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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005658
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】機体制御システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A01B69/00 303H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105931
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】朝田 諒
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB06
2B043BA05
2B043BA09
2B043BB14
2B043DA01
2B043DC01
2B043EA19
2B043EA22
2B043EA34
2B043EB05
2B043EB08
2B043EB15
2B043EB16
2B043EB22
2B043EC12
2B043EC14
2B043EC16
2B043ED12
(57)【要約】
【課題】農作業車が圃場の作物の高さに応じて好適な農作業を行いやすい機体制御システムを提供する。
【解決手段】作物Eが植立している圃場において自動作業走行する農作業車1のための機体制御システムであって、農作業車1の作業走行時に、農作業車1の前方の物体の三次元位置情報を取得する取得部と、三次元位置情報のうちの高さ情報に基づいて圃場の作物Eの高さを示す作物高さ情報を算出する作物高さ算出部と、作物高さ情報に基づいて農作業車1の機体を制御する機体制御部と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物が植立している圃場において自動作業走行する農作業車のための機体制御システムであって、
前記農作業車の作業走行時に、前記農作業車の前方の物体の三次元位置情報を取得する取得部と、
前記三次元位置情報のうちの高さ情報に基づいて前記圃場の作物の高さを示す作物高さ情報を算出する作物高さ算出部と、
前記作物高さ情報に基づいて前記農作業車の機体を制御する機体制御部と、を備える機体制御システム。
【請求項2】
前記機体制御部は、前記圃場における前記農作業車の目標走行経路を生成する経路生成部と、前記機体が前記目標走行経路に沿って走行するように前記機体の走行を制御する走行制御部と、前記作物高さ情報に基づいて前記目標走行経路の位置または方向を変更する経路変更部と、を有している請求項1に記載の機体制御システム。
【請求項3】
前記農作業車は、条列を構成した状態で作物が植立している前記圃場において自動作業走行するように構成されており、
前記経路生成部は、前記目標走行経路が前記条列の延びる方向に沿うように、前記目標走行経路を生成し、
前記農作業車が前記条列に沿う作業走行を実行しているときに前記取得部によって取得された前記三次元位置情報のうちの高さ情報に基づいて算出された前記作物高さ情報に基づいて前記条列の平面位置を算出する条列位置算出部を備え、
前記経路変更部は、前記条列の平面位置に基づいて前記目標走行経路の位置または方向を変更する請求項2に記載の機体制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場において自動作業走行する農作業車のための機体制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場において自動作業走行する農作業車として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この農作業車(特許文献1では「自律走行コンバイン」)は、ロボット制御装置からの動作指令により、走行装置や刈取搬送装置が駆動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、圃場の作物の高さに応じて農作業車の機体を制御することについては記載されていない。
【0005】
本発明の目的は、農作業車が圃場の作物の高さに応じて好適な農作業を行いやすい機体制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、作物が植立している圃場において自動作業走行する農作業車のための機体制御システムであって、前記農作業車の作業走行時に、前記農作業車の前方の物体の三次元位置情報を取得する取得部と、前記三次元位置情報のうちの高さ情報に基づいて前記圃場の作物の高さを示す作物高さ情報を算出する作物高さ算出部と、前記作物高さ情報に基づいて前記農作業車の機体を制御する機体制御部と、を備えることにある。
