(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056547
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】液滴吐出方法および液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240416BHJP
B41J 2/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/06
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163524
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】506159976
【氏名又は名称】株式会社SIJテクノロジ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村田 和広
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC11
2C056EC31
2C056EC72
2C056FA07
2C056FA10
2C056HA22
2C057AF21
2C057AG01
2C057BD07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】静電吐出型インクジェットヘッドを用いて、新たな断面形状を有する構造体を形成すること。
【解決手段】液滴吐出方法は、第1方向に所定のノズル間隔で配置され液滴を吐出する複数の静電型液滴吐出ノズル、を含むマルチノズルヘッドを用いることと、前記複数の静電型液滴吐出ノズルのうち第1静電型液滴吐出ノズルから前記対象物の第1液滴吐出位置に第1液滴を吐出することと、前記マルチノズルヘッドを所定の走査速度で前記第1方向に走査することと、前記複数の静電型液滴吐出ノズルのうち第2液滴吐出ノズルから前記第1液滴吐出位置に第2液滴を吐出することと、前記第1液滴吐出ノズルから第2液滴吐出位置に第1液滴を吐出することを含み、前記第1位置において前記第1液滴および前記第2液滴により形成された第1構造体の形状と、前記第2位置において前記第1液滴により形成された第2構造体の形状は異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に所定のノズル間隔で配置され液滴を吐出する複数の静電型液滴吐出ノズル、を含むマルチノズルヘッドを用いることと、
前記複数の静電型液滴吐出ノズルのうち第1静電型液滴吐出ノズルから対象物の第1液滴吐出位置に第1液滴を吐出することと、
前記マルチノズルヘッドを所定の走査速度で前記第1方向に走査することと、
前記複数の静電型液滴吐出ノズルのうち第2静電型液滴吐出ノズルから前記第1液滴吐出位置に第2液滴を吐出することと、
前記第1静電型液滴吐出ノズルから第2液滴吐出位置に第1液滴を吐出することと、を含み、
前記第1液滴吐出位置において前記第1液滴および前記第2液滴により形成された第1構造体の形状と、前記第2液滴吐出位置において前記第1液滴により形成された第2構造体の形状とは異なる、
液滴吐出方法。
【請求項2】
前記所定のノズル間隔は、20μm以上500μm以下である、
請求項1に記載の液滴吐出方法。
【請求項3】
前記所定の走査速度は、0.00001メートル毎秒以上1メートル毎秒以下である、
請求項1に記載の液滴吐出方法。
【請求項4】
前記液滴のうち溶媒の粘度は、0.1cps以上100000cps以下である、
請求項1に記載の液滴吐出方法。
【請求項5】
前記静電型液滴吐出ノズルからの1回あたりの吐出量は、0.00001ピコリットル以上50ピコリットル以下である、
請求項1に記載の液滴吐出方法。
【請求項6】
前記複数の静電型液滴吐出ノズルは、3個以上の静電型液滴吐出ノズルを含む、
請求項1に記載の液滴吐出方法。
【請求項7】
所定の条件を満たすとき、前記第1構造体および前記第2構造体が連結されて第3構造体が形成され、前記第3構造体は、前記第1方向から見たときに矩形の断面形状を有する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液滴吐出方法。
【請求項8】
前記第3構造体の端部は、前記第1方向と交差する第2方向から見たときに円弧の断面形状を有する、
請求項7に記載の液滴吐出方法。
【請求項9】
第1方向に所定のノズル間隔に配置され液滴を吐出するための複数の静電型液滴吐出ノズル、を含むマルチノズルヘッドと、
