(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005664
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】シール剤用ノズル
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20240110BHJP
B05B 1/04 20060101ALI20240110BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B05C5/02
B05B1/04
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105938
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 英治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓也
【テーマコード(参考)】
4F033
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F033AA01
4F033BA03
4F033CA05
4F033DA01
4F033EA01
4F033LA10
4F033LA13
4F033NA01
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA15
4F041BA21
4F041BA34
4F041CA03
4F041CA12
4F041CA18
4F042AA09
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA12
4F042BA15
4F042CB02
(57)【要約】
【課題】粘性を有するシール剤でワークの開口部を封止するときの封止性能に優れたシール剤用ノズル装置を提供する。
【解決手段】ノズル装置10は、粘性を有するシールSでワーク3の開口部4を封止するのに用いるシール剤用ノズル装置であり、シール剤Sが流入する流入口31と開口部4の開口径を上回る開口幅を有する幅広形状の吐出口32とシール剤Sを流入口31から吐出口32まで流通させる内部空間33とを有するノズル30を備え、ノズル30は、内部空間33が吐出口32を上回る流路断面積を有する滞留領域となるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性を有するシール剤でワークの開口部を封止するのに用いるシール剤用ノズル装置であって、
上記シール剤が流入する流入口と、上記開口部の開口径を上回る開口幅を有する幅広形状の吐出口と、上記シール剤を上記流入口から上記吐出口まで流通させる内部空間と、を有するノズルを備え、
上記ノズルの上記内部空間は、上記吐出口の開口面積を上回る流路断面積を有する滞留領域である、シール剤用ノズル装置。
【請求項2】
上記ノズルの上記内部空間は、上記吐出口の開口高さ方向からみたとき、上記流入口側から上記吐出口側に向かうにつれて上記吐出口の開口幅方向の外方に湾曲凸状に拡張されている、請求項1に記載のシール剤用ノズル装置。
【請求項3】
上記ノズルは、上記内部空間を隔てて開口高さ方向に互いに対向する2つの内壁面を有し、上記2つの内壁面には互いに平行に配置された出口平面部が設けられている、請求項1または2に記載のシール剤用ノズル装置。
【請求項4】
上記ノズルは、上記吐出口において上記2つの内壁面のうちの一方が他方よりも上記シール剤の吐出方向に突出するように構成されている、請求項3に記載のシール剤用ノズル装置。
【請求項5】
上記ノズルは、上記内部空間に設けられた複数の整流片を有し、上記複数の整流片はいずれも上記吐出口に向けて延びており且つ上記吐出口の開口幅方向に間隔を隔てて配置されている、請求項1または2に記載のシール剤用ノズル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール剤に用いるノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体などのワークには、電着塗料抜き目的の開口孔や、部材の溶接用位置決めに使用される開口孔など、種々の開口部が設けられている。これらの開口部を通じて雨水や塵埃及び音などが侵入するのを防止するために、樹脂材料やゴム材料などからなる弾性変形可能なプラグと称される封止部品が用いられる。この封止部品をワークの開口部に押し込んで嵌め込むことによって開口部が封止される。
【0003】
封止部材を異なる径の開口部に対して使用する場合、予め複数種類の封止部材を準備する必要があり、封止部材に要する部品コストが高くなるという問題や、封止部材の種類の増加に伴って使い分けが必要になるという問題が生じ得る。そこで、本発明者は、このような問題に対処するために、粘性を有するシール剤をワークの開口部に向けて吐出して開口部を封止する技術について鋭意検討した。シール剤で開口部を封止することができれば、異なる径の開口部に対して予め複数種類の封止部材を準備する必要がなく、開口部の封止に要する施工コストを低く抑えることができるという利点がある。とりわけ、自動車の車体には多種多様な形状の開口部が設けられており、車体の開口部を封止部材に代えてシール剤で封止することができれば得られる利点が大きい。
【0004】
