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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056521
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】心拍数取得装置、及びベッドシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20240416BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B5/0245 100Z
A61B5/11 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163469
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(72)【発明者】
【氏名】林 祐吾
(72)【発明者】
【氏名】森下 英三郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 悟
(72)【発明者】
【氏名】清水 信貴
(72)【発明者】
【氏名】八田 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】西方 暢孝
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA10
4C017AC20
4C017BC08
4C017BC17
4C017FF05
4C038VA04
4C038VB32
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】より高い精度で心拍数を取得することのできる心拍数取得装置を提供する。
【解決手段】ベッド上の被験者の心拍数を取得する心拍数取得装置は、前記ベッドに設けられた荷重検出器の出力に基づいて、前記被験者の心拍に応じた荷重値の時間的変動を示す心拍波形を取得する心拍波形取得部と、前記心拍波形の遷移に基づいて前記被験者の心拍周期の推定値を求める心拍周期推定部と、前記心拍波形と前記推定値とに基づいて前記被験者の心拍数を算出する心拍数算出部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド上の被験者の心拍数を取得する心拍数取得装置であって、
前記ベッドに設けられた荷重検出器の出力に基づいて、前記被験者の心拍に応じた荷重値の時間的変動を示す心拍波形を取得する心拍波形取得部と、
前記心拍波形の遷移に基づいて前記被験者の心拍周期の推定値を求める心拍周期推定部と、
前記心拍波形と前記推定値とに基づいて前記被験者の心拍数を算出する心拍数算出部とを備える心拍数取得装置。
【請求項2】
前記心拍周期推定部は、前記心拍波形のボトム、前記心拍波形の立上りゼロクロス点、前記心拍波形のピーク、及び前記心拍波形の立下りゼロクロス点の特定に基づいて前記推定値を求める請求項1に記載の心拍数取得装置。
【請求項3】
前記心拍周期推定部は、連続する2つの立上りゼロクロス点又は連続する2つの立下りゼロクロス点の間の間隔が所定範囲内であり、前記連続する2つの立上りゼロクロス点又は前記連続する2つの立下りゼロクロス点の間の前記ボトムにおける前記心拍波形の振幅がボトム振幅閾値より小さく、且つ前記連続する2つの立上りゼロクロス点又は前記連続する2つの立下りゼロクロス点の間の前記ピークにおける前記心拍波形の振幅がピーク振幅閾値より大きい場合に、前記連続する2つの立上りゼロクロス点又は前記連続する2つの立下りゼロクロス点の間の前記間隔を前記推定値とする請求項2に記載の心拍数取得装置。
【請求項4】
前記心拍周期推定部は、前記連続する2つの立上りゼロクロス点又は前記連続する2つの立下りゼロクロス点の間の前記ボトムにおける前記心拍波形の振幅がボトム体動閾値より大きく、且つ前記連続する2つの立上りゼロクロス点又は前記連続する2つの立下りゼロクロス点の間の前記ピークにおける前記心拍波形の振幅がピーク体動閾値より小さい場合に、前記連続する2つの立上りゼロクロス点又は前記連続する2つの立下りゼロクロス点の間の前記間隔を前記推定値とする請求項3に記載の心拍数取得装置。
【請求項5】
前記心拍周期推定部は、前記連続する2つの立上りゼロクロス点又は前記連続する2つの立下りゼロクロス点の間の前記間隔が所定値以上である場合に前記連続する2つの立上りゼロクロス点又は前記連続する2つの立下りゼロクロス点の間の前記間隔が前記所定範囲内であると判定する請求項3又は4に記載の心拍数取得装置。
【請求項6】
前記心拍周期推定部は、前記立上りゼロクロス点又は前記立下りゼロクロス点の特定、及び前記連続する2つの立上りゼロクロス点又は前記連続する2つの立下りゼロクロス点の間の間隔の算出を逐次的に行い、あるタイミングで算出された前記間隔の、当該タイミングの直前に算出された前記間隔に対する変動比が所定範囲内である場合に、前記間隔が前記所定範囲内であると判定する請求項3~5のいずれか一項に記載の心拍数取得装置。
【請求項7】
前記心拍数算出部における前記心拍数の算出は、
前記心拍波形の自己相関関数を算出することと、
前記自己相関関数のピークを検出することと、
検出された前記ピークの位置に基づいて前記心拍数を算出することを含み、
前記心拍数算出部は、前記ピークの検出を実行する範囲を前記推定値に基づいて決定する請求項1~6のいずれか一項に記載の心拍数取得装置。
【請求項8】
前記心拍数算出部における前記心拍数の算出において、検出された前記ピークの位置に基づいて前記心拍数を算出することは、
検出された前記ピークの周囲で補間処理を行うことと、
前記補間処理により特定されたピークの位置に基づいて前記心拍数を算出することを含む請求項7に記載の心拍数取得装置。
【請求項9】
前記心拍数算出部における前記自己相関関数の算出は、
第1期間に含まれる前記心拍波形の第1自己相関関数を算出することと、
第1期間の後の第2期間に含まれる前記心拍波形の第2自己相関関数を算出することと、
第2期間の後の第3期間に含まれる前記心拍波形の第3自己相関関数を算出することと、
第1時刻に第1自己相関関数と第2自己相関関数との合算を前記自己相関関数として算出することと、
第1時刻の後の第2時刻に第2自己相関関数と第3自己相関関数との合算を前記自己相関関数として算出することを含む請求項7又は8に記載の心拍数取得装置。
【請求項10】
前記荷重検出器は第1荷重検出器と第2荷重検出器とを含み、
前記心拍波形取得部は、第1荷重検出器の出力に基づく第1心拍波形と第2荷重検出器の出力に基づく第2心拍波形とを取得し、
前記心拍数算出部が算出する前記自己相関関数は、第1心拍波形の自己相関関数と第2心拍波形の自己相関関数との合算である請求項7~9のいずれか一項に記載の心拍数取得装置。
【請求項11】
前記心拍波形の振幅と体動閾値との比較に基づいて前記被験者の体動の有無を判定する体動判定部を更に備え、
前記心拍数算出部は、前記自己相関関数の算出対象期間における前記被験者に体動が発生している期間の割合が閾値以上である場合に、前記自己相関関数に基づく前記心拍数の算出を行わない請求項7~10のいずれか一項に記載の心拍数取得装置。
【請求項12】
前記心拍数算出部が算出した前記心拍数を表示する表示部と、
前記表示部の表示内容を制御する表示制御部とを更に備え、
前記表示制御部は、前記ベッド上に前記被験者が存在する期間と前記ベッド上に前記被験者が存在しない期間とで、前記心拍数算出部が算出した前記心拍数の前記表示部への表示態様を異ならせる請求項1~11のいずれか一項に記載の心拍数取得装置。
【請求項13】
前記荷重検出器の出力に基づいて前記被験者の体重を算出する体重算出部及び/又は前記荷重検出器の出力に基づいて前記被験者の呼吸数を算出する呼吸数算出部を更に備え、
前記表示制御部は、算出された前記被験者の体重が閾値以下である場合、及び/又は前記被験者の呼吸数が算出されない場合に前記ベッド上に前記被験者が存在しないとみなす請求項12に記載の心拍数取得装置。
