(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005663
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】原料生成装置、及び、燃料製造装置
(51)【国際特許分類】
C10L 3/08 20060101AFI20240110BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240110BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20240110BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240110BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20240110BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240110BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240110BHJP
【FI】
C10L3/08
C01B32/50
C01B3/02 H
B01D53/62 ZAB
B01D53/82
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105937
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】藤田 彰利
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 和人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲治
(72)【発明者】
【氏名】堀部 伸光
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 翔
【テーマコード(参考)】
4D002
4G146
4K021
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA31
4D002EA08
4D002FA01
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC17
4G146JC28
4K021BA02
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】原料生成装置におけるガス回収量を向上させる。
【解決手段】原料生成装置は、二酸化炭素を吸着する吸着材を収容する分離器と、水の電気分解により生じた水素と水蒸気とをパージガスとして分離器に供給することにより、吸着材に吸着された二酸化炭素の脱離を促す水素供給部と、水素供給部と分離器とを繋ぐパージガス流路に設けられ、分離器へと供給されるパージガスの水蒸気圧を調整する湿度制御器と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料生成装置であって、
二酸化炭素を吸着する吸着材を収容する分離器と、
水の電気分解により生じた水素と水蒸気とをパージガスとして前記分離器に供給することにより、前記吸着材に吸着された二酸化炭素の脱離を促す水素供給部と、
前記水素供給部と前記分離器とを繋ぐパージガス流路に設けられ、前記分離器へと供給される前記パージガスの水蒸気圧を調整する湿度制御器と、
を備える、原料生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の原料生成装置であって、
前記吸着材は、前記パージガスの水蒸気圧の増大もしくは回収器内の温度で規定される相対湿度の増大に伴って、前記吸着材からの二酸化炭素の回収量が増大する吸着材である、原料生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の原料生成装置であって、さらに、
前記分離器から排出される混合ガスであって、前記吸着材から脱離した二酸化炭素と、前記パージガス中の水素とを含む混合ガスの排出流路上に、真空ポンプを備える、原料生成装置。
【請求項4】
燃料製造装置であって、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の原料生成装置と、
前記原料生成装置により生成された二酸化炭素と水素とを含む混合ガスを反応させて、炭素と水素とを含む燃料を製造する反応器と、
前記反応器と前記湿度制御器とに接続されて、前記反応器での前記反応によって生じた熱を前記湿度制御器へと供給する第1熱供給部と、
を備える、燃料製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料製造装置であって、さらに、
前記第1熱供給部を介して前記湿度制御器に供給される熱量を調整する第1熱量制御器を備える、燃料製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料製造装置であって、さらに、
前記分離器内の温度を取得する温度取得部と、
前記分離器内の温度が、前記パージガスの露点温度よりも高い状態が維持されるように、前記第1熱量制御器を制御する制御部を備える、燃料製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料製造装置であって、さらに、
前記反応器と前記分離器とに接続されて、前記反応器での前記反応によって生じた熱を前記分離器へと供給する第2熱供給部と、
前記第2熱供給部を介して前記分離器に供給される熱量を調整する第2熱量制御器と、