下記特許文献1には、この種の技術に関する粘性液吐出ノズルが開示されている。この粘性液吐出ノズルは、粘性液を床面などの広い平面に対して均一に塗布するためのものであり、ポンプで圧送された粘性液が流入する流入口と、この流入口の下流側に設けられた筒状の室と、この室から粘性液を下向きに流出するために室の幅方向に間隔を空けて設けられた多数の穴と、を有するノズル本体部を備えている。この粘性液吐出ノズルによれば、加圧状態の粘性液が粘性液吐出ノズルの多数の穴から下向きに吐出されることにより床面に塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の粘性液吐出ノズルは、開口部のないワークの表面に粘性液を単に塗布することを想定したものである。このため、この粘性液吐出ノズルで粘性液のようなシール剤を吐出してワークの開口部を封止するような場合には、ノズルの各穴に相当する領域と隣接する2つの穴の間の領域との間で生じるシール剤の吐出圧力の圧力差が要因で、シール剤の同一断面における吐出圧力を概ね均一するのが難しくなる。このように吐出圧力が不均一である場合、吐出後のシール剤の断面形状を一定に維持することができず、シール剤がワークの塗布面に一旦付着した後で剥離するという現象や、シール剤がワークの開口部に入り込んで凹み形状を形成するという現象や、開口部が貫通穴であるときにはシール剤が貫通穴を突き破るという現象が起こり得る。その結果、シール剤で開口部が封止された後のワークの外観上の見栄えが悪くなったり、シール剤の膜厚強度の低下によって開口部のシール性能が低下したりすることが懸念される。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、粘性を有するシール剤でワークの開口部を封止するときの封止性能に優れたシール剤用ノズル装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
粘性を有するシール剤でワークの開口部を封止するのに用いるシール剤用ノズル装置であって、
上記シール剤が流入する流入口と、上記開口部の開口径を上回る開口幅を有する幅広形状の吐出口と、上記シール剤を上記流入口から上記吐出口まで流通させる内部空間と、を有するノズルを備え、
上記ノズルは、上記内部空間が上記吐出口を上回る流路断面積を有する滞留領域となるように構成されている、シール剤用ノズル装置、
にある。
【発明の効果】
【0009】
上述の態様のシール剤用ノズル装置において、粘性を有するシール剤は流入口を通じてノズルに流入する。その後、このシール剤は、ノズルの内部空間を流入口側から吐出口側に向けて流れたのちに幅広形状の吐出口を通じて外部に吐出される。このとき、ノズルの内部空間は、吐出口の開口面積を上回る流路断面積を有する滞留領域とされている。それゆえ、シール剤をノズルの内部空間で一時的に滞留させつつその流れを吐出口で絞った状態で吐出させることができる。
【0010】
これにより、ノズルの吐出口から吐出されるシール剤の圧力が開口全面にわたって概ね均一となるようにしてシール剤の吐出状態を安定させることができ、吐出後のシール剤の断面形状を概ね一定にすることができる。また、ノズルの吐出口を幅広形状とすることで、シール剤の膜厚を安定させた状態でワークの開口部を封止できる。これにより、シール剤をワークの開口部の周辺の塗布面に均一に付着させることができ、シール剤がワークの開口部に入り込んで凹み形状を形成するのを防ぐことができる。
【0011】
以上のごとく、上述の態様によれば、粘性を有するシール剤でワークの開口部を封止するときの封止性能に優れたシール剤用ノズル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1にかかる封止設備の全体構成を示す側面図。
【
図2】シール剤のチクソ特性について説明するための図。
【
図9】
図8のノズルの先端部を拡大して示す部分断面図。
【
図13】実施形態2のノズルの先端部の
図9に対応した部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0014】
上述の態様のシール剤用ノズル装置において、上記ノズルの上記内部空間は、上記吐出口の開口高さ方向からみたとき、上記流入口側から上記吐出口側に向かうにつれて上記吐出口の開口幅方向の外方に湾曲凸状に拡張されているのが好ましい。
【0015】
このシール剤用ノズル装置によれば、ノズルの内部空間の開口幅方向の両側を外方に向けて湾曲凸状とすることにより、内部空間においてシール剤の流れを開口幅方向の外方に拡散させた拡散流を形成させることができ、内部空間のうち開口幅方向の中央部分とその両側部分との間に生じるシール剤の流速差を小さく抑えることができる。
【0016】
上述の態様のシール剤用ノズル装置において、上記ノズルは、上記内部空間を隔てて開口高さ方向に互いに対向する2つの内壁面を有し、上記2つの内壁面には互いに平行に配置された出口平面部が設けられているのが好ましい。
【0017】
このシール剤用ノズル装置によれば、ノズルにおいて開口高さ方向に互いに対向する2つの内壁面に出口平面部を設けることにより、シール剤が吐出方向に沿って直線的に吐出されるようにシール剤の流れを規制しガイドすることができる。これにより、吐出後のシール剤が開口高さ方向に拡散するのを抑制する方向に作用する。その結果、シール剤の形状を維持するとともにシール剤の指向性を高めることができる。
【0018】
上述の態様のシール剤用ノズル装置において、上記ノズルは、上記吐出口において上記2つの内壁面のうちの一方が他方よりも上記シール剤の吐出方向に突出するように構成されているのが好ましい。
【0019】
このシール剤用ノズル装置によれば、ノズルの吐出口から吐出されたシール剤は、2つの内壁面のうち突出方向にはみ出すように設けられている方の内壁面にのみ追従して流れる。このため、シール剤は、本来の吐出方向から、相対的に突出している内壁面側に偏向した偏向方向に方向を変えて流れる。したがって、ノズルの吐出口から吐出されたシール剤が流れる方向を吐出方向から偏向方向に変更することができる。
【0020】
上述の態様のシール剤用ノズル装置において、上記ノズルは、上記内部空間に設けられた複数の整流片を有し、上記複数の整流片はいずれも上記吐出口に向けて延びており且つ上記吐出口の開口幅方向に間隔を隔てて配置されているのが好ましい。
【0021】
このシール剤用ノズル装置によれば、ノズルの内部空間に複数の整流片を設けることにより、内部空間で生じるシール剤の流れを整えることができる。したがって、シール剤をその流速を概ね均一にした状態でノズルの吐出口から吐出させることができ、シール剤の同一断面における吐出圧を概ね均一にすることができる。その結果、シール剤がワークの塗布面に一旦付着した後で剥離して垂れ下がったりワークの開口部に入り込んだりするのを抑制することができ、シール剤で開口部が封止された後のワークの外観上の見栄えが悪くなるのを防ぐことができる。
【0022】
以下、自動車の車体の一部を、便宜上、ワークと称し、このワークに設けられた開口部を封止する技術の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0023】
