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特開2024-56541レーザリフトオフ(Laser Lift Off)用の処理装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056541
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】レーザリフトオフ(Laser Lift Off)用の処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/57 20140101AFI20240416BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240416BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20240416BHJP
【FI】
B23K26/57
H01L21/78 B
H01L33/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163512
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】598072179
【氏名又は名称】株式会社片岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】前田 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】長崎 克俊
(72)【発明者】
【氏名】豆野 和延
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
5F241
【Fターム(参考)】
4E168AE05
4E168CB04
4E168EA15
4E168EA17
5F063AA50
5F063BA33
5F063BA43
5F063BA47
5F063BA48
5F063CB02
5F063CB05
5F063CB06
5F063CB12
5F063CB13
5F063CB16
5F063CB23
5F063CB26
5F063DD26
5F063DD32
5F241AA31
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA40
5F241CA76
5F241CA77
5F241CB13
(57)【要約】
【課題】対象物を適切に基板から剥離させることのできるLLO処理装置を提供する。
【解決手段】透光性を有する基板3の表面上に対象物の構成要素となる膜2を敷設した後、当該基板3の裏面側からレーザ光L3を照射して所望の形状に切り出した対象物21を基板3の表面から剥離させるレーザリフトオフ処理を実施するものであり、前記基板3の裏面における前記対象物21に隣接する端材20にあたる部位に、基板3の裏面側から膜2に照射される前記レーザ光L3のエネルギを減衰させる遮光部31を予め設けた上でレーザリフトオフ処理を行う処理装置を構成した。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する基板の表面上に対象物の構成要素となる膜を敷設した後、当該基板の裏面側からレーザ光を照射して所望の形状に切り出した対象物を基板の表面から剥離させるレーザリフトオフ処理を実施するものであり、
前記基板の裏面における前記対象物に隣接する端材にあたる部位に、基板の裏面側から膜に照射される前記レーザ光のエネルギを減衰させる遮光部を予め設けた上でレーザリフトオフ処理を行う処理装置。
【請求項2】
前記遮光部は、前記基板の裏面側から同基板の裏面にレーザ光を照射しその裏面を切削することにより形成する請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
前記膜における、複数の前記対象物の各々とその外側とを隔てる輪郭にレーザ光を照射して両者を切削するに際して、一つの対象物の輪郭に複数回連続してレーザ光を照射するのではなく、複数の対象物の各々の輪郭に順次レーザ光を照射することを所要の回数反復する請求項1記載の処理装置。
【請求項4】
前記膜は、保護フィルム、偏光板、発光ダイオード及びそれらを接合する接着層を積層してなる請求項3記載の処理装置。
【請求項5】
透光性を有する基板の表面上に対象物の構成要素となる膜を敷設した後、当該基板の裏面側からレーザ光を照射して所望の形状に切り出した対象物を基板の表面から剥離させるレーザリフトオフ処理を実施する方法であり、
前記基板の裏面における前記対象物に隣接する端材にあたる部位に、基板の裏面側から膜に照射される前記レーザ光のエネルギを減衰させる遮光部を予め設けた上でレーザリフトオフ処理を行う処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性を有する基板の表面上に対象物の構成要素となる膜を敷設した後、基板の裏面側からレーザ光を照射して対象物を基板の表面から剥離させるLLO処理に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)のような半導体デバイスの製造過程では、ガラス基板またはサファイア基板上で、半導体層を成長させ、かつ電極となる導電体や保護フィルム等を接合した膜を敷設した後、LLO法によりそれを基板から剥落させることが行われる(例えば、下記特許文献を参照)。
