(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056540
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】気流推定方法、気流推定システム、および気流推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
G01W1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163511
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】谷山 賀浩
(72)【発明者】
【氏名】上田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】谷川 慎次
(72)【発明者】
【氏名】伊東 亮
(72)【発明者】
【氏名】鹿仁島 康裕
(72)【発明者】
【氏名】荒木 啓司
(72)【発明者】
【氏名】竃本 倫平
(72)【発明者】
【氏名】高見 和弥
(72)【発明者】
【氏名】栗原 璃
(57)【要約】
【課題】異常気象の発生を高精度に推定することが可能な気流推定方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る気流推定方法は、気流解析対象エリア内に存在する気象予測地点の風況を予測または観測したした気象データを取得し、気象データを用いて気流解析対象エリアを気流解析し、気象データから得られる気象予測地点の予測値と、気象データおよび気流解析対象エリアの気流解析から得られる気象予測地点における平均的な気流の状況を示す値と気流推定地点における平均的な気流の状況を示す値との比率と、気流解析から得られる気流推定地点における突発的な気流の変化を示す値と、を用いて気流推定地点の気流を推定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流解析対象エリア内に存在する気象予測地点の風況を予測または観測した気象データを取得し、
前記気象データを用いて前記気流解析対象エリアを気流解析し、
前記気象データから得られる前記気象予測地点の予測値と、前記気象データおよび前記気流解析対象エリアの気流解析から得られる前記気象予測地点における平均的な気流の状況を示す値と気流推定地点における平均的な気流の状況を示す値との比率と、前記気流解析から得られる前記気流推定地点における突発的な気流の変化を示す値と、を用いて前記気流推定地点の気流を推定する、気流推定方法。
【請求項2】
前記比率が、前記気流解析から得られる所定計算ステップまたは時間内における前記気象予測地点の第1平均風速と、前記気流解析から得られる前記所定計算ステップまたは時間内における前記気流推定地点の第2平均風速との平均風速比であり、
前記突発的な気流の変化を示す値が、前記所定計算ステップまたは時間内における前記気流推定地点の風速最大値と、前記第2平均風速との比率で算出される突風率であり、
前記予測値に、前記平均風速比および前記突風率から風速推定値を算出する、請求項1に記載の気流推定方法。
【請求項3】
前記気流解析の結果を記憶部に格納した後、前記気流推定地点の風速を推定する、請求項1または2に記載の気流推定方法。
【請求項4】
前記気流推定地点が、鉄道沿線である、請求項1に記載の気流推定方法。
【請求項5】
気流解析対象エリア内に存在する気象予測地点の風速を予測した気象データが入力されるデータ入力装置と、
前記データ入力装置と通信可能に接続される診断評価装置と、を備え、
前記診断評価装置は、
前記気象データを用いて前記気流解析対象エリアを気流解析する気流解析部と、
前記気象データから得られる前記気象予測地点の予測値と、前記気象データおよび前記気流解析対象エリアの気流解析から得られる前記気象予測地点における平均的な気流の状況を示す値と気流推定地点における平均的な気流の状況を示す値との比率と、前記気流解析から得られる前記気流推定地点における突発的な気流の変化を示す値と、を用いて前記気流推定地点の気流を推定する気流推定部と、
を有する、気流推定システム。
【請求項6】
気流解析対象エリア内に存在する気象予測地点の風速を予測した気象データを取得し、
前記気象データを用いて前記気流解析対象エリアを気流解析し、
前記気象データから得られる前記気象予測地点の予測値と、前記気象データおよび前記気流解析対象エリアの気流解析から得られる前記気象予測地点における平均的な気流の状況を示す値と気流推定地点における平均的な気流の状況を示す値と比率と、前記気流解析から得られる前記気流推定地点における突発的な気流の変化を示す値と、を用いて前記気流推定地点の気流を推定する、処理をコンピュータに実行させるための気流推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、気流推定方法、気流推定システム、および気流推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風況等の気象を解析するシステムが知られている。このようなシステムでは、気象庁等の外部から提供された気象データを入力データとして気流解析する。気流解析の結果は、気象の影響を受ける様々な場面で使用することができる。