なお、本形態を説明するための図面では、特にことわらない限り、水平方向である第1方向を矢印Xで示し、第1方向Xと直交する上下方向である第2方向を矢印Yで示し、第1方向Xと第2方向Yの両方と直交する第3方向を矢印Zで示すものとする。
【0024】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1にかかる封止設備1は、車体2を構成するワーク3の水平面に開口形成されている開口部4を封止するためのものである。ここで、ワーク3として、典型的には、車体2のアンダーボディを構成するメンバーやリーンフォースなどの基材が挙げられる。
【0025】
開口部4をシール剤で封止する作業において、ワーク3は第1方向Xに概ね水平に延在するように予め配置される。開口部4として、典型的には、開口孔、貫通孔、凹部をはじめ、段差やギャップなどによって形成される空間(例えば、2つの段差面と、2つの段差面を繋ぐ立面と、によって区画される空間)などが挙げられる。本形態では、平面視の形状が円形である貫通孔(開口径d)を開口部4として例示している。
【0026】
(封止設備1の全体構成)
封止設備1は、その構成要素として、ノズル装置10と、ポンプ11と、供給管12と、ノズルガイド40と、シリンダ装置60と、ロボット70と、制御装置80と、を備えている。
【0027】
実施形態1のノズル装置10は、粘性を有するシール剤Sでワーク3の開口部4を封止するのに用いるシール剤用ノズル装置であり、ロボット70に取り付けられて駆動される。このノズル装置10は、供給管12を介してポンプ11に接続されている。シール剤Sは、流動性のある樹脂系のものである。ポンプ11は、このシール剤Sを高圧化して吐出するように構成された既知の流体吐出用のポンプである。このポンプ11は制御装置80に電気的に接続されている。このポンプ11で加圧されたシール剤Sは、供給管12を通じてノズル装置10まで圧送され、このノズル装置10から外部へ吐出される。
【0028】
ノズル装置10は、流入管部20と、ノズル30と、を有する。流入管部20は、供給管12の下流側端部に接続されている。この流入管部20は、断面形状が円形である流路を有する。ノズル30は、流入管部20の下流側端部に接続されている。このノズル30は、シール剤Sが流入する流入口31と、吐出口32と、シール剤Sを流入口31から吐出口32まで流通させる内部空間33と、を有する。本形態のノズル30において、流入口31は円形であり、吐出口32は幅広のスリット形状になっている。
【0029】
ノズルガイド40は、ノズル30に取り付けられる。このノズルガイド40には、ノズル30に対する取り付け位置を調整可能な調整機構部50が設けられている。また、このノズルガイド40は、シリンダ装置60を介してロボット70のロボットアーム71のアーム先端部72に固定されている。したがって、ノズル装置10は、ノズルガイド40及びシリンダ装置60を介してロボットアーム71によって間接的に保持されている。
【0030】
シリンダ装置60は、流体であるエアの圧力を利用してノズルガイド40を駆動するエアシリンダ装置である。このシリンダ装置60は、制御装置80に電気的に接続されている。このシリンダ装置60によれば、ノズルガイド40の昇降動作を行うことによってノズルガイド40に対するノズル装置10の相対位置を変更することができる。
【0031】
ロボット70は、ロボットアーム71に複数の駆動軸が設けられた多軸ロボットとして構成されている。このロボット70は、制御装置80に電気的に接続されている。このロボット70において、ロボットアーム71のアーム先端部72の位置及び姿勢が制御される。
【0032】
制御装置80は、既知のCPU、メモリ、入出力部等によって構成されている。この制御装置80は、ロボット制御部81と、ポンプ制御部82と、シリンダ制御部83と、を備えている。
【0033】
ロボット制御部81は、ロボット70を制御する機能を有する。このロボット制御部81によれば、ロボットアーム71のアーム先端部72が予め教示された移動軌跡にしたがって動くようにロボット70が制御される。これにより、ノズル装置10の位置及び姿勢が所望の状態となるように調整される。
【0034】
ポンプ制御部82は、ポンプ11を制御する機能を有する。このポンプ制御部82によれば、ノズル装置10に供給されるシール剤Sの供給流量が制御される。
【0035】
シリンダ制御部83は、シリンダ装置60を制御する機能を有する。このシリンダ制御部83によれば、シリンダ装置60を制御することによって、ワーク3とノズル装置10の相対位置を調整することができる。
【0036】
上記構成の封止設備1を使用する場合、制御装置80のロボット制御部81からロボット70に制御信号を出力してロボットアーム71のアーム先端部72の位置及び姿勢を調節する。これにより、ノズル装置10をワーク3にその下方から近づけることができる。このとき、ノズル装置10は、ノズル30の吐出口32がワーク3の開口部4の周辺領域に向かうように上向きに配置される。
【0037】
(シール剤Sの特性)
シール剤Sとして、典型的には、常温下で流動性を有し、常温下で塗布後の形状を保持するための静置粘度を有する、樹脂(例えば、塩化ビニール等の樹脂)系のシール剤が使用される。このシール剤Sは、常温下での静置粘度相当である、せん断速度が4.2[s-1]のときの粘度が120[Pa.s]以上であるのが好ましい。さらに、このシール剤Sは、常温下での流動性向上のためチクソ特性を有するのが好ましい。ここでいう「常温」として、典型的には、20~30[℃]の範囲内の温度が挙げられる。
【0038】
図2に示されるように、シール剤Sの「チクソ特性」とは、剪断速度の低下に伴って粘度が低下する特性をいう。このようなチクソ特性によれば、シール剤Sの剪断速度が相対的に高い領域ではそのシール剤Sの粘度が低くなる一方で、シール剤Sの剪断速度が相対的に低い領域ではそのシール剤Sの粘度が高くなる。
【0039】
シール剤Sがチクソ特性を有する場合、ノズル装置10からの吐出時にポンプ11による吐出圧がかかることでノズル装置10内のシール剤Sが流動しシール剤Sのせん断速度が高くなる。このとき、シール剤Sの粘度が一時的に低くなるため、このシール剤Sの一定レベルの流動性を維持できる。したがって、ノズル装置10におけるシール剤Sの吐出性能を向上させることができる。
【0040】
