IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インフィニューム インターナショナル リミテッドの特許一覧

特開2024-56646官能化C4-5オレフィンポリマー及びそれらを含む潤滑剤組成物
<>
  • 特開-官能化C4-5オレフィンポリマー及びそれらを含む潤滑剤組成物 図1
  • 特開-官能化C4-5オレフィンポリマー及びそれらを含む潤滑剤組成物 図2
  • 特開-官能化C4-5オレフィンポリマー及びそれらを含む潤滑剤組成物 図3
  • 特開-官能化C4-5オレフィンポリマー及びそれらを含む潤滑剤組成物 図4
  • 特開-官能化C4-5オレフィンポリマー及びそれらを含む潤滑剤組成物 図5
  • 特開-官能化C4-5オレフィンポリマー及びそれらを含む潤滑剤組成物 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056646
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】官能化C4-5オレフィンポリマー及びそれらを含む潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 149/06 20060101AFI20240416BHJP
   C10M 145/14 20060101ALI20240416BHJP
   C10M 159/22 20060101ALI20240416BHJP
   C10M 159/24 20060101ALI20240416BHJP
   C10M 159/20 20060101ALI20240416BHJP
   C10M 129/10 20060101ALI20240416BHJP
   C10M 129/40 20060101ALI20240416BHJP
   C10M 129/54 20060101ALI20240416BHJP
   C10M 137/10 20060101ALI20240416BHJP
   C10M 135/30 20060101ALI20240416BHJP
   C08C 19/00 20060101ALI20240416BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20240416BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240416BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20240416BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20240416BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240416BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20240416BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20240416BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C10M149/06
C10M145/14
C10M159/22
C10M159/24
C10M159/20
C10M129/10
C10M129/40
C10M129/54
C10M137/10 A
C10M135/30
C08C19/00
C08F8/00
C10N40:25
C10N30:04
C10N30:06
C10N30:00 Z
C10N20:04
C10N10:02
C10N10:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023174179
(22)【出願日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】63/379,006
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500010875
【氏名又は名称】インフィニューム インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】エヴァン ハイダス
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー ゼット ディッグス
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ツイ
(72)【発明者】
【氏名】ガ グエン
(72)【発明者】
【氏名】サンジーヴ シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ウィーラー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エー クレイスト
(72)【発明者】
【氏名】カリナ エリザベス フォスター
【テーマコード(参考)】
4H104
4J100
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB36A
4H104BG16C
4H104BH03A
4H104CB08C
4H104CE03A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104DB05C
4H104DB06C
4H104DB07C
4H104EA03C
4H104EB05
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB13
4H104FA01
4H104FA02
4H104LA02
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA41
4H104PA42
4H104PA44
4J100AS03P
4J100BA28H
4J100BA34H
4J100BC43H
4J100CA01
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA04
4J100HA04
4J100HA57
4J100HA61
4J100HC30
4J100HC36
4J100HC43
4J100JA28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】燃費が向上し、耐久性及び摩耗防止を維持し、煤煙誘導粘度増加を防止する潤滑油を提供する。
【解決手段】官能化ポリマー及びそれらを含む組成物であって、官能化ポリマーは、i)2未満のMw/Mn、ii)3.5以下(GPC-PS)の官能価分布(Fd)値、及びiii)10,000g/mol以上(GPC-PS)の官能化前のポリマーのMnを有し、ただし、官能化前のポリマーがイソプレン及びブタジエンのコポリマーである場合は、コポリマーのMnは25,000g/mol(GPC-PS)よりも大きい、C4-5オレフィンを含むアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマーを含む、官能化ポリマー及びそれらを含む組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-5オレフィンを含むアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマーであって、
i)2未満のMw/Mn、
ii)3.5以下の官能価分布(Fd)値、及び
iii)10,000g/mol以上(GPC-PS)の官能化前の前記ポリマーのMn
を有し、ただし、官能化前のポリマーがイソプレン及びブタジエンのコポリマーである場合は、コポリマーのMnは25,000g/mol(GPC-PS)よりも大きい、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマー。
【請求項2】
少なくとも約50%の、モノマーの1,4-挿入を含む、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項3】
官能化前の前記ポリマーは、25,000g/mol以上(GPC-PS)又は30,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有する、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項4】
官能化前の前記ポリマーは、少なくとも90mol%のイソプレンリピート単位を含むか、又はホモ-ポリイソプレンである、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーは、官能化前に部分的に又は完全に水素化されている、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項6】
30,000~100,000g/mol(GPC-PS)のMnを有し、1つ又は複数のペンダントアミン基を含み、官能化前に、少なくとも約50%、例えば少なくとも約60%の1,4-挿入を有する部分的又は完全飽和ホモポリイソプレンを含む、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項7】
官能化前の前記ポリマーがホモポリイソブチレンである場合、前記C4オレフィンポリマーは、15,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有し、官能化前の前記ポリマーが、イソプレン及びブタジエンのコポリマーである場合、前記コポリマーのMnは35,000Mnより大きい(GPC-PS)、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項8】
官能化前の前記ポリマーは、90mol%以上のイソプレンリピート単位又は100mol%以上のイソプレンリピート単位を含み、30,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有する、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項9】
官能化前の前記ポリマーは、10,000g/mol当たり1~20の平均官能価を有するホモポリイソプレンの部分的又は完全水素化ポリマーである、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項10】
a)前記ポリマーにはスチレンリピート単位が存在せず、及び/又は
b)前記ポリマーにはブタジエンリピート単位が存在せず、及び/又は
c)前記ポリマーはホモポリイソブチレンではなく、及び/又は
d)前記ポリマーはイソプレン及びブタジエンのコポリマーではない、
請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項11】
前記ポリマーは、GPC-PSにより決定して、1.4~20FGグラフト/ポリマー鎖の平均官能価を有する、請求項1~10のいずれかに記載の官能化ポリマー。
【請求項12】
前記ポリマーは、2未満のMw/Mn及び10,000g/mol以上のMnを有する、C4-5共役ジエンの完全又は部分的水素化ポリマーをアシル化剤と反応させ、その後前記アシル化ポリマーをアミンと反応させて、イミド、アミド、又はそれらの組合せを形成することにより得られる、請求項1~11のいずれかに記載の官能化ポリマー。
【請求項13】
副反応が最小限に抑えられる、請求項12に記載の官能化ポリマーであって、前記アシル化剤を連続若しくは半連続方式で添加することにより、及び/又は前記完全若しくは部分的水素化ポリマーを、希釈剤中の溶液又は懸濁物として、バッチ、半連続、若しくは連続反応器操作に導入することにより、副反応が最小限に抑えられてもよく、前記溶液又は懸濁物は、前記完全若しくは部分的水素化ポリマー及び希釈剤の質量に基づき45質量%以上の前記完全若しくは部分的水素化ポリマーを含む、官能化ポリマー。
【請求項14】
潤滑油組成物であって、
(i)前記潤滑油組成物の質量に基づき少なくとも50質量%の1つ又は複数の基油、
(ii)1つ又は複数の分散剤、
(iii)1つ又は複数の清浄剤、及び
(iv)請求項1~13のいずれかに記載の1つ又は複数の官能化ポリマー
を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物。
【請求項15】
好ましくは、
a)20W-X、15W-X、10W-X、5W-X、又は0W-XのSAE粘度グレードであり、Xは、8、12、16、20、30、40、及び50のいずれか1つを表す、SAE粘度グレード、並びに
b)55mg以下の煤煙誘導性摩耗(バルブトレイン摩耗保護のカミンズISB試験により決定される)、並びに
c)12cSt以下の6%煤煙での煤煙誘導性粘度増加(煤煙誘導性粘度制御のMack T11試験により決定される)
を有する、請求項14に記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
(i)前記潤滑油組成物の質量に基づき50~99質量%の前記1つ又は複数の基油、
(ii)前記潤滑油組成物の総質量に基づき0.01~20質量%の前記1つ又は複数の分散剤、
(iii)前記潤滑油組成物の質量に基づき0.10~20質量%の前記1つ又は複数の清浄剤、
(iv)前記潤滑油組成物の質量に基づき0.10~20質量%の前記1つ又は複数の官能化ポリマー
を含むか又は混合することから得られる、請求項14又は15に記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
摩擦調整剤、抗酸化剤、流動点降下剤、消泡剤、粘度調整剤、抑制剤及び/又は防錆剤、並びに耐摩耗剤からなる群から選択される1、2、3、4、5、6、又はそれよりも多くの追加の添加剤をさらに含む、請求項14に記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
D)前記潤滑油組成物の総質量に基づき0.01~5質量%の1つ又は複数の摩擦調整剤、
E)前記潤滑油組成物の総質量に基づき0.01~10質量%の1つ又は複数の抗酸化剤、
F)前記潤滑油組成物の総質量に基づき0.01~5質量%の1つ又は複数の流動点降下剤、
G)前記潤滑油組成物の総質量に基づき0.001~5質量%の1つ又は複数の消泡剤、
H)前記潤滑油組成物の総質量に基づき0.001~10質量%の1つ又は複数の粘度調整剤、
J)前記潤滑油組成物の総質量に基づき0.0~5質量%の1つ又は複数の抑制剤及び/若しくは防錆剤、並びに/又は
K)前記潤滑油組成物の総質量に基づき0.001~10質量%の1つ又は複数の耐摩耗剤
の1、2、3、4、5、6つ、又はそれよりも多くを更に含む、請求項16に記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
前記潤滑油組成物には、フェノール系抗酸化剤及び/又はスチレン系ポリマーが存在しない、請求項14に記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
1)前記潤滑油組成物の総質量に基づき5質量%未満の官能化油、及び/又は
2)前記潤滑油組成物の総質量に基づき5質量%未満の脂肪族若しくは芳香族溶媒、及び/又は
3)前記潤滑油組成物の総質量に基づき5質量%未満の第二級ヒドロカルビルアミン化合物及び第三級ヒドロカルビルアミン化合物
を含む、請求項14に記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
前記潤滑油組成物は、ASTM D94により決定して25mg KOH/g以上の総鹸化価(SAP)を有し、前記官能化ポリマーは、3.5以下の官能価分布(Fd)値を有する、請求項14に記載の潤滑油組成物。
【請求項22】
1)前記清浄剤は、アルカリ若しくはアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウム、例えばCa及び/又はMg)の1つ若しくは複数の油溶性中性若しくは過塩基性スルホネート、フェネート、硫化フェネート、チオホスホネート、サリチレート、ナフテネート、及び他の油溶性カルボキシレートを含み、並びに/又は
2)前記分散剤は、1つ若しくは複数のホウ酸化若しくは非ホウ酸化ポリ(アルケニル)コハク酸イミドであって、前記ポリアルケニルはポリイソブチレンから誘導され、前記イミドはポリアミンから誘導される、1つ若しくは複数のホウ酸化若しくは非ホウ酸化ポリ(アルケニル)コハク酸イミドを含む、
請求項14に記載の潤滑油組成物。
【請求項23】
前記分散剤は、1つ又は複数の、任意選択でホウ酸化されたより高分子量(Mn 1600g/mol以上、例えば1800~3000g/mol)のポリ(アルケニル)コハク酸イミド、及び1つ又は複数の、任意選択でホウ酸化されたより低分子量(1600g/mol未満のMn)のポリ(アルケニル)コハク酸イミドを含み、任意選択で、前記より高分子量のポリ(アルケニル)コハク酸イミドは、0.8~6質量%の量で前記潤滑油組成物に存在し、前記より低分子量のポリ(アルケニル)コハク酸イミドは、1.5~5質量%の量で前記潤滑組成物に存在する、請求項23に記載の潤滑油組成物。
【請求項24】
大型ディーゼル油である、請求項14に記載の潤滑油組成物。
【請求項25】
前記6%煤煙での煤煙誘導性粘度増加は、ASTM D7156-19により決定して12cSt以下であり、及び/又はカムシャフト摩耗は、ASTM D7484-21により決定して50μm未満である、請求項14~24のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項26】
内燃エンジンを前記エンジンの作動中に潤滑するための方法であって、
(i)請求項14~25のいずれかに記載の潤滑油組成物を、前記内燃エンジンのクランクケースに供給するステップ、
(ii)前記内燃エンジンに、燃料、任意選択でディーゼル燃料を供給するステップ、及び
(iii)前記自動車内燃エンジンにて前記燃料を燃焼させるステップ
を含む方法。
【請求項27】
前記燃料は、炭化水素燃料、再生可能燃料、水素燃料、又はそれらの任意のブレンドの1つ又は複数である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~25のいずれかに記載の組成物、及び炭化水素燃料、再生可能燃料、水素燃料、又はそれらの任意のブレンドの1つ又は複数を含む燃料組成物。
【請求項29】
濃縮物であって、前記濃縮物の質量に基づき、1~50質量%未満の1つ又は複数の基油、及び前記濃縮物の質量に基づき0.10~20質量%の、請求項1~13のいずれかに記載の官能化ポリマーの1つ又は複数を含むか又は混合することから得られる濃縮物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンクランクケース応用、特に圧縮点火式エンジン応用において良好な分散性を有する潤滑剤組成物中の添加剤としての、アミド、イミド、及び/又はエステル官能基を有する、共役ジエンポリマー等のC4-5オレフィンポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費を重視する傾向が高まっている。車両の燃費を向上させる1つの手法は、耐久性及び摩耗保護のための良好な膜厚を維持しつつ、また煤煙誘導性粘度増加を防止しつつ、摩擦を低減する新しい潤滑油を設計することである。燃費を向上させる試みにおいて、相手先商標製品製造業者(OEM)による低粘度グレードの使用及び要求がますます広まりつつある。こうした低減粘度グレードを有するエンジン及び/又はドライブトレイントランスミッション油を提供するための課題の1つは、清澄性を維持することである。そのような油は、所望の燃費利益を提供しつつ、スラッジを低減し、良好な煤煙取扱いを提供し、摩耗保護を提供することができなければならない。こうした目標は、低レベルの硫酸灰分及びリン、並びにシール適合性(seal compatibility)を確保しつつ達成されるべきである。こうした要件を満たす低粘度グレードの新しいエンジン油を提供する必要性が存在する。
基油は、典型的には、粘度指数向上剤(VII)及び/又は分散剤等の添加剤を添加することにより改質される。VIIは、温度による潤滑剤の粘度変化の程度を低減するために使用することができ、エンジン及びトランスミッション潤滑剤を配合するために使用されることが多い。一般的なVIIとしては、典型的には、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリメタクリレート、水素化スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリイソブチレン等から誘導することができるポリマー物質が挙げられる。
【0003】
エンジン作動中に、煤煙等の油不溶性酸化副産物が生成される。分散剤は、こうした副産物の懸濁又は溶液中保持を維持することを支援し、したがって金属表面への副産物の堆積を軽減する。一般的な分散剤としては、(ポリ)アルケニルコハク酸誘導体、例えばヒドロカルビル置換無水コハク酸、例えばポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)、及びヒドロカルビル置換コハク酸イミド、例えばポリイソブチレンコハク酸イミド(PIBSA-PAM)、例えばマレイン化ポリイソブチレンとN-フェニル-p-フェニレンジアミンとの反応から誘導されるもの等が挙げられる。有用な分散剤としては、コハク酸イミド、ヒドロキシエチルイミド、コハク酸エステル/アミド、及びオキサゾリン等の官能基を含むようにエン反応により修飾されているポリイソブテンが挙げられる。他の分散剤としては、ポリブテン、エチレンプロピレンポリマー、及びアクリルポリマーのマンニッヒ塩基誘導体が挙げられる。
他の分散剤は、マレイン化ポリアルファ-オレフィン(エチレン-プロピレンコポリマー等)とポリアミンとの反応から誘導される。米国特許第6,107,257号明細書は、多官能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤を含む、潤滑油組成物用の添加剤に関する。無水マレイン酸を、溶媒の存在下でエチレン-プロピレンコポリマー骨格と反応させるか又はグラフトし、次いでグラフトされたコポリマーを、界面活性剤の存在下でN-アリールフェニレンジアミン等のポリアミンと反応させて、多官能性オレフィンコポリマー粘度指数向上剤を提供する。同様に、米国特許第6,107,258号明細書は、C3~C23アルファオレフィンのアシル化、次いでアミノ化されたコポリマーから誘導される多官能性燃料及び潤滑油添加剤に関する。
【0004】
更に他の分散剤は、スチレン系コポリマーから誘導される。米国特許第6,248,702号明細書には、分散剤物質を形成するためにアミノプロピルモルホリンと反応させたマレイン化選択的水素化スチレン系ブロックコポリマー(Mn10,000、実施例1)が開示されている。
更に他の分散剤は、イソプレン及びブタジエンのブロックコポリマー等、2つの異なる共役ジエンのコポリマーから誘導される。米国特許第5,780,540号明細書には、自動車添加剤パッケージにおける官能化選択的水素化イソプレンブタジエンジブロックコポリマーが開示されている。実施例には、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミンをポリエチレングリコールモノアルコール、4-(3-アミノプロピルモルホリン)、及び/又は3-ジブチルアミノプロピルアミンと組み合わせて使用して、マレイン化10,000Mn及び/又は20,000Mnイソプレン-ブタジエンコポリマーを官能化することが示されている。実施例1及び2には、2,2’ジピリジルを用いてIBコポリマーを製作すると、高1,4挿入を有する可能性がより低くなることが示されている。
【0005】
同様に、米国特許第6,319,881号明細書には、自動車添加剤パッケージにおける官能化選択的水素化イソプレンブタジエンジブロックコポリマーが開示されている。実施例IVには、アミノプロピルモルホリンと反応してモルホリノプロピルコハク酸イミド付加物を形成するマレイン化選択的水素化イソプレンブタジエンジブロックコポリマー(Mn15,000)が示されており、それは次いで添加剤パッケージに分散剤として使用されている(実施例V)。
米国特許第5,073,600号明細書は、典型的には500,000~約3,000,000のMnを有する、共役ジオレフィンのコポリマーを官能化(例えば、マレイン化、次いでアミノ化)するための反応押出法に関する。実施例には、反応押出機で無水マレイン酸及びジエチルアミノプロピルアミンと反応させた、平均で15個のアーム(1アーム当たり35,000Mn)を有する水素化ホモ-ポリイソプレンの水素化「低」分子量星形ポリマーが示されている。
【0006】
厳しい摩耗試験に合格しつつ、摩耗及び燃費の向上をももたらす、代替的な又は向上したエンジン/トランスミッション油組成物を提供する必要性が依然として存在する。本開示は、磨耗を低減するだけでなく、許容可能な煤煙取扱い及び/又はエンジン/トランスミッション清澄性を有する、グラフト化多官能性オレフィンコポリマーを含むエンジン油組成物を提供する。更に、本開示は、水素化及び官能化されている、1つ又は複数の共役ジエンの狭い分子量分布ポリマーを含む分散剤粘度指数向上剤を提供することによりこうした必要性に対処する。分散剤は、2つの異なる共役ジエンのコポリマー又は共役ジエンのホモポリマーを含む組成物を含む。ポリマーを選択的に水素化して、分子量分布が高度に制御されたポリマーを生成し、均一な官能基化を可能にする。また、本開示の分散剤により分散性及び/又は粘度特性が改質された、鉱物油、石油化学油、及び合成油等の潤滑剤流体が提供される。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、C45オレフィンを含むアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマーであって、
i)2未満のMw/Mn、
ii)3.5以下(下記の実験セクションに記載のGPC-PS)の官能価分布(Fd)値、及び
iii)10,000g/mol以上(GPC-PS)の官能化前のポリマーのMn
を有し、ただし、官能化前のポリマーがイソプレン及びブタジエンのコポリマーである場合は、コポリマーのMnは25,000g/mol(GPC-PS)よりも大きい、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマーに関する。
【0008】
本開示は、2未満のMw/Mn(Mw及びMnは、ポリスチレン標準物質を使用してGPCにより決定される。「GPC-PS」)及び3.5以下(GPC-PS)の官能価分布(Fd)値を有する、C4-5オレフィンを含むアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマーであって、官能化前のポリマーは、30,000g/mol以上(GPC-PS)のMn[30,000~100,000g/mol(GPC-PS)のMnを有し、1つ又は複数のペンダントアミン基を含む部分的又は完全飽和ホモ-ポリイソプレン等]、及び少なくとも約50%の1,4-挿入(1H NMR)を有する、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマーにも関する。
本開示は、2未満(GPC-PS)のMw/Mn、3.5以下(GPC-PS)の官能価分布(Fd)値を有するC4-5オレフィンを含む(又は本質的にからなるか又はからなる)アミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化/飽和ポリマーであって、官能化前のポリマーが、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、又はそれらのコポリマー(好ましくは、ポリイソブチレン又はポリブタジエン及びブタジエンのコポリマー)等のC4オレフィンポリマーである場合、C4オレフィンポリマーは、10,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有し、官能化前のポリマーが、イソプレン及びブタジエンのコポリマー等のC4/C5オレフィンコポリマーである場合、コポリマーのMnは25,000Mn(GPC-PS)よりも大きい、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化/飽和ポリマーにも関する。
本開示は、90mol%以上のイソプレンリピート単位を含み、2未満のMw/Mn、3.5以下(GPC-PS)の官能価分布(Fd)値を有する、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化/飽和ポリマーであって、官能化前のポリマーは、30,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有する、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化/飽和ポリマーにも関する。
【0009】
本開示は、2未満のMw/Mn、3.5以下(GPC-PS)の官能価分布(Fd)値を有するイソプレンのアミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化/飽和イソプレンホモポリマーであって、官能化前のポリマーは、30,000g/mol以上(GPC-PSにより決定して)のMnを有する、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化/飽和イソプレンホモポリマーにも関する。
任意選択で、官能化水素化/飽和ポリマーは、下記の実験セクションに記載のようにGPC-PSにより決定して、1.4~20FGグラフト/ポリマー鎖、例えば1.4~15FGグラフト/ポリマー鎖、例えば3~12.5FGグラフト/ポリマー鎖、例えば4~10FGグラフト/ポリマー鎖の平均官能価を有する。
任意選択で、官能化水素化/飽和ポリマーにはスチレンリピート単位が存在しなくてもよい。
任意選択で、官能化水素化/飽和ポリマーにはブタジエンリピート単位が存在しなくてもよい。
任意選択で、官能化水素化/飽和ポリマーは、ホモポリイソブチレンでなくてもよい。
任意選択で、官能化水素化/飽和ポリマーは、イソプレン及びブタジエンのコポリマーでなくてもよい。
【0010】
本開示は、2未満のMw/Mnを有するC4-5共役ジエンの完全又は部分的(例えば、少なくとも90%飽和)水素化ポリマーを、マレイン酸又は無水マレイン酸等のアシル化剤と反応させ、その後アシル化ポリマーをアミン(ポリアミン又はモノアミン等)と反応させて、イミド、アミド、又はそれらの組合せを形成することにより得られる、本明細書に記載の1つ又は複数のC4-5共役ジエンのアミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化ポリマーに関する。
本開示は、1つ又は複数のペンダントアミン基を含み、少なくとも部分的に(例えば、少なくとも90%、好ましくは完全に)水素化されたC4-5オレフィンポリマーを、マレイン酸若しくは無水マレイン酸等のアシル化剤と混合し、その後アシル化ポリマーをポリアミンと反応させて、イミド、アミド、又はそれらの組合せを形成することを含むか又はから得られるポリマーに関する。
本開示は、本明細書に記載の官能化水素化/飽和ポリマーを含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物及び添加剤/成分濃縮物にも関する。
本開示は、本明細書に記載の官能化水素化/飽和ポリマー、並びに少なくとも40質量%の炭化水素ベースストック油、例えばグループI、II、及び/又はIIIの油、例えばグループIIの油を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物にも関する。
【0011】
本開示は、本明細書に記載の官能化水素化/飽和ポリマー、並びに少なくとも1質量%の炭化水素ベースストック油、例えばグループI、II、及び/又はIIIの油、例えばグループIの油を含むか又は混合することから得られる添加剤濃縮物にも関する。
本開示は、本明細書に記載の官能化水素化/飽和ポリマー、並びに少なくとも1質量%の炭化水素ベースストック油、例えばグループI、II、又はIIIの油、例えばグループIIIの油を含むか又は混合することから得られる官能化コポリマーにも関する。
本開示の別の態様によると、ターボチャージャー付火花点火式エンジン、火花補助圧縮エンジン、圧縮点火式エンジン(大型ディーゼルエンジン又は船舶用エンジン等のディーゼルエンジン)、又はそれらの組合せ等の内燃エンジンにおける煤煙分散性の増強及び摩耗の低減をもたらすための、本明細書に記載の潤滑油組成物でエンジンを潤滑すること及びエンジンを作動させることを含む、上記に記載の潤滑油組成物の使用が提供される。
本開示の別の態様によると、点火するまで燃焼室内で圧縮される天然ガスのみで又は天然ガスと炭化水素(ディーゼル等の)燃料とを組み合わせた二元燃料組合せで稼動するように構築された、高圧直接噴射(HPDI)として知られているプロセスである、内燃エンジン(典型的には火花点火式)において、煤煙分散性の増強及び摩耗の低減をもたらすための、上記に記載の潤滑油組成物の使用が提供される。
【0012】
本開示のまた更なる態様によると、55μm以下のバルブトレイン摩耗(カミンズISBエンジン試験、ASTM D7484-21)を有する本明細書に記載の組成物を提供するための、上記に記載の潤滑油組成物の使用が提供される。
本開示のなお更なる態様によると、本明細書に記載の潤滑油組成物は、65μm以下のバルブトレイン摩耗(カミンズISBエンジン試験、ASTM D7484-21、μm)を有し、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマーが、エチレン-プロピレンコポリマー(Trilene(商標)CP-80、Lion Elastomers社、Mnはおよそ23,000g/mol、E/Pはおよそ41/59)をマレイン化し、次いでアミンN-フェニル-p-フェニレンジアミン(ADPA)と反応させて、1つ又は複数のペンダントアミン基を含み、35質量%の活性成分を有するエチレン-プロピレンコポリマーを得ることにより調製される同じ量(質量%)の官能化エチレン-プロピレンコポリマーにより置き換えられていることを除いて、本発明の潤滑油組成物と同じ組成を有する比較潤滑油組成物のバルブトレイン摩耗(カミンズISBエンジン試験、ASTM D7484-21、μm)よりも少なくとも10μm少ないバルブトレイン摩耗(カミンズISBエンジン試験、ASTM D7484-21、μm)を有する。
【0013】
本開示のなお更なる態様によると、上記に記載の潤滑油組成物の使用であって、潤滑油組成物は、
a)20W-X、15W-X、10W-X、5W-X、又は0W-XのSAE粘度グレードであり、Xは、8、12、16、20、30、40、及び50(30又は40等)のいずれか1つを表す、SAE粘度グレード、並びに
b)150mg以下のバルブトレインロッカーアーム摩耗(煤煙誘導性摩耗及び粘度制御のフォード6.7Lパワーストロークディーゼルエンジン試験で決定される)、並びに
c)55μm以下の煤煙誘導性カムシャフト摩耗(カミンズISBエンジン試験、ASTM D7484-21)、並びに
d)5%煤煙以上の煤煙分散性(煤煙誘導性粘度制御ASTM D7156-19のMack T11試験により決定され、12cSt粘度増加で測定される)
を有する、使用が提供される。
実施形態では、潤滑油組成物は、1つ又は複数の直鎖状アルファオレフィン(例えば、C12-24直鎖状アルファ-オレフィンのブレンド、例えばC14-18直鎖状アルファ-オレフィンのブレンド)を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】0.01、0.02、0.03、0.04、及び0.05mg/mlのODSA-ADPA試料から作成したGPC検量線のグラフである。
図2】下記の実験セクションに記載のGPC分析の代表的なクロマトグラムである。
図3】実施例10AのGPCトレースである。
図4】実施例10BのGPCトレースである。
図5】実施例10CのGPCトレースである。
図6】実施例10DのGPCトレースである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書及び本発明の請求項全ての目的では、以下の単語及び表現は、使用される場合、下記に記載される意味を有する。
本明細書の目的では、CHEMICAL AND ENGINEERING NEWS、63巻(5号)、27頁(1985年)に示されている、新しい付番スキームの元素周期表が使用される。つまり、アルカリ金属は第1族金属(例えば、Li、Na、K等)であり、アルカリ土類金属は第2族金属(例えば、Mg、Ca、Ba等)である。
