(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056654
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】抵抗ベースの物理的複製困難関数
(51)【国際特許分類】
H04L 9/10 20060101AFI20240416BHJP
G06F 7/58 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H04L9/10 Z
G06F7/58 680
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023175158
(22)【出願日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】17/963,587
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519383544
【氏名又は名称】アナログ・ディヴァイシス・インターナショナル・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・エフライム・デイヴィッド・ハーウィッツ
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・ベルナルド・ディン
(57)【要約】
【課題】物理的複製困難関数(PUF)装置を開示する。
【解決手段】この装置は、各々が第1の分圧器及び第2の分圧器を含む複数のPUFセルを含む。この装置はまた、複数のPUFセルのうちの少なくとも1つを選択するための選択ユニットと、各選択されたPUFセルに結合された読み出しユニットとを含む判定ユニットを含む。読み出しユニットは、第1の分圧器での第1のアナログ電圧と第2の分圧器での第2のアナログ電圧との差に基づいて、選択されたPUFセルのPUF値を判定するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的複製困難関数、PUF、装置であって、
複数のPUFセルであって、各PUFセルが、
第1の測定点において、互いに直列に接続された第1の抵抗器及び第2の抵抗器を備える、第1の分圧器と、
前記第1の分圧器に並列に結合され、かつ第2の測定点において、互いに直列に接続された第3の抵抗器及び第4の抵抗器を備える、第2の分圧器と、を備える、複数のPUFセルと、
を備える、複数のPUFセルと、
判定ユニットであって、
前記複数のPUFセルのうちの少なくとも1つを選択するための選択ユニットと、
選択された各PUFセルの前記第1の結合点及び前記第2の結合点に結合される読み出しユニットであって、
前記第1の分圧器及び前記第2の分圧器に対し入力電圧が印加されるとき、前記第1の測定点における第1のアナログ電圧と前記第2の測定点における第2のアナログ電圧との差に基づいて、前記選択されたPUFセルのPUF値を判定するように構成されている、読み出しユニットと、
を備える、判定ユニットと、
を備える、PUF装置。
【請求項2】
前記複数のPUFセルの各々が、
前記PUFセルを選択するための前記選択ユニットによって制御可能である選択機構を更に備える、請求項1に記載のPUF装置。
【請求項3】
前記選択機構が、
第1のセル有効化スイッチを備え、前記第1のセル有効化スイッチが、前記第1の分圧器、前記第2の分圧器及び第1の電圧供給線に結合され、それにより、前記第1の分圧器及び前記第2の分圧器が、前記第1のセル有効化スイッチによって、前記第1の電圧供給線に切り替え可能に結合され、
前記第1のセル有効化スイッチの状態が、前記選択ユニットによって制御され、
PUFセルを選択することが、前記第1の分圧器及び前記第2の分圧器を前記第1の電圧供給線に結合するように、前記PUFセル内の前記第1のセル有効化スイッチの前記状態を設定することを含む、請求項2に記載のPUF装置。
【請求項4】
前記選択機構が、
第1のアドレッシングスイッチであって、前記第1の測定点及び前記読み出しユニットに結合されて、それにより、前記第1の測定点が、前記第1のアドレッシングスイッチによって、前記読み出しユニットに切り替え可能に結合される、第1のアドレッシングスイッチと、
第2のアドレッシングスイッチであって、前記第2の測定点及び前記読み出しユニットに結合され、それにより、前記第2の結合点が、前記第2のアドレッシングスイッチによって、前記読み出しユニットに切り替え可能に結合される、第2のアドレッシングスイッチと、
を備え、
前記第1のアドレッシングスイッチの状態及び前記第2のアドレッシングスイッチの状態が、前記選択ユニットによって制御され、
PUFセルを選択することが、前記第1の測定点を前記読み出しユニットに結合するように、前記PUFセル内の前記第1のアドレッシングスイッチの前記状態を設定することと、前記第2の測定点を前記読み出しユニットに結合するように、前記PUFセル内の前記第2のアドレッシングスイッチの前記状態を設定することと、を含む、請求項2に記載のPUF装置。
【請求項5】
前記選択機構が、
第1のアクセススイッチであって、前記第1の抵抗器に結合されて、それにより、高電圧供給線及び前記第1の測定点が、前記第1の抵抗器及び前記第1のアクセススイッチによって互いに切り替え可能に結合される、第1のアクセススイッチと、
第2のアクセススイッチであって、前記第2の抵抗器に結合されて、それにより、低電圧供給線及び前記第1の測定点が、前記第2の抵抗器及び前記第2のアクセススイッチによって互いに切り替え可能に結合される、第2のアクセススイッチと、
第3のアクセススイッチであって、前記第3の抵抗器に結合されて、それにより、前記高電圧供給線及び前記第2の測定点が、前記第3の抵抗器及び前記第3のアクセススイッチによって互いに切り替え可能に結合される、第3のアクセススイッチと、
第4のアクセススイッチであって、前記第4の抵抗器に結合されて、それにより、前記低電圧供給線及び前記第2の測定点が、前記第4の抵抗器及び前記第4のアクセススイッチによって互いに切り替え可能に結合される、第4のアクセススイッチと、
を備え、
前記第1のアクセススイッチの状態、前記第2のアクセススイッチの状態、前記第3のアクセススイッチの状態、及び前記第4のアクセススイッチの状態が、前記選択ユニットによって制御される、請求項2に記載のPUF装置。
【請求項6】
前記複数のPUFセルの各々に対して、前記選択ユニットが、選択信号線に選択制御信号を印加することによって、前記選択機構を制御するために使用する、前記選択ユニットが、前記選択信号線で、前記選択機構に結合される、請求項2に記載のPUF装置。
【請求項7】
前記複数のPUFセルが、行及び列の行列として編成され、
前記行列内の各行に対して、特定の行のPUFセルの選択信号線に印加される選択制御信号が、その特定の行内のPUFセルの各々における前記選択機構を制御するように、前記PUFセルが、選択信号線を共有する、請求項6に記載のPUF装置。
【請求項8】
前記複数のPUFセルが、行及び列の行列として編成され、前記装置が、
前記行列の各列に対して、第2のセル有効化スイッチを更に備え、前記第2のセル有効化スイッチが、第2の電圧供給線と、前記列の各PUFセルの前記第1の分圧器及び前記第2の分圧器と、に結合されて、それにより、前記行列の列の各PUFセルにおける前記第1の分圧器及び前記第2の分圧器が、それぞれの第2のセル有効化スイッチによって、前記第2の電圧供給線に結合され、
前記第2のセル有効化スイッチの状態が、前記選択ユニットによって制御され、
PUFセルを選択することが、前記第1の分圧器及び前記第2の分圧器を前記第2の電圧供給線に結合するように、前記PUFセルが位置する前記列の前記第2のセル有効化スイッチの前記状態を設定することを含む、請求項1に記載のPUF装置。
【請求項9】
各PUFセルに対して、前記第1の抵抗器及び前記第3の抵抗器が、マッチングされた抵抗器であり、前記第2の抵抗器及び第4の抵抗器が、マッチングされた抵抗器である、請求項1に記載のPUF装置。
【請求項10】
前記第1の抵抗器、第2の抵抗器、第3の抵抗器及び第4の抵抗器の各々が、1つ以上のユニット抵抗器を備える、請求項9に記載のPUF装置。
【請求項11】
