(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056640
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】輸液医療ライン用フィルタ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/165 20060101AFI20240416BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20240416BHJP
A61M 5/38 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61M5/165 500B
B01D63/08
A61M5/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023173339
(22)【出願日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】102022000020931
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】507028619
【氏名又は名称】インドゥストリー・ボルラ・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】Industrie Borla S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】グアラ,ジャンニ
【テーマコード(参考)】
4C066
4D006
【Fターム(参考)】
4C066CC01
4C066MM02
4D006GA02
4D006HA41
4D006JA07A
4D006JA08A
4D006JA30
4D006JA30C
4D006JA63A
4D006MA03
4D006MB09
4D006PA01
4D006PB70
4D006PC41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】医療輸液ライン用のフィルタを提供する。
【解決手段】医療輸液ライン用のフィルタであって、入口コネクタ6を有し、中に板状要素8が配置される箱状体1を含み、板状要素の片面または両面には、出口コネクタ7と連通して配置されるチャネル9が形成される。濾過親水性膜10は、チャネル9を、入口コネクタ6と連通して配置される少なくとも1つの間隙12から分離する。出口コネクタ7と作動可能に関連する過圧弁14があり、フィルタの箱状体1内に組み入れられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療輸液ライン用のフィルタであって、濾過される液体のための入口コネクタ(6)、および濾過された液体のための出口コネクタ(7)を有する箱状体(1)を含み、
箱状体(1)の中には、
板状要素(8)が備えられ、板状要素の両面の少なくとも一方の面には、リブが形成され、コネクタ(6、7)の間で平行に延びる内部チャネル(9)を画定し、
板状要素(8)上には、チャネル(9)を少なくとも1つの内部間隙(12)から分離する少なくとも1つの濾過親水性膜(10)が配置され、
間隙(12)は、入口コネクタ(6)と連通して配置され、チャネル(9)は、出口コネクタ(7)と連通して配置され、
間隙(12)はさらに、親水性膜(11)を通して外部と連通して配置され、
過圧弁(14)は、出口コネクタ(7)と作動可能に関連する、
フィルタ。
【請求項2】
過圧弁(14)が、フィルタの箱状体(1)内に組み入れられる、
請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
過圧弁(14)が、板状要素(8)内に形成され、出口コネクタ(7)と入口コネクタ(6)との間の連通を制御するオブチュレータ(17)を含む、チャンバ(15)を含む、
請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
オブチュレータ(17)が、弾性膜からなる、
請求項3に記載のフィルタ。
【請求項5】
チャンバ(15)が、一方側で出口コネクタ(7)にバイパス通路(20)を通って接続し、他方側で間隙(12)に接続する、
請求項3または4に記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液医療ライン(infusion medical line)用フィルタに関し、特に静脈フィルタ(IV filter)に関する。
【0002】