【請求項14】
前記心拍数算出部は前記心拍数を逐次的に算出し、
前記表示制御部は、逐次的に算出された複数の前記心拍数の中央値を前記表示部に表示する請求項12又は13に記載の心拍数取得装置。
【請求項15】
ベッド上の被験者の心拍数を取得する心拍数取得装置であって、
前記ベッドに設けられた荷重検出器の出力の前記被験者の心拍に応じた時間的変動に基づいて前記被験者の心拍数を算出する心拍数算出部と、
前記心拍数算出部が算出した前記心拍数を表示する表示部と、
前記表示部の表示内容を制御する表示制御部とを備え、
前記表示制御部は、前記ベッド上に前記被験者が存在する期間と前記ベッド上に前記被験者が存在しない期間とで、前記心拍数算出部が算出した前記心拍数の前記表示部への表示態様を異ならせる心拍数取得装置。
【請求項16】
前記荷重検出器の出力に基づいて前記被験者の体重を算出する体重算出部及び/又は前記荷重検出器の出力に基づいて前記被験者の呼吸数を算出する呼吸数算出部を更に備え、
前記表示制御部は、算出された前記被験者の体重が閾値以下である場合、及び/又は前記被験者の呼吸数が算出されない場合に前記ベッド上に前記被験者が存在しないとみなす請求項15に記載の心拍数取得装置。
【請求項17】
前記心拍数算出部は前記心拍数を逐次的に算出し、
前記表示制御部は、逐次的に算出された複数の前記心拍数の中央値を前記表示部に表示する請求項15又は16に記載の心拍数取得装置。
【請求項18】
ベッド上の被験者の心拍数を取得する心拍数取得装置であって、
前記ベッドに設けられた荷重検出器の出力に基づいて、前記被験者の心拍に応じた荷重値の時間的変動を示す心拍波形を取得する心拍波形取得部と、
前記心拍波形に基づいて前記被験者の心拍数を算出する心拍数算出部とを備え、
前記心拍数算出部における前記心拍数の算出は、
前記心拍波形の自己相関関数を算出することと、
前記自己相関関数のピークを検出することと、
検出された前記ピークの位置に基づいて前記心拍数を算出することを含み、
前記自己相関関数の算出は、
第1期間に含まれる前記心拍波形の第1自己相関関数を算出することと、
第1期間の後の第2期間に含まれる前記心拍波形の第2自己相関関数を算出することと、
第2期間の後の第3期間に含まれる前記心拍波形の第3自己相関関数を算出することと、
第1時刻に第1自己相関関数と第2自己相関関数との合算を前記自己相関関数として算出することと、
第1時刻の後の第2時刻に第2自己相関関数と第3自己相関関数との合算を前記自己相関関数として算出することを含む心拍数取得装置。
【請求項19】
前記心拍数算出部における前記心拍数の算出において、検出された前記ピークの位置に基づいて前記心拍数を算出することは、
検出された前記ピークの周囲で補間処理を行うことと、
前記補間処理により特定されたピークの位置に基づいて前記心拍数を算出することを含む請求項18に記載の心拍数取得装置。
【請求項20】
ベッドと、
前記ベッドに設けられた荷重検出器と、
請求項1~19のいずれか一項に記載の心拍数取得装置とを備えるベッドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍数取得装置、及びベッドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療や介護の分野において、荷重検出器を介してベッド上の被験者の荷重を検出し、検出した荷重に基づいて被験者の呼吸数、心拍数等の生体情報を取得することが提案されている。
【0003】
特許文献1は、荷重検出器の出力に基づいて取得された心拍波形の自己相関関数を算出し、当該自己相関関数のピークに基づいて被験者の心拍数を算出することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-72436号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
荷重検出に基づく生体情報の取得においては、より一層の高精度化、高効率化等が求められている。
【0006】
本発明は、より高い精度で心拍数を取得することのできる心拍数取得装置及びベッドシステムを提供することを目的の1つとする。
【0007】
本発明は、より効率よく心拍数を取得することのできる心拍数取得装置及びベッドシステムを提供することを他の目的の1つとする。
【0008】
本発明は、取得した心拍数をより適切に表示することのできる心拍数取得装置及びベッドシステムを提供することを更に他の目的の1つする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従えば、
ベッド上の被験者の心拍数を取得する心拍数取得装置であって、
前記ベッドに設けられた荷重検出器の出力に基づいて、前記被験者の心拍に応じた荷重値の時間的変動を示す心拍波形を取得する心拍波形取得部と、
前記心拍波形の遷移に基づいて前記被験者の心拍周期の推定値を求める心拍周期推定部と、
前記心拍波形と前記推定値とに基づいて前記被験者の心拍数を算出する心拍数算出部とを備える心拍数取得装置が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、
ベッド上の被験者の心拍数を取得する心拍数取得装置であって、
前記ベッドに設けられた荷重検出器の出力の前記被験者の心拍に応じた時間的変動に基づいて前記被験者の心拍数を算出する心拍数算出部と、
前記心拍数算出部が算出した前記心拍数を表示する表示部と、
前記表示部の表示内容を制御する表示制御部とを備え、
前記表示制御部は、前記ベッド上に前記被験者が存在する期間と前記ベッド上に前記被験者が存在しない期間とで、前記心拍数算出部が算出した前記心拍数の前記表示部への表示態様を異ならせる心拍数取得装置が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、
ベッド上の被験者の心拍数を取得する心拍数取得装置であって、
前記ベッドに設けられた荷重検出器の出力に基づいて、前記被験者の心拍に応じた荷重値の時間的変動を示す心拍波形を取得する心拍波形取得部と、
前記心拍波形に基づいて前記被験者の心拍数を算出する心拍数算出部とを備え、
前記心拍数算出部における前記心拍数の算出は、
前記心拍波形の自己相関関数を算出することと、
前記自己相関関数のピークを検出することと、
検出された前記ピークの位置に基づいて前記心拍数を算出することを含み、
前記自己相関関数の算出は、
第1期間に含まれる前記心拍波形の第1自己相関関数を算出することと、
第1期間の後の第2期間に含まれる前記心拍波形の第2自己相関関数を算出することと、
第2期間の後の第3期間に含まれる前記心拍波形の第3自己相関関数を算出することと、
第1時刻に第1自己相関関数と第2自己相関関数との合算を前記自己相関関数として算出することと、
第1時刻の後の第2時刻に第2自己相関関数と第3自己相関関数との合算を前記自己相関関数として算出することを含む心拍数取得装置が提供される。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、
ベッドと、
前記ベッドに設けられた荷重検出器と、
第1の態様、第2の態様、又は第3の態様の心拍数取得装置とを備えるベッドシステムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の心拍数取得装置及びベッドシステムは、より高い精度で心拍数を取得することができる。
【0014】
本発明の心拍数取得装置及びベッドシステムは、より効率よく心拍数を取得することができる。
【0015】
本発明の心拍数取得装置及びベッドシステムは、取得した心拍数をより適切に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る生体情報取得装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、荷重検出器のベッドに対する配置を示す説明図である。
