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特開2024-56575堰堤ブロック積み重ね構造、堰堤及びブロック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056575
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】堰堤ブロック積み重ね構造、堰堤及びブロック
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20240416BHJP
   E02B 3/14 20060101ALI20240416BHJP
   E02B 3/06 20060101ALI20240416BHJP
   E02B 7/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
E02B7/02 B
E02B3/14
E02B3/06 301
E02B7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163579
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】593024184
【氏名又は名称】株式会社種村建設
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】種村 成徳
(72)【発明者】
【氏名】関 陸郎
(72)【発明者】
【氏名】森下 和夫
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA11
2D118AA12
2D118BA03
2D118FB21
2D118FB31
2D118HA08
2D118HB04
2D118HD01
(57)【要約】
【課題】ブロックを支持する支保工等が不要であり、前後のブロック間に中詰め材を隙間なく充填しやすく、ブロックと中詰め材との定着性が良い堰堤ブロック積み重ね構造、堰堤及びブロックを提供すること。
【解決手段】堰堤の外部に露出する傾斜した傾斜外部露出前面2eと、堰堤の内部に打設される中詰めコンクリート4が当接する中詰め材当接背面2dとを有する上段のブロック2と下段のブロック2を積み重ねてあり、中詰め材当接背面2dは鉛直に形成され、傾斜外部露出前面2eが連続して配置され、上段のブロック2の中詰め材当接背面2dは、下段のブロック2の中詰め材当接背面2dより堰堤の内側に位置しており、上段のブロック2の重心は、上段のブロック2が下段のブロック2から堰堤の内側に転倒する場合の回転軸より堰堤の外部側に配置されている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜した前面であり堰堤の外部に露出する傾斜外部露出前面と、背面側にあって堰堤の内部に打設される中詰め材が当接する中詰め材当接背面と、をそれぞれ有する上段ブロックと下段ブロックを積み重ねた堰堤ブロック積み重ね構造であって、
前記上段ブロック及び前記下段ブロックの前記中詰め材当接背面は、鉛直に形成されており、
前記上段ブロック及び前記下段ブロックの前記傾斜外部露出前面が連続して配置され、
前記上段ブロックの前記中詰め材当接背面のうち最も内部側のものは、前記下段ブロックの前記中詰め材当接背面のうち最も内部側のものより堰堤の内側に位置しており、
前記上段ブロックの重心は、前記上段ブロックが前記下段ブロックから堰堤の内側に転倒する場合の回転軸より堰堤の外部側に配置されている
ことを特徴とする堰堤ブロック積み重ね構造。
【請求項2】
前記上段ブロック及び前記下段ブロックは、背面側に突設されるとともに前記中詰め材当接背面を有する控え壁部を有し、
前記控え壁部と前記中詰め材とを水平方向に連通する鉄筋と、を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の堰堤ブロック積み重ね構造。
【請求項3】
前記鉄筋は、前記控え壁部の上部と下部にそれぞれ連通していることを特徴とする請求項2に記載の堰堤ブロック積み重ね構造。
【請求項4】
前記下段ブロックは、上面に形成された凸部を有し、
前記上段ブロックは、下面に形成された凹部を有し、
前記下段ブロックと前記上段ブロックとは前記凸部と前記凹部とが凹凸嵌合して積み重ねられていることを特徴とする請求項1に記載の堰堤ブロック積み重ね構造。
