(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056532
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】スピーカユニット
(51)【国際特許分類】
H04R 9/04 20060101AFI20240416BHJP
H04R 9/02 20060101ALI20240416BHJP
H04R 7/14 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H04R9/04 103
H04R9/02 103Z
H04R9/04 104A
H04R7/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163495
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 哲太
【テーマコード(参考)】
5D012
5D016
【Fターム(参考)】
5D012BA06
5D012BA08
5D012BA09
5D012BB01
5D012BB03
5D012BB04
5D012BC01
5D012BC02
5D012CA04
5D012CA14
5D016AA09
5D016AA15
5D016BA02
5D016FA02
5D016FA03
5D016GA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】振動板の剛性低下を抑えつつ、ユニット全体の薄型化を実現可能なスピーカユニットを提供する。
【解決手段】スピーカユニット1は、ボイスコイル62が巻回されたボイスコイルボビン60と、ボイスコイル62に接続された導電体63に対してボイスコイルボビン60の周面にて接合された錦糸線61と、錦糸線61と導電体63との接合部Xを回避する形状の回避部72Aが形成された振動板70と、を備える。ボイスコイルボビン60を支持するダンパ51には錦糸線52が編み込まれてダンパと一体をなし、錦糸線一体型ダンパ50が構成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイスコイルが巻回されたボイスコイルボビンと、
前記ボイスコイルに接続された導電体に対して前記ボイスコイルボビンの周面にて接合された錦糸線と、
前記錦糸線と前記導電体との接合部を回避する形状の回避部が形成された振動板と、を備えるスピーカユニット。
【請求項2】
前記ボイスコイルボビンを支持するダンパをさらに備え、
前記錦糸線は前記ダンパに取り付けられている、請求項1に記載のスピーカユニット。
【請求項3】
前記振動板は、前記ボイスコイルボビンと接続される内縁部の一部である第1内縁部から前記ボイスコイルボビンの軸線方向一側に傾斜する傾斜部を有し、
前記回避部は、前記内縁部の一部であり前記接合部よりも前記ボイスコイルボビンの軸線方向一側に位置する第2内縁部から前記傾斜部に接続された形状である、請求項1に記載のスピーカユニット。
【請求項4】
前記回避部は、前記ボイスコイルボビンの軸線に対して均等な角度で回転対称となるように設けられている、請求項1に記載のスピーカユニット。
【請求項5】
前記振動板の内縁部は、前記ボイスコイルボビンの外周面に沿って形成されている、請求項1に記載のスピーカユニット。
【請求項6】
前記ボイスコイルボビンの軸線方向一側において前記ボイスコイルボビンを覆うように設けられるキャップをさらに備え、
前記キャップは、前記ボイスコイルボビンの外周面から突出するように設けられるカバー部を備え、
前記カバー部は、前記ボイスコイルボビンの軸線方向において前記回避部との間に隙間を有するように設けられる、請求項1に記載のスピーカユニット。
【請求項7】
前記振動板の内縁部は、前記回避部が形成された部分において前記ボイスコイルボビンの軸線方向一側に凸の形状となっている、請求項1に記載のスピーカユニット。
【請求項8】
前記ボイスコイルボビンを支持するダンパをさらに備え、
前記振動板の外縁側には、前記ボイスコイルボビンの軸線方向において前記ダンパ側に向かって屈曲している屈曲部が形成されている、請求項1に記載のスピーカユニット。
【請求項9】
