(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056607
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】靴適合評価装置および靴適合評価方法
(51)【国際特許分類】
A43D 1/02 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A43D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094815
(22)【出願日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2022162919
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 舞
(72)【発明者】
【氏名】楠見 浩行
(72)【発明者】
【氏名】筒井 雅之
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050NA86
(57)【要約】
【課題】足に適合する靴選びの精度向上を図る技術を提供する。
【解決手段】靴適合評価システム100において、寸法差算出部72は、足部位寸法の測定値とその足部位に対応する靴型部位寸法との差である部位寸法差を、部位に応じた所定の調整がなされた形で算出する。評価処理部74は、部位寸法差に基づく靴型適合率を算出する。出力部は、靴型適合率に関する情報を出力する。寸法差算出部72は、所定の調整として、靴の部位ごとの個別の伸縮特性に応じた許容分が差し引かれた形で部位寸法差を算出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象者の足形を規定する足形寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位の寸法である複数の足部位寸法の測定値を取得する測定値取得部と、
靴型を規定する靴型寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位に対応する靴型部位の寸法である複数の靴型部位寸法を、複数種の靴型ごとに記憶する靴型記憶部と、
足部位寸法の測定値とその足部位に対応する靴型部位寸法との差である部位寸法差を、部位に応じた所定の調整がなされた形で算出する寸法差算出部と、
前記部位寸法差に基づく靴型適合率を算出する評価処理部と、
前記靴型適合率に関する情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする靴適合評価装置。
【請求項2】
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、靴の部位ごとの個別の伸縮特性に応じた許容分が差し引かれた形で前記部位寸法差を算出することを特徴とする請求項1に記載の靴適合評価装置。
【請求項3】
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、部位ごとの個別の重みを加えた部位寸法差の二乗和として算出することを特徴とする請求項1または2に記載の靴適合評価装置。
【請求項4】
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、足長の部位寸法差に対しては第1の重みを加え、足長以外の部位寸法差に対しては前記第1の重みより小さい第2の重みを加えた部位寸法差の二乗和を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の靴適合評価装置。
【請求項5】
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、前記足部位寸法の実測値に対し、測定方法に応じて誤差の修正を加えた値を前記足部位寸法の測定値として用いることを特徴とする請求項1または2に記載の靴適合評価装置。
【請求項6】
前記複数の足部位は、足囲、踵幅、踏まず囲、踵囲のうち少なくともいずれかと足長の組み合わせであることを特徴とする請求項1または2に記載の靴適合評価装置。
【請求項7】
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、足長に対する踵幅率に応じた補正値が加えられた形で前記部位寸法差を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の靴適合評価装置。
【請求項8】
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、足囲が所定基準以上である場合に、足長に対する踵囲率に応じた補正値が加えられた形で前記部位寸法差を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の靴適合評価装置。
【請求項9】
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、足囲が所定基準以上である場合に、足長に対する踵幅率に応じた補正値、および、足長に対する踵囲率に応じた補正値のうちいずれか大きい方の補正値が加えられた形で前記部位寸法差を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の靴適合評価装置。
【請求項10】
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、足長の寸法に関して前記測定対象者の足形における爪先形状タイプに応じた補正値が加えられた形で前記部位寸法差を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の靴適合評価装置。
【請求項11】
前記寸法差算出部は、足幅の寸法に関して、足長に対する足囲率と足長に対する踏まず囲率の差分が所定基準範囲未満である場合は踏まず囲の部位寸法差を算出し、足長に対する足囲率と足長に対する踏まず囲率の差分が所定基準範囲を超える場合は足囲と踏まず囲の平均値の部位寸法差を算出し、足長に対する足囲率と足長に対する踏まず囲率の差分が所定基準範囲内である場合は足囲の部位寸法差を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の靴適合評価装置。
【請求項12】
前記評価処理部は、複数種の靴型ごとに前記靴型適合率を算出するとともに、前記靴型適合率が相対的に大きい靴型に対応する少なくとも一つの靴を複数の靴の選択肢から選択し、
前記出力部は、前記選択された靴とその靴型に対する前記靴型適合率を示す情報を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の靴適合評価装置。
【請求項13】
前記評価処理部は、複数種の靴型ごとに前記靴型適合率を算出するとともに、前記靴型適合率が相対的に大きい靴型に対応する少なくとも一つの靴を複数の靴の選択肢から選択し、
前記出力部は、前記選択された靴の靴型部位寸法と足部位寸法との比較結果を視覚的に示す情報を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の靴適合評価装置。
【請求項14】
前記複数の足部位寸法の測定値が、前記測定対象者の識別情報と対応付けられて格納される測定値記憶部をさらに備え、
前記寸法差算出部は、前記測定対象者によって選択された靴種類の靴型との間で前記部位寸法差を算出し、
前記評価処理部は、前記測定対象者によって選択された靴種類の靴型との間で前記靴型適合率を算出し、
前記出力部は、前記測定対象者によって選択された靴種類を示す情報と、その靴種類において前記測定対象者の測定値に基づいて靴型適合率が相対的に高い靴の足長方向の寸法および足幅方向の寸法のうち少なくともいずれかを示す情報と、前記靴型適合率を示す情報と、を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の靴適合評価装置。
【請求項15】
測定対象者の足形を規定する足形寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位の寸法である複数の足部位寸法の測定値を取得する過程と、
靴型を規定する靴型寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位に対応する靴型部位の寸法である複数の靴型部位寸法を所定の記憶手段から読み出す過程と、
足部位寸法の測定値とその足部位に対応する靴型部位寸法との差である部位寸法差を、部位に応じた所定の調整がなされた形で算出する過程と、
前記部位寸法差に基づく靴型適合率を算出する過程と、
前記靴型適合率に関する情報を出力する過程と、
を備えることを特徴とする靴適合評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴適合評価装置および靴適合評価方法に関する。特に、足形の測定値に基づいて靴の適合性を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