【請求項5】
前記凸部は、前記下段ブロックの上面の幅方向中央部に形成され、
前記凹部は、前記上段ブロックの下面の幅方向両側部に形成され、
前記下段ブロックと前記上段ブロックとは互いに幅方向に半幅ずつずらして積み重ねられ、前記凸部は、隣接する前記上段ブロックの前記凹部に嵌合されている
ことを特徴とする請求項4に記載の堰堤ブロック積み重ね構造。
【請求項6】
前記上段ブロックは、上面に形成された凸部を有し、
前記凸部は、上面に開口し手摺の脚部が着脱可能に挿入される取付穴を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の堰堤ブロック積み重ね構造。
【請求項7】
傾斜した前面であり堰堤の外部に露出する傾斜外部露出前面と、背面側にあって堰堤の内部に打設される中詰め材が当接する中詰め材当接背面と、をそれぞれ有する上段ブロックと下段ブロックを積み重ねた堰堤ブロック積み重ね構造に、前記中詰め材が打設された堰堤であって、
前記上段ブロック及び前記下段ブロックの前記中詰め材当接背面は、鉛直に形成されており、
前記上段ブロック及び前記下段ブロックの前記傾斜外部露出前面が連続して配置され、
前記上段ブロックの前記中詰め材当接背面のうち最も内部側のものは、前記下段ブロックの前記中詰め材当接背面のうち最も内部側のものより堰堤の内側に位置しており、
前記上段ブロックの重心は、前記上段ブロックが前記下段ブロックから堰堤の内側に転倒する場合の回転軸より堰堤の外部側に配置されており、
前記中詰め材は、水平打継目を有してリフト打設されたものであり、
前記上段ブロックと前記下段ブロックとの積み重ね面の位置における前記中詰め材の1回の打設リフトの天端と下端は、前記上段ブロックと前記下段ブロックとの積み重ね面を挟んで配置されている
ことを特徴とする堰堤。
【請求項8】
前記上段ブロック及び前記下段ブロックは、背面側に突設されるとともに前記中詰め材当接背面を有する控え壁部を有し、
前記控え壁部と前記中詰め材とを水平方向に連通する鉄筋と、を備える
ことを特徴とする請求項7の堰堤。
【請求項9】
前記上段ブロック及び前記下段ブロックは、背面側に突設されるとともに前記中詰め材当接背面を有する控え壁部を有し、
前記控え壁部と前記中詰め材とを水平方向に連通する鉄筋と、を備え、
前記鉄筋は、前記控え壁部の上部と下部にそれぞれ連通しており、
前記上段ブロックと前記下段ブロックとの積み重ね面の位置における前記中詰め材の1回の打設リフトの天端は、前記上段ブロックの前記控え壁部の下部に連通した鉄筋より上方に位置しているとともに、下端は、前記下段ブロックの前記控え壁部の上部に連通した鉄筋より下方に位置している
ことを特徴とする請求項7に記載の堰堤。
【請求項10】
前記下段ブロックは、上面に形成された凸部を有し、
前記上段ブロックは、下面に形成された凹部を有し、
前記下段ブロックと前記上段ブロックとは前記凸部と前記凹部とが凹凸嵌合して積み重ねられていることを特徴とする請求項7に記載の堰堤。
【請求項11】
前記凸部は、前記下段ブロックの上面の幅方向中央部に形成され、
前記凹部は、前記上段ブロックの下面の幅方向両側部に形成され、
前記下段ブロックと前記上段ブロックとは互いに幅方向に半幅ずつずらして積み重ねられ、前記凸部は、隣接する前記上段ブロックの前記凹部に嵌合されている
ことを特徴とする請求項10に記載の堰堤。
【請求項12】
傾斜した前面であり堰堤の外部に露出する傾斜外部露出前面と、背面側にあって堰堤の内部に打設される中詰め材が当接する中詰め材当接背面と、を有し、上段と下段に積み重ねて堰堤を形成するブロックであって、
前記ブロックは、上面に形成された凸部と、下面に形成された凹部とを有し、前記凸部と前記凹部とが凹凸嵌合して積み重ねられ、
前記凸部は、上面に開口し手摺の脚部が着脱可能に挿入される取付穴を有する
ことを特徴とするブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂防ダム、防波堤等に適用可能な堰堤ブロック積み重ね構造、堰堤及びブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前面及び後面にブロックを多段に積み重ね、このブロックを型枠として躯体となるコンクリートを打設した砂防ダム等の堰堤が知られている。
【0003】
