(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056583
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】熱転写システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/325 20060101AFI20240416BHJP
B41J 17/38 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B41J2/325 A
B41J17/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163593
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(72)【発明者】
【氏名】望月 弘毅
【テーマコード(参考)】
2C065
2C068
【Fターム(参考)】
2C065AA01
2C065DA11
2C065DA19
2C065DA22
2C068AA02
2C068AA06
2C068AA15
2C068PP03
2C068PP04
(57)【要約】
【課題】熱転写システムの中断中にインクリボンが交換されたことを確実に検出する。
【解決手段】熱転写システム10の制御部40は、送出部回転速度センサ16cと、巻取部回転速度センサ21cからの信号に基づいて第1回転速度比を求める。制御部40は熱転写システム10が中断して再開する際、第2回転速度比を求め、第1回転速度比と第2回転速度比を比較してインクリボンの交換の有無を判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱転写システムにおいて、
インク層と支持層とを有するインクリボンを送り出す送出部と、
前記送出部の下流側に配置され、前記インクリボンの前記支持層側に設けられた第1加熱体を有し、前記インクリボンの前記インク層のインクを被転写体に対して第1パターンで転写する第1転写装置と、
前記第1転写装置の下流側に配置され、インク転写済の前記インクリボンを巻き取る巻取部と、
前記巻取部の近傍に設けられ、インク転写済の前記インクリボンを前記支持層側から加熱する第2加熱体を有し、前記第1パターンと異なる第2パターンで前記インク層のインキを内側の前記インクリボンに転写する第2転写装置と、
前記送出部の回転速度を検出する送出部回転速度センサと、
前記巻取部の回転速度を検出する巻取部回転速度センサと、
制御部とを備え、
前記制御部は前記熱転写システムの動作中、前記送出部回転速度センサと前記巻取部回転速度センサからの信号に基づいて、前記送出部と前記巻取部との間の第1回転速度比を求め、
前記熱転写システムの動作を中止し、その後に前記熱転写システムの動作を再開した際、前記送出部回転速度センサと前記巻取部回転速度センサからの信号に基づいて前記送出部と前記巻取部との間の第2回転速度比を求め、前記第2回転速度比と前記第1回転速度比が異なる場合に前記インクリボンが交換されたと判断する、熱転写システム。
【請求項2】
前記制御部は前記インクリボンが交換されたと判断した際、エラー処理を実行する、請求項1記載の熱転写システム。
【請求項3】
前記インクリボンを外部へ取り出すことを防ぐインクリボンロック機構を更に備え、
前記制御部は前記熱転写システムの動作が中止した場合、前記インクリボンロック機構を作動させる、請求項1または2記載の熱転写システム。
【請求項4】
前記制御部は前記第2回転速度比が前記第1回転速度比に対して95%~105%の範囲から外れるとき、前記第2回転速度比が前記第1回転速度比と異なると判断する、請求項1または2記載の熱転写システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、支持層とインク層とを有するインクリボンを用いて被転写体にインクを転写する熱転写システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクリボンを用いて、カードなどの被転写体に文字などの像を印字する転写システムが、広く普及している。インクリボンは、帯状に延びるリボン(支持層)と、リボン上に形成され、染料等を含んだインク層と、を有している。インクリボンを用いた印字においては、印字されるべき所望の像に対応したパターンで、インクが被転写体に転写される。
【0003】
この場合、インク転写済のインクリボンには、被転写体への転写によりインクが抜けた部分が、印字された像に対応したパターンで存在している。このため、インク転写済のインクリボンから、印字された像を特定することが可能である。従って、インクリボンを用いて、被転写体にID情報などの秘匿すべき情報を印字する場合、インク転写済のインクリボンの取り扱いに注意が必要となる。
【0004】
このような問題に対応するため、インクリボンのインク層のインクを被転写体に対して第1パターンで転写する第1転写装置と、インク転写済のインクリボンを巻き取る巻取部と、巻取部の近傍に設けられ、インク転写済のインクリボンを支持層側から加熱する第2転写装置とを設けた熱転写システムが提案されている。この熱転写システムによれば、第2転写装置により加熱されるインクリボンのインク層のインクを、第1転写装置における第1パターンと異なる第2パターンで、当該インクリボンの内側に位置するインクリボンの支持層に転写することができ、これによって、インク転写済のインクリボンから、第1転写装置における第1パターンが特定されるのを防ぐことができる。この場合、第1転写装置における転写後に、第2転写装置を用いてインク転写済のインクリボンに対して第2パターンを引き続いて転写して、インクリボンから第1パターンが特定されることをより確実に防ぐ技術(終了処理)も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、第2転写装置を用いてインクリボンのインク層のインクを第1転写装置による第1パターンと異なる第2パターンで転写することにより、第1転写装置における第1パターンを特定することを防ぐことができる。しかしながら、熱転写システムの動作が中断した際、誤って熱転写システムからインクリボンが取り出されることがある。この場合は上述した終了処理が行われることなくインクリボンが取り出されるため、インクリボンから第1パターンが特定される恐れがでてくる。
【0007】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、熱転写システムの動作が中断した際に誤ってインクリボンを取り出すことを防止する熱転写システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、熱転写システムにおいて、インク層と支持層とを有するインクリボンを送り出す送出部と、前記送出部の下流側に配置され、前記インクリボンの前記支持層側に設けられた第1加熱体を有し、前記インクリボンの前記インク層のインクを被転写体に対して第1パターンで転写する第1転写装置と、前記第1転写装置の下流側に配置され、インク転写済の前記インクリボンを巻き取る巻取部と、前記巻取部の近傍に設けられ、インク転写済の前記インクリボンを前記支持層側から加熱する第2加熱体を有し、前記第1パターンと異なる第2パターンで前記インク層のインキを内側の前記インクリボンに転写する第2転写装置と、前記送出部の回転速度を検出する送出部回転速度センサと、前記巻取部の回転速度を検出する巻取部回転速度センサと、制御部とを備え、前記制御部は前記熱転写システムの動作中、前記送出部回転速度センサと前記巻取部回転速度センサからの信号に基づいて、前記送出部と前記巻取部との間の第1回転速度比を求め、前記熱転写システムの動作を中止し、その後に前記熱転写システムの動作を再開した際、前記送出部回転速度センサと前記巻取部回転速度センサからの信号に基づいて前記送出部と前記巻取部との間の第2回転速度比を求め、前記第2回転速度比と前記第1回転速度比が異なる場合に前記インクリボンが交換されたと判断する、熱転写システムである。