【0007】
本構成によれば、作物高さ情報に基づいて農作業車の機体が制御される。これにより、農作業車が圃場の作物の高さに応じて好適な農作業を行いやすい機体制御システムを実現できる。
【0008】
さらに、本発明において、前記機体制御部は、前記圃場における前記農作業車の目標走行経路を生成する経路生成部と、前記機体が前記目標走行経路に沿って走行するように前記機体の走行を制御する走行制御部と、前記作物高さ情報に基づいて前記目標走行経路の位置または方向を変更する経路変更部と、を有していると好適である。
【0009】
本構成によれば、作物高さ情報に基づいて目標走行経路の位置または方向が変更される。その結果、農作業車の機体の走行位置または走行方向が変化することとなる。即ち、本構成によれば、作物高さ情報に基づいて機体の走行位置または走行方向を変更可能な機体制御システムを実現できる。
【0010】
さらに、本発明において、前記農作業車は、条列を構成した状態で作物が植立している前記圃場において自動作業走行するように構成されており、前記経路生成部は、前記目標走行経路が前記条列の延びる方向に沿うように、前記目標走行経路を生成し、前記農作業車が前記条列に沿う作業走行を実行しているときに前記取得部によって取得された前記三次元位置情報のうちの高さ情報に基づいて算出された前記作物高さ情報に基づいて前記条列の平面位置を算出する条列位置算出部を備え、前記経路変更部は、前記条列の平面位置に基づいて前記目標走行経路の位置または方向を変更すると好適である。
【0011】
本構成によれば、農作業車が条列に沿う作業走行を実行しているとき、条列の平面位置に基づいて機体の走行位置または走行方向を変更することが可能となる。これにより、条列を構成した状態で作物が植立している圃場において、農作業車が好適な作業走行を行いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】コンバインの左側面図である。
図2】圃場における周回走行を示す図である。
図3】目標走行経路に沿った刈取走行を示す図である。
図4】周回走行をしているコンバインを示す図である。
図5】制御部に関する構成を示すブロック図である。
図6】作物位置算出部により算出される作物の平面位置情報の一例を示す図である。
図7】目標走行経路等を示す図である。
図8】作物高さ算出部により算出される波形の一例を示す図である。
図9】条列ライン等を示す図である。
図10】目標走行経路の平行移動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、図中の矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0014】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、普通型のコンバイン1(本発明に係る「農作業車」に相当)は、収穫部H、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0015】
走行装置11は、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、コンバイン1に搭載されたエンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって走行可能である。
【0016】
運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられている。運転部12には、コンバイン1の作業を監視するオペレータが搭乗可能である。尚、オペレータは、コンバイン1の機外からコンバイン1の作業を監視していても良い。
【0017】
運転部12は、運転座席12a及びキャビン12bを有している。運転座席12aは、キャビン12bの内側に設けられている。運転座席12aには、オペレータが着座可能である。
【0018】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0019】
収穫部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられている。また、収穫部Hは、刈取装置15及びリール17を含んでいる。
【0020】
