IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタホーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-建物 図1
  • 特開-建物 図2
  • 特開-建物 図3
  • 特開-建物 図4
  • 特開-建物 図5
  • 特開-建物 図6
  • 特開-建物 図7
  • 特開-建物 図8
  • 特開-建物 図9
  • 特開-建物 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056573
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
E04B1/348 H
E04B1/348 L
E04B1/348 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163575
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹川 拓也
(57)【要約】
【課題】ユニット工法により建築された建物において、建物の外観意匠を高めると共にカーボンニュートラルの要求に応える。
【解決手段】建物10は、複数の柱と該柱に連結された天井大梁及び床大梁とを有してなる建物ユニットを複数備え、外壁に沿って標準ユニット20と小型ユニット30とを隣接配置した構成の外壁構造部X1が設けられる建物であり、小型ユニット30は、平面視の短辺側及び長辺側のうち少なくとも一辺が該標準ユニット20よりも小さく設定されることで外壁構造部X1において標準ユニット20との隣接部14に入隅を設ける意匠面を形成し、隣接部14では、標準ユニット20と小型ユニット30との間で対面する柱の仕口面同士の間の間隔T1が、標準ユニット20及び小型ユニット30に取り付けられた外壁ユニット40の断熱層の厚み(T2)よりも小さく設定されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱と該柱に連結された天井大梁及び床大梁とを有してなる建物ユニットを複数備え、外壁に沿って標準ユニットと小型ユニットを隣接配置した構成の外壁構造部が設けられる建物であり、
前記小型ユニットは、平面視の短辺側及び長辺側のうち少なくとも一辺が該標準ユニットよりも小さく設定されることで前記外壁構造部において前記標準ユニットとの隣接部に入隅を設ける意匠面を形成し、
前記隣接部では、前記標準ユニットと前記小型ユニットとの間で対面する柱の仕口面同士の間の間隔が、前記標準ユニット及び前記小型ユニットに取り付けられた外壁ユニットの断熱層の厚みよりも小さく設定されている、
建物。
【請求項2】
前記隣接部では、前記小型ユニットの柱の仕口と前記標準ユニットの天井大梁とを連結する連結部が設けられ、
前記標準ユニットと前記小型ユニットとの間で対面する柱の仕口面同士の間の間隔が、前記標準ユニット及び前記小型ユニットの柱径の大きさ以下に設定されている、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記外壁構造部は、前記標準ユニットに取り付けられた第1外壁ユニットと前記小型ユニットに取り付けられた第2外壁ユニットとを有し、
前記第1外壁ユニットは、外壁パネルの端部に設けられ、前記隣接部の内通りに向かって延びる第1延長部を有し、
前記第2外壁ユニットは、外壁パネルの端部に設けられ、前記隣接部の内通りに向かって延びる第2延長部を有し、
前記隣接部では、前記第1外壁ユニットの前記第1延長部と前記第2外壁ユニットの前記第2延長部とが接続されて入隅を設ける意匠面を形成している、請求項1又は請求項2に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット工法により建築された建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二つの建物ユニットを離し置きして、離し置きされた建物ユニットの間隙が閉塞用パネルで塞がれた建物が開示されている。この建物では、建物ユニットが離し置きされた部分をプランニングの自由度の高い空間として用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-101121号公報
【0004】
