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特開2024-56634歪み切り離しサブスタックを備えたGaN-on-Siエピウェハ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056634
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】歪み切り離しサブスタックを備えたGaN-on-Siエピウェハ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240416BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20240416BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20240416BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20240416BHJP
【FI】
H01L21/205
C30B29/38 D
H01L21/20
H01L33/32
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023170364
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】22199219
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516167657
【氏名又は名称】アロス セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ALLOS Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Breitscheidstrasse 78, D-01237 Dresden, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 敦
(72)【発明者】
【氏名】レージング アレクサンダー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】III-V族窒化物材料系の光電子デバイスまたは電子デバイスを産業規模で高い効率で製造するのに適したGaN-on-Siエピウェハを提供するる。
【解決手段】GaN-on-Siエピウェハ100は、部分的にシリコンによって形成されている基板表面を有する基板102と、自己組織化テンプレート層110を歪み切り離し層として形成し、自己組織化テンプレート層がピットを含み、これらのピットが1x10cm-2~1x1011cm-2のピット密度を有する。歪み調整サブスタック118は、自己組織化テンプレート層上に配置されており、かつ、少なくとも1つのGaN層及び少なくとも1つのAlGa1-xN中間層(x≧0.5)を備える、GaN層が0.5μm~4.0μmの厚さを有し、AlGa1-xN中間層が5nm~25nmの厚さを有し、GaN-on-Siエピウェハが室温において最大で100μmの反りを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に沿って以下を備える層スタックを形成しているGaN-on-Siエピウェハであって、
- 前記積層方向に垂直である少なくとも一方向において150mm以上、好ましくは150mm~450mmの直径と、少なくとも部分的にシリコンによって形成されている前記積層方向に沿った基板表面と、を有する基板と、
- 歪み切り離しサブスタックであって、
- 前記基板上に直接配置された自己組織化テンプレート層であって、前記自己組織化テンプレート層がピットを含み、前記ピットが1x10cm-2~1x1011cm-2のピット密度を有する、自己組織化テンプレート層と、
- 前記自己組織化テンプレート層上に直接配置されており、かつGaNを含む表面回復層であって、前記表面回復層が、前記積層方向に沿って向いた実質的に平滑な表面を有する、表面回復層と、
を備える、歪み切り離しサブスタックと、
- 前記表面回復層上に配置されており、かつ少なくとも1つのGaN層および少なくとも1つのAlGa1-xN中間層を備える歪み調整サブスタックであって、x≧0.5であり、前記GaN層が0.5μm~4.0μmの厚さを有し、前記AlGa1-xN中間層が5nm~25nmの厚さを有する、歪み調整サブスタックと、
を備えており、
- 前記GaN-on-Siエピウェハが室温において最大で100μmの反りを有する、
GaN-on-Siエピウェハ。
【請求項2】
前記歪み調整サブスタック上に配置された活性層構造をさらに備え、前記活性層構造が、動作電圧の印加下または光励起下で光を放出するように構成された、III-V族窒化物材料の多重量子井戸構造を備える、かつ/または、レーザ放射を放出するように構成されたレーザ発振構造を備える、かつ/または、トランジスタ構造を備える、請求項1に記載のGaN-on-Siエピウェハ。
【請求項3】
動作電圧の印加下または光励起下において、前記多重量子井戸構造が、±3nm以下、または±1nm以下の発光波長均一性を示す、請求項2に記載のGaN-on-Siエピウェハ。
【請求項4】
前記自己組織化テンプレート層が、前記自己組織化テンプレート層の厚さ全体にわたり10cm-2以上の全転位密度を有する、請求項1から請求項3の少なくとも1項に記載のGaN-on-Siエピウェハ。
【請求項5】
前記自己組織化テンプレート層が、少なくとも50%、または少なくとも70%、または少なくとも90%が前記積層方向に対して0°~20°、または0°~2°の範囲の角度を有する線欠陥、を含む、請求項1から請求項4の少なくとも1項に記載のGaN-on-Siエピウェハ。
【請求項6】
前記歪み調整サブスタックが、前記GaN層と前記AlGa1-xN中間層、または前記AlGa1-xN中間層とGaN層の層列の少なくとも2回の繰り返しを備え、x≧0.5である、請求項1から請求項5の少なくとも1項に記載のGaN-on-Siエピウェハ。
【請求項7】
前記表面回復層の前記平滑な表面が、35%以上の反射率を有する、請求項1から請求項6の少なくとも1項に記載のGaN-on-Siエピウェハ。
【請求項8】
前記表面回復層が、前記自己組織化テンプレート層と前記表面回復層との間に形成される界面に対して15°~45°の角度で曲がる転位を含む、請求項1から請求項7の少なくとも1項に記載のGaN-on-Siエピウェハ。
【請求項9】
前記自己組織化テンプレート層のピットが、1nm~100nmのピットサイズを有する、請求項1から請求項8の少なくとも1項に記載のGaN-on-Siエピウェハ。
【請求項10】
前記自己組織化テンプレート層の前記ピットが、200nm~2000nmの範囲内の、隣接するピット間の平均ピット距離を有する、請求項1から請求項9の少なくとも1項に記載のGaN-on-Siエピウェハ。
【請求項11】
GaN-on-Siエピウェハを製造する方法であって、前記方法が以下のステップ、すなわち、
- 基板を保持するためのウェハキャリアを提供するステップであって、前記ウェハキャリアが、基板を収容するための少なくとも1つのキャリアポケットを有するウェハキャリアボディを備え、前記キャリアポケットが、
- 底面と
- 前記底面から事前定義された垂直距離に位置する支持面であって、前記基板を支持するように構成されている、支持面と、
を有し、
前記底面が、凸形状を有するか、または断面視において見たときに上方に湾曲した凸形状の底面部分を備える、
ステップと、
- 前記積層方向に垂直である少なくとも一方向において150mm以上、好ましくは150mm~450mmの直径と、少なくとも部分的にシリコンによって形成されている前記積層方向に沿った基板表面と、を有する基板を、前記ウェハキャリアのキャリアポケットの前記支持面上に配置するステップと、
- 歪み切り離しサブスタックを作製するステップであって、
- 自己組織化テンプレート層を、前記自己組織化テンプレート層が1x10cm-2~1x1011cm-2のピット密度を有するように、前記基板の上に直接エピタキシャル成長させるステップと、
- GaNを含む表面回復層を、前記表面回復層が前記積層方向に沿って向いた実質的に平滑な表面を有するまで前記自己組織化テンプレート層上にエピタキシャル成長させるステップと、
を含む、ステップと、
- 少なくとも1つの事前定義された成長温度を使用して、前記表面回復層の上に歪み調整サブスタックをエピタキシャル成長させることによって、GaN-on-Siエピウェハの曲率を制御するステップであって、前記歪み調整サブスタックが、少なくとも1つのGaN層および少なくとも1つのAlGa1-xN中間層を備え、x≧0.5であり、前記GaN層が0.5μm~4.0μmの厚さを有し、前記AlGa1-xN中間層が5nm~25nmの厚さを有する、ステップと、
- 前記GaN-on-Siエピウェハを周囲室温まで冷却するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記GaN-on-Siエピウェハの前記曲率を制御するステップが、前記キャリアポケットの前記底面と前記GaN-on-Siエピウェハとの間の法線距離が成長温度において前記エピウェハ直径にわたって実質的に一定である凸状の曲率が達成されるように、前記AlGa1-xN中間層のAl含有量または厚さを調整するステップ、をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記歪み調整サブスタックの上に活性層構造をエピタキシャル成長させるステップであって、前記活性層構造が、III-V族窒化物材料の多重量子井戸構造を含み、動作電圧の印加下または光励起下で光を放出するように構成されている、ステップ、をさらに含む、請求項11および請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記活性層構造を成長させるステップが、n型ドープGaN層を成長させ、前記n型ドープGaN層の上に前記多重量子井戸構造を成長させるステップを含み、前記GaN-on-SiエピウェハからマイクロLED構造を作製することが、前記基板の裏面から開始して前記多重量子井戸構造の下の前記n型ドープGaN層まで前記GaN-on-Siエピウェハを薄化することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
動作電圧の印加下または光励起下で光を放出するように構成された、III-V族窒化物材料の多重量子井戸構造を含む活性層構造を備えるマイクロLED構造であって、動作電圧の印加下または光励起下で、前記多重量子井戸構造が、±3nm以下、または±1nm以下の発光波長均一性を示す、マイクロLED構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GaN-on-Siエピウェハ、特に、III-V族窒化物系のマイクロ発光ダイオード(LED)技術および/またはIII-V族窒化物系のパワーエレクトロニクスにおいて使用するのに適したGaN-on-Siエピウェハに関する。さらに、本発明は、GaN-on-Siエピウェハを製造する方法に関する。本発明はさらに、例えばディスプレイにおいて使用するためのマイクロLED構造に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN、InN、AlNなどのIII-V族窒化物化合物半導体は、様々な電子用途および光電子用途での使用に関心が寄せられている。商業用途のためのIII-V族窒化物電子デバイスおよび光電子デバイスを製造するためには、高い結晶品質を有するIII-V族窒化物活性層がしばしば必要とされる。同時に、半導体産業では、高い歩留まりでウェハあたりのダイ数を多くするという点で、高い経済効率を追求している。これを達成するためには、一般に、デバイス性能の高い均一性が要求される。例えば、大きなエピウェハから製造されるIII-V族窒化物マイクロLEDデバイスは、高い歩留まりを達成するために高い均一性の発光波長を有する必要がある。
【0003】
したがって、大きな直径の業界標準のシリコンウェハ上に高い結晶品質のIII-V族窒化物層を成長させるために、多くの開発努力が行われてきた。これは、III-V族窒化物材料の優れた電子的機能および光電子的機能を、例えば相補型金属酸化膜半導体(CMOS:complementary metal-oxide semiconductor)またはバイポーラCMOS(BiCMOS)の製造ラインにおける確立されたSi加工技術に統合することを目的とする。
【0004】