靴の購入を検討している人の足形を三次元的に測定し、その測定値を用いて靴にフィットするかどうかを解析する技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-169015号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0053335号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2においては、靴型の寸法と比較することで、対象者の足形と靴型を比較する。しかしながら、先行技術においては、足形と靴型の具体的な比較方法は開示されていない。一般的に、靴型の情報は靴メーカーにとって技術とノウハウが凝縮された秘匿されるべき情報であり、靴型の正確な寸法や靴ごとの設計思想、材料、特性等の情報はその靴のメーカーしか知り得ない。したがって、理論上は足形と靴型の比較は可能だとしても、現実には靴や靴型の設計思想や特性が十分に反映された比較および適合性解析の手段が提供されてきたとは言い難い。
【0005】
一方、靴の販売店等の店頭には、シューフィッターとも呼ばれる、豊富な知識と技術をもって顧客の足に適合する靴を選択できる専門的な人材がいる場合がある。そこで、そうした専門知識や技術がなくてもシューフィッターと同等の満足のいく靴選びが手軽にできるような技術の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、足に適合する靴選びの精度向上を図る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の靴適合評価装置は、測定対象者の足形を規定する足形寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位の寸法である複数の足部位寸法の測定値を取得する測定値取得部と、靴型を規定する靴型寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位に対応する靴型部位の寸法である複数の靴型部位寸法を、複数種の靴型ごとに記憶する靴型記憶部と、足部位寸法の測定値とその足部位に対応する靴型部位寸法との差である部位寸法差を、部位に応じた所定の調整がなされた形で算出する寸法差算出部と、部位寸法差に基づく靴型適合率を算出する評価処理部と、靴型適合率に関する情報を出力する出力部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、靴適合評価方法である。この方法は、測定対象者の足形を規定する足形寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位の寸法である複数の足部位寸法の測定値を取得する過程と、靴型を規定する靴型寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位に対応する靴型部位の寸法である複数の靴型部位寸法を所定の記憶手段から読み出す過程と、足部位寸法の測定値とその足部位に対応する靴型部位寸法との差である部位寸法差を、部位に応じた所定の調整がなされた形で算出する過程と、部位寸法差に基づく靴型適合率を算出する過程と、靴型適合率に関する情報を出力する過程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、足に適合する靴選びの精度向上を図る技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】靴適合評価システムの基本的な構成を示す図である。
【
図2】測定対象者の足形と靴型における部位同士の対応関係を模式的に示す図である。
【
図3】靴適合評価システムの各構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】靴適合評価処理の過程を示すフローチャートである。
【
図6】足形と靴型の比較ページの第1例を示す図である。
【
図7】足形と靴型の比較ページの第2例を示す図である。
【
図8】第2実施形態における靴適合評価処理の過程を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態における第1の商品詳細ページの画面例を示す図である。
【
図10】第2実施形態における第2の商品詳細ページの画面例を示す図である。
【
図11】第2実施形態における靴適合評価システムの各構成を示す機能ブロック図である。
【
図12】第2実施形態におけるウィズタイプごとの踵幅率と補正値の関係を示す図である。
【
図13】補正値C1の算出アルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態、変形例では、同一または同等の構成要素には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、靴適合評価システム100の基本的な構成を示す。靴適合評価システム100は、主に情報端末16と靴適合評価サーバ50を含む。ここで「靴」は、ランニングシューズやウォーキングシューズを主に対象とするが、これら以外の種類の靴を含んでもよい。測定対象者10は、靴の販売店に設置された三次元足形計測器18によって測定対象者10の足形をスキャンする。あるいは、測定対象者10が計測マット12に足を載せて情報端末16のカメラ機能による足の撮影および足形計測アプリでの計測によって、自身の足形をスキャンする。あるいは、測定対象者10の足を巻き尺14等の計測器を用いて手作業で足長や足囲を計測して、測定値を情報端末16に入力する。三次元足形計測器18は、レーザー計測により測定対象者10の足形に関する三次元データを取得する。ここでいう「足形」は、測定対象者10の足の三次元形状を仮想的に再現した三次元モデルである。情報端末16は、LiDAR(Light Detection And Ranging)等の技術を利用した三次元スキャナ機能やフォトグラメトリ等の画像合成処理により測定対象者10の足形を生成してもよい。
【0013】
靴適合評価システム100は、計測マット12や三次元足形計測器18をさらに含んでもよい。情報端末16は、測定対象者10自身がユーザとして操作してもよいし、測定対象者10以外の者、例えば靴販売店の店員が三次元足形計測器18または情報端末16による足形のスキャンを実施してもよい。したがって、情報端末16は、三次元足形計測器18が設置された靴販売店が保有する端末であってもよいし、測定対象者10自身が保有する端末であってもよい。
【0014】
三次元足形計測器18または情報端末16によってスキャンされた足形の三次元計測結果としての測定値は、情報端末16によって靴適合評価サーバ50へ送信される。なお、請求項にいう「靴適合評価装置」は、靴適合評価システム100全体を指してもよいし、靴適合評価サーバ50を指してもよい。また、本実施形態においては、請求項にいう「靴適合評価装置」に含まれる特徴的な機能の多くを靴適合評価サーバ50が備える形で実現するため、実質的に靴適合評価サーバ50が「靴適合評価装置」に相当する。ただし、「靴適合評価装置」の特徴的な機能は情報端末16と靴適合評価サーバ50に分散させてもよいし、情報端末16にその多くを持たせる形で実現してもよい。
【0015】
靴適合評価サーバ50は、複数の情報端末16との間でインターネットやLAN(Local Area Network)等のネットワーク回線および無線通信等の通信手段を介して接続されるサーバコンピュータである。靴適合評価サーバ50は、単体のサーバコンピュータで構成されてもよいし、複数台のサーバコンピュータの組み合わせで構成されてもよい。情報端末16は、スマートフォンやタブレット端末等の携帯型情報端末であってもよいし、パーソナルコンピュータであってもよい。
【0016】
図2は、測定対象者の足形と靴型における部位同士の対応関係を模式的に示す。本実施形態においては、足形と靴型において対応する複数の足部位同士の寸法差に基づいて、評価対象の靴に対する足形の適合度を評価する。
図2(a)は足形の三次元モデルを模式的に示す。
図2(b)は靴型の三次元モデルを模式的に示す。ここでいう複数の足部位は、足長、足囲、踵幅、踏まず囲、踵囲であるが、本実施形態では足長と足囲の寸法差と踵幅の測定値を参照して靴に対する足形の適合度を評価する。ただし、変形例において、足囲、踵幅、踏まず囲、踵囲のうちいずれか一つまたは複数と足長の組み合わせが適合度の評価において参照され得る。以下、本図においては、足長、足囲、踵幅、踏まず囲、踵囲を含む複数の足部位について説明する。
【0017】
足形20は、測定対象者10の足の形状を三次元足形計測器18や情報端末16でスキャンして仮想的に再現された三次元モデルである。ただし、足形20は、測定対象者10の足形状、特に指付近の形状を必ずしも忠実に再現するものではなく、靴型30と比較しやすいように意図的にデフォルメした形状にて構築される。生成された足形の三次元モデルに基づいて、足形足長21、足形足囲22、足形踏まず囲23、足形踵囲24、足形踵幅25が測定され得る。足形足長21、足形足囲22、足形踏まず囲23、足形踵囲24、足形踵幅25は、それぞれ測定対象者10の足の足長、足囲、踏まず囲、踵囲、踵幅に対応する部位である。