この種の堰堤として、例えば、特許文献1には、平板状の面板の背面に控部を備え、控部の上下面の一方に凸部を設け、他方に凸部が嵌合する凹部を設けたブロックを前後法面に積重して、コンクリートの型枠を兼ねると共にコンクリートと一体化した砂防ダムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2960343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のような砂防ダムは、前後法面間のコンクリート充填空間が下方に向かって厚くなるよう傾斜しており、ブロックは傾斜して積み重ねられることになるが、ブロックの正面と背面は平行な面なので、前後のブロックの背面間の間隔も下方が次第に広がって、先端が細く狭まっている。
このため、コンクリート打設時に、バイブレータ、振動ローラ等の締固め機器をブロックの背面に十分接近させることができず、ブロックの背面間にコンクリートを隙間なく充填するのが難しく、コンクリートとブロックとの定着性が低下しやすい。
また、コンクリートを打設する前の上下段に積み重ねられた状態のブロックは、上段のブロックが内側に倒れるおそれがあった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、前後のブロック間に中詰め材を隙間なく充填しやすくブロックと中詰め材との定着性が良く、ブロックが内側に倒れにくい堰堤ブロック積み重ね構造、堰堤及びブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に係る発明は、傾斜した前面であり堰堤の外部に露出する傾斜外部露出前面と、背面側にあって堰堤の内部に打設される中詰め材が当接する中詰め材当接背面と、をそれぞれ有する上段ブロックと下段ブロックを積み重ねた堰堤ブロック積み重ね構造であって、前記上段ブロック及び前記下段ブロックの前記中詰め材当接背面は、鉛直に形成されており、前記上段ブロック及び前記下段ブロックの前記傾斜外部露出前面が連続して配置され、前記上段ブロックの前記中詰め材当接背面のうち最も内部側のものは、前記下段ブロックの前記中詰め材当接背面のうち最も内部側のものより堰堤の内側に位置しており、前記上段ブロックの重心は、前記上段ブロックが前記下段ブロックから堰堤の内側に転倒する場合の回転軸より堰堤の外部側に配置されていることを特徴とする堰堤ブロック積み重ね構造である。
【0008】
本願請求項2に係る発明は、前記上段ブロック及び前記下段ブロックは、背面側に突設されるとともに前記中詰め材当接背面を備える控え壁部を有し、前記控え壁部と前記中詰め材とを水平方向に連通する鉄筋と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の堰堤ブロック積み重ね構造である。
【0009】
本願請求項3に係る発明は、前記鉄筋は、前記控え壁部の上部と下部にそれぞれ連通していることを特徴とする請求項2に記載の堰堤ブロック積み重ね構造である。
【0010】
本願請求項4に係る発明は、前記下段ブロックは、上面に形成された凸部を有し、前記上段ブロックは、下面に形成された凹部を有し、前記下段ブロックと前記上段ブロックとは前記凸部と前記凹部とが凹凸嵌合して積み重ねられていることを特徴とする請求項1に記載の堰堤ブロック積み重ね構造である。
【0011】
本願請求項5に係る発明は、前記凸部は、前記下段ブロックの上面の幅方向中央部に形成され、前記凹部は、前記上段ブロックの下面の幅方向両側部に形成され、前記下段ブロックと前記上段ブロックとは互いに幅方向に半幅ずつずらして積み重ねられ、前記凸部は、隣接する前記上段ブロックの前記凹部に嵌合されていることを特徴とする請求項4に記載の堰堤ブロック積み重ね構造である。
【0012】
本願請求項6に係る発明は、前記上段ブロックは、上面に形成された凸部を有し、前記凸部は、上面に開口し手摺の脚部が着脱可能に挿入される取付穴を有することを特徴とする請求項4に記載の堰堤ブロック積み重ね構造である。
【0013】