前記第1の分圧器及び前記第2の分圧器を構成する前記複数のユニット抵抗器が、前記第1の分圧器を構成する前記ユニット抵抗器の質量中心が、前記第2の分圧器を構成する前記ユニット抵抗器の質量中心と実質的に同じであるように配置される、請求項10に記載のPUF装置。
【請求項12】
前記読み出しユニットが、前記選択されたPUFセルの前記第1の測定点及び前記第2の測定点に結合されており、かつ前記第1のアナログ電圧と前記第2のアナログ電圧との間の差のデジタル表現を生成するように構成されている、アナログ-デジタル変換器、ADCを更に備え、
前記PUF装置が、少なくとも1つのADC基準電圧を前記ADCに供給するための電圧基準生成器を更に備え、前記少なくとも1つのADC基準電圧は、前記入力電圧の変化が前記少なくとも1つのADC基準電圧の変化によって反映されるように前記入力電圧と関連付けられ、
前記電圧基準生成器が、前記少なくとも1つのADC基準電圧を生成するためのPUFセルの少なくとも一部の比率変更された複製を備える、請求項1に記載のPUF装置。
【請求項13】
前記電圧基準生成器が、前記入力電圧を受信し、かつ前記入力電圧に基づいて、前記少なくとも1つのADC基準電圧を生成する、請求項12に記載のPUF装置。
【請求項14】
前記電圧基準生成器が、PUFセルの少なくとも1つの電流経路の比率変更された複製を備え、前記入力電圧が、前記PUFセルの前記比率変更された複製に対して印加され、前記少なくとも1つのADC基準電圧が、前記PUFセルの前記比率変更された複製の分圧器から導出される、請求項13に記載のPUF装置。
【請求項15】
前記複数のPUFセルが、行及び列の行列として編成され、
前記PUFセルの行列が、複数のグループ化された列として編成され、各グループ化された列が、2列以上のPUFセルの列を含み、
前記判定ユニットが、各グループ化された列に対して、読み出しユニットを備え、
各読み出しユニットが、PUF値の判定のために、前記グループ化された列内の前記列のうちのいずれか1つを選択するためのマルチプレクサを備える、請求項14に記載のPUF装置。
【請求項16】
複数のPUFセルのうちの1つであるPUFセルを使用してPUF値を判定する方法であって、
前記PUFセルを選択することであって、前記PUFセルが、抵抗器のHブリッジを備え、前記PUFセルを選択することが、前記Hブリッジにわたる供給電圧によって、前記PUFセルが有効化されることをもたらし、前記Hブリッジの前記2つの測定点が、読み出しユニットに結合される、前記PUFセルを選択することと、
前記読み出しユニットによって、前記PUFセルの前記2つの測定点における前記アナログ電圧に基づいて、前記PUFセルの前記PUF値を判定することと、
を含む、方法。
【請求項17】
PUF装置であって、
少なくとも1つの構成要素を備えるPUFセルと、
読み出しユニットと、
を備え、前記読み出しユニットが、
前記PUFセルから受信したアナログ値を変換するためのアナログ-デジタル変換器であって、前記アナログ値が、前記PUFセル内の前記少なくとも1つの構成要素と、前記PUFセルに印加される刺激電圧と、に依存する、アナログ-デジタル変換器と、
前記アナログ-デジタル変換器に基準電圧を供給するように構成された基準生成器と、
を備え、
前記基準電圧が、刺激電圧の変化が基準電圧の変化を引き起こすように、前記刺激電圧に依存するか、又は
前記刺激電圧が、基準電圧の変化が刺激電圧の変化を引き起こすように、前記基準電圧に依存する、PUF装置。
【請求項18】
前記基準生成器が、前記PUFセルの少なくとも一部の複製を更に備え、
前記基準生成器が、前記刺激電圧及び前記PUFセルの前記少なくとも一部の前記複製を使用して、前記基準電圧を生成するように構成される、請求項17に記載のPUF装置。
【請求項19】
前記PUFセルが、分圧器を備え、前記PUFセルの前記複製が、前記分圧器の複製を備え、
前記刺激電圧が、前記分圧器の前記複製に印加され、前記基準電圧が、前記分圧器の前記複製から導出される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記PUFセルの前記複製内の前記少なくとも1つの構成要素が、前記PUFセル内の前記少なくとも1つの構成要素と同一であるか、又は前記PUFセルの前記少なくとも1つの構成要素のより小さい、スケーリングされたバージョンである、請求項18に記載の読み出しユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抵抗ベースの物理的複製困難関数(PUF)に関する。
【背景技術】
【0002】
物理的複製困難関数(物理的に複製不可能な関数とも呼ばれる場合もある)又は「PUF」は、所与の入力(「チャレンジ」)に対して「フィンガープリント」とみなすことができるような、その特定のPUFに固有のものである出力(「レスポンス」)を生成することができる物理的実体である。この機能は、通常、製造上のわずかなばらつきにより各デバイスでランダムに異なる特徴に、出力が依存するようにPUFを設計することで得られる。したがって、PUFは、その回路レイアウトが完全にわかっていても、正しいフィンガープリントで容易に複製することはできない。レスポンスは、例えば、PUFを含むデバイスとの間の通信を安全にするための暗号化動作において、又はPUF等を含むデバイスのアイデンティティを認証するプロセスにおいて、様々な異なる目的に使用され得る。
【0003】
PUF装置は、1つ以上のPUFセルを備え得、各PUFセルは、わずかな製造上のばらつきのために、各デバイスでランダムに異なるいくつかの物理的特徴と、PUFセルの各々からPUF値を読み出すように構成されたいくつかの判定回路と、を備え得る。PUF装置は、判定回路がPUFセルの各々からランダムなPUF値を読み出し、PUF値に基づく持続的な乱数を生成することができるように構成され得る。持続的な乱数は、次いで、「チャレンジ」への「レスポンス」の判定の一部として使用され得る。例えば、PUF装置は、別の回路から「チャレンジ」を受信し、判定回路は、次いで、PUFセルから持続的な乱数を読み取り、かつPUF装置は、次いで、「チャレンジ」及び持続的な乱数に基づいて「レスポンス」を判定し得る(例えば、ハッシュ、又はXOR等の何らかの暗号演算、又は「チャレンジ」及び持続的な乱数を使用した暗号化を実行することにより)。持続的な乱数は、その値が異なるPUF装置間のマイナーなランダムな製造上のばらつきに左右されるという点でランダムである。したがって、設計が同一でも、異なるPUF装置の場合には、それぞれ異なる持続的な乱数を生成するはずである。乱数は、経時的に、同じままか又は許容限度内で同じままのはずであると言う点で「持続的」である。例えば、PUF装置により生成される持続的な乱数は、デバイスの信頼できるフィンガープリントとして機能することができるように、生成されるたびに同じであるはずである(又は、例えば、誤り訂正符号、ECCを使用して修正することができるように、許容可能な限界内で同じままであるはずである)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、持続的な乱数(PUF出力)を生成するためのPUF装置に関する。この乱数は、PUF装置の各特定の例が、PUF装置の他の全ての例に対してランダムに異なる数を生成するはずであると言う点でランダムであり、PUF装置の各特定の例が許容誤差内で同じ数を繰り返し生成するはずであると言う点で持続的である。乱数は、各々がフル抵抗器ブリッジ又はHブリッジ(例えば、一対の分圧器)を備える、1つ以上のPUFセルを選択し、かつブリッジの両側間のランダムインピーダンス差を正確かつ確実に示すPUF値を判定することにより判定され、それに基づいて乱数、すなわちPUF出力が生成される。抵抗器間のランダムな製造上の差は、生成された乱数にランダム性を作り出す。更に、ランダムな製造上の差は経時的に比較的安定しているはずなので、生成された乱数は持続的であるはずである。
【0005】