前記複数の静電型液滴吐出ノズルのうち第1静電型液滴吐出ノズルから対象物の第1液滴吐出位置に第1液滴を吐出し、
前記マルチノズルヘッドを所定の走査速度で前記第1方向に走査し、
前記複数の静電型液滴吐出ノズルのうち第2静電型液滴吐出ノズルから前記第1液滴吐出位置に第2液滴を吐出し、
前記第1静電型液滴吐出ノズルから第2液滴吐出位置に第1液滴を吐出する制御部と、を含む、
液滴吐出装置。
【請求項10】
前記所定のノズル間隔は、20μm以上500μm以下である、
請求項9に記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
前記複数の静電型液滴吐出ノズルは、3個以上の静電型液滴吐出ノズルを含む、
請求項10に記載の液滴吐出装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記液滴の材料に基づいて、前記走査速度を制御する、
請求項9乃至11のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出方法および液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット印刷技術の工業用プロセスへの応用が行われている。例えば、液晶ディスプレー用のカラーフィルター製造工程などはその一例である。インクジェット印刷技術として、従来は機械的圧力や振動により液滴を吐出する、いわゆるピエゾ型ヘッドが多く使用されてきていたが、より微細な液滴を吐出できる静電吐出型インクジェットヘッドが注目されている。特許文献1には、静電吐出型インクジェット記録装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、従来の静電吐出型インクジェットヘッドを用いて液滴を吐出する場合、一つの液滴吐出位置に対して一つの液滴が吐出される。このとき、形成される構造体の断面は、液滴として用いられたインクの表面張力、基板の濡れ性などの影響を受けるため、一般的に円弧形状を有する。
【0005】
本発明は、静電吐出型インクジェットヘッドを用いて、新たな断面形状を有する構造体を形成することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、第1方向に所定のノズル間隔で配置され液滴を吐出する複数の静電型液滴吐出ノズル、を含むマルチノズルヘッドを用いることと、前記複数の静電型液滴吐出ノズルのうち第1静電型液滴吐出ノズルから対象物の第1液滴吐出位置に第1液滴を吐出することと、前記マルチノズルヘッドを所定の走査速度で前記第1方向に走査することと、前記複数の静電型液滴吐出ノズルのうち第2静電型液滴吐出ノズルから前記第1液滴吐出位置に第2液滴を吐出することと、前記第1静電型液滴吐出ノズルから第2液滴吐出位置に第1液滴を吐出することを含み、前記第1液滴吐出位置において前記第1液滴および前記第2液滴により形成された第1構造体の形状と、前記第2液滴吐出位置において前記第1液滴により形成された第2構造体の形状は異なる、液滴吐出方法が提供される。
【0007】
上記液滴吐出方法において、前記所定のノズル間隔は、20μm以上500μm以下であってもよい。
【0008】
上記液滴吐出方法において、前記所定の走査速度は、0.00001メートル毎秒以上1メートル毎秒以下であってもよい。
【0009】
上記液滴吐出方法において、前記液滴のうち溶媒の粘度は、0.1cps以上10000cps以下であってもよい。
【0010】
上記液滴吐出方法において、前記静電型液滴吐出ノズルからの1回あたりの吐出量は、0.00001ピコリットル以上50ピコリットル以下であってもよい。
【0011】
上記液滴吐出方法において、複数の静電型液滴吐出ノズルは、3個以上の静電型液滴吐出ノズルを含んでもよい。
【0012】
上記液滴吐出方法において、所定の条件を満たすとき、前記第1構造体および前記第2構造体が連結されて第3構造体が形成され、前記第3構造体は、前記第1方向から見たときに矩形の断面形状を有してもよい。
【0013】
上記液滴吐出方法において、前記第3構造体の端部は、前記第1方向と交差する第2方向から見たときに円弧の断面形状を有してもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、第1方向に所定のノズル間隔に配置され液滴を吐出するための複数の静電型液滴吐出ノズル、を含むマルチノズルヘッドと、前記複数の静電型液滴吐出ノズルのうち第1静電型液滴吐出ノズルから対象物の第1液滴吐出位置に第1液滴を吐出し、前記マルチノズルヘッドを所定の走査速度で前記第1方向に走査し、前記複数の静電型液滴吐出ノズルのうち第2静電型液滴吐出ノズルから前記第1液滴吐出位置に第2液滴を吐出し、前記第1静電型液滴吐出ノズルから第2液滴吐出位置に第1液滴を吐出する制御部と、を含む、液滴吐出装置が提供される。