刈取装置15は、圃場の作物E(図4参照)を刈り取る。特に限定されないが、作物Eは、例えば大豆等であっても良い。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の作物Eを掻き込む。刈取装置15により刈り取られた作物Eは、搬送部16へ送られる。
【0021】
この構成により、収穫部Hは、圃場の作物Eを収穫する。そして、コンバイン1は、刈取装置15によって圃場の作物Eを刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0022】
収穫部Hにより収穫された作物Eは、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、作物Eは脱穀装置13へ搬送される。
【0023】
脱穀装置13において、作物Eは脱穀処理される。脱穀処理により得られた収穫物(穀粒)は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された収穫物は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0024】
ここで、コンバイン1は、条列を構成した状態で作物Eが植立している圃場において自動作業走行を行うことができるように構成されている。本実施形態において、当該圃場は、具体的には畝圃場である。また、本実施形態における作業走行は、具体的には、刈取走行である。
【0025】
以下では、コンバイン1が畝圃場において刈取走行を行うものとして説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、コンバイン1が刈取走行を行う圃場は、条列を構成した状態で作物Eが植立していれば、畝圃場でなくても良い。
【0026】
コンバイン1は、図2に示すように畝圃場内の外周領域SAで作物Eを収穫しながら周回走行を行った後、図3に示すように畝圃場内の内周領域CAで刈取走行を行うことにより、畝圃場の作物Eを収穫する。
【0027】
尚、外周領域SAとは、畝圃場内の外周側の領域である。また、内周領域CAとは、外周領域SAに囲まれた領域である。
【0028】
本実施形態においては、図2に示す周回走行は手動走行により行われる。尚、本発明はこれに限定されず、周回走行のうちの一部または全てが自動走行により行われても良い。図3に示す内周領域CAでの刈取走行は、自動走行により行われる。即ち、コンバイン1は、自動作業走行が可能である。
【0029】
尚、図2に示す例では、周回走行の周回数は3周である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、周回走行の周回数は、3周以外の数(例えば1周)であっても良い。
【0030】
本実施形態においては、図2及び図3に示すように、圃場外に運搬車CVが駐車している。そして、外周領域SAにおいて、運搬車CVの近傍位置には、停車位置PPが設定されている。尚、図2においては、停車位置PPの図示を省略している。
【0031】
運搬車CVは、コンバイン1が穀粒排出装置18から排出した収穫物を収集し、運搬することができる。収穫物排出の際、コンバイン1は停車位置PPに停車し、穀粒排出装置18によって収穫物を運搬車CVへ排出する。
【0032】
〔畝圃場について〕
図2に示すように、本実施形態において、畝圃場には、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3が含まれている。第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3には、それぞれ、複数の畝M(図4参照)が設けられている。図2において、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3における畝Mの延びる方向が、それぞれ、両矢印にて示されている。尚、畝Mの延びる方向は、作物Eの条列の延びる方向と同一である。
【0033】
図4に示すように、本実施形態において、各畝Mには、それぞれ、1条(1列)の作物Eが植立している。ただし、本発明はこれに限定されず、各畝Mには、それぞれ、複数条の作物Eが植立していても良い。
【0034】
図2に示すように、第1領域R1及び第2領域R2は、外周領域SAに位置している。そして、第1領域R1及び第2領域R2における畝Mの延びる方向は、紙面左右方向である。
【0035】
第3領域R3は、外周領域SAと内周領域CAとに亘っている。第3領域R3は、第1領域R1と第2領域R2との間に位置している。そして、第3領域R3における畝Mの延びる方向は、紙面上下方向である。
【0036】