各PUFセルからの出力は、一対のアナログ信号、すなわちHブリッジの各側からの1つの信号であり得る。次いで、これら2つの信号間の差を、PUFセル外部の回路が使用して(例えば、判定ユニット又は回路内で)、そのPUFセルの持続的なランダムPUF値を判定することができる。一対のアナログ信号を出力することにより、各PUFセル内の構成要素の数は最小化され得る。これは、PUFセルのアレイのサイズ及びコストを削減するのに役立ち、また、系統的なバイアス(例えば、50:50超の確率で、Hブリッジの片側のインピーダンスが、もう片側のインピーダンスよりも高く見える)の原因となり得る構成要素がほとんどないため、PUFセルごとに生成されるPUF値のランダム性を維持するのにも役立ち得る。更に、アナログ信号を出力することは、任意選択的にランダム差の大きさが測定され得ることを意味する。これは、例えば、Hブリッジの両側の間に非常に小さいランダムな差を有するPUFセルの使用を排除するためにPUF装置を最初に構成/較正するときに有用かもしれない。デバイスの老朽化と環境条件に起因するある程度の変化が、経時的に予想され得る。結果として、時間の経過とともに、PUF値は、非常に小さなランダムな差を有するPUFセルに対して変化し得る。差の大きさの測定を可能にすることにより、それらのPUFセルを、PUF出力を判定する際の使用から除外することが可能であり、それによりPUF出力の長期持続性が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様では、物理的複製困難関数、PUF、装置が提供され、装置は、複数のPUFセルであって、各PUFセルが、第1の測定点において、互いに直列に接続された第1の抵抗器及び第2の抵抗器を備える、第1の分圧器と、第1の分圧器に並列に結合され、かつ第2の測定点において、互いに直列に接続された第3の抵抗器及び第4の抵抗器を備える、第2の分圧器と、を備える、複数のPUFセルと、判定ユニットであって、複数のPUFセルのうちの少なくとも1つを選択するための選択ユニットと、選択された各PUFセルの第1の結合点及び第2の結合点に結合されており、かつ第1の分圧器及び第2の分圧器に対し入力電圧が印加されるとき、第1の測定点における第1のアナログ電圧と第2の測定点における第2のアナログ電圧との差に基づいて、選択されたPUFセルのPUF値を判定するように構成されている、読み出しユニットと、を備える、判定ユニットと、を備える。
【0007】
複数のPUFセルの各々が、PUFセルを選択するための選択ユニットによって制御可能である選択機構を更に備え得る。
【0008】
選択機構が、第1のセル有効化スイッチを備え得、第1のセル有効化スイッチが、第1の分圧器、第2の分圧器及び第1の電圧供給線に結合され、それにより、第1の分圧器及び第2の分圧器が、第1のセル有効化スイッチによって、第1の電圧供給線に切り替え可能に結合され、第1のセル有効化スイッチの状態が、選択ユニットによって制御され、PUFセルを選択することが、第1の分圧器及び第2の分圧器を第1の電圧供給線に結合するように、PUFセル内の第1のセル有効化スイッチの状態を設定することを含む。第1の電圧供給線は、高電圧供給線でも低電圧供給線であり得る。
【0009】
追加的又は代替的に、選択機構が、第1のアドレッシングスイッチであって、第1の測定点及び読み出しユニットに結合されて、それにより、第1の測定点が、第1のアドレッシングスイッチによって、読み出しユニットに切り替え可能に結合される、第1のアドレッシングスイッチと、第2のアドレッシングスイッチであって、第2の測定点及び読み出しユニットに結合され、それにより、第2の結合点が、第2のアドレッシングスイッチによって、読み出しユニットに切り替え可能に結合される、第2のアドレッシングスイッチと、を備え得、第1のアドレッシングスイッチの状態及び第2のアドレッシングスイッチの状態が、選択ユニットによって制御され、PUFセルを選択することが、第1の測定点を読み出しユニットに結合するように、PUFセル内の第1のアドレッシングスイッチの状態を設定することと、第2の測定点を読み出しユニットに結合するように、PUFセル内の第2のアドレッシングスイッチの状態を設定することと、を含む。
【0010】
代替的に、選択機構が、第1のアクセススイッチであって、第1の抵抗器に結合されて、それにより、高電圧供給線及び第1の測定点が、第1の抵抗器及び第1のアクセススイッチによって互いに切り替え可能に結合される、第1のアクセススイッチと、第2のアクセススイッチであって、第2の抵抗器に結合されて、それにより、低電圧供給線及び第1の測定点が、第2の抵抗器及び第2のアクセススイッチによって互いに切り替え可能に結合される、第2のアクセススイッチと、第3のアクセススイッチであって、第3の抵抗器に結合されて、それにより、高電圧供給線及び第2の測定点が、第3の抵抗器及び第3のアクセススイッチによって互いに切り替え可能に結合される、第3のアクセススイッチと、第4のアクセススイッチであって、第4の抵抗器に結合されて、それにより、低電圧供給線及び第2の測定点が、第4の抵抗器及び第4のアクセススイッチによって互いに切り替え可能に結合される、第4のアクセススイッチと、を備え得、第1のアクセススイッチの状態、第2のアクセススイッチの状態、第3のアクセススイッチの状態、及び第4のアクセススイッチの状態が、選択ユニットによって制御される。
【0011】
複数のPUFセルの各々に対して、選択ユニットが、選択信号線に選択制御信号を印加することによって、選択機構を制御するために使用する、選択ユニットが、選択信号線で、選択機構に結合され得る。
【0012】
複数のPUFセルが、行及び列の行列として編成され得、行列内の各行に対して、特定の行のPUFセルの選択信号線に印加される選択制御信号が、その特定の行内のPUFセルの各々における選択機構を制御するように、PUFセルが、選択信号線を共有する。
【0013】
複数のPUFセルが、行及び列の行列として編成され得、装置が、行列の各列に対して、第2のセル有効化スイッチを更に備え、第2の有効化スイッチが、第2の電圧供給線と、列の各PUFセルの第1の分圧器及び第2の分圧器と、に結合されて、それにより、行列の列の各PUFセルにおける第1の分圧器及び第2の分圧器が、それぞれの第2のセル有効化スイッチによって、第2の電圧供給線に結合され、第2のセル有効化スイッチの状態が、選択ユニットによって制御され、PUFセルを選択することが、第1の分圧器及び第2の分圧器を第2の電圧供給線に結合するように、PUFセルが位置する列の第2のセル有効化スイッチの状態を設定することを含む。
【0014】
各PUFセルに対して、第1の抵抗器及び第3の抵抗器は、マッチングされた抵抗器であり得、第2の抵抗器及び第4の抵抗器は、マッチングされた抵抗器であり得る。
【0015】
任意選択的に、第1の抵抗器、第2の抵抗器、第3の抵抗器、及び第4の抵抗器の各々が、1つ以上のユニット抵抗器を備え得る。第1の分圧器及び第2の分圧器を構成する複数のユニット抵抗器が、第1の分圧器を構成するユニット抵抗器の質量中心が、第2の分圧器を構成するユニット抵抗器の質量中心と実質的に同じであるように配置され得る。
【0016】
読み出しユニットが、選択されたPUFセルの第1の測定点及び第2の測定点に結合されており、かつ第1のアナログ電圧と第2のアナログとの間の差のデジタル表現を生成するように構成されている、アナログ-デジタル変換器、ADCを更に備え得、PUF装置が、少なくとも1つのADC基準電圧をADCに供給するための電圧基準生成器を更に備え、少なくとも1つのADC基準電圧は、入力電圧の変化が少なくとも1つのADC基準電圧の変化によって反映されるように入力電圧と関連付けられ、電圧基準生成器が、少なくとも1つのADC基準電圧を生成するためのPUFセルの少なくとも一部の比率変更された複製を備える。
【0017】
基準生成器が、入力電圧を受信し、かつ入力電圧に基づいて、少なくとも1つのADC基準電圧を生成し得る。
【0018】
電圧基準生成器が、PUFセルの少なくとも1つの電流経路の比率変更された複製を備え得、入力電圧が、PUFセルの比率変更された複製に対して印加され、少なくとも1つのADC基準電圧が、PUFセルの比率変更された複製の分圧器から導出される。
【0019】
判定ユニットが、2つ以上のPUFセルを選択し、かつ並行して、選択された2つ以上のPUFセルの各々についてそれぞれのPUF値を判定するように構成され得る。
【0020】
複数のPUFセルが、行及び列の行列として編成され得、判定ユニットが、列ごとに読み出しユニットを備える。
【0021】