ところで、上記のようにユニット工法により建築された建物では、同サイズのユニットを複数組み合わせて構築されることが一般的であり、建物の外観が単調になる傾向にある。そこで、異種サイズのユニットを組み合わせて構築し、建物の外周部の形状に変化を与える場合がある。
【0005】
一方、近年の建物では、エアコン等の消費電力を抑え、持続可能な社会の構築のためのカーボンニュートラルの要求に応えることが求められ、その目的から、建物の断熱性能を高めることが期待されている。
【0006】
しかしながら、異種サイズのユニットの組み合わせによって外壁に入隅などを形成する場合、入隅の大きさなどによっては、建物の外皮面積が増大し、断熱性能の維持が困難になる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、ユニット工法により建築された建物において、建物外観の意匠性を高めると共にカーボンニュートラルの要求に応えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係る建物は、複数の柱と該柱に連結された天井大梁及び床大梁とを有してなる建物ユニットを複数備え、外壁に沿って標準ユニットと小型ユニットを隣接配置した構成の外壁構造部が設けられる建物であり、前記小型ユニットは、平面視の短辺側及び長辺側のうち少なくとも一辺が該標準ユニットよりも小さく設定されることで前記外壁構造部において前記標準ユニットとの隣接部に入隅を設ける意匠面を形成し、前記隣接部では、前記標準ユニットと前記小型ユニットとの間で対面する柱の仕口面同士の間の間隔が、前記標準ユニット及び前記小型ユニットに取り付けられた外壁ユニットの断熱層の厚みよりも小さく設定されている。
【0009】
第1の態様に係る建物では、標準ユニットに隣接させて平面視の短辺側及び長辺側のうち少なくとも一辺が標準ユニットよりも小さく設定された小型ユニットが配置される。これにより、標準ユニットと小型ユニットとが隣接する隣接部に、入隅を設ける意匠面が形成される。かかる場合、建物の外壁部に変化を与えることができるため、建物外観の意匠性を高めることができる。
【0010】
さらに、標準ユニットと小型ユニットが隣接する隣接部においては、対面する柱の仕口面同士の間の間隔が、標準ユニット及び小型ユニットに取り付けられた外壁ユニットの断熱層の厚みよりも小さく設定されている。その結果、建物の外皮面積の増大が抑えられ、入隅が設けられることによる断熱性能の低下を効果的に抑制することができるため、カーボンニュートラルの要求に応えることができる。
【0011】
第2の態様に係る建物は、第1の態様に記載の構成において、前記隣接部では、前記小型ユニットの柱の仕口と前記標準ユニットの天井大梁とを連結する連結部が設けられ、前記標準ユニットと前記小型ユニットとの間で対面する柱の仕口面同士の間の間隔が、前記標準ユニット及び前記小型ユニットの柱径の大きさ以下に設定されている。
【0012】
第2の態様に係る建物では、隣接部に二つの建物ユニットを連結する連結部が設けられている。この連結部は、小型ユニットの柱の仕口と標準ユニットの天井大梁とを連結することにより、構造力学上は、一方の建物ユニットに作用した水平力を連結部を介して他方の建物ユニットに伝達するものとなっている。ここで、建物ユニット間における水平力の伝達は、剛性の高められた柱の仕口の近傍などを介して行うことが好ましいが、建物の入隅にこれを適用する場合、追加柱などの構造材が必要となり、構造が複雑化する傾向にある。これに対して、本態様では、標準ユニットと小型ユニットとの間で対面する柱の仕口面同士の間の間隔が、標準ユニット及び小型ユニットの柱径の大きさ以下に設定されているため、小型ユニットの仕口に作用した水平力を標準ユニットの仕口の近傍に伝達することができる。これにより、追加柱などを設けることなく、水平力に対する抵抗力を充分に発揮できる。
【0013】
第3の態様に係る建物は、第1の態様又は第2の態様に記載の構成において、前記外壁構造部は、前記標準ユニットに取り付けられた第1外壁ユニットと前記小型ユニットに取り付けられた第2外壁ユニットとを有し、前記第1外壁ユニットは、外壁パネルの端部に設けられ、前記隣接部の内通りに向かって延びる第1延長部を有し、前記第2外壁ユニットは、外壁パネルの端部に設けられ、前記隣接部の内通りに向かって延びる第2延長部を有し、前記隣接部では、前記第1外壁ユニットの前記第1延長部と前記第2外壁ユニットの前記第2延長部とが接続されて入隅を設ける意匠面を形成している。
【0014】