本願請求項7に係る発明は、傾斜した前面であり堰堤の外部に露出する傾斜外部露出前面と、背面側にあって堰堤の内部に打設される中詰め材が当接する中詰め材当接背面と、をそれぞれ有する上段ブロックと下段ブロックを積み重ねた堰堤ブロック積み重ね構造に、前記中詰め材が打設された堰堤であって、前記上段ブロック及び前記下段ブロックの前記中詰め材当接背面は、鉛直に形成されており、前記上段ブロック及び前記下段ブロックの前記傾斜外部露出前面が連続して配置され、前記上段ブロックの前記中詰め材当接背面のうち最も内部側のものは、前記下段ブロックの前記中詰め材当接背面のうち最も内部側のものより堰堤の内側に位置しており、前記上段ブロックの重心は、前記上段ブロックが前記下段ブロックから堰堤の内側に転倒する場合の回転軸より堰堤の外部側に配置されており、前記中詰め材は、水平打継目を有してリフト打設されたものであり、前記上段ブロックと前記下段ブロックとの積み重ね面の位置における前記中詰め材の1回の打設リフトの天端と下端は、前記上段ブロックと前記下段ブロックとの積み重ね面を挟んで配置されていることを特徴とする堰堤である。
【0014】
本願請求項8に係る発明は、前記上段ブロック及び前記下段ブロックは、背面側に突設されるとともに前記中詰め材当接背面を備える控え壁部を有し、前記控え壁部と前記中詰め材とを水平方向に連通する鉄筋と、を備えることを特徴とする請求項7の堰堤である。
【0015】
本願請求項9に係る発明は、前記上段ブロック及び前記下段ブロックは、背面側に突設されるとともに前記中詰め材当接背面を有する控え壁部を有し、前記控え壁部と前記中詰め材とを水平方向に連通する鉄筋と、を備え、前記鉄筋は、前記控え壁部の上部と下部にそれぞれ連通しており、前記上段ブロックと前記下段ブロックとの積み重ね面の位置における前記中詰め材の1回の打設リフトの天端は、前記上段ブロックの前記控え壁部の下部に連通した鉄筋より上方に位置しているとともに、下端は、前記下段ブロックの前記控え壁部の上部に連通した鉄筋より下方に位置していることを特徴とする請求項7に記載の堰堤である。
【0016】
本願請求項10に係る発明は、前記下段ブロックは、上面に形成された凸部を有し、
前記上段ブロックは、下面に形成された凹部を有し、前記下段ブロックと前記上段ブロックとは前記凸部と前記凹部とが凹凸嵌合して積み重ねられていることを特徴とする請求項7に記載の堰堤である。
【0017】
本願請求項11に係る発明は、前記凸部は、前記下段ブロックの上面の幅方向中央部に形成され、前記凹部は、前記上段ブロックの下面の幅方向両側部に形成され、前記下段ブロックと前記上段ブロックとは互いに幅方向に半幅ずつずらして積み重ねられ、前記凸部は、隣接する前記上段ブロックの前記凹部に嵌合されていることを特徴とする請求項10に記載の堰堤である。
【0018】
本願請求項12に係る発明は、傾斜した前面であり堰堤の外部に露出する傾斜外部露出前面と、背面側にあって堰堤の内部に打設される中詰め材が当接する中詰め材当接背面と、を有し、上段と下段に積み重ねて堰堤を形成するブロックであって、前記ブロックは、上面に形成された凸部と、下面に形成された凹部とを有し、前記凸部と前記凹部とが凹凸嵌合して積み重ねられ、前記凸部は、上面に開口し手摺の脚部が着脱可能に挿入される取付穴を有することを特徴とするブロックである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の堰堤ブロック積み重ね構造は、ブロックの中詰め材当接背面が鉛直に形成されているので、堰堤内部の空間が上方に向かって次第に狭くなるようブロックを積み重ねても、堰堤内部の空間に中詰め材を隙間なく充填しやすい。
また、ブロックの中詰め材当接背面は階段状に積み重なるので、ブロック背面側の段部が中詰め材に係合して、ブロックと中詰め材との一体性が高く、長期間経過したり、衝撃が加わってもブロックが中詰め材から剥がれにくい。
上段ブロックの重心は、上段ブロックが下段ブロックから堰堤の内側に転倒する場合の回転軸より堰堤の外部側に配置されているので、上段ブロックは安定して下段ブロックの上で自立し、上段ブロックが内側に倒れにくく中詰め材の打設前であっても安全性が高くなる。
【0020】
加えて、上段ブロック及び下段ブロックが、背面側に突設されて中詰め材当接背面を備えた控え壁部を有し、控え壁部と中詰め材とを水平方向に連通する鉄筋を備えることにより、各段のブロックが強固に結合され、中詰め材が鉄筋に付着してブロックと中詰め材の定着性が増し、一体性が向上する。
【0021】
加えて、鉄筋は控え壁部の上部と下部にそれぞれ連通しているので、ブロックの中詰め材に対する定着性が増し、さらに一体性が向上する。
【0022】
加えて、下段ブロックが上面に形成された凸部を有し、上段ブロックが下面に形成された凹部を有し、下段ブロックと上段ブロックとが凸部と凹部とを凹凸嵌合して積み重ねられると、下段ブロックと上段ブロックが強固に連結されてずれにくく、凸部が上面に形成され、下面に凸部がないたまブロックを仮置きする際等の安定性が良い。