複数のPUFセルが、行及び列の行列として編成され得、PUFセルの行列が、複数のグループ化された列として編成され、各グループ化された列が、2列以上のPUFセルの列を含み、判定ユニットが、各グループ化された列に対して、読み出しユニットを備え、各読み出しユニットが、PUF値の判定のために、グループ化された列内の列のうちのいずれか1つを選択するためのマルチプレクサを備える。
【0022】
本開示の第2の態様では、複数のPUFセルのうちの1つであるPUFセルを使用してPUF値を判定する方法が提供され、方法が、PUFセルを選択することであって、PUFセルが、抵抗器のHブリッジを備え、PUFセルを選択することが、Hブリッジにわたる供給電圧によって、PUFセルが有効化されることをもたらし、Hブリッジの2つの測定点が、読み出しユニットに結合される、PUFセルを選択することと、読み出しユニットによって、PUFセルの2つの測定点におけるアナログ電圧に基づいて、PUFセルのPUF値を判定することと、を含む。
【0023】
本開示の第3の態様において、PUF装置が提供され、PUF装置が、少なくとも1つの構成要素を備えるPUFセルと、読み出しユニットと、を備え、読み出しユニットが、PUFセルから受信したアナログ値を変換するためのアナログ-デジタル変換器であって、アナログ値が、PUFセル内の少なくとも1つの構成要素と、PUFセルに印加される刺激電圧と、に依存する、アナログ-デジタル変換器と、アナログ-デジタル変換器に基準電圧を供給するように構成された基準生成器と、を備え、基準電圧が、刺激電圧の変化が基準電圧の変化を引き起こすように、刺激電圧に依存するか、又は刺激電圧が、基準電圧の変化が刺激電圧の変化を引き起こすように、基準電圧に依存する。
【0024】
基準生成器が、PUFセルの少なくとも一部の複製を更に備え得、基準生成器が、刺激電圧及びPUFセルの少なくとも一部の複製を使用して、基準電圧を生成するように構成される。
【0025】
PUFセルが、分圧器を備え得、PUFセルの複製が、分圧器の複製を備え、刺激電圧が、分圧器の複製に印加され、基準電圧が、分圧器の複製から導出される。
【0026】
PUFセルの複製内の少なくとも1つの構成要素が、PUFセル内の少なくとも1つの構成要素と同一であり得るか、又はPUFセルの少なくとも1つの構成要素のより小さい、スケーリングされたバージョンである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本開示の各態様について、例示目的にのみ、以下の図面を参照して説明する。
【0028】
【
図1】本開示のある態様によるPUF装置/システムの例示的概略図を示す。
【
図2】
図1のPUF装置/システムからの簡略化されたPUFセルの例示的な図を示す。
【
図3】
図2のPUFセルを通る2つの電流経路を示す。
【
図4a】
図2のPUFセルの4つの抵抗器の共通の重心配置構成を示す。
【
図5a】
図1のPUF装置/システムからの簡略化されたPUFセルの更なる例示的な図を示す。
【
図5b】
図1のPUF装置/システムからの簡略化されたPUFセルの更なる例示的な図を示す。
【
図5c】
図1のPUF装置/システムからの簡略化されたPUFセルの更なる例示的な図を示す。
【
図6a】
図1のPUF装置/システムからの簡略化されたPUFセルの更なる例示的な図を示す。
【
図6b】
図1のPUF装置/システムからの簡略化されたPUFセルの更なる例示的な図を示す。
【
図7】
図1のPUF装置/システムからの簡略化されたPUFセルの更なる例示的な図を示す。
【
図8a】
図1のPUF装置/システムの例示的な実装態様の概略的な詳細を示す。
【
図8b】
図8aのPUF装置/システム内のPUFセルの例の概略的な詳細を示す。
【
図9】
図8aのPUF装置/システムの読み出しユニットの少なくとも一部の概略的な例示的な構成を示す。
【
図10a】
図9の読み出しユニットの基準生成器の概略的な例示的な実装態様を示す。
【
図10c】
図9の読み出しユニットの基準生成器の更なる概略的な例示的な実装態様を示す。
【
図11】グループ化された列を使用して編成されたPUFセルアレイの概略的な例を示す。
【
図12】本開示によるPUF値を判定する方法例の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明者らは、1つ以上のPUFセルを有するPUF装置を実装する際の多くの異なる課題を特定した。第一に、PUFセルの各可能な出力は、等しいか又は実質的に等しい確率を有するはずである。例えば、使用されるように構成されたPUFセルが、PUFセルのランダムな製造上のばらつきに応じて「1」又は「0」を生成する場合、「1」又は「0」の確率は等しいか、実質的に等しいはずである。これが達成されない場合、PUF装置の出力は、十分にランダムではないかもしれない。これを達成するには、任意の1つの特定の可能な出力値を優先しない、各PUFセル、及びPUF装置全体の回路設計及びレイアウト構成が必要である。
【0030】
第二に、PUF装置は、集積回路(IC)内で使用される消費電力及び/又は面積、並びに/又はPUF出力を生成するのに必要な時間に関して、低コストであることが好ましく、それにより、デバイス内でより容易に実装することができる。例えば、PUF装置は、モノのインターネット(IoT)デバイスのアイデンティティを認証するため、及び/又はIoTデバイスとの間の通信を安全にするため等、IoTデバイスのセキュリティに特に有用であり得る。IoTデバイスにPUF装置を含めるためには、PUF装置が安価でかつ/又は低電力かつ/又は小型であることが有用である。
【0031】
第三に、PUF装置により生成される乱数は持続的な必要があるので、例えば、温度変化、電源電圧変化等の環境条件の変化であっても、乱数がベースとする任意のPUFセル測定値/読み取り値は、経時的に比較的安定し、一貫していることが好ましい。したがって、乱数の値を判定する任意のPUFセル特性は、経時的に比較的安定し、経時的に正確かつ確実に測定されることが好ましく、それにより乱数は、同じままである(又は有効な誤差訂正符号化、すなわちECCに必要な許容範囲等の許容範囲内で同じのままである)。
【0032】
これらの課題の少なくともいくつかに対処するために、本明細書に開示のPUF装置は、複数のPUFセルを備える。PUFセルの各々は、一対のデバイスを含み、これは、フル抵抗器ブリッジ、又はHブリッジとして配置された一対の分圧器である。Hブリッジを構成する2つの分圧器の分圧器比率は、互いに同一になるように設計され得るが、抵抗器は、本質的にいくつかのランダムな製造上の差を有し、これは、分圧器の実際の分圧器比率にも何らかのランダム性をもたらすはずである。これは、PUFセルの各々について、2つのデバイス間の何らかのランダムな不均衡、具体的にはブリッジの両側の分圧器比のランダムな不均衡をもたらすはずである。これらのランダムな製造上の差は、ブリッジの両側の電圧間の電位差から、PUFセルのうちの1つ以上について検出され得る。したがって、PUF値は、ブリッジにわたる電圧の差に基づいて、PUFセルのうちの1つ以上の各々について判定され得、かつ持続的な乱数は、1つ以上のPUF値からPUF装置について生成され得る。
【0033】
Hブリッジ構成に抵抗器を配置することにより、2つのデバイス(2つの分圧器)のインピーダンス比のランダムな差は、2つの分圧器の各々からの分圧に基づいて正確に検出され得る。更に、各PUFセルは、設計及びレイアウトが同一であるため、電流は、各PUFセル内で同じ経路を辿り、各セル内のHブリッジの両側で同じ距離を移動する。これは、一部のPUFセルにおいて、ブリッジの片側を通過する電流が、残りのPUFセルよりも長い導電路を通過することにより引き起こされる、ブリッジの片側への固有のインピーダンスの不均衡がないことを意味する。そのような固有の不均衡は、それらのPUFセルから生成されるPUF値のランダム性を低下させると考えられる。最後に、各PUFセルは、2つのマッチングされたデバイス間のランダムな製造上の差、すなわちブリッジの両側間の不均衡を示すアナログ差動電圧を出力する。PUFセルからアナログ差動電圧を出力し、次いで、その電圧に基づいてPUF値を判定することにより、各PUFセル内の非抵抗器構成要素の数が最小化され、PUF値の判定に対する他の構成要素の影響を最小化することができ、それによりPUF値のランダム性が改善されるはずである。更に、比較されているマッチングされた構成要素(すなわち、Hブリッジを構成する2つの分圧器)が同じPUFセル内にあることを確実にする。これは、PUFセルの構成要素が共通の基準値又は構成要素と比較されている構成に存在し得るタイプの系統的バイアスを防止する。
