(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056590
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車両用ドア構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B60J5/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163609
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】金井 勲
(57)【要約】
【課題】ドアサッシュの車両後部上方側角部からの浸水を防止しつつ、その剛性を向上させる。
【解決手段】車両用ドア1のドアサッシュ部100において、アウタドアサッシュ部110と、アウタドアサッシュ部110の車幅方向内側に結合されているインナドアサッシュ部120と、ドアサッシュ部100の車両後方側において、車両上下方向に延在し、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120の間に挟まれて結合されている補助ブラケット130と、を備え、補助ブラケット130は、ドアサッシュ部100の車両後部上方側角部USにおいて、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120との隙間GPを覆うように配設されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの車両上方側に設けられ、ドアウインドウ部を囲んで設けられているドアサッシュ部において、
前記ドアウインドウ部のガラスガイドを形成し、前記ドアサッシュ部の車幅方向外側に配設されたアウタドアサッシュ部と、
前記ドアサッシュ部の車幅方向内側に配設され、前記アウタドアサッシュ部の車幅方向内側に結合されているインナドアサッシュ部と、
前記ドアサッシュ部の車両後方側において、車両上下方向に延在し前記アウタドアサッシュ部と前記インナドアサッシュ部の間に挟まれて結合されている補助ブラケットと、
を備え、
前記補助ブラケットは、前記ドアサッシュ部の車両後部上方側角部において、前記アウタドアサッシュ部と前記インナドアサッシュ部との隙間を覆うように配設されていることを特徴とする車両用ドア構造。
【請求項2】
前記アウタドアサッシュ部と前記補助ブラケットとの結合部と、前記インナドアサッシュ部と前記補助ブラケットとの結合部と、の間には、前記補助ブラケットと前記インナドアサッシュ部とに挟まれた内部空間が車幅方向に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア構造。
【請求項3】
前記補助ブラケットと前記アウタドアサッシュ部および前記インナドアサッシュ部との結合部において、その車両上下方向に隣接する結合部の間隔は、前記ドアサッシュ部の車両上方側の間隔よりも車両下方側の間隔のほうが狭い間隔となっていることを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の車両用ドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用ドアは、ドアアウタパネルとドアインナパネルとを合わせたドア本体の車両上方部に、ドアガラスを囲むサッシュを取り付けたサッシュ付ドアが広く用いられている。この種のドアでは、ドアが閉じられた際に外部からの雨水等の浸入を防ぐために、サッシュと車両本体との間に、ウェザーストリップ等が装着されている。そして、ウェザーストリップが、サッシュと車両本体との間に密着することにより、外部からの水滴等の浸入等を防いでいる。
また、サッシュは、アウタサッシュとインナサッシュとが結合され、アウタサッシュには、ドアガラスを摺動案内するガラスランが形成され、インナサッシュには、ウェザーストリップを取り付けるクリップ取付孔等が形成されている。
【0003】
一方で、車両用ドアには、ドアガラスからの荷重、ドアの開閉時の荷重、衝突発生時の荷重等が伝達される。そして、車両用ドアを構成する部材には、伝達される荷重に耐えうる強度が必要になってくる。
【0004】
そのため、例えば、特許文献1においては、車両用ドアにおいて、ドアガラスの縁部を昇降可能に保持するチャンネル部を有する第1のフレーム部材(アウタサッシュ)と、第1のフレーム部材のチャンネル部に対して車内側に突出する突出部を有する第2のフレーム部材(インナサッシュ)とを組み合わせて立柱サッシュ(ドアサッシュ)を構成し、立柱サッシュとドアパネルを接合させるブラケットに、ドアパネルへの固定部から上方に突出して第1のフレーム部材と第2のフレーム部材との間に挿入されるフレーム接合部(ブラケット)を設けることにより、車両用ドアフレームを補剛する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術におけるアウタサッシュとインナサッシュとを補剛するブラケットを用いた構成では、リアサイドサッシュ、ドアパネル等、あるいは、アウタサッシュとインナサッシュとが結合された際に生じる隙間等から雨水等が浸入する虞があった。