(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056552
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】密封構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3252 20160101AFI20240416BHJP
F16J 15/16 20060101ALI20240416BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20240416BHJP
【FI】
F16J15/3252
F16J15/16 B
F16J15/3204 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163529
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】石橋 信一
【テーマコード(参考)】
3J006
3J043
【Fターム(参考)】
3J006AE15
3J006AE28
3J006AE37
3J006AE46
3J006CA01
3J043AA16
3J043CA02
3J043CA05
3J043CA20
3J043CB13
3J043CB20
3J043DA06
3J043HA04
(57)【要約】
【課題】異物の侵入を抑制しつつ低トルク化することができる密封構造を提供する。
【解決手段】密封構造1は、貫通孔21を有するハウジング2と、貫通孔21に挿通される軸部3と、の間を密封装置4によって密封するものである。密封装置4は、貫通孔21の内周面に固定されるとともに軸部3の外周面31に摺接する密封装置本体41と、密封装置本体41よりも外部空間S2側において軸部3に接続されて外周側に向かって延びる環状のデフレクタ42と、を有する。デフレクタ42は、ハウジング2に向かって突出するデフレクタ凸部422を有する。ハウジング2は、デフレクタ42と対向する位置に、デフレクタ42に向かって突出するハウジング凸部23を有する。ハウジング2とデフレクタ42とが互いに非接触であるとともに、デフレクタ凸部422とハウジング凸部23とが軸線xの方向において互いに重なり合う重なり部5を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有するハウジングと、前記貫通孔に挿通される軸部と、の間を密封装置によって密封する密封構造であって、
前記密封装置は、前記貫通孔の内周面に固定されるとともに前記軸部の外周面に摺接する密封装置本体と、該密封装置本体よりも外部空間側において前記軸部に接続されて外周側に向かって延びる環状のデフレクタと、を有し、
前記デフレクタは、前記ハウジングに向かって突出するデフレクタ凸部を有し、
前記ハウジングは、前記デフレクタと対向する位置に、該デフレクタに向かって突出するハウジング凸部を有し、
前記ハウジングと前記デフレクタとが互いに非接触であるとともに、前記デフレクタ凸部と前記ハウジング凸部とが軸線の方向において互いに重なり合う重なり部を形成する、密封構造。
【請求項2】
前記デフレクタ凸部及び前記ハウジング凸部は、互いに対向する面に、前記軸線の方向に沿って延びる軸線延在部を有する、請求項1に記載の密封構造。
【請求項3】
前記ハウジング凸部は、前記デフレクタ凸部に対して内周側に配置されるとともに、その内周面に、先端に向かうにしたがって拡径する傾斜部を有する、請求項1又は2に記載の密封構造。
【請求項4】
前記ハウジング凸部は、その外周面に凹部を有する、請求項1又は2に記載の密封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスファー装置に密封装置を設けることで、潤滑維持を図りつつ異物侵入の防止を図った密封構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された密封装置は、ハウジングに取り付けられる密封装置本体と、軸に取り付けられるデフレクタと、を有する。密封装置本体は、軸に摺接するシールリップと、シールリップよりも外部空間側でデフレクタに摺接するサイドリップと、を有し、サイドリップによって、異物がシールリップにまで到達することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シールリップだけでなくサイドリップも軸に対して摺接させると、摺動抵抗が大きくなりやすかった。また、サイドリップを省略すると、異物の侵入によってシールリップが摩耗し、密封性が低下してしまう虞がある。