(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056609
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】自己発熱性予測方法、学習済モデル及び自己発熱性制御装置
(51)【国際特許分類】
B65G 3/04 20060101AFI20240416BHJP
G01N 25/22 20060101ALI20240416BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B65G3/04 A
G01N25/22
B01J19/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110263
(22)【出願日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2022163080
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】島村 育幸
(72)【発明者】
【氏名】竹田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】松井 朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮介
【テーマコード(参考)】
2G040
4G075
【Fターム(参考)】
2G040AB12
2G040AB16
2G040BA04
2G040BA29
2G040CA02
2G040CA10
2G040CB04
2G040CB09
2G040DA03
2G040EA01
2G040GA01
2G040GA04
2G040HA16
2G040ZA08
4G075AA27
4G075AA54
4G075AA61
4G075AA65
4G075CA51
4G075DA02
(57)【要約】
【課題】貯留槽から排出された炭化物の自己発熱性を精度よく予測できる自己発熱性予測方法、学習済モデル及び自己発熱性制御装置を提供する。
【解決手段】貯留槽にて養生された炭化物の自己発熱性を予測するためにコンピュータが実行する自己発熱性予測方法であって、貯留槽に供給される酸素含有ガスのガス流量、酸素含有ガスのガス温度、貯留槽の内部温度、及び貯留槽に投入される炭化物の温度の少なくとも1つが入力された学習済モデルの出力値に基づいて、自己発熱性を予測する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留槽にて養生された炭化物の自己発熱性を予測するためにコンピュータが実行する自己発熱性予測方法であって、
前記貯留槽に供給される酸素含有ガスのガス流量、当該酸素含有ガスのガス温度、前記貯留槽の内部温度、及び前記貯留槽に投入される前記炭化物の温度の少なくとも1つが入力された学習済モデルの出力値に基づいて、前記自己発熱性を予測する自己発熱性予測方法。
【請求項2】
前記学習済モデルには、少なくとも前記ガス流量、前記ガス温度及び前記内部温度が入力される請求項1に記載の自己発熱性予測方法。
【請求項3】
前記貯留槽には、側壁の複数箇所から前記酸素含有ガスが供給される請求項1又は2に記載の自己発熱性予測方法。
【請求項4】
コンピュータにより機能する学習済モデルであって、
ツリー構造に並んだ複数の分岐点からなる決定木で構成され、
炭化物を養生する貯留槽に供給される酸素含有ガスのガス流量、当該酸素含有ガスのガス温度、前記貯留槽の内部温度、及び前記貯留槽に投入される前記炭化物の温度の少なくとも1つが入力され、夫々の前記分岐点での評価値を合算することにより、前記炭化物の自己発熱性のスコアを出力する学習済モデル。
【請求項5】
少なくとも前記ガス流量、前記ガス温度及び前記内部温度が入力される請求項4に記載の学習済モデル。
【請求項6】
貯留槽にて養生された炭化物の自己発熱性を制御する自己発熱性制御装置であって、
前記貯留槽に供給される酸素含有ガスのガス流量を計測するガス流量計測部と、
前記貯留槽に供給される前記酸素含有ガスのガス温度を計測するガス温度計測部と、
前記貯留槽に貯留された前記炭化物の内部温度を計測する槽内温度計測部と、
前記貯留槽に投入される前の前記炭化物の投入前温度を計測する投入前炭化物温度計測部と、
前記ガス流量、前記ガス温度、前記内部温度、及び前記投入前温度の少なくとも1つに基づいて、前記自己発熱性を予測する予測部と、
前記予測部の予測結果に基づいて前記ガス流量、前記ガス温度、前記貯留槽での前記炭化物の滞留時間及び前記投入前温度の少なくとも1つを制御する制御部と、を備えた自己発熱性制御装置。
【請求項7】
前記酸素含有ガスの供給口は、前記貯留槽の側壁の複数箇所に設けられている請求項6に記載の自己発熱性制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留槽にて養生された炭化物の自己発熱性を予測するための自己発熱性予測方法、学習済モデル、及び、貯留槽にて養生された炭化物の自己発熱性を制御する自己発熱性制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥などの有機性廃棄物は、例えば加熱により炭化処理されて、燃料として利用されている。このようにして得た有機性廃棄物の炭化物は、炭化処理直後はその粒子表面に活性の高い表面官能基を有しており、そのままでは自己発熱性を有することが知られている。そのため、貯蔵時の安全性を確保すべく、自己発熱性を低下させる処理(いわゆる、エージング処理)がされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、貯留槽に貯留された粉粒体の温度を測定し、この温度情報に基づいて、搬送装置による粉粒体の搬送速度、搬送装置内への気体供給量、搬送装置内への加熱量、搬送装置内への冷却量の1又は2以上を制御して粉粒体の発熱反応を制御する粉粒体貯留装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の粉粒体貯留装置は、貯留槽に貯留された粉粒体の温度情報から粉粒体の発熱反応を制御しており、貯留槽から排出された炭化物の自己発熱性を予測する技術ではない。
【0006】
そこで、貯留槽から排出された炭化物の自己発熱性を精度よく予測できる自己発熱性予測方法、学習済モデル及び自己発熱性制御装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、貯留槽にて養生された炭化物の自己発熱性を予測するためにコンピュータが実行する自己発熱性予測方法であって、前記貯留槽に供給される酸素含有ガスのガス流量、当該酸素含有ガスのガス温度、前記貯留槽の内部温度、及び前記貯留槽に投入される前記炭化物の温度の少なくとも1つが入力された学習済モデルの出力値に基づいて、前記炭化物の自己発熱性を予測する点にある。
【0008】
本発明の一態様は、コンピュータにより機能する学習済モデルであって、ツリー構造に並んだ複数の分岐点からなる決定木で構成され、炭化物を養生する貯留槽に供給される酸素含有ガスのガス流量、当該酸素含有ガスのガス温度、前記貯留槽の内部温度、及び前記貯留槽に投入される前記炭化物の温度の少なくとも1つが入力され、夫々の前記分岐点での評価値を合算することにより、前記自己発熱性のスコアを出力する点にある。
【0009】
本発明者らは、貯留槽に供給される酸素含有ガスのガス流量、酸素含有ガスのガス温度、貯留槽の内部温度、及び貯留槽に投入される炭化物の温度が、貯留槽から排出された炭化物の自己発熱性と相関性が得られることを見出した。そこで、本態様では、貯留槽に供給される酸素含有ガスのガス流量、酸素含有ガスのガス温度、貯留槽の内部温度、及び貯留槽に投入される炭化物の温度の少なくとも1つが入力された学習済モデルの出力値に基づいて、炭化物の自己発熱性を予測することとしている。