第3の態様に係る建物では、標準ユニットの外壁パネルに第1延長部が設けられると共に、小型ユニットの外壁パネルに第2延長部が設けられている。第1延長部及び第2延長部は、隣接部の内通りで接合されて入隅を設ける意匠面を形成している。かかる構成では、標準ユニットに取り付けられた第1外壁ユニットと小型ユニットに取り付けられた第2外壁ユニットとの間に追加の外壁ユニットが設けられない。これにより、外壁部の部品コストを抑制することができる。また、標準ユニットと小型ユニットに対して工場等で予め組付けが可能な外壁ユニットを用いて入隅の意匠面を形成することができるため、容易に施工することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る建物によれば、建物の外観意匠を高めると共にカーボンニュートラルの要求に応えることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る建物の概要を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る建物ユニットの構成を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る建物本体の躯体を上方側から見た平面図である。
図4図3の隣接部を拡大して示す平面図である。
図5】(A)は、柱の仕口及び天井大梁にドッキングプレートを取り付けた状態を示す平面図であり、(B)は、側面図である。
図6図5のVI-VI線に沿って切断した外壁ユニットの断面を示す縦断面図である。
図7図6の外壁ユニットを建物ユニットから分離した状態を示す分解図である。
図8】外壁ユニットにおけるフレーム本体の背面図である。
図9】本実施形態に係る外壁ユニットの変形例を示す縦断面図である。
図10】本実施形態に係る小型ユニットの変形例と、該小型ユニットを適用した建物本体の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1図8を参照し、実施形態に係る建物10について説明する。図1は、本実施形態における建物10の概要を示す斜視図である。
【0018】
なお、各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0019】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
各図において矢印IN、矢印OUTで示す方向は外壁ユニットの屋内側と屋外側を示している。
【0021】
図1に示されるように、建物10は、ユニット工法により建築された2階建てのユニット建物である。建物10は、基礎11上に固定された建物本体12を有して構成されている。建物本体12は、建物外壁の一側面(例えば正面)に沿って複数の標準ユニット20と複数の小型ユニット30とを隣接配置して構築された建物ユニット群からなる外壁構造部X1を有している。この外壁構造部X1により、建物10の外周部には、標準ユニット20と小型ユニット30とが隣接する隣接部14に入隅を設ける意匠面が形成されている。
【0022】
図示の例では、建物10の正面F側に、4つの建物ユニットからなる外壁構造部X1が形成されている。外壁構造部X1は、上下に積載され2つの標準ユニット20と上下に積載された2つの小型ユニット30とが水平方向に隣接配置されてなり、その隣接部14には、建物の1階から2階に亘る入隅が形成されている。
【0023】
ここで、図2を参照し、建物ユニットとしての標準ユニット20及び小型ユニット30の構成を説明する。
【0024】
(標準ユニット)
標準ユニット20は、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備える。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして、すなわち溝部をユニット内側に向けるようにして設置されている。
【0025】
より詳しくは、柱21は、柱本体21Aと、その上下に連結された天井仕口21B及び床仕口21Cとからなり、天井仕口21Bの二方の仕口面に天井大梁22がそれぞれ連結され、床仕口21Cの二方の仕口面に床大梁23がそれぞれ連結されている。柱本体21Aと各仕口21B,21Cとは、同じ断面構造を有する角形鋼が溶接により連結されて構成されている。
【0026】
(小型ユニット)