特許文献1には、シリコン表面を有する基板と、基板のシリコン表面上のアルミニウム含有窒化物核形成層と、アルミニウム含有窒化物核形成層上のアルミニウム含有窒化物バッファ層と、アルミニウム含有窒化物バッファ層上の窒化ケイ素のマスキング層と、窒化ケイ素のマスキング層上の第1のガリウム含有窒化物半導体層と、を備える窒化物半導体部品が開示されている。第1のガリウム含有窒化物半導体層は、合体した結晶成長島(coalesced crystallite growth islands)の構造を有する。窒化ケイ素のマスキング層から少なくとも600nmの距離より上の層平面は、少なくとも0.16μmの結晶成長島あたりの平均表面積を示す。第1のガリウム含有窒化物半導体層に隣接して、8nm~15nmの範囲の厚さを有するアルミニウム含有窒化物中間層と、アルミニウム含有窒化物中間層上の第2のガリウム含有窒化物半導体層とによって形成される積層体が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/096405号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、III-V族窒化物材料系の光電子デバイスまたは電子デバイスを産業規模で高い効率で製造するのに適したGaN-on-Siエピウェハを提供することを目的とする。本発明はさらに、そのようなGaN-on-Siエピウェハを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、GaN-on-Siエピウェハであって、GaN-on-Siエピウェハの積層方向に沿って、基板と、歪み切り離しサブスタック(strain-decoupling sub-stack)と、歪み調整サブスタック(strain-engineering sub-stack)とを備える層スタックを形成しているGaN-on-Siエピウェハ、を提案する。基板は、積層方向に垂直である少なくとも一方向に150mm以上、好ましくは150mm~450mm、特に150mm、200mm、または300mmのいずれかの横方向の広がりを有し、少なくとも部分的にシリコンによって形成されている、積層方向に沿って面する基板表面を有する。歪み切り離しサブスタックは、基板上に直接配置された自己組織化テンプレート層であって、自己組織化テンプレート層がピットを含み、これらのピットが、1x10cm-2~1x1011cm-2、好ましくは1x10cm-2~1x1010cm-2、または1x10cm-2~3x10cm-2、特に1x10cm-2~3x10cm-2のピット密度を有する、自己組織化テンプレート層と、自己組織化テンプレート層上に直接配置されておりGaNを含む表面回復層であって、 積層方向に沿って指す実質的に平滑な表面を有する、表面回復層と、を備える。歪み調整サブスタックは、表面回復層上に配置されており、少なくとも1つのGaN層と少なくとも1つのAlGa1-xN中間層(x≧0.5)とを備え、GaN層は、0.5μm~4.0μm、好ましくは0.5μm~2.0μmの厚さを有し、AlGa1-xN中間層は、5nm~25nm、好ましくは10nm~15nmの厚さを有する。
【0008】
本発明による提案するGaN-on-Siエピウェハの特徴は、室温において最大で100μm、好ましくは最大で50μmの反り(bow)である。
【0009】
本発明は、経済的な製造と、絶対数および相対数における高いデバイス歩留まりを達成することを可能にする、150mmを超える大きな直径を有するGaN-on-Siエピウェハの需要が着実に増加していることを認識する。本発明は、高い製造効率を達成するためには、エピウェハの高い均一性および室温における極めて小さな反りの両方が必要であるという認識を含む。高い均一性は、均一な電子的特性および光電子的特性を有する多数の効率的な電子デバイスおよび光電子デバイスをエピウェハから製造できるようにするために必要である。室温におけるエピウェハの極めて小さな反りは、エピウェハ上で標準的な処理技術を適用してエピウェハ上に電子デバイスおよび光電子デバイスを製造できるようにするうえで必要である。
【0010】
本発明は、Siを含む基板上に、高い結晶品質、優れた均一性、および小さい反りを有するIII-V族窒化物層をエピタキシャル成長させるためには、Siの結晶格子とIII-V族窒化物の結晶格子との間の格子不整合に起因して、効率的な歪みの調整を達成する必要があるというさらなる認識を含む。特に、Siを含む基板上に堆積される高い結晶品質のIII-V族窒化物層を得るためには、実質的に歪みがない表面上にIII-V族窒化物層を成長させることが有利である。本明細書において「実質的に歪みがない」とは、それぞれの層に圧縮歪みまたは引張歪みが実質的に存在しないことを意味する。そのような歪みのない表面上にIII-V族窒化物層を成長させる利点として、III-V族窒化物層の比較的低い結晶品質につながる歪みが、基板材料によってIII-V族窒化物層に誘発されない。しかし、低い結晶品質は、一般的には電子的性能および光電子的性能が低下することを意味する。
【0011】
本発明によるGaN-on-Siエピウェハでは、150mmを超える直径を有するSiを含む大口径基板上に、高い結晶品質のIII-V族窒化物層をエピタキシャル成長させることが可能である。本GaN-on-Siエピウェハにおいてこれが達成されるのは、GaN-on-Siエピウェハの層の特定の相互作用の結果として、層スタック内の歪みの発生が制御されるためである。特に、GaN-on-Siエピウェハの層スタック内の歪みの発生が制御されることにより、実質的に歪みのない平滑な表面上に高い結晶品質のIII-V族窒化物層を配置することが可能になる。
【0012】
前述した相互作用には、Si含有基板と、基板上に堆積されるIII-V族窒化物層との間の格子不整合から通常では生じる歪みの効率的な切り離しが含まれる。特に、歪みの切り離しは、基板上に直接配置される自己組織化テンプレート層と、自己組織化テンプレート層上に直接配置される表面回復層とを備える、歪み切り離しサブスタックの特異な構造によって達成される。
【0013】
歪み切り離しサブスタックの特徴は、その自己組織化テンプレート層が、積層方向に沿って面する、すなわち表面回復層の方に面する自己組織化テンプレート層の表面上に分布するピットの1x10cm-2~1x1011cm-2という比較的高いピット密度を有することである。自己組織化テンプレート層は、比較的高いピット密度のために、結晶品質が比較的低いように考えられるが、ピット密度がかなり高いため、自己組織化テンプレート層の上にさらなる層を成長させるための自己組織化テンプレートを形成する。自己組織化テンプレート層の作製中、ピットが形成される位置は、例えばマスクによって予め定義されていないため、ピットは自己組織的に形成される。すなわち、自己組織化テンプレート層の作製中、ピットは、成長条件によって有利なランダムな位置に形成される。言い換えれば、自己組織化テンプレート層のピットは、自己組織化テンプレート層の構造的な処理なしに、自己組織的に形成される。自己組織化テンプレート層は、高いピット密度を有し、したがって結晶品質が低いにもかかわらず、自己組織化テンプレート層は、優勢な結晶構造、例えばウルツ鉱型、好ましくはウルツ鉱型AlNを有する結晶層であることが好ましい。
【0014】
自己組織化テンプレート層における比較的高いピット密度は、自己組織化テンプレート層の材料と基板の材料との間の格子不整合に起因する歪みを表面回復層において効率的に緩和することに寄与する。表面回復層における効率的な歪みの緩和は、歪み調整サブスタックに歪みが伝搬することを防止し、歪み調整サブスタックおよび歪み調整サブスタック上の追加の層(以下にさらに詳細に説明する活性層構造など)をさらに成長させるための、実質的に歪みのない平滑な表面を提供することに寄与する。
【0015】
特に、表面にピットが分布している自己組織化テンプレート層上に表面回復層を成長させることにより、表面回復層を実質的に歪みなしに作製することができる。これが達成されるのは、ピットによって、表面回復層の初期のピラミッド型の成長が可能になり、ピラミッド型構造が自己組織化テンプレート層の表面のピット間に形成されるためである。ピラミッド型構造は、ピラミッド形状の側面ファセットにおいて体積が増加する。これにより、ピラミッド型構造がピットの上に成長し、表面回復層を形成する。本明細書では、このピラミッド型構造の初期成長を「ピラミッド型成長モード」と呼ぶ。ピラミッド型成長モードは、転位がピラミッド形状の側面ファセットに向かって曲がり、伝搬を停止する、または積層方向に沿った伝搬を停止するという特別な利点を有し、その結果、高い結晶品質を有し歪みのない表面回復層が得られる。
【0016】
表面回復層はまた、積層方向に沿って面する実質的に平滑な表面を有する。表面回復層の実質的に平滑な表面は、特に、ピラミッド型成長モードから、本明細書において「レイヤーバイレイヤー成長モード(layer-by-layer growth mode)」と呼ばれる成長モードに変更することによって達成される。レイヤーバイレイヤー成長モードでは、表面回復層は、著しく減少した転位密度で、積層方向に沿ってエピタキシャル成長する。これにより、表面回復層は、歪み調整サブスタックを成長させるための実質的に平滑な表面を提供する。表面回復層は、その平滑な表面において、例えば、自己組織化テンプレート層と表面回復層との間の界面を形成している反対側の表面と比較して、転位密度が低減された比較的高い結晶品質を有する。したがって歪み調整サブスタックを、高い結晶品質を有する実質的に平滑な表面上に、実質的に歪みのない状態で成長させることができる。
【0017】
自己組織化テンプレート層上に表面回復層を成長させるとき、表面回復層の材料はピットを充填せず、ピットを覆うのみとすることができる。あるいは、自己組織化テンプレート層上に表面回復層を成長させるとき、表面回復層の材料はピットを少なくとも部分的に充填し、さらにピットを覆うこともできる。このように、自己組織化テンプレート層上に表面回復層を成長させた後、ピットは、表面回復層の材料で少なくとも部分的に充填されているか、または表面回復層の材料で充填されていないかのいずれかであり得る。
【0018】
さらに、歪み調整サブスタックは実質的に平滑で歪みのない土台の上に配置されているため、歪み調整サブスタックにおいて、高い均一性を有する特に精密な歪み調整が可能である。このように、自己組織化テンプレート層および表面回復層が存在することで、歪み調整サブスタック内のAlGa1-xN中間層による正確な歪み調整の能力がさらに促進される。AlGa1-xN中間層を使用することで、GaNに対する圧縮歪み成分で引張歪みを補正することが可能であり得る。正確かつ精密に制御された歪み調整により、厚い層スタックおよび高い結晶品質のGaNを達成することができる。
【0019】
通常であれば基板によって誘発される歪みから歪み調整サブスタックを切り離すことのさらなる利点として、GaN-on-Siエピウェハの製造中のその曲率をさらに容易に正確にすることができる。製造中にGaN-on-Siエピウェハの曲率を正確に制御することにより、室温において最大で100μmというGaN-on-Siエピウェハの特に小さい反りを達成することができ、GaN-on-Siエピウェハに活性層構造が追加される場合、同時に優れた発光波長均一性を達成することができる。活性層構造の優れた発光波長均一性を達成できるのは、GaN-on-Siエピウェハの製造中にGaN-on-Siエピウェハの曲率を制御することにより、GaN-on-Siエピウェハ上に活性層構造を堆積させている間、製造中にGaN-on-Siエピウェハの表面温度の均一な分布を確立することができるためである。GaN-on-Siエピウェハの均一な温度分布は、均一な材料分布で活性層構造を成長させるうえで有利であり、ひいては優れた発光波長均一性のために有利である。例えば、活性層構造がInGaN量子井戸を備える場合、GaN-on-Siエピウェハの均一な温度分布は、InGaN量子井戸内のインジウムの均一な分布に有利である。
【0020】
GaN-on-Siエピウェハの層の前述した相互作用の結果として、本GaN-on-Siエピウェハは、マイクロLED技術およびハイパワーエレクトロニクスにおける様々な用途に、商業的に魅力的な技術基盤を提供する。ここで、「エピウェハ」は、基板と、この基板上にエピタキシャル成長させた1つ以上の層とを備える。
【0021】
基板自体は、必ずしもエピタキシを使用して製造される必要はない。ここで、「ウェハ」および「基板」という用語は、その上にエピタキシャル層を成長させるために使用可能な表面を有する半導体ボディを指すという意味で、同義に使用される。本明細書の様々なセクションに記載されているような任意の適切な基板を使用することができるが、本発明の方法は、半導体産業で使用される直径150mm以上のシリコンウェハ上にGaN-on-Siエピウェハを製造するのに特に適している。このようなウェハは、一般には、表面の結晶方向およびドーピングを示すため、および製造中のウェハの位置合わせのために、1つ以上のフラットカットエッジ部分(flat cut edge portions)またはノッチを有する円形形状を有する。
【0022】
したがって、本GaN-on-Siエピウェハでは、ピットは、自己組織化テンプレート層と表面回復層との間の界面から自己組織化テンプレート層内に延びている。個々のピットは、自己組織化テンプレート層の表面に凹部を形成する。ピットは、少なくとも7nmの深さを有し、自己組織化テンプレート層の中に最大で50nm、あるいはそれ以上延びることができる。自己組織化テンプレート層のピットの一部は、自己組織化テンプレート層の厚さに沿って自己組織化テンプレート層を完全に貫通させることができ、すなわち自己組織化テンプレート層と表面回復層との間の界面から、自己組織化テンプレート層と基板との間の界面まで達し得る。しかしながら、このことは、所与の個々のリアクタにおける成長パラメータ設定の結果として生じ得るものであり、本発明の本質的な特徴を形成するものではない。特許請求の範囲に記載されている方法は、自己組織化テンプレート層を基板まで完全に貫通しないピットのみを有する自己組織化テンプレート層を作製することを含むことができる。
【0023】
「ピット密度」とは、例えば自己組織化テンプレート層の表面または(特に成長後の断面画像から密度を評価するときに)界面に分布するピットの密度を指す。ピット密度は、事前定義された表面の単位面積内に存在するピットの数によって定義される。
【0024】
「反り」とは、クランプされていない自由なウェハの中央面の中心点の、基準面からの偏差であり、基準面は正三角形の3つの角によって定義される。ウェハの「反り」は、規格ASTM F534-97に定義されている「シリコンウェハの反りの試験方法(Test Method for Bow of Silicon Wafers)」に従って測定することができる。
【0025】
「室温」とは、日常的な環境における温度を指し、一般には20℃~30℃の範囲である。