尚、本実施形態において、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3は、それぞれ、コンバイン1による収穫作業がまだ行われていない畝M(条列)に対応するものとする。即ち、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3は、コンバイン1による収穫作業が進むに従って、縮小していく。
【0037】
例えば、図3に示すように、外周領域SAでの周回走行が完了した時点では、第1領域R1及び第2領域R2は存在せず、且つ、第3領域R3は、内周領域CAに一致している。
【0038】
尚、図3では、内周領域CAが第3領域R3よりも小さく描かれているが、実際には、図3に示す状態において、内周領域CAと第3領域R3とは一致している。
【0039】
ここで、内周領域CAにおけるコンバイン1のための目標走行経路LI(図3参照)は、図5に示す制御システムA(本発明に係る「機体制御システム」に相当)によって管理される。即ち、制御システムAは、作物Eが植立している圃場において自動作業走行するコンバイン1のためのものである。より具体的には、制御システムAは、条列を構成した状態で作物Eが植立している圃場において自動作業走行するコンバイン1のためのものである。
【0040】
以下では、制御システムAについて詳述する。
【0041】
〔作物の平面位置情報の算出〕
図1に示すように、コンバイン1は、制御部20を備えている。図5に示すように、制御部20は、制御システムAに含まれている。制御部20は、自車位置算出部21及び条列情報処理部22を有している。
【0042】
また、図1図4図5に示すように、コンバイン1は、取得部40を備えている。尚、取得部40は、制御システムAに含まれている。
【0043】
図1に示すように、衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星GSからのGPS信号を受信する。そして、図5に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを自車位置算出部21へ送る。
【0044】
尚、本発明はこれに限定されない。衛星測位モジュール80は、GPSを利用するものでなくても良い。例えば、衛星測位モジュール80は、GPS以外のGNSS(GLONASS、Galileo、みちびき、BeiDou等)を利用するものであっても良い。
【0045】
自車位置算出部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。算出されたコンバイン1の経時的な位置座標は、取得部40へ送られる。
【0046】
尚、取得部40へ送られる位置座標は、コンバイン1のうち、衛星測位モジュール80の位置座標であっても良いし、取得部40の位置座標であっても良いし、収穫部Hの左右方向中心位置の座標であっても良い。
【0047】
図1に示すように、取得部40は、運転部12の上部に取り付けられている。取得部40は、コンバイン1の進行方向前方に向けられている。取得部40は、コンバイン1の作業走行時に、検出対象領域FA(図4参照)に存在する物体の三次元位置情報(平面位置及び高さ)を検出する。取得部40の検出対象領域FAは、コンバイン1の機体の前方へ広がっている。尚、本発明はこれに限定されず、取得部40の検出対象領域FAは、機体の左方、右方、または後方へ広がっていても良い。
【0048】
即ち、取得部40は、コンバイン1の作業走行時に、コンバイン1の周囲の物体の三次元位置情報を取得する。このように、制御システムAは、コンバイン1の作業走行時に、コンバイン1の前方の物体の三次元位置情報を取得する取得部40を備えている。
【0049】
特に、取得部40は、内周領域CAの条列と交差する方向に沿ったコンバイン1の作業走行時、及び、内周領域CAの条列の延びる方向に沿ったコンバイン1の作業走行時、の何れにおいても、コンバイン1の周囲の物体の三次元位置情報を取得可能である。
【0050】
即ち、制御システムAは、条列と交差する方向に沿ったコンバイン1の作業走行時に、コンバイン1の周囲の物体の三次元位置情報を取得する取得部40を備えている。
【0051】
詳述すると、本実施形態における取得部40は、ToF(Time of flight)測定方式の測定装置である二次元スキャンLiDARである。尚、本発明はこれに限定されず、取得部40は、三次元スキャンLiDARであっても良い。また、取得部40の測定方式は、ToF測定方式に限定されず、ステレオマッチング測定方式等であっても良い。
【0052】