図3図3は、生体情報取得装置を用いて被験者の心拍数を取得する工程を示すフローチャートである。
図4図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)はそれぞれ、ベッドの脚の下に配置された4つの荷重検出器からの出力に基づく心拍波形の一例を示すグラフである。
図5図5は、心拍周期推定工程の詳細を示すフローチャートである。
図6図6は、心拍波形の一例を、当該心拍波形のボトム、立上りゼロクロス点、ピーク、及び立下りゼロクロス点とともに示すグラフである。
図7図7は、心拍周期推定工程における心拍波形の追尾を説明する表であり、心拍波形の状態と状態遷移変数との関係を主に示す。
図8図8(a)、図8(b)、図8(c)は、心拍数算出部が心拍波形の自己相関関数を分割して算出する意義を説明するための説明図である。図8(a)は時刻tに心拍波形の自己相関関数の一部を算出する様子を説明するグラフである。図8(b)は時刻t+0.5に心拍波形の自己相関関数の一部を算出する様子を説明するグラフである。図8(c)は時刻t+1.0に心拍波形の自己相関関数の一部を算出する様子を説明するグラフである。
図9図9は、心拍数算出工程の詳細を示すフローチャートである。
図10図10(a)~図10(h)は、心拍数算出部における自己相関関数の算出の手順を説明するための説明図である。図10(a)は心拍波形の一例を心拍波形のサンプリング値と共に示す。図10(b)~図10(h)はそれぞれ、自己相関関数の算出工程において、記憶部の所定領域に設けられた配列内に格納されるサンプリング値の内容を示す説明図である。
図11図11(a)、図11(b)は、心拍数算出工程において実行する補間処理を説明するための説明図である。図11(a)はピーク検出により検出された自己相関関数のピーク周辺のデータ点を示すグラフである。図11(b)は、図11(a)のデータ点に基づいて算出された二次曲線と当該二次曲線のピークを示すグラフである。
図12図12(a)、図12(b)はそれぞれ、表示部における呼吸数と心拍数の表示の態様を示す。図12(a)は表示部に呼吸数及び心拍数が表示された状態を示す。図12(b)は表示部に呼吸数及び心拍数が表示されていない状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
本発明の実施形態の生体情報取得システム100(図1)について、当該システムをベッドBD(図2)と共に使用して、ベッドBD上の被験者Sの心拍数を算出(推定)する場合を例として説明する。
【0018】
[生体情報取得システム100の構成]
図1に示す通り、本実施形態の生体情報取得システム100は、荷重検出部10、生体情報取得部(心拍数取得装置)30、ユーザ端末40を主に有する。荷重検出部10と生体情報取得部30とは、A/D変換部20を介して接続されている。生体情報取得部30とユーザ端末40とは、配線又は無線により接続されている。
【0019】
荷重検出部1は、4つの荷重検出器11、12、13、14を備える。荷重検出器11、12、13、14のそれぞれは、例えばビーム形のロードセルを用いて荷重を検出する荷重検出器である。荷重検出器11、12、13、14はそれぞれ、配線又は無線によりA/D変換部20に接続されている。
【0020】
図2に示す通り、4つの荷重検出器11~14は、被験者Sが使用するベッドBDの四隅の脚BL、BL、BL、BLの下端部に取り付けられたキャスターC、C、C、Cの下にそれぞれ配置される。
【0021】
A/D変換部20は、荷重検出部10と生体情報取得部30にそれぞれ配線又は無線で接続されている。A/D変換部20は、荷重検出部10から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器を備える。
【0022】
生体情報取得部30は、心拍波形取得部31、体動判定部32、心拍周期推定部33、心拍数算出部34、及び記憶部35を主に有する。心拍波形取得部31、体動判定部32、心拍周期推定部33、及び心拍数算出部34は、一例として、生体情報取得部30が備える不図示の制御部(コントローラ)の内部に構築されている。心拍波形取得部31、体動判定部32、心拍周期推定部33、及び心拍数算出部34の動作は後述する。
【0023】
記憶部35は、生体情報取得部30において使用されるデータを記憶する記憶装置である。記憶部35は、一例として、ハードディスク、不揮発性メモリ等とし得る。
【0024】
ユーザ端末40は、表示制御部41、表示部42、報知部43、入力部44、及び記憶部45を含む。
【0025】
表示制御部41は、一例として、ユーザ端末40が備える不図示の制御部(コントローラ)の内部に構築されている。表示制御部41は、生体情報取得部30が取得した心拍数等の各種情報を生体情報取得部30から取得し、表示部42に表示する(詳細後述)。
【0026】
表示部42は、生体情報取得部30から取得された心拍数等の情報を生体情報取得システム100の使用者に視覚的に表示する。表示部42は、例えば液晶モニタ等のモニタとし得る。
【0027】
報知部43は、生体情報取得部30から取得された心拍数等の情報に基づいて所定の報知を聴覚的に行う。報知部43は、例えばスピーカとし得る。表示制御部41が報知部43の動作を制御してもよい。
【0028】
入力部44は、生体情報取得システム100に対して入力を行うためのインターフェイスである。入力部44は、例えばキーボード及びマウスとし得る。
【0029】
記憶部45は、ユーザ端末40において使用されるデータを記憶する記憶装置である。記憶部45は、一例として、ハードディスク、不揮発性メモリ等とし得る。
【0030】
[生体情報取得システム100の動作]
このような構成を有する生体情報取得システム100を使用してベッド上の被験者の心拍数を取得する動作について説明する。
【0031】
生体情報取得システム100を使用した被験者Sの心拍数の取得は、図3のフローチャートに示す通り、荷重検出工程S1、心拍波形取得工程S2、体動判定工程S3、心拍周期推定工程S4、心拍数算出工程S5、及び表示工程S6を含む。
【0032】
概略として、荷重検出工程S1では荷重検出器11~14を用いて被験者Sの荷重を検出する。心拍波形取得工程S2では、荷重検出器11~14の検出値の時間的変動からフィルタリングにより心拍波形を抽出する。体動判定工程S3では、心拍波形の振幅に基づいて被験者Sの体動の有無を判定する。心拍周期推定工程S4では、心拍波形に基づいて被験者Sの心拍の周期を推定する。心拍数算出工程S5では、心拍波形、体動の有無、及び心拍の周期の推定値に基づいて被験者Sの心拍数を算出する。表示工程S6では、算出した心拍数を表示部42に表示する。
【0033】
[荷重検出工程S1]
荷重検出工程S1では、荷重検出器11、12、13、14を用いてベッドBD上の被験者Sの荷重を検出する。ベッドBD上の被験者Sの荷重は、ベッドBDの四隅の脚BL~BLの下に配置された荷重検出器11~14に分散して付与され、これらによって分散して検出される。
【0034】
荷重検出器11~14はそれぞれ、荷重(荷重変化)を検出してアナログ信号としてA/D変換部20に出力する。A/D変換部20は、サンプリング周期を例えば5ミリ秒(0.005秒)として、アナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号(以下「荷重信号」)として生体情報取得部30に出力する。以下では、荷重検出器11、12、13、14から出力されたアナログ信号をA/D変換部20においてデジタル変換して得られる荷重信号を、それぞれ荷重信号s、s、s、sと呼ぶ。
【0035】
[心拍波形取得工程S2]
心拍波形取得工程S2では、心拍波形取得部31が、荷重信号s~sの各々から、被験者Sの心拍波形を取得する。
【0036】