【0010】
この学習済モデルは、ツリー構造に並んだ複数の分岐点からなる決定木で構成されており、学習済モデルの性能評価によると、自己発熱性の実測値と高い相関が得られた。したがって、本態様では、貯留槽から排出された炭化物の自己発熱性を精度よく予測できる。
この予測された炭化物の自己発熱性は、炭化物が燃料として利用できるか否かの判断や、貯留槽の制御に活用することができる。
【0011】
他の態様は、前記学習済モデルには、少なくとも前記ガス流量、前記ガス温度及び前記内部温度が入力される点にある。
【0012】
本態様によると、酸素含有ガスのガス温度、酸素含有ガスのガス流量、貯留槽に投入される炭化物の温度の順に高い相関が得られたことから、貯留槽から排出された炭化物の自己発熱性を精度よく予測できる。
【0013】
他の態様は、前記貯留槽には、側壁の複数箇所から前記酸素含有ガスが供給される点にある。
【0014】
本態様のように、側壁の複数箇所から酸素含有ガスを供給することにより、ガス温度及びガス流量の計測値を複数取得することが可能となり、炭化物の自己発熱性の予測精度を高めることができる。
【0015】
本発明の一態様は、貯留槽にて養生された炭化物の自己発熱性を制御する自己発熱性制御装置であって、前記貯留槽に供給される酸素含有ガスのガス流量を計測するガス流量計測部と、前記貯留槽に供給される前記酸素含有ガスのガス温度を計測するガス温度計測部と、前記貯留槽に貯留された前記炭化物の内部温度を計測する槽内温度計測部と、前記貯留槽に投入される前の前記炭化物の投入前温度を計測する投入前炭化物温度計測部と、前記ガス流量、前記ガス温度、前記内部温度、及び前記投入前温度の少なくとも1つに基づいて、前記自己発熱性を予測する予測部と、前記予測部の予測結果に基づいて前記ガス流量、前記ガス温度、前記貯留槽での前記炭化物の滞留時間及び前記投入前温度の少なくとも1つを制御する制御部と、を備えた点にある。
【0016】
上述したように、貯留槽に供給される酸素含有ガスのガス流量、酸素含有ガスのガス温度、貯留槽の内部温度、及び貯留槽に投入される炭化物の温度が、貯留槽から排出された炭化物の自己発熱性と相関性が得られることから、本態様の予測部により炭化物の自己発熱性を精度よく予測できる。この予測された自己発熱性に基づいて、本態様の制御部により貯留槽に供給される酸素含有ガスのガス流量、ガス温度、貯留槽での前記炭化物の滞留時間及び前記炭化物の投入前温度の少なくとも1つを制御する。その結果、炭化物の自己発熱性が高い場合は、ガス流量を増大、ガス温度を上昇、炭化物の滞留時間を増加又は前記炭化物の投入前温度を上昇させて低温酸化処理を促進させ、炭化物の自己発熱性が低い場合は、ガス流量を低下、ガス温度を低下、炭化物の滞留時間を減少又は前記炭化物の投入前温度を低下させて低温酸化処理を抑制するといった制御ができる。
【0017】
他の態様は、前記酸素含有ガスの供給口は、前記貯留槽の側壁の複数箇所に設けられている点にある。
【0018】
本態様のように、側壁の複数箇所から酸素含有ガスを供給することにより、炭化物の低温酸化処理を均一に進行させることが可能となり、炭化物の自己発熱性を確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】有機汚泥リサイクルシステムの構成図である。
【
図2】炭化物処理装置の説明図及び自己発熱性制御装置のブロック図である。
【
図3】自己発熱性予測方法及び自己発熱性制御方法のフロー図である。
【
図4】酸素含有ガスのガス温度と自己発熱性との相関図である。
【
図5】酸素含有ガスのガス流量と自己発熱性との相関図である。
【
図6】貯留槽に投入される炭化物の温度と自己発熱性との相関図である。
【
図7】貯留槽の内部温度と自己発熱性との相関図である。
【
図9】決定木による学習済モデルを用いた自己発熱性の予測値と実測値との相関図である。
【
図10】線形回帰分析による回帰係数、有意確率及び相関係数を示す図である。
【
図11】決定木による学習済モデルを用いた自己発熱性の予測値と実測値との相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図9に基づいて、本発明の実施形態に係る自己発熱性予測方法、学習済モデル及び自己発熱性制御装置について説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0021】
〔全体構成の説明〕
図1及び
図2に基づいて、炭化物処理装置100を説明する。炭化物処理装置100は、
図1に示すように、例えば、下水汚泥などの有機汚泥をリサイクル燃料Fとして利用する有機汚泥リサイクルシステム200の炭化物処理に用いられる。本実施形態では、有機汚泥リサイクルシステム200に、あらかじめ乾燥しペレット状に造粒された有機汚泥である乾燥汚泥Lが供給される場合を例示して説明する。有機汚泥リサイクルシステム200は、乾燥汚泥Lを炭化などして、リサイクル燃料Fを得る。
【0022】
炭化物処理装置100は、乾燥汚泥Lから得た炭化物Mの自己発熱性を低下させる処理(いわゆる、エージング処理(低温酸化処理)、以下では、「炭化物処理」と称する)を行う。
【0023】
有機汚泥リサイクルシステム200は、炭化物処理装置100に加えて、主として炭化炉10と、冷却器20と、ストックタンク27とを備える。
【0024】
乾燥汚泥Lは、例えば押し出し造粒法により円筒ペレット状に造粒されている。これは、乾燥汚泥Lもしくは乾燥汚泥Lから得た炭化物Mやリサイクル燃料Fの粒子形状、かさ密度などの粒子物性を均質化して、有機汚泥リサイクルシステム200や炭化物処理装置100における炭化物Mなどのハンドリング性や炭化物処理の均一性を向上させるためである。なお、乾燥汚泥Lは、球状など他の形状に造粒するものであってもよいし、造粒されていなくてもよい。
【0025】
乾燥汚泥Lは、炭化炉10に供給されて炭化される。これにより円筒ペレット状の炭化物Mを得る。炭化炉10から排出された炭化物Mは冷却器20で加湿および冷却される。
その後、炭化物処理装置100に所定時間貯留される。炭化物処理装置100は、貯留された炭化物Mに所定時間酸素を含有する処理用ガスG(酸素含有ガスの一例)を通気して、炭化物処理を行う(
図2も参照)。炭化物処理をなされた炭化物Mは、安全にタンクなどに貯留可能なリサイクル燃料Fとなり、炭化物処理装置100から排出される。炭化物処理装置100から排出されたリサイクル燃料Fは、市場への出荷に備えてストックタンク27に貯留される。以下では、炭化炉10からストックタンク27に向かう炭化物Mもしくはリサイクル燃料Fの搬送経路の下流側を単に下流側と称し、その逆を上流側と称する。
【0026】
〔各部の説明〕
炭化炉10は、乾燥汚泥Lを低酸素雰囲気下で加熱(以下では、「炭化処理」と称する場合がある)して炭化物Mを得る装置である。炭化炉10は、ロータリーキルンで構成されている。炭化炉10は、ロータリーキルン方式のほか流動床式やスクリュー式などでもよい。炭化炉10は、乾燥汚泥Lを温度250℃から600℃程度で炭化処理する。
【0027】
本実施形態において炭化炉10では、炭化処理の際、乾燥汚泥Lから可燃性ガスが生成する。当該可燃性ガスは、例えば二次燃焼炉12に供給されて燃焼された後、排熱回収機やスクラバなどの排ガス処理設備13を経て燃焼排気Efとして外部に排出される。炭化物Mは、炭化炉10から排出された後、シュート11などを介して冷却器20に投入される。
【0028】
冷却器20は、炭化物Mを冷却する装置である。本実施形態における冷却器20は、ケーシング内に設けたスクリューによって炭化物Mを移動させるスクリュー搬送装置に冷却水CWを供給するノズル20Eを取り付けた装置である。本実施形態では、冷却器20は、炭化物Mをスクリューで一方向に搬送し、当該搬送される炭化物Mに冷却水CWを噴霧供給している。
【0029】