また、アウタサッシュがロール成型により加工された部材である場合には、車両用ドアの車両後部上方側角部において、アウタサッシュとインナサッシュとの隙間等から雨水等が浸入する虞があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、ドアサッシュの車両後部上方側角部からの浸水を防止しつつ、その剛性を向上させる車両用ドア構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車両用ドアの車両上方側に設けられ、ドアウインドウ部を囲んで設けられているドアサッシュ部において、前記ドアウインドウ部のガラスガイドを形成し、前記ドアサッシュ部の車幅方向外側に配設されたアウタドアサッシュ部と、前記ドアサッシュ部の車幅方向内側に配設され、前記アウタドアサッシュ部の車幅方向内側に結合されているインナドアサッシュ部と、前記ドアサッシュ部の車両後方側において、車両上下方向に延在し前記アウタドアサッシュ部と前記インナドアサッシュ部の間に挟まれて結合されている補助ブラケットと、を備え、前記補助ブラケットは、前記ドアサッシュ部の車両後部上方側角部において、前記アウタドアサッシュ部と前記インナドアサッシュ部との隙間を覆うように配設されている車両用ドア構造を提案している。
【0009】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記アウタドアサッシュ部と前記補助ブラケットとの結合部と、前記インナドアサッシュ部と前記補助ブラケットとの結合部と、の間には、前記補助ブラケットと前記インナドアサッシュ部とに挟まれた内部空間が車幅方向に形成されている車両用ドア構造を提案している。
【0010】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記補助ブラケットと前記アウタドアサッシュ部および前記インナドアサッシュ部との結合部において、その車両上下方向に隣接する結合部の間隔は、前記ドアサッシュ部の車両上方側の間隔よりも車両下方側の間隔のほうが狭い間隔となっている車両用ドア構造を提案している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、ドアサッシュの車両後部上方側角部からの浸水を防止しつつ、その剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアを車幅方向外側から見た概要構成図である。
【
図2】
図1に示されたRS部を拡大しピラーガーニッシュを外した状態で車幅方向外側から見た構成図である。
【
図4】
図2に示されたUS部に生じる隙間を示し、ピラーガーニッシュと補助ブラケットを外した状態で車幅方向外側から見た構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1から
図4を用いて、本実施形態に係る車両用ドア1について説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、車両用ドア1が装着される車両Vの前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、車両Vの正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0014】
<実施形態>
図1~
図4を用いて、車両用ドア1の構成について説明する。なお、以下では、車両Vの正面視において右方側に装着される車両用ドア1を例示して説明する。
【0015】
<車両用ドア1の構成>
図1に示すように、車両用ドア1は、アウタパネル部10と、インナパネル部20と、ドアウインドウ部30と、ウェザーストリップ部40と、ドアサッシュ部100と、を含んで構成されている。
なお、車両用ドア1の車幅方向内側には、図示しない車両本体が構成されている。
【0016】
(アウタパネル部10、インナパネル部20について)
アウタパネル部10は、車両用ドア1の外板を構成する板状の部材である。また、インナパネル部20は、車両用ドア1の内板を構成する板状の部材であり、アウタパネル部10よりも車幅方向内側に配置される。アウタパネル部10およびインナパネル部20は、金属板等をプレスして作成されている。
アウタパネル部10とインナパネル部20とは、相互に組み合わされ、車両前後上下方向端部それぞれにおいて溶接等により結合され、ドアパネル内部には空間が形成されている。また、アウタパネル部10およびインナパネル部20には、内部に浸入した水滴等を外部に排出する図示しない排出溝あるいは排出孔を備えられている。
【0017】
(ドアウインドウ部30について)
ドアウインドウ部30は、車両用ドア1において、昇降可能に装着された板状の強化ガラスである。ドアウインドウ部30が上昇した状態においては、後述するドアサッシュ部100を閉塞する。ドアウインドウ部30は、車両Vの側面視において、その前端縁部および後端縁部がドアサッシュ部100の傾斜に合わせて形成された略台形を成している。
【0018】
(ウェザーストリップ部40について)
ウェザーストリップ部40は、インナパネル部20からドアサッシュ部100にかけて、車両用ドア1の車幅方向内側の周囲を囲むように配設されている。ウェザーストリップ部40は、軟質樹脂あるいはゴム材等により成型され、ドアサッシュ部100に設けられた嵌合部CHに嵌合させたクリップCP等により固定されている。
【0019】
<ドアサッシュ部100の構成>