また、シール剤Sがノズル装置10から吐出されてワーク3に付着した付着時においては、シール剤Sに外力が作用しないため、吐出時に比べてシール剤Sの剪断速度が低くなる。このとき、チクソ特性を有するシール剤Sはその粘度が高くなるため、シール剤Sの所望の付着性能と形状維持性能を確保することができる。すなわち、ワーク3に一旦付着したシール剤Sは、ワーク3から剥がれたり垂れ落ちたりする現象が起こりにくい。
【0041】
せん断速度が4.2[s-1]のときの粘度が120[Pa.s]以上であるシール剤Sは、さらにチクソ特性を有する場合、シール剤Sを吐出するのに汎用性に高い安価なポンプ11を使用することが可能になる。これにより、封止方法を実行するための封止設備1に要するコストを低く抑えることができる。
【0042】
ノズル装置10からシール剤Sを吐出するようにすれば、作業者がワーク3の開口部4まで手を伸ばすことなく封止作業を行うことができ作業者の負担を抑えることができる。また、シール剤Sの吐出条件を変更することで、ワーク3における開口部4の位置、大きさ、形状等に応じた封止作業が可能になる。ワーク3に凹凸がある場合でも影響を受けることなく封止作業を行うことができる。さらに、プラグのような封止部品を開口部4の種類ごとに準備して使用する必要がないため、多種類の封止部品が不要であり、封止部品の部品コストを削減することができる。
【0043】
(ノズルガイド40の構造)
図3に示されるように、ノズルガイド40は、接続部材21及び流入管部20を介してノズル30に間接的に取り付けられている。ノズルガイド40は、ノズル30が取り付けられた状態でこのノズル30の吐出口32側に延出する延出部41を備える。この延出部41は、第3方向Zを左右方向としたとき、左右方向に離間して設けられた2つのガイドアーム42と、ガイドローラ43と、接続部材44と、を有する。
【0044】
図3及び
図4に示されるように、ガイドローラ43は、各ガイドアーム42の延出先端部42aに設けられた回転軸42bを中心に回転可能に支持されている。各ガイドローラ43は、ノズルガイド40がノズル30に取り付けられた状態で、このノズル30の吐出口32よりも吐出方向E1に常時に突出する突出部としての外周部43aを有する。これにより、ワーク3の開口部4をシール剤Sで封止するときに、ガイドローラ43の外周部43aがワーク3の塗布面3aに押し当てられると、ワーク3の塗布面3aとノズル30の先端部30aとの間に一定の間隔L(
図4を参照)を物理的に確保できる。
【0045】
本形態によれば、ガイドローラ43の外周部43aがワーク3の塗布面3aに押し当てることで間隔Lが一義的に定まるため、間隔調整のためにロボットアーム71のアーム先端部72の位置を微調整する等の工数を要しない。また、本形態によれば、上記間隔Lを調整するのに、電子機器センサー類を使用しなくて済む。これにより、電子機器センサー類を使用する場合に比べて、メンテナンス性を向上させることができ、簡単な構造により装置コストを低く抑えることができるという利点がある。
【0046】
本形態では、ノズルガイド40は、2つのガイドローラ43がノズル30を間に挟んで第3方向Zの両側に配置されるように構成されている。本構成によれば、ワーク3の塗布面3aとノズル30の先端部30aとの間の間隔Lを物理的に一定に維持した状態で、ノズル30の送り方向E2(
図5を参照)の動きを安定させることができる。それゆえ、簡単な構造を利用してシール剤Sによるワーク3の開口部4の所望の封止品質を得ることが可能になる。
【0047】
図3及び
図4に示されるように、接続部材44は、延出部41の2つのガイドアーム42を接続している。したがって、接続部材44は、ノズルガイド40側の部材とされている。この接続部材44は、調整機構部50を介してプレート部材22に取り付けられている。プレート部材22は、ノズル装置10の流入管部20に接続部材21を介して接続されている。したがって、プレート部材22は、ノズル装置10と一体のノズル装置10側の部材とされている。
【0048】
図5に示されるように、延出部41の各ガイドローラ43は、ワーク3の塗布面3aに押し当てられた状態でノズルガイド40が開口部4を横切る送り方向E2に移動することに伴って、塗布面3aを転動するように構成されている。このため、ノズルガイド40は、ガイドローラ43が塗布面3aを転動することでノズル30の吐出口32と塗布面3aとの間隔L(
図4を参照)を一定に維持するように構成されている。本構成によれば、ノズル30の先端部30aがワーク3の塗布面3aに接触するのを回避できるとともに、ガイドローラ43と塗布面3aとの間に生じる抵抗を低く抑えることができ、ワーク3の塗布面3aがノズル30やノズルガイド40によって傷付けられるのを防ぐことができる。なお、更なる対策として、ガイドローラ43に傷付き防止用の保護フィルムを貼付するようにしてもよい。
【0049】
また、本形態のノズルガイド40は、延出部41の各ガイドローラ43をワーク3の塗布面3aに押し当てた状態で押し当て部43bを支点として塗布面3aに対する吐出口32の吐出角度αが変わる回動方向E3に回動可能となるように構成されている。本構成によれば、ノズルガイド40を回動方向E3に回動させることにより、ノズル30の吐出口32の吐出角度αを任意に変えることができる。
【0050】
なお、本形態では、吐出口32の吐出角度αが概ね70°から90°までの範囲に入るようにノズル30の向きを固定するのが好ましい。このときの吐出角度αは、シール剤Sの吐出方向E1と第1方向Xとのなす角度として定義される。ノズル30をワーク3の開口部4の開口平面に対して傾斜させた状態で固定しそのまま送り方向E2に移動させると、シール剤Sがワーク3の塗布面3aに付着する際のシール剤Sの供給バランスの調節が容易になる。
【0051】
(調整機構部50の構造)
図3及び
図4に示されるように、調整機構部50は、ノズル30に対するノズルガイド40の取り付け位置を調整可能とするものである。この調整機構部50は、ガイド穴51,52(
図3を参照)と、ネジ穴53,54(
図4を参照)と、締結部材55,56(
図3及び
図4を参照)と、を備えている。これらの図面は、接続部材44とプレート部材22の第2方向Yの相対位置の調整を可能し且つ第3方向Zの相対位置の調整を可能とする機能を概念的に説明するという主旨のもと、調整機構部50の構造をあくまで便宜的に示すものである。このため、調整機構部50を実際に設計する際は、その詳細な構造について既知の位置調整構造を適宜に参考することが好ましい。