「含む(comprising)」という用語又はあらゆる同族語は、記載の特徴、ステップ、又は整数、又は成分の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴、ステップ、整数、成分、又はそれらの群の存在又は追加を排除しない。「からなる(consists of)」若しくは「から本質的になる(consists essentially of)」という表現又は同族語は、「含む(comprises)」又は同族語内に包含され得る。「から本質的になる」は、それが適用される組成物の特質に実質的に影響を及ぼさない物質が含まれることを許容する。
【0016】
「LOC」という用語は、潤滑油組成物を意味する。
「多量」という用語は、組成物の質量に基づき、組成物の50質量%よりも多いこと、例えば組成物の60質量%よりも多いこと、例えば組成物の70質量%よりも多いこと、例えば組成物の80~99.009質量%であること、例えば組成物の80~99.9質量%、80~99.009質量%であることを意味する。
「少量」という用語は、組成物の質量に基づき、組成物の50質量%以下であること、例えば組成物の40質量%以下であること、例えば組成物の30質量%以下であること、例えば20~0.001質量%であること、例えば20~0.1質量%であることを意味する。
「質量%」という用語は、別様の指示がない限り、グラム単位で測定された組成物の質量に基づく、成分の質量パーセントを意味し、代替的には質量(weight)パーセント(「質量(weight)%」、「質量(wt)%」、又は「質量(w)/質量(w)%」)とも呼ばれる。
【0017】
「活性成分」(「a.i.」又は「A.I.」とも呼ばれる)という用語は、希釈剤でも溶媒でもない添加物質を指す。別様の指示がない限り、本明細書における量は、活性成分として記載されている。
本明細書で使用される「油溶性」及び「油分散性」という用語又は同族用語は、化合物又は添加剤が、油中にあらゆる割合で可溶性、溶解性、混和性であるか、又は懸濁可能であることを必ずしも示すものではない。しかしながら、こうした用語は、化合物又は添加剤が、例えば、油が使用される環境において意図されている効果を発揮するのに十分な程度に油に可溶性であるか又は安定的に分散可能であることを意味する。更に、必要に応じて、他の添加剤を更に組み込むことにより、より高レベルの特定の添加剤の組込みを可能にすることもできる。
「基」及び「ラジカル」という用語は、本明細書では同義的に使用される。
「炭化水素」という用語は、水素原子及び炭素原子の化合物を意味する。「ヘテロ原子」は、炭素又は水素以外の原子である。「炭化水素」、特に「精製炭化水素」が参照される場合、炭化水素には、少量(例えば、ヘテロ原子が炭化水素化合物の炭化水素特性を実質的に変更させない量)の1つ又は複数のヘテロ原子又はヘテロ原子含有基(ハロ、特にクロロ及びフルオロ、アミノ、アルコキシル、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホキシ等)も含まれていてもよい。
【0018】
「ヒドロカルビル」という用語は、水素及び炭素原子を含むラジカルを意味する。好ましくは、この基は、別様の指定がない限り、水素原子及び炭素原子から本質的になり、より好ましくはのみからなる。好ましくは、ヒドロカルビル基は脂肪族ヒドロカルビル基を含む。「ヒドロカルビル」という用語は、本明細書で規定される「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、及び「アリール」を含む。ヒドロカルビル基は、ヒドロカルビル基の本質的にヒドロカルビル的な性質に影響を及ぼさない限り、炭素及び水素以外の1つ又は複数の原子/基を含んでもよい。当業者であれば、そのような原子/基(例えば、ハロ、特にクロロ及びフルオロ、アミノ、アルコキシル、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホキシ等)を認知しているだろう。
【0019】
「アルキル」という用語は、炭素及び水素のラジカル(例えばC1~C30、例えばC1~C12基)を意味する。化合物中のアルキル基は、典型的には、炭素原子を介して化合物に直接結合している。別様の指定がない限り、アルキル基は、直鎖状(つまり、非分岐鎖状)であってもよく又は分岐鎖状であってもよく、環状、非環状、又は部分的に環状/非環状であってもよい。好ましくは、アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状の非環状アルキル基を含む。アルキル基の代表的な例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、neo-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ジメチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、及びトリアコンチルが挙げられる。
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を有する炭素及び水素のラジカル(例えばC2~C30ラジカル、例えばC2~C12ラジカル)を意味する。化合物中のアルケニル基は、典型的には、炭素原子を介して化合物に直接結合している。別様の指定がない限り、アルケニル基は、直鎖状(つまり、非分岐鎖状)であってもよく又は分岐鎖状であってもよく、環状、非環状、又は部分的に環状/非環状であってもよい。
「アルキレン」という用語は、直鎖状であってもよく又は分岐鎖状であってもよいC1~C20、好ましくはC1~C10の二価飽和脂肪族ラジカルを意味する。アルキレンの代表的な例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、1-メチルエチレン、1-エチルエチレン、1-エチル-2-メチルエチレン、1,1-ジメチルエチレン、及び1-エチルプロピレンが挙げられる。
【0020】
「オレフィン」は、代替的には「アルケン」とも呼ばれ、少なくとも1つの二重結合を有する、炭素及び水素の直鎖状、分岐鎖状、又は環状化合物である。本明細書及び添付の請求項の目的では、ポリマー又はコポリマーがオレフィンを含むと称される場合、そのようなポリマー又はコポリマーに存在するオレフィンは、オレフィンの重合形態である。例えば、コポリマーが55質量%~95質量%の「イソプレン」含有量を有すると言われる場合、コポリマーの単量体単位は、重合反応においてイソプレンから誘導され、誘導された単位は、コポリマーの質量に基づき55質量%~95質量%で存在する。「ポリマー」は、2つ以上の同じ又は異なる単量体単位を有する。「ホモポリマー」は、同じ単量体単位を有するポリマーである。「コポリマー」は、互いに異なる2つ以上の単量体単位を有するポリマーである。単量体単位を指すために使用される「異なる」は、単量体単位が少なくとも1つの原子により互いに異なるか、又は異性体的に異なることを示す。「イソプレンポリマー」又は「イソプレンコポリマー」は、少なくとも50mol%のイソプレン由来単位を含むポリマー又はコポリマーであり、「ブタジエンポリマー」又は「ブタジエンコポリマー」は、少なくとも50mol%のブタジエン由来単位を含むポリマー又はコポリマーである等である。同様に、ポリマーが「C4-5オレフィンを含む部分的又は完全飽和ポリマー」であると称される場合、そのようなポリマー又はコポリマー中に存在するC4-5オレフィンはオレフィンの重合形態であり、ポリマーは、モノマーの重合後に(水素化等により)部分的又は完全に飽和されている。
「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素間三重結合を含むC2~C30(C2~C12等)ラジカルを意味する。
「アリール」という用語は、シクロペンタジエン、フェニル、ナフチル、及びアントラセニル等の、少なくとも1つの芳香環を含む基を意味する。アリール基は、典型的には、1つ又は複数のヒドロカルビル基、ヘテロ原子、又はヘテロ原子含有基(ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、及びアミノ基等)により置換されていてもよいC5~C40(例えばC5~C18、例えばC6~C14)アリール基である。好ましいアリール基としては、フェニル基及びナフチル基並びにそれらの置換誘導体、特にフェニル及びフェニルのアルキル置換誘導体が挙げられる。
【0021】
「置換された」という用語は、水素原子が、炭化水素基、ヘテロ原子、又はヘテロ原子含有基で置き換えられていることを意味する。アルキル置換誘導体は、水素原子がアルキル基で置き換えられていることを意味する。「アルキル置換フェニル」は、水素原子が、アルキル基、例えばC1~C20アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、neo-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ジメチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、及び/又はトリアコンチルにより置き換えられているフェニル基である。
【0022】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨード等の、第17族原子又は第17族原子のラジカルを意味する。
添加剤に関して「無灰」という用語は、組成物が金属を含まないことを意味する。
添加剤に関して「灰分含有」という用語は、組成物が金属を含むことを意味する。
添加剤に関する「有効量」という用語は、添加剤が所望の技術的効果をもたらすような、潤滑油組成物中のそのような添加剤の量を意味する。
添加剤に関する「有効少量」という用語は、添加剤が所望の技術的効果をもたらすような、潤滑油組成物の50質量%未満のそのような添加剤の量を意味する。
「ppm」という用語は、別様の指示がない限り、潤滑油組成物の総質量に基づく質量百分率を意味する。
潤滑油組成物の又は添加剤成分の「金属含有量」という用語、例えば、マグネシウム含有量、モリブデン含有量、又は総金属含有量(つまり、全ての個々の金属含有量の合計)は、ASTM D5185により測定される。
【0023】
「脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸」という用語は、脂肪族C7~C29、好ましくはC9~C27、最も好ましくはC11~C23ヒドロカルビル鎖を有するモノカルボン酸を意味する。そのような化合物は、本明細書では、脂肪族(C7~C29)、より好ましくは(C9~C27)、最も好ましくは(C11~C23)ヒドロカルビルモノカルボン酸、又はヒドロカルビル脂肪酸(式中、Cx~Cyは、脂肪酸の脂肪族ヒドロカルビル鎖の炭素原子の総数を指し、カルボキシル炭素原子の存在のため脂肪酸自体は、合計でCx+1~Cy+1個の炭素原子を含む)と呼ばれる場合がある。好ましくは、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸は、カルボキシル炭素原子を含めて、偶数個の炭素原子を有する。脂肪酸の脂肪族ヒドロカルビル鎖は、飽和であってもよく又は不飽和であってもよい(つまり、少なくとも1つの炭素間二重結合を含む)。好ましくは、脂肪族ヒドロカルビル鎖は不飽和であり、少なくとも1つの炭素間二重結合を含み、そのような脂肪酸は、天然供給源から(例えば、動物油又は植物油に由来する)及び/又は対応する飽和脂肪酸の還元により得ることができる。対応する脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステルの脂肪族ヒドロカルビル鎖の一部は不飽和であり(つまり、少なくとも1つの炭素間二重結合を含む)、硫黄などの他の作用剤と反応して、対応する官能化、例えば硫化、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステルを形成することが可能であることが理解されるだろう。
【0024】
「脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステル」という用語は、対応する脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸のモノカルボン酸官能基をエステル基に変換することにより得られるエステルを意味する。好適には、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸のモノカルボン酸官能基は、ヒドロカルビルエステル、好ましくはアルキルエステル等のC1~C30脂肪族ヒドロカルビルエステル、好ましくはC1~C6アルキルエステル、特にメチルエステルに変換される。代替的に又は加えて、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸のモノカルボン酸官能基は、天然グリセロールエステルの形態であってもよい。したがって、「脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステル」という用語は、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸グリセロールエステル及び脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸C1~C30脂肪族ヒドロカルビルエステル[例えば、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸アルキルエステル、より好ましくは脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸C1~C6アルキルエステル、特に脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸メチルエステル]を包含する。好適には、「脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステル」という用語は、脂肪族(C7~C29)ヒドロカルビル、より好ましくは脂肪族(C9~C27)ヒドロカルビル、最も好ましくは脂肪族(C11~C23)ヒドロカルビル脂肪酸グリセロールエステル及び脂肪族(C7~C29)ヒドロカルビル、より好ましくは脂肪族(C9~C27)ヒドロカルビル、最も好ましくは脂肪族(C11~C23)ヒドロカルビル脂肪酸C1~C30脂肪族ヒドロカルビルエステルを包含する。好適には、脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステルの硫化等の官能化を可能にするために、脂肪酸エステルの脂肪族ヒドロカルビル鎖の一部は不飽和であり、少なくとも1つの炭素間二重結合を含む。
【0025】
「硫化脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステル」という用語は、本明細書で規定の脂肪族ヒドロカルビル脂肪酸エステルを硫化することにより得られる化合物を意味する。
本明細書に記載の潤滑油組成物及びそれらに対する特許請求の範囲内に含まれる成分に関する「非存在」という用語は、特定の成分が、潤滑油組成物の質量に基づき0質量%で存在するか、又は存在する場合でも、この成分は、潤滑油組成物特性に影響を及ぼさないレベル、例えば、10ppm未満、又は1ppm未満、又は0.001ppm未満で潤滑油組成物に存在することを意味する。「非存在」という用語は、本明細書に記載のモノマー反応物質及び/又は(コ)ポリマー中のリピート単位に関して使用される場合、(コ)ポリマー中の全ての(コ)モノマーの質量に基づき、0質量%で、又はたとえ存在するとしても(コ)ポリマーの物理的特性に実質的に影響を及ぼさないほど低いレベルで、例えば0.2質量%以下又は0.1質量%以下で存在することを意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、Mnは数平均分子量であり、Mwは質量平均分子量であり、Mzはz平均分子量である。分子量分布(MWD)は、多分散性指数(PDI)とも呼ばれ、MwをMnで除算したものであると定義される。別様の記載がない限り、全ての分子量単位(例えば、Mw、Mn、Mz)はg/molで報告されている。
添加剤成分に関して又は潤滑油組成物(つまり、未使用潤滑油組成物)の、「TBN」とも呼ばれる「全塩基価」という用語は、ASTM D2896により測定される全塩基価を意味し、mg KOH/gの単位で報告されている。
全酸価(「TAN」)は、ASTM D664により決定される。
リン、ホウ素、カルシウム、亜鉛、モリブデン、ナトリウム、ケイ素、及びマグネシウムの含有量は、ASTM D5185により測定される。
油配合物中の「硫黄含有量」は、ASTM D5185により測定される。
硫酸灰分(「SASH」)含有量は、ASTM D874により測定される。
動粘度(KV100、KV40)は、ASTM D445-19aに準じて決定され、別様の指定がない限り、cStの単位で報告される。
粘度指数は、ASTM D2270に従って決定される。
鹸化価は、ASTM D94により決定され、mg KOH/gの単位で報告される。
平均官能価[平均官能価値(Fv)とも呼ばれる]及び官能価分布(Fd)値は、下記の実験セクションに記載のように、ポリスチレン標準物質を使用したゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される。
別様の指示がない限り、報告されている全てのパーセンテージは、活性成分基準での質量%であり、つまり、別様の指示がない限り、キャリア油又は希釈油には関わりがない。
また、種々の使用される成分、必須成分、並びに最適成分及び慣用成分は、配合、保管、又は使用の条件下で反応する可能性があること、及び本開示は、あらゆるそのような反応の結果として得ることが可能であるか又は得られる産物も提供することが理解されるだろう。
【0027】
更に、本明細書に示されているあらゆる上限量及び下限量、範囲及び比限界値は、独立して組み合わせることができることが理解される。
また、本開示の各態様の好ましい特徴は、本開示のあらゆる他の態様の好ましい特徴であるとみなされることも理解されるだろう。したがって、本開示の一態様の好ましい特徴及びより好ましい特徴は、本開示の同じ態様又は異なる態様の他の好ましい特徴及び/又はより好ましい特徴と独立して組み合わせることができる。
【0028】
本発明の詳細な説明
これから、本開示の各々の及び全ての態様に関する本開示の特徴を、必要に応じて、以下で更に詳細に説明するものとする。
本開示の潤滑油組成物は、油性キャリア(基油等)及び/又は他の添加剤と混合する前後で化学的に同じままであってもよく同じままでなくてもよい成分を含む。本開示は、混合前、又は混合後、又は混合前及び混合後の両方の成分を含む組成物を包含する。
【0029】
潤滑油組成物
本開示は、
(a)潤滑組成物の質量に基づき、1~99質量%(代替的に30~95質量%、代替的に50~90質量%、代替的に60~95質量%、代替的に70~85質量%)の1つ又は複数の基油、
(b)組成物の質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20質量%~5質量%、代替的に0.25~2質量%、代替的に0.5~1質量%)の、C4-5オレフィンを含む1つ又は複数のアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマーであり、
i)2未満のMw/Mn、
ii)3.5以下(GPC-PS)の官能価分布(Fd)値、及び
iii)10,000g/mol以上(GPC-PS)の官能化前のポリマーのMn
を有し、ただし、官能化前のポリマーがイソプレン及びブタジエンのコポリマーである場合は、コポリマーのMnは25,000g/mol(GPC-PS)よりも大きい、1つ又は複数のアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマー
を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物(「LOC」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物」、又は「潤滑油組成物」とも呼ばれる)であって、
好ましくは、
1)20W-X、15W-X、10W-X、5W-X、又は0W-X(15W-X、10W-X、5W-X等)のSAE粘度グレードであり、Xは、8、12、16、20、30、40、及び50(30又は40等)のいずれか1つを表す、SAE粘度グレード、並びに
2)150mg以下、例えば100mg以下、例えば80mg以下のバルブトレインロッカーアーム摩耗(煤煙誘導性摩耗及び粘度制御のフォード6.7Lパワーストロークディーゼルエンジン試験で決定される)、並びに
3)55μm以下、例えば50μm以下、例えば40μm以下の煤煙誘導性カムシャフト摩耗(バルブトレイン摩耗制御のカミンズISBディーゼルエンジン試験により決定される)、並びに
4)5%煤煙以上、例えば6%煤煙以上、例えば6.5%煤煙以上の煤煙分散性(煤煙誘導性粘度制御ASTM D7156-19のMack T11試験により決定、12cSt粘度増加で測定される)
を示すことができる、潤滑油組成物。
【0030】
本開示は、
(i)潤滑組成物の質量に基づき、1~99質量%(代替的に30~95質量%、代替的に50~90質量%、代替的に60~95質量%、代替的に70~85質量%)の1つ又は複数の基油、
(ii)潤滑組成物の総質量に基づき、0.01~20質量%(特に0.1~12質量%、代替的に0.1~8質量%)の1つ又は複数の分散剤(分散剤のブレンド等)、
(iii)組成物の質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20質量%~5質量%、代替的に0.25~2質量%)の1つ又は複数の清浄剤、
(iv)潤滑組成物の総質量に基づき、0.001~10質量%(特に0.01~5質量%、代替的に0.1~3質量%、代替的に0.25~1.5質量%、代替的に0.5~1.0質量%)の1つ又は複数の耐摩耗剤(耐摩耗剤のブレンド等、例えばジアルキルジチオリン酸亜鉛)、
(v)組成物の質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20質量%~5質量%、代替的に0.25~2質量%、代替的に0.5~1質量%)の、C4-5オレフィンを含む1つ又は複数のアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマーであり、
i)2未満のMw/Mn、
ii)3.5以下(GPC-PS)の官能価分布(Fd)値、及び
ii)10,000g/mol以上(GPC-PS)の官能化前のポリマーのMn
を有し、ただし、官能化前のポリマーがイソプレン及びブタジエンのコポリマーである場合は、コポリマーのMnは25,000g/mol(GPC-PS)よりも大きい、1つ又は複数のアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマー
を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物であって、
好ましくは
1)20W-X、15W-X、10W-X、5W-X、又は0W-X(15W-X、10W-X、5W-X等)のSAE粘度グレードであり、Xは、8、12、16、20、30、40、及び50(30又は40等)のいずれか1つを表す、SAE粘度グレード、並びに
2)150mg以下、例えば100mg以下、例えば80mg以下のバルブトレインロッカーアーム摩耗(煤煙誘導性摩耗及び粘度制御のフォード6.7Lパワーストロークディーゼルエンジン試験で決定される)、並びに
3)55μm以下、例えば50μm以下、例えば40μm以下の煤煙誘導性カムシャフト摩耗(バルブトレイン摩耗制御のカミンズISBディーゼルエンジン試験により決定される)、並びに
4)5%煤煙以上、例えば6%煤煙以上、例えば6.5%煤煙以上の煤煙分散性(煤煙誘導性粘度制御ASTM D7156-19のMack T11試験により決定、12cSt粘度増加で測定される)
を示すことができる潤滑油組成物にも関する。
【0031】
本開示は、潤滑粘度の油、及び約25,000~約50,000g/molの数平均分子量(Mn)を有するアシル化ポリマーを含む0.1質量%~20質量%のポリマー化合物の潤滑剤組成物であって、ポリマーは、4~5個の炭素原子を有するオレフィンを含み、好ましくはアシル化ポリマーは、アミンと更に反応して、アミド、イミド、又はそれらの組合せを形成する、潤滑剤組成物にも関する。好ましくは、反応産物は、i)2未満のMw/Mn、ii)3.5以下(GPC-PS)の官能価分布(Fd)値、及びiii)10,000g/mol以上(GPC-PS)の官能化前のポリマーのMnを有し、ただし、官能化前のポリマーがイソプレン及びブタジエンのコポリマーである場合は、コポリマーのMnは25,000g/mol(GPC-PS)よりも大きい、C4-5オレフィンを含むアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマーであってもよい。
【0032】
本開示は、
A)潤滑油組成物の質量に基づき、1~99質量%(代替的に30~95質量%、代替的に50~90質量%、代替的に60~95質量%、代替的に70~85質量%)の1つ若しくは複数の基油、
B)潤滑油組成物の総質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20質量%~5質量%、代替的に0.25~2質量%)の、本明細書に記載の1つ若しくは複数のアミド、イミド、及び/若しくはエステル官能化部分的若しくは完全飽和ポリマー、
C)潤滑油組成物の質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20質量%~5質量%、代替的に0.25~2質量%)の1つ若しくは複数の清浄剤(清浄剤のブレンド等)、
D)任意選択で、潤滑油組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%(特に0.1~4質量%、代替的に0.25~3質量%、代替的に0.045~0.15質量%)の1つ若しくは複数の摩擦調整剤(摩擦調整剤のブレンド等)、
E)任意選択で、潤滑油組成物の総質量に基づき、0.01~10質量%(特に0.01~5質量%、代替的に0.01~3質量%、代替的に0.1~1.5質量%)の1つ若しくは複数の抗酸化剤(抗酸化剤のブレンド等)、
F)任意選択で、潤滑油組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%(特に0.01~3質量%、代替的に0.1~1.5質量%)の1つ若しくは複数の流動点降下剤(流動点降下剤のブレンド等)、
G)任意選択で、潤滑油組成物の総質量に基づき、0.001~5質量%(特に0.01~3質量%、代替的に0.1~1.5質量%)の1つ若しくは複数の消泡剤(消泡剤のブレンド等)、
H)任意選択で、潤滑油組成物の総質量に基づき、0.001~10質量%(特に0.01~6質量%、代替的に0.01~5質量%、代替的に0.1~4質量%、代替的に0.1~2質量%、代替的に0.1~1質量%)の1つ若しくは複数の粘度調整剤(粘度調整剤のブレンド等)、
I)任意選択で、潤滑油組成物の総質量に基づき、0.01~20質量%(特に0.1~12質量%、代替的に0.1~8質量%)の1つ若しくは複数の分散剤(分散剤のブレンド等)、
J)任意選択で、潤滑油組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%(特に0.1~3質量%、代替的に0.1~1.5質量%)の1つ若しくは複数の抑制剤及び/若しくは防錆剤(抑制剤及び/若しくは防錆剤のブレンド等)、
K)潤滑油組成物の総質量に基づき、0.001~10質量%(特に0.01~5質量%、代替的に0.1~3質量%、代替的に0.~1.5質量%)の1つ又は複数の耐摩耗剤(耐摩耗剤のブレンド等、例えばZDDP)、
M)任意選択で、潤滑油組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%(特に0.05~2質量%、代替的に0.1~1質量%)の1つ若しくは複数のシール適合剤、例えばシール膨張剤(seal swell agent)、並びに/又は
O)任意選択で、潤滑油組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%(特に、0.1~3質量%、代替的に0.1~1.5質量%)の1つ又は複数の不飽和C12~C60炭化水素(例えば、C12~C24直鎖状アルファ-オレフィン(LAO)、ポリイソブチレンのオリゴマー/ポリマー、及び/若しくはそれらのブレンド)
を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物にも関する。
【0033】
本開示の目的では、成分B)官能化ポリマーは、たとえそれらが同様の特性を示す可能性があるとしても、質量パーセンテージを決定するために、上記の要素C、D、E、F G、H、I、J、K、M、及び/又はOには追加されない。例えば、要素B)官能化ポリマーは、摩耗に肯定的な影響を及ぼすことができるが、耐摩耗剤の質量パーセントを決定するために要素K)には追加されない。特に、本開示による組成物は、同様にアミノ化されている、異なる表記機能を有する添加剤(例えば、分散剤成分PIBSA-PAM及び下記の分散剤セクションに記載の他のもの)を含んでいてもよい。こうした添加剤は、本明細書において潤滑油組成物又は濃縮物中の官能化ポリマーの量を決定する目的では、官能化ポリマーには含まれない。
【0034】
実施形態では、要素D、E、F G、H、I、J、K、M、及びOの全ては、本明細書に記載の基油、清浄剤、及び1つ又は複数の官能化ポリマーに加えて存在する。
実施形態では、要素D、E、F G、H、I、及びJは、本明細書に記載の基油、清浄剤、及び1つ又は複数の官能化ポリマーに加えて存在する。
実施形態では、要素I、F、及びGは、本明細書に記載の基油、清浄剤、及び1つ又は複数の官能化ポリマーに加えて存在する。
実施形態では、要素Kは、本明細書に記載の基油、清浄剤、及び1つ又は複数の官能化ポリマーに加えて存在する。
好適には、潤滑剤組成物は、ASTM D2896により測定して、4~15mg KOH/g、好ましくは5~12mg KOH/g、例えば7~12mg KOH/g、例えば8~11mg KOH/gの全塩基価(TBN)を有してもよい。
本開示のなお更なる態様によると、本明細書に記載の潤滑油組成物は、65μm以下(例えば15~65μm、例えば35~65μm)のバルブトレイン摩耗(カミンズISBエンジン試験、ASTM D7484-21、μm)を有し、アミド、イミド、及び/又はエステル官能基化部分的又は完全飽和ポリマーが、エチレン-プロピレンコポリマー(Trilene(商標)CP-80、Lion Elastomers社、Mnはおよそ23,000g/mol、E/Pはおよそ41/59)をマレイン化し、次いでアミンN-フェニル-p-フェニレンジアミン(ADPA)と反応させて、1つ又は複数のペンダントアミン基を含み、35質量%の活性成分を有するエチレン-プロピレンコポリマーを得ることにより調製される同じ量(質量%)の官能化エチレン-プロピレンコポリマーにより置き換えられていることを除いて、本発明の潤滑油組成物と同じ組成を有する比較潤滑油組成物のバルブトレイン摩耗(カミンズISBエンジン試験、ASTM D7484-21、μm)よりも少なくとも10μm少ない(例えば少なくとも20μm少ない、例えば少なくとも30μm少ない)バルブトレイン摩耗(カミンズISBエンジン試験、ASTM D7484-21、μm)を有してもよい。
【0035】
本開示のなお更なる態様によると、本明細書に記載の潤滑油組成物は、65μm以下(例えば15~65μm、例えば35~65μm)のバルブトレイン摩耗(カミンズISBエンジン試験、ASTM D7484-21、μm)を有し、アミド、イミド、及び/又はエステル官能基化部分的又は完全飽和ポリマーが、エチレン-プロピレンコポリマー(Trilene(商標)CP-80、Lion Elastomers社、Mnはおよそ23,000g/mol、E/Pはおよそ41/59)をマレイン化し、次いでアミンN-フェニル-p-フェニレンジアミン(ADPA)と反応させて、1つ又は複数のペンダントアミン基を含み、35質量%の活性成分を有するエチレン-プロピレンコポリマーを得ることにより調製される同じ量(質量%)の官能化エチレン-プロピレンコポリマーにより置き換えられていることを除いて、本発明の潤滑油組成物と同じ組成を有する比較潤滑油組成物のバルブトレイン摩耗(カミンズISBエンジン試験、ASTM D7484-21、μm)よりも少なくとも10μm少ない(代替的に少なくとも20%少ない、代替的に少なくとも30%少ない、代替的に少なくとも40%少ない、代替的に少なくとも50%少ない)バルブトレイン摩耗(カミンズISBエンジン試験、ASTM D7484-21、μm)を有してもよい。
【0036】
本開示の潤滑組成物は、ASTM D5185により測定して、潤滑組成物の総質量に基づき、リンの原子として表して、低レベルの、即ち1600以下、好ましくは1200以下、より好ましくは800以下、例えば1~1600、例えば50~1200、例えば10~800百万分率(ppm)のリンを含んでいてもよい。
好適には、潤滑剤組成物は、ASTM D5185により測定して、1200ppm以下、代替的に1000ppm以下、代替的に800ppm以下のリンレベルを有してもよい。
本開示の潤滑組成物は、潤滑組成物の総質量に基づき、ASTM D5185により測定して、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.65のマグネシウム原子対カルシウム原子の比を含んでいてもよい。
典型的には、潤滑組成物は、低レベルの硫黄を含んでいてもよい。好ましくは、潤滑組成物は、ASTM D5185により測定して、潤滑油組成物の総質量に基づき、最大で0.4、より好ましくは最大で0.3、最も好ましくは最大で0.2、例えば0.1~0.4質量%の硫黄を含む。
典型的には、潤滑組成物は、ASTM D874-13a(2018年)により測定して、潤滑組成物の総質量に基づき、低レベルの硫酸灰分、例えば、1.2質量%以下、例えば1.0質量%以下、好ましくは0.9質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、代替的に0.0001~0.5質量%の硫酸灰分を含んでいてもよい。
【0037】
一般に、潤滑組成物の100℃における動粘度(「KV100」)は、ASTM D445-19aに従って決定して、2~30cSt、例えば2~20cSt、例えば5~15cStの範囲であってもよい。
実施形態では、潤滑組成物の100℃における動粘度(「KV100」)は、ASTM D445-19aに従って決定して、6~17cSt、例えば9~16.3cSt、例えば9.3~12.5cSt未満、例えば12.5~16.3cSt未満の範囲であってもよい。
一般に、潤滑組成物の全塩基価は、1~30、例えば5~15mg KOH/gの範囲であってもよい(ASTM D2896に従って決定される)。
好ましくは、本開示の潤滑組成物は、粘度記述記号SAE 20W-X、SAE 15W-X、SAE 10W-X、SAE 5W-X、又はSAE 0W-Xにより特定されるマルチグレード油であってもよく、Xは、8、12、16、20、30、40、及び50のいずれか1つを表す。様々な粘度グレードの特質は、SAE J300分類に見出すことができる。代替的には、潤滑組成物は、粘度グレードSAE 15W-X、SAE 10W-X、SAE 5W-X、又はSAE 0W-Xの形態、例えばSAE 15W-X又はSAE 10W-Xの形態であってもよく、Xは、8、12、16、20、30、40、及び50のいずれかを表す。好ましくは、Xは、8、12、16、又は20である。代替的には、本開示の潤滑組成物は、粘度測定記述記号SAE 10W-30、15W-40、5W-30、5W-40、10W-40、5W-50により特定されるマルチグレード油であってもよい。(以前は自動車技術会として知られていたSAEインターナショナルにより2015年1月に刊行された標準SAE J300を参照。)。
【0038】
代替的には、潤滑組成物は、0W-YのSAE粘度グレードを有してもよく、Yは、12、16、又は20であってもよい。一実施形態では、潤滑組成物は、0W-12のSAE粘度グレードを有する。
任意選択で、潤滑組成物には、フェノール系抗酸化剤が存在しなくてもよい。
実施形態では、潤滑油組成物は、75ppm未満のホウ素、代替的に60ppm未満のホウ素、代替的に1~70ppmのホウ素を含んでいてもよい。代替的には、LOCにはホウ素が存在しなくてもよい。
実施形態では、潤滑油組成物は、20質量%未満(例えば、15質量%未満、例えば10質量%未満、例えば5質量%未満、例えば3質量%未満、例えば1質量%未満)の官能化(例えばアミノ化)ポリブテン(ポリイソブチレン等)、例えばPIBSA-PAMを含んでいてもよい。実施形態では、潤滑油組成物は、官能化(例えばアミノ化)ポリブテン(ポリイソブチレン等)、例えばPIBSA-PAMを含んでもよく、実質的に含まなくてもよく、又は潤滑油組成物には官能化(例えばアミノ化)ポリブテン(ポリイソブチレン等)、例えばPIBSA-PAMが存在しなくてもよい。