【0009】
本開示は、前記制御部は前記インクリボンが交換されたと判断した際、エラー処理を実行する、熱転写システムである。
【0010】
本開示は、前記インクリボンを外部へ取り出すことを防ぐインクリボンロック機構を更に備え、前記制御部は前記熱転写システムの動作が中止した場合、前記インクリボンロック機構を作動させる、熱転写システムである。
【0011】
本開示は、前記制御部は前記第2回転速度比が前記第1回転速度比に対して95%~105%の範囲から外れるとき、前記第2回転速度比が前記第1回転速度比と異なると判断する、熱転写システムである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態における熱転写システムを示す図。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施の形態において、インク転写済のインクリボンを示す図。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施の形態において、インクリボンのインクが第1パターンで転写された被転写体を示す図。
【
図3】
図3は、
図2Aに示すインク転写済のインクリボンのIII-III線に沿った断面図。
【
図4】
図4は、
図1の熱転写システムの巻取装置を拡大して示す図。
【
図5】
図5は、
図4に示す巻取装置の第2転写装置の第2加熱体を上方から見た場合を示す図。
【
図6】
図6は、
図5に示す第2加熱体およびインクリボンのVI-VI線に沿った断面図。
【
図7A】
図7Aは、本発明の実施の形態において、外側インクリボンのインク層のインクが、内側インクリボンの支持層に第2パターンで転写される様子を示す図。
【
図7B】
図7Bは、本発明の実施の形態において、外側インクリボンのインク層のインクが、内側インクリボンの支持層に第2パターンで転写される様子を示す図。
【
図9】
図9は、熱転写中に巻取部の外径が増加する状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<熱転写システムの構成>
以下、図面を参照して本開示による熱転写システムについて説明する。ここで
図1乃至
図11は、本開示による熱転写システムを示す図である。
【0014】
まず
図1により熱転写システムの全体構造について述べる。
【0015】
図1に示すように、支持層11とインク層12とを有するインクリボン13を用いて被転写体14に所望パターンでインク12aを転写する熱転写システム10は、矢印R1で示す方向にインクリボン13を送り出す送出部16と、送出部16の下流側に配置された第1転写装置17と、第1転写装置17の下流側に配置され、矢印R2で示す方向にインク転写済のインクリボン13を巻き取る巻取部21と、巻取部21の近傍に設けられ、インク転写済のインクリボン13を支持層11側から加熱する第2転写装置22と、を備えている。
図1に示すように、インクリボン13は、複数のガイドロール15に沿って搬送される。ここで、
図1に示す巻取部21と第2転写装置22とにより、巻取装置20が構成されている。
【0016】
図1に示すように、第1転写装置17は、被転写体14を支持するプラテンロール19と、インクリボン13および被転写体14を挟んでプラテンロール19と対向するよう設けられた第1加熱体18(例えば印字ヘッド)と、を有している。
図1に示すように、第1加熱体18は、インクリボン13の支持層11側に設けられている。この第1加熱体18により、インクリボン13のインク層12のインク12aがID情報に対応する所定のパターン(第1パターン)で加熱され、これによって、インクリボン13のインク層12のインク12aが被転写体14に対して第1パターンで転写される。
【0017】
また、送出部16と、第1転写装置17と、巻取部21と、第2転写装置22は、全体としてケース1内に収納されている。ケース1の上面1aのうち第2転写装置22の近傍に、第2転写装置22をケース1内へ出し入れする開口2が設けられ、この開口2はケース1の上面1aにヒンジ4を介して連結されたシャッタ3により開閉自在に覆われている。ケース1は、被転写体14の供給部や搬送部などを備えたIDカード作成プリンタの筐体に組み込まれている。
【0018】
図2Aは、インク12aが被転写体14に第1パターンで転写された後のインクリボン13をインク層12側から見た場合を示す図であり、
図2Bは、インクリボン13のインク12aが第1パターンで転写された被転写体14を示す図である。
図3は、
図2Aに示すインク転写済のインクリボン13のIII-III線に沿った断面図である。
図2Aおよび
図3に示すように、インク転写済のインクリボン13において、インク層12は、被転写体14に転写されずに残留しているインク12aと、被転写体14に印字されたID情報に対応するインク抜け部分12bとからなる。この場合、
図2Aに示すように、インク転写済のインクリボン13におけるインク抜け部分12bのパターンは、上述の第1加熱体18における第1パターンに対応している。このため、インク抜け部分12bのパターンに基づいて、被転写体14に印字されたID情報を特定することが可能となっている。
【0019】
次に
図4を参照して、熱転写システム10の巻取装置20について詳細に説明する。上述のとおり、巻取装置20は、インク転写済のインクリボン13を巻き取るロール状の巻取部21と、巻取部21の近傍に設けられ、インク転写済のインクリボン13を支持層11側から加熱する第2転写装置(巻取装置用転写装置)22と、を有している。このうち第2転写装置22は、ブロック状の発熱体からなる第2加熱体23と、第2加熱体23を矢印D1方向に上下移動可能に支持する支持機構45と、を含んでいる。
【0020】
図4に示すように、本実施の形態の巻取部21においては、インクリボン13の支持層11がインク層12よりも外側に位置するようインクリボン13が巻き取られる。なお図
4に示すように、本実施の形態において、巻取部21に巻き取られているインクリボン13のうち最外周に位置するインクリボン13が外側インクリボン13Aと称され、外側インクリボン13Aよりも内側で巻取部21に巻き取られ、外側インクリボン13Aに隣接しているインクリボン13が内側インクリボン13Bと称される。
【0021】
また、
図1および
図12Aに示すように、巻取部21は駆動モータを内蔵する駆動部21Aにより回転駆動される巻取軸21aを有しており、巻取軸21aには、検出体21bが取り付けられている。巻取軸21aに取り付けられた検出体21bは検出体センサ21cにより光学的に読み取られ、検出体センサ21cで読み取られた信号は後述する制御部40に送られ、制御部40により巻取軸21aの回転数(回転速度ともいう)を求めることができる。
