(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005660
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
A01D 41/12 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A01D41/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105933
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】磯▲崎▼ 耕輝
(72)【発明者】
【氏名】熊取 剛
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 崇
【テーマコード(参考)】
2B074
【Fターム(参考)】
2B074AA05
2B074AB01
2B074AC02
2B074BA04
2B074CD02
2B074CD08
2B074CD10
2B074CG01
2B074DA01
2B074DA02
2B074DA05
2B074DE03
2B074DE06
2B074DF01
(57)【要約】
【課題】コンプレッサ駆動用の伝動ベルトに対する張力調整の頻度を極力少なくし得る作業機を提供する。
【解決手段】キャビン40内部に設けられた運転部5と、キャビン40内部を空調するエアコンユニットと、運転部5の下方に設けられ、エンジン61を内装するエンジンルーム6と、が備えられ、エンジンルーム6内でエンジン61から離れた箇所に空調用のコンプレッサ45が設けられ、エンジン61に備えた出力プーリ61bと、コンプレッサ45に備えた入力プーリ45bとにわたって伝動ベルトが巻回され、伝動ベルト70に弾性的に張力を付与するテンション機構7が備えられた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンと、
キャビン内部に設けられた運転部と、
キャビン内部を空調するエアコンユニットと、
前記運転部の下方に設けられ、エンジンを内装するエンジンルームと、が備えられ、
前記エンジンルーム内で前記エンジンから離れた箇所に空調用のコンプレッサが設けられ、
前記エンジンに備えた出力プーリと、前記コンプレッサに備えた入力プーリとにわたって伝動ベルトが巻回され、
前記伝動ベルトに弾性的に張力を付与するテンション機構が備えられた作業機。
【請求項2】
前記テンション機構に、前記伝動ベルトに作用するテンションローラと、
前記テンションローラを支持するテンションアームと、
前記テンションアームを前記伝動ベルトの張り側へ向けて弾性付勢するスプリングと、
前記スプリングの付勢力を調整する調整機構と、が備えられ、
前記運転部の下部に、前記エンジンルームに連通する点検口と、その点検口を開閉可能な蓋体と、が備えられ、
前記調整機構が、前記点検口を介して前記運転部側から操作可能な箇所に配置されている請求項1記載の作業機。
【請求項3】
前記エンジンルームの下部に前記出力プーリが設けられ、
前記出力プーリよりも前方に前記入力プーリが設けられ、
前記テンションローラが前記伝動ベルトの内周面に作用する位置に設けられ、
前記テンションアームが、前後方向に延びる第一アーム部と、上下方向に延びる第二アーム部と、を備えて、前記第二アーム部の前後方向の作動に伴って前記第一アーム部が上下方向に作動するように揺動可能に構成されたベルクランク状に形成され、
前記スプリングは前記第二アーム部に前方への弾性付勢力を作用させ、
前記調整機構は前記スプリングよりも前方位置で調節操作可能に設けられている請求項2記載の作業機。
【請求項4】
前記運転部に運転座席が備えられ、
前記運転座席の下方に前記エンジンルームが備えられ、
前記運転座席を支持するシートフレーム、又は運転部の床部に点検口が設けられ、
前記点検口は前記床部の後部箇所を開放可能な部位に設けられ、
前記調整機構は、前記床部の後部下方に設けられている請求項3記載の作業機。
【請求項5】
前記調整機構は、前記運転部の床部を支持するフレーム体に取り付けてある請求項4記載の作業機。
【請求項6】
前記エンジンルームは、前記床部の下方に存在する前部室と、前記床部よりも後方に存在する後部室と、に区画され、
前記エンジン、及び前記コンプレッサが前記後部室に設けられ、
前記前部室と前記後部室との間に熱伝導を制限する防熱板が備えられ、