【0039】
実施形態では、潤滑油組成物は、任意選択で500~50,000g/mol、例えば600~5,000g/mol、例えば700~3000g/molのMnを有する、ポリイソブチレンコハク酸(PIBSA)等のアシル化ポリマーを含んでいてもよい。実施形態では、潤滑油組成物は、500~1600g/mol、例えば700~12000g/molのMnを有する、ポリイソブチレンコハク酸等のアシル化ポリマーを含んでいてもよい。実施形態では、潤滑油組成物は、0.1質量%よりも多く(例えば0.1~10質量%、例えば0.5~8質量%)の官能化(例えばアミノ化)ポリブテン(ポリイソブチレン等)、例えばPIBSA-PAMを含む。
【0040】
実施形態では、潤滑油組成物は、20(例えば15、例えば10、例えば5、例えば3、例えば1)質量%以下のブロックコポリマー、例えばブロック、星形、ランダム、及び/又はテーパードブロックコポリマーを含んでいてもよい。
実施形態では、潤滑油組成物は、ブロックコポリマー、例えばブロック、星形、ランダム、及び/若しくはテーパードブロックコポリマーを実質的に含んでいなくてもよく、又は潤滑油組成物には、ブロックコポリマー、例えばブロック、星形、ランダム、及び/若しくはテーパードブロックコポリマーが存在しなくてもよい。
実施形態では、潤滑油組成物は、20(例えば15、例えば10、例えば5、例えば3、例えば1)質量%以下のスチレン系コポリマー、例えばブロック、星形、ランダム、及び/又はテーパードスチレン系コポリマーを含んでいてもよい。
実施形態では、潤滑油組成物は、スチレン系コポリマー、例えばブロック、星形、ランダム、及び/若しくはテーパードスチレン系コポリマーを実質的に含んでいなくてもよく、又は潤滑油組成物には、スチレン系コポリマー、例えばブロック、星形、ランダム、及び/若しくはテーパードスチレン系コポリマーが存在しなくてもよい。
実施形態では、潤滑油組成物は、20(例えば、15、例えば10、例えば5、例えば3、例えば1)質量%未満の官能化希釈剤、例えば官能化油を含んでいてもよい。
【0041】
実施形態では、潤滑油組成物は、官能化希釈剤、例えば官能化油を含んでいてもよく、実質的に含んでいなくてもよく、又は潤滑油組成物には、官能化希釈剤、例えば官能化油が存在しなくてもよい。
実施形態では、潤滑油組成物は、20(例えば15、例えば10、例えば5、例えば3、例えば1)質量%未満の溶媒、例えば芳香族溶媒を含んでいてもよい。
実施形態では、潤滑油組成物は、溶媒、例えば官能化溶媒を実質的に含んでいなくてもよく、又は潤滑油組成物には、溶媒、例えば官能化溶媒が存在しなくてもよい。
実施形態では、潤滑油組成物は、ASTM94により決定して、25(例えば28、例えば30、例えば32)mg KOH/g以上の総鹸化価(SAP)を有してもよい。
実施形態では、潤滑油組成物は、ASTM94により測定して、25(例えば28、例えば30、例えば32)mg KOH/g以上の総鹸化価(SAP)を有してもよく、官能化ポリマーは、3.5以下(下記の実験セクションに記載のGPC-PSにより決定して、例えば3.4以下、例えば1~3.3、例えば1.1~3.2、例えば1.2~3.0、例えば1.4~2.9)の官能価分布(Fd)値を有する。
実施形態では、潤滑油組成物は、ASTM94により決定して、25(例えば28、例えば30、例えば32)mg KOH/g以上の総鹸化価(SAP)を有してもよく、官能化ポリマーは、下記の実験セクションに記載のGPC-PSにより決定して、1.4~20FGグラフト/ポリマー鎖、例えば1.4~15FGグラフト/ポリマー鎖、例えば3~12.5FGグラフト/ポリマー鎖、例えば4~10FGグラフト/ポリマー鎖の平均官能価を有する。
【0042】
実施形態では、潤滑油組成物は、LOCの質量に基づき、0.5質量%未満(例えば0.4質量%、例えば0.3質量%未満、例えば0.2質量%未満、例えば0.1質量%未満、実質的に存在しないか、又はゼロ質量%)の第二級ヒドロカルビルアミン化合物及び第三級ヒドロカルビルアミン化合物を含んでいてもよい。
実施形態では、潤滑油組成物には、第二級ヒドロカルビルアミン化合物及び第三級ヒドロカルビルアミン化合物が実質的に存在しなくてもよく、又は潤滑油組成物は、第二級ヒドロカルビルアミン化合物及び第三級ヒドロカルビルアミン化合物を含んでいなくてもよい。
実施形態では、本開示の潤滑組成物は、大型ディーゼル油(例えば、大型ディーゼル車両、つまり4535.9kg(10,000ポンド)以上の車両総重量評価を有する大型ディーゼル車両用のエンジンに使用するためのもの)であってもよい。
実施形態では、本開示の潤滑組成物は、乗用車モーター油であってもよい。
実施形態では、本開示の潤滑組成物は、乗用車ディーゼル油であってもよい。
実施形態では、本開示の潤滑組成物は、以下のものを含むディーゼルエンジン潤滑組成物であってもよい:50質量%よりも多くのグループI、II、III、IV、及び/又はVの油(例えば、グループIII基油、グループIV基油、グループV基油、又はそれらの混合物)を有する潤滑粘度の油;1800~2500MnのPIBから誘導される第1のPIBコハク酸イミド分散剤、1600未満のMnを有するPIBから誘導される第2のPIBコハク酸イミド分散剤であって、第1のPIBコハク酸イミド分散剤及び第2のPIBコハク酸イミド分散剤の少なくとも1つはホウ素を含まない(任意選択で、第1のPIBコハク酸イミド分散剤及び第2のPIBコハク酸イミド分散剤の少なくとも1つはホウ酸化されている)、第1のPIBコハク酸イミド分散剤及び第2のPIBコハク酸イミド分散剤;本明細書に記載のC4-5オレフィンを含むアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマー;アルカリ土類金属サリチレート清浄剤;潤滑組成物に0.1質量%~1.2質量%のアルカリ土類金属石鹸を送達する量で存在するアルカリ土類金属スルホン酸塩清浄剤;並びに0.3~1.1質量%の総硫酸灰分を有する潤滑組成物に300~900ppmのリンを送達する量で存在するリン耐摩耗剤;100℃で8.3cSt未満の動粘度;0.6質量%~2.1質量%の総アルカリ土類金属石鹸、及びASTM D4683に従って測定して2.7mPa・s未満のHTHS150。
【0043】
ディーゼルエンジン潤滑組成物等の、本明細書に開示の潤滑組成物は、ASTM D-445により測定して、100℃で2.5~8.3(例えば、2.5~6.5、又は3~5.5、又は3.5~6.5)cSt(mm2/s)の動粘度、及び40℃で15~30(例えば、15~25)cSt(mm2/s)の動粘度を有していてもよい。
ディーゼルエンジン潤滑組成物等の、本明細書に開示の潤滑組成物は、ASTM D4683により測定して、150℃で2.6mPa・s未満、又は2.5mPa・s未満、又は2.4mPa・s未満、又は2.3mPa・s未満、又は2.2mPa・s未満、又は2.1mPa・s未満の高温高剪断粘度(HTHS)を有してもよい。別の実施形態では、潤滑組成物のHTHSは、1.4~2.5mPa・s、又は1.6~2.1mPa・s、又は1.8~2.1mPa・s、又は1.9~2.0mPa・sである。
【0044】
ディーゼルエンジン潤滑組成物等の潤滑組成物は、0W-YのSAE粘度グレードを有してもよく、Yは、12、16、又は20であってもよい。一実施形態では、潤滑組成物は、0W-12のSAE粘度グレードを有する。
ディーゼルエンジン潤滑組成物等の、本明細書で開示される潤滑組成物は、1)ASTM D-445により測定して、100℃で2.5~8.3(例えば、2.5~6.5、又は3~5.5、又は3.5~6.5)cSt(mm2/s)の動粘度;2)ASTM D4683により測定して、150℃で2.6mPa・s未満、又は2.5mPa・s未満、又は2.4mPa・s未満、又は2.3mPa・s未満、又は2.2mPa・s未満、又は2.1mPa・s未満(代替的に、1.4~2.5mPa・s、又は1.6~2.1mPa・s、又は1.8~2.1mPa・s、又は1.9~2.0mPa・s)の高温高剪断粘度(HTHS);及び3)0W-YのSAE粘度グレードであって、Yは、12、16、又は20(0W-12等)であってもよい、0W-YのSAE粘度グレードを有してもよい。
【0045】
濃縮物
添加剤パッケージ、アドパック(adpak)、又はアッドパック(addpack)とも呼ばれる濃縮物は、50質量%未満(例えば40質量%未満、例えば30質量%未満、例えば25質量%未満、例えば20質量%未満)の基油及び潤滑油組成物添加剤(本明細書に記載のもの等)を有する組成物であり、典型的には、潤滑油製品を形成するために追加の基油がそれに更に混合される。
【0046】
本開示は、
(a)潤滑組成物の質量に基づき、1~50質量%未満(代替的に5~45質量%、代替的に7~40質量%、代替的に10~35質量%、代替的に10~25質量%)の1つ又は複数の基油、
(b)組成物の質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.2~15質量%、代替的に0.5質量%~10質量%、代替的に1~7質量%)の、C4-5オレフィンを含む1つ又は複数のアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマーであり、
i)2未満のMw/Mn、
ii)3.5以下(GPC-PS)の官能価分布(Fd)値、及び
iii)10,000g/mol以上(GPC-PS)の官能化前のポリマーのMn
を有し、ただし、官能化前のポリマーがイソプレン及びブタジエンのコポリマーである場合は、コポリマーのMnは25,000g/mol(GPC-PS)よりも大きい、1つ又は複数のアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマー
を含むか又は混合することから得られる濃縮組成物に関する。
【0047】
本開示は、
(i)組成物の質量に基づき、1~50質量%未満(代替的に5~45質量%、代替的に7~40質量%、代替的に10~35質量%、代替的に10~25質量%)の1つ又は複数の基油、
(ii)組成物の質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20質量%~5質量%、代替的に0.25~2質量%)の1つ又は複数の清浄剤、
(iii)組成物の質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20質量%~5質量%、代替的に0.25~2質量%)の1つ又は複数の分散剤(PIBSA-PAM等)、及び
iv)油組成物の質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20質量%~5質量%、代替的に0.25~2質量%)の、本明細書に記載の1つ又は複数のアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的若しくは完全飽和ポリマー、
(v)任意選択の追加成分、抗酸化剤、流動点降下剤、消泡剤、粘度調整剤、腐食防止剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、抗乳化剤、シール適合剤、添加剤希釈基油、摩擦調整剤(例えば有機FM、例えば有機エステル、例えば脂肪酸エステル)等
を含むか又は混合することから得られる濃縮組成物に関する。
【0048】
実施形態では、濃縮組成物には、任意選択で、溶媒(脂肪族溶媒又は芳香族溶媒等)が存在しなくともよく、及び/又は官能化基油が存在しなくともよい。
【0049】
本開示は、
(A)濃縮組成物の質量に基づき、1~50質量%未満(代替的に5~45質量%、代替的に7~40質量%、代替的に10~35質量%、代替的に10~25質量%)の1つ又は複数の基油、
(B)濃縮組成物の質量に基づき、0.10~20質量%(特に0.15~10質量%、代替的に0.20質量%~5質量%、代替的に0.25~3質量%)の1つ又は複数の官能化ポリマーであり、1つ又は複数の官能化ポリマーは、
a)2未満(GPC-PSにより決定して、例えば1.6未満、例えば1.5未満、例えば1~1.3、例えば1.0~1.25)のMw/Mn、
b)3.5以下(GPC-PSにより決定して、例えば3.4以下、例えば1~3.3、例えば1.1~3.2、例えば1.2~3.0、例えば1.4~2.9)の官能価分布(Fd)値
を有し、
官能化前のポリマーは、25,000g/mol(例えば30,000g/mol)以上(GPC-PS)のMnを有する、1つ又は複数の官能化ポリマー、
C)濃縮組成物の総質量に基づき、0.1~20質量%(特に0.5~10質量%、代替的に2~6質量%)の1つ又は複数の清浄剤(清浄剤のブレンド等)、
D)任意選択で、濃縮組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%(特に0.1~4質量%、代替的に0.25~3質量%、代替的に0.25~0.75質量%)の1つ又は複数の摩擦調整剤(例えば有機摩擦調整剤、例えばモノオレイン酸グリセリン(glycerol monoeoleate))、
E)任意選択で、濃縮組成物の総質量に基づき、0.01~20質量%(特に0.01~15質量%、代替的に0.1~10質量%)の1つ又は複数の抗酸化剤(抗酸化剤のブレンド等)、
F)任意選択で、濃縮組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%(特に0.01~3質量%、代替的に0.1~1.5質量%)の1つ又は複数の流動点降下剤(流動点降下剤のブレンド等)、
G)任意選択で、濃縮組成物の総質量に基づき、0.001~5質量%(特に0.01~3質量%、代替的に0.02~1質量%)の1つ又は複数の消泡剤(消泡剤のブレンド等)、
I)任意選択で、濃縮組成物の総質量に基づき、0.01~40質量%(特に0.1~30質量%、代替的に1~20質量%)の1つ又は複数の分散剤(分散剤のブレンド等)、
K)潤滑組成物の総質量に基づき、0.001~10質量%(特に0.1~8質量%、代替的に1~5質量%、代替的に0.25~.075質量%)の1つ又は複数の耐摩耗剤(耐摩耗剤のブレンド等、例えばZDDP)
を含むか又は混合することから得られる濃縮組成物にも関する。
【0050】
任意選択で、濃縮物には、官能化油が存在していなくともよい。
実施形態では、濃縮組成物には、任意選択で、溶媒(脂肪族溶媒又は芳香族溶媒等)が存在しなくともよく、及び/又は官能化基油が存在しなくともよい。
任意選択で、濃縮物には、フェノール系抗酸化剤が存在しなくてもよい。
実施形態では、濃縮物は、75ppm未満のホウ素、代替的に60ppm未満のホウ素、代替的に1~70ppmのホウ素を含んでもよい。代替的には、濃縮物にはホウ素が存在しなくてもよい。
実施形態では、濃縮物は、20(例えば15、例えば10、例えば5、例えば3、例えば1)質量%未満の官能化(例えばアミノ化)ポリブテン(例えばポリイソブチレン)、例えばPIBSA-PAMを含んでいてもよい。実施形態では、濃縮組成物は、官能化(例えばアミノ化)ポリブテン(ポリイソブチレン等)、例えばPIBSA-PAMを実質的に含んでいないか、又は濃縮組成物には、官能化(例えばアミノ化)ポリブテン(ポリイソブチレン等)、例えばPIBSA-PAMが存在しない。
【0051】
実施形態では、濃縮物は、任意選択で500~50,000g/mol、例えば600~5,000g/mol、例えば700~3000g/molのMnを有する、ポリイソブチレンコハク酸等のアシル化ポリマーを含んでいてもよい。実施形態では、濃縮物は、500~1600g/mol、例えば700~1200g/molのMnを有する、ポリイソブチレンコハク酸等のアシル化ポリマーを含んでいてもよい。
実施形態では、濃縮物は、20(例えば15、例えば10、例えば5、例えば3、例えば1)質量%以下のブロックコポリマー、例えばブロック、星形、ランダム、及び/又はテーパードブロックコポリマーを含んでいてもよい。
実施形態では、濃縮物は、ブロックコポリマー、例えばブロック、星形、ランダム、及び/若しくはテーパードブロックコポリマーを実質的に含んでいなくてもよく、又は濃縮物には、ブロックコポリマー、例えばブロック、星形、ランダム、及び/若しくはテーパードブロックコポリマー存在しなくてもよい。
実施形態では、濃縮物は、20質量%以下(例えば15質量%以下、例えば10質量%以下、例えば5質量%以下、例えば3質量%以下、例えば1質量%以下)のスチレン系コポリマー、例えば、ブロック、星形、ランダム、及び/又はテーパードスチレン系ブロックコポリマー)を含んでいてもよい。
【0052】
実施形態では、濃縮物は、スチレン系コポリマー、例えばブロック、星形、ランダム、及び/又はテーパードスチレン系コポリマーを実質的に含んでいなくてもよく、又は濃縮物には、スチレン系コポリマー、例えばブロック、星形、ランダム、及び/又はテーパードスチレン系コポリマーが存在しなくてもよい。
実施形態では、濃縮物は、20(例えば、15、例えば10、例えば5、例えば3、例えば1)質量%未満の官能化希釈剤、例えば官能化油を含んでいてもよい。
実施形態では、濃縮物は、官能化希釈剤、例えば官能化油を実質的に含んでいなくてもよく、又は濃縮物には、官能化希釈剤、例えば官能化油が存在しなくてもよい。
実施形態では、濃縮物は、濃縮物の質量に基づき、0.5質量%未満(例えば0.4質量%未満、例えば0.3質量%未満、例えば0.2質量%未満、例えば0.1質量%未満、実質的に存在しないか、又は含まれていない)の第二級ヒドロカルビルアミン化合物及び第三級ヒドロカルビルアミン化合物を含んでいてもよい。
実施形態では、濃縮物には、第二級ヒドロカルビルアミン化合物及び第三級ヒドロカルビルアミン化合物が実質的に存在しなくてもよく、又は濃縮物は、第二級ヒドロカルビルアミン化合物及び第三級ヒドロカルビルアミン化合物を含んでいなくてもい。
実施形態では、濃縮物は、100℃で1000cSt未満、例えば500cSt未満、例えば200cSt未満の動粘度を有してもよい。
【0053】
A.基油
本明細書で有用な基油(「ベースストック」、「潤滑油ベースストック」、又は「潤滑粘度の油」とも呼ばれる)は、単一の油であってもよく又は油のブレンドであってもよく、典型的には、潤滑剤とも呼ばれる潤滑組成物の大きな液体成分であり、それに対して、例えば最終潤滑剤組成物、濃縮物、又は他の潤滑組成物等の潤滑組成物を生産するために添加剤及び任意選択で追加の油がブレンドされる。
基油は、植物潤滑油、動物潤滑油、鉱物油、合成潤滑油、及びそれらの混合物から選択することができる。基油は、粘度の点で、軽質留分鉱物油から、ガスエンジン油、鉱物潤滑油、自動車油、及び大型ディーゼル油用のもの等の重潤滑油まで多岐にわたり得る。一般に、基油の100℃における動粘度(「KV100」)は、ASTM D445-19aに従って決定して、1~30、例えば2~25cSt、例えば5~20cSt、特に、1.0cSt~10cSt、1.5cSt~3.3cSt、2.7cSt~8.1cSt、3.0cSt~7.2cSt、又は2.5cSt~6.5cStの範囲である。一般に、基油の150℃における高温高剪断粘度(HTHS)は、ASTM D4683-20に従って決定して、0.5~20cP、例えば1~10cP、例えば2~5cPの範囲である。
【0054】
典型的には、潤滑油ベースストックを使用して濃縮物を製作する場合、潤滑油ベースストックは、有利には、濃縮物の質量に基づき、5質量%~80質量%、10質量%~70質量%、又は5質量%~50質量%の活性成分を含む濃縮物をもたらす濃縮物形成量で存在してもよい。
基油として有用な一般的な油としては、動物油及び植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、液体石油、並びにパラフィン系、ナフテン系、及びパラフィン系-ナフテン系混合タイプの水素化精製及び/又は溶媒処理鉱物潤滑油が挙げられる。石炭又はシェールに由来する油も有用な基油である。ベースストックは、これらに限定されないが、蒸留、溶媒精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化、及び再精製を含む、様々な異なるプロセスを使用して製造することができる。
基油として本明細書で有用な合成潤滑油としては、ポリアルファオレフィン又はPAO又はグループIV基油と呼ばれる、単独重合及び共重合オレフィン等の炭化水素油が挙げられる[API EOLCS 1509定義による(米国石油協会出版物1509、セクションE.1.3、第19版、2021年1月、www.API.org)を参照]。基油として有用なPAOの例としては、ポリ(エチレン)、エチレン及びプロピレンのコポリマー、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)、C8~C20アルケンのホモポリマー又はコポリマー、C8及び/又はC10及び/又はC12アルケンのホモポリマー又はコポリマー、C8/C10コポリマー、C8/C10/C12コポリマー、並びにC10/C12コポリマー、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体が挙げられる。
【0055】
別の実施形態では、基油は、100℃で10以上の動粘度(ASTM D445により測定される)を有し、好ましくは、ASTM D2270により決定して、100以上、好ましくは110以上、より好ましくは120以上、より好ましくは130以上、より好ましくは140以上の粘度指数(「VI」)を有し、及び/又は-5℃以下、より好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下の流動点(ASTM D97により測定される)を有する、6~14個の炭素原子、より好ましくは8~12個の炭素原子、より好ましくは10個の炭素原子を有する直鎖状オレフィンのオリゴマーを含むポリアルファオレフィンを含んでいてもよい。
別の実施形態では、本開示で有用なポリアルファオレフィンオリゴマーは、C20~C1500パラフィン、好ましくはC40~C1000パラフィン、好ましくはC50~C750パラフィン、好ましくはC50~C500パラフィンを含んでいてもよい。PAOオリゴマーは、一実施形態では、C5~C14アルファ-オレフィン、及び別の実施形態ではC6~C12アルファ-オレフィン、及び別の実施形態ではC8~C12アルファ-オレフィンの二量体、三量体、四量体、五量体等である。好適なオレフィンとしては、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、及び1-ドデセンが挙げられる。一実施形態では、オレフィンは、1-オクテン、1-デセン、及び1-ドデセンの組合せであるか、又は代替的には実質的に1-デセンであってもよく、PAOは、それらの二量体、三量体、四量体、及び五量体(及びより高次体)の混合物である。有用なPAOは、例えば、米国特許第5,171,908号明細書及び第5,783,531号明細書、並びにSynthetic Lubricants and High-Performance Functional Fluids 1~52頁(Leslie R.Rudnick&Ronald L.Shubkin編 Marcel Dekker,Inc.1999年)により詳細に記載されている。
【0056】
本開示において有用なPAOは、典型的には、一実施形態では100~21,000g/mol、別の実施形態では200~10,000g/mol、更に別の実施形態では200~7,000g/mol、更に別の実施形態では200~2,000g/mol、更に別の実施形態では200~500g/molの数平均分子量を有する。望ましいPAOは、SpectraSyn(商標)Hi-Vis、SpectraSyn(商標)Low-Vis、SpectraSyn(商標)plus、SpectraSyn(商標)Elite PAO(ExxonMobil Chemical Company社、テキサス州ヒューストン)及びIneos Oligomers USA LLC社のDurasyn PAOとして市販されている。
基油として有用な合成潤滑油としては、単独重合及び共重合の、アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェノール(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びにアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド;並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体等の炭化水素油も挙げられる。
【0057】
基油として有用な合成潤滑油の別の好適な種類は、様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)と反応させた、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸(sebasic acid)、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)のエステルを含む。こうしたエステルの特定の例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、並びに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることにより形成される複合エステルが挙げられる。
【0058】
本明細書にて合成油として有用なエステルとしては、C5~C12モノカルボン酸及びポリオールから製作されるもの、並びにポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、及びトリペンタエリトリトールも挙げられる。
望ましいエステル基油は、Esterex(商標)エステル(ExxonMobil Chemical Company社、テキサス州ヒューストン)として市販されている。
ポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-、又はポリアリールオキシシリコーン油及びシリケート油等のシリコンベース油は、本明細書で有用な別の有用な種類の合成潤滑剤を構成する。そのような油としては、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル)シリケート、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン、及びポリ(メチルフェニル)-シロキサンが挙げられる。
【0059】
本明細書で有用な他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デシルホスホン酸のジエチルエステル)、及びポリマー性テトラヒドロフランが挙げられる。
未精製油、精製油、及び再精製油を、本開示の潤滑組成物に使用することができる。未精製油は、更なる精製処理を行わずに天然供給源又は合成供給源から直接得られる油である。例えば、レトルト操作から直接得られるシェールオイル、蒸留から直接得られる石油、又はエステル化プロセスから直接得られ、更なる処理を行わずに使用されるエステル油は、未精製油とみなされる。精製油は、1つ又は複数の特性を向上させるために1つ又は複数の精製ステップで更に処理されていることを除いて、未精製油と同様である。蒸留、溶媒抽出、酸又は塩基抽出、濾過、及びパーコレーション等の多くのそのような精製技法が当業者により使用されている。再精製油は、以前に役務に使用されていた以前の精製油に精製プロセスが適用される、精製油を得るために使用されるプロセスと同様のプロセスにより得られる油である。そのような再精製油は、再生油又は再処理油とも呼ばれ、多くの場合、廃添加剤及び油分解産物を除去するために追加処理される。再精製基油は、好ましくは、製造、夾雑、又は以前の使用により導入された物質を実質的に含まない。
有用な基油の他の例は、ガス液化(GTL)基油であり、つまり基油は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して、H2及びCOを含む合成ガス(「synガス」)から製作される炭化水素に由来する油である。こうした炭化水素は、基油として有用なものにするためには、典型的には更なる処理が必要である。例えば、こうした炭化水素を、当技術分野で公知の方法により、水素化異性化してもよく、水素化分解及び水素化異性化してもよく、脱ろうしてもよく、又は水素異性化及び脱ろうしてもよい。有用なGTL基油及びそれらのブレンドの更なる情報は、米国特許第10,913,916号明細書(第4欄62行目~第5欄60行目)及び米国特許第10,781,397号明細書(第14欄54行目~第15欄5行目、及び第16欄44行目~第17欄55行目)を参照されたい。
特に、再生可能資源に由来する油、つまり生物学的資源等の環境から捕捉された炭素及びエネルギーに部分的に基づく油は、本明細書において有用である。
【0060】
種々の基油は、多くの場合、API EOLCS 1509定義(米国石油協会出版物1509、セクションE.1.3、第19版、2021年1月、www.API.org)に従ってグループI、II、III、IV、又はVに分類される。一般的に言えば、グループIベースストックは、約80~120の粘度指数を有し、約0.03%よりも多くの硫黄及び/又は約90%未満の飽和物を含む。グループIIベースストックは、約80~120の粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄及び約90%以上の飽和物を含む。グループIIIベースストックは、約120よりも高い粘度指数を有し、約0.03%以下の硫黄及び約90%よりも多くの飽和物を含む。グループIVベースストックとしては、ポリアルファオレフィン(PAO)が挙げられる。グループVベースストックとしては、グループI~IVに含まれないベースストックが挙げられる。(粘度指数はASTM D2270により測定され、飽和物はASTM D2007により測定され、硫黄はASTM D2622、ASTM D4294、ASTM D4927、及びASTM D3120により測定される)。
【0061】
本開示で有用な配合潤滑組成物に使用するための基油は、本明細書に記載の様々な油のいずれか1つ、2つ、3つ、又はそれよりも多くである。望ましい実施形態では、本開示で有用な配合潤滑組成物に使用するための基油は、APIグループI、グループII、グループIII(グループIII+を含む)、グループIV、及びグループVの油として記載されているもの並びにそれらの混合物、好ましくはAPIグループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油並びにそれらの混合物、より好ましくは、それらの優れた揮発性、安定性、粘度、及び清浄性特徴のため、グループIII、グループIII+、IV、及びグループVの基油である。ブレンドして配合潤滑油製品にするための添加剤を希釈するために使用される量等、少量のグループIベースストックは許容することができるが、典型的には最低限に、例えば「受領時」基準の使用される添加剤の希釈剤/キャリア油としての使用にのみ関連する量に抑えられる。グループIIストックに関しては、グループIIベースストックは、そのストックに関連してより高品質の範囲にあること、つまり100~120の範囲の粘度指数を有するグループIIストックであることがより有用である。
【0062】
本明細書で有用な基油は、合成油、天然油、又は再精製油(火花点火式エンジン及び圧縮点火式エンジンのクランクケース潤滑油として典型的に使用されるもの等)のいずれかから選択することができる。必要に応じて、合成基油及び/又は天然基油及び/又は再精製基油の混合物を使用してもよい。必要に応じて、グループI、II、III、IV、及び/又はVベースストックの多峰混合物(二峰混合物又は三峰混合物等)を使用してもよい。
本明細書で使用される基油又は基油ブレンドは、従来は、100℃で約2~約40cSt、代替的に3~30cSt、代替的に4~20cSt、代替的に5~10cStの100℃動粘度(KV100、ASTM D445-19aに従って測定され、センチストーク(cSt)又はそれに相当するmm2/sの単位で報告される)を有し、代替的に、基油又は基油ブレンドは、2~20cSt、2.5~2cSt、好ましくは約2.5cSt~約9cStの100℃動粘度を有してもよい。
基油又は基油ブレンドは、ASTM D2007により決定して、好ましくは、少なくとも65質量%、より好ましくは少なくとも75質量%、例えば少なくとも85質量%、例えば少なくとも90質量%の飽和含有量を有する。
好ましくは、基油又は基油ブレンドは、ASTM D5185により測定して、潤滑組成物の総質量に基づき、1質量%未満、好ましくは0.6質量%未満、最も好ましくは0.4質量%未満、例えば0.3質量%未満の硫黄含有量を有することになる。
【0063】
実施形態では、基油又は基油ブレンドの揮発性は、Noack試験(ASTM D5800、手順B)により測定して、潤滑組成物の総質量に基づき、30質量%以下、例えば25質量%以下、例えば20質量%以下、例えば16質量%以下、例えば12質量%以下、例えば10質量%以下である。
実施形態では、基油の粘度指数(VI)は、少なくとも95、好ましくは少なくとも110、より好ましくは少なくとも120、更により好ましくは少なくとも125、最も好ましくは約130~240、特に約105~140である(ASTM D2270により決定される)。
基油は、潤滑剤を構成する少量の後述する1つ又は複数の添加剤成分と組み合わせて多量にて提供してもよい。この調製は、添加剤を油に直接添加することにより、又は1つ若しくは複数の添加剤をそれらの濃縮物の形態で添加し、添加剤を分散若しくは溶解させることにより達成することができる。添加剤は、他の添加剤の添加前、添加と同時に、又は添加後のいずれかで、当業者に公知の任意の方法により油に添加することができる。
【0064】
基油は、添加剤濃縮物を構成する少量の後述する1つ又は複数の添加剤成分と組み合わせて多量にて提供してもよい。この調製は、添加剤を油に直接添加することにより、又は1つ若しくは複数の添加剤をそれらの溶液、スラリー、若しくは懸濁物の形態で添加し、添加剤を油に分散若しくは溶解させることにより達成することができる。添加剤は、他の添加剤の添加前、添加と同時に、又は添加後のいずれかで、当業者に公知の任意の方法により油に添加することができる。
基油は、典型的には、本開示のエンジン油潤滑剤組成物の主成分を構成し、典型的には、組成物の総質量に基づき、約50~約99質量%、好ましくは約70~約95質量%、好ましくは約80~約95質量%の範囲の量で存在する。
典型的には、1つ又は複数の基油は、潤滑組成物の総質量に基づき、32質量%以上、代替的に55質量%以上、代替的に60質量%以上、代替的に65質量%以上の量で潤滑組成物中に存在する。典型的には、1つ又は複数の基油は、98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更により好ましくは90質量%以下の量で潤滑組成物中に存在する。代替的には、1つ又は複数の基油は、潤滑組成物の質量に基づき、1~99質量%、代替的に50~97質量%、代替的に60~95質量%、代替的に70~95質量%で潤滑組成物中に存在する。
【0065】
上記に記載の基油及びそれらのブレンドは、濃縮物の製作にも、並びにそれらからの潤滑剤の製作にも有用である。
濃縮物は、使用前の添加剤取扱い、並びに潤滑剤への添加剤の溶解又は分散を容易にする便利な手段である。1つよりも多くのタイプの添加剤(「添加剤成分」と呼ばれることもある)を含む潤滑剤を調製する場合、各添加剤は、各々濃縮物の形態で別々に組み込むことができる。しかしながら、多くの場合では、後述するような1つ又は複数の添加剤/共添加剤を単一の濃縮物中に含む、いわゆる添加剤「パッケージ」(「アドパック」とも呼ばれる)を提供するのが好都合である。
典型的には、1つ又は複数の基油は、濃縮組成物の総質量に基づき、50質量%以下、代替的に40質量%以下、代替的に30質量%以下、代替的に20質量%以下の量で濃縮組成物中に存在する。典型的には、1つ又は複数の基油は、濃縮組成物の質量に基づき、0.1~49質量%、代替的に5~40質量%、代替的に10~30質量%、代替的に15~25質量%で濃縮組成物中に存在する。
実施形態では、本明細書に記載のアシル化/官能化反応は、基油希釈剤の存在下で生じてもよい。副産物として、官能化基油が生成される可能性がある。油自体がアシル化及び/又は官能化される場合がある。本明細書に記載の官能化反応後には、例えば、マレイン化基油又はアミノ化基油が存在する可能性がある。
【0066】
官能化基油はアシル化油を含んでいてもよいことが企図される。
官能化基油は、アミド、イミド、又はそれらの組合せを形成する、アシル化油とアミンとの反応産物を含んでいてもよいことが企図される。
官能化基油は、アシル化油、及びアミド、イミド、又はそれらの組合せを形成する、アシル化油とアミンとの反応産物を両方とも含んでいてもよいことが企図される。
