制御部11は、推定したWBGTの値が所定の閾値を超えていない場合(ステップS165でNO)、ステップS161の処理に戻る。
【0152】
制御部11は、推定したWBGTの値が所定の閾値を超えた場合(ステップS165でYES)、通信部13を介して、当該閾値を超えた前の第1送信間隔(例えば、10分)よりも短い第2送信間隔(例えば、5分)で、温度及び湿度を送信する送信間隔の変更命令を制御装置2に送信する(ステップS166)。
【0153】
制御装置2の制御部21は、クラウドサーバ1から送信された送信間隔の変更命令を通信部23により受信する(ステップS263)。制御部21は、受信した送信間隔の変更命令を通信部23により各中継ユニット3に送信する(ステップS264)。制御部21は、ステップS261の処理に戻る。
【0154】
本実施形態によると、WBGTの値及び作業者の心拍数に基づき熱中症危険度を特定することが可能となる。
【0155】
本実施形態によると、WBGTの値が所定の閾値を超えた場合に、温度及び湿度の送信間隔を短縮することにより、各作業者の熱中症危険度の判定精度を向上することが可能となる。
【0156】
(実施形態5)
実施形態5は、作業者に対し熱中症危険度が高いと判定した場合、当該作業者が作業しているエリアに設置された空調機器(エアーコンディショナー)を制御する命令を出力する形態に関する。なお、実施形態1~4と重複する内容については説明を省略する。
【0157】
本実施形態における熱中症危険度特定システムは、空調機器7(図示なし)を含む。空調機器7は、エリア内の空気の温度調整、湿度調整、送風(風量または風向等の調整)または換気等の機能を有する機器である。
【0158】
図17は、空調機器7を制御する命令を出力する際の処理手順を示すフローチャートである。クラウドサーバ1の制御部11は、作業者の心拍数、温度及び湿度等に基づき、作業者の熱中症危険度を特定する(ステップS171)。なお、熱中症危険度の特定処理に関しては、実施形態1での処理と同様であるため、説明を省略する。
【0159】
制御部11は、特定した熱中症危険度が高いか否かを判定する(ステップS172)。例えば、制御部11は、特定した作業者の熱中症危険度がレベル2(注意)またはレベル3(警告)である場合、当該作業者の熱中症危険度が高いと判定しても良い。制御部11は、特定した熱中症危険度が高くないと判定した場合(ステップS172でNO)、処理を終了する。
【0160】
制御部11は、特定した熱中症危険度が高いと判定した場合(ステップS172でYES)、当該作業者が作業しているエリアを特定する(ステップS173)。具体的には、制御部11は、作業者に配布したウェアラブル端末4の識別IDに対応する中継ユニットIDを取得する。制御部11は、取得した中継ユニットIDに基づき、作業者が作業しているエリアのエリアIDを大容量記憶部15の中継ユニットDB152から取得する。
【0161】
制御部11は、特定したエリアに設置された空調機器7の運転状況を取得する(ステップS174)。運転状況は、空調機器7を稼働しているか否かを示す情報、運転時の設定温度、風量または風向等を含む。制御部11は、取得した運転状況に基づき、空調機器7が稼働中であるか否かを判定する(ステップS175)。
【0162】
制御部11は、空調機器7が稼働中でないと判定した場合(ステップS175でNO)、空調機器7を運転させる運転開始命令を作成する(ステップS178)。制御部11は、後述するステップS177の処理に遷移する。制御部11は、空調機器7が稼働中であると判定した場合(ステップS175でYES)、設定温度を低下させる命令、風量を増加させる命令、または送風方向を変更させる命令等の制御命令を作成する(ステップS176)。例えば、制御部11は、空調機器7のルーバーをスイングさせる命令を作成しても良い。または、制御部11は、中継ユニット3に対応する位置情報から、当該作業者が作業しているエリア内の詳細位置を特定する。制御部11は、特定したエリア内の詳細位置に基づき、当該作業者への送風方向を変更させる命令を作成しても良い。
【0163】
制御部11は、作成した命令を通信部13により空調機器7に送信する(ステップS177)。空調機器7は、クラウドサーバ1から送信された命令を受信する(ステップS771)。空調機器7は、受信した命令を実行する(ステップS772)。
【0164】
なお、中継ユニット3は、無線信号を中継する機能を有する空調機器であっても良い。この場合、制御部11は、制御装置2を通じて、作成した命令を中継ユニット3に送信する。中継ユニット3は、クラウドサーバ1から送信された命令に応じて、エリア内の空気の温度、風量または風向等を調整するための制御を実行する。
【0165】
本実施形態によると、作業者の熱中症危険度が高い場合、当該作業者が作業しているエリアに設置された空調機器7を自動的に制御することが可能となる。
【0166】
(実施形態6)