【0026】
表面回復層の平滑な表面の平滑性は、基板の基板表面の平滑性に匹敵し得る。平滑な表面は、例えば、35%を上回る、例えば35%~50%、好ましくは40%~45%の反射率によって特徴付けることができる。反射率は、例えばMOCVD成長中にin-situモニタリング法を使用して測定することができる。反射率は特に、反射光と入射光の比率を指し得る。これに加えて、またはこれに代えて、平滑な表面は、1nm以下、例えば0.5nm以下の表面粗さ(例えば二乗平均平方根粗さ)によって特徴付けることができる。
【0027】
Si含有基板は、完全にSiから構成された基板とすることができる。あるいは、Si含有基板は、少なくとも積層方向に沿って面する基板表面において、Siの結晶構造および/またはSiのバルク格子定数を有する基板であってもよい。例えば、Si含有基板は、SiON基板、またはSi(111)基板表面を有する加工基板(engineered substrate)とすることができる。あるいは、Si含有基板は、シリコンオンインシュレータ(SOI:silicon-on-insulator)基板であってもよい。
【0028】
以下では、本発明のGaN-on-Siエピウェハの好ましい実施形態について説明する。
【0029】
有利なことに、基板からの歪み調整サブスタックの歪み切り離しにより、歪み調整サブスタックのAlGa1-xN中間層は、GaN-on-Siエピウェハの製造中の歪み調整サブスタックにおける再現可能な歪み調整を可能にする。室温におけるGaN-on-Siエピウェハの小さい反りを達成するために、AlGa1-xN中間層中のアルミニウム含有量は、好ましくは50%以上である。AlGa1-xN中間層の厚さは、5nm~25nmであることが好ましい。
【0030】
基板は、少なくとも1ミリメートル、好ましくは1.2mm~1.6mmの厚さを有することができる。比較的厚い基板、特にSi含有基板を使用することにより、厚い窒化物層スタックを成長させるときのSi含有基板の塑性変形を防止することができ、したがって、歪み調整サブスタックにおけるGaNの良好な結晶品質を達成することができる。
【0031】
比較的厚いGaN-on-Siエピウェハは、例えば、標準的な半導体処理ラインによってさらに使用し、受け入れられるように、基板の裏面からSEMI規格の厚さまで薄化することができる。「SEMI規格の厚さ」は、標準的なウェハ直径に従って定義されており、150mmウェハの場合にはSEMI規格の厚さは675±20μmまたは625±15μm、200mmウェハの場合にはSEMI規格の厚さは725±20μm、300mmウェハの場合にはSEMI規格の厚さは775±20μmである。
【0032】
GaN-on-Siエピウェハは、歪み調整サブスタック上に配置された活性層構造をさらに備えることが好ましい。活性層構造は、好ましくは、InGaNあるいはGaNなどのIII-V族窒化物材料の多重量子井戸構造を備え、多重量子井戸構造は、動作電圧の印加下または光励起下で光を放出するように構成されている。これに加えて、またはこれに代えて、活性層構造は、レーザ放射を放出するように構成されたレーザ発振構造(lasing structure)を備えることができる。これに加えて、またはこれに代えて、活性層構造は、トランジスタ構造を備えることができる。トランジスタ構造は、高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)構造とすることができる。トランジスタ構造は、GaN-on-Siエピウェハの積層方向に沿って層が積層された垂直トランジスタ構造、例えば垂直HEMT構造とすることができる。あるいは、トランジスタ構造は、GaN-on-Siエピウェハの積層方向に平行に、横方向に層が配置された横型トランジスタ構造、例えば横型HEMT構造とすることができる。活性層構造を有するGaN-on-Siエピウェハは、マイクロLEDを製造するために使用することができる。III-V族窒化物材料の多重量子井戸構造は、p型ドープIII-V族窒化物材料層およびn型ドープIII-V族窒化物材料層と、pn接合を実現するいくつかの量子井戸を含む活性領域とを備えることができる。動作電圧を印加すると、電子と正孔が再結合し、光子が放出される。
【0033】
特に、活性層構造を有するGaN-on-Siエピウェハは、動作電圧の印加下、または例えばUVレーザによる光励起下で、多重量子井戸構造が±3nm以下または±1nm以下の発光波長均一性を示すように構成することができる。±3nm以下または±1nm以下の発光波長均一性は、活性層構造を成長させる間、GaN-on-Siエピウェハの曲率を精密に制御して、GaN-on-Siエピウェハの表面上の均一な熱分布を確立することによって達成することができる。
【0034】
さらに、歪み切り離しサブスタックによってもたらされる歪みの切り離しにより、GaN-on-Siエピウェハの歪み調整サブスタック内のGaNは、比較的高い結晶品質を有することができる。さらに、効率的な歪み切り離しにより、GaN-on-Siエピウェハは、GaN-on-Siエピウェハを薄化した後も、室温において最大で100μmという平坦な反りを有する。さらに、エピウェハの平坦性と高い発光均一性はトレードオフの関係にあるにもかかわらず、歪み切り離しおよび歪み調整は、±3nm以下または±1nmの発光波長均一性の達成に寄与している。±3nm以下、または±1nm以下の波長均一性は、GaN-on-Siエピウェハの活性層構造の少なくとも80%、さらには少なくとも90%からの光の放出を指す。このような活性層構造を有するGaN-on-Siエピウェハに基づき、例えばディスプレイ技術で使用するためのマイクロLEDを高い歩留まりで製造することができる。
【0035】
したがって、本GaN-on-Siエピウェハの特に有利な点は、薄化の後でも、GaN-on-Siエピウェハが室温において最大で100μm、例えば50μm未満の反りを有することである。歪み調整サブスタックのGaNの品質が高く、GaN-on-Siエピウェハの薄化の後でも反りが最大で100μmであるため、本GaN-on-Siエピウェハを使用して、高い効率のマイクロLEDまたは高電子移動度トランジスタ(HEMT)を製造することができる。本GaN-on-Siエピウェハから製造されたマイクロLEDは、比較的高い外部量子効率(EQE:external quantum efficiency)と、例えば±1nmの範囲内の均一な発光波長を有することができる。
【0036】
自己組織化テンプレート層は、50nm~300nm、好ましくは100nm~200nmの厚さを有することが好ましい。50nm~300nmの厚さでは、歪み調整サブスタック中のGaNが比較的高い結晶品質を有するように、Si含有基板と歪み調整サブスタックとの間の歪みの十分な切り離しを確保することができる。ここで、「高い結晶品質」という用語は、転位密度が5x10cm-2以下であることを意味する。50nm~300nmの厚さを有する自己組織化テンプレート層は、積層方向を向いたテンプレート表面におけるピット密度が1x10cm-2~1x1011cm-2で作製することができる。特に、50nm~300nmの厚さを有する自己組織化テンプレート層は、例えばピット密度および/またはピットサイズの点で不十分なピット形成による影響が少ないことが予想される。好ましくは、自己組織化テンプレート層はAl含有窒化物層であり、さらに好ましくはAlN層である。しかし、Al含有窒化物層である自己組織化テンプレート層が、Alに隣接するさらなる元素、例えばGaなどのさらなるIII族元素を含むことも可能である。AlNは、その柱状成長モードによって基板と歪み調整サブスタックとの間での十分な歪みの切り離しをもたらすため、好ましい。AlN層である自己組織化テンプレート層によってもたらされるもう1つの利点は、メルトバックエッチング、すなわちGaと基板のSiとの間で起こる劣化性の化学反応が防止されることである。しかし、メルトバックエッチングがある程度許容されるのであれば、自己組織化テンプレート層はAlGaN層であってもよい。
【0037】
自己組織化テンプレート層のピットは、1nm~100nm、好ましくは10nm~50nm、特に10nm~30nmのピットサイズを有することが好ましい。ピットサイズとは、ピット、例えば基板とは反対側の自己組織化テンプレート層のテンプレート表面における開口部の、積層方向に垂直な横方向の広がりを意味する。ピラミッド型成長モードにおいてオーバーグロー(overgrow)され得るピットを含む自己組織化テンプレートを提供するためには、1nm~100nmのピットサイズが好ましい。
【0038】
自己組織化テンプレート層のピットは、例えば、自己組織化テンプレート層の材料(例えばAlN)の柱状成長に起因して形成され得る。自己組織化テンプレート層の柱状成長は、自己組織化テンプレート層の成長中に適用される成長条件を調整することによって制御することができる。自己組織化テンプレート層の柱状成長は、自己組織化テンプレート層がAl含有窒化物層、特にAlN層である場合に特に良好に機能することが判明した。これは、Ga原子に比べてAl原子の表面移動が比較的小さいためである。したがって、特に自己組織化テンプレート層中のAl原子の存在が、自己組織化テンプレート層の柱状成長と、1x10cm-2~1x1011cm-2のピット密度を有するピットの形成とを促進する。柱状成長は、構造化(例えばマスキング)に関与することなく自己組織化され、したがって柱状成長中にピットも自己組織的に形成される。
【0039】
自己組織化テンプレート層のピットは、200nm~2000nmの範囲内、好ましくは200nm~1000nmの範囲内、例えば、200nm、500nm、1000nm、または2000nmの、隣接するピット間の平均ピット距離を有することが好ましい。特に、隣接するピット間のピット距離は、あるピットの中心から、直接隣接するピットの中心までの距離を測定することによって求めることができる。隣接するピット間の平均ピット距離は、隣接するピット間の個々の距離を求め、収集した距離の平均を取ることによって計算することができる。隣接するピット間の平均ピット距離が200nm~2000nmの範囲内であれば、エピタキシャル成長させる表面回復層によってピットがオーバーグローされ得る自己組織化テンプレート層が得られるので好ましい。
【0040】
GaN-on-Siエピウェハの製造中、自己組織化テンプレート層のピット密度は、以下に説明するように制御することができる。
【0041】
場合によっては、積層方向に沿って面するSi含有基板表面を有する基板が、自然酸化物によって覆われていることがある。一般に、Si含有基板表面上の自然酸化物の形成は、特定の時間後に飽和し、均一な厚さになる。Si含有基板表面が自然酸化物で覆われている場合、最初に、必要に応じて、以下のステップを実施することにより、Si含有基板表面を準備することができる。
【0042】
- 積層方向に面するSi含有基板表面を有し、150mm以上、好ましくは150mm~450mmの直径を有する基板であって、基板表面が自然酸化物で覆われている、基板を提供するステップと、
- 自然酸化物を少なくとも部分的に除去するために、少なくとも1つの成長パラメータを適合させるステップ。
【0043】
自然酸化物を除去するために適合させることのできる成長パラメータは、基板温度、リアクタ圧力、および/またはリアクタ雰囲気であり得る。さらに、自然酸化物を除去するために成長パラメータを適合させる時間スパンを選択することができる。例えば、基板温度、リアクタ圧力、および/または雰囲気を、Si含有基板表面を覆う自然酸化物が少なくとも部分的に除去される範囲内に調整することができる。
【0044】
酸化物の除去中、基板は、基板の裏面と前面との間の温度差に起因する凹状の反りを示し、ここで前面とは、基板上に後続の層を成長させるために使用される基板表面である。したがって、特に酸化物の除去中に基板が凹状の反りを示す場合、基板の前面における均一な温度分布を達成するためには、一般に、より慎重なパラメータ調整が必要であり得る。
【0045】
酸化物の除去が実施される時間およびリアクタ条件は、好ましくは、自然酸化物が大幅に除去されるように選択する。これは、自然酸化物が完全に除去されることを含み得る。しかしながら、自然酸化物は部分的にのみ除去されてもよく、以前に覆われていた表面の一部は依然として自然酸化物によって覆われており、以前に覆われていた表面の別の部分はもはや自然酸化物によって覆われてない。自然酸化物を部分的にのみ除去することは有利なことがあり、なぜならそれにより、酸化物除去のための選択される時間が長すぎて、酸化物の除去後に基板表面へのエッチングに起因してSi含有基板表面が粗くなることが回避されるためである。Si含有基板の表面が部分的に自然酸化物で覆われていること、すなわち酸化物除去が不完全である状態は、その後に成長させる自己組織化テンプレート層におけるピットの形成にとっても有利であり得る。
【0046】
少なくとも部分的に自然酸化物が除去されたSi含有基板表面を有するとき、その上に自己組織化テンプレート層を成長させることができ、それによって例えば以下の方法においてピットの形成を制御することができる。
【0047】
- 任意選択で、ウェハを保持するためのウェハキャリアを提供する。ウェハキャリアは、ウェハを収容するための少なくとも1つのキャリアポケットを有するウェハキャリアボディを含み、キャリアポケットは、底面と、底面から事前定義された垂直距離に位置する支持面とを有し、支持面は、ウェハを支持するように構成されており、底面は、凸形状を有する、または断面視において見たときに上方に湾曲している凸形状の底面部分を備える。
【0048】
- 任意選択で、ウェハキャリアのキャリアポケットの支持面上に、積層方向に面するSi含有基板表面を有し、150mm以上、好ましくは150mm~450mmの直径を有する基板を提供する。この基板表面は、自然酸化物を含まない、または部分的にのみ自然酸化物によって覆われている。
