(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056645
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】金属アルカン酸塩を含む潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 129/26 20060101AFI20240416BHJP
C10M 129/28 20060101ALI20240416BHJP
C10M 137/10 20060101ALI20240416BHJP
C10N 10/02 20060101ALN20240416BHJP
C10N 10/06 20060101ALN20240416BHJP
C10N 10/10 20060101ALN20240416BHJP
C10N 10/16 20060101ALN20240416BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240416BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240416BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C10M129/26
C10M129/28
C10M137/10 A
C10N10:02
C10N10:06
C10N10:10
C10N10:16
C10N40:25
C10N30:00 Z
C10N30:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023174178
(22)【出願日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】22200963.1
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】500010875
【氏名又は名称】インフィニューム インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】エミリー クレア メイソン
(72)【発明者】
【氏名】アリス ヘイ マン レウン
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン グラハム ニール チャペル
(72)【発明者】
【氏名】マーク ピーター ドライバー
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BA08A
4H104BB08A
4H104BB14C
4H104BB16C
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB36A
4H104BH07C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB13
4H104FA02
4H104FA03
4H104FA05
4H104FA08
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA41
4H104PA42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】摩耗を低減し、燃費特性が向上する潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】基油、清浄剤、並びに2位、2’位、又は2位及び2’位の両方に第四級炭素原子を有する1つ又は複数の金属アルカン酸塩を含むか又は混合することから得られる潤滑組成物であって、好ましくは100時間以上の凝着摩耗、24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積、並びに任意選択で7mg KOH/g以上の全塩基価を有する潤滑組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油、清浄剤、並びに第四級炭素原子を2位、2’位、又は2位及び2’位の両方に有する1つ又は複数の第5族、第10族、第11族、第12族、又は第13族金属アルカン酸塩を含むか又は混合することから得られる潤滑組成物であって、ASTM D8074-16により決定して、100時間以上の凝着摩耗、ASTM D892、オプションAにより決定して、24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積、並びに任意選択で7mg KOH/g以上の全塩基価を有する潤滑組成物。
【請求項2】
前記金属アルカン酸塩は、式(I):
【化1】
(I)
により表され、
式中、
Mは、第10族、第11族、又は第12族金属であり、
R
1は、H、又はC
1~C
20直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基であり、
R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、C
1~C
20直鎖状、分岐鎖状、又は環状アルキル基である、
請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
以下の成分:
D)1つ若しくは複数の摩擦調整剤、
E)1つ若しくは複数の抗酸化剤、
F)1つ若しくは複数の流動点降下剤、
G)1つ若しくは複数の消泡剤、
H)1つ若しくは複数の粘度調整剤、
I)1つ若しくは複数の分散剤、
J)1つ若しくは複数の抑制剤及び/若しくは防錆剤、並びに/又は
K)式(I)に当てはまらない1つ若しくは複数の耐摩耗剤
の1つ又は複数を更に含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
A)前記基油は、前記潤滑組成物の質量に基づき1~99質量%で存在し、
B)前記清浄剤は、前記潤滑組成物の総質量に基づき0.1~20質量%で存在し、
C)前記金属アルカン酸塩は、前記潤滑組成物の総質量に基づき0.1~5質量%で存在する、
請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
E)任意選択で、1つ又は複数の抗酸化剤は、前記潤滑組成物の総質量に基づき0.01~5質量%で存在し、
F)任意選択で、1つ又は複数の流動点降下剤は、前記潤滑組成物の総質量に基づき0.01~5質量%で存在し、
G)任意選択で、1つ又は複数の消泡剤は、前記潤滑組成物の総質量に基づき0.001~5質量%で存在し、
H)任意選択で、1つ又は複数の粘度調整剤は、前記潤滑組成物の総質量に基づき0.001~6質量%存在し、
I)任意選択で、1つ又は複数の分散剤は、前記潤滑組成物の総質量に基づき0.01~20質量%で存在し、
J)任意選択で、1つ又は複数の抑制剤及び/又は防錆剤は、前記潤滑組成物の総質量に基づき0.01~5質量%で存在し、
K)任意選択で、成分C)のもの以外の1つ又は複数の耐摩耗剤は、前記潤滑組成物の総質量に基づき0.001~5質量%で存在する、
請求項4に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
式(I)の金属Mは亜鉛である、請求項2に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
少なくとも1000ppmの亜鉛を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
R1、R2、及びR3の炭素原子数の合計は7個以上の炭素原子であり、R4、R5、及びR6の炭素原子数の合計は7個以上の炭素原子である、請求項2に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
前記金属アルカン酸塩は、C18~C60ネオアルカン酸亜鉛である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
前記金属アルカン酸塩は、ネオデカン酸亜鉛、ネオウンデカン酸亜鉛、ネオドデカン酸亜鉛、ネオトリデカン酸亜鉛、ネオテトラデカン酸亜鉛、ネオペンタデカン酸亜鉛、ネオヘキサデカン酸亜鉛、ネオヘプタデカン酸亜鉛、ネオオクタデカン酸亜鉛、ネオノナデカン酸亜鉛、及びネオエイコサン酸亜鉛の1つ又は複数である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
1000ppmよりも多くの亜鉛及び1000ppm未満のPを含み、100時間以上の凝着摩耗、24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積、並びに任意選択で7mg KOH/g以上の全塩基価を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
Zn対Pの比が、質量%で1.1~4.7である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項13】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、1質量%以下で存在する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項14】
ASTM D8074-16により決定して100時間以上の凝着摩耗結果、及び質量%で1.1~4.7のZn対Pの比を有する潤滑組成物であって、ジアルキルジチオリン酸亜鉛以外の亜鉛含有化合物を含む潤滑組成物。
【請求項15】
ASTM D8074-16により決定して100時間以上の凝着摩耗及び少なくとも1000ppmの亜鉛を有する潤滑組成物であって、ジアルキルジチオリン酸亜鉛以外の亜鉛含有化合物を含む潤滑組成物。
【請求項16】
1000ppm以上の亜鉛を有する潤滑組成物について、ASTM D8074-16により決定して100時間以上の凝着摩耗を得るための方法であって、
(i)請求項1に記載の潤滑組成物を内燃エンジンのクランクケースに供給するステップ、
(ii)前記内燃エンジンに炭化水素燃料を供給するステップ、及び
(iii)前記内燃エンジンにて前記燃料を燃焼させるステップ
を含む方法。
【請求項17】
内燃エンジンを前記エンジンの作動中に潤滑するための方法であって、
(i)請求項1に記載の潤滑組成物を前記内燃エンジンのクランクケースに供給するステップ、
(ii)前記内燃エンジンに炭化水素燃料を供給するステップ、及び
(iii)前記内燃エンジンにて前記燃料を燃焼させるステップ
を含む方法。
【請求項18】
内燃エンジンを前記エンジンの作動中に潤滑するための方法であって、
(i)清浄剤、並びに2位、2’位、又は2位及び2’位の両方に第四級炭素原子を有する1つ又は複数の金属アルカン酸塩を含む潤滑組成物を、前記内燃エンジンのクランクケースに供給するステップ、
(ii)前記内燃エンジンに炭化水素燃料を供給するステップ、及び
(iii)前記内燃エンジンにて前記燃料を燃焼させるステップ、
(iv)前記組成物により潤滑される前記内燃エンジンにおいて、ASTM D8074-16により決定して100時間以上の凝着摩耗を得るステップを含み、
(v)前記潤滑組成物は、ASTM D892、オプションAにより決定して、24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積、並びに7mg KOH/g以上の全塩基価を有する
方法。
【請求項19】
亜鉛対リン比は、質量%で3.0~3.5である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記金属アルカン酸塩の金属は第4族金属ではない、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項21】
前記金属アルカン酸塩の金属はチタンではない、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項22】
前記エンジンは、ディーゼルエンジンである、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記エンジンは、船舶用エンジンである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記エンジンは、自動車用エンジンである、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
120時間以上の凝着摩耗を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項26】
前記アルカン酸塩は、ネオ酸に由来する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項27】
前記金属アルカン酸塩は、-15℃で液体であり、80℃で液体である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項28】
大型ディーゼルエンジン油又は船舶用エンジン油である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項29】
1000ppmよりも多くの亜鉛及び1000ppm未満のPを含み、100時間以上の凝着摩耗、24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積、及び7mg KOH/g以上の全塩基価を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項30】
水素及び/又はアンモニアを燃料とする内燃エンジンを、前記エンジンの作動中に潤滑するための方法であって、
(i)清浄剤、並びに2位、2’位、又は2位及び2’位の両方に第四級炭素原子を有する1つ又は複数の金属アルカン酸塩を含む潤滑組成物を、前記内燃エンジンのクランクケースに供給するステップ、
(ii)水素及び/又はアンモニアを含む燃料を前記内燃エンジンに供給するステップ、並びに
(iii)前記内燃エンジンにて前記燃料を燃焼させるステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に大型ディーゼルエンジンに応用するための良好な耐摩耗特性を有する潤滑剤組成物中の添加剤としての、ネオデカン酸亜鉛等の金属アルカン酸塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、摩擦特質の向上を呈する自動車用潤滑油組成物に関する。より詳細には、本発明は、ガソリン(火花点火式)及びディーゼル(圧縮点火式)内燃エンジンに使用するための自動車用クランクケース潤滑油組成物に関し、そのような組成物は、クランクケース潤滑油と呼ばれる。また、本発明は、そのようなエンジンを使用する際の可動部品間の摩擦及び/若しくは摩耗を低減するための、並びに/又は潤滑油組成物で潤滑されるエンジンの燃費性能を向上させるための、そのような潤滑油組成物中の添加剤の使用に関する。
エンジン耐久性は、特に大型ディーゼルエンジンに応用するための潤滑剤を選択する際の重要な考慮事項である。相手先商標製品製造業者はオイル交換間隔を延長させ続けており、車両の平均寿命は過去数十年にわたって着実に伸びている。同様に、大型ディーゼル車両のディーゼル粒子フィルター等の後処理系への影響が少ない無灰耐摩耗剤が使用される傾向がある。
環境上及び規制上の要件により、内燃エンジンの効率を向上させたいという意欲が駆り立てられている。より低粘度の潤滑剤は、エンジンへの送入出に必要なエネルギーがより少ないため、燃費を向上させることができる。しかしながら、潤滑剤の粘度がより低いと、接触するエンジン部品(例えば、バルブトレイン、ピストンゾーン、及びベアリング)間の油膜がより薄くなり、摩耗率の上昇、摩擦調整の低減等に結び付く可能性がある。従来は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)が、多くの場合で、エンジン摩耗を防止するための及び/又は境界潤滑領域での摩擦を低減するための潤滑剤添加剤として使用されている。
燃費向上への取組みに加えて、車両からの排気物を低減させたいという意欲も存在する。排気ガスの制御は、典型的には、貴金属触媒を使用して燃焼生成物をより有害性の低い種へと変換する触媒コンバータ等の後処理デバイスにより達成される。しかしながら、こうした触媒は、特にリン及び硫黄により被毒し、それにより触媒活性が影響を被る。別の後処理デバイスは粒子フィルターであるが、大型ディーゼル油の燃焼により生成される硫酸灰分又はスラッジのため目詰まりする可能性がある。したがって、大型ディーゼル油に由来する硫酸灰分、リン、及び硫黄(SAPS)のレベルは、低減されることが望ましい。ZDDP添加剤は、著しい量のSAPSを潤滑油に供与するため、ZDDPの使用を低減させることも望ましい。
そのため、典型的には無機物質である新しい耐摩耗剤、特に硫酸灰分、リン、及び硫黄のレベルを低減させる耐摩耗剤を発見することが有利となる。
【0003】
無機物質に共通した特徴は、一般に、多くの場合で灰分が生成されることである。これは、相手先商標製品製造業者等により灰分制限が課せられているため、典型的には、新しい無機物質に対応するには他の灰形成成分を低減させる必要があることを意味する。潤滑剤中の灰分生成物質の主な供給源は、潤滑油の全塩基価を増加させるために添加されることが多い無機清浄剤である。全塩基価の上昇は、多くの場合、燃焼の酸性副産物が、より長期間又はより過酷な条件下で中和されることを意味する。しかしながら、全塩基価が高すぎると灰分に寄与する可能性もある。したがって、新しい無機物質を添加する場合、配合者らは、特に無機清浄剤を除去することにより全塩基価を低減させようとするだろう。
多くの耐摩耗剤は、カルボン酸の金属塩に基づく無機物質であるが、こうした金属塩は、潤滑剤の起泡特性及び潤滑剤の全塩基価に悪影響を及ぼすことが多い。したがって、灰分形成にほとんど又は全く寄与せず、好ましくは優れた消泡特性及び全塩基価影響特性も有する、カルボン酸の金属塩等の耐摩耗剤を特定することが望ましいだろう。
【0004】
驚くべきことに、本発明者らは、ここで、C9+ネオ酸ベースカルボン酸、例えばC10+ネオ酸ベースカルボン酸の金属塩を、典型的には金属ベース清浄剤と組み合わせて、ディーゼルエンジン等の潤滑剤組成物に使用すると、直鎖状又は部分的に分岐鎖状のカルボン酸の金属塩と比較して、摩耗及び摩擦の低減、より高い全塩基価、並びに好ましくはより低い起泡性を提供することができることを見出した。
驚くべきことに、本発明の潤滑組成物は、摩擦を低減し、したがって燃費特性向上の提供に有用であることも見出された。
【0005】
米国特許出願公開第2020/0277542号明細書には、潤滑剤組成物中の成分として、ステアリン酸亜鉛等のカルボン酸の金属塩が開示されている。
米国特許出願公開第2019/0016985号明細書には、潤滑剤組成物中の成分として、2-エチルヘキサン酸亜鉛等のカルボン酸亜鉛が開示されている。
米国特許第10,000,721号明細書及びその一部継続米国特許第10,781,397号明細書には、潤滑剤組成物中の耐摩耗成分として、ステアリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、及びナフテン酸亜鉛等のカルボン酸の金属塩が開示されている。
米国特許第6,294,507号明細書には、金属カルボン酸塩及びカルボン酸を含む液体添加剤組成物が開示されている。
米国特許第5,604,188号明細書には、COO-部分に結合した第三級炭素を含むアルカン酸亜鉛が開示されている。
米国特許第10,982,166号明細書には、無灰有機エステル耐摩耗添加剤及び/又は摩擦調整剤に関連する鉛腐食の抑制剤として非水性潤滑剤組成物に使用されるホウ素含有添加剤が開示されている。
国際公開第2008/124191パンフレットは、多量のGTL(ガス液化)潤滑基油、及び12~24個の炭素原子を含むカルボン酸(オクタデカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、及びオレイン酸を含む)等の、ポリオールの油溶性脂肪酸エステルから本質的になる摩擦調整剤を含む潤滑組成物に関する。
米国特許第11,168,280号明細書には、約150~約1200ダルトンの数平均分子量(Mn)を有するヒドロカルビル基又はヒドロカルベニル基から誘導される、オクタデセニル無水コハク酸(ODSA)又はポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA)等の、低分子量ヒドロカルビル又はヒドロカルベニル無水コハク酸又はコハク酸イミド相溶性助剤を、好ましくは約0.2質量%~約8質量%の量で含む潤滑剤添加剤濃縮物が記載されている。
【0006】
欧州特許第1 350 833号A2明細書の段落[0040~0041]並びに表4の実施例L及びMには、特に、ジアミルジチオカルバミン酸ビスマス、ネオデカン酸亜鉛、及び煤煙誘導性粘度を低減させることが報告されている任意選択のIrganox(商標)L150(高分子量アミン系及びフェノール系抗酸化剤の混合物であると報告されている)を含む組合せを含む15W-40大型ディーゼル油ブレンドが開示されている。
欧州特許第3 118 286号B1明細書には、数平均分子量が20,000未満であり、例えばエンジン油における堆積物制御、酸化、及び濾過性等の特性に対して有益な効果を有する油溶性チタン含有物質を含む潤滑剤組成物が開示されており、チタンイソプロポキシドは、コマツホットチューブデポジットスクリーニング試験(KHT、Komatsu Hot Tube Deposits screen test)、KES濾過性試験、分散剤パネルコーカー試験(Dispersant Panel Coker test)(エンジン油の堆積物形成傾向を評価するために使用される試験)、及びCat 1M-PC試験の1つ又は複数において有益な効果を付与する。
【0007】
他の興味深い参考文献としては、以下のものが挙げられる:Juli Felicio Luiz及びHugh Spikes、Triboflm Formation、Friction and Wear Reducing Properties of Some Phosphorus Containing Antiwear Additives、Tribology Letters(2020年)68巻:75頁;米国特許第3,102,096号明細書;米国特許第4,866,139号明細書;米国特許第6,008,165号明細書;米国特許第6,010,986号明細書;米国特許第8,603,954号明細書;米国特許第10,640,724号明細書;米国特許第10,913,916号明細書;米国特許第7,615,520号明細書;米国特許第10,119,093号明細書;米国特許第10,947,473号明細書;国際公開第2002/062930号パンフレット;国際公開第2011/161406号パンフレット;国際公開第2012/056191号パンフレット;国際公開第2021/071709号A1パンフレット;米国特許出願公開第2008/0128184号明細書;米国特許出願公開第2010/0292113号明細書;米国特許出願公開第2008/223330号A1明細書;米国特許出願公開第2019/185778号A1明細書;欧州特許第1 702 973号A1明細書;及び特開2004-149762号公報。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、(i)基油、(ii)清浄剤、並びに(iii)2位及び/又は2’位に第四級炭素原子を有する1つ又は複数の金属アルカン酸塩を含むか又は混合することから得られる滑油組成物に関する。(2位及び2’位は、金属アルカン酸塩のCOO-部分に結合した炭素である。例えば、下記式の2位は、R4、R5、及びR6基に結合した炭素原子であり、2’位は、R1、R2、及びR3基に結合した炭素原子である。)
【0009】
本発明は、(i)基油、(ii)清浄剤、並びに(iii)式(I):
【化1】
(I)
により表される1つ又は複数の金属アルカン酸塩を含むか又は混合することから得られる滑油組成物にも関し、
式中、
Mは、第4、5、10、11、12、又は13族の金属であり、
R
1、R
2、及びR
3の各々は、水素、又はC
1~C
20直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基であり、
R
4、R
5、及びR
6の各々は、独立して、C
1~C
20直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基である。
【0010】
実施形態では、Mは第4族金属ではなく、例えば、Mは、Tiでも、Zrでも、Hfでもない。実施形態では、式(I)により表される金属アルカン酸塩は、ネオデカン酸チタン、及び/又はネオデカン酸ジルコニウム、及び又はネオデカン酸ハフニウムではない。
実施形態では、Mは第7族金属ではなく、例えば、Mは、Mnでも、Tcでも、Rhでもない。
実施形態では、Mは第15族金属ではなく、例えば、Mは、SbでもBiでもない。
実施形態では、ジチオカルバミン酸アンチモン及び/又はジチオカルバミン酸ビスマス抗酸化剤は存在しない。
【0011】
好ましくは、潤滑油組成物は、
a)100時間以上の凝着摩耗(「DD-13スカッフィング試験」とも呼ばれる、ASTM D8074-16により決定される)、及び任意選択で
b)24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積(ASTM D892、オプションAにより決定される)、並びに任意選択で
c)7mg KOH/g以上の全塩基価(ASTM D2896により決定される)
を有する。