【0018】
靴型30は、推薦する靴の選択肢としてあらかじめ用意された複数種類の靴の靴型を仮想的に再現した三次元モデルである。靴は複数種類の製品が用意されるとともに、1種類の製品モデルにおいても複数の足長や複数の足幅と対応するサイズ展開がなされ、男性用と女性用とで異なる形状が用意される場合もある。これら多数の種類の靴に対して一つ一つ異なる靴型が用いられる。靴型は、靴のモデルごとに理想的な足形状として想定される型であり、実際に靴製造工程において型として用いられる。靴製造工程では、靴型を包むようにアッパーとソールを接着させてから靴型を引き抜くことで靴が製造される。靴のモデルごとに靴型をどのような形状や大きさにするか、および、靴型の各部位に対する靴の伸縮特性や許容度をどのように設定するかは、製品の設計思想やノウハウが反映されており、通常、靴メーカー外に公開されることはない。こうした設計思想やノウハウに基づく適合性判定のための基準値は、後述する靴適合評価サーバ50にあらかじめ設定される。
【0019】
靴型の三次元モデルにおいて、靴型足長31、靴型足囲32、靴型踏まず囲33、靴型踵囲34、靴型踵幅35を示す値があらかじめ用意される。靴型足長31、靴型足囲32、靴型踏まず囲33、靴型踵囲34、靴型踵幅35は、それぞれ足形足長21、足形足囲22、足形踏まず囲23、足形踵囲24、足形踵幅25に対応する部位である。したがって、足形足長21と靴型足長31の間で足長寸法差が算出され、足形足囲22と靴型足囲32の間で足囲寸法差が算出される。また、足形踏まず囲23と靴型踏まず囲33の間で踏まず囲寸法差が算出され、足形踵囲24と靴型踵囲34の間で踵囲寸法差が算出され、足形踵幅25と靴型踵幅35の間で踵幅寸法差が算出されてもよい。
【0020】
図3は、靴適合評価システム100の各構成を示す機能ブロック図である。本実施形態における靴適合評価システム100は、情報端末16と靴適合評価サーバ50により構成される。ただし、靴適合評価システム100は、様々なハードウェア構成やソフトウェア構成にて実現することが考えられる。例えば、靴適合評価システム100は靴適合評価サーバ50のみで構成されてもよいし、情報端末16のみで構成されてもよい。
【0021】
図3では、情報端末16および靴適合評価サーバ50に関して、それぞれ様々なハードウェア構成およびソフトウェア構成の連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。情報端末16は、例えばカメラモジュール、測距センサ、マイクロプロセッサ、タッチパネル、メモリ、通信モジュール等のハードウェアの組み合わせで構成される。情報端末16は、測定対象者10または靴販売店が用意したスマートフォンやタブレット端末等の汎用的な情報端末であってよい。ただし、情報端末16には、以下の機能を持つプログラムが搭載されるか、ウェブブラウザを介して靴適合評価サーバ50が提供するウェブサイトにアクセスすることで、実質的に以下の機能をソフトウェアとハードウェアの協働により発揮する。情報端末16は、その機能として、光学情報取得部40、スキャン処理部41、操作入力部42、モデル生成部43、情報生成部44、部位測定部45、表示部46、通信部47を含む。
【0022】
LiDAR技術を用いて三次元モデルを生成する場合、光学情報取得部40はハードウェア的にはLiDARセンサで構成される。この場合、光学情報取得部40がレーザ光を検出し、スキャン処理部41が光学情報取得部40から取得する情報に基づいて対象物を測距することにより測定対象者10の足の三次元形状をスキャンする。モデル生成部43は、スキャン処理部41がスキャンした情報に基づいて足形の三次元モデルを生成する。
【0023】
フォトグラメトリ技術を用いて三次元モデルを生成する場合、光学情報取得部40はハードウェア的にはカメラモジュールで構成される。この場合、光学情報取得部40が測定対象者10の足を周囲から撮像し、スキャン処理部41が足の画像として動画または多数の静止画を取得することにより測定対象者10の足の三次元形状をスキャンする。モデル生成部43は、スキャン処理部41がスキャンした情報に基づいて足形の三次元モデルを生成する。
【0024】
三次元足形計測器18を用いて三次元モデルを生成する場合、モデル生成部43は、三次元足形計測器18がスキャンした情報を通信部47を介して取得し、その取得した情報に基づいて足形の三次元モデルを生成する。
【0025】
部位測定部45は、モデル生成部43が生成した三次元モデルにおいて足形足長21、足形足囲22、足形踏まず囲23、足形踵囲24、足形踵幅25を測定する。情報生成部44は、モデル生成部43が生成した三次元モデルおよび部位測定部45が測定した測定値を情報端末16の画面に表示するための画面表示内容を生成する。また、情報生成部44は、三次元モデルおよび測定値の情報、測定対象者10を特定するための識別情報や属性情報、測定対象者10の靴の好みや希望を特定する情報等を生成して、通信部47を介して靴適合評価サーバ50へ送信する。表示部46は、情報生成部44によって生成された表示内容や靴適合評価サーバ50から受け取った表示内容を情報端末16の画面に表示する。
【0026】
靴適合評価サーバ50は、例えばマイクロプロセッサ、メモリ、ディスプレイ、通信モジュール等のハードウェアの組み合わせで構成される。靴適合評価サーバ50は、靴メーカーが構築および管理をするサーバコンピュータであってよい。ただし、靴適合評価サーバ50には、以下の機能を持つプログラムが稼働する。靴適合評価サーバ50は、その機能として、通信部52、測定値取得部54、記憶部60、適合評価部70、出力部80を含む。情報端末16の通信部47と靴適合評価サーバ50の通信部52は、ネットワーク90を介して接続される。
【0027】
測定値取得部54は、測定対象者10の足形を規定する足形寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位の寸法である複数の足部位寸法の測定値を通信部52経由で情報端末16から取得する。本実施形態の測定値取得部54は、足長、足囲、踵幅の測定値を取得するが、変形例においては足囲、踏まず囲、踵囲、踵幅のうちいずれか一つ以上またはすべてと足長との組み合わせの測定値を取得してもよい。
【0028】
記憶部60は、ユーザ記憶部62、靴型記憶部64、靴情報記憶部66を含む。ユーザ記憶部62は、情報端末16から送信された測定対象者10を特定するための識別情報や属性情報が格納される。靴型記憶部64は、靴型を規定する靴型寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位に対応する靴型部位の寸法である複数の靴型部位寸法を、複数種の靴型ごとに記憶する。本実施形態の靴型記憶部64は、複数の靴型部位寸法として靴型足長と靴型足囲の寸法を靴型ごとに記憶するが、変形例においては靴型足囲、靴型踏まず囲、靴型踵囲、靴型踵幅のうちいずれか一つ以上またはすべてと靴型足長との組み合わせの寸法を記憶してもよい。靴情報記憶部66は、複数モデルおよび複数サイズの靴の情報を記憶する。複数モデルは、男性用モデルと女性用モデルを含む。靴のサイズは、複数の足長のサイズおよび複数の足幅のサイズを含む。靴情報には、靴型ごと、または、靴ごとにあらかじめ設定される各種調整値(詳細については後述する)が含まれる。
【0029】
適合評価部70は、靴型選択部71、寸法差算出部72、評価処理部74を含む。靴型選択部71は、靴型記憶部64に記憶される複数種類の靴型からいずれか一つまたは複数の靴型を評価対象として選択する。例えば靴型選択部71は、情報端末16の操作者によって入力された好みの情報と足寸法の測定値に基づいて、その足寸法の足で着用可能な靴の靴型またはその足寸法に大きさが近似する靴型を評価対象として一つまたは複数選択する。測定対象者10の足に最適な靴を幅広い選択肢から選択するために、靴型選択部71は評価対象として複数の靴型を選択するのが望ましい。なお、変形例において、靴型選択部71が評価対象としての複数の靴型をあらかじめ選択する仕様ではなく、靴型記憶部64に記憶される実質的にすべての靴型を評価対象とする仕様としてもよい。その場合、寸法差算出部72および評価処理部74はすべての靴型を評価対象として、部位寸法差や靴型適合率を算出する。逆に、本実施形態においてはすべての靴型を対象に部位寸法差や靴型適合率を算出することを回避するために、特に足長や足囲の測定値や測定対象者10の好み、属性に応じて評価対象をある程度絞りこんだ状態で部位寸法差や靴型適合率を算出することで、計算負荷を抑える仕様としている。靴型選択部71によって選択された靴型と測定値取得部54によって取得された足形との寸法差が以下、算出される。
【0030】