【0049】
- 自己組織化テンプレート層を成長させるための少なくとも1つの成長パラメータを適合させる。
【0050】
前述したように、自己組織化テンプレート層は、好ましくは、Al含有層(例えばAl層)である第1の副層を備える。したがって、自己組織化テンプレート層を成長させるために、自己組織化テンプレート層の成分を含むガスを、ガス注入口を介して反応チャンバに導入する。自己組織化テンプレート層を成長させるために適合させることのできる成長パラメータは、基板温度、リアクタ圧力、およびリアクタガス流量である。特に、基板温度、リアクタ圧力などの成長パラメータは、自己組織化テンプレート層にピットが形成される範囲内に調整することができる。自己組織化テンプレート層は、50nm~300nmの厚さ、例えば100nm~200nmの厚さまで成長させることが好ましい。50nm未満の層厚を使用してもよい。
【0051】
成長パラメータを適宜選択することにより、自己組織化テンプレート層を柱状モードで成長させることができ、柱状モードは、自己組織化テンプレート層の核形成が妨げられる部分が基板表面上に存在することを含み得る。自己組織化テンプレート層の核形成が妨げられる基板表面の部分は、酸化物層の残りの部分および/または結晶欠陥もしくは他の欠陥を含み得る。柱状成長は、自己組織化テンプレート層にAlNを使用するときに特に効率的である。本発明は、比較的高い基板温度が、結晶性の自己組織化テンプレート層の一部としてピットを形成するために有利であるというさらなる認識を含む。さらに、自己組織化テンプレート層を結晶層として成長させることができるため、比較的高い基板温度が好ましい。これに対して先行技術では、一般に、Si含有基板上に低温のAlNを成長させることを試みる。
【0052】
本発明は、自己組織化テンプレート層上に成長する層(例えば表面回復層)のための自己組織化テンプレートを、ピットを使用して形成することができるというさらなる認識を含む。自己組織化テンプレート層では、1つ以上のピットがテンプレート表面から自己組織化テンプレート層全体を貫いて基板の基板表面まで延びていることが可能である。したがって、自己組織化テンプレート層のテンプレート表面は、自身の穴がオーバーグローされ得るマスクに類似するテンプレートを実現する。これにより、ピットは、後続の層をオーバーグローさせることによって覆われる。ピラミッド型成長モードにより、後続の表面回復層を、実質的に歪みなしに、すなわち圧縮歪みも引張歪みもなしに成長させることができる。後続の層を実質的に歪みなしに成長させることができるため、基板と歪み調整サブスタックとの間での歪みの切り離しを達成することができる。したがって、本GaN-on-Siエピウェハでは、自己組織化テンプレートを提供するために、自己組織化テンプレート層に比較的多数のピット、すなわち比較的高いピット密度を有することが好ましい。したがって、比較的多数のピットを有する自己組織化テンプレート層を有することにより、先行技術で使用されていた追加のマスキング層が不要になる。
【0053】
有利なことに、自己組織化テンプレート層上に表面回復層を成長させることにより、基板と、積層方向に沿って表面回復層に続く歪み調整サブスタックとの間での歪みの効率的な切り離しがもたらされる。本明細書で説明するアプローチは、先行技術において一般的に目指している、自己組織化テンプレート層(例えばAl含有層)における結晶品質を向上させて、高い結晶品質を有する後続のIII-V族窒化物層を達成することとは相反する。
【0054】
本GaN-on-Siエピウェハの自己組織化テンプレート層は、比較的高いピット密度に加えて、積層方向に沿った自己組織化テンプレート層の厚さ全体にわたって、10cm-2以上の全転位密度を有することが好ましい。全転位密度とは、結晶性固体中の特定の界面におけるすべての線欠陥の量として定義される。本GaN-on-Siエピウェハの自己組織化テンプレート層において、全転位密度は、自己組織化テンプレート層の厚さ全体にわたって10cm-2以上であり、すなわち、自己組織化テンプレート層は、その体積全体内に10cm-2以上の全転位密度を有する。自己組織化テンプレート層は、10cm-2~1011cm-2の全転位密度を有することが好ましい。自己組織化テンプレート層における比較的高い転位密度は、歪み調整サブスタックと基板との間の歪みの切り離しに寄与する。その結果、Si含有基板とGaN-on-Siエピウェハのさらなる層、特に歪み調整サブスタックのGaNの歪みに関して、少なくとも部分的な切り離しを達成することができる。さらに、自己組織化テンプレート層に存在する一部の転位は、表面回復層内に継続し得る。表面回復層では、これらの転位は、表面回復層を成長させるときのピラミッド型構造の形成により曲がる、および/または消滅し得る。これにより、歪み調整サブスタックを作製するための土台を形成する表面回復層の平滑な表面まで、これらの転位が伝播することが防止される。
【0055】
GaN-on-Siエピウェハを製造する際に、比較的結晶品質の低い、すなわち全転位密度が高く、好ましくはピット密度も高い自己組織化テンプレート層を有することは、先行技術において一般的に目指していることとは対照的である。先行技術によれば、可能な限り最高の結晶品質を有する自己組織化テンプレート層を成長させることを試みる。したがって、本明細書で説明するGaN-on-Siエピウェハ内に存在するような、比較的結晶品質の低い自己組織化テンプレート層を有することは、パラダイムの転換を意味する。
【0056】
自己組織化テンプレート層は、少なくとも50%、または少なくとも70%、または少なくとも90%が積層方向に対して0°~20°、好ましくは実質的に0°、または0°~2°の範囲の角度を有する線欠陥を含むことが好ましい。積層方向と実質的に同じ方向に延びる線欠陥を有することにより、効率的な歪み緩和、したがって基板と歪み調整サブスタックの歪み切り離しが可能になる。特に、積層方向と実質的に平行に延びる転位が表面回復層内に侵入するため、効率的な歪み緩和が達成される。表面回復層では、これらの転位が曲がる、および/または消滅し、したがって表面回復層における転位密度が積層方向に沿って減少する。表面回復層が、自己組織化テンプレート層と表面回復層との間に形成される界面に対して15°~45°の角度で曲がる転位を含むことが特に好ましい。したがって、自己組織化テンプレート層では、線欠陥が積層方向に沿って延びることは有利であると考えられ、これは、一般に目標とされること、すなわち、最先端のGaN-on-Siエピウェハの対応する層における結晶品質を向上させることとは対照的である。
【0057】
歪み調整サブスタックは、単一のGaN層および単一のAlGa1-xN中間層のみを備え、GaN層またはAlGa1-xN中間層のいずれかから開始することができる。しかしながら、歪み調整サブスタックが、GaN層とAlGa1-xN中間層の層列、またはAlGa1-xN中間層とGaN層の層列(x≧0.5)の少なくとも2回の繰り返しを含むならば有利であり得る。繰り返しの数を増やすことにより、歪み調整サブスタックにおける歪みをより正確かつ個別に制御することができる。例えば、歪み調整サブスタックに存在するAlGa1-xN中間層の各々は、歪み調整サブスタックのGaN層における効率的な歪みのバランス調整を確保するために、異なる厚さおよび/またはAl含有量を有することができる。これにより、歪み調整サブスタックのGaN層の結晶品質をさらに向上させることができる。さらに、繰り返しごとに結晶品質がさらに向上することを期待することができる。これにより、歪み調整サブスタックのGaN層が、特定の用途において十分な結晶品質を有するまで、成長を継続することができる。また、それぞれの繰り返しのGaN層の結晶品質がそれ以上変化しなくなるまで、さらなる繰り返しを成長させることも可能である。その後、GaN-on-Siエピウェハを、要求される結晶品質を示すGaN-on-SiエピウェハのGaN層まで、さらなる使用のために裏面から薄化することができる。
【0058】
自己組織化テンプレート層は、AlN層である第1の副層と、第1の副層の上に直接配置されている、AlGa1-xN(0<x<1)を含む第2の副層とを備えることが好ましい。特に、自己組織化テンプレート層は、Ga含有窒化物層である第2の副層を備えることができる。しかしながら、第2の副層は、AlN層、GaN層、またはAlGaN層であってもよい。第2の副層を使用することで、基板と歪み調整サブスタックとの間のさらに改善された切り離しを達成することができる。特に、第2の副層を使用することで、自己組織化テンプレート層に生成されるピットのサイズおよび密度を微調整することが可能である。これにより、ピットの均一性を向上させることができる。その結果、表面回復層を成長させるための改善されたテンプレート表面を提供することができる。
【0059】
したがって、存在する場合、第2の副層はまた、1x10cm-2~1x1011cm-2、好ましくは1x10cm-2~1x1010cm-2、または1x10cm-2~3x10cm-2、特に、1x10cm-2~3x10cm-2のピット密度、および/または、200nm~2000nmの範囲内、好ましくは200nm~1000nmの範囲内、例えば200nm、500nm、1000nm、または2000nmの隣接するピット間の平均ピット距離、および/または、1nm~100nm、好ましくは10nm~50nm、特に10nm~30nmのピットサイズ、を示す。したがって、存在する場合、第2の副層は、表面回復層を成長させるための自己組織化テンプレート層のテンプレート表面を、基板とは反対側の自身の表面に提供する。第2の副層が存在する場合、第2の副層はすでにピットを有する第1の副層上に成長し、第2の副層自体が、その上に表面回復層を成長させるためのテンプレート表面を提供する。
【0060】
特に、第1の副層がAlNからなる場合、第2の副層がAlGaNからなるならば有利であり得、なぜならAlGaNの格子定数が表面回復層のGaNに近いためである。したがって第2の副層は、第1の副層のAlNの格子定数から表面回復層のGaNへの橋渡しの役割を果たすと考えることができる。これにより、表面回復層の結晶品質を向上させることができ、結果として、積層方向を向いた表面回復層の平滑な表面の平滑性を向上させることができる。
【0061】
第2の副層は、50nm~150nmの総厚を有することができる。表面回復層はGaNのみからなることができる。しかしながら、表面回復層は、AlまたはInなどの他のIII族金属を含んでいてもよく、三元合金または四元合金などであってもよい。ただし、表面回復層の格子定数は、300Kにおいてa=3.189Åおよびc=5.178ÅであるバルクGaNの格子定数から、5%以下、例えば3%以下または1%以下の逸脱であることが好ましい。
【0062】
GaN-on-Siエピウェハの製造方法を対象とする上述した目的に関して、以下のステップを含むGaN-on-Siエピウェハの製造方法を提案する。
【0063】
- ウェハを保持するためのウェハキャリアを提供するステップであって、ウェハキャリアが、ウェハを収容するための少なくとも1つのキャリアポケットを有するウェハキャリアボディを備え、キャリアポケットが、底面と、底面から事前定義された垂直距離に位置する支持面とを有し、支持面が、ウェハを支持するように構成されており、底面が、凸形状を有する、または断面視において見たときに上方に湾曲した凸形状の底面部分を備える、ステップと、
- 積層方向に垂直である少なくとも1つの方向において150mm以上、好ましくは150mm~450mmの直径、特に150mm、200mm、300mm、450mm、または500mmのいずれかの直径を有し、少なくとも部分的にシリコンによって形成されている積層方向に沿って面する基板表面を有する基板を、ウェハキャリアのキャリアポケットの支持面上に配置するステップと、
- 自己組織化テンプレート層が、1x10cm-2~1x1011cm-2、好ましくは1x10cm-2~1x1010cm-2、または1x10cm-2~3x10cm-2、特に1x10cm-2~3x10cm-2のピット密度でピットを有するように、基板の上に自己組織化テンプレート層を直接エピタキシャル成長させ、自己組織化テンプレート層上に、GaNを含む表面回復層を直接エピタキシャル成長させることによって、歪み切り離しサブスタックを作製するステップであって、したがって表面回復層が、積層方向に沿って面する実質的に平滑な表面を有する、ステップと、
- 表面回復層の上に、少なくとも歪み調整サブスタックを使用してエピタキシャル成長させることによって、GaN-on-Siエピウェハの曲率を制御するステップであって、歪み調整サブスタックが、少なくとも1つのGaN層と少なくとも1つのAlGa1-xN中間層とを備え(x≧0.5)、GaN層が、0.5μm~4.0μm、好ましくは0.5μm~2.0μmの厚さを有し、AlGa1-xN中間層が、5nm~25nm、好ましくは10nm~15nmの厚さを有する、ステップと、
- GaN-on-Siエピウェハを室温まで冷却させるステップ。
【0064】
本発明による方法を使用することで、本発明による上述したGaN-on-Siエピウェハを製造することができる。
【0065】
本発明による方法は、例えば、分子線エピタキシ(MBE:molecular beam epitaxy)装置または有機金属気相エピタキシ(MOVPE:metalorganic vapour phase epitaxy)装置、または他の適切な結晶成長装置、例えば化学気相成長(CVD:chemical vapour deposition)装置を使用して実施することができる。
【0066】
底面から支持面までの事前定義された垂直距離は、0.05mm~1mmの間、例えば1mm~0.25mmとすることができる。
【0067】