【0034】
図1は、本開示の態様によるPUF装置/システム100の例示的な概略図を示す。PUF装置100は、複数のPUFセル105
x、y、判定ユニット170、及びチャレンジ/レスポンスユニット180を備える。PUFセル105
x、yからなる2x2アレイのみを図示するが
、任意のサイズ及び寸法のアレイに、又は任意の他の好適な構成に配置される任意の数のPUFセル(例えば、8、12、20、32、128、256等)が存在し得ることを理解されたい。
【0035】
判定ユニット170は、複数のPUFセル105x、yを使用してPUF出力を判定するように構成される。PUF出力は、持続的な乱数であり、これについては、本開示の「背景」セクションでより詳細に説明されている。
【0036】
チャレンジ/レスポンスユニット180は、外部の要素から「チャレンジ」を受信し、判定ユニット170からのPUF出力を要求かつ取得し、次いで、チャレンジ及びPUF出力に基づいてレスポンスを判定及び返信するよう構成される。チャレンジ/レスポンスユニット180は、PUFデバイスの当業者に明らかな任意の好適な態様で動作するよう構成され得る。チャレンジ/レスポンスユニット180は、別個のユニットを形成し得るか、又は判定ユニット170の一部であり得る。本開示は、具体的には、以下で詳細に説明されるように、PUFセル105x、y及び判定ユニット170の構成及び動作に関する。したがって、本開示では、チャレンジ/レスポンスユニット180への更なる言及又は説明は、行わない。
【0037】
図2は、本開示のある態様による、簡略化されたPUFセル105
x、yの例示的な図を示す。判定ユニット170への接続及び判定ユニット170がPUFセル105
x、yの少なくともいくつかのPUF値を判定し得る態様の更なる詳細については
、後述する。
【0038】
PUFセル105
x、yは、第1の分圧器210aと、第2の分圧器210bと、を備える。第1の分圧器210aは、第1の測定点Aで互いに直列に接続された第1の抵抗器Ra1及び第2の抵抗器Ra2を備える。第2の分圧器210bは、第2の測定点Bで互いに直列に接続された第3の抵抗器Rb1及び第4の抵抗器Rb2を備える。
図2からわかるとおり、PUFセル105
x、y内の抵抗器は
、Hブリッジ構成に配置されている。入力電圧(V
BIASHIGH-V
BIASLOW)は、第1の分圧器210a及び第2の分圧器210bに印加される。入力電圧はまた、本開示では「PUFセル刺激電圧」及び「刺激電圧」と同義に呼称される。V
BIASHIGH-V
BIASLOWの値は、任意の好適な値に設定され得、かつ以下の例では、V
BIASLOWは、接地電圧であると想定される(ただし、必ずしもそうである必要はない)。
【0039】
抵抗器Ra1、Ra2、Rb1及びRb2の設計抵抗は全て同じであり得る(すなわち、それらは全てマッチングさせた抵抗器であり得る)。代替的に、Ra1及びRb1は、互いに同じ設計抵抗を有し得(すなわち、それらはマッチングされた抵抗であり得る)、かつRa2及びRb2は、互いに同じ設計抵抗を有し得る(すなわち、それらはマッチングされた抵抗であり得る)。代替的に、Ra1、Ra2、Rb1及びRb2の各々は、異なる設計抵抗で、2つの分圧器が、同じ設計インピーダンス比、すなわち、Ra1:Ra2=Rb1:Rb2を有し得る。各例では、2つのデバイス(例えば、2つの分圧器)は、それらが両方とも同じ設計インピーダンス比を有し、したがって、理論上、互いに同じ分圧を出力するはずである(すなわち、理論上、VaはVbと等しいはずである)という点でマッチングされている。しかしながら、製造上のばらつきのために、抵抗器の実際の抵抗は、設計抵抗と少なくともわずかに異なることを理解されたい。結果として、測定点Aの電圧は、同一のPUFセル105x、yの各々について、測定点Bの電圧とランダムな量だけ異なる可能性が高い。特に:
【0040】
【0041】
式中:
Δra1=第1の抵抗器の抵抗とその設計値とのランダムな差
Δra2=第2の抵抗器の抵抗とその設計値とのランダムな差
Δrb1=第3の抵抗器の抵抗とその設計値とのランダムな差
Δrb2=第4の抵抗器の抵抗とその設計値とのランダムな差
【0042】
したがって、VaとVbとの差は、PUFセル内の抵抗器の実際の抵抗のランダムなばらつきの結果として、セルごとに異なるはずであることがわかる。更に、Hブリッジは、入力電圧(電圧刺激)VBIASHIGH-VBIASLOWに対してレシオメトリックであるため、経時的に(例えば、温度変化の結果として)入力電圧の変化は、Va-Vbの符号(例えば、正又は負)に影響を与えないはずである。したがって、各PUFセル105x、yのVa-Vbの値は、ランダムであり、持続的になるはずである。したがって、判定ユニット170は、各PUFセル105x、yの電圧Va-Vbに基づいて、各PUFセル105x、yのPUF値を判定することができる。判定ユニット170が特定のPUFセル105x、yを選択し、そのPUF値を判定する態様の更なる詳細は、より詳細に後述する。
【0043】
図3は、PUFセル105
x、yのHブリッジを通る2つの電流経路、Route_a及びRoute_bを示す。Route_aとRoute_bとの間の任意の系統的(すなわち、PUFセルの一部又は全てにわたって複製される)差は、生成されたPUF値のランダム性を低減し得ることが認識されている(例えば、各PUFセルについての特定のPUF値を系統的に優先することにより、各PUFセルについての各可能なPUF値の確率が等しくなくなり、例えば、-ある50%の確率では0であり、ある50%の確率では1である)。したがって、以下に記載される設計の詳細のうちの1つ以上は、任意選択的に、Hブリッジのいずれかの側に向かう任意の系統的バイアスを最小限に抑えるために使用され得る。
【0044】
図4aは、4つの抵抗器Ra1、Ra2、Rb1、及びRb2のための例示的な共通重心配置構成を示し、それにより、第1の分圧器210aを構成する要素の質量中心は、第2の分圧器210bを構成する要素の質量中心と実質的に同じである。「実質的に同じ」という用語は、「合理的又は通常の製造許容差内で同じ」を意味することを意図する。
【0045】
図4aの例では、第1の抵抗器Ra1及び第3の抵抗器Rb1が、マッチングされ(すなわち、同じ設計値を有する)、第2の抵抗器Ra2及び第4の抵抗器Rb2が、マッチングされる(すなわち、同じ設計値を有する)。4つの抵抗器の各々は、複数の「ユニット抵抗器」で構成される。各ユニット抵抗器の設計値は同じである。この例では、Ra1及びRb1は各々8つのユニット抵抗器からなり、Ra2及びRb2は各々4つのユニット抵抗器からなり、それにより、Ra1及びRb1はRa2及びRb2の2倍の設計抵抗を有する。抵抗器Ra1、Ra2、Rb1、及びRb2の各々が1つ以上のユニット抵抗器を備え、全て、第1及び第2の分圧器の質量中心が実質的に同じになるように配置される、他の配置も可能であることを理解されたい。
【0046】
図4bは、ユニット抵抗器から構成される分圧器210a及び201bの概略的な回路図である。
【0047】
図4aに戻って、第1の分圧器210a及び第2の分圧器210bを構成するユニット抵抗器の質量中心(及び各ユニット抵抗器間の導電接続部)が実質的に同じであることがわかる。結果として、PUFセル105x、y、及び/又はPUFセルのアレイ全体にわたって(例えば、PUFセルが半導体プロセスを使用して製造さる場合には、ドーピング勾配及び/又はデバイス厚さ勾配により引き起こされる)抵抗変化の何らかの系統的勾配がある場合、それは、第1の分圧器210a及び第2の分圧器210bの分割器比率になんらの系統的なバイアスももたらさないはずである。結果として、各PUFセルにより生成されるPUF値のランダム性が改善されるはずである。
【0048】
PUFセル内の系統的バイアスを低減し得る他の設計態様には、全ての金属層に対して同じ寸法(例えば、同じ厚さ及び幅の金属トレース)を使用すること、route_a及びroute_bに対して同じ数の導電性ビアを使用すること、route_a及びroute_bの両方に対して同じ金属構造を使用すること、各抵抗器の上に同じメタライゼーションを使用することのうちのいずれか1つ以上が含まれる。追加的又は代替的に、(それに対してPUF値が判定される)2つのアナログ値Va及びVbを各PUFセルから出力することでも、例えば、各PUFセル内に系統的バイアスの可能性を増加させ得る追加の測定構成要素又はデジタル構成要素を含む他の設計と比較して、系統的バイアスを低減するのに役立つ。
