(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056592
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】TRPA(トリップ・チャンネル)を応用した食害防除組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 37/44 20060101AFI20240416BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20240416BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20240416BHJP
A01N 63/00 20200101ALI20240416BHJP
A01N 65/00 20090101ALI20240416BHJP
【FI】
A01N37/44
A01P17/00
A01N25/10
A01N63/00
A01N65/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022172768
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】595063433
【氏名又は名称】杉本 正志
(72)【発明者】
【氏名】杉本 正志
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AD01
4H011AE02
4H011BB06
4H011BB20
4H011BB22
4H011BC19
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来の食害忌避剤の欠点を解決し、人体や自然環境に優しい化学物質を用い、食害生物にたいする食害防除組成物を提供する。
【手段】課題を解決するために、本発明は、TRPA(トリップ・チャンネル)を活性化させるため重要な役割を担うアミノ酸を、豊富に含有する水産エキスや農産エキス、畜産エキス等を食害生物に対する誘因物質として利用し、植物由来の香辛料に含まれる刺激性化学物質を食害生物に接触させ、いずれの食害生物が維持しているTRPA(トリップ・チャンネル)を活性化させ、体にダメージを与える刺激を引き起こさせることを特徴とする食害防除組成物を提供する。
重量1kgの熱可塑性プラスチックや熱硬化性プラスチック、ポリ乳酸プラスチックと、5~10gのアントラ二ル酸メチル(コンコードグレープ)やアリルイソチオシアネート(ワサビ)、サンショール(山椒)、スピラントール(オランダセンニチ)カプサイシン(唐辛子)等の植物由来の香辛料、及び、1~3gの水産エキスや農産エキス、畜産エキス等の食害生物に対する誘因物質として、これらを高温で練り合わせて成形されていることを特徴とする食害防除組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食害生物の誘因物質を含有させることにより、植物由来の香辛料に含まれる刺激性化学物質を食害生物に接触させ、いずれの食害生物が維持している痛み受容の感覚神経を活性化させ、体にダメージを与える刺激を引き起こさせることを特徴とするTRPA(トリップ・チャンネル)を応用した食害防除組成物
【請求項2】
重量1kgの熱可塑性プラスチックや熱硬化性プラスチック、ポリ乳酸プラスチックと、請求項1に記載の植物由来の香辛料である、5~10gのアントラ二ル酸メチル(コンコードグレープ)やアリルイソチオシアネート(ワサビ)、サンショール(山椒)、スピラントール(オランダセン二チ)カプサイシン(唐辛子)等、及び、1~3gのアミノ酸が豊富な水産エキスや農産エキス、畜産エキス等の食害生物に対する誘因物質、これらを高温で練り合わせて成形されていることを特徴とするTRPA(トリップ・チャンネル)を応用した食害防除組成物。
【請求項3】
請求項1、2に記載の、食害防除組成物は食害鳥類、食害魚類、食害獣類に適用できることを特徴とする食害防除組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香辛料に含まれる刺激性化学物質に、アミノ酸が豊富な水産エキスや農産エキス、畜産エキス等を食害生物に対する誘因物質として利用し食害生物に接触させ、いずれの食害生物が維持しているTRPA(トリップ・チャンネル)を活性化させ、体にダメージを与える刺激を引き起こさせることを特徴とする食害防除組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特に増えてきている鳥類、魚類、獣類による被害は社会的な問題として拡大している。その例として、農作物の食害、水産養殖物の食害、住宅街及びその他の建築物などへの糞害と被害はますます拡大している。
【0003】