前記分離器内の温度が、前記吸着材からの二酸化炭素の脱離に適した閾値温度と等しくなるように、前記第2熱量制御器を制御する制御部と、
を備える、燃料製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料生成装置、及び、燃料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の燃焼装置から排出される排出ガスから、二酸化炭素(CO2)を分離して再資源化することが知られている。例えば、特許文献1には、排出ガス中の二酸化炭素を分離器に収容された吸着材に吸着させ、吸着剤から二酸化炭素を脱離し、脱離された二酸化炭素とパージガス中の水素(H2)とを含む混合ガスを得て、この混合ガスを反応器により反応させて炭素(C)と水素とを含む燃料を製造する燃料製造装置が記載されている。特許文献1には、分離器からの混合ガスの排出流路上に真空ポンプを設けることによって、混合ガス中の二酸化炭素と水素の分圧の比率を後処理(すなわち、反応器による反応)に適した割合に調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、分離器からの混合ガスの排出流路上に真空ポンプを設けた場合、真空ポンプによる減圧の影響は、パージガス中の水蒸気圧にも及ぶ。具体的には、パージガス中の水蒸気の分圧が減圧されることにより、分離器内に収容された吸着材の性質によっては、吸着剤からのガス回収量(換言すれば、二酸化炭素の回収量)が低下する場合があった。この点、特許文献1に記載の技術では、このような場合について何ら考慮されておらず、改善の余地があった。なお、この課題は、真空ポンプを設ける場合に限らず、パージガス中の水蒸気の分圧が何らかの要因により減圧される場合の全般に共通する。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、原料生成装置におけるガス回収量を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、原料生成装置が提供される。この原料生成装置は、二酸化炭素を吸着する吸着材を収容する分離器と、水の電気分解により生じた水素と水蒸気とをパージガスとして前記分離器に供給することにより、前記吸着材に吸着された二酸化炭素の脱離を促す水素供給部と、前記水素供給部と前記分離器とを繋ぐパージガス流路に設けられ、前記分離器へと供給される前記パージガスの水蒸気圧を調整する湿度制御器と、を備える。
【0008】
この構成によれば、原料生成装置は、水素供給部と分離器とを繋ぐパージガス流路に、分離器へと供給されるパージガスの水蒸気圧を調整する湿度制御器を備える。このため、例えば、分離器よりも下流側に真空ポンプを設ける場合のように、原料生成装置の内外において分離器内のパージガス中の水蒸気の分圧が減圧される要因がある場合であっても、湿度制御器によって分離器へと供給されるパージガスの水蒸気圧を調整することで、分離器内のパージガス中の水蒸気の分圧が減圧されることを抑制できる。この結果、分離器内に収容された吸着材からのガス回収量(二酸化炭素の回収量)の低下を抑制すると共に、原料生成装置におけるガス回収量を向上できる。
【0009】
(2)上記形態の原料生成装置において、前記吸着材は、前記パージガスの水蒸気圧の増大もしくは回収器内の温度で規定される相対湿度の増大に伴って、前記吸着材からの二酸化炭素の回収量が増大する吸着材であってもよい。
この構成によれば、吸着材は、パージガスの水蒸気圧の増大もしくは回収器内の温度で規定される相対湿度の増大に伴って、吸着材からの二酸化炭素の回収量が増大する吸着材である。このため、湿度制御器によって分離器へと供給されるパージガスの水蒸気圧を増加させる方向へと調整することで、吸着材からのガス回収量を増大させて、原料生成装置におけるガス回収量をより一層向上できる。
【0010】
(3)上記形態の原料生成装置では、さらに、前記分離器から排出される混合ガスであって、前記吸着材から脱離した二酸化炭素と、前記パージガス中の水素とを含む混合ガスの排出流路上に、真空ポンプを備えてもよい。
この構成によれば、分離器からの混合ガスの排出流路上に真空ポンプを備えるため、真空ポンプを動作させることによって、混合ガス中の二酸化炭素と水素の分圧の比率を後処理(すなわち、反応器による反応)に適した割合に調整できる。また、本構成によれば、分離器へと供給されるパージガスの水蒸気圧は、湿度制御器によって調整されるため、分離器からの混合ガスの排出流路上に真空ポンプを設けた場合であっても、分離器内のパージガス中の水蒸気の分圧が減圧されることを抑制できる。
【0011】
(4)本発明の一形態によれば、燃料製造装置が提供される。この燃料製造装置は、上記形態の原料生成装置と、前記原料生成装置により生成された二酸化炭素と水素とを含む混合ガスを反応させて、炭素と水素とを含む燃料を製造する反応器と、前記反応器と前記湿度制御器とに接続されて、前記反応器での前記反応によって生じた熱を前記湿度制御器へと供給する第1熱供給部と、を備える。
この構成によれば、燃料製造装置は、反応器と湿度制御器とに接続されて、反応器での反応によって生じた熱を湿度制御器へと供給する第1熱供給部を備える。このため、湿度制御器では、第1熱供給部を介して供給された熱(すなわち、反応器によって生じた熱)を利用して、加湿のための水蒸気を生成することができる。従って、本構成によれば、湿度制御器が外部エネルギを利用して水蒸気の生成を行う場合と比較して、燃料製造装置のエネルギ効率の低下を抑制できる。
【0012】
(5)上記形態の燃料製造装置では、さらに、前記第1熱供給部を介して前記湿度制御器に供給される熱量を調整する第1熱量制御器を備えてもよい。
この構成によれば、燃料製造装置は第1熱量制御器を備えるため、第1熱供給部を介して湿度制御器に供給される熱量を調整できる。