【0022】
なお、駆動部21Aの駆動データからの電流信号も制御部40へ送られ、制御部40により駆動部21Aの出力異常を求めることができる。
【0023】
次に
図5および
図6を参照して、第2転写装置22の第2加熱体23について詳細に説明する。
図5は、インクリボン13および第2加熱体23を上方からみた図であり、
図6は、
図5に示す第2加熱体23およびインクリボン13を示す側断面図である。なお、巻取部21にインクリボン13が巻き取られる際、巻き取られたインクリボン13は、実際には巻取部21のロール面に沿って湾曲するが、
図6においては、便宜上、湾曲状態を無視してインクリボン13が描かれている。また
図6においては、外側インクリボン13Aが第2加熱体23により押圧されて外側インクリボン13Aのインク層12の一部のインク12aが内側インクリボン13Bの支持層11に押し付けられる様子を説明するため、便宜上、外側インクリボン13Aと内側インクリボン13Bとの間に若干の隙間が描かれている。しかしながら、これに限られることはなく、外側インクリボン13Aと内側インクリボン13Bとが全面にわたって隙間無く接していてもよい。
【0024】
図5および
図6に示すように、第2加熱体23は、制御部40によって印字制御され、その下端に形成された突起部23aを含んでいる。このため、
図6に示すように、第2加熱体23制御部40により印字制御されて、外側インクリボン13Aが第2加熱体23の突起部23aによって外側(支持層11側)から加熱および押圧されると、外側インクリボン13Aのインク層12に残留しているインク12aの一部が、第2パターンで、内側インクリボン13Bの支持層11上に転写される。なお、第2加熱体23の温度は、外側インクリボン13Aのインク層12のインク12aが全域にわたって溶融され、これによって外側インクリボン13Aと内側インクリボン13Bとが接着されるという現象が生じない程度に、低く設定されている。
【0025】
ここで、制御部40により印字制御される第2加熱体23の突起部23aにより形成された第2パターンは、第1加熱体18における第1パターンとは異なるよう設定されている。このため、外側インクリボン13Aのインク層12に残留しているインク12aの一部を内側インクリボン13Bの支持層11上に転写することにより、外側インクリボン13Aのインク層12における、ID情報に対応する第1パターンからなるインク抜け部分12bのパターンを破壊することができる。このことにより、後に詳細に説明するように、インク抜け部分12bのパターンに基づいて被転写体14に印字されたID情報が特定されるのを防ぐことができる。
【0026】
なお、巻取部21においては、巻き取りが進むにつれて、巻取部21により巻き取られているインクリボン13により構成されるロール体の外径が増加していく。このようなロール体の外径の増加に対応するため、第2加熱体23は、ロール体の半径方向(
図4において矢印D1で示す方向)において移動可能となるよう支持機構45により支持されている。また、このような支持機構45によって第2加熱体23を支持することにより、巻取り駆動が停止されている場合や、第2加熱体23による加熱が不要な場合に、第2加熱体23を矢印D1方向に移動させて、巻取部21に巻き取られているインクリボン13との接触を任意に中止することが可能となる。
【0027】
上述のように、巻取部21に巻き付けられた外側インクリボン13Aは、第2転写装置22の第2加熱体23により加熱され、内側インクリボン13Bにインキが転写されるが、巻取部21に巻き付けられたインクリボン13の外径が増加するにつれて、第2加熱体23は上方へ支持機構45により移動する(
図9参照)。
【0028】
この場合、第2加熱体23により常時、外側インクリボン13Aが加熱されるわけではなく、第2加熱体23は支持機構45により外側インクリボン13Aから上方へ一旦離れた後、再度降下して外側インクリボン13Aに当接し、このようにして、第2加熱体23は徐々に上方へ向かって支持機構45により移動する。第2加熱体23はインクリボン13を巻取部21に巻き取る際、例えばインクリボン13の10巻毎に、あるいは被転写体14が20枚印字される毎に、外側インクリボン13Aから上方へ離れた後、再度降下して外側インクリボン13Aに当接する。
【0029】
【0030】
図10A乃至
図10Cに示すように、支持機構45は第2加熱体23を支持する取付板46と、取付板46に連結軸49を介して連結されたステー50とを有している。
【0031】
そして取付板46とステー50とを連結する連結軸49の外周にはスプリング47が取り付けられている。
【0032】
またステー50は駆動シリンダ45Aに連結され、この駆動シリンダ45Aにより上下方向へ移動する。
【0033】
図10Aは支持機構45により第2加熱体23が上方へ移動して、第2加熱体23が巻取部21のインクリボン13から離れた状態を示す図である。
図10Aに示すように、駆動シリンダ45Aによりステー50が上方へ持ち上げられ、第2加熱体23は巻取部21のインクリボン13から離れる。
【0034】
次に
図10Bに示すように駆動シリンダ45Aによりステー50が下方へ移動して、取付板46に取り付けられた第2加熱体23が巻取部21のインクリボン13に当接する。
【0035】
その後、
図10Cに示すように、駆動シリンダ45Aによりステー50が更に下方へ移動する。
図10Cに示すように、ステー50が下方へ移動すると、取付板46とステー50との間に取り付けられたスプリング47が圧縮される。更にステー50が下方へ移動すると、駆動シリンダ45Aの下端に設けられたリミットスイッチ48が取付板46に当接して作動して、駆動シリンダ45Aの駆動部(図示せず)を停止させる。
【0036】
このとき、取付板46とステー50との間の距離が一定に定まるため、取付板46とステー50との間に取り付けられたスプリング47は同一の圧縮力をもって第2加熱体23を巻取部21のインクリボン13に対して押し付けることができる。また、リミットスイッチ48が作動して所定時間経過しても駆動シリンダ45Aの作動が続く場合は、駆動シリンダ45Aのエラーと判断して駆動シリンダを停止する。なお、インクリボン13の厚みは0.1mmと薄いので、第2加熱体23がインクリボン13に当接し続けている間は(例えば、インクリボン13の10巻の間は)、インクリボン13が過度に厚くなることはなく、スプリング47によって第2加熱体23をインクリボン13対して連続的に略同一の圧力で押し付けることができる。
【0037】
なお、本明細書において、「上方」あるいは「下方」とは、熱転写システム10を
図1の状態に配置した場合における「上方」あるいは「下方」をいう。
【0038】
次に
図1および
図12Bにより送出部16について述べる。送出部16にはブレーキ機構が内蔵され、巻取部21により巻き取られるインクリボン13に対してこのブレーキ機構により一定の張力を付与することができる。また送出部16は送出軸16aを有し、送出軸16aには検出体16bが取り付けられている。送出軸16aに取り付けられた検出体16bは検出体センサ16cにより光学的に読み取られ、検出体センサ16cにより読み取られた信号は制御部40に送られ、制御部40により送出軸16aの回転数(回転速度ともいう)を求めることができる。