【0012】
好ましくは、潤滑油組成物は、
a)100時間以上の凝着摩耗(ASTM 8074-16により決定される)、並びに
b)24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下(30ml等)の気泡容積(ASTM D892、オプションAにより決定される)、並びに
c)7mg KOH/g以上の全塩基価(ASTM D2896により決定される)
を有する。
【0013】
本発明の別の態様によると、上記式(I)により表されるアルカン酸塩を有さない同じ組成物と比較して、10%よりも大きな摩耗の差異等の摩耗の低減を提供するための、(i)基油、(ii)清浄剤、及び(iii)上記式(I)により表される1つ又は複数のアルカン酸塩を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物の使用が提供される。
本発明のなお更なる態様によると、上記式(I)により表されるアルカン酸塩を有さない同じ組成物と比較して、10%よりも大きな摩擦の差異等の摩擦の低減を提供するための、(i)基油、(ii)清浄剤、及び(iii)上記式(I)により表される1つ又は複数のアルカン酸塩を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物の使用が提供される。
本発明のなお更なる態様によると、上記式(I)により表されるアルカノエートを有さない同じ組成物と比較して、10%よりも大きな摩耗の差異及び10%よりも大きな摩擦の差異等の、摩擦及び摩耗の低減を提供するための、(i)基油、(ii)清浄剤、及び(iii)上記式(I)により表される1つ又は複数のアルカン酸塩を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物の使用が提供される。
本発明のなお更なる態様によると、上記式(I)により表されるアルカン酸塩を有さない同じ組成物と比較して、10%よりも大きな燃費の差異としての燃費の向上を提供するための、(i)基油、(ii)清浄剤、及び(iii)上記式(I)により表される1つ又は複数のアルカン酸塩を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物の使用が提供される。
本発明のなお更なる態様によると、上記式(I)により表されるアルカン酸塩を有さない同じ組成物と比較して、摩擦及び摩耗の低減、低い起泡性、並びに/又は低い全塩基価影響、例えば10%よりも大きな各特性の差異を提供するための、(i)基油、(ii)清浄剤、及び(iii)上記式(I)により表される1つ又は複数のアルカン酸塩を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物の使用が提供される。
本発明のなお更なる態様によると、上記式(I)により表されるアルカン酸塩を有さない同じ組成物と比較して、摩擦及び摩耗の低減、低い起泡性、並びに/又は低い全塩基価影響、例えば10%よりも大きな各特性の差異を示す、(i)基油、(ii)清浄剤、及び(iii)上記式(I)により表される1つ又は複数のアルカン酸塩を含むか又は混合することから得られる大型ディーゼル潤滑油組成物が提供される。
【0014】
(i)基油、(ii)清浄剤、及び(iii)上記式(I)により表される1つ又は複数のアルカン酸塩を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物であって、潤滑剤は、
a)100時間以上の凝着摩耗(ASTM 8074-16により決定される)、並びに
b)24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下(30ml等)の気泡容積(ASTM D892、オプションAにより決定される)、並びに
c)7mg KOH/g以上の全塩基価(ASTM D2896により決定される)
を有する、潤滑油組成物の使用が提供される。
【0015】
本発明のなお更なる態様によると、800ppmよりも多くの(例えば、1000ppmよりも多くの)亜鉛及び1000ppm未満のリンを有するクランクケース潤滑油組成物が提供される。
本発明のなお更なる態様によると、質量%で1.1~4.8(1.1~4.7、又は1.2~4.7、又は1.3~4.5、又は2.5~4.0等)の亜鉛対リン比を有するクランクケース潤滑油組成物が提供される。
本発明のなお更なる態様によると、1)100時間以上の凝着摩耗(ASTM D8074-16により決定される)、及び2)800ppmよりも多くの亜鉛及び1000ppm未満のリン、及び/又は質量%で1.1~4.8(1.1~4.7、又は1.2~4.7、又は1.3~4.5、又は2.5~4.0)の亜鉛対リン比を有するクランクケース潤滑油組成物が提供される。
【0016】
本発明のなお更なる態様によると、
(i)多量の1つ又は複数の基油;
(ii)式(I):
【化2】
(I)
により表され、
式中、
Mは、第4族、第5族、第10族、第11族、第12族、又は第13族の金属であり(好ましくは、Mは第4族金属ではなく、例えば、Mは、Tiでも、Zrでも、Hfでもない)、
R
1、R
2、及びR
3の各々は、水素、又はC
1~C
20直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基であり、
R
4、R
5、及びR
6の各々は、独立して、C
1~C
20直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基であり、
1つ又は複数の金属アルカン酸塩は、600~1500ppmのM原子を潤滑油組成物に提供する、
1つ又は複数の金属アルカン酸塩;
(iii)ASTM D5185に従って測定して、それぞれ200~4000ppmのカルシウム原子、マグネシウム原子、又はカルシウム原子及びマグネシウム原子を潤滑油組成物に提供する量の1つ又は複数のスルホン酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム、又はスルホン酸カルシウム及びスルホン酸マグネシウムの両方を含む清浄剤組成物;
(iv)任意選択で、ASTM D5185に従って測定して、200~600ppmのホウ素原子を潤滑油組成物に提供するのに十分な量で潤滑油組成物に存在する油溶性又は油分散性ホウ素含有化合物;並びに
(v)任意選択で、60(600等)~1500ppmのモリブデン原子を潤滑油組成物に提供する油溶性又は油分散性モリブデン含有添加剤
を含むか又は混合することにより製作されるクランクケース潤滑油組成物が提供される。
【0017】
別の態様では、本明細書に記載の潤滑油組成物は、600~4000ppmの第4族、第5族、第10族、第11族、第12族、又は13族金属を含む。代替的に、本明細書に記載の潤滑油組成物は、500~3000ppmの第10族、第11族、第12族、又は第13族金属を含む。好ましくは、本明細書に記載の潤滑油組成物は、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、スズ、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、及びタンタルからなる群から選択される500~3000ppmの金属を含む。代替的に、本明細書に記載の潤滑油組成物は、500~3000ppmの亜鉛を含む。
【0018】
本発明は、(i)基油、(ii)清浄剤、及び(iii)1つ又は複数のアルカン酸亜鉛を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物であって、少なくとも600ppmの亜鉛を含み、a)ASTM D8074-16により決定して100時間以上の凝着摩耗、及びb)ASTM D892、オプションAにより決定して、24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積を有する潤滑油組成物にも関する。
【0019】
本発明は、(i)基油、(ii)清浄剤、及び(iii)1つ又は複数のアルカン酸亜鉛を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物であって、少なくとも1500ppmの亜鉛を含み、a)ASTM D8074-16により決定して100時間以上の凝着摩耗、及びb)ASTM D892、オプションAにより決定して、24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積を有する潤滑油組成物にも関する。
【0020】
本発明は、
(i)多量の1つ又は複数の基油;
(ii)式(I):
【化3】
(I)
により表され、
式中、
Mは、第4族、第5族、第10族、第11族、第12族、又は第13族金属であり(好ましくは、Mは第4族金属ではなく、例えば、Mは、Tiでも、Zrでも、Hfでもない)、
R
1、R
2、及びR
3の各々は、水素、又はC
1~C
20直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基であり、
R
4、R
5、及びR
6の各々は、独立して、C
1~C
20直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基であり、
1つ又は複数の金属アルカン酸塩は、600~1500ppmのM原子を潤滑油組成物に提供する、
1つ又は複数の金属アルカン酸塩;並びに
(iii)ASTM D5185に従って測定して、それぞれ200~4000ppmのカルシウム原子、マグネシウム原子、又はカルシウム原子及びマグネシウム原子を潤滑油組成物に提供する量の1つ又は複数のスルホン酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム、又はスルホン酸カルシウム及びスルホン酸マグネシウムの両方を含む清浄剤組成物
を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ネオデカン酸亜鉛を含むブレンド(実施例2、4、及び5)の凝着摩耗データを示すグラフである。実施例1及び3はネオデカン酸亜鉛を含まない。
【
図2】ステアリン酸亜鉛を含むブレンド(黒塗り)と比較した、ネオデカン酸亜鉛を含む実施例6及び7(網掛け)の起泡性能を示すグラフである。
【
図3】ネオデカン酸亜鉛を含むブレンド(実施例2、4、及び5)の凝着摩耗データを示すグラフである。データは平均である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本明細書及び本発明の請求項全ての目的では、以下の単語及び表現は、使用される場合、下記に記載される意味を有する。
本明細書の目的では、Chemical and Engineering News、63巻(5号)、27頁(1985年)に示されている、新しい付番スキームの元素周期表が使用される。アルカリ金属は、第1族金属(例えば、Li、Na、K等)である。アルカリ土類金属は、第2族金属(例えば、Mg、Ca、Ba等)である。
【0023】
「からなる(consists of)」又は「から本質的になる(consists essentially of)」又は同族語は、「含む(comprises)」又は同族語内に包含され得る。「から本質的になる」は、それが適用される組成物の特質に実質的に影響を及ぼさない物質が含まれることを許容する。
「多量」という用語は、組成物の質量に基づき、組成物の50質量%よりも多いこと、例えば組成物の60質量%よりも多いこと、例えば組成物の70質量%よりも多いこと、例えば組成物の80~99.9質量%であること、例えば組成物の80~99.009質量%であることを意味する。
「少量」という用語は、組成物の質量に基づき、組成物の50質量%以下であること、例えば組成物の40質量%以下であること、例えば組成物の30質量%以下であること、例えば20~0.001質量%であること、例えば20~0.1質量%であることを意味する。
「質量%」という用語は、別様の指示がない限り、グラム単位で測定された組成物の質量に基づく、成分の質量パーセントを意味し、代替的には質量(weight)パーセント(「質量(weight)%」、「質量(wt)%」又は「質量(w)/質量(w)%」)とも呼ばれる。
【0024】
「活性成分」(「a.i.」又は「A.I.」とも呼ばれる)という用語は、希釈剤でも溶媒でもない添加物質を指す。
本明細書で使用される「油溶性」及び「油分散性」という用語又は同族用語は、化合物又は添加剤が、油中にあらゆる割合で可溶性、溶解性、混和性であること、又は懸濁可能であることを必ずしも示すものではない。しかしながら、こうした用語は、化合物又は添加剤が、例えば、油が使用される環境において意図されている効果を発揮するのに十分な程度に油に可溶性であるか又は安定的に分散可能であることを意味する。更に、必要に応じて、他の添加剤を更に組み込むことにより、より高レベルの特定の添加剤の組込みを可能にすることもできる。
【0025】
「基」及び「ラジカル」という用語は、本明細書では同義的に使用される。
「炭化水素」という用語は、水素原子及び炭素原子の化合物を意味する。「ヘテロ原子」は、炭素又は水素以外の原子である。「炭化水素」、特に「精製炭化水素」が参照される場合、炭化水素には、少量[例えば、ヘテロ原子が炭化水素化合物の炭化水素特性を実質的に変更させない量]の1つ又は複数のヘテロ原子又はヘテロ原子含有基(ハロ、特にクロロ及びフルオロ、アミノ、アルコキシル、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホキシ等)も含まれていてもよい。
「ヒドロカルビル」という用語は、水素原子及び炭素原子を含むラジカルを意味する。好ましくは、この基は、別様の指定がない限り、水素原子及び炭素原子から本質的になり、より好ましくはのみからなる。好ましくは、ヒドロカルビル基は脂肪族ヒドロカルビル基を含む。「ヒドロカルビル」という用語は、本明細書で規定される「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、及び「アリール」を含む。ヒドロカルビル基は、ヒドロカルビル基の本質的にヒドロカルビル的な性質に影響を及ぼさない限り、炭素及び水素以外の1つ又は複数の原子/基を含んでもよい。当業者であれば、そのような原子/基(例えば、ハロ、特にクロロ及びフルオロ、アミノ、アルコキシル、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホキシ等)を認知しているだろう。
【0026】
「アルキル」という用語は、炭素及び水素のラジカル(例えばC1~C30、例えばC1~C12基)を意味する。化合物中のアルキル基は、典型的には、炭素原子を介して化合物に直接結合している。別様の指定がない限り、アルキル基は、直鎖状(つまり、非分岐鎖状)であってもよく又は分岐鎖状であってもよく、環状、非環状、又は部分的に環状/非環状であってもよい。好ましくは、アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状の非環状アルキル基を含む。アルキル基の代表的な例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、neo-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ジメチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、及びトリアコンチルが挙げられる。
【0027】
「アルケン」という用語は、少なくとも1つの二重結合を有する炭素及び水素の化合物(例えばC2~C30ラジカル、例えばC2~C12ラジカル)を意味する。
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を有する炭素及び水素のラジカル(例えばC2~C30ラジカル、例えばC2~C12ラジカル)を意味する。化合物中のアルケニル基は、典型的には、炭素原子を介して化合物に直接結合している。別様の指定がない限り、アルケニル基は、直鎖状(つまり、非分岐鎖状)であってもよく又は分岐鎖状であってもよく、環状、非環状、又は部分的に環状/非環状であってもよい。
「アルキレン」という用語は、直鎖状であってもよく又は分岐鎖状であってもよいC1~C20、好ましくはC1~C10の二価飽和脂肪族ラジカルを意味する。アルキレンの代表的な例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、1-メチルエチレン、1-エチルエチレン、1-エチル-2-メチルエチレン、1,1-ジメチルエチレン、及び1-エチルプロピレンが挙げられる。
「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素間三重結合を含むC2~C30(C2~C12等)ラジカルを意味する。
「アリール」という用語は、シクロペンタジエン、フェニル、ナフチル、及びアントラセニル等、少なくとも1つの芳香環を含む基を意味する。アリール基は、典型的には、1つ又は複数のヒドロカルビル基、ヘテロ原子、又はヘテロ原子含有基(ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、及びアミノ基等)により置換されていてもよいC5~C40(例えばC5~C18、例えばC6~C14)アリール基である。好ましいアリール基としては、フェニル基及びナフチル基並びにそれらの置換誘導体、特にフェニル及びフェニルのアルキル置換誘導体が挙げられる。
【0028】
「置換された」という用語は、水素原子が、炭化水素基、ヘテロ原子、又はヘテロ原子含有基で置き換えられていることを意味する。アルキル置換誘導体は、水素原子がアルキル基で置き換えられていることを意味する。「アルキル置換フェニル」は、水素原子が、アルキル基、例えばC1~C20アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、neo-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ジメチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、及び/又はトリアコンチルにより置き換えられているフェニル基である。
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨード等の、第17族原子又は第17族原子のラジカルを意味する。
【0029】
添加剤に関して「無灰」という用語は、添加剤が金属を含まないことを意味する。
添加剤に関して「灰分含有」という用語は、添加剤が金属を含むことを意味する。
添加剤に関する「有効量」という用語は、添加剤が所望の技術的効果を提供するための、潤滑油組成物中のそのような添加剤の量を意味する。
添加剤に関する「有効少量」という用語は、添加剤が所望の技術的効果を提供するための、潤滑油組成物の50質量%未満のそのような添加剤の量を意味する。
「ppm」という用語は、別様の指示がない限り、潤滑油組成物の総質量に基づく質量百分率を意味する。
潤滑油組成物の又は添加剤成分の「金属含有量」という用語、例えば、マグネシウム含有量、モリブデン含有量、又は総金属含有量(つまり、全ての個々の金属含有量の合計)は、ASTM D5185により測定される。
添加剤成分に関して又は潤滑油組成物(つまり、未使用潤滑油組成物)の、「TBN」とも呼ばれる「全塩基価」という用語は、ASTM D2896により測定される全塩基価を意味する。
「TAN」とも呼ばれる「全酸価」という用語は、ASTM D664により測定される全酸価を意味する。
【0030】
「凝着摩耗」という用語は、DD13スカッフィング試験とも呼ばれるASTM D8074-16により決定される。
「リン含有量」は、ASTM D5185により測定される。
「硫黄含有量」は、ASTM D2622により測定される。
「硫酸灰分含有量」は、ASTM D874により測定される。
「亜鉛含有量」は、ASTM D5185により測定される。
「ネオ酸」という用語は、カルボン酸官能基が第四級炭素原子に結合しており、第四級炭素に結合している他の部分が、飽和直鎖状、分岐鎖状、又は環状アルキル基である、高度分岐構造を呈するカルボン酸を意味する。
「ネオデカン酸」は、一般構造式C10H20O2を有するC10ネオ酸の混合物である。混合物の成分は、これらに限定されないが、2,2,3,5-テトラメチルヘキサン酸、2,4-ジメチル-2-イソプロピルペンタン酸、2,5-ジメチル-2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、及び2,2-ジエチルヘキサン酸を含む、2位の炭素に3つのアルキル基があるという共通の特性を有する酸である。
【0031】
「脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸」という用語は、脂肪族C7~C29、好ましくはC9~C27、最も好ましくはC11~C23ヒドロカルビル鎖を有するモノカルボン酸を意味する。そのような化合物は、本明細書では、脂肪族(C7~C29)、より好ましくは(C9~C27)、最も好ましくは(C11~C23)ヒドロカルビルモノカルボン酸、又はヒドロカルビル脂肪酸(式中、Cx~Cyは、脂肪酸の脂肪族ヒドロカルビル鎖の炭素原子の総数を指し、カルボキシル炭素原子の存在のため脂肪酸自体は、合計でCx+1~Cy+1個の炭素原子を含む)と呼ばれる場合がある。好ましくは、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸は、カルボキシル炭素原子を含めて、偶数個の炭素原子を有する。脂肪酸の脂肪族ヒドロカルビル鎖は、飽和であってもよく又は不飽和であってもよい(つまり、少なくとも1つの炭素間二重結合を含む)。好ましくは、脂肪族ヒドロカルビル鎖は不飽和であり、少なくとも1つの炭素間二重結合を含み、そのような脂肪酸は、天然供給源から(例えば、動物油又は植物油に由来する)及び/又は対応する飽和脂肪酸の還元により得ることができる。対応する脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステルの脂肪族ヒドロカルビル鎖の一部は不飽和であり(つまり、少なくとも1つの炭素間二重結合を含む)、硫黄等の他の作用剤と反応して、対応する官能化、例えば硫化、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステルを形成することが可能であることが理解されるだろう。
【0032】
「脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステル」という用語は、対応する脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸のモノカルボン酸官能基をエステル基へと変換することにより得ることが可能なエステルを意味する。好適には、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸のモノカルボン酸官能基は、ヒドロカルビルエステル、好ましくはアルキルエステル等のC1~C30脂肪族ヒドロカルビルエステル、好ましくはC1~C6アルキルエステル、特にメチルエステルに変換される。代替的に又は加えて、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸のモノカルボン酸官能基は、天然グリセロールエステルの形態であってもよい。したがって、「脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステル」という用語は、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸グリセロールエステル及び脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸C1~C30脂肪族ヒドロカルビルエステル[例えば、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸アルキルエステル、より好ましくは脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸C1~C6アルキルエステル、特に脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸メチルエステル]を包含する。好適には、「脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステル」という用語は、脂肪族(C7~C29)ヒドロカルビル、より好ましくは脂肪族(C9~C27)ヒドロカルビル、最も好ましくは脂肪族(C11~C23)ヒドロカルビル脂肪酸グリセロールエステル及び脂肪族(C7~C29)ヒドロカルビル、より好ましくは脂肪族(C9~C27)ヒドロカルビル、最も好ましくは脂肪族(C11~C23)ヒドロカルビル脂肪酸C1~C30脂肪族ヒドロカルビルエステルを包含する。好適には、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステルの硫化等の官能化を可能にするために、脂肪酸エステルの脂肪族ヒドロカルビル鎖の一部は不飽和であり、少なくとも1つの炭素間二重結合を含む。
「硫化脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステル」という用語は、本明細書で規定の脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステルを硫化することにより得られる化合物を意味する。
【0033】