表面回復層の成長は、例えば、印加圧力、ガス流量比、および成長温度の異なる成長パラメータ値によって特徴付けられる異なる成長モードを含むことができる。これらの成長モードは、ピラミッド型成長モード、レイヤーバイレイヤー成長モード、およびピラミッド型成長モードからレイヤーバイレイヤー成長モードに変更するように成長パラメータを変更するときに生じる過渡的成長モードを含むことができる。ただし、過渡的成長モード自体は、必要であれば、事前定義された時間スパンにわたり適用することができる。しかしながら、過渡的成長は、表面回復層の成長が実質的にピラミッド型成長モードおよびレイヤーバイレイヤー成長モードのみを含むように、短くてもよい。
【0068】
一般に、自己組織化テンプレート層の上には、最初にピラミッド型成長モードで表面回復層を成長させることが好ましく、ピラミッド型成長モードでは、自己組織化テンプレート層のテンプレート表面にピラミッド型構造が形成され、ピラミッド型構造は、その側面ファセットにおける成長によりサイズが増大する。これにより、ピットがオーバーグローされる。実際、ピットを含む自己組織化テンプレート層は、ピラミッド型成長モードにおけるピラミッド型構造の形成と、その側面ファセットにおける成長を特に促進する。ピラミッド形状構造の形成は、成長方向に沿って伝播する、表面回復層のGaNにおける転位によって促進され得る。このピラミッド型成長により、転位はピラミッド型構造の側面ファセットに向かって曲がる、および/または、積層方向に沿った伝搬を停止する。実際、ピラミッド型成長モードでは、転位が曲がって、存在する別の転位に遭遇したときに消滅することがある。これにより、積層方向を向いた実質的に歪みのない表面回復層の実質的に平滑な表面を形成することができる。
【0069】
表面回復層の成長ではピラミッド型成長が起こるが、レイヤーバイレイヤー成長モードでは、表面回復層は特に積層方向に沿って成長する。ピラミッド型成長モードとレイヤーバイレイヤー成長モードとの間に、特定の時間スパンにわたり過渡的成長モードを適用することができる。過渡的成長モードでは、表面回復層は、水平方向と、積層方向に沿った両方向に成長し、すなわち、水平方向の成長成分と垂直方向の成長成分とが存在する。レイヤーバイレイヤー成長モードでは、表面回復層は実質的に積層方向に沿って成長し、これにより表面回復層の実質的に平滑な表面が形成される。表面回復層を作製する際にピラミッド型成長モードおよびレイヤーバイレイヤー成長モードを適用するとき、表面回復層は、実質的に歪みなしとすることができる。したがって、基板によって誘発される歪みから切り離された表面回復層の上に歪み調整サブスタックを作製することができる。
【0070】
本方法では、例えば、自己組織化テンプレート層を成長させるときに、成長パラメータを適宜適合させることにより、Si含有基板からの歪み調整サブスタックの歪みの切り離しの程度を適合させることによって、GaN-on-Siエピウェハの曲率を制御することができる。本方法では、GaN-on-Siエピウェハの曲率が、凸状であるかまたは凸状の底面部分を備える底面の形状に実質的に対応することが特に好ましい。それにより、歪み調整サブスタックの成長中、および特に歪み調整サブスタックの上に成長させる活性層構造の成長中に、GaN-on-Siエピウェハとキャリアポケットの底面との間の実質的に一定の距離を維持することが可能である。歪み調整サブスタック、および特に活性層構造を成長させている間、GaN-on-Siエピウェハとキャリアポケットの底面との間の実質的に一定の距離を確立することは、歪み調整サブスタックおよび活性層構造をGaN-on-Siエピウェハに沿って実質的に均一な成長温度で成長させることができるため、有利である。ひいては、均一な成長温度は、GaN-on-Siエピウェハの均一な電子特性および/または光電子特性を得るために有利であり得る。
【0071】
GaN-on-Siエピウェハの曲率は、例えば、AlGa1-xN中間層中のAlの量および/またはAlGa1-xN中間層の厚さを適合させることによって、制御することができる。それにより、GaNに対する圧縮歪み成分で補正する引張歪みの量を調整することができ、引張歪みの量はGaN-on-Siエピウェハの曲率に影響を与える。したがって、本方法では、GaN-on-Siエピウェハの曲率は、歪み調整サブスタック内の歪み調整によって制御される。歪みを調整するために、AlGa1-xN中間層のAl含有量、またはAlGa1-xN中間層の厚さ、または成長温度を調整することができる。Al含有量または厚さまたは成長温度は、インラインプロセス制御を行うことによって調整することができる。また、歪み調整サブスタックのAlGa1-xN中間層を実際に成長させる前に、プログラムされたプロセスフローにおける計画された調整の一部として、Al含有量または厚さまたは成長温度を制御することもできる。
【0072】
したがって、本方法において、GaN-on-Siエピウェハの曲率を制御することは、キャリアポケットの底面とGaN-on-Siエピウェハとの間の法線方向(すなわち垂直方向)距離がウェハ直径にわたって実質的に一定である凸状の曲率を達成するために、上述したAl含有量などの成長パラメータを調整することをさらに含むことができる。キャリアポケットの底面とGaN-on-Siエピウェハとの間の実質的に一定の距離は、特に活性層構造を成長させている間、成長温度において達成されることが好ましい。
【0073】
キャリアポケットの底面までの距離が実質的に一定になるようにGaN-on-Siエピウェハの曲率を制御する結果、特に活性層構造の成長中のGaN-on-Siエピウェハの反りが、キャリアポケットの底面の曲率に実質的に対応することができる。これにより、GaN-on-Siエピウェハとキャリアポケットとの間に均一な温度分布を確立することが可能である。この均一な温度分布は、GaN-on-Siエピウェハの結晶層が、均一な成長条件下で作製されるという利点を有する。このような均一な成長条件は、温度変化の影響を受けやすい活性層構造の作製において特に望ましい。
【0074】
さらに、GaN-on-Siエピウェハ内の温度差によって引き起こされ得るGaN-on-Siエピウェハ内の熱応力を低減することができる。これにより、キャリアポケットの底面とGaN-on-Siエピウェハとの間の熱分布が比較的均一な状態で、歪み調整サブスタックの上に活性層構造を成長させることができる。このことは、活性層構造を比較的均一に成長させることができるという利点を有する。例えば、活性層構造が、発光を目的とする1つ以上のInGaN量子井戸を備える場合、特に熱分布の点で比較的均一な成長条件により、InGaN量子井戸内にInを比較的均一に組み込むことができる。特に、適切に成長させたGaN-on-Siエピウェハは、±3nm以下、または±1nm以下の優れた発光波長均一性を有するマイクロLEDの製造に適している。自己組織化テンプレート層は、Al含有層である第1の副層を有するように成長させることが好ましい。歪み切り離し層は、第1の副層のみによって形成されていることが可能である。しかしながら、任意選択で、本方法は、歪み切り離し層上に表面回復層および歪み調整サブスタックを成長させる前に、第1の副層の上に、AlGa1-xN(0≦x≦1)からなる第2の副層をエピタキシャル成長させるステップを含むことができる。この場合、歪み切り離し層は、第1の副層および第2の副層を含む。第2の副層を使用することで、基板と歪み調整サブスタックの間でのさらに改善された歪みの切り離しを達成することができる。また、第2の副層を使用することで、自己組織化テンプレート層を成長させることによって生成されるピットの均一性を向上させることも可能である。
【0075】
第2の副層を自己組織化テンプレート層の一部として成長させる場合、本方法では、第1の副層のピットを自己組織化テンプレートとして使用することにより、第2の副層を積層方向に沿って第1の副層の上面に成長させることがさらに好ましい。第2の副層自体は、第1の副層のピットと同程度のピット密度を有するピットを含む。この場合、第2の副層のピットも同様に、自己組織化テンプレート層の上に表面回復層を成長させるための自己組織化テンプレートとして使用することができる。
【0076】
好ましくは、本方法では、周囲室温まで冷却した後、GaN-on-Siエピウェハは、周囲室温において最大で100μmの反りを有する。周囲室温において最大で100μmの反りを達成するためには、歪み調整サブスタックのGaN層にAlGa1-xN中間層によって十分な圧縮歪みを加え、引張歪みを補正することが有利である。これは特に、5nm~25nmの厚さを有するAlGa1-xN中間層(x≧0.5)によって可能である。例えば、AlGa1-xN中間層のAl含有量および厚さは、GaNとSiの熱膨張の不一致を考慮して選択することができる。この目的のためには、GaN層と基板のそれぞれの総厚を考慮することが特に有利である。例えば、歪み調整サブスタックのGaN層は、歪み調整サブスタックの高い結晶品質のGaN層を達成するために、成長中の熱膨張を補正するための歪みバランス調整を可能にする厚さで成長させることができる。適切な厚さは、500nmから数マイクロメートル(例えば2μmまたは3μm)の範囲とすることができる。
【0077】
本方法は、GaN-on-Siエピウェハを、所与のウェハ直径に対してSEMI規格によって規定された厚さまで、基板の裏面から開始して薄化するステップをさらに含むことができる。SEMI規格の厚さまで薄化することが特に可能であるのは、歪み調整サブスタックが、基板の上に成長するエピ層に対する格子不整合に起因して基板によって誘発される歪みから切り離されるためである。切り離しの特に有利な点として、SEMI規格の厚さまで薄くした後でも、周囲室温において最大で100μmの反りを維持することができる。その結果、SEMI規格の厚さを有する活性層構造のみから構成することのできる薄化されたGaN-on-Siエピウェハは、標準的な半導体処理ラインにおけるマイクロLEDまたはトランジスタなどのさらなる処理に適している。
【0078】
好ましくは、本方法は、事前定義された成長温度で、歪み調整サブスタックの上に活性層構造をエピタキシャル成長させるステップをさらに含み、この活性層構造は、III-V族窒化物材料の多重量子井戸構造を含み、動作電圧の印加下または光励起下で発光するように構成されている。多重量子井戸構造の下のn型ドープGaN層は、例えば活性層構造の一部として、歪み調整サブスタック上に成長させることが好ましい。
【0079】
活性層構造を有するGaN-on-Siエピウェハから、本方法の一部としてマイクロLED構造を製造することができる。これは、GaN-on-Siエピウェハを、基板から開始して、III-V族窒化物材料の多重量子井戸構造の下のn型ドープGaN層まで薄化することを含み得る。例えば、GaN-on-Siエピウェハを、SEMI規格の厚さまで薄化することができる。薄化は、GaN-on-Siエピウェハが機械的支持体の上に載置されている状態で行うことができる。
【0080】
本発明はさらに、動作電圧の印加下または光励起下で発光するように構成された、III-V族窒化物材料の多重量子井戸構造を含む活性層構造を備えたマイクロLED構造であって、動作電圧の印加下または光励起下で、多重量子井戸構造が±3nm以下、または±1nm以下の発光波長均一性を示す、マイクロLED構造に関する。
【0081】
したがって、マイクロLED構造は、前述したように歪み調整サブスタックの上に活性層構造を有するGaN-on-Siエピウェハを作製し、GaN-on-Siエピウェハを基板裏面から開始して、III-V族窒化物材料の多重量子井戸構造の下のn型ドープGaN層まで薄化し、薄化されたGaN-on-SiエピウェハからマイクロLED構造を切断またはエッチングすることによって、製造することができる。
【0082】
上述した態様、具体的には請求項1のGaN-on-Siエピウェハ、および請求項11の方法は、特に従属請求項に定義されているように、類似および/または同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0083】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項または上記の実施形態と、それぞれの独立請求項との任意の組合せとすることもできることをさらに理解されたい。
【0084】
本発明の上記の態様および他の態様は、以下に説明する実施形態を図面を参照しながら読み進めることにより明らかになり、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】マイクロLED構造またはパワーエレクトロニクス構造を製造するために使用することのできるGaN-on-Siエピウェハを示している。
図2】AlNからなる自己組織化テンプレート層を示している。
図3】活性層構造を有するGaN-on-Siエピウェハを示している。
図4図3のGaN-on-Siエピウェハと類似しているが、表面回復層とAlGaN中間層との間にGaN層が配置されているGaN-on-Siエピウェハを示している。
図5】歪み切り離しサブスタックを概略断面図において示している。
図6】GaN-on-Siエピウェハの積層方向に沿った自己組織化テンプレート層の外側表面の原子間力顕微鏡(AFM:atomic force microscopy)像を示している。
図7】GaN-on-Siエピウェハを製造するときのa)反射率の変化、およびb)曲率の変化を示している。
図8】GaN-on-Siエピウェハを断面図において示している。
図9】表面回復層の成長を開始するときに自己組織化テンプレート上に形成されるピラミッド形状のGaN構造を概略的かつ例示的に示している。
図10】GaN-on-Siエピウェハを製造する方法を表すフロー図を示している。