寸法差算出部72は、足部位寸法の測定値とその足部位に対応する靴型部位寸法との差である部位寸法差を、部位に応じた所定の調整がなされた形で算出する。評価処理部74は、部位寸法差に基づく靴型適合率を算出する。以下、部位寸法差および靴型適合率の算出方法について詳述する。
【0031】
本実施形態における部位寸法差は、上述の通り、足形における足長の測定値と靴型足長との寸法差、および、足形における足囲の測定値と靴型足囲との寸法差である。ただし、変形例においては、踏まず囲、踵囲、踵幅のうち少なくともいずれかの部位寸法差と足長の部位寸法差との組み合わせを用いてもよい。
【0032】
ここで「所定の調整」は、以下の4つの計算が含まれる。すなわち、部位寸法差の算出において、靴の部位ごとの個別の伸縮特性に応じた許容分を差し引く調整と(調整1)、部位寸法差を部位ごとの個別の重みを加えた部位寸法差の二乗和として算出する調整と(調整2)、足長の部位寸法差に対しては第1の重みを加え、足長以外の部位寸法差に対しては第1の重みより小さい第2の重みを加えた部位寸法差の二乗和を算出する調整と(調整3)、足部位寸法の測定値として、足部位寸法の実測値に対し、測定方法に応じて誤差の修正を加えた値を用いる調整である(調整4)。これらの調整を加えた靴型適合率の算出方法は次式で示される。
靴型適合率=100-部位寸法差
【0033】
ここで、部位寸法差は、足長寸法差と足囲寸法差の二乗和であり、次式で示される。
部位寸法差=α×足長スコア+β×足囲スコア
【0034】
「足長スコア」は足長寸法差を2乗した値であり、「足囲スコア」は足囲寸法差を2乗した値である。足長寸法差は靴型足長と足長の測定値との寸法差であり、足囲寸法差は靴型足囲と足囲の測定値との寸法差である。ただし、靴の部位ごとに個別の伸縮特性を有する場合があるため、そうした伸縮特性に応じた許容分が差し引かれる形で足長寸法差および足囲寸法差が算出される(調整1)。したがって、足長スコアと足囲スコアは次式で示される。
足長スコア=(靴型足長-足長測定値-d1)^2
足囲スコア=(靴型足囲-足囲測定値-d2)^2
【0035】
ここで、靴の足長方向には伸縮性が相対的に低くなるようにアッパーが形成され、靴の足囲方向には伸縮性が相対的に高くなるようにアッパーが形成されることがある。例えば、足長方向の調整値であるd1は1mm以下の小さな値が設定されてよい。また例えば、足囲方向にはある程度伸縮することを見越して少なくとも購入時にはややタイト目な靴を選択させるために足囲の2~3%に相当する数mm以上の大きな値がd2に設定されてよい。したがって、d1<d2となるようにd1とd2の値が設定されてよい。なお、d1とd2は、それぞれ負の値が設定される場合があってもよい。d1とd2は靴型ごと、すなわち靴のモデルやサイズごとに設定されてよい。d1とd2は、シューフィッターが靴を選択する場合と同等の結果が得られるように、あらかじめ調整された値が設定されてもよい。
【0036】
なお、靴型は人間の足形を完全に再現するように作られるわけではなく、靴の機能性を高めるための設計思想として人間の足形とはあえて異なるような特徴的な形状を靴型に持たせる場合がある。また、歩行時に足の爪先が靴の内側先端部分に頻繁に当たらないよう、爪先空間として「捨て寸」と呼ばれる余裕をもたせた設計が多い。また、不整地や起伏の大きい路面を走るトレイルランナー向けの靴の場合、爪先が靴に頻繁に当たりにくくなるよう、通常の靴より捨て寸を大きくとった靴が好まれる場合がある。また、靴のカテゴリやモデルによって、アッパーの素材やその厚みが異なる場合がある。このように、部位寸法差としても設計思想や靴の特性に基づく差があらかじめ想定されるため、そうした設計上の差に基づいてd1およびd2が調整値として設定されてもよい。
【0037】
部位寸法差は、部位ごとの個別の重みα、βが加えられた部位寸法差の二乗和として算出される(調整2)。すなわち、足長スコアには重み係数αが掛けられ、足囲スコアには重み係数βが掛けられる。靴のフィット感を測る上で、複数の足部位のうち足長が最も影響が大きい要素と考えられるため、靴型適合率を算出する上でも足長の評価において相対的に大きい重み付けをし、足囲の評価において相対的に小さい重み付けをする(調整3)。例えば重み係数αを0.8に設定する場合は重み係数βを0.2に設定し、重み係数αを0.6に設定する場合は重み係数βを0.4に設定するなど、重み係数αを0.6~0.8に設定し、重み係数βを重み係数αより小さい0.4~0.2に設定する。重み係数α、βは、靴情報記憶部66に記憶され、靴のモデルやサイズごとに異なる値が設定されてよい。重み係数α、βは、シューフィッターが靴を選択する場合と同等の結果が得られるように、あらかじめ調整された値が設定されてもよい。なお、変形例として、さらに踏まず囲寸法差、踵囲寸法差、踵幅寸法差に基づいて踏まず囲スコア、踵囲スコア、踵幅スコアを算出し、これらの各スコアの2乗の値に個別の重み付けを与えて部位寸法差を算出してもよい。
【0038】
足部位ごとの測定値としては、足部位寸法の実測値に対し、測定方法に応じて誤差の修正を加えた値を用いる(調整4)。例えば、靴型記憶部64に記憶させる靴型寸法が巻き尺14等の計測器を用いて手作業で足部位寸法を測定することを想定した設計であった場合、三次元足形計測器18や情報端末16によるレーザー測距を用いた測定では、手作業での測定とは誤差が生じる可能性がある(例えば、レーザー測距の方が僅かに小さい測定値になることが考えられる)。そこで、手作業での測定値でない場合には、靴型の設計思想に合わせるために、例えば足長寸法や足囲寸法の実測値にそれぞれ2~3mm程度の誤差修正分を加算した値を足部位寸法の測定値としてもよい。また、手作業での測定では、足長の測定に比べて足囲の方がきつく巻き尺を巻いて実際の足囲より小さくなりやすい特性を反映させるために、足囲寸法の誤差修正分を足長寸法の誤差修正分より大きくしてもよい。
【0039】
ここで、足長寸法の実測値に対する踵幅寸法の実測値の割合(踵幅率)が所定割合(例えば1/4前後)以上であった場合、靴型における理想的な踵幅の上限値を超えてしまい、その靴型の靴の踵部に足の踵が適切に嵌まりにくくなることが想定される。その場合、靴の中で踵が嵌まらない分、歩行時等に足が前方に移動しやすくなり、爪先空間の余裕がなくなって靴がきつく感じる原因となり得る。そのため、踵幅が所定割合以上であった場合、靴を1サイズ上げることを推奨する目的で足長寸法の実測値に所定のサイズアップ調整値(例えば4~5mm)を加算した値を足長寸法の測定値としてもよい。誤差修正分やサイズアップ調整値は、靴情報記憶部66に記憶され、靴のモデルやサイズごとに異なる値が設定されてよい。誤差修正分やサイズアップ調整値は、シューフィッターが靴を選択する場合と同等の結果が得られるように、あらかじめ調整された値が設定されてもよい。
【0040】
評価処理部74は、評価対象である複数種の靴型ごとに靴型適合率を算出する。評価処理部74は、靴型適合率が相対的に大きい靴型に対応する少なくとも一つの靴を複数の靴の選択肢から選択する。このように、足部位の測定値と靴型部位を比較した部位寸法差に基づいて靴型適合率を算出し、靴型適合率に基づいて最適な靴を選択することで、足形との合致度が高い内側形状を持った靴を選択することができる。靴型の部位寸法や靴ごとまたは靴型ごとの特性が正確に反映された数値に基づいて靴型適合率を算出するため、足に合う靴の選択精度を高めることができる。また、各種の調整値を靴ごとまたは靴型ごとに設定できるため、シューフィッターの専門技術やノウハウが反映された靴選択方法をより忠実に再現することもできる。
【0041】
出力部80は、靴型適合率に関する情報を通信部52経由で情報端末16へ送信することで、情報端末16の画面に靴型適合率を含む靴推薦情報を表示させる。出力部80は、推薦出力部82と比較出力部84を含む。推薦出力部82は、評価処理部74によって選択された靴とその靴型に対する靴型適合率を示す情報を推薦情報として出力する。比較出力部84は、評価処理部74によって選択された靴の靴型部位寸法と足部位寸法との比較結果を視覚的に示す情報を出力する。推薦情報および比較結果の画面表示例の詳細は後述する。
【0042】
図4は、靴適合評価処理の過程を示すフローチャートである。靴適合評価処理を開始すると、測定値取得部54は足部位寸法の測定値を取得し(S10)、靴型選択部71は評価対象の靴型を選択する(S12)。寸法差算出部72は足部位寸法の測定がいずれの測定方法であったかを認識し(S14)、足部位寸法の測定値を測定方法に応じて誤差修正の調整をする(S16)。寸法差算出部72は部位ごとの特性に応じて部位寸法差を調整し(S18)、評価処理部74は部位寸法差に基づいて靴型適合率を算出する(S20)。推薦出力部82は靴と靴型適合率の情報を出力し(S22)、比較出力部84は足形と靴型の比較情報を出力し(S24)、靴適合評価処理から抜ける。なお、S10~S24の処理は様々な順序で実行することが考えられ、本図のフローチャートにおけるS10~S24の順序は便宜上定めた順序にすぎない。また、S12の靴型選択処理からS22およびS24の出力処理までを、測定対象者10に最適な靴が見つかるまで評価対象の靴を入れ替えながら処理を何度も繰り返してもよい。