【0015】
上記液滴吐出装置において、前記所定のノズル間隔は、20μm以上500μm以下であってもよい。
【0016】
上記液滴吐出装置において、前記複数の静電型液滴吐出ノズルは、3個以上の静電型液滴吐出ノズルを含んでもよい。
【0017】
上記液滴吐出装置において、前記制御部は、前記液滴の材料に基づいて、前記走査速度を制御してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態を用いることにより、静電吐出型インクジェットヘッドを用いて、新たな断面形状を有する構造体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置の概略図である。
【
図2B】マルチノズルヘッドの一部を拡大した平面図である。
【
図11A】本発明の一実施形態における構造体の模式図である。
【
図11B】本発明の一実施形態における構造体の模式図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置の制御部の機能ブロック図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る液滴吐出方法のフロー図である。
【
図16】本実施例におけるマルチノズルヘッドの写真である。
【
図17】本実施例において装着部に装着されたマルチノズルヘッドの写真である。
【
図18】本実施例において形成された構造体の平面写真である。
【
図19】本実施例において形成された構造体の断面プロファイル画像である。
【
図20】本発明の一実施形態における構造体の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本出願で開示される発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0021】
なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
【0022】
さらに、本発明の詳細な説明において、ある構成物と他の構成物の傾き関係を規定する際、「上に」「下に」とは、ある構成物の直上あるいは直下に傾きする場合のみでなく、特に断りの無い限りは、間にさらに他の構成物を介在する場合を含むものとする。
【0023】
<第1実施形態>
(1-1.液滴吐出装置100の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置100の概略図である。
【0024】
液滴吐出装置100は、制御部110、記憶部120、電源部125、駆動部130、装着部140、インク供給部145、マルチノズルヘッド150、表示部170、操作部180、調整部190、対象物保持部200、および筐体210を含む。制御部110、記憶部120、電源部125、駆動部130、装着部140、インク供給部145、マルチノズルヘッド150、表示部170、操作部180、調整部190、および対象物保持部200は、配線バスにより電気的に接続されるとともに、筐体210の内側に設けられる。なお、本実施形態において、表示部170、操作部180、および調整部190は、必ずしも設けられなくてもよい。
【0025】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはその他の演算処理回路を含む。制御部110は、あらかじめ設定された液滴吐出用プログラムを用いて、マルチノズルヘッド150による液滴吐出処理を制御する。
【0026】
記憶部120は、液滴吐出用プログラム、および液滴吐出用プログラムで用いられる各種情報を記憶するデータベースとしての機能を有する。記憶部120には、メモリ、SSD、または記憶可能な素子が用いられる。
【0027】
電源部125は、制御部110から入力される信号をもとに、マルチノズルヘッド150に電圧を印加する。この例では、電源部125は、マルチノズルヘッド150に対してパルス状の電圧(この例では、1000V)を印加する。なお、パルス電圧に限定されず、一定の電圧が常時印加されてもよい。
【0028】