前記調整機構は、前記防熱板を通過して前記前部室に備えられている請求項2~5のいずれか一項記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が搭乗するキャビンと、キャビン内を空調するエアコンユニットと、を備えている作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業機として、例えば、特許文献1に記載のコンバインが既に知られている。特許文献1に記載のコンバインでは、エアコンユニットがキャビンのルーフ部に内装され、空調用のコンプレッサは、キャビンの下方に存在するエンジンルームに、エンジンとともに内装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のコンバインでは、エンジンの出力軸に備えた出力プーリと、空調用のコンプレッサの入力プーリと、にわたって伝動ベルトを巻回し、エンジン動力をコンプレッサの駆動力として用いることができるようにしている。エンジンルーム内で空調用のコンプレッサを支持する部材は、エンジンと一体に取り付けられたベースステーに取り付けられている。
この構造のものでは、伝動ベルトに弛みが生じた場合等の張力調整をおこなう際には、出力プーリと入力プーリとの距離を変更することによって行うものであった。張力調整の必要頻度はそれほど高くはないが、エンジンとコンプレッサは、エンジンルーム内でも内奥に配置され、その外方には、ファンシュラウドの他、ラジエータやオイルクーラ等の補機類、及び各種の配管類、さらには外側に防塵カバーが取り付けられたものも存在する。
つまり、伝動ベルトの張力調整を行うには、エンジンとコンプレッサが存在するよりも外側の狭い空間に錯綜して存在する各種の機器を分解し、取り外す必要があって、その分解組付けに多大な手数を要するという煩わしさがあった。
この構造のように、コンプレッサがベースステーに取り付けられてエンジンと同調した振動を受ける構造のものでは、出力プーリと入力プーリとの間における振動方向のズレなどが生じ難くて、比較的ベルトの弛みも生じ難い傾向にある。しかしながら、例えばコンプレッサをエンジンとは別の位置で機体フレームに支持させるなどした場合には、出力プーリと入力プーリとの振動形態が異なり、ベルト弛みの発生頻度も高くなりがちであった。
【0005】
本発明では、コンプレッサ駆動用の伝動ベルトに対する張力調整の頻度を極力少なくし得るようにした作業機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における作業機の特徴は、
キャビンと、
キャビン内部に設けられた運転部と、
キャビン内部を空調するエアコンユニットと、
前記運転部の下方に設けられ、エンジンを内装するエンジンルームと、が備えられ、
前記エンジンルーム内で前記エンジンから離れた箇所に空調用のコンプレッサが設けられ、
前記エンジンに備えた出力プーリと、前記コンプレッサに備えた入力プーリとにわたって伝動ベルトが巻回され、
前記伝動ベルトに弾性的に張力を付与するテンション機構が備えられたことにある。
【0007】
本特徴構成によれば、エンジンに備えた出力プーリとコンプレッサに備えた入力プーリとにわたって巻回された伝動ベルトに対して、弾性的に張力を付与するテンション機構が備えられたので、伝動ベルトに伸びや弛みが生じたとしても、テンション機構の弾性付勢力による張力を付与することができる。これにより、張力調整のためにエンジン周りの各種機器や配管類を取り外したり付け替える等の煩雑な手数を省くことができ、張力調整作業の省力化を図ることができる。
そして、空調用のコンプレッサを、エンジンと一体であるように支持させるのではなく、エンジンから離れた箇所の機体フレーム上に設けることで、エンジンの配設位置による制約をあまり受けずに任意の箇所に配設し易くなるという、設計上の自由度を高められる利点もある。
この場合、エンジンとコンプレッサとの夫々には、振動周期や振動方向等が異なる振動が作用することがある。また、これとは別に、エンジンに備えた別のプーリに連係する別の機器への動力伝達系での動力の断続等によって、防振ゴムなどでマウントされているエンジン全体を上下軸心周りで捻る方向の外力が生じ、これに伴って出力プーリと入力プーリとの間の距離に変化が生じ、弛みや張りが繰り返されて、伝動ベルトの伸びに繋がる虞がある。これらの理由から、空調用のコンプレッサは、エンジンと一体に支持するというのが常識的な技術として用いられていたが、上述したようなテンション機構を採用することで、エンジンから離れた任意の箇所にコンプレッサを配置できるように設計上の自由度を高め易い。
【0008】
さらに、本発明において、
前記テンション機構に、前記伝動ベルトに作用するテンションローラと、