【0003】
LLO処理では、基板の裏面側から表面側の膜に向けてレーザ光を照射し、そのエネルギを用いて膜を基板の表面から剥離せしめる。このとき、所望の対象物だけでなく、これに隣接する不要の端材も基板から剥離することがある。特に、端材の幅が狭小であると、その端材の部分にレーザ光を当てないようにマスクすることが難しく、所望の対象物と端材とがともに基板から剥落してしまう。仮に、端材の面積が大きいならば、LLO処理前に端材を基板諸共割断し切除することも考えられようが、端材の幅寸が1mm以下であるとそれも困難である。
【0004】
因みに、上述の如き端材は、LLO処理に先んじて基板上に製膜した製品を試験するときに生じ得る。試験時に電極を接続することで、基板上の膜の極一部に傷が付き、その傷付いた部分を端材として除去する必要があるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-077190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、対象物を適切に基板から剥離させることのできるLLO処理装置及び方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、透光性を有する基板の表面上に対象物の構成要素となる膜を敷設した後、当該基板の裏面側からレーザ光を照射して所望の形状に切り出した対象物を基板の表面から剥離させるレーザリフトオフ(LLO)処理を実施するものであり、前記基板の裏面における前記対象物に隣接する端材にあたる部位に、基板の裏面側から膜に照射される前記レーザ光のエネルギを減衰させる遮光部を予め設けた上でLLO処理を行う処理装置を構成した。これにより、端材を含まない対象物のみを基板から適切に剥離させることが可能となる。つまりは、対象物から端材を脱離させるための別途の工数を要しない。
【0008】
前記遮光部は、例えば、前記基板の裏面側から同基板の裏面にレーザ光を照射しその裏面を切削することにより形成する。
【0009】
並びに、本発明では、膜における、複数の前記対象物の各々とその外側とを隔てる輪郭にレーザ光を照射して両者を切削するに際して、一つの対象物の輪郭に複数回連続してレーザ光を照射するのではなく、複数の対象物の各々の輪郭に順次レーザ光を照射することを所要の回数反復する処理装置を構成した。膜における、所望の対象物とそれ以外とを分断する作業は、両者を隔てる輪郭をレーザ光により走査することで遂行できる。が、短時間で繰り返し一つの対象物の輪郭をなぞるようレーザ光を照射すると、対象物の特に隅角部に熱が蓄積され、対象物を構成する積層膜内の接着層が溶解する懸念がある。本発明によれば、膜への損傷、特に接着層(または、粘着層)への熱害を回避することができる。
【0010】
前記膜は、例えば、保護フィルム、偏光板、発光ダイオード及びそれらを接合する接着層を積層してなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対象物を適切に基板から剥離させることのできるLLO処理装置及び方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の処理装置によるLLO処理の対象物及び基板を示す平面図。
図2】同処理装置によるLLO処理の対象物及び基板を示す平面図。
図3】同処理装置によるLLO処理の対象物及び基板、遮光部を示す拡大した平面図。
図4】同処理装置によるLLO処理の対象物及び基板、遮光部を示す断面図。
図5】同処理装置によるLLO処理の対象物及び基板、遮光部を示す断面図。
図6】同処理装置によるLLO処理後の膜内の対象物及びその外周の輪郭を示す拡大した平面図。
図7】同処理装置が膜から対象物を切り出す際に走査するレーザ光の照射位置の変位の軌跡を示す平面図。
図8】同処理装置による膜から対象物を切り出す処理の対象物を示す断面図。
図9】同処理装置が備えるレーザ照射機構、特にガルバノスキャナを示す模式的な斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態の処理装置が実施する処理は、透光性を有する基板3の表面に敷設した膜2を基板3の表面から剥離させ、さらにその膜2から所望の形状の対象物21を切り出すものである。対象物21は、例えばOLEDデバイスである。基板3は、例えばガラス基板やサファイア基板等である。
【0014】
図2図3及び図6は、対象物21を内包する膜2の平面図である。輪郭23に囲われた内側が所望の対象物21であり、その外側が不要の端材22である。
【0015】
図4及び図5は、膜2及びこれを支持する基板3の断面図である。膜2は、保護フィルム211、偏光板213、LED215、保護フィルム217、219の各層を積層してなる。LED215は、例えばp型の窒化ガリウム(GaN)とn型のGaNとの間に発光層(多重量子井戸(Multi Quantum Well))を挟んだものである。保護フィルム211、217、219は、ポリエチレンテレフタレートやポリイミド等の樹脂を素材として作製する。各層211、213、215、217、219の間はそれぞれ、接着層(または、粘着層)212、214、216、218により接合している。なお、これら以外に、対象物21は、電極となる導電体その他(図示せず)を有することがある。