【0043】
図5は、靴の推薦情報の画面例を示す。情報端末16に表示される画面110においては、評価処理部74によって選択された靴と靴型適合率に基づいて推薦出力部82が生成した推薦情報が表示される。画面110は、主に第1タブ画面112、第2タブ画面114、第3タブ画面116、第4タブ画面118で構成され、操作者が第1タブ画面112、第2タブ画面114、第3タブ画面116、第4タブ画面118から選択したいずれかのタブ画面が表示される。例えば、第1タブ画面112のカテゴリ「PROTECT」は、マラソン完走を目指す初心者から日常的なランニングを志向する幅広いランナー向けの靴に対応する。第2タブ画面114のカテゴリ「ENERGY」は、楽に長くランニングしたい様々なレベルのランナー向けの靴に対応する。第3タブ画面116のカテゴリ「SPEED」は、アスリートやマラソン上級者などのスピードを追及するランナー向けの靴に対応する。第4タブ画面118のカテゴリ「TRAIL」は、不整地や起伏のある路面を走るトレイルランナー向けの靴に対応する。操作者がいずれかのタブ画面を選択することで、好みの靴のカテゴリを選択することができる。
【0044】
図示する画面110には、カテゴリ「PROTECT」に対応する靴として、4種類の靴を推薦する情報が第1推薦欄120、第2推薦欄122、第3推薦欄124、第4推薦欄126のそれぞれに表示される。例えば、第1推薦欄120においては、靴画像130、商品名131、サイズ情報132、靴型適合率133、比較ボタン134、詳細ボタン135が表示される。靴画像130は、推薦する靴の外観を視覚的に示す。商品名131は、「GK-29 WOMEN WIDE」といった靴のモデル名であり、男性用と女性用のいずれのモデルであるかや、いずれの足幅モデルであるかを区別するための識別名が含まれる。サイズ情報132は、「24.5cm」といった靴型足長を示す文字列である。ただし、商品モデルとして展開する長さ単位はセンチメートルかインチかで様々であるため、実際の靴型足長とは厳密に一致していることを要しない。
【0045】
靴型適合率133には、評価処理部74が算出した靴型適合率の数値が「マッチング98%」といった文字列の形で表示される。比較ボタン134は、足形と靴型を比較するための比較ページへのリンクボタンであり、操作者が比較ボタン134を押すと、足形と靴型の比較ページへ画面が切り替わる。詳細ボタン135は、第1推薦欄120で推薦する靴モデルを詳細に紹介する商品紹介ページへのリンクボタンであり、操作者が詳細ボタン135を押すと、商品紹介ページへ画面が切り替わる。
【0046】
第2推薦欄122、第3推薦欄124、第4推薦欄126にも第1推薦欄120と同様に、靴画像、商品名、サイズ情報、靴型適合率、比較ボタン、詳細ボタンが表示され、推薦する靴モデルごとの靴型適合率が提示され、商品同士を比較して購入の参考とすることができる。
【0047】
図6は、足形と靴型の比較ページの第1例を示す。情報端末16に表示される画面140には、左右の足形画像141が表示されるとともに、足形画像141に重なるように左右の靴画像142が表示される。
図6においては、便宜上、靴画像142として靴の輪郭を破線で示すが、足形画像141と靴画像142の位置関係やサイズの違いがより明確となるよう、実際の靴の画像を半透明で足形画像141に重ねて表示してもよい。
【0048】
左足長差領域143は、左足の足長方向の余裕度を示す領域表示であり、左の足長寸法差が適切な大きさであることを示す模様や色彩がその領域に施される。左の足長寸法差の大きさを言葉で示す左足長適合度表示144として、左の足長寸法差が適切な大きさであることを示す「おすすめ」の文字列が表示される。
【0049】
右足長差領域145は、右足の足長方向の余裕度を示す領域表示であり、右の足長寸法差が過少であることを示す模様や色彩がその領域に施される。右の足長寸法差の大きさを言葉で示す右足長適合度表示146として、右の足長寸法差が過少であることを示す「きつめ」の文字列が表示される。
【0050】
左足囲差領域147は、左足の足囲方向の余裕度を示す領域表示であり、左の足囲寸法差がやや大きいことを示す模様や色彩がその領域に施される。左の足囲寸法差の大きさを言葉で示す左足囲適合度表示148として、左の足囲寸法差がやや大きいことを示す「ゆるめ」の文字列が表示される。
【0051】
右足囲差領域149は、右足の足囲方向の余裕度を示す領域表示であり、右の足囲寸法差が過少であることを示す模様や色彩がその領域に施される。右の足囲寸法差の大きさを言葉で示す右足囲適合度表示150として、右の足囲寸法差が過少であることを示す「きつめ」の文字列が表示される。
【0052】
以上のように、足形と靴型の差を言葉や色彩・模様等で視覚的に表現することで、その靴が足にフィットするかどうかを測定対象者10に直感的に把握させることができる。
【0053】
図7は、足形と靴型の比較ページの第2例を示す。情報端末16に表示される画面160には、左右の足形画像162が三次元モデルの形で表示されるとともに、その足形の三次元モデルの周囲に靴型画像164が三次元形状のワイヤーフレームの形で表示される。すなわち、測定対象者10の足形に、推薦する靴を着用させたような形で三次元的に表示する。推薦情報166には、足長の大きさを示す「24.5cm」といった文字列と、足幅のタイプを示す「ワイド」といった文字列が表示される。なお、靴型適合率の数値をさらに表示してもよい。
【0054】
以上のように、足形と靴型の差や適合度を三次元空間上で視覚的に表現することで、その靴が足にフィットするかどうかを測定対象者10に直感的に把握させることができる。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態では、靴に対する足形の適合度を評価する上での参照値として、足長、足囲、踵幅の測定値だけでなく踏まず囲、爪先形状、踵囲をさらに参照して適合度を算出する点で第1実施形態との相違点を有する。また、第2実施形態では、ユーザが選択した靴に対して足形の適合度を算出する点で、足形に適合する靴が抽出されてユーザに提示される第1実施形態と相違する。以下、第1実施形態との相違点の説明を中心にして、共通点の記載を省略する。
【0056】
図8は、第2実施形態における靴適合評価処理の過程を示すフローチャートである。第2実施形態においては、三次元足形計測器18等によって測定対象者10の足形の測定値を取得すると、その測定値が靴適合評価サーバ50に送信され、測定対象者10の識別情報に対応づけられて靴適合評価サーバ50にあらかじめ保存されることを前提とする。なお、変形例においては、あらかじめ三次元足形計測器18等によって測定対象者10の足形の測定値が取得されていなくてもよい。その場合、ユーザ自身が足形の測定値として足長および足囲の情報を文字入力等により入力し、その入力された情報が足形の測定値としてユーザの識別情報と対応づけられて靴適合評価サーバ50に保存されてもよい。あるいは、足形の測定値やユーザ自身が入力した足長および足囲の情報が識別情報との対応で靴適合評価サーバ50に保存されず、ユーザの足に適したシューズサイズとその靴型適合率を算出する際に、ユーザが足長および足囲の情報を入力し、その情報が算出に用いられる形としてもよい。
【0057】
ユーザがオンライン靴販売サイトへアクセスすると、販売対象である靴の一覧が表示され(S30)、ユーザが購入を検討する靴のモデルを靴の一覧から選択すると(S32)、選択した靴の商品詳細ページが表示される(S34)。靴の商品詳細ページでは、靴の画像や靴の詳細情報が掲載されるとともに、シューズサイズの選択肢が表示される。ここで、ユーザが靴販売サイトへログイン済みの状態である場合であって(S36のY)、あらかじめユーザの足の測定値が測定されて靴適合評価サーバ50に保存されている場合(S38のY)、S39~S48の処理を実行する。すなわち、靴型選択部71はユーザが購入を検討する靴のモデルに対応する複数種類のシューズサイズの靴型から、評価対象の靴型としてその靴型足長がユーザの足長に近い一つまたは複数の靴型を選択する(S39)。寸法差算出部72は、ユーザの足部位寸法の測定がいずれの測定方法であったかを認識し(S40)、足部位寸法の測定値を測定方法に応じて誤差修正の調整をする(S42)。寸法差算出部72は部位ごとの特性に応じて部位寸法差を調整し(S44)、評価処理部74は部位寸法差に基づいて靴型適合率を算出する(S46)。推薦出力部82は靴型適合率が最も高いシューズサイズとその靴型適合率を表示する(S48)。
【0058】
ユーザが靴販売サイトへログイン済みでない場合や(S36のN)、あらかじめ足の測定値が測定されていない場合(S38のN)、S39~S48の処理がスキップされる。なお、ユーザがログイン済みであった場合、S32のようにユーザが靴の一覧から靴のモデルを選択した後で、靴の商品詳細ページにおいて靴型適合率が高いシューズサイズとその靴型適合率を表示する例を説明した。変形例においては、S32における靴の一覧表示に先立ってS36~S48のように靴のモデルごとの靴型適合率を算出し、S32における靴の一覧表示の段階において靴のモデルごとに靴型適合率の高いシューズサイズとその靴型適合率を表示するようにしてもよい。