冷却器20の内部の炭化物Mは、冷却水CWの蒸発潜熱により冷却される。本実施形態では、炭化物Mは60℃未満まで急冷される。本実施形態では、冷却水CWの噴霧供給により、炭化物Mは冷却されると共に加湿される。本実施形態では、炭化物Mが、ドライベース(完全に乾燥した炭化物重量に対する重量比)で5%から20%、特に好ましくは8%から15%程度の水分となるように加湿される。なお、冷却器20の外側に、冷媒が内部循環するジャケットを設け、冷却器20の内部の炭化物Mを間接的に冷却する方式を併用してもよい。
【0030】
本実施形態における冷却器20には、炭化物Mの流れと対向する向きに、窒素などの不活性ガスであるキャリアガスCGが通流されている。冷却器20では、キャリアガスCG、及び、冷却水CWの水蒸気に加えて、一酸化炭素ガスなどの可燃性ガスや臭気を有するガスが生じる。そのため、冷却器20の排気を、排気管14を介して二次燃焼炉12に導入している。冷却された炭化物Mは、冷却器20からフライトコンベア22に供給される。本実施形態では、炭化物Mが、冷却器20とフライトコンベア22の投入口(図示せず)とを仕切るロータリーバルブ21を介してフライトコンベア22に供給される。
【0031】
冷却器20から排出された炭化物Mは、フライトコンベア22によりクッションタンク23に搬送され、クッションタンク23から炭化物処理装置100に供給される。本実施形態では、クッションタンク23に搬送された炭化物Mは、例えばロータリーバルブ(図図示)又は配管を介して炭化物処理装置100に供給される。なお、フライトコンベア22などを用いる代わりに、冷却器20から排出された炭化物Mを、シュートなどを経て炭化物処理装置100に供給してもよい。また、フライトコンベア22で搬送する代わりに、空気輸送、ベルトコンベヤ、バケットコンベヤなどを用いて搬送してもよい。
【0032】
炭化物処理装置100は、炭化物Mを炭化物処理して、リサイクル燃料Fを得る装置である。炭化物処理装置100については後述する。炭化物処理装置100で得たリサイクル燃料Fは、フライトコンベア25からクッションタンク26に輸送される。この際、フライトコンベア25の上流にはチラーから冷媒が供給されている熱交換器などの空気冷却装置25aが配置され、この空気冷却装置25aで冷却された空気Aを用いてリサイクル燃料Fを冷却する場合がある。リサイクル燃料Fは、クッションタンク26からストックタンク27に投入されて出荷時まで保管される。なお、クッションタンク26を省略してシュートなどを経てストックタンク27にリサイクル燃料Fを直接投入してもよいし、フライトコンベア25で搬送する代わりに、空気輸送、ベルトコンベヤ、バケットコンベヤなどを用いて搬送してもよい。また、クッションタンク26やストックタンク27を省略して、搬送されたリサイクル燃料Fが利用先設備へ直接的に供給されるようにしてもよい。
【0033】
炭化物処理装置100について詳述する。炭化物処理装置100は、
図2に示すように、炭化物Mを貯留して炭化物処理を行う貯留槽3と、貯留槽3に貯留された炭化物Mの堆積物Bに処理用ガスGを通気(給気)する通気部4と、を備えている。また、炭化物処理装置100は、貯留槽3の内部温度を計測する槽内温度計測部Tと、貯留槽3に供給される処理用ガスGのガス温度を計測するガス温度計測部Stと、貯留槽3に供給される処理用ガスGのガス流量を計測するガス流量計測部Svと、貯留槽3に投入される前の炭化物Mの温度(投入前温度)を計測する投入前炭化物温度計測部Scと、を備えている。また、有機汚泥リサイクルシステム200は、貯留槽3で炭化物Mが養生されて生成された、出荷前のリサイクル燃料Fの温度(出荷前温度)を計測する出荷前炭化物温度計測部Sfを備えていてもよい(
図1参照)。ガス温度計測部St、投入前炭化物温度計測部Sc及び出荷前炭化物温度計測部Sfは、公知の温度センサで構成されており、ガス流量計測部Svは公知の流量センサで構成されているため、詳細な説明を省略する。なお、本実施形態では、出荷前炭化物温度計測部Sfがストックタンク27に設けられているが、クッションタンク26に設けられていてもよいし、出荷前のリサイクル燃料Fの温度を計測するものであれば、出荷前炭化物温度計測部Sfの設置場所は特に限定されない。ここで、「養生」とは、出荷前のリサイクル燃料Fに対して貯蔵時の安全性を確保すべく、自己発熱性を低下させる処理(いわゆるエージング処理)と同義である。
【0034】
なお、
図1に示すように、処理用ガスGは空気Aなどの酸素を含有する第一処理用ガスG1を少なくとも含む気体である。本実施形態における通気部4は、第一処理用ガスG1と第二処理用ガスG2とを混合した処理用ガスGを給気している。この通気部4は、第一処理用ガスG1を供給するための第一ファン41と、第二処理用ガスG2を供給するための第二ファン42とを含む。貯留槽3の内部温度とは、堆積物Bの温度を計測した値のことをいう。なお、第二処理用ガスG2を供給するための第二ファン42を省略して一定量の第二処理用ガスG2を供給してもよいし、第二ファン42に代えてバルブ等で供給量を調整してもよい。
【0035】
炭化物処理装置100は、炭化物Mを貯留槽3に貯留する貯留工程と、炭化物Mの堆積物Bに酸素を含有する処理用ガスGを通気する通気工程と、炭化物Mを所定時間滞留させて排出する排出工程とを行って、炭化物Mの炭化物処理を実現し、リサイクル燃料Fを得る。
【0036】
図2に示すように、貯留槽3は、炭化物Mを鉛直方向(下から上に順)に積み増して層状に貯留する金属製の容器である。また、貯留槽3は当該層状に貯留した炭化物Mを、層状態を維持しつつ次工程に供給する供給容器である。貯留槽3は、貯留槽3の容器本体30の内部空間に炭化物Mを投入する投入口となる供給部31と、貯留槽3の内部空間からリサイクル燃料Fを排出する排出部32と、緊急時に炭化物Mを排出可能な緊急排出口35と、を有する。
【0037】
本実施形態の貯留槽3の容器本体30は、断面形状が円形で下部が窄む槽であり、下部の窄む角度(コーン角度)は、排出部32から排出される炭化物M(リサイクル燃料F)の槽内滞留時間が均一になるように設定されている。なお、貯留槽3の槽内における上部と下部との境界近傍であって、貯留槽3の径方向の中央付近に、陣笠形状の邪魔板(いわゆる、コーンバッフル)を設けて、炭化物M(リサイクル燃料F)の槽内滞留時間が均一になるようにしてもよい。
【0038】
貯留槽3は、容器本体30の上端部に供給部31を有する。供給部31は、貯留槽3の内部空間と繋がる供給管を含んでおり、当該供給管に設けられたロータリーバルブを含んでいてもよい。供給部31にロータリーバルブを含む場合は、上流側の雰囲気と縁切りされた状態で炭化物Mを貯留槽3の内部空間に投入することができる。本実施形態では、供給部31に一定の供給速度で連続的に炭化物Mが供給される。
【0039】
貯留槽3は、容器本体30の下端部に排出部32を有する。排出部32は、貯留槽3の内部空間とつながる排出管32bと、排出管32bに設けられた炭化物M(リサイクル燃料F)の排出装置としてのロータリーバルブ32aとを有する。
【0040】
排出管32bは、円筒状の管であり、容器本体30の下端部から下方に向けて設けられている。貯留槽3は、ロータリーバルブ32aにより、下流側の雰囲気と縁切りされた状態で、リサイクル燃料Fを貯留槽3の内部空間から貯留槽3の下方に排出することができる。この排出部32から連続的にリサイクル燃料Fが排出される。
【0041】
この貯留槽3には、一定の供給速度で連続的に炭化物Mが投入されて、貯留槽3から、連続的にリサイクル燃料Fが排出される。炭化物M(リサイクル燃料F)の貯留槽3での平均滞留時間は、例えば2~4日(48時間~96時間)となるように制御される。滞留時間は、炭化物Mからリサイクル燃料Fを得るために必要十分な長さが設定されている。
滞留時間が短すぎると、炭化物Mの自己発熱性を十分に低下せしめることができず、リサイクル燃料Fの安全性を担保できない。滞留時間が長すぎると、リサイクル燃料Fの生産効率が低下して不経済となるため好ましくない。