本明細書に記載の潤滑油組成物及びそれらに対する特許請求の範囲内に含まれる成分に関する「非存在」という用語は、特定の成分が、潤滑油組成物の質量に基づき0質量%で存在するか、又は存在する場合でも、この成分は、潤滑油組成物特性に影響を及ぼさないレベル、例えば、10ppm未満、又は1ppm未満、又は0.001ppm未満で潤滑油組成物に存在することを意味する。
動粘度(KV100、KV40)は、ASTM D445-19aに準じて決定され、別様の指定がない限り、cStの単位で報告される。
別様の指示がない限り、報告されている全てのパーセンテージは、活性成分基準での質量%であり、つまりキャリア油又は希釈油には関わりがない。
また、使用される種々の成分、必須成分並びに最適成分及び慣用成分は、配合、保管、又は使用の条件下で反応する可能性があること、及び本発明は、あらゆるそのような反応の結果として得ることが可能であるか又は得られる産物も提供することが理解されるだろう。
更に、本明細書に示されているあらゆる上限量及び下限量、範囲及び比限界値は、独立して組み合わせることができることが理解される。
また、本発明の各態様の好ましい特徴は、本発明のあらゆる他の態様の好ましい特徴であるとみなされることも理解されるだろう。したがって、本発明の一態様の好ましい特徴及びより好ましい特徴は、本発明の同じ態様又は異なる態様の他の好ましい特徴及び/又はより好ましい特徴と独立して組み合わせることができる。
【0034】
本発明の詳細な説明
これから、本発明の各々の及び全ての態様に関する本発明の特徴を、必要に応じて、以下で更に詳細に説明するものとする。
本発明の潤滑油組成物は、油性キャリア(基油等)及び/又は他の添加剤と混合する前後で化学的に同じままであってもよく同じままでなくてもよい成分を含む。本発明は、混合前、又は混合後、又は混合前及び混合後の両方の成分を含む組成物を包含する。
更に、本明細書に示されているあらゆる上限量及び下限量、範囲及び比限界値は、独立して組み合わせることができることが理解される。
【0035】
潤滑油組成物
本発明は、
(i)潤滑組成物の質量に基づき、1~99質量%(代替的に30~95質量%、代替的に50~90質量%、代替的に60~95質量%、代替的に70~85質量%)の1つ又は複数の基油;
(ii)組成物の質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20質量%~5質量%、代替的に0.25~2質量%)の1つ又は複数の清浄剤;
(iii)組成物の質量に基づき、0.1~5質量%(特に0.5~3質量%、代替的に0.75~2質量%、代替的に0.75~1.5質量%)の、式(I):
【化4】
(I)
により表される1つ又は複数の金属アルカン酸塩であって、
式中、Mは、第4族、第5族、第10族、第11族、第12族、若しくは第13族金属、例えば金、銀、パラジウム、白金、ジルコニウム、バナジウム、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウムであるか、又は2、3、4、5、6、7、若しくは8つの金属の混合物、例えば亜鉛、ニッケル、銅、及びアルミニウムの2つ若しくは3つであるか、又は例えば亜鉛であり(代替的に、Mは、第4族及び/又は第7族及び/又は第15族の金属ではなく、例えば、Mは、Tiでも、Zrでも、Hfでも、Sbでも、Biでもない)、
R
1、R
2、及びR
3の各々は、水素、又はC
1~C
20(代替的にC
1~C
10、代替的にC
1~C
6、代替的にC
2~C
4)直鎖状、分岐鎖状、又は環状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、又はそれらの任意の異性体であり、
R
4、R
5、及びR
6の各々は、独立して、C
1~C
20(代替的にC
1~C
10、代替的にC
1~C
6、代替的にC
2~C
4)直鎖状、分岐鎖状、又は環状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、又はそれらの任意の異性体であり、
R
1+R
2+R
3=7個以上の炭素原子であり、つまり、R
1、R
2、及びR
3の炭素原子数の合計は、7個以上の炭素原子(代替的に7~40個、代替的に8~22個、代替的に7、8、9、10、11、12、13、又は14個の炭素原子)であり、R
4+R
5+R
6=7個以上の炭素原子であり、つまり、R
4、R
5、及びR
6の炭素原子数の合計は、7個以上の炭素原子(代替的に7~40個、代替的に8~22個、代替的に7、8、9、10、11、12、13、又は14個の炭素原子)である、
1つ又は複数の金属アルカン酸塩
を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物(「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物」、又は「潤滑剤油組成物」ともいう)に関し、
潤滑油組成物は、
a)100時間以上、例えば120時間以上、例えば130時間以上、例えば140時間以上の凝着摩耗(ASTM D8074-16により決定される)、並びに
b)24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積、例えば24℃で60ml以下及び93.5℃で40ml以下の気泡容積、例えば24℃で50ml以下及び93.5℃で30ml以下の気泡容積、好ましくは例えば24℃で70ml~0ml(70~20ml等)及び93.5℃で30ml~0、例えば50~20mlの気泡容積(ASTM D892、オプションAにより決定される)、並びに
c)7mg KOH/g以上、例えば7~15mg KOH/g、例えば7~12mg KOH/g、例えば7.5~11mg KOH/g、例えば8~10mg KOH/gの全塩基価(ASTM D2896により決定される)、並びに
d)任意選択で、24℃及び93.5℃で0mLの静置容積(ASTM D892、オプションAにより決定される)
を有する。
【0036】
本発明は、(i)基油、(ii)清浄剤、及び(iii)1つ又は複数のアルカン酸亜鉛を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物であって、少なくとも1000ppmの亜鉛(例えば、少なくとも1500ppm)を含み、
a)100時間以上、例えば120時間以上、例えば130時間以上、例えば140時間以上の凝着摩耗(ASTM D8074-16により決定される)、並びに
b)24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積、例えば24℃で60ml以下及び93.5℃で40ml以下の気泡容積、例えば24℃で50ml以下及び93.5℃で30ml以下の気泡容積、好ましくは例えば24℃で70ml~0ml(例えば70~20ml)及び93.5℃で30ml~0、例えば50~20mlの気泡容積(ASTM D892、オプションAにより決定される)
を有する、潤滑油組成物にも関する。
【0037】
本発明は、
A)潤滑組成物の質量に基づき、1~99質量%(代替的に30~95質量%、代替的に50~90質量%、代替的に60~95質量%、代替的に70~85質量%)の1つ若しくは複数の基油、
(B)潤滑組成物の総質量に基づき、0.1~5質量%(特に0.5~3質量%、代替的に0.75~2質量%、代替的に0.75~1.5質量%)の、本明細書に記載の1つ若しくは複数の金属アルカン酸塩、特に上記に記載の式(I)により表されるもの、
C)潤滑組成物の総質量に基づき、0.1~20質量%(特に0.5~8質量%、代替的に0.5~2.3質量%)の1つ若しくは複数の清浄剤(清浄剤のブレンド等)、
D)任意選択で、潤滑組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%(特に0.1~4質量%、代替的に0.25~3質量%)の1つ若しくは複数の摩擦調整剤(摩擦調整剤のブレンド等)、
E)任意選択で、潤滑組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%(特に0.01~3質量%、代替的に0.1~1.5質量%)の1つ若しくは複数の抗酸化剤(抗酸化剤のブレンド等)、
F)任意選択で、潤滑組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%(特に0.01~3質量%、代替的に0.1~1.5質量%)の1つ若しくは複数の流動点降下剤(流動点降下剤のブレンド等)、
G)任意選択で、潤滑組成物の総質量に基づき、0.001~5質量%(特に0.01~3質量%、代替的に0.1~1.5質量%)の1つ若しくは複数の消泡剤(消泡剤のブレンド等)、
H)任意選択で、潤滑組成物の総質量に基づき、0.001~6質量%(特に0.01~5質量%、代替的に0.1~4質量%、代替的に0.1~2質量%、代替的に0.1~1質量%)の1つ若しくは複数の粘度調整剤(粘度調整剤のブレンド等)、
I)任意選択で、潤滑組成物の総質量に基づき、0.01~20質量%(特に0.1~12質量%、代替的に0.1~8質量%)の1つ若しくは複数の分散剤(分散剤のブレンド等)、
J)任意選択で、潤滑組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%(特に0.1~3質量%、代替的に0.1~1.5質量%)の1つ若しくは複数の抑制剤及び/若しくは防錆剤(抑制剤及び/若しくは防錆剤のブレンド等)、並びに/又は
K)任意選択で、潤滑組成物の総質量に基づき、0.001~5質量%(特に0.1~3質量%、代替的に05~1.5質量%)の1つ又は複数の耐摩耗剤(耐摩耗剤のブレンド等)
を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物であって、
潤滑剤は、
a)100時間以上、例えば120時間以上、例えば130時間以上、例えば140時間以上、例えば120時間~200時間の凝着摩耗、並びに
b)任意選択で、24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積、例えば24℃で60ml以下及び93.5℃で40ml以下の気泡容積、例えば24℃で50ml以下及び93.5℃で30ml以下の気泡容積、好ましくは例えば24℃で70ml~0ml(例えば70~20ml)及び93.5℃で30ml~0、例えば50~20mlの気泡容積(ASTM D892、オプションAにより決定される)、並びに
c)任意選択で、7mg KOH/g以上、例えば7~15mg KOH/g、例えば7~12mg KOH/g、例えば7.5~11mg KOH/g、例えば8~10mg KOH/gの全塩基価(ASTM D2896により決定される)
を有する、潤滑油組成物にも関する。
【0038】
本発明及びそれに対する特許請求の範囲の目的では、成分B)金属アルカン酸塩は、たとえそれらが同様の特性を示す可能性があるとしても、質量パーセントを決定するために、上記の要素C、D、E、F G、H、I、J、及び/又はKには追加されない。例えば、要素B)金属アルカン酸塩は、摩耗に肯定的な影響を及ぼすが、耐摩耗剤の質量パーセントを決定するために要素K)には追加されない。
【0039】
実施形態では、要素D、E、F G、H、I、J、及びKの全ては、基油、清浄剤、及び上記に記載の式(I)により表される1つ又は複数の金属アルカン酸塩に加えて、存在する。
実施形態では、要素D、E、F G、H、I、及びJは、基油、清浄剤、及び上記に記載の式(I)により表される1つ又は複数の金属アルカン酸塩に加えて、存在する。
実施形態では、要素I、F、及びGは、基油、清浄剤、及び上記に記載の式(I)により表される1つ又は複数の金属アルカン酸塩に加えて、存在する。
実施形態では、要素D、E、F G、H、I、及びJは、基油、清浄剤、及び上記に記載の式(I)により表される1つ又は複数の金属アルカン酸塩に加えて、存在する。
実施形態では、要素I、F、及びGは、基油、清浄剤、及び上記に記載の式(I)により表される1つ又は複数の金属アルカン酸塩に加えて、存在する。
【0040】
好適には、潤滑剤組成物は、ASTM D8074により測定して、100時間以上、代替的に120時間以上、代替的に130時間以上、代替的に140時間以上、例えば100~200時間の凝着摩耗を有してもよい。
好適には、潤滑剤組成物は、ASTM D892、オプションAにより測定して、24℃で70ml以下、代替的に50ml以下、代替的に30ml以下、例えば1~70ml、例えば0~70mlの気泡容積を有してもよい。
好適には、潤滑剤組成物は、ASTM D892、オプションAにより測定して、93℃で50ml以下、代替的に30ml以下、代替的に20ml以下、代替的に10ml以下、例えば1~50ml、例えば0~30mlの気泡容積を有してもよい。
好適には、潤滑剤組成物は、ASTM D892により測定して、24℃で70ml以下、代替的に50ml以下、代替的に30ml以下、例えば1~70mlの気泡容積、及び93.5℃で30ml以下、代替的に20ml以下、代替的に10ml以下、例えば1~30mlの気泡容積を有してもよい。
好適には、潤滑剤組成物は、ASTM D2896により測定して、4~15mg KOH/g、好ましくは5~12mg KOH/g、例えば7~11mg KOH/g、例えば8~10mg KOH/gの全塩基価(TBN)を有してもよい。
【0041】
好適には、潤滑剤組成物は、
i)ASTM D8074-16により測定して、100時間以上、代替的に120時間以上、代替的に130時間以上、代替的に140時間以上の凝着摩耗、及び
ii)ASTM D892、オプションAにより測定して、24℃で70ml以下、代替的に50ml以下、代替的に30ml以下の気泡容積、
iii)ASTM D892、オプションAにより測定して、93.5℃で30ml以下、代替的に20ml以下、代替的に10ml以下の気泡容積、及び
iv)ASTM D2896により測定して、4~15mg KOH/g、好ましくは5~12mg KOH/g、例えば7~11mg KOH/g、例えば8~10mg KOH/gの全塩基価(TBN)
を有してもよい。
【0042】
好適には、潤滑剤組成物は、式(I)により表される金属アルカン酸塩、例えばネオデカン酸亜鉛の代わりにステアリン酸亜鉛が使用されることを除いて同じ条件下で試験する同じ配合物で測定されるTBN量よりも、少なくとも5%大きい(代替的に少なくとも10%大きい、代替的に少なくとも20%大きい、代替的に少なくとも50%大きい)全塩基価(ASTM D2896)を有してもよい。
代替的には、潤滑剤組成物は、式(I)により表される金属アルカン酸塩、例えばネオデカン酸亜鉛が存在しないことを除いて同じ条件下で試験する同じ配合物で測定されるTBN量よりも、少なくとも10%大きい(代替的に少なくとも20%大きい、代替的に少なくとも50%大きい)全塩基価(ASTM D2896)を有してもよい。
好適には、潤滑剤組成物は、式(I)により表される金属アルカン酸塩、例えばネオデカン酸亜鉛の代わりにステアリン酸亜鉛が使用されることを除いて同じ条件下で試験する同じ配合物で測定される凝着摩耗よりも、少なくとも20%大きい(代替的に少なくとも30%大きい、代替的に少なくとも40%大きい、代替的に少なくとも50%大きい、代替的に少なくとも60%大きい、代替的に少なくとも70%大きい、代替的に少なくとも100%大きい)、ASTM D8074により測定される凝着摩耗を有してもよい。
【0043】
好適には、潤滑剤組成物は、式(I)により表される金属アルカン酸塩、例えばネオデカン酸亜鉛が存在しないことを除いて同じ条件下で試験する同じ配合物で測定される凝着摩耗よりも、少なくとも20%大きい(代替的に少なくとも30%大きい、代替的に少なくとも40%大きい、代替的に少なくとも50%大きい、代替的に少なくとも60%大きい、代替的に少なくとも70%大きい、代替的に少なくとも100%大きい)、ASTM D8074により測定される凝着摩耗を有してもよい。
【0044】
本発明の潤滑組成物は、ASTM D5185により測定して、潤滑組成物の総質量に基づき、低レベルの、即ち1600以下、好ましくは1200以下、より好ましくは800以下、例えば1~1600、例えば5~1200、例えば10~800百万分率(ppm)のリンを含んでいてもよい。
本発明の潤滑組成物は、ASTM D5185により測定して、潤滑組成物の総質量に基づき、1.2~4.8、代替的に2.0~4.5、好ましくは2.5~4.0の亜鉛原子対リン原子比を含んでいてもよい。
典型的には、潤滑組成物は、低レベルの硫黄を含んでいてもよい。好ましくは、潤滑組成物は、ASTM D2622により測定して、潤滑組成物の総質量に基づき、最大で0.4質量%、より好ましくは最大で0.3質量%、最も好ましくは最大で0.2質量%、例えば0.1~0.4質量%の硫黄を含む。
【0045】
典型的には、潤滑組成物は、低レベルの硫酸灰分、ASTM D874により測定して、潤滑組成物の総質量に基づき、例えば、1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、代替的に0.001~0.5質量%の硫酸灰分を含んでいてもよい。
一般に、潤滑組成物の100℃における動粘度(「KV100」)は、2~30cSt、例えば2~20cSt、例えば5~15cStの範囲である(ASTM D445-19aに従って決定される)。
一般に、潤滑組成物の全塩基価は、1~30、例えば5~15mg KOH/gの範囲である(ASTM D2896に従って決定される)。
一般に、潤滑組成物の150℃及び1.0×106s-1剪断速度での高温高剪断粘度(HTHS)は、0.5~20、例えば1~10cP、例えば2~4cPである(ASTM D4683-20に従って決定される)。
【0046】
好ましくは、本発明の潤滑組成物は、粘度記述記号SAE 20W-X、SAE 15W-X、SAE 10W-X、SAE 5W-X、又はSAE 0W-Xにより識別されるマルチグレード油であり、この場合、Xは、8、12、16、20、30、40、及び50のいずれか1つを表す。様々な粘度グレードの特質は、SAE J300分類に見出すことができる。潤滑組成物は、好ましくは、SAE 10W-X、SAE 5W-X、又はSAE 0W-Xの形態であり、より好ましくはSAE 5W-X又はSAE 0W-Xの形態であり、この場合、Xは、8、12、16、20、30、40、及び50のいずれか1つを表す。好ましくは、Xは、8、12、16、又は20である。(以前は自動車技術会として知られていたSAEインターナショナルにより刊行されている標準SAE J300を参照。)
【0047】
A.基油
本明細書で有用な基油(「ベースストック」、「潤滑油ベースストック」、又は「潤滑粘度の油」とも呼ばれる)は、単一の油であってもよく又は油のブレンドであってもよく、典型的には、潤滑剤とも呼ばれる潤滑組成物の大きな液体成分であり、それに対して、例えば最終潤滑剤組成物、濃縮物、又は他の潤滑組成物等の潤滑組成物を生産するために添加剤及び任意選択で追加の油がブレンドされる。
基油は、植物潤滑油、動物潤滑油、鉱物潤滑油、合成潤滑油、及びそれらの混合物から選択することができる。基油は、粘度の点で、軽質留分鉱物油から、ガスエンジン油、鉱物潤滑油、自動車油、及び大型ディーゼル油等の重潤滑油まで多岐にわたり得る。一般に、基油の100℃における動粘度(「KV100」)は、2~30、特に5~20cStの範囲である(ASTM D445-19aに従って決定される)。一般に、基油の150℃及び1.0×106s-1剪断速度での高温高剪断粘度(HTHS)は、0.5~20cP、例えば1~10cP、例えば2~5cPの範囲である(ASTM D4683-20に従って決定される)。
【0048】
典型的には、潤滑油ベースストックを使用して濃縮物を製作する場合、潤滑油ベースストックは、有利には、濃縮物の質量に基づき、1~99質量%、5質量%~80質量%、10質量%~70質量%、又は5質量%~50質量%の活性成分を含む濃縮物をもたらす濃縮物形成量で存在してもよい。
基油として有用な一般的な油としては、動物油及び植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、液体石油、並びにパラフィン系、ナフテン系、及びパラフィン系-ナフテン系混合タイプの水素化精製及び/又は溶媒処理鉱物潤滑油が挙げられる。石炭又はシェールに由来する油も有用な基油である。ベースストックは、これらに限定されないが、蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化、及び再精製を含む、様々な異なるプロセスを使用して製造することができる。
基油として本明細書で有用な合成潤滑油としては、ポリアルファオレフィン又はPAO又はグループIV基油と呼ばれる、単独重合及び共重合オレフィン等の炭化水素油が挙げられる[API EOLCS 1509定義(米国石油協会出版物1509、セクションE.1.3、第19版、2021年1月、www.API.orgを参照)による]。基油として有用なPAOの例としては、ポリ(エチレン)、エチレン及びプロピレンのコポリマー、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)、C8~C20アルケンのホモポリマー又はコポリマー、C8及び/又はC10及び/又はC12アルケンのホモポリマー又はコポリマー、C8/C10コポリマー、C8/C10/C12コポリマー、並びにC10/C12コポリマー、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体が挙げられる。
【0049】
別の実施形態では、基油は、100℃で10以上の動粘度(ASTM D445により測定される)を有し、好ましくは、ASTM D2270により決定して、100以上、好ましくは110以上、より好ましくは120以上、より好ましくは130以上、より好ましくは140以上の粘度指数(「VI」)を有し、及び/又は-5℃以下、より好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下の流動点(ASTM D97により測定される)を有する、6~14個の炭素原子、より好ましくは8~12個の炭素原子、より好ましくは10個の炭素原子を有する直鎖状オレフィンのオリゴマーを含むポリアルファオレフィンを含む。
【0050】
別の実施形態では、本発明で有用なポリアルファオレフィンオリゴマーは、C20~C1500パラフィン、好ましくはC40~C1000パラフィン、好ましくはC50~C750パラフィン、好ましくはC50~C500パラフィンを含む。PAOオリゴマーは、一実施形態では、C5~C14アルファ-オレフィン、及び別の実施形態ではC6~C12アルファ-オレフィン、及び別の実施形態ではC8~C12アルファ-オレフィンの二量体、三量体、四量体、五量体等である。好適なオレフィンとしては、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、及び1-ドデセンが挙げられる。一実施形態では、オレフィンは1-デセンであり、PAOは、1-デセンの二量体、三量体、四量体、及び五量体(及びより高次体)の混合物である。有用なPAOは、例えば、米国特許第5,171,908号明細書及び第5,783,531号明細書、並びにSynthetic Lubricants and High-Performance Functional Fluids 1~52頁(Leslie R.Rudnick&Ronald L.Shubkin編 Marcel Dekker,Inc.1999年)により詳細に記載されている。
【0051】
本発明において有用なPAOは、典型的には、一実施形態では100~21,000g/mol、別の実施形態では200~10,000g/mol、更に別の実施形態では200~7,000g/mol、更に別の実施形態では200~2,000g/mol、更に別の実施形態では200~500g/molの数平均分子量を有する。望ましいPAOは、SpectraSyn(商標)Hi-Vis、SpectraSyn(商標)Low-Vis、SpectraSyn(商標)plus、SpectraSyn(商標)Elite PAO(ExxonMobil Chemical Company社、テキサス州ヒューストン)及びIneos Oligomers USA LLC社のDurasyn PAO’sとして市販されている。
【0052】
基油として有用な合成潤滑油としては、単独重合及び共重合の、アルキルベンゼン[例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン];ポリフェノール(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びにアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド;並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体等の炭化水素油も挙げられる。
基油として有用な合成潤滑油の別の好適な種類は、様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)と反応させた、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸(sebasic acid)、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)のエステルを含む。こうしたエステルの特定の例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、並びに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることにより形成される複合エステルが挙げられる。