取得部40は、ToF測定方式の測定結果と、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、に基づいて、検出対象領域FAに存在する物体の三次元位置情報を出力する。当該三次元位置情報は、物体の平面位置及び高さを示す点群データである。
【0053】
尚、本発明はこれに限定されず、取得部40は、検出対象領域FAに存在する物体の三次元位置情報を取得可能であれば、いかなる構成であっても良い。
【0054】
図4において、コンバイン1は、外周領域SAにおける周回走行を実行中である。尚、図4では、位置P1に位置しているときのコンバイン1が仮想線にて示されている。また、位置P2に位置しているときのコンバイン1が実線にて示されている。位置P2は、位置P1よりも圃場内側に位置している。また、位置P2に位置しているときに収穫済みである畝M(作物Eの条)、及び、各畝M(各条列)のうち収穫済みである部分が仮想線にて示されている。
【0055】
コンバイン1が外周領域SAにおける周回走行を実行しているときにおいて、コンバイン1が内周領域CAの端部に隣接する状態で走行しているとき、検出対象領域FAに、内周領域CAの最外周部分に位置する物体が捉えられる(言い換えれば、検出対象領域FA内に入る)こととなる。例えば、コンバイン1が図4に示す位置P2に位置しているとき、検出対象領域FAに、内周領域CAの最外周部分に位置する物体が捉えられる。このとき捉えられる物体には、内周領域CAの最外周部分に位置する作物Eが含まれている。外周領域SAにおける周回走行時に取得された三次元位置情報は、取得部40から条列情報処理部22へ送られる。
【0056】
条列情報処理部22は、条列方向判定部31を有している。条列方向判定部31は、外周領域SAにおける周回走行時に取得された三次元位置情報に基づいて、内周領域CAにおける作物Eの条列の延びる方向を判定する。
【0057】
例えば、外周領域SAにおける周回走行時において、コンバイン1が所定方向に走行しているときに取得された三次元位置情報が、作物Eの形状を有する物体が所定間隔を空けて並んでいることを示すものである場合、当該所定方向に交差する方向(例えば直交する方向)を、内周領域CAにおける作物Eの条列の延びる方向として判定する。
【0058】
図5に示すように、条列情報処理部22は、作物位置算出部32を有している。作物位置算出部32は、条列方向判定部31による判定結果に基づいて、外周領域SAにおける周回走行時に取得された三次元位置情報から、内周領域CAにおける条列の延びる方向での端部に位置する物体の三次元位置情報を抽出する。
【0059】
例えば、作物位置算出部32は、外周領域SAにおける周回走行時に取得された三次元位置情報から、外周領域SAに対応する部分を除外することにより、内周領域CAの最外周部分に位置する物体の三次元位置情報を生成しても良い。さらに、作物位置算出部32は、当該三次元位置情報から、内周領域CAにおける条列の延びる方向における一方側端部及び他方側端部に対応する部分のみを抽出することにより、内周領域CAにおける条列の延びる方向での端部に位置する物体の三次元位置情報を抽出しても良い。
【0060】
そして、作物位置算出部32は、内周領域CAにおける条列の延びる方向での端部に位置する物体の三次元位置情報のうちの高さ情報に基づいて、内周領域CAにおける条列の端部に位置する作物Eの平面位置情報を算出する。これにより、作物位置算出部32は、コンバイン1が圃場内の外周領域SAにおける周回走行を実行しているときに取得部40によって取得された三次元位置情報のうちの高さ情報に基づいて、条列の端部に位置する作物Eの平面位置情報を算出する。
【0061】
例えば、内周領域CAにおける条列の延びる方向での端部に位置する物体の三次元位置情報に、高さ方向での頂点(ピーク)が所定間隔を空けて複数存在する場合、作物位置算出部32は、それらの頂点の平面位置を、条列の端部に位置する作物Eの平面位置情報として算出する。
【0062】
即ち、制御システムAは、三次元位置情報のうちの高さ情報に基づいて条列の端部に位置する作物Eの平面位置情報を算出する作物位置算出部32を備えている。
【0063】
図6には、作物位置算出部32により算出される作物Eの平面位置情報の一例が示されている。図6及び図7においては、内周領域CAにおける条列の延びる方向が、両矢印にて示されている。
【0064】
図6に示すように、作物位置算出部32は、各第1作物E1の平面位置情報と、各第2作物E2の平面位置情報と、を算出するように構成されている。第1作物E1とは、条列の一方側端部に位置する作物Eである。第2作物E2とは、条列の他方側端部に位置する作物Eである。
【0065】