即ち、低トルク化と耐異物性とを両立させることは困難であった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、異物の侵入を抑制しつつ低トルク化することができる密封構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る密封構造は、貫通孔を有するハウジングと、前記貫通孔に挿通される軸部と、の間を密封装置によって密封する密封構造であって、前記密封装置は、前記貫通孔の内周面に固定されるとともに前記軸部の外周面に摺接する密封装置本体と、該密封装置本体よりも外部空間側において前記軸部に接続されて外周側に向かって延びる環状のデフレクタと、を有し、前記デフレクタは、前記ハウジングに向かって突出するデフレクタ凸部を有し、前記ハウジングは、前記デフレクタと対向する対向面に、該デフレクタに向かって突出するハウジング凸部を有し、前記ハウジングと前記デフレクタとが互いに非接触であるとともに、前記デフレクタ凸部と前記ハウジング凸部とが軸線の方向において互いに重なり合う重なり部を形成する。
【0007】
本発明の一態様に係る密封構造において、前記デフレクタ凸部及び前記ハウジング凸部は、互いに対向する面に、前記軸線の方向に沿って延びる軸線延在部を有する。
【0008】
本発明の一態様に係る密封構造において、前記ハウジング凸部は、前記デフレクタ凸部に対して内周側に配置されるとともに、その内周面に、先端に向かうにしたがって拡径する傾斜部を有する。
【0009】
本発明の一態様に係る密封構造において、前記ハウジング凸部は、その外周面に凹部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る密封構造によれば、異物の侵入を抑制しつつ低トルク化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る密封構造の断面図である。
【
図2】本発明の変形例1に係る密封構造が形成されるハウジング及び軸部材の断面図である。
【
図3】本発明の変形例2に係る密封構造が形成されるハウジング及び軸部材の断面図である。
【
図4】本発明の変形例3に係る密封構造が形成されるハウジング及び軸部材の断面図である。
【
図5】本発明の実施例及び比較例における水の通過量の実験結果を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施例における水の通過量の実験結果を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施例における水の通過量の実験結果を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施例における水の通過量の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る密封構造1の断面図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る密封構造1は、貫通孔21を有するハウジング2と、貫通孔21に挿通される軸部3と、の間を密封装置4によって密封するものである。密封装置4は、貫通孔21の内周面に固定されるとともに軸部3の外周面31に摺接する密封装置本体41と、密封装置本体41よりも外部空間S2側において軸部3に接続されて外周側に向かって延びる環状のデフレクタ42と、を有する。デフレクタ42は、ハウジング2に向かって突出するデフレクタ凸部422を有する。ハウジング2は、デフレクタ42と対向する位置に、デフレクタ42に向かって突出するハウジング凸部23を有する。ハウジング2とデフレクタ42とが互いに非接触であるとともに、デフレクタ凸部422とハウジング凸部23とが軸線xの方向において互いに重なり合う重なり部5を形成する。
【0014】
密封構造1は、車両の駆動系装置や車輪軸受装置等において泥水や雨水、ダスト等の異物の侵入を図るとともに、オイルやグリス等の密封対象物の漏出を抑制するためのものである。本実施の形態では、密封構造1は、トランスファー装置100に採用されるものとする。トランスファー装置100は、貫通孔21を有するハウジング2と、貫通孔21に挿通されるとともに軸線x周りに回転する軸部3と、を備える。ハウジング2は、その内側に密封対象空間S1を形成し、その外側の空間(大気空間)が外部空間S2となる。
【0015】
以下、説明の便宜上、軸部3の中心を通る回転軸である軸線xの方向において、矢印a(
図1参照)方向(密封対象空間S1に向かう方向)を一方側とし、軸線x方向において矢印b(