【0013】
(6)上記形態の燃料製造装置では、さらに、前記分離器内の温度を取得する温度取得部と、前記分離器内の温度が、前記パージガスの露点温度よりも高い状態が維持されるように、前記第1熱量制御器を制御する制御部を備えてもよい。
分離器内の温度がパージガスの露点温度を下回った場合、分離器の内部において水蒸気の凝縮が発生し、水が生成される。このように分離器内で凝縮水が生成された場合、次の吸着工程において、吸着材への二酸化炭素の吸着が阻害されるという問題が生じる。また、アミン系固体吸着剤のような水溶性の吸着剤では、分離器内で生成された凝縮水にアミン系化合物が溶解することで、吸着材が漏出し、減少するという問題が生じる。この点、本構成によれば、燃料製造装置の制御部は、分離器内の温度が、パージガスの露点温度よりも高い状態が維持されるように、第1熱量制御器を制御するため、これらの問題が生じることを回避できる。
【0014】
(7)上記形態の燃料製造装置では、さらに、前記反応器と前記分離器とに接続されて、前記反応器での前記反応によって生じた熱を前記分離器へと供給する第2熱供給部と、前記第2熱供給部を介して前記分離器に供給される熱量を調整する第2熱量制御器と、前記分離器内の温度が、前記吸着材からの二酸化炭素の脱離に適した閾値温度と等しくなるように、前記第2熱量制御器を制御する制御部と、を備えてもよい。
この構成によれば、制御部は、分離器内の温度が、吸着材からの二酸化炭素の脱離に適した閾値温度と等しくなるように、第2熱量制御器を制御する。このため、吸着材からのガス回収量を増大させて、原料生成装置におけるガス回収量をより一層向上できる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、原料生成装置及び原料生成方法、燃料製造装置及び燃料製造方法、燃料製造システム、二酸化炭素循環システム、これら装置やシステムの制御のためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、およびコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態における原料生成装置を備える炭素循環システムの概略構成を示す図である。
【
図2】再資源化処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】脱離工程の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態の炭素循環システムの概略構成を示す図である。
【
図5】第3実施形態の炭素循環システムの概略構成を示す図である。
【
図6】第4実施形態の炭素循環システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態における原料生成装置300を備える炭素循環システム100の概略構成を示す図である。炭素循環システム100は、工場1から排出された排出ガスから、二酸化炭素(CO
2)を分離して再資源化するシステムである。工場1は、燃料製造装置200から供給された燃料を燃焼させて動力を得る燃焼装置を備え、燃焼装置の駆動により生じた排出ガスを燃料製造装置200へと排出する。工場1からの排出ガスには、二酸化炭素のほか、酸素(O
2)、窒素(N
2)、及び水蒸気(H
2O)等が含まれている。
【0018】
炭素循環システム100は、工場1と、燃料製造装置200とを備えている。燃料製造装置200は、原料生成装置300を備えている。原料生成装置300は、工場1から供給された排出ガスから二酸化炭素を分離し、二酸化炭素と水素(H2)とを含む混合ガスを生成する。混合ガスは、燃料製造装置200による反応の原料となる。燃料製造装置200は、原料生成装置300から供給された混合ガスを反応させて、炭素(C)と水素とを含む燃料を製造する。燃料は、工場1の燃焼装置において用いられる。以降、詳細に説明する。
【0019】
燃料製造装置200は、原料生成装置300と、反応器2と、第1熱供給部41と、第2熱供給部42と、第1熱量制御器41cと、第2熱量制御器42cと、制御部10とを備えている。原料生成装置300は、分離器3と、凝縮器4と、水素供給部5と、湿度制御器6と、真空ポンプ7とを備えている。
【0020】
分離器3は、二酸化炭素を吸着することが可能な吸着材31を収容している。吸着材31は、後述するパージガスの水蒸気圧の増大に伴って、もしくは、回収器(すなわち分離器3)内の温度で規定される相対湿度の増大に伴って、吸着材からの二酸化炭素の回収量が増大する吸着材(例えば、アミン系固体吸着材)であることが好ましい。本実施形態では、吸着材31として、アミン系固体吸着材を使用する。アミン系固体吸着材は、アミン系化合物が多孔体等に担持された吸着剤である。アミン系固体吸着材は、
図1の点線吹き出し内のグラフに示すように、パージガスの水蒸気圧の増大に伴って、吸着材からの二酸化炭素の回収量が増大する。なお、吹き出し内のグラフは、吸着工程及び脱離工程のそれぞれで用いるガスの流量、及び吸着工程での水蒸気圧、及び二酸化炭素濃度を同一条件とし、脱離工程でのパージガスの水蒸気圧のみを変化させて得た実験結果である。吹き出し内のグラフは、同条件の回収器内温度で実施した実験結果であり、横軸は回収器内の温度で規定される相対湿度と換言できる。ここで、相対湿度H
rは、回収器内の温度T
sにおける飽和水蒸気圧P
sと、パージガス水蒸気圧P
pとを用いて「H
r=P
p/P
s」と表すことができる。吹き出し内のグラフでは、温度T
sを一定としているため飽和水蒸気圧P
sは変化しない。この結果、相対湿度H
rを表す式において、パージガス水蒸気圧P
pが増大すれば相対湿度H