本明細書及び本発明において、「心拍波形」とは、被験者の心拍に応じた荷重値の時間的変動を示す波形を意味する。心拍波形の1周期が心拍の1周期に対応する。心拍波形の振幅は一回の拍動により流れる血液の量と相関関係を有する。他の条件が同一であれば、拍動により流れる血液量が多いほど心拍波形の振幅が大きくなる。
【0037】
心拍波形取得部31は、具体的には例えば、次の方法により心拍波形を取得する。
【0038】
人間の心拍は1分間に40~150回程度行われるため、人間の心拍の周波数は0.66~2.5Hz程度(以下、「心拍帯域」と呼ぶ)である。したがって心拍波形取得部31は、荷重信号s~sから心拍帯域の周波数を有する成分をバンドパスフィルタによりそれぞれ抽出し、抽出された成分を心拍波形HW1~HW4とする。
【0039】
荷重信号sから抽出された心拍波形HW1、荷重信号sから抽出された心拍波形HW2、荷重信号sから抽出された心拍波形HW3、及び荷重信号sから抽出された心拍波形HW4の一例を、図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)にそれぞれ示す。図4(a)~図4(d)に示す心拍波形HW1~HW4は、互いに同一の期間(時刻0s~時刻30s)における被験者Sの心拍波形である。
【0040】
また、心拍波形取得部31は、取得した心拍波形HW1~HW4の各々について、処理負担軽減のためにダウンサンプリングを行う。本実施形態では、サンプリング周期を5ミリ秒(0.005秒)から10ミリ秒(0.01秒)とするサンプリング周波数変換を行う。なお、ダウンサンプリングを行わなくてもよい。
【0041】
[体動判定工程S3]
体動判定工程S3では、体動判定部32が、心拍波形HW1~HW4の振幅AMと閾値との比較に基づいて、被験者Sに体動が生じているか否かを判定する。
【0042】
ここで、本発明及び本明細書において、「体動」とは、被験者の頭部、胴部(体幹)、四肢の移動を意味する。呼吸や心拍等に伴う臓器、血管等の移動は体動には含まれない。体動は、一例として、被験者の胴部(体幹)の移動を伴う大きな体動と、被験者の四肢や頭部の移動のみを伴う小さな体動とに分類し得る。大きな体動の一例は、寝返りや起き上がり等であり、小さな体動の一例は、睡眠中の手足や頭部の移動等である。
【0043】
体動判定部32は、心拍波形HW1~HW4の振幅AWと閾値との比較に基づいて体動の有無を判定する。具体的には例えば、心拍波形HW1~HW4の少なくとも一つの振幅AWが正側の体動閾値THpよりも大きい場合、或いは負側の体動閾値THnよりも小さい場合に、被験者Sに体動が生じていると判定する。
【0044】
体動閾値THp、THnは任意に設定することができる。具体的には例えば、心拍波形HW1~HW4の過去の振幅AMの大きさ等を参酌して、振幅AM(正値)が当該正側閾値よりも大きい値となった場合に被験者Sに体動が発生しているとみなし得る適切な値、振幅AM(負値)が当該負側閾値よりも小さい値となった場合に被験者Sに体動が発生しているとみなし得る適切な値を設定し得る。正値の閾値のみを用いて、振幅AMの絶対値が当該閾値よりも大きい値となった場合に被験者Sに体動が発生しているとみなしてもよい。
【0045】
体動判定部32は、被験者Sに体動が発生していると判定した期間において、体動発生フラグを立てる。体動発生フラグは例えば、記憶部35に確保された所定の領域に立てられる。
【0046】
[心拍周期推定工程S4]
心拍周期推定工程S4では、心拍周期推定部33が、心拍波形HW1~HW4に基づいて、被験者Sの心拍の周期を推定する。
【0047】
上記の通り、心拍波形の1周期が心拍の1周期に対応する。したがって、心拍周期推定部33は、心拍波形HW1~心拍波形HW4の少なくとも1つの遷移を追尾してその1周期の間隔(長さ)を求めることにより、被験者Sの心拍の周期を推定する。
【0048】
心拍周期推定部33は、具体的には例えば、図5のフローチャートに示す手順により被験者Sの心拍の周期を推定する。ここでは、心拍波形HW1(図6)の遷移を追尾して被験者Sの心拍の周期を推定する場合を例として説明する。
【0049】
心拍周期推定工程S4において、心拍周期推定部33は、波形遷移追尾工程S41を常時実行している。心拍周期推定部33は、波形遷移追尾工程S41において、心拍波形HW1の傾きの符号、心拍波形HW1の符号、及び状態遷移変数WSに基づいて心拍波形HW1の遷移を追尾する(図7)。
【0050】
心拍周期推定部33は、具体的には、心拍波形HW1のボトムb、心拍波形HW1の立上りエッジにおけるゼロクロス点rx(以下、「立上りゼロクロス点rx」と呼ぶ)、心拍波形HW1のピークp、及び心拍波形HW1の立下りエッジにおけるゼロクロス点fx(以下、「立下りゼロクロス点fx」と呼ぶ)を順次特定する。
【0051】
ここで、状態遷移変数WSは、心拍波形HW1の状態を示す変数である。状態遷移変数WSが「1」である場合、心拍波形HW1はボトムbから立上りゼロクロス点rxに向かう状態である。状態遷移変数WSが「2」である場合、心拍波形HW1は立上りゼロクロス点rxからピークpに向かう状態である。状態遷移変数WSが「3」である場合、心拍波形HW1はピークpから立下りゼロクロス点fxに向かう状態である。状態遷移変数WSが「4」である場合、心拍波形HW1は立下りゼロクロス点fxからボトムbに向かう状態である。
【0052】
心拍周期推定部33は、具体的には例えば、次のようにしてボトムb、立上りゼロクロス点rx、ピークp、及び立下りゼロクロス点fxを特定する。ここでは、n個目のボトムbであるボトムb(n)、n個目の立上りゼロクロス点である立上りゼロクロス点rx(n)、n個目のピークpであるピークp(n)、及びn個目の立下りゼロクロス点fxである立下りゼロクロス点fx(n)を特定する場合を例として説明する。
【0053】
(1)ボトムbの特定
図6図7に示す通り、心拍周期推定部33は、ある時点において、状態遷移変数WSが「4」であり、心拍波形HW1の傾きの符号が負から正に変化し、且つ当該時点における心拍波形HW1の振幅AMが閾値THb(n)(ボトム振幅閾値)よりも小さい場合に、当該時点に心拍波形HW1のボトムb(n)が存在すると特定する。閾値THb(n)は、一例として、1周期前に特定されたボトムb(n-1)における呼吸波形HW1の振幅AMb(n-1)の3分の1とし得る。
【0054】
心拍周期推定部33は、ボトムb(n)を特定した場合は、ボトムb(n)における心拍波形HW1の振幅AMb(n)を記憶部35に記憶する。また、状態遷移変数WSを「4」から「1」に移行する。状態遷移変数WSが「1」である場合は、心拍周期推定部33は、立上りゼロクロス点rxの到来を待機する。
【0055】
(2)立上りゼロクロス点rxの特定
心拍周期推定部33は、ある時点において、状態遷移変数WSが「1」であり、且つ心拍波形HW1の符号が負から正に変化した場合に、当該時点に立上りゼロクロス点rx(n)が存在すると特定する。
【0056】
心拍周期推定部33は、立上りゼロクロス点rx(n)を特定した場合は、状態遷移変数WSを「1」から「2」に移行する。状態遷移変数WSが「2」である場合は、心拍周期推定部33は、ピークpの到来を待機する。
【0057】
(3)ピークpの特定
心拍周期推定部33は、ある時点において、状態遷移変数WSが「2」であり、心拍波形HW1の傾きの符号が正から負に変化し、且つ当該時点における心拍波形HW1の振幅AMが閾値THp(n)(ピーク振幅閾値)よりも大きい場合に、当該時点に心拍波形HW1のピークp(n)が存在すると特定する。閾値THp(n)は、一例として、1周期前に特定されたピークp(n-1)における呼吸波形HW1の振幅AMp(n-1)の3分の1とし得る。
【0058】
心拍周期推定部33は、ピークp(n)を特定した場合は、ピークp(n)における心拍波形HW1の振幅AMp(n)を記憶部35に記憶する。また、状態遷移変数WSを「2」から「3」に移行する。状態遷移変数WSが「3」である場合は、心拍周期推定部33は、立下りゼロクロス点fxの到来を待機する。
【0059】
(4)立下りゼロクロス点fxの特定