例えば鉄道や道路等の交通機関の状況を推定する場面で使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道や道路等のような場所では、例えば台風の接近等により風速が突然急激に変化する異常気象が生じると、交通機関が大きな影響を受ける可能性がある。しかしながら、従来のシステムは、広域的な気象解析データまたは気象観測データしか提供することができないため、このような異常気象の発生を精度良く推定することが困難である。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、異常気象の発生を高精度に推定することが可能な気流推定方法、気流推定システム、および気流推定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る気流推定方法は、気流解析対象エリア内に存在する気象予測地点の風速を予測または観測したした気象データを取得し、気象データを用いて気流解析対象エリアを気流解析し、気象データから得られる気象予測地点の予測値と、気象データおよび気流解析対象エリアの気流解析から得られる気象予測地点における平均的な気流の状況を示す値と気流推定地点における平均的な気流の状況を示す値との比率と、気流解析から得られる気流推定地点における突発的な気流の変化を示す値と、を用いて気流推定地点の気流を推定する。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、異常気象の発生を高精度に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る気流推定システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る気流推定システムの解析動作の手順を示すフローチャートである。
【
図3】一実施形態に係る気流推定システムの解析動作を説明するための図である。
【
図4】一実施形態に係る気流推定システムの解析動作を説明するための模式図である。
【
図6】気流推定地点における台風時の風速変化の一例を示すグラフである。
【
図7】気象予測地点と気流推定地点の風速トレンド波形の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0010】
図1は、一実施形態に係る気流推定システムの概略的な構成を示すブロック図である。
図1に示す気流推定システム1は、データ入力装置100および診断評価装置200を備える。データ入力装置100および診断評価装置200は、通信ネットワーク300を介して互いに接続される。
【0011】
まず、データ入力装置100の構成を説明する。データ入力装置100は、オンラインデータ入力部110およびオフラインデータ入力部120を有する。オンラインデータ入力部110には、気象データ111が外部から入力される。
【0012】
気象データ111は、例えば、気象庁予測データ、気象予報GPV(Grid Point Value)データ、天気予報SCWサイト(Super C Weather)データ、ERA-5などの気象再解析データ、過去の実測データ等から構築した風況データ、アメダス等の気象観測データおよび数値気象モデルなどのWRF(Weather Research and Forecasting)解析結果のデータの少なくとも1つを含む。気象庁予測データは、気象庁が予測した風況予測データである。気象予報GPVデータは、地図上に予め設定された格子点におけるスーパーコンピュータで計算した過去、未来の気象予測データである。ERA-5データは、ヨーロッパ中期予報センタが気象予測に用いるデータである。WRFは、風速および風向といった風況を予測するための予測モデルである。なお、気象データ111は、上述したデータの少なくとも一つを教師データとして機械学習することによって得られる機械学習予測データであってもよい。さらに、前記教師データを逐次追加し、機械学習モデルを更新していくことでも良い。
【0013】
一方、オフラインデータ入力部120には、例えば地図データ121および沿線データ122が外部から入力される。地図データ121は、気流解析対象エリアの地図や標高など地形やビル、高架等の構築物情報に関するデータである。また、沿線データ122は、線路や駅の位置などを示すデータである。
【0014】
次に、診断評価装置200の構成を説明する。診断評価装置200は、通信部210と、操作部220と、表示部230と、制御部240と、記憶部250と、を有する。以下、診断評価装置200の各部について説明する。
【0015】
通信部210は、通信ネットワーク300を介してデータ入力装置100と通信するときに通信インターフェースとして機能する。
【0016】
操作部220は、ユーザの操作入力を受け付ける。操作部220は、例えばキーボードやマウス等の入力デバイスを有する。
【0017】
表示部230は、制御部240の制御に基づいて種々の画像を表示する。表示部230は、例えば液晶ディスプレイ等の表示デバイスを有する。
【0018】
制御部240は、データ取得部241と、気流解析部242と、風速推定部243と、を有する。以下、各部について説明する。
【0019】
データ取得部241は、データ入力装置100から通信部210を介して種々のデータを取得する。
【0020】
気流解析部242は、データ取得部241で取得されたデータを用いて風況、例えば風速および風向などを計算する。