【0016】
本実施形態の処理装置を用いて行う処理方法は、
[i]基板3表面上に製膜した積層膜2を、基板3とともに個々の対象物21単位に分割
[ii]基板3表面上の積層膜2に内包される所望の対象物21と不要の端材20との切断
[iii]基板3裏面への遮光部31の形成
[iv]LLOによる、膜2の基板3表面からの剥離
[v]膜2から所望の対象物21を抽出
の各ステップを含む。
【0017】
ステップ[i]では、図1に示す積層膜2を製膜した基板3を、割断線30(図1中、二点鎖線で表す)に沿って一個一個の対象物21の単位に割断する。ここでは、割断線30に沿って基板3にレーザ光を照射するレーザ加工の手法を採用してもよいし、レーザ加工以外の手法、例えば刃により物理的に割断線30に沿って膜2及び基板3を切断する態様もとり得る。個々の対象物21単位に分割した基板3は、図3及び図7に示すように配列する。
【0018】
各基板3上の積層膜2に対しては、各対象物21の性能、品質、機能等を確認するための試験が行われる。その際、図2ないし図4に示すように、基板3の膜3の端部に、狭小な範囲ながら傷付いた端材20が発生する。ステップ[iv]のLLO処理では、この端材20の部分を基板3に残しつつ、端材20以外の対象物21を含む部分を基板3から適切に剥離させることが求められる。下記ステップ[ii]及びステップ[iii]は、そのための前準備である。
【0019】
ステップ[ii]では、基板3表面の積層膜2に対し、各対象物21と端材20との境界24にレーザ光L1を照射することにより、膜2を切削して境界24に沿って伸びる溝を形成し、以て対象物21と端材20とを分断する。図4に示すように、レーザ光L1は、基板3の表面側から膜2に直射するが、基板3の裏面側から当該基板3を透過させて膜2に照射しても構わない。
【0020】
図9に示すように、レーザ照射機構1は、レーザ光源(発振器。図示せず)、レーザ光源が発振するレーザ光L1を伝搬させる光学系(図示せず)、レーザ光L(L1、L2、L3、L4)の基板3ないし膜2上における照射位置を任意に変化させるガルバノスキャナ11、12、13、14、並びに、基板3及び膜2に相対する集光レンズ(または、対物レンズ)15を備える。
【0021】
レーザ光L(L1、L2、L3、L4)は、パルスレーザであってもよく、連続波レーザであってもよい。その波長や出力、パルスレーザである場合の周波数等は、好適なパラメータに設定する。
【0022】
レーザ光源と対物レンズ15との間に介在する、レーザ光L(L1、L2、L3、L4)を伝搬させる光学系は、光ファイバやミラー、レンズ、フィルタ等の既知の光学要素を用いて構築できる。この光学系において、基板3ないし膜2に照射されるレーザ光L(L1、L2、L3、L4)のビーム形状(基板3ないし膜2上におけるレーザ光L(L1、L2、L3、L4)の投影形状)や寸法を整形することが当然にあり得る。
【0023】
ガルバノスキャナ11、12、13、14は、レーザ光L(L1、L2、L3、L4)を反射するミラー12、14と、そのミラー12、14の角度(姿勢)を高速かつ高精度で回動させるサーボモータまたはステッピングモータ11、13とからなる。ガルバノスキャナのミラー12、14の角度が変化すると、レーザ光軸の向きが変化し、基板3ないし膜2と光軸とが交わる位置、即ち基板3ないし膜2に対してレーザ光L(L1、L2、L3、L4)を照射する位置が、X軸方向及びY軸方向に沿って二次元的に変位する。
【0024】
基板3及び膜2に臨む集光レンズ15は、fθレンズやテレセントリックレンズ、その他の球面レンズや非球面レンズ等である。この集光レンズ15により、基板3ないし膜2に対するレーザ光L(L1、L2、L3、L4)の照射位置如何によらず、レーザ光L(L1、L2、L3、L4)が常に適切に集光されることになる。
【0025】
基板3は、例えば既知のXYステージ4に保持させている。XYステージ4は、基板3及び基板3表面の積層膜2を、レーザ照射機構1の加工ノズルに対して相対的にX軸方向及びY軸方向に沿って二次元的に移動させることができる。
【0026】
ステップ[ii]では、複数の基板3上の膜2の境界24をレーザ光L1によりなぞってゆくような走査を、ガルバノスキャナ11、12、13、14を介して実行する。ガルバノスキャナ11、12、13、14がレーザ光L1の照射位置を変化させることができる走査範囲は、複数の基板3及び対象物21を包含できる程度に広い。
【0027】
ステップ[iii]では、基板3裏面における対象物21と端材20との境界24の近傍、端材20寄りの部位にレーザ光L2を照射することにより、基板3の裏面を切削して境界24に平行に伸びる遮光部31を形成する。遮光部31は、ステップ[iv]のLLO処理中に端材20の部分に照射されるレーザ光L3のエネルギを減衰(弱化)させる目的で設ける。図4に示すように、レーザ光L2は、基板3の裏面に対して直射する。遮光部となる溝31は、一本だけ設けてもよいし、複数本設けてもよい。溝31の深さは、例えば基板3の厚みの半分程度とする。
【0028】
レーザ照射装置5は、上述したレーザ照射機構1と同様の構成とすることができる。レーザ照射装置5は、レーザ照射機構1と共通であってもよく、別個のものであってもよい。
【0029】