小型ユニット30は、その四隅に配設される4本の柱31と、各柱31の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁32及び床大梁33とを備える。そして、それら柱31、天井大梁32及び床大梁33により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。小型ユニット30の柱31、天井大梁32及び床大梁33の各構成は、上記柱21、天井大梁22及び床大梁23と基本的な構成が同一であるため、詳細な説明を割愛する。
【0027】
この小型ユニット30は、標準ユニット20に対して、平面視の短辺側(建物ユニットの妻側)及び長辺側(建物ユニットの桁側)のうち少なくとも一辺が標準ユニット20よりも小さく設定されるものとして定義される。図示の構成では、小型ユニット30の短辺側の一辺のみが標準ユニット20よりも小さく設定されており、長辺側の一辺は標準ユニット20と同一の寸法に設定されている。
【0028】
ただし、本発明はこれに限らず、平面視で長辺側の一辺のみが標準ユニット20に対して小さく設定された建物ユニットを小型ユニットとしてもよいし(図10参照)、短辺側及び長辺側の両方の辺が標準ユニット20に対して小さく設定された建物ユニットを小型ユニットとしてもよい(不図示)。
【0029】
(外壁構造部)
次に、外壁構造部X1に関わる構成について説明する。図3は、建物本体12の躯体の1階部分の平面構成を示す平面図である。図4は、図3に示す隣接部14の拡大平面図である。なお、図4では、外壁ユニット40(40A,40B)の外壁パネル50のみが図示されている。
【0030】
図3に示すように、建物10の1階には、建物の正面Fに面して外壁構造部X1が構築されており、外壁構造部X1に隣接して複数の標準ユニット20(図示では4つ)を前後左右に水平配置してなる一般構造部X2が設けられている。
【0031】
図4に示されるように、外壁構造部X1では、建物10の外周(外壁)に沿って標準ユニット20と小型ユニット30が隣接配置されており、2つの建物ユニットが隣接する隣接部14に入隅が形成されている。換言すると、外壁構造部X1では、標準ユニット20の外壁ラインOL1に対して、小型ユニット30の外壁ラインOL2が屋内側にオフセットされている。
【0032】
隣接部14では、標準ユニット20と小型ユニット30の内通りに沿って標準ユニット20の柱21と天井大梁22、及び小型ユニット30の柱31と天井大梁32が配置されている。なお、ここでいう内通りとは、標準ユニット20と小型ユニット30のドッキングラインDLである。
【0033】
外壁構造部X1では、標準ユニット20及び小型ユニット30のそれぞれが、上下二段に積層配置されている。
【0034】
図4に示すように、標準ユニット20は、下階側の標準ユニット20の天井仕口21Bの上方に上階側の標準ユニット20の床仕口21Cが配置されている。そして、天井仕口21Bと床仕口21Cとが第1ドッキングプレート54を介して連結されることで、上下二段の標準ユニット20同士の連結がなされている。
【0035】
第1ドッキングプレート54の屋内側には、連結部60が設けられている。連結部60では、第2ドッキングプレート62を用いて上下二段に積層配置された小型ユニット30同士、及び、水平方向に並ぶ標準ユニット20と小型ユニット30とを連結している。
【0036】
具体的には、下階側の小型ユニット30の天井仕口31Bの上方に上階側の小型ユニット30の床仕口31Cが配置されると共に、それら天井仕口31Bと床仕口31Cとが第2ドッキングプレート62を介して連結される。さらに、第2ドッキングプレート62は、小型ユニット30の天井仕口31Bと標準ユニット20の天井大梁22に跨って配置され、その一端が天井大梁22の上面に固定されることにより、水平方向に並ぶ標準ユニット20と小型ユニット30とを連結している。
【0037】
即ち、下階側の小型ユニット30と上階側の小型ユニット30の境界部(1階及び2階の階間部分)では、1つの第2ドッキングプレート62により建物ユニットの上下連結がなされることに加えて、水平連結がなされている。
【0038】
かかる構成では、構造力学上、標準ユニット20と小型ユニット30との間では、一方の建物ユニットに作用した水平力が連結部60を介して他方の建物ユニットに伝達されるものとなっている。従って、建物に作用する水平力に対する対抗力を高めるには、連結部60を構造上剛性の高い柱の仕口の近傍に設けることが望ましい。
【0039】