前記テンションローラを支持するテンションアームと、
前記テンションアームを前記伝動ベルトの張り側へ向けて弾性付勢するスプリングと、
前記スプリングの付勢力を調整する調整機構と、が備えられ、
前記運転部の下部に、前記エンジンルームに連通する点検口と、その点検口を開閉可能な蓋体と、が備えられ、
前記調整機構が、前記点検口を介して前記運転部側から操作可能な箇所に配置されていると好適である。
【0009】
本特徴構成によれば、テンション機構が、テンションローラを支持するテンションアームを伝動ベルトの張り側へ向けて弾性付勢するスプリングと、スプリングの付勢力を調整する調整機構と、を備えており、その調整機構を、運転部側から操作可能な箇所に配置された点検口を介して操作できるので、運転部から点検口を介して容易にスプリングの付勢力を調整することができる。
【0010】
さらに、本発明において、
前記エンジンルームの下部に前記出力プーリが設けられ、
前記出力プーリよりも前方に前記入力プーリが設けられ、
前記テンションローラが前記伝動ベルトの内周面に作用する位置に設けられ、
前記テンションアームが、前後方向に延びる第一アーム部と、上下方向に延びる第二アーム部と、を備えて、前記第二アーム部の前後方向の作動に伴って前記第一アーム部が上下方向に作動するように揺動可能に構成されたベルクランク状に形成され、
前記スプリングは前記第二アーム部に前方への弾性付勢力を作用させ、
前記調整機構は前記スプリングよりも前方位置で調節操作可能に設けられていると好適である。
【0011】
本特徴構成によれば、伝動ベルトの内周面に作用するテンションローラが、上下方向に延びる第二アーム部の前後方向の作動に伴って上下方向に作動するように、前後方向に延びる第一アーム部に支持されている。そして、第二アーム部に前方への弾性付勢力を作用させるスプリングよりも前方位置で調整機構による弾性付勢力の調節を行うことが可能である。
これによって、出力プーリがエンジンルームの下部に存在するものでありながら、調整機構での調節操作は、テンション機構自体の配置構成を有効利用して、上方寄り、かつ前方寄りの箇所で行えるようにして、運転部からの操作を行い易くしてある。
【0012】
さらに、本発明において、
前記運転部に運転座席が備えられ、
前記運転座席の下方に前記エンジンルームが備えられ、
前記運転座席を支持するシートフレーム、又は運転部の床部に点検口が設けられ、
前記点検口は前記床部の後部箇所を開放可能な部位に設けられ、
前記調整機構は、前記床部の後部下方に設けられていると好適である。
【0013】
本特徴構成によれば、運転部に設けられた点検口を開放して、床部の後部下方に設けられた調整機構を操作することができる。
【0014】
さらに、本発明において、
前記調整機構は、前記運転部の床部を支持するフレーム体に取り付けてあると好適である。
【0015】
本特徴構成によれば、調整機構を運転部の下方に配備させるための特別な支持部材を要さず、床部を支持するフレーム体を有効利用して支持構造の簡素化を図り易い。
【0016】
さらに、本発明において、
前記エンジンルームは、前記床部の下方に存在する前部室と、前記床部よりも後方に存在する後部室と、に区画され、
前記エンジン、及び前記コンプレッサが前記後部室に設けられ、
前記前部室と前記後部室との間に熱伝導を制限する防熱板が備えられ、
前記調整機構は、前記防熱板を通過して前記前部室に備えられていると好適である。
【0017】
本特徴構成によれば、エンジンやコンプレッサを設けた後部室と、床部の下方に存在する前部室と、にエンジンルームを区画して、その前部室と後部室との間に防熱板を設けることで、後部室内の温度の高い気体による熱影響が運転部に伝わり難い構造とし得る。
それでいて、調整機構は、防熱板を通過して前部室に備えられているので、防熱板の脱着作業も要さず、調整機構によるスプリングの付勢力を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】搭乗部とエンジンルームとを示す右側面図である。
【
図6】エンジンから空調用コンプレッサへの伝動機構の取付箇所を示す斜視図である。
【
図9】唐箕を保護する唐箕保護板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明を適用した普通型コンバインにおいて、走行機体の作業走行時における前進側の進行方向(
図1,2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図1,2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての右側に相当する方向(