【0052】
図3に示されるように、ガイド穴51,52は、ノズル装置10側の部材であるプレート部材22に設けられている。2つのガイド穴51はいずれも、第3方向Zを長手方向とする横長状の長穴である。これら2つのガイド穴51は、間隔を隔てて第3方向Zに並置されている。これに対して、2つのガイド穴52はいずれも、第2方向Yを長手方向とする縦長状の長穴である。これら2つのガイド穴52は、間隔を隔てて第3方向Zに並置されている。
【0053】
図4に示されるように、ネジ穴53,54は、ノズルガイド40側の部材である接続部材44に設けられている。2つのネジ穴53は、間隔を隔てて第3方向Zに並置されている。同様に、2つのネジ穴54は、間隔を隔てて第3方向Zに並置されている。
【0054】
図3及び
図4に示されるように、2つの締結部材55はいずれも、プレート部材22のガイド穴51を通じて接続部材44のネジ穴53に螺合するネジ軸55aを有する。同様に、2つの締結部材56はいずれも、プレート部材22のガイド穴52を通じて接続部材44のネジ穴54に螺合するネジ軸56aを有する。
【0055】
上記構成の調整機構部50において、接続部材44とプレート部材22との第3方向Zの相対位置を調整するときには、2つの締結部材56を使用せずに取り外して2つの締結部材55のみを使用する。2つのガイド穴51を利用して接続部材44とプレート部材22を第3方向Zに相対移動させたうえで、各締結部材55のネジ軸55aを対応するネジ穴53に螺合させて接続部材44とプレート部材22を締結固定する。これにより、接続部材44とプレート部材22の第3方向Zの相対位置を調整できる。
【0056】
また、上記構成の調整機構部50において、接続部材44とプレート部材22との第2方向Yの相対位置を調整するときには、2つの締結部材55を使用せずに2つの締結部材56のみを使用する。2つのガイド穴52を利用して接続部材44とプレート部材22を第2方向Yに相対移動させたうえで、各締結部材56のネジ軸56aを対応するネジ穴54に螺合させて接続部材44とプレート部材22を締結固定する。これにより、接続部材44とプレート部材22の第2方向Yの相対位置を調整できる。
【0057】
上記構成の調整機構部50によれば、特に、接続部材44とプレート部材22との第2方向Yの相対位置を調整することによって、ワーク3の塗布面3aとノズル30の先端部30aとの間の間隔L(
図4を参照)を任意に調整することが可能になる。
【0058】
なお、上記構成の調整機構部50では、その変更例として、プレート部材22にネジ穴53,54を設け、接続部材44にガイド穴51,52を設けるようにしてもよい。また、ガイド穴51とネジ穴53と締結部材55の組み合わせと、ガイド穴52とネジ穴54と締結部材56の組み合わせと、のいずれか一方が省略されてもよい。また、必要に応じて、調整機構部50自体を省略した構造を採用することもできる。
【0059】
(シリンダ装置60の構造)
図3に示されるように、シリンダ装置60は、圧縮性流体であるエアの圧力を利用してノズル30を駆動するための装置である。このシリンダ装置60は、ピストン61aを第2方向Yに往復動可能に収容するシリンダ61と、ロッド62と、プレート部材22に接合され且つロッド62を介してシリンダ61に取り付けられた可動部材63と、を備えている。このシリンダ装置60は、シリンダ61内のエアの圧力を制御してピストン61aを第2方向Yに動かすことによって、ノズル30をノズルガイド40とともに一体的に第2方向Yに駆動させることができるようになっている。
【0060】
上記構成のシリンダ装置60によれば、ワーク3の塗布面3aに対するノズル30の吐出口32の位置を適宜に調整することができる。また、ノズルガイド40のガイドローラ43がワーク3の塗布面3aに押し当てられた状態で、ワーク3側から伝わる振動をシリンダ装置60のシリンダ61内のエアの圧縮性により吸収することができる。このため、シリンダ装置60は、ノズル30をエアの圧力を利用して駆動する本来の機能と、ノズル30の振動をエアの圧縮性によって吸収する振動吸収機構部としての機能と、を兼務している。
【0061】
なお、上記構成のシリンダ装置60では、作動油のようなエア以外の流体を利用してノズル30を駆動するようにしてもよい。また、ノズル30の振動を吸収可能な弾性部材やクッション材(緩衝材)などをシリンダ装置60とは別に新たに設けるようにしてもよいし、或いはシリンダ装置60に代えて設けるようにしてもよい。また、必要に応じて、シリンダ装置60自体を省略し、ロボットアーム71のアーム先端部72をプレート部材22に直に固定した構造を採用することもできる。
【0062】
(開口部4の封止操作)
ワーク3の開口部4を封止するときには、ロボット70のロボットアーム71を制御してノズル装置10のノズル30を送り方向E2に移動させる。これにより、ワーク3の開口部4の封止作業の自動化及び高速化を図ることが可能になる。このとき、ノズル30は、その吐出口32とワーク3の塗布面3aとの間の間隔Lと、その吐出口32の吐出角度αと、シール剤Sの吐出圧力を、ともに一定に維持した状態で送り方向E2に移動する。
【0063】
このため、ワーク3の開口部4の封止操作では、ノズル30は、その吐出口32から吐出方向E1に一定の吐出角度αでシール剤Sを吐出してワーク3に付着させ且つその吐出状態を継続したままで送り方向E2に移動する。これにより、ワーク3に対する初期の付着点から延びているシール剤Sで開口部4を塞いで良好に樹脂封止することができる。なお、間隔L、吐出角度α及び吐出圧力は、開口部4の封止テストを予め実施したうえで、開口部4を良好に封止できる値に適宜に設定されるのが好ましい。
【0064】
(ノズル30の構造)
図6に示されるように、実施形態1のノズル30は、幅広ノズルであり、開口幅方向N2の開口幅wが開口高さ方向N1の開口高さhを上回る幅広形状の吐出口32を有する。また、このノズル30の吐出口32は、その開口高さhが目標とする設定膜厚相当もしくはそれ以下であり、且つその開口幅wがワーク3の開口部4の開口径d(
図1を参照)を上回るように形成されている。ここで、開口高さ方向N1と開口幅方向N2はいずれもノズル30の長手方向N3と直交する方向である。