【0023】
加えて、凸部は、下段ブロックの上面の幅方向中央部に形成され、凹部は、上段ブロックの下面の幅方向両側部に形成され、下段ブロックと上段ブロックとは互いに幅方向に半幅ずつずらして積み重ねられ、凸部は、隣接する上段ブロックの凹部に嵌合されていることにより、左右に隣接するブロックが一つの凸部を介して連結されるので、千鳥配置となり安定し、隣接するブロックの位置ずれを防ぐ。
【0024】
加えて、上段ブロックは、上面に形成された凸部を有し、凸部は、上面に開口し手摺の脚部が着脱可能に挿入される取付穴を有することにより、ブロックの積み重ね作業、及び、中詰め材の打設作業の安全性が増す。
【0025】
本発明の堰堤は、上段ブロックと下段ブロックとの積み重ね面の位置における中詰め材の1回の打設リフトの天端が、上段ブロックの控え壁部の下部に連通した鉄筋より上方に位置しているとともに、下端が、下段ブロックの控え壁部の上部に連通した鉄筋より下方に位置しているので、ブロックの積み重ね面と中詰め材の打ち継ぎ面とがずれ、ブロックが抵抗して中詰め材の打ち継ぎ面での破断を防ぐ。
また、打ち継いだ各層の中詰め材の上下部に、上段ブロックの控え壁部の下部及び下段ブロックの控え壁部の上部に挿通した鉄筋が確実に埋設されるので、一体化が向上し、ブロックの中詰め材に対する定着性にばらつきが生じにくい。
【0026】
加えて、下段ブロックが上面に形成された凸部を有し、上段ブロックが下面に形成された凹部を有し、下段ブロックと上段ブロックとは凸部と凹部とを凹凸嵌合して積み重ねられることにより、下段ブロックと上段ブロックとが位置決めされて容易に正確に積み上げられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る堰堤の断面図である。
図2】本発明の実施形態を係る堰堤の要部斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るブロックの斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るブロックの平面図である。
図5】本発明の実施形態に係るブロックの底面図である。
図6】本発明の実施形態に係る直部ブロックの斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る基礎ブロック及びブロックの側面図である。
図8】本発明の実施形態に係る堰堤の施工方法を説明する断面図である。
図9】本発明の実施形態に係る堰堤の施工方法を説明する要部断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る堰堤の施工方法を説明する断面図である。
図11】本発明の実施形態に係る堰堤の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照する等して説明する。
なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0029】
図1は実施形態に係る堰堤の断面図、図2は実施形態を係る堰堤の要部斜視図、図3は実施形態に係るブロックの斜視図、図4は実施形態に係るブロックの平面図、図5は実施形態に係るブロックの底面図、図6は実施形態に係る直部ブロックの斜視図、図7は実施形態に係る基礎ブロック及びブロックの側面図、図8及び図10は実施形態に係る堰堤の施工方法を説明する断面図、図9は実施形態に係る堰堤の施工方法を説明する要部断面図、図11は実施形態に係る堰堤の要部断面図である。
【0030】
以下、堰堤が砂防ダムである実施形態について説明する。
図1に示すように、砂防ダム1は、堤体の上流側と下流側にブロック2と直部ブロック3が配置され、両者の間に中詰め材として中詰めコンクリート4が打設されて構成されている。符号4aは中詰めコンクリート4の水平打継目である。
【0031】
ブロック2は堤体の前後の法面の部分に配置されるもので、直部ブロック3は堤体の前後の鉛直面の部分に配置されるものである。
【0032】
図2に示すように、ブロック2及び直部ブロック3は、上段のものと下段のものとが互いに幅方向に半幅ずつずらして、すなわち千鳥状に積み重ねられるように配置されている。また、ブロック2の上に積み重ねされた直部ブロック3についても同様に千鳥状に積み重ねられて配置されている。図2では、中詰めコンクリート4を省略したものである。