【0042】
貯留槽3は、側壁に、処理用ガスGを内部空間に導入し堆積物Bに酸素を含有する処理用ガスGを供給するガス供給ポート34(供給口の一例)を有する。ガス供給ポート34は、貯留槽3の上部の側壁に接続された複数(本実施形態では4箇所)の第一供給口34aと、貯留槽3の中央付近の側壁に接続された複数(本実施形態では4箇所)の第二供給口34bと、貯留槽3の下部の側壁に接続された複数(本実施形態では4箇所)の第三供給口34cと、を有している。つまり、これら処理用ガスGのガス供給ポート34は、貯留槽3の側壁の上下方向に亘る複数箇所(本実施形態では3箇所)に設けられている。また、夫々の供給口34a,34b,34cは、貯留槽3の側壁の周方向に亘る複数箇所(本実施形態では4箇所)に設けられている。これにより、ガス供給ポート34から供給された処理用ガスGは、貯留槽3の下部から上部に亘って堆積物Bの粒子層に均一に通気される。処理用ガスGは、堆積物Bの粒子層を通過しつつ炭化物Mの粒子表面と固気接触し、当該粒子表面における表面官能基などを酸化する。なお、貯留槽3の下部の側壁に接続された第三供給口34cを、貯留槽3の底壁に設けてもよい。
【0043】
貯留槽3の堆積物Bは、粒子層から成る複数の層領域を形成しており、堆積物B1、堆積物B2、及び堆積物B3で構成されている。以下では、堆積物B1、堆積物B2、及び堆積物B3を堆積物Bの粒子層として包括的に説明する際は、単に「層領域」と称する。
堆積物Bの粒子層を通過した処理用ガスGは、貯留槽3の上端部に設けられた排気管33から排気ガスEとして外部に排気される。排気ガスEは、二次燃焼炉12(
図1参照)などに導入されて浄化された後、大気に排出される。
【0044】
貯留槽3には、槽内温度計測部Tのセンサプローブである温度センサT1~T6が取り付けられている。本実施形態における温度センサT1~T6は、先端に温度検出素子を有する棒状のセンサプローブであり、測温抵抗体を用いている。なお、温度センサT1~T6は、熱電対や、その他のセンサを用いてもよい。
【0045】
温度センサT1~T6は、貯留槽3の側壁に設置されている。温度センサT1~T6は、棒状のセンサプローブを貯留槽3の側面外側から容器本体30の壁部に貫通させ、貯留槽3の槽内の内部にセンサの先端が配置されるように容器本体30の径方向に沿うように取り付けられている。なお、温度センサT1~T6は、容器本体30の径方向に沿うように取り付けられる場合に限られず、容器本体30の径方向に沿う向きから鉛直方向の上向きもしくは下向きに傾斜して取り付けてもよいし、径方向に沿う向きから容器本体30の周方向に沿う向きに傾斜して取り付けてもよい。
【0046】
温度センサT1,T2は、第一供給口34a付近に設けられ、温度センサT1の先端が堆積物B1の中心付近に位置しており、温度センサT2の先端が堆積物B1の外周付近に位置している。温度センサT3,T4は、第二供給口34b付近に設けられ、温度センサT3の先端が堆積物B2の中心付近に位置しており、温度センサT4の先端が堆積物B2の外周付近に位置している。温度センサT5,T6は、第三供給口34c付近に設けられ、温度センサT5の先端が堆積物B3の中心付近に位置しており、温度センサT6の先端が堆積物B3の外周付近に位置している。なお、本実施形態における温度センサT1,T2、温度センサT3,T4又は温度センサT5,T6はそれぞれ挿入の深さが異なるが、それぞれ挿入の深さが同じでもよいし、温度センサT1~T6の数量や配置は特に限定されない。
【0047】
貯留槽3の排気管33には、酸素濃度計測部Soが取り付けられている。酸素濃度計測部Soは、排気管33内の気体を吸引して酸素濃度計で酸素濃度を計測できるように取り付けられている。排気管33には、貯留槽3の内部空間を正圧に維持すべく、排気ガスEの通流の抵抗となる抵抗体33aが設けられている。抵抗体33aは、例えばバタフライバルブなどの開度調整可能なバルブ装置などを用いることができる。抵抗体33aの開度の変更により排気ガスEの通流の抵抗を変更可能である。排気ガスEの通流の抵抗を大きくすると貯留槽3の内部空間の圧力は正圧側に変化する。貯留槽3の内部空間の圧力を正圧側に維持することで、ガス供給ポート34以外から貯留槽3の内部空間に酸素を含有する気体が流入(侵入)することを防止している。つまり、貯留槽3の内部空間への侵入を防ぐことで、当該侵入により炭化物Mが局所的に発熱して発火するなどを未然防止している。
【0048】
図1に示すように、処理用ガスGは、空気Aなどの酸素を含有する第一処理用ガスG1を少なくとも含む気体である。本実施形態における処理用ガスGは、第一処理用ガスG1と、不活性ガス(例えば窒素)を含有する第二処理用ガスG2とを混合した気体である。
したがって、処理用ガスGの酸素濃度は第一処理用ガスG1と第二処理用ガスG2との混合比で決定される。処理用ガスGの酸素濃度は第二処理用ガスG2の混合割合が大きいほど小さい値になる。
【0049】
第一処理用ガスG1は、第一ファン41で空気A(外気)を吸引し、空気Aをヒータ43で加熱して所定温度に保った状態で、第二ファン42等により第二処理用ガスG2を合流させて処理用ガスGとする。この処理用ガスGを加湿器45にて加湿して、ガス供給ポート34に接続される複数の給気配管41aに送風(給気)することで、貯留槽3に供給される。本実施形態における複数の給気配管41aは、第一処理用ガスG1と第二処理用ガスG2とが合流した後、分岐した第一供給口34a、第二供給口34b及び第三供給口34cに夫々接続されている。また、第一供給口34aに接続される給気配管41aには弁V1が設けられており、第二供給口34bに接続される給気配管41aには弁V2が設けられており、第三供給口34cに接続される給気配管41aには弁V3が設けられている。これら弁V1,V2,V3の開度を調整することにより、堆積物B1、堆積物B2及び堆積物B3の夫々に供給される処理用ガスGの流量が変更可能に構成されている。
【0050】
第一処理用ガスG1は、炭化物Mに酸素を供給するキャリアガスである。第一処理用ガスG1の通気量に応じて、すなわち、酸素供給量に応じて炭化物Mの酸化が進行する。この酸化に応じて、炭化物Mは発熱する一方、第一処理用ガスG1の通気によって炭化物Mは冷却される。第一処理用ガスG1の供給量を増加させると、すなわち、酸素供給速度を増加させると炭化物Mの酸化速度(処理速度)は早くなる。これにより、炭化物Mの単位時間当たりの発熱量が増加する一方、炭化物Mの単位時間当たりに奪われる熱量が増加して、堆積物Bの温度、すなわち貯留槽3の内部温度は低下する。
【0051】
第二処理用ガスG2は、炭化物Mに対して不活性なガスである。また、第二処理用ガスG2は、炭化物Mを冷却する冷媒である。第二処理用ガスG2の供給により、処理用ガスGの酸素濃度を低下させることで炭化物Mの酸化反応の反応速度を低下させている。これにより、貯留槽3内で炭化物Mが局所的に発熱することを回避することができる。また、第一処理用ガスG1による冷却に加えて、第二処理用ガスG2の供給により、炭化物M(堆積物B)を冷却することができる。
【0052】
図2に示すように、ガス供給ポート34に接続される給気配管41aには、ガス温度計測部Stとガス流量計測部Svとが設けられている。また、貯留槽3に炭化物Mを投入する投入口となる供給部31には、投入前炭化物温度計測部Scが設けられている。本実施形態におけるガス温度計測部St1~St3及びガス流量計測部Sv1~Sv3は、第一供給口34a、第二供給口34b及び第三供給口34cに夫々設けられており、堆積物B1、堆積物B2及び堆積物B3の夫々に供給される処理用ガスGのガス温度とガス流量とを計測することができる。なお、投入前炭化物温度計測部Scは、例えば冷却器20の出口部分に設けてもよいし、フライトコンベア22に設けても良く、冷却器20よりも下流で貯留槽3に投入される前の炭化物Mの温度を計測可能な場所であれば、特に限定されない。なお、ガス温度計測部Stは、第一供給口34a、第二供給口34b及び第三供給口34cに夫々設けるのではなく、給気配管41aが分岐する前の流路に1箇所設けてもよい。