駆動部130は、モータ、ベルト、ギアなどの駆動部材により構成される。駆動部130は、制御部110からの指示に基づき、対象物220に対してマルチノズルヘッド150を相対的に一つの方向(この例では、第2方向D2)に移動させる。なお、駆動部130は、対象物保持部200を移動させてもよい。
【0029】
装着部140は、マルチノズルヘッド150を装着する。この例では、装着部140は、マルチノズルヘッド150のプレート部と接着することにより、マルチノズルヘッド150を装着する。このとき、装着部140は、治具および接着剤などを用いてマルチノズルヘッド150を装着してもよい。
【0030】
インク供給部145(インクタンクまたはインクカートリッジともいう)は、装着部140から離れて設けられる。インク供給部145は、インクを貯蔵する。インク供給部145は、貯蔵されたインクをマルチノズルヘッド150にインクを供給する。インクには、溶媒と溶質ないし顔料からなるインクが用いられることが望ましく、さらに好ましくは、溶質ないし顔料成分が、無機物質ないし、金属をベースとするもので、より好ましくは、金属超微粒子インクが用いられることが望ましい。
【0031】
マルチノズルヘッド150は、インク供給部145から離れて設けられる。マルチノズルヘッド150の構成については後述する。
【0032】
表示部170は、制御部110の制御に基づいて、制御情報(文字情報または画像情報)を表示する。このとき、表示部170は、GUI(Graphical User Interface)を介して制御情報を表示してもよい。また、表示部170は、マルチノズルヘッド150の情報を表示してもよい。
【0033】
操作部180は、操作可能な部材を含む。例えば、操作部180には、ボタン、レバーおよびテンキーなどが用いられる。操作部180を用いて上下左右への移動、押圧、または回転などの動作、または数値の入力がなされることにより、その動作に基づく情報が制御部110に取得される。なお、表示部170が操作部180の機能を有する場合には、表示部170はタッチパネルとして用いられてもよい。
【0034】
調整部190は、マルチノズルヘッド150の位置および傾きを調整してもよい。具体的には、調整部190は、マルチノズルヘッド150の液滴吐出ノズル153の先端部153aの傾き、マルチノズルヘッドの向きを調整することができる。調整部190には、θステージ、ゴニオステージが用いられてもよい。
【0035】
対象物保持部200は、対象物220を保持する機能を有する。対象物保持部200は、この例ではステージが用いられる。対象物保持部200が対象物220を保持する機構は特に制限されず、一般的な保持機構が用いられる。この例では、対象物220は、対象物保持部200に真空吸着している。なお、これに限定されず、対象物保持部200は固定具を用いて対象物220を保持してもよい。
【0036】
(1-2.マルチノズルヘッド150の構成)
以下に、マルチノズルヘッドの構成について詳細に説明する。
図2Aは、マルチノズルヘッド150の平面図である。
図2Bは、マルチノズルヘッドの一部を拡大した平面図である。
図3Aは、液滴吐出ノズルを拡大した上面図である。
図3Bは、液滴吐出ノズルを拡大した断面図である。
【0037】
図2Aおよび
図2Bに示すように、マルチノズルヘッド150は、プレート部151および複数の液滴吐出ノズル153(静電型液滴吐出ノズルともいう)を含む。
【0038】
プレート部151は、板状に設けられる。プレート部151は、第1方向D1に延びる。プレート部151には、ステンレスなどの金属材料が用いられる。
【0039】
液滴吐出ノズル153は、プレート部151の一面に設けられる。液滴吐出ノズル153は、第1方向D1に並んで配置される。本実施形態では、液滴吐出ノズル153-1、153-2、・・・、153-(N-1)、153-Nがプレート部151に設けられる。Nは、3以上の自然数である。この例では、マルチノズルヘッド150は、10個の液滴吐出ノズル153を含む。なお、液滴吐出ノズル153-1(第1静電型液滴吐出ノズルともいう)、153-2(第2静電型液滴吐出ノズルともいう)、・・・、153-(N-1)、153-Nを分けて説明する必要がない場合には、液滴吐出ノズル153として説明する。液滴吐出ノズル153には、ニッケルなどの金属材料が用いられる。
図3Aおよび
図3Bに示すように、液滴吐出ノズル153は、先細る形状を有する。
【0040】