【0021】
風速推定部243は、気流推定部の一例であり、気流推定地点の風速を推定する。
【0022】
記憶部250は、気流解析データベース251を有する。気流解析データベース251は、鉄道沿線の風況を予め解析した結果を示すデータベースである。気流解析データベース251には、気流解析部242で計算された気流解析データ等が含まれている。
【0023】
以下、
図2を参照して、上述した気流推定システム1の動作について説明する。
図2は、本実施形態に係る気流推定システム1の動作手順を示すフローチャートである。
【0024】
図2に示すように、まず、風況推定に必要なデータが、外部機関からデータ入力装置100に入力される(ステップS1)。入力データは、その特性に応じてオンラインデータ入力部110とオフラインデータ入力部120とに分類される。オンラインデータ入力部110には、データ値が時系列で変化するオンラインデータ、すなわち気象データ111が入力される。一方、オフラインデータ入力部120には、データ値が時系列で変化しない一定のオフラインデータ、すなわち地図データ121および沿線データ122が入力される。
【0025】
次に、診断評価装置200の気流解析部242が、気流解析を行う(ステップS2)。ここで、
図3および
図4を参照して、ステップS2の動作を詳細に説明する。
図3は、気流推定システム1の解析動作を説明するための図である。また、
図4は、気流推定システム1の解析動作を説明するための模式図である。
【0026】
ステップS2では、
図3に示すように、まず、気流解析部242は、地図データ121を用いて広域解析モデルを作成する(ステップS21)。広域解析モデルには、
図4に示す鉄道Rの沿線を含む広域エリアA1内に存在する山間部や平地の標高等の地形モデルが示されている。
【0027】
次に、気流解析部242は、気象データ111または気象データ111に基づいて標高毎の風速データを広域解析モデルに入力して広域エリアA1の気流解析を行う(ステップS22)。ステップS22で入力される気象データ111には、例えば気象庁予測データが用いられる。広域エリアA1には、鉄道Rおよびその周辺エリアを含む風況推定エリアだけでなく風況推定エリア外も含まれる。そのため、入力される気象データ111には、風況推定エリア内の気象データだけでなく風況推定エリア外の気象データも含まれる。
【0028】
なお、ステップS22は、例えばk-εモデル、LESモデル等を用いた既存の気流解析ソフトウェアを診断評価装置200に予めインストールしておき、気流解析部242が、その気流解析ソフトウェアのプログラムに従って動作することによって実現することができる。
【0029】
次に、気流解析部242は、地図データ121および沿線データ122を用いて局所解析モデルを作成する(ステップS23)。ステップS23では、広域エリアA1が、例えば沿線付近の局所エリアA2に分割される。また、局所解析モデルには、各局所エリアA2の地形モデルが加えられている。局所エリアA2の地形モデルには、広域エリアA1の地形モデルよりも詳細に建物の位置や高さなどのデータが示されている。また、鉄道Rは、複数の局所エリアA2に渡って存在する。
【0030】
次に、気流解析部242は、ステップS22で行った広域エリアA1の気流解析の結果を局所解析モデルに入力して各局所エリアの気流解析を行う(ステップS24)。各局所エリアA2の解析結果を示す気流解析データは、気流解析データベース251に格納される。なお、ステップS24も、ステップS22と同様に、気流解析部242が、診断評価装置200に予めインストールされた気流解析ソフトウェアのプログラムに従って動作することによって実現することができる。
【0031】
図5は、局所エリアA2の気流解析データの一例を示すグラフである。
図5では、横軸はある地点の風速を示し、縦軸はある地点の標高を示す。
図5に示すグラフでは、通常時には、標高が高くなると風速が正の方向に急激に増加する。これに対し、非常時には、標高がある値になるまで、一旦、負の方向に増加し、その後、正の方向に増加する。このように、通常時と非常時間で、気流解析データの変化の態様が異なる。そのため、通常時の気流解析データと、非常時の気流解析データとを、それぞれ別の気流解析データベース251に格納してもよい。この場合、風況の状態に応じて気流解析データを分類して管理することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、気流解析データを高精度に作成するために、広域エリアA1から局所エリアA2へと段階的に気流解析の対象エリアを狭くする、いわゆるネスティングによる気流解析を行っている。しかし、データ精度が確保できるのであれば、広域気流解析と局所気流解析の併用、広域気流解析のみ、または局所気流解析のみで気流解析データを作成してもよい。広域気流解析のみ、または局所気流解析のみで気流解析データを作成する場合、ネスティングによる気流解析が不要になるため、気流解析に要する時間を短縮し、解析処理の負荷を軽減することができる。
【0033】
本実施形態では、上述した気流解析を行うことによって、鉄道Rを含む風況推定エリアにおける風速および風向等の気流解析データを事前に気流解析データベース251に格納する。
【0034】
気流解析データのデータベース化が終了すると、
