(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056553
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】可動シンカーを備える横編機
(51)【国際特許分類】
D04B 15/06 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
D04B15/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163531
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(72)【発明者】
【氏名】島崎 宜紀
(72)【発明者】
【氏名】横貫 翔一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】東 益弘
【テーマコード(参考)】
4L054
【Fターム(参考)】
4L054AA01
4L054KA23
(57)【要約】
【課題】 先行引き込み時でも、突起が固定シンカーと可動シンカーとの間に割り込む状態を維持することが可能な、可動シンカーを備える横編機を提供する。
【解決手段】 図に示す動作状態は、編糸受け部2aが編目ループ20に対して不作用で、突起2bが編目ループ20と固定シンカー13との間に割り込ませた状態を維持するように駆動されている、先行引き込み時の状態である。先行引き込みの前には、編目ループ20を編糸受け部2aが押し下げている状態を、ばね付勢で維持している。先行引き込み後、編糸受け部2aによる編目ループ20の押し下げを再開する。突起2bを編糸と固定シンカー13との間から一旦抜くことがなく、固定シンカー13と可動シンカー1との間への編糸の噛み込みを確実に防止することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って複数の針溝が並設される針床と、
各針溝内に収容されて、フックを有する先端を歯口に進退させて歯口上方から給糸される編糸で編地を編成することが可能な編針と、
針床の歯口に臨む先端で、長手方向に並ぶ編針間に固定して設けられる固定シンカーと、
先端を固定シンカーと編針との間で、歯口に進入させることが可能で、
固定シンカーと編針との間に形成される編目ループを歯口下方に押下げる作用が可能な編糸受け部、および
編糸受け部に歯口から退出する方向で隣接し、編糸受け部が編目ループを押下げる作用の方向に突出するように設けられ、編糸受け部が作用する編目ループと固定シンカーとの間に割り込ませる状態となる突起を有する可動シンカーとを含む、
可動シンカーを備える横編機において、
可動シンカーを、先端が歯口に進退するように駆動し、編糸受け部が編目ループに対して不作用で、突起が編目ループと固定シンカーとの間に割り込ませた状態を維持するように駆動可能な駆動機構を、
含むことを特徴とする可動シンカーを備える横編機。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記可動シンカーを、
前記編糸受け部が前記編目ループを押し下げる前記作用を行う作用位置と、
編糸受け部が編目ループを押し下げる作用を行わず、前記突起が編目ループと前記固定シンカーとの間から抜けた状態となる不作用位置と、とともに、
編糸受け部が編目ループを押し下げる作用を行わず、突起が編目ループと固定シンカーとの間に割り込む状態となる中間位置とにも、
切り替え可能である、
ことを特徴とする請求項1記載の可動シンカーを備える横編機。
【請求項3】
前記固定シンカーは、前記針床の前記歯口に臨む先端で、前記長手方向に挿通される歯口ワイヤを支持し、
前記突起は、歯口ワイヤより歯口側の位置で、前記編目ループと前記固定シンカーとの間に挿入される、
ことを特徴とする請求項1記載の可動シンカーを備える横編機。
【請求項4】
前記可動シンカーは、板状であり、
前記突起は、前記編針に臨む面で前記歯口側となる角が面取りされている、
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の可動シンカーを備える横編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機の編針間に配置される固定シンカーと編針との間に割り込み、先端に設ける編糸受け部で編目ループを歯口下方に押し下げることが可能な可動シンカーを備える横編機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、横編機は、針床の先端が臨む歯口に、編針の先端に設けるフックを進退させて編地を編成する。フックを歯口に進入させると、歯口上方から編糸がフックに給糸される。フックを歯口から針床に退出させると、編糸はフックで引き込まれ、フックによるニードルループと、編針間のシンカーによるシンカーループとで編目が形成される。シンカーとして可動シンカーを備える横編機では、形成された編目のループを歯口下方に押し下げる作用も行われる(たとえば、特許文献1参照)。横編機には、編針間にはシンカーループを形成するため固定シンカーが配置されるとともに、固定シンカーと編針との間に可動シンカーを備えるものもある(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2004/003275号公報