【0053】
〔自己発熱性制御装置の説明〕
続いて、
図2~
図3を用いて、制御装置X(自己発熱性制御装置に相当)による炭化物M(リサイクル燃料F)の自己発熱性予測方法について説明する。制御装置Xは、炭化物処理装置100の全体的な動作を制御する中央制御機構である。制御装置Xは、例えば、各種の処理を実現するためのソフトウェアプログラムと、該ソフトウェアプログラムを実行するCPU等と、該CPU等によって制御される各種ハードウェアなどによって構成することができる。本実施形態における制御装置Xは、CPUと入出力回路などとを包含して有するコンピュータである。制御装置Xの動作に必要なプログラムやデータ、制御パラメータは、記憶部5に保存されている。なお、これらプログラムやデータ保存先は特に限定されない。これらプログラムやデータは、別途専用に設けられたディスクやフラッシュメモリなどの記憶装置に保存される態様であってもよい。また、通信可能に接続された外部のサーバなどであっても構わない。
【0054】
制御装置Xは、記憶部5と通信部6とモデル生成部7と予測部8と制御部9とを備えている。制御装置Xが実行する自己発熱性予測方法は、貯留槽3に供給される酸素含有ガスのガス流量、酸素含有ガスのガス温度、貯留槽3の内部温度、及び貯留槽3に投入される炭化物Mの温度の少なくとも1つが入力された学習済モデル50の出力値に基づいて、リサイクル燃料F(炭化物の一例)の自己発熱性を予測する。
【0055】
記憶部5は、HDDやSSD等の一時的でない記憶媒体又はRAM等の一時的な記憶媒体で構成されており、プロセッサにより実行されるプログラムやアプリケーションを記憶している。また、記憶部5は、投入前炭化物温度計測部Scの計測値、ガス温度計測部Stの計測値、ガス流量計測部Svの計測値、槽内温度計測部Tの計測値、及び酸素濃度計測部Soの計測値等の炭化物処理装置100の運転により取得された各種データを時系列で記憶している。さらに、記憶部5は、コンピュータにより機能する学習済モデル50を記憶している。
【0056】
学習済モデル50は、ガス流量計測部Svで計測された酸素含有ガスのガス流量、ガス温度計測部Stで計測された酸素含有ガスのガス温度、槽内温度計測部Tで計測された貯留槽3の内部温度、及び投入前炭化物温度計測部Scで計測された貯留槽3に投入される炭化物Mの温度等を入力値として、リサイクル燃料Fの自己発熱性のスコアを出力することができる。なお、入力値は、炭化物処理装置100の運転により取得された時系列データであってもよいし、この時系列データを加工(例えば平均)して得られた特徴量であってもよい。リサイクル燃料Fの自己発熱性のスコアは、後述する貯留槽3から排出されたリサイクル燃料Fの酸素消費特性であってもよいし、貯留槽3に投入される炭化物Mの酸素消費特性と貯留槽3から排出されたリサイクル燃料Fの酸素消費特性との差分(以下、「酸素消費低減量」という)であっても良く、リサイクル燃料Fの自己発熱性を評価できる数値データであれば特に限定されない。
【0057】
この学習済モデル50は、コンピュータにより機能するモデルであって、機械学習の教師データ有り学習により得られる。機械学習は、ツリー構造に並んだ複数の分岐点からなる決定木で構成されている。この機械学習は、決定木の各分岐点で特徴量の評価を行い、分岐点毎に、評価結果に応じた評価値が付与されていく構造である。そして、決定木の分岐に沿って評価値が合算されてリサイクル燃料Fの自己発熱性のスコアが求められる。複数の決定木が関連して設けられる、XGBoostやRandom Forest、LightGBM、CatBoost、AdaBoost等のアンサンブルモデルであってもよい。
【0058】
学習済モデル50は、線形回帰分析等の他の機械学習によって生成されてもよい。線形回帰分析により生成された学習済モデル50は、複数の説明変数(酸素含有ガスのガス流量、酸素含有ガスのガス温度、貯留槽3の内部温度、及び貯留槽3に投入される炭化物Mの温度等)を入力し、リサイクル燃料Fの自己発熱性のスコアを目的変数として出力することができる。
【0059】
学習済モデル50は、深層学習によって生成されてもよい。深層学習は、公知の畳み込みニューラルネットワーク(CNN,DCGAN等)を含むAI(人工知能)によって実行される。畳み込みニューラルネットワークでは、人間の神経回路を模した深い階層のモデルを構築し、複数の入力データ(酸素含有ガスのガス流量、酸素含有ガスのガス温度、貯留槽3の内部温度、及び貯留槽3に投入される炭化物Mの温度等)に基づいて、リサイクル燃料Fの自己発熱性を推論してスコアを出力する。この深層学習は、インターネット回線を介して提供されている公知のアプリケーションで構成されている。
【0060】
通信部6は、インターネット回線を介して、炭化物処理装置100との間でデータの送受信を行うインターフェースである。通信部6は、炭化物処理装置100から直接データを受信してもよいし、炭化物処理装置100で取得されたデータをサーバ(不図示)に蓄積し、このサーバから蓄積されたデータを受信してもよい。
【0061】
モデル生成部7は、プロセッサを備えており、学習済モデル50を生成する。プロセッサは、ASIC,FPGA,CPU又は記憶部5に記憶されたアプリケーション等を実行するための他のハードウェアを含んでいる(以下同様)。モデル生成部7は、過去の実績データ(炭化物処理装置100の運転実績データ)に基づいて、学習済モデル50を生成する。
【0062】
モデル生成部7が用いる実績データの例として、ガス流量計測部Svにて計測された酸素含有ガスのガス流量、ガス温度計測部Stにて計測された酸素含有ガスのガス温度、槽内温度計測部Tにて計測された貯留槽3の内部温度、投入前炭化物温度計測部Scにて計測された貯留槽3に投入される炭化物Mの温度、出荷前炭化物温度計測部Sfにて計測されたリサイクル燃料Fの冷却後温度(出荷前温度)、貯留槽3から排出されたリサイクル燃料Fの酸素消費特性が挙げられる。また、実績データは、通気部4から供給される処理用ガスGの酸素濃度や酸素濃度計測部Soにて計測された排気ガスEの酸素濃度を含んでいてもよい。
【0063】
ここで、酸素消費特性について説明する。酸素消費特性は、単位質量あたりの炭化物Mが単位時間当たりに消費する酸素の質量である。酸素消費特性は、貯留槽3内における炭化物Mの活性(酸素により酸化される活性)の度合いを意味する。酸素消費特性が大きいほど、炭化物Mは酸素含有雰囲気下で、より多くの酸素と反応して発熱し、発火などの危険が増大する。したがって、炭化物Mをリサイクル燃料Fとするためには、この酸素消費特性を所定値以下に低下させることが要請される。
【0064】
酸素消費特性は、貯留槽3から排出されたリサイクル燃料Fをサンプリングして、直接計測することができる。本実施形態では、貯留槽3から排出されたリサイクル燃料Fをサンプリングして、所定時間(例えば1時間)に亘ってリサイクル燃料Fを密閉容器に収容し、所定時間経過後にリサイクル燃料Fの酸素消費特性を計測する。また、酸素消費特性は、貯留槽3に投入される炭化物Mの質量と、貯留槽3に供給される酸素量(通気部4から供給される処理用ガスGの酸素濃度)と、貯留槽3から排出される酸素量(酸素濃度計測部Soにて計測された排気ガスEの酸素濃度)より求めることができる。本実施形態では、各層領域の体積は一定になるように定めているため、層領域ごとの酸素消費特性は、各層領域に供給される処理用ガスGに含まれる酸素濃度から、各層領域から排出される処理用ガスGに含まれる酸素濃度を差し引いた差分に、処理用ガスGの単位時間当たりの通気量である通風速度を乗じた値に比例する値として求めることができる。なお、各層領域にサンプリングノズルを設け、このサンプリングノズルから吸引された貯留槽3内の気体を酸素濃度計により測定してもよい。