【0033】
ブロック2及び直部ブロック3は、プレキャストコンクリートブロックである。
図3乃至図5に示すように、ブロック2は、上面2a、下面2b、両側面2c、中詰め材当接背面2d、傾斜外部露出前面2eを有する。上段と下段のブロック2は同じ形状をしている。
【0034】
上面2a及び下面2bは水平面であり、両側面2cは鉛直に形成されている。両側面2cは、互いに平行である。
中詰め材当接背面2dは、背面側にあり、砂防ダム1の内部に打設される中詰めコンクリート4が当接する面であり、鉛直に形成される。
【0035】
ブロック2の前面であり砂防ダム1の外部に露出する傾斜外部露出前面2eは、上方に向かって次第に中詰め材当接背面2d側へ近づくよう傾斜した傾斜面である。
一般的な砂防ダム1では、傾斜外部露出前面2eの傾斜角度α(図1)は、上流側のブロック2が下流側のブロック2より大きく設定されている。
【0036】
ブロック2の幅方向両側には前面から背面側に向かって、上下方向全長に亘って控え壁部20が突設されている。
左右の控え壁部20の外側面20aは、側面2cと面一に形成されており、平行な鉛直面である。左右の控え壁部20の内側面20bも鉛直面であり、先端(背面側)に向かって控え壁部20の幅が次第に細くなるよう傾斜している。
【0037】
左右の控え壁部20の外側面20aと内側面20bとをつなぐ先端面20cも、鉛直面を形成している。
控え壁部20の内側面20b及び先端面20cには、中詰めコンクリート4が当接するので、中詰め材当接背面2dを構成する。
【0038】
両側の控え壁部20の基部間の間隔は、ブロック2の幅方向の寸法の約1/2となっており、この部分に位置する本体部の背面2fは、鉛直面であり、中詰めコンクリート4が当接するので、中詰め材当接背面2dを構成する。
【0039】
両側の控え壁部20の上部及び下部、具体的には上半部及び下半部には、相対する位置に鉄筋挿通孔21が貫通して形成されている。
【0040】
ブロック2の上面2aにおいて、幅方向中央部で両側の控え壁部20の基部間に相当する位置で本体部の背面2fの上端に沿って平面視四角形の凸部22が設けられる。即ち、凸部22の幅方向寸法はブロック2の幅方向寸法の約1/2である。
凸部22の四周面は、上端面がやや狭くなるよう僅かに傾斜している。
【0041】
凸部22の上面の中央部には、手摺5の脚部50(図8参照)が着脱可能に挿入される取付穴23が形成されている。すなわち、凸部22は、上面に開口し手摺5の脚部50が着脱可能に挿入される取付穴23を有する。
【0042】
ブロック2の下面2bの幅方向両側部には、控え壁部20の基部に相当する位置に、凸部22と嵌合される凹部24が形成される。
凹部24の前後方向の寸法は、凸部22の前後方向の寸法とほぼ等しく、凹部24の幅方向の寸法は、凸部22の幅方向寸法の約1/2である。
【0043】
図6に示すように、直部ブロック3は、ブロック2とほぼ同じ構造及び寸法を有するが、砂防ダム1の外部に露出する前面3eが垂直面である点でブロック2と異なっている。
【0044】
図7に示すように、最下段のブロック2は基礎ブロック6の上に設置される。基礎ブロック6はブロック2の下面2bより前後方向の寸法がやや大きい平板状であり、ブロック2の凹部24に嵌合される突起60が上面の幅方向中央部に設けられている。突起60の形状及び寸法は、ブロック2の凸部22と同じである。
本実施形態では、基礎ブロック6を設けるものであったが、これに限られず、地盤上に最下段のブロック2を設けるものであっても良い。
【0045】
砂防ダム1は、以下のようにして構築される。
まず、砂防ダム1を設置する地盤において、砂防ダム1の上流側端部及び下流側端部となる位置に沿って基礎ブロック6を配置する。
【0046】
次に、基礎ブロック6の上に最下段のブロック2を幅方向に半幅ずらして重ね、基礎ブロック6の突起60を最下段の隣接する2つのブロック2の凹部24に嵌合させる(図7)。
さらに、最下段のブロック2の凸部22に形成された取付穴23に脚部50を挿入して手摺5を設置し、最下段のブロック2の控え壁部20に形成した鉄筋挿通孔21に鉄筋7を挿通する。鉄筋7は、隣り合うブロック2どうしを通して互いに連結するように配筋する。
【0047】
次いで、上流側のブロック2の中詰め材当接背面2dと下流側のブロック2の中詰め材当接背面2dとの間に、ブロック2の上面2aの高さまで中詰めコンクリート4を打設する(図8)。