【0059】
図9は、第2実施形態における第1の商品詳細ページの画面例を示す。第1の商品詳細ページは、ユーザが商品販売サイトにログインしていない状態の場合に表示される商品詳細ページである。画面200には、靴の詳細情報が表示されるとともに、画面200の右上に「ログイン/会員登録」と書かれたリンクボタン202が表示されている。リンクボタン202は、ログインまたは会員登録のためのページにリンクされており、商品詳細ページを閲覧しているユーザがまだログインまたは会員登録をしていないことを示している。ユーザがリンクボタン202を押すと、ログインまたは会員登録のためのページに遷移する。
【0060】
第1の商品詳細ページでは、商品名や商品画像、詳細説明のほか、商品に対する評価情報が画面200に表示される。靴の色の選択肢として、複数の色の選択ボタンが表示される。いずれかの色の選択ボタンが押されると、押された選択ボタンが選択状態として強調表示されるとともに、選択された色の靴画像が表示される。表示中の靴のウィズサイズがいずれのタイプであるかがウィズサイズ表示欄207に表示される。
【0061】
シューズサイズ選択欄208には、複数のシューズサイズの選択肢として複数のサイズボタンが表示される。いずれかのサイズ選択ボタンが押されると、押された選択ボタンが選択状態として強調表示される。サイズ推奨欄209は、ユーザの足に適したシューズサイズおよび靴型適合率が表示される欄である。ただし、ログインしていない状態ではユーザの足の測定値が不明であるため、ユーザの足に適したシューズサイズや靴型適合率は表示されない。
【0062】
図10は、第2実施形態における第2の商品詳細ページの画面例を示す。第2の商品詳細ページは、ユーザが商品販売サイトにログイン済みの状態の場合に表示される商品詳細ページである。画面200には、
図9に示す第1の商品詳細ページの画面200と同様に、靴の詳細情報が表示される。ただし、画面200の右上にはリンクボタン202は表示されない代わりに、ユーザ名と「ログアウト」の文字列が表示されたリンクボタン210が表示される。リンクボタン210は、ログアウトのためのページへリンクされており、商品詳細ページを閲覧しているユーザがログイン済みであることを示している。
【0063】
ユーザがログイン済みである場合、ユーザの足の測定値に基づいて複数のシューズサイズの靴型との間で部位寸法差に基づいて靴型適合率が算出される。最も靴型適合率が高いシューズサイズが例えば「26.5cm」である場合、シューズサイズ選択欄208において「26.5cm」を示す選択ボタンが他のボタンと異なる色で表示されることで、ユーザの足に最も適していることが示唆される。サイズ推奨欄209には、ユーザの足に最も適したシューズサイズが「26.5cm」であること、および、靴型適合率が「89.2%」であることが文字列で表示される。また、サイズ推奨欄209の下方に表示される他サイズ情報欄211には、その他のシューズサイズに関する情報として、一つ上のシューズサイズおよび一つ下のシューズサイズに対する靴型適合率が表示される。
【0064】
図11は、第2実施形態における靴適合評価システム100の各構成を示す機能ブロック図である。第2実施形態における記憶部60は、情報端末16から取得した複数の足部位寸法の測定値が、測定対象者10の識別情報と対応付けられて格納される測定値記憶部68をさらに含む。
【0065】
靴型選択部71は、靴型記憶部64に記憶される複数種類の靴型から、ユーザが選択した靴モデルに対応する一つまたは複数の靴型を評価対象として選択する。靴型選択部71は、ユーザの足寸法の測定値に基づいて、その足寸法の足で着用可能なシューズサイズおよびウィズサイズの靴型またはその足寸法に大きさが近似する靴型を、評価対象として一つまたは複数選択する。なお、靴型は、複数モデルの複数サイズに対して個別に設計され、記憶される。ここでいう複数サイズは、足長方向のサイズである複数のシューズサイズと、足幅方向のサイズである複数のウィズサイズとを含む。一つのシューズサイズに対して一つまたは複数のウィズサイズが設計される。一つのシューズサイズに対してウィズサイズが複数設計されているか否かは靴モデルによって異なる。
【0066】
寸法差算出部72は、靴型選択部71で選択された靴型に関して、足部位寸法の測定値とその足部位に対応する靴型部位寸法との差である部位寸法差を、部位に応じた所定の調整がなされた形で算出する。評価処理部74は、靴型選択部71で選択された靴型に関して、部位寸法差に基づく靴型適合率を算出する。以下、第2実施形態における部位寸法差および靴型適合率の算出方法について詳述する。
【0067】
ここで「所定の調整」は、第1実施形態と同様に以下の4つの計算が含まれる。すなわち、部位寸法差の算出において、靴のアッパーにおける部位ごとの個別の伸縮特性に応じた許容分を差し引く調整と(調整1)、部位寸法差を部位ごとの個別の重みを加えた部位寸法差の二乗和として算出する調整と(調整2)、足長の部位寸法差に対しては第1の重みを加え、足長以外の部位寸法差に対しては第1の重みより小さい第2の重みを加えた部位寸法差の二乗和を算出する調整と(調整3)、足部位寸法の測定値として、足部位寸法の実測値に対し、測定方法に応じて誤差の修正を加えた値を用いる調整である(調整4)。これらの調整を加えた靴型適合率の算出方法は次式で示される。
靴型適合率=100-部位寸法差
【0068】
ここでいう「個別の伸縮特性」は、靴のアッパーが伸縮する特性をいう。アッパーはメッシュや人工皮革等で構成され、部位ごとに剛性が異なることから、アッパーの素材や構造に応じた部位ごとの伸縮特性を部位寸法差の算出において考慮している。仮に同一の靴型を用いて製造する二つの靴でも、それぞれのアッパーの素材や構造が異なれば伸縮特性が異なるため、伸縮特性の違いにより必要に応じて調整1が実施され得る。
【0069】
また「個別の重み」は、靴のアッパー内における剛性分布が必ずしも靴モデルごとに一定ではないため、靴型適合率に対する部位ごとの影響度を調整するために、調整2として算出値に重み付けをする趣旨である。
【0070】
なお、第2実施形態においては、部位寸法差の算出における足部位に応じた所定の調整(調整1~4)のうち、測定方法に応じて誤差の修正を加えた値を用いる調整4をあらかじめ実施し、調整4により調整した後の値をユーザの足部位寸法の測定値として測定値記憶部68に格納してもよい。その場合、測定値記憶部68に記憶される測定値はすでに調整4が実施済みであるため、ユーザが選択した靴モデルにおいてユーザの足に適した靴型を評価する際には調整4は実施されない。
【0071】
第2実施形態においては、寸法差算出部72および評価処理部74がサイズスコアおよびウィズスコアを算出することにより、部位寸法差に基づく靴型適合率を算出する。部位寸法差は、主に足長寸法差に基づくサイズスコアと、主に足囲寸法差に基づくウィズスコアとの二乗和であり、次式で示される。
部位寸法差=α×サイズスコア+β×ウィズスコア
「α」は、サイズスコアに掛けられる重み係数であり、第1実施形態および請求項における「第1の重み」に相当する。「β」は、ウィズスコアに掛けられる重み係数であり、第1実施形態および請求項における「第2の重み」に相当する。サイズスコアは、実質的には第1実施形態における「足長スコア」に相当する。ウィズスコアは、実質的には第1実施形態における「足囲スコア」に相当する。
【0072】
サイズスコアは、足長、踵幅、踵囲、爪先形状の測定結果に基づいて算出される値であり、次式で示される。
サイズスコア=(靴型足長-足長測定値-調整値d1+補正値C1)^2
【0073】
調整値d1は、第1実施形態における調整1と同様に、足長寸法差に調整1を加えるときの調整値である。調整値d1は、靴の部位ごとの個別の伸縮特性に応じて足長寸法差から差し引く許容分である。
【0074】
補正値C1は、第1実施形態で記載した「サイズアップ調整値」に相当し、(1)踵幅率に応じた補正値、(2)踵囲率に応じた補正値、(3)爪先形状に応じた補正値、のうちいずれかの値、または、これらを加算した値である。補正値C1は可変値であり、部位寸法差の評価対象とする靴型のウィズタイプによっても異なる値が設定される。「踵幅率」は、足長に対する踵幅の割合(踵幅率=踵幅/足長)であり、通常は1/3~1/4程度の割合である。「踵囲率」は、足長に対する踵囲の割合(踵囲率=踵囲/足長)であり、通常は100%以上の割合である。
【0075】