前記キャップは、前記ボイスコイルボビンの筒内に挿入されるように軸方向他側に凹んだ凹部を備えている、請求項6に記載のスピーカユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピーカユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカユニットは、例えば下記特許文献1に記載のように、磁気回路と、ボイスコイルが巻回されたボイスコイルボビンと、ボイスコイルに接続された信号伝達回路と、ボイスコイルボビンの周面に取り付けられた振動板とを備えている。スピーカユニットにおいては、信号伝達回路からボイスコイルに信号が伝達されるとボイスコイルが振動し、ボイスコイルの振動がボイスコイルボビンを介して振動板に伝達されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば車載用等のスピーカユニットでは限られたスペースに搭載するため、スピーカユニット全体としての薄型化が望まれている。しかし、スピーカユニットの製造工程において、信号伝達回路としての導電体をボイスコイルボビンの周面に半田付け等で接合させるが、この接合部が同じくボイスコイルボビンに取り付けられる振動板と干渉するおそれがある。このような接合部と振動板との干渉を回避するために接合部と振動板の取付部との間隔を大きくすると、スピーカユニットの大型化を招いてしまう。また、振動板を薄型化(平板化)すると振動板の剛性を低下させることになる。
【0005】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、振動板の剛性低下を抑えつつ、ユニット全体の薄型化を実現可能なスピーカユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るスピーカユニットは、ボイスコイルが巻回されたボイスコイルボビンと、前記ボイスコイルに接続された導電体に対して前記ボイスコイルボビンの周面にて接合された錦糸線と、前記錦糸線と前記導電体との接合部を回避する形状の回避部が形成された振動板と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記手段を用いる本開示に係るスピーカユニットによれば、振動板の剛性低下を抑えつつ、ユニット全体として薄型化を実現可能なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係るスピーカユニットの斜視図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るスピーカユニットの平面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るスピーカユニットの底面図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係るスピーカユニットの、
図2に示すA-A線に沿った端面図である。
【
図5】
図4に示す接合部Xの付近における構成を説明するための模式拡大端面図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係るスピーカユニットに備わっている振動板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき説明する。
【0010】
(スピーカユニットの構成)
まず、本開示の一実施形態に係るスピーカユニット1の構成について説明する。
図4~
図6において、一側とは、ボイスコイルボビン60の軸線方向における一方側を意味しており、他側とは、ボイスコイルボビン60の軸線方向における他方側を意味している。ボイスコイルボビン60の軸線については符号Aにより示している。また、ボイスコイルボビン60の軸線方向に直交する面方向にはボイスコイルボビン60の径方向が含まれる。
【0011】
図1及び
図4に記載のように、スピーカユニット1は、例えば車両のドアにおけるベースボックスに搭載される車載スピーカであり、ヨーク10と、マグネット20と、プレート30と、フレーム40と、錦糸線一体型ダンパ50と、ボイスコイルボビン60と、振動板70と、エッジ部73と、キャップ80と、取付部90とを備えている。なお、
図1は、キャップ80を外した状態を示している。
【0012】