【0053】
本明細書にて合成油として有用なエステルとしては、C5~C12モノカルボン酸及びポリオールから製作されるもの、並びにポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、及びトリペンタエリトリトールも挙げられる。
望ましいエステル基油は、Esterex(商標)エステル(ExxonMobil Chemical Company社、テキサス州ヒューストン)として市販されている。
ポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-、又はポリアリールオキシシリコーン油及びシリケート油等のシリコンベース油は、本明細書で有用な別の有用な種類の合成潤滑剤を構成する。そのような油としては、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル)シリケート、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン、及びポリ(メチルフェニル)-シロキサンが挙げられる。
【0054】
本明細書で有用な他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デシルホスホン酸のジエチルエステル)、及びポリマー性テトラヒドロフランが挙げられる。
未精製油、精製油、及び再精製油を、本発明の潤滑組成物に使用することができる。未精製油は、更なる精製処理を行わずに天然供給源又は合成供給源から直接得られる油である。例えば、レトルト操作から直接得られるシェールオイル、蒸留から直接得られる石油、又はエステル化プロセスから直接得られ、更なる処理を行わずに使用されるエステル油は、未精製油とみなされる。精製油は、1つ又は複数の特性を向上させるために1つ又は複数の精製ステップで更に処理されていることを除いて、未精製油と同様である。蒸留、溶媒抽出、酸又は塩基抽出、濾過、及びパーコレーション等の多くのそのような精製技法が当業者により使用されている。再精製油は、以前に役務に使用されていた以前の精製油に精製プロセスが適用される、精製油を得るために使用されるプロセスと同様のプロセスにより得られる油である。そのような再精製油は、再生油又は再処理油とも呼ばれ、多くの場合、廃添加剤及び油分解産物を除去するために追加処理される。再精製基油は、好ましくは、製造、夾雑、又は以前の使用により導入された物質を実質的に含まない。
【0055】
有用な基油の他の例は、ガス液化(GTL)基油であり、つまり基油は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して、H2及びCOを含む合成ガス(「synガス」)から製作される炭化水素に由来する油である。こうした炭化水素は、基油として有用なものにするためには、典型的には更なる処理が必要である。例えば、こうした炭化水素を、当技術分野で公知の方法により、水素化異性化してもよく、水素化分解及び水素化異性化してもよく、脱ろうしてもよく、又は水素異性化及び脱ろうしてもよい。有用なGTL基油及びそれらのブレンドの更なる情報は、米国特許第10,913,916号明細書(第4欄62行目~第5欄60行目)及び第10,781,397号明細書(第14欄54行目~第15欄5行目、及び第16欄44行目~第17欄55行目)を参照されたい。
【0056】
種々の基油は、多くの場合、API EOLCS 1509定義(米国石油協会出版物1509、セクションE.1.3、第19版、2021年1月、www.API.orgを参照)に従ってグループI、II、III、IV、又はVに分類される。一般的に言えば、グループIベースストックは、約80~120の粘度指数を有し、約0.03%よりも多くの硫黄及び/又は約90%未満の飽和物を含む。グループIIベースストックは、約80~120の粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄及び約90%以上の飽和物を含む。グループIIIベースストックは、約120よりも高い粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄及び約90%よりも多くの飽和物を含む。グループIVベースストックとしては、ポリアルファオレフィン(PAO)が挙げられる。グループVベースストックとしては、グループI~IVに含まれないベースストックが挙げられる。(粘度指数はASTM D2270により測定され、飽和物はASTM D2007により測定され、硫黄はASTM D2622、ASTM D4294、ASTM D4927、及びASTM D3120により測定される)。
【0057】
本開示で有用な配合潤滑組成物に使用するための基油は、本明細書に記載の様々な油のいずれか1つ、2つ、3つ、又はそれよりも多くである。望ましい実施形態では、本開示で有用な配合潤滑組成物に使用するための基油は、APIグループI、グループII、グループIII(グループIII+を含む)、グループIV、及びグループVの油として記載されているもの並びにそれらの混合物、好ましくはAPIグループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油並びにそれらの混合物、より好ましくは、それらの優れた揮発性、安定性、粘度、及び清浄性特徴のため、グループIII、グループIII+、IV、及びグループVの基油である。ブレンドして配合潤滑油製品にするための添加剤を希釈するために使用される量等、少量のグループIベースストックは許容することができるが、典型的には最低限に、例えば「受領時」基準の使用される添加剤の希釈剤/キャリア油としての使用にのみ関連する量に抑えられる。グループIIストックに関しては、グループIIベースストックは、そのストックに関連してより高品質の範囲にあること、つまり100~120の範囲の粘度指数を有するグループIIストックであることがより有用である。
【0058】
本明細書で有用な基油は、合成油、天然油、又は再精製油(火花点火式エンジン及び圧縮点火式エンジンのクランクケース潤滑油として典型的に使用されるもの等)のいずれかから選択することができる。必要に応じて、合成基油及び/又は天然基油及び/又は再精製基油の混合物を使用してもよい。必要に応じて、グループI、II、III、IV、及び/又はVベースストックの多峰混合物(二峰混合物又は三峰混合物等)を使用してもよい。
本明細書で使用される基油又は基油ブレンドは、従来は、100℃で約2~約40cSt、代替的に3~30cSt、代替的に4~20cSt、代替的に5~10cStの動粘度[KV100、ASTM D445-19aに従って測定され、センチストーク(cSt)又はそれに相当するmm2/sの単位で報告される]を有し、代替的に、基油又は基油ブレンドは、100℃で2~20cSt、2.5~2cSt、好ましくは約2.5cSt~約9cStの動粘度を有してもよい。
基油又は基油ブレンドは、ASTM D2007により決定して、好ましくは、少なくとも65質量%、より好ましくは少なくとも75質量%、例えば少なくとも85質量%、例えば90質量%よりも多くの飽和含有量を有する。
好ましくは、基油又は基油ブレンドは、ASTM D2622により測定して、潤滑組成物の総質量に基づき、1質量%未満、好ましくは0.6質量%未満、最も好ましくは0.4質量%未満、例えば0.3質量%未満の硫黄含有量を有することになる。
【0059】
実施形態では、基油又は基油ブレンドの揮発性は、Noack試験(ASTM D5800、手順B)により測定して、潤滑組成物の総質量に基づき、30質量%以下、例えば25質量%以下、例えば20質量%以下、例えば16質量%以下、例えば12質量%以下、例えば10質量%以下である。
実施形態では、基油の粘度指数(VI)は、少なくとも95、好ましくは少なくとも110、より好ましくは少なくとも120、更により好ましくは少なくとも125、最も好ましくは約130~240、特に約105~140である(ASTM D2270により決定される)。
【0060】
基油は、潤滑剤を構成する少量の後述する1つ又は複数の添加剤成分と組み合わせて多量にて提供してもよい。この調製は、添加剤を油に直接添加することにより、又は1つ若しくは複数の添加剤をそれらの濃縮物の形態で添加し、添加剤を分散若しくは溶解させることにより達成することができる。添加剤は、他の添加剤の添加前、添加と同時に、又は添加後のいずれかで、当業者に公知の任意の方法により油に添加することができる。
基油は、添加剤濃縮物を構成する少量の後述する1つ又は複数の添加剤成分と組み合わせて、少量にて提供してもよい。この調製は、添加剤を油に直接添加することにより、又は1つ若しくは複数の添加剤をそれらの溶液、スラリー、若しくは懸濁物の形態で添加し、添加剤を油に分散若しくは溶解させることにより達成することができる。添加剤は、他の添加剤の添加前、添加と同時に、又は添加後のいずれかで、当業者に公知の任意の方法により油に添加することができる。
基油は、典型的には、本開示のエンジン油潤滑剤組成物の主成分を構成し、典型的には、組成物の総質量に基づき、約50~約99質量%、好ましくは約70~約95質量%、好ましくは約80~約95質量%の範囲の量で存在する。
典型的には、1つ又は複数の基油は、潤滑組成物の総質量に基づき、32質量%以上、代替的に55質量%以上、代替的に60質量%以上、代替的に65質量%以上の量で潤滑組成物中に存在する。典型的には、1つ又は複数の基油は、98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更により好ましくは90質量%以下の量で潤滑組成物中に存在する。代替的には、1つ又は複数の基油は、潤滑組成物の質量に基づき、1~99質量%、代替的に50~97質量%、代替的に60~95質量%、代替的に70~95質量%で潤滑組成物中に存在する。
【0061】
本発明は、本明細書に記載の官能化水素化/飽和ポリマー、並びに少なくとも40質量%の炭化水素基油、例えばグループI、II、及び/又はIIIの油、例えばグループII又はIIIの油を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物にも関する。
本発明は、本明細書に記載の官能化水素化/飽和ポリマー、並びに少なくとも1質量%の炭化水素基油、例えばグループI、II、及び/又はIIIの油、例えばグループI又はIIの油を含むか又は混合することから得られる添加剤濃縮物にも関する。
上記に記載の基油及びそれらのブレンドは、濃縮物の製作にも、並びにそれらからの潤滑剤の製作にも有用である。
【0062】
濃縮物は、使用前の添加剤取扱い、並びに潤滑剤への添加剤の溶解又は分散を容易にする便利な手段である。1つよりも多くのタイプの添加剤(「添加剤成分」と呼ばれることもある)を含む潤滑剤を調製する場合、各添加剤は、各々濃縮物の形態で別々に組み込むことができる。しかしながら、多くの場合では、後述するような1つ又は複数の共添加剤を単一の濃縮物中に含む、いわゆる添加剤「パッケージ」(「アドパック」とも呼ばれる)を提供するのが好都合である。
添加剤パッケージ又はアドパックとも呼ばれる濃縮物は、典型的には50質量%未満(例えば、40%未満、例えば30質量%未満、例えば25%未満、例えば20%未満)の基油を有する組成物であり、典型的には次いで、それに、更なる基油、並びに粘度調整剤及び流動点降下剤等の他の成分を更に混合して潤滑油製品が形成される。
【0063】
本発明は、
(i)組成物の質量に基づき、1~50質量%未満(代替的に5~45質量%、代替的に7~40質量%、代替的に10~35質量%、代替的に10~25質量%)の1つ又は複数の基油;
(ii)組成物の質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20質量%~5質量%、代替的に0.25~2質量%)の1つ又は複数の清浄剤;
(iii)組成物の質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20質量%~5質量%、代替的に0.25~2質量%)の1つ又は複数の分散剤(PIBSA-PAM等);及び
(iv)組成物の質量に基づき、0.01~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20~5質量%、代替的に0.25~2質量%)の、式(I):
【化5】
(I)
により表され、
式中、Mは、第4族、第5族、第10族、第11族、第12族、若しくは第13族金属、例えば金、銀、パラジウム、白金、ジルコニウム、バナジウム、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウムであるか、又は2、3、4、5、6、7、若しくは8つの金属の混合物、例えば亜鉛、ニッケル、銅、及びアルミニウムの2つ若しくは3つであるか、又は例えば亜鉛であり、好ましくは、Mは、Ti、Zr、若しくはHf等の第4族の金属ではなく、
R
1、R
2、及びR
3の各々は、水素、又はC
1~C
20(代替的にC
1~C
10、代替的にC
1~C
6、代替的にC
2~C
4)直鎖状、分岐鎖状、又は環状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、又はそれらの任意の異性体であり、
R
4、R
5、及びR
6の各々は、独立して、C
1~C
20(代替的にC
1~C
10、代替的にC
1~C
6、代替的にC
2~C
4)直鎖状、分岐鎖状、又は環状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、又はそれらの任意の異性体であり、
R
1+R
2+R
3=7個以上の炭素原子であり、つまり、R
1、R
2、及びR
3の炭素原子数の合計は、7個以上の炭素原子(代替的に7~40個、代替的に8~22個、代替的に7、8、9、10、11、12、13、又は14個の炭素原子)であり、R
4+R
5+R
6=7個以上の炭素原子であり、つまり、R
4、R
5、及びR
6の炭素原子数の合計は、7個以上の炭素原子(代替的に7~40個、代替的に8~22個、代替的に7~20個、代替的に7、8、9、10、11、12、13、又は14個の炭素原子)である、
1つ又は複数の金属アルカン酸塩の1つ又は複数;
(v)任意選択の追加成分、抗酸化剤、流動点降下剤、消泡剤、粘度調整剤、腐食防止剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、抗乳化剤、シール適合剤(seal compatibility agent)、添加剤希釈基油、摩擦調整剤(例えば有機FM、例えば有機エステル、例えば脂肪酸エステル)、酸捕捉剤等
を含むか又は混合することから得られる濃縮物組成物に関する。
【0064】
B.金属アルカン酸塩
有用な金属アルカン酸塩としては、第四級炭素を介してカルボキシレート官能基に結合した分岐鎖状炭化水素、好ましくは飽和炭化水素を有するものが挙げられる。例えば、本明細書で有用な金属アルカン酸塩としては、式(I):
【化6】
(I)
により表され、
式中、Mは、第4族、第5族、第10族、第11族、又は第12族金属、例えばニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、スズ、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、又は第4族、第5族、第10族、第11族、及び第12族金属の2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又はそれよりも多くの混合物であり、好ましくは、Mは、ジルコニウム、バナジウム、又は亜鉛であり、好ましくは、Mは亜鉛であり(代替的に、Mは、Ti、Zr、又はHf等の第4族金属ではなく、代替的にMはTiではない)、
R
1、R
2、及びR
3の各々は、水素、又はC
1~C
20(代替的にC
1~C
10、代替的にC
1~C
6、代替的にC
2~C
4)直鎖状、分岐鎖状、又は環状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、又はそれらの任意の異性体であり、R
1、R
2、及びR
3の3、2、1、又は0個は水素であり、
R
4、R
5、及びR
6の各々は、独立して、C
1~C
20(代替的にC
1~C
10、代替的にC
1~C
6、代替的にC
2~C
4)直鎖状、分岐鎖状、又は環状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、又はそれらの任意の異性体であり、
R
1+R
2+R
3=7個以上の炭素原子であり、つまり、R
1、R
2、及びR
3の炭素原子数の合計は7個以上の炭素原子(代替的に7~40個、代替的に8~22個、代替的に7、8、9、10、11、12、13、又は14個の炭素原子)であり、
R
4+R
5+R
6=7個以上の炭素原子であり、つまり、R
4、R
5、及びR
6の炭素原子数の合計は7個以上の炭素原子(代替的に7~40個、代替的に8~22個、代替的に7、8、9、10、11、12、13、又は14個の炭素原子)であり、
潤滑剤は、100時間以上の凝着摩耗(ASTM D8074-16により決定される)、並びに任意選択で24℃で70ml以下の気泡容積及び93.5℃で50ml以下の気泡容積(ASTM D892、オプションAにより決定される)、並びに任意選択で7mg KOH/g以上の全塩基価(ASTM D2896により決定される)を有し、
R
1+R
2+R
3及びR
4+R
5+R
6は同じであってもよく又は異なっていてもよく、独立して、7個以上の炭素原子、例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個の炭素原子、特に10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の炭素原子である、
ものが挙げられる。
【0065】
特に、R1、R2、及びR3は、1つ又は複数のネオ酸に由来し、R4、R5、及びR6は、同じ又は異なるネオ酸(例えば、ネオデカン酸、ネオウンデカン酸、ネオドデカン酸、ネオトリデカン酸、ネオテトラデカン酸、ネオペンタデカン酸、ネオヘキサデカン酸、ネオヘプタデカン酸、ネオオクタデカン酸、ネオノナデカン酸、ネオエイコサン酸、及びそれらの異性体)に由来する。
【0066】
特に、有用な金属アルカン酸塩としては、これらに限定されないが、ネオデカン酸、ネオウンデカン酸、ネオドデカン酸、ネオトリデカン酸、ネオテトラデカン酸、ネオペンタデカン酸、ネオヘキサデカン酸、ネオヘプタデカン酸、ネオオクタデカン酸、ネオノナデカン酸、ネオエイコサン酸、及びそれらの任意の異性体等の、1つ又は複数のネオ酸を用いて調製されたものが挙げられる。
特に、有用な金属アルカン酸塩は、ネオデカン酸塩及び/又はエチルヘキサン酸塩であってもよい。
特に、有用な金属アルカン酸塩は24℃で液体であり、好ましくは60℃で液体である。特に、有用な金属アルカン酸塩は、好ましくは、エンジン始動温度、例えば、-32℃以上、例えば0℃以上、例えば30℃以上、例えば40℃以上、例えば60℃以上、例えば-30℃~60℃、例えば0~80℃未満で液体であり、エンジン作動温度、例えば80℃以上、例えば150℃以上、例えば200℃以上で液体である。実施形態では、金属アルカン酸塩は、-15℃で液体であり、80℃で液体である。
【0067】
特に、有用な金属アルカン酸塩は、0℃未満、好ましくは-10℃未満、代替的に-15℃未満の融点を有する。
特に、望ましい金属アルカン酸塩としては、金属ネオデカン酸塩、金属ネオウンデカン酸塩、金属ネオドデカン酸塩、金属ネオトリデカン酸塩、金属ネオテトラデカン酸塩、金属ネオペンタデカン酸塩、金属ネオヘキサデカン酸塩、金属ネオヘプタデカン酸塩、金属ネオオクタデカン酸塩(metalneooctadecanoiate)、金属ネオノナデカン酸塩、金属ネオエイコサン酸塩、及びそれらの異性体が挙げられ、金属は、第4族、第5族、第10族、第11族、若しくは第12族金属、例えばニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、スズ、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタルから選択されるか、又は第4族、第5族、第10族、第11族、若しくは第12族金属、例えば亜鉛、バナジウム、及び/若しくはジルコニウムの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つの混合物であり、好ましくは金属は亜鉛である(代替的に、Mは、Ti、Zr、又はHf等の第4族金属ではない)。
【0068】
特に望ましい金属アルカン酸塩としては、アルカン酸亜鉛、例えばC18~C60ネオアルカン酸亜鉛(代替的にC20~C40ネオアルカン酸亜鉛)、例えばネオデカン酸亜鉛、ネオウンデカン酸亜鉛、ネオドデカン酸亜鉛、ネオトリデカン酸亜鉛、ネオテトラデカン酸亜鉛、ネオペンタデカン酸亜鉛、ネオヘキサデカン酸亜鉛、ネオヘプタデカン酸亜鉛、ネオオクタデカン酸亜鉛、ネオノナデカン酸亜鉛、ネオエイコサン酸亜鉛、及びそれらの異性体が挙げられる。
特に、有用なアルカン酸亜鉛は24℃で液体であり、好ましくは60℃で液体である。特に、有用なアルカン酸亜鉛は、好ましくは、エンジン始動温度、例えば、0℃以上、例えば30℃以上、例えば60℃以上で液体であり、エンジン作動温度、例えば80℃以上、例えば150℃以上、例えば200℃以上で液体である。
特に、有用なアルカン酸亜鉛は、0℃未満、好ましくは-10℃未満、代替的に-15℃未満の融点を有する。
【0069】
本明細書の潤滑組成物は、概して、潤滑組成物の総質量に基づき、0.1~10質量%、代替的に0.2~5質量%、代替的に0.3~2.5質量%、代替的に0.4~1.2質量%、好ましくは0.5~1質量%の本明細書に記載の1つ又は複数の金属アルカン酸塩化合物を含んでいてもよい。
金属アルカン酸塩は、個々の成分として、又は他の添加剤成分と共に添加剤パッケージ等の濃縮物の一部として、本発明の潤滑組成物に含まれていてもよい。本明細書の濃縮物(添加剤パッケージ等の)組成物は、概して、濃縮物組成物の総質量に基づき、0.1~10質量%、代替的に0.2~5質量%、代替的に0.3~2.5質量%、代替的に0.4~1.2質量%、好ましくは0.5~1質量%の本明細書に記載の1つ又は複数の金属アルカン酸塩化合物を含んでいてもよい。
【0070】
式(I)に記載のものに加えて使用することができる例示的な金属アルカン酸塩添加剤としては、カルボン酸の第10族、第11族、及び第12族金属塩が挙げられ、金属は、亜鉛、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、スズ、及びそれらの混合物から選択され、カルボン酸は、任意選択で約8~約26個の炭素原子及びそれらの混合物を有する直鎖状、分岐鎖状、又は環状脂肪族カルボン酸、及び芳香族カルボン酸、及びそれらの混合物から選択され、分岐鎖状脂肪族カルボン酸は、好ましくは、2位に第四級炭素原子を有していない。
【0071】
代替的には、金属アルカン酸塩は、総数で5~30個の炭素原子(例えば6~26個の炭素原子、例えば5~20個の炭素原子、例えば7~20個の炭素原子、例えば8~20個の炭素原子)を有するアルキルネオ-モノカルボン酸の金属塩を含み、金属は、本明細書の式(I)のMについて規定されている通りであり(好ましくは亜鉛等の、1つ又は複数の第12族金属である)、アルキルは、1つ又は複数のC2~C30(例えば、C5~C27、例えばC8~C20)直鎖状、分岐鎖状、又は環状アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、又はそれらの任意の異性体)であり;任意選択で、金属アルカン酸塩(ネオデカン酸亜鉛等)を潤滑油組成物中でリン含有成分(ZDDP等)と組み合わせる場合、金属は、質量%で1.1~4.8(例えば、1.1~4.7、又は1.2~4.7、又は1.3~4.5、又は2.5~4.0、又は3.0~3.5、又は3.0~3.4)の、金属(亜鉛等)対リン比を提供するような有効少量で存在する。
【0072】
代替的には、直鎖状又は環状脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸、並びにそれらの混合物、例えば約8~約26個の炭素原子を有する脂肪族飽和直鎖状カルボン酸、及びそれらの混合物の第10族、第11族、第又は第12族金属塩は、本発明の組成物には存在しない。
代替的には、任意選択で約8~約26個の炭素原子を有する分岐鎖状カルボン酸であって、2位に第四級炭素原子を有しない分岐鎖状脂肪族カルボン酸、及びそれらの混合物の第10族、第11族、又は第12族金属塩は、本発明の組成物には存在しない。
代替的に、直鎖状又は環状脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸並びにそれらの混合物の、例えば約8~約26個の炭素原子を有する脂肪族飽和直鎖状カルボン酸の第10族、第11族、又は第12族金属塩並びにそれらの混合物は、本発明の組成物に存在しない。任意選択で約8~約26個の炭素原子を有し、2位に第四級炭素原子を有していない分岐鎖状脂肪族カルボン酸及びそれらの混合物の第10族、第11族、又は第12族金属塩は、本発明の組成物には存在しない。
【0073】
代替的には、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、イソステアリン酸(C18)、ステアリン酸(C18)、ノナデシル酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ヘンエイコシル酸(C21)、ベヘン酸(C22)、トリコシル酸(C23)、リグノセリン酸(C24)、ペンタコシル酸(C25)、セロチン酸(C26)、ナフテン酸、及びそれらの混合物から選択され、分岐鎖状脂肪族カルボン酸は2位に第四級炭素原子を有していない、直鎖状、分岐鎖状、又は環状カルボン酸の第10族、第11族、及び第12族金属塩は、本発明の組成物には存在しない。