(1)踵幅率に応じて足長の寸法差を調整するのは、踵幅率が大きい足ほど足の踵が靴の踵部分へ収まりにくくなることにより、足全体が爪先方向へ位置ずれして爪先がきつくなりやすいためである。(2)踵囲率に応じて足長の寸法差を調整するのも踵幅率と同様であり、踵囲率が大きい足ほど足の踵が靴の踵部分へ収まりにくくなることにより、足全体が爪先方向へ位置ずれして爪先がきつくなりやすいためである。(3)爪先形状に応じて足長の寸法差を調整するのは、特に爪先形状がスクエアタイプである場合に第4,5足趾が靴の爪先部分に収まりにくくなるためである。なお、爪先形状には、第2足趾が長いことを特徴とするラウンドタイプ、第1足趾が長いことを特徴とするオブリークタイプ、足趾の長さにあまり差がないことを特徴とするスクエアタイプ等がある。特に子どもの足にはスクエアタイプが多い。爪先形状は、足長に対する第1~5足趾の長さまたは先端位置の割合を評価することでタイプを判別できる。
【0076】
(1)踵幅率に応じた補正値と(2)踵囲率に応じた補正値は、いずれも踵の収まりを調整の理由とする点で共通するため、二重に調整する必要はなく、いずれか補正値が大きい方を優先して調整に用いる。一方、(3)爪先形状に応じた補正値は、踵の収まりを理由とする調整ではないため、(1)+(3)または(2)+(3)のように二重の調整としてもよい。
【0077】
靴型のウィズタイプは、靴の足幅方向のサイズを類型化したものであり、第2実施形態では第1タイプ、第2タイプ、第3タイプ、第4タイプに分けられる。第1タイプは、標準(Standard)より足幅が狭いタイプ(Narrow)である。第2タイプは、標準的な足幅のタイプ(Standard)である。第3タイプは、Standardより足幅が広いタイプ(Wide)である。第4タイプは、Wideよりさらに足幅が広いタイプ(ExtraWide)である。
【0078】
補正値C1は、靴型のウィズタイプが第1~4タイプのいずれであるかに応じて異なる基準で設定される。また、補正値C1には、上述の通り、踵幅率または踵囲率、爪先形状に応じて異なる値が設定される。踵幅率が所定の踵幅基準値RW以上であった場合、踵幅率に比例して増加する可変値である補正値CW1~CW3のいずれかが設定され得る。より具体的には、ウィズタイプが第1タイプの場合は補正値CW1が、第2,3タイプの場合は補正値CW2が、第4タイプの場合は補正値CW3が補正値C1に設定され得る。踵囲率が所定の踵囲基準値RG以上であった場合であって、ウィズタイプが第2~4タイプである場合に、固定値である補正値CGが補正値C1に設定され得る。ただし、踵幅率が踵幅基準値RW以上であり、かつ、踵囲率が踵囲基準値RG以上であった場合は、補正値CW1~CW3と補正値CGのうち大きい方の値が補正値C1に設定され得る。さらに、靴型のウィズタイプが第2~4タイプの場合であって、足形における爪先形状がスクエアタイプである場合、補正値C1に補正値CTが加算される。
【0079】
図12は、第2実施形態におけるウィズタイプごとの踵幅率と補正値の関係を示す。
図12のグラフに描かれた3本の線は、下から順に第1線220が第1タイプのウィズタイプを示し、第2線221が第2,3タイプのウィズタイプを示し、第3線222が第4タイプのウィズタイプを示す。
【0080】
第1線220は、評価対象の靴型のウィズタイプが第1タイプ、すなわちStandard未満であった場合であって、足形における踵幅率が所定の踵幅基準値RW以上であった場合に、補正値CW1が補正値C1に設定される。補正値CW1は、第1補正値230から第2補正値231の範囲で踵幅率に比例して増加する値である。足形における踵幅率が所定の踵幅基準値RW未満であった場合は、補正値C1による調整はされない、または、補正値C1には0が設定される。
【0081】
第2線221は、評価対象の靴型のウィズタイプが第2,3タイプ、すなわちStandardまたはWideの場合であって、足形における踵幅率が所定の踵幅基準値RW以上であった場合に、補正値CW2が補正値C1に設定される。補正値CW2は、第3補正値232から第4補正値233の範囲で踵幅率に比例して増加する値である。第2線221における踵幅率に比例する補正値CW2の増加率は、第1線220および第3線222における踵幅率に比例する補正値CW1,CW3の増加率より小さい。
【0082】
第3線222は、評価対象の靴型のウィズタイプが第4タイプ、すなわちExtraWide以上であった場合であって、足形における踵幅率が所定の踵幅基準値RW以上であった場合に、補正値CW3が補正値C1に設定される。補正値CW3は、第3補正値232から第5補正値234の範囲で踵幅率に比例して増加する値である。
【0083】
なお、第1線220における補正値の上限値である第2補正値231と、第2線221および第3線222における補正値の下限値である第3補正値232は同じ値であってもよく、その値はシューズサイズにおける1サイズ分の差に相当する値であってもよい。
【0084】
また、踵囲率に応じた補正値CW1~CW3が可変値であるのに対し、踵囲率に応じた補正値CGは固定値であってよい。踵囲率に応じた補正値CGの値は、シューズサイズにおける1サイズ分の差に相当する値であってもよい。踵囲率に応じた補正値CGの値は、第1線220における補正値CW1の上限値である第2補正値231と同じ値であってもよい。踵囲率に応じた補正値CGの値は、第2線221および第3線222におけるにおける補正値CW2,CW3の下限値である第2補正値231と同じ値であってもよい。
【0085】
図13は、補正値C1の算出アルゴリズムを示すフローチャートである。評価対象の靴型のウィズタイプがStandard以上でない場合、すなわちStandard未満である第1タイプであった場合、S71へ進む(S70のN)。S71において、足形における踵幅率が踵幅基準値RW以上であった場合(S71のY)、踵幅率に応じた可変値である補正値CW1(第1補正値230から第2補正値231の範囲)が補正値C1に設定され(S72)、算出フローが終了する。踵幅率が踵幅基準値RW以上ではない場合(S71のN)、S72の処理をスキップし、補正値C1は0のまま算出フローが終了する。
【0086】
評価対象の靴型のウィズタイプがStandard以上の場合であって(S70のY)、ExtraWide未満の場合(S73のN)、すなわち第2,3タイプの場合はS74へ進む。S74において、足形における踵幅率が踵幅基準値RW以上であった場合(S74のY)、踵幅率に応じた可変値である補正値CW2(第3補正値232から第4補正値233の範囲)が補正値C1に設定され(S77)、S90へ進む。足形における踵幅率が踵幅基準値RW以上でない場合(S74のN)、かつ、足形における踵囲率が踵囲基準値RG以上の場合(S75のY)、踵囲率に応じた固定値である補正値CGが補正値C1に設定され(S76)、S90へ進む。足形における踵囲率が踵囲基準値RG以上でない場合(S75のN)、S76の処理をスキップしてS90へ進む。なお、足形における踵幅率が踵幅基準値RW以上であった場合(S74のY)、踵囲率に応じた補正値CGが補正値CW2より大きな値にはならないため、S75,S76の処理はスキップされる。
【0087】
評価対象の靴型のウィズタイプがStandard以上の場合であって(S70のY)、ExtraWide以上の場合(S73のY)、すなわち第4タイプの場合はS80へ進む。S80において、足形における踵幅率が踵幅基準値RW以上であった場合(S80のY)、踵幅率に応じた可変値である補正値CW3(第3補正値232から第5補正値234の範囲)が補正値C1に設定され(S83)、S90へ進む。足形における踵幅率が踵幅基準値RW以上でない場合(S80のN)、かつ、足形における踵囲率が踵囲基準値RG以上の場合(S81のY)、踵囲率に応じた固定値である補正値CGが補正値C1に設定され(S82)、S90へ進む。足形における踵囲率が踵囲基準値RG以上でない場合(S81のN)、S82の処理をスキップしてS90へ進む。なお、足形における踵幅率が踵幅基準値RW以上であった場合(S80のY)、踵囲率に応じた補正値CGが補正値CW3より大きな値にはならないため、S81,S82の処理はスキップされる。
【0088】
S90において、すなわち靴型のウィズタイプがStandard以上の場合に補正値が算出された後において、爪先形状がスクエアタイプである場合(S90のY)、固定値である補正値CTが補正値C1に加算され(S91)、算出フローが終了する。爪先形状がスクエアタイプでない場合(S90のN)、S91の処理をスキップして算出フローが終了する。
【0089】
ウィズスコアは、足囲および踏まず囲の測定結果に基づいて算出される値であり、次式で示される。
ウィズスコア=(靴型足囲-足囲測定値-d2)^2
【0090】
上記のウィズスコア算出式における「足囲測定値」には、足囲率または踏まず囲率に応じて所定基準で値が設定される。「足囲率」は、足長に対する足囲の割合(足囲率=足囲/足長)である。「踏まず囲率」は、足長に対する踏まず囲の割合(踏まず囲率=踏まず囲/足長)である。足囲と踏まず囲の差が所定範囲であれば上記の算出式を用いてウィズスコアを算出する。踏まず囲が足囲より基準を超えて大きい場合は足囲に代えて踏まず囲を用いてウィズスコアを算出する。足囲が踏まず囲より基準を超えて大きい場合は足囲と踏まず囲の平均を用いてウィズスコアを算出する。以下、より具体的な算出式を説明する。
【0091】