プレート部151は、液滴吐出ノズル153と対応する部分(重畳する部分)に液滴吐出ノズル153の吐出口(液滴吐出ノズル153の先端部153aの開孔部153ao)の内径r153aよりも大きい内径r151oを有する貫通孔151oを有する。プレート部151の貫通孔151oの内径は、1μm以上100μm以下であってもよい。液滴吐出ノズル153の先端部153aの内径は、数百nm以上50μm以下、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは5μm以上12μm以下であってもよい。本実施形態において、液滴吐出ノズル153に電圧を印加してもよいし、プレート部151(またはインク供給部145)に電圧を印加してもよいし、インクに電圧を印加してもよい。プレート部151および液滴吐出ノズル153に電圧を印加する場合、電極が設けられてもよい。電極には、タングステン、ニッケル、モリブデン、チタン、金、銀、銅、白金などが設けられてもよい。このとき、プレート部151の全体に均一に電圧が印加されるように、複数の電極が設けられてもよい。また、本実施形態では、液滴吐出ノズル153、プレート部151またはインクに対して電圧を印加する例を示したが、マルチノズルヘッド150を保持する治具に電圧が印加されてよい。
【0041】
ここで、
図2Bに示すように、隣接する液滴吐出ノズル153は、所定の間隔(ノズル間の距離S1)を有する。形成する構造体の形状を制御する観点から、隣接するノズル間距離S1は、20μm以上500μm以下であることが望ましい。この例では、各液滴吐出ノズル153間の距離S1は、200μmである。
【0042】
本実施形態では、吐出された液滴の大きさと、隣接するノズル間距離に基づいて構造体の形状を制御することができる。
【0043】
(1-3.液滴吐出方法)
以下に、本実施形態における液滴吐出方法を説明する。
図4乃至
図9は、液滴吐出装置における液滴吐出方法の模式図である。
【0044】
まず、上述したマルチノズルヘッド150を用いて、液滴吐出ノズル153が配列された第1方向D1にマルチノズルヘッド150を走査する。マルチノズルヘッド150の走査速度は、液滴の乾燥速度の観点から0.00001m/sec以上1m/sec以下であることが望ましい。
【0045】
次に、
図4に示すように、複数の液滴吐出ノズル153のうち第1液滴吐出ノズル153-1から第1液滴吐出位置P1にインク供給部145より供給されたインクを用いて第1液滴157-1を吐出する。液滴の吐出量は、液滴の乾燥の観点から0.00001ピコリットル以上50ピコリットル以下であることが望ましい。このとき、
図5に示すように、第1液滴157-1が乾燥する過程で第1液滴157-1の中央部に比べて端部にインク中の粒子が多く残存する(例えば、コーヒーリング現象)。これにより、
図6に示すように第1液滴157-1の端部が盛り上がった構造体が形成される。
【0046】
続いて、
図7に示すように、マルチノズルヘッド150が第1方向D1へ走査されるのに合わせて、第2液滴吐出ノズル153-2が第1液滴吐出位置P1上に移動する。このとき、
図8に示すように、第1液滴吐出位置P1に対して第2液滴吐出ノズル153-2から2滴目の第2液滴157-2が吐出される。第2液滴157-2においても同様に、第2液滴157-2端部が盛り上がった構造体が形成されつつ、
図9に示すように第1液滴157-1によって形成された中央部の溝部分にインクの粒子が溜まる状態となる(第1構造体158-1が形成される。)
【0047】
また、第1液滴吐出位置P1に第2液滴吐出ノズル153-2が第2液滴を吐出するとき、第1液滴吐出位置P1を基準としてマルチノズルヘッド150が移動する方向(第1方向D1)に設けられた第2液滴吐出位置P2において、
図10に示すように、第1液滴吐出ノズル153-1からインク供給部145より供給されたインクを用いて1滴目の第1液滴157-1が吐出される。このとき、第1液滴吐出位置P1に形成される構造体(第158-1)と、第2液滴吐出位置に形成される構造体(第2構造体158-2)とは、吐出された液滴の数に応じて形状が異なる。第1構造体158-1および第2構造体158-2は液滴の吐出の回数が多いほど矩形(台形)に近づいていく。所定の回数を超えたとき、第1構造体158-1の形状と、第2構造体158-2の形状は同じになってもよい。
【0048】
また、第1構造体158-1及び第2構造体158-2は、所定の条件を満たすときに連結される。具体的には、第1液滴吐出位置P1と第2液滴吐出位置P2との距離が所定の距離以下である時に、第1構造体158-1及び第2構造体158-2は連結される(第3構造体が形成される)。第2液滴吐出位置P2以降の液滴吐出位置も同様である。
