(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056568
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240416BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163570
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木田 幸謙
(72)【発明者】
【氏名】吉賀 謙祐
(72)【発明者】
【氏名】北仲 史門
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅史
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B087DE06
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】車両衝突時にシートベルト等からヒンジカバーに入力される荷重によってリクライナのロックが解除されることを防止する。
【解決手段】車両用シート10は、シートクッション12の側部に配置され、シートクッション12とシートバック16との間に設けられたリクライナ46のリクライナ軸50が貫通した開口70を有するヒンジカバー68と、ヒンジカバー68に対してシート幅方向外側に配置され、リクライナ軸50回りに回転されることでリクライナ46のロックを解除するリクラレバーと、を備えている。ヒンジカバー68の開口70の縁部の一部には、当該縁部の他の部位よりもリクライナ軸50側へ張り出し、リクライナ軸50に対して近接して対向した対向部70A、70Bが設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの側部に配置され、前記シートクッションとシートバックとの間に設けられたリクライナの軸が貫通した開口を有するヒンジカバーと、
前記ヒンジカバーに対してシート幅方向外側に配置され、前記軸回りに回転されることで前記リクライナのロックを解除するリクラレバーと、
を備え、
前記開口の縁部の一部には、前記縁部の他の部位よりも前記軸側へ張り出し、前記軸に対して近接して対向した対向部が設けられている車両用シート。
【請求項2】
前記対向部と前記軸とが互いに面で対向している請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記対向部は、前記軸に対して少なくともシート上方側及びシート後方側から対向している請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された車両用シートは、回転操作されることでリクライニング装置(リクライナ)のロックを解除するリクライニングレバー(リクラレバー)と、リクライニングレバーに対して車両内側でシートクッションの側部に設けられたリクライニングカバー(ヒンジカバー)と、乗員が装着したときにリクラレバーに当接する位置に配置されるシートベルトと、リクラレバーから車両内側に突出した凸部と、ヒンジカバーの車両外側の面に形成された凹部と、を備えている。車両が衝突した際には、リクラレバーに対してシートベルトから荷重が入力されることにより、リクラレバーの凸部がヒンジカバーの凹部に係合し、リクラレバーの回転が規制される。これにより、リクライナのロックが不用意に解除されてしまうことを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術では、車両衝突時にシートベルト等からヒンジカバーに入力される荷重によって、リクライナのロックが解除されることについては考慮されていない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両衝突時にシートベルト等からヒンジカバーに入力される荷重によってリクライナのロックが解除されることを防止できる車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートは、シートクッションの側部に配置され、前記シートクッションとシートバックとの間に設けられたリクライナの軸が貫通した開口を有するヒンジカバーと、前記ヒンジカバーに対してシート幅方向外側に配置され、前記軸回りに回転されることで前記リクライナのロックを解除するリクラレバーと、を備え、前記開口の縁部の一部には、前記縁部の他の部位よりも前記軸側へ張り出し、前記軸に対して近接して対向した対向部が設けられている。
【0007】
第1の態様の車両用シートによれば、シートクッションの側部に配置されたヒンジカバーは、シートクッションとシートバックとの間に設けられたリクライナの軸が貫通した開口を有している。ヒンジカバーに対してシート幅方向外側に配置されたリクラレバーは、リクライナの軸回りに回転されることでリクライナのロックを解除する。上記開口の縁部の一部には、当該縁部の他の部位よりもリクライナの軸側へ張り出し、当該軸に対して近接して対向した対向部が設けられている。この車両用シートでは、車両衝突時にシートベルト等からヒンジカバーに荷重が入力され、ヒンジカバーがリクライナ軸に対して径方向に変位した場合に、上記対向部が上記軸と接触するように構成することができる。この接触によりヒンジカバーの変位を制限することができるので、ヒンジカバーの変位によってリクライナのロックが不用意に解除されることを防止可能となる。
【0008】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様において、前記対向部と前記軸とが互いに面で対向している。
【0009】
第2の態様の車両用シートでは、ヒンジカバーの開口の縁部の一部に設けられた対向部とリクライナの軸とが互いに面で対向している。このため、ヒンジカバーがリクライナの軸に対して径方向に変位した場合、上記対向部と上記軸とを互いに面で接触させることができる。これにより、ヒンジカバーの変位を良好に制限することが可能となる。
【0010】
第3の態様の車両用シートは、第1の態様又は第2の態様において、前記対向部は、前記軸に対して少なくともシート上方側及びシート後方側から対向している。