図2における矢印R参照)が「右」、同様に左側に相当する方向(
図2における矢印L参照)が「左」である。
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を、作業機の一例である普通型コンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0021】
〔コンバインの全体構成〕
図1乃至
図3は、普通型コンバインを示している。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置2に支持された機体フレーム1を備え、その機体フレーム1の前部に刈取前処理部3が配置されている。
機体フレーム1上には、脱穀装置10と穀粒貯留タンク12が左右に並列した状態で設けられている。
脱穀装置10の前部には、刈取り穀稈物搬送用のフィーダ11が連結されている。フィーダ11は、前端側が刈取前処理部3の後部に連結され、後端側が脱穀装置10の前部近くに設けられた横軸心(図外)回りで上下揺動可能に支持されている。つまり、フィーダ11の下部に備えた昇降用油圧シリンダ14の伸縮作動にともなって、フィーダ11の前端側が刈取前処理部3とともに昇降作動可能に支持されている。
【0022】
刈取前処理部3は、略機体横幅に相当する刈幅を有した左右一対の分草フレーム3Aを備え、左右一対の分草フレーム3Aに亘ってバリカン型の切断装置3Bと、刈り取った作物を刈り幅中間に横送りするオーガ3Cと、が架設された構造となっている。刈取前処理部3の前部上方には、植立した穀稈を後方に掻き込んで引き上げる掻き込みリール3Dが装備されている。この掻き込みリール3Dで圃場に植立する穀稈の穂先側を後方に掻き込みながら切断装置3Bで刈り取り、刈り取られた作物がオーガ3Cで左右方向の中央側に集められる。集められた作物がフィーダ11に受け渡され、後方の全稈投入型の脱穀装置10へ送り込まれる。
【0023】
脱穀装置10は、フィーダ11から送り込まれた作物の扱き処理を行う扱胴10Aと、扱き処理された作物を選別処理する揺動選別装置10Bと、揺動選別装置10Bに対して風選用の選別風を供給する唐箕10Cとを備えている。唐箕10Cが位置する部位の下方に相当する機体フレーム1には、唐箕10Cの周壁部分に、圃場の石等が跳ね飛んできたり、他物と接触したり、して変形するようなことが生じるのを防ぐための唐箕保護板15が設けられている(
図3参照)。
【0024】
脱穀処理された作物のうち、穀稈や雑草などの夾雑物は、細断処理等を受けて機外へ排出され、夾雑物を除去するように選別された後の穀粒が穀粒貯留タンク12へ送り込まれる。穀粒貯留タンク12の後部には、穀粒貯留タンク12内の穀粒を外部に排出する穀粒排出装置13が設けられている。穀粒貯留タンク12は、作業位置とメンテナンス位置とに亘って、上下方向に延びる軸心Z1周りで揺動開閉可能である。
【0025】
〔操縦部〕
機体フレーム1の前部における右側方には、操縦部4が設けられている。操縦部4には、運転者が搭乗して運転操作をすることができる運転部5と、運転部5を覆うキャビン40と、が備えられている。運転部5の下方には、エンジンルーム6が設けられている。
【0026】
図3から
図7に示すように、キャビン40には、ルーフ部41、フロントガラス42、及び乗降用ドア43等が設けられている。ルーフ部41の内部に、キャビン40の室内を空調するエアコンユニット44が内装されている。
このエアコンユニット44に対して冷媒を供給する空調用のコンプレッサ45が、後述するエンジンルーム6に設けられている。
【0027】
図3から
図6に示すように、運転部5には、機体操向及び作業機器の操作を行うための運転操作機器50、及び運転座席51が備えられている。運転座席51の前側下方には、搭乗デッキとしての床部52が設けられ、キャビン40の乗降用ドア43を開閉して、機外からの乗降を可能にしてある。運転操作機器50、及び運転座席51は、運転者が運転座席51に着座し、床部52に足を乗せた状態で機体操向操作を行うことができるように配置されている。
【0028】
〔エンジンルーム〕
図1に示されるように、運転部5の下方に設けられるエンジンルーム6は、前記床部52の下方に相当する箇所に存在する前部室6Fと、前記床部52よりも後方で前記運転座席51が存在する箇所の下方に相当する後部室6Rとの、前後に区画された空間である。
【0029】
図4乃至
図7に示されるように、前部室6Fは、キャビン40の下端よりも下方位置で、キャビン40を支持するキャビン支持台16(フレーム体に相当する)に囲まれた空間である。この空間の内部には、