【0074】
実施形態では、本明細書の金属アルカン酸塩は、ML2形態の分子酸である。
代替的には、1つ又は複数の金属ステアリン酸塩、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸銀、ステアリン酸パラジウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銀、及びパルミチン酸パラジウムは、本発明の組成物には存在しない。
代替的には、ステアリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、及び2-エチルヘキサン酸亜鉛は、本発明の組成物には存在しない。
代替的には、ネオデカン酸チタンは、本発明の組成物には存在しない。
本発明による潤滑組成物は、清浄剤、摩擦調整剤、抗酸化剤、流動点降下剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、腐食防止剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、抗乳化剤、シール適合剤、添加剤希釈基油等の1つ又は複数の添加剤を更に含んでいてもよい。そのような添加剤の特定の例は、例えば、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、第14巻、477~526頁に記載されており、幾つかは下記で更に詳細に考察されている。
【0075】
C.清浄剤
潤滑組成物は、「清浄剤添加剤」とも呼ばれる1つ又は複数の金属清浄剤(金属清浄剤のブレンド等)を含んでいてもよい。金属清浄剤は、典型的には、堆積物を低減又は除去するための清浄剤及び酸中和剤又は防錆剤の両方として機能し、それにより摩耗及び腐食を低減し、エンジンの寿命を延長する。清浄剤は、一般に、長鎖疎水性尾部を有する極性頭部を含み、極性頭部は、酸性有機化合物の金属塩を含む。こうした塩は、実質的に化学量論量の金属を含んでいてもよく、その場合、こうした塩は、通常は正塩又は中性塩であると記述され、典型的には、最大で150mg KOH/gの、例えば0~80(又は5~30)mg KOH/gの全塩基価(ASTM D2896により測定される「TBN」)を有するだろう。過剰の金属化合物(例えば、酸化物又は水酸化物)を酸性ガス(例えば、二酸化炭素)と反応させることにより、大量の金属塩基を組み込むことができる。そのような清浄剤は、過塩基性と呼ばれることもあり、100mg KOH/g以上(例えば、200mg KOH/g以上)のTBNを有してもよく、典型的には、250mg KOH/g以上、例えば、300mg KOH/g以上、例えば200~800mg KOH/g、225~700mg KOH/g、250~650mg KOH/g、又は300~600mg KOH/g、例えば150~650mg KOH/gのTBNを有するだろう。
【0076】
好適な清浄剤としては、金属、特にアルカリ金属(第1族金属、例えば、Li、Na、K、Rb)又はアルカリ土類金属(第2族金属、例えばBe、Mg、Ca、Sr、Ba)、特にナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウム、例えばCa及び/又はMgの油溶性中性及び過塩基性スルホン酸塩、フェネート(phenate)、硫化フェネート(sulfurized phenate)、チオホスホン酸塩、サリチル酸塩、ナフテン酸塩、及び他の油溶性カルボン酸塩が挙げられる。更に、清浄剤は、スルホネート、フェネート、硫化フェネート、チオホスホネート、サリシレート、及びナフテネートのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、若しくはマグネシウム塩、又は第1族及び/若しくは第2族金属の他の油溶性カルボン酸塩の任意の組合せを含むハイブリッド清浄剤を含んでいてもよい。
【0077】
好ましくは、本発明で有用な清浄剤添加剤は、カルシウム及び/又はマグネシウム金属塩を含む。清浄剤は、カルボン酸カルシウム及び/又はマグネシウム(例えば、サリチル酸塩)、スルホン酸塩、又はフェネート清浄剤であってもよい。より好ましくは、清浄剤添加剤は、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム、スルホン酸カルシウム、マグネシウムフェネート、カルシウムフェネート、及びこうした清浄剤の2つ、3つ、4つ、又はそれよりも多くを含むハイブリッド清浄剤、並びに/又はそれらの組合せから選択される。
【0078】
また、金属含有清浄剤としては、例えば、米国特許第6,429,178号明細書;第6,429,179号明細書;第6,153,565号明細書;及び第6,281,179号明細書に記載の、フェネート及び/又はスルホネート成分、例えばフェネート/サリシレート、スルホネート/フェネート、スルホネート/サリシレート、スルホネート/フェネート/-サリシレートを含む混合界面活性剤系で形成された「ハイブリッド」清浄剤も挙げることができる。例えば、ハイブリッドスルホネート/フェネート清浄剤が使用される場合、ハイブリッド清浄剤は、それぞれ同様の量のフェネート及びスルホネート石鹸を導入する、別個のフェネート及びスルホネート清浄剤の量と同量であるとみなされることになる。
【0079】
過塩基性金属含有清浄剤は、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、及びサリシレートのナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はそれらの混合物であってもよい。過塩基性フェネート及びサリシレートは、典型的には、180~650mg KOH/g、例えば200~450TBN mg KOH/gの全塩基価を有する。過塩基性スルホネートは、典型的には、250~600mg KOH/g、又は300~500mg KOH/gの全塩基価を有する。実施形態では、スルホネート清浄剤は、米国特許出願第2005/065045号明細書(及び米国特許第7,407,919号として権利付与)の段落[0026]~[0037]に記載のように、主として、少なくとも8の金属比を有する直鎖状アルキルベンゼンスルホネート清浄剤であってもよい。過塩基性清浄剤は、潤滑組成物に基づき、0質量%~15質量%、又は0.1質量%~10質量%、又は0.2質量%~8質量%、又は0.2質量%~3質量%で存在してもよい。例えば、大型ディーゼルエンジンでは、清浄剤は、潤滑組成物の2質量%~3質量%で存在してもよい。乗用車エンジンの場合、清浄剤は、潤滑組成物の0.2質量%~1質量%で存在してもよい。
【0080】
清浄剤添加剤は、1つ又は複数のスルホン酸マグネシウム清浄剤を含んでもよい。マグネシウム清浄剤は、中性塩であってもよく又は過塩基性塩であってもよい。好適には、マグネシウム清浄剤は、80~650mg KOH/g(ASTM D2896)、例えば200~500mg KOH/g、例えば240~450mg KOH/gのTBNを有する過塩基性スルホン酸マグネシウムである。
代替的に、清浄剤添加剤は、サリチル酸マグネシウムである。好適には、マグネシウム清浄剤は、30~650mg KOH/g(ASTM D2896)、例えば50~500mg KOH/g、例えば200~500mg KOH/g、例えば240~450mg KOH/gの、又は代替的に150mg KOH/g以下、例えば100mg KOH/g以下のTBNを有するサリチル酸マグネシウムである。
代替的には、清浄剤添加剤は、サリチル酸マグネシウム及びスルホン酸マグネシウムの組合せである。
マグネシウム清浄剤は、その潤滑組成物に、200~4000ppmのマグネシウム原子、好適には200~2000ppm、300~1500ppm、又は450~1200ppmのマグネシウム原子を提供する(ASTM D5185)。
清浄剤組成物は、1つ又は複数のスルホン酸マグネシウム清浄剤及び1つ又は複数のサリチル酸カルシウム清浄剤の組合せを含んでいてもよい(又はからなっていてもよい)。
【0081】
1つ又は複数のスルホン酸マグネシウム清浄剤及び1つ又は複数のサリチル酸カルシウム清浄剤の組合せは、その潤滑組成物に、1)200~4000ppmのマグネシウム原子、好適には200~2000ppm、300~1500ppm、又は450~1200ppmのマグネシウム原子(ASTM D5185)、及び2)少なくとも500ppm、好ましくは少なくとも750、より好ましくは少なくとも900ppmの原子状カルシウム、例えば500~4000ppm、好ましくは750~3000ppm、より好ましくは900~2000ppmの原子状カルシウム(ASTM D5185)を提供する。
【0082】
清浄剤は、1つ又は複数のカルシウム清浄剤、例えばカルボン酸(例えば、サリチル酸)カルシウム、スルホン酸カルシウム、又はカルシウムフェネート清浄剤を含んでいてもよい。
好適には、カルシウム清浄剤は、30~700mg KOH/g(ASTM D2896)、例えば50~650mg KOH/g、例えば200~500mg KOH/g、例えば240~450mg KOH/gの、又は150mg KOH/g以下、例えば100mg KOH/g以下、又は代替的に200mg KOH/g以上、又は300mg KOH/g以上、又は350mg KOH/g以上のTBNを有する。
好適には、カルシウム清浄剤は、30~700mg KOH/g、30~650mg KOH/g(ASTM D2896)、例えば50~650mg KOH/g、例えば200~500mg KOH/g、例えば240~450mg KOH/gの、又は代替的に150mg KOH/g以下、例えば100mg KOH/g以下、又は200mgKOH/g以上、又は300mg KOH/g以上、又は350mg KOH/g以上のTBNを有するサリチル酸カルシウム、スルホン酸カルシウム、又はカルシウムフェネートである。
【0083】
カルシウム清浄剤は、典型的には、少なくとも500ppm、好ましくは少なくとも750、より好ましくは少なくとも900ppmの原子状カルシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在する(ASTM D5185)。存在する場合、あらゆるカルシウム清浄剤は、好適には、4000ppm以下、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下の原子状カルシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在する(ASTM D5185)。存在する場合、あらゆるカルシウム清浄剤は、好適には、500~4000ppm、好ましくは750~3000ppm、より好ましくは900~2000ppmの原子状カルシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在する(ASTM D5185)。
【0084】
好適には、本発明の全ての態様による潤滑組成物中の清浄剤に由来する金属の総原子量は、5000ppm以下、好ましくは4000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下である(ASTM D5185)。本発明の全ての態様による潤滑油組成物中の清浄剤に由来する金属原子の総量は、好適には、少なくとも500ppm、好ましくは少なくとも800ppm、より好ましくは少なくとも1000ppmである(ASTM D5185)。本発明の全ての態様による潤滑油組成物中の清浄剤に由来する金属原子の総量は、好適には、500~5000ppm、好ましくは500~3000ppm、より好ましくは500~2000ppmである(ASTM D5185)。
【0085】
スルホネート清浄剤は、典型的には、石油の分留から得られるもの等のアルキル置換芳香族炭化水素のスルホン化により、又は芳香族炭化水素のアルキル化により得られるスルホン酸から調製することができる。例として、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル、又はクロロベンゼン、クロロトルエン、及びクロロナフタレン等のそれらのハロゲン誘導体をアルキル化することにより得られるものが挙げられる。アルキル化は、約3個から70個よりも多くの炭素原子を有するアルキル化剤により触媒の存在下で実施することができる。アルカリルスルホネートは、通常、1アルキル置換芳香族部分当たり約9~約80個以上の炭素原子、好ましくは約16~約60個の炭素原子を含む。油溶性スルホネート又はアルカリルスルホン酸は、金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボネート、カルボキシレート、硫化物、水硫化物、ニトレート、ボレート、及びエーテルで中和することができる。金属化合物の量は、最終産物の所望のTBNを考慮して選択されるが、典型的には、化学量論的に必要な量の約100~220質量%の範囲(好ましくは少なくとも125質量%)である。
【0086】
フェノール及び硫化フェノールの金属塩は、酸化物若しくは水酸化物等の適切な金属化合物との反応により調製されるか、又は中性若しくは過塩基性産物は、当技術分野で周知の方法により得ることができる。硫化フェノールは、フェノールを、硫黄又は硫黄含有化合物、例えば硫化水素、モノハロゲン化硫黄、又はジハロゲン化硫黄と反応させて、一般に、2つ以上のフェノールが硫黄含有架橋物により架橋されている化合物の混合物である産物を形成することにより調製することができる。
カルボキシレート清浄剤、例えばサリシレートは、芳香族カルボン酸(C5~100、C9~30、C14~24アルキル置換ヒドロキシ安息香酸等)を、適切な金属化合物、例えば酸化物又は水酸化物と反応させることにより調製することができ、中性又は過塩基性産物は、当技術分野で周知の方法により得ることができる。芳香族カルボン酸の芳香族部分は、窒素及び酸素等のヘテロ原子を含んでいてもよい。好ましくは、この部分は炭素原子のみを含み、より好ましくは、この部分は6個以上の炭素原子を含む。例えば、好ましい部分はベンゼンである。芳香族カルボン酸は、縮合されているか又はアルキレン架橋を介して接続されている、1つ又は複数のベンゼン環等の1つ又は複数の芳香族部分を含んでいてもよい。
【0087】
油溶性サリチル酸における好ましい置換基は、アルキル置換基である。アルキル置換サリチル酸では、アルキル基は、有利には、5~100個、好ましくは9~30個、特に14~20個の炭素原子を含む。1つよりも多くのアルキル基が存在する場合、アルキル基の全ての平均炭素原子数は、妥当な油溶性を確保するために、少なくとも9であることが好ましい。
実施形態では、潤滑油組成物中の原子状清浄剤金属対原子状モリブデンの比は、3:1未満、例えば2:1未満であってもよい。
更に、清浄剤として使用される金属有機及び無機塩基塩は、潤滑油組成物の硫酸灰分含有量に寄与する可能性があるため、本発明の実施形態では、そのような添加剤の量は最小限に抑えられる。低い硫黄レベルを維持するために、サリシレート清浄剤を使用することができ、本明細書の潤滑組成物は、1つ又は複数のサリシレート清浄剤を含んでいてもよい(前記清浄剤は、潤滑組成物の総質量に基づき、好ましくは、0.05~20.0質量%、より好ましくは1.0~10.0質量%の範囲の、及び最も好ましくは2.0~5.0質量%の範囲の量で使用される)。
【0088】
本明細書の潤滑組成物の総硫酸灰分含有量は、潤滑組成物の総質量に基づき、ASTM D874により決定して、典型的には、2.0質量%以下、代替的に1.0質量%以下のレベル、及び代替的に0.8質量%以下のレベルである。
更に、清浄剤の各々は、独立して、ISO3771により測定して10~700mg KOH/g、10~500mg KOH/gの範囲の、代替的に100~650mg KOH/gの範囲、代替的に10~500mg KOH/gの範囲、代替的に30~350mg KOH/gの範囲、代替的に50~300mg KOH/gの範囲のTBN(全塩基価)値を有することが有用である。
典型的には、大型ディーゼルエンジンに使用するために配合された潤滑組成物は、潤滑組成物に基づき、約0.5~約10質量%、代替的に約2.5~約7.5質量%、代替的に約4~約6.5質量%の清浄剤を含む。
【0089】
D.摩擦調整剤
摩擦調整剤は、あらゆる潤滑剤又はそのような物質を含む流体により潤滑される表面の摩擦係数を変更することができるあらゆる1つ又は複数の物質である。摩擦低減剤又は潤滑性作用剤又は油性作用剤としても知られている摩擦調整剤、及び基油、配合潤滑組成物、又は機能性流体の能力を変化させて潤滑表面の摩擦係数を調整する他のそのような作用剤を、必要に応じて、本開示の基油又は潤滑組成物と組み合わせて効果的に使用することができる。摩擦係数を下げる摩擦調整剤を、本開示の基油及び潤滑組成物と組み合わせると特に有利である。
【0090】
例示的な摩擦調整剤としては、例えば、有機金属化合物若しくは物質又はそれらの混合物が挙げられる。本開示の潤滑油配合物に有用な例示的な有機金属摩擦調整剤としては、例えば、タングステン及び/又はモリブデン化合物、例えば、モリブデンアミン、モリブデンジアミン、有機タングステネート(organotungstenate)、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、モリブデンアミン錯体、及びカルボン酸モリブデン等、並びにそれらの混合物が挙げられる。有用なモリブデン含有化合物の例としては、便利には、ジチオカルバミン酸モリブデン、例えば、国際公開第98/26030号パンフレットに記載の三核モリブデン化合物、モリブデンの硫化物、及びジチオリン酸モリブデンを挙げることができる。
【0091】
他の既知の摩擦調整剤は、油溶性有機モリブデン化合物を含む。そのような有機モリブデン摩擦調整剤は、潤滑油組成物に抗酸化及び耐摩耗特典を提供することもできる。そのような油溶性有機モリブデン化合物の例としては、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、ジチオホスフィネート、キサンテート、チオキサンテート、及び硫化物等、並びにそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいのは、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、アルキルキサントゲン酸モリブデン、及びアルキルチオキサントゲン酸モリブデンである。
【0092】
加えて、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であってもよい。こうした化合物は、塩基性窒素化合物と反応し、ASTM試験D664又はD2896滴定手順により測定して、典型的には6価である。モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、及び他のアルカリ金属モリブデン酸塩、及び他のモリブデン塩、例えばモリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン、又は類似の酸性モリブデン化合物が含まれる。
【0093】
本発明の組成物に有用なモリブデン化合物には、式:
Mo(R’’OCS2)4及び
Mo(R’’SCS2)4
の有機モリブデン化合物が含まれ、
式中、R’’は、アルキル、アリール、アラルキル、及びアルコキシアルキルからなる群から選択される有機基であり、一般に、1~30個の炭素原子、好ましくは2~12個の炭素原子、最も好ましくは2~12個の炭素原子のアルキルである。。特に好ましいものは、モリブデンのジアルキルジチオカルバミン酸塩である。
【0094】
本発明の潤滑組成物に有用な有機モリブデン化合物の別の群は、三核モリブデン化合物、特に式Mo3SkLnQzのもの、及びそれらの混合物であり、式中Lは、化合物を油に可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を有する独立して選択される配位子であり、nは1~4であり、kは4~7の範囲であり、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテル等の中性電子供与化合物の群から選択され、zは0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。全ての配位子有機基には、少なくとも21個の炭素原子、例えば少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子が存在するべきである。
【0095】
本発明の全ての態様に有用な潤滑油組成物は、好ましくは、少なくとも10ppm、少なくとも30ppm、少なくとも40ppm、より好ましくは少なくとも50ppmのモリブデンを含む。好適には、本発明の全ての態様に有用な潤滑油組成物は、1000ppm以下、750ppm以下、又は500ppm以下のモリブデンを含む。本発明の全ての態様に有用な潤滑油組成物は、好ましくは、10~1000ppm、例えば30~750、又は40~500ppmのモリブデン(モリブデン原子として測定される)を含む。
Moを含む有用な摩擦調整剤の更なる情報は、米国特許第10,829,712号明細書(第8欄58行目~第11欄31行目)を参照されたい。
【0096】
本発明の潤滑油組成物には無灰摩擦調整剤が存在してもよく、無灰摩擦調整剤は一般に公知であり、カルボン酸及び無水物をアルカノール及びアミン系摩擦調整剤と反応させることにより形成されるエステルが挙げられる。他の有用な摩擦調整剤としては、一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合で結合した極性末端基(例えば、カルボキシル又はヒドロキシル)が挙げられる。カルボン酸及び無水物とアルカノールとのエステルは、米国特許第4,702,850号明細書に記載されている。他の従来の有機摩擦調整剤の例は、M.Belzerの「Journal of Tribology」(1992年)、114巻、675~682頁、並びにM.Belzer及びS.Jahanmirの「Lubrication Science」(1988年)、1巻、3~26頁に記載されている。典型的には、本発明による潤滑剤中の有機無灰摩擦調整剤の総量は、潤滑油組成物の総質量に基づき5質量%を超えず、好ましくは2質量%を超えず、より好ましくは0.5質量%を超えない。
【0097】
本明細書に記載の潤滑組成物に有用な例示的な摩擦調整剤としては、例えば、アルコキシル化脂肪酸エステル、アルカノールアミド、ポリオール脂肪酸エステル、ホウ酸化グリセロール脂肪酸エステル、脂肪族アルコールエーテル、及びそれらの混合物が挙げられる。
例示的なアルコキシル化脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン及び脂肪酸ポリグリコールエステル等が挙げられる。こうしたものとしては、ステアリン酸ポリオキシプロピレン、ステアリン酸ポリオキシブチレン、イソステル酸ポリオキシエチレン、イソステアリン酸ポリオキシプロピレン、及びパルミチン酸ポリオキシエチレン等を挙げることができる。
例示的なアルカノールアミドとしては、例えば、ラウリン酸ジエチルアルカノールアミド及びパルム酸(palmic acid)ジエチルアルカノールアミド等が挙げられる。こうしたものとしては、オレイン酸ジエチルアルカノールアミド、ステアリン酸ジエチルアルカノールアミド、オレイン酸ジエチルアルカノールアミド、ポリエトキシル化ヒドロカルビルアミド、及びポリプロポキシル化ヒドロカルビルアミド等を挙げることができる。
【0098】
ポリオール脂肪酸エステルの例としては、例えば、モノオレイン酸グリセロール、飽和モノ、ジ、及びトリグリセリドエステル、及びモノステアリン酸グリセロール等が挙げられる。こうしたものとしては、ポリオールエステル及びヒドロキシル含有ポリオールエステル等を挙げることができる。
例示的なホウ酸化グリセロール脂肪酸エステルとしては、例えば、ホウ酸化グリセロールモノオレエート、ホウ酸化飽和モノ、ジ、及びトリグリセリドエステル、及びホウ酸化グリセロールモノステアレート等が挙げられる。グリセロールポリオールに加えて、こうしたものとしては、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、及びソルビタン等を挙げることができる。こうしたエステルは、ポリオールモノカルボン酸エステル、ポリオールジカルボン酸エステル、及び場合によってはポリオールトリカルボン酸エステルであってもよい。好ましいものは、モノオレイン酸グリセロール、ジオレイン酸グリセロール、トリオレイン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロール、及びトリステアリン酸グリセロール、並びに対応するモノパルミチン酸グリセロール、ジパルミチン酸グリセロール、及びトリパルミチン酸グリセロール、並びにそれぞれのイソステアレート及びリノレアート等であってもよい。本明細書では、特に、基礎となるポリオールとしてグリセロールが使用される、ポリオールのエトキシル化、プロポキシル化、ブトキシル化脂肪酸エステルが有用である。
【0099】
例示的な脂肪族アルコールエーテルとしては、例えば、ステアリルエーテル及びミリスチルエーテル等が挙げられる。C3~C50の炭素数を有するものを含むアルコールを、エトキシル化、プロポキシル化、又はブトキシル化して、対応する脂肪アルキルエーテルを形成することができる。基礎となるアルコール部分は、好ましくは、ステアリル、ミリスチル、C11~C13炭化水素、オレイル、及びイソステリル等であってもよい。