【0049】
1つ以上のPUFセル105x、yの各々についてのPUF値を判定するために、判定ユニット170は、最初に、1つ以上のPUFセルを選択するか、又はアドレス指定し、次いで、それらのPUFセルについての電圧VaとVbとの間の差に基づいて、選択されたPUFセルの各々についてのPUF値を判定する。システム100がPUFセル選択を可能にするように構成され得る多くの異なる態様、及び電圧差Va-Vbが選択されたPUFセルに対して判定され得る多くの異なる態様が存在する。例示的なPUF値判定(又は読み出し)技術を説明する前に、様々な例示的な選択構成につき、まず説明する。
【0050】
いくつかの例示的な実装態様では、各PUFセル105x、yは、判定ユニット170の一部である選択ユニットにより制御可能である選択機構を備え得る。各PUFセル105x、y内の選択機構は、選択ユニットにより制御されるトランジスタ等の1つ以上のスイッチを備え得る。
【0051】
図5aは、第1の210a及び第2の210b分圧器がセル有効化スイッチ510により高側電圧供給線V
BIAS_HIGHに切り替え可能に結合されるように、選択機構が第1の210a及び第2の210b分圧器に結合された高側セル有効化スイッチ510である、1つ例示的なPUFセル105
x、yの実装態様を示す。この実装態様は、電圧刺激V
BIAS_HIGH-V
BIAS_LOWを印加することによりPUFセルが選択されるため、刺激選択/アドレッシングの一形態である。このようにして、選択されたPUFセルを「有効化する」ために、分圧器を入力/供給電圧に切り替え可能に結合することにより、個々のPUFセルが選択され得る。
【0052】
図5bは、同様の「刺激選択/アドレッシング」の例示的なPUFセル105
x、y実装態様を示すが、選択機構が第1の210a及び第2の210b分圧器に結合された低側セル有効化スイッチ520であり、セル有効化スイッチ520により、第1の210a及び第2の210b分圧器が低側電圧供給線V
BIAS_LOWに切り替え可能に結合される点が異なる。
【0053】
図5cは、選択機構が高側セル有効化スイッチ510及び低側セル有効化スイッチ520の両方を備え
、それらの両方が選択ユニットにより制御される、別の同様の「刺激選択/アドレッシング」の例示的なPUFセル105
x、yの実装態様を示す。この例では、PUFセルを有効化して選択するために、選択ユニットは、セル有効化スイッチ510及び520の両方を閉じるように制御し、それにより、分圧器510及び520を入力/供給電圧に結合すると考えられる。
【0054】
これらの例の全て及びPUFセルがスイッチを含むこれ以降の例では、スイッチは、スイッチによるプロセス又は温度依存性の導入を最小限に抑えるために、低いオンステート抵抗を有するように設計され得る。
【0055】
有効化スイッチに追加的に又は代替的に、各PUFセル内の選択機構が、アドレッシングスイッチを備え得る。アドレッシングスイッチは、「PUF値アドレッシング」機構を代表するもので、これにより、読み出しのためにPUFセルの出力にアクセスすることにより、PUFセルが選択/アドレス指定される。
【0056】
図6aは、選択機構が第1のアドレッシングスイッチ610aと、第2のアドレッシングスイッチ610bと、を備える、例示的な「PUF値の選択/アドレッシング」の実装態様を示す。第1のアドレッシングスイッチ610aが、第1の測定点A及び判定ユニット170の読み出しユニット(詳細に後述する)に結合され、それにより、第1の測定点Aが、第1のアドレッシングスイッチ610aにより読み出しユニットに切り替え可能に結合される。第2のアドレッシングスイッチ610bが、第2の測定点B及び読み出しユニットに結合され、それにより、第2の測定点Bは、第2のアドレッシングスイッチ610bにより読み出しユニットに切り替え可能に結合される。PUFセルを選択するために、選択ユニットは、第1及び第2のアドレッシングスイッチ610a及び610bを閉じるように制御し得、それにより、測定点A及びBを判定ユニット170内の読み出しユニットに結合し、PUF値が、電圧VaとVbとの間の差に基づいて判定される。セル選択のためのアドレッシングスイッチの使用は、読み出しユニットが共通の信号線を介して複数のPUFセルに結合される場合(より詳細に後述するとおり)、特に有益であり得る。アドレッシングスイッチは、同じ共通信号線を共有し、さもなければ選択されたPUFセルのインピーダンスに影響を与え得る、非選択PUFセルからの選択されたPUFセルの分離を改善する。しかしながら、複数のPUFセルが共通の信号線を介して読み出しユニットに結合されている場合でも、アドレッシングスイッチは必須ではない。例えば、各PUFセルは、選択されていないPUFセル(例えば、オープンであるセル有効化スイッチを有することにより選択されていないもの)が共通の信号線に対して高いインピーダンスを提示するように、高いインピーダンスにされ得る。
【0057】
図6bは、「刺激選択/アドレッシング」及び「PUF値選択/アドレッシング」の両方を使用する、更なる例示的なPUFセルの実装態様を示す。選択機構は、第1及び第2のアドレッシングスイッチ610a及び610b並びにセル有効化スイッチ520を備え、この例では、セル有効化スイッチは、低側に接続される(ただし、代替物では、高側セル有効化スイッチ510が追加的又は代替的に存在し得る)。また、共通のセル有効化スイッチ620も示す。この例では、共通のセル有効化スイッチ620は、PUFセル105の選択機構の一部ではなく、代わりにセルの外部にある。共通のセル有効化スイッチ620は、後述するように、PUFセルアレイ内のいくつかのPUFセルにより共有され得る。この場合にも、共通のセル有効化スイッチ620は任意選択的であり、各PUFセルは、代わりにV
BIAS_HIGHに直接結合され得るか、又は各PUFセルは、高側セル有効化スイッチ610を備え得る。
【0058】
この例は、選択機構は、セルが入力電圧への接続を制御することにより有効化及び無効化される、
図5a~
図5cに関連して上述した「刺激選択/アドレッシング」技術と、セルが読み出しユニットから結合又は分離することによりアドレス指定される、
図6aに関連して説明した「PUF値選択/アドレッシング」技術とを組み合わせたものである。両方を組み合わせることにより、セルアレイ内の選択されたPUFセルと選択解除されたPUFセルとの間の分離が最大化され得、それにより、選択解除されたPUFセルが選択されたPUFセルに及ぼし得る影響を最小化し得る。PUFセルを選択するために、選択ユニットは、アドレッシングスイッチ610a及び610b、セル有効化スイッチ520、及び共通のセル有効化スイッチ620を閉じるように制御し得る。PUFセルの選択を解除するために、選択ユニットは、アドレッシングスイッチ610a及び610b並びにセル有効化スイッチ520を開くように制御し得、任意選択的に、共通のセル有効化スイッチ620に接続される他のPUFセルがV
BIAS_HIGHに結合される必要がない(すなわち、共通のセル有効化スイッチ620を共有する他のPUFセルを選択されることを望まない)場合に、共通のセル有効化スイッチ620も開き得る。
【0059】
図7は、PUFセル105
x、yの更なる例示的な「刺激選択/アドレス指定」の実装態様を示し、選択機構は、4つのアクセススイッチを備える。第1のアクセススイッチ710aは、高電圧供給線V
BIAS_HIGH及び第1の測定点Aが、第1の抵抗器Ra1及び第1のアクセススイッチ710aにより互いに切り替え可能に結合されるように、第1の抵抗器Ra1に結合される。第2のアクセススイッチ720aは、低電圧供給線V
BIAS_LOW及び第1の測定点Aが、第2の抵抗器Ra2及び第2のアクセススイッチ720aにより互いに切り替え可能に結合されるように、第2の抵抗器Ra2に結合される。第3のアクセススイッチ710bは、高電圧供給線V