実施形態では、潤滑油組成物及び/又は濃縮組成物は、アシル化油、及び/又はアミド、イミド、エステル、若しくはそれらの組合せを形成する、アシル化油とアミン若しくはアルコールとの反応産物等の官能化基油を、濃縮組成物の総質量に基づき、40質量%以下、代替的に20質量%以下、代替的に10質量%以下、代替的に5質量%以下の量で含んでいてもよい。典型的には、アシル化油、及び/又はアミド、イミド、エステル、若しくはそれらの組合せを形成する、アシル化油とアミン若しくはアルコールとの反応産物等の1つ又は複数の官能化基油は、濃縮組成物の質量に基づき、0.01~40質量%、代替的に0.1~20質量%、代替的に1~10質量%、代替的に1.5~5質量%の量で濃縮物中に存在する。
【0067】
典型的には、アシル化油、及び/又はアミド、イミド、エステル、若しくはそれらの組合せを形成する、アシル化油とアミン若しくはアルコールとの反応産物等の1つ又は複数の官能化基油は、潤滑油組成物の質量に基づき、0.01~40質量%、代替的に0.1~20質量%、代替的に1~10質量%、代替的に1.5~5質量%の量で潤滑油組成物中に存在する。
実施形態では、官能化油は、潤滑油組成物の質量に基づき、3質量%以下、好ましくは2質量%以下、好ましくは1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、好ましくは0質量%で潤滑油組成物中に存在してもよい。
実施形態では、官能化油は、濃縮組成物の質量に基づき、3質量%以下、好ましくは2質量%以下、好ましくは1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、好ましくは0質量%で濃縮組成物中に存在してもよい。
【0068】
実施形態では、本明細書に記載のアシル化/官能化反応は、溶媒含有媒体中で生じてもよい。副産物として、官能化溶媒が生成される可能性がある。溶媒自体がアシル化及び/又は官能化される場合がある。実施形態では、アシル化及び/又は官能化溶媒は、濃縮組成物の質量に基づき、3質量%以下、好ましくは2質量%以下、好ましくは1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、好ましくは0質量%で濃縮組成物中に存在していてもよい。実施形態では、官能化溶媒は、潤滑油組成物の質量に基づき、3質量%以下、好ましくは2質量%以下、好ましくは1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、好ましくは0質量%で潤滑油組成物中に存在してもよい。
【0069】
B.官能化ポリマー
本開示は、官能化前に約10,000g/mol以上、例えば20,000g/mol以上、例えば25,000g/mol以上、例えば30,000g/mol以上、例えば35,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有するポリマーを含む官能化ポリマーに関する。代替的には、官能化ポリマーは、官能化前に、10,000~300,000g/mol、例えば20,000~約150,000g/mol、例えば30,000~約125,000g/mol、例えば35,000~約100,000g/mol、例えば40,000~80,000g/mol(GPC-PS)のMnを有するポリマーを含む。官能化前のポリマーは、2未満(GPC-PSにより決定して、例えば1.6未満、例えば1.5未満、例えば1.4以下、例えば1~1.3、例えば1.0~1.25、例えば1.0~1.2、例えば1.0~1.15、例えば1.0~1.1)のMw/Mnを有してもよい。官能化前のポリマーは、4~5個の炭素原子を有する1つ又は複数のオレフィン(好ましくは4~5個の炭素原子を有する共役ジエン)のリピート単位を含んでいてもよい。官能化前に、C4-5ポリマーは、好ましくは完全に又は部分的に飽和されている(例えば、完全に又は部分的に水素化されている)。官能化ポリマーは、C4-5ポリマーをアシル化剤と反応させてアシル化ポリマーを形成し、次いでアシル化ポリマーをアミン又はアルコールと反応させてアミド、イミド、エステル、又はそれらの組合せを形成することにより得ることができる。官能化ポリマーは、アシル化C4-5ポリマー(市販のマレイン化完全又は部分水素化C4-5ポリマー等)をアミンと反応させて、アミド、イミド、又はそれらの組合せを形成することによっても得ることができる。
【0070】
本開示は、2未満のMw/Mnを有する、C4-5共役ジエンの完全又は部分飽和(例えば完全又は部分水素化)ポリマーを、マレイン酸又は無水マレイン酸等のアシル化剤と反応させ、その後アシル化ポリマーをアミン(ポリアミン等)と反応させて、イミド、アミド、又はそれらの組合せを形成することにより得られる、本明細書に記載のC4-5共役ジエンのアミド、イミド、及び/又はエステル官能化飽和(例えば水素化)ポリマーに更に関する。
本開示は、1つ又は複数のペンダントアミン基を含み、少なくとも部分的に(好ましくは完全に)水素化されたC4-5オレフィンポリマーを、マレイン酸若しくは無水マレイン酸等のアシル化剤と混合し、その後アシル化ポリマーをポリアミンと反応させて、イミド、アミド、又はそれらの組合せを形成することを含むか又はからもたらされるポリマーに関する。
実施形態では、官能化ポリマーは、芳香族溶媒(ベンゼン又はトルエン等)中では調製されないか、又は芳香族溶媒は、溶媒、希釈剤、及びポリマーの質量に基づき2質量%以下(例えば1質量%以下、例えば0.5質量%以下)で存在する。
実施形態では、官能化ポリマーは、アルキル化ナフチレン系溶媒中では調製されないか、又はアルキル化ナフチレン系溶媒は、溶媒、希釈剤、及びポリマーの質量に基づき5質量%以下(例えば3質量%以下、例えば1質量%以下)で存在する。
官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、ブタジエン又はイソプレン等のホモポリマーであってよい。
実施形態では、官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、イソプレンのホモポリマーであってもよく、又はイソプレンと5mol%未満(例えば3mol%未満、例えば1mol%未満、例えば0.1mol%未満)のコモノマーのコポリマーであってもよい。
【0071】
官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、イソプレンと、スチレン、メチル-スチレン、2,3-ジメチル-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、ミルセン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ペンタジエン、3-フェニル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2-ヘキシル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-ヘキサジエン、2-ベンジル-1,3-ブタジエン、2-p-トリル-1,3-ブタジエン 1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、2,4-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、2,4-オクタジエン、3,5-オクタジエン、1,3-ノナジエン、2,4-ノナジエン、3,5-ノナジエン、1,3-デカジエン、2,4-デカジエン、及び3,5-デカジエンの1つ又は複数とのコポリマーであってもよい[任意選択で、コモノマーは、20mol%未満、5mol%未満、例えば3mol%未満、例えば1mol%未満、例えば0.1mol%未満で存在する]。
【0072】
一般に、官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用な重合共役ジエンポリマーは、1,4-及び1,2-挿入(別名2,1-挿入;ブタジエンの場合、1,2-挿入は3,4-挿入と同じである)の混合物を含む。官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用な重合共役ジエンポリマーは、1H NMRにより測定して、イソプレンの2,1挿入、1,4挿入、及び3,4挿入の合計に基づき、少なくとも約50%の1,4-挿入、例えば少なくとも約75%の1,4挿入、例えば少なくとも約80%の1,4挿入、例えば少なくとも約90%の1,4挿入、例えば少なくとも約95%の1,4挿入、例えば少なくとも98%の1,4挿入を含む。本開示の目的では、1)「1,4挿入」という語句は、1,4及び4,1挿入を含み、2)「2,1挿入」という語句は、2,1及び1,2挿入を含み、3)「3,4挿入」という語句は、3,4挿入及び4,3挿入を含む。
【0073】
任意選択で、官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーには、スチレンリピート単位が存在しなくてもよい。任意選択で、官能化水素化/飽和ポリマーには、スチレンリピート単位が存在しなくてもよい。
任意選択で、官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーには、ブタジエンリピート単位が存在しなくてもよい。任意選択で、官能化水素化/飽和ポリマーには、ブタジエンリピート単位が存在しなくてもよい。
任意選択で、官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、ホモポリブチレンでなくてもよい。任意選択で、官能化水素化/飽和ポリマーは、ホモポリブチレンでなくてもよい。
任意選択で、官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、ホモポリイソブチレンでなくてもよい。任意選択で、官能化水素化/飽和ポリマーは、ホモポリイソブチレンでなくてもよい。
任意選択で、官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、イソプレン及びブタジエンのコポリマーでなくてもよい。任意選択で、官能化水素化/飽和ポリマーは、イソプレン及びブタジエンのコポリマーでなくてもよい。
【0074】
官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマー及び/又は官能化ポリマーは、ホモポリマーであってもよく又はコポリマーであってもよい。コポリマーは、ランダムコポリマー、テーパードブロックコポリマー、星形コポリマー、又はブロックコポリマーであってもよい。ブロックコポリマーは、1つ又は複数の第1のモノマー(イソブチレン等)を含むモノマー混合物から形成され、例えば、第1のモノマーは、第2のモノマー(ブタジエン等)から形成されるポリマーの第2の個別のブロックに接合したポリマーの個別のブロックを形成する。ブロックコポリマーは、モノマーから形成された実質的に別個のブロックを有するが、テーパーブロックコポリマーは、一方の末端が比較的純粋な第1モノマー及び他方の末端が比較的純粋な第2モノマーで構成されていてもよい。テーパードブロックコポリマーの中間部は、2つのモノマーの勾配組成が多くなっていてもよい。
【0075】
官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、典型的には、20,000~150,000g/mol、代替的に20,000~約150,000g/mol、代替的に30,000~約125,000g/mol、代替的に35,000~約100,000g/mol、代替的に40,000~80,000g/mol(GPC-PS)のMnを有してもよい。
官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、典型的には、1~2、代替的に1よりも大きく2未満の、代替的に1.1~1.8、代替的に1.2~1.5のMw/Mn(GPC-PSにより決定される)を有してもよい。代替的には、官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、典型的には、1又は1よりも大きく2未満(例えば、1.8未満、例えば1.7未満、例えば1.6未満、例えば1.5未満、例えば1.4未満、例えば1.3未満、例えば1.2未満、例えば1.15未満、例えば1.12未満、例えば1.10未満)のMw/Mnを有してもよい。
【0076】
官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、20,000~150,000g/mol、代替的に20,000~約150,000g/mol、代替的に30,000~約125,000g/mol、代替的に35,000~約100,000g/mol、代替的に40,000~80,000g/mol、代替的に40,000~60,000g/mol(GPC-PS)のMn(GPC-PSにより決定される)を有してもよい。
官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、Perkin Elmer又はTA Instrument Analysis Systemを使用した示差走査熱量測定(試料を周囲温度から210℃まで10℃/分で加熱し、210℃で5分間保持し、次いで-40℃まで10℃/分で冷却し、5分間保持する)により決定して、-25℃以下、例えば-40℃以下、例えば-50℃以下のガラス転移温度(Tg)を有してもよい。
官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、典型的には、非水素化ポリマーの二重結合の数に基づき、3%未満、例えば2%未満、例えば1%未満、例えば0.5%未満、例えば0.25%未満の残留不飽和を有する。
官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なポリマーは、典型的には、100ppm未満、例えば50ppm未満、例えば25ppm未満、例えば10ppm未満、例えば5ppm未満の残留金属(Li、Co、及びAl等の)含有量を有する。
【0077】
水素化
官能化ポリマーを調製するために本明細書で有用なC4-5ポリマーは、当業者に公知の任意の水素化剤により部分的又は完全に水素化することができる。例えば、飽和又は部分飽和ポリマーは、(a)不飽和(二重結合又は三重結合等)を含むC4-5ポリマーを準備すること、及び(b)水素化試薬の存在下でポリマーの不飽和(二重結合又は三重結合等)の少なくとも一部又は全部を水素化することにより調製することができる。一部の実施形態では、ポリマーは完全に水素化されている。一部の実施形態では、ポリマーは部分的に水素化されている。一部の実施形態では、ポリマーは、Martino N.Smits及びDirkman Hoefman、Quantative Determination of Olefinic Unsaturation by Measurement of Ozone Absorption Analytical Chemistry 44巻、9号、1688頁、1972年 Martino N.Smitsに記載のオゾン吸着法により決定して、50%以上、例えば60%以上、例えば70%以上、例えば80%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば98%以上、例えば99%以上、例えば50~100%飽和(水素化)されている。
【0078】
実施形態では、水素化試薬は、水素化触媒の存在下の水素であってもよい。一部の実施形態では、水素化触媒は、Pd、Pd/C、Pt、PtO2、Ru(PPh3)2Cl2、ラネーニッケル、又はそれらの組合せである。実施形態では、触媒はPd触媒である。別の実施形態では、触媒は5%Pd/Cである。更なる実施形態では、触媒は、高圧反応容器内に10%Pd/Cを含むか又は10%Pd/Cであってもよく、水素化反応は、完了するまで進行させることが可能である。一般に、完了後、反応混合物を洗浄、濃縮、及び乾燥して、対応する水素化産物を得ることができる。また、代替的には、C=C結合をC-C結合に還元することができる任意の還元剤を使用することができる。例えば、オレフィンポリマーを、酸素雰囲気下において、5-エチル-3-メチルルミフラビニウム過塩素酸塩等の触媒の存在下でヒドラジン処理することにより水素化し、対応する水素化産物を得ることができる。ヒドラジンによる還元反応は、Imadaら、J Am.Chem.Soc.、127巻、14544~14545頁(2005年)に開示されている。この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
アシル化
完全又は部分的飽和(水素化)ポリマーを、化学的に修飾(官能化)して、これらに限定されないが、ハロゲン、エポキシ、ヒドロキシ、アミノ、ニトリロ、メルカプト、イミド、カルボキシ、及びスルホン酸基、又はそれらの組合せ等の少なくとも1つの極性官能基を有するポリマーを提供することができる。官能化ポリマーを更に修飾して、より望ましいタイプの官能性を付与することができる。好ましい場合では、完全又は部分的水素化ポリマーは、完全又は部分的水素化ポリマーを不飽和カルボン酸(又は無水マレイン酸等のその誘導体)と反応させて、アシル化ポリマー(下記に記載のように更に官能化されていてもよい)を提供することを含む方法により官能化される。
一部の実施形態では、カルボン酸官能基又はその反応性等価物をポリマーにグラフトして、アシル化ポリマーを形成する。典型的には、エチレン性不飽和カルボン酸物質がポリマー骨格にグラフトされる。ポリマーに付着させるこうした物質は、典型的には、少なくとも1つのエチレン結合(反応前)及び少なくとも1つ、例えば2つのカルボン酸(又はその無水物)基、又は酸化若しくは加水分解によりカルボキシル基に変換可能な極性基を含む。無水マレイン酸又はその誘導体が好適である。こうした物質をポリマーにグラフトして、2つのカルボン酸官能基を付与する。追加の不飽和カルボン酸物質の例としては、無水イタコン酸、又は対応するジカルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、及びそれらのエステル、並びに桂皮酸及びそのエステルが挙げられる。
【0080】
エチレン性不飽和カルボン酸物質は、少なからぬ方法でポリマーにグラフトすることができる。エチレン性不飽和カルボン酸物質は、ラジカル開始剤を使用して又は使用せずに、溶液中の又は本質的に純粋な(溶融した)形態でポリマーにグラフトすることができる。エチレン性不飽和カルボン酸物質のフリーラジカル誘導性グラフト化は、ヘキサン又は鉱物油等の溶媒中で実施することもできる。エチレン性不飽和カルボン酸物質のフリーラジカル誘導性グラフト化は、100℃~250℃、例えば120℃~190℃又は150℃~180℃の範囲の、例えば160℃を上まわる高温で実施してもよい。
使用することができるフリーラジカル開始剤としては、過酸化物、ヒドロ過酸化物、及びアゾ化合物、典型的には、約100℃よりも高い沸点を有し、グラフト温度範囲内で熱分解してフリーラジカルをもたらすものが挙げられる。こうしたフリーラジカル開始剤の代表例としては、アゾビスイソブチロニトリル及び2,5-ジメチル-ヘキサ-3-イン-2,5-ビス-ターシャリ-ブチルペルオキシドが挙げられる。開始剤は、反応混合物溶液の質量に基づき、0.005質量%~1質量%の量で使用することができる。グラフト化は、窒素ブランケット下等の不活性雰囲気中で実施してもよい。得られるアシル化ポリマー中間体は、その構造の一部としてカルボン酸アシル化官能基を有することにより特徴付けられる。
【0081】
実施形態では、アシル化ポリマーは、1ポリマー分子当たり2つ以上の無水物基を有してもよく、10%未満のゲルを呈してもよい。代替的には、アシル化ポリマーは、1ポリマー分子当たり2つ未満の無水物基を有してもよく、10%未満がゲルを呈してもよい。(米国特許第5,429,758号明細書の第17欄14行目~第18欄11行目も参照)。
代替的に、一部の実施形態では、アシル化ポリマーは、約5質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満、0.1質量%未満、又は0質量%のゲル含有量を有してもよく、ゲル含有量は、沸騰キシレン(又はシクロヘキサン)を抽出剤として使用することによりポリマーから抽出可能な物質の量を決定することにより測定される。ポリマー組成物中の可溶性物質及び不溶性(ゲル)物質のパーセントは、公称厚さ0.5mmのポリマー薄膜標本をシクロヘキサンに23℃で48時間浸漬するか又は薄膜標本を沸騰キシレン中で30分間煮沸し、溶媒を除去し、乾燥残留物の秤量し、可溶性物質及び不溶性(ゲル)物質の量を計算することにより決定される。この方法は、米国特許第4,311,628号明細書に概説されており、この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示の目的では、ゲル含有量は沸騰キシレンを使用して測定され、試料がキシレンに溶解しない場合は、シクロヘキサン法が使用される。
【0082】
実施形態では、アシル化ポリマーは、ASTM D94により決定して、5g/KOH以上、例えば10g/KOH以上、例えば20g/KOH以上、例えば30g/KOH、50g/KOH以上、例えば10~60g/KOH、例えば20~40g/KOHの鹸化価(SAP)を有してもよい。
実施形態では、アシル化ポリマー組成物は、アシル化ポリマー組成物(つまり、ポリマー、アシル化剤、及び希釈剤)の質量に基づき、5質量%未満、例えば4質量%未満、例えば3質量%未満、例えば1質量%未満、例えば0.5質量%未満、例えば0.25質量%未満、例えば0.1質量%未満の未反応アシル化剤(無水マレイン酸等)を有してもよい。
実施形態では、本明細書に記載のアシル化反応は、基油希釈剤中で生じてもよい。副産物として、官能化基油が生成される可能性がある。油自体がアシル化される場合がある。本明細書に記載のアシル化反応後には、例えば、マレイン化基油が存在する可能性がある。
官能化基油は、アシル化油、及び/又はアミド、イミド、若しくはそれらの組合せを形成する、アシル化油とアミンとの反応産物を含んでいてもよいことが企図される。
【0083】
好ましくは、アシル化油、及び/又はアミド、イミド、エステル、若しくはそれらの組合せを形成する、アシル化油とアミン又はアルコールとの反応産物は、濃縮組成物の質量に基づき、40質量%以下、代替的に20質量%以下、代替的に10質量%以下、代替的に5質量%以下、代替的に3質量%以下、好ましくは2質量%以下、好ましくは1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、好ましくは0質量%(例えば、0~40質量%、代替的に0.01~40質量%、代替的に0.1~20質量%、代替的に1~10質量%、代替的に1.5~5質量%)の量で濃縮物中に存在してもよい。
好ましくは、アシル化油、及び/又はアミド、イミド、エステル、若しくはそれらの組合せを形成する、アシル化油とアミン若しくはアルコールとの反応産物等の1つ又は複数の官能化基油は、潤滑油組成物の質量に基づき、0.01~40質量%、代替的に0.1~20質量%、代替的に1~10質量%、代替的に1.5~5質量%(例えば3質量%以下、好ましくは2質量%以下、好ましくは1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、好ましくは0質量%)の量で潤滑油組成物中に存在してもよい。
【0084】
実施形態では、本明細書に記載のアシル化反応は、溶媒含有媒体中で生じる。副産物として、アシル化/官能化溶媒が生成される可能性がある。実施形態では、アシル化及び/又は官能化溶媒は、濃縮組成物の質量に基づき、3質量%以下、好ましくは2質量%以下、好ましくは1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、好ましくは0質量%で濃縮組成物中に存在してもよい。実施形態では、官能化溶媒は、潤滑油組成物の質量に基づき、3質量%以下、好ましくは2質量%以下、好ましくは1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、好ましくは0質量%で潤滑油組成物中に存在してもよい。
実施形態では、アシル化剤は、副反応(反応容器に存在する基油又は他の希釈剤との反応等)を最小限に抑えるような方法で添加することができる。
実施形態では、アシル化反応は、官能化基油及び他の副反応を最小限に抑えるために、アシル化剤(マレイン酸又は無水マレイン酸等)を連続又は半連続(断続的等の)流動で(例えば、反応時間にわたって比較的等しい部分になるように、又は反応の様々な時点でより多量及び/若しくはより少量になるように制御して)添加して生じさせることができる。一例として、アシル化剤は、ポリマー及びアシル化剤の量が、制御された化学量論量で添加される連続方式で添加することができる。別の例として、ポリマーをバッチ方式で反応容器に添加し、アシル化剤をゆっくりと又は半連続方式(アシル化剤を、2回以上、例えば5回以上、例えば10回以上、例えば20回以上、例えば30回以上、例えば40回以上、例えば50回以上、例えば60回以上の別個の量又は部分に分けて添加する等)で添加してもよい。代替的には、ポリマーをX回に分けて反応容器に添加し、アシル化剤を、1.5X回以上(例えば、2X回以上、例えば5X回以上、例えば10X回以上、例えば20X回以上、例えば30X回以上、例えば40X回以上、例えば50X回以上、例えば60X回以上)に分けて添加してもよい。これと同じ効果は、ポリマー溶液及び/又はアシル化剤溶液を同じ又は異なる程度に希釈又は濃縮することによっても達成することができる。
【0085】
好ましくは、アシル化剤は、副反応を最小限に抑えるような方法で、例えば連続又は半連続方式で添加してもよい。
反応は、希釈剤中の高濃度の、例えば45質量%以上、又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%のポリマーを、バッチ、半連続、又は連続反応器操作にて使用することにより、副反応を最小限に抑えるように実行することもできる。例えば、ポリマー(例えば水素化イソプレンポリマー、例えば水素化ホモ-ポリイソプレン)を、希釈剤(例えば、油(例えば基油、例えばグループI、II、III、IV、及び/又はV基油、例えばグループII及び/又はグループIII基油)又はアルカン溶媒若しくは希釈剤、又はそれらの組合せ)中の溶液又は懸濁物(スラリー等)としてバッチ、半連続、又は連続反応器操作に導入してもよく、ポリマーは、ポリマー及び希釈剤の質量に基づき、45質量%以上(又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上)で溶液又は懸濁液中に存在してもよい。
【0086】
実施形態では、副反応は、1)アシル化剤を連続又は半連続方式で添加すること、及び/又は2)ポリマーを、ポリマーがポリマー及び希釈剤の質量に基づき45質量%以上で存在する希釈剤中の溶液若しくは懸濁物として、バッチ、半連続、又は連続反応器操作に導入することにより最小限に抑えることができる。
実施形態では、任意選択で、アシル化剤を連続若しくは半連続方式で添加することにより、並びに/又は完全若しくは部分的水素化ポリマー(イソプレンポリマー等)を、完全若しくは部分的水素化ポリマー及び希釈剤の質量に基づき45質量%以上(又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上)の完全若しくは部分的水素化ポリマーを含む、希釈剤中の溶液又は懸濁物として、バッチ、半連続、若しくは連続反応器操作に導入することにより、副反応を最小限に抑える。
実施形態では、任意選択で、アシル化剤を連続若しくは半連続方式で添加することにより、並びに完全又は部分的水素化ポリマー(イソプレンポリマー等)を、完全又は部分的水素化ポリマー及び希釈剤の質量に基づき45質量%以上(又は50質量%以上、又は55質量%以上、又は60質量%以上)の完全又は部分的水素化ポリマーを含む、希釈剤中の溶液又は懸濁物として、バッチ、半連続、又は連続反応器操作に導入することにより、副反応を最小限に抑える。
【0087】
官能化
実施形態では、アシル化ポリマーをアルコール又はアミンと反応させて、アミド、イミド、エステル、又はそれらの組合せを形成することができる。反応は、イミド、アミド、半アミド、アミド-エステル、ジエステル、又はアミン塩を形成する縮合からなっていてもよい。典型的には、第一級アミノ基が縮合してアミドを形成することになるか、又は無水マレイン酸の場合はイミドが形成されることになる。アミンは、単一の第一級アミノ基を有してもよく又は複数の第一級アミノ基を有してもよいことに留意されたい。
【0088】
好適なアミンとしては、芳香環構造の炭素原子がアミノ窒素に直接付着しているアミン等の1つ又は複数の芳香族アミンを挙げることができる。また、アミンは脂肪族であってもよい。実施形態では、脂肪族アミンは、単独で、又は互いに組み合わせて、又は芳香族アミンと組み合わせて使用することができる。芳香族アミンの量は、一部の実施形態では、非芳香族アミンの量と比較して多量であってもよく若しくは少量であってもよく、又は一部の場合では、組成物は芳香族アミンを実質的に含んでいなくてもよい。代替的には、組成物は、脂肪族アミンを実質的に含んでいなくてもよい。
【0089】
本明細書で使用することができる芳香族アミンの例としては、式:
【化1】
により表される1つ又は複数のN-アリールフェニレンジアミンが挙げられ、
式中、R7は、H、-NHアリール、-NHアルカリル、又はアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、若しくはアルカリルから選択される約4~約24個の炭素原子を有する分枝鎖状若しくは直鎖状ヒドロカルビルラジカルであり、R9は、-NH2、-(NH(CH2nmNH2、-NHアルキル、-NHアラルキル、-CH2-アリール-NH2であり、ここでn及びmは各々約1~約10の値を有し、R8は、水素、又は約4~約24個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、若しくはアルカリルである。
【0090】
好適なN-アリールフェニレンジアミンとしては、N-フェニルフェニレンジアミン(NPDA)、例えば、N-フェニル-4,4-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,3-フェニレンジアミン、及びN-フェニル-1,2-フェニレンジアミン、及びN-ナフチル-1,4-フェニレンジアミンが挙げられる。N-プロピル-N’-フェニルフェニレンジアミン等の、NPPDAの他の誘導体も含まれ得る。
【0091】
実施形態では、アシル化ポリマーと反応させるアミンは、少なくとも3つ又は4つの芳香族基を有するアミンであり、以下の式:
【化2】
により表すことができ、
式中、独立して、各可変性のR1は、水素又はC1~C5アルキル基であってもよく(典型的には水素であり)、R2は、水素又はC1~C5アルキル基であってもよく(典型的には水素であり)、Uは、脂肪族、脂環式、又は芳香族基であってもよいが、Uが脂肪族である場合、脂肪族基は、1~5個又は1~2個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝鎖状アルキレン基であってもよく、wは、1~10、又は1~4、又は1~2である(典型的には1である)。
【0092】
芳香族アミンの他の例としては、以下のものが挙げられる:アニリン、N-アルキルアニリン、例えばN-メチルアニリン及びN-ブチルアニリン、ジ-(パラ-メチルフェニル)アミン、ナフチルアミン、4-アミノジフェニルアミン、N,N-ジメチルフェニレンジアミン、4-(4-ニトロ-フェニルアゾ)アニリン(ディスパースオレンジ3)、スルファメタジン、4-フェノキシアニリン、3-ニトロアニリン、4-アミノアセトアニリド、4-アミノ-2-ヒドロキシ-安息香酸フェニルエステル(フェニルアミノサリシレート)、N-(4-アミノ-5-メトキシ-2-メチル-フェニル)-ベンズアミド(ファストバイオレットB)、N-(4-アミノ-2,5-ジメトキシ-フェニル)-ベンズアミド(ファストブルーRR)、N-(4-アミノ-2,5-ジエトキシ-フェニル)-ベンズアミド(ファストブルーBB)、N-(4-アミノ-フェニル)-ベンズアミド、及び4-フェニルアゾアニリン。好適なアミンは、米国特許第7,790,661号明細書において参照されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
実施形態では、アシル化ポリマーと縮合させる化合物は、以下の式により表すことができる。
【化3】
式中、Xは、約1~約4個の炭素原子を含むアルキレン基であり、R2、R3、及びR4は、ヒドロカルビル基であり、
【化4】
式中、Xは、約1~約4個の炭素原子を含むアルキレン基であり、R4は、ヒドロカルビル基である。
【0094】
代替的には、アミンは、少なくとも4つの芳香族基及びアルデヒド(ホルムアルデヒド等)を有するアミンであってもよい。芳香族アミンは、式:
【化5】
により表すことができ、
式中、R1は、水素又はC1-5アルキル基であり(典型的には水素であり)、
2は、水素又はC1-5アルキル基であり(典型的には水素であり)、
Uは、脂肪族、脂環式、又は芳香族基であり、任意選択で、Uが脂肪族である場合、脂肪族基は、1、2、3、4、若しくは5個、又は1~2個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基であってもよく、wは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9、例えば0、1、2、若しくは3、又は0若しくは1(典型的には0)である。そのようなアミンに関する更なる情報については、例えば、米国特許出願公開第2017/0073606号明細書、5頁、段落[0064]~[0070]及び欧州特許第2 401 348号明細書を参照されたい。
【0095】
アシル化剤と縮合させることが可能であり、第三級アミノ基を更に有する化合物の例としては、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる:ジメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジメチル-アミノプロピルアミン、N,N-ジエチル-アミノプロピルアミン、N,N-ジメチル-アミノエチルアミンエチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、異性体ブチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ヘキサメチレンテトラミン、及びビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ジアミノベンゼン、ジアミノピリジン、又はそれらの混合物。アシル化剤と縮合させることが可能であり、第三級アミノ基を更に有する化合物としては、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、及び4-(3-アミノプロピル)モルホリン、1-(2-アミノエチル)ピペリジン、3,3-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、3’,3-アミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)等のアミノアルキル置換複素環化合物を更に挙げることができる。アシル化剤と縮合させることが可能であり、第三級アミノ基を有する化合物の別の例としては、これらに限定されないが、トリエタノールアミン、トリメタノールアミン、N,N-ジメチルアミノプロパノール、N,N-ジ-エチルアミノプロパノール、N,N-ジエチルアミノブタノール、N,N,N-トリス(ヒドロキシエチル)アミン、N,N,N-トリス(ヒドロキシメチル)アミンを含むアルカノールアミンが挙げられる。
【0096】
実施形態では、ポリマーを、ポリエーテル芳香族化合物と反応させてもよい。典型的には、ポリエーテル芳香族化合物は、各々がモノカルボン酸若しくはそのエステル、又はジカルボン酸、その無水物若しくはエステル、又はそれらの混合物と反応することが可能である少なくとも2つの官能基を有することになる。実施形態では、ポリエーテル芳香族化合物は、少なくとも1つのアミン基を含む芳香族化合物から誘導され、ポリエーテルは、モノカルボン酸若しくはそのエステル、又はジカルボン酸、その無水物若しくはエステルと反応することが可能である。
【0097】
好適なポリエーテル芳香族アミンの例としては、以下の構造:
【化6】
を有する化合物が挙げられ、
式中、Aは、エーテル基が芳香族部分の少なくとも1つのアミン基を介して連結している芳香族アミン部分を表し、R1及びR6は、独立して、水素、アルキル、アルカリル、アラルキル、又はアリール、又はそれらの混合物であり、R2、R3、R4、及びR5は、独立して、水素又は約1~約6個の炭素原子を含むアルキル若しくはそれらの混合物であり、a及びxは、独立して約1~約50の整数である。
【0098】
