(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056535
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】口呼吸防止兼美容シート
(51)【国際特許分類】
A61F 5/56 20060101AFI20240416BHJP
A45D 44/22 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61F5/56
A45D44/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163498
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】522004128
【氏名又は名称】▲桑▼原 絵梨花
(71)【出願人】
【識別番号】522267930
【氏名又は名称】藤本 亜矢子
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】弁理士法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(74)【代理人】
【識別番号】100158377
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 祥子
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 絵梨花
(72)【発明者】
【氏名】藤本 亜矢子
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098BB15
4C098BC12
(57)【要約】
【課題】マウステープの改良。
【解決手段】柔軟性シート(2)の片面の少なくとも一部にマイクロニードルシート(3)が積層されてなる、口呼吸防止兼美容シート(1)。口呼吸防止兼美容シート(1)は剥離シート(4)を備えることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性シート(2)の片面の少なくとも一部にマイクロニードルシート(3)が積層されてなる、口呼吸防止兼美容シート(1)。
【請求項2】
柔軟性シート(2)が合成高分子及び/又は天然高分子を主成分とするドレッシングフィルムである、請求項1に記載の口呼吸防止兼美容シート(1)。
【請求項3】
柔軟性シート(2)に、安定剤、着色剤、充填剤、撥水剤、防汚剤から選ばれる1種以上が配合されている、請求項1に記載の口呼吸防止兼美容シート(1)。
【請求項4】
マイクロニードルシート(3)が、ビタミン類、コラーゲン、コラーゲン誘導体、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の口呼吸防止兼美容シート(1)。
【請求項5】
柔軟性シート(2)の片面の少なくとも一部に2枚以上のマイクロニードルシート(3)が積層されてなる、請求項1に記載の口呼吸防止兼美容シート(1)。
【請求項6】
剥離シート(4)を備える、請求項1に記載の口呼吸防止兼美容シート(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口呼吸防止兼美容シート、具体的には、口元に貼り付けることで口呼吸を防止するとともに、唇とその周辺の皮膚に美容成分を供給することができる、口呼吸防止兼美容シートに関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時の口呼吸(口を介した呼吸)は、鼾、歯ぎしり、寝言、不眠、口腔内乾燥などの原因の一つと考えられている。そこで、口呼吸を防止し鼻呼吸(鼻を介した呼吸)を促す器具、例えば「マウステープ」が提案されている。マウステープは、例えば特許文献1,特許文献2,特許文献3に記載されているように、使用者の唇の一部以上を覆って上下の唇を互いに接した状態に維持する接着テープである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3222096号公報
【特許文献2】実用新案登録第3193679号公報
【特許文献3】特開2002-336286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マウステープは長期間唇や肌に密着するため、肌荒れを引き起こす可能性が懸念されている。実際にマウステープにより肌荒れ症状を体験していなくても、マウステープの長時間使用が肌にダメージを与えるのではないかという美容上の不安を理由に、マウステープを避ける消費者は多い。
【0005】