即ち、作物位置算出部32は、条列の一方側端部に位置する作物Eの平面位置情報と、条列の他方側端部に位置する作物Eの平面位置情報と、を算出する。
【0066】
尚、制御部20、及び、制御部20に含まれる自車位置算出部21等の各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0067】
〔目標走行経路の生成〕
図5に示すように、制御部20は、機体制御部23を有している。機体制御部23は、経路生成部41を有している。
【0068】
作物位置算出部32により算出された作物Eの平面位置情報は、機体制御部23へ送られる。経路生成部41は、当該平面位置情報に基づいて、図7に示すように、内周領域CAにおけるコンバイン1の複数の目標走行経路LIを生成する。このとき、経路生成部41は、目標走行経路LIが条列の延びる方向に沿うように、目標走行経路LIを生成する。図7に示すように、各目標走行経路LIは、互いに平行に延びている。
【0069】
詳述すると、本実施形態におけるコンバイン1の収穫部Hの収穫幅は、三つの条列の幅の合計に対応している。言い換えれば、収穫部Hの収穫幅は、3条分である。経路生成部41は、条列の一方側または他方側の端部に位置する作物Eを、三つずつの組に分けると共に、各組ごとに1本の目標走行経路LIを生成する。このとき、目標走行経路LIは、各組における中央に位置する作物Eの位置を通過するように生成される。これにより、経路生成部41は、図7に示すように、3条につき1本の目標走行経路LIを生成する。
【0070】
尚、このとき、経路生成部41は、条列の一方側端部に位置する作物Eの平面位置情報を基準にして目標走行経路LIを生成すると共に、条列の他方側端部に位置する作物Eの平面位置情報を基準にして目標走行経路LIを生成しても良い。この場合、条列の一方側端部の作物Eと、他方側端部の作物Eと、が条間方向で位置ずれしていることにより、一方側端部を基準とした目標走行経路LIと、他方側端部を基準とした目標走行経路LIと、が一致しないケースが想定される。その場合は、例えば、一方側端部を基準とした目標走行経路LIと他方側端部を基準とした目標走行経路LIとのうち、何れか一方が採用されても良い。あるいは、一方側端部を基準とした目標走行経路LIと他方側端部を基準とした目標走行経路LIとの平均的な位置を通る目標走行経路LIが生成されても良い。
【0071】
このように、経路生成部41は、作物位置算出部32により算出された作物Eの平面位置情報に基づいて、圃場内の内周領域CAにおけるコンバイン1の複数の目標走行経路LIを生成する。即ち、制御システムAは、平面位置情報に基づいて圃場内の内周領域CAにおけるコンバイン1の目標走行経路LIを生成する経路生成部41を備えている。
【0072】
図5に示すように、機体制御部23は、走行制御部42を有している。また、自車位置算出部21により算出されたコンバイン1の経時的な位置座標は、機体制御部23へ送られる。走行制御部42は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、経路生成部41により生成された目標走行経路LIと、に基づいて、コンバイン1の自動作業走行を制御する。より具体的には、走行制御部42は、図3に示すように、コンバイン1が、目標走行経路LIに沿った作業走行と方向転換とを繰り返すように、走行装置11を制御する。これにより、コンバイン1は、内周領域CAの全体を網羅するように刈取走行を行う。
【0073】
〔経路変更部〕
図5に示すように、条列情報処理部22は、作物高さ算出部33及び条列位置算出部34を有している。作物高さ算出部33は、コンバイン1が目標走行経路LIに沿った自動作業走行を実行しているときに取得部40により取得された物体の三次元位置情報をYZ平面に投影することにより、図8に示すような波形Jを算出する。YZ平面とは、コンバイン1の進行方向(前後方向)に対して垂直な平面である。波形Jは、取得部40により取得された三次元位置情報のうち、コンバイン1の左右方向での各位置における物体の高さ情報を示すものである。尚、コンバイン1が目標走行経路LIに沿った自動作業走行を実行しているとき、コンバイン1は、条列に沿う作業走行を実行していることとなる。
【0074】
さらに、作物高さ算出部33は、波形Jのピーク点Kを抽出する。図8に示す例では、第1ピーク点K1、第2ピーク点K2、第3ピーク点K3、第4ピーク点K4が抽出されている。各ピーク点Kは、作物Eの上端部の位置に対応している。即ち、各ピーク点Kを示す情報は、作物高さ情報である。作物高さ情報とは、圃場の作物Eの高さを示す情報である。尚、図8に示す例では、第1ピーク点K1に対応する作物Eは刈取済みである。また、第2ピーク点K2、第3ピーク点K3、第4ピーク点K4に対応する作物Eは、まだ刈り取られていない。