アシル化ポリマーを、ポリエーテルアミン又はポリエーテルポリアミンと反応させてもよい。典型的なポリエーテルアミン化合物は、少なくとも1つのエーテル単位を含み、少なくとも1つのアミン部分で鎖末端化されている。ポリエーテルポリアミンは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシド等のC2~C6エポキシドから誘導されるポリマーに基づいていてもよい。ポリエーテルポリアミンの例は、Jeffamine(商標)ブランドで販売されており、Hunstman Corporation社から市販されている。
アシル化ポリマーと組み合わせるために本明細書で有用なアミンとしては、以下のものの1つ又は複数が挙げられる:N-フェニルジアミン(例えば、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、N-フェニル-p-フェニレンジアミン(別名4-アミノ-ジフェニルアミン、ADPA)、N-フェニル-1,3-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,2-フェニレンジアミン)、ニトロアニリン(3-ニトロアニリン等)、N-フェニルエタン-ジアミン(N1-フェニルエタン-1,2-ジアミン等)、N-アミノフェニルアセトアミド(N-(4-アミノフェニル)アセトアミド等)、モルホリノプロパンアミン(3-モルホリノプロパン-1-アミン等)、及びアミノエチルピペラジン(1-(2-アミノエチル)ピペラジン等)。
【0099】
実施形態では、本明細書に記載の官能化(アミノ化)反応は、希釈剤(基油又はアルカン溶媒等)中で生じてもよい。副産物として、官能化希釈剤(官能化基油等)が生成される可能性がある。官能化希釈剤(官能化基油等)は、アミド、イミド、又はそれらの組合せを形成する、アシル化希釈剤(アシル化基油等)とアミンとの反応産物を含んでいてもよい。
好ましくは、アミド、イミド、エステル、又はそれらの組合せを形成する、アシル化希釈剤(アシル化油等)とアミン又はアルコールとの反応産物は、濃縮組成物の質量に基づき、40質量%以下、代替的に20質量%以下、代替的に10質量%以下、代替的に5質量%以下、代替的に3質量%以下、好ましくは2質量%以下、好ましくは1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、好ましくは0質量%(例えば、0~40質量%、代替的に0.01~40質量%、代替的に0.1~20質量%、代替的に1~10質量%、代替的に1.5~5質量%)の量で濃縮物中に存在してもよい。
好ましくは、アミド、イミド、エステル、又はそれらの組合せを形成する、アシル化希釈剤(アシル化基油など)とアミン又はアルコールとの反応産物等の1つ又は複数の官能化基油は、潤滑油組成物の質量に基づき、0.01~40質量%、代替的に0.1~20質量%、代替的に1~10質量%、代替的に1.5~5質量%(例えば3質量%以下、好ましくは2質量%以下、好ましくは1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、好ましくは0質量%)の量で潤滑油組成物中に存在してもよい。
【0100】
実施形態では、本明細書に記載の官能基化(例えばアミノ化)反応は、溶媒含有媒体中で生じてもよい。副産物として、官能化溶媒が生成される可能性がある。実施形態では、官能化溶媒は、濃縮組成物の質量に基づき、3質量%以下、好ましくは2質量%以下、好ましくは1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、好ましくは0質量%で濃縮組成物中に存在してもよい。実施形態では、官能化溶媒は、潤滑油組成物の質量に基づき、3質量%以下、好ましくは2質量%以下、好ましくは1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、好ましくは0質量%で潤滑油組成物中に存在してもよい。
実施形態では、アシル化基油/溶媒は、官能化の前に除去することができる。
【0101】
官能化ポリマー
官能化ポリマーは、ブタジエン及びイソプレン等のC4又はC5オレフィンのホモポリマーであってもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、イソプレンのホモポリマーであってもよく、又はイソプレンと5mol%未満(例えば、3mol%未満、例えば1mol%未満、例えば0.1mol%未満)のコモノマーとのコポリマーであってもよい。
官能化ポリマーは、イソプレンと、スチレン、メチル-スチレン、2,3-ジメチル-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、ミルセン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ペンタジエン、3-フェニル-1,3ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2-ヘキシル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-ヘキサジエン、2-ベンジル-1,3-ブタジエン、2-p-トリル-1,3-ブタジエン 1,3-ブタジエン、
1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、2,4-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、2,4-オクタジエン、3,5-オクタジエン、1,3-ノナジエン、2,4-ノナジエン、3,5-ノナジエン、1,3-デカジエン、2,4-デカジエン、及び3,5-デカジエン(任意選択で、コモノマーは、20mol%未満、5mol%未満、例えば3mol%未満、例えば1mol%未満、例えば0.1mol%未満で存在する)の1つ又は複数とのコポリマーを含んでいてもよく又はそれであってもよい。
【0102】
実施形態では、官能化ポリマーは、官能化ポリマーの質量に基づき、10(例えば9、例えば8、例えば7、例えば6、例えば5、例えば4、例えば3、例えば2、例えば1)質量%のスチレンモノマーを含む。
実施形態では、官能化ポリマーには、スチレンリピート単位が存在しなくてもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、スチレンブロックを含まないブロック又はテーパードブロックコポリマーであってもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、イソプレンを含む(又はからなるか若しくはから本質的になる)ブロック又はテーパードブロックコポリマーであってもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、コポリマーの質量に基づき、50質量%以上のイソプレンを含むブロック又はテーパードブロックコポリマーであってもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、C4-5共役ジエンを含む(又はからなるか若しくはから本質的になる)、好ましくは、コポリマーの質量に基づき50(例えば、60、例えば70、例えば80、例えば90、例えば95、例えば98)質量%以上のC4-5共役ジエンを含むブロック又はテーパードブロックコポリマーであってもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、コポリマーの質量に基づき、50(例えば60、例えば70、例えば80、例えば90、例えば95、例えば98)質量%以上のイソプレンを含むコポリマーであってもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、コポリマーの質量に基づき、50(例えば60、例えば70、例えば80、例えば90、例えば95、例えば98)質量%以上のブタジエンを含むコポリマーであってもよい。
【0103】
実施形態では、官能化ポリマーは、コポリマーの質量に基づき、50(例えば60、例えば70、例えば80、例えば90、例えば95、例えば98)質量%以上のブタジエン及びイソプレンを含むコポリマーであってもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、イソプレンホモポリマー又はコポリマーの少なくとも1つのブロックを含むジブロックコポリマーであってもよい。
任意選択で、官能化ポリマーには、ブタジエンリピート単位が存在しなくてもよい。
任意選択で、官能化ポリマーは、ホモポリイソブチレンでなくてもよい。
任意選択で、官能化ポリマーは、イソプレン及びブタジエンのコポリマーでなくてもよい。
【0104】
一般に、官能化ポリマー中の重合共役ジエンは、共役付加及び非共役付加により成長中のポリマー鎖に挿入されるモノマー単位を含む。実施形態では、官能化ポリマーは、13CNMRで測定される、共役付加及び非共役付加による挿入の総数に基づき、少なくとも約50%の共役付加挿入、例えば少なくとも約75%の共役付加挿入、例えば約80%の共役付加挿入、例えば約85%~約100%の共役付加挿入を含む。
イソプレンの挿入は、最も多くの場合、イソプレンの2,1挿入、1,4挿入(トランス及びシス)、及び3,4挿入により生じる。(挿入幾何形状の測定は1H NMRにより決定される。)官能化イソプレンポリマーは、1H NMRにより測定して、イソプレンの2,1挿入、1,4挿入、及び3,4挿入の合計に基づき、少なくとも約50%の1,4-挿入、例えば少なくとも約75%の1,4挿入、例えば少なくとも約80%の1,4挿入、例えば少なくとも約90%の1,4挿入、例えば少なくとも約95%の1,4挿入、例えば少なくとも98%の1,4挿入を含む。本開示の目的では、1)「1,4挿入」という語句は、1,4及び4,1挿入を含み、2)「2,1挿入」という語句は、2,1及び1,2挿入を含み、3)「3,4挿入」という語句は、3,4挿入及び4,3挿入を含む。
官能化ポリマーは、ホモポリマーであってもよく又はコポリマーであってもよい。任意選択で、官能化ポリマーは、イソプレンのホモポリマー又はコポリマーを含む。コポリマーは、ランダムコポリマー、テーパードブロックコポリマー、星形コポリマー、又はブロックコポリマーであってもよい。
【0105】
官能化ポリマーは、典型的には、20,000~150,000g/mol、代替的に20,000~約150,000g/mol、代替的に30,000~約125,000g/mol、代替的に35,000~約100,000g/mol、代替的に40,000~80,000g/mol(GPC-PS)のMnを有してもよい。
官能化前のポリマーは、典型的には、1.0~2、例えば1.1~1.5、例えば1.1~1.3、例えば1.1~1.2のMn/Mw(GPC-PS)を有してもよい。官能化が生じると共に、Mw/Mnブロードニングが生じる可能性がある。
官能化ポリマーは、典型的には、1~3、代替的に1~2、代替的に1よりも大きく2未満、代替的に1.05~1.9、代替的に1.10~1.8、代替的に1.10~1.7、代替的に1.12~1.6、代替的に1.13~1.5、代替的に1.15~1.4、代替的に1.15~1.3のMw/Mn(GPC-PS)を有してもよい。代替的には、官能化ポリマーは、典型的には、1又は1よりも大きく2未満(例えば、1.8未満、例えば、1.7未満、例えば1.6未満、例えば1.4未満、例えば1.2未満、例えば1.15未満、例えば1.12未満、例えば1.10未満)のMw/Mnを有してもよい。
【0106】
実施形態では、官能化ポリマーは、ASTM D94により決定して、25(例えば28、例えば30、例えば32、例えば34)mg KOH/g以上の鹸化価(SAP)を有してもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、潤滑油組成物の鹸化価に対して、17%以上(例えば、20%以上、例えば17~40%、例えば20~30%)を寄与することができる。
実施形態では、官能化ポリマーは、GPC-PSにより決定して、1.4~20FGグラフト/ポリマー鎖、例えば1.4~15FGグラフト/ポリマー鎖、例えば3~12.5FGグラフト/ポリマー鎖、例えば4~10FGグラフト/ポリマー鎖の平均官能価を有してもよい。
官能化ポリマーは、GPC-PSにより決定して、15(例えば、14、13、12、11、10、9、8、7、又は6)以下のFGグラフト/ポリマー鎖の平均官能価を有してもよい。
官能化ポリマーは、GPC-PSにより決定して、1(例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、又は4.0)以上のFGグラフト/ポリマー鎖の平均官能価を有してもよい。
官能化ポリマーは、GPC-PSにより決定して、1(例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、又は4.0)~15(14、13、12、11、10、9、8、7、又は6)FGグラフト/ポリマー鎖の平均官能価を有してもよい。
【0107】
実施形態では、官能化ポリマーは、ポリマーの質量に基づき、5%以下、例えば3%以下、例えば1%以下、例えば0%の芳香族含有量を有してもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、GPC-PCにより決定して、20,000~500,000g/molのMnを有し、2以下、例えば1~2.0のMw/Mnを有する分岐鎖状C4-5モノマーのアシル化ポリマーを含んでいてもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、GPC-PSにより決定して、20,000(例えば、25,000、例えば30,000、例えば35,000、例えば40,000)g/mol以上の数平均分子量(Mn)を有してもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、GPC-PSにより決定して、50,000(例えば、40,000、例えば35,000)g/mol以上の質量平均分子量(Mn)を有してもよい。実施形態では、官能化ポリマーは、GPC-PSにより決定して、1000~50,000g/mol、例えば5000~40,000g/molの質量平均分子量(Mw)を有してもよい。
【0108】
実施形態では、官能化ポリマーは、5000~150,000g/mol、例えば10,000~150,000g/mol、例えば15,000~70,000g/mol、例えば20,000~150,000g/mol、代替的に20,000~約150,000g/mol、代替的に30,000~約125,000g/mol、代替的に35,000~約100,000g/mol、代替的に40,000~80,000g/mol、代替的に40,000~60,000g/mol(GPC-PS)のz平均分子量(Mz)を有してもよい。
実施形態では、官能化ポリマーは、約5質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満、0.1質量%未満、又は0質量%のゲル含有量を有してもよく、ゲル含有量は、沸騰キシレン(又はシクロヘキサン)を抽出剤として使用することによりポリマーから抽出可能な物質の量を決定することにより測定される。ポリマー組成物中の可溶性及び不溶性(ゲル)物質のパーセントは、本明細書に記載のように決定される。
【0109】
実施形態では、官能化ポリマーは、3.5以下(GPC-PSにより決定して、例えば3.4以下、例えば1~3.3、例えば1.1~3.2、例えば1.2~3.0、例えば1.4~2.9)の官能価分布(Fd)値を有してもよい。官能価分布(Fd)値は、下記の実施例セクションに示されているように決定され、平均官能価は、GPC-PSにより決定して、1.4~20FGグラフト/ポリマー鎖、例えば1.4~15FGグラフト/ポリマー鎖、例えば3~12.5FGグラフト/ポリマー鎖、例えば4~10FGグラフト/ポリマー鎖である。
本開示は、2未満のMw/Mn、3.5以下(GPC-PSにより測定して、例えば3.4以下、例えば1~3.3、例えば1.1~3.2、例えば1.2~3.0、例えば1.4~2.9)の官能価分布(Fd)値を有するC4-5オレフィンを含む(又はから本質的になるか若しくはからなる)アミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化/飽和ポリマーであって、官能化前のポリマーが、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、又はそれらのコポリマー(好ましくは、ポリイソブチレン又はイソブチレン及びブタジエンのコポリマー)等のC4オレフィンポリマーである場合、C4オレフィンポリマーは、10,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有し、官能化前のポリマーが、イソプレン及びブタジエンのC4/C5コポリマーである場合、コポリマーのMnは25,000Mn(GPC-PS)よりも大きい、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化/飽和ポリマーに関する。
【0110】
本開示は、90mol%以上のイソプレンリピート単位を含み、2未満のMw/Mn、3.5以下(GPC-PSにより測定して、例えば3.4以下、例えば1~3.3、例えば1.1~3.2、例えば1.2~3.0、例えば1.4~2.9)の官能価分布(Fd)値を有する、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化/飽和ポリマーであって、官能化前のポリマーは、30,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有する、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化/飽和ポリマーにも関する。
本開示は、2未満のMw/Mn、3.5以下(GPC-PSにより測定して、例えば3.4以下、例えば1~3.3、例えば1.1~3.2、例えば1.2~3.0、例えば1.4~2.9)の官能価分布(Fd)値を有する、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化/飽和ポリマーであって、官能化前のポリマーは、30,000g/mol以上(GPC-PSにより決定される)のMnを有する、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化水素化/飽和ポリマーにも関する。
本開示による潤滑組成物は、清浄剤、摩擦調整剤、抗酸化剤、流動点降下剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、腐食防止剤、耐摩耗剤、極圧添加剤、抗乳化剤、シール適合剤、添加剤希釈基油等の1つ又は複数の添加剤を更に含んでいてもよい。そのような添加剤の特定の例は、例えば、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、第14巻、477~526頁に記載されており、幾つかは下記で更に詳細に考察されている。
【0111】
C.清浄剤
潤滑組成物は、「清浄剤添加剤」とも呼ばれる1つ又は複数の金属清浄剤(金属清浄剤のブレンド等)を含んでもよい。金属清浄剤は、典型的には、堆積物を低減又は除去するための清浄剤及び酸中和剤又は防錆剤の両方として機能し、それにより摩耗及び腐食を低減し、エンジンの寿命を延長する。清浄剤は、一般に、長鎖疎水性尾部を有する極性頭部を含み、極性頭部は、酸性有機化合物の金属塩を含む。こうした塩は、実質的に化学量論量の金属を含んでいてもよく、その場合、こうした塩は、通常は正塩又は中性塩であると記述され、典型的には、最大で150mg KOH/gの、例えば0~80(又は5~30)mg KOH/gの全塩基価(ASTM D2896により測定される「TBN」)を有するだろう。過剰の金属化合物(例えば、酸化物又は水酸化物)を酸性ガス(例えば、二酸化炭素)と反応させることにより、大量の金属塩基を組み込むことができる。そのような清浄剤は、過塩基性と呼ばれることもあり、100mg KOH/g以上(例えば、200mg KOH/g以上)のTBNを有してもよく、典型的には、250mg KOH/g以上、例えば、300mg KOH/g以上、例えば200~800mg KOH/g、225~700mg KOH/g、250~650mg KOH/g、又は300~600mg KOH/g、例えば150~650mg KOH/gのTBNを有するだろう。
【0112】
好適な清浄剤としては、金属、特にアルカリ金属(第1族金属、例えば、Li、Na、K、Rb)又はアルカリ土類金属(第2族金属、例えばBe、Mg、Ca、Sr、Ba)、特にナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウム、例えばCa及び/又はMgの油溶性中性及び過塩基性スルホネート、フェネート(phenate)、硫化フェネート(sulfurized phenate)、チオホスホネート、サリチレート、ナフテネート、及び他の油溶性カルボキシレートが挙げられる。更に、清浄剤は、スルホネート、フェネート、硫化フェネート、チオホスホネート、サリシレート、及びナフテネートのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、若しくはマグネシウム塩、又は第1族及び/若しくは第2族金属の他の油溶性カルボキシレートの任意の組合せを含むハイブリッド清浄剤を含んでいてもよい。
好ましくは、本開示で有用な清浄剤添加剤は、カルシウム及び/又はマグネシウム金属塩を含む。清浄剤は、カルボン酸カルシウム及び/又はマグネシウム(例えば、サリチレート)、スルホン酸塩、又はフェネート清浄剤であってもよい。より好ましくは、清浄剤添加剤は、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸カルシウム、スルホン酸マグネシウム、スルホン酸カルシウム、マグネシウムフェネート、カルシウムフェネート、及びこうした清浄剤の2つ、3つ、4つ、又はそれよりも多くを含むハイブリッド清浄剤、並びに/又はそれらの組合せから選択される。
【0113】
また、金属含有清浄剤としては、例えば、米国特許第6,429,178号明細書;第6,429,179号明細書;第6,153,565号明細書;及び第6,281,179号明細書に記載の、フェネート及び/又はスルホネート成分、例えばフェネート/サリシレート、スルホネート/フェネート、スルホネート/サリシレート、スルホネート/フェネート/サリシレートを含む混合界面活性剤系で形成された「ハイブリッド」清浄剤も挙げることができる。例えば、ハイブリッドスルホネート/フェネート清浄剤が使用される場合、ハイブリッド清浄剤は、それぞれ同様の量のフェネート及びスルホネート石鹸を導入する、別個のフェネート及びスルホネート清浄剤の量と同量であるとみなされることになる。
【0114】
過塩基性金属含有清浄剤は、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、及びサリシレートのナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はそれらの混合物であってもよい。過塩基性フェネート及びサリシレートは、典型的には、180~650mg KOH/g、例えば200~450TBN mg KOH/gの全塩基価を有する。過塩基性スルホネートは、典型的には、250~600mg KOH/g、又は300~500mg KOH/gの全塩基価を有する。実施形態では、スルホネート清浄剤は、米国特許出願公開第2005/065045号明細書(及び米国特許第7,407,919号として権利付与)の段落[0026]~[0037]に記載のように、主として、少なくとも8の金属比を有する直鎖状アルキルベンゼンスルホネート清浄剤であってもよい。過塩基性清浄剤は、潤滑組成物に基づき、0質量%~15質量%、又は0.1質量%~10質量%、又は0.2質量%~8質量%、又は0.2質量%~3質量%で存在してもよい。例えば、大型ディーゼルエンジンでは、清浄剤は、潤滑組成物の2質量%~3質量%で存在してもよい。乗用車エンジンの場合、清浄剤は、潤滑組成物の0.2質量%~1質量%で存在してもよい。
【0115】
清浄剤添加剤は、1つ又は複数のスルホン酸マグネシウム清浄剤を含んでもよい。マグネシウム清浄剤は、中性塩であってもよく又は過塩基性塩であってもよい。好適には、マグネシウム清浄剤は、80~650mg KOH/g(ASTM D2896)、例えば200~500mg KOH/g、例えば240~450mg KOH/gのTBNを有する過塩基性スルホン酸マグネシウムである。
代替的に、清浄剤添加剤は、サリチル酸マグネシウムである。好適には、マグネシウム清浄剤は、30~650mg KOH/g(ASTM D2896)、例えば50~500mg KOH/g、例えば200~500mg KOH/g、例えば240~450mg KOH/gの、又は代替的に150mg KOH/g以下、例えば100mg KOH/g以下のTBNを有するサリチル酸マグネシウムである。
代替的には、清浄剤添加剤は、サリチル酸マグネシウム及びスルホン酸マグネシウムの組合せである。
マグネシウム清浄剤は、その潤滑組成物に、200~4000ppmのマグネシウム原子、好適には200~2000ppm、300~1500ppm、又は450~1200ppmのマグネシウム原子を提供する(ASTM D5185)。
【0116】
清浄剤組成物は、1つ又は複数のスルホン酸マグネシウム清浄剤及び1つ又は複数のサリチル酸カルシウム清浄剤の組合せを含んでいてもよい(又はからなっていてもよい)。
1つ又は複数のスルホン酸マグネシウム清浄剤及び1つ又は複数のサリチル酸カルシウム清浄剤の組合せは、その潤滑組成物に、1)200~4000ppmのマグネシウム原子、好適には200~2000ppm、300~1500ppm、又は450~1200ppmのマグネシウム原子(ASTM D5185)、及び2)少なくとも500ppm、好ましくは少なくとも750ppm、より好ましくは少なくとも900ppmの原子状カルシウム、例えば500~4000ppm、好ましくは750~3000ppm、より好ましくは900~2000ppmの原子状カルシウム(ASTM D5185)を提供する。
清浄剤は、1つ又は複数のカルシウム清浄剤、例えばカルボン酸(例えば、サリチル酸)カルシウム、スルホン酸カルシウム、又はカルシウムフェネート清浄剤を含んでいてもよい。
【0117】
好適には、カルシウム清浄剤は、30~700mg KOH/g(ASTM D2896)、例えば50~650mg KOH/g、例えば200~500mg KOH/g、例えば240~450mg KOH/gの、又は150mg KOH/g以下、例えば100mg KOH/g以下、又は200mg KOH/g以上、又は300mg KOH/g以上、又は350mg KOH/g以上のTBNを有する。
好適には、カルシウム清浄剤は、30~700mg KOH/g、30~650mg KOH/g(ASTM D2896)、例えば50~650mg KOH/g、例えば200~500mg KOH/g、例えば240~450mg KOH/gの、又は代替的に150mg KOH/g以下、例えば100mg KOH/g以下、又は200mgKOH/g以上、又は300mg KOH/g以上、又は350mg KOH/g以上のTBNを有するサリチル酸カルシウム、スルホン酸カルシウム、又はカルシウムフェネートである。
【0118】
カルシウム清浄剤は、典型的には、少なくとも500ppm、好ましくは少なくとも750、より好ましくは少なくとも900ppmの原子状カルシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在する(ASTM D5185)。存在する場合、あらゆるカルシウム清浄剤は、好適には、4000ppm以下、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下の原子状カルシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在する(ASTM D5185)。存在する場合、あらゆるカルシウム清浄剤は、好適には、500~4000ppm、好ましくは750~3000ppm、より好ましくは900~2000ppmの原子状カルシウムを潤滑油組成物に提供するのに十分な量で存在する(ASTM D5185)。
好適には、本開示の全ての態様による潤滑組成物中の清浄剤に由来する金属の総原子量は、5000ppm以下、好ましくは4000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下である(ASTM D5185)。本開示の全ての態様による潤滑油組成物中の清浄剤に由来する金属原子の総量は、好適には、少なくとも500ppm、好ましくは少なくとも800ppm、より好ましくは少なくとも1000ppmである(ASTM D5185)。本開示の全ての態様による潤滑油組成物中の清浄剤に由来する金属原子の総量は、好適には、500~5000ppm、好ましくは500~3000ppm、より好ましくは500~2000ppmである(ASTM D5185)。
【0119】
スルホネート清浄剤は、典型的には、石油の分留から得られるもの等のアルキル置換芳香族炭化水素のスルホン化により、又は芳香族炭化水素のアルキル化により得られるスルホン酸から調製することができる。例として、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル、又はクロロベンゼン、クロロトルエン、及びクロロナフタレン等のそれらのハロゲン誘導体をアルキル化することにより得られるものが挙げられる。アルキル化は、約3個から70個よりも多くの炭素原子を有するアルキル化剤により触媒の存在下で実施することができる。アルカリルスルホネートは、通常、1アルキル置換芳香族部分当たり約9~約80個以上の炭素原子、好ましくは約16~約60個の炭素原子を含む。油溶性スルホネート又はアルカリルスルホン酸は、金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボネート、カルボキシレート、硫化物、水硫化物、ニトレート、ボレート、及びエーテルで中和することができる。金属化合物の量は、最終産物の所望のTBNを考慮して選択されるが、典型的には、化学量論的に必要な量の約100~220質量%の範囲(好ましくは少なくとも125質量%)である。
【0120】
フェノール及び硫化フェノールの金属塩は、酸化物若しくは水酸化物等の適切な金属化合物との反応により調製されるか、又は中性若しくは過塩基性産物は、当技術分野で周知の方法により得ることができる。硫化フェノールは、フェノールを、硫黄又は硫黄含有化合物、例えば硫化水素、モノハロゲン化硫黄、又はジハロゲン化硫黄と反応させて、一般に、2つ以上のフェノールが硫黄含有架橋物により架橋されている化合物の混合物である産物を形成することにより調製することができる。
カルボキシレート清浄剤、例えばサリシレートは、芳香族カルボン酸(C5-100、C9-30、C14-24アルキル置換ヒドロキシ安息香酸等)を、適切な金属化合物、例えば酸化物又は水酸化物と反応させることにより調製することができ、中性又は過塩基性産物は、当技術分野で周知の方法により得ることができる。芳香族カルボン酸の芳香族部分は、窒素及び酸素等のヘテロ原子を含んでいてもよい。好ましくは、この部分は炭素原子のみを含み、より好ましくは、この部分は6個以上の炭素原子を含む。例えば、好ましい部分はベンゼンである。芳香族カルボン酸は、縮合されているか又はアルキレン架橋を介して接続されている、1つ又は複数のベンゼン環等の1つ又は複数の芳香族部分を含んでいてもよい。
油溶性サリチル酸における好ましい置換基は、アルキル置換基である。アルキル置換サリチル酸では、アルキル基は、有利には、5~100個、好ましくは9~30個、特に14~20個の炭素原子を含む。1つよりも多くのアルキル基が存在する場合、アルキル基の全ての平均炭素原子数は、妥当な油溶性を確保するために、少なくとも9であることが好ましい。
【0121】
実施形態では、潤滑油組成物中の原子状清浄剤金属対原子状モリブデンの比は、3:1未満、例えば2:1未満であってもよい。
更に、清浄剤として使用される金属有機及び無機塩基塩は、潤滑油組成物の硫酸灰分含有量に寄与する可能性があるため、本開示の実施形態では、そのような添加剤の量は最小限に抑えられる。低い硫黄レベルを維持するために、サリシレート清浄剤を使用することができ、本明細書の潤滑組成物は、1つ又は複数のサリシレート清浄剤を含んでいてもよい(前記清浄剤は、潤滑組成物の総質量に基づき、好ましくは、0.05~20.0質量%、より好ましくは1.0~10.0質量%の範囲の、最も好ましくは2.0~5.0質量%の範囲の量で使用される)。
本明細書の潤滑組成物の総硫酸灰分含有量は、潤滑組成物の総質量に基づき、ASTM D874により決定して、典型的には、2.0質量%以下、代替的に1.0質量%以下のレベル、代替的に0.8質量%以下のレベルである。
更に、清浄剤の各々は、独立して、ISO3771により測定して10~700mg KOH/g、10~500mg KOH/gの範囲の、代替的に100~650mg KOH/gの範囲、代替的に10~500mg KOH/gの範囲、代替的に30~350mg KOH/gの範囲、代替的に50~300mg KOH/gの範囲のTBN(全塩基価)値を有することが有用である。
【0122】
スルホネート清浄剤(Ca及び/又はMgスルホネート清浄剤等)は、0.1質量%~1.5質量%、又は0.15質量%~1.2質量%、又は0.2質量%~0.9質量%のスルホネート石鹸を潤滑剤組成物に送達する量で存在してもよい。
サリシレート清浄剤(Ca及び/又はMgサリシレート清浄剤等)は、0.3質量%~1.4質量%、又は0.35質量%~1.2質量%、又は0.4質量%~1.0質量%のサリシレート石鹸を潤滑剤組成物に送達する量で存在してもよい。
スルホネート石鹸は、潤滑剤組成物の0.2質量%~0.8質量%の量で存在してもよく、サリシレート石鹸は、潤滑剤組成物の0.3質量%~1.0質量%の量で存在してもよい。
全てのアルカリ土類金属清浄剤石鹸の合計は、潤滑剤組成物の0.6質量%~2.1質量%、又は0.7質量%~1.4質量%の量で存在してもよい。
典型的には、大型ディーゼルエンジンに使用するために配合された潤滑組成物は、潤滑組成物に基づき、約0.1~約10質量%、代替的に約0.5~約7.5質量%、代替的に約1~約6.5質量%の清浄剤を含む。
典型的には、乗用車エンジンに使用するために配合された潤滑組成物は、潤滑組成物に基づき、約0.1~約10質量%、代替的に約0.5~約7.5質量%、代替的に約1~約6.5質量%の清浄剤を含む。
典型的には、ドライブトレイン(例えば、トランスミッション)に使用するために配合された潤滑組成物は、潤滑組成物に基づき、約0.1~約10質量%、代替的に約0.5~約7.5質量%、代替的に約2~約6.5質量%の清浄剤を含む。
【0123】
D.摩擦調整剤
摩擦調整剤は、あらゆる潤滑剤又はそのような物質を含む流体により潤滑される表面の摩擦係数を変更することができるあらゆる1つ又は複数の物質である。摩擦低減剤又は潤滑性作用剤又は油性作用剤としても知られている摩擦調整剤、及び基油、配合潤滑組成物、又は機能性流体の能力を変化させて潤滑表面の摩擦係数を調整する他のそのような作用剤を、必要に応じて、本開示の基油又は潤滑組成物と組み合わせて効果的に使用することができる。摩擦係数を下げる摩擦調整剤を、本開示の基油及び潤滑組成物と組み合わせると特に有利である。
例示的な摩擦調整剤としては、例えば、有機金属化合物若しくは物質又はそれらの混合物が挙げられる。本開示の潤滑油配合物に有用な例示的な有機金属摩擦調整剤としては、例えば、タングステン及び/又はモリブデン化合物、例えば、モリブデンアミン、モリブデンジアミン、有機タングステネート(organotungstenate)、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、モリブデンアミン錯体、及びカルボン酸モリブデン等、並びにそれらの混合物が挙げられる。有用なモリブデン含有化合物の例としては、便利には、ジチオカルバミン酸モリブデン、例えば、国際公開第98/26030号パンフレットに記載の三核モリブデン化合物、モリブデンの硫化物、及びジチオリン酸モリブデンを挙げることができる。
【0124】
他の既知の摩擦調整剤は、油溶性有機モリブデン化合物を含む。そのような有機モリブデン摩擦調整剤は、潤滑油組成物に抗酸化及び耐摩耗特典を提供することもできる。そのような油溶性有機モリブデン化合物の例としては、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、ジチオホスフィネート、キサンテート、チオキサンテート、及び硫化物等、並びにそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいのは、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、アルキルキサントゲン酸モリブデン、及びアルキルチオキサントゲン酸モリブデンである。