【0039】
また上記構成部材のうち、送出部16、第1加熱体18、巻取部21、駆動部21A、第2加熱体23、支持機構45はいずれも制御部40により駆動制御される。
【0040】
また
図1に示すように、第1転写装置17の上流側近傍には、インクリボン13の終端側の位置を検出する光センサ30が設けられている。インクリボン13の先端側および終端側には、インクのないリーダーフィルムが設けられているがインクのないリーダーフィルムは熱転写に寄与しない部分である。上記の光センサ30は、インクリボン13の終端側において、インクのないリーダーフィルムの端部、すなわちインクリボン13のうちインクのある部分とインクのない部分との境界を検出するものである。
【0041】
なお、第1転写装置17の上流側近傍に設けた光センサ30に加えて、更に送出部16の下流側近傍に、リーダーフィルムの端部を検出する追加光センサ31を設けてもよい。
<通常処理作用>
次に、このような構成からなる本実施の形態の通常処理作用について説明する。ここでは、熱転写システム10の第1転写装置17により被転写体14にID情報が印字され、その後、インク転写済の外側インクリボン13Aのインク層12のインク12aが、第2転写装置22により第2パターンで内側インクリボン13Bの支持層11上に転写される通常処理作用について説明する。
【0042】
まずICカード等の被転写体14を準備し、次に、被転写体14を第1転写装置17に向けて搬送する。一方、
図1に示すように、インクリボン13を、送出部16から第1転写装置17に向けて送り出す。
【0043】
被転写体14が第1転写装置17の第1加熱体18とプラテンロール19との間に到達すると、第1加熱体18がインクリボン13を、ID情報に対応する第1パターンで加熱しながら被転写体14に対して押し付ける。これによって、インクリボン13のインク層12のインク12aが第1パターンで被転写体14上に転写される(第1転写工程)。このことにより、被転写体14上にID情報が印字されるとともに、インクリボン13のインク層12に、ID情報に対応したインク抜け部分12bが形成される。
【0044】
第1転写装置17を経た後のインク転写済のインクリボン13は、巻取装置20の巻取部21により巻き取られる。そして、巻取部21によってインク転写済のインクリボン13が巻き取られている状態において、第2転写装置22により、外側インクリボン13Aが第2パターンで加熱される(第2転写工程)。以下、
図7A乃至
図8Bを参照して、外側インクリボン13Aが第2転写装置22により第2パターンで加熱される作用について詳細に説明する。
【0045】
はじめに、
図7Aに示すように、第2転写装置22の第2加熱体23が制御部40により印字制御される。これによって、外側インクリボン13Aが第2加熱体23の突起部23aによって外側から加熱され、このため、外側インクリボン13Aのインク層12に残留しているインク12aの一部が、内側インクリボン13Bの支持層11上に対して、加熱されながら押し付けられる。これによって、
図7Bにおいて符号12cにより示すように、外側インクリボン13Aのインク層12に残留しているインク12aの一部12cが、内側インクリボン13Bの支持層11上に転写される。
【0046】
図8Aは、第2転写装置22による転写が行われた後の外側インクリボン13Aをインク層12側から見た場合を示す図であり、
図8Bは、第2転写装置22による転写が行われた後の内側インクリボン13Bを支持層11側から見た場合を示す図である。
【0047】
図8Aに示すように、外側インクリボン13Aのインク層12には、第1転写装置17におけるID情報の印字パターンに基づく第1パターンを有するインク抜け部分12b(1)と、第2転写装置22における第2加熱体23の突起部23aにより形成される第2パターン26を有するインク抜け部分12b(2)と、が形成されている。
図8Aに示すように、外側インクリボン13Aのインク層12には、第1パターンと第2パターン26とが混在しており、このため、ID情報に対応する第1パターンからなるインク抜け部分12b(1)のパターンが、認識不可能な程度に破壊されている。このことにより、インク抜け部分12bのパターンに基づいて被転写体14に印字されたID情報が特定されるのを防ぐことができる。
【0048】
図8Bに示すように、内側インクリボン13Bの支持層11上には、第2転写装置22によって、外側インクリボン13Aから第2パターン26でインク12cが転写されている。また
図8Bに示すように、このインク12cには、部分的に、外側インクリボン13Aのインク層12の第1パターンからなるインク抜け部分12bに基づくパターンを有するインク抜け部分12dが形成されている。しかしながら、当該インク抜け部分12dは、
図8Bに示すように、第2パターン26と重複する領域において視認されるのみであり、従って、インク抜け部分12dのパターンに基づいて、被転写体14に印字されたID情報が特定されることはない。
【0049】
この間、通常処理作用中に第2転写装置22に不具合が生じた場合、第2転写装置22から制御部40へ第2転写装置22の不具合信号が送られ、制御部40は第2転写装置22からの不具合信号に基づいてエラー処理を実行する。なおエラー処理と同時に熱転写システム10の動作を中止してもよい。
【0050】
ここで制御部40によるエラー処理とは、制御部40から図示しない表示部にアラートを表示したり、アラートを音声で出力する処理を含む。あるいは、制御部40によるアラート処理は、制御部40により熱転写システム10のロック機構を作動させ、インクリボン13、あるいはインクリボン13を収納するカセット51(
図14A乃至
図14C参照)が熱転写システム10から取り出すことを防止する処理を含む。
【0051】
なお、エラー処理が終了した後、ユーザは熱転写作用を再開することができる。
【0052】
本実施の形態において、第2転写装置22の不具合とは、例えばステー50に対して取付板46が傾斜してしまうことにより、駆動シリンダ45Aのリミットスイッチ48が作動しなくなること、あるいはリミットスイッチ48の作動後、所定時間経過しても駆動シリンダ45Aが停止しないことが考えられる。
【0053】
この場合は第2加熱体23が適切に降下することができない。第2転写装置22から制御部40へ第2転写装置22の不具合信号が送られると、制御部40は第2転写装置22からの不具合信号に基づいてエラー処理を実行する。なおエラー処理と同時に熱転写システム10の動作を中止してもよい。
【0054】
あるいは第2転写装置22の不具合として、第2加熱体23内の断線、その他第2加熱体23自体の不良が考えられる。この場合は、第2加熱体23が正常に作動しなくなる。第2転写装置22から制御部40へ第2転写装置22の不具合信号が送られると、制御部40は第2転写装置22からの不具合信号に基づいてエラー処理を実行する。なおエラー処理と同時に熱転写システム10の動作を中止してもよい。
【0055】
同様に、例えば、通常処理作用中にインクリボン13が何らかの部材に引っ掛かったりしてインクリボン13を安定して送ることができない場合も、制御部40がエラー処理を実行する。なおエラー処理と同時に熱転写システム10の動作を中止してもよい。