【0075】
このように、制御システムAは、三次元位置情報のうちの高さ情報に基づいて圃場の作物Eの高さを示す作物高さ情報を算出する作物高さ算出部33を備えている。
【0076】
作物高さ算出部33は、以上で説明した処理を、コンバイン1が所定距離走行する毎に実行する。これにより、作物高さ算出部33は、コンバイン1が所定距離走行する毎に、ピーク点Kを示す情報を出力する。当該情報は、条列位置算出部34へ送られる。
【0077】
条列位置算出部34は、ピーク点Kを示す情報に基づいて、図9に示すように、ピーク点KをXY平面にプロットする。XY平面とは、コンバイン1の上下方向(鉛直方向)に対して垂直な平面である。
【0078】
より具体的には、条列位置算出部34は、YZ平面の各ピーク点Kのうち、特に、まだ刈り取られていない条列のうちコンバイン1の左右方向での右端に位置する条列の作物Eに対応するピーク点Kを、XY平面にプロットする。
【0079】
例えば、図8に示す例では、各ピーク点Kのうち、まだ刈り取られていない条列のうちコンバイン1の左右方向での右端に位置する条列の作物Eに対応するピーク点Kは、第2ピーク点K2である。そのため、第1ピーク点K1、第2ピーク点K2、第3ピーク点K3、第4ピーク点K4のうち、第2ピーク点K2のみが、図9に示すようにXY平面にプロットされる。
【0080】
尚、このとき、条列位置算出部34は、例えば、YZ平面の各ピーク点Kから、コンバイン1が既に通過した領域に含まれるピーク点Kを除外することにより、まだ刈り取られていない条の作物Eに対応するピーク点Kを抽出しても良い。さらに、条列位置算出部34は、そのように抽出されたピーク点Kのうち最も右側に位置するものを、XY平面にプロットするように構成されていても良い。
【0081】
本実施形態において、コンバイン1は、内周領域CAにおける作業走行を行う際、機体の右側に作業済みの領域(既刈領域)が位置するように走行する。ただし、本発明はこれに限定されず、コンバイン1は、内周領域CAにおける作業走行を行う際、機体の左側に作業済みの領域(既刈領域)が位置するように走行しても良い。その場合、条列位置算出部34は、YZ平面の各ピーク点Kのうち、特に、まだ刈り取られていない条のうちコンバイン1の左右方向での左端に位置する条の作物Eに対応するピーク点Kを、XY平面にプロットしても良い。
【0082】
図9に示すように、条列位置算出部34は、XY平面にプロットされた一つまたは複数のピーク点Kに基づいて、条列ラインNを算出する。条列ラインNは、まだ刈り取られていない条列のうちコンバイン1の左右方向での右端に位置する条列の平面位置を示す線である。
【0083】
特に限定されないが、条列位置算出部34は、XY平面にプロットされたピーク点Kを、例えば最小二乗法を用いて近似することにより、条列ラインNを算出しても良い。
【0084】
このように、制御システムAは、コンバイン1が条列に沿う作業走行を実行しているときに取得部40によって取得された三次元位置情報のうちの高さ情報に基づいて算出された作物高さ情報(ピーク点Kを示す情報)に基づいて条列の平面位置を算出する条列位置算出部34を備えている。
【0085】
図5に示すように、機体制御部23は、経路変更部43を有している。条列位置算出部34により算出された条列ラインNを示す情報は、機体制御部23へ送られる。経路変更部43は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、条列ラインNを示す情報と、に基づいて、目標走行経路LIの位置または方向を変更する。このとき、経路変更部43は、コンバイン1による自動作業走行が適切に行われるように、目標走行経路LIの位置または方向を変更する。例えば、経路変更部43は、収穫部Hが作物Eの株を割ってしまう位置を通過する事態を避けるように、目標走行経路LIの位置または方向を変更すると好適である。
【0086】
ここで、上述の通り、条列ラインNは、作物高さ情報(ピーク点Kを示す情報)に基づいて算出される。即ち、経路変更部43は、作物高さ情報に基づいて、目標走行経路LIの位置または方向を変更する。
【0087】
このように、機体制御部23は、圃場におけるコンバイン1の目標走行経路LIを生成する経路生成部41と、機体が目標走行経路LIに沿って走行するように機体の走行を制御する走行制御部42と、作物高さ情報に基づいて目標走行経路LIの位置または方向を変更する経路変更部43と、を有している。また、経路変更部43は、条列の平面位置に基づいて目標走行経路LIの位置または方向を変更する。