図4に示すように、ヨーク10(継鉄)は、磁気回路を構成するための強磁性体であり、薄型円盤状の土台部11と、土台部11の径方向中心から一側に突出する円柱状のポール部12とを備えている。マグネット20は、磁気回路を構成するための永久磁石であり、環状に形成されてヨーク10の土台部11に載置されている。プレート30は、磁気回路を構成するための強磁性体であり、環状に形成されてマグネット20に載置されている。ヨーク10とマグネット20とプレート30とによって外磁型磁気回路が構成されている。
【0013】
フレーム40は、概略円環状に形成されて
図1に示す取付部90に支持されている。フレーム40は、ポール部12の径方向内側において錦糸線一体型ダンパ50を支持する第1フレーム部41と、ポール部12の径方向外側において振動板70を支持する第2フレーム部42とを備えている。第1フレーム部41と第2フレーム部42とは共に取付部90に支持されており、第1フレーム部41はさらにプレート30にも支持(載置)されている。
【0014】
錦糸線一体型ダンパ50は、
図4に示すように、ボイスコイルボビン60を支持する可撓性の薄板環状部材である。錦糸線一体型ダンパ50は、
図5に示すように、ダンパ51と錦糸線52とを備えている。ダンパ51には、波紋状のコルゲーション部が形成されている。ダンパ51の外縁側は第1フレーム部41に取り付けられており、ダンパ51の内縁側はボイスコイルボビン60の外周面に取り付けられている。錦糸線52は、ダンパ51の一側面に沿って径方向に延びた帯状のリード線であって、ダンパ51に編み込まれてダンパ51と一体をなしている。
【0015】
ボイスコイルボビン60は、ボビン本体61と、ボイスコイル62と、導電体63とを備えている。ボビン本体61は、ボイスコイル62をなす線材を巻き付けるためのボビンであって筒状に形成されている。ボビン本体61の他側端部(巻付箇所)においてボイスコイル62が巻回されている。ボビン本体61は、ヨーク10とマグネット20とプレート30とによって構成されている外磁型磁気回路の磁気ギャップに位置している。なお、ボビン本体61の材料としては、例えば、ポリイミド(PI)等の樹脂材料、クラフト紙等の紙材料、又はアルミニウム合金等の金属材料を用いることができる。ボビン本体61は、その筒内Hにヨーク10のポール部12が挿入されるように配置されている。
【0016】
ボイスコイル62の両端部は導電体63に接続されている。接続方法としては、例えば半田を用いた溶接が挙げられる。導電体63は、錦糸線52の一端が接続されており、ボビン本体61の軸線方向から見て軸線Aを中心とした点対称に一対に設けられている。つまり、導電体63は、軸線Aに対して180°回転対称に一対に設けられている。
【0017】
振動板70は、ボイスコイルボビン60の振動によって振動するように構成されており、ボイスコイルボビン60の径方向においてボイスコイルボビン60を中心とする略環状に形成されている。振動板70は、本体部71と、一対の回避部72(72A、72B)とを備えている。振動板70の内縁部は、ボイスコイルボビン60と接続されている(つまり、ボイスコイルボビン60の外周面と当接している)。振動板70の内縁部は、例えば接着剤によって、ボイスコイルボビン60に固定されている。振動板70の外縁部は、エッジ部73を介して第2フレーム部42に支持されている。
【0018】
本体部71は、傾斜部71aと屈曲部71bとを備えている。傾斜部71aは平板状に近いコーン形状(略円錐台形状)に形成されている。傾斜部71aは、振動板70の内縁部の一部である第1内縁部I1から一側に傾斜している。傾斜部71aは、ボイスコイルボビン60の径方向外側に向かって放射状に延在している。屈曲部71bは、傾斜部71aの外縁から環状に形成されており、軸線方向において錦糸線一体型ダンパ50側(他側)に向かって屈曲して外周側に延びている。屈曲部71bの軸線方向に対する他側への屈曲角度は傾斜部71aの傾斜角度よりも鋭角である。
【0019】
回避部72Aは、振動板71において、錦糸線52と導電体63との接合部Xを回避する形状をなしている。本実施形態では錦糸線52と導電体63との接合は半田付けで行われており、接合部Xは半田部分となる。具体的には、
図5に示すように、回避部72Aは、振動板70の内縁部の一部であり接合部Xよりも一側に位置する第2内縁部I2から、ボイスコイルボビン60の径方向に延在して傾斜部71aに接続された形状をなしている。回避部72Bは、回避部72Aと同様の構成となっている。