【特許文献2】特開2017-89033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2の可動シンカーは、ばねの付勢による揺動で先端を歯口に進入させ、先端に設ける編糸受け部で編目ループを歯口下方に押し下げる作用を行う。編糸をフックで引き込んで新たな編目を形成する際に、可動シンカーは編糸受け部が歯口から退出するように駆動されて、編目ループへの編糸受け部の作用は、一旦解除される。編糸をフックで引き込んで新たな編目が編成されて度決めが行われると、可動シンカーは先端を歯口に進入させ、編糸受け部で編目ループを押し下げる。
【0005】
特許文献1の第4ページ第12行目から第5ページ第13行目には、新たな編目の編成を行う前に、先行引き込みを行うことが記載されている。先行引き込みは、編目ループを編糸受け部から一旦解放した状態で、フックを引き込んで、編目ループを張った状態にする。編目ループの引き締め後に編糸受け部で編目ループを押し下げる作用を再開させることで、張った状態の編目ループを押し下げ、新たな編目形成のためにフックを歯口に進入させて、後続する編目ループを編成することも確実に行うことができる。
【0006】
特許文献2の可動シンカーは、編目ループの押し下げ時、編糸の糸張力により撓んで、固定シンカーとの間に隙間が生じることがある。この隙間に編糸が噛み込まれるおそれがあるので、編糸受け部に対して歯口から離れる側の位置に押し下げ方向に突出する突起を設ける。突起は、編目ループの押し下げの作用時、編糸と固定シンカーとの間に割り込ませた状態となって、編糸の噛み込みを防止する。しかしながら、先行引き込みの前に編糸受け部を編目ループに対して不作用にするために編糸受け部を歯口から一旦退出させると、突起も編糸と固定シンカーとの間から一旦抜けてしまう。先行引き込みは、編目ループを引き締めることで、編針のフックが引き込む編糸と固定シンカーとの間の角度を小さくする。編糸と固定シンカーとの間の角度が小さいと、先行引き込み後に編糸受け部で編目ループを押し下げる作用を再開させる際に、突起を編糸と固定シンカーとの間に割り込ませることが難しくなる。割り込みに失敗すると、可動シンカーと固定シンカーとの間に、編糸を噛み込むおそれが生じる。
【0007】
本発明の目的は、先行引き込み時でも、突起が固定シンカーと可動シンカーとの間に割り込む状態を維持することが可能な、可動シンカーを備える横編機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、長手方向に沿って複数の針溝が並設される針床と、
各針溝内に収容されて、フックを有する先端を歯口に進退させて歯口上方から給糸される編糸で編地を編成することが可能な編針と、
針床の歯口に臨む先端で、長手方向に並ぶ編針間に固定して設けられる固定シンカーと、
先端を固定シンカーと編針との間で、歯口に進入させることが可能で、
固定シンカーと編針との間に形成される編目ループを歯口下方に押下げる作用が可能な編糸受け部、および
編糸受け部に、歯口から退出する方向で隣接し、編糸受け部が編目ループを押下げる作用の方向に突出するように設けられ、編糸受け部が作用する編目ループと固定シンカーとの間に割り込ませる状態となる突起を有する可動シンカーとを含む、
可動シンカーを備える横編機において、
可動シンカーを、先端が歯口に進退するように駆動し、編糸受け部が編目ループに対して不作用で、突起が編目ループと固定シンカーとの間に割り込ませた状態を維持するように駆動可能な駆動機構を、
含むことを特徴とする可動シンカーを備える横編機である。
【0009】
また本発明で、前記駆動機構は、前記可動シンカーを、
前記編糸受け部が前記編目ループを押し下げる前記作用を行う作用位置と、
編糸受け部が編目ループを押し下げる作用を行わず、前記突起が編目ループと前記固定シンカーとの間から抜けた状態となる不作用位置と、とともに、
編糸受け部が編目ループを押し下げる作用を行わず、突起が編目ループと固定シンカーとの間に割り込む状態となる中間位置とにも、
切り替え可能である、
ことを特徴とする。
【0010】