【0088】
例えば、図9に示す例では、コンバイン1は、第1経路LI1に沿って自動作業走行を実行している。第1経路LI1は、目標走行経路LIである。この例では、コンバイン1は、収穫部Hの左右中央位置が目標走行経路LI上に位置するように走行する。また、この例では、条列ラインNが、収穫部Hの右端の近傍に位置している。そのため、コンバイン1が第1経路LI1に沿った自動作業走行を継続した場合、収穫部Hの右端が作物Eの株を割ってしまう可能性が比較的高い。
【0089】
この場合、経路変更部43は、コンバイン1の位置座標と、条列ラインNを示す情報と、に基づいて、例えば、図10に示すように、目標走行経路LIを右側へ所定距離だけ平行移動する。即ち、目標走行経路LIの位置を変更する。これにより、新たな目標走行経路LIである第2経路LI2が生成される。
【0090】
第2経路LI2が生成されると、コンバイン1は、第2経路LI2に沿って自動作業走行を実行する。即ち、第2経路LI2が生成された直後に、コンバイン1は、右側へ旋回する。その後、コンバイン1は、収穫部Hの左右中央位置が第2経路LI2上に位置するように走行する。これにより、収穫部Hの右端が作物Eの株を割ってしまう可能性が低くなる。
【0091】
尚、本発明はこれに限定されず、経路変更部43は、コンバイン1の位置座標と、条列ラインNを示す情報と、に基づいて、目標走行経路LIの方向を変更しても良いし、目標走行経路LIの位置及び方向を変更しても良い。
【0092】
このように、本実施形態における機体制御部23は、作物高さ情報に基づいて目標走行経路LIの位置または方向を変更する。そして、機体制御部23は、目標走行経路LIの位置または方向を変更することにより、コンバイン1の機体の走行を制御する。即ち、機体制御部23は、作物高さ情報に基づいてコンバイン1の機体を制御する。
【0093】
このように、制御システムAは、作物高さ情報に基づいてコンバイン1の機体を制御する機体制御部23を備えている。
【0094】
以上で説明した構成によれば、作物高さ情報に基づいてコンバイン1の機体が制御される。これにより、コンバイン1が圃場の作物Eの高さに応じて好適な農作業を行いやすい制御システムAを実現できる。
【0095】
〔その他の実施形態〕
(1)走行装置11は、ホイール式であっても良いし、セミクローラ式であっても良い。
【0096】
(2)制御部20に含まれる各要素のうち、一部または全てがコンバイン1の外部に備えられていても良いのであって、例えば、コンバイン1の外部に設けられた管理サーバに備えられていても良い。
【0097】
(3)経路生成部41は、目標走行経路LIが条列の延びる方向に交差するように、目標走行経路LIを生成しても良い。
【0098】
(4)作物位置算出部32は、コンバイン1が圃場内の外周領域SAにおける周回走行を実行しているとき以外のタイミングで取得部40によって取得された三次元位置情報のうちの高さ情報に基づいて、内周領域CAの条列の端部に位置する作物Eの平面位置情報を算出しても良い。
【0099】
(5)作物位置算出部32は、各第1作物E1の平面位置情報と、各第2作物E2の平面位置情報と、のうち、何れか一方のみを算出するように構成されていても良い。
【0100】
(6)機体制御部23は、作物高さ情報に基づいて、目標走行経路LIの位置または方向の変更を介することなく、コンバイン1の機体の走行を制御しても良い。また、機体制御部23は、作物高さ情報に基づいて、走行以外(例えば収穫部Hの昇降)を制御しても良い。
【0101】
(7)経路生成部41は設けられていなくても良い。即ち、制御システムAは、目標走行経路LIを生成しないように構成されていても良い。
【0102】
(8)コンバイン1は、条列を構成していない状態で作物Eが植立している圃場において自動作業走行するものであっても良い。
【0103】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、コンバインだけでなく、ニンジン収穫機や自走式の管理機等、種々の農作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 :コンバイン(農作業車)
23 :機体制御部
33 :作物高さ算出部
34 :条列位置算出部
40 :取得部
41 :経路生成部
42 :走行制御部
43 :経路変更部
A :制御システム(機体制御システム)
E :作物
LI :目標走行経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10