図11】ウェハキャリアを側断面図において概略的に示しており、ウェハキャリアは、凸形状を有する底面を有するキャリアポケットを有する。
図12】ウェハキャリアを側断面図において概略的に示しており、ウェハキャリアは、実質的に平面状の平坦部を示す底面を有するキャリアポケットを有する。
図13】ウェハキャリアを側断面図において概略的に示しており、ウェハキャリアは、M字型の底面を有するキャリアポケットを有する。
図14】ウェハキャリアを上面図において概略的に示しており、ウェハキャリアは、底面を取り囲む外縁部によって形成されている支持面を有するキャリアポケットを有する。
図15】ウェハキャリアを上面図において概略的に示しており、ウェハキャリアは、支持面のそれぞれの部分を備える三角形状の支持ポストを有するキャリアポケットを有する。
図16】ウェハキャリアを上面図において概略的に示しており、ウェハキャリアは、支持面のそれぞれの部分を備える矩形状の支持ポストを有するキャリアポケットを有する。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1は、マイクロLED構造、またはHEMTなどのパワーエレクトロニクス構造を製造するために使用することのできるGaN-on-Siエピウェハ100を示している。GaN-on-Siエピウェハ100は、シリコンからなる基板102を備える。基板102は、300mmの直径を有する円形の底面領域を有する。しかし、GaN-on-Siエピウェハ100の代替実施形態では、基板102は、150mm以上、好ましくは150mm~450mmの直径を有することもでき、ここで、基板102は、150mm、200mm、300mm、または450mmである半導体技術の標準直径を有することが好ましい。いくつかの実施形態では、基板102は、円形の底面領域を有さず、二次曲線または多角形の底面領域を有してもよい。
【0087】
基板102が完全にシリコンから形成されている必要はないが、GaN-on-Siエピウェハ100の積層方向108に沿った少なくとも基板表面106が、少なくとも部分的にシリコンによって形成されていることが好ましい。例えば、基板表面106のうちシリコンによって形成されていない部分は、SiO、SiON、またはSiOによって形成されていることができる。
【0088】
基板102は、積層方向108に沿った厚さが1mmである。しかし、1mmよりもさらに厚い基板、例えば1.2mm~1.6mmの基板を使用することが有利であり得る。1mm以上の比較的厚い基板を使用することによって、基板102の上に層を成長させるときに、基板102の塑性変形を防止することが可能であり得る。
【0089】
基板102の基板表面106には、自己組織化テンプレート層110および表面回復層114を備える歪み切り離しサブスタック111が配置されている。自己組織化テンプレート層110はAlNからなり、複数のピットおよび転位を含む。特に、自己組織化テンプレート層110は、そのテンプレート表面112において1x10cm-2の密度を有するピットと、1x1010cm-2の全転位密度を有する転位とを有する。転位は、自己組織化テンプレート層110の体積全体内に分布している。比較的高いピット密度および比較的高い全転位密度により、自己組織化テンプレート層110は、比較的低い結晶品質を有する。この低い結晶品質は、表面回復層114との組合せにおいて、シリコン基板102と、積層方向108に沿って歪み切り離しサブスタック111の上に堆積される結晶層との間の格子不整合から生じる歪みの切り離しを意図しており、これをもたらす。シリコン基板102によって誘発される歪みは、自己組織化テンプレート層110におけるピットおよび転位の存在によって実質的に歪みのない表面回復層114において緩和される。歪みの十分な切り離しを得るためには、高いピット密度を有するだけでも可能である。しかし、これに加えて、高い全転位密度を有することにより、歪みの切り離しをさらに改善することが可能である。
【0090】
自己組織化テンプレート層110のピットは、積層方向108に沿って自己組織化テンプレート層110に続く次の結晶層を成長させるための自己組織化テンプレート112を提供する。自己組織化テンプレート112の上に層を成長させるとき、積層方向108に沿って向いた自己組織化テンプレート層の表面に形成されたピットを、ピットが覆われるようにオーバーグローすることができる。ピットをオーバーグローすることにより、表面回復層114において効率的な歪み緩和が達成され、それにより、積層方向108に沿った後続の結晶層が、基板102によって誘発される歪みから切り離される。
【0091】
前述したように、自己組織化テンプレート層110の上には、表面回復層114が配置されている。表面回復層114は、自己組織化テンプレート層110によって提供された自己組織化テンプレート112のピットをオーバーグローすることによって、自己組織化テンプレート層110の上に堆積された。自己組織化テンプレート層110のピットに起因して、表面回復層は最初にピラミッド型成長モードにおいてピラミッド型構造を形成することによって成長するため、表面回復層はピットをオーバーグローし、それにより転位をピラミッドの側面ファセットの方に曲げる。このメカニズムは、表面回復層114が実質的に無歪みであり、後続の結晶層を成長させるための平滑な表面を提供するような、効率的な歪み緩和を可能にする。特に、積層方向108に沿って向いた表面回復層の平滑な表面116には、実質的にピットが存在しない。転位の曲がりおよび消滅を促進するピラミッド形状GaN構造の形成を含むピラミッド型成長モードを最初に適用し、次いで、実質的に平滑な表面116を形成するためのレイヤーバイレイヤー成長モードを適用することによって、例えば、35%を上回る、例えば40%以上の反射率を有する実質的に平滑な表面116を達成することができる。
【0092】
表面回復層114の上、したがって実質的に平滑な表面116の上に、3μmの厚さを有するGaN層120と、10nmの厚さを有するAl0.6Ga0.4N中間層122とを備える歪み調整サブスタック118が堆積される。Al0.6Ga0.4N中間層122のアルミニウム含有量は、60%とは異なっていてもよく、代わりに50%以上であってもよい。さらに、10nmの厚さは、より小さくまたはより大きく、特に5nm~25nmの間で選択することもできる。Al0.6Ga0.4N中間層122のアルミニウム含有量および/または厚さを変えることにより、歪み調整サブスタック118内の歪みを調整することが可能である。すなわち、Al0.6Ga0.4N中間層122を使用することで、歪み調整サブスタック118内の歪みを低減することが可能であり、それにより、積層方向に沿って500nmまたは例えば数マイクロメートル、例えば最大2μmまたは最大5μmの厚さを有する高い結晶品質のGaN層120を成長させることができる。特に、Al0.6Ga0.4N中間層122を使用することで、GaN層120に対する圧縮歪み成分によって、GaNとSiとの間の熱膨張不整合に起因する引張歪みを補正することが可能である。これにより、GaN層120の結晶品質を向上させることができる。
【0093】
歪み調整サブスタック118では、Al0.6Ga0.4N中間層122は、表面回復層114の平滑な表面116の上に直接堆積される。GaN層120は、GaN-on-Siエピウェハ100の積層方向108に沿って、Al0.6Ga0.4N中間層122に続いている。しかしながら、Al0.6Ga0.4N中間層122が積層方向108に沿ってGaN層120の上に堆積されるように、歪み調整サブスタック118がGaN層120から開始することも可能である。
【0094】
歪み調整サブスタック118は、Al0.6Ga0.4N中間層122およびGaN層120のさらなる繰り返しを備えることができる。Al0.6Ga0.4N中間層122およびGaN層120のさらなる繰り返しを有することは、繰り返しごとにそれぞれのGaN層の結晶品質が向上する可能性があるため、有利であり得る。したがって、繰り返しの数は、積層方向108に沿った最も上のGaN層が所望の結晶品質を有するように選択することができる。これらのさらなる繰り返しにおいて、中間層のAl含有量および厚さは、繰り返しごとに変化してもよい。さらなる繰り返しを含むことは、その後の各繰り返しごとに、一般に比較的厚いGaN層となるため、有利であり得る。GaN層が厚いほど、一般にその結晶品質も良好である。したがって、向上した結晶品質を達成するために、比較的厚いGaN層を成長させることがしばしば望まれる。繰り返しのGaNの典型的な厚さは、0.5μm~5μmである。
【0095】
歪み調整サブスタック118は、実質的に歪みのない表面回復層114によって提供される実質的に平滑な表面116上に成長させることができるため、中間層122による特に正確な歪み調整が可能である。したがって、自己組織化テンプレート層110における比較的高いピット密度によって歪みの切り離しを提供する歪み切り離しサブスタック111と、自己組織化テンプレート層110の自己組織化テンプレート112をオーバーグローすることによって形成される表面回復層114におけるそれに続く歪みの緩和が、歪み調整サブスタック118における効率的かつ正確な歪みバランス調整を促進する。歪み調整サブスタック118における歪みバランス調整は、中間層122によってGaN層に圧縮歪みを誘発させて、歪み調整サブスタック118における比較的高い結晶品質のGaN層の成長を可能にすることを含むことができる。
【0096】
さらに、基板からの歪みの切り離しによって歪み調整を正確に行うことができるため、GaN-on-Siエピウェハ100が室温において100μm未満、例えば室温において80μm未満、さらには50μm未満の反りを有することが可能である。室温において最大で100μmという平坦な反りにより、GaN-on-Siエピウェハ100は、±3nm以下、さらには±1nm以下の発光波長均一性を有するマイクロLEDを製造するために適したIII-V族窒化物材料の多重量子井戸構造を作製するのに特に適している。直径が300mm、さらには最大450nmまたは500mmと比較的大きいため、GaN-on-Siエピウェハ100を使用して、高い発光波長均一性を有するマイクロLED構造を比較的高い経済効率で製造することが可能である。
【0097】
図2は、AlNからなる自己組織化テンプレート層200を示している。自己組織化テンプレート層200は、図1を参照しながら説明したGaN-on-Siエピウェハにおける自己組織化テンプレート層を形成することができる。
【0098】
自己組織化テンプレート層200は、そのテンプレート表面210において1x10cm-2~1x1011cm-2のピット密度を有するピット208を有する。ピット208は、GaN-on-Siエピウェハの積層方向206に垂直な方向に、1nm~100nm、特に10nm~50nmの横方向の広がりを有する。特に、自己組織化テンプレート層200のピットは、積層方向206に垂直な方向において200nm~2000nmの平均距離を有し、これは自己組織化テンプレートを提供するのに特に有利である。ピット208によって、積層方向206に沿って向いた自己組織化テンプレート層200のテンプレート表面210により自己組織化テンプレートが提供される。表面回復層のピラミッド型成長モードにおいてピット208をピラミッド型構造でオーバーグローするとき、ピットは材料で充填されずに覆われることができる。あるいは、ピット208は、オーバーグローされるときに、少なくとも部分的に充填され、覆われてもよい。これにより、表面回復層は、歪みなしに、また後続の結晶アイル(crystal aylet)をさらに成長させるための平滑な表面を有するように、成長させることができる。
【0099】
ピット208に加えて、自己組織化テンプレート層200は、10cm-2以上の全転位密度を有する複数の転位212を含む。転位212は、少なくとも70%が積層方向206に対して0度~5度の角度を有する線欠陥を含む。転位210は自己組織化テンプレート層200の体積全体内に分布しているのに対し、ピット208はテンプレート表面210から自己組織化テンプレート層200の体積内に延びている。
【0100】
図3は、多重量子井戸構造またはハイパワーエレクトロニクス構造を備えるLED構造とすることができる活性層構造302を有するGaN-on-Siエピウェハ300を示している。
【0101】
GaN-on-Siエピウェハ300の積層方向304に沿って、GaN-on-Siエピウェハ300は、厚さ1.2mmおよび直径150mmを有するシリコン基板306を備えており、ただしシリコン基板306は、1mm~1.6mmの厚さと、150mm以上、例えば200mmもしくは300mmまたは450mmの直径を有してもよい。シリコン基板306の上には、複数のピット310を含むAl含有層である自己組織化テンプレート層308と、表面回復層312とを備える歪み切り離しサブスタック311が存在する。ピット310を有する自己組織化テンプレート層308は、シリコン基板306と、歪み切り離しサブスタック311の上に堆積されるさらなる窒化物層との間の格子不整合から生じる歪みを切り離す役割を果たす。自己組織化テンプレート層308のピット310は、GaNからなる表面回復層312を成長させるために、積層方向304に沿って面するテンプレート表面に自己組織化テンプレートを形成する。表面回復層312を使用することで、積層方向に沿って転位およびピットの数を大幅に減少させることが可能であり、それにより、表面回復層312の上に歪み調整サブスタック316を成長させるための成長面として使用される実質的に平滑な表面314を提供する。
【0102】