【0049】
第2液滴吐出ノズル153-2よりも第1方向D1の反対方向に設けられた第3液滴吐出ノズル153-3以降の液滴吐出ノズル153も第1液滴吐出位置P1および第2液滴吐出位置P2に順次液滴を吐出する。第1方向D1に設けられた、第2液滴吐出位置P2以降の液滴吐出位置も同様である。
【0050】
図11Aは、本実施形態において形成された構造体159を第1方向D1から見た時の断面模式図である。
図11Bは、構造体159を第2方向D2から見た時の断面模式図である。本実施形態では、各液滴吐出位置に繰り返し液滴が吐出されることにより、側端部が反り立つような形状を有しつつ、中央部の溝が埋められる。この結果として、
図11Aおよび
図11Bに示すように、第1方向D1から見たときに、リソグラフィプロセスを経ずに矩形(台形)の断面形状を有する線状の構造体が形成される。
【0051】
従来の液滴吐出方法では、静電吐出ノズルを用いる場合、一般にはシングルノズルが用いられていた。そのため、液滴吐出により形成される構造体は、円弧形状を有していた。また、ピエゾ型インクジェットノズルのように複数の液滴吐出ノズルが設けられたとしても、配列される方向に対して走査する場合、色ごとに異なる吐出位置にインク液滴が吐出されていた。
【0052】
一方、本実施形態の場合、静電吐出型のインクジェットノズルが用いられる関係上、ピエゾ型インクジェットノズルから吐出される液滴に比べて液滴のサイズが小さく、乾燥速度が速い。また、本実施形態の場合、隣接する静電吐出型の液滴吐出ノズル間の距離および走査速度が制御されている。さらに、同じ液滴吐出位置に複数回液滴が吐出される。これにより、上述のような矩形の断面形状を有する線状の構造体が形成される。
【0053】
したがって、本実施形態を用いることにより、静電吐出型インクジェットヘッドを用いて従来にない新たな断面形状を有する構造体を形成することができる。構造体がこのような形状を有することにより、隔壁としても用いることができ、またインクジェットにより形成される構造体を新たな用途として用いることができる。
【0054】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態とは異なる液滴吐出装置について説明する。具体的には、2次元に液滴吐出ノズルが配列されたマルチノズルヘッドの例について説明する。なお、説明の関係上、適宜部材を省略して説明する。
【0055】
図12は、マルチノズルヘッド150Aの上面模式図である。
図12に示すように、液滴吐出ノズル153は、第1方向D1に配列されるとともに、第2方向D2にも配列されてもよい。この場合、第1方向に走査しながら液滴を吐出することにより、複数の線状の構造体を形成することができる。
【0056】
<第3実施形態>
本実施形態では、取得された液滴の情報に基づいて、マルチノズルヘッドの走査速度を設定する例について説明する。
【0057】
図13は、制御部110Bの内部構成を示す。機能ブロック図である。制御部110Bは、取得部111、設定部113、および駆動制御部115を有する。
【0058】
取得部111は、操作部180を介してユーザから入力されたデータ、または記憶部120に記憶されたデータを取得する。
図14は、取得部111により取得されたデータセット500の一例である。
図13に示すように、データセット500は、材料名500a、材料の粘度500b、隣接ノズル間隔500c、温度500d、吐出量500eを含む。なお、データセット500は、一部のデータを含まなくてもよい。
【0059】
設定部113は、取得部111において取得されたデータセット500に基づいて、マルチノズルヘッド150の走査速度を設定する。
【0060】
駆動制御部115は、設定された走査速度を用いて駆動部130を制御する。
【0061】
図15は、液滴吐出におけるマルチノズルヘッド150の走査速度を設定するためのフローチャートである。
【0062】
まず、制御部110は、マルチノズルヘッド150に関する情報および材料に関する情報を取得する(S110,S120)。マルチノズルヘッド150に関する情報および材料に関する情報は、操作部180を介してユーザが入力することまたは記憶部120から取得される。取得された情報は、
図13に示すように入力データセットとして処理される。
【0063】