【0065】
例えば、ノズル装置10をノズル30の吐出口32が上向きになるように配置した場合、シール剤Sは、ワーク3の開口部4を覆うことができる幅で吐出口32から連続的に吐出されて帯状になる。このとき、シール剤Sは、吐出後に重力の影響を受けるとその吐出先端側が垂れ下がるように湾曲する。
【0066】
ノズル30の吐出口32の開口高さhが吐出後の帯状のシール剤Sの厚みに概ね相当することになるため、ワーク3の開口部4のシール厚みが概ね一定となるように制御するのに有効である。このとき、ワーク3のうち開口部4とその周辺にシール剤Sを拡散させずにムラ無く付着させることで、開口部4のシール性能を高めることができる。
【0067】
開口部4の開口径dの値は特に限定されるものではないが、一般的な車体2には、φ10程度の開口径dの開口部4をはじめ、φ10からφ25までの開口径dの開口部4が比較的多く設けられている。対象となる開口部4の開口径dに応じて、ノズル30の吐出口32の開口幅wが定まる。開口幅wよりも開口径dが小さいときに開口部4をシール剤Sで塞ぐことができる。
【0068】
なお、開口部4は、その平面視の形状が円形以外(例えば、楕円形、多角形などの形状)であってもよい。この場合には、開口径dを開口部4の最大開口径と読み替えて、ノズル30の吐出口32を、その開口高さhが目標とする設定膜厚相当もしくはそれ以下であり、且つその開口幅wが最大開口径以上となるように構成することができる。
【0069】
図7に示されるように、ノズル30は、その内部空間33の開口幅方向N2を区画する2つの内壁面33a,33bを有する。2つの内壁面33a,33bは、内部空間33を隔てて開口幅方向N2に互いに対向する壁面である。2つの内壁面33a,33bは、流入口31から吐出口32までの間で開口幅方向N2の外側に向けて膨らんだ曲線形状をなしている。2つの内壁面33a,33bをこのような曲線形状にすることにより、シール剤Sを内部空間33で開口幅方向N2に拡散させた状態で滞留させ易くなる。
【0070】
図9に示されるように、ノズル30は、その内部空間33の開口高さ方向N1を区画する2つの内壁面34,35を有する。2つの内壁面34,35は、内部空間33を隔てて開口高さ方向N1に互いに対向する壁面である。2つの内壁面34,35は、流入口31から吐出口32までの間で直線形状をなしている。
【0071】
図7に示されるように、ノズル30を開口高さ方向N1からみたとき、その内部空間33は、流入口31側から吐出口32側に向かうにつれて開口幅方向N2の寸法が徐々に拡張されている。内部空間33は、流入口31側から吐出口32側に向かうにつれて開口幅方向N2の外方に湾曲凸状に拡張されている。また、
図8及び
図9に示されるように、ノズル30を開口幅方向N2からみたとき、その内部空間33は、流入口31側から吐出口32側に向かうにつれて開口高さ方向N1の寸法が徐々に縮小されている。
【0072】
このため、ノズル30は、その内部空間33が吐出口32を上回る流路断面積を有する滞留領域となるように構成されている。すなわち、
図10に示されるように、吐出口32の開口面積Paと内部空間33の流路断面積Pbを比べると、開口面積Paよりも流路断面積Pbの方が大きくなっている。なお、流路断面積Pbは、吐出方向E1を法線方向とする流路断面の面積とされる。
【0073】
図8及び
図9に示されるように、ノズル30の内部空間33のうちの先端部30a側には、複数の整流片36,37が設けられている。複数の整流片36,37はいずれも開口幅方向N2を板厚方向とする板状部であり、長手方向N3(シール剤Sの流通方向)に沿って吐出口32に向けて延びている。なお、整流片36,37の数及び形状については特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更可能である。
【0074】
図11に示されるように、整流片36は、内壁面35側を基端として内壁面34に向けて上向きに突出しており、且つ内壁面34との間に隙間を形成するように設けられている。これに対して、整流片37は、内壁面34側を基端として内壁面35に向けて下向きに突出しており、且つ内壁面35との間に隙間を形成するように設けられている。そして、整流片36と整流片37は、間隔38を隔てて開口幅方向N2に交互に配置されている。整流片36内壁面34との間に隙間を設け、整流片37と内壁面35との間に隙間を設けることによって、内部空間33におけるシール剤Sの流れが整流片36,37によって複数の流れに分断されるのを抑制することができる。また、整流片36と整流片37を交互に配置すれば、吐出口32に向かうシール剤Sの流れが開口高さ方向N1の上側或いは下側に偏るのを抑制するのに有効である。
【0075】
図9に示されるように、ノズル30の2つの内壁面34,35には、互いに平行に配置された出口平面部34a,35aが設けられている。出口平面部34aは、内壁面34のうち吐出口32との境界領域に形成された平面部である。出口平面部35aは、内壁面35のうち吐出口32との境界領域に形成された平面部である。ノズル30に出口平面部34a,35aを設けることにより、シール剤Sが吐出方向E1に沿って直線的に吐出されるようにシール剤Sの流れを規制しガイドすることができる。これにより、吐出後のシール剤Sが開口高さ方向N1に拡散するのを抑制することができる。出口平面部34a,35aを設けると、吐出後のシール剤Sの形状を維持するとともに、そのシール剤Sの指向性を高めるのに有効である。
【0076】
ここで、
図12を参照しつつノズル30の内部空間33におけるシール剤Sの流れについて説明する。
【0077】
図12に示されるように、流入口31の形状が円形の場合、内部空間33のうちこの流入口31の直下領域には、開口幅方向N2の中央部分の流速が大きい第1流Faが形成される。また、この第1流Faの直下領域には、シール剤Sの流れが開口幅方向N2の外方に拡散した拡散流である第2流Fbが形成される。これにより、ノズル30の内部空間33において開口幅方向N2の中央部分とその両側部分との間に生じるシール剤Sの流速差を小さく抑えることができる。ここで、拡散流である第2流Fbが形成される理由は、前述のように、内部空間33を開口幅方向N2の外方に湾曲凸状に拡張した滞留領域としているからである。