さらに、市販のマウステープの多くが皮脂や汗によって剥がれることが多く、長時間の効果が得られにくい。さらに、飛行機や列車の中などでも鼾を防止するために、ファンデーションなどの化粧料が付着した皮膚からマウステープを貼った場合には、マウステープが剥がれやすく効果が得られにくいという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、素肌にも化粧した肌にも密着性がよく、汗や皮脂による剥離が抑えられ、長時間に渡って口呼吸防止効果を発揮し、しかも美容上の不安が解消された、改良されたマウステープを求めた。その結果、口呼吸防止効果と、唇や口元への美容効果を兼ね備えた新規なシートを完成した。すなわち本発明は以下のものである。
(発明1)柔軟性シート(2)の片面の少なくとも一部にマイクロニードルシート(3)が積層されてなる、口呼吸防止兼美容シート(1)。
(発明2)柔軟性シート(2)が合成高分子及び/又は天然高分子を主成分とするドレッシングフィルムである、発明1の口呼吸防止兼美容シート(1)。
(発明3)柔軟性シート(2)に、安定剤、着色剤、充填剤、撥水剤、防汚剤から選ばれる1種以上が配合されている、発明1の口呼吸防止兼美容シート(1)。
(発明4)マイクロニードルシート(3)が、ビタミン類、コラーゲン、コラーゲン誘導体、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体から選ばれる少なくとも1種を含む、発明1の口呼吸防止兼美容シート(1)。
(発明5)柔軟性シート(2)の片面の少なくとも一部に2枚以上のマイクロニードルシート(3)が積層されてなる、発明1の口呼吸防止兼美容シート(1)。
(発明6)剥離シート(4)を備える、発明1の口呼吸防止兼美容シート(1)。
【発明の効果】
【0007】
口呼吸防止兼美容シート(1)(以下「シート(1)」)は従来のマウステープの機能と従来の美容用マイクロニードルシート(3)の機能を兼ね備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本シート(1)の例(11)を模式的に示す。
図1(a)は、シート(11)の使用者の皮膚に接する面を示す。
図1(b)は、シート(11)の使用者の皮膚に接しない面を示す。
【
図2】本シート(1)の例(11)を模式的に示す。シート(11)を中央部で切断した断面を示す。
【
図3】本シート(1)の例(21)を模式的に示す。シート(21)の使用者の皮膚に接する面を示す。剥離シートが無い(剥がされた)状態を示す。
【
図4】本シート(1)の例(31)を模式的に示す。シート(31)の使用者の皮膚に接する面を示す。剥離シートが無い(剥がされた)状態を示す。
【
図5】本シート(1)の例(41)を使用する様子を模式的に示す。
【
図6】本シート(1)の例(51)を模式的に示す。
図6(a)は、シート(51)の使用者の皮膚に接する面を示す。
図6(b)は、シート(51)の使用者の皮膚に接しない面を示す。
【
図7】本シート(1)の例(51)を模式的に示す。シート(51)を中央部で切断した断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[口呼吸防止兼美容シート(1)]
シート(1)は、柔軟性シート(2)の片面の少なくとも一部に美容成分を含有するマイクロニードルシート(3)が積層されてなる、口呼吸防止兼美容シート(1)である。シート(1)は、人の唇を覆うように口周りに貼り付けられて口呼吸防止効果と美容効果の療法を発揮するシートである。
【0010】
[柔軟性シート(2)]
シート(1)を構成する柔軟性シート(2)は、人の唇あるいは口周りの皮膚に損傷を与えることなく追従し、長時間に渡って唇及び口周りの皮膚と隙間なく密着することができるシートであれば、材質や構造、製法は限定されない。柔軟性シート(2)として、一般的には、基材と粘着剤とからなる救急絆創膏類や医療用フィルム、ドレッシングフィルムと呼ばれる皮膚保護材を使用することができる。
【0011】
柔軟性シート(2)は、典型的には、合成高分子及び/又は天然高分子を主成分とするドレッシングフィルムである。ドレッシングフィルムは日本褥瘡学会によって「創における湿潤環境形成を目的とした近代的な創傷被覆材をいい、従来のガーゼは除く」と定義されている材料である。現在は、ドレッシングフィルムの適用先は治療が必要な患者だけでなく、皮膚の保護を必要とする日常生活者や労働者にも広がっている。本発明では、「ドレッシングフィルム」はその適用先に関わらず、従来のガーゼを除く、被覆する皮膚に湿潤環境を形成することができるシートあるいはフィルムを意味する。
【0012】
ドレッシングフィルムは、救急絆創膏や一般的な医療用フィルムに比べて接着性、柔軟性、防水性、耐油性(耐皮脂性)に優れる。このため、ドレッシングフィルム製柔軟性シート(2)を用いた場合には、本シート(1)を就寝中の長時間使うことができる、風呂やシャワー使用時にも本シート(1)を剥がれにくい、といった利点がある。