そこで本実施形態では、第2ドッキングプレート62と小型ユニット30との固定部を小型ユニット30の柱31の天井仕口31Bに設け、第2ドッキングプレート62と標準ユニット20との固定部を標準ユニット20の柱21の天井仕口21Bの近傍に設けている。このため、標準ユニット20と小型ユニット30との間で対面する各柱21,31の仕口面同士の間の間隔T1が標準ユニット20及び小型ユニット30の柱径D1の大きさ以下に設定されている。
【0040】
ここで、図5を参照し、第2ドッキングプレート62による連結部60の構成について説明する。図5は、柱21の天井大梁22と柱31の天井仕口31Bとに第2ドッキングプレート62を取り付けた状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側断面図である。
【0041】
連結部60では、標準ユニット20の天井大梁22の上面部にベースプレート64が設けられており、ベースプレート64には、第2ドッキングプレートとの連結に用いられる複数のピン孔(符号省略)が形成されている。また、連結部60では、小型ユニット30の天井仕口31Bの上面部にエンドプレート66(柱頭プレート部)が設けられており、ベースプレート64と同様、複数のピン孔(符号省略)が形成されている。標準ユニット20と小型ユニット30の上面部では、ベースプレート64とエンドプレート66によって同一平面が形成されている。
【0042】
天井大梁22とベースプレート64、及び、天井仕口31Bとエンドプレート66には、第1スタッキングピン68,69が下方側から挿通され、固定されている。
【0043】
第2ドッキングプレート62は、天井大梁22上のベースプレート64と天井仕口31Bのエンドプレート66とのほぼ全体を覆う大きさを有し、下方に向けて突出する一対の第2スタッキングピン70,71が取り付けられている。そして、ベースプレート64及びエンドプレート66の上に第2ドッキングプレート62が設置され、その際、第2ドッキングプレート62から突出する一対の第2スタッキングピン70,71が天井仕口31Bのピン孔(符号省略)とベースプレート64のピン孔(符号省略)とに差し込まれるようになっている。この場合、ドッキングラインDLを挟んで対称位置に2つの第2スタッキングピン70,71が設置される構成となっている。
【0044】
また、第2ドッキングプレート62の上方には、上階側の標準ユニット20の床大梁23と床大梁23の下面部に設けられたベースプレート(不図示)、及び、上階側の小型ユニット30の床仕口31Cと床仕口31Cの下面部に設けられたエンドプレート(不図示)が設置される。これら上階側のユニットのベースプレート及びエンドプレートには、上述の第1スタッキングピン68,69が挿通されて固定されている。
【0045】
図4に戻り、隣接部14の外壁の意匠面は、標準ユニット20に取り付けられた第1外壁ユニット40Aと、小型ユニット30に取り付けられた第2外壁ユニット40Bによって形成されている。これらの外壁ユニット40A,40Bは、工場内で標準ユニット20及び小型ユニット30に予め取り付けられ、建築地へ搬入される。
【0046】
第1及び第2外壁ユニット40A、40Bは、枠状に組まれたフレーム本体42(図6等参照)を介して標準ユニット20及び小型ユニット30の躯体に固定されている。フレーム本体42の屋外側には、外壁の意匠面を構成する外壁パネル50が固定されている。また、外壁パネル50の屋内側には、外壁パネル50と図示しない内壁との間に複数の断熱材からなる断熱層80(図6参照)が形成される。従って、第1及び第2外壁ユニット40A,40Bにおける断熱層80の厚みは、外壁パネル50の内側面から内壁のウォールラインWLとの間に設けられる間隔T2に近似している。
【0047】
ここで、外壁構造部X1の隣接部14では、小型ユニット30の桁面に対して標準ユニット20の桁面が屋外側に張り出しているため、標準ユニット20の妻面の一部がドッキングラインDLに面して配置される。この妻面を介した建物の内外の熱交換による建物10の断熱性能の低下を抑制するために、本実施形態では、隣接部14にて対面する柱21,31の仕口面同士の間隔T1を断熱層80の厚み(即ち、間隔T2)よりも小さく設定している。
【0048】
第1外壁ユニット40Aの外壁パネル50は、標準ユニット20の桁面に沿って設けられた一般部50aと当該一般部50aの端部から直角に折れ曲がり、ドッキングラインDLに沿って屋内側へ延びる第1延長部50bを有している。
【0049】