食害の被害から作物及び建築物を守るため用いられている駆除方法として反射板、警報音、点滅閃光、超音波など食害生物にたいする防除方法が取られているが、短期的であることや、施設の維持管理費などの負担が大きく、実用的な防御技術とは言えない。
【0004】
上記の方法以外に、農家が作物を守るために主に用いられている物に忌避剤がある。
味覚や臭覚的効果および刺激などにより、異常な生理・代謝反応を示す忌避剤である。
しかし、忌避剤の大部分が、農薬および化学物質であるため、人体や自然環境に悪影響を及ぼす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2010-503983
【特許文献2】特願2021-130315
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の食害忌避剤の欠点を解決し、人体や自然環境に優しい化学物質を用い、食害生物にたいする食害防除組成物を提供する。
【0007】
課題を解決するために、本発明は、TRPA(トリップ・チャンネル)を活性化させるため重要な役割を担うアミノ酸を、豊富に含有する水産エキスや農産エキス、畜産エキス等を食害生物に対する誘因物質として利用し、植物由来の香辛料に含まれる刺激性化学物質を食害生物に接触させ、いずれの食害生物が維持しているTRPA(トリップ・チャンネル)を活性化させ、体にダメージを与える刺激を引き起こさせることを特徴とする食害防除組成物を提供する。
【0008】
重量1kgの熱可塑性プラスチックや熱硬化性プラスチック、ポリ乳酸プラスチックと、5~10gのアントラ二ル酸メチル(コンコードグレープ)やアリルイソチオシアネート(ワサビ)、サンショール(山椒)、スピラントール(オランダセンニチ)カプサイシン(唐辛子)等の植物由来の香辛料、及び、1~3gの水産エキスや農産エキス、畜産エキス等を食害生物に対する誘因物質として、これらを高温で練り合わせて成形されていることを特徴とする食害防除組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかわる食害防除組成物は、農作物の被害ばかりでなく水産養殖物への適用しやすい組成物である。いずれの食害生物が維持しているTRPA(トリップ・チャンネル)を活性化させ、体にダメージを与える刺激を引き起こさせることを特徴とする即効性がある食害防除組成物であるが、生物に致死的な作用を及ぼしにくい利点があり、また、安全性が高い植物成分である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、実施例により本発明を説明する。
【0011】
本発明では,鳥類防除組成物として、熱可塑性のスチレン系エストラマー(TPE)ペレット90~95重量%と0.5~1重量%のアントラ二ル酸メチル、カモ類に対する誘因物質としてオキアミエキス0.1~0.5重量%を高温で練り合わせ成形(ピンク色・幅2,0cm・厚さ5mm・200cm)し、カモ類防除組成物とした。
【0012】
本発明では,魚類防除組成物として、熱可塑性のスチレン系エストラマー(TPE)ペレット90~95重量%と0.5~1重量%のサンショール(山椒)、クロダイ対する誘因物質としてカキエキス0.1~0.5重量%を高温で練り合わせ成形(ピンク色・幅2,0cm・厚さ5mm・200cm)し、クロダイ防除組成物とした。
【0013】
食害防除効果試験は、熊本県内の某貯水池管理会社の協力により、毎年、越冬のために渡来し、貯水池内や水辺を糞で汚している数十羽のカモ類に対して、6mのカモ類防除組成物を水面に6m間隔で浮かしたところ、30日間にわたって貯水池内や水辺に姿を見せず、30日過ぎてから数羽のカモ類が姿を見せたが翌日には姿は無かった。この結果、カモ類に対する誘因物質(オキアミエキス)を含有させることにより、植物由来の香辛料に含まれる刺激性化学物質をカモ類に接触させることができ、カモ類が維持している痛み受容の感覚神経を活性化させ、体にダメージを与える刺激TRPA(トリップ・チャンネル)を引き起こさせ、忌避反応ではなく逃避反応を起こさせたと考える。
【0014】
浜名湖内のマガキ養殖組合の協力により、毎年、マガキ採苗連のクロダイによる食害が拡大しているため、食害防除効果試験を実施した。マガキ稚貝養殖施設において、6mの魚類防除組成物とカモ類防除組成物の2種類を、錘を付けて3~6m間隔で交互に2m以深に垂下したところ、マガキ稚貝の採苗連を通し替えするまでの2ヶ月以上にわたってマガキ稚貝の食害は無く、その後、クロダイの姿も見ることが無かった。この結果、アミノ酸に強く反応するクロダイに対する誘因物質(カキエキス)を含有させることにより、2種類の植物由来の香辛料に含まれる刺激性化学物質をクロダイに接触させることができ、クロダイが維持している痛み受容の感覚神経を活性化させ、体にダメージを与える刺激TRPA(トリップ・チャンネル)を引き起こさせ、忌避反応ではなく強い逃避反応を起こさせたと考える