図1参照)方向(外部空間S2に向かう方向)を他方側とする。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(
図1の矢印c方向)を外周側とし、軸線xに近づく方向(
図1の矢印d方向)を内周側とする。
【0016】
図1では、ハウジング2及び軸部3を模式的に示している。
図1では軸部3が1部品として描かれているが、軸部3はボス部等を有していてもよく、複数部品によって構成されていてもよい。即ち、軸線xを中心として回転する部品は、棒状の部品以外であっても、「軸部」に含まれることがある。また、デフレクタ42は、軸部3と別部品として構成されていてもよい。
【0017】
ハウジング2は、密封対象空間S1と外部空間S2とを区画するとともに貫通孔21が形成される壁部22を有する。壁部22には、貫通孔21を囲む位置に、外部空間S2側に突出したハウジング凸部23が形成されている。
【0018】
ハウジング凸部23は、軸線x方向に沿って延びる円筒状に形成され、その外周面が軸線xに沿って延びることで軸線延在部231となっており、その内周面232が、先端側に傾斜部233を有する。傾斜部233は、先端(外部空間S2側)に向かうにしたがって拡径するように傾斜している。
図1に示す例では、傾斜部233は断面直線状であるものとするが、凸状又は凹状となるように断面曲線状であってもよいし、凹凸を有していてもよい。
【0019】
軸部3は、貫通孔21に挿通されることで密封対象空間S1から外部空間S2に亘って延び、軸線x周りに回転することにより、円柱状(棒状)に形成された部分の外周面31が摺動面となる。
【0020】
密封装置4は、ハウジング2側に設けられる密封装置本体41と、軸部3側に設けられるデフレクタ42と、を別体に有する。
【0021】
密封装置本体41は、軸線xを中心とする環状の弾性体からなる弾性体部41Aと、軸線xを中心とする環状の金属製の補強環41Bと、を有する。弾性体部41Aは、例えば成形型を用いて架橋(加硫)成型によって成形されればよい。この架橋成型の際に、補強環41Bが成形型の中に配置され、弾性体部41Aが架橋接着により補強環41Bに接着され、弾性体部41Aが補強環41Bと一体的に成形されればよい。
【0022】
弾性体部41Aを構成する弾性体は、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムであればよい。弾性体部41Aは、シールリップ411と、ダストリップ412と、を有する。尚、
図1では弾性体部41Aにサイドリップ413が形成されているが、サイドリップ413は形成されていなくてもよい。
【0023】
シールリップ411は、内周側に向かって延び、軸部3の外周面31に接触する。即ち、軸部3が回転する際、シールリップ411が外周面31に摺接するようになっている。尚、シールリップ411を外周面31に押圧するためにガータスプリング等を設けてもよい。
【0024】
ダストリップ412は、シールリップ411よりも外部空間S2側に形成された部分であり、その先端部が外周面31に接触し、シールリップ411側に外部から泥水や雨水、ダスト等の異物が侵入することを抑制する。
【0025】
このような密封装置本体41は、ハウジング2の貫通孔21内に嵌合することによりハウジング2に固定される。即ち、軸部3が回転した際に密封装置本体41は連れ回らないようになっている。
【0026】
デフレクタ42は、密封装置本体41よりも外部空間S2側において軸部3に接続され、外周側に向かって延びることで円環状に形成されている。デフレクタ42の外径は貫通孔21の内径よりも大きく、軸線x方向において外部空間S2側から見て、デフレクタ42によって貫通孔21が覆われるようになっている。
【0027】
デフレクタ42は、円環状の板部421と、板部421の外周部から密封対象空間S1側に向かって突出したデフレクタ凸部422と、を有して断面L字状に形成されている。デフレクタ凸部422は、軸線x方向に沿って延びる円筒状に形成され、その内周面が軸線xに沿って延びることで軸線延在部423となっている。
【0028】
ここで、ハウジング凸部23とデフレクタ凸部422との関係について具体的に説明する。まず、ハウジング凸部23は、デフレクタ凸部422に対して内周側に配置されている。これにより、ハウジング凸部23の外周面と、デフレクタ凸部422の内周面と、が対向し、これらの対向する面に、軸線延在部231,423が形成されている。
【0029】