【0013】
上記合成高分子又は天然高分子としては、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、キチン、ハイドロコロイド、ハイドロジェル、セルロース、及びこれらの誘導体を用いることができる。上記合成高分子又は天然高分子は発泡されたものであってもよい。柔軟性シート(2)に上記合成高分子又は天然高分子から選ばれる複数の高分子材料が含まれていてもよい。柔軟性シート(2)は、上述の高分子からなる複数の層を含む積層体であってもよい。
【0014】
本発明では、柔軟性シート(2)に、安定剤、着色剤、充填剤、撥水剤、防汚剤から選ばれる1種以上を配合することができる。これらは、高分子材料を主成分とするフィルムまたはシートに配合する添加剤として一般的なものであれば、制限されない。上記安定剤には、紫外線吸収剤、光安定剤、耐候性安定剤、熱安定剤、及びこれらの混合物が含まれる。上記着色剤は、無機系着色剤、有機系着色剤のいずれであってもよい。上記充填剤は、強化剤あるいはフィラーと同義である。上記充填剤としては、高分子成形物用で一般的な無機化合物あるいは有機化合物からなる球状、針状、繊維状、あるいは不定形の粒子が用いられる。使用者が洗顔や入浴してもシート(1)が剥がれないように、さらに、屋外環境においてもシート(1)の性能を維持するために、上記柔軟性シート(2)に水やホコリなどの付着を防止する添加剤(一般的に、撥水剤あるいは防汚材と呼ばれているもの)を配合することができる。撥水剤あるいは防汚材としては、高分子成形品に一般的配合されているものであれば制限されない。例えば、フッ素系撥水剤、シリコン系撥水剤などが用いられる。
【0015】
柔軟性シート(2)は、透明、半透明、有色のいずれであってもよい。ある程度の透明性を有する有色のシートであってもよい。例えば、ドレッシングフィルムに用いられる樹脂材料を肌の色に近い色調に着色された樹脂組成物からなる柔軟性シート(2)を用いることができる。
【0016】
シート(1)の柔軟性シート(2)の厚みは、人の唇及び口周りの被覆に支障がない範囲であれば、制限されない。上記厚みは一般的には10μm以上1000μm以下、好ましくは20μm以上500μm以下、より好ましくは50μm以上200μm以下である。
【0017】
柔軟性シート(2)の形状と寸法は、使用者の唇のほぼ全体を覆うことができる形状と寸法であれば制限されない。円形、楕円、正方形、長方形、あるいはこれらの形状に類似する形状、これらの形の一部以上にスリットや切込みを設けた形状などが、一般的である。縦寸法は、一般的には3cm以上10cm以下、好ましくは3cm以上6cm以下であり、横寸法は、一般的には5cm以上10cm以下、好ましくは3cm以上8cm以下である。
【0018】
本シート(1)によって使用者の上下唇を閉じた状態に維持することができる限りにおいては、使用者の唇の一部が柔軟性シート(2)と重ならず外気に開放された状態となっていてもよい。例えば、柔軟性シート(2)の形状を、使用者の唇の上下には指し渡るが使用者の唇の両端には重ならないような形状とすることもできる。この場合、典型的には柔軟性シート(2)は長方形であり、使用者の顔に対して縦長の向きに位置決めされる。この場合、長方形状の柔軟性シート(2)の上端が使用者の鼻と上唇の間に位置決めされ、長方形状の柔軟性シート(2)の下端が使用者の下唇の下側(使用者の顎)に位置決めされる。この場合、柔軟性シート(2)の短辺(横)の長さは、一般的には1cm以上5cm以下、好ましくは2cm以上4cm以下であり、柔軟性シート(2)の長辺(縦)の長さは、一般的には3cm以上10cm以下、好ましくは5cm以上7cm以下である。この場合には、後述のマイクロニードルシート(3)は柔軟性シート(2)の幅方向及び長さ方向のほぼ中央部に配置されて、本シート(1)が使用された状態では使用者の唇の中央部に重なる。この場合、マイクロニードルシート(3)を柔軟性シート(2)の2箇所に、一方が使用者の上唇の中央部に重なり、他方が使用者の下唇の中央部に重なるように、配置してもよい。
【0019】
上述の長方形状を、縦長の楕円や小判型に変更して、使用者の顔に対して縦長の向きに位置決めすることもできる。これらの場合は、柔軟性シート(2)の最大幅が、一般的には1cm以上5cm以下、好ましくは2cm以上4cm以下であり、柔軟性シート(2)の最大長が、一般的には3cm以上10cm以下、好ましくは5cm以上7cm以下である。
【0020】