これらのフィルタは、公知の方法で、濾過される液体のための入口コネクタと、濾過された液体のための出口コネクタとを備えた箱状体(box-like body)を含む。箱状体の内部には、両側の面の少なくとも一方に、入口コネクタと出口コネクタとの間に平行に延びる内部チャネルを画定するリブが形成された板状要素(plate-like element)が配置され、リブ上には、チャネルを、対応するハーフシェル(half-shell)によって区画された間隙(interspace)から分離する濾過親水性膜が配置されている。間隙は入口コネクタと連通し、チャネルは出口コネクタと連通している。さらに、間隙は、液体を脱気するための疎水性膜を備えた通気孔によって外部と連通している。
【背景技術】
【0003】
この種のフィルタは、例えば、同じ出願人名義の文献WO2019/215516A1に開示されており、それによれば、板状要素は、両面に長手方向の溝が形成されており、その溝には、関連する間隙を有する2つの濾過親水性膜が配置されている。
【0004】
このようにして製造されたフィルタを使用すると、液体が、入口コネクタから出口コネクタに向かって流れるのではなく、逆方向、すなわち、出口コネクタから入口コネクタに向かって供給され、板状要素の縦溝から、濾過親水性膜を-逆方向で-通って間隙へ、または各間隙へと流れる逆流状態(backflow condition)が発生する可能性がある。この状態において、液体の圧力が高い場合、通常、-例えば接着剤または他の適切なシステムによって-板状要素に固定されている親水性膜または各親水性膜が、板状要素から剥離するか、または破損する危険性があり、その結果、入口コネクタから出口コネクタに向かう液体の流れが回復したときに、その濾過作用が制限されるか、または無効になることさえある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、前述した技術的課題を解決すること、すなわち、液体の流れが出口コネクタから入口コネクタに向かうことから反転したときに、濾過膜が板状要素から剥離し、フィルタの正常な動作が損なわれるのを防止することである。
【0006】
本発明によれば、この目的は、請求項1の前文で定義されたタイプの医療ライン用フィルタにおいて、出口コネクタに過圧弁が作動可能に関連付けられるという事実によって達成される。
【0007】
このようにして、出口コネクタから入口コネクタに向かう液体の逆流圧力(backflow pressure)が、過圧弁の較正に対応する最大値を超えた場合、過剰圧力は吸収され、親水性膜に作用することなく入口コネクタに向かって排気される。
【0008】
過圧弁は好都合にフィルタの箱状体の中に組み入れられ、本発明の好ましい実施形態によれば、この過圧弁は、板状要素内に形成され、出口コネクタと板状要素の流路との間の連通を制御する弾性膜からなるオブチュレータ(obturator:閉塞具)を含むチャンバを含む。このチャンバは、オブチュレータの一方側でバイパス導管を介して前述の出口コネクタに接続され、オブチュレータの他方側で入口コネクタに接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明のさらなる特徴は、純粋に非限定的な例として提供される添付図面を参照した以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0010】
【
図1】
図1は、本発明に係るフィルタの部分的平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の線II-IIにおける長手方向断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の線III-IIIにおける長手方向断面図である。
【
図5】
図5は、本発明に係るフィルタの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面の
図1~
図5を参照すると、本発明に係るIVフィルタは、図示の実施例の場合、それぞれの周縁に沿って互いに固定的に接合された一対のハーフシェル2、3によって形成された概ね四角形状の箱状体を含む。
【0012】
箱状体1の小さい方の側壁4、5には、箱状体1の長手方向軸線に従って互いに整列された管状の入口コネクタ6と管状の出口コネクタ7とがそれぞれ配置されている。入口コネクタ6は、使用時には、濾過される液体を供給するためのダクトに接続されるように設計されており、出口コネクタ7は、順に、濾過された液体を供給するためのダクトに接続されるように設計されている。
【0013】
後述するように、フィルタを使用すると、液体が入口コネクタ6から出口コネクタ7に向かって流れるのではなく、逆方向、すなわち出口コネクタ7から入口コネクタ6に向かって流れる逆流状態が発生することがある。
【0014】
2つのハーフシェル2、3の間に介在し、その両面の少なくとも一方に、コネクタ6、7の間を長手方向に延びるそれぞれのチャネル9を画定するそれぞれの複数のリブが形成された板状要素が、参照数字8で示されている。図示の例では、シート状体(sheet-like body)8の両方の面にチャネル9が形成されている。