【0020】
回避部72Aと回避部72Bとは、上述した導電体63と対応するように、ボイスコイルボビン60の径方向においてボイスコイルボビン60の中心に対して点対称(つまり、ボイスコイルボビン60の回転対称)となるように設けられている。つまり、
図4に示すように、回避部72(72A、72B)は、ボイスコイルボビン60の軸線Aに対して均等な角度で回転対称となっており、言い換えればボイスコイルボビン60の軸線Aを通る平面に対して面対称となっており、さらに言い換えればボイスコイルボビン60の軸線Aに垂直な平面において点対称となっている。回避部72Aと回避部72Bとにおける第2内縁部I2は、一側に凸の略台形形状となっている。具体的には、回避部72A及び回避部72Bは、一対の側壁部72aと、一対の側壁部72aの一側端部に設けられる天板部72bとを備えている。一対の側壁部72aと天板部72bとはそれぞれ鈍角を形成している。
【0021】
このようにして回避部72A、72Bは少なくとも天板部72bがボイスコイルボビン60の周面において接合部Xよりも一側に位置して、接合部Xを覆う形状をなすことで当該接合部Xを回避している。
【0022】
エッジ部73は、内周側が屈曲部71bの一側面と貼り付けられており、外周側は軸線方向一側(つまり、屈曲部71bの屈曲方向とは反対側)に向かって凸の断面半円状をなして、外縁端が第2フレーム部42に取り付けられている。
【0023】
キャップ80は、ボイスコイルボビン60の筒内Hへのダストの侵入を防止するために、ボイスコイルボビン60の一側端部においてボイスコイルボビン60を覆うように設けられる。キャップ80は、全体的にはフランジ状に形成されており、ボイスコイルボビン60の内部に挿入される挿入部81と、ボイスコイルボビン60の軸線方向に直交する面方向に挿入部81の外周面から突出するように設けられるカバー部82とを備えている。カバー部82は、ボイスコイルボビン60の軸線方向において回避部72A及び回避部72Bとの間に隙間を有するように設けられる。キャップ80は、ボイスコイルボビン60の筒内Hに挿入されるように軸方向他側に凹んだ凹部Dを備えている。
【0024】
取付部90は、3つの取付部91(91A、91B、91C)を備えている。それぞれの取付部91(91A、91B、91C)には貫通孔hが形成されている。貫通孔hは、車両に設けられるキャビネットにスピーカユニット1をボルトにより取り付けるための取付穴である。
【0025】
(スピーカユニットの動作)
信号伝達回路から錦糸線52及び導電体63を介してボイスコイル62に電力が供給されると、ボイスコイル62に電磁力が発生し、磁気回路との関係からボイスコイル62が振動する。この振動がボイスコイル62からボビン本体61を介して振動板70に伝達する。これにより、振動板70から音が発生する。なお、振動板70の振動方向は、ボイスコイルボビン60の軸線方向と同一となる。
【0026】
(スピーカユニットの効果)
以上のように本実施形態のスピーカユニット1は、ボイスコイル62が巻回された筒状のボイスコイルボビン60と、ボイスコイル62に接続された導電体63に対してボイスコイルボビン60の周面にて接合された錦糸線52と、錦糸線52と導電体63との接合部Xを回避する形状の回避部72(72A、72B)が形成された振動板70とを備えている。このため、スピーカユニット1の製造工程において、導電体63をボイスコイルボビン60の周面に接合させても、接合部Xからの干渉を回避して振動板70をボイスコイルボビン60に取り付けることができる。つまり、振動板70全体として錦糸線一体型ダンパ50側に近づけてボイスコイルボビン60の軸線方向の短縮化が可能となる。さらに、接合部Xからの干渉を回避する手段として、振動板70の一部を切り欠いたり、内縁部分を平板状にしたりするのではなく振動板70に回避部72(72A、72B)を形成することで、振動板70の剛性を確保することができる。よって、スピーカユニット1は、振動板70の剛性低下を抑えつつユニット全体として薄型化を実現している。また、振動板70の本体部71における傾斜部71aを有しつつ回避部72(72A、72B)を新たに形成したため、振動板70における振動伝播の非効率化(例えば分割振動による逆共振)に伴う音響特性不良を回避することができる。
【0027】