足囲が踏まず囲より大きく、足囲率と踏まず囲率の差が所定基準範囲内、例えば所定の基準値RD1以下、かつ、所定の基準値RD2以上(RD2は負の値)である場合、上記のウィズスコア算出式と同様に次式が用いられる。
ウィズスコア=(靴型足囲-足囲測定値-d2)^2
【0092】
一方、踏まず囲が足囲より大きく、足囲率-踏まず囲率が所定基準範囲未満、すなわち基準値RD2(RD2は負の値)未満である場合は、踏まず囲が足囲より基準を超えて大きいため、踏まず囲測定値をウィズスコアの算出に用いる。この場合のウィズスコア算出式は、次式で示される。
ウィズスコア=(靴型踏まず囲-踏まず囲測定値-d2)^2
これにより、足囲より踏まず囲が大きい人に関しては踏まず囲を基準にすることでウィズスコアを評価し、より正確に靴型適合率を算出することができる。
【0093】
足囲が踏まず囲より大きく、足囲率と踏まず囲率の差が所定基準範囲を超える、すなわち基準値RD1を超える場合、足囲測定値と踏まず囲測定値の平均値をウィズスコアの算出に用いる。この場合のウィズスコア算出式は、次式で示される。
ウィズスコア=((靴型足囲と靴型踏まず囲の平均)-(足囲測定値と踏まず囲測定値の平均)-d2)^2
【0094】
靴型においては、足囲と踏まず囲はほぼ比例しており、差がほとんどないため、周囲長として足囲と踏まず囲のいずれを用いても大きな差はない。これは、足囲と踏まず囲が比例するように靴型が設計されているためである。一方、複数の測定対象者から取得された実際の足囲と踏まず囲の関係は、測定対象者によって大きくばらついており、足囲の方が大きい人もいれば踏まず囲の方が大きい人もいる。その差も人によって様々である。こうした個体差に応じて、より適切にウィズスコアを算出できるように、足囲と踏まず囲の差に応じて、足囲測定値として用いる値を決定している。
【0095】
以上、本発明について実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。また、上述した実施形態を一般化すると以下の態様が得られる。
【0096】
〔態様1〕
測定対象者の足形を規定する足形寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位の寸法である複数の足部位寸法の測定値を取得する測定値取得部と、
靴型を規定する靴型寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位に対応する靴型部位の寸法である複数の靴型部位寸法を、複数種の靴型ごとに記憶する靴型記憶部と、
足部位寸法の測定値とその足部位に対応する靴型部位寸法との差である部位寸法差を、部位に応じた所定の調整がなされた形で算出する寸法差算出部と、
前記部位寸法差に基づく靴型適合率を算出する評価処理部と、
前記靴型適合率に関する情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする靴適合評価装置。
【0097】
〔態様2〕
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、靴の部位ごとの個別の伸縮特性に応じた許容分が差し引かれた形で前記部位寸法差を算出することを特徴とする態様1に記載の靴適合評価装置。
【0098】
〔態様3〕
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、部位ごとの個別の重みを加えた部位寸法差の二乗和として算出することを特徴とする態様1または2に記載の靴適合評価装置。
【0099】
〔態様4〕
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、足長の部位寸法差に対しては第1の重みを加え、足長以外の部位寸法差に対しては前記第1の重みより小さい第2の重みを加えた部位寸法差の二乗和を算出することを特徴とする態様1から3のいずれかに記載の靴適合評価装置。
【0100】
〔態様5〕
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、前記足部位寸法の実測値に対し、測定方法に応じて誤差の修正を加えた値を前記足部位寸法の測定値として用いることを特徴とする態様1から4のいずれかに記載の靴適合評価装置。
【0101】
〔態様6〕
前記複数の足部位は、足囲、踵幅、踏まず囲、踵囲のうち少なくともいずれかと足長の組み合わせであることを特徴とする態様1から5のいずれかに記載の靴適合評価装置。
【0102】
〔態様7〕
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、足長に対する踵幅率に応じた補正値が加えられた形で前記部位寸法差を算出することを特徴とする態様1から6のいずれかに記載の靴適合評価装置。
【0103】
〔態様8〕
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、足囲が所定基準以上である場合に、足長に対する踵囲率に応じた補正値が加えられた形で前記部位寸法差を算出することを特徴とする態様1から6のいずれかに記載の靴適合評価装置。
【0104】
〔態様9〕
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、足囲が所定基準以上である場合に、足長に対する踵幅率に応じた補正値、および、足長に対する踵囲率に応じた補正値のうちいずれか大きい方の補正値が加えられた形で前記部位寸法差を算出することを特徴とする態様1から8のいずれかに記載の靴適合評価装置。
【0105】
〔態様10〕
前記寸法差算出部は、前記所定の調整として、足長の寸法に関して前記測定対象者の足形における爪先形状タイプに応じた補正値が加えられた形で前記部位寸法差を算出することを特徴とする態様1から9のいずれかに記載の靴適合評価装置。
【0106】
〔態様11〕
前記寸法差算出部は、足幅の寸法に関して、足長に対する足囲率と足長に対する踏まず囲率の差分が所定基準範囲未満である場合は踏まず囲の部位寸法差を算出し、足長に対する足囲率と足長に対する踏まず囲率の差分が所定基準範囲を超える場合は足囲と踏まず囲の平均値の部位寸法差を算出し、足長に対する足囲率と足長に対する踏まず囲率の差分が所定基準範囲内である場合は足囲の部位寸法差を算出することを特徴とする態様1から10のいずれかに記載の靴適合評価装置。
【0107】
〔態様12〕
前記評価処理部は、複数種の靴型ごとに前記靴型適合率を算出するとともに、前記靴型適合率が相対的に大きい靴型に対応する少なくとも一つの靴を複数の靴の選択肢から選択し、
前記出力部は、前記選択された靴とその靴型に対する前記靴型適合率を示す情報を出力することを特徴とする態様1から11のいずれかに記載の靴適合評価装置。
【0108】
〔態様13〕
前記評価処理部は、複数種の靴型ごとに前記靴型適合率を算出するとともに、前記靴型適合率が相対的に大きい靴型に対応する少なくとも一つの靴を複数の靴の選択肢から選択し、
前記出力部は、前記選択された靴の靴型部位寸法と足部位寸法との比較結果を視覚的に示す情報を出力することを特徴とする態様1から12のいずれかに記載の靴適合評価装置。
【0109】
〔態様14〕
前記複数の足部位寸法の測定値が、前記測定対象者の識別情報と対応付けられて格納される測定値記憶部をさらに備え、
前記寸法差算出部は、前記測定対象者によって選択された靴種類の靴型との間で前記部位寸法差を算出し、
前記評価処理部は、前記測定対象者によって選択された靴種類の靴型との間で前記靴型適合率を算出し、
前記出力部は、前記測定対象者によって選択された靴種類を示す情報と、その靴種類において前記測定対象者の測定値に基づいて靴型適合率が相対的に高い靴の足長方向の寸法および足幅方向の寸法のうち少なくともいずれかを示す情報と、前記靴型適合率を示す情報と、を出力することを特徴とする態様1から13のいずれかに記載の靴適合評価装置。
【0110】
〔態様15〕
測定対象者の足形を規定する足形寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位の寸法である複数の足部位寸法の測定値を取得する過程と、
靴型を規定する靴型寸法情報として、足長を少なくとも含む複数の足部位に対応する靴型部位の寸法である複数の靴型部位寸法を所定の記憶手段から読み出す過程と、
足部位寸法の測定値とその足部位に対応する靴型部位寸法との差である部位寸法差を、部位に応じた所定の調整がなされた形で算出する過程と、
前記部位寸法差に基づく靴型適合率を算出する過程と、
前記靴型適合率に関する情報を出力する過程と、
を備えることを特徴とする靴適合評価方法。
【符号の説明】
【0111】
10 測定対象者、 20 足形、 21 足形足長、 22 足形足囲、 23 足形踏まず囲、 24 足形踵囲、 25 足形踵幅、 30 靴型、 31 靴型足長、 32 靴型足囲、 33 靴型踏まず囲、 34 靴型踵囲、 35 靴型踵幅、 50 靴適合評価サーバ、 54 測定値取得部、 60 記憶部、 64 靴型記憶部、 68 測定値記憶部、 72 寸法差算出部、 74 評価処理部、 80 出力部、 100 靴適合評価システム、 133 靴型適合率。