加えて、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であってもよい。こうした化合物は、塩基性窒素化合物と反応し、ASTM試験D664又はD2896滴定手順により測定して、典型的には6価である。モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、及び他のアルカリ金属モリブデート、及び他のモリブデン塩、例えばモリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン、又は類似の酸性モリブデン化合物が含まれる。
【0125】
本開示の組成物に有用なモリブデン化合物には、式Mo(R’’OCS24及びMo(R’’SCS24の有機モリブデン化合物が含まれ、式中、R’’は、一般に、1~30個の炭素原子、好ましくは2~12個の炭素原子、最も好ましくは2~12個の炭素原子のアルキル、アリール、アラルキル、及びアルコキシアルキルからなる群から選択される有機基である。特に好ましいものは、モリブデンのジアルキルジチオカルバミン酸塩である。
本開示の潤滑組成物に有用な有機モリブデン化合物の別の群は、三核モリブデン化合物、特に式Mo3SkLnQzのもの、及びそれらの混合物であり、式中Lは、化合物を油に可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を有する独立して選択される配位子であり、nは1~4であり、kは4~7の範囲であり、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテル等の中性電子供与化合物の群から選択され、zは0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。全ての配位子/有機基には、少なくとも21個の炭素原子、例えば少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子が存在するべきである。
【0126】
本開示の全ての態様に有用な潤滑油組成物は、好ましくは、少なくとも10ppm、少なくとも30ppm、少なくとも40ppm、より好ましくは少なくとも50ppmのモリブデンを含む。好適には、本開示の全ての態様に有用な潤滑油組成物は、1000ppm以下、750ppm以下、又は500ppm以下のモリブデンを含む。本開示の全ての態様に有用な潤滑油組成物は、好ましくは、10~1000ppm、例えば30~750ppm、又は40~500ppmのモリブデン(モリブデン原子として測定される)を含む。
Moを含む有用な摩擦調整剤の更なる情報は、米国特許第10,829,712号明細書(第8欄58行目~第11欄31行目)を参照されたい。
本開示の潤滑油組成物には無灰摩擦調整剤が存在してもよく、無灰摩擦調整剤は一般に公知であり、カルボン酸及び無水物をアルカノール及びアミン系摩擦調整剤と反応させることにより形成されるエステルが挙げられる。他の有用な摩擦調整剤としては、一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合で結合した極性末端基(例えば、カルボキシル又はヒドロキシル)が挙げられる。カルボン酸及び無水物とアルカノールとのエステルは、米国特許第4,702,850号明細書に記載されている。他の従来の有機摩擦調整剤の例は、M.Belzerの「Journal of Tribology」(1992年)、114巻、675~682頁、並びにM.Belzer及びS.Jahanmirの「Lubrication Science」(1988年)、1巻、3~26頁に記載されている。典型的には、本開示による潤滑剤中の有機無灰摩擦調整剤の総量は、潤滑油組成物の総質量に基づき5質量%を超えず、好ましくは2質量%を超えず、より好ましくは0.5質量%を超えない。
【0127】
本明細書に記載の潤滑組成物に有用な例示的な摩擦調整剤としては、例えば、アルコキシル化脂肪酸エステル、アルカノールアミド、ポリオール脂肪酸エステル、ホウ酸化グリセロール脂肪酸エステル、脂肪族アルコールエーテル、及びそれらの混合物が挙げられる。
例示的なアルコキシル化脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン及び脂肪酸ポリグリコールエステル等が挙げられるこうしたものとしては、ステアリン酸ポリオキシプロピレン、ステアリン酸ポリオキシブチレン、イソステル酸ポリオキシエチレン、イソステアリン酸ポリオキシプロピレン、及びパルミチン酸ポリオキシエチレン等を挙げることができる。
例示的なアルカノールアミドとしては、例えば、ラウリン酸ジエチルアルカノールアミド及びパルム酸(palmic acid)ジエチルアルカノールアミド等が挙げられる。こうしたものとしては、オレイン酸ジエチルアルカノールアミド、ステアリン酸ジエチルアルカノールアミド、オレイン酸ジエチルアルカノールアミド、ポリエトキシル化ヒドロカルビルアミド、及びポリプロポキシル化ヒドロカルビルアミド等を挙げることができる。
【0128】
ポリオール脂肪酸エステルの例としては、例えば、モノオレイン酸グリセロール、飽和モノ、ジ、及びトリグリセリドエステル、及びモノステアリン酸グリセロール等が挙げられる。こうしたものとしては、ポリオールエステル及びヒドロキシル含有ポリオールエステル等を挙げることができる。
例示的なホウ酸化グリセロール脂肪酸エステルとしては、例えば、ホウ酸化グリセロールモノオレエート、ホウ酸化飽和モノ、ジ、及びトリグリセリドエステル、及びホウ酸化グリセロールモノステアレート等が挙げられる。グリセロールポリオールに加えて、こうしたものとしては、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、及びソルビタン等を挙げることができる。こうしたエステルは、ポリオールモノカルボン酸エステル、ポリオールジカルボン酸エステル、及び場合によってはポリオールトリカルボン酸エステルであってもよい。好ましいものは、モノオレイン酸グリセロール、ジオレイン酸グリセロール、トリオレイン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロール、及びトリステアリン酸グリセロール、並びに対応するモノパルミチン酸グリセロール、ジパルミチン酸グリセロール、及びトリパルミチン酸グリセロール、並びにそれぞれのイソステアレート及びリノレアート等であってもよい。本明細書では、特に、基礎となるポリオールとしてグリセロールが使用される、ポリオールのエトキシル化、プロポキシル化、及び/又はブトキシル化脂肪酸エステルが有用である。
【0129】
例示的な脂肪族アルコールエーテルとしては、例えば、ステアリルエーテル及びミリスチルエーテル等が挙げられる。C3~C50の炭素数を有するものを含むアルコールを、エトキシル化、プロポキシル化、又はブトキシル化して、対応する脂肪アルキルエーテルを形成することができる。基礎となるアルコール部分は、好ましくは、ステアリル、ミリスチル、C11~C13炭化水素、オレイル、及びイソステリル等であってもよい。
摩擦調整剤の有用な濃度は、0.01質量%~5質量%、又は約001質量%~約2.5質量%、又は約0.05質量%~約1.5質量%、又は約0.051質量%~約1質量%の範囲であってもよい。モリブデン含有物質の濃度は、多くの場合、Mo金属濃度の点で記述される。Moの有利な濃度は、25ppm~700ppmの範囲又はそれよりも高くてもよく、多くの場合、好ましい範囲は50~200ppmである。あらゆるタイプの摩擦調整剤を単独で使用してもよく、又は本開示の物質と混合して使用してもよい。多くの場合、2つ以上の摩擦調整剤の混合物、又は摩擦調整剤と代替的表面活性物質との混合物も望ましい。本明細書では、例えば、Mo含有化合物と、モノオレイン酸グリセロール等のポリオール脂肪酸エステルとの組合せが有用である。
【0130】
E.抗酸化剤
抗酸化剤は、役務中の基油の酸化劣化を遅延させる。そのような劣化は、金属表面への堆積物、スラッジの存在、及び潤滑剤の粘度増加等をもたらす可能性がある。幅広く様々な酸化防止剤が潤滑油組成物に有用である。例えば、Lubricants and Related Products、Klamann、Wiley VCH、1984年;米国特許第4,798,684号明細書及び第5,084,197号明細書を参照されたい。
有用な抗酸化剤としては、ヒンダードフェノールが挙げられる。こうしたフェノール系抗酸化剤は、無灰(無金属)フェノール系化合物、又はある特定のフェノール系化合物の中性若しくは塩基性金属塩であってもよい。典型的なフェノール系抗酸化剤化合物は、立体障害ヒドロキシル基を含むヒンダードフェノール系化合物であり、そうしたものとしては、ヒドロキシル基が互いにo位又はp位にあるジヒドロキシアリール化合物の誘導体が挙げられる。典型的なフェノール系抗酸化剤としては、C6+アルキル基で置換されたヒンダードフェノール及びこうしたヒンダードフェノールのアルキレンカップリング誘導体が挙げられる。このタイプのフェノール系物質の例としては、2-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;2-t-ブチル-4-オクチルフェノール;2-t-ブチル-4-ドデシルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-ドデシルフェノール;2-メチル-6-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール;及び2-メチル-6-t-ブチル-4-ドデシルフェノールが挙げられる。他の有用なヒンダードモノフェノール系抗酸化剤としては、例えば、ヒンダード2,6-ジ-アルキル-フェノール系プロピオン酸エステル誘導体を挙げることができる。ビス-フェノール系抗酸化剤も本明細書で有利に使用することができる。オルトカップリングフェノールの例としては、2,2’-ビス(4-ヘプチル-6-t-ブチル-フェノール);2,2’-ビス(4-オクチル-6-t-ブチル-フェノール);及び2,2’-ビス(4-ドデシル-6-t-ブチル-フェノール)が挙げられる。パラカップリングビスフェノールとしては、例えば、4,4’-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-フェノール)及び4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-フェノール)が挙げられる。
【0131】
また、有効量の1つ又は複数の触媒性抗酸化剤を使用することができる。触媒性抗酸化剤は、有効量のa)1つ若しくは複数の油溶性ポリ金属有機化合物;及び有効量のb)1つ若しくは複数の置換N,N’-ジアリール-o-フェニレンジアミン化合物又はc)1つ若しくは複数のヒンダードフェノール化合物;又はb)及びc)の両方の組合せを含む。本明細書で有用な触媒性抗酸化剤は、米国特許第8,048,833号明細書に更に詳しく記載されている。
使用することができる非フェノール系酸化防止剤としては、芳香族アミン抗酸化剤を挙げることができ、それらを、そのまま又はフェノール系物質との組合せのいずれかで使用することができる。非フェノール系抗酸化剤の典型的な例としては、式R8910Nの芳香族モノアミン等のアルキル化及び非アルキル化芳香族アミンが挙げられ、式中、R8は、脂肪族基、芳香族基、又は置換芳香族基であり、R9は、芳香族基又は置換芳香族基であり、R10は、H、アルキル、アリール、又はR11S(O)XR12であり、式中、R11は、アルキレン基、アルケニレン基、又はアラルキレン基であり、R12は、アルキル基、又はアルケニル基、アリール基、若しくはアルカリル基であり、xは、0、1、又は2である。脂肪族基R8は、1~約20個の炭素原子を含んでいてもよく、好ましくは、約6~12個の炭素原子を含む。脂肪族基は、典型的には、飽和脂肪族基である。好ましくは、R8及びR9は両方とも芳香族基又は置換芳香族基であり、芳香族基は、ナフチル等の縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基R8及びR9は、S等の他の基と一緒になっていてもよい。
【0132】
典型的な芳香族アミン抗酸化剤は、少なくとも約6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシルが挙げられる。一般に、脂肪族基は、約14個よりも多くの炭素原子を含まないだろう。本組成物に有用なアミン抗酸化剤の一般的なタイプとしては、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジル、及びジフェニルフェニレンジアミンが挙げられる。2つ以上の芳香族アミンの混合物も有用である。ポリマー性アミン抗酸化剤も使用することができる。本開示に有用な芳香族アミン抗酸化剤の特定の例としては、p,p’-ジオクチルジフェニルアミン;t-オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン;フェニル-アルファ-ナフチルアミン;及びp-オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミンが挙げられる。
【0133】
硫黄含有抗酸化剤も本発明に有用である。特に、1つ又は複数の油溶性又は油分散性硫黄含有抗酸化剤を、抗酸化添加剤として使用することができる。例えば、硫化アルキルフェノール及びそれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩も、本明細書に有用な抗酸化剤である。好適には、本開示の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総質量に基づき、0.02~0.2、好ましくは0.02~0.15、更により好ましくは0.02~0.1、更により好ましくは0.04~0.1質量%の硫黄を、潤滑油組成物に提供する量の1つ又は複数の硫黄含有抗酸化剤を含んでいてもよい。任意選択で、油溶性又は油分散性硫黄含有抗酸化剤は、硫化C4~C25オレフィン、硫化脂肪族(C7~C29)ヒドロカルビル脂肪酸エステル、無灰硫化フェノール系抗酸化剤、硫黄含有有機モリブデン化合物、及びそれらの組合せから選択される。本明細書の抗酸化剤として有用な硫化物質に関する更なる情報は、米国特許第10,731,101号明細書(第15欄55行目~第22欄12行目)を参照されたい。
【0134】
本明細書に有用な抗酸化剤としては、ヒンダードフェノール及び/又はアリールアミンが挙げられる。こうした抗酸化剤は、タイプ毎に個々に又は互いに組み合わせて使用することができる。
典型的な抗酸化剤としては、Irganox(商標)L67、Ethanox(商標)4702、Lanxess Additin(商標)RC7110;Ethanox(商標)4782J;Irganox(商標)1135、Irganox(商標)5057、硫化ラード油、及びパーム油脂肪酸メチルエステルが挙げられる。
抗酸化添加剤は、潤滑組成物の質量に基づき、約0.01~10(代替的に約0.01~5質量%、代替的に0.01~3)質量%、代替的に0.03~5質量%、代替的に0.05~3質量%未満の量で使用することができる。
本開示による組成物は、抗酸化剤としての二次的効果も有する、様々な表記機能を有する添加剤を含んでいてもよい(例えば、リン含有耐摩耗剤(ZDDP等)は、抗酸化効果も示すことができる)。こうした添加剤は、本明細書において潤滑油組成物又は濃縮物中の抗酸化剤の量を決定する目的では、抗酸化剤には含まれない。
【0135】
F.流動点降下剤
従来の流動点降下剤(潤滑油流動向上剤としても知られている)を、必要に応じて、本開示の組成物に添加することができる。こうした流動点降下剤を本開示の潤滑組成物に添加して、流体が流動することになるか又は流体を注ぐことができる最低温度を下げることができる。好適な流動点降下剤の例としては、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ハロパラフィンワックス及び芳香族化合物の縮合産物、ビニルカルボキシレートポリマー、並びにジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステル、並びにアリルビニルエーテルが挙げられる。米国特許第1,815,022号明細書;第2,015,748号明細書;第2,191,498号明細書;第2,387,501号明細書;第2,655,479号明細書;第2,666,746号明細書;第2,721,877号明細書;第2,721,878号明細書;及び第3,250,715号明細書には、有用な流動点降下剤及び/又はその調製が記載されている。そのような添加剤は、潤滑組成物の質量に基づき、約0.01~5質量%、好ましくは約0.01~1.5質量%の量で使用することができる。
【0136】
G.消泡剤
有利には、消泡剤を、本明細書に記載の潤滑剤組成物に添加することができる。こうした作用剤は、安定気泡の形成を防止又は遅延させる。シリコーン及び/有機ポリマーが典型的な消泡剤である。例えば、シリコン油又はポリジメチルシロキサン等のポリシロキサンは、消泡特性を提供する。
消泡剤は市販されており、少量で、例えば5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、例えば5質量%~0.1ppm、例えば3質量%~0.5ppm、例えば1質量%~10ppmで使用することができる。
例えば、潤滑油組成物は、例えば、ポリジアルキルシロキサン等のポリアルキルシロキサンを含む消泡剤であって、アルキルはC1~C10アルキル基である消泡剤、例えば、シリコーン油としても知られているポリジメチルシロキサン(PDMS)を含んでいてもよい。代替的に、シロキサンは、ポリ(R3)シロキサンであり、R3は、典型的には1~20個の炭素原子を有する、1つ又は複数の同一であるか又は異なる直鎖状、分岐鎖状、又は環状ヒドロカルビル、例えばアルキル又はアリールである。例えば、潤滑油組成物は、下記式1によるポリマー性シロキサン化合物を含み、式中、R1及びR2は、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、又はデシル、フェニル、ナフチル、アルキル置換フェニル、又はそれらの異性体(メチル、フェニル等)であり、nは、2~1000、例えば50~450、代替的に40~100である。
【0137】
加えて又は代替的に、潤滑油組成物は、ポリエーテル(例えば、エチレン-プロピレンオキシドコポリマー)、長鎖ヒドロカルビル(例えば、C11~C100アルキル)、又はアリール(例えば、C6~C14アリール)等の有機基で修飾されたシロキサン等の、有機修飾シロキサン(OMS)を含んでいてもよい。例えば、潤滑油組成物は、式1による有機修飾シロキサン化合物を含み、式中、nは、2~2000、例えば50~450(代替的に40~100)であり、R1及びR2は同一であるか又は異なり、任意選択で、R1及びR2の各々は、独立して、ポリエーテル(例えば、エチレン-プロピレンオキシドコポリマー)、長鎖ヒドロカルビル(例えば、C11~C100アルキル)、又はアリール(例えば、C6~C14アリール)から選択される有機基等の有機基である。好ましくは、R1及びR2の一方はCH3である。
【化7】
式1
【0138】
潤滑剤組成物の総質量に基づき、式1によるシロキサンは、約0.1~約30ppm未満のSi、又は約0.1~約25ppmのSi、又は約0.1~約20ppmのSi、又は約0.1~約15ppmのSi、又は約0.1~約10ppmのSiを提供するように組み込まれている。より好ましくは、式1によるシロキサンは、約3~10ppmのSiの範囲にある。
【0139】
一実施形態では、本明細書で有用なシリコーン消泡剤は、Dow Corning FS-1265(1000センチストーク)、Dow Corning DC-200、及びUnion Carbide UC-L45等が、Dow Corning Corporation社及びUnion Carbide Corporation社から入手可能である。本明細書で有用なシリコーン消泡剤としては、ポリジメチルシロキサン、フェニル-メチルポリシロキサン、直鎖状、環状、又は分岐鎖状シロキサン、シリコーンポリマー及びコポリマー、並びに/有機シリコーンコポリマーが挙げられる。また、ミシガン州ファーミントンヒルズのOSI Specialties,Inc.社から入手可能なシロキサンポリエーテルコポリマー消泡剤を代用するか又は含めることができる。そのような物質の1つは、SILWET-L-7220として販売されている。
【0140】
アクリレートポリマー消泡剤も本明細書で使用することができる。典型的なアクリレート消泡剤としては、PC-1244として知られている、Monsanto Polymer Products Co.社から入手可能なポリアクリレート消泡剤が挙げられる。本明細書で有用な好ましいアクリレートポリマー消泡剤は、Dorf Ketl社から市販されており、Mobilad(商標)C402とも呼ばれるPX(商標)3841(つまり、アルキルアクリレートポリマー)である。
実施形態では、シリコーン消泡剤及びアクリレート消泡剤の組合せを、例えば、約5:1~約1:5のシリコーン消泡剤対アクリレート消泡剤の質量比で使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2021/0189283号明細書を参照されたい。
【0141】
H.粘度調整剤
粘度調整剤(粘度指数向上剤又は粘度向上剤とも呼ばれる)を、本明細書に記載の潤滑組成物に含めることができる。粘度調整剤は、潤滑剤に、高温及び低温稼動能を提供する。こうした添加剤は、高温での剪断安定性及び低温での許容可能な粘度を付与する。好適な粘度調整剤としては、高分子量炭化水素、ポリエステル、並びに粘度調整剤及び分散剤の両方として機能することできる粘度調整分散剤が挙げられる。こうしたポリマーの典型的な分子量は、約10,000~1,500,000g/mol、より典型的には約20,000~1,200,000g/mol、更により典型的には約50,000~1,000,000g/molである。
好適な粘度調整剤の例は、メタクリレート、ブタジエン、オレフィン、又はアルキル化スチレンの直鎖状又は星形ポリマー及びコポリマーである。ポリイソブチレンは、一般的に使用される粘度調整剤である。別の好適な粘度調整剤は、ポリメタクリレート(例えば、種々の鎖長のアルキルメタクリレートのコポリマー)であり、その一部の配合物は流動点降下剤としての役目も果たす。他の好適な粘度調整剤としては、エチレン及びプロピレンのコポリマー、スチレン及びイソプレンの水素化ブロックコポリマー、並びにポリアクリレート(例えば、種々の鎖長のアクリレートのコポリマー)が挙げられる。特定の例としては、分子量50,000~200,000g/molの、スチレン-イソプレン又はスチレン-ブタジエン系ポリマーが挙げられる。
粘度調整剤として有用なコポリマーとしては、Chevron Oronite Company LLC社から商品名「PARATONE(商標)」で市販されているもの(「PARATONE(商標)8921」、PARATONE(商標)68231、及び「PARATONE(商標)8941」等);Afton Chemical Corporation社から商品名「HiTEC(商標)」で市販されているもの(HiTEC(商標)5850B及びHiTEC(商標)5777等);及びThe Lubrizol Corporation社から商品名「Lubrizol(商標)7067C」で市販されているものが挙げられる。本明細書で粘度調整剤として有用な水素化ポリイソプレン星形ポリマーとしては、Infineum International Limited社から、例えば、商品名「SV200(商標)」及び「SV600(商標)」で市販されているものが挙げられる。本明細書で粘度調整剤として有用な水素化ジエン-スチレンブロックコポリマーは、Infineum International Limited社から、例えば商品名「SV50(商標)」で市販されている。
【0142】
本明細書で粘度調整剤として有用なポリマーとしては、Evnoik Industries社から商品名「Viscoplex(商標)」(例えば、Viscoplex(商標)6-954)で入手可能なもの等の直鎖状ポリメタクリレート又はポリアクリレートポリマー等のポリメタクリレート又はポリアクリレートポリマー、又はLubrizol Corporation社から商品名Asteric(商標)(例えば、Lubrizol(商標)87708及びLubrizol(商標)87725)で入手可能な星形ポリマーが挙げられる。
本明細書で粘度調整剤として有用なビニル芳香族含有ポリマーは、ビニル芳香族炭化水素モノマー、例えばスチレン系モノマー、例えばスチレンから誘導することができる。本明細書で有用な例示的なビニル芳香族含有コポリマーは、下記の一般式:A-Bにより表すことができ、式中、Aは、主としてビニル芳香族炭化水素モノマー(スチレン等)から誘導されるポリマーブロックであり、Bは、主として共役ジエンモノマー(イソプレン等)から誘導されるポリマーブロックである。
粘度調整剤として有用なビニル芳香族含有ポリマーは、100℃で20cSt以下、例えば15cSt以下、例えば12cSt以下の動粘度を有してもよいが、例えば100℃で40cSt以上、例えば100cSt以上、例えば1000cSt以上、例えば1000~2000cStのより高い動粘度に希釈されてもよい(グループI、II、及び/又はIIIベースストック等で)。
典型的には、粘度調整剤は、配合潤滑剤組成物の総質量に基づき、約0.01~約10質量%、例えば約0.1~約7質量%、例えば0.1~約4質量%、例えば約0.2~約2質量%、例えば約0.2~約1質量%、及び例えば約0.2~約0.5質量%の量で使用することができる。
粘度調整剤は、典型的には、大量の希釈油に濃縮物として添加される。「納品時の」粘度調整剤は、典型的には、ポリメタクリレート若しくはポリアクリレートポリマーの場合は20質量%~75質量%の活性ポリマー、又はオレフィンコポリマーの場合は8質量%~20質量%の活性ポリマー、水素化ポリイソプレン星形ポリマー、又は水素化ジエン-スチレンブロックコポリマーを「納品時の」ポリマー濃縮物中に含む。
【0143】
I.分散剤
エンジン作動中に、油不溶性酸化副産物が生成される。分散剤は、こうした副産物を溶液中に保持することを支援し、したがって金属表面への副産物の堆積を軽減する。本明細書の潤滑組成物の配合に使用される分散剤は、性質が無灰であってもよく又は灰分形成性であってもよい。好ましくは、分散剤は無灰である。いわゆる無灰分散剤は、燃焼時に灰分を実質的に形成しない有機物質である。例えば、非金属含有分散剤又はホウ酸化無金属分散剤は、無灰とみなされる。対照的に、金属含有清浄剤は燃焼時に灰分を形成する傾向がある。
本明細書に有用な分散剤は、典型的には、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を含む。極性基は、典型的には、窒素、酸素、又はリンの少なくとも1つの元素を含む。典型的な炭化水素鎖は、40~500個、例えば50~400個の炭素原子を含む。
【0144】
(ポリ)アルケニルコハク酸誘導体の分散剤
特に有用な種類の分散剤としては、典型的には長鎖ヒドロカルビル置換コハク酸化合物、通常はヒドロカルビル置換無水コハク酸と、ポリヒドロキシ又はポリアミノ化合物との反応により生成される(ポリ)アルケニルコハク酸誘導体が挙げられる。油への溶解性を付与する分子の親油性部分を構成する長鎖ヒドロカルビル基は、多くの場合、ポリイソブチレン基である(典型的には、ポリイソブチレン基等の長鎖ヒドロカルビル基は、400~3000g/mol、例えば450~2500g/molのMnを有する)。このタイプの分散剤の多くの例は、商業的に及び文献にて周知である。そのような分散剤が記載されている米国特許の例としては、米国特許第3,172,892号明細書;第3,215,707号明細書;第3,219,666号明細書;第3,316,177号明細書;第3,341,542号明細書;第3,444,170号明細書;第3,454,607号明細書;第3,541,012号明細書;第3,630,904号明細書;第3,632,511号明細書;第3,787,374号明細書;及び第4,234,435号明細書が挙げられる。他のタイプの分散剤は、米国特許第3,036,003号明細書;第3,200,107号明細書;第3,254,025号明細書;第3,275,554号明細書;第3,438,757号明細書;第3,454,555号明細書;第3,565,804号明細書;第3,413,347号明細書;第3,697,574号明細書;第3,725,277号明細書;第3,725,480号明細書;第3,726,882号明細書;第4,454,059号明細書;第3,329,658号明細書;第3,449,250号明細書;第3,519,565号明細書;第3,666,730号明細書;第3,687,849号明細書;第3,702,300号明細書;第4,100,082;第5,705,458号明細書が挙げられる。本明細書で有用な分散剤の更なる説明は、例えば、欧州特許出願第0 471 071号明細書及び第0 451 380号明細書に見出され、こうした文献は、この目的のために参照される。
【0145】
ヒドロカルビル置換コハク酸及びヒドロカルビル置換無水コハク酸誘導体は有用な分散剤である。特に、炭化水素置換コハク酸又は無水物化合物(典型的には、炭化水素置換基中に少なくとも25個の炭素原子、例えば28~400個の炭素原子を有する)と、少なくとも1当量のポリヒドロキシ又はポリアミノ化合物(アルキレンアミン等)と反応させることにより調製されるコハク酸イミド、コハク酸エステル、又はコハク酸エステルアミドは、本明細書において特に有用である。ヒドロカルビル置換コハク酸及びヒドロカルビル置換無水コハク酸誘導体は、少なくとも400g/mol、例えば少なくとも900g/mol、例えば少なくとも1500g/mol、例えば400~4000g/mol、例えば800~3000、例えば2000~2800g/mol、例えば約2100~2500g/mol、及び例えば約2200~約2400g/molの数平均分子量を有してもよい。
【0146】
本明細書で特に有用であるコハク酸イミドは、1)ポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)等のヒドロカルビル置換無水コハク酸と、2)ポリアミン(PAM)との縮合反応により形成される。好適なポリアミンの例としては、ポリヒドロカルビルポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、ヒドロキシ置換ポリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン、及びそれらの組合せが挙げられる。ポリアミンの例としては、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA、pentaethylenehaxamine)、N-フェニル-p-フェニレンジアミン(ADPA)、及び1分子当たり平均で5、6、7、8、又は9個の窒素を有する他のポリアミンが挙げられる。1ポリアミン分子当たりの窒素原子の平均数が7個よりも大きい混合物は、一般的に、重質ポリアミン又はH-PAMと呼ばれ、Dow Chemical社のHPA(商標)及びHPA-X(商標)、Huntsman Chemical社らのE-100(商標)等の商品名で市販されている場合がある。ヒドロキシ置換ポリアミンの例としては、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン等のN-ヒドロキシアルキル-アルキレンポリアミン、及び/又は米国特許第4,873,009号明細書に記載のタイプのN-ヒドロキシアルキル化アルキレンジアミンが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリアミンの例としては、約200~約5000g/molの平均Mnを有するポリオキシエチレン並びに/又はポリオキシプロピレンジアミン及びトリアミン(並びにそれらのコオリゴマー)が挙げられる。このタイプの製品は、Jeffmine(商標)という商品名で市販されている。有用なコハク酸イミドの代表的な例は、米国特許第3,087,936号明細書;第3,172,892号明細書;第3,219,666号明細書;第3,272,746号明細書;第3,322,670号明細書;第3,652,616号明細書;第3,948,800号明細書;及び第6,821,307号明細書;並びにカナダ特許第1,094,044号明細書に示されている。
【0147】
分散剤は、1つ又は複数の、任意選択でホウ酸化されたより高い分子量(Mn 1600g/モル以上、例えば1800~3000g/mol)のコハク酸イミド、及び1つ又は複数の、任意選択でホウ酸化されたより低い分子量(Mn 1600g/mol未満)のコハク酸イミドを含んでいてもよく、より高い分子量は、1600~3000g/mol、例えば1700~2800g/mol、例えば1800~2500g/mol、例えば1850~2300g/molであってもよく、より低い分子量は、600~1600g/mol未満、例えば650~1500g/mol、例えば700~1400g/mol、例えば800~1300g/mol、例えば850~1200g/mol、例えば900~1150g/mol、例えば900~1000g/molであってもよい。より高分子量のコハク酸イミド分散剤は、潤滑組成物中に、0.5~10質量%、又は0.8~6質量%、又は1.0~5質量%、又は1.5~5質量%、又は1.5~4.0質量%で存在していてもよく、より低い分子量のコハク酸イミド分散剤は、潤滑組成物中に、1~5質量%、又は1.5~4.8質量%、又は1.8~4.6質量%、又は1.9~4.6質量%、又は2質量%以上、例えば2~5質量%で存在していてもよい。より低い分子量のコハク酸イミドは、より高い分子量のコハク酸イミドと、500g/mol以上、例えば750g/mol以上、例えば1000g/mol以上、例えば1200g/mol、例えば500~3000g/mol、例えば750~2000g/mol、例えば1000~1500g/molだけ異なっていてもよい。
【0148】
分散剤として有用なコハク酸エステルとしては、ヒドロカルビル置換無水コハク酸とアルコール又はポリオールとの縮合反応により形成されるものが挙げられる。例えば、ヒドロカルビル置換無水コハク酸とペンタエリトリトールとの縮合産物は、有用な分散剤である。
本明細書で有用なコハク酸エステルアミドは、ヒドロカルビル置換無水コハク酸とアルカノールアミンとの縮合反応により形成される。好適なアルカノールアミンとしては、エトキシル化ポリアルキルポリアミン、プロポキシル化ポリアルキルポリアミン、及びポリアルケニルポリアミン、例えばポリエチレンポリアミン、及び/又はプロポキシル化ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。代表的な例は、米国特許第4,426,305号明細書に示されている。
ヒドロカルビル架橋アリールオキシアルコールのヒドロカルビル置換無水コハク酸(PIBSA等)エステルも、本明細書での分散剤として有用である。そのような分散剤に関する情報は、米国特許第7,485,603号明細書、特に第2欄65行目~第6欄22行目及び第23欄40行目~第26欄46行目を参照されたい。特に、メチレン架橋ナフチルオキシエタノールのPIBSAエステル(つまり、2-ヒドロキシエチル-1-ナフトールエーテル(又はナフトールのヒドロキシ末端化エチレンオキシドオリゴマーエーテル))は本明細書で有用である。
【0149】
前述の段落で使用されるヒドロカルビル置換無水コハク酸の分子量は、典型的には、350~4000g/mol、例えば400~3000g/mol、例えば450~2800g/mol、例えば800~2500g/molの範囲であるだろう。上記の(ポリ)アルケニルコハク酸誘導体は、硫黄、酸素、ホルムアルデヒド、カルボン酸、例えばオレイン酸等の種々の試薬と後反応させてもよい。
分散剤は、組成物の0.1質量%~20質量%、潤滑油組成物の例えば0.2~15質量%、例えば0.25~10質量%、例えば0.3~5質量%、例えば1.0質量%~3.0質量%で潤滑剤中に存在してもよい。
上記の(ポリ)アルケニルコハク酸誘導体は、ホウ酸、ホウ酸エステル、又は高ホウ酸化分散剤等のホウ酸化合物と後反応させて、一般に分散剤反応産物1モル当たり約0.1~約5モルのホウ素を有するホウ酸化分散剤を形成することもできる。
本明細書で有用な分散剤としては、モノコハク酸イミド、ビスコハク酸イミド、並びに/又はモノコハク酸イミド及びビスコハク酸イミドの混合に由来する誘導体を含むホウ酸化コハク酸イミドが挙げられ、ヒドロカルビルコハク酸イミドは、約300~約5000g/mol、若しくは約500~約3000g/mol、若しくは約1000~約2000g/molのMnを有するポリイソブチレン等のヒドロカルビレン基又は高末端ビニル基を有することが多いそのようなヒドロカルビレン基の混合物から誘導される。
【0150】
ホウ素含有分散剤は、潤滑組成物の0.01質量%~20質量%、又は0.1質量%~15質量%、又は0.1質量%~10質量%、又は0.5質量%~8質量%、又は1.0質量%~6.5質量%、又は0.5質量%~2.2質量%で存在してもよい。
ホウ素含有分散剤は、15ppm~2000ppm、又は25ppm~1000ppm、又は40ppm~600ppm、又は80ppm~350ppmのホウ素を組成物に送達する量で存在してもよい。