また、ボイスコイルボビン60を支持するダンパ51を備え、錦糸線52がダンパ51に取り付けられていることで、錦糸線52を配置する空間を確保する必要がなく、より容易にユニット全体として薄型化を図ることができる。
【0028】
また、振動板70は、ボイスコイルボビン60と接続される内縁部の一部である第1内縁部I1から一側に傾斜する傾斜部71aを有しており、回避部72(72A、72B)は、この内縁部の一部であり接合部Xよりも一側に位置する第2内縁部I2から傾斜部71aに接続された形状である。このように、傾斜部71aの第1内縁部I1と回避部72(72A、72B)の第2内縁部I2とがボイスコイルボビン60に接続されるため、ボイスコイル62との接続を強固にすることができる。
【0029】
また、回避部72(72A、72B)は、ボイスコイルボビン60の軸線Aに対して均等な角度で回転対称であり、ボイスコイルボビン60の軸線Aを通る平面に対して面対称であり、さらには、ボイスコイルボビン60の軸線Aに垂直な平面において点対称である。これにより、振動板70の全体における振動伝播効率を均一にすることができるため、音響特性不良を回避することができる。
【0030】
さらに、振動板70の内縁部は、ボイスコイルボビン60の外周面に沿って形成されている。これにより、ボイスコイルボビン60の振動をボイスコイルボビン60の外周全体から振動板70に伝達することができるため、振動板70を全体的に効率よく振動させることができる。
【0031】
また、スピーカユニット1は、一側においてボイスコイルボビン60を覆うように設けられるキャップ80をさらに備えており、キャップ80は、ボイスコイルボビン60の筒内Hに挿入される挿入部81と、ボイスコイルボビン60の径方向に挿入部81の周面から突出するように設けられるカバー部82とを備え、カバー部82は、ボイスコイルボビン60の軸線方向において回避部72(72A、72B)との間に隙間を有するように設けられている。これにより、振動板70の回避部72(72A、72B)が形成された部分及び振動板70の回避部72(72A、72B)が形成されていない部分と、キャップ80との間に隙間が形成されることになる。そのため、振動板70の内縁の全周と、キャップ80との間に隙間が形成される。そして、この隙間に接着剤を塗布することで、振動板70の内縁の全周にわたって、ボイスコイルボビン60と接続することができる。その結果、音響特性の低下を抑制することができる。
【0032】
さらに、振動板70の第2内縁部I2は、回避部72(72A、72B)が形成された部分においてボイスコイルボビン60の軸線方向一側に凸の形状となっていることにより、振動板70の回避部72(72A、72B)の付近における剛性を高めることができる。
【0033】
スピーカユニット1は、ボイスコイルボビン60を支持するダンパ51をさらに備え、振動板70の外縁側には、ボイスコイルボビン60の軸線方向においてダンパ51側に向かって屈曲している屈曲部71bが形成されている。ところで、振動板は、コーンの傾斜がきつい程、コーンの剛性が高くなる。コーンの傾斜がきつくなると、スピーカユニットの全高が高くなってしまう。本実施形態では、屈曲部71bを設けることにより、全高方向に影響を与えないで、剛性を高くすることができる。
【0034】
スピーカユニット1のキャップ80は、ボイスコイルボビン60の筒内Hに挿入されるように軸方向他側に凹んだ凹部Dを備えていることにより、スピーカユニット1を薄型化することができる。
【0035】
(その他)
これまで説明してきた実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【0036】
例えば、上記実施形態において、回避部72(72A、72B)は、ボイスコイルボビン60の軸線Aに対して均等な角度で回転対称であり、ボイスコイルボビン60の軸線Aを通る平面に対して面対称であり、かつ、ボイスコイルボビン60の軸線Aに垂直な平面において点対称である。しかし、回避部72(72A、72B)がこれら回転対称、面対称及び点対称のうちの少なくとも1つに該当すれば、振動板70の全体における振動伝播効率を均一にすることができて音響特性不良を回避することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、一対の回避部72(72A、72B)がボイスコイルボビン60の中心に対して点対称で設けられているが、回避部72の数や配置はこれに限られるものではない。例えば、回避部72の数は少なくともボイスコイルボビン60における接合部Xの数と同じであればよく、回避部72が1つであっても3つ以上であってもよい。回避部72の配置は、回避部72を複数設ける場合は、上記実施形態のような点対称を含む回転対称の関係となる配置が好ましい。例えば回避部72を3つ設ける場合はボイスコイルボビン60の中心に対して周方向に120度間隔で配置するのが好ましく、回避部72を4つ設ける場合はボイスコイルボビン60の中心に対して周方向に90度間隔で配置するのが好ましい。