【0065】
予測部8は、プロセッサを備えており、ガス流量計測部Svにて計測された酸素含有ガスのガス流量、ガス温度計測部Stにて計測された酸素含有ガスのガス温度、槽内温度計測部Tにて計測された貯留槽3の内部温度、及び投入前炭化物温度計測部Scにて計測された貯留槽3に投入される炭化物Mの温度の少なくとも1つに基づいて、リサイクル燃料Fの自己発熱性を予測する。本実施形態における予測部8は、モデル生成部7が生成した学習済モデル50に酸素含有ガスのガス流量、酸素含有ガスのガス温度、貯留槽3の内部温度及び貯留槽3に投入される炭化物Mの温度等を入力して、学習済モデル50が出力したリサイクル燃料Fの自己発熱性のスコアを予測結果とする。
【0066】
制御部9は、プロセッサを備えており、予測部8の予測結果(貯留槽3から排出されたリサイクル燃料Fの酸素消費特性予測値、以下、単に「予測値」と言う)に基づいて貯留槽3に供給する処理用ガスGの通気量(ガス流量)、処理用ガスGの温度(ガス温度)、貯留槽3での炭化物Mの滞留時間及び炭化物Mの投入前温度の少なくとも1つを制御する。
【0067】
〔制御フローの説明〕
図3を用いて、制御装置Xの制御フローを説明する。まず、制御装置Xは、炭化物処理装置100の運転実績データを所定期間に亘って通信部6が取得し、記憶部5が時系列の運転実績データとして記憶する(#31)。この運転実績データは、上述したように、酸素含有ガスのガス流量、酸素含有ガスのガス温度、貯留槽3の内部温度、冷却器20の出口で計測された貯留槽3に投入される炭化物Mの温度、貯留槽3から排出されたリサイクル燃料Fの冷却後温度(出荷前温度)、及び貯留槽3から排出されたリサイクル燃料Fの酸素消費特性で構成されている。これらの運転実績データは、貯留槽3の異なる箇所で計測されたものであることから、モデル生成部7は、貯留槽3での炭化物Mの滞留時間を考慮し、時系列の運転実績データから、同一の炭化物Mに関する運転実績データとなるように補間(時間補正)する。
【0068】
次いで、モデル生成部7は、補間された運転実績データに基づいて、学習済モデル50を生成する(#32)。本実施形態における学習済モデル50は、上述した決定木又は線形回帰分析による機械学習によって生成される。この生成された学習済モデル50は、記憶部5に記憶される。なお、一度生成された学習済モデル50は、炭化物処理装置100の運転データに基づいて、所定の間隔で更新されてもよい。
【0069】
次いで、予測部8は、通信部6を介して炭化物処理装置100のリアルタイム運転データ(プロセスデータ)を取得する(#33)。このプロセスデータは、上述したように、酸素含有ガスのガス流量、酸素含有ガスのガス温度、貯留槽3の内部温度、及び貯留槽3に投入される炭化物Mの温度で構成されている。このプロセスデータも時系列データで構成されており、予測部8は、貯留槽3での炭化物Mの滞留時間を考慮し、時系列のプロセスデータから、同一の炭化物Mに関するプロセスデータとなるように補間(時間補正)する。
【0070】
次いで、予測部8は、学習済モデル50に取得したプロセスデータを入力し、プロセスデータに基づいて学習済モデル50が出力したリサイクル燃料Fの自己発熱性のスコアを予測結果とする(#34)。本実施形態では、排出部32よりも上流側で取得されるプロセスデータを用いているため、制御部9は、リサイクル燃料Fの自己発熱性の予測結果を用いて、炭化物処理装置100の運転をフィードバック制御することができる。例えば、制御部9は、予測部8の予測結果に基づいて、貯留槽3に供給する処理用ガスGの通気量(ガス流量)、処理用ガスGの温度(ガス温度)、貯留槽3での炭化物Mの滞留時間及び炭化物Mの投入前温度の少なくとも1つを自動的に調整して、酸素消費速度が上限値と下限値の間に入るように制御する。
【0071】
制御部9は、リサイクル燃料Fの予測値が上限値より大きい場合又はリサイクル燃料Fの予測された酸素消費低減量が予め定められた低減閾値(貯留槽3で養生される炭化物Mにおける酸素消費特性の目標低減量)よりも小さい場合(#35Yes)、弁V1,V2,V3の開度及び/又は第一ファン41の回転数を上昇させ、堆積物B1、堆積物B2及び堆積物B3の夫々に供給される処理用ガスGの流量を増大させることにより、貯留槽3での炭化物処理を促進しながらリサイクル燃料Fの自己発熱性を低下させることができる(#36、炭化物処理促進制御)。その他、制御部9による炭化物処理促進制御の例として、処理用ガスGの温度が上昇するように、加湿器45における加湿用水Wの量を低下又は加湿用水Wの温度を上昇させたり、炭化物Mの滞留時間が増加するように、排出部32の排出速度や排出量を低下させたり、炭化物Mの投入前温度が上昇するように、冷却器20における冷却水CWの量を低下又は冷却水CWの温度を上昇させたりすることが挙げられる。なお、リサイクル燃料Fの自己発熱性を低下させるために処理用ガスGの温度が上昇するように制御を行う場合、貯留槽3の内部温度(槽内温度計測部Tの計測値)が所定値(例えば50℃)以下であれば、処理用ガスGの上昇温度に上限値(例えば50℃)を設けてもよい。
【0072】
一方、本実施形態における制御部9は、リサイクル燃料Fの予測値が下限値より小さい場合又はリサイクル燃料Fの予測された酸素消費低減量が予め定められた低減閾値(貯留槽3で養生される炭化物Mにおける酸素消費特性の目標低減量)よりも大きい場合(#35No、#37Yes)、弁V1,V2,V3の開度及び/又は第一ファン41の回転数を低下させることにより、処理用ガスGの供給量を減少させる(#38、炭化物処理抑制制御)。その結果、貯留槽3での炭化物処理を抑制しながら処理効率を向上させることができる。換言すると、リサイクル燃料Fの予測値が下限値より小さい状況下で更に下がることの無いように、処理用ガスGの供給量を過剰にせずに適正なものとする。その他、制御部9による炭化物処理抑制制御の例として、処理用ガスGの温度が低下するように、加湿器45における加湿用水Wの量を増加又は加湿用水Wの温度を低下させたり、炭化物Mの滞留時間が減少するように、排出部32の排出速度や排出量を増加させたり、炭化物Mの投入前温度が低下するように、冷却器20における冷却水CWの量を増加又は冷却水CWの温度を低下させたりすることが挙げられる。なお、判定閾値となる上限値、下限値又は低減閾値は、炭化物Mを貯留槽3にて養生して生成されたリサイクル燃料Fの酸素消費特性を、出荷に適した規定値とするために、貯留槽3のスペックを考慮して予め設定される。なお、処理用ガスGの供給量を維持した状態で他の制御(加湿器45、排出部32、冷却器20の制御)を実行してから、処理用ガスGの供給量を減少させてもよく、複数の制御を順番に実行してもよい。この場合、ある制御の制御値が上限値又は下限値となれば、次の制御に移行する等、制御方法は限定されない。
【0073】
他の制御形態として、制御部9は、リサイクル燃料Fの予測値が下限値より小さい場合又はリサイクル燃料Fの予測された酸素消費低減量が予め定められた低減閾値(貯留槽3で養生される炭化物Mにおける酸素消費特性の目標低減量)よりも大きい場合(#35No、#37Yes)、弁V1,V2,V3の開度及び/又は第一ファン41の回転数を維持して、処理用ガスGの供給量を変化させないことが好ましい(#38、現状維持)。同様に、他の制御(加湿器45、排出部32、冷却器20の制御)も実行しないことが好ましい。この場合、酸素消費特性が低くなる運転条件を学習済モデル50に入力して学習させることにより、リサイクル燃料Fの自己発熱性の予測精度を向上させることができる。
【実施例0074】
図4~