心拍周期推定部33は、ある時点において、状態遷移変数WSが「3」であり、且つ心拍波形HW1の符号が正から負に変化した場合に、当該時点に立下りゼロクロス点fx(n)が存在すると特定する。
【0060】
心拍周期推定部33は、立下りゼロクロス点fx(n)を特定した場合は、状態遷移変数WSを「3」から「4」に移行する。状態遷移変数WSが「4」である場合は、心拍周期推定部33は、ボトムbの到来を待機する。
【0061】
心拍周期推定部33は、波形遷移追尾工程S41と並行して、工程S42を実行し、波形遷移追尾工程S41における立下りゼロクロス点fxの特定がなされたか否かを判定する。
【0062】
心拍周期推定部33は、立下りゼロクロス点fxの特定がなされていないと判定した場合(S42:NO)は、工程S42を再度実行する。心拍周期推定部33は、立下りゼロクロス点fxが特定されたと判定した場合(S42:YES)は、工程S43に進む。
【0063】
心拍周期推定部33は、工程S43において、特定されたゼロクロス点fxの直前の1周期において、心拍波形HW1が所定の条件を満たすか否かを判定する。
【0064】
心拍周期推定部33は、具体的には、直前の1周期内で特定したピークpにおける振幅AM(正値)が体動閾値THpよりも小さく且つ直前の1周期内で特定したボトムbにおける振幅AM(負値)が体動閾値THnよりも大きいか否かを判定する。直前の1周期内で特定したピークp、ボトムbは例えば、立下りゼロクロス点fx(n)を特定したタイミングにおいては、p(n)、b(n)である。体動閾値THp、THnは、体動判定工程S3において用いる体動閾値THp、THnと同じ値であってよい。
【0065】
また、心拍周期推定部33は、直前の1周期の間隔PRが所定の範囲内であるか否かを判定する。直前の1周期の間隔PRは、例えば、立下りゼロクロス点fx(n)を特定したタイミングにおいては、立下りゼロクロス点fx(n-1)から立下りゼロクロス点fx(n)までの長さ(時間)である。
【0066】
心拍周期推定部33は、直前の1周期内で特定したピークpにおける振幅AM(正値)が体動閾値THpよりも大きい場合、及び/又は直前の1周期内で特定したボトムbにおける振幅AM(負値)が体動閾値THnより小さい場合、若しくは直前の1周期の間隔PRが所定の範囲内ではない場合(S43:NO)は、工程S42に戻る。
【0067】
心拍周期推定部33は、直前の1周期内で特定したピークpにおける振幅AM(正値)が体動閾値THp以下であり、直前の1周期内で特定したボトムbにおける振幅AM(負値)が体動閾値THn以上であり、且つ直前の1周期の間隔PRが所定の範囲内である場合(S43:YES)は、工程S44に進む。心拍周期推定部33は、具体的には例えば、直前の1周期の間隔PRが所定値以上である場合に当該PRが所定の範囲内であると判定する。
【0068】
心拍周期推定部33は、工程S44において、直前の1周期の間隔PRの、当該1周期の1つ前の1周期の間隔PRに対する変動比が所定の範囲内であるか否かを判定する。なお、直前の1周期の間隔PRが立下りゼロクロス点fx(n-1)から立下りゼロクロス点fx(n)までの長さ(時間)である場合、当該1周期の1つ前の1周期の間隔PRは立下りゼロクロス点fx(n-2)から立下りゼロクロス点fx(n-1)までの長さ(時間)である。
【0069】
心拍周期推定部33は、具体的には例えば、直前の1周期の間隔PRの、当該1周期の1つ前の1周期の間隔PRに対する変動比が50%以上且つ200%以下である場合(即ち、直前の1周期の間隔PRが、その1つ前の1周期の間隔PRの1/2以上且つ2倍以下である場合)に、直前の1周期の間隔PRの、当該1周期の1つ前の1周期の間隔PRに対する変動比が所定の範囲内であると判定する。
【0070】
心拍周期推定部33は、直前の1周期の間隔PRの、当該1周期の1つ前の1周期の間隔PRに対する変動比が所定の範囲内ではないと判断した場合(S44:NO)は、工程S42に戻る。心拍周期推定部33は、直前の1周期の間隔PRの、当該1周期の1つ前の1周期の間隔PRに対する変動比が所定の範囲内であると判断した場合(S44:YES)は、工程S45に進む。
【0071】
心拍周期推定部33は、工程S45において、直前の1周期の間隔PRを記憶部35の所定の領域に記憶する。この時、当該領域に既に8周期分の間隔PRが記憶されている場合は、最も古い1周期分の間隔PRを削除する。即ち記憶部35への記憶をFIFO方式で行う。
【0072】
心拍周期推定部33は、工程S46において、記憶部35の所定の領域に8周期分の間隔PRが記憶されているか否かを判定する。心拍周期推定部33は、記憶部35の所定の領域に8周期分の間隔RPが記憶されている場合(S46:YES)は、8周期分のPRの中央値を被験者Sの心拍周期の推定値として心拍数算出部34に出力する(工程S47)。心拍周期推定部33は、記憶部35の所定の領域に8周期分の周期RPが記憶されていない場合(S46:NO)は、工程S42に戻る。
【0073】
[心拍数算出工程S5]
心拍数算出工程S5では、心拍数算出部34が、心拍波形HW1~HW4の時間的変動の様子、心拍周期推定工程S4で推定した心拍周期の推定値、被験者Sの体動の有無に基づいて、被験者Sの心拍数の算出(推定)を行う。
【0074】
心拍数算出部34は、概略として、次の原理に基づいて被験者Sの心拍数を算出する。
【0075】
まず、心拍数算出部34は、心拍波形HW1~HW4の各々について、時間領域での自己相関関数(自己相関係数)を算出する。
【0076】
算出される自己相関関数は、心拍波形HW1~HW4の各々と、当該心拍波形を時間軸方向に所定のラグ時間だけシフトさせた波形との一致の度合いを、ラグ時間を変数として示す。周期性を有するある波形と、当該波形を時間軸方向にラグ時間だけシフトさせた波形とは、ラグ時間が波形の周期に等しい場合に最も一致の度合いが高くなる。したがって、自己相関関数がピークを示すラグ時間の値が、心拍波形HW1~HW4の各々の周期を示す。
【0077】
上記に鑑み、心拍数算出部34は、心拍波形HW1~HW4の各々について自己相関関数のピークを検出し、検出したピークに対応するラグ時間を心拍波形の周期であると決定する。そして、決定した周期に基づいて被験者Sの心拍数の推定値を算出する。
【0078】
なお、本実施形態では、心拍数算出部34は、1.65秒の計算窓で自己相関関数の算出を行う。即ち、ラグ時間が0秒~1.65秒までの範囲の自己相関関数を算出する。人間の心拍数は通常、少なくとも40[回/分]程度であり、心拍波形の周期は長くても1.5秒程度である。したがって、1.65秒の計算窓で自己相関関数の算出を行うことで、心拍波形の周期を正確に求めつつ、計算処理量の増加を抑制することが出来る。
【0079】
また、本実施形態では、心拍数算出部34は、自己相関関数を分割して算出することにより、計算処理量の増加を抑制する。この概念を、図8(a)~図8(c)を用いて説明する。
【0080】
図8(a)に示す状態において、時刻tから過去0.5秒分の波形w(t)と時刻tから過去1.65秒分の波形W(t)との自己相関関数ACF(t)を算出するものとする。また、図8(b)に示す状態において、時刻t+0.5から過去0.5秒分の波形w(t+0.5)と時刻t+0.5から過去1.65秒分の波形W(t+0.5)との自己相関関数ACF(t+0.5)を算出するものとする。更に、図8(c)に示す状態において、時刻t+1.0から過去0.5秒分の波形w(t+1.0)と時刻t+1.0から過去1.65秒分の波形W(t+1.0)との自己相関関数ACF(t+1.0)を算出するものとする。
【0081】
ここで、図8(c)に示す状態において、時刻t+1.0から過去1.5秒分の波形と時刻t+1.0から過去1.65秒分の波形W(t+1.0)との自己相関関数を算出することを考える。この場合、図8(a)~図8(c)から読み取れる通り、算出される自己相関関数は、自己相関関数ACF(t)と、自己相関関数ACF(t+0.5)と、自己相関関数ACF(t+1.0)とを足し合わせたものに等しい。