【0048】
ブロック2の中詰め材当接背面2dは鉛直面であるので、バイブレータをブロック2の際まで鉛直に挿入しやすくなったり、中詰めコンクリート4が固練りの場合に採用される振動ローラなどもブロック2の際まで近づくことができ、充填性を高めることができる。
【0049】
また、ブロック2の中詰め材当接背面2dは鉛直面であるので、中詰めコンクリート4は控え壁部20の間に流入しやすく、前後のブロック2の中詰め材当接背面2d間に隙間なく充填することができる。さらに両側の控え壁部20は先細状なので、より中詰めコンクリート4が流入しやすい。
【0050】
充填された中詰めコンクリート4には、ブロック2の控え壁部20及び控え壁部20を貫通する鉄筋7が埋設されることになるので、ブロック2と中詰めコンクリート4との定着性が良い。
【0051】
その後、最下段のブロック2に取り付けた手摺5を外す。
この時、手摺5の脚部50を挿入した取付穴23は凸部22の上端面に設けられているので、ブロック2の上面2aの高さまで中詰めコンクリート4を打設しても、取付穴23に打設されたコンクリートが流れ込んできておらず、固まって手摺5が取り外せないということがない。
【0052】
次いで、最下段のブロック2の上に2段目及び3段目のブロック2を積み重ねる。
積み重ねる際には、上段と下段のブロック2の傾斜外部露出前面2eが連続して面一になるように配置される。そうすると、上段のブロック2の中詰め材当接背面2dのうち最も内部側のものである控え壁部20の内側面20b及び先端面20cは、下段のブロック2の中詰め材当接背面2dのうち最も内部側のものである控え壁部20の内側面20b及び先端面20cより堰堤の内側に位置する。
【0053】
上記のように2段目及び3段目のブロック2を積み重ねた状態の要部断面図を図9に示す。
上段である3段目のブロック2の重心Wは、3段目のブロック2が2段目のブロック2から堰堤の内側に転倒する場合(矢印R)の回転軸X(2段目のブロック2の上面2aと控え壁部20の先端面20cとの交わる線)より堰堤の外部側に配置されているので、3段目のブロック2は安定して2段目のブロック2の上で自立し、3段目のブロック2が内側に倒れにくく中詰めコンクリート4の打設前であっても安全性が高くなっている。
【0054】
重なった下段のブロック2と上段のブロック2とは、幅方向に半幅ずらして千鳥状に配置され、下段のブロック2の上面2aに設けられた凸部22が、上段の隣接するブロック2の下面2b側部に形成された凹部24に凹凸嵌合され、上下のブロック2が連結される。
【0055】
次に、3段目のブロック2の取付穴23に手摺5を取り付け、2段目及び3段目のブロック2の鉄筋挿通孔21に鉄筋7を挿通して、各段のブロック2どうしを連結する。
さらに、前側のブロック2の中詰め材当接背面2dと後側のブロック2の中詰め材当接背面2dの間に、3段目のブロック2の1/2の高さまで中詰めコンクリート4を打設する(図10)。
【0056】
上記工程と同様に、下段のブロック2に取り付けた手摺5を外し、上段のブロック2を半幅ずつずらして積み上げてから、上段のブロック2に手摺5を取り付けると共に、上段のブロック2を鉄筋7で連結し、上段の前記ブロックの1/2の高さまで中詰めコンクリートをリフト打設することを繰り返していく(図11)。
【0057】
ブロック2を傾斜外部露出前面2eが連続した一つの傾斜面となるよう積み重ねると、上下のブロック2の鉛直面である中詰め材当接背面2dは階段状に重なるので、中詰めコンクリート4にブロック2の段部が係合してブロック2と中詰めコンクリート4との一体性が増す。
【0058】
また、上段のブロック2の中詰め材当接背面2dは、下段のブロック2の中詰め材当接背面2dより砂防ダム1の内側に位置しており、上段のブロック2の重心は、上段のブロック2が下段のブロック2から砂防ダム1の内側に転倒する場合の回転軸より砂防ダム1の外部側に配置されているため、ブロック2は安定して自立し、支保工等で支持する必要がない。
【0059】
ブロック2の両側面2c及び両側の控え壁部20の外側面20aは平行なので、各段の隣接するブロック2は広い面積で接触し、各段のブロック2どうしが水平方向に回転しにくい。
下段のブロック2の凸部22と上段のブロックの凹部24は幅方向に長く形成されており、これらが係合して上下段のブロック2が積み重ねられているので、水平方向に回転しにくい。
【0060】