図4に示すように、バッテリ17等の電装部品が配備されている。
キャビン支持台16は、床部52を支える左右一対の前支柱16F,16F、及び左右一対の後支柱16R、16Rを備え、機体フレーム1に対してキャビン40の床部52を固定している。キャビン支持台16の右横外側には、
図1及び
図5,6に示すように、機外から足を掛けて乗り降りし易くするための梯子部材18が取り付けられている。
【0030】
図5乃至
図7に示されるように、左右の後支柱16R、16Rのうち、左右方向で機体内方側に位置する左側の後支柱16Rには、二本の筋交い部材16A,16Bが連結されている。
その二本の筋交い部材16A,16Bとは、左側の後支柱16Rと右側の後支柱16Rとを連結する第一筋交い部材16Aと、左側の後支柱16Rと、それよりも左横方向に離れた位置の機体フレーム1とを連結する第二筋交い部材16Bである。この二本の筋交い部材16A,16Bは、何れも左側の後支柱16Rに連結された側の端部の高さが、相手側である右側の後支柱16Rとの連結箇所の高さや、左横方向に離れた位置における機体フレーム1との連結箇所の高さよりも高い位置であるように、斜め姿勢で設けられている。これは、二本の筋交い部材16A,16Bが、左側の後支柱16Rに対する筋交いとしての機能を有効に発揮できるように斜め姿勢で設けられたものであり、キャビン支持台16全体の左右方向での揺れに対する強度を効果的に高めている。
【0031】
後部室6Rは、前部室6Fの後方に設けられている。
この後部室6Rは、その上端が前部室6Fの上端よりも上方に位置するボンネット60を備えている。ボンネット60は、前部室6Fの上端よりも上方に位置するキャビン40の背部に位置して、キャビン40の背部壁の一部を兼ねるとともに、運転座席51の搭載台(シートフレームに相当する)としての役割をも兼ねている。
【0032】
後部室6Rにおいて、ボンネット60内には、エンジン61が、機体フレーム1に対して防振材62を介してゴムマウントされた状態に設けられている。
ボンネット60は、図示はしないが、後部壁が穀粒貯留タンク12の前部近くに位置し、左右の横側部には専用の隔壁が存在しない。つまり、ボンネット60の右横側部に相当する箇所には、
図5、及び
図1に示すように、エンジン61の右横外方に位置する状態で、ファンシュラウド63、オイルクーラ64、ラジエータ65、等が立設され、さらに外側に防塵カバー66が開閉可能に取り付けられている。このように、ボンネット60の右横側方では、エンジン61の右横側方に錯綜して存在する関連機器により、ボンネット60の右横側方が外観上は塞がれた状態ではあるが、防塵カバー66を通して右横側方から機体中央側への通気は可能であるように構成されている。
そして、ボンネット60の左横側部は、図示はしないが開放されている。この部位では、冷却ファン61cからの冷却排風の排出方向がフィーダ11の存在する左側方へ向くように構成してある。
【0033】
〔空調用コンプレッサの駆動構造〕
図4乃至
図7に示されるように、後部室6Rにおいて、エンジン61の前方箇所には、エアコンユニット44の冷媒を給排するための空調用のコンプレッサ45が設けられている。
この空調用のコンプレッサ45は、後部室6R内において、エンジン61に支持されるのではなく、機体フレーム1に取り付けられた取付ブラケット46に固定されている。
【0034】
エンジン61から空調用のコンプレッサ45への動力伝達は伝動ベルト70を用いて行われる。伝動ベルト70は、エンジン61の出力軸61aに設けた出力プーリ61bと、空調用のコンプレッサ45の入力軸45aに設けた入力プーリ45bと、に掛け渡されたものである。この伝動ベルト70に対しては、弾性的に張力を付与するテンション機構7を用いて、張り側へのテンションが与えられている。
【0035】
テンション機構7は、伝動ベルト70の内周面に当接して押圧作用するテンションローラ71と、テンションローラ71を支持するテンションアーム72と、テンションアーム72を伝動ベルト70の張り側へ向けて弾性付勢するスプリング73と、スプリング73の付勢力を調整する調整機構74と、を備えている。
テンションアーム72は、ベルクランク状に屈曲形成されたものであり、前後方向に延びる第一アーム部72aと、上下方向に延びる第二アーム部72bと、屈曲箇所に設けられたボス部72cと、を備えている。そして、第二アーム部72bの前後方向の作動に伴って第一アーム部72aが上下方向に作動するように揺動可能に構成されている。
【0036】
出力プーリ61bはエンジン61の出力軸61aに設けてあるので、エンジンルーム6内の下方に位置している。