【0015】
板状要素8の各面には、それぞれの親水性膜10が載置され、例えば接着または適切な溶接システムを使用して固定され、その両端には、それぞれの疎水性膜の対が作動可能に関連付けられる。フィルタは、単一の濾過親水性膜10を備えることもできるし、2つ以上の数の濾過膜を備えることもできる。
【0016】
2つの親水性膜10とハーフシェル2、3との間には、それぞれの長手方向の間隙12が画定されており、この間隙12は、一方の側で入口コネクタ6と連通し、反対側で親水性膜10の間に介在する断面通路13と連通し、長手方向の導管21を介して出口コネクタ7と連通している。
【0017】
使用中、輸液は、入口コネクタ6(医療用ラインのチューブ-チューブ接続またはルアー-チューブ接続またはチューブ-ルアー接続またはルアー-ルアー接続用に構成することができる)によりフィルタに供給され、2つの間隙12で分割され、したがって、濾過親水性膜10に接触して流れ、その後、流路9から通路13に向かって搬送され、導管21および出口コネクタ7を通ってフィルタから流出する。疎水性膜11は、液体中に閉じ込められている可能性がある空気を、箱状体1の端壁4、5に設けられたそれぞれの孔を通してフィルタから流出させる。
【0018】
上述したように、本発明に係るフィルタを使用する場合、出口コネクタ7から流入し、入口コネクタ6から流出する液体の逆流状態が発生する可能性がある。この種の状況では、出口コネクタ7に流入する液体の圧力が高すぎる可能性があり、特に、板状要素8の壁から濾過親水性膜10が剥離し、さらには破損する危険性が生じる程度まで高くなる可能性がある。この場合、入口コネクタ6から出口コネクタ7に向かう液体の流れが回復した後、液体の正しい濾過が危うくなるため、フィルタは効果がない。
【0019】
したがって、本発明は、一般に参照数字14で示される過圧弁、またはバイパス弁をフィルタに設けることを想定している。
【0020】
より詳細には、
図4を参照すると、過圧弁14はフィルタの箱状の本体1に組み込まれており、壁2の実質的にドーム状の部分16と、出口コネクタ7に近接する板状要素8の対応する表面との間に形成されたチャンバ15を含む。チャンバ15の内部には環状レリーフ22が設けられ、このレリーフ22には、軸方向孔19が形成された飲料用コップ状要素18によって所定の位置に保持された弾性膜17が配置されている。弾性膜17は、順次、一方と他方の間隙12を介して入口コネクタ6と連通するように配置される孔19と、長手方向導管21を介して出口コネクタ7と連通して配置されるバイパス通路20との間の連通を制御する。
【0021】
過圧弁14は次のように作動する。
【0022】
フィルタが出口コネクタ7から入口コネクタ6に向かって逆流する状況で作動するとき、液体は導管21および通路13を通って流れ、チャネル9に流入し、2枚の親水性膜10を通って間隙12に達し、後者から入口コネクタ6に達する。導管21を流れる液体の圧力が、弾性膜17の較正に対応する所定の閾値よりも高い場合、通路20に作用する圧力は、そのような膜17の開口弾性変形を引き起こし、それに伴う液体の流れは、バイパス通路20からチャンバ15へ、保持要素(retention element)17の孔19を通り、したがって、直接、間隙12を通って、入口コネクタ6へ向かう。従って、出口コネクタ7から流入する液体の圧力降下により、板状要素8から剥離したり、あるいは破断したりするほど膜10がそれぞれの間隙12に向かって押されることが防止される。
【0023】
出口コネクタ7から流入する液体の圧力が閾値以下に戻ると、弾性膜17は閉鎖位置に戻り、したがって、流れは出口コネクタ7から間隙12へ、2枚の親水性膜10を通って流れ、したがって入口コネクタ6へと正常に継続する。
【0024】
入口コネクタ6から出口コネクタ7に向かう液体の正常な濾過流が回復すると、通常、過圧弁14は作動しないままである。
【0025】
明らかに、構造の詳細および実施形態は、後に続く特許請求の範囲に定義される本発明の保護範囲から逸脱することなく、これまで説明および図示したものに関して広く変化し得る。従って、上述したように、フィルタは、2つ以上、例えば4つ、の濾過親水性膜10、さらには1つ以上の過圧弁14を備え得る。
【0026】
図6に示す変形例では、既に説明したものと同一または類似の部品が同じ参照数字で示されており、フィルタは単一の濾過親水性膜10を備えている。この場合、箱状体1はハーフシェル2のみを含み、下部は、縦溝9が単一の面に形成された板状要素8によって閉じられている。入口および出口コネクタ6、7は、板状要素8と一体に作られ、出口コネクタ7に関連する過圧弁10の構成および作動は、上に概説した説明と同様である。
【外国語明細書】