また本発明で、前記固定シンカーは、前記針床の前記歯口に臨む先端で、前記長手方向に挿通される歯口ワイヤを支持し、
前記突起は、歯口ワイヤより歯口側の位置で、前記編目ループと前記固定シンカーとの間に挿入される、
ことを特徴とする。
【0011】
また本発明で、前記可動シンカーは、板状であり、
前記突起は、前記編針に臨む面で前記歯口側となる角が面取りされている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動機構は、可動シンカーを、編糸受け部が編目ループに対して不作用で、突起が編目ループと固定シンカーとの間に割り込ませた状態を維持するように駆動可能である。このような駆動を先行引き込み時に行うことで、突起を編糸と固定シンカーとの間から一旦抜くことがなく、固定シンカーと可動シンカーとの間への編糸の噛み込みを確実に防止することができる。
【0013】
また本発明によれば、編目形成時には、駆動機構が可動シンカーを不作用位置に切り替えるようにして、度決めで大きいニードルループを形成するために、編糸の給糸を受けたフックを大きく引き込む際にも、編糸が突起と干渉しないようにすることができる。これによって、度決めを正確に行うことができる。度決め後に、フックを歯口側に戻すと、編目ループが弛み、駆動機構が可動シンカーを作用位置に切り替えても、固定シンカーと編糸との間に突起を容易に割り込ませることができる。
【0014】
また本発明によれば、歯口ワイヤと可動シンカーとの間に編糸が挟まれることを、突起で防止することができる。
【0015】
また本発明によれば、突起は、編糸と接触したり、接触した状態で摺動したりする場合がある。そのような場合、突起の角との摩擦で編糸に負担がかかる。突起の角を面取りすることで、編糸の負担を軽減することができる。突起の先端が細くなるように面取りすれば、突起の編糸と固定シンカーとの間への割り込みを安定に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例である可動シンカー1を備える横編機10の一つの動作状態を示す簡略化した左側面断面図である。
【
図2】
図2は、可動シンカー1を備える横編機10の他の動作状態を示す簡略化した左側面断面図である。
【
図3】
図3は、可動シンカー1を備える横編機10のさらに他の動作状態を示す簡略化した左側面断面図である。
【
図4】
図4は、可動シンカー1の形状を示す可動シンカー1としての正面である。
【
図5】
図5は、可動シンカー1を備える横編機10の構成を示す左側面断面図である。
【
図6】
図6は、可動シンカー1を備える横編機10で、切り替えカムによる可動シンカー1が進退する位置の切り替えと、編針の編成駆動との関係を示す軌跡である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1から
図6は、本発明の一実施例である可動シンカー1を備える横編機10の構成および動作を示す。各図で対応する部分は,同一の参照符を付して示し、重複する説明を省略する場合がある。また説明の便宜上、図示を省略する部分がある。
【実施例0018】
図1は可動シンカー1の先端2に設ける突起2bのみの割り込み作用時、
図2は先端2の編糸受け部2aによる編目ループ20の押し下げ作用時、および
図3は編糸受け部2aおよび突起2bの不作用時をそれぞれ示す。横編機10は、歯口11に臨む一辺が長手方向となる針床12を含む。以下、「長手方向」は、針床12の長手方向について示すものとする。
図1は、長手方向を、紙面に垂直な方向として示す。針床12は、歯口中央面11aに関して、基本的に面対称となるように、前後に一対配置されるけれども、前の針床12のみを図示する。針床12には、長手方向に沿って複数の針溝12aが並設される。針溝12aは、矩形状の基板12bに一定間隔で立設されるニードルプレート12cの間に形成される。ニードルプレート12cの歯口11側の先端には、固定シンカー13が固定して設けられる。編針14は、各針溝12a内に収容されて、フック14aを有する先端を歯口11に進退させて歯口11上方から給糸される編糸で編地を編成することが可能である。編針14は、べら針であり、フック14aをべら14bで開閉する。編針14としては、べら針ばかりでなく、スライダーでフックを開閉する複合針などを使用する場合でも、本発明を同様に適用することができる。いずれにしても、横編機10は、針床12と複数の編針14と固定シンカー13とを含む。
【0019】
横編機10は、可動シンカー1を備える。可動シンカー1は、長手方向に関し、固定シンカー13の側面の一方と編針14との間に配置され、側面の他方と編針14との間には配置されない。本実施例では、前の針床12で、固定シンカー13の紙面の手前側の編針14と固定シンカー13の手前側の側面との間に可動シンカー1が配置される。図示を省略している後の針床12の可動シンカー1は、後の針床12の固定シンカー13に対して紙面の奥側の側面と、さらに奥側の編針14との間に配置される。