rが増大する、という関係が成立する。なお、吸着材31としては、パージガスの水蒸気圧の増大もしくは回収器内の温度で規定される相対湿度の増大に伴って二酸化炭素の回収量が増大するという性質を有さない他の吸着剤(例えば、ゼオライト等)が用いられてもよい。分離器3の内部には、分離器3の内部の温度T
sを取得する温度センサ3sが設けられている。温度センサ3sは「温度取得部」として機能する。
【0021】
分離器3は、排出ガス流路11を介して工場1と接続されている。排出ガス流路11は、工場1からの排出ガスが流通する流路である。分離器3は、パージガス流路21を介して水素供給部5と接続されている。パージガス流路21は、水素供給部5からのパージガスが流通する流路である。分離器3は、流路12を介して外部と接続されている。流路12は、排出ガスから二酸化炭素を分離した後の残ガスを外部に排出するための流路である。分離器3は、混合ガス流路22を介して、燃料製造装置200の反応器2と接続されている。混合ガス流路22は、原料生成装置300からの混合ガス(原料)が流通する流路である。
【0022】
凝縮器4は、排出ガス流路11の途中に配置されている。凝縮器4は、排出ガス中の水蒸気を除去する。具体的には、排出ガス流路11を流通する排出ガスに含まれる水蒸気を液体の水に凝縮し、凝縮した水を原料生成装置300の外部へと排出する。これにより、凝縮器4を通過して排出ガス流路11を流れる排出ガスからは、水蒸気が除去された状態となる。排出ガス流路11には、図示しない流路開閉機構(例えば、バルブや、マスフローコントローラ)が設けられている。排出ガス流路11の流路開閉機構によって、排出ガスの流通有無、及び、排出ガスの流量が制御される。
【0023】
水素供給部5は、パージガスを分離器3に供給することにより、吸着材31に吸着された二酸化炭素の脱離を促す。具体的には、水素供給部5は、水の電気分解を行うことによって水素を生じさせると共に、水蒸気が生じる。水素供給部5は、発生させた水素及び水蒸気を、パージガスとしてパージガス流路21を介して排出する。パージガス流路21には、図示しない流路開閉機構(例えば、バルブや、マスフローコントローラ)が設けられている。パージガス流路21の流路開閉機構によって、パージガスの流通有無、及び、パージガスの流量が制御される。なお、本実施形態の水素供給部5で生じる水蒸気量は、電気分解される水の温度による。水素供給部5により電気分解される水は、所定温度(例えば、摂氏70度(℃)前後)に冷却されていてもよく、常温でもよく、加熱されていてもよい。
【0024】
湿度制御器6は、パージガス流路21の途中に配置されている。湿度制御器6は、水素供給部5から分離器3へと供給されるパージガスの水蒸気圧を調整する。具体的には、湿度制御器6は、バブラー式や加熱気化式などの方法を用いて水から水蒸気を発生させ、発生させた水蒸気をパージガスに加えることによって、パージガスの水蒸気圧を調整(換言すれば、パージガスを加湿)する。湿度制御器6には、後述する第1熱供給部41を介して、反応器2での反応によって生じた熱が供給される。このため湿度制御器6は、第1熱供給部41を介して供給された熱を利用して水の気化を行うことができる。なお、湿度制御器6よりも下流側におけるパージガス流路21の内部には、湿度制御器6による調整後のパージガスの湿度Tdを取得する湿度センサ21sが設けられている。さらに回収器内が減圧されることにより、吸着材31からの二酸化炭素の脱離を促す効果も得らえる。
【0025】
真空ポンプ7は、混合ガス流路22の途中であって、分離器3よりも下流側に配置されている。真空ポンプ7が動作することによって分離器3内が減圧され、吸着材31からの二酸化炭素の脱離が促進される。また、真空ポンプ7が動作することによって、分離器3内における水素の割合が小さくなる。水素の割合が小さくなることにより、相対的に、分離器3内における二酸化炭素の割合を大きくできる。このようにして、二酸化炭素と水素との割合を1:4に近づけることにより、混合ガス中の二酸化炭素と水素の分圧の比率を後処理(すなわち、反応器2でのメタン化反応)に適した割合に調整できる。混合ガス流路22において、真空ポンプ7の上流側及び下流側には、それぞれ、図示しない流路開閉機構(例えば、バルブや、マスフローコントローラ)が設けられている。
【0026】
反応器2は、原料生成装置300により生成された混合ガス(二酸化炭素と水素とを含むガス)を反応させて、炭素と水素とを含む燃料を製造する。具体的には、反応器2では、混合ガスを原料として、下記の式(1)で表されるメタン化反応が生じることにより、二酸化炭素及び水素から、炭素と水素とを含む燃料(具体的にはメタンCH4)が製造される。なお、式(1)のメタン化反応は、発熱反応である。
CO2+4H2→CH4+2H2O ・・・(1)
【0027】
第1熱供給部41は、反応器2と湿度制御器6とを接続している。第1熱供給部41は、反応器2によるメタン化反応で生じた熱を、湿度制御器6へと供給する。第2熱供給部42は、反応器2と分離器3とを接続している。第2熱供給部42は、反応器2によるメタン化反応で生じた熱を、分離器3へと供給する。第1熱供給部41及び第2熱供給部42は、それぞれ、熱を輸送する熱媒体と、熱媒体を流通させる熱媒体流路によって構成されている。
【0028】
第1熱量制御器41cは、第1熱供給部41の途中であって、熱媒体流路上において湿度制御器6よりも上流側に設けられている。第1熱量制御器41cは、第1熱供給部41を介して湿度制御器6に供給される熱量を調整する。第2熱量制御器42cは、第2熱供給部42の途中であって、熱媒体流路上において分離器3よりも上流側に設けられている。第2熱量制御器42cは、第2熱供給部42を介して分離器3に供給される熱量を調整する。第1熱量制御器41c及び第2熱量制御器42cは、熱交換器を用いて、熱媒体の温度を上昇または下降させることにより熱量を調整できる。第1熱量制御器41c及び第2熱量制御器42cは、マスフローコントローラを用いて、熱媒体の流量を増加または減少させることにより、熱量を調整してもよい。