【0082】
即ち、図8(c)に示す状態において、時刻t+1.0から過去1.5秒分の波形の自己相関関数を1.65秒の計算窓で算出する場合、時刻t+1.0から過去1.5秒分の波形と時刻t+1.0から過去1.65秒分の波形W(t+1.0)との自己相関関数を算出すると計算量は大きくなる。これに対して、時刻t+1.0から過去0.5秒分の波形w(t+1.0)と時刻t+1.0から過去1.65秒分の波形W(t+1.0)との自己相関関数ACF(t+1.0)を算出して、既に算出されている自己相関関数ACF(t)及び自己相関関数ACF(t+0.5)に足し合わせることで、計算量を削減することが出来る。
【0083】
このように、本実施形態の心拍周算出部34は、自己相関関数を算出する各タイミングにおいて、当該タイミングにおいて対象とする波形の全体について自己相関関数を算出するのではなく、当該タイミングにおいて対象とする波形の直近の一部について自己相関関数を算出し、過去のタイミングにおいて算出した自己相関関数に足し合わせることで計算処理量の増加を抑制する。
【0084】
心拍数算出部34は、具体的には例えば、図9に示すフローチャートに従って、次の手順により被験者Sの心拍数を算出する。
【0085】
心拍数算出部34は、工程S51において、心拍波形HW1~心拍波形HW4の各々の最新の0.5秒分の波形と過去1.65秒分の波形との自己相関関数を順次算出する。算出は、具体的には例えば、記憶部35に設けた配列ARを用いて、次のようにして行う。ここでは、心拍波形HW1に関する計算を例として説明する。心拍波形HW2~心拍波形HW4に関する計算も同様である。
【0086】
配列AR(図10(b))は、165個の要素を格納することができる。配列ARには、0.01秒(即ち、波形取得工程S2においてダウンサンプリングを行った後のサンプリング周期)ごとの心拍波形HW1の振幅AMのサンプリング値a(n)(n=1、2、…165)が格納されている。配列ARに格納された各サンプリング値は、1.65秒分の心拍波形HW1(図10(a))に対応する。
【0087】
なお、体動判定部32により体動判定フラグが立てられている期間においては、振幅ARのサンプリング値a(n)としてゼロが格納される。
【0088】
心拍数算出部34は、まず、配列ARを-164回シフトした配列AR164を作成する(図10(c))。そして、配列AR164の各要素にサンプリング値a(165)を積算し、積算結果を積算配列AARに格納する(図10(d))。この時、積算配列AARに格納されたデータは、最新0.01秒分の心拍波形HW1の、1.65秒の計算窓で算出した自己相関関数を示す。
【0089】
心拍数算出部34は、次に、配列ARを-163回シフトした配列AR163を作成する(図10(e))。そして、配列AR163の各要素にサンプリング値a(164)を積算し、積算結果を積算配列AARに加算する(図10(f))。この時、積算配列AARに格納されたデータは、最新0.02秒分の心拍波形HW1の、1.65秒の計算窓で算出した自己相関関数を示す。
【0090】
心拍数算出部34は、同様に、配列ARを-N回(N=162、161、・・・、115)シフトした配列ARを作成する。そして、配列ARの各要素にサンプリング値a(N+1)の値を積算し、積算結果を積算配列AARに加算する。心拍数算出部34は、これらの手順を繰り返し、50回目には、配列ARを-115回シフトした配列AR115を作成する(図10(g))。そして、配列AR115の各要素にa(116)の値を積算し、積算結果を積算配列AARに加算する(図10(h))。この時、積算配列AARに格納されたデータは、最新0.5秒分の心拍波形HW1の、1.65秒の計算窓で算出した自己相関関数を示す。
【0091】
心拍数算出部34は、工程S52において、積算配列AARに50回分(0.5秒分)の積算結果が加算されたか否かを判定する。そして、50回分(0.5秒分)が加算されていなければS51に戻り、50回分(0.5秒分)が加算されていれば、積算配列AARに格納された計算結果を記憶部35に記憶させる(S53)。
【0092】
心拍数算出部34は、心拍波形HW1~心拍波形HW4の各々について、工程S52、工程S53を実行する。以下、工程S53で記憶される、0.5秒分の心拍波形HW1、HW2、HW3、HW4の1.65秒の計算窓で算出した自己相関関数をそれぞれ、部分自己相関関数PAF1、PAF2、PAF3、PAF4と呼ぶ。
【0093】
心拍数算出部34は、記憶部35への部分自己相関関数PAF1~PAF4の記憶をFIFO方式で行う。記憶部35には、自己相関関数PAF1~自己相関関数PAF4をそれぞれ16個ずつ記憶できる領域が画定されている。
【0094】
心拍数算出部34は、工程S54において、記憶部35に記憶された16個の自己相関関数PAF1、PAF2、PAF3、PAF4をそれぞれ合算して自己相関関数AF1、AF2、AF3、AF4を算出する。心拍数算出部34は、算出した自己相関関数AF1~自己相関関数AF4を記憶部35に記憶する。自己相関関数AF1~自己相関関数AF4はそれぞれ、直近8秒分の心拍波形HW1~心拍波形HW4の1.65秒の計算窓で算出した自己相関関数を示す。
【0095】
心拍数算出部34は、工程S55において、記憶部35に記憶された自己相関関数AF1~自己相関関数AF4を合算して、総自己相関関数AFを算出する。心拍数算出部34は、算出した総自己相関関数AFを記憶部35に記憶する。
【0096】
心拍数算出部34は、工程S56において、自己相関関数AF1~AF4、及び総自己相関関数AFの算出に関連する直近8秒間(以下、適宜「算出対象時間」と呼ぶ)における体動発生期間が、全期間(8秒間)の3分の1よりも短いか否かを判定する。
【0097】
心拍数算出部34は、体動発生期間が算出対象期間の全期間の3分の1以上であると判定した場合(S56:NO)は、エラーを出力する(S58)。被験者Sに体動が生じている期間においては、体動の影響により心拍波形が乱れ、心拍周期の決定、及び心拍数の算出を高い精度で行うことが容易ではなくなるためである。
【0098】
心拍数算出部34は、体動発生期間が算出対象期間の全期間の3分の1よりも短いと判定した場合(S56:YES)は、工程S57で、被験者Sの心拍数の算出を行う。心拍数算出部34は、自己相関関数AF1~AF4、及び総自己相関関数AFに基づき、次の(i)~(iv)の少なくとも1つを用いて、そのピークを検出する。
【0099】
(i)心拍波形HW1~心拍波形HW4のうち、算出対象期間における信号振幅のパワーが最も大きい波形を決定し、決定された波形に対応する自己相関関数を用いる。この場合、例えば心拍波形HW1の信号振幅のパワーが最も大きいと決定された場合は、自己相関関数AF1を用いる。
【0100】
(ii)自己相関関数AF1~自己相関関数AF4のうち、ピークの絶対値が最も大きいものを用いる。
【0101】
(iii)自己相関関数AF1を心拍波形HW1の信号振幅のパワーで正規化し、同様に、自己相関関数AF2~自己相関関数AF4をそれぞれ、心拍波形HW2~心拍波形HW4の信号振幅のパワーで正規化する。そして、正規化された自己相関関数AF1~AF4のうち、ピークの絶対値が最も大きいものを用いる。
【0102】
(iv)総自己相関関数AFを用いる。これにより、SN比が向上し、心拍数算出の精度が高まる。
【0103】
心拍数算出部34は、具体的には例えば、次の工程により被験者Sの心拍数を算出する。ここでは、自己相関関数AF1を用いた算出について説明する。以下で説明する算出方法は、上記の(i)~(iv)のいずれを用いた場合にも同様に適用し得る。
【0104】
心拍数算出部34は、まず、自己相関関数AF1についてピーク検出を実行する。この時、心拍数算出部34は、心拍周期推定工程S4で推定した被験者Sの心拍周期の推定値を参酌して、ピーク検出を実行する範囲を決定する。
【0105】