【0020】
可動シンカー1は、先端2を、配置の両側となる固定シンカー13と編針14との間で歯口11に進入させることができる。可動シンカー1は、先端2に、編糸受け部2aおよび突起2bを有する。編糸受け部2aは、歯口11に進入させると、固定シンカー13と編針14のフック14aとの間に形成される編目ループ20を歯口11下方に押し下げる作用が可能である。突起2bは、編糸受け部2aに歯口11から退出する方向で隣接し、編糸受け部2aが編目ループ20を押下げる作用の方向に突出する。可動シンカー1は、突起2bを、編糸受け部2aが作用する編目ループ20と固定シンカー13との間に割り込ませる状態とすることができる。固定シンカー13は、針床12の歯口11に臨む先端で、長手方向に挿通される歯口ワイヤ15を支持する。歯口ワイヤ15は、編針14のフック14aで編糸を引き込んで新たな編目を形成する際に、旧編目をノックオーバーさせ易くする機能を有する。突起2bは、歯口ワイヤ15より歯口11側の位置で、紙面に垂直な方向に関して編目ループ20の奥側と固定シンカー13手前側との間に挿入される。固定シンカー13は、針床12の基板12bに対し、長手方向に挿通される固定ワイヤ16aと、
図5に示す固定ワイヤ16bとで固定される。
【0021】
図1に示す動作状態は、編糸受け部2aが編目ループ20を押し下げる作用を行わずに、突起2bが編目ループ20と固定シンカー13との間に割り込ませた状態である。
図2に示す動作状態は、編糸受け部2aが編目ループ20を押下げる作用を行う状態である。
図3に示す動作状態は、編糸受け部2aが編目ループ20を押下げる作用を行わず、突起2bが編目ループ20と固定シンカー13との間から抜けた状態である。
【0022】
図4は、可動シンカー1を示す。可動シンカー1は、先端2が歯口11に進退するように揺動させることが可能である。可動シンカー1は、支承部3の円弧状の外周を、ニードルプレート12cに設ける薄肉部から支持されて揺動する。揺動の駆動は、受圧腕4への押圧での不作用の方向と、ばね受け5への線ばね6による付勢での作用の方向とで行われる。可動シンカー1は、板状の鋼板など、金属素材からプレス加工で形成され、線ばね6を一体化することも可能である。突起2bは、編針14に臨む面で歯口11側となる角が斜面2cとなるように、面取りされている。面取りの状態は、A-A断面として拡大して示す。突起2bは、編糸と接触したり、接触した状態で摺動したりする場合がある。そのような場合、突起2bの角との摩擦で編糸に負担がかかる。突起2bの角を面取りすることで、斜面2cが編糸と接触したり摺動したりするようになり、編糸の負担を軽減することができる。突起2bの先端が細くなるように面取りすれば、突起2bの編糸と固定シンカー13との間への割り込みを安定に行うことができる。
【0023】
図5は、可動シンカー1を備える横編機10の構成を示す。可動シンカー1の支承部3は、ニードルプレート12cの薄肉部12dで揺動可能に支持される。基板12bとニードルプレート12cとを組立て、長手方向に貫通する組立ワイヤ12e,12fで固定すると針床12となる。ニードルプレート12cは、長手方向に貫通する位置決めワイヤ12gおよび帯金12hも支持する。位置決めワイヤ12gは、図示を省略しているスペーサーなどの位置決めに使用する。帯金12hは、長手方向に配列されるニードルプレート12cを一体化して固定する。線ばね6は、
図5の上側に示す一端をニードルプレート12cの薄肉部12dで支持される。線ばね6で
図5の下側に示す他端は、可動シンカー1を、先端2が歯口11に進入して、編糸受け部2aが編目ループ20を押し下げる方向に付勢する。針床12上で、キャリッジ17が長手方向に往復走行する。キャリッジ17には、可動シンカー1が進退する位置を切り替える切り替えカム18と、編針14を駆動する編成カム19とが搭載される。切り替えカム18は、出没可能な中間位置カム18aおよび不作用位置カム18bを備える。中間位置カム18aおよび不作用位置カム18bを出没可能にするのは、キャリッジ17の走行方向が右行きか左行きかで、先行引き込みと後行の度決めとが切り替わる必要があるため、作用させるカムも切り替えるからである。
図5は、キャリッジ17が紙面の奥側に走行する左行きで、切り替えカム18の先行側の中間位置カム18aが突出して不作用位置カム18bが没入している状態を示す。なお、切り替えカム18の後行側では、中間位置カム18aが没入し、不作用位置カム18bが突出する。
【0024】
図6は、可動シンカー1を備える横編機10で、切り替えカム18による可動シンカー1が進退する位置の切り替えと、編成カム19による編針14の編成駆動との関係を示す。キャリッジ17が