入力プーリ45bは、エンジンルーム6内において、出力プーリ61bよりも前方に離れて位置している。
テンションアーム72は、機体フレーム1に固定された取付ブラケット46に支持されている。つまり、テンションアーム72の屈曲箇所に設けたボス部72cが、取付ブラケット46の立ち上がりフレーム46aに設けられた支軸46bに外嵌されている。これによって、テンションアーム72は支軸46bと同心状の軸心回りで回動自在に枢支されている。
【0037】
図4乃至
図7に示すように、テンションアーム72の第二アーム部72bには、テンションアーム72を伝動ベルト70の張り側へ向けて弾性付勢するスプリング73が連結されている。このスプリング73は、一端側が第二アーム部72bの遊端部に係止され、他端側が調整機構74に係止されている。この調整機構74によって、スプリング73よりも前方位置で弾性付勢力を調節可能に構成されている。
【0038】
調整機構74は、一端側がスプリング73に係止され、かつ螺軸部を備えている調節ロッド74aと、その調節ロッド74aの螺軸部と螺合する一対の調整ナット74b,74bと、を備えている。調節ロッド74aの他端側を調整ブラケット16Cに挿通させた状態で、前後に設けた調整ナット74b,74bの位置を調節することで、スプリング73の弾性付勢力を変更することができる。
調整ブラケット16Cは、左側の後支柱16Rと右側の後支柱16Rとを連結する第一筋交い部材16Aの上面に立設された平面視L字型のブラケットであり、調節ロッド74aを挿抜可能な孔16Caを備えている。
【0039】
後部室6Rと前部室6Fとの境界部分に、前部室6Fと後部室6Rとの間での熱伝導を制限する防熱板67が備えられている。この防熱板67の一部には、前記調節ロッド74aを無理なく挿抜し得る程度の開口67aが設けられている。
したがって、テンション機構7のうちの、調整機構74は、防熱板67の存在箇所を越えて、後部室6R側から前部室6F側に延設して、前部室6F側で調整操作を行えるようにしてある。
【0040】
〔点検口〕
図4乃至
図7に示すように、運転部5の床部52に、エンジンルーム6に連通する点検口53と、その点検口53を開閉可能な蓋体54と、蓋体54を締め付け固定することが可能な連結ボルト55とが備えられている。
図7に仮想線で示すように、点検口53は、床部52の後端縁52aを含んで、矩形に切りかかれた開口であり、調整機構74における調節ロッド74aの螺軸部や調整ナット74b,74bが存在する箇所の直上に相当する箇所に設けられている。また、開口の大きさは、床部52から、作業者が調節ロッド74aの螺軸部や調整ナット74b,74bを支障なく操作し得る大きさに設定されている。
【0041】
〔昇降用油圧シリンダ〕
フィーダ11の下部に備えた昇降用油圧シリンダ14は次のように構成されている。
図8に示すように、昇降用油圧シリンダ14を構成するシリンダ筒14Aとピストンロッド14Bとのうち、シリンダ筒14Aの揺動支点側(機体フレーム1に連結され側)に圧油の給排口14Aaが形成されている。
シリンダ筒14Aの内周面側において、前記揺動支点側とは反対側の端部近くには、ピストンロッド14Bの軸部14Bbの外周面に嵌合して、ピストンロッド14Bを摺動可能に支持する樹脂製の外部支持カラー19aが内装されている。
【0042】
ピストンロッド14Bは、先端側(フィーダ11に連結される側)とは反対側の軸部14Baがシリンダ筒14A内に挿入され、その挿入奥側の軸端部近くに、軸部14Baよりも少し径を大きくした鍔状ピストン部14C,14Cが設けられている。この鍔状ピストン部14C,14Cは、軸部14Baよりも僅かに径を大きくした部位であり、ピストンロッド14Bの伸縮作動方向で所定の間隔を隔てた二箇所に形成されている。
鍔状ピストン部14C,14Cよりも、さらにシリンダ筒14Aの内奥側の端部には、鍔状ピストン部14C,14Cよりも先端側の軸部14Baよりも径の小さい小径軸部14Bbが圧油の給排口14Aaに対向して位置するように形成されている。
鍔状ピストン部14C,14C同士の間隔内には、ピストンロッド14Bをシリンダ筒14Aの内周面に支持させながら摺動させるための樹脂製の内部支持カラー19bが装着されている。この内部支持カラー19には、図示はしないが、ピストンロッド14Bの軸部14Bbにおける油抜きのために、軸線方向での潤滑油の通過を許容するスリットが形成されている。
【0043】