【0029】
制御部10は、図示しないCPU、ROM/RAM、記憶部、及び通信部を含んでおり、燃料製造装置200による再資源化処理の全体を制御する。本実施形態の制御部10は、再資源化処理において、分離器3内の温度Tsが、パージガスの露点温度よりも高い状態が維持されるように、第1熱量制御器41cを制御する。また、制御部10は、再資源化処理において、分離器3内の温度Tsが、吸着材31からの二酸化炭素の脱離に適した閾値温度と等しくなるように、第2熱量制御器42cを制御する。詳細は後述する。
【0030】
図2は、再資源化処理の手順の一例を示すフローチャートである。再資源化処理は、任意の契機(例えば、燃料製造装置200の始動)により開始され得る。ステップS10では、工場1より排出ガスが発生する。排出ガスは、排出ガス流路11を介して凝縮器4へと流入する。
【0031】
ステップS20では、凝縮器4によって、排出ガス中の水蒸気が除去される。その後、排出ガスは、排出ガス流路11を介して分離器3へと供給される。ステップS22では、排出ガス中の二酸化炭素が、分離器3内の吸着材31に吸着される。排出ガスに含まれる気体のうち、吸着材31に吸着されなかった窒素と、凝縮器4により排出されなかった水蒸気とは、流路12を介して、分離器3の外部へと排出される。なお、ステップS20とS22とを総称して「吸着工程」とも呼ぶ。本実施形態では、燃料製造装置200が1つの分離器3を備える場合を例示したが、燃料製造装置200は、複数の分離器3を備えていてもよい。例えば、燃料製造装置200が2つの分離器3を備える場合、一方の分離器3では吸着工程が実行され、他方の分離器3では脱離工程が実行されるというように、実行する工程をシフトさせる。ステップS20,S22では、分離器3が1つの場合、及び、分離器3が複数の場合共に、吸着工程中の分離器へは、水素供給部5からのパージガスの供給は停止されている。
【0032】
ステップS30では、水素供給部5によって、水の電気分解がなされ、水素及び水蒸気を含むパージガスが生成される。生成されたパージガスは、パージガス流路21を介して湿度制御器6へと供給される。ステップS32では、湿度制御器6によってパージガスの調湿がなされる(詳細は後述)。調湿後のパージガスは、パージガス流路21を介して分離器3へと供給される。ステップS34では、分離器3の吸着材31から二酸化炭素の脱離が行われる。パージガス中の水蒸気は、吸着材31に吸着されることによって、既に吸着材31に吸着されている二酸化炭素の脱離を促す。この結果、分離器3からは、吸着材31から脱離した二酸化炭素と、パージガス中の水素とを含む混合ガス(原料)が排出される。なお、ステップS30~S34を総称して「脱離工程」とも呼ぶ。ステップS30~S34では、分離器3が1つの場合、及び、分離器3が複数の場合共に、脱離工程中の分離器へは、工場1からの排出ガスの供給は停止されている。
【0033】
ステップS40では、上記のようにして得られた原料ガスが、分離器3から反応器2へと供給される。ステップS42では、反応器2において、上記の式(1)で示すメタン化反応が起こり、炭素と水素とを含む燃料が製造される。ステップS44では、反応器2において製造されたメタンが工場1へと供給される。ステップS46では、処理の終了条件が成立したか否かが判定される。処理の終了条件には任意の契機(例えば、燃料製造装置200の電源停止)が採用できる。処理の終了条件が成立した場合(ステップS46:YES)、制御部10は再資源化処理を終了させる。処理の終了条件が成立しない場合(ステップS46:NO)、制御部10は処理をステップS10に遷移させ、上述のステップを繰り返す。これにより、工場1から排出された排出ガスから燃料を得て工場1へと供給する再資源化処理を継続して実行できる。
【0034】
図3は、脱離工程の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
図3は、
図2の脱離工程(ステップS30~S34)に対応している。まず、ステップS100において水素供給部5は、水の電気分解によってパージガスを生成し、生成したパージガスを、パージガス流路21を介して供給する。詳細は
図2のステップS30で説明した通りである。
【0035】
ステップS110において制御部10は、分離器3内の温度Tsが、閾値温度Ts,oよりも低いか否かを判定する。ここで、分離器3内の温度Tsには、温度センサ3sにより取得された値を用いる。また、閾値温度Ts,oは、吸着材31からの二酸化炭素の脱離に適した(または最適な)温度を意味する。閾値温度Ts,oは、吸着材31の種類によって異なり、予め制御部10内に記憶されている。本実施形態の吸着材31(アミン系固体吸着材)の場合、閾値温度Ts,oは、用いるアミン化合物の沸点以下に設定されることが好ましい。分離器3内の温度Tsが閾値温度Ts,o以上となった場合(ステップS110:NO)、制御部10は処理をステップS120に遷移させる。
【0036】
一方、分離器3内の温度Tsが閾値温度Ts,oよりも低い場合(ステップS110:YES)、制御部10は処理をステップS112に遷移させる。ステップS112において制御部10は、分離器3内の温度Tsが、閾値温度Ts,oと等しくなるように(Ts=Ts,oを目標値として)第2熱量制御器42cに出力の増大を指令する。第2熱量制御器42cは、第2熱供給部42を介して分離器3に供給される熱量を増大させる。この結果、ステップS114において分離器3の内部は、第2熱供給部42を介して供給された熱量により昇温する。
【0037】