【0100】
摩擦調整剤の有用な濃度は、0.01質量%~5質量%、又は約0.1質量%~約2.5質量%、又は約0.1質量%~約1.5質量%、又は約0.1質量%~約1質量%の範囲であってもよい。モリブデン含有物質の濃度は、多くの場合、Mo金属濃度の点で記述される。Moの有利な濃度は、25ppm~700ppmの範囲又はそれよりも高くてもよく、多くの場合、好ましい範囲は50~200ppmである。あらゆるタイプの摩擦調整剤を単独で使用してもよく、又は本開示の物質と混合して使用してもよい。多くの場合、2つ以上の摩擦調整剤の混合物、又は摩擦調整剤と代替的表面活性物質との混合物も望ましい。本明細書では、例えば、Mo含有化合物と、モノオレイン酸グリセロール等のポリオール脂肪酸エステルとの組合せが有用である。
【0101】
E.抗酸化剤
抗酸化剤は、役務中の基油の酸化劣化を遅延させる。そのような劣化は、金属表面への堆積物、スラッジの存在、又は潤滑剤の粘度増加をもたらす可能性がある。幅広く様々な酸化防止剤が潤滑油組成物に有用である。例えば、Lubricants and Related Products、Klamann、Wiley VCH、1984年;米国特許第4,798,684号明細書及び第5,084,197号明細書を参照されたい。
【0102】
有用な抗酸化剤としては、ヒンダードフェノールが挙げられる。こうしたフェノール系抗酸化剤は、無灰(無金属)フェノール系化合物、又はある特定のフェノール系化合物の中性若しくは塩基性金属塩であってもよい。典型的なフェノール系抗酸化剤化合物は、立体障害ヒドロキシル基を含むヒンダードフェノール系化合物であり、そうしたものとしては、ヒドロキシル基が互いにo位又はp位にあるジヒドロキシアリール化合物の誘導体が挙げられる。典型的なフェノール系抗酸化剤としては、C6+アルキル基で置換されたヒンダードフェノール及びこうしたヒンダードフェノールのアルキレンカップリング誘導体が挙げられる。このタイプのフェノール系物質の例としては、2-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;2-t-ブチル-4-オクチルフェノール;2-t-ブチル-4-ドデシルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-ドデシルフェノール;2-メチル-6-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;及び2-メチル-6-t-ブチル-4-ドデシルフェノールが挙げられる。他の有用なヒンダードモノフェノール系抗酸化剤としては、例えば、ヒンダード2,6-ジ-アルキル-フェノール系プロピオン酸エステル誘導体を挙げることができる。ビス-フェノール系抗酸化剤も本明細書で有利に使用することができる。オルトカップリングフェノールの例としては、2,2’-ビス(4-ヘプチル-6-t-ブチル-フェノール);2,2’-ビス(4-オクチル-6-t-ブチル-フェノール);及び2,2’-ビス(4-ドデシル-6-t-ブチル-フェノール)が挙げられる。パラカップリングビスフェノールとしては、例えば、4,4’-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)及び4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)が挙げられる。
【0103】
また、有効量の1つ又は複数の触媒性抗酸化剤を使用することができる。触媒性抗酸化剤は、有効量のa)1つ若しくは複数の油溶性ポリ金属有機化合物;及び有効量のb)1つ若しくは複数の置換N,N’-ジアリール-o-フェニレンジアミン化合物又はc)1つ若しくは複数のヒンダードフェノール化合物;又はb)及びc)の両方の組合せを含む。本明細書で有用な触媒性抗酸化剤は、米国特許第8,048,833号明細書に更に詳しく記載されている。
【0104】
使用することができる非フェノール系酸化防止剤としては、芳香族アミン抗酸化剤を挙げることができ、それらを、そのまま又はフェノール系物質との組合せのいずれかで使用することができる。非フェノール系抗酸化剤の典型的な例としては、式R8R9R10Nの芳香族モノアミン等のアルキル化及び非アルキル化芳香族アミンが挙げられ、式中、R8は、脂肪族基、芳香族基、又は置換芳香族基であり、R9は、芳香族基又は置換芳香族基であり、R10は、H、アルキル、アリール、又はR11S(O)XR12であり、式中、R11は、アルキレン基、アルケニレン基、又はアラルキレン基であり、R12は、アルキル基、又はアルケニル基、アリール基、若しくはアルカリル基であり、xは、0、1、又は2である。脂肪族基R8は、1~約20個の炭素原子を含んでいてもよく、好ましくは、約6~12個の炭素原子を含む。脂肪族基は、典型的には、飽和脂肪族基である。好ましくは、R8及びR9は両方とも芳香族基又は置換芳香族基であり、芳香族基は、ナフチル等の縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基R8及びR9は、S等の他の基と一緒になっていてもよい。
【0105】
典型的な芳香族アミン抗酸化剤は、少なくとも約6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシルが挙げられる。一般に、脂肪族基は、約14個よりも多くの炭素原子を含まないだろう。本組成物に有用なアミン抗酸化剤の一般的なタイプとしては、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジル、及びジフェニルフェニレンジアミンが挙げられる。2つ以上の芳香族アミンの混合物も有用である。ポリマー性アミン抗酸化剤も使用することができる。本開示に有用な芳香族アミン抗酸化剤の特定の例としては、p,p’-ジオクチルジフェニルアミン;t-オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン;フェニル-アルファナフチルアミン;及びp-オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミンが挙げられる。
【0106】
硫黄含有抗酸化剤も本発明に有用である。特に、1つ又は複数の油溶性又は油分散性硫黄含有抗酸化剤を、抗酸化添加剤として使用することができる。例えば、硫化アルキルフェノール及びそれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩も、本明細書に有用な抗酸化剤である。好適には、本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総質量に基づき、0.02~0.2、好ましくは0.02~0.15、更により好ましくは0.02~0.1、更により好ましくは0.04~0.1質量%の硫黄を、潤滑油組成物に提供する量の1つ又は複数の硫黄含有抗酸化剤を含んでいてもよい。任意選択で、油溶性又は油分散性硫黄含有抗酸化剤は、硫化C4~C25オレフィン、硫化脂肪族(C7~C29)ヒドロカルビル脂肪酸エステル、無灰硫化フェノール系抗酸化剤、硫黄含有有機モリブデン化合物、及びそれらの組合せから選択される。本明細書の抗酸化剤として有用な硫化物質に関する更なる情報は、米国特許第10,731,101号明細書(第15欄55行目~第22欄12行目)を参照されたい。
【0107】
本明細書に有用な抗酸化剤としては、ヒンダードフェノール及びアリールアミンが挙げられる。こうした抗酸化剤は、タイプ毎に個々に又は互いに組み合わせて使用することができる。
典型的な抗酸化剤としては、Irganox(商標)L67、ETHANOX(商標)4702、Lanxess Additin(商標)RC7110;ETHANOX(商標)4782J;Irganox(商標)1135、Irganox(商標)5057、硫化ラード油、及びパーム油脂肪酸メチルエステルが挙げられる。
抗酸化添加剤は、潤滑組成物の質量に基づき、約0.01~5質量%、好ましくは約0.01~3質量%、より好ましくは0.01~1.5質量%、より好ましくは0.01~1質量%未満の量で(単独で又は組合せで)使用することができる。
本開示による組成物は、抗酸化剤としての二次的効果も有する、様々な表記機能を有する添加剤を含んでいてもよい[例えば、リン含有耐摩耗剤(ZDDP等)は、抗酸化効果も示すことができる]。こうした添加剤は、本明細書において潤滑油組成物又は濃縮物中の抗酸化剤の量を決定する目的では、抗酸化剤には含まれない。
【0108】
F.流動点降下剤
従来の流動点降下剤(潤滑油流動向上剤としても知られている)を、必要に応じて、本開示の組成物に添加することができる。こうした流動点降下剤を本開示の潤滑組成物に添加して、流体が流動することになるか又は流体を注ぐことができる最低温度を下げることができる。好適な流動点降下剤の例としては、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ハロパラフィンワックス及び芳香族化合物の縮合産物、ビニルカルボキシレートポリマー、並びにジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステル、並びにアリルビニルエーテルが挙げられる。米国特許第1,815,022号明細書;第2,015,748号明細書;第2,191,498号明細書;第2,387,501号明細書;第2,655,479号明細書;第2,666,746号明細書;第2,721,877号明細書;第2,721,878号明細書;及び第3,250,715号明細書には、有用な流動点降下剤及び/又はその調製が記載されている。そのような添加剤は、約0.01~5質量%、好ましくは約0.01~1.5質量%の量で使用することができる。
【0109】
G.消泡剤
有利には、消泡剤を、本明細書に記載の潤滑剤組成物に添加することができる。こうした作用剤は、安定気泡の形成を防止又は遅延させる。シリコーン及び有機ポリマーが典型的な消泡剤である。例えば、シリコン油又はポリジメチルシロキサン等のポリシロキサンは、消泡特性を提供する。
消泡剤は市販されており、少量で、例えば5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、例えば5質量%~0.1ppm、例えば3質量%~0.5ppm、例えば1質量%~10ppmで使用することができる。
例えば、潤滑油組成物は、例えば、ポリジアルキルシロキサン等のポリアルキルシロキサンを含む消泡剤であって、アルキルはC1~C10アルキル基である消泡剤、例えば、シリコーン油としても知られているポリジメチルシロキサン(PDMS)を含んでいてもよい。代替的に、シロキサンは、ポリ(R3)シロキサンであり、R3は、典型的には1~20個の炭素原子を有する、1つ又は複数の同一であるか又は異なる直鎖状、分岐鎖状、又は環状ヒドロカルビル、例えばアルキル又はアリールである。例えば、潤滑油組成物は、下記式1によるポリマー性シロキサン化合物を含み、式中、R1及びR2は、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、又はデシル、フェニル、ナフチル、アルキル置換フェニル、又はそれらの異性体(メチル、フェニル等)であり、nは、50~450である。
【0110】
加えて又は代替的に、潤滑油組成物は、ポリエーテル(例えば、エチレン-プロピレンオキシドコポリマー)、長鎖ヒドロカルビル(例えば、C
11~C
100アルキル)、又はアリール(例えば、C
6~C
14アリール)等の有機基で修飾されたシロキサン等の、有機修飾シロキサン(OMS)を含んでいてもよい。例えば、潤滑油組成物は、式1による有機修飾シロキサン化合物を含み、式中、nは50~450であり、R
1及びR
2は同一であるか又は異なり、任意選択で、R
1及びR
2の各々は、独立して、ポリエーテル(例えば、エチレン-プロピレンオキシドコポリマー)、長鎖ヒドロカルビル(例えば、C
11~C
100アルキル)、又はアリール(例えば、C
6~C
14アリール)から選択される有機基等の有機基である。好ましくは、R
1及びR
2の一方はCH
3である。
【化7】
式1
【0111】
潤滑剤組成物の総質量に基づき、式1によるシロキサンは、約0.1~約30ppm未満のSi、又は約0.1~約25ppmのSi、又は約0.1~約20ppmのSi、又は約0.1~約15ppmのSi、又は約0.1~約10ppmのSiを提供するように組み込まれている。より好ましくは、式1によるシロキサンは、約3~10ppmのSiの範囲にある。
【0112】
一実施形態では、本明細書で有用なシリコーン消泡剤は、Dow Corning FS-1265(1000センチストーク)、Dow Corning DC-200、及びUnion Carbide UC-L45等が、Dow Corning Corporation社及びUnion Carbide Corporation社から入手可能である。本明細書で有用なシリコーン消泡剤は、ポリジメチルシロキサン、フェニル-メチルポリシロキサン、直鎖状、環状、又は分岐鎖状シロキサン、シリコーンポリマー及びコポリマー、並びに有機シリコーンコポリマーである。また、ミシガン州ファーミントンヒルズのOSI Specialties,Inc.社から入手可能なシロキサンポリエーテルコポリマー消泡剤を代用するか又は含めることができる。そのような物質の1つは、SILWET-L-7220として販売されている。
【0113】
アクリレートポリマー消泡剤も本明細書で使用することができる。典型的なアクリレート消泡剤としては、PC-1244として知られている、Monsanto Polymer Products Co.社から入手可能なポリアクリレート消泡剤が挙げられる。本明細書で有用な好ましいアクリレートポリマー消泡剤は、Dorf Ketl社から市販されており、Mobilad(商標)C402とも呼ばれるPX(商標)3841(つまり、アルキルアクリレートポリマー)である。
実施形態では、シリコーン消泡剤及びアクリレート消泡剤の組合せを、例えば、約5:1~約1:5のシリコーン消泡剤対アクリレート消泡剤の質量比で使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2021/0189283号A1明細書を参照されたい。
【0114】
H.粘度調整剤
粘度調整剤(粘度指数向上剤又は粘度向上剤とも呼ばれる)を、本明細書に記載の潤滑組成物に含めることができる。粘度調整剤は、潤滑剤に、高温及び低温稼動能を提供する。こうした添加剤は、高温での剪断安定性及び低温での許容可能な粘度を付与する。好適な粘度調整剤としては、高分子量炭化水素、ポリエステル、並びに粘度調整剤及び分散剤の両方として機能することできる粘度調整分散剤が挙げられる。こうしたポリマーの典型的な分子量は、約10,000~1,500,000g/mol、より典型的には約20,000~1,200,000g/mol、更により典型的には約50,000~1,000,000g/molである。
好適な粘度調整剤の例は、メタクリレート、ブタジエン、オレフィン、又はアルキル化スチレンの直鎖状又は星形ポリマー及びコポリマーである。ポリイソブチレンは、一般的に使用される粘度調整剤である。別の好適な粘度調整剤は、ポリメタクリレート(例えば、種々の鎖長のアルキルメタクリレートのコポリマー)であり、その一部の配合物は流動点降下剤としての役目も果たす。他の好適な粘度調整剤としては、エチレン及びプロピレンのコポリマー、スチレン及びイソプレンの水素化ブロックコポリマー、並びにポリアクリレート(例えば、種々の鎖長のアクリレートのコポリマー)が挙げられる。特定の例としては、分子量50,000~200,000g/molの、スチレン-イソプレン又はスチレン-ブタジエン系ポリマーが挙げられる。
【0115】
粘度調整剤として有用なコポリマーとしては、Chevron Oronite Company LLC社から商品名「PARATONE(商標)」で市販されているもの(「PARATONE(商標)8921」、「PARATONE(商標)68231」、及び「PARATONE(商標)8941」等);Afton Chemical Corporation社から商品名「HiTEC(商標)」で市販されているもの(HiTEC(商標)5850B及びHiTEC(商標)5777等);及びThe Lubrizol Corporation社から商品名「Lubrizol(商標)7067C」で市販されているものが挙げられる。本明細書で粘度調整剤として有用な水素化ポリイソプレン星形ポリマーとしては、Infineum International Limited社から、例えば、商品名「SV200(商標)」及び「SV600(商標)」で市販されているものが挙げられる。本明細書で粘度調整剤として有用な水素化ジエン-スチレンブロックコポリマーは、Infineum International Limited社から、例えば商品名「SV50(商標)」で市販されている。
【0116】
本明細書で粘度調整剤として有用なポリマーとしては、Evnoik Industries社から商品名「Viscoplex(商標)」(例えば、Viscoplex(商標)6-954)で入手可能なもの等の直鎖状ポリメタクリレート又はポリアクリレートポリマー等のポリメタクリレート又はポリアクリレートポリマー、又はLubrizol Corporation社から商品名Asteric(商標)(例えば、Lubrizol(商標)87708及びLubrizol87725)で入手可能な星形ポリマーが挙げられる。
本明細書で粘度調整剤として有用なビニル芳香族含有ポリマーは、ビニル芳香族炭化水素モノマー、例えばスチレン系モノマー、例えばスチレンから誘導することができる。本明細書で有用な例示的なビニル芳香族含有コポリマーは、下記の一般式:A-Bにより表すことができ、式中、Aは、主としてビニル芳香族炭化水素モノマー(スチレン等)から誘導されるポリマーブロックであり、Bは、主として共役ジエンモノマー(イソプレン等)から誘導されるポリマーブロックである。
典型的には、粘度調整剤は、配合潤滑剤組成物の総質量に基づき、約0.01~約10質量%、例えば約0.1~約7質量%、例えば0.1~約4質量%、例えば約0.2~約2質量%、例えば約0.2~約1質量%、及び例えば約0.2~約0.5質量%の量で使用することができる。
【0117】
実施形態では、粘度調整剤を、1つ又は複数のアミン、イミド、エステル、又はアルコール等で官能化して、分散粘度調整剤(「DVM」)を形成することができる。実施形態では、本発明の潤滑組成物は、1つ又は複数の分散粘度調整剤を含む。好適な分散粘度調整剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、無水マレイン酸及びアミン等の、アシル化剤で官能化されているエチレン-プロピレンコポリマー;アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応したエステル化スチレン-無水マレイン酸コポリマーが挙げられる。分散粘度調整剤のより詳細な説明は、国際公開第2006/015130号パンフレット又は米国特許第4,863,623号明細書;第6,107,257号明細書;第6,107,258号明細書;及び第6,117,825号明細書に開示されている。実施形態では、分散粘度調整剤としては、米国特許第4,863,623号明細書(第2欄15行目~第3欄52行目を参照)又は国際公開第2006/015130号パンフレット(2頁、段落[0008]を参照。調製例は段落[0065]~[0073]に記載されている)に記載されているものを挙げることができる。また、有用なDVMとしては、これらに限定されないが、Mw/Mnが2未満であり、官能性パラメーターが10,000g/mol当たり1.4~15であり、官能基化前のポリマーは30,000g/mol以上のMn(GPC-ポリスチレン基準)を有するC4~5オレフィンを含む、アミド、イミド、エステル、及び/若しくはアルコール官能化部分飽和又は完全飽和ポリマー、例えば、アミン官能化部分飽和又は完全飽和ポリイソプレンを含む、2022年10月11日に出願された、代理人明細書の題名がFunctionalized C4
to
5 Olefin Polymers and Lubricant Compositions Containing Suchである米国特許出願第63/379,006号明細書に記載の官能化ポリマーが挙げられ、GPC-ポリスチレン基準Mw/Mn及び官能性パラメーターは、2022年10月11日に出願された、題名がFunctionalized C4
to
5 Olefin Polymers and Lubricant Compositions Containing Suchである米国特許出願第63/379,006号明細書に記載されている通りであり、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。分散粘度調整剤は、潤滑組成物の0~5質量%、又は0.01~4質量%、又は0.05~2質量%で存在してもよい。
【0118】
粘度調整剤は、典型的には、大量の希釈油に濃縮物として添加される。「納品時の」粘度調整剤又は分散粘度調整剤は、典型的には、ポリメタクリレート若しくはポリアクリレートポリマーの場合は20質量%~75質量%の活性ポリマー、又はオレフィンコポリマーの場合は8質量%~20質量%の活性ポリマー、水素化ポリイソプレン星形ポリマー、又は水素化ジエン-スチレンブロックコポリマーを「納品時の」ポリマー濃縮物中に含む。
【0119】
I.分散剤
エンジン作動中に、油不溶性酸化副産物が生成される。分散剤は、こうした副産物を溶液中に保持することを支援し、したがって金属表面への副産物の堆積を軽減する。本明細書の潤滑組成物の配合に使用される分散剤は、性質が無灰であってもよく又は灰分形成性であってもよい。好ましくは、分散剤は無灰である。いわゆる無灰分散剤は、燃焼時に灰分を実質的に形成しない有機物質である。例えば、非金属含有分散剤またはホウ酸化無金属分散剤は、無灰とみなされる。対照的に、金属含有清浄剤は燃焼時に灰分を形成する傾向がある。
本明細書に有用な分散剤は、典型的には、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を含む。極性基は、典型的には、窒素、酸素、又はリンの少なくとも1つの元素を含む。典型的な炭化水素鎖は、50~400個の炭素原子を含む。
【0120】
(ポリ)アルケニルコハク酸誘導体の分散剤
特に有用な種類の分散剤としては、典型的には長鎖ヒドロカルビル置換コハク酸化合物、通常はヒドロカルビル置換無水コハク酸と、ポリヒドロキシ又はポリアミノ化合物との反応により生成される(ポリ)アルケニルコハク酸誘導体が挙げられる。油への溶解性を付与する分子の親油性部分を構成する長鎖ヒドロカルビル基は、多くの場合、ポリイソブチレン基である(典型的には、ポリイソブチレン基等の長鎖ヒドロカルビル基は、400~3000g/mol、例えば450~2500g/molのMnを有する)。このタイプの分散剤の多くの例は、商業的に及び文献にて周知である。そのような分散剤が記載されている米国特許の例としては、米国特許第3,172,892号明細書;第3,215,707号明細書;第3,219,666号明細書;第3,316,177号明細書;第3,341,542号明細書;第3,444,170号明細書;第3,454,607号明細書;第3,541,012号明細書;第3,630,904号明細書;第3,632,511号明細書;第3,787,374号明細書;及び第4,234,435号明細書が挙げられる。他のタイプの分散剤は、米国特許第3,036,003号明細書;第3,200,107号明細書;第3,254,025号明細書;第3,275,554号明細書;第3,438,757号明細書;第3,454,555号明細書;第3,565,804号明細書;第3,413,347号明細書;第3,697,574号明細書;第3,725,277号明細書;第3,725,480号明細書;第3,726,882号明細書;第4,454,059号明細書;第3,329,658号明細書;第3,449,250号明細書;第3,519,565号明細書;第3,666,730号明細書;第3,687,849号明細書;第3,702,300号明細書;第4,100,082;及び第5,705,458号明細書が挙げられる。本明細書で有用な分散剤の更なる説明は、例えば、欧州特許出願第0 471 071号明細書及び欧州特許出願第0 451 380号明細書に見出され、こうした文献は、この目的のために参照される。
【0121】
ヒドロカルビル置換コハク酸及びヒドロカルビル置換無水コハク酸誘導体は有用な分散剤である。特に、炭化水素置換コハク酸又は無水物化合物(典型的には、炭化水素置換基中に少なくとも25個の炭素原子、例えば28~400個の炭素原子を有する)と、少なくとも1当量のポリヒドロキシ又はポリアミノ化合物(アルキレンアミン等)と反応させることにより調製されるコハク酸イミド、コハク酸エステル、またはコハク酸エステルアミドは、本明細書において特に有用である。ヒドロカルビル置換コハク酸及びヒドロカルビル置換無水コハク酸誘導体は、少なくとも400g/mol、例えば少なくとも900g/mol、例えば少なくとも1500g/mol、例えば400~4000g/mol、例えば800~3000g/mol、例えば2000~2800g/mol、例えば約2100~2500g/mol、及び例えば約2200~約2400g/molの数平均分子量を有してもよい。
【0122】