レーザ光L2は、パルスレーザであってもよく、連続波レーザであってもよい。その波長や出力、パルスレーザである場合の周波数等は、基板3の裏面を切削し溝31を形成するために好適なパラメータに設定する。図6に示すように、レーザ光L2は、基板3の裏面側から直接当該基板3の裏面に照射する。
【0030】
ステップ[iii]では、複数の基板3の裏面における輪郭24のすぐ近くの外側をレーザ光L2によりなぞってゆくような走査を、ガルバノスキャナ11、12、13、14を介して実行する。ステップ[iii]で用いるレーザ照射機構1は、ステップ[ii]で用いるレーザ照射機構1と同様の構成とすることができる;両者は共通(同一)であってもよく、別個のものであってもよい。
【0031】
ステップ[iv]は、LLO処理の主要工程であり、基板3の表面から膜2の内の所望の対象物21を含む領域を剥落させる。ステップ[iv]では、図5に示すように、レーザ光L3を、基板3の裏面側から当該基板3を透過させて膜2に照射する。
【0032】
ステップ[iv]で用いるレーザ照射機構1は、ステップ[ii]及び/またはステップ[iii]で用いるレーザ照射機構1と同様の構成とすることができる;それらは共通(同一)であってもよく、別個のものであってもよい。LLO処理用のレーザ光L3は、そのビーム形状(投影形状)が点状のスポットビームであることもあれば、線状のラインビームであることもある。何れにせよ、抽出したい対象物21を含む膜2の全域にレーザ光L3を照射することになる。
【0033】
先行のステップ[iii]により、基板3の裏面における、対象物21を端材20とを隔てる境界24の外側にあたる部位には、予め遮光部となる溝31が形成されている。このため、LLO処理ステップ[iv]において照射するレーザ光L3が、対象物21の外側の端材20の部分に当たるとしても、遮光部31がレーザ光L3を反射または拡散させることから、そのエネルギは十分に減衰される。従って、図5に示しているように、所望の対象物21を含む膜2のみが基板3の表面から剥離される一方で、これに隣接する端材20は基板3の表面から剥離されない(基板3に残留する)。
【0034】
しかして、ステップ[v]では、LLOにより基板3から剥離した積層膜2に対し、図8に示すように、各対象物21の形状の輪郭23に沿ってレーザ光L4を照射し、膜2を切削して対象物21と端材22とを分断して、所望の形状の対象物21を切り出す。
【0035】
ステップ[v]では、複数の膜2の輪郭23をレーザ光L4によりなぞってゆくような走査を、ガルバノスキャナ11、12、13、14を介して実行する。ステップ[v]で用いるレーザ照射機構1は、ステップ[ii]、ステップ[iii]及び/またはステップ[iv]で用いるレーザ照射機構1と同様の構成とすることができる;それらは共通(同一)であってもよく、別個のものであってもよい。
【0036】
複数の対象物21の各々の輪郭23部分を十分に切削するためには、当該輪郭23に多数回、例えば約百回繰り返しレーザ光L4を照射することが望ましい。尤も、本実施形態では、一つの対象物21の輪郭23に連続して多数回レーザ光L4を照射することをしない。換言すれば、一つ一つの対象物21を順番に端材22から分断するようなことを行わない。その理由は、一つの対象物21の輪郭23に短時間のうちに繰り返しレーザ光4を照射すると、当該対象物21の特に隅角部に熱が蓄積され、接着層212、214、216、218の溶解を招く懸念が生じるからである。
【0037】
代わりに、本実施形態では、図7中に太い実線で表しているように、ちょうど一筆書きのように、複数の対象物21の輪郭23をレーザ光L4により順次なぞってゆくような走査をガルバノスキャナ11、12、13、14を介して実行し、かつその走査を多数回繰り返すこととしている。レーザ照射機構1が備えるガルバノスキャナ11、12、13、14がレーザ光L4の照射位置を変化させることができる走査範囲は、各対象物21の輪郭23を包含できる程度に広い。これにより、抽出せんとする対象物21の特定の箇所の蓄熱及び温度上昇が軽減され、対象物21にダメージを与えることを回避できる。また、レーザ光L4の走査速度を高めることが可能となるので、タクトタイムの短縮にも寄与し得る。
【0038】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、基板3の裏面にレーザ光L2を照射して溝31を切削することで遮光部31を形成していた。が、これ以外に、基板3の裏面における対象物21の外側の端材20にあたる部位にマスク等の部材を配置して当該部位を覆ったり、当該部位をLLO用のレーザ光L3を吸収し得る(特に、黒色の)塗料または顔料等により塗りつぶしたり、当該部位をやすりや刃等で削って乱雑な乱反射の起こる面に加工したりすることで、強いレーザ光L3が端材20に当たらないように遮る遮光部を設けるようにしても構わない。
【0039】
その他、各部の具体的構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…レーザ照射装置
2…膜
20…端材
21…対象物
22…端材
23…輪郭
24…境界
3…基板
31…遮光部(溝)
L1…境界を輪郭を切削するレーザ光
L2…遮光部を形成するレーザ光
L3…対象物を基板から剥離させるLLO用のレーザ光
L4…輪郭を輪郭を切削するレーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9