図9を用いて、制御装置Xの性能を示す実施例1について説明する。2019年12月から2020年7月の間で取得された炭化物処理装置100の運転データ(母数n=3746)を用いて、モデル生成部7が学習済モデル50を生成した。貯留槽3内の堆積物B1の滞留時間は37時間、堆積物B2の滞留時間は20時間、堆積物B3の滞留時間は15時間とした。つまり、リサイクル燃料Fの酸素消費特性の計測時刻から、温度センサT1~T2、ガス温度計測部St1及びガス流量計測部Sv1の計測値は72時間前、温度センサT3~T4、ガス温度計測部St2及びガス流量計測部Sv2の計測値は35時間前、温度センサT5~T6、ガス温度計測部St3及びガス流量計測部Sv3の計測値は15時間前のものを抽出し、同一の炭化物Mに関する入力データとした。堆積物Bの滞留時間は、各温度センサT1~T2,T3~T4,T5~T6の設置位置までの炭化物Mの充填量(貯留槽3において底部から温度センサの高さ位置までの間に残存する炭化物Mの量)と排出部32における炭化物Mの排出速度とに基づいて算出している。
【0075】
図4~
図7には、学習済モデル50に入力する入力データとリサイクル燃料Fの酸素消費特性との相関が示されている。
図4に示されるように、ガス温度計測部Stで計測された酸素含有ガスのガス温度の平均値(ガス温度計測部St1~St3の計測値平均)とリサイクル燃料Fの酸素消費特性とは、近似式からの分散を示す相関係数R
2が0.5以上であった。
図5に示すように、ガス流量計測部Svで計測された酸素含有ガスのガス流量の平均値(ガス流量計測部Sv1~Sv3の計測値平均)とリサイクル燃料Fの酸素消費特性とは、近似式からの分散を示す相関係数R
2が0.5以上であった。
図6に示すように、冷却器20の出口に設けられた投入前炭化物温度計測部Scで計測された貯留槽3に投入される炭化物Mの温度とリサイクル燃料Fの酸素消費特性とは、近似式からの分散を示す相関係数R
2が0.5以上であった。
図7に示すように槽内温度計測部T(貯留槽3の中段壁面の温度センサT4)で計測された貯留槽3の内部温度(温度センサT2~T6の夫々の計測値)とリサイクル燃料Fの酸素消費特性とは、近似式からの分散を示す相関係数R
2が0.5以上であった。なお、図示しないが、貯留槽3の上段壁面の温度センサT2,中段内部の温度センサT3,下段内部の温度センサT5,下段壁面の温度センサT6の計測値とリサイクル燃料Fの酸素消費特性とは、夫々、相関係数R
2が0.79,0.57,0.80,0.86となり、全て0.5以上であった。
【0076】
これらの結果から、ガス流量計測部Svで計測された酸素含有ガスのガス流量、ガス温度計測部Stで計測された酸素含有ガスのガス温度、槽内温度計測部Tで計測された貯留槽3の内部温度、及び投入前炭化物温度計測部Scで計測された貯留槽3に投入される炭化物Mの温度等を学習済モデル50の入力値として用いることの有用性が理解される。
【0077】
図8には、モデル生成部7が線形回帰法により生成した学習済モデル50における各指標の重み(t値)が示されている。このt値の絶対値が2以上であれば、有意な指標であることを意味し、該絶対値が大きいほど高い相関性を示す。学習済モデル50に入力されるデータとして、ガス温度計測部Stで計測された酸素含有ガスのガス温度、ガス流量計測部Svで計測された酸素含有ガスのガス流量、投入前炭化物温度計測部Scで計測された貯留槽3に投入される炭化物Mの温度、槽内温度計測部Tで計測された貯留槽3の内部温度の順で、リサイクル燃料F(炭化物)の自己発熱性と相関性が得られることが理解できる。槽内温度計測部Tで計測された貯留槽3の内部温度のうち、温度センサT5で計測された貯留槽3の下段内部温度(堆積物B3の内部温度)、温度センサT6で計測された貯留槽3の下段壁面温度(堆積物B3の表面温度)、温度センサT4で計測された貯留槽3の中段壁面温度(堆積物B2の表面温度)、温度センサT2で計測された貯留槽3の上段壁面温度(堆積物B1の表面温度)、温度センサT3で計測された貯留槽3の中段内部温度(堆積物B2の内部温度)の順にリサイクル燃料F(炭化物)の自己発熱性と相関性が得られることが理解できる。
【0078】
図9には、CART(Classification And Regression Trees)で構成される2進木の決定木の学習アルゴリズムによりモデル生成部7が生成した学習済モデル50の予測値(予測したリサイクル燃料F(炭化物)の酸素消費特性)と、炭化物処理装置100の運転実績データ(実際に得られたリサイクル燃料F(炭化物)の酸素消費特性)との比較結果が示されている。この学習済モデル50には、ガス流量計測部Svで計測された酸素含有ガスのガス流量(ガス流量計測部Sv1~Sv3の計測値平均)、ガス温度計測部Stで計測された酸素含有ガスのガス温度(ガス温度計測部St1~St3の計測値平均)、槽内温度計測部Tで計測された貯留槽3の内部温度(温度センサT2~T6の夫々の計測値)、及び投入前炭化物温度計測部Scで計測された貯留槽3に投入される炭化物Mの温度を入力し、夫々の分岐点での評価値を合算することにより、リサイクル燃料F(炭化物)の自己発熱性のスコア(酸素消費特性)を出力した。
図9に示されるように、学習済モデル50の予測値と実績値との相関係数R
2が0.9以上となっていることから、本実施形態における学習済モデル50が極めて高い精度を有することが理解できる。
【0079】
続いて、
図10~
図11を用いて、制御装置Xの性能を示す実施例2について説明する。実施例2においては、学習済モデル50の入力値のうち優位な指標の組み合わせを検討することを目的とした。実施例1と同様に、モデル生成部7が、線形回帰法に用いる入力値を選択して学習済モデル50を生成した。詳細には、酸素含有ガスのガス温度のみを入力値とした学習済モデルI、学習済モデルIの入力値に酸素含有ガスのガス流量を加えた学習済モデルII、学習済モデルIIの入力値に投入前炭化物温度計測部Scで計測された貯留槽3に投入される炭化物Mの温度を加えた学習済モデルIII、学習済モデルIIIの入力値に温度センサT2で計測された貯留槽3の上段壁面温度(堆積物B1の表面温度)を加えた学習済モデルIV、学習済モデルIVの入力値に温度センサT5で計測された貯留槽3の下段内部温度(堆積物B3の内部温度)を加えた学習済モデルV、学習済モデルVの入力値に温度センサT4で計測された貯留槽3の中段壁面温度(堆積物B2の表面温度)を加えた学習済モデルVI、の計6つの学習済モデル50を作成した。
【0080】
図10には、モデル生成部7が線形回帰法により生成した学習済モデルI~VIについて、重回帰分析を行った回帰係数、有意確率及び学習済モデルI~VIの予測値と実績値との相関係数R
2が示されている。有意確率が有意水準(例えば、5%)よりも低ければ、各入力値はリサイクル燃料F(炭化物)の自己発熱性と関係があると言える。本実施例2においては、何れの学習済モデルにおいても有意確率が有意水準以下であるため、すべての学習済モデルI~VIにおいて各入力値と自己発熱性に有意な関連性があることが理解できる。また、学習済モデルIの相関係数R
2は0.806であるのに対し、学習済モデルIIの相関係数R
2は0.895、学習済モデルIIIの相関係数R
2は0.903、学習済モデルIV~VIの相関係数R
2は0.904であった。入力値が増えるほど相関係数R
2が増大し、学習済モデル50の精度が増加することが分かる。一方、学習済モデルIIの相関係数R
2は0.9に近い値を有することから、学習済モデルIIの入力値である酸素含有ガスのガス温度、酸素含有ガスのガス流量の2つの指標のみを用いても、精度の高い学習済モデル50を作成できることが分かった。さらに、学習済モデルIIIの相関係数R
2は0.9を超えた値を有することから、学習済モデルIIIの入力値である酸素含有ガスのガス温度、酸素含有ガスのガス流量、及びリサイクル燃料F(炭化物)の投入温度の3つの指標が特に優位に働いていることが分かった。
【0081】
図11には、学習済モデルVIの入力値に用いた指標を用いて、実施例1と同様にCART(Classification And Regression Trees)で構成される2進木の決定木の学習アルゴリズムによりモデル生成部7が生成した学習済モデル50の予測値(予測したリサイクル燃料F(炭化物)の酸素消費特性)と、炭化物処理装置100の運転実績データ(実際に得られたリサイクル燃料F(炭化物)の酸素消費特性)との比較結果が示されている。