【0011】
第3の態様の車両用シートによれば、ヒンジカバーの開口の縁部の一部に設けられた対向部が、リクライナの軸に対して少なくともシート上方側及びシート後方側から対向している。このため、車両衝突時にシートベルトからの荷重によってヒンジカバーがシート下方側かつシート前方側へ変位した場合に、上記対向部が上記軸と接触する。これにより、シートベルトからの荷重によるヒンジカバーの変位を良好に制限することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートによれば、車両衝突時にシートベルト等からヒンジカバーに入力される荷重によってリクライナのロックが解除されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る車両用シートを示す側面図である。
【
図2】実施形態に係る車両用シートにおけるリクライナ周辺の構成を示す側面図である。
【
図3】実施形態に係る車両用シートにおけるリクライナ周辺の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1~
図3を参照して本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、LH及びUPは、車両用シート10の前方、左方及び上方をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0015】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション12と、乗員の背部を支持するシートバック16と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト20とを備えている。シートクッション12は、周知のシートスライド機構22及びリフタ機構26を介して車体の床部(図示省略)と連結されている。シートバック16は、周知のリクライニング機構30を介してシートクッション12と連結されている。この車両用シート10の前後左右上下の方向は、車両の前後左右上下の方向と一致している。この車両用シート10は、車両の左フロントシートである。この車両用シート10が車両の右フロントシートである場合、本実施形態とは左右対称の構成となる。
【0016】
車両用シート10のシートクッション12に着座した乗員は、周知の3点式シートベルト装置72によって車両用シート10に拘束される。このシートベルト装置72は、シートクッション12の右方側に配置されたバックル74を含んで構成されている。図示は省略するが、このシートベルト装置72では、シートベルトの長手方向一端部が、車両のセンタピラーの下端部に設けられたリトラクタのスプールに係止され、シートベルトの長手方向他端部がシートクッション12の左方側で車体の床部に係止されている。シートクッション12に着座した乗員が、シートベルトの長手方向中間部に設けられたタングプレートをバックル74に連結すると、乗員がシートベルトを装着した状態となる。
【0017】
シートクッション12の前部の下方には、シートスライド機構22のロックを解除するためのスライドレバー24が設けられている。シートクッション12の左側部には、ヒンジカバー68と、リフタレバー28と、リクラレバー32とが設けられている。ヒンジカバー68、リフタレバー28及びリクラレバー32は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものである。ヒンジカバー68は、前後方向を長手とし且つ左右方向を厚さ方向とする長尺状をなしている。ヒンジカバー68の前後方向の長さは、シートクッション12の前後方向の長さと同等に設定されている。このヒンジカバー68によってシートスライド機構22、リフタ機構26及びリクライニング機構30が左方側から覆われている。
【0018】
リフタレバー28は、前後方向を長手とし且つ左右方向を厚さ方向とする長尺状をなしており、ヒンジカバー68の前後方向中央部に配置されている。リフタレバー28の後端部は、ヒンジカバー68の右方側(シート幅方向内側)においてリフタ機構26と連結されている。このリフタレバー28が上下に回動操作されることにより、車体の床部に対するシートクッション12の上下位置が調節される構成になっている。
【0019】
リクラレバー32は、左右方向から見て略台形状をなし且つ右方側(シート幅方向内側)へ向けて開口した皿状をなしており、ヒンジカバー68の後部に配置されている。ヒンジカバー68の後部には、上方側へ延びた上延部68Aが設けられている。この上延部68Aは、リクライニング機構30が有するリクライナ46(
図2及び
図3参照)を左方側(シート幅方向外側)から覆っている。リクライナ46の本体部48は、左右方向を軸方向とする円盤状をなしており、シートクッション12の骨格を構成するクッションフレーム14の後端部と、シートバック16の骨格を構成するバックフレーム18の下端部との間に配置されている。
【0020】
リクライナ46の本体部48の軸心部には、左右方向を軸方向とするリクライナ軸50が設けられている。リクライナ軸50は、本発明における「軸」に相当する。リクライナ軸50には、リクライナ46のロックを解除するためのロック解除板52が取り付けられている。
【0021】
ロック解除板52は、例えば金属製の板材がプレス成形されて製造されたものであり、
図2に示されるように、左右方向から見てL字状をなしている。このロック解除板52は、リクライナ軸50に固定された軸固定部54と、軸固定部54から前方側かつ下方側へ延出された前腕部56と、軸固定部54から後方側かつ下方側へ延出された後腕部58とを有している。軸固定部54には、リクライナ軸50が貫通しており、溶接等の手段で軸固定部54がリクライナ軸50に固定されている。
【0022】
ロック解除板52がリクライナ軸50回りに
図2の時計方向へ回転されると、リクライナ46のロックが解除され、シートクッション12に対するシートバック16のリクライニング角度を調節可能となる。バックフレーム18は、
図2に示される捩じりばね62によってクッションフレーム14に対して起立方向へ付勢されている。
【0023】