図6に矢印で示す左方に走行する場合を想定し、可動シンカー1の進退は、受圧腕4の軌跡として示し、編針14の編成駆動の結果は、編針14を駆動するためのバットが編成カム19によって駆動された軌跡として示す。編成カム19は、間隔を空けて度山カム19a,19bを有し、度山カム19a,19b間にニードルレイジングカム19cおよびガイドカム19dを有する。これらのカムが編針14を駆動する際の制御を行うために、編針14の選針結果に応じて作用を受けるプレッサー群も設けられるけれども、図示は省略する。度山カム19a,19bは、度決め用の引き込みカム面19a1,19b1と、先行引き込み用の引き込みカム面19a2,19b2とを有する。編針14および可動シンカー1は、切り替えカム18および編成カム19に対し、
図6の右方に移動する。
【0025】
図6の右方に移動する編針14に対しては、まず、度山カム19aの引き込みカム面19a2による先行引き込みが行われる。先行引き込みの前には、編目ループ20を編糸受け部2aが押し下げている状態を、ばね付勢で維持している。先行引き込み時には、切り替えカム18の先行側の中間位置カム18aを突出させ、可動シンカー1の編糸受け部2aは編目ループ20に作用させないで、突起2bは編糸と固定シンカー13との間に割り込ませた状態を維持する。この状態の位相aは、
図1の動作状態に対応する。このような駆動を先行引き込み時に行うことで、突起2bを編糸と固定シンカー13との間から一旦抜くことがなく、固定シンカー13と可動シンカー1との間への編糸の噛み込みを確実に防止することができる。先行引き込みが終了した後の位相bでは、
図2の動作状態に対応し、編糸受け部2aで編目ループ20を押し下げる作用をすでに再開している。このような可動シンカー1の作用位置は、少なくともニードルレイジングカム19cによる編針14の上昇に続き、ガイドカム19dの頂点まで編針14を上昇させている間は継続させる。
【0026】
編針14は、ニードルレイジングカム19cおよびガイドカム19dで歯口11に進入するように駆動され、フック14aが係止していた編目ループ20は、フック14aからクリアされて針幹側に相対移動する。編針14は、ガイドカム19dの頂点まで上昇した後、ガイドカム19dで下降する。ガイドカム19dで編針14を下降させると、可動シンカー1の受圧腕4は、切り替えカム18の後行側で突出している不作用位置カム18bからの押圧を受け、編糸受け部2aが編目ループ20を押し下げる作用を行わないで、可動シンカー1は突起2bも固定シンカー13と編糸との間から抜ける不作用位置に切り替えられる。この状態の位相cでは、度山カム19bの引き込みカム面19b1で、フック14aに給糸を受けた編針14を引き込んで、新たな編目を形成する状態であり、
図3の動作状態に対応する。なお、可動シンカー1は、不作用位置でも突起2bが固定シンカー13と編糸との間から抜けないようにしてもよい。
【0027】
以上のように、切り替えカム18は、可動シンカー1を、固定シンカー13と編針14との間で歯口11に進退させるように駆動し、編糸受け部2aが編目ループ20に対して不作用で、突起2bが編目ループ20と固定シンカー13との間に割り込ませた状態を維持するように駆動可能な駆動機構として動作する。また、編目形成時には、可動シンカー1を不作用位置に切り替えるようにして、大きいニードルループを形成するための度決めを行うために、編糸の給糸を受けたフック14aを大きく引き込む際にも、編糸が突起2bと干渉しないようにすることができる。すなわち、切り替えカム18は、可動シンカー1を、作用位置と中間位置と不作用位置とに切り替え可能である。作用位置では、編糸受け部2aが編目ループ20を押し下げる作用を行う。不作用位置では、編糸受け部2aが編目ループ20を押し下げる作用を行わず、突起2bが編目ループ20と固定シンカー13との間から抜けた状態となる。中間位置では、編糸受け部2aが編目ループ20を押し下げる作用を行わず、突起2bが編目ループ20と固定シンカー13との間に割り込む状態となる。突起2bを面取りすれば、突起2bの編糸と固定シンカー13との間への割り込みを安定に行うことができる。また、突起2bの先端が細くなるように面取りしている場合、突起2bを抜かないでも、大きなニードルループ形成のための度決めでも編糸が突起2bと干渉しない可能性がある。このような場合、可動シンカー1は、突起2bを抜かずに、作用位置と不作用位置とを切り替え、先行引き込み時には不作用にすればよい。なお、可動シンカー1の歯口11に進入する方向の駆動はばね付勢で行っているけれども、ばね付勢は行わず、カムやシンカージャックで駆動してもよい。さらに、シンカージャックによる駆動に、ばねによる付勢を組合せてもよい。