図11に示されるように、相関係数R
2が0.9以上となっていることから、本実施形態における学習済モデル50が極めて高い精度を有することが理解できる。よって、学習済モデル50により予測されたリサイクル燃料F(炭化物)の自己発熱性は、リサイクル燃料Fが燃料として利用できるか否かの判断や、貯留槽3の制御に活用することができる。
【0082】
本実施形態における夫々の供給口34a,34b,34cは、貯留槽3の側壁の上下方向及び周方向に亘る複数箇所に設けられているため、側壁の複数箇所から酸素含有ガスを供給され、炭化物Mの低温酸化処理を均一に進行させることが可能となり、リサイクル燃料Fの自己発熱性を確実に抑制できる。
【0083】
〔変形例の説明〕
上述した実施例におけるモデル生成部7が生成した学習済モデル50には、ガス流量計測部Svで計測された酸素含有ガスのガス流量(ガス流量計測部Sv1~Sv3の計測値平均)、ガス温度計測部Stで計測された酸素含有ガスのガス温度(ガス温度計測部St1~St3の計測値平均)、槽内温度計測部Tで計測された貯留槽3の内部温度(温度センサT2~T6の夫々の計測値)、及び投入前炭化物温度計測部Scで計測された貯留槽3に投入される炭化物Mの温度を特徴量として入力され、学習済モデル50が生成したリサイクル燃料Fの自己発熱性のスコアを予測部8の予測結果とした。この予測部8が予測に用いる学習済モデル50の入力データとして、通気部4から供給される処理用ガスGの酸素濃度、酸素濃度計測部Soにて計測された排気ガスEの酸素濃度、又は出荷前炭化物温度計測部Sfにて計測された出荷前のリサイクル燃料Fの温度(出荷前温度)を用いてもよい。
【0084】
この学習済モデル50に入力する酸素含有ガスのガス流量は、ガス流量計測部Sv1~Sv3の計測値平均に加えて又は代えて、ガス流量計測部Sv1~Sv3の夫々の計測値であってもよいし、ガス流量計測部Sv1~Sv3の計測値の分散やガス流量計測部Sv1~Sv3の何れか2つの平均又は分散、又はガス流量計測部Sv1~Sv3の計測値の合計値や一定時間の積算値を特徴量としてもよい。また、学習済モデル50に入力する酸素含有ガスのガス温度は、ガス温度計測部St1~St3の計測値平均に加えて又は代えて、ガス温度計測部St1~St3の夫々の計測値であってもよいし、ガス温度計測部St1~St3の計測値の分散やガス温度計測部St1~St3の何れか2つの平均又は分散、又は給気配管41aが分岐する前の流路に設けた1箇所の温度センサの計測値を特徴量としてもよい。さらに、学習済モデル50に入力する貯留槽3の内部温度は、温度センサT1~T6の夫々の計測値に加えて又は代えて、温度センサT1~T6の平均又は分散を特徴量としてもよいし、温度センサT1~T6の少なくとも1つの計測値としてもよい。
【0085】
上述した実施例では、学習済モデル50を生成するためにモデル生成部7が用いる実績データとして、酸素含有ガスのガス流量、酸素含有ガスのガス温度、貯留槽3の内部温度、貯留槽3に投入される炭化物Mの温度、貯留槽3から排出されたリサイクル燃料Fの冷却後温度、貯留槽3から排出されたリサイクル燃料Fの酸素消費特性とした。これらの実績データは、酸素含有ガスのガス流量、酸素含有ガスのガス温度、貯留槽3の内部温度、貯留槽3に投入される炭化物Mの温度及び貯留槽3から排出されたリサイクル燃料Fの冷却後温度の少なくとも1つと、貯留槽3から排出されたリサイクル燃料Fの酸素消費特性とが含まれていればよい。また、実績データとして、通気部4から供給される処理用ガスGの酸素濃度や酸素濃度計測部Soにて計測された排気ガスEの酸素濃度を用いてもよい。さらに、モデル生成部7は、夫々の実績データの平均又は分散を特徴量として学習済モデル50を生成してもよい。
【0086】
以上のようにして、貯留槽3から排出されたリサイクル燃料F(炭化物)の自己発熱性を精度よく予測できる自己発熱性予測方法、学習済モデル50及び制御装置Xを提供することができる。
【0087】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、第二処理用ガスG2として、窒素を用いる場合を例示した。しかしながら、第二処理用ガスG2は、排気ガスEもしくは燃焼排気Efなどの有機汚泥リサイクルシステム200で生成(排出)されるものや二酸化炭素など不活性ガスを導入してもよいし、他の産業装置、例えば、ごみ焼却炉の排気ガスや、火力発電所の排気ガスを用いることもできる。また、窒素に加えて、必要に応じて有機汚泥リサイクルシステム200で生成(排出)される排気ガスEもしくは燃焼排気Efや二酸化炭素など不活性ガスを導入してもよい。第二処理用ガスG2は、窒素や二酸化炭素など不活性ガスを主体(たとえば、92体積パーセント以上)としていればよい。第二処理用ガスG2は、空気よりも酸素濃度が低ければ良く、好ましくは酸素が8体積パーセント未満である。また、第二処理用ガスG2を省略して、第一処理用ガスG1のみを炭化物処理に用いてもよい。
【0088】
(2)上記実施形態では、貯留槽3からリサイクル燃料Fを排出するための排出装置としてロータリーバルブ32aを用い、下流側の雰囲気と縁切りされた状態で、リサイクル燃料Fを排出する場合を例示した。しかしながら、排出装置は、ペレット状などのリサイクル燃料Fの形状に応じて使用可能な装置であって、下流側の雰囲気が制限なく貯留槽3に流入しない状態でリサイクル燃料Fを貯留槽3の内部空間から排出できる装置、もしくは構成を有していればよい。
【0089】
例えば、ロータリーバルブ32aの代わりに、貯留槽3を下流側の雰囲気と物理的に縁切りしながら排出することができる排出装置であるダブルダンパを用いてもよい。もしくは、スクリュー式の排出機やテーブルフィーダー式の排出装置を用い、その排出口に処理用ガスGや第二処理用ガスG2を向流で通流させて、下流側の雰囲気が制限なく貯留槽3に流入しない状態を維持する構成を採用することもできる。
【0090】
(3)上記実施形態では、貯留槽3の下端である下部容器の端部から下方に向けて設けられている排出管32bにロータリーバルブ32aが設けられており、貯留槽3の下方にリサイクル燃料Fを排出する場合を例示した。しかしながら、排出装置は、貯留槽3の下方にリサイクル燃料Fを排出する構成に限られない。例えば貯留槽3の側面にスクリュー式の排出機やテーブルフィーダー式の排出装置の排出口を設け、貯留槽3の側面からリサイクル燃料Fを排出してもよい。
【0091】
(4)上記実施形態における処理用ガスGのガス供給ポート34は、貯留槽3の側壁の上下方向に亘る複数箇所(本実施形態では3箇所)に設け、夫々の供給口34a,34b,34cは、貯留槽3の側壁の周方向に亘る複数箇所(本実施形態では4箇所)に設けられていた。しかしながら、処理用ガスGのガス供給ポート34は、貯留槽3の側壁の下部のみ、又は側壁の上下方向に亘る2箇所、4箇所以上に設けてもよいし、夫々の供給口34a,34b,34cは、貯留槽3の側壁の1箇所のみ、又は側壁の周方向に亘る2箇所、3箇所、5箇所以上に設けてもよい。また、処理用ガスGのガス供給ポート34を貯留槽3の中央付近まで延ばして、貯留槽3の中央付近に処理用ガスGを吹き込んでもよい。
【0092】
(5)学習済モデル50は、決定木や線形回帰分析以外で構成される機械学習や、畳み込みニューラルネットワーク以外の深層学習によって生成してもよい。例えば、サポートベクターマシンやロジスティック回帰等の公知の学習手法を用いることができる。
【0093】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、貯留槽にて養生された炭化物の自己発熱性を予測するための自己発熱性予測方法、学習済モデル、及び、貯留槽にて養生された炭化物の自己発熱性を制御する自己発熱性制御装置に適用できる。