ホウ酸化分散剤は、非ホウ酸化分散剤と組み合わせて使用することができ、非ホウ酸化分散剤と同じ化合物であってもよく又は異なる化合物であってもよい。一実施形態では、潤滑組成物は、1つ又は複数のホウ素含有分散剤及び1つ又は複数の非ホウ酸化分散剤を含んでいてもよく、分散剤の総量は、潤滑組成物の0.01質量%~20質量%、又は0.1質量%~15質量%、0.1質量%~10質量%、又は0.5質量%~8質量%、又は1.0質量%~6.5質量%、又は0.5質量%~2.2質量%であってもよく、ホウ酸化分散剤対非ホウ酸化分散剤の比は、1:10~10:1(質量:質量)、又は1:5~3:1、又は1:3~2:1であってもよい。
【0151】
分散剤は、1つ又は複数のホウ酸化又は非ホウ酸化ポリ(アルケニル)コハク酸イミド(「PIBSA-PAM」)であって、ポリアルケニルはポリイソブチレンから誘導され、イミドはポリアミンから誘導される、1つ又は複数のホウ酸化又は非ホウ酸化ポリ(アルケニル)コハク酸イミドを含んでいてもよい。
分散剤は、1つ又は複数のPIBSA-PAMであって、PIBは、600~5000、例えば700~4000、例えば800~3000、例えば900~2500g/molのMnを有するポリイソブチレンから誘導され、ポリアミンは、ヒドロカルビル置換ポリアミン、例えば、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、N-フェニル-p-フェニレンジアミン(ADPA)、及び1分子当たり平均で5、6、7、8、又は9個の窒素原子を有する他のポリアミンから誘導される、1つ又は複数のPIBSA-PAMを含んでいてもよい。分散剤は、典型的には、最大で4質量%、例えば1~3質量%のレベルでホウ酸化されていてもよい。分散剤は、1つ又は複数のホウ酸化PIBSA-PAM及び1つ又は複数の非ホウ酸化PIBSA-PAMを含んでもよい。分散剤は、700~1800g/mol(例えば、800~1500g/mol)のMnを有するPIBから誘導される1つ又は複数のホウ酸化PIBSA-PAM、及び1800よりも大きく5000g/molまで(例えば、2000~3000g/mol)のMnを有するPIBから誘導される1つ又は複数の非ホウ酸化PIBSA-PAMを含んでいてもよい。分散剤は、700~1800g/mol(例えば、800~1500g/mol)のMnを有するPIBから誘導される1つ又は複数の非ホウ酸化PIBSA-PAM、及び1800よりも大きく5000g/molまで(例えば、2000~3000g/mol)のMnを有するPIBから誘導される1つ又は複数のホウ酸化PIBSA-PAMを含んでいてもよい。
【0152】
分散剤は、700~5000g/mol(例えば、800~3000g/mol)のMnを有するPIBから誘導されるPIBSA及び700~5000g/molのMnを有するPIBから誘導される1つ又は複数のホウ酸化又は非ホウ酸化PIBSA-PAMを含んでいてもよい。
分散剤は、700~5000g/mol(例えば、800~3000g/mol)のMnを有するPIBから誘導されるPIBSA、及び700~1800g/mol(例えば、800~1500g/mol)のMnを有するPIBから誘導される1つ又は複数のホウ酸化PIBSA-PAM、及び1800よりも大きく5000g/molまで(例えば、2000~3000g/mol)のMnを有するPIBから誘導される1つ又は複数の非ホウ酸化PIBSA-PAMを含んでいてもよい。分散剤は、700~5000g/mol(例えば、800~3000g/mol)のMnを有するPIBから誘導されるPIBSA、700~1800g/mol(例えば、800~1500g/mol)のMnを有するPIBから誘導される1つ又は複数の非ホウ酸化PIBSA-PAM、及び1800よりも大きく5000g/molまで(例えば、2000~3000g/mol)のMnを有するPIBから誘導される1つ又は複数のホウ酸化PIBSA-PAMを有してもよい。
【0153】
分散剤は、1つ又は複数のホウ酸化又は非ホウ酸化PIBSA-PAM、及びヒドロカルビル架橋アリールオキシアルコールの1つ又は複数のPIBSA-エステルを含んでもよい。
分散剤は、1つ又は複数のホウ酸化PIBSA-PAM及び1つ又は複数の非ホウ酸化PIBSA-PAMを含んでもよい。
分散剤は、1つ又は複数の、任意選択でホウ酸化されたより高い分子量(Mn 1600g/mol以上、例えば1800~3000g/mol)のPIBSA-PAM、及び1つ又は複数の、任意選択でホウ酸化されたより低い分子量(Mn 1600g/mol未満)のPIBSA-PAMを含んでいてもよく、より高い分子量は、1600~3000g/mol、例えば1700~2800g/mol、例えば1800~2500g/mol、例えば1850~2300g/molであってもよく、より低い分子量は、600~1600g/mol未満、例えば650~1500g/mol、例えば700~1400g/mol、例えば800~1300g/mol、例えば850~1200g/mol、例えば900~11500g/mol、例えば900~100g/molであってもよい。より高分子量のPIBSA-PAM分散剤は、潤滑組成物中に、0.5~10質量%、又は0.8~6質量%、又は1.0~5質量%、又は1.5~5質量%、又は1.5~4.0質量%で存在していてもよく、より低い分子量のPIBSA-PAM分散剤は、潤滑組成物中に、1~5質量%、又は1.5~4.8質量%、又は1.8~4.6質量%、又は1.9~4.6質量%、又は2質量%以上、例えば2~5質量%で存在していてもよい。
【0154】
マンニッヒ塩基の分散剤
本明細書で有用なマンニッヒ塩基分散剤は、典型的には、アミン成分、アルキルフェノール等のヒドロキシ芳香族化合物(アルキル置換等の、置換又は非置換)、及びホルムアルデヒド等のアルデヒドの反応から製作される。米国特許第4,767,551号明細書及び第10,899,986号明細書を参照されたい。オレイン酸及びスルホン酸等の加工助剤及び触媒も、反応混合物の一部とすることができる。代表的な例は、米国特許第3,697,574号明細書;第3,703,536号明細書;第3,704,308号明細書;第3,751,365号明細書;第3,756,953号明細書;第3,798,165号明細書;第3,803,039号明細書;第4,231,759号明細書;第9,938,479号明細書;第7,491,248号明細書;及び第10,899,986号明細書、並びに国際公開第01/42399号パンフレットに示されている。
【0155】
ポリメタクリレート又はポリアクリレート誘導体の分散剤
ポリメタクリレート又はポリアクリレート誘導体は、本明細書で有用な別の種類の分散剤である。こうした分散剤は、典型的には、窒素含有モノマー、及びエステル基に5~25個の炭素原子を含むメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルを反応させることにより調製される。代表的な例は、米国特許第2,100,993号明細書及び第6,323,164号明細書に示されている。ポリメタクリレート及びポリアクリレート分散剤は、典型的には、より低分子量である。
本開示の潤滑組成物は、典型的には、組成物の0.1質量%~20質量%、例えば、潤滑油組成物の0.2~15質量%、例えば0.25~10質量%、例えば0.3~5質量%、2.0質量%~4.0質量%の分散剤を含む。代替的に、分散剤は、潤滑組成物の0.1質量%~5質量%、又は0.01質量%~4質量%で存在してもよい。
【0156】
本明細書で有用な分散剤に関する更なる情報は、米国特許第10,829,712号明細書の第13欄36行目~第16欄67行目、及び米国特許第7,485,603号明細書の第2欄65行目~第6欄22行目、第8欄25行目~第14欄53行目、及び第23欄40行目~第26欄46行目を参照されたい。
本開示による組成物は、分散剤としての二次効果も有する、様々な表記機能を有する添加剤を含んでいてもよい(例えば、上記に記載の成分B官能化ポリマーも分散剤効果を示すことができる)。こうした添加剤は、本明細書において潤滑油組成物又は濃縮物中の分散剤の量を決定する目的では、分散剤には含まれない。
【0157】
J.腐食防止剤/防錆剤
腐食防止剤は、金属の腐食を低減するために使用することができ、代替的に金属不活化剤又は金属不動態化剤とも呼ばれることが多い。一部の腐食防止剤は、代替的に、抗酸化剤として特徴付けられる場合もある。
好適な腐食防止剤としては、トリアゾール(例えば、ベンゾトリアゾール)、置換チアジアゾール、イミダゾール、チアゾール、テトラゾール、ヒドロキシキノリン、オキサゾリン、イミダゾリン、チオフェン、インドール、インダゾール、キノリン、ベンゾキサジン、ジチオール、オキサゾール、オキサトリアゾール、ピリジン、ピペラジン、トリアジン、及びそれらのいずれか1つ又は複数の誘導体等の、窒素及び/又は硫黄含有複素環式化合物を挙げることができる。特定の腐食防止剤は、以下の構造:
【化8】
により表されるベンゾトリアゾールであり、
式中、R8は、存在しないか(水素)、又は直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和若しくは不飽和であってもよいC1~C20ヒドロカルビル基若しくは置換ヒドロカルビル基である。性質がアルキル若しくは芳香族である環構造、及び/又はN、O、若しくはS等のヘテロ原子を含む環構造を含んでいてもよい。好適な化合物の例としては、ベンゾトリアゾール、アルキル置換ベンゾトリアゾール(例えば、トリルトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、オクチルベンゾトリアゾール等)、アリール置換ベンゾトリアゾール、及びアルキルアリール置換又はアリールアルキル置換ベンゾトリアゾール等、並びにそれらの組合せを挙げることができる。例えば、トリアゾールは、ベンゾトリアゾール及び/又はアルキル基が1~約20個の炭素原子若しくは1~約8個の炭素原子を含むアルキルベンゾトリアゾールを含むか又はそれらであってもよい。そのような腐食防止剤の非限定的な例は、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、及び/又はドイツ国ルートヴィヒスハーフェンのBASF社から市販されているIrgamet(商標)39等の置換されていてもよいベンゾトリアゾールを含むか又はそれらであってもよい。好ましい腐食防止剤は、ベンゾトリアゾール及び/若しくはトリルトリアゾールを含むか、又はベンゾトリアゾール及び/若しくはトリルトリアゾールであってもよい。
【0158】
加えて又は代替的に、腐食防止剤は、以下の構造:
【化9】
により表される1つ又は複数の置換チアジアゾールを含んでいてもよく、
式中、R15及びR16は、独立して、水素又は炭化水素基であり、炭化水素基は、環式、脂環式、アラルキル、アリール、及びアルカリルを含む、脂肪族又は芳香族であってもよく、各wは、独立して、1、2、3、4、5、又は6である(好ましくは、2、3、又は4、例えば2である)。こうした置換チアジアゾールは、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(DMTD)分子から誘導される。DMTDの多くの誘導体が当技術分野に記載されており、そのような化合物はいずれも本開示で使用される流体に含めることができる。例えば、米国特許第2,719,125号明細書;第2,719,126;及び第3,087,937号明細書には、種々の2,5-ビス-(炭化水素ジチオ)-1,3,4-チアジアゾールの調製が記載されている。
更に、加えて又は代替的に、腐食防止剤は、R15及びR16がカルボニル基を介して硫化物硫黄原子に結合していてもよいカルボン酸エステル等の、DMTDの1つ又は複数の他の誘導体を含んでもよい。こうしたチオエステル含有DMTD誘導体の調製は、例えば米国特許第2,760,933号明細書に記載されている。DMTDと、少なくとも10個の炭素原子を有するアルファ-ハロゲン化脂肪族カルボン酸との縮合により生成されるDMTD誘導体は、例えば、米国特許第2,836,564号明細書に記載されている。このプロセスにより、R15及びR16がHOOC-CH(R19)-である(R19はヒドロカルビル基である)DMTD誘導体が生成される。こうした末端カルボン酸基のアミド化又はエステル化により更に生成されるDMTD誘導体も有用であり得る。
【0159】
2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールの調製は、例えば、米国特許第3,663,561号明細書に記載されている。
DMTD誘導体の種類としては、2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール及び2,5-ビス-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾールの混合物を挙げることができる。そのような混合物は、商品名HiTEC(商標)4313で販売されており、Afton Chemical Company社から市販されている。
2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールの調製は、例えば、米国特許第3,663,561号明細書に記載されている。
DMTD誘導体の種類としては、2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール及び2,5-ビス-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾールの混合物を挙げることができる。そのような混合物は、商品名HiTEC(商標)4313で販売されており、Afton Chemical Company社から市販されている。
【0160】
また更に、加えて又は代替的に、腐食防止剤は、構造B(OR463を有する三官能性ボレートを含んでもよく、式中、各R46は同じであってもよく又は異なっていてもよい。ボレートは、典型的には、組成物の非水性媒体と相溶性であることが望ましい場合があるため、各R46は、特に、ヒドロカルビルC1~C8部分を含むか又はそれであってもよい。例えば、非水性媒体が潤滑油ベースストックを含むか又は潤滑油ベースストックである組成物の場合、典型的には、ヒドロカルビル部分が各々少なくともC4であると、より良好な相溶性を達成することができる。したがって、そのような腐食防止剤の非限定的な例としては、これらに限定されないが、トリエチルボレート、トリイソプロピルボレート等のトリプロピルボレート、トリ-tert-ブチルボレート等のトリブチルボレート、トリペンチルボレート、トリヘキシルボレート、トリ-(2-エチルヘキシル)ボレート等のトリオクチルボレート、及びモノヘキシルジブチルボレート等、並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0161】
使用される場合、腐食防止剤は、置換チアジアゾール、置換ベンゾトリアゾール、置換トリアゾール、三置換ボレート、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。
必要に応じて、腐食防止剤は、任意の有効量で使用することができるが、使用される場合、典型的には、組成物の質量に基づき、約0.001質量%~5.0質量%、例えば0.005質量%~3.0質量%、又は0.01質量%~1.0質量%の量で使用することができる。代替的に、そのような添加剤は、潤滑組成物の質量に基づき、約0.01~5質量%、好ましくは約0.01~1.5質量%の量で使用することができる。
一部の実施形態では、3,4-オキシピリジノン含有組成物は、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、置換チアジアゾール、イミダゾール、チアゾール、テトラゾール、ヒドロキシキノリン、オキサゾリン、イミダゾリン、チオフェン、インドール、インダゾール、キノリン、ベンゾオキサジン、ジチオール、オキサゾール、オキサトリアゾール、ピリジン、ピペラジン、トリアジン、それらの誘導体、それらの組合せ、又はあらゆる腐食防止剤を実質的に含んでいなくてもよい(例えば、0、又は0.001質量%未満、0.0005質量%以下、意図的に非添加、及び/又は全く含まれていない)。
本開示による組成物は、腐食防止剤としての二次効果も有する、様々な表記機能を有する添加剤を含んでいてもよい(例えば、上記に記載の成分B官能化ポリマーも腐食防止剤効果を示すことができる)。こうした添加剤は、本明細書において潤滑油組成物又は濃縮物中の腐食防止剤の量を決定する目的では、腐食防止剤には含まれない。
【0162】
K.耐摩耗剤
本開示の潤滑油組成物は、摩擦及び過度の摩耗を低減することができる1つ又は複数の耐摩耗剤を含んでいてもよい。当業者に公知のあらゆる耐摩耗剤を潤滑油組成物に使用することができる。好適な耐摩耗剤の非限定的な例としては、ジチオリン酸亜鉛、ジチオホスフェートの金属(例えば、Pb、Sb、及びMo等)塩、ジチオカルバメートの金属(例えば、Zn、Pb、Sb、及びMo等)塩、脂肪酸の金属(例えば、Zn、Pb、及びSb等)塩、ホウ素化合物、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩、ジシクロペンタジエン及びチオリン酸の反応産物、並びにそれらの組合せが挙げられる。耐摩耗剤の量は、潤滑油組成物の総質量に基づき、約0.01質量%~約5質量%、約0.05質量%~約3質量%、又は約0.1質量%~約1質量%の範囲であってもよい。
【0163】
実施形態では、耐摩耗剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛化合物等のジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩であるか又はそれを含む。ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩の金属は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、若しくは銅であってよい。一部の実施形態では、金属は亜鉛である。他の実施形態では、ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩のアルキル基は、約3~約22個の炭素原子、約3~約18個の炭素原子、約3~約12個の炭素原子、又は約3~約8個の炭素原子を有する。更なる実施形態では、アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状である。
また、有用な耐摩耗剤としては、置換又は非置換チオリン酸が挙げられ、それらの塩としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛、及び/又はアルキルアリールジチオリン酸亜鉛から選択されるジチオリン酸亜鉛化合物等の亜鉛含有化合物が挙げられる。
【0164】
金属アルキルチオホスフェート及びより詳細には金属成分が亜鉛である金属ジアルキルジチオホスフェート又はジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)は、本開示の潤滑組成物の有用な成分であり得る。ZDDPは、第一級アルコール、第二級アルコール、又はそれらの混合物から誘導することができる。ZDDP化合物は、一般に、式Zn[SP(S)(OR1)(OR2)]2のものあり、式中、R1及びR2は、C1~C18アルキル基、好ましくはC2~C12アルキル基である。こうしたアルキル基は、直鎖であってもよく又は分岐鎖であってもよい。ZDDPに使用されるアルコールは、2-プロパノール、ブタノール、第二級ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、例えば、4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、及びアルキル化フェノール等であってもよい。第二級アルコールの混合物、又は第一級アルコール及び第二級アルコールの混合物を使用してもよい。アルキルアリール基も使用することができる。有用なジチオリン酸亜鉛としては、The Lubrizol Corporation社から商品名「LZ 677A」、「LZ 1095」、及び「LZ 1371」で市販されているもの、Chevron Oronite社から商品名「OLOA 262」で市販されているもの、及びAfton Chemical社から商品名「HiTEC(商標)7169」で市販されているもの等の第二級ジチオリン酸亜鉛が挙げられる。
【0165】
実施形態では、亜鉛化合物は、式:
【化10】
により表される、ジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸亜鉛錯体であってもよく、
式中、各RIは、独立して、1~約10個の炭素原子を有する、直鎖状、環状、又は分岐鎖状の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素部分であり、nは、0、1、又は2であり、Lは、亜鉛の配位圏を飽和する配位子であり、xは、0、1、2、3、又は4である。ある特定の実施形態では、リガンドLは、水、水酸化物、アンモニア、アミノ、アミド、アルキルチオレート、ハロゲン化物、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0166】
ZDDP及び/又はカルバミン酸亜鉛等の耐摩耗添加剤は、典型的には、潤滑組成物の総質量に基づき、約0.4質量%~約1.2質量%、好ましくは約0.5質量%~約1.0質量%、より好ましくは約0.6質量%~約0.8質量%の量で使用されるが、多くの場合、より多く又はより少ない量を有利に使用することができる。好ましくは、耐摩耗添加剤はZDDP、好ましくは第二級ZDDPであり、潤滑組成物の総質量の約0.6~1.0質量%の量で存在する。
また、本明細書で有用な耐摩耗添加剤としては、ホウ素含有化合物、例えばホウ酸エステル、ホウ酸化脂肪族アミン、ホウ酸化エポキシド、アルカリ金属(又は混合アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属)ボレート、及びホウ素酸化過塩基性金属塩が挙げられる。
本開示による組成物は、耐摩耗剤としての二次効果も有する、様々な表記機能を有する添加剤を含んでいてもよい(例えば、上記に記載の成分B官能化ポリマーも耐摩耗剤効果を示すことができる)。こうした添加剤は、本明細書において潤滑油組成物又は濃縮物中の耐摩耗剤の量を決定する目的では、耐摩耗剤には含まれない。
【0167】
L.抗乳化剤
本明細書で有用な抗乳化剤としては、米国特許第10,829,712号明細書(第20欄34行目~40行目)に記載されているものが挙げられる。本明細書では、典型的には少量の抗乳化成分を使用することができる。好ましい抗乳化成分は欧州特許第330,522号明細書に記載されている。ビスエポキシドと多価アルコールとの反応により得られる付加物とアルキレンオキシドとを反応させることにより得られる。そのような添加剤は、約0.001~5質量%、好ましくは約0.01~2質量%の量で使用することができる。
【0168】
M.シール適合剤
他の任意選択の添加剤としては、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭化水素、エステル(例えば、フタル酸ブチルベンジル)、及びポリブテニル無水コハク酸等のシール適合剤が挙げられる。そのような添加剤は、約0.001~5質量%、好ましくは約0.01~2質量%の量で使用することができる。実施形態では、シール適合剤は、PIBSA(ポリイソブテニル無水コハク酸)等のシースウェル剤(sea swell agent)である。
【0169】
N.極圧剤
本開示の潤滑油組成物は、極圧条件下での摺動金属表面の焼付きを防止することができる1つ又は複数の極圧剤を含んでいてもよい。当業者に公知のあらゆる極圧剤を潤滑油組成物に使用することができる。一般に、極圧剤は、金属と化学的に一緒になって、高荷重下における対向金属表面の凹凸の溶着を防止する表面膜を形成することができる化合物である。好適な極圧剤の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:硫化動物性又は植物性脂肪又は油、硫化動物性又は植物性脂肪酸エステル、リンの三価又は五価酸の完全又は部分エステル化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリスルフィド、硫化ディールス-アルダー付加物、硫化ジシクロペンタジエン、脂肪酸エステル及び一不飽和オレフィンの硫化又は共硫化混合物、脂肪酸、脂肪酸エステル、及びアルファ-オレフィンの共硫化ブレンド、官能基置換ジヒドロカルビルポリスルフィド、チア-アルデヒド、チア-ケトン、エピチオ化合物、硫黄含有アセタール誘導体、テルペン及び非環状オレフィンの共硫化ブレンド、及びポリスルフィドオレフィン産物、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩、及びそれらの組合せ。極圧剤の量は、潤滑油組成物の総質量に基づき、約0.01質量%~約5質量%、約0.05質量%~約3質量%、又は約0.1質量%~約1質量%の範囲であってもよい。
【0170】
O.非ベースストック不飽和炭化水素
本開示の潤滑油組成物は、1つ又は複数の不飽和炭化水素を含んでいてもよい。こうした不飽和炭化水素は、組成物中に存在していてもよいあらゆるベースストック(グループI、II、III、IV、及び/又はVの潤滑油ベースストック)及び/又は粘度調整剤とは異なり、1分子当たり少なくとも1つ(直鎖状アルファ-オレフィン又はLAOの場合は、典型的には1つのみ)の不飽和を常に有する。理論に束縛されるものではないが、不飽和は、1つ若しくは複数の抗酸化添加剤及び/又は1つ若しくは複数の腐食防止添加剤を補完及び/又は置き換えることができる抗酸化機能性及び/又は硫黄捕捉機能性を提供することができるが、不飽和炭化水素(LAO)は、典型的には、潤滑油組成物において唯一の抗酸化剤を提供するものでも唯一の腐食防止機能を提供するものでもないだろう。不飽和炭化水素の非限定的な例としては、1つ又は複数の不飽和C12~C60炭化水素(例えば、C12~C48炭化水素、C12~C36炭化水素、C12~C30炭化水素、又はC12~C24炭化水素)を挙げることができる。不飽和が1つのみ存在する場合、不飽和炭化水素は、直鎖状アルファ-オレフィン(LAO)と称される場合がある。不飽和炭化水素の他の非限定的な例としては、末端(付近)の不飽和を保持している(又はそれを有するように重合後修飾されている)ポリイソブチレンのオリゴマー/ポリマー、及び/又はそれらのブレンドを挙げることができる。不飽和炭化水素(LAO)は、存在する場合、潤滑油組成物の総質量に基づき、0.01~5質量%(特に、0.1~3質量%、代替的に0.1~1.5質量%)で存在してもよい。
【0171】
潤滑油組成物が、上記で考察されている添加剤の1つ又は複数を含む場合、添加剤は、典型的には、その意図されている機能を発揮するのに十分な量で組成物にブレンドされている。本開示に有用な、特にクランクケース潤滑剤に使用するためのそのような添加剤の典型的な量を下記の表に示す。
添加剤の多くは、ある特定の量の基油又は他の希釈剤と共に1つ又は複数の添加剤を一緒に含む濃縮物として、添加剤製造業者から出荷されることに留意されたい。したがって、下記の表の質量による量、並びに本明細書で言及されている他の量は、活性成分(即ち、成分の非希釈部分)の量を指す。下記に示す質量パーセント(質量%)は、潤滑油組成物の総質量に基づく。
【表1】

上述の添加剤は、典型的には、市販の物質である。こうした添加剤は独立して添加してもよいが、通常は、潤滑油添加剤の供給業者から得ることができるパッケージに予め混合されている。様々な成分、割合、及び特質を有する添加剤パッケージが入手可能であり、最終組成物の使用を考慮して適切なパッケージを選択することになる。
【0172】
燃料
本開示は、自動車内燃エンジンをエンジンの作動中に潤滑するための方法であって、
(i)本明細書に記載の潤滑組成物を自動車内燃エンジンのクランクケース自動車クランクケースに供給するステップ、
(ii)自動車内燃エンジンに炭化水素燃料を供給するステップ、及び
(iii)ディーゼルエンジン又は乗用車エンジン(火花点火式燃焼エンジン等)等の火花点火式又は圧縮点火式の2ストローク又は4ストロークレシプロエンジン等の自動車内燃エンジンで燃料を燃焼させるステップ
を含む方法にも関する。
【0173】
本開示は、本明細書に記載の潤滑油組成物及び炭化水素燃料を含む燃料組成物であって、燃料は、石油及び/又は生物学的供給源(「バイオ燃料」又は「再生可能燃料」)に由来してもよい、燃料組成物にも関する。実施形態では、燃料は、1~50質量%の再生可能燃料及び石油由来燃料の総質量に基づき、0.1~100質量%の再生可能燃料、代替的に1~75質量%の再生可能燃料、代替的に5~50質量%の再生可能燃料を含む。
再生可能燃料成分は、典型的には、植物油(パーム油、菜種油、大豆油、ジャトロファ油等)、微生物油(藻類油等)、動物性脂肪(調理用油、動物性脂肪、及び/又は魚脂肪等)、及び/又はバイオガスから生産される。再生可能燃料は、現代的な生物学的プロセスから形成される生物学的資源から生産される水素、アンモニア、及びバイオ燃料を指す。一実施形態では、再生可能燃料成分は、水素化処理プロセスにより生産される。水素化処理は、分子状水素が他の成分と反応するか、又は成分が分子状水素及び固体触媒の存在下で分子変換を起こす種々の反応を含む。反応としては、これらに限定されないが、水素化、水素化脱酸素、水素化脱硫、水素化脱窒、水素化脱金属化、水素化分解、及び異性化が挙げられる。再生可能燃料成分は、使用目的に応じて、所望の特性を成分に提供する様々な蒸留範囲を有してもよい。
【0174】
使用
本開示の潤滑組成物は、潤滑剤をそれに添加することにより、機械的エンジン部品、特に内燃エンジン、例えば、火花点火式又は圧縮点火式の2ストローク又は4ストロークレシプロエンジンの潤滑に使用することができる。典型的には、本発明の潤滑組成物は、乗用車モーター油又は大型ディーゼルエンジン潤滑油等のクランクケース潤滑剤である。
特に、本開示の潤滑組成物は、好適には、大型ディーゼルエンジン等の圧縮点火式内燃エンジンのクランクケースの潤滑に使用される。
特に、本開示の潤滑組成物は、好適には、火花点火式ターボチャージャー付き内燃エンジンのクランクケースの潤滑に使用される。
実施形態では、本開示の潤滑油は、火花補助高圧縮内燃エンジンで使用され、高圧縮火花点火式内燃エンジンで使用される場合、本開示の潤滑油組成物は、高圧縮火花点火式内燃エンジンの潤滑に有用である。
実施形態では、本開示の潤滑組成物は、好適には、大型ディーゼル車両(つまり、4535.9kg(10,000ポンド)以上の車両総重量評価を有する大型ディーゼル車両)のエンジンのクランクケースの潤滑に使用される。
実施形態では、本開示の潤滑組成物は、好適には、乗用車ディーゼルエンジンのクランクケースの潤滑に使用される。
特に、本開示の潤滑油配合物は、API FA-4及び将来の油カテゴリー等の低粘度油を使用する、バルブトレインの摩耗保護が課題となる圧縮点火式内燃エンジン、つまり大型ディーゼルエンジンにおいて特に有用である。
【0175】
本開示は、更に以下のものに関する。
1. C4-5オレフィンを含むアミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマーであって、
i)2未満のMw/Mn、
ii)3.5以下の官能価分布(Fd)値、及び
iii)10,000g/mol以上(GPC-PS)の官能化前のポリマーのMn
を有し、ただし、官能化前のポリマーがイソプレン及びブタジエンのコポリマーである場合は、コポリマーのMnは25,000g/mol(GPC-PS)よりも大きい、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ポリマー。
2. 少なくとも約50%の、モノマーの1,4-挿入を含む、段落1に記載の官能化ポリマー。
3. 官能化前のポリマーは、25,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有する、段落1又は2に記載の官能化ポリマー。
4. 官能化前のポリマーは、30,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有する、段落1~3のいずれかに記載の官能化ポリマー。
5. 官能化前のポリマーは、少なくとも90mol%のイソプレンリピート単位を含む、段落1~4のいずれかに記載の官能化ポリマー。
6. 官能化前のポリマーは、ホモ-ポリイソプレンである、段落1~5のいずれかに記載の官能化ポリマー。
7. ポリマーは、官能化前に部分的に又は完全に水素化されている、段落1~6のいずれかに記載の官能化ポリマー。
8. 30,000~100,000g/mol(GPC-PS)のMnを有し、1つ又は複数のペンダントアミン基を含み、官能化前に少なくとも約50%の1,4-挿入を有する部分的又は完全飽和ホモポリイソプレンを含む、段落1に記載の官能化ポリマー。
9. 官能化前のポリマーがC4オレフィンポリマーである場合、C4オレフィンポリマーは、15,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有し、官能化前のポリマーが、イソプレン及びブタジエンのコポリマーである場合、コポリマーのMnは35,000Mnより大きい(GPC-PS)、段落1に記載の官能化ポリマー。
10. 官能化前のポリマーは、90mol%以上のイソプレンリピート単位を含み、30,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有する、段落1又は2に記載の官能化ポリマー。
11. 官能化前のポリマーは、ホモポリイソプレンであり、30,000g/mol以上(GPC-PS)のMnを有する、段落1又は2に記載の官能化ポリマー。
12. 官能化前のポリマーは、10,000g/mol当たり1~20の平均官能価を有するホモポリイソプレンの部分的又は完全水素化ポリマーである、段落1又は2に記載の官能化ポリマー。
13. ポリマーにはスチレンリピート単位が存在しない、段落1~12のいずれかに記載の官能化ポリマー。
14. ポリマーにはブタジエンリピート単位が存在しない、段落1~13のいずれかに記載の官能化ポリマー。
15. ポリマーはホモポリイソブチレンではない、段落1~14のいずれかに記載の官能化ポリマー。
16. ポリマーは、イソプレン及びブタジエンのコポリマーではない、段落1~15のいずれかに記載の官能化ポリマー。
17. GPC-PSにより決定して、1.4~20FGグラフト/ポリマー鎖の平均官能価を有する、段落1~16のいずれかに記載の官能化ポリマー。
18. ポリマーは、2未満のMw/Mn及び10,000g/mol以上のMnを有するC4-5共役ジエンの完全又は部分的水素化ポリマーをアシル化剤と反応させ、その後アシル化ポリマーをアミンと反応させて、イミド、アミド、又はそれらの組合せを形成することにより得られる、段落1~18のいずれかに記載の官能化ポリマー。
19. 任意選択で、アシル化剤を連続若しくは半連続方式で添加することにより、及び/又は完全若しくは部分的水素化ポリマーを、完全若しくは部分的水素化ポリマー及び希釈剤の質量に基づき45質量%以上の完全若しくは部分的水素化ポリマーを含む希釈剤中の溶液又は懸濁物として、バッチ、半連続、若しくは連続反応器操作に導入することにより、副反応が最小限に抑えられる、段落18に記載の官能化ポリマー。
20.
(i)潤滑油組成物の質量に基づき少なくとも50質量%の1つ又は複数の基油、
(ii)1つ又は複数の分散剤、
(iii)1つ又は複数の清浄剤、及び
(iv)段落1~19のいずれかに記載の1つ又は複数の官能化ポリマー
を含むか又は混合することから得られる潤滑油組成物。
21. 好ましくは、
a)20W-X、15W-X、10W-X、5W-X、又は0W-XのSAE粘度グレードであり、Xは、8、12、16、20、30、40、及び50のいずれか1つを表す、SAE粘度グレード、並びに
b)55mg以下の煤煙誘導性摩耗(バルブトレイン摩耗保護のカミンズISB試験により決定される)、並びに
c)12cSt以下の6%煤煙での煤煙誘導性粘度増加(煤煙誘導性粘度制御のMack T11試験により決定される)
を有する、段落20に記載の潤滑油組成物。
22.
(i)潤滑油組成物の質量に基づき50~99質量%の1つ又は複数の基油、
(ii)潤滑油組成物の総質量に基づき0.01~20質量%の1つ又は複数の分散剤、
(iii)潤滑油組成物の質量に基づき0.01~20質量%の1つ又は複数の清浄剤、
(iv)潤滑油組成物の質量に基づき0.10~20質量%の、段落1~19のいずれかに記載の1つ又は複数の官能化ポリマー
を含むか又は混合することから得られる、段落20又は21に記載の潤滑油組成物。
23. 摩擦調整剤、抗酸化剤、流動点降下剤、消泡剤、粘度調整剤、抑制剤及び/又は防錆剤、並びに耐摩耗剤からなる群から選択される1、2、3、4、5、6、又はそれよりも多くの追加の添加剤を更に含む、段落20~22のいずれかに記載の潤滑油組成物。
24.