次に、制御部110は、取得されたマルチノズルヘッド150に関する情報および材料に関する情報に基づいて、マルチノズルヘッド150の走査速度を設定する(S130)。このとき、制御部110は、マルチノズルヘッド150に関する情報および材料に関する情報に対して、あらかじめ準備された走査速度のデータ群の中から選択してもよい。また、制御部110は、あらかじめ取得された教師データをもとに機械学習を行い、走査速度を設定してもよい。
【0064】
制御部110は、設定された走査速度情報を駆動部130に出力し、駆動部130を駆動させる(S140)。
【0065】
本実施形態を用いることにより、ユーザは、材料の情報を入力することにより、矩形の断面形状を有する構造体を形成するための最適なマルチノズルヘッドの走査速度を設定することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、吐出量が入力される例を示したが、本発明はこれに限定されない。制御部110は、マルチノズルヘッド150の走査速度とともに液滴の吐出量を設定してもよい。
【実施例0067】
以下に、液滴吐出方法の実施例について説明する。
【0068】
図16は、一例のマルチノズルヘッドの写真である。
図17は、マルチノズルヘッドが装着部に装着された写真である。また、本実施例において構造体を形成するために用いられたマルチノズルヘッドには、5列×20本(100本)の液滴吐出ノズルが設けられている。この場合、1つの線が5本のノズルによって描画される。
【0069】
図18は、本実施例において形成された構造体の平面写真である。
図19は、本実施例において形成された構造体の断面プロファイル画像である。
図19において、構造体のパターン線幅は、36.485μmである。また、
図19に示すように、構造体は、矩形の断面形状を有することが確認された。
【0070】
以上より、本発明の一実施形態を用いることにより、矩形の断面形状を有する線状の構造体を形成することができる。
【0071】
(変形例)
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、各実施形態の組み合わせ若しくは設計変更を行ったもの、又は、処理の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0072】
本発明の一実施形態において、液滴吐出装置は、検査装置を備えてもよい。検査装置は、装着部140に装着されたマルチノズルヘッド150の傾きを検査する。検査装置は、マルチノズルヘッド150における隣接する液滴吐出ノズル153の先端部153aの傾きおよびパターンの形状を検査することができる。この例では、検査装置には、撮像装置又は段差計が用いられる。具体的には、撮像装置として、CCD(Charge Coupled Device)方式のカメラまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)方式のカメラが用いられてもよい。検査装置で取得された情報は、制御部110および記憶部120に送られ、走査速度を制御してもよい。または、パターンの形状に応じて、隣接する液滴吐出ノズル153と間の傾き(第1方向、第2方向、第3方向)を調整してもよい。
【0073】
本発明の第1実施形態の液滴吐出方法で形成された構造体は、第1方向D1および第2方向D2から見たときに矩形の断面形状を有する例を示したが、本発明はこれに限定されない。
図20は、構造体159Cの模式図である。構造体159Cは、第1方向D1から見た時に矩形の断面形状を有するが、
図20に示すように、第2方向D2から見たときに構造体159Cの端部は、液滴の吐出回数によっては、構造体159Cの中央に比べて液滴の吐出回数が少ない場合、円弧の断面形状を有してもよい。
100・・・液滴吐出装置,110・・・制御部,111・・・取得部,113・・・設定部,115・・・駆動制御部,120・・・記憶部,125・・・電源部,130・・・駆動部,140・・・装着部,145・・・インク供給部,150・・・マルチノズルヘッド,151・・・プレート部,151o・・・貫通孔,153・・・液滴吐出ノズル,153a・・・先端部,153ao・・・開孔部,157-1・・・第1液滴,157-2・・・第2液滴,158-1・・・第1構造体,158-2・・・第2構造体,159・・・構造体,160・・・検査装置,170・・・表示部,180・・・操作部,190・・・調整部,200・・・対象物保持部,210・・・筐体,220・・・対象物,500・・・データセット,500a・・・材料名,500b・・・粘度,500c・・・隣接ノズル間隔,500d・・・温度,500e・・・吐出量