また、第2外壁ユニット40Bの外壁パネル50は、小型ユニット30の桁面に沿って設けられた一般部50aと、当該一般部50aの端部からドッキングラインDLに対し直交する方向に延びる第2延長部50cを有している。この第2延長部50cは、ドッキングラインDL上で第1延長部50bに接続されている。ドッキングラインDL上に第1延長部50b及び第2延長部50cの目地52が設けられる。
【0050】
かかる構成では、標準ユニット20と小型ユニット30との隣接部14に入隅を設ける意匠面を形成しつつ、標準ユニット20の張出部分に入隅用の外壁ユニットを特別に設ける不要のない構成となっている。
【0051】
(外壁ユニット)
次に、図6図8を参照し、外壁ユニット40の詳細な構成について説明する。図6には、例として、外壁ユニット40(40A,40B)の縦断面が示されている。以下では、第1外壁ユニット40Aと第2外壁ユニット40Bを区別せずに、単に外壁ユニット40と称して説明する。また、標準ユニット20及び小型ユニット30とを区別しない場合には、単に、建物ユニットと称して説明する。
【0052】
図6及び図7に示されるように、外壁ユニット40は、枠状のフレーム本体42と、フレーム本体42の屋外側に固定された外壁パネル50と、を含んでいる。外壁ユニット40の上部は、フレーム本体42に固定された上部接続ブラケット44を介して建物ユニットの天井大梁(22,32)に固定されている。外壁ユニット40の下部は、フレーム本体42に固定された下部接続ブラケット46を介して建物ユニットの床大梁(23,33)に固定されている。
【0053】
ここで、図8には、図7に示すA-A線矢視図が、フレーム本体42に対して上部接続ブラケット44と下部接続ブラケット46とを分解した状態で示されている。
【0054】
フレーム本体42は、それぞれチャンネル形状の鋼材である横桟42A,42B、中桟42C及び縦桟42Dを備えており、枠状に形成されている。横桟42Aは、上枠を形成する横架材であり、横桟42Bは、下枠を形成する横架材である。
【0055】
上下に配置された横桟42A及び42Bには、2本の縦桟42Dが架け渡されている。縦桟42Dは、それぞれ横桟42A及び42Bの両端部を連結する繋ぎ材であり、上下方向に沿って配置されている。
【0056】
中桟42Cは、2本の縦桟42D間に架け渡された横架材である。中桟42Cは、上下方向に2本設けられている。なお、中桟42Cの本数は、縦桟42Dの長さに応じて、適宜増減してもよい。
【0057】
外壁パネル50は、フレーム本体42の屋外側に固定された面材であり、例えば窯業系のサイディングを用いて形成されている。
【0058】
図6に戻り、上部接続ブラケット44は、金属製の板材を折り曲げ加工して、平面視でC字状をなす開断面状に形成されている。具体的に、上部接続ブラケット44は、建物ユニットの天井大梁と外壁ユニット40との間に配置される間隔保持壁部44Aと、間隔保持壁部44Aの一端と他端から互いに対向するように延びる第1固定壁部44Bと第2固定壁部44Cと、を有している(図6参照)。
【0059】
第1固定壁部44Bは、上下方向(鉛直方向)に並ぶ二つのボルトB1を用いて、フレーム本体42(横桟42A及び縦桟42D)に対して2箇所で固定されている。ボルトB1は、例えば、フレーム本体42の屋外側から取付孔(不図示)に挿通されて第1固定壁部44Bの内側面に溶接されたウェルドナット(符号省略)に螺合している。
【0060】
第2固定壁部44Cは、上下方向(鉛直方向)に並ぶ二つのボルトB2を用いて、建物ユニットの天井大梁に対して2箇所で固定されている。ボルトB2は、例えば、天井大梁の屋内側からウエブに形成された取付孔(不図示)に挿通されて、第2固定壁部44Cの内側面に溶接されたウェルドナット(符号省略)に螺合している。
【0061】
一方、下部接続ブラケット46は、金属製の板材を折り曲げ加工して、上部接続ブラケット44に対応した開断面状に形成されている。下部接続ブラケット46は、横桟42Bに沿って所定の間隔で複数設けられている。本実施形態の一例では、図8に示すように、横桟42Bの両端部であって、2本の縦桟42Dのそれぞれとの接合部に設けられている。
【0062】
下部接続ブラケット46とフレーム本体42(横桟42B)とは、ボルトB1を用いて1箇所で固定されている。このボルトB1は、例えば、フレーム本体42の屋外側から取付孔(不図示)に挿通されて下部接続ブラケット46に溶接されたウェルドナット(符号省略)に螺合している。