ドアサッシュ部100は、車両用ドア1の車両上方部に設けられ、ドアウインドウ部30を囲んで設けられている。ドアサッシュ部100は、車両前方側におけるアウタパネル部10およびインナパネル部20との接合部から車両後部上方側に向かって傾斜し、車両後方側に向かって延在する前方ドアサッシュ部FSと、前方ドアサッシュ部FSの車両後方側端部から車両後方側におけるアウタパネル部10およびインナパネル部20との接合部に向かって車両上下方向に延在する後方ドアサッシュ部RSを形成している。
また、ドアサッシュ部100は、
図2に示すように、アウタドアサッシュ部110と、インナドアサッシュ部120aおよび120bと、補助ブラケット130と、ピラーガーニッシュ部140と、を含んで構成されている。
ドアサッシュ部100は、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120aおよび120bと補助ブラケット130とを、ヘミング加工あるいは溶接等により結合させることによって形成されている。
【0020】
(前方ドアサッシュ部FSについて)
前方ドアサッシュ部FSは、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120aとが結合されて形成されている。前方ドアサッシュ部FSは、ドアサッシュ部100の車両前方部および車両上方部を形成している。
【0021】
(後方ドアサッシュ部RSについて)
後方ドアサッシュ部RSは、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120bと補助ブラケット130とが結合されることによって形成され、車幅方向外側には、後述するピラーガーニッシュ部140が配設されている。後方ドアサッシュ部RSは、ドアサッシュ部100の車両後方部を形成している。
後方ドアサッシュ部RSの内部には、
図3に示すように、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120bとに囲まれた空間、あるいは、補助ブラケット130とインナドアサッシュ部120とに囲まれた空間、によって形成された内部空間ISが設けられている。内部空間ISの周辺においては、後方ドアサッシュ部RSには、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120bと補助ブラケット130とが結合されることによって、閉断面が構成されている。
【0022】
(アウタドアサッシュ部110について)
アウタドアサッシュ部110は、例えば、金属板等の長尺の板材を段階的に曲折して所定の断面形状とするロール成型により加工された部材である。アウタドアサッシュ部110では、例えば、前方ドアサッシュ部FSと後方ドアサッシュ部RSとが、一体成型されている。
アウタドアサッシュ部110には、ドアウインドウ部30の昇降を案内するガラスガイドGGが形成されている。ガラスガイドGGは、車両前後方向の断面を車両上方側から見た場合、車両前方側が開放された略コの字形状となっている。ガラスガイドGGには、軟質樹脂あるいはゴム材等により成型されたガラスランGRが収容されている。
また、アウタドアサッシュ部110の車両前部内側の辺は、後述するインナドアサッシュ部120の車両前方側の辺とヘミング加工等により固定されている。また、アウタドアサッシュ部110は、ガラスガイドGGの車両後部側壁に設けられた結合部CS1において、補助ブラケット130と溶接等により結合されている。
【0023】
(インナドアサッシュ部120aおよび120bについて)
インナドアサッシュ部120aおよび120bは、金属板等をプレスして作成された部材である。インナドアサッシュ部120aおよび120bには、ウェザーストリップ60を固定するクリップCPを嵌合する嵌合部CHが設けられている。インナドアサッシュ部120aは、前方ドアサッシュ部FSの部材であり、インナドアサッシュ部120bは、後方ドアサッシュ部RSの部材である。
インナドアサッシュ部120bは、車両前方側端の辺において、ガラスガイドGGを形成する車両前部内側の辺とヘミング加工等により固定されている。インナドアサッシュ部120bは、その車両前方側において、車両上下方向に延在し、車幅方向外側から車幅方向内側に向かう略U字形状を有した突出部を形成している。そして、インナドアサッシュ部120bの車両後方側には、ウェザーストリップ部40を固定するクリップCPが嵌合する嵌合部CHが複数設けられている。また、インナドアサッシュ部120bは、嵌合部CHよりも車両後方部において、略L字形状に屈曲し、車両後方側に延在している。インナドアサッシュ部120bは、屈曲部よりも車両後方側の結合部CS2において、後述する補助ブラケット130と溶接等により結合している。
【0024】
(補助ブラケット130について)
補助ブラケット130は、ドアサッシュ部100の車両後方側に車両上下方向に延在し、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120との間に挟まれて結合されている。補助ブラケット130は、金属板等をプレスして作成された略L字形状を成している。また、補助ブラケット130は、ドアサッシュ部100の車両後部上方側角部USにおいて、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120とが結合された際に生じる隙間GPを覆うように配設されている。