本明細書で特に有用であるコハク酸イミドは、1)ポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)等のヒドロカルビル置換無水コハク酸と、2)ポリアミン(PAM)との縮合反応により形成される。好適なポリアミンの例としては、ポリアルキレンポリアミン、ヒドロキシ置換ポリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン、及びそれらの組合せが挙げられる。ポリアルキレンポリアミンの例としては、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA、pentaethylenehaxamine)、n-フェニル-p-フェニレンジアミン(ADPA)、及び1分子当たり平均で5、6、7、8、又は9個の窒素を有する他のポリアミンが挙げられる。1ポリアミン分子当たりの窒素原子の平均数が7個よりも大きい混合物は、一般的に、重質ポリアミン又はH-PAMと呼ばれ、Dow Chemical社のHPA(商標)及びHPA-X(商標)、Huntsman Chemical社らのE-100(商標)等の商品名で市販されている場合がある。ヒドロキシ置換ポリアミンの例としては、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン等のN-ヒドロキシアルキル-アルキレンポリアミン、及び/又は例えば米国特許第4,873,009号明細書に記載のタイプのN-ヒドロキシアルキル化アルキレンジアミンが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリアミンの例としては、約200~約5000g/molの平均Mnを有するポリオキシエチレン並びに/又はポリオキシプロピレンジアミン及びトリアミン(並びにそれらのコオリゴマー)が挙げられる。このタイプの製品は、Jeffmine(商標)という商品名で市販されている。有用なコハク酸イミドの代表的な例は、米国特許第3,087,936号明細書;第3,172,892号明細書;第3,219,666号明細書;第3,272,746号明細書;第3,322,670号明細書;第3,652,616号明細書;第3,948,800号明細書;及び第6,821,307号明細書;並びにカナダ特許第1,094,044号明細書に示されている。
【0123】
分散剤として有用なコハク酸エステルとしては、ヒドロカルビル置換無水コハク酸及びアルコール又はポリオールとの縮合反応により形成されるものが挙げられる。例えば、ヒドロカルビル置換無水コハク酸とペンタエリトリトールとの縮合産物は、有用な分散剤である。
本明細書で有用なコハク酸エステルアミドは、ヒドロカルビル置換無水コハク酸とアルカノールアミンとの縮合反応により形成される。好適なアルカノールアミンとしては、エトキシル化ポリアルキルポリアミン、プロポキシル化ポリアルキルポリアミン、及びポリアルケニルポリアミン、例えばポリエチレンポリアミン、及び/又はプロポキシル化ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。代表的な例は、米国特許第4,426,305号明細書に示されている。
【0124】
ヒドロカルビル架橋アリールオキシアルコールのヒドロカルビル置換無水コハク酸(PIBSA等)エステルも、本明細書での分散剤として有用である。そのような分散剤に関する情報は、米国特許第7,485,603号明細書、特に第2欄65行目~第6欄22行目及び第23欄40行目~第26欄46行目を参照されたい。特に、メチレン架橋ナフチルオキシエタノールのPIBSAエステル(つまり、2-ヒドロキシエチル-1-ナフトールエーテル(又はナフトールのヒドロキシ末端化エチレンオキシドオリゴマーエーテル))は本明細書で有用である。
前述の段落で使用されるヒドロカルビル置換無水コハク酸の分子量は、典型的には、350~4000g/mol、例えば400~3000g/mol、例えば450~2800g/mol、例えば800~2500g/molの範囲であるだろう。上記の(ポリ)アルケニルコハク酸誘導体は、硫黄、酸素、ホルムアルデヒド、カルボン酸、例えばオレイン酸等の種々の試薬と後反応させてもよい。
【0125】
分散剤は、組成物の0.1質量%~20質量%、潤滑油組成物の例えば0.2質量%~15質量%、例えば0.25質量%~10質量%、例えば0.3質量%~5質量%、例えば1.0質量%~3.0質量%で潤滑剤中に存在してもよい。
上記の(ポリ)アルケニルコハク酸誘導体は、ホウ酸、ホウ酸エステル、又は高ホウ酸化分散剤等のホウ酸化合物と後反応させて、一般に分散剤反応産物1モル当たり約0.1~約5モルのホウ素を有するホウ酸化分散剤を形成することもできる。
【0126】
本明細書で有用な分散剤としては、モノコハク酸イミド、ビスコハク酸イミド、並びに/又はモノコハク酸イミド及びビスコハク酸イミドの混合に由来する誘導体を含むホウ酸化コハク酸イミドが挙げられ、ヒドロカルビルコハク酸イミドは、約300~約5000g/mol、若しくは約500~約3000g/mol、若しくは約1000~約2000g/molのMnを有するポリイソブチレン等のヒドロカルビレン基又は高末端ビニル基を有することが多いそのようなヒドロカルビレン基の混合物から誘導される。
【0127】
ホウ素含有分散剤は、潤滑組成物の0.01質量%~20質量%、又は0.1質量%~15質量%、又は0.1質量%~10質量%、又は0.5質量%~8質量%、又は1.0質量%~6.5質量%、又は0.5質量%~2.2質量%で存在してもよい。
ホウ素含有分散剤は、15ppm~2000ppm、又は25ppm~1000ppm、又は40ppm~600ppm、又は80ppm~350ppmのホウ素を組成物に送達する量で存在してもよい。
ホウ酸化分散剤は、非ホウ酸化分散剤と組み合わせて使用してもよく、非ホウ酸化分散剤と同じ化合物であってもよく又は異なる化合物であってもよい。一実施形態では、潤滑組成物は、1つ又は複数のホウ素含有分散剤及び1つ又は複数の非ホウ酸化分散剤を含んでいてもよく、分散剤の総量は、潤滑組成物の0.01質量%~20質量%、又は0.1質量%~15質量%、0.1質量%~10質量%、又は0.5質量%~8質量%、又は1.0質量%~6.5質量%、又は0.5質量%~2.2質量%であってもよく、ホウ酸化分散剤対非ホウ酸化分散剤の比は、1:10~10:1(質量:質量)、又は1:5~3:1、又は1:3~2:1であってもよい。
【0128】
マンニッヒ塩基の分散剤
本明細書で有用なマンニッヒ塩基分散剤は、典型的には、アミン成分、アルキルフェノール等のヒドロキシ芳香族化合物(アルキル置換等の、置換又は非置換)、及びホルムアルデヒド等のアルデヒドの反応から製作される。米国特許第4,767,551号明細書及び第10,899,986号明細書を参照されたい。オレイン酸及びスルホン酸等の加工助剤及び触媒も、反応混合物の一部とすることができる。代表的な例は、米国特許第3,697,574号明細書;第3,703,536号明細書;第3,704,308号明細書;第3,751,365号明細書;第3,756,953号明細書;第3,798,165号明細書;第3,803,039号明細書;第4,231,759号明細書;第9,938,479号明細書;第7,491,248号明細書;及び第10,899,986号明細書、並びに国際公開第01/42399号パンフレットに示されている。
【0129】
ポリメタクリレート又はポリアクリレート誘導体の分散剤
ポリメタクリレート又はポリアクリレート誘導体は、本明細書で有用な別の種類の分散剤である。こうした分散剤は、典型的には、窒素含有モノマー、及びエステル基に5~25個の炭素原子を含むメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルを反応させることにより調製される。代表的な例は、米国特許第2,100,993号明細書及び第6,323,164号明細書に示されている。ポリメタクリレート及びポリアクリレート分散剤は、典型的には、より低分子量である。
本発明の潤滑組成物は、典型的には、組成物の0.1質量%~20質量%、例えば、潤滑油組成物の0.2質量%~15質量%、例えば0.25質量%~10質量%、例えば0.3質量%~5質量%、1.0質量%~3.0質量%の分散剤を含む。代替的に、分散剤は、潤滑組成物の0.1質量%~5質量%、又は0.01質量%~4質量%、又は0.05質量%~2質量%で存在してもよい。
【0130】
本明細書で有用な分散剤に関する更なる情報は、米国特許第10,829,712号明細書の第13欄36行目~第16欄67行目、及び第7,485,603号明細書の第2欄65行目~第6欄22行目、第8欄25行目~第14欄53行目、及び第23欄40行目~第26欄46行目を参照されたい。
【0131】
J.腐食防止剤/防錆剤
腐食防止剤は、金属の腐食を低減するために使用することができ、代替的に金属不活化剤又は金属不動態化剤とも呼ばれることが多い。一部の腐食防止剤は、代替的に、抗酸化剤として特徴付けられる場合もある。
好適な腐食防止剤としては、トリアゾール(例えば、ベンゾトリアゾール)、置換チアジアゾール、イミダゾール、チアゾール、テトラゾール、ヒドロキシキノリン、オキサゾリン、イミダゾリン、チオフェン、インドール、インダゾール、キノリン、ベンゾキサジン、ジチオール、オキサゾール、オキサトリアゾール、ピリジン、ピペラジン、トリアジン、及びそれらのいずれか1つ又は複数の誘導体等の、窒素及び/又は硫黄含有複素環式化合物を挙げることができる。特定の腐食防止剤は、以下の構造:
【化8】
で表されるベンゾトリアゾールであり、
式中、R
8は、存在しないか(水素)、又は直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和若しくは不飽和であってもよいC
1~C
20ヒドロカルビル基若しくは置換ヒドロカルビル基である。性質がアルキル若しくは芳香族である環構造、及び/又はN、O、若しくはS等のヘテロ原子を含む環構造を含んでいてもよい。好適な化合物の例としては、ベンゾトリアゾール、アルキル置換ベンゾトリアゾール(例えば、トリルトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、オクチルベンゾトリアゾール等)、アリール置換ベンゾトリアゾール、及びアルキルアリール置換又はアリールアルキル置換ベンゾトリアゾール等、並びにそれらの組合せを挙げることができる。例えば、トリアゾールは、ベンゾトリアゾール及び/又はアルキル基が1~約20個の炭素原子若しくは1~約8個の炭素原子を含むアルキルベンゾトリアゾールを含むか又はそれらであってもよい。そのような腐食防止剤の非限定的な例は、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、及び/又はドイツ国ルートヴィヒスハーフェンのBASF社から市販されているIrgamet(商標)39等の、置換されていてもよいベンゾトリアゾールを含むか又はそれらであってもよい。好ましい腐食防止剤は、ベンゾトリアゾール及び/若しくはトリルトリアゾールを含むか、又はベンゾトリアゾール及び/若しくはトリルトリアゾールであってもよい。
【0132】
加えて又は代替的に、腐食防止剤は、以下の構造:
【化9】
により表される置換チアジアゾールを含んでいてもよく、
式中、R
15及びR
16は、独立して、水素又は炭化水素基であり、炭化水素基は、環式、脂環式、アラルキル、アリール、及びアルカリルを含む、脂肪族又は芳香族であってもよく、各wは、独立して、1、2、3、4、5、又は6である(好ましくは、2、3、又は4、例えば2である)。こうした置換チアジアゾールは、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(DMTD)分子から誘導される。DMTDの多くの誘導体が当技術分野に記載されており、そのような化合物はいずれも本開示で使用される流体に含めることができる。例えば、米国特許第2,719,125号明細書;第2,719,126号明細書;及び第3,087,937号明細書には、種々の2,5-ビス-(炭化水素ジチオ)-1,3,4-チアジアゾールの調製が記載されている。
【0133】
更に、加えて又は代替的に、腐食防止剤は、R15及びR16がカルボニル基を介して硫化物硫黄原子に結合していてもよいカルボン酸エステル等の、DMTDの1つ又は複数の他の誘導体を含んでもよい。こうしたチオエステル含有DMTD誘導体の調製は、例えば米国特許第2,760,933号明細書に記載されている。DMTDと、少なくとも10個の炭素原子を有するアルファ-ハロゲン化脂肪族カルボン酸との縮合により生成されるDMTD誘導体は、例えば、米国特許第2,836,564号明細書に記載されている。このプロセスにより、R15及びR16がHOOC-CH(R19)である(R19はヒドロカルビル基である)DMTD誘導体が生成される。こうした末端カルボン酸基のアミド化又はエステル化により更に生成されるDMTD誘導体も有用であり得る。
2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールの調製は、例えば、米国特許第3,663,561号明細書に記載されている。
【0134】
DMTD誘導体の種類としては、2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール及び2,5-ビス-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾールの混合物を挙げることができる。そのような混合物は、商品名HiTEC(登録商標)4313で販売されており、Afton Chemical Company社から市販されている。
2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールの調製は、例えば、米国特許第3,663,561号明細書に記載されている。
【0135】
DMTD誘導体の種類としては、2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール及び2,5-ビス-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾールの混合物を挙げることができる。そのような混合物は、商品名HiTEC(商標)4313で販売されており、Afton Chemical Company社から市販されている。
また更に、加えて又は代替的に、腐食防止剤は、構造B(OR46)3を有する三官能性ボレートを含んでもよく、式中、各R46は同じであってもよく又は異なっていてもよい。ボレートは、典型的には、組成物の非水性媒体と相溶性であることが望ましい場合があるため、各R46は、ヒドロカルビルC1~C8部分を含むか又はそれであってもよい。例えば、非水性媒体が潤滑油ベースストックを含むか又は潤滑油ベースストックである組成物の場合、典型的には、ヒドロカルビル部分が各々少なくともC4であると、より良好な相溶性を達成することができる。したがって、そのような腐食防止剤の非限定的な例としては、これらに限定されないが、トリエチルボレート、トリイソプロピルボレート等のトリプロピルボレート、トリ-tert-ブチルボレート等のトリブチルボレート、トリペンチルボレート、トリヘキシルボレート、トリ-(2-エチルヘキシル)ボレート等のトリオクチルボレート、及びモノヘキシルジブチルボレート等、並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0136】
使用される場合、腐食防止剤は、置換チアジアゾール、置換ベンゾトリアゾール、置換トリアゾール、三置換ボレート、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。
必要に応じて、腐食防止剤は、任意の有効量で使用することができるが、使用される場合、典型的には、組成物の質量に基づき、約0.001質量%~5.0質量%、例えば0.005質量%~3.0質量%、又は0.01質量%~1.0質量%の量で使用することができる。代替的に、そのような添加剤は、潤滑組成物の質量に基づき、約0.01~5質量%、好ましくは約0.01~1.5質量%の量で使用することができる。
一部の実施形態では、3,4-オキシピリジノン含有組成物は、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、置換チアジアゾール、イミダゾール、チアゾール、テトラゾール、ヒドロキシキノリン、オキサゾリン、イミダゾリン、チオフェン、インドール、インダゾール、キノリン、ベンゾオキサジン、ジチオール、オキサゾール、オキサトリアゾール、ピリジン、ピペラジン、トリアジン、それらの誘導体、それらの組合せ、又はあらゆる腐食防止剤を実質的に含んでいなくてもよい(例えば、0、又は0.001質量%未満、0.0005質量%以下、意図的に非添加、及び/又は全く含まれていない)。
【0137】
K.耐摩耗剤
本明細書に記載の耐摩耗剤は、上記式(I)により表される化合物が除外される。本開示による組成物は、耐摩耗剤としての二次的効果も示す、様々な表記機能を有する添加剤を含んでいてもよい(例えば、有機モリブデン摩擦調整剤(ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、アルキルキサントゲン酸モリブデン、及びアルキルチオキサントゲン酸モリブデン)は、耐磨耗効果も示す)。こうした添加剤は、本明細書において潤滑油組成物又は濃縮物中の耐摩耗添加剤の量を決定する目的では、耐摩耗添加剤には含まれない。
本発明の潤滑油組成物は、摩擦及び過度の摩耗を低減することができる1つ又は複数の耐摩耗剤を含んでいてもよい。当業者に公知のあらゆる耐摩耗剤を潤滑油組成物に使用することができる。好適な耐摩耗剤の非限定的な例としては、ジチオリン酸亜鉛、ジチオホスフェートの金属(例えば、Pb、Sb、及びMo等)塩、ジチオカルバメートの金属(例えば、Zn、Pb、Sb、及びMo等)塩、脂肪酸の金属(例えば、Zn、Pb、及びSb等)塩、ホウ素化合物、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩、ジシクロペンタジエン及びチオリン酸の反応産物、並びにそれらの組合せが挙げられる。耐摩耗剤の量は、潤滑油組成物の総質量に基づき、約0.01質量%~約5質量%、約0.05質量%~約3質量%、又は約0.1質量%~約1質量%の範囲であってもよい。
【0138】
実施形態では、耐摩耗剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛化合物等のジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩であるか又はそれを含む。ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩の金属は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、若しくは銅であってよい。一部の実施形態では、金属は亜鉛である。他の実施形態では、ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩のアルキル基は、約3~約22個の炭素原子、約3~約18個の炭素原子、約3~約12個の炭素原子、又は約3~約8個の炭素原子を有する。更なる実施形態では、アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状である。
【0139】
また、有用な耐摩耗剤としては、置換又は非置換チオリン酸が挙げられ、それらの塩としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛、及び/又はアルキルアリールジチオリン酸亜鉛から選択されるジチオリン酸亜鉛化合物等の亜鉛含有化合物が挙げられる。
金属アルキルチオホスフェート及びより詳細には金属成分が亜鉛である金属ジアルキルジチオホスフェート又はジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)は、本開示の潤滑組成物の有用な成分であり得る。ZDDPは、第一級アルコール、第二級アルコール、又はそれらの混合物から誘導することができる。ZDDP化合物は、一般に、式Zn[SP(S)(OR1)(OR2)]2のものあり、式中、R1及びR2は、C1~C18アルキル基、好ましくはC2~C12アルキル基である。こうしたアルキル基は、直鎖であってもよく又は分岐鎖であってもよい。ZDDPに使用されるアルコールは、2-プロパノール、ブタノール、第二級ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、例えば、4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、及びアルキル化フェノール等であってもよい。第二級アルコールの混合物、又は第一級アルコール及び第二級アルコールの混合物を使用してもよい。アルキルアリール基も使用することができる。有用なジチオリン酸亜鉛としては、The Lubrizol Corporation社から商品名「LZ 677A」、「LZ 1095」、及び「LZ 1371」で市販されているもの、Chevron Oronite社から商品名「OLOA 262」で市販されているもの、及びAfton Chemical社から商品名「HITEC(商標)7169」で入手可能なもの等の第二級ジチオリン酸亜鉛が挙げられる。
【0140】
ZDDPは、典型的には、潤滑組成物の総質量に基づき、約0.4質量%~約1.2質量%、好ましくは約0.5質量%~約1.0質量%、より好ましくは約0.6質量%~約0.8質量%の量で使用されるが、多くの場合、より多く又はより少ない量を有利に使用することができる。好ましくは、ZDDPは第二級ZDDPであり、潤滑組成物の総質量の約0.6~1.0質量%の量で存在する。
【0141】
実施形態では、亜鉛化合物は、式:
【化10】
により表される、ジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸亜鉛錯体であってもよく、
式中、各R
1は、独立して、1~約10個の炭素原子を有する、直鎖状、環状、又は分岐鎖状の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分であり、nは、0、1、又は2であり、Lは、亜鉛の配位圏を飽和する配位子であり、xは、0、1、2、3、又は4である。ある特定の実施形態では、リガンドLは、水、水酸化物、アンモニア、アミノ、アミド、アルキルチオレート、ハロゲン化物、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0142】
ZDDP及び/又はカルバミン酸亜鉛は、典型的には、潤滑組成物の総質量に基づき、約0.4質量%~約1.2質量%、好ましくは約0.5質量%~約1.0質量%、より好ましくは約0.6質量%~約0.8質量%の量で使用されるが、多くの場合、より多く又はより少ない量を有利に使用することができる。好ましくは、ZDDPは第二級ZDDPであり、潤滑組成物の総質量の約0.6~1.0質量%の量で存在する。
【0143】
また、本明細書で有用な耐摩耗添加剤としては、ホウ素含有化合物、例えばホウ酸エステル、ホウ酸化脂肪族アミン、ホウ酸化エポキシド、アルカリ金属(又は混合アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属)ボレート、及びホウ素酸化過塩基性金属塩が挙げられる。
【0144】
他の添加剤
他の任意選択の添加剤としては、抗乳化作用剤が挙げられる。米国特許第10,829,712号明細書(第20欄34行目~40行目)を参照されたい。本明細書では、典型的には少量の抗乳化成分を使用することができる。好ましい抗乳化成分は欧州特許第330,522号明細書に記載されている。ビスエポキシドと多価アルコールとの反応により得られる付加物とアルキレンオキシドとを反応させることにより得られる。
他の任意選択の添加剤としては、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭化水素、エステル(例えば、フタル酸ブチルベンジル)、及びポリブテニル無水コハク酸等のシール適合剤が挙げられる。そのような添加剤は、約0.001~5質量%、好ましくは約0.01~2質量%の量で使用することができる。
【0145】
潤滑油組成物が、上記で考察されている添加剤の1つ又は複数を含む場合、添加剤は、典型的には、その意図されている機能を発揮するのに十分な量で組成物にブレンドされている。本開示に有用な、特にクランクケース潤滑剤に使用するためのそのような添加剤の典型的な量を下記の表に示す。
添加剤の多くは、ある特定の量の基油又は他の希釈剤と共に1つ又は複数の添加剤を一緒に含む濃縮物として、添加剤製造業者から出荷されることに留意されたい。したがって、下記の表の質量、並びに本明細書で言及されている他の量は、活性成分(即ち、成分の非希釈部分)の量を指す。下記に示す質量パーセント(質量%)は、潤滑油組成物の総質量に基づく。
【表1】
【0146】
上述の添加剤は、典型的には、市販の物質である。こうした添加剤は独立して添加してもよいが、通常は、潤滑油添加剤の供給業者から得ることができるパッケージに予め混合されている。様々な成分、割合、及び特質を有する添加剤パッケージが入手可能であり、最終組成物の使用を考慮して適切なパッケージを選択することになる。
【0147】
別の態様では、本明細書に記載の潤滑油組成物は、500~3000ppm、代替的に500~2800ppmの第4族、第5族、第10族、第11族、第12族、又は第13族金属(第10族、第11族、第12族、又は第13族金属等)を含む。