実施形態6は、作業者が着用する空調服に送風機が取り付けられており、作業者に対し熱中症危険度が高いと判定した場合、送風機の駆動を制御するための命令を出力する形態に関する。なお、実施形態1~5と重複する内容については説明を省略する。
【0167】
近年、工事現場等の施設で作業者が快適に作業を行うことができるように、作業者が空調服を着用する場合がある。空調服は、服に取り付けられた送風機8(図示なし)によって服と着用者の体の表面との間に外気を取り入れ、着用者の体の表面に風を流し、汗を気化させ、気化熱によって体を冷ますことができるように構成されている。
【0168】
図18は、送風機8の駆動を制御する命令を出力する際の処理手順を示すフローチャートである。クラウドサーバ1の制御部11は、作業者の心拍数、温度及び湿度等に基づき、作業者の熱中症危険度を特定する(ステップS181)。なお、熱中症危険度の特定処理に関しては、実施形態1での処理と同様であるため、説明を省略する。
【0169】
制御部11は、特定した熱中症危険度が高いか否かを判定する(ステップS182)。制御部11は、特定した熱中症危険度が高くないと判定した場合(ステップS182でNO)、処理を終了する。制御部11は、特定した熱中症危険度が高いと判定した場合(ステップS182でYES)、当該作業者が着用している空調服の送風機8を特定する(ステップS183)。
【0170】
例えば、予め作業者に配布したウェアラブル端末4の識別IDに対応付けて、当該作業者が着用する空調服の送風機8を特定するための送風機IDを大容量記憶部15の作業者DB151に記憶しても良い。制御部11は、作業者に配布したウェアラブル端末4の識別IDに基づき、当該識別IDに対応する空調服の送風機8の送風機IDを作業者DB151から取得する。
【0171】
制御部11は、特定した空調服の送風機8の運転状況を取得する(ステップS184)。運転状況は、送風機8を稼働しているか否かを示す情報、運転時の設定風量または風向等を含む。制御部11は、取得した運転状況に基づき、送風機8が稼働中であるか否かを判定する(ステップS185)。制御部11は、送風機8が稼働中でないと判定した場合(ステップS185でNO)、当該送風機8を運転させる運転開始命令を作成する(ステップS188)。制御部11は、後述するステップS187の処理に遷移する。
【0172】
制御部11は、送風機8が稼働中であると判定した場合(ステップS185でYES)、作業者への風量が大きくなるように、送風量増加命令を作成する(ステップS186)。制御部11は、作成した命令を通信部13により送風機8に送信する(ステップS187)。送風機8は、クラウドサーバ1から送信された命令を受信する(ステップS881)。送風機8は、受信した命令を実行する(ステップS882)。
【0173】
本実施形態によると、作業者の熱中症危険度が高い場合、当該作業者が着用している空調服の送風機8の駆動を制御することが可能となる。
【0174】
なお、上述した各実施形態では、ウェアラブル端末4により計測された心拍数及びウェアラブル端末4の識別ID等の情報を中継ユニット3経由で制御装置2に送信したが、これに限るものではない。例えば、ウェアラブル端末4は、中継ユニット3を経由せずに、心拍数及び識別ID等の情報を制御装置2に直接送信しても良い。
【0175】
また、作業者にウェアラブル端末4、及び、当該ウェアラブル端末4とは異なる情報処理端末(例えば、スマートフォン)を配布する。または、作業者に自身の情報処理端末を所持させる。この場合、ウェアラブル端末4は、心拍数及び識別ID等の情報を作業者の情報処理端末に送信する。作業者の情報処理端末は、ウェアラブル端末4から送信された心拍数及び識別ID等の情報をクラウドサーバ1に送信しても良い。
【0176】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0177】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0178】
1 情報処理装置(クラウドサーバ)
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 読取部
15 大容量記憶部
151 作業者DB
152 中継ユニットDB
153 測定データDB
154 熱中症危険度DB
1a 可搬型記憶媒体
1b 半導体メモリ
1P 制御プログラム
2 制御装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 表示部
2P 制御プログラム
3 中継ユニット
31 制御部
32 記憶部
33 無線モジュール
331 ビーコン受信部
332 無線通信部
34 電源部
3P 制御プログラム
4 ウェアラブル端末
4P 制御プログラム
41 制御部
42 記憶部
43 無線通信部
44 表示部
45 心拍数センサ
46 加速度センサ
5 情報処理端末(端末)
51 制御部
52 記憶部
53 通信部
54 入力部
55 表示部
5P 制御プログラム
6 温湿度センサ
7 空調機器
8 送風機