BIAS_HIGH及び第2の測定点Bが、第3の抵抗器Rb1及び第3のアクセススイッチ710bにより互いに切り替え可能に結合されるように、第3の抵抗器Rb1に結合される。第4のアクセススイッチ720bは、低電圧供給線V
BIAS_LOW及び第2の測定点Bが、第4の抵抗器Rb2及び第4のアクセススイッチ720bにより互いに切り替え可能に連結されるように、第4の抵抗器Rb2に結合される。測定点A及びBは、多くのPUFセルにより共有される共通の信号線を介して、又は各PUFセルについての個々の信号線により、読み出しユニットに直接結合され得る。PUFセルを選択するために、選択ユニットは、入力電圧が分圧器に印加されて、電圧Va及びVbが生成されるように、全てのアクセススイッチを閉じるように制御し得る。PUFセルを選択解除するために、選択ユニットは、アクセススイッチを開くように制御し得、それによりPUFセルを無効にし、選択解除されたPUFセルが読み出しユニットに対する共通の信号線を共有するいずれかの他のPUFセルから分離され、干渉又は影響を与えないように、測定点A及びBで高インピーダンスが提示され得る。
【0060】
図8aは、本開示の一態様による
、PUFセル105
x、yの例示的なアレイを示す。この例では、PUFセル105
x、yは、
図6bの例に従って構成される。しかしながら、これらのセルは、
図2~
図7の例のいずれに従って構成し得る。このアレイは、X列のPUFセル及びY列のPUFセルからなり、したがって、PUFセルの総数はXYに等しい。図は、PUFセルのうち4つのみを示し、わかりやすくするため、セルの行は、2~Y-1行目、列は2~X-1列目が省略されている。
【0061】
図8bは、
図8aに示すアレイ内の例示的PUFセル105
x、yの詳細を示す。セル有効化スイッチ520並びに第1及び第2のアドレッシングスイッチ610a及び610bは、全て、FETとして実装されていることがわかる。任意の好適なタイプのFET(NMOS又はPMOS等)が使用され得、また代替物では、任意の他の好適な種類の制御可能スイッチ、例えば、いずれかの他の種類のトランジスタが使用され得る。PUFセル105
x、yは、いくつかの端子を有する。PUFセルを選択又は選択解除するために、セル有効化スイッチ520並びに第1及び第2のアドレッシングスイッチ610a及び610bの状態を制御するために選択信号線に結合するための「選択」端子がある。このように、単一の選択制御信号を使用して、PUFセルの選択機構の状態を制御することができることがわかる。
図5a~
図5c、
図6a、
図6b及び
図7に示される他の選択機構の例の各々も、同様に、単一の選択制御信号で制御することができる。前述のように、入力/供給電圧V
BIAS_HIGH及びV
BIAS_LOWに結合するための2つの端子VH及びVLがある。最後に、アナログ電圧Va及びVbの出力に使用するための2つの検知端子A及びBがある。
【0062】
図8aに戻ると、判定ユニット170が選択ユニット810及び読み出しユニット820
xを備えることがわかる。この例では、配列の列ごとに1つずつ、X個の読み出しユニットが設けられる。選択ユニット810は
、アレイの各行に1本ずつのY選択信号線ROW_SELECT
yによりPUFセル105
x、yに結合される。この構成では、特定のROW_SELECT
y線上の選択制御信号を制御することにより、その行内のPUFセルの全てを選択ユニット810により選択又は選択解除できることがわかる。この例では、選択ユニット810はまた、アレイの列ごとに1つずつのX列選択線CS
xを介してX列選択信号を出力する。列選択信号CS
xは、アレイの列ごとに1つ、X個の共通のセル有効化スイッチ620
xの状態を制御する。したがって、列選択信号CS
xを制御することにより、アレイの各列は、PUFセルを電圧源V
BIAS_HIGHに対して結合又は分離することにより有効化又は無効化され得る。したがって、行選択線ROW_SELECTy及び列選択線CSx上の選択信号を制御することにより、個々のPUFセルは、PUF値を生成する際に使用するために選択され得る。
【0063】
代替物では、選択ユニット810が単一の信号でアレイ内の全てのPUFセルを有効化又は無効化にすることができるように、共通のセル有効化スイッチ620xの全てに結合された単一の列選択線があり得る。更なる例では、全てのPUFセルに共通の、単一の共通のセル有効化スイッチ620が使用され得、そのため、この単一の共通のセル有効化スイッチ620の状態を制御することにより、PUFセルを、供給電圧VBIAS_HIGHに対して接続又は接続解除することができる。そのような実装態様は、PUFセルの行全体が常に並列に読み出され(詳細に後述する)、PUFセルアレイが使用されていないときに全てのPUFセルを電源から完全に接続解除するために列選択信号が使用され、それにより不活性期間中の消費電力が節約される可能性がある場合に有用である。
【0064】
更なる例では、
図8aのセル有効化スイッチ620
xは、FETとして実装され、かつ任意の好適なタイプのFET(NMOS又はPMOS等)が使用され得る。代替物では、制御可能スイッチの任意の他の好適な時間、例えば、他のタイプのトランジスタが使用され得る。更なる例では、共通のセル有効化スイッチ620
xを完全に省略し、PUFセルの全てがVBIAS_HIGHに永久的に接続され、かつPUFセルの選択が行選択信号によってのみ実行され得る。
【0065】
当業者には、制御対象のスイッチの状態(すなわち、オン又はオフ)を制御するために、選択ユニット810により、任意の好適なタイプの制御信号が、スイッチの設計及び動作に応じて、選択信号線ROW_SELECTx及び列選択線CSx上に出力され得ることが明らかであろう。更に、選択ユニット810は、PUFセルの選択を制御するために、信号線上に適切な信号を出力するように構成される任意の好適なデバイス又は回路により実現され得る。例えば、選択ユニットは、プロセッサ上で実行されると、適切な信号が信号線上へ出力される命令を有するプロセッサ及びメモリを備え得、又はそれらの機能を実行するように構成されたマイクロコントローラ、又はそれらの機能を実行するように適切に構成されたFPGA、又はそれらのプロセスを実行するように構成されたディスクリートな構成要素からなる回路を備え得る。例えば、チャレンジを受信すると、チャレンジ/レスポンスユニット180は、PUF出力を生成するために必要な選択及び読み出しプロセスを実行するように、判定ユニット170に指示し得る(例えば、判定ユニット170内の中央コントローラに指示して、選択ユニット810及び読み出しユニット820x対する指示を行わせるか、又は選択ユニット810及び読み出しユニット820xに直接指示を行う)。
図8aには図示しないが、読み出しユニット820x及び選択ユニット810は、読み出しユニット820xが、選択されたPUFセルのPUF値の判定を終了したときに、選択ユニット810が読み出しのための次のPUFセルの選択に進むことができるよう通知がされ得るように、互いに(直接的に又は中央コントローラを介して)通信し得る。
【0066】
この例では、各列のPUFセルは、一方は信号側A(Vax)、他方は信号側B(Vbx)の2つの共通の信号線を介して、その列の読み出しユニット820xに結合されていることがわかる。各読み出しユニット820xは、それが接続されている選択されたPUFセルのPUF値を判定するための任意の適切な構成要素及び回路を備え得、その判定は、選択されたPUFセルの第1の測定点Aにおける電圧Va及び選択されたPUFセルの第2の測定点Bにおける電圧Vbに基づく。例えば、Va>Vbの場合、第1のデジタル値(例えば、0)を出力するように構成された比較器と、Va<Vbの場合、第2のデジタル値(例えば、1)を出力するように構成された比較器と、を備え得る。この例では、読み出しユニット820xは、差Va-Vb(逆の場合も)を閾値「0」と効果的に比較すると考えられる。代替物では、VaとVbとの間の差の符号及び大きさの両方を測定し、次いで、PUF値を生成するために、その測定値を任意の好適な閾値(例えば、閾値「0」又はおそらく利用可能な各PUF値を生成するについて等しいものを生じるはずの他の値)と比較するための回路を備え得る。例えば、アナログ-デジタル変換器(ADC)が、この目的のために使用され得、それにより、アナログ値Va-Vb(又はその逆)を、ADCを使用してデジタル化することにより測定する。アナログ値Va-Vbの大きさ及び符号は、例えば、どのPUFセルのVa-Vbが、その符号が経時的に持続する可能性が高い十分な大きさを有するVa-Vbかを判定するために、PUF装置の構成についてのみ測定され得る場合もある。この場合、PUF出力を生成するためのPUF読み出しの間、長期間持続する可能性が高いと識別されたそれらのPUFセルのみをPUF出力を生成するために使用でき、かつPUF値は、Va及びVbを単純に比較して、Va<Vb又はVb<Vaのいずれかを判定することによりそれらのPUFセルの各々から読み出すことができる。他の場合では、PUFセルのPUF値を判定するために、ADCを使用して、PUF読み出し中のアナログ値Va-Vbの大きさ及び符号を判定し得る。更に、読み出しユニット820xは、信号調節及び/又は増幅を実行するために、任意選択的に、1つ以上のアナログバッファ及び/又は増幅器を備え得る。