上記の通り、自己相関関数AF1のピークは、心拍波形HW1の周期に対応する位置に現れると考えられる。したがって、心拍数算出部34は、心拍周期推定工程S4で推定した被験者Sの心拍周期(即ち心拍波形HW1の周期)の推定値を参酌し、ピーク検出を実行する範囲を当該推定値の周囲に限定する。これにより、ピーク検出における計算処理の負担を軽減しつつ、検出結果の信頼性を高めることが出来る。
【0106】
次に、心拍数算出部34は、検出したピークの前後において、自己相関関数AF1の補間処理を行う。
【0107】
自己相関関数AF1~自己相関関数AF4、及び総自己相関関数AFはいずれも、0.01秒のサンプリング周期で表される心拍波形HW1~心拍波形H4の少なくとも1つに基づいている。したがって、自己相関関数AF1~自己相関関数AF4、及び総自己相関関数AFのデータ点も、0.01秒間隔で得られている。
【0108】
ここで、自己相関関数AF1に対するピーク検出の結果、図11(a)に示す振幅af(p)のデータ点がピークとして検出されたものとする。この時、振幅af(p)よりも1つ前のデータ点における振幅af(p-1)と、振幅af(p)よりも1つ後のデータ点における振幅af(p+1)はいずれも、振幅af(p)よりも小さい値を示すため、これら3つのデータ点のみを見ると振幅af(p)がピークに対応するように見える。しかしながら、自己相関関数AF1のデータ点は0.01秒間隔であるため、振幅af(p)と振幅af(p-1)の間、或いは振幅af(p)と振幅af(p+1)の間に、自己相関関数AF1の真のピークが存在する場合がある。
【0109】
そこで、心拍数算出部34は、自己相関関数AF1の補間処理を行うことにより、自己相関関数AF1の真のピークPKを求める。補間処理は、具体的には例えば、ピーク検出により検出されたピークの近傍において、自己相関関数AF1のカーブに上に凸の2次関数F(図11(b))をフィッティングすることにより行う。これにより、ピーク検出により検出されたピークと真のピークPKとの間のずれ量OSを示す次の式が得られる。
【数1】
【0110】
ここで、Tsは自己相関関数AF1のデータ点のサンプリング周期(本実施形態では0.01[s])である。
【0111】
図11(b)に、補間処理により二次関数Fをフィッティングした様子を示す。心拍数算出部34は、二次関数FのピークPKを真のピークとして検出する。
【0112】
次に、心拍数算出部34は、真のピーク(即ち、二次関数FのピークPK)に対応するラグ時間Lを被験者Sの心拍の周期Tであると決定する。そして、下記の(式2)を用いて、被験者Sの心拍数HR[bpm]を算出する。
[数2]
(式2)
HR=60/T [bpm]
【0113】
心拍数算出部34は、逐次算出される自己相関関数AF1~AF4、総自己相関関数AFの少なくとも1つに基づいて、心拍数HRを逐次算出する。心拍数算出部34は、例えば0.01秒に一度、心拍数HRを算出する。
【0114】
[表示工程S6]
表示工程S6では、ユーザ端末40の表示制御部41が、心拍数算出部34が逐次算出する心拍数HRを、生体情報取得部30より逐次取得し、表示部42に表示する。また表示工程S6では、表示部42を用いた表示に加えて、又はこれに代えて、報知部43を用いた報知を行っても良い。この場合は例えば、表示制御部41は、被験者Sの心拍数HRが所定の範囲から逸脱した場合に報知音を発し、心拍状態の異常を生体情報取得システム100の使用者である医師、看護師、介護士等に報せる。
【0115】
表示制御部41は、具体的には例えば、次の態様により表示を行う。
【0116】
本実施形態においては、表示制御部41は、心拍数算出部34が算出する心拍数HRを逐次取得して記憶部45に記憶し、直近1分間における複数の心拍数HRの中央値を表示部42に表示する(図12(a))。これにより、外乱等による心拍数HRの瞬間的な変動の影響を抑制することができる。この点は、心拍数HRが所定の閾値を越えた場合に報知部43による音声報知を行う場合には、誤報知の抑制にも繋がる。
【0117】
また、表示制御部30は、被験者SがベッドBD上に存在しない期間においては、表示部42への心拍数HRの表示を行わない(図12(b))。被験者SがベッドBD上に存在しない期間は、具体的には例えば、生体情報取得部30(呼吸数算出部、体重算出部)が被験者Sの呼吸数を算出していない期間、荷重検出部1により検出される被験者Sの体重が所定値以下である期間等とし得る。
【0118】
生体情報取得部30は、具体的には例えば、荷重信号s~sに基づいて被験者Sの重心位置を逐次算出し、被験者Sの呼吸に応じた被験者Sの重心位置の時間的変動に基づいて被験者Sの呼吸数を算出し得る。或いは、生体情報取得部30は、荷重信号s~sの少なくとも一つについてフーリエ解析を行い、呼吸に相当する周波数帯域に現れるピーク周波数を特定し、特定したピーク周波数を被験者Sの呼吸の周波数とみなして被験者Sの呼吸数を算出し得る。
【0119】
生体情報取得部30は、荷重信号s~sを合算して被験者Sの体重を算出し得る。
【0120】
生体情報取得部30は、ベッドBD上に被験者Sが存在していない期間等においても、外乱(例えばエアコン等の周囲の機器の動作に起因する空気の振動等)に基づいて、心拍数の算出を行う場合がある。したがって、被験者SがベッドBD上に存在しないと推定し得る所定の期間において表示部42への心拍数HRの表示を停止することで、心拍数HRの誤表示を防止することが出来る。
【0121】
本実施形態の生体情報取得システム100の効果を以下にまとめる。
【0122】
本実施形態の生体情報取得システム100は、まず、心拍周期推定工程S4において心拍波形HW1等に基づいて被験者Sの心拍の周期を推定する。そして、推定した心拍周期に合致する範囲内で自己相関関数AF1等のピーク検出を行い、検出されたピークに基づいて被験者Sの心拍数HRを算出する。本実施形態の生体情報取得システム100は、このように、自己相関関数AF1等のピーク検出を、予め推定した心拍周期を参酌して行うため、心拍波形HW1等が崩れており周期性が乱れている場合等であっても、自己相関関数AF1等のピーク位置を高い精度で決定し、心拍数HRを高い精度で算出することができる。また、ピーク検出の計算処理負荷が小さい。
【0123】
本実施形態の生体情報取得システム100は、心拍数算出工程S5において、対象期間の自己相関関数の全てを一度に計算するのではなく、部分自己相関関数に分割して計算し、これを足し合わせている。したがって、各タイミングにおける自己相関関数をより少ない計算量で算出することが出来る。このように、計算処理の負荷が小さいことは、生体情報取得システム100をマイクロコンピュータ(マイコン)の組み込みプログラムとして実装する際において特に有利である。
【0124】
本実施形態の生体情報取得システム100は、心拍数算出工程S5において、補間処理を行って真のピークを検出し、当該真のピークに基づいて被験者Sの心拍数HRを算出する。したがって、被験者Sの心拍数HRをより高い精度で求めることが出来る。
【0125】
本実施形態の生体情報取得システム100は、表示工程S6において、被験者SがベッドBD上に存在しないと推定し得る所定の期間において表示部42への心拍数HRの表示を停止する。したがって、本実施形態の生体情報取得システム100は、心拍数HRの誤表示を防止することが出来る。
【0126】
<変形例>
上記実施形態の生体情報取得システム100において、次の変形態様を採用することもできる。
【0127】
上記実施形態の心拍周期推定工程S4においては、心拍周期推定部33は、立下りゼロクロス点fxを特定するたびに、直前の1周期における立下りゼロクロス点fx間の間隔、ピークp、ボトムb等が所定の条件を満たすか判定している。しかしながら、これには限られない。同様の判定を、立上りゼロクロス点rxを特定するたびに行ってもよい。
【0128】