ステップS120において制御部10は、分離器3内の温度Tsから所定のマージンΔTを減じた温度(Ts-ΔT)が、パージガスの露点温度Tdよりも高いか否かを判定する。ここで、パージガスの露点温度Tdには、湿度センサ21sにより取得された値を用いる。マージンΔTには任意の数値を利用でき、ΔTは0でもよい。本実施形態の吸着材31(アミン系固体吸着材)の場合、ΔTは例えば、5~10度程度とすることが好ましい。温度Ts-ΔTが、パージガスの露点温度Td以下である場合(ステップS120:NO)、制御部10は処理をステップS130に遷移させる。
【0038】
温度Ts-ΔTが、パージガスの露点温度Tdよりも高い場合(ステップS120:YES)、制御部10は処理をステップS122に遷移させる。ステップS122において制御部10は、分離器3内の温度Tsから所定のマージンΔTを減じた温度(Ts-ΔT)が、パージガスの露点温度Tdと等しくなるように(Td=Ts-ΔTを目標値として)第1熱量制御器41cに出力の増大を指令する。第1熱量制御器41cは、第1熱供給部41を介して湿度制御器6に供給される熱量を増大させる。この結果、ステップS124において湿度制御器6は、パージガスに供給する水蒸気量を増大させる(換言すれば、パージガスを加湿する)ことにより、パージガスの露点温度が増大する。
【0039】
なお、ステップS120,S122では、分離器3内の温度Tsではなく、分離器3内の温度Tsから所定のマージンΔTを減じた温度(Ts-ΔT)を、パージガスの露点温度Tdと比較している。これは、パージガスの加湿による分離器3への影響にはタイムラグがあることに起因する。例えば、ステップS120,S122において分離器3内の温度Tsをパージガスの露点温度Tdと比較して処理をした場合、分離器3内に意図しない水蒸気の凝縮が生じる場合がある。マージンΔTを利用することにより、このような意図しない水蒸気の凝縮を抑制しつつ、分離器3内の温度Tsが、パージガスの露点温度Tdよりも高い状態を維持できる。また、マージンΔTは、分離器3内の吸着材31に温度ムラが生じた場合の、温度ムラに対する安全性を向上させるためにも用いられ得る。
【0040】
ステップS130において制御部10は、脱離工程を終了するか否かを判定する。脱離工程を終了する場合(ステップS130:YES)制御部10は、
図3に示す処理を終了させる。脱離工程を終了しない場合(ステップS130:NO)制御部10は、処理をステップS110に遷移させ、上述の処理を繰り返す。
【0041】
なお、
図3のステップS110~S114の処理と、ステップS120~S124の処理とは、並列に実行されてもよく、実行順序を逆転させてもよい。また、ステップS112の第2熱量制御器42cによる制御方法と、ステップS122の第1熱量制御器41cによる制御方法とには、任意の制御が利用できる。例えば、温度の検出値と目標値との差分に比例して熱量を調節する比例制御(P制御)や、積分制御と微分制御とを組み合わせたPI制御またはPID制御等の、連続的な制御が採用されることが好ましい。
【0042】
このようにすれば、分離器3に供給するガスの水蒸気圧を、脱離工程(
図2:ステップS30~S34、
図3)と、吸着工程(
図2:ステップS20,S22)とで比較した場合、吸着工程をより低くできる(吸着工程<脱離工程)。このため、脱離工程の際に吸着材31に吸着された水を、次の吸着工程で吸着材31から脱離させて、外部へと排出できる。すなわち、吸着工程と乾燥工程とを同時に実行できる。
【0043】
以上のように、第1実施形態の原料生成装置300は、水素供給部5と分離器3とを繋ぐパージガス流路21に、分離器3へと供給されるパージガスの水蒸気圧を調整する湿度制御器6を備える。このため、例えば、分離器3よりも下流側に真空ポンプ7を設ける場合のように、原料生成装置300の内外において分離器3内のパージガス中の水蒸気の分圧が減圧される要因がある場合であっても、湿度制御器6によって分離器3へと供給されるパージガスの水蒸気圧を調整することで、分離器3内のパージガス中の水蒸気の分圧が減圧されることを抑制できる。この結果、分離器3内に収容された吸着材31からのガス回収量(二酸化炭素の回収量)の低下を抑制すると共に、原料生成装置300におけるガス回収量を向上できる。
【0044】
また、第1実施形態の原料生成装置300では、吸着材31は、パージガスの水蒸気圧の増大もしくは回収器内の温度で規定される相対湿度の増大に伴って、吸着材31からの二酸化炭素の回収量が増大する吸着材である。このため、湿度制御器6によって分離器3へと供給されるパージガスの水蒸気圧を増加させる方向へと調整することで、吸着材31からのガス回収量を増大させて、原料生成装置300におけるガス回収量をより一層向上できる。
【0045】
さらに、第1実施形態の原料生成装置300では、分離器3からの混合ガスの排出流路(混合ガス流路22)上に真空ポンプ7を備えるため、真空ポンプ7を動作させることによって、混合ガス中の二酸化炭素と水素の分圧の比率を後処理(すなわち、反応器2による反応)に適した割合に調整できる。また、第1実施形態の原料生成装置300によれば、分離器3へと供給されるパージガスの水蒸気圧は、湿度制御器6によって調整されるため、分離器3からの混合ガスの排出流路上に真空ポンプ7を設けた場合であっても、分離器3内のパージガス中の水蒸気の分圧が減圧されることを抑制できる。
【0046】
さらに、第1実施形態の燃料製造装置200は、反応器2と湿度制御器6とに接続されて、反応器2での反応によって生じた熱を湿度制御器6へと供給する第1熱供給部41を備える。このため、湿度制御器6では、第1熱供給部41を介して供給された熱(すなわち、反応器2によって生じた熱)を利用して、加湿のための水蒸気を生成することができる。従って、第1実施形態の燃料製造装置200によれば、湿度制御器6が外部エネルギを利用して水蒸気の生成を行う場合と比較して、燃料製造装置200のエネルギ効率の低下を抑制できる。