【0056】
例えばインクリボン13が何らかの部材に引っ掛かった場合、その後インクリボン13の引っ掛かりがなくなって、急にインクリボン13が巻取部21により巻き取られると、送出軸16aに設けられた検出体16bを検出体センサ16cにより読み取ることにより得られる送出部16の回転数が基準範囲以上となることがある。
【0057】
同様に巻取軸21aに設けられた検出体21bを検出体センサ21cにより読み取ることにより得られる巻取部21の回転数が基準範囲以上となることがある。
【0058】
本実施の形態によれば、このような場合、制御部40は、送出部16の回転数が基準範囲以上となるか、あるいは巻取部21の回転数が基準範囲以上となった場合、インクリボン13が安定して送られていないと判断して、エラー処理を実行する。なおエラー処理と同時に熱転写システム10の動作を中止してもよい。
【0059】
他方、インクリボン13が何らかの部材に引っ掛かった場合、送出部16の回転数が基準範囲以下となるか、または巻取部21の回転数が基準範囲以下となることがある。
【0060】
本実施の形態によれば、このような場合、制御部40は送出部16の回転数が基準範囲以下となるか、あるいは巻取部21の回転数が基準範囲以下となった場合、インクリボンが安定して送れていないと判断して、エラー処理を実行する。なおエラー処理と同時に熱転写システム10の動作を中止してもよい。
【0061】
この間、巻取部21の駆動部21Aの駆動モータからの電流信号が制御部40に送られる。そして駆動モータから電流値が基準範囲を越えた場合、制御部40はインクリボン13が安定して送られていないと判断して、エラー処理を実行する。なおエラー処理と同時に熱転写システム10の動作を中止してもよい。
【0062】
次に熱転写システム10の通常処理を中断(中止ともいう)する場合の作用について更に述べる。
【0063】
熱転写システム10において、ICカード等の被転写体14に対して第1転写装置17により第1パターンでインクリボン13のインク層12のインク12aが転写される。
【0064】
インク12aが転写された被転写体14は、第1転写装置17から外方へ送られる。
【0065】
予め定められた所定枚数の被転写体14に対してインク12aが転写されると、熱転写システム10は新たな被転写体14に対してインク12aを転写するまで、通常処理を中断する。
【0066】
この熱転写システム10の通常処理を中断する際、熱転写システム10から誤ってインクリボン13が取り出されることが考えられる。この場合は、インクリボン13に対して後述する終了処理が実行されることなくインクリボン13が外方へ取り出されることになり、インクリボン13に残る第1パターンを読み取られる可能性が出てくる。
【0067】
本実施の形態においては、このように終了処理が実行されていない状態のインクリボン13が外方へ取り出されることを防止するため、熱転写システム10は以下のような動作を行う。
【0068】
図13に示すフローチャートに示すように、まず制御部40は熱転写システム動作開始信号を受信した後、上述した通常処理を開始する。
【0069】
そして制御部40は上述のように、巻取部21によりインクリボン13を巻き取るとともに、送出部16を作動させ、第1転写装置17によりインクリボン13を用いて被転写体14に対して第1パターンで印字を開始する。次に制御部40は第2転写装置22を作動させて、インクリボン13に対して第2パターンで印字を開始する。
【0070】
この間、
図12Bに示すように、送出部16の送出軸16aに設けられた検出体16bが検出体センサ16cに読み取られる。検出体センサ16cにより読み取られた信号は制御部40に送られ、制御部40により送出軸16a、すなわち送出部16の回転速度が求められる。制御部40は送出部16の回転速度を記憶する。
【0071】
同様に、
図12Aに示すように、巻取部21の巻取軸21aに設けられた検出体21bが検出体センサ16cにより読み取られる。検出体センサ21cにより読み取られた信号は制御部40に送られ、制御部40により巻取軸21a、すなわち巻取部21の回転速度が求められる。制御部40は巻取部21の回転速度を記憶する。
【0072】
本実施の形態において、送出部16の検出体16bを検出する検出体センサ16cは送出部回転速度センサとなり、巻取部21の検出体21bを検出する検出体センサ21cは巻取部回転速度センサとなる。
【0073】
このように制御部40は、熱転写システム10の動作中、常時送出部16の回転速度および巻取部21の回転速度を求め記憶する。
【0074】
同時に制御部40は、通常処理中の送出部16の回転速度と、巻取部21の回転速度との比(第1回転速度比)を演算して求める。
【0075】
その後、所定枚数の被転写体14に対してインク12aが転写されると、制御部40は通常処理終了の信号を受け、熱転写システム10の動作中止を指示する。その後、熱転写システム10の動作を全体として中止する。
【0076】
次に熱転写システム10は新たな被転写体14に対して動作を再開する。まず制御部40は熱転写システム動作開始信号を受信した後、熱転写システム10の通常処理を再開する。
【0077】
熱転写システム10の通常処理を再開する場合、制御部40は巻取部21をわずかに動作させて、インクリボン13と新たな被転写体14との位置合わせ(インクリボンの頭出し)を行った後、通常処理を再開する。
【0078】
通常処理を再開する際、制御部40に検出体センサ21cから巻取部21の回転速度が送られる。制御部40はこの巻取部21の回転速度を記憶する。
【0079】
次に制御部40に検出体センサ16cから送出部16の回転速度が送られる。制御部40はこの送出部16の回転速度を記憶する。
【0080】
同時に制御部40は、通常処理の再開後の送出部16の回転速度と、巻取部21の回転速度との比(第2回転速度比)を演算して求める。
【0081】
その後、制御部40は通常処理中の送出部16の回転速度と、巻取部21の回転速度との比(第1回転速度比)と、通常処理の再開後の送出部16の回転速度と、巻取部21の回転速度との比(第2回転速度比)を比較する。
【0082】
制御部40は第2回転速度比が第1回転速度比に対して95%~105%の範囲から外れるとき、第2回転速度比が第1回転速度比と異なると判断する。この場合、制御部40は、通常処理が中止して、その後通常処理が再開される間にインクリボン13が熱転写システム10から取り出され、新たなインクリボン13と交換されたと判断する。
【0083】
このように熱転写システム10から通常処理の中断中インクリボン13が取り出される場合、取り出されたインクリボン13は未だ後述する終了処理が実行されていないため、インクリボン13に残る第1パターンが読み取られる可能性がある。
【0084】
制御部40は第2回転速度比が第1回転速度比と異なる場合、熱転写システム10の動作を再度中止して、エラー処理を行う。なお、エラー処理と同時に熱転写システム10の動作を再度中止してもよい。
【0085】
他方、制御部40は、第2回転速度比が第1回転速度比と異なることはない場合(同一の場合)、インクリボン13の取り出しおよび交換は行われていないと判断し、通常処理を続行する。
【0086】