歪み調整サブスタック316は、GaN-on-Siエピウェハ300全体にわたり±3nm以下の比較的高い発光波長均一性を有するマイクロLED構造の製造に使用することができる高品質GaN層318を提供する。また、高品質GaN層318は、HEMT構造などのハイパワーエレクトロニクス構造の製造にも使用することができる。高品質GaN層318を得るために、表面回復層312の上にAlGaN中間層320が堆積される。中間層320のAl含有量および/または厚さを調整することにより、GaN層318の結晶品質を向上させるために、歪み調整サブスタック316内の歪みを調整することが可能である。また、表面回復層312の上に直接GaN層318を成長させ、GaN層318の上に中間層320を成長させることも可能である。この場合、さらなるGaN層が中間層320の上に堆積され、活性層構造302の作製に使用されることが好ましい。
【0103】
図4は、表面回復層406とAlGaN中間層408との間に配置されたGaN層404を有するGaN-on-Siエピウェハ400を示している。図4に示したGaN-on-Siエピウェハ400は、GaN-on-Siエピウェハ400の積層方向402に沿って、図3を参照しながら説明したGaN-on-Siエピウェハ300の基板306に従って構成することのできるシリコン基板403を備える。
【0104】
GaN-on-Siエピウェハ300の歪み切り離しサブスタック311として、歪み切り離しサブスタック411は、歪みを切り離すための自己組織化テンプレート層410および表面回復層412を備える。自己組織化テンプレート層410は、基板403によって誘発される歪みから歪み調整サブスタック414を切り離すことに寄与するピット415を含む。自己組織化テンプレート層410は、自己組織化テンプレート層410の上に表面回復層412を成長させるための自己組織化テンプレート406を提供する。
【0105】
前述したように、表面回復層412によって提供される実質的に平滑な表面413の上に、第1の高結晶品質GaN層404が提供される。第1の高結晶品質GaN層404は、AlGaN中間層408および第2の高結晶品質GaN層416をさらに含む歪み調整サブスタック414の一部である。表面回復層406の上、かつAlGaN中間層408の下に第1のGaN層404を堆積させることにより、AlGaN中間層408のAl含有量および厚さを適宜選択することによって達成される正確な歪み調整によって、第2のGaN層416の結晶品質をさらに向上させることが可能である。第2の高結晶品質GaN層416の上には、例えば、さらに改善された発光波長均一性を有するマイクロLED構造、あるいはHEMT構造などのハイパワーエレクトロニクス構造を実現する活性層構造418が存在する。
【0106】
図5は、歪み切り離しサブスタック500を概略断面図において示しており、歪み切り離しサブスタック500は、シリコン基板506上に配置されたAlNからなる自己組織化テンプレート層504を備える。自己組織化テンプレート層504の上には、GaNからなる表面回復層508が配置されている。
【0107】
自己組織化テンプレート層504には、ピット510が存在する。さらに、自己組織化テンプレート層504には、自己組織化テンプレート層504内を実質的に垂直に延び、表面回復層508内に侵入する転位512が高い転位密度で存在する。表面回復層508では、全転位密度は自己組織化テンプレート層504に比べて著しく減少する。実際には、表面回復層508では、転位502が曲がって消失する、すなわち転位が消滅する。その結果、表面回復層508では、自己組織化テンプレート層504全体にわたる比較的低い結晶品質に比べて、結晶品質が著しく改善される。
【0108】
表面回復層508はGaNからなることができる。表面回復層508は、実質的に歪みがなく、歪み調整サブスタックを作製するための平滑な表面506を提供する。歪み調整サブスタックは、自己組織化テンプレート層504の積層方向508に沿って、第1のAlGaN中間層と、それに続く第1のGaN層と、それに続く第2のAlGaN中間層と、第2のGaN層と、第3のAlGaN中間層と、第3のGaN層とを備えることができる。第1、第2、および第3の中間層は、5nm~25nmの異なる厚さと、少なくとも50%の異なるアルミニウム含有量を有することができる。第1、第2、および第3のGaN層の厚さは、積層方向に沿って増大することができる。同様に、第1、第2、および第3のGaN層の結晶品質は、積層方向508に沿って高まり得る。
【0109】
図6は、GaN-on-Siエピウェハの積層方向に沿って向いた、自己組織化テンプレート層602のテンプレート表面の原子間力顕微鏡(AFM)像600を示している。自己組織化テンプレート層602は、AlNからなる。AFM像600から分かるように、自己組織化テンプレート層のテンプレート表面上に複数のピット604が分布している。ピット604は、自己組織化テンプレート層602内への少なくとも7nmの深さを有する穴によって形成されている。AFM像600において、ピット604は、10nm~100nmの直径を有する比較的暗いスポットによって表されている。自己組織化テンプレート層602のAFM像600では、ピット604は、約10cm-2のピット密度を有する.ピット密度は、単位面積当たりのピットをカウントすることによって得ることができる。ピット間の平均距離は、約500nmであり、隣接するピット間の距離を求め、求めた距離の平均を取ることによって導くことができる。本例では、抜粋部600に重ねられた白丸610によって示されているように、平均距離は約500nmである。いくつかのピット608が自己組織化テンプレート層602のテンプレート表面で結合されていることもある。
【0110】
ピットの分布およびサイズは、基板のSi含有表面を覆っている自然酸化物を除去するためのリアクタにおける酸化物除去条件を調整すること、および、自己組織化テンプレート層を成長させる間の成長条件を調整することによって、制御することができる。特に、酸化物除去条件を比較的均一であるように調整することで、基板のSi含有表面の表面状態も比較的均一になる。次に、自己組織化テンプレート層を、柱状成長によって基板のSi含有表面上に成長させる。これにより、自己組織化テンプレート層を成長させるための成長条件を、成長が均一に行われるように制御して、自己組織化テンプレート層内のピットも比較的均一に分布するように形成することができる。
【0111】
酸化物除去は、H雰囲気中で特に良好に機能することが示されている。自然酸化物を除去するための条件は、数分間にわたり適用することができる。例えば、選択する処理時間が短すぎると、自然酸化物が十分に除去されず、基板上への成長が妨げられることがある。しかし、選択する処理時間が長すぎると、酸化物が除去された後にSi含有表面にHエッチングが作用することにより、基板表面が粗くなることがある。
【0112】
高いピット密度を有する自己組織化テンプレート層を成長させるためには、酸化物が完全に除去されず、基板の表面に自然酸化物が依然として部分的に存在することが有利であることが示されている。これにより、自己組織化テンプレート層のピットの形成を、特に柱状成長によって達成することができる。
【0113】
自己組織化テンプレート層は、50nm~300nm、例えば100nm~200nmの厚さを有するように成長させることが好ましい。AlNの自己組織化テンプレート層の柱状成長は、基板表面上の部分的にのみ除去された自然酸化物によって、および、核形成を妨げる欠陥によって促進され得る。例えば、自然酸化物および欠陥が自己組織化テンプレート層のAlNによって完全にオーバーグローされないことがあり、したがって自己組織化テンプレート層にピットが形成される。いま説明した成長条件の特に有利な点として、自己組織化テンプレート層が実際には非晶質ではなく結晶性であり、1000℃を超える比較的高い基板温度で製造することができる。
【0114】
図7は、上部の図7a)に、GaN-on-Siエピウェハ800を製造するときの反射率の変化を示しており、GaN-on-Siエピウェハ800の一部は図8に概略的に示されている。さらに図7は、下部の図7b)に、GaN-on-Siエピウェハ800を製造する間の曲率の変化を示している。
【0115】
図7a)から分かるように、基板700の反射率は40%を上回る。その後、自己組織化テンプレート層702では反射率が約10%まで低下し、これは、複数のピットおよび欠陥を含む自己組織化テンプレート層702の低い結晶品質に起因すると考えられる。自己組織化テンプレート層702によって達成される、基板700からの歪みの切り離しによって、部分701から分かるように、最終的に基板700の表面と同等の表面品質を有する実質的に平滑な表面を有する表面回復層704における良好な結晶品質の回復が可能になる。表面回復層704は、ピラミッド型成長モードにおいて成長するピラミッド型形成GaN層706を備える。ピラミッド型成長モードでは、表面回復層704の成長は、図9に示したようなピラミッド形状GaN構造900の形成によって開始される。これらのピラミッド形状GaN構造900は、自己組織化テンプレート層702のピットによって提供される自己組織化テンプレート上に形成される。ピラミッド型成長モードでは、ピラミッド型形成GaN層706のピラミッド形状GaN構造900は、自己組織化テンプレートのピットをオーバーグローする。表面回復層704の第1のGaN 706のピラミッド型成長モードは、ピラミッド形状GaN構造900の傾斜したファセット904に向かう転位902の曲がりを促進する。その結果、GaN-on-Siエピウェハ800の積層方向711に沿って表面回復層704において転位密度を著しく低減することができる。結果として、表面回復層704のレイヤーバイレイヤー成長モードにおいて成長したレイヤーバイレイヤー形成GaN層708では、ピット密度が著しく低減され、赤丸701で示したように、回復した平滑な表面が提供される。ピラミッド型成長モードからレイヤーバイレイヤー成長モードに変更するには、レイヤーバイレイヤー成長に適合するように成長パラメータを適宜制御する。
【0116】
いま説明したように、表面回復層704のピラミッド型形成GaN層706を成長させた後、表面回復層704のレイヤーバイレイヤー形成GaN層708を、レイヤーバイレイヤー成長モードにおいて成長させる。レイヤーバイレイヤー形成GaN層708を成長させることにより、破線709によって示したように平滑な表面が著しく回復し、表面回復層704において、赤丸701で示したように40%を超える反射率を有する実質的に平滑な表面が回復する。
【0117】
表面回復層704の平滑な表面上には、AlGaNからなる中間層710が堆積され、GaN-on-Siエピウェハ800の歪み調整サブスタックの一部であるGaN層712に圧縮歪みを誘発させるために使用される。
【0118】
図7b)から推測できるように、表面回復層704の成長中には、水平の破線714で示したように、圧縮歪みは誘発されない。しかし、破線716で示したように、GaN層712には圧縮歪みが誘発される。GaN層712に圧縮歪みを誘発させることにより、GaN-on-Siエピウェハの歪み調整サブスタックの上に活性層構造を成長させている間、比較的大きな反りを達成することが可能である。活性層構造の成長中、大きな反りは、基板を保持するキャリアポケットの底面と基板との間の均一な温度分布を実現できるという利点を有する。この目的のために、キャリアポケットは、凸形状の底面を有するか、または断面視において見たときに上方に湾曲した凸形状の底面部分を備えた底面を有することが好ましい。それにより、キャリアポケットの底面と、大きな反りを有するGaN-on-Siエピウェハとの間に実質的に一定の距離を確立することができる。均一な温度分布は、例えば、InGaNなどのIII-V族窒化物材料からなる量子井戸を備える高品質の活性層構造を成長させるために有利である。特に、InGaNは、GaNよりも温度変化に敏感である。したがって、均一な温度分布を確立することにより、優れた性能を有する、III-V族窒化物材料からなる均一な量子井戸を作製することができる。
【0119】
さらなる利点として、本GaN-on-Siエピウェハは、活性層構造の成長中には比較的大きな反りを有するにもかかわらず、冷却後には、GaN-on-Siエピウェハを薄化した後でも、特に歪みの切り離しにより、室温において最大で100μmという比較的小さい反りを有する。したがって、GaN-on-SiエピウェハをSEMI規格の厚さまで薄化し、均一な電子特性および/または光電子特性を有する活性層構造から、電子デバイスまたは光電子デバイスをさらに加工することが可能である。特に、GaN-on-Siエピウェハ800の薄化後でも室温において比較的平坦な反りのため、GaN-on-Siエピウェハ800は、標準的な半導体処理ラインでさらに処理するための、±3nm以下の比較的良好な発光波長均一性を有する光を放出するマイクロLED構造を実現する活性層構造を提供するのに特に適している。
【0120】
図10は、GaN-on-Siエピウェハを製造する方法を表すフロー図を示している。以下に説明する方法を実施することにより、例えば、図1を参照しながら説明したようなGaN-on-Siエピウェハを得ることができる。
【0121】
本方法では、ウェハを保持するように構成されたウェハキャリアを提供する(ステップS1)。ウェハキャリアはリアクタチャンバ内に提供される。ウェハキャリアは、ウェハを収容するように構成された少なくとも1つのキャリアポケットを有するウェハキャリアボディを備える。キャリアポケットは、ウェハを保持するための支持面と、ウェハの下方にあり、凸形状を有するかまたは凸形状の底面部分を備える底面とを有する。特に、底面は、少なくとも部分的に、支持面によって支持されるウェハに向かって上方に湾曲している。
【0122】
キャリアポケットの支持面上に、直径300mmの円形の底面領域を有する基板を配置する(ステップS2)。あるいは、キャリアポケットは、150mm以上、好ましくは150mm~450mmの直径を有する基板を保持するように設計されていてもよい。ウェハの底面領域は必ずしも円形である必要はない。キャリアポケットは、円形以外の底面領域を有する基板、例えば二次曲線または六角形の底面領域を有する基板を収容するように設計されていてもよい。