上記の外部支持カラー19aが存在する箇所、及び内部支持カラー19bが存在する箇所のように、ピストンロッド14Bの伸縮作動方向における距離を隔てた二箇所(三以上の複数でもよい)で、シリンダ筒14Aに対してピストンロッド14Bを比較的密に嵌合させて摺動姿勢を安定良く保ち得る箇所を形成したことにより、昇降用油圧シリンダ14の伸長姿勢を安定良く保ち易い。
これによって、昇降用油圧シリンダ14を大きく伸長させた状態でも、ピストンロッド14Bが長さ方向での複数箇所に相当する広い範囲で安定良く支持され、伸長した状態での、シリンダ筒14Aとピストンロッド14Bとの支持が、ガタツキの少ない状態で安定良く保たれ易い。
【0044】
〔唐箕保護板〕
唐箕10Cが位置する部位の下方に相当する機体フレーム1に、唐箕10Cの周壁部分を保護するための唐箕保護板15が設けられている。
この唐箕保護板15は、
図8に示すように、機体フレーム1に接する三辺15a、15b、15cのうち、隣り合う二辺15a、15bが機体フレーム1に溶接固定されている。残る一辺15cは,機体フレーム1に備えた連結ブラケット1a対してボルト1bにより連結されている。
つまり、唐箕保護板15のうち、相対向する位置にある端辺を機体フレーム1に溶接固定してしまうと、機体の振動や捻れなどで、相対向する位置にある端辺間の距離が微妙に変化し、これが繰り返し作用することで、溶接箇所が劣化する可能性が高まる傾向があるため、溶接箇所は相隣る箇所にして、相対向する位置にある端辺では、一方をボルト連結することにより、微妙な距離変化などによる影響を低減できるようにしたものである。
【0045】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態について説明する。下記の各別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて上記実施形態に適用してもよい。なお、本発明の範囲は、これら実施形態の内容に限定されるものではない。
【0046】
(1)上述した実施形態では、点検口53として、床部52の後端縁52aを含んで、後端縁52a側が開放された矩形に切りかかれた開口である構造のものを例示したが、必ずしもこの構造に限定されるものではない。
例えば、点検口53が、床部52の後端縁52aから外れて少し前方に寄った箇所で、閉ループとなる矩形の開口を形成するように設けられたものであったり、円形状などの矩形ではない形状の開口であってもよい。また、床部52の一部に開口を設けるのではなく、床部52の全体を脱着できるようにして、その床部52が除かれた箇所を点検口53として利用するようにしてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0047】
(2)上述した実施形態では、点検口53を床部52に形成した構造のものを例示したが、これに限らず、点検口53を、図示はしないが、運転座席51の搭載台となるボンネット60の前壁部分に形成してもよい。
また、このボンネット60の前壁部分に形成される点検口53が、床部52にまで延長されたものであっても良いし、ボンネット60の前壁部分と、床部52との両方に点検口53が形成されたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0048】
(3)上述した実施形態では、エンジンルーム6の前部室6Fと後部室6Rとの区画箇所に防熱板67を設けた構造のものを例示したが、この防熱板67は省略しても差し支えない。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0049】
(4)上述した実施形態では、調整機構74として、スプリング73に係止された調節ロッド74aと、調整ナット74b,74bとの螺合によって、スプリング73の弾性付勢力を調節する構造のものを例示したが、調整機構74としては、これに限らず、スプリング73の弾性付勢力を調節する適宜の構造を採用することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、普通型コンバイン以外に自脱型コンバインその他の作業機にも利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
5 運転部
6 エンジンルーム
6F 前部室
6R 後部室
7 テンション機構
8 キャビン
16A フレーム体
40 キャビン
44 エアコンユニット
45 空調用のコンプレッサ
45b 入力プーリ
51 運転座席
52 床部
53 点検口
54 蓋体
61 エンジン
61b 出力プーリ
67 防熱板
70 伝動ベルト
71 テンションローラ
72 テンションアーム
72a 第一アーム部
72b 第二アーム部
73 スプリング
74 調整機構