【0047】
さらに、第1実施形態の燃料製造装置200は第1熱量制御器41cを備えるため、第1熱供給部41を介して湿度制御器6に供給される熱量を調整できる。
【0048】
分離器3内の温度がパージガスの露点温度を下回った場合、分離器3の内部において水蒸気の凝縮が発生し、水が生成される。具体的には、分離器3の内壁や吸着材31の表面がパージガスの露点温度を下回った場合に、分離器3の内壁や吸着材31の表面において水蒸気の凝縮が発生する。このように分離器3内で凝縮水が生成された場合、次の吸着工程において、吸着材31への二酸化炭素の吸着が阻害されるという問題が生じる。また、アミン系固体吸着剤のような水溶性の吸着材31では、分離器3内で生成された凝縮水にアミン系化合物が溶解することで、吸着材31が漏出し、減少するという問題が生じる。この点、第1実施形態の燃料製造装置200によれば、制御部10は、分離器3内の温度Tsが、パージガスの露点温度Tdよりも高い状態が維持されるように、第1熱量制御器41cを制御するため、これらの問題が生じることを回避できる。
【0049】
さらに、第1実施形態の燃料製造装置200によれば、制御部10は、分離器3内の温度Tsが、吸着材31からの二酸化炭素の脱離に適した閾値温度Ts,oと等しくなるように、第2熱量制御器42cを制御する。このため、吸着材31からのガス回収量を増大させて、原料生成装置300におけるガス回収量をより一層向上できる。
【0050】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態の炭素循環システム100Aの概略構成を示す図である。第2実施形態の炭素循環システム100Aは、第1実施形態で説明した構成において、燃料製造装置200に代えて燃料製造装置200Aを備えている。燃料製造装置200Aは、第1実施形態で説明した構成において、第1熱供給部41及び第2熱供給部42に代えて第1熱供給部41Aを備え、第1熱量制御器41cに代えて第1熱量制御器41cAを備え、第2熱量制御器42cに代えて第2熱量制御器42cAを備え、制御部10に代えて制御部10Aを備える。
【0051】
第1熱供給部41Aは、反応器2と分離器3と湿度制御器6とを接続している。第1熱供給部41Aは、反応器2によるメタン化反応で生じた熱を、まず分離器3へと供給し、その後湿度制御器6へと供給する。第1熱量制御器41cAは、第1熱供給部41Aの途中であって、熱媒体流路上において分離器3よりも下流側、かつ、湿度制御器6よりも上流側に設けられている。第1熱量制御器41cAは、第1熱供給部41Aを介して湿度制御器6に供給される熱量を調整する。第2熱量制御器42cAは、第1熱供給部41Aの途中であって、熱媒体流路上において分離器3よりも上流側に設けられている。第2熱量制御器42cAは、第1熱供給部41Aを介して分離器3に供給される熱量を調整する。具体的な熱量の調整方法は、第1実施形態と同様である。
【0052】
制御部10Aは、
図3のステップS112において、第2熱量制御器42cAに出力の増大を指令する。また、制御部10Aは、
図3のステップS122において、第1熱量制御器41cAに出力の増大を指令する。他の点は、第1実施形態と同様である。
【0053】
このように、炭素循環システム100Aの構成は種々の変更が可能であり、燃料製造装置200Aは、反応器2と分離器3と湿度制御器6とを直列に繋ぐ第1熱供給部41Aを有していてもよい。以上のような第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態の炭素循環システム100Aによれば、燃料製造装置200A内部の構成を簡略化できる。
【0054】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態の炭素循環システム100Bの概略構成を示す図である。第3実施形態の炭素循環システム100Bは、第1実施形態で説明した構成において、燃料製造装置200に代えて燃料製造装置200Bを備えている。燃料製造装置200Bは、第1実施形態で説明した構成において、制御部10を備えていない。
【0055】
燃料製造装置200Bでは、
図3で説明した分離器3内の温度T
s、パージガスの露点温度T
d、及び閾値温度T
s,oを用いた第1熱量制御器41c及び第2熱量制御器42cの制御が行われない。
【0056】
このように、炭素循環システム100Bの構成は種々の変更が可能であり、燃料製造装置200Bから制御部10を省略してもよい。以上のような第3実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第3実施形態の炭素循環システム100Bによれば、燃料製造装置200B内部の構成を簡略化できる。
【0057】
<第4実施形態>
図6は、第4実施形態の炭素循環システム100Cの概略構成を示す図である。第4実施形態の炭素循環システム100Cは、原料生成装置300Cから構成されており、第1実施形態で説明した反応器2、第1熱供給部41、第2熱供給部42、第1熱量制御器41c、第2熱量制御器42c、及び制御部10を備えていない。また、原料生成装置300Cは、真空ポンプ7を備えていない。
【0058】
このように、炭素循環システム100Cの構成は種々の変更が可能であり、工場1と原料生成装置300Cからシステムが構成されてもよい。原料生成装置300Cは、水素供給部5と分離器3とを繋ぐパージガス流路21に湿度制御器6を備えるため、分離器3内に収容された吸着材31からのガス回収量(二酸化炭素の回収量)の低下を抑制すると共に、原料生成装置300Cにおけるガス回収量を向上できる。すなわち、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0059】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。また、上記実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0060】