また、柔軟性シート(2)の材料に後述のマイクロニードルシート(3)を構成する生体内で溶解又は膨潤しうる材料や追加の成分を配合することもできる。この場合、本シート(1)全体が唇や皮膚に対して美容効果を発揮することができ、本シート(1)の使用感を高めることができる。
【0021】
[マイクロニードルシート(3)]
シート(1)に配置されたマイクロニードルシート(3)は、多数のマイクロニードルが起立整列し全体としてシート状の部材である。このようなマイクロニードルシート(3)は、従来美容や医療で用いられている「マイクロニードル」「マイクロニードルシート」「マイクロニードルシート材」と同義である。
【0022】
本発明のマイクロニードルシート(3)を構成する個々のマイクロニードルの形状と寸法は、公知のものであれば制限されない。一般的には、個々のマイクロニードルは円錐形状または角錐形状である。
【0023】
円錐台型又はコニーデ型のマイクロニードルも採用することができる。円錐台型とは、円柱状の基部から円錐形の先端部が起立する形状である。コニーデ型とは、いわゆる火山型と呼ばれる形状であり、円錐台型の側面が内側方向に屈曲又は湾曲した形状である。コニーデ型の場合、台座部分及びニードル部分から構成されてもよい。
【0024】
個々のマイクロニードルの長さ方向の寸法(一般的に基部から先端までの高さ)は、一般的には10μm以上1000μm以下、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上200μm以下である。
【0025】
上記マイクロニードルの材質は、唇あるいは皮膚に刺入することができ、さらに好ましくは唇あるいは皮膚を刺激し血流を促進できる、ある程度の硬さを呈するものであればよく、材料自体は特に制限されるものではない。しかしながら、シート(1)は皮膚に長時間貼付けるものであるため、上記マイクロニードルは生体適合性のある材料である必要があり、好ましくは生体内で溶解又は膨潤しうる材料で形成される。そのような材料として例えば、ヒアルロン酸、キトサン、マルトース、アルギネイト、アミロース、アガロース等の多糖類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、スターチ等が挙げられ、各材料単独で形成されたものであっても、2種以上の材料を適宜配合させた混合物から形成されたものであってもよい。特に好ましい材料はヒアルロン酸である。ヒアルロン酸は通常はその誘導体、典型的には塩の状態で用いられ、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などの金属塩が挙げられる。
【0026】
ヒアルロン酸は例えばHPLCなどで測定して平均分子量1万以下の低分子量のものから、80万以上の高分子量のものが使用可能で、適宜、低分子量と高分子量のものを混合して使用することができる。あるいは、マイクロニードルを形成する材料は生体内で溶解又は膨潤せず、生体に影響を及ぼさない樹脂などで形成されていてもよく、例えば材料として限定するわけではないが、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、SIS樹脂、SEBS樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アルミニウム等が挙げられる。
【0027】
上述の生体内で溶解又は膨潤しうる材料は、使用者の唇または皮膚に移行して、美容成分として機能する。特に、上述のヒアルロン酸あるいはその誘導体は保湿、皺取り、ハリ・ツヤ付与効果が期待できる美容成分として機能する。
【0028】
本発明のマイクロニードルに追加の成分として美容成分を添加してもよい。ここでいう「美容成分」は、使用者の唇や皮膚の状態を改善すると期待される成分を指す。上記追加の成分として、本発明のマイクロニードルにシート(1)の使用感を向上し得る香り成分を追加することができる。このような追加の成分としては、化粧料に配合される保湿剤や美白剤と呼ばれる成分や香料を制限なく使用することができる。例えば、ビタミンC、コラーゲン、コラーゲン誘導体、リモネン類やバニリン類などの各種の植物や果実の抽出成分を追加的な美容成分として上記マイクロニードルに配合することができる。
【0029】
マイクロニードルには従来から経皮吸収製剤として使用されている水溶性の薬物又は化粧品の成分、例えば酢酸トコフェロール、カプサイシン、ノリル酸バニリルアミド等の血流促進成分、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンK等のビタミン類など薬効成分等が添加されていてもよい。
【0030】