ハウジング凸部23の外周面である軸線延在部231は、デフレクタ凸部422の内周面である軸線延在部423と離隔しており、径方向におけるこれらの間隔をG1とする。また、ハウジング凸部23の先端部234は、板部421と離隔しており、軸線x方向におけるこれらの間隔をG2とする。このように、ハウジング2とデフレクタ42とが互いに非接触となっている。
【0030】
軸線延在部231,423同士が径方向に対向することにより、ハウジング凸部23とデフレクタ凸部422とが軸線x方向において重なり合う重なり部5が形成される。即ち、軸線x方向における重なり部5の重なり長さをL1とする。
【0031】
上記の重なり長さL1は、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。また、上記の間隔G1は、1mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましい。
【0032】
上記のようにハウジング凸部23とデフレクタ凸部422との重なり部5が形成されていることで、外部空間S2から密封対象空間S1に向かって異物が侵入しようとする際に、ラビリンス構造として機能する。即ち、デフレクタ凸部422の先端部424と壁部22との間の間隙部6から侵入した異物は、軸線x方向の一方側に向かって重なり部5を通過した後に、軸線x方向の他方側に向かわなければ、密封装置本体41に到達しない。即ち、異物は、シールリップ411及びダストリップ412に到達するためには、軸線x方向において往復するように移動しなければならず、異物の侵入が抑制されている。
【0033】
尚、「ハウジング凸部」及び「デフレクタ凸部」は、ハウジング又はデフレクタにおける他の部位に対して相対的に凸状になっていればよい。例えば、デフレクタ凸部がハウジングの凹部と嵌合するような形態の場合、ハウジングには、凹部と隣り合う位置に、凹部の底面よりも突出した凸部が形成される。即ち、ハウジング及びデフレクタの凹凸同士が嵌合する(即ち重なり部を形成する)場合には、ハウジング凸部及びデフレクタ凸部の両方が形成されることとなる。
【0034】
このように、本発明の実施の形態に係る密封構造1によれば、ハウジング2とデフレクタ42とが非接触であることで、サイドリップを摺接させて異物の侵入を抑制する構成と比較して、低トルク化することができる。このとき、デフレクタ凸部422とハウジング凸部23とが重なり部5を形成することで、ラビリンス構造によって異物の侵入を抑制することができる。
【0035】
また、デフレクタ凸部422及びハウジング凸部23が互いに対向する面に軸線延在部231,423を有することで、軸線xの重なり長さL1を確保することができ、異物の侵入をさらに抑制しやすくすることができる。
【0036】
また、ハウジング凸部23の内周面232が傾斜部233を有することで、異物の侵入をさらに抑制しやすくすることができる。
【0037】
尚、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、ハウジング凸部23の内周面232が傾斜部233を有するものとしたが、変形例1,2として
図2,3にそれぞれ示すように、傾斜部が形成されない構成としてもよい。尚、変形例1,2では、ハウジング凸部23の寸法が異なることにより、重なり長さL1が異なっている。
【0038】
また、上記の実施の形態では、ハウジング凸部23の外周面が軸線延在部231となっているものとしたが、例えば
図4に変形例3として示すように、ハウジング凸部23の外周面235に凹部236が形成されていてもよい。凹部236は、軸線x周りの周方向に連続した周溝であってもよいし、周方向において途切れたものであってもよい。このような凹部236を設けることにより、凹部236に異物をトラップすることができ、異物の侵入をさらに抑制しやすくすることができる。
【0039】
また、ハウジング凸部及びデフレクタ凸部の互いに対向する面のうち一方にのみ軸線延在部が形成されていてもよいし、両方に形成されていなくてもよい。即ち、ハウジング凸部及びデフレクタ凸部は、径方向に対向する部分を有して重なり部を形成していればよく、この対向する部分が軸線x方向に沿っていなくてもよい。
【0040】
また、上記の実施の形態では、ハウジング凸部23がデフレクタ凸部422に対して内周側に配置されるものとしたが、ハウジング凸部がデフレクタ凸部に対して外周面側に配置されてもよい。
【0041】
また、上記の実施の形態及び変形例1~3に示した各部の形状は、適宜に組み合わせ可能なものであり、例えば、変形例1,2のように傾斜部が形成されない場合に変形例3のような凹部を採用してもよい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係密封構造に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0043】