上記実施形態の心拍周期推定工程S4において、ピークpにおける振幅AM(正値)が体動閾値THpよりも小さいか否かの判定、及び/又はボトムbにおける振幅AM(負値)が体動閾値THnよりも大きいか否かの判定を省略してもよい。上記実施形態の心拍周期推定工程S4において、直前の1周期の間隔PRの、当該1周期の1つ前の1周期の間隔PRに対する変動比が所定の範囲内であるか否かの判定を省略してもよい。
【0129】
上記実施形態の心拍周期推定工程S4においては、記憶部35に記憶した8周期分の間隔PRの中央値を被験者Sの心拍周期の推定値としているがこれには限られない。記憶部35が記憶する間隔PRの数は任意の複数個、或いは1つでよい。心拍周期推定部33は、任意の複数個の間隔PRの中央値、或いは平均値を被験者Sの心拍周期の推定値としてもよい。
【0130】
上記実施形態の心拍周期推定工程S4においては、心拍周期推定部33は、心拍波形HW1を用いて被験者Sの心拍の周期を推定するが、これには限られない。心拍周期推定部33は、心拍波形HW1~HW4の少なくとも1つを用いて被験者Sの心拍の周期を推定し得る。
【0131】
上記実施形態の心拍数算出工程S5においては、心拍数算出部34は、最新の0.5秒分の呼吸波形HW1~HW4と過去1.65秒分の呼吸波形HW1~HW4との部分自己相関関数PAF1~PAF4を順次算出し、それぞれを8秒分合算して自己相関関数AF1~AF4を算出するがこれには限られない。
【0132】
部分自己相関関数PAF1~PAF4の算出の対象となる期間は、0.5秒には限られず任意である。また、自己相関関数AF1~AF4の算出の対象となる期間は8秒に限られず任意である。
【0133】
即ち、心拍数算出部34は、所定期間(第1期間)に含まれる心拍波形HW1~HW1の部分自己相関関数PAF1~PAF4(第1自己相関関数)を算出することと、当該所定期間の後の所定期間(第2期間)に含まれる心拍波形HW1~HW4の部分自己相関関数PAF1~PAF4(第2自己相関関数)を算出することと、当該所定期間の後の所定期間(第3期間)に含まれる心拍波形HW1~HW4の部分自己相関関数PAF1~PAF4(第3自己相関関数)を算出することと、所定のタイミング(第1時刻)に第1自己相関関数と第2自己相関関数との合算を自己相関関数AF1~AF4として算出することと、その後の所定のタイミング(第2時刻)に第2自己相関関数と第3自己相関関数との合算を自己相関関数AF1~AF4として算出することを含む任意の態様とし得る。
【0134】
上記実施形態の心拍数算出工程S5においては、心拍数算出部34は、部分自己相関関数PAF1~PAF4を算出せず、自己相関関数AF1~AF4を都度計算してもよい。この場合は例えば、最新の8秒分の心拍波形HW1~心拍波形HW4の1.65秒の計算窓で算出した自己相関関数を0.5秒ごとに計算する。
【0135】
上記実施形態の心拍数算出工程S5においては、心拍数算出部34は、体動発生期間が算出対象期間の全期間の3分の1以上であると判定した場合(S56:YES)は、エラーを出力する(S58)。しかしながら、これには限られず、心拍数算出部34は、工程S56において、体動発生期間が算出対象期間の任意の割合(1/2、1/4等)である場合にエラーを出力してもよい。また、心拍数算出部34は、算出対象期間の少なくとも一部が体動発生期間である場合にエラーを出力してもよい。
【0136】
上記実施形態の心拍数算出工程S5においては、心拍数算出部34は、補間処理を行わなくてもよい。この場合は、ピーク検出で検出した自己相関関数のピークを用いて被験者Sの心拍の周期Tの決定、被験者Sの心拍数HR[bpm]の算出を行う。
【0137】
上記実施形態においては、表示制御部30は、被験者SがベッドBD上に存在しない期間においては、表示部42への心拍数HRの表示を行わない。しかしながら、これには限られない。表示制御部30は、被験者SがベッドBD上に存在する期間と被験者SがベッドBD上に存在しない期間とで心拍数HRの表示部42への表示態様を異ならせる任意の態様とし得る。
【0138】
具体的には例えば、表示制御部30は、被験者SがベッドBD上に存在する期間には通常の表示を行い、被験者SがベッドBD上に存在しない期間には、赤文字での表示、点滅表示等を行ってもよい。なお、本明細書及び本発明においては「非表示」も表示方法の一態様とする。このように、被験者Sがベッド上に存在しない場合の心拍数HRの表示態様を被験者Sがベッド上に存在する場合の心拍数HRの表示態様と異ならせることで、使用者等は、表示されている心拍数が被験者Sのものではないことを直観的に理解することができる。
【0139】
上記実施形態の生体情報取得部30は体動判定部32を有さなくてもよい。この場合、上記実施形態の体動判定に関連する処理は実行されなくてもよい。
【0140】
上記実施形態の心拍情報取得システム100においては、心拍数算出部34は自己相関値の計算に基づいて心拍数を算出しているが、これには限られない。心拍波形に基づく心拍数の算出には、様々な方法を用い得る。
【0141】
具体的には例えば、心拍数算出部34は、荷重信号s~sの少なくとも一つについてフーリエ解析を行い、心拍に相当する周波数帯域に現れるピーク周波数を特定し、特定したピーク周波数を被験者Sの心拍の周波数とみなして被験者Sの呼吸数を算出し得る。
【0142】
この態様において、ピーク周波数を特定する際に、心拍周期推定工程S4で推定した被験者Sの心拍周期の推定値を参酌してもよい。
【0143】
本明細書及び本発明において、負値である振幅値が閾値(負値)よりも小さいとは、負値である振幅値の絶対値が閾値(負値)の絶対値よりも大きいことを意味する。本発明に規定される、振幅値(負値)と閾値(負値)との比較は、振幅値(負値)の絶対値と閾値(負値)の絶対値を比較する態様を含む。
【0144】
上記実施形態の生体情報取得システム100においては、ユーザ端末40に単一の生体情報取得部30が接続されているが、これには限られない。ユーザ端末40に複数の生体情報取得部30を接続してもよい。あるいは、生体情報取得部30とユーザ端末40を一体としてもよく、ユーザ端末40を本発明の心拍数取得部の一部と捉えてもよい。
【0145】
上記実施形態の生体情報取得システム100は、必ずしも荷重検出器11~14の全てを備える必要はなく、荷重検出器11~14の少なくとも1つを備えるのみでもよい。また、荷重検出器は、必ずしもベッドの四隅に配置される必要はなく、ベッド上の被験者の荷重及びその変動を検出しうるように、任意の位置に配置し得る。また、荷重検出器11~14は、ビーム形ロードセルを用いた荷重センサに限られず、例えばフォースセンサを使用することもできる。
【0146】
上記実施形態の生体情報取得システム100において、荷重検出部1は、シーツの下にマトリックス状に配置された複数の感圧センサ(圧力センサ)であってもよい。
【0147】
荷重検出器11~14をベッドBDと一体に又は着脱可能に組み合わせて、ベッドBDと本実施形態の生体情報取得システム100とからなるベッドシステムBDS(図2)を構成してもよい。
【0148】
上記実施形態の表示制御部41と表示部42を任意の心拍数算出部と組み合わせて心拍数算出装置を構成してもよい。そのような心拍数算出装置により、取得した心拍数をより適切に表示することができる。
【0149】
上記実施形態の生体情報取得装置30において、心拍周期推定部33を省略してもよい。この場合も、心拍数算出部34により、より効率よく心拍数を取得することができる。
【0150】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0151】
1 荷重検出部; 11、12、13、14 荷重検出器; 3 生体情報取得部; 31 心拍波形取得部; 32 体動判定部; 33 心拍周期推定部; 34 心拍数算出部; 35 記憶部; 40 ユーザ端末; 41 表示制御部; 42 表示部; 43 報知部; 44 入力部; 45 記憶部; BD ベッド; BDS ベッドシステム
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