本発明のマイクロニードルシート(3)は、多数のマイクロニードルの基部に、柔軟性シート(2)と密着して上記多数のマイクロニードルを支える基板を有することができる。このような基板を、マイクロニードルと一体成型してもよく、マイクロニードルに接着して形成してもよい。基板はその表面にマイクロニードルを形成しうるものであれば、その材質はマイクロニードルと同じでも異なってもよく、特に限定されることなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、SIS樹脂、SEBS樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アルミニウム等のフィルム又はシートが挙げられる。又、コラーゲン及び/又はゼラチンよりなるフィルム又はシートであってもよい。
【0031】
シート(1)の片面には、1枚以上のマイクロニードルシート(3)が配置されている。1以上のマイクロニードルシート(3)全体で、閉じた状態の上下唇の一部以上を覆うことができる限り、個々のマイクロニードルシート(3)の大きさ、位置関係は制限されない。ただ1枚のマイクロニードルシート(3)を配置する場合には、マイクロニードルシート(3)1枚の面積は少なくとも200mm2、好ましくは500mm2以上2000mm2以下、より好ましくは500mm2以上1500mm2以下である。マイクロニードルシート(3)の形状は、唇の形状に沿うようにしてもよい。上唇を覆うマイクロニードルシート(3)と、下唇を覆うマイクロニードルシート(3)を上下に並べて配置してもよい。この場合、上下のマイクロニードルシート(3)全体の面積が上述の範囲となるように上下のマイクロニードルシート(3)を設計する。
【0032】
[剥離シート(4)]
柔軟性シート(2)の皮膚に接する側の表面(マイクロニードルシート(3)が配置されている面)に、剥離シート(4)を配置することができる。剥離シート(4)は、一般的には、柔軟性シート(2)の表面に積層された剥離シート(042)と、マイクロニードルシート(3)の表面に積層された剥離シート(043)とからなる。剥離シート(042)の仕様は、救急絆創膏類や医療用フィルム、ドレッシングフィルムと呼ばれる皮膚保護材に設けられた剥離シートと同様である。剥離シート(043)の仕様は、美容や医療で用いられているマイクロニードル製品材に設けられた剥離シートと同様である。一般的には剥離シート(043)はシリコン化合物による加工を施したポリプロピレンやポリエステルなどのプラスチックシートからなる。
【0033】
剥離シート(042)を柔軟性シート(2)から除去しやすいように、剥離シート(042)を分割することができる。分割線は剥離シート(042)を二等分する位置にあってもよく、剥離シート(042)を大小の2区域に分割する位置にあってもよい。
【0034】
柔軟性シート(2)の皮膚に接しない側(マイクロニードルシート(3)が配置されていない面)の表面にも剥離シート(042)を積層することができる。この場合、柔軟性シート(2)が剥離シート(042)で挟まれる。この構造は、ドレッシングフィルム製柔軟性シート(2)にとって好ましい。ドレッシングフィルム自体は薄いので、ドレッシングフィルム製柔軟性シート(2)単独を手指で取り扱うとドレッシングフィルム製柔軟性シート(2)自体が密着して皺や変形する可能性がある。ドレッシングフィルム製柔軟性シート(2)の両面に剥離シート(042)が積層していれば、使用者が剥離シート(042)とドレッシングフィルム製柔軟性シート(2)とからなる比較的厚みがある積層体を扱って本シート(1)の位置決めをすることができる。柔軟性シート(2)の皮膚に接しない側(マイクロニードルシート(3)が配置されていない面)の表面にある剥離シート(042)も、柔軟性シート(2)から除去しやすいように、分割することができる。分割線は剥離シート(042)を二等分する位置にあってもよく、剥離シート(042)を大小の2区域に分割する位置にあってもよい。
【0035】
[使用法]
シート(1)の使用者は、必要に応じて剥離シート(042,043)を除去し、上下の唇が閉じた状態でシート(1)を口周りに貼り付ける。この時、柔軟性シート(2)を口周りに密着させ、マイクロニードルシート(3)部分で唇の一部以上を多い、シート(1)全体で上下の唇を閉じた状態に維持する。
【0036】
柔軟性シート(2)の片面(マイクロニードルシート(3)が配置されている方の面)だけに剥離シート(042)が設けられている場合には、本シート(1)の使用者は、まず、剥離シート(043)を剥がし、次に剥離シート(042)の少なくとも一部を柔軟性シート(2)から剥がして本シート(1)を口元に近づけ、露出した柔軟性シート(2)を唇あるいは口元の皮膚に密着させて本シート(1)を位置決めする。位置決め終了時に柔軟性シート(2)の上記片面に剥離シート(042)の一部が残っている場合は、引き続き、使用者は上記残りの剥離シート(042)を剥がして柔軟性シート(2)の上記片面全体を口元に密着させる。最後に、使用者は柔軟性シート(2)の外表面のうちマイクロニードルシート(3)と重なる部分を押圧して、マイクロニードルシート(3)を唇の一部以上に密着させる。こうして本シート(1)の貼り付けが完了する。