[実施例]
以下、本発明の実施例及び比較例についての実験結果を示す。
【0044】
[重なり長さについて]
重なり長さL1を1mm、3mm、5mmとした3つの実施例と、重なり部が形成されない(重なり長さL1が0mm)比較例と、について、水の通過量を測定した。実験では、軸部3を所定の速度で回転させつつ、間隙部6に水を供給し、密封対象空間S1に到達した(即ち通過した)水の量を測定した。軸部3の回転速度0rpm,500rpm,750rpm,1000rpmのそれぞれにおいて、上記3つの実施例及び比較例について実験を行った。この結果を
図5に示す。
【0045】
図5の横軸は重なり長さL1であり、縦軸は通過した水の量である。軸部3の回転速度が高くなるほど、水が通過しにくいという結果が得られた。さらに、750rpm以上において、重なり長さL1が長いほど、水が通過しにくいという結果が得られた。
【0046】
[凸部同士の間隔について]
間隔G1の大きさを0.4mm,0.6mm,0.8mm、1.0mmとした4つの実施例について、上記同様に水の通過量を測定した。尚、上記の実施の形態と同様に、ハウジング凸部23及びデフレクタ凸部422に軸線延在部231,423が形成された密封構造を用いた。軸部3の回転速度は、0rpm,400rpm,500rpm,700rpmとした。この結果を
図6に示す。
【0047】
図6の横軸は径方向の間隔G1であり、縦軸は通過した水の量である。間隔G1が小さいほど水が通過しにくいという結果が得られた。特に、500rpm以上において、間隔G1を小さくする(0.8mm以下にする)ことによって水の通過量が極めて少なくなることが分かった。
【0048】
[軸線方向の間隔について]
間隔G2の大きさを1~10mmの間で変化させた複数の実施例について、上記同様に水の通過量を測定した。軸部3の回転速度は、0rpm,500rpm,700rpmとした。この結果を
図7に示す。
【0049】
図7の横軸は径方向の間隔G2であり、縦軸は通過した水の量である。700rpmにおいて、間隔G2が大きいほど水が通過しにくいという結果が得られた。0rpm及び500rpmでは、間隔G2が変化しても通過した水の量はほぼ一定であった。
【0050】
[凸部の形状について]
凸部の形状が異なる4つの実施例について、上記同様に水の通過量を測定した。条件1(condition1)は、
図2の変形例1に対応したものであり、間隔G2が1mmとなっている。条件2(condition2)は、
図3の変形例2に対応したものであり、間隔G2が10mmとなっている。条件3(condition3)は、
図1の実施の形態に対応したものであり、傾斜部233を有し、間隔G2が1mmとなっている。条件4(condition4)は、
図4の変形例3に対応したものであり、傾斜部233及び凹部236を有し、間隔G2が1mmとなっている。各条件について、軸部3の回転速度を0~1000の間で変化させ、実験を行った。この結果を
図8に示す。
【0051】
図8の横軸は軸部3の回転速度であり、縦軸は通過した水の量である。条件1~4のいずれにおいても、回転速度が高くなるほど水が通過しにくい傾向が得られたが、水の通過量が急激に減少する回転速度には差が見られた。まず、傾斜部233及び凹部236を有する条件4では、最も低い回転速度(400rpm近傍)において、水の通過量が急激に減少した。傾斜部233を有する条件3では、2番目に低い回転速度(500rpm近傍)において、水の通過量が急激に減少した。傾斜部233及び凹部236のいずれも有しておらず間隔G2が10mmの条件2では、3番目に低い回転速度(700rpm近傍)において、水の通過量が急激に減少した。傾斜部233及び凹部236のいずれも有しておらず間隔G2が1mmの条件1では、最も高い回転速度(1000rpm近傍)において、水の通過量が急激に減少した。
【符号の説明】
【0052】
1…密封構造、2…ハウジング、21…貫通孔、22…壁部、23…ハウジング凸部、231…軸線延在部、232…内周面、233…傾斜部、234…先端部、235…外周面、236…凹部、3…軸部、31…外周面、4…密封装置、41…密封装置本体、411…シールリップ、412…ダストリップ、413…サイドリップ、41A…弾性体部、41B…補強環、42…デフレクタ、421…板部、422デフレクタ凸部、423…軸線延在部、424…先端部、5…重なり部、6…間隙部、100…トランスファー装置、S1…密封対象空間、S2…外部空間、L1…重なり長さ、G1,G2…間隔