ここで制御部40によるエラー処理とは、上述のように、制御部40から図示しない表示部にアラートを表示したり、アラートを音声で出力する処理を含む。あるいは、制御部40によるアラート処理は、制御部40により熱転写システム10のロック機構を作動させ、インクリボン13、あるいはインクリボン13を収納するカセット51(
図14A乃至
図14C参照)が熱転写システム10から取り出すことを防止する処理を含む。
【0087】
次に上述したカセット51に設けられたインクリボンのロック機構について更に説明する。
【0088】
図14Aおよび
図14Bに示すように、インクリボン13がカセット51に収納されている場合、このカセット51にインクリボン13が取り出すことを防止するインクリボンのロック機構(インクリボンロック機構ともいう)60Aを設けてもよい。
【0089】
図14Aおよび
図14Bに示すように、インクリボン13はカセット51内に収納される。具体的には、カセット51の壁面に、壁面を切り欠くことにより形成された一対の受け部52,53が設けられている。そして受け部53内に巻取部21の巻取軸21aが装着され、受け部52内に送出部16の送出軸16aが装着される。
【0090】
そして、各受け部52,53は外方へ向かって拡がる開口52a,53aを介して外方に連通する。
【0091】
図14Aおよび
図14Bに示すように、巻取部21の巻取軸21aは開口53aを介して受け部53内に装着される。また送出部16の送出軸16aは開口52aを介して受け部52内に装着される。
【0092】
なお、受け部52および開口52aの周縁には弾性樹脂52bが取り付けられ、受け部53および開口53aの周縁にも弾性樹脂53bが取り付けられている。このため巻取部21の巻取軸21aを押し込むだけで、弾性樹脂53bが圧縮されて、巻取軸21aを外方から開口53aを介して受け部53内に装着することができ、逆に巻取部21の巻取軸21aを押し出すことにより、弾性樹脂53bが圧縮されて、巻取軸21aを受け部53から開口53aを介して外方へ取り出すことができる。同様に送出部16の送出軸16aを押し込むだけで、弾性樹脂52bが圧縮されて、送出軸16aを外方から開口52aを介して受け部52内に装着することができ、逆に送出部16の送出軸16aを押し出すことにより、弾性樹脂52bが圧縮されて、送出軸16aを受け部52から開口52aを介して外方へ取り出すことができる。
【0093】
ところでカセット51の壁面には、開口53aに対応する位置にロック板60が揺動軸61を介して揺動自在に取り付けられている。そしてロック板60を揺動軸61を介して揺動させてカセット51の壁面に平行に配置することによりロック板60により開口53aを覆う(閉じる)ことができる。このようにロック板60により開口53aを覆うことにより、受け部53内の巻取軸21aが外方へ排出されることを防止することができる。
【0094】
次にロック板60を揺動軸61を介して揺動させ、ロック板60をカセット51の壁面に対して垂直方向に向ける。このことにより開口53aをロック板60から開放することができるので、受け部53内の巻取軸21aを外方へ容易に取り出すことができる。
【0095】
本実施の形態において、ロック板60は揺動軸61に連結された駆動部(図示せず)により揺動する。制御部40は駆動部を作動させ、少なくとも熱転写システム10の動作が中止した場合、あるいはエラー処理を行う場合、ロック板60を揺動させて開口53aを覆う(閉とする)。このため、熱転写システム10の動作が中止した場合にカセット51からインクリボン13を取り出して新しいインクリボン13と交換することを防止することができる。このことにより後述する終了処理が実行される前のインクリボン13が外部に取り出されることはない。
【0096】
また制御部40はエラー処理を行う場合に、カセット51からインクリボン13が取り出されることはない。
【0097】
なお、制御部40は駆動部を作動させて、通常処理から後述する終了処理が実行されるまでの間中ロック板60を揺動させて開口53aを閉としてもよい。
【0098】
本実施の形態において、ロック板60と、図示しない駆動部により揺動する揺動軸61とによりインクリボンロック機構60Aが構成される。
【0099】
なお、
図14Aおよび
図14Bに示す実施の形態において、ロック板60をカセット51の壁面に対して垂直方向に向けることにより、ロック板60を開口53aから開放する例を示したが、これに限らず
図14Cに示すように、ロック板60をカセット51の壁面に対して平行になるまで揺動させて開口53aを開放してもよい。
【0100】
図14Cにおいて、ロック板60がカセット51の壁面と平行になるまで揺動して開口53aを開放する場合、ロック板60がこの開放位置を保つよう、ロック板60にマグネット62を設け、このマグネット62によりカセット51の壁面を吸着してもよい。
図14Cにおいて、カセット51側にマグネット62が吸着される鋼板(図示せず)が取り付けられている。
<終了処理作用>
次に、本実施の形態において、熱転写を終了させる場合、通常処理の後で、以下のような熱転写終了処理が行なわれる。
【0101】
すなわち、熱転写を終了させるために第1転写装置17と第2転写装置22を同時に停止した場合、インクリボン13のうち第1転写装置17から第2転写装置22までの間の部分13aには第1パターンのみが残り、この部分13aには第2パターンが転写されることはなく、インクリボン13の部分13aから第1パターンを容易に視認することができてしまう。
【0102】
そこで、本実施の形態においては、熱転写を終了させる際、まず第1転写装置17を停止して、被転写体14へのインク12aの転写を停止する。
【0103】
そして巻取部21によりインクリボン13を第1転写装置17から第2転写装置22までの距離(部分13aの長さに対応する)だけ巻き取り、この間、第2転写装置22を作動させる。
【0104】
このようにしてインクリボン13のうち第1転写装置17から第2転写装置22までの部分13aに対して、そのインク層12に第1パターンと第2パターンの双方を転写させることができ、このことによりインクリボン13に第1パターンのみが残ることはない。
【0105】
第1転写装置17を停止し、第1転写装置17から第2転写装置22までの部分13aに対して第2パターンを転写させた後、さらに巻取部21を、巻取部21のインクリボン13の最外周分だけ巻取るようにしてもよい。この場合、インクリボン13の最外周は、巻取部21により巻取られたインクリボン13の覆いカバーとして機能するため、巻取部21に巻取られたインクリボン13のパターンを視認することがより困難となる。
【0106】
なお、巻取部21に巻取られたインクリボン13の最外周分とは、インクリボン13のうち第1転写装置17より上流側のうち巻取部21のインクリボン13の最外周分の長さをもつ部分13bに相当するが、インクリボン13の最外周分の長さの半分程度巻取ることにより、覆いカバーを形成してもよい。
【0107】
また、巻取部21を更にインクリボン13の最外周分だけ巻取る際、第1転写装置17はもちろん停止しているが、第2転写装置22を作動させてインクリボン13に第2パターンを転写してもよく、第1転写装置17および第2転写装置22の双方を停止させてもよい。
【0108】