【0037】
柔軟性シートとしてのドレッシングフィルム(2)の両面(マイクロニードルシート(3)が配置されている方の面と、マイクロニードルシート(3)が配置されていない面の両方)に剥離シート(042)が設けられている場合には、本シート(1)の使用者は、まず、剥離シート(043)と剥離シート(042)の少なくとも一部をドレッシングフィルム(2)から剥がす。そして本シート(1)を口元に近づけ、露出したドレッシングフィルム(2)面を唇あるいは口元の皮膚に密着させて本シート(1)を位置決めする。位置決め終了時にドレッシングフィルム(2)の上記片面に剥離シート(042)の一部が残っている場合は、引き続き、使用者は上記残りの剥離シート(042)を剥がしてドレッシングフィルム(2)の上記片面全体を口元に密着させる。この時、本シート(1)の外表面(ドレッシングフィルム(2)のマイクロニードルシート(3)が配置されていない面)には剥離シート(042)が積層された状態である。そこで、使用者は、上記外表面にある剥離シート(042)を剥がす。こうして、本シート(1)の貼り付けを完了する。使用者の口元には、薄く柔軟性があるドレッシングフィルム(2)とマイクロニードルシート(3)が密着する。最後に、使用者はドレッシングフィルム(2)の外表面のうちマイクロニードルシート(3)と重なる部分を押圧して、マイクロニードルシート(3)を唇の一部以上に密着させる。こうして本シート(1)の貼り付けが完了する。
【0038】
[効果]
就寝期間中を通して本シート(1)で口呼吸を阻止することができる。本シート(1)の使用中は、マイクロニードルシート(3)が唇あるいは皮膚を刺激し、さらにマイクロニードルシート(3)からの溶出成分が唇あるいは皮膚に美容的効果を発揮する。柔軟性シート(2)にも美容成分や香り成分が配合された場合には、本シート(1)全体に美容効果が期待でき、使用感が良好と成る。
【0039】
柔軟性シート(2)を救急絆創膏類や医療用フィルム、ドレッシングフィルムと呼ばれる皮膚保護材で形成した場合には、柔軟性シート(2)に水や汗が付着しても本シート(1)が剥がれ難い。
【0040】
長時間使用による皮膚や唇への悪影響を懸念することなく、美容効果を期待して本シート(1)を使用することができる。
【実施例0041】
[例1]
図1と
図2に、本シート(1)の例(11)を示す。矢印は
図1(a),
図1(b),
図2を対応させるための表示である。細部は省略あるいは誇張されている。
図1(a)は、シート(11)の使用者の皮膚に接する面を示す。
図1(b)は、シート(11)の使用者の皮膚に接しない面を示す。
【0042】
シート(11)は楕円形のドレッシングフィルム(12)、マイクロニードルシート(13)、剥離シート(1421,1422,1423,1424,143)を備える。実際には、ドレッシングフィルム(12)とマイクロニードルシート(13)は剥離シート(1421,1422,1423,1424,143)に重なるため見えないが、便宜上、これらが存在する部位に符号を付している。
【0043】
ドレッシングフィルム(12)に対して、剥離シート(1421,1422)はマイクロニードルシート(13)と同じ側にある。剥離シート(1421)と剥離シート(1422)の境界線がAである。剥離シート(1423,1424)はマイクロニードルシート(13)が配置されていない側にある。剥離シート(1423)と剥離シート(1424)の境界線がBである。剥離シート(143)はマイクロニードルシート(13)に重なる。
【0044】
図2に、境界線Bを通りシート(11)に垂直な面でシート(11)を切断した断面を示す。
図2に示す状態では、シート(11)のうち剥離シート(1424)側の半分が紙面の奥に向かって延長する。
【0045】
最終的には、剥離シート(1421,1422,1423,1424,143)が取り除かれた状態で、シート(11)のマイクロニードルシート(13)側が使用者の口周りに密着する。マイクロニードルシート(13)は閉じた状態の上下唇に重なり、ドレッシングフィルム(12)が口周りに密着する。
【0046】
一般的には、使用者は、初めに、小さい方の剥離シート(1421)とマイクロニードルシート(13)上の剥離シート(143)とを剥がす。そして、剥離シート(1421)と剥離シート(143)とが除かれた状態のシート(11)を口周りに位置決めする。使用者は次に、剥離シート(1422)を剥がして、シート(11)のドレッシングフィルム(12)側の面を口周りに密着させる。そして、使用者は剥離シート(1423)と剥離シート(1424)を剥がす。その結果、ドレッシングフィルム(12)とマイクロニードルシート(13)だけが、使用者の口周りに密着する。使用者は最後に、適宜、ドレッシングフィルム(12)の外表面を押圧してドレッシングフィルム(12)とマイクロニードルシート(13)とを口周りに固定する。