【0063】
また、下部接続ブラケット46と建物ユニットの床大梁とは、ボルトB2を用いて1箇所で固定されている。このボルトB2は、例えば、下部接続ブラケット46の屋外側から取付孔(不図示)に挿通されて床大梁のウエブに溶接されたウェルドナット(符号省略)に螺合している。
【0064】
上記のように上部接続ブラケット44は、フレーム本体42の縦桟42Dに沿う縦長形状とされており、ユニットの上方側に向けて設けられた上方開口部48を有している。上部接続ブラケット44は、予め外壁ユニット40フレーム本体42に固定された状態で、外壁ユニット40と共に建物ユニットの躯体に取り付けられる。この際、外壁ユニット40の屋外側で、上部接続ブラケット44の上方開口部48から工具が挿入され、組付け作業を行うことができる。従って、建物ユニットの躯体に内装のインフィルの組付けを行った後に、外壁ユニット40を取り付けることができる。
【0065】
また、本実施形態では、上部接続ブラケット44を用いて、建物ユニットの天井大梁と外壁ユニット40のフレーム本体42との間の間隔が保持されることにより、天井大梁とのフレーム本体42との間に間隙Yが形成される。当該間隙Yは、断熱材の配置スペースとなっており、上部接続ブラケット44の間隔保持壁部44Aの張出寸法により断熱材層の厚みを調整することができる構造となっている。
【0066】
図示の一例では、間隙Yを利用して、第1断熱材82と第2断熱材84が配置されている。
【0067】
第1断熱材82は、例えば、グラスウール又はロックウールがフィルムで被覆して形成された袋状断熱材である。フィルムとしては、水分が透過し難い(防湿性の)膜材が用いられており、内部のグラスウールやロックウールが、空気中の水蒸気に晒されることが抑制されている。
【0068】
第1断熱材82は、建物ユニットの天井大梁と床大梁との間に配置されている。第1断熱材82の配置方法は特に限定されるものではないが、一例として、建物の外壁部において、屋内側の内壁を構成する面材16に接着剤によって固定してもよい。
【0069】
第2断熱材84は、外壁ユニット40に設けられた断熱材であり、第1断熱材82の屋外側に配置されている。この第2断熱材84は、グラスウール又はロックウールが板状に成型された板状断熱材であり、縦桟42D及び中桟42Cに接着剤などを用いて固定されている。なお、第2断熱材84は、溶接ピンなどを用いて縦桟42D及び中桟42Cに固定してもよく、固定方法は特に限定されるものではない。第2断熱材84は、建物ユニットの天井大梁の屋外側で第1断熱材82と面接触した状態で配置される。
【0070】
(作用並びに効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、標準ユニット20に隣接させて平面視の長辺側の一辺が標準ユニット20よりも小さく設定された小型ユニット30が配置される。これにより、標準ユニット20と小型ユニット30とが隣接する隣接部14に、入隅を設ける意匠面が形成される。かかる場合、建物の外壁部に変化を与えることができるため、建物外観の意匠性を高めることができる。
【0071】
さらに、標準ユニット20と小型ユニット30とが隣接する隣接部14においては、対面する柱21,31の仕口面同士の間の間隔T1が、標準ユニット20及び小型ユニット30に取り付けられた外壁ユニット40の断熱層80の厚み(間隙T2)よりも小さく設定されている。その結果、建物の外皮面積の増大が抑えられ、入隅が設けられることによる断熱性能の低下を効果的に抑制することができるため、カーボンニュートラルの要求に応えることができる。
【0072】
また、本実施形態では、隣接部14に二つの建物ユニットを連結する連結部60が設けられている。この連結部60は、小型ユニット30の柱31の仕口と標準ユニット20の天井大梁22とを連結することにより、構造力学上は、一方の建物ユニットに作用した水平力を連結部60を介して他方の建物ユニットに伝達するものとなっている。ここで、建物ユニット間における水平力の伝達は、剛性の高められた柱の仕口の近傍などを介して行うことが好ましいが、建物の入隅にこれを適用する場合、追加柱などの構造材が必要となり、構造が複雑化する傾向にある。これに対して、本態様では、標準ユニット20と小型ユニット30との間で対面する柱21,31の仕口面同士の間の間隔が、標準ユニット20及び小型ユニット30の柱径D1の大きさ以下に設定されているため、小型ユニット30の仕口に作用した水平力を標準ユニット20の仕口の近傍に伝達することができる。これにより、追加柱などを設けることなく、水平力に対する抵抗力を充分に発揮できる。