[変形例1]
上記実施形態では、炭素循環システム100,100A~100Cの構成の一例を示した。しかし、炭素循環システム100の構成は種々の変形が可能である。例えば、原料生成装置300では、上述した構成の一部(例えば、凝縮器4や、真空ポンプ7)が省略されてもよい。例えば、原料生成装置300,300Cの湿度制御器6には、バブラー式や加熱気化式などの方法に代えて、外部エネルギを利用して水蒸気を発生させる方式(例えば、超音波霧化)が採用されてもよい。例えば、燃料製造装置200,200A,200Bの第1熱供給部41と、第2熱供給部42とのうちの少なくとも一方は、熱を伝達する熱電導体によって構成されてもよい。この場合、第1熱量制御器41c及び/又は第2熱量制御器42cには、熱電導体の熱電性能を上昇または下降させる材質の部材(例えば、カーボン、樹脂、金属等)を用いることができる。
【0061】
[変形例2]
上記実施形態(
図2,
図3)では、炭素循環システム100,100A~100Cにおいて実行される処理の一例を示した。しかし、この処理手順は種々の変更が可能であり、各ステップにおける処理内容の追加/省略/変更をしてもよく、ステップの実行順序を変更してもよい。
【0062】
例えば、
図3において制御部10は、分離器3内の温度T
sを用いた処理に代えて、または、分離器3内の温度T
sを用いた処理と共に、分離器3内に凝縮水が生じたか否かに応じた処理を行ってもよい。具体的には、制御部10は、分離器3内に凝縮水が生じた場合に、第2熱量制御器42cに出力の増大を指令し、分離器3の温度を上昇させる。または、制御部10は、分離器3内に凝縮水が生じた場合に、第1熱量制御器41cに出力の減少を指令し、パージガスに供給する水蒸気量を減少させる。分離器3内の凝縮水の有無は、分離器3内に凝縮水の発生を検出するセンサを設け、当該センサの検出値を用いればよい。このようにすれば、吸着材31としてアミン系固体吸着剤のような水溶性の吸着材を用いた場合に、凝縮水にアミン系化合物が溶解することで、吸着材31が漏出し、減少することを抑制できる。
【0063】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0064】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
原料生成装置であって、
二酸化炭素を吸着する吸着材を収容する分離器と、
水の電気分解により生じた水素と水蒸気とをパージガスとして前記分離器に供給することにより、前記吸着材に吸着された二酸化炭素の脱離を促す水素供給部と、
前記水素供給部と前記分離器とを繋ぐパージガス流路に設けられ、前記分離器へと供給される前記パージガスの水蒸気圧を調整する湿度制御器と、
を備える、原料生成装置。
[適用例2]
適用例1に記載の原料生成装置であって、
前記吸着材は、前記パージガスの水蒸気圧の増大もしくは回収器内の温度で規定される相対湿度の増大に伴って、前記吸着材からの二酸化炭素の回収量が増大する吸着材である、原料生成装置。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の原料生成装置であって、さらに、
前記分離器から排出される混合ガスであって、前記吸着材から脱離した二酸化炭素と、前記パージガス中の水素とを含む混合ガスの排出流路上に、真空ポンプを備える、原料生成装置。
[適用例4]
燃料製造装置であって、
適用例1から適用例3のいずれか一項に記載の原料生成装置と、
前記原料生成装置により生成された二酸化炭素と水素とを含む混合ガスを反応させて、炭素と水素とを含む燃料を製造する反応器と、
前記反応器と前記湿度制御器とに接続されて、前記反応器での前記反応によって生じた熱を前記湿度制御器へと供給する第1熱供給部と、
を備える、燃料製造装置。
[適用例5]
適用例4に記載の燃料製造装置であって、さらに、
前記第1熱供給部を介して前記湿度制御器に供給される熱量を調整する第1熱量制御器を備える、燃料製造装置。
[適用例6]
適用例4または適用例5に記載の燃料製造装置であって、さらに、
前記分離器内の温度を取得する温度取得部と、
前記分離器内の温度が、前記パージガスの露点温度よりも高い状態が維持されるように、前記第1熱量制御器を制御する制御部を備える、燃料製造装置。
[適用例7]
適用例4から適用例6のいずれか一項に記載の燃料製造装置であって、さらに、
前記反応器と前記分離器とに接続されて、前記反応器での前記反応によって生じた熱を前記分離器へと供給する第2熱供給部と、
前記第2熱供給部を介して前記分離器に供給される熱量を調整する第2熱量制御器と、
前記分離器内の温度が、前記吸着材からの二酸化炭素の脱離に適した閾値温度と等しくなるように、前記第2熱量制御器を制御する制御部と、
を備える、燃料製造装置。
【符号の説明】
【0065】
1…工場
2…反応器
3…分離器
3s…温度センサ
4…凝縮器
5…水素供給部
6…湿度制御器
7…真空ポンプ
10,10A…制御部
11…排出ガス流路
12…流路
21…パージガス流路
21s…湿度センサ
22…混合ガス流路
31…吸着材
41,41A…第1熱供給部
41c,41cA…第1熱量制御器
42…第2熱供給部
42c,42cA…第2熱量制御器
100,100A~100C…炭素循環システム
200,200A,200B…燃料製造装置
300,300C…原料生成装置