【0123】
基板の上に、歪み切り離しサブスタックを作製し、このステップは、エピタキシによって自己組織化テンプレート層を成長させるステップを含む(ステップS3)。自己組織化テンプレート層はAlNからなり、1x10cm-2~1x1011cm-2のピット密度のピットを有するように成長させる。自己組織化テンプレート層は、特に、基板によって誘発される歪みを切り離すとともに、ピットによって自己組織化テンプレートを提供する役割を果たす。基板上に自己組織化テンプレート層を成長させる前に、基板の表面から自然酸化物を少なくとも部分的に除去することができる。自己組織化テンプレート層は、50nm~300nm、さらに好ましくは100nm~200nmの厚さまで成長させることが好ましい。
【0124】
自己組織化テンプレート層のピットによって提供される自己組織化テンプレートの上に、歪み切り離しサブスタックの一部として、表面回復層をエピタキシによって成長させる(ステップS4)。最初にピラミッド型成長モードを採用することにより、表面回復層のピラミッド型GaN層を成長させる。したがってピラミッド型成長モードは、自己組織化テンプレート層の自己組織化テンプレート上に表面回復層を最初に成長させるために特に適用される。ピラミッド型成長モードでは、表面回復層は、ピラミッド形状の構造を形成することによって開始され、ピラミッド形状の構造は寸法が大きくなり、それによって自己組織化テンプレート層のピットを充填する、または充填することなくピットをオーバーグローする。これにより、ピラミッド形状GaN構造中に存在する転位は、傾斜したファセットに向かって曲がり、消滅する。転位の曲がりおよび消滅の結果として、表面回復層の全転位密度は、10cm-2以上のオーダーである自己組織化テンプレート層の全転位密度に比べて著しく減少する。その後、成長パラメータを適宜制御することによって、ピラミッド型成長モードを過渡的成長モードに変更し、過渡的成長モードでは、表面回復層が水平方向および垂直方向に成長する。その後、再び成長パラメータを適宜制御することによって、表面回復層の成長をレイヤーバイレイヤー成長モードに変更する。これにより、表面回復が達成され、例えば基板の反射率に匹敵する反射率によって特徴付けられる、表面回復層の実質的に平滑な表面が得られる。
【0125】
したがって、高いピット密度を有する自己組織化テンプレート層を提供することによって、最初にピットをピラミッド型構造でオーバーグローすることが可能である。ピラミッド型構造によってオーバーグローすることにより、転位が曲がる、かつ/または、転位が積層方向に沿ってさらに伝播することが阻止される。その結果、レイヤーバイレイヤー成長モードを使用して、表面回復層の表面を回復させて、歪み調整サブスタックを成長させるための平滑かつ実質的に歪みのない表面を提供することができる。このように、ピットを形成すること、ピットをオーバーグローすること、転位を側方に曲げることの相互作用によって、基板によって誘発される歪みから切り離されたさらなる結晶層を成長させることができる平滑かつ歪みのない表面を提供することが可能になる。
【0126】
その後、表面回復層の実質的に平滑かつ歪みのない表面の上に、エピタキシによって歪み調整サブスタックを成長させる(ステップS5)。歪み調整サブスタックは、1.5μm~4.0μmの厚さを有するGaN層と、5nm~25nmの厚さを有するAlGa1-xN中間層(x≧0.5)とを備える。中間層のAl含有量および厚さを調整することによって、GaN-on-Siエピウェハの曲率を制御することが可能である。GaN-on-Siエピウェハの曲率の制御は、歪み調整サブスタックのGaN層に誘発される圧縮歪みの量に影響を与える中間層のAl含有量および厚さを調整することによって特に可能である。
【0127】
GaN-on-SiエピウェハからマイクロLED構造を製造するために、最初に、歪み調整サブスタックの上に活性層構造を成長させることができる(任意選択のステップS6)。活性層構造を作製するために、GaN-on-Siエピウェハの比較的大きな反りをもたらすように成長パラメータを制御する。この大きな反りによって、均一かつ高品質の活性層構造を作製することが可能になる。活性層構造は、III-V族窒化物材料の多重量子井戸構造を備えていることが好ましく、動作電圧の印加下で発光するように構成される。
【0128】
歪み調整サブスタックを成長させた後、GaN-on-Siエピウェハを周囲温度まで冷却する(ステップS7)。こうして得られたGaN-on-Siエピウェハは、最大で100μmの平坦な反りを有し、動作電圧の印加下で発光するように構成されたIII-V族窒化物材料の多重量子井戸構造を備えるマイクロLED構造を作製するのに適している。特に、適切に作製されたマイクロLED構造は、±3nm以下の発光波長均一性を有することができる。
【0129】
さらに、活性層構造を有するGaN-on-SiエピウェハからマイクロLED構造を作製するために、GaN-on-Siエピウェハを、基板裏面から開始して活性層構造の下のn型ドープGaN層まで薄化する(任意選択のステップS8)。歪みの切り離しにより、GaN-on-Siエピウェハは、薄化後でも最大で100μmの平坦な反りを維持するため、電子デバイスおよび/または光電子デバイスを製造するための標準的な半導体処理ラインで使用することができる。
【0130】
図11は、ウェハキャリア1100を側断面図において概略的に示している。ウェハキャリア1100は、キャリアポケット1102を有する。キャリアポケット1102は、300mmの直径を有するウェハを収容するように構成されている。あるいは、キャリアポケット1102は、150mm以上、例えば150mm~450mm、特に150mm、200mm、300mm、または450mmのいずれかの直径を有するウェハを収容するように構成されていてもよい。キャリアポケット1102は、1mm以上、例えば1mm~1.5mmの厚さを有するウェハを収容するように構成されている。この目的のために、キャリアポケット1102は、ウェハを支持するための支持面1108を備えている。キャリアポケット1102は、側断面図に見られるように、支持面1108に向かって上方に湾曲している、凸形状を有する底面1104を有する。
【0131】
ウェハキャリア1100は、動作中、すなわちキャリアポケット1102内にGaN-on-Siエピウェハ1106が配置された状態で示されている。GaN-on-Siエピウェハ1106は、支持面1108上に配置されている。GaN-on-Siエピウェハ1106は、図1を参照しながら説明したように構成されており、現在の成長段階では、歪み調整サブスタックの上に配置される活性層構造を有していない。図11に例示的に示した成長段階では、GaN-on-Siエピウェハ1106は、凸状の反りを有する。底面1104は、GaN-on-Siエピウェハ1106の事前定義された反りにおいて、GaN-on-Siエピウェハ1106とキャリアポケット1102の底面1104との間の距離1112が実質的に一定となるように構成された凸形状を有する。言い換えれば、GaN-on-Siエピウェハ1106の事前定義された反りにおいて、GaN-on-Siエピウェハ1106の曲率は、底面1104の凸形状に実質的に対応する。このことは有利であり、なぜならGaN-on-Siエピウェハの下方の熱分布が均一な状態で、歪み調整サブスタックの上に活性層構造を成長させることができるためである。特に、歪み調整サブスタックの上に活性層構造を成長させる間、GaN-on-Siエピウェハ1106の事前定義された反りが維持されるように成長条件を制御する。GaN-on-Siエピウェハ1106が事前定義された反りを有する場合、底面から支持面までの垂直距離は、GaN-on-Siエピウェハ1106の直径に沿って0.05mm~1mm、例えば1mm~0.25mmであることが好ましい。
【0132】
それによって、GaN-on-Siエピウェハ1106の直径に沿って、少なくとも類似する成長条件を確立することが可能であり、これにより、均一な活性層構造、例えば図3または図4を参照しながら説明したような活性層構造を成長させることが可能になる。GaN-on-Siエピウェハ1106の下方の熱分布が均一な状態で成長した活性層構造は、GaN-on-Siエピウェハ1106の直径に沿って実質的に均一な電子的特性および/または光電子的特性を有することができる。このような活性層構造からは、マイクロLEDなどの電子デバイスまたは光電子デバイスを高い歩留まりで製造することができる。例えば、GaN-on-Siエピウェハ1106から、±3nm以下、または±1nm以下の優れた発光波長均一性を示すマイクロLEDを製造することができる。
【0133】
図12は、ウェハキャリア1200を側断面図において概略的に示している。ウェハキャリア1200は、キャリアポケット1202を有する。ウェハキャリア1200は、キャリアポケット1202の底面1204を除いて、図11を参照しながら説明したウェハキャリア1100と同様に構成されている。キャリアポケット1202の底面1204は、キャリアポケット1102の底面1104のように一定に湾曲しているのではなく、底面1204の中央に位置する実質的に平面状の平坦部1216を取り囲む凸状に湾曲した外縁部1214を有する。実質的に平面状の平坦部1216は、キャリアポケット1202の支持面1208と平行である。
【0134】
このようなウェハキャリア1200は、GaN-on-Siエピウェハ1206の中央に位置する実質的に平面状の平坦部1220を取り囲む凸状に湾曲した外縁部1218を同様に示すGaN-on-Siエピウェハ1206の歪み調整サブスタックの上に、活性層構造を成長させるのに有用であり得る。図12には、対応する状況を例示的に示してあり、この場合、ウェハキャリア1200が、キャリアポケットの支持面1208上に配置されており、GaN-on-Siエピウェハ1206の歪み調整サブスタックの上に活性層構造を成長させるために採用される。図12から分かるように、GaN-on-Siエピウェハ1206とキャリアポケット1202の底面1204との間の距離1212が実質的に一定であるように成長条件を制御する。
【0135】
図13は、ウェハキャリア1300を側断面図において概略的に示している。ウェハキャリア1300は、M字形の底面1304を有するキャリアポケット1302を有する。したがって、M字形の底面1304は、底面1304の凹形状の中央部分1316を取り囲む凸形状の縁部1314を備える。
【0136】
図11のウェハキャリア1100および図12のウェハキャリア1200と同様に、ウェハキャリア1300も、動作中、すなわちキャリアポケット1302の支持面1308上にGaN-on-Siエピウェハ1306が配置された状態で示されている。GaN-on-Siエピウェハ1306も、凹形状の中央部分1320を取り囲む外側の凸形状の縁部1318を有するM字形の曲率を有するように、成長条件を制御する。このようなM形状は、特に、例えば300mm以上の大きな直径を有するGaN-on-Siエピウェハ1306を使用するときに、重力に起因して成長中に生じることがある。GaN-on-Siエピウェハ1306の歪み調整サブスタックの上に活性層構造を成長させる間、GaN-on-Siエピウェハ1306とキャリアポケット1302の底面1304との間の距離1312が、GaN-on-Siエピウェハ1306の直径に沿って実質的に一定であるように、成長条件を制御することができる。
【0137】
それぞれ図11図12、および図13を参照して説明したウェハキャリア1100、1200、1300は、GaN-on-Siエピウェハを製造するための、図10を参照しながら説明した方法において使用することができる。
【0138】
図14図15、および図16は、それぞれウェハキャリア1400、1550、および1600を上面図において概略的に示している。ウェハキャリア1400は、底面1404を取り囲む外縁部によって形成されている支持面1408を有するキャリアポケット1402を有する。ウェハキャリア1500は、底面1504を取り囲む支持面のそれぞれの部分を備える三角形状の支持ポスト1508を有するキャリアポケットを有する。三角形状の支持ポスト1508の数は、本例におけるように4つとすることができるが、一般的には3つ以上とすることができる。ウェハキャリア1600は、底面1604を取り囲む支持面のそれぞれの部分を備える矩形状の支持ポスト1608を有するキャリアポケット1602を有する。矩形状の支持ポスト1608の数は、本例におけるように4つとすることができるが、一般的には3つ以上とすることができる。ウェハキャリア1400のように外縁部1408として、またはウェハキャリア1500のように三角形状の支持ポスト1508として、またはウェハキャリア1600のように矩形状の支持ポスト1608として実施された支持面は、ウェハキャリア1100、1200、および1300の各々において、それぞれ支持面1108、1208、および1308を実施するために使用することができる。
【0139】
当業者であれば、特許請求された発明を実施する際に、図面、開示内容、および添付の特許請求の範囲を検討することにより、開示された実施形態に対する他の変形形態を理解して実施することができる。
【0140】
特許請求の範囲において、「備える(comprising)」という語は他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は複数を排除するものではない。
【0141】
特許請求の範囲における参照符号は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【外国語明細書】