図2に示すように、風速推定部243が、気象データ111および気流解析データベース251から読み出したデータを用いて、気流推定地点の風速を推定する(ステップS3)。ここで、ステップS3の動作を詳細に説明する。
【0035】
ステップS3では、風速推定部243は、下記の式(1)を用いて、
図4に示す気流推定地点P2の風速推定値Eを算出する。なお、風速推定範囲は、例えば、ユーザによる操作部220の操作によって選択することができる。
風速推定値E=予測値F×平均風速比α×突風率β (1)
【0036】
上記式(1)において、予測値Fは、気象データ111に含まれる気象予測地点P1aの風速予測値である。なお、気流推定地点P2の周辺に複数の気象予測地点P1が存在する場合、風速推定値Eの精度を高めるために、例えば気流推定地点P2に最も近い気象予測地点P1aの風速予測値が予測値Fとして用いられる。または、気流推定地点P2の周辺の気象予測地点P1から内挿する予測値Fを用いても良い。
【0037】
平均風速比αは、気象予測地点P1aにおける平均的な気流の状況を示す値と、気流推定地点P2における平均的な気流の状況を示す値との比率の一例である。本実施形態では、平均風速比αは、下記の式(2)に示すように、気象予測地点P1aと気流推定地点P2との間における平均風速の比率で算出される無次元の係数である。
平均風速比α=第2平均風速AV2/第1平均風速AV1 (2)
【0038】
式(2)において、第1平均風速AV1は、気象予測地点P1aにおいて、気流解析から得られる所定の計算ステップもしくは時間内の風速の平均値である。例えば、
図7は気流解析から得られる所定の時間内における気象予測地点P1aと気流推定地点P2の風速トレンド波形である。第1平均風速AV1は気象予測地点P1aの風速トレンド波形の平均値である。
【0039】
また、第2平均風速AV2は気流推定地点P2の風速トレンド波形の平均値である。
【0040】
一方、突風率βは、気流推定地点P2における突発的な気流の変化を示す値の一例である。本実施形態では、突風率βは、下記の式(3)に示すように、気流推定地点P2における気流解析により求まる風速の揺らぎの風速最大値Vmaxと第2平均風速AV2との比率で算出される無次元の係数である。
突風率β=風速最大値Vmax/第2平均風速AV2 (3)
【0041】
風速最大値Vmaxは、上述したステップS2の気流解析から得られた所定の時間の最大となる風速値である。例えば、
図7に示す気流解析から得られる所定の時間内における気流推定地点P2の風速トレンド波形の風速最大値がVmaxである。また、風況推定精度向上のため、気象予測地点P1の気象予測風向または気流推定地点P2の周辺の気象予測風向を基準に、気流解析で得られる平均風速比αおよび突風率βを使用することで、風速推定値Eを算出しても良い。また、風速推定部243は、予測地点の風向を基準に気流解析で求めた予測地点の風向と推定地点の風向の差分から予測地点の風向も推定してよい。そのため、本明細書では、風速推定部243が風速を推定する場合だけでなく、風速および風向の双方を推定する場合も、気流を推定することに該当する。
【0042】
最後に、表示部230が、ステップS3で算出した風速推定値Eおよび風向を画像表示する(ステップS4)。ステップS4では、表示部230は、例えば、
図4に示すような地図データ上に示された気流推定地点P2と対応付けて風速推定値Eを表示するが、風速推定値Eの表示形態は特に限定されない。
【0043】
上述したステップS1~ステップS4の動作は、各ステップを処理するプログラムをコンピュータに実行させることによっても実現することができる。このプログラムは、ソフトウェアとして記録媒体に記録することも可能である。
【0044】
図6は、気流推定地点P2における台風時の風速変化の一例を示すグラフである。
図6において、横軸は日時を示し、縦軸は風速を示す。また、実線は、気流推定地点P2で実際に観測された最大瞬間風速の観測値の変化を示す。一方、破線は、本実施形態の気流推定方法によって算出された風速推定値Eの変化を示す。
【0045】
本実施形態では、上述したように、気流推定地点P2の風況を推定する際に、単に気象データ111を気流解析するだけでなく、平均風速比αおよび突風率βを用いて風速推定値Eを算出している。そのため、台風のような風況が急激に変化する異常気象の発生が予想される場合には、平均風速比αおよび突風率βに反映されるため、風速推定値Eの精度が向上する。例えば、観測値と推定値の比較を示した
図6より推定精度の高い結果が得られることが確認できる。
【0046】
したがって、本実施形態によれば、局所的に風速を推定することによって風速の推定精度を向上させることが可能となる。これにより、異常時の強風を事前に察知することができるため、例えば、鉄道事業者が運転内容を検討するときに、十分な判断材料を提供することが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態では、鉄道沿線を風況推定エリアとしている。しかし、風況推定エリアは、鉄道沿線に限定されず、例えば高速道路等の道路であってもよい。この場合、気流解析部242が道路の風況を解析する。
【0048】
以上、実施形態を説明したが、この実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0049】
100:データ入力装置
200:診断評価装置
242:気流解析部
243:風速推定部