【0047】
[例2]
図3に、本シート(1)の他の例(21)を示す。細部は省略あるいは誇張されている。
図3には剥離シートが無い(剥がされた)状態を示す。シート(21)において、切り欠け部(2201)を設けた柔軟性シート(22)の片面に1枚のマイクロニードルシート(23)が積層されている。
【0048】
[例3]
図4に、本シート(1)の他の例(31)を示す。細部は省略あるいは誇張されている。
図4には剥離シートが無い(剥がされた)状態を示す。シート(31)において、柔軟性シート(32)は、医療用フィルムとして一般的な、塩化ビニル系樹脂からなる基材と、その片面上の粘着剤層とからなる。柔軟性シート(32)の粘着剤層側に2枚のマイクロニードルシート(331,332)が配置されている。マイクロニードルシート(331)を上唇に重ね、マイクロニードルシート(332)を上唇に重ねることができる。
【0049】
[例4]
図5に、本シート(1)の他の例(41)を模式的に示す。
図5は、シート(41)が使用者の口周りに固定された様子を示す。柔軟性シート(42)は、発泡ポリウレタンを主成分とし、着色剤によって使用者の肌の色に近い色、すなわち一般に「オークル」あるいは「ベージュ」と呼ばれる色調に着色されている。着色により、柔軟性シート(42)の透明性が低下する。使用者が本シート(41)を使用しているときには、使用者の口周りには柔軟性シート(42)の外表面ははっきりと視認できるが、唇(5)と2枚のマイクロニードルシート(431,432)は、柔軟性シート(42)を通して場合によっては「ぼんやりと」視認できる。
図5では便宜上、柔軟性シート(42)の向こう側(紙面の奥側)にある唇(5)と2枚のマイクロニードルシート(431,432)を点線で図示している。本シート(41)の上端部は、使用者の口周りの形状に合わせて、鼻(6)と唇(5)の間で湾曲している。2枚のマイクロニードルシート(431,432)が使用者の唇(5)に重なる。
【0050】
[例5]
図6と
図7に、
図1に示すシート(11)の変形例(51)を示す。シート(51)では剥離シートの構造が変更されている。矢印は
図6(a),
図6(b),
図7を対応させるための表示である。細部は省略あるいは誇張されている。
図6(a)は、シート(51)の使用者の皮膚に接する面を示す。
図6(b)は、シート(51)の使用者の皮膚に接しない面を示す。
【0051】
シート(51)は楕円形のドレッシングフィルム(52)、マイクロニードルシート(53)、剥離シート(5421,5422,5423,5424,543)を備える。実際には、ドレッシングフィルム(52)とマイクロニードルシート(53)は剥離シート(5421,5422,5423,5424,543)に重なるため見えないが、便宜上、これらが存在する部位に符号を付している。
【0052】
図7には、境界線A及び境界線B(
図6の矢印に沿う直線)に対して垂直でマイクロニードルシート(53)の中央を通る平面でシート(51)を切断した断面を示す。ドレッシングフィルム(52)に対して、剥離シート(5421,5422)はマイクロニードルシート(53)と同じ側にある。剥離シート(5421)と剥離シート(5422)の境界線がAである。剥離シート(543)はマイクロニードルシート(53)に重なる。剥離シート(5423,5424)はマイクロニードルシート(53)が配置されていない側にある。剥離シート(5423)と剥離シート(5424)の境界線がBである。剥離シート(5423)と剥離シート(5424)は境界線B上で重なり、剥離シート(5424)の開放端部(540)は、柔軟性シート(52)に密着せず、境界線B上から柔軟性シート(52)の外に向かって延長している。使用者は、開放端部(540)をつまんで柔軟性シート(52)から剥離シート(5424)を剥がすことができる。
【0053】
上述のシート(11)、シート(21)、シート(31)シート(41)を使用者の口周りに上下の唇が閉じた状態で密着させると、唇の開きが抑えられ、唇とその付近にマイクロニードルの美容効果が発揮される。シート(11)、シート(21)、シート(31)シート(41)は口呼吸防止兼美容シートとして機能する。
美容効果も期待できる本シート(1)は、鼾や歯ぎしりを治そうとする人、口呼吸による健康上の問題を解決しようとする人にとって、魅力的な口呼吸防止用具である。本発明によって健康と美容に貢献する優れた製品を消費者に提供することができる。