具体的には、補助ブラケット130は、ガラスガイドGGの車両後部側壁に設けられた結合部CS1において、アウタドアサッシュ部110と溶接等により結合している。結合部CS1は、ガラスガイドGGの車両後部側壁において、車両上下方向に複数個所設けられている。また、補助ブラケット130は、結合部CS1よりも車幅方向外側において、車両後方部に向けて略L字形状に屈曲し、結合部CS2において、インナドアサッシュ部120と溶接等により結合している。また、結合部CS1およびCS2は、
図2に示すように、その車両上下方向に隣接する結合部の間隔は、前記ドアサッシュの車両上方側の間隔L1よりも車両下方側の間隔L2のほうが狭い間隔となっている。
【0025】
(ピラーガーニッシュ部140について)
ピラーガーニッシュ部140は、ドアサッシュ部100に車幅方向外側から取り付けられる樹脂等によって形成された外装部材である。ピラーガーニッシュ部140は、ドアサッシュ部100の意匠性を確保するとともに、ドアサッシュ部100の構成部材を車幅方向外側に露出させないように配設されている。
【0026】
<作用・効果>
上記のように構成された本実施形態に係る車両用ドア1のドアサッシュ部100における作用について
図3および
図4を用いて説明する。
【0027】
図3に示すように、ドアサッシュ部100は、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120bと補助ブラケット130とが相互に結合されて構成されている。
具体的には、アウタドアサッシュ部110の車両前部内側の辺は、インナドアサッシュ部120bの車両前部内側の辺とヘミング加工等により固定されている。また、アウタドアサッシュ部110は、ガラスガイドGGの車両後部側壁に設けられた結合部CS1において、補助ブラケット130と溶接等により結合されている。また、インナドアサッシュ部120bは、車両後方部の結合部CS2において、補助ブラケット130と結合されている。そして、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120bと補助ブラケット130とが結合されることによって、ドアサッシュ部100には、閉断面が構成されている。
結合部CS1およびCS2においては、
図2に示すように、その車両上下方向に隣接する結合部の間隔は、ドアサッシュ部100の車両上方側の間隔L1よりも車両下方側の間隔L2のほうが狭い間隔となっている。結合部CS1およびCS2においては、車両下方側の溶接個所を増やすことにより、例えば、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120bと補助ブラケット130との相互の引張強さが向上する。そのため、ドアサッシュ部100に振動等の荷重が伝達された場合でも、ドアサッシュ部100の車両下方側においては、荷重による変形が減少する。
補助ブラケット130においては、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120との間に挟まれて結合されていることによって、補助ブラケット130の剛性を向上させることにより、ドアサッシュ部100の剛性が向上する。例えば、補助ブラケット130の剛性を向上させる手法として、補助ブラケット130の板厚を厚くする、あるいは、補助ブラケット130にリブを形成させる等を例示することができる。
ウェザーストリップ部40においては、ガラスガイドGGの車両後方部にウェザーストリップ部40が配設されることにより、ウェザーストリップ部40が車両本体側の車室内側ではなく車室外側に設けられている。そのため、車両本体側の車室内における制約が減少し、車室内の車幅方向の断面が大きくなる。
【0028】
また、ドアサッシュ部100には、雨水、洗車水、温度変化による結露等により、水滴等が発生する。そのため、あらかじめ水滴等の排水路が設けられている。例えば、内部空間ISに水滴等が浸入した場合には、水滴等は、内部空間ISからアウタパネル部10およびインナパネル部20に囲まれたドアパネル内部を経由し、アウタパネル部10およびインナパネル部20に備えられた排出溝あるいは排出孔から外部に排出される。
一方、
図4に示すように、ロール成型により加工されたアウタドアサッシュ部110と、金属板等をプレスして作成されたインナドアサッシュ部120bと、を接合させる際には、孔等の隙間GPが生じる。このとき、内部空間ISとは異なる空間としての隙間GPに浸水した場合には、浸水した水分の排出が困難となり、内部に錆が発生する。そのため、補助ブラケット130は、内部空間ISとは異なる空間となる隙間GPに浸水しないように隙間GPを覆うように配設されている。具体的には、アウタドアサッシュ部110と補助ブラケット130とが結合部CS1において結合され、さらに、インナドアサッシュ部120bと補助ブラケット130とが結合部CS2において結合されることにより、隙間GPは塞がれる。
さらに、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120bと補助ブラケット130を結合させ、閉断面を構成し、車両下方部の結合部間隔を狭く構成することにより、ドアサッシュ部100の剛性が向上し、ドアサッシュ部100に振動等の荷重が伝達された場合でも、荷重による変形が減少し、変形により生じる隙間GPおよび他の隙間からの浸水が減少する。