ところで、本実施の形態において、巻取部21の回転数は巻取軸21aに設けられた検出体21bを検出体センサ21cにより読み取ることにより制御部40により求められるが、制御部40は同時に巻取軸21aの総回転量をカウントし、カウント量が所定値に達したところで、インクリボン13の残量が少なくなったと判断して終了処理を開始する。
【0109】
あるいは、第1転写装置17が第1パターンを転写した被転写体14の枚数をカウントし、カウント値が所定値に達した場合に、インクリボン13の残量が少なくなったと判断して終了処理を開始してもよい。この場合、カウント値を表示部に表示し、ユーザが表示されたカウント値に基づいて、操作部から終了処理の開始を指示することができる。またカウント値が所定値に達した場合に、所定の発光パターンで発光したり、音を発したりしてユーザにその旨を報知してもよい。
【0110】
あるいは送出部16の下流側近傍に設けられた追加光センサ31によりインクリボン13のリーダフィルムの端部、すなわちインクリボン13のうちインクのある部分とインクのない部分との境界を検出してもよい。この追加光センサ31からの信号に基づいて制御部40はインクリボン13の残量が少なくなったと判断して終了処理を開始してもよい。
【0111】
この間、
図11のフローチャートに示すように、終了処理中に第2転写装置22に不具合が生じた場合、通常処理作用中と同様、第2転写装置22から制御部40へ第2転写装置22の不具合信号が送られ、制御部40は第2転写装置22からの不具合信号に基づいて終了処理の続行は困難と判断する。この場合、制御部40は、エラー処理を実行する。なお、エラー処理と同時に熱転写システム10の終了処理を中止してしてもよい。
【0112】
ここで制御部40によるエラー処理とは、制御部40から図示しない表示部にアラートを表示したり、アラートを音声で出力する処理を含む。あるいは、制御部40によるアラート処理は、制御部40により熱転写システム10のロック機構60Aを作動させ、インクリボン13、あるいはインクリボン13を収納するカセット51が熱転写システムから取り出すことを防止する処理を含む。
【0113】
なお、エラー処理が終了した後、ユーザは熱転写作用を再開することができる。
【0114】
本実施の形態において、第2転写装置22の不具合とは、例えばステー50に対して取付板46が傾斜してしまうことにより、駆動シリンダ45Aのリミットスイッチ48が作動しなくなること、あるいはリミットスイッチ48の作動後、所定時間経過しても駆動シリンダ45Aが停止しないことが考えられる。
【0115】
この場合は第2加熱体23が適切に精度良く降下することができない。第2転写装置22から制御部40へ第2転写装置22の不具合信号が送られると、制御部40は第2転写装置22からの不具合信号に基づいて終了処理の続行は困難と判断し、エラー処理を実行する。なお、エラー処理と同時に熱転写システム10の終了処理を中止してしてもよい。
【0116】
あるいは第2転写装置22の不具合として、第2加熱体23内の断線、その他第2加熱体23自体の不良が考えられる。この場合は、第2加熱体23が正常に作動しなくなる。第2転写装置22から制御部40へ第2転写装置22の不具合信号が送られると、制御部40は第2転写装置22からの不具合信号に基づいて終了処理の続行は困難と判断し、エラー処理を実行する。なお、エラー処理と同時に熱転写システム10の終了処理を中止してしてもよい。
【0117】
同様に、例えば、終了処理作用中にインクリボン13が何らかの部材に引っ掛かったりしてインクリボン13を安定して送ることができない場合も、通常処理作用中と同様、制御部40がエラー処理を実行する。なお、エラー処理と同時に熱転写システム10の終了処理を中止してしてもよい。
【0118】
例えばインクリボン13が何らかの部材に引っ掛かった場合、その後インクリボン13の引っ掛かりがなくなって、急にインクリボン13が巻取部21により巻き取られると、送出軸16aに設けられた検出体16bを検出体センサ16cにより読み取ることにより得られる送出部16の回転数が基準範囲以上となることがある。
【0119】
同様に巻取軸21aに設けられた検出体21bを検出体センサ21cにより読み取ることにより得られる巻取部21の回転数が基準範囲以上となることがある。
【0120】
本実施の形態によれば、このような場合、制御部40は、送出部16の回転数が基準範囲以上となるか、あるいは巻取部21の回転数が基準範囲以上となった場合、インクリボン13が安定して送られていないため終了処理の続行は困難と判断して、エラー処理を実行する。なお、エラー処理と同時に熱転写システム10の終了処理を中止してしてもよい。
【0121】
他方、インクリボン13が何らかの部材に引っ掛かった場合、送出部16の回転数が基準範囲以下となるか、または巻取部21の回転数が基準範囲以下となることがある。
【0122】
本実施の形態によれば、このような場合、制御部40は送出部16の回転数が基準範囲以下となるか、あるいは巻取部21の回転数が基準範囲以下となった場合、インクリボンが安定して送れていないため終了処理の続行は困難と判断して、エラー処理を実行する。なお、エラー処理と同時に熱転写システム10の終了処理を中止してしてもよい。
【0123】
この間、巻取部21の駆動部21Aの駆動モータからの電流信号が制御部40に送られる。そして駆動モータから電流値が基準範囲を越えた場合、制御部40はインクリボン13が安定して送られていないため終了処理の続行は困難と判断して、エラー処理を実行する。なお、エラー処理と同時に熱転写システム10の終了処理を中止してしてもよい。
【0124】
さらに終了処理作用中に、第1転写装置17の上流側近傍に設けられた光センサ30によりインクリボン13のリーダーフィルムの端部を検出した場合、光センサ30からの信号に基づいて制御部40はインクリボン13の残量が極めて少なくなったと判断する。この場合、制御部40は更に以下のような作用を行って、終了処理の続行は困難と判断し、エラー処理を実行する。なお、エラー処理と同時に熱転写システム10の終了処理を中止してしてもよい。
【0125】
具体的には、制御部40には、終了処理に必要なインクリボン13の長さlの値が予め内蔵されている。また制御部40は、終了処理開始時点から光センサ30がインクリボン13のリーダーフィルム端部を検知した時点までの巻取部21に巻き取られたインクリボン13の長さ、すなわち終了処理済のインクリボン13の長さaを求める。同時に制御部40は光センサ30からの信号に基づいて、光センサ30から第2加熱体23までの距離bを求める。
【0126】
次に制御部40はlと、aと、bとを用いて以下のような演算を行う。すなわち制御部40はl≧a+bのとき、この演算結果に基づいて終了処理に必要なインクリボン13の長さが確保できず、今後の終了処理を続行することは困難と判断し、エラー処理を実行する。なお、エラー処理と同時に熱転写システム10の終了処理を中止してしてもよい。
【0127】
なお、光センサ30によりインクリボン13のリーダーフィルムの端部が検出されない場合は、引き続き終了処理が続行される。そして終了処理中にインクリボン又はインクリボンを収納するカセットが熱転写システムから取り出された場合、終了処理を続行することは困難となるのでエラー処理を実行する。なお、エラー処理と同時に熱転写システム10の終了処理を中止してしてもよい。また、上記の実施の形態では、インクリボン13またはインクリボン13を収納するカセットが取り出される場合について説明したが、カセットが無くインクリボンを直接熱転写システム10に装填する場合であっても良く、その場合はインクリボンが熱転写システム10から取り出された場合にエラー処理を実行する。あるいは、エラー処理と同時に熱転写システム10の終了処理を中止する。