D)潤滑油組成物の総質量に基づき0.01~5質量%の1つ又は複数の摩擦調整剤、
E)潤滑油組成物の総質量に基づき0.01~10質量%の1つ又は複数の抗酸化剤、
F)潤滑油組成物の総質量に基づき0.01~5質量%の1つ又は複数の流動点降下剤、
G)潤滑油組成物の総質量に基づき0.001~5質量%の1つ又は複数の消泡剤、
H)潤滑油組成物の総質量に基づき0.001~10質量%の1つ又は複数の粘度調整剤、
J)潤滑油組成物の総質量に基づき0.0~5質量%の1つ又は複数の抑制剤及び/若しくは防錆剤、並びに/又は
K)潤滑油組成物の総質量に基づき0.001~10質量%の1つ又は複数の耐摩耗剤
の1、2、3、4、5、6つ、又はそれよりも多くを更に含む、段落20~23のいずれかに記載の潤滑油組成物。
25. 潤滑油組成物には、フェノール系抗酸化剤及び/又はスチレン系ポリマーが存在しない、段落20~24のいずれかに記載の潤滑油組成物。
26. 官能化ポリマーは、30,000~100,000g/mol(GPC-PS)のMnを有し、1つ又は複数のペンダントアミン基を含み、少なくとも約60%の1,4-挿入を有する部分的又は完全飽和ホモ-ポリイソプレンである、段落20~24のいずれかに記載の潤滑油組成物。
27. 潤滑油組成物の総質量に基づき5質量%未満の官能化油を含む、段落20~26のいずれかに記載の潤滑油組成物。
28. 潤滑油組成物の総質量に基づき5質量%未満の脂肪族又は芳香族溶媒を含む、段落20~27のいずれかに記載の潤滑油組成物。
29. 潤滑油組成物は、ASTM D94により決定して25mg KOH/g以上の総鹸化価(SAP)を有し、官能化ポリマーは、3.5以下の官能価分布(Fd)値を有する、段落20~28のいずれかに記載の潤滑油組成物。
30. 潤滑油組成物の総質量に基づき5質量%未満の第二級ヒドロカルビルアミン化合物及び第三級ヒドロカルビルアミン化合物を含む、段落20~29のいずれかに記載の潤滑油組成物。
31. 清浄剤は、アルカリ又はアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、及びマグネシウム、例えばCa及び/又はMg)の1つ又は複数の油溶性中性又は過塩基性スルホネート、フェネート、硫化フェネート、チオホスホネート、サリチレート、ナフテネート、及び他の油溶性カルボキシレートを含む、段落20~30のいずれかに記載の潤滑油組成物。
32. 分散剤は、1つ又は複数のホウ酸化又は非ホウ酸化ポリ(アルケニル)コハク酸イミドであって、ポリアルケニルはポリイソブチレンから誘導され、イミドはポリアミンから誘導される、1つ又は複数のホウ酸化又は非ホウ酸化ポリ(アルケニル)コハク酸イミドを含む、段落20~31のいずれかに記載の潤滑油組成物。
33. 分散剤は、1つ又は複数の、任意選択でホウ酸化されたより高分子量(Mn 1600g/mol以上、例えば1800~3000g/mol)のポリ(アルケニル)コハク酸イミド、及び1つ又は複数の、任意選択でホウ酸化されたより低分子量(1600g/mol未満のMn)のポリ(アルケニル)コハク酸イミドを含む、段落20~32のいずれかに記載の潤滑油組成物。
34. より高分子量のポリ(アルケニル)コハク酸イミドは、0.8~6質量%の量で潤滑組成物に存在し、より低分子量のポリ(アルケニル)コハク酸イミドは、1.5~5質量%の量で潤滑組成物に存在する、段落33に記載の潤滑油組成物。
35.大型ディーゼルエンジン油である、段落20~34のいずれかに記載の潤滑油組成物。
36. 6%煤煙での煤煙誘導性粘度増加は、ASTM D7156-19により決定して12cSt以下である、段落20~35のいずれかに記載の潤滑油組成物。
37. カムシャフト摩耗は、ASTM D7484-21により決定して50μm未満である、段落20~36のいずれかに記載の潤滑油組成物。
38. 内燃エンジンをエンジンの作動中に潤滑するための方法であって、
(i)段落20~35のいずれかに記載の潤滑組成物を、内燃エンジンのクランクケースに供給するステップ、
(ii)内燃エンジンに燃料を供給するステップ、及び
(iii)自動車内燃エンジンにて燃料を燃焼させるステップ
を含む方法。
39. 燃料は、炭化水素燃料、再生可能燃料、水素燃料、又はそれらの任意のブレンドの1つ又は複数である、段落38に記載の方法。
40. エンジンは、ディーゼルエンジンである、段落38に記載の方法。
41. 段落1~19のいずれかに記載の組成物、及び炭化水素燃料、再生可能燃料、水素燃料、又はそれらの任意のブレンドの1つ又は複数を含む燃料組成物。
42. 濃縮物であって、濃縮物の質量に基づき1~50質量%未満の1つ又は複数の基油、濃縮物の質量に基づき0.10~20質量%の、請求項1~19のいずれかに記載の官能化ポリマーの1つ又は複数を含むか又は混合することから得られる濃縮物。
43. i)2未満のMw/Mn、ii)3.5以下の官能価分布(Fd)値、及びiii)10,000~300,000g/mol(GPC-PS)の官能化前のポリマーのMnを有する、アミド、イミド、及び/又はエステル官能化部分的又は完全飽和ホモポリイソプレンポリマー。
以下の非限定的な例は、本開示を説明するために提供されている。
【0176】
実験
別様の記載がない限り、全ての分子量は、ポリスチレン標準物質を使用したゲル浸透クロマトグラフィーにより決定して、g/molで報告される数平均分子量(Mn)である。「A.I.」、「a.i.」、及び「ai」は、別様の指示がない限り、質量%活性成分である。
試験手順
KV100は、ASTM D445-19aに従って100℃で測定される動粘度である。
KV40は、ASTM D445-19aに従って40℃で測定される動粘度である。
油中の「硫黄含有量」は、ASTM D5185により測定される。
硫酸灰分(「SASH」)含有量は、ASTM D874により測定される。
リン、ホウ素、カルシウム、亜鉛、モリブデン、及びマグネシウム含有量は、ASTM D5185により測定される。
LOC中の「窒素含有量」は、ASTM D5762により測定される。
官能化ポリマー中の窒素は、ASTM D5291により測定される。
分子量(Mw、Mn、Mz)のモーメントは、以下のようにポリスチレン標準物質(Acquity(商標)APCポリスチレンMW較正キット、266-1,760,000Da)を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC-PS」)により決定した。
【0177】
分子量[数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、及びz平均分子量(Mz)]は、オンライン示差屈折率(DRI)検出器並びに215、254、及び304波長用のPDA UV検出器を備えたAgilent Acuity P-SM-FTN及びP-15m高温GPC-SEC(ゲル透過/サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して決定される。GPCでは、3つのAgilent PLgel 10micron Mixed B LSカラムを使用する。カラム分離は、流速0.25mL/分、公称注入容積10マイクロリットルを使用して実施する。検出器及びカラムは、低流動モード(アイドリング)の際には30℃に維持し、試料分析の準備時には35℃まで加熱する。SECカラムから出てくる流動は、光学フローセルへと、次いでDRI検出器へと送られる。SEC実験の溶媒は、非抑制(un-inhibited)THF(テトラヒドロフラン)である。乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量のTHFを添加することによりポリマー溶液を調製する。試料を機械に添加すると、分離実行を開始する前に35℃に達するまでの時間的猶予が与えられる。GPCは、およそ1.5時間の分離実行前平衡化プログラムを実行する。試料を溶解度に応じて2~15時間撹拌する。撹拌した後、分離実行が始まる前に試料を濾過する。全ての量は重量測定法で測定する。ポリマー濃度を質量/容積単位で表すために使用されるTHF密度は、68℃で0.887g/mLである。注入試料濃度は3mg/mLである。各試料の分離実行前に、DRI検出器及びインジェクターをパージする。次いで、装置の流速を0.01から0.25mL/分へと増加させ、DRIを4~5時間安定させてから、最初の試料を注入する。GPCの分離実行及びレポートの作成に使用するソフトウェアは、Empower(商標)3、バージョン7.41.00.00である。
【0178】
「FG」は官能基を意味する。
平均官能価[平均官能価値(Fv)とも呼ばれる]及び官能価分布(Fd)値は、以下のように決定する。
ADPA-イミド官能基を有する単純化された非ポリマー材料(ODSA-ADPA)を、下記の手順に従って調製し、その後、下記で更に説明される官能基GPC分析のための参照物質及び較正物質として使用する。
268gのオクタデセニル無水コハク酸(異性体の混合物、0.094mol)を、空気動力スターラー、温度コントローラー及び電気加熱マントルに接続された熱電対、並びに窒素入口を備えた四つ口丸底フラスコに添加した。反応器ヘッドスペースに連続的に窒素を流し、絶えず撹拌しながら、この物質を170℃に加熱した。
17.2gの4-アミノジフェニルアミン(ADPA、0.094mol)を高温反応混合物に何回かに分けて添加し、アミン添加を継続する際の泡立ちが完全に静まるまで時間を置いた。それぞれ約1780及び1700cm-1における無水物ピーク及びイミドピークのFTIR分析により反応が完了したと決定されるまで、混合物を加熱した(無水物ピークが完全に消費され、イミドピークがもはや増加しなくなるまで。およそ2~3時間)。この物質を部分的に冷却した後(100℃を下まわるまで)、反応器から排出した。それを更に精製することなく、GPC較正物質として直接使用した。
【0179】
GPC検量線(図1に示されている)を、上記に記載のGPC手順に従い、UV304nmチャネルを積分した、0.01、0.02、0.03、0.04、及び0.05mg/mlのODSA-ADPA試料から調製した。
官能性ポリマーの試料を調製し、上記に記載のようにGPC分析に供した。ピークの各々の底部を横切る平坦なベースラインを溶媒ベースラインに合わせて引くことにより、クロマトグラムを積分した。クロマトグラムピークがベースラインまで(図2の横軸に三角形で示されているベースライン)まで分離されなかった場合、それらの間の最小地点(図2の横軸に菱形で示されている)にて垂直切断線を作成した。最小地点は、曲線の二次導関数の符号が変化する(例えば、負から正へと、又はその逆)GPCトレースの変曲点である。平均官能価値(Fv)及び官能価分布(Fd)を計算する目的では、主ポリマーピークから分離されたあらゆる鎖カップリングポリマー及び鎖断片化ポリマーを、全ての計算(Mn、Mw、PDI(Mw/Mn)、及びあらゆるその後の計算)に主ピークの一部として含めるべきである。GPC分析の代表的なクロマトグラムを図2に示す。
【0180】
試料の平均官能価値(Fv)は、試料全体にわたる1ポリマー鎖当たりの官能基の平均数であると定義され、数式1により計算される。
【数1】
数式中、
Fv=試料全体にわたって計算された、FGグラフト/ポリマー鎖の単位で表した平均官能価、
UV304 int合計=UV304チャネルのポリマーピークの合計積分、
FG Cal傾き=ODSA-ADPAのUV304検量線の傾き、
Mn=ポリマーピーク数平均分子量(ポリスチレン標準物質を使用)、及び
Poly mg/ml=試料調製中に重量測定で測定された、mg/mlの単位で表した、試料全体におけるポリマー(官能基を除く)の濃度。
官能価分布(Fd)値は、試料中のMW分布にわたる官能価の範囲(つまり、試料中の高MW画分と低MW画分との間の官能価の差)を表す。Fdは、数式2により計算される。
【数2】
数式中、
PDI=Mn/Mwから計算した、総ポリマーピークの多分散指数、
最大=ポリマーピークの第10累積パーセンタイル及び第90累積パーセンタイル(RIによる)間の最大官能価値、
最小=ポリマーピークの第10累積パーセンタイル及び第90累積パーセンタイル(RIによる)間の最小官能価値、
Fv=試料全体の平均官能価値。
【0181】
試料全体にわたる個々の官能価を計算するために、屈折率(RI)クロマトグラム及びUV304チャネルクロマトグラムの両方のポリマーピークについて、スライス保持時間、MW、スライス面積、及び累積%のデータを含む詳細なGPCスライス報告書(各スライス毎に等時間間隔、1スライス当たり約0.003分でエクスポート)が報告された。
両チャネルのエクスポートデータを、同じ保持時間でアラインし、次いで、RI検出器とUV検出器との間の保持時間測定値の差(つまり、物質が一方の検出器から他方の検出器へと移動するのにかかる時間。これは、検量線のポリスチレン(PS)ピークの保持時間(RT)の差により決定した)に基づき6.0秒分オフセットした。
エクスポートスライスデータが元データと十分に一致することを検証するため、ピークスライス面積の合計は、RIチャネルポリマーピーク及びUV304チャネルポリマーピークの両方が、総積分ピーク面積の±5%以内でなければならない。
【0182】
RIチャネルデータの各スライスにおけるポリマー濃度は、数式3により決定した(官能性ポリマーのdn/dcは既知である必要はないが、ここでは、dn/dc/はMWと共には変化しないことが想定されている)。
【数3】
数式中、
Poly mol/Lスライス=RIクロマトグラムの単一MWスライスに存在すると計算されたmol/Lの単位で表したポリマー濃度(官能基を除く)、
Poly mg/ml=試料調製中に重量測定で測定された、試料全体におけるmg/mlの単位で表したポリマー(官能基を除く)の濃度、
RI intスライス=RIクロマトグラムの個々のスライスの積分面積、
RI int合計=RIクロマトグラムの合計ポリマーピーク積分、及び
Mnスライス=RIクロマトグラムのポリマーピークスライスのMW。
【0183】
UV304チャネルデータの各スライスにおけるアミン濃度は、数式4により決定した
【数4】
数式中、
アミン FG mo/Lスライス=UV304クロマトグラムの単一スライスに存在すると計算されたmol/Lの単位で表したアミン官能基の濃度、
UV304 intスライス=UV304クロマトグラムの個々のスライスの積分面積、
FG Cal傾き=ODSA-ADPAのUV304検量線の傾き、
【0184】
上記で計算されたポリマースライス濃度及びアミンFGスライス濃度から、個々のクロマトグラムスライスの官能価を、数式5に従って計算することができる。
【数5】
数式中、
スライス=RI/UV304クロマトグラムの個々のスライスについて計算されたFGグラフト/ポリマー鎖の単位で表された官能価、
Poly mol/Lスライス=RIクロマトグラムの単一MWスライスに存在すると計算されたmol/Lの単位で表したポリマー濃度(官能基を除く)、
アミンFG mo/Lスライス=UV304クロマトグラムの単一スライスに存在すると計算されたmol/Lの単位で表したアミン官能基の濃度。
【0185】
計算は、エクスポートクロマトグラムのスライス毎に完結させる。ポリマーピークの第10累積パーセンタイル及び第90累積パーセンタイル間の最大官能価及び最小官能価を、それぞれF最大及びF最小として選択し、上記に記載のようにFdを計算するために使用する。
煤煙レベルは、ASTM D5967に従ってTGA(熱重量分析)により決定した。
煤煙誘導性粘度制御のMack T11試験、ASTM D7156-19を、排気ガス再循環装置を有するMack E-TECH V-MAC IIIディーゼルエンジンで実施した。30分間のオイルフラッシングを2回行い、続いて1800rpmの定速で252時間運転した。燃料噴射タイミングを、96時間、192時間、及び228時間時の煤煙レベル(TGA、ASTMD5967)の目標に合わせて調整した。具体的には、TGA煤煙レベルは96時間時に2.75%+/-0.25%、192時間時に5.50%+/-0.35%、及び228時間時に6.53%+/-0.44%だった。油試料を12時間毎に採取し、煤煙レベル(TGA、ASTMD5967)及び100℃動粘度を測定した。油の性能は、指定の粘度増加(4cSt、12cSt、及び15cSt)が観察される煤煙レベルを比較することにより決定した。
【0186】
カミンズISBエンジン試験。バルブトレイン摩耗保護は、排気ガス再循環装置を有する5.9L 6気筒ディーゼルエンジンでのカミンズISBエンジン試験、ASTM D7484-21に従って決定した。カミンズISB試験は、2段階試験である。段階Aでは、ASTMプロトコールに従って、過剰煤煙が発生するように燃料噴射タイミングを遅らせてエンジンを100時間作動させた。段階Bでは、エンジンをASTMプロトコールに従ってサイクル条件下で250時間作動させて、バルブトレイン摩耗を誘導した。油性能は、ASTM D7484-21のセクション8.1.5に詳述されているように測定したクロスヘッド質量損失(mg)、ASTM D7484-21のセクション8.1.6に詳述されているように測定したタペット質量損失(mg)、並びにASTM D7484-21のセクション8.1.7に詳述されているように、ミツトヨスナップゲージ及びミツトヨデジタルインジケーターを用いて測定した12個のローブを平均したカムシャフト摩耗(μm)を評価することにより決定した。
【0187】
煤煙誘導性摩耗及び粘度制御のフォード6.7Lパワーストロークディーゼルエンジン試験を、6.7Lパワーストロークディーゼルエンジンで実施した。試験には2つの局面があり、第1の局面では2600rpm/WOTで10時間、続いて第2の局面ではピーク出力2800rpm/WOTで200時間である。第2の局面では、ASTM D5967、TGAに従って、煤煙測定のための試料を25時間毎に採取した。煤煙レベルは、典型的には、試験終了時に5~7%の範囲である。試験完了後、ロッカーアームを分解して秤量し、試験前の質量と比較して質量損失を決定する。また、油試料のKV100を25時間毎に測定して、油の粘度を決定する。
【0188】
ピストン堆積物のCaterpillar 1N試験を、ASTM D6750-19に従って実施した。また、油消費量を測定した。試験は、単気筒Caterpillar 1Y540ディーゼルエンジンで実施した(このエンジンを、ASTM D6750-19の表A14.1に詳述されている条件下で、60分間のならし期間、続いて252時間の試験条件で運転した)。次いで、ピストンを取り外し、ASTM堆積物評価マニュアル20に概説されている手順に従って評価した。ASTM D6750は、0.4%燃料硫黄による1K手順及び0.04%燃料硫黄による1N手順の両方をカバーしていることに留意されたい。
高温高剪断粘度(「HTHS」又は「HTHS150」)を、ASTM D4683に従って150℃で決定し、cPで報告する。
別様の指示がない限り、-25℃でのコールドクランキングシミュレーター(「CCS」)は、クランクケース潤滑剤のコールドクランキング特質の尺度であり、ASTM D5293-92に記載のように決定される。
【0189】
物質
H-ポリイソプレン-A - 水素化イソプレンポリマーは、40,000g/molのMn(GPC-ポリスチレン標準物質)を有し、90%よりも多くの1,4挿入及び約99%水素化を有するイソプレンホモポリマーである。
SA-H-ポリイソプレン-A - マレイン化水素化イソプレンポリマーAとも呼ばれる、無水コハク酸修飾水素化イソプレンポリマーを、窒素雰囲気下で170℃にて8.0gの無水マレイン酸をグループIII油(Yubase(商標)4)中40%H-ポリイソプレン-A溶液1000gに添加し、完全に一緒になるまで混合することにより、H-ポリイソプレン-Aを使用して調製する。次いで、4cStのグループIII油(Yubase(商標)4)中20%t-ブチルペルオキシドの溶液8.0gを、12分間かけて滴下添加する。次いで、反応物の15分間加熱浸漬を可能にする。このプロセスを、SAP(ASTM D94)により決定して所望のコハク酸官能価が得られるまで繰り返し、その後、未反応の無水マレイン酸を窒素スパージングにより除去する。
7.15の平均官能価(Fv)を有する7.15-F-H-ポリイソプレン-A アミン官能化水素化イソプレンポリマーを、窒素下で170℃にてコハク酸1単位当たり(SAP、ASTM D94により決定される)1当量のアミン(4-アミノ-ジフェニルアミン、ADPA)を添加することにより、SA-H-ポリイソプレン-A(コハク酸官能価7.15)を使用して調製した。反応の継続を可能にし、最大で2時間加熱浸漬し、その後周囲温度までの冷却を可能にする。冷却中、物質を、反応混合物の10質量%のエトキシル化アルコール(例えば、Berol(商標)1214又はSurfonic(商標)L24-4、Huntsman社)と一緒にする。7.15-F-H-ポリイソプレン-Aは、1.76の官能価分布(Fd)値、1.239のMw/Mn、31629g/molのMn、47835g/molのMzを有し、別様の指示がない限り0.5質量%のa.i.を有する油中のブレンドとして使用した。
【0190】
4.01の平均官能価(Fv)を有する4.0-F-H-ポリイソプレン-A アミン官能化水素化イソプレンポリマーを、SA-H-ポリイソプレン-Aが4.0のコハク酸官能価を有していたことを除いて、7.15-F-H-ポリイソプレン-Aを製作するために使用したものと同じ手順を使用して調製した。4.0-F-H-ポリイソプレン-Aは、1.85の官能価分布(Fd)値、1.191のMw/Mn、35,061g/molのMn、49,650g/molのMzを有し、別様の指示がない限り、0.5質量%のaiを有する油中のブレンドとして使用した。
3.61の平均官能価(Fv)を有する3.6-F-H-ポリイソプレン-A アミン官能化水素化イソプレンポリマーを、SA-H-ポリイソプレン-Aが3.6のコハク酸官能価を有していたことを除いて、7.15-F-H-ポリイソプレン-Aを製作するために使用したものと同じ手順を使用して調製した。3.6-F-H-ポリイソプレン-Aは、1.35の官能価分布(Fd)値、1.158のMw/Mn、35,494g/molのMn、47,336g/molのMzを有し、別様の指示がない限り、0.5質量%のaiを有する油中のブレンドとして使用した。
7.0の平均官能価(Fv)を有する7.0-F-H-ポリイソプレン-A アミン官能化水素化イソプレンポリマーを、SA-H-ポリイソプレン-Aが7.0のコハク酸官能価を有し、反応の終了時に反応物を排出する前に追加の油(グループIII、4cSt(Yubase(商標)4))で希釈したことを除き、7.15-F-H-ポリイソプレン-Aを製作するために使用したものと同じ手順を使用して調製した。7.0-F-H-ポリイソプレン-Aは、1.86の官能価分布(Fd)値、1.250のMw/Mn、35,140g/molのMn、55,726g/molのMzを有し、別様の指示がない限り、0.55質量%のaiを有する油中のブレンドとして使用した。
【0191】
F-EP-コポリマーは、上記と同じ方法を使用して、エチレン-プロピレンコポリマー(Trilene(商標)CP-80、Lion Elastomers社、Mnはおよそ23,000g/mol、E/Pはおよそ41/59)をマレイン化し、次いでアミンN-フェニル-p-フェニレンジアミン(ADPA)と反応させ、1つ又は複数のペンダントアミン基を含み、1.84の平均官能価(Fv)、6.89の官能価分布(Fd)値、1.837のMw/Mn、18,529g/molのMn、及び56,721g/molのMzを有するエチレン-プロピレンコポリマーを得ることにより調製された官能化エチレン-プロピレンコポリマーであり、別様の指示がない限り、0.83質量%のaiを有する油中のブレンドとして使用した。
【表2】


【実施例0192】
(実施例1)
バルブトレイン摩耗保護のカミンズISB試験。
油A、油B、及び比較油Cを調製し、上記に記載のカミンズISBエンジン試験に従ってバルブトレイン摩耗保護について試験した。データを表1に示す。
【表3】

比較油Cは、H-ポリイソプレン-A成分がアミン/アルコールとの反応によりマレイン化も官能化もされておらず、つまり無水コハク酸もポリアミンも有していない水素化ポリイソプレンポリマーであることを除き、油Aと同じ配合物である。油A及び油Bは、カミンズISBバルブトレイン摩耗試験において、すべての摩耗測定値、特にカムシャフト摩耗のパラメーターが、比較油Cと比べて明確で驚くべき向上を示している。
【0193】
(実施例2)
煤煙誘導性粘度制御のMack T11試験
油D及び比較油Eを調製し、上記に記載のMack T11エンジン試験に従って煤煙誘導性粘度制御を試験した。より良好な煤煙分散性を有する油は、指定の粘度増加においてより高レベルの煤煙を保持することができるだろう。比較油Eは、官能化ポリマーがエチレン-プロピレン-無水コハク酸-ポリアミンコポリマー(F-EP-コポリマー)であることを除いて、油Dと同じ配合物である。油D及び比較油E中の官能化ポリマーのレベルは、ポリアミン官能基が寄与する窒素%が等しくなるように調整されている。指定の3つの粘度増加レベル(4cSt、12cSt、及び15cSt)の全てにおいて、油Dは、より多くの煤煙を保持することでき、驚くほどより良好な煤煙分散性を示している。
【表4】
【0194】
(実施例3)
煤煙誘導性粘度制御のMack T11試験
油T及び油Uを調製し、上記に記載のMack T11試験に従って煤煙誘導性粘度制御を試験した。データを表3に報告する。油Uは油Tよりもはるかにより良好な粘度制御を示すことに留意されたい。
【表5】
【0195】
(実施例4)
煤煙誘導性粘度制御のMack T11試験
油P及び油Qを調製し、上記に記載のMack T11試験に従って煤煙誘導性粘度制御を試験した。データを表3に報告する。油Pは油Qよりもはるかにより良好な粘度制御を示すことに留意されたい。
【表6】
【0196】
(実施例5)
煤煙誘導性摩耗及び粘度制御のフォード6.7Lパワーストロークディーゼルエンジン試験
油R及び油Sを調製し、上記に記載のフォードディーゼルエンジン試験で、煤煙誘導性摩耗及び粘度制御を試験した。油Rは,粘度グレードがSAE 10W-30の完全配合油である。油Rは、処理率が19.2%の添加剤パッケージを含む。油Sは、油Rと同じ添加剤パッケージを含むが、追加の0.5%官能化水素化ポリイソプレン(7.0-F-H-ポリイソプレン-A)を含む。油Sは、油Rと比較して、より少ない質量損失及びより良好な粘度制御を示す。
【0197】
同様に、油V及び油Wを調製し、上記に記載のフォードディーゼルエンジン試験で、煤煙誘導性摩耗及び粘度制御を試験した。油Vは,粘度グレードがSAE 10W-30の完全配合油である。油Vは、処理率が14.55%の添加剤パッケージを含む。油Wは、油Vと同じ添加剤パッケージを含むが、追加の0.5%官能化水素化ポリイソプレン(7.0-F-H-ポリイソプレン-A)を含む。油Wは、油Vと比較して、より少ない質量損失及びより良好な粘度制御を示す。
【表7】

*2回の試験の平均、**3回の試験の平均
【0198】
(実施例6)
ピストン堆積物のCaterpillar 1N試験
油F及び油Gを調製し、0.04%燃料硫黄による1N手順を使用し、上記に記載のASTM D6750に従ってCaterpillar 1Nエンジン試験で、ピストン及びリング溝堆積物を形成する傾向について試験した。油Fは、0.5%の7.0-F-H-ポリイソプレン-A及び添加剤パッケージ(処理率20%)を含み、残りはグループII潤滑油ベースストックを含む油及び粘度調整剤である、完全配合15W-40潤滑油である。油Gは、7.0-F-H-ポリイソプレン-Aを含まないことを除き、油Fと同じ配合物である。潤滑油のバルクにおける7.0-F-H-ポリイソプレン-Aを、同じグループIIベースストックで置き換えた。
【0199】
各試験終了時のピストン評価を下記の表に示す。WDNは、Cat 1Nでの加重デメリット(Weighted Demerit)の略である。数値が大きいほど、堆積物がより深刻であることを示す。初期処理条件では7.0F-H-ポリイソプレン-Aを含む油Fは、副産物により引き起こされる変色がより少ない油Gよりも性能が悪い。
【表8】
【0200】
(実施例7)
ピストン堆積物のCaterpillar 1N試験
油H、油I、及び油Jを調製し、上記に記載のCaterpillar 1Nエンジン試験でピストン及びリング溝堆積物を形成する傾向について試験した。油Hは、処理率が20%の添加剤パッケージを含む完全配合15W-40潤滑油であり、添加剤パッケージは、1.560質量%の7.0-F-H-ポリイソプレン-Aを含む。
油Iは、水素化ポリイソプレン-無水コハク酸-ポリアミンの官能化ポリマー7.0-F-H-ポリイソプレン-Aを異なる方法で調製したことを除いて、油Hと同じ配合物である。油Iでは、7.0-F-H-ポリイソプレン-Aを、副産物を最小限に抑えるために、同じ期間にわたって(5回に分けて滴下するのではなく、20回に分けて滴下する)半連続方式で同量の無水マレイン酸を提供したことを除いて、油Hの7.0-F-H-ポリイソプレン-Aと同じ方法に従って調製した。
油Iは、水素化ポリイソプレン-無水コハク酸-ポリアミンの官能化ポリマー(7.0-F-H-ポリイソプレン-A)を異なる方法で調製したことを除いて、油Hと同じ配合物である。油Jでは、7.0-F-H-ポリイソプレン-Aを、副産物を最小限に抑えるために、出発H-ポリイソプレン-Aポリマー骨格を、より高い濃度(40%の代わりに60%)で基油に送達し、同じ期間にわたって(5回に分けて滴下するのではなく、60回に分けて滴下する)半連続方式で同量の無水マレイン酸を提供したことを除いて、油Iの7.0-F-H-ポリイソプレン-Aと同じ方法に従って調製した。
【0201】
各試験終了時のピストン評価を以下の表に示す。Cat 1N試験結果のより高い加重デメリット数(WDN)は、堆積物がより深刻であることを示す。油I及び油Jは、副産物を最小限に抑えるように最適化された合成方法にため、マレイン化種(7.0-F-H-ポリイソプレン-Aの中間マレイン化水素化ポリイソプレン以外の)の含有量が少ないと考えられ、油Hよりも大幅により低いWDNを示した。
【表9】

(実施例8)
油K、L、M、及びNを、下記に示されているように調製することになる。
【表10】
【0202】
(実施例9)
油O、P、Q、及びRを、下記に示されているように調製することになる。
【表11】

(実施例10)
A. 4.12-F-H-ポリイソプレンA - 4.12の平均官能価(Fv)を有するアミン官能化水素化イソプレンポリマーを、SA-H-ポリイソプレン-Aが4.12のコハク酸官能価を有していたことを除いて、7.15-F-H-ポリイソプレン-Aを製作するために使用したものと同じ手順を使用して調製した。4.12-F-H-ポリイソプレン-Aは、1.67の官能価分布(Fd)値、1.194のMw/Mn、31,500のMn、43,154g/molのMzを有していた。図3は、GPCトレースを示す(ベースラインは横軸の三角形により示され、ピーク間の最小地点は横軸の菱形で示されている)。4.12-F-H-ポリイソプレン-Aを、上記の4.0-F-H-ポリイソプレン-A又は3.6-F-H-ポリイソプレン-Aを使用したものと同様のブレンドに使用することができる。例えば、4.12-F-H-ポリイソプレン-Aを、上記の実施例1及び3における上記の4.0-F-H-ポリイソプレン-A又は3.6-F-H-ポリイソプレン-Aの代わりに使用することができる。
B. 7.93-F-H-ポリイソプレン-A - 7.93の平均官能価(Fv)を有するアミン官能化水素化イソプレンポリマーを、SA-H-ポリイソプレン-Aが7.93のコハク酸官能価を有していたことを除いて、7.15-F-H-ポリイソプレン-Aを製作するために使用したものと同じ手順を使用して調製した。7.93-F-H-ポリイソプレン-Aは、2.36官能価分布(Fd)値、1.277のMw/Mn、33,627のMn、及び55,781g/molのMzを有していた。図4は、GPCトレースを示す(ベースラインは横軸の三角形により示され、ピーク間の最小地点は横軸の菱形で示されている)。7.93-F-H-ポリイソプレン-Aを、上記の7.0-F-H-ポリイソプレン-A又は7.15-F-H-ポリイソプレン-Aを使用したものと同様のブレンドに使用することができる。例えば、7.93-F-H-ポリイソプレン-Aを、上記の実施例1、2、3、4、5、6、7、8、及び9における7.0-F-H-ポリイソプレン-A又は7.15-F-H-ポリイソプレン-Aの代わりに使用することができる。
C. F-EP-コポリマーBは、上記と同じ方法を使用して、エチレン-プロピレンコポリマー(Trilene(商標)CP-80、Lion Elastomers社、Mnはおよそ23,000g/mol、E/Pはおよそ41/59)をマレイン化し、次いでアミンN-フェニル-p-フェニレンジアミン(ADPA)と反応させ、1つ又は複数のペンダントアミン基を含み、2.5の平均官能価(Fv)、3.77の官能価分布(Fd)値、1.588のMw/Mn、19,147のMn、及び47,161g/molのMzを有するエチレン-プロピレンコポリマーを得ることにより調製された官能化エチレン-プロピレンコポリマーである。図5は、GPCトレースを示す(ベースラインは横軸の三角形により示され、ピーク間の最小地点は横軸の菱形で示されている)。
D. F-EP-コポリマーCは、上記と同じ方法を使用して、エチレン-プロピレンコポリマー(Trilene(商標)CP-80、Lion Elastomers社、Mnはおよそ23,000g/mol、E/Pはおよそ41/59)をマレイン化し、次いでアミンN-フェニル-p-フェニレンジアミン(ADPA)と反応させ、1つ又は複数のペンダントアミン基を含み、4.68の平均官能価、3.83の官能価分布(Fd)値、1.578のMw/Mn、19,396のMn、及び47,559g/molのMzを有するエチレン-プロピレンコポリマーを得ることにより調製された官能化エチレン-プロピレンコポリマーである。図6は、GPCトレースを示す(ベースラインは横軸の三角形により示され、ピーク間の最小地点は横軸の菱形で示されている)。
【0203】
あらゆる優先権文書及び/又は試験手順を含む、本明細書に記載の全ての文書は、この本文と矛盾しない範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。上述の基本的説明及び特定の実施形態から明らかなように、本発明の形態が図示及び説明されているが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく種々の改変をなすことができる。したがって、本発明は、それらにより限定されることは意図されていない。「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」という用語と同義であるとみなされる。同様に、組成物、要素、又は要素の群に「含む(comprising)」という移行句が先行している場合は常に、組成物、1つ又は複数の要素の記載に先行する、「から本質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consisting of)」、「からなる群から選択される(selected from the group of consisting of)」、又は「である(is)」という移行句を伴う同じ組成物又は要素の群も企図され、その逆も同様であることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】