【0038】
また、上記実施形態では、回避部72(72A、72B)の内縁部(第2内縁部I2)が略台形形状をなしているが、第2内縁部I2の形状はこれに限られるものではない。例えば第2内縁部I2が半円形状、三角形状、矩形状であってもよい。
【0039】
上記実施形態では、スピーカユニット1の磁気回路が外磁型磁気回路であるが、本開示は内磁型磁気回路にも適用可能である。
【0040】
上述した実施形態に係る開示を例示すると以下のとおりである。
[1]
ボイスコイルが巻回されたボイスコイルボビンと、
前記ボイスコイルに接続された導電体に対して前記ボイスコイルボビンの周面にて接合された錦糸線と、
前記錦糸線と前記導電体との接合部を回避する形状の回避部が形成された振動板と、を備えるスピーカユニット。
[2]
前記ボイスコイルボビンを支持するダンパをさらに備え、
前記錦糸線は前記ダンパに取り付けられている、上記[1]に記載のスピーカユニット。
[3]
前記振動板は、前記ボイスコイルボビンと接続される内縁部の一部である第1内縁部から前記ボイスコイルボビンの軸線方向一側に傾斜する傾斜部を有し、
前記回避部は、前記内縁部の一部であり前記接合部よりも前記ボイスコイルボビンの軸線方向一側に位置する第2内縁部から前記傾斜部に接続された形状である、上記[1]又は[2]に記載のスピーカユニット。
[4]
前記回避部は、前記ボイスコイルボビンの軸線に対して均等な角度で回転対称となるように設けられるか、前記ボイスコイルボビンの軸線を通る平面に対して面対称となるように設けられるか、または、前記ボイスコイルボビンの軸線に垂直な平面において点対称となるように設けられている、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のスピーカユニット。
[5]
前記振動板の内縁部は、前記ボイスコイルボビンの外周面に沿って形成されている、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のスピーカユニット。
[6]
前記ボイスコイルボビンの軸線方向一側において前記ボイスコイルボビンを覆うように設けられるキャップをさらに備え、
前記キャップは、前記ボイスコイルボビンの外周面から突出するように設けられるカバー部を備え、
前記カバー部は、前記ボイスコイルボビンの軸線方向において前記回避部との間に隙間を有するように設けられる、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のスピーカユニット。
[7]
前記振動板の内縁部は、前記回避部が形成された部分において前記ボイスコイルボビンの軸線方向一側に凸の形状となっている、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のスピーカユニット。
[8]
前記ボイスコイルボビンを支持するダンパをさらに備え、
前記振動板の外縁側には、前記ボイスコイルボビンの軸線方向において前記ダンパ側に向かって屈曲している屈曲部が形成されている、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載のスピーカユニット。
[9]
前記キャップは、前記ボイスコイルボビンの筒内に挿入されるように軸方向他側に凹んだ凹部を備えている、上記[6]に記載のスピーカユニット。
【符号の説明】
【0041】
1 スピーカユニット
50 錦糸線一体型ダンパ
51 ダンパ
52 錦糸線
60 ボイスコイルボビン
61 ボビン本体
62 ボイスコイル
63 導電体
70 振動板
71 本体部
71a 傾斜部
71b 屈曲部
72(72A、72B) 回避部
80 キャップ
82 カバー部
X 接合部