【0029】
以上、本実施形態に係る車両用ドア1は、その車両上方側に設けられ、ドアウインドウ部30を囲んで設けられているドアサッシュ部100において、ドアウインドウ部30のガラスガイドGGを形成し、ドアサッシュ部100の車幅方向外側に配設されたアウタドアサッシュ部110と、ドアサッシュ部100の車幅方向内側に配設され、アウタドアサッシュ部110の車幅方向内側に結合されているインナドアサッシュ部120と、ドアサッシュ部100の車両後方側において、車両上下方向に延在しアウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120の間に挟まれて結合されている補助ブラケット130と、を備え、補助ブラケット130は、ドアサッシュ部100の車両後部上方側角部USにおいて、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120との隙間を覆うように配設されている。
つまり、ドアサッシュ部100の車両後部上方側角部USにおいて、ロール成型により加工された部材であるアウタドアサッシュ部110と、金属板等をプレスして作成された部材であるインナドアサッシュ部120と、が結合した際に生じる隙間GPを補助ブラケット130により覆うことによって、隙間GPから水滴が浸入することを防ぐことができる。また、ドアサッシュ部100は、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120と補助ブラケット130とが、相互に結合されることによって、高い剛性を確保することができる。
そのため、ドアサッシュの車両後部上方側角部USからの浸水を防止しつつ、剛性を向上させることができる。
【0030】
また、本実施形態に係る車両用ドア1は、アウタドアサッシュ部110と補助ブラケット130との結合部CS1と、インナドアサッシュ部120と補助ブラケット130との結合部CS2と、の間には、補助ブラケット130とインナドアサッシュ部120とに挟まれた内部空間ISが車幅方向に形成されている。
つまり、インナドアサッシュ部120に内部空間ISが形成されることによって、ガラスガイドGGの車両後方側にウェザーストリップ部40を配設させることが可能となり、さらに、ウェザーストリップ部40を車幅方向外側に寄せて配設させることが可能となる。そして、車両用ドア1は、インナドアサッシュ部120とウェザーストリップ部40とによって生じる隙間を減少させることができる。したがって、そして、インナドアサッシュ部120に配設されたウェザーストリップ部40からの浸水を減少させることができる。また、ガラスガイドGGの車両後方部にウェザーストリップ部40が配設されることによって、車両本体の車室外側に設けられている。そのため、車室内の車幅方向の断面が大きくなって、剛性が向上するため、衝突性能を向上させることができる。また、ドアサッシュ部100は、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120と補助ブラケット130とが結合され、閉断面を構成していることによって、高い剛性を確保することができる。
そのため、ドアサッシュの車両後部上方側角部USからの浸水を防止しつつ、剛性を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態に係る車両用ドア1は、アウタドアサッシュ部110と補助ブラケット130との結合部CS1およびインナドアサッシュ部120と補助ブラケット130との結合部CS2において、車両上下方向に隣接する結合部CS1およびCS2は、ドアサッシュ部100の車両上方側の間隔L1よりも車両下方側の間隔L2のほうが狭い間隔となっている。
つまり、結合部CS1およびCS2においては、車両上下方向に隣接する結合部CS1およびCS2の間隔L2を狭くすることによって、車両下方側の溶接個所を増やすことができる。例えば、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120bと補助ブラケット130との相互の引張強さを向上させることによって、ドアサッシュ部100の剛性を向上させることができる。また、ドアサッシュ部100は、剛性を向上させることによって、ドアサッシュ部100に伝達された荷重による変形を減少させ、変形により生じる隙間GPおよび他の隙間からの浸水を防止させることができる。
そのため、ドアサッシュの車両後部上方側角部USからの浸水を防止しつつ、剛性を向上させることができる。
【0032】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1;車両用ドア
10;アウタパネル部
20;インナパネル部
30;ドアウインドウ部
100;ドアサッシュ部
110;アウタドアサッシュ部
120;インナドアサッシュ部
120a;インナドアサッシュ部
120b;インナドアサッシュ部
130;補助ブラケット
140;ピラーガーニッシュ部
CH;嵌合孔
CP;固定ピン
CS1;結合部
CS2;結合部
GG;ガラスガイド
FS;前方ドアサッシュ部
GP;隙間
GR;ガラスレール
RS;後方ドアサッシュ部
US;車両後部上方側角部
V;車両