【0078】
本形態では、ノズル30の内部空間33に複数の整流片36,37に設けられているため、第2流Fbの直下領域に乱流として形成された第3流Fcは、複数の整流片36,37に干渉したのち整流片36と整流片37との間の間隔38を通過するときに整流されて微小な渦流である第4流Fdとなる。そして、この第4流Fdは、開口高さ方向N1の寸法が徐々に縮小された形状を有する吐出口32(
図9を参照)の付近で絞られたのち、第5流Feとなって吐出口32から吐出される。
【0079】
これにより、シール剤Sをその流速を吐出口32の開口全面にわたって概ね均一にした状態で吐出口32から吐出させることができ、シール剤Sの同一断面における吐出圧を概ね均一に維持することができる。そして、吐出圧を概ね均一に維持できれば、吐出後のシール剤Sの断面形状が吐出口32の開口形状に応じた一定の断面形状となる状態を維持することができ、シール剤Sがノズル30の吐出口32から捩れ状態で吐出され続けるのを抑制できる。
【0080】
したがって、シール剤Sをワーク3の塗布面3aに均等に塗布できずにシール剤Sの一部が塗布面3aから剥離して垂れ下がるような現象(以下、「第1の現象」という。)の発生を抑制できる。また、シール剤Sの捩れ状態を抑制できる分だけ吐出口32からのシール剤Sの吐出圧を下げることができ、シール剤Sがその吐出圧が高いことが要因でワーク3の開口部4に入り込む現象(以下、「第2の現象」という。)の発生を抑制できる。
【0081】
第2の現象の発生を抑制することで、シール剤Sの膜厚が安定せずにワーク3の開口部4の封止強度が低下するのを抑制できる。また、第1の現象や第2の現象の発生を抑制することで、開口部4の封止後のワーク3の外観上の見栄えが悪くなるのを防ぐことができる。
【0082】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0083】
実施形態1のノズル装置10において、粘性を有するシール剤Sは流入口31を通じてノズル30に流入する。その後、このシール剤Sは、ノズル30の内部空間33を流入口31側から吐出口32側に向けて流れたのちに幅広形状の吐出口32を通じて外部に吐出される。このとき、ノズル30の内部空間33は、吐出口32の開口面積Paを上回る流路断面積Pbを有する滞留領域とされている。それゆえ、シール剤Sをノズル30の内部空間33で一時的に滞留させつつその流れを吐出口32で絞った状態で吐出させることができる。
【0084】
これにより、ノズル30の吐出口32から吐出されるシール剤Sの圧力が開口全面にわたって概ね均一となるようにしてシール剤Sの吐出状態を安定させることができ、吐出後のシール剤Sの断面形状を概ね一定にすることができる。また、ノズル30の吐出口32を幅広形状とすることで、シール剤Sの膜厚を安定させた状態でワーク3の開口部4を封止できる。これにより、シール剤Sをワーク3の開口部4の周辺の塗布面3aに均一に付着させることができ、シール剤Sがワーク3の開口部4に入り込んで凹み形状を形成するのを防ぐことができる。
【0085】
以上のごとく、上述の実施形態1によれば、粘性を有するシール剤Sでワーク3の開口部4を封止するときの封止性能に優れたノズル装置10を提供することができる。
【0086】
実施形態1のノズル装置10によれば、ノズル30の内部空間33の開口幅方向N2の両側を外方に向けて湾曲凸状とすることにより、内部空間33においてシール剤Sの流れを開口幅方向N2の外方に拡散させた拡散流を形成させることができ、内部空間33のうち開口幅方向N2の中央部分とその両側部分との間に生じるシール剤Sの流速差を小さく抑えることができる。
【0087】
実施形態1のノズル装置10によれば、ノズル30において開口高さ方向E1に互いに対向する2つの内壁面34,35に出口平面部34a,35aを設けることにより、シール剤Sが吐出方向E1に沿って直線的に吐出されるようにシール剤Sの流れを規制しガイドすることができる。これにより、吐出後のシール剤Sが開口高さ方向N1に拡散するのを抑制することができる。その結果、シール剤Sの形状を維持するとともにシール剤Sの指向性を高めることができる。
【0088】
実施形態1のノズル装置10によれば、ノズル30の内部空間33に複数の整流片36,37を設けることにより、内部空間33で生じるシール剤Sの流れを整えることができる。したがって、シール剤Sをその流速を概ね均一にした状態でノズル30の吐出口32から吐出させることができ、シール剤Sの同一断面における吐出圧を概ね均一にすることができる。その結果、シール剤Sがワーク3の塗布面3aに一旦付着した後で剥離して垂れ下がったりワーク3の開口部4に入り込んだりするのを抑制することができ、シール剤Sで開口部4が封止された後のワーク3の外観上の見栄えが悪くなるのを防ぐことができる。
【0089】
なお、実施形態1のノズル装置10では、複数の整流片36,37の構造を変更することもできる。例えば、整流片36と整流片37のいずれか一方を省略した構造や、整流片36と整流片37の両方を省略した構造を採用することができる。
【0090】
次に、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、上述の実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0091】
(実施形態2)
図13に示されるように、実施形態2のノズル装置110は、ノズル130の先端部130aの構造が実施形態1のノズル装置10のものと相違している。このノズル装置110は、ノズル130の吐出口32において2つの内壁面34,35のうちの一方である内壁面34が他方である内壁面35よりもシール剤Sの吐出方向E1に突出するように構成されている。すなわち、ノズル130の先端部130aは、内壁面34側の領域の方が内壁面35側の領域よりも先端側に飛び出ている。このとき、本形態では、ノズル130の先端部130aに開口高さ方向N1について2つの内壁面34,35のうち内壁面34のみに対向する片側対向領域39が設けられている。
【0092】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0093】