好ましくは、本明細書に記載の潤滑油組成物は、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、スズ、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、及びタンタルからなる群から選択される、500~3000ppm、代替的に500~2800ppmの金属(亜鉛等)を含む。
代替的に、本明細書に記載の潤滑油組成物は、500~3000ppm、代替的に500~2800ppm、代替的に500~2000ppmの、アルカン酸亜鉛に由来する亜鉛を含む。
【0148】
代替的に、本明細書に記載の潤滑油組成物は、600~4000ppm、代替的に700~3000ppm、代替的に800~2000ppmの、アルカン酸亜鉛並びに存在するあらゆるZDDP(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)及び/又はZDDC(ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛)に由来する亜鉛を含む。
代替的に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、本明細書に記載の潤滑組成物中に、1質量%以下、例えば0.5質量%以下、例えば0.1質量%以下、例えば0.01質量%以下で存在する。
代替的に、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛は、本明細書に記載の潤滑組成物中に、1質量%以下、例えば0.5質量%以下、例えば0.1質量%以下、例えば0.01質量%以下で存在する。
代替的に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛及びジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛は、本明細書に記載の潤滑組成物中に、1質量%以下、例えば0.5質量%以下、例えば0.1質量%以下、例えば0.01質量%以下で存在する。
代替的に、本明細書に記載の潤滑組成物は、100時間以上の凝着摩耗結果(ASTM D8074-16)及び1.1~4.8(1.1~4.7、又は1.2~4.7、又は1.3~4.5、又は2.5~4.0等)のZn対P比(元素質量基準)を有し、潤滑組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛及び/又はジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛以外の亜鉛含有化合物を含む。
代替的に、本明細書に記載の潤滑組成物は、100時間以上の凝着摩耗(ASTM D8074-16)及び少なくとも1000ppmの亜鉛を有し、潤滑組成物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛及び/又はジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛以外の亜鉛含有化合物を含む。
代替的に、本明細書に記載の潤滑組成物は、100時間以上の凝着摩耗を有する(ASTM D8074-16)。
本発明のなお更なる態様によると、潤滑油組成物は、質量%で1.1~4.8(1.1~4.7、又は1.2~4.7、又は1.3~4.5、又は2.5~4.0等)のM対リン比を有し、Mは、第4族、第5族、第10族、第11族、第12族、又は第13族金属であり、好ましくは、Mは、式(I)で規定される金属アルカン酸塩により提供される。
【0149】
燃料
本発明は、自動車内燃エンジンをエンジンの作動中に潤滑するための方法であって、
(i)本明細書に記載の金属アルカン酸塩を含む潤滑組成物を自動車内燃エンジンのクランクケース自動車クランクケースに供給するステップ、
(ii)自動車内燃エンジンに炭化水素燃料を供給するステップ、及び
(iii)ディーゼルエンジン又は乗用車エンジン(火花点火式燃焼エンジン等)等の火花点火式又は圧縮点火式の2ストローク又は4ストロークレシプロエンジン等の自動車内燃エンジンで燃料を燃焼させるステップ
を含む方法にも関する。
本発明は、本明細書に記載の潤滑油組成物(又は清浄剤及び1つ又は複数の金属アルカン酸塩を含むその成分)及び炭化水素燃料を含む燃料組成物であって、燃料は、石油及び/又は生物学的供給源(「バイオ燃料」又は「再生可能燃料」)に由来してもよい、燃料組成物にも関する。実施形態では、燃料は、1~50質量%の再生可能燃料及び石油由来燃料の総質量に基づき、0.1~100質量%の再生可能燃料、代替的に1~75質量%の再生可能燃料、代替的に5~50質量%の再生可能燃料を含む。
【0150】
再生可能燃料成分は、典型的には、植物油(パーム油、菜種油、大豆油、ジャトロファ油等)、微生物油(藻類油等)、動物性脂肪(調理用油、動物性脂肪、及び/又は魚脂肪等)、バイオガス、水素、及び/又はアンモニアから生産される。再生可能燃料は、現代的な生物学的プロセスから形成される生物学的資源から生産される水素、アンモニア、及びバイオ燃料を指す。一実施形態では、再生可能燃料成分は、水素化処理プロセスにより生産される。水素化処理は、分子状水素が他の成分と反応するか、又は成分が分子状水素及び固体触媒の存在下で分子変換を起こす種々の反応を含む。反応としては、これらに限定されないが、水素化、水素化脱酸素、水素化脱硫、水素化脱窒、水素化脱金属、水素化分解、及び異性化が挙げられる。再生可能燃料成分は、使用目的に応じて、所望の特性を成分に提供する様々な蒸留範囲を有してもよい。
【0151】
使用
本明細書に記載の潤滑油は、圧縮点火式及び火花点火式2気筒又は4気筒レシプロエンジン等の様々な内燃エンジンに有用である。例としては、乗用車、小型商用車、及び大型オンロードトラック用のエンジン;航空、発電、機関車、及び船舶機器/エンジン用のエンジン;並びに農業、建設、及び混合のために使用することができるもの等の大型オフロードエンジンが挙げられる。
本発明の潤滑組成物は、筒形ピストンエンジン油(TPEO)、MDCL(船舶用ディーゼルシリンダー潤滑剤)、及びシステム油等の船舶用潤滑剤として有用であり得る。
また、本発明の潤滑組成物は、天然ガスエンジン用の潤滑剤として有用であり得る[例えば、天然ガスは、エンジンが稼動する燃料であり、一般的にはGEO又は(天然)ガスエンジン油と呼ばれる]。
また、本発明の潤滑組成物は、水素エンジン及びアンモニアエンジン等用の潤滑剤として有用であり得る[例えば、水素(又は水素と天然ガスとの組合せ)及び/又はアンモニア(又はアンモニアと炭化水素燃料、例えばガソリン又はディーゼル燃料との組合せ)は、エンジンが使用する燃料である]。
【0152】
本発明の潤滑組成物は、潤滑剤を添加することにより、機械的エンジン部品、特に内燃エンジン、例えば、火花点火式又は圧縮点火式の2ストローク又は4ストロークレシプロエンジンの潤滑に使用することができる。典型的には、本発明の潤滑組成物は、乗用車モーター油又は大型ディーゼルエンジン潤滑剤等のクランクケース潤滑剤である。
特に、本発明の潤滑組成物は、好適には、大型ディーゼルエンジン等の圧縮点火式内燃エンジンのクランクケースの潤滑に使用される。本明細書に記載の潤滑組成物は、長期間の作動によりピストンライナーが摩耗し易い内燃エンジンに特に好適であり、したがって本発明は、エンジン寿命を延長することができる。
特に、本発明の潤滑組成物は、好適には、火花点火式ターボチャージャー付き内燃エンジンのクランクケースの潤滑に使用される。
本開示の潤滑油は、高圧縮火花点火式内燃エンジンに特に有用である。
【0153】
本明細書に記載の潤滑油は、水素又はアンモニアを燃料とする内燃エンジンを、エンジンの作動中に潤滑することであって、
(i)本明細書に記載の金属アルカン酸塩を含む潤滑組成物を、内燃エンジンに、例えばクランクケースに供給するステップ、
(ii)水素及び/又はアンモニアを含む燃料を、内燃エンジンに供給するステップ、並びに
(iii)内燃エンジン、例えば水素又はアンモニアを燃料とするエンジンにて燃料を燃焼させるステップ
を含む、潤滑することにも有用である。
【0154】
本発明は、更に以下に関する。
1.基油、清浄剤、並びに1つ又は複数の第四級炭素原子を2位、2’位、又は2位及び2’位の両方に有する金属アルカン酸塩(例えば第5、第10、第11、第12、又は第13族金属アルカン酸塩等、好ましくは第4族金属アルカン酸塩ではなく、例えばアルカン酸チタンではなく、例えばアルカン酸ジルコニウムではなく、例えばアルカン酸ハフニウムではない)を含むか又は混合することから得られる潤滑組成物であって、100時間以上の凝着摩耗、24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積、並びに任意選択で7mg KOH/g以上の全塩基価を有する潤滑組成物。
2.金属アルカン酸塩は、式(I):
【化11】
(I)、
により表され、
式中、
Mは、第10族、第11族、又は第12族金属、例えば亜鉛であり、
R
1は、H、又はC
1~C
20直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基であり、
R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、C
1~C
20直鎖状、分岐鎖状、又は環状アルキル基である、
段落1に記載の潤滑組成物。
3.以下の成分:
D)1つ若しくは複数の摩擦調整剤、
E)1つ若しくは複数の抗酸化剤、
F)1つ若しくは複数の流動点降下剤、
G)1つ若しくは複数の消泡剤、
H)1つ若しくは複数の粘度調整剤、
I)1つ若しくは複数の分散剤、
J)1つ若しくは複数の抑制剤及び/若しくは防錆剤、並びに/又は
K)式(I)に当てはまらない1つ若しくは複数の耐摩耗剤
の1つ又は複数を更に含む、段落1又は2に記載の潤滑組成物。
4.
A)基油は、潤滑組成物の質量に基づき1~99質量%で存在し、
B)清浄剤は、潤滑組成物の総質量に基づき0.1~20質量%で存在し、
C)金属アルカン酸塩は、潤滑組成物の総質量に基づき0.1~5質量%で存在する、
段落1、2、又は3に記載の潤滑組成物。
5.
E)任意選択で、1つ又は複数の抗酸化剤は、潤滑組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%で存在し、
F)任意選択で、1つ又は複数の流動点降下剤は、潤滑組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%で存在し、
G)任意選択で、1つ又は複数の消泡剤は、潤滑組成物の総質量に基づき、0.001~5質量%で存在し、
H)任意選択で、1つ又は複数の粘度調整剤は、潤滑組成物の総質量に基づき、0.001~6質量%で存在し、
I)任意選択で、1つ又は複数の分散剤は、潤滑組成物の総質量に基づき、0.01~20質量%で存在し、
J)任意選択で、1つ又は複数の抑制剤及び/又は防錆剤は、潤滑組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%で存在し、
K)任意選択で、成分C)のもの以外の1つ又は複数の耐摩耗剤は、潤滑組成物の総質量に基づき、0.001~5質量%で存在する、
段落4に記載の潤滑組成物。
6.120時間以上の凝着摩耗を有する、上記段落1~5のいずれかに記載の潤滑組成物。
7.リン含有成分(ZDDP等)を更に含み、金属(式(I)のM又は亜鉛等)対Pの比は、質量%で1.1~4.7又は質量%で3.0~3.5である、上記段落1~6のいずれかに記載の潤滑組成物。
8.アルカン酸塩は、ネオ酸に由来する、上記段落1~7のいずれかに記載の潤滑組成物。
9.少なくとも1000ppmの亜鉛を有する、上記段落1~8のいずれかに記載の潤滑組成物。
10.R
1、R
2、及びR
3の炭素原子数の合計は7個以上の炭素原子であり、R
4、R
5、及びR
6の炭素原子数の合計は7個以上の炭素原子である、上記段落1~9のいずれかに記載の潤滑組成物。
11.金属アルカン酸塩は、C
18~C
60ネオアルカン酸亜鉛である、上記段落1~10のいずれかに記載の潤滑組成物。
12.金属アルカン酸塩は、ネオデカン酸亜鉛、ネオウンデカン酸亜鉛、ネオドデカン酸亜鉛、ネオトリデカン酸亜鉛、ネオテトラデカン酸亜鉛、ネオペンタデカン酸亜鉛、ネオヘキサデカン酸亜鉛、ネオヘプタデカン酸亜鉛、ネオオクタデカン酸亜鉛、ネオノナデカン酸亜鉛、及びネオエイコサン酸亜鉛の1つ又は複数である、上記段落1~11のいずれかに記載の潤滑組成物。
13.金属アルカン酸塩は、-15℃で液体であり、80℃で液体である、上記段落1~12のいずれかに記載の潤滑組成物。
14.大型ディーゼルエンジン油又は船舶用エンジン油である、上記段落1~13のいずれかに記載の潤滑組成物。
15.1000ppmよりも多くの亜鉛及び1000ppm未満のPを含み、100時間以上の凝着摩耗、24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積、並びに任意選択で7mg KOH/g以上の全塩基価を有する、上記段落1~14のいずれかに記載の潤滑組成物。
16.Zn対P比は、質量%で1.1~4.8(1.1~4.7、又は1.2~4.7、又は1.3~4.5、又は2.5~4.0、又は3.0から3.5、又は3.0~3.4等)である、上記段落1~15のいずれかに記載の潤滑組成物。
17.ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、1質量%以下で存在する、上記段落1~16のいずれかに記載の潤滑組成物。
18.100時間以上の凝着摩耗結果(ASTM D8074-16)及び質量%で1.1~4.8(1.1~4.7、又は1.2~4.7、又は1.3~4.5、又は2.5~4.0、又は3.0~3.5、又は3.0~3.4等)のZn対P比(元素質量基準)を有する潤滑組成物であって、ジアルキルジチオリン酸亜鉛以外の(任意選択で、ジアルキルジチオリン酸亜鉛及び/又はジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛以外の)亜鉛含有化合物を含む潤滑組成物。
19.100時間以上の凝着摩耗(ASTM D8074-16)及び少なくとも1000ppmの亜鉛を有する潤滑組成物であって、ジアルキルジチオリン酸亜鉛以外の(任意選択で、ジアルキルジチオリン酸亜鉛及び/又はジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛以外の)亜鉛含有化合物を含む潤滑組成物。
20.1000ppm以上の亜鉛を有する潤滑組成物について、100時間以上の凝着摩耗(ASTM D8074-16)を得るための方法であって、
(i)段落1~19のいずれかに記載の潤滑組成物を内燃エンジンのクランクケースに供給するステップ、
(ii)内燃エンジンに炭化水素燃料を提供するステップ、及び
(iii)内燃エンジンにて燃料を燃焼させるステップ
を含む方法。
21.自動車内燃エンジンをエンジンの作動中に潤滑するための方法であって、
(i)段落1~19のいずれかに記載の潤滑組成物を、内燃エンジンのクランクケース自動車クランクケースに供給するステップ、
(ii)内燃エンジンに炭化水素燃料を供給するステップ、及び
(iii)内燃エンジンにて燃料を燃焼させるステップ
を含む方法。
22.エンジンは、ディーゼルエンジンである、段落21に記載の方法。
23.エンジンは、船舶用エンジンである、段落21に記載の方法。
24.エンジンは、自動車エンジンである、段落21に記載の方法。
25.組成物により潤滑される内燃エンジンにおいて100時間以上の凝着摩耗(ASTM D8074-16)を得るための、油組成物中の添加剤としての、段落1~19のいずれかに記載の潤滑組成物の使用。
26.潤滑組成物は、24℃で70ml以下及び93.5℃で50ml以下の気泡容積、並びに任意選択で7mg KOH/g以上の全塩基価を有する、段落25に記載の使用。
27.内燃エンジンは、
(i)内燃エンジンのクランクケースに、1000ppm以上の亜鉛を有する、請求項1~19のいずれかに記載の潤滑組成物を提供するステップ、
(ii)内燃エンジンに炭化水素燃料を供給するステップ、及び
(iii)内燃エンジンにて燃料を燃焼させるステップ
により潤滑される、段落25又は26に記載の使用。
28.潤滑油組成物は、
1)100時間以上、例えば140時間以上の凝着摩耗(ASTM D8074-16により決定される)、並びに
2)800ppmよりも多くの亜鉛(1000ppm以上等)及び1000ppm未満のリン、並びに
3)質量%で1.1対4.8(1.1~4.7、又は1.2~4.7、又は1.3~4.5、又は2.5~4.0、又は3.0~3.5、又は3.0~3.4等)の亜鉛対リン比
を有する、段落25又は26に記載の使用。
29.式(I)におけるM等の金属は、第4族金属ではなく、好ましくはチタンではない、段落1~19のいずれかに記載の組成物。
30.水素及び/又はアンモニアを燃料とする内燃エンジンを、エンジンの作動中に潤滑するための方法であって、
(i)清浄剤、並びに2位、2’位、又は2位及び2’位の両方に第四級炭素原子を有する1つ又は複数の金属アルカン酸塩を含む潤滑組成物を、内燃エンジンのクランクケースに供給するステップ、
(ii)水素及び/又はアンモニアを含む燃料を内燃エンジンに供給するステップ、並びに
(iii)内燃エンジンにて燃料を燃焼させるステップ
を含む方法。
31.潤滑組成物は、段落1~19のいずれかに記載の組成物である、段落30に記載の方法。
32.内燃エンジンの潤滑において、前記内燃エンジンの、前記エンジンの潤滑中の凝着摩耗を低減するための、段落1~19のいずれかに記載の組成物である潤滑油組成物中の有効少量のアルキルネオ-モノカルボン酸の金属塩及び添加剤の組合せとしての清浄剤の使用。
33.内燃エンジンの潤滑において、前記内燃エンジンの、前記エンジンの潤滑中の起泡を低減するための、段落1~19のいずれかに記載の組成物である潤滑油組成物中の有効少量のアルキルネオ-モノカルボン酸の金属塩及び添加剤の組合せとしての清浄剤の使用。
34.潤滑油組成物は、質量%で1.1~4.8、又は質量%で3.0~3.5、又は質量%で3.0~3.4の亜鉛対リン比を有する、請求項32又は33に記載の使用。
【0155】
以下の非限定的な例は、本開示を説明するために提供されている。
実験
別様の記載がない限り、全ての分子量は数平均である。
試験手順
全塩基価は、ASTM D2896に従って決定され、mg KOH/gの単位で報告される。
HTHS150(高温高剪断150)は、ASTM D4683-20に従って決定され、センチポアズ(cP)の単位で報告される。
粘度指数は、ASTM D2270に従って測定される。
KV100は、ASTM D445-19aに従って100℃で測定される動粘度である。
リン含有量は、ASTM D5185により決定した。
亜鉛含有量は、ASTM D5185により決定した。
【0156】
凝着摩耗試験は、ASTM D8074-16に従って実施した。DD13スカッフィング試験(ASTM D8074-16)では、排気ガスリサイクル(EGR)、未コーティングトップリングを備え、超低硫黄ディーゼル燃料で稼働するターボチャージャー及びインタークーラー付き4サイクルディーゼルエンジンにおけるエンジン油のライナースカッフィング及びリング損耗性能を評価する。試験エンジンは、EGRを有する4ストロークDetroit Diesel社製DD13 12.8L、6気筒ディーゼルエンジンである。エンジンを各試験前に分解し、部品を溶剤洗浄及び測定し、全て新しいピストン、未コーティングリング、シリンダーライナー、及びコネクティングロッドベアリングを使用して再構築する。試験は、DD13ディーゼルエンジンにおけるディーゼルエンジン油を評価のためのASTM D8074-16標準試験法バージョン20170104を使用して実施し、スカッフィング時間の決定は27%を超えるべきではない試験評価ライナースカッフィングの終了時点からの時間であり、25ppmを超えるべきではない任意の2時間間隔間の鉄の変化、及び2kPa絶対圧力を超えるべきではないクランクケース圧力である。Detroit Diesel社が設定した仕様を満たすための合格限界は、最低31時間のスカッフィング時間である。
【0157】
エンジン潤滑剤の起泡特質は、ASTM D892、オプションAに従って決定した。この試験では、潤滑油の起泡傾向及び安定性を評価する。この方法は3つの工程で構成される。工程Iでは、エンジン潤滑剤試料の一部を起泡シリンダー内で24℃に維持し、一定の速度で5分間空気を吹き込む。吹き出しが止まった後、気泡の量を記録する。次いで、気泡を10分間静置し、気泡の量を再度記録する。工程IIでは、試料の第2の部分を、工程Iと同じプロセスに供するが、温度は代わりに93.5℃とする。工程IIIでは、工程IIの同じ試料を、試料が43.5℃を下まわるまで室温で冷却する。次いで、試料を24℃に維持し、工程Iを繰り返す。
【0158】
物質
PIBは、ポリイソブチレンである。
PIBSAは、ポリイソブチレン無水コハク酸である。
A.I.又はa.i.は、活性成分である。
Mnは、数平均分子量である。
【実施例0159】
本発明を、これから以下の実施例で説明することになるが、こうした実施例は、本発明の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
下記の表1に示されている一連の10W-30エンジン潤滑剤を、下記に列挙されている添加剤を基油及び粘度調整剤と60℃で混合することにより、DD13スカッフィング試験での試験用に調製した。実施例1、3、及び5は、金属アルカン酸塩を有さない比較潤滑油組成物を表し、実施例2及び4は本発明の潤滑油組成物を表す。使用した配合物の詳細は下記に列挙されている。
【表2】
1. 米国特許出願公開第2009/0203559号明細書の実施例1と同様の方法で調製されたPIBSAエステル。
2. 2022年10月11日に出願された、題名が「Functionalized C4 to 5 Olefin Polymers and Lubricant Compositions Containing Such」の同時出願の米国特許出願第63/379,006号に記載のように調製された7.2%アミン官能化水素化ポリイソプレン。
【0160】
各試料を、DD13スカッフィング試験に従って評価した。その結果は、アルカン酸亜鉛、特にネオデカン酸亜鉛を含む潤滑油組成物が、500ppm及び800ppmの両方のリン環境でエンジンのスカッフィング性能を向上させることができたことを示している。潤滑油組成物に添加されるアルカン酸亜鉛の量を調整して、3.0~3.5、例えば3.0~3.4、例えば3.03~3.38の亜鉛対リン比を達成することにより(実施例2及び4)、比較例1及び3よりもスカッフィング性能の劇的な向上が観察された。更に、実施例5は、亜鉛対リン比が高すぎると、スカッフィング性能の増強が失われることを例示している。
【0161】
次いで、4つのブレンドを起泡特質について評価した(下記の表2に報告されている)。まず、Mgサリチル酸塩/スルホン酸塩清浄剤を130℃で基油に溶解し、次いで混合物にステアリン酸亜鉛を130℃で4時間にわたって定期的に添加することにより実施例6を得た。混合物が均質になったら、95℃で1時間更に混合した。実施例7、8、及び9では、Mgサリチル酸塩/スルホン酸塩清浄剤、対応する金属カルボン酸塩(つまり、ネオデカン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、及びジルコニウム(2-エチルヘキサン酸塩)、及び基油を、95℃で1時間共に混合して、均質な混合物を得た。
【表3】
【0162】
起泡傾向及び安定性の結果は、ステアリン酸亜鉛、亜鉛(2-エチルヘキサン酸塩)、及びジルコニウム(2-エチルヘキサン酸塩)の使用が、24℃及び93.5℃の両方において起泡安定性問題を引き起こすことを示している(実施例6、8、及び9)。他の試験金属カルボン酸塩の代わりにネオデカン酸亜鉛を同等の金属レベルで導入することにより、油組成物の起泡安定性が劇的に向上する(実施例7)。したがって、起泡安定性問題を生じさせずに、優れたDD13スカッフィング性能を得るためには、ネオデカン酸亜鉛が好ましい。
DD13データにはばらつきがある可能性があるが、平均化すると傾向を特定することができる。
図3を参照されたい。
【0163】
あらゆる優先権文書及び/又は試験手順を含む、本明細書に記載の全ての文書は、この本文と矛盾しない範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。上述の概要及び特定の実施形態から明らかなように、本発明の形態を図示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく種々の改変をなすことができる。したがって、それにより本発明が限定されることは意図されていない。「含む(comprising)」という用語は、記載の特徴、ステップ、整数、又は成分の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴、ステップ、整数、成分、又はそれらの群の存在又は追加を排除しない。同様に、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」という用語と同義であるとみなされる。同様に、組成物、要素、又は要素の群に「含む(comprising)」という移行句が先行している場合は常に、組成物、1つ又は複数の要素の記載に先行する、「から本質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consisting of)」、「からなる群から選択される(selected from the group of consisting of)」、又は「である(is)」という移行句を伴う同じ組成物又は要素の群も企図され、その逆も同様であることが理解される。