【0128】
このようにして巻取部21により終了処理に必要な長さのインクリボン13を巻き取った後、制御部40は、図示しない表示部に「インクリボン交換」の表示を行って終了処理を完了させる。この場合、制御部40は巻取軸21aの検出体センサ21cから送られる信号に基づいて、巻取軸21aの総回転量をカウントし、このカウント量に基づいて、巻取部21により終了処理に必要な長さのインクリボンを巻き取ったことを判定することができる。
【0129】
このような熱転写終了処理を行った後、熱転写システム10の動作が停止し、インクリボン13またはインクリボン13を収納するカセット51が取り出される。
【0130】
以上のように本実施の形態によれば、通常処理により巻取装置20の巻取部21により巻き取られたインク転写済のインクリボン13が、第2転写装置22により第2パターンで外側から加熱される。そして、一連のインク転写済のインクリボン13を巻取部21により巻き取るとともに、第2転写装置22により第2パターン26で外側から加熱した後、当該インクリボン13を巻取部21から取り外して廃棄する。この際、巻取部21に巻き取られているインクリボン13の間、例えば外側インクリボン13Aと内側インクリボン13Bとの間には接着処理が施されておらず、このため、インクリボン13を巻取部21から容易に取り外すことができる。従って、巻取部21を繰り返し利用することが可能である。このことにより、巻取部21がインク転写済のインクリボン13とともに廃棄される場合に比べて、インク転写済のインクリボン13を処理するためのコストを低くすることができる。
【0131】
このように本実施の形態によれば、熱転写システム10は、インクリボン13を送り出す送出部16と、送出部16の下流側に配置され、インクリボン13の支持層11側に設けられた第1加熱体18を有し、インクリボン13のインク層12のインク12aを被転写体14に対して第1パターンで転写する第1転写装置17と、第1転写装置17の下流側に配置され、インク転写済のインクリボン13を巻き取る巻取部21と、巻取部21の近傍に設けられ、インク転写済のインクリボン13を支持層11側から加熱する第2加熱体23を有する第2転写装置22と、を備えている。このため、第2転写装置22により加熱される外側インクリボン13Aのインク層12のインク12aを、第1転写装置17における第1パターンと異なる第2パターン26で、外側インクリボン13Aの内側に位置する内側インクリボン13Bの支持層11に転写することができる。このことにより、インク転写済のインクリボン13から、第1転写装置17における第1パターン、すなわち被転写体14に印字されたID情報が特定されるのを防ぐことができる。
【0132】
また本実施の形態によれば、通常処理中制御部40は常時、送出部16の回転速度と、巻取部21の回転速度との比(第1回転速度比)を求めておく。次に熱転写システム10の動作が中止となって、その後通常処理を再開した場合、制御部40は送出部16の回転速度と、巻取部21の回転速度との比(第2回転速度比)を求める。次に制御部40は第1回転速度比と第2回転速度比を比較し、第1回転速度比と第2回転速度比とが異なる場合、熱転写システム10の動作を再度中止してエラー処理を行う。このことにより熱転写システム10の動作が中止している間にインクリボン13がカセット55、あるいは熱転写システム10から取り出されて新たなインクリボン13と交換されていたことを未然に検出することができる。このことにより後工程における終了処理を経ていないインクリボン13が外部へ持ち出されることはなく、インクリボン13に残る第1パターンが読み取られることはない。
【0133】
また本実施の形態によれば、終了処理作用を経てから熱転写を終了させる。この場合、まず第1転写装置17を停止して被転写体14への転写を停止する。次に巻取部21によりインクリボン13を第1転写装置17から第2転写装置22までの距離だけ巻取って第2転写装置22を作動させるため、インクリボン13に第1パターンのみが残ることはない。更に巻取部21によりインクリボン13を巻取り、インクリボン13の最外周に覆いカバーとして機能する部分を設けることができる。また、制御部40はインクリボン13の残量に基づいて、終了処理を続行できるか否か演算した後、演算結果に基づいて熱転写システム10によるエラー処理を実行したり、あるいは終了処理を中止するため、終了処理が終わっていないインクリボン13が外部に排出されることはない。
【0134】
さらにまた、ケース1に第2転写装置22を出し入れする開口2を設けたので、この開口2を介してケース1内に第2転写装置22を挿着したり、ケース1内の第2転写装置22を開口2を介して外方へ容易に取り出したりすることができる。さらにまた開口2をシャッタ3で覆うことにより、巻取部21に巻取られたインクリボン13の第1パターンが外方から開口2を介して視認されることを防止できる。
【0135】
なお、上記実施の形態において、第1転写装置17の上流側近傍に光センサ30を設けるとともに、光センサ30からの信号に基づいて制御部40はインクリボン13の残量より終了処理を続行することができるか否か演算した後、演算結果に基づいて熱転写システム10によるエラー処理を実行したり、終了処理を中止する例を示した。しかしながら、これに限らず、制御部40は光センサ30からの信号に基づいて、終了処理を続行できるか否かの演算を行うことなく、直ちに終了処理の続行は困難と判断して熱転写システム10によるエラー処理を実行したり、終了処理を中止してもよい。この場合、光センサ30は第1転写装置17の上流側に設ける必要はなく、第1転写装置17の下流側に設けてもよい。
【0136】
また、上述の本実施の形態においては、第2転写装置22がブロック状の発熱体からなる第2加熱体23を有する例を説明したが、他の例として、ロール形状の発熱体からなる第2加熱体により第2転写装置22を構成してもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 ケース
2 開口
3 シャッタ
10 熱転写システム
11 支持層
12 インク層
12a インク
12b インク抜け部分(第1パターン)
12c 第2転写装置により支持層上に転写されたインク
13 インクリボン
13A 外側インクリボン
13B 内側インクリボン
14 被転写体
15 ガイドロール
16 送出部
16a 送出軸
16b 検出体
16c 検出体センサ
17 第1転写装置
18 第1加熱体
19 プラテンロール
20 巻取装置
21 巻取部
21A 駆動部
21a 巻取軸
21b 検出体
21c 検出体センサ
22 第2転写装置
23 第2加熱体
23a 突起部
26 第2パターン
30 光センサ
31 追加光センサ
40 制御部
45 支持機構
45A 駆動シリンダ
46 取付板
47 スプリング
48 リミットスイッチ
49 連結軸
50 ステー
51 カセット
52 受け部
52a 開口
52b 弾性樹脂
53 受け部
53a 開口
53b 弾性樹脂
60 ロック板
60A インクリボンロック機構
61 揺動軸
62 マグネット