砂防ダム1に用いるブロック2及び直部ブロック3の高さは1m以上となることもあり、ブロック2及び直部ブロック3の積み重ね、並びに、中詰めコンクリート4の打設は高所作業となるので、手摺5を容易に設置することができるとともに作業の安全性が高まる。
【0061】
ブロック2を積み重ねながら、各段のブロック2の1/2の高さまで中詰めコンクリート4をリフト打設し、ブロック2が所定の段数に達したら、同様にしてブロック2の上に直部ブロック3を積み重ね、上流側の直部ブロック3と下流側の直部ブロック3の間に、直部ブロック3の1/2の高さずつ中詰めコンクリート4をリフト打設する。
【0062】
このようにブロック2及び直部ブロック3の高さの1/2まで中詰めコンクリート4をリフト打設し、上段のブロック2及び直部ブロック3と下段のブロック2及び直部ブロック3との積み重ね面の位置における中詰め材の1回の打設リフトの天端と下端は、上段のブロック2及び直部ブロック3と下段のブロック2及び直部ブロック3との積み重ね面を挟んで配置されるので、ブロック2及び直部ブロック3の各段の積み重ね面と中詰めコンクリート4の水平打継目4aとが互いにずれることになり、ブロック2及び直部ブロック3が剪断力に抗して、中詰めコンクリート4が水平打継目4aへの応力が集中するのを防ぐ。
また、上下段のブロック2の積み重ね面と中詰めコンクリート4の水平打継目4aとが互いにずれることになるので防水性能も高くなる。
【0063】
また、中詰めコンクリート4を各段のブロック2及び直部ブロック3の高さの1/2までリフト打設し、上段のブロック2及び直部ブロック3と下段のブロック2及び直部ブロック3との積み重ね面の位置における中詰めコンクリート4の1回の打設リフトの天端は、上段のブロック2及び直部ブロック3の控え壁部20の下部に連通した鉄筋7より上方に位置しているとともに、下端は、下段のブロック2及び直部ブロック3の控え壁部20の上部に連通した鉄筋7より下方に位置しているので、中詰めコンクリート4の各打設リフトの上部及び下部に鉄筋7が確実に埋設されることになり、中詰めコンクリート4とブロック2及び直部ブロック3との定着性がさらに増大するとともに、砂防ダム1としての一体性が高まる。
【0064】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0065】
本実施形態では、堰堤が砂防ダムであるが、通常のダムや防潮堤等であってもよい。
【0066】
本実施形態では、ブロックの上に直部ブロックを積み重ねてあるが、堰堤の設置場所等によっては、直部ブロックを使用せず、堰堤の上端まで正面が傾斜面であるブロックを積み重ねることもできる。
【0067】
本実施形態では、最下段のブロックを設置してからその上面の高さまで中詰めコンクリートを打設し、さらに2段目及び3段目のブロックを積み重ねてから、3段目のブロックの1/2の高さまで中詰めコンクリート打設しているが、最下段のブロックの1/2の高さまで中詰めコンクリートを打設し、2段目のブロックを積み重ねてから、2段目のブロックの1/2の高さまで中詰めコンクリート打設してもよい。
【0068】
本実施形態では、中詰めコンクリート4を下段のブロック2の1/2の高さから上段のブロック2の1/2の高さまでを1リフトとしているが、これに限られない。1リフトの高さの天端と下端が上下段のブロックの積み重ね面を挟んでいるようにすれば適宜変更が可能である。
【0069】
本実施形態では、ブロック及び直部ブロックの背面両側に控え壁部を突設しているが、背面の幅方向中央部に一つの控え壁部を設けることもできる。
【0070】
本実施形態では、中詰め材として中詰めコンクリート4を使用したがこれに限られず、ソイルセメントや流動化処理土などの他の材料であっても良い。
【0071】
変形例を含む実施形態における各技術的事項を実施形態に適用して実施例としても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 砂防ダム
2 ブロック
2a 上面
2b 下面
2c 側面
2d 中詰め材当接背面
2e 傾斜外部露出前面
20 控え壁部
21 鉄筋挿通孔
22 凸部
23 取付穴
24 凹部
3 直部ブロック
3e 前面
4 中詰めコンクリート
4a 水平打継目
5 手摺
50 脚部
6 基礎ブロック
60 突起
7 鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11