実施形態2のノズル装置110によれば、ノズル130の吐出口32から吐出されたシール剤Sは、片側対向領域39において内壁面35から外れたのち、2つの内壁面34,35のうち内壁面35よりも突出方向E1に突出している内壁面34にのみ追従して流れる。このため、シール剤Sは、本来の吐出方向E1から、突出している内壁面34側(
図13中の上向き)に偏向した偏向方向E1’に方向を変えて流れる。
【0094】
したがって、ノズル130の先端部130aに片側対向領域39を設けることにより、ノズル30の吐出口32から吐出されたシール剤Sが流れる方向を吐出方向E1から偏向方向E1’に変更することができる。
【0095】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0096】
なお、実施形態2のノズル130の変更例として、2つの内壁面34,35の出口平面部34a,35aを互いに平行でない出口平面部に置きかえた構造を採用することができる。
【0097】
(実施形態3)
図14に示されるように、実施形態3のノズル装置210は、ノズルガイド140の構造が実施形態1のノズル装置10のものと相違している。ノズルガイド140は、2つのガイドアーム42を有する一方で、実施形態1のガイドローラ43(
図3を参照)を有していない。各ガイドアーム42の延出先端部42aは、ノズルガイド40がノズル30に取り付けられた状態で、このノズル30の吐出口32よりも吐出方向E1に常時に突出する突出部とされている。このとき、各ガイドアーム42の延出先端部42aによってワーク3の塗布面3aが傷付くのを防ぐために、延出先端部42aの表面に傷付き防止用の保護フィルムを貼付するのが好ましい。
【0098】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0099】
実施形態3のノズル装置210によれば、ワーク3の開口部4をシール剤Sで封止するときに、ガイドアーム42の延出先端部42aがワーク3の塗布面3aに押し当てられた状態になるため、ワーク3の塗布面3aとノズル30の先端部30aとの間に一定の間隔L(
図4を参照)を確保できる。また、ガイドローラ43を省略することで、ノズルガイド140の構造を簡素化できる。
【0100】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0101】
なお、必要に応じて、実施形態3のノズルガイド140の構造を実施形態1,2のノズルガイド40の構造に適用することもできる。
【0102】
本発明は、上述の典型的な形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0103】
上述の形態では、ノズル30にノズルガイド40を設ける場合について例示したが、必要に応じて、ノズルガイド40を省略した構造を採用することもできる。
【0104】
上述の形態では、ロボットアーム71を使用してノズル装置10,110,210を送り方向E2に移動させる場合について例示したが、これに代えて、ノズル装置10,110,210をスライドレール(図示省略)に沿って送り方向E2にスライドさせる駆動装置を採用することもできる。
【0105】
上述の形態では、水平方向に延在するワーク3の下面側から上向きのノズル装置10,110,210でシール剤Sを上向きに吐出する場合について例示したが、これに代えて、水平方向に延在するワーク3の上面側から下向きのノズル装置10,110,210でシール剤Sを下向きに吐出する構造や、垂直方向に延在するワークの側面側から横向きのノズル装置10,110,210でシール剤Sを横向きに吐出する構造などを採用することもできる。このとき、ワーク3におけるシール剤Sの塗布面は水平面であってもよいし或いは立面であってもよい。
【0106】
上述の形態では、車体2のアンダーボディを構成するワーク3の開口部4をシール剤Sで封止する技術について例示したが、封止箇所はこれに限定されるものではなく、この技術を、車体2のうちアンダーボディ以外の要素を構成する部品の開口部をシール剤Sで封止する技術や、自動車以外の対象物を構成する部品に設けられた開口部をシール剤Sで封止する技術に適用することもできる。
【0107】
上述の形態や種々の変更例の記載に鑑みた場合、本発明では以下の各態様を採り得る。
【0108】
(態様1)
粘性を有するシール剤でワークの開口部を封止するのに用いるシール剤用ノズル装置であって、
上記シール剤が流入する流入口と、上記開口部の開口径を上回る開口幅を有する幅広形状の吐出口と、上記シール剤を上記流入口から上記吐出口まで流通させる内部空間と、を有するノズルを備え、
上記ノズルの上記内部空間は、上記吐出口の開口面積を上回る流路断面積を有する滞留領域であり、
上記ノズルは、上記内部空間を隔てて上記開口高さ方向に互いに対向する2つの内壁面を有し、上記2つの内壁面には互いに平行に配置された出口平面部が設けられており、
上記ノズルは、上記内部空間に設けられた複数の整流片を有し、上記複数の整流片はいずれも上記吐出口に向けて延びており且つ上記吐出口の開口幅方向に間隔を隔てて配置されている、シール剤用ノズル装置。
【0109】
(態様2)
粘性を有するシール剤でワークの開口部を封止するのに用いるシール剤用ノズル装置であって、
上記シール剤が流入する流入口と、上記開口部の開口径を上回る開口幅を有する幅広形状の吐出口と、上記シール剤を上記流入口から上記吐出口まで流通させる内部空間と、を有するノズルを備え、
上記ノズルの上記内部空間は、上記吐出口の開口面積を上回る流路断面積を有する滞留領域であり、
上記ノズルは、上記内部空間を隔てて上記開口高さ方向に互いに対向する2つの内壁面を有し、上記吐出口において上記2つの内壁面のうちの一方が他方よりも上記シール剤の吐出方向に突出しており、
上記ノズルは、上記内部空間に設けられた複数の整流片を有し、上記複数の整流片はいずれも上記吐出口に向けて延びており且つ上記吐出口の開口幅方向に間隔を隔てて配置されている、シール剤用ノズル装置。
【符号の説明】
【0110】
3 ワーク
4 開口部
10,110,210 ノズル装置(シール剤用ノズル装置)
30,130 ノズル
31 流入口
32 吐出口
33 内部空間(滞留領域)
34,35 内壁面
34a,35a 出口平面部
d 開口径
E1 吐出方向
N1 開口高さ方向
N2 開口幅方向
Pa 開口面積
Pb 流路断面積
S シール剤
w 開口幅