【0073】
さらに、本実施形態では、標準ユニット20の外壁パネル50に第1延長部50bが設けられると共に、小型ユニット30の外壁パネル50に第2延長部50cが設けられている。第1延長部50b及び第2延長部50cは、隣接部14の内通りで接合されて入隅を設ける意匠面を形成している。かかる構成では、標準ユニット20に取り付けられた第1外壁ユニット40Aと小型ユニット30に取り付けられた第2外壁ユニット40Bとの間に追加の外壁ユニットが設けられない。これにより、外壁部の部品コストを抑制することができる。また、標準ユニット20と小型ユニット30に対して工場等で予め組付けが可能な外壁ユニットを用いて入隅の意匠面を形成することができるため、容易に施工することができる。
【0074】
(上部接続ブラケットの変形例について)
以上、本実施形態に係る建物10について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、上記実施形態の上部接続ブラケット44は、外壁ユニット40のフレーム本体42の縦桟42Dに沿う縦長形状とされているが、これに限定されない。例えば、図示はしないが、外壁ユニット40のフレーム本体42の横桟42Aに沿う横長形状に構成してもよい。即ち、上記実施形態の上部接続ブラケット44の取り付け状態を、図7に示す姿勢から90度回転させ上方側に開口した姿勢で建物ユニットの天井大梁と外壁ユニット40の横桟42Aに固定してもよい。
又は、上記実施形態の上部接続ブラケット44に替えて、図9に示されるように、外壁ユニット40のフレーム本体42の上枠を構成する横桟と一体を成す上部接続ブラケット440を適用することもできる。図示の例では、下部接続ブラケット460も、フレーム本体42の下枠を構成する横桟と一体を成すように構成されている。上部接続ブラケット440及び下部接続ブラケット460は、外壁ユニット40から屋内側へ突出して設けられる間隔保持壁部440Aと、間隔保持壁部440Aの屋外側の一端から鉛直方向に延在し外壁パネル50に固定される第1固定壁部440Bと、間隔保持壁部440Aの屋内側の一端から鉛直方向に延在し、第1固定壁部440Bと対向配置されると共に建物ユニットの天井大梁に固定される第2固定壁部440Cとを有している。
【0075】
上部接続ブラケット440及び下部接続ブラケット460によれば、予め、外壁ユニット40に組み込まれた状態で建物ユニットの躯体への取り付けを行うことができる。従って、外壁ユニット40に上部接続ブラケット440及び下部接続ブラケット460を固定する工程を省略することができる。
若しくは、上記実施形態から、上部接続ブラケット44及び下部接続ブラケット46を省略して、外壁ユニット40のフレーム本体42を建物ユニットの天井大梁及び床大梁に直接固定する構成としてもよい。
【0076】
(小型ユニットの変形例について)
また、上記実施形態では、平面視における小型ユニット30の長辺側の側面に外壁ユニットが取り付けられる構成としたが、これに限らない。平面視における長辺の幅が標準ユニット20よりも小さく設定された小型ユニット300(図10参照)を配置する場合、平面視における短辺側の天井大梁に外壁ユニットを連結してもよい。
この場合、図10に示す建物100のように、標準ユニット20の妻側の側面と小型ユニット300の妻側の側面とを建物の外周部に沿って隣接して配置することにより、外壁部に入隅が設けられた意匠面を形成することができる。
あるいは、本発明は、平面視における短辺の幅と長辺の幅の両方が標準ユニット20よりも小さく設定された小型ユニットを適用することもできる。
【符号の説明】
【0077】
10 建物
14 隣接部
20 標準ユニット
21 柱
22 天井大梁
23 床大梁
30 小型ユニット
31 柱
32 天井大梁
33 床大梁
40A 第1外壁ユニット(外壁ユニット40)
40B 第2外壁ユニット(外壁ユニット40)
50 外壁パネル
50b 第1延長部
50c 第2延長部
80 断熱層
100 建物
300 小型ユニット
D1 柱径の大きさ
DL ドッキングライン(隣接部の内通り)
T1 柱の仕口面同士の間の間隔
T2 外壁ユニットの断熱層の厚み
X1 外壁構造部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10