ヒンジカバー68の上延部68Aには、リクライナ軸50が貫通した開口70が形成されている。開口70は、ロック解除板52や捩じりばね62に対して左右方向に対向する領域に形成されている。開口70の上縁部は、リクライナ軸50と同心の略円弧状に形成されている。上延部68Aの左方側(シート幅方向外側)には、リクラレバー32が配置されており、上記の開口70がリクラレバー32によって覆われている。
【0024】
図3に示されるように、リクラレバー32の中央部には、貫通孔34が形成されている。この貫通孔34には、リクライナ軸50の先端部が挿入されている。貫通孔34よりも下方側でリクラレバー32の前部側には、ロック解除板52の前腕部56の先端部がビス止めによって固定されている。貫通孔34よりも下方側でリクラレバー32の後部側には、ロック解除板52の後腕部58の先端部が嵌合した嵌合部(図示省略)が設けられている。後腕部58の先端部は、左方側(シート幅方向外側)へ向けて屈曲されており、上記の嵌合部に対して右方側(シート幅方向内側)から嵌合している。リクラレバー32は、リクライナ46と一体化されており、シートクッション12のクッションフレーム14に対してリクライナ軸50の径方向に相対移動不能とされている。
【0025】
図1に示されるように、リクラレバー32の前部の下端部には、右方側(シート幅方向内側へ凹んだ凹部40が形成されている。シートクッション12に着座した乗員が左手の指を上記の凹部40に引っ掛けてリクラレバー32を上方側へ持ち上げると、リクラレバー32がロック解除板52と一体でリクライナ軸50回りに回転する。これにより、リクライナ46のロックが解除される。乗員が上記の持ち上げ操作をやめると、
図2に示される捩りコイルばね60の付勢力により、リクライナ軸50、ロック解除板52及びリクラレバー32が元の位置へ戻り、リクライナ46が再びロックされる。
【0026】
図2及び
図3に示されるように、ヒンジカバー68の開口70の縁部の一部には、開口70の縁部の他の部位よりもリクライナ軸50側へ張り出した上対向部70A及び後対向部70Bが設けられている。上対向部70Aは、リクライナ軸50に対して上方側から近接して対向しており、後対向部70Bは、リクライナ軸50に対して後方側から近接して対向している。上対向部70Aとリクライナ軸50とは互いに面で対向している。同様に、後対向部70Bとリクライナ軸50とは互いに面で対向している。上対向部70Aとリクライナ軸50との間の隙間、及び、後対向部70Bとリクライナ軸50との間の隙間は、何れも数ミリ程度に設定されている。上対向部70A及び後対向部70Bは、本発明における「対向部」に相当する。
【0027】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成の車両用シート10によれば、シートクッション12の側部に配置されたヒンジカバー68は、シートクッション12とシートバック16との間に設けられたリクライナ46のリクライナ軸50が貫通した開口70を有している。ヒンジカバー68に対してシート幅方向外側に配置されたリクラレバー32は、リクライナ軸50回りに回転されることでリクライナ46のロックを解除する。ヒンジカバー68の開口70の縁部の一部には、当該縁部の他の部位よりもリクライナ軸50側へ張り出し、リクライナ軸50に対して近接して対向した対向部70A、70Bが設けられている。
【0028】
このため、車両衝突時にシートベルト等がヒンジカバー68と接触することでヒンジカバー68に荷重が入力され、ヒンジカバー68がリクライナ軸50に対して前方側かつ下方側へ変位すると(
図2の矢印D参照)、上記対向部70A、70Bが上記軸50と接触する。これにより、ヒンジカバー68の変位を制限することができるので、ヒンジカバー68の変位によってリクライナ46のロックが不用意に解除されることを防止可能となる。つまり、ヒンジカバー68の上記変位が制限されない場合、ヒンジカバー68がロック解除板52の前腕部56又は後腕部58と接触し、ロック解除板52がリクライナ46のロック解除方向へ回転する可能性がある。その場合、乗員の意思に沿わないタイミングでリクライナ46のロックが解除されることになるが、本実施形態ではこれを回避することができる。
【0029】
また、本実施形態では、ヒンジカバー68の開口70の縁部の一部に設けられた対向部70A、70Bとリクライナ軸50とが互いに面で対向している。このため、ヒンジカバー68がリクライナの軸50に対して径方向に変位した場合、対向部70A、70Bとリクライナ軸50とを互いに面で接触させることができる。これにより、ヒンジカバー68の変位を良好に制限することが可能となる。
【0030】
さらに、本実施形態では、ヒンジカバー68の開口70の縁部の一部に設けられた対向部70A、70Bが、リクライナ軸50に対して上方側及び後方側から対向している。このため、車両衝突時にシートベルトからの荷重によってヒンジカバー68が下方側かつ前方側へ変位した場合に、対向部70A、70Bがリクライナ軸50と接触する。これにより、シートベルトからの荷重によるヒンジカバー68の変位を良好に制限することができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、ヒンジカバー68の開口70の縁部の一部に設けられた対向部70A、70Bが、リクライナ軸50に対して上方側及び後方側から対向した構成にしたが、これに限るものではない。ヒンジカバーの開口の縁部の一部に設けられた対向部がリクライナの軸に対して前方側又は下方側からも対向した構成にしてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、対向部70A、70Bとリクライナ軸50とが互いに面で対向した構成にしたが、これに限らず、対向部70A、70Bとリクライナ軸50とが互いに複数の線又は点で対向した構成にしてもよい。
【0033】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
10 車両用シート
12 シートクッション
16 シートバック
32 リクラレバー
46 リクライナ
50 リクライナ軸(軸)
68 ヒンジカバー
70 開口
70A 上対向部(対向部)
70B 後対向部(対向部)