【0067】
なお、
図8aにおいては、VBIAS_HIGH及びVBIAS_LOWの電力線は、点線で示す。これは、純粋に、明確性の改善のために、図中の他の信号線からこれらの線を区別するのに役立てるためである。
【0068】
図9は、読み出しユニット820xの少なくとも一部の構成例を示す。読み出しユニット820xは、この例では、アナログ値Va
x及びVb
xを受ける差動ADCであるADC910xを備える。代替物では、差動増幅器が信号Va
x及びVb
xを受信し、Va
xとVb
xとの間の差のシングルエンドのアナログ値をADCに出力する、シングルエンドのADCであり得る。ADCは、任意のタイプのADC、例えば、スロープADC、SAR ADC、シグマデルタADC、パイプラインADC、フラッシュADC等であり得る。ADCは、Va
xとVb
xとの間の差のデジタル測定値920
xを出力し、これは、シリアル又はパラレルのマルチビットデジタルワードとして出力され得る。ADC910xが、基準電圧Vrefを必要とし得、それがこの配列では、これを基準生成器930から受信し得る点は、当業者にはよく理解されるであろう。任意のタイプの電圧基準生成器が代替的には使用され得るが、この装置に特に有用な新規な例示的基準生成器930については後述する。同じ単一の基準生成器930を、全ての読み出しユニット920xのADCに使用し得、又は各読み出しユニット920x専用の基準生成器930があり得る。
【0069】
出力デジタル測定値920xは、PUF装置の構成中に、かつ/又はPUF値、例えば、1又は0を判定するために使用され得る。これは、読み出しユニット820x内の任意の好適な下流回路、構成要素、又はユニットにより実行され得る。例えば、デジタル測定値920xは、その比較に基づいて設定された1つ以上の閾値(「0」等)及びPUF値と比較され得る。次いで、PUF値は、任意選択的に、例えば、判定ユニット170内又は他の場所のメモリに格納され得、必要とされる全てのPUF値がPUFセルアレイを使用して判定されると、それらを使用して、PUF出力を生成し、チャレンジ/レスポンスユニット180に出力し得る。デジタル測定値920xを使用してPUF値を生成し、任意選択的に格納するために使用され得るプロセス及び技術は、当業者によりよく理解されるであろうし、かつ本開示の主題ではないため、これ以上更に詳細には説明しない。
【0070】
任意選択的に、基準生成器930により出力される基準電圧Vrefは、PUFセルに使用される入力電圧(刺激電圧)、VBIAS_HIGH-VBIAS_LOWに関連付けられ得るか、又は連結され得る。例えば、基準電圧Vrefは、入力電圧への変化がVrefへの変化を引き起こすような態様で入力電圧に基づき得る(例えば、それに由来する、若しくはそれと同じ)か、又は入力電圧は、基準電圧に基づき得る(例えば、それに由来する、若しくはそれと同じ)。このような相互依存性を有することにより、ADC910xから出力されるデジタル値は、入力電圧の値とは無関係なはずで、入力電圧の変化の結果として変化しないはずである。例えば、ADC910xにより変換されるアナログ値Va-Vbは、入力電圧(及びPUFセル内の構成要素の値)に依存することがわかる。Vrefが入力電圧に対して比例関係にある場合、入力電圧VBIAS_HIGH-VBIAS_LOWの変化により引き起こされるVa-Vbのどんな変化も、ADC910xにより実行されるデジタル変換を比例して変化させるはずなので、ADC910xにより判定されたデジタル値は入力電圧VBIAS_HIGH-VBIAS_LOWとは無関係になるはずである。結果として、ADC910xのデジタル出力は、PUFセルへの入力電圧の変化に耐性があるはずである。
【0071】
基準電圧Vref及び入力電圧は、多様な異なる態様で互いにレシオメトリックに連結され得る。例えば、基準生成器930は、電圧源、又はバンドギャップ電圧基準等の電圧基準を備え得、それによりVrefが電圧源又は電圧基準の電圧になる。次いで、PUFセルの入力電圧は、Vrefから、例えば、Vrefが印加される分圧器(例えば、抵抗器及び/又はコンデンサからなる)を使用して生成されたVrefの一部として導出され得る。代替的に、基準生成器930は、例えば、入力電圧を受信し、1つ以上の分圧器(例えば、抵抗及び/又はコンデンサで構成される)を使用してVrefを導出することにより、入力電圧に基づくVrefを発生するよう構成され得る。
【0072】
図10aは、基準生成器930の1つの特定の例示的な実装態様を示し、Vrefは入力電圧から導出される。基準生成器930は、PUFセル構造の比率変更された複製(例えば、PUFセルの縮小版)を備える。詳細には、第1の抵抗器Ra1の比率変更された(スケーリングされた)複製である第1の抵抗器Ra1_ref、第2の抵抗器Ra2の比率変更された(スケーリングされた)複製である第2の抵抗器Ra2_ref、第3の抵抗器Rb1の比率変更された(スケーリングされた)複製である第3の抵抗器Rb1_ref、及び第4の抵抗器Rb2の比率変更された(スケーリングされた)複製である第4の抵抗器Rb2_refが存在する。また、高側セル有効化スイッチ510の比率変更された複製である基準高側セル有効化スイッチ510_ref、及び低側セル有効化スイッチ520の比率変更された複製である基準低側セル有効化スイッチ520_refも存在する。この例は、
図5cに示す「刺激選択/アドレッシング」PUFセルの比率変更された複製である。
図5a、
図5b、
図6b及び
図7のいずれかに示すような異なる配列がPUFセルに使用される場合、基準生成器930は、各PUFセルに存在する1つ以上の「刺激選択/アドレッシング」スイッチに対応する1つ以上の比率変更された複製スイッチを備え得る。更に、
図6bに示すような共通のセル有効化スイッチ620が使用される場合、基準生成器930は、好適に配置された複製スイッチを備え得る(例えば、スイッチ510_refが
図10aに配置されるのと同じように配置され得る)。
【0073】
この特定の例では、基準生成器930の構成要素は、PUFセルの構成要素を複製し得るだけでなく(かつ任意選択的に、該当する場合には、任意の共通のセル有効化スイッチも複製し得る)、基準生成器930のレイアウトは、PUFセルのレイアウトも複製し得る。
【0074】
図10bは、この例を示し、基準生成器930は、PUFセルのユニット抵抗器を複製するユニット抵抗器で構成される(この場合、基準生成器930は、
図4bのPUFセル配置を複製する)。ユニット抵抗器の物理的配置及び基準生成器930の導電ルーティングはまた、PUFセルの配置及びルーティング、例えば、
図4aに示す配置及びルーティングを複製し得る。
【0075】
PUFセルの構成要素を複製すること、及び任意選択的にそれらの物理的な配置及びルーティングも複製することにより、各PUFセルにおけるVBIAS_HIGHからVBIAS_LOWまでの電流経路の真の複製が可能となり、PUFセルの電流経路に沿った電圧降下が基準生成器930によりレシオメトリックに複製されるようになる。比率又はスケールは、例えば1:1のような任意の好適な値であり得、この場合、基準生成器の構成要素は全て、複製対象の構成要素と同一の設計になると考えられる。代替的に、比率は、複製の構成要素がPUFセルアレイの構成要素よりも小さくなる(寸法的に小さい、より小さいインピーダンスを有する等)ようなものであり得、例えば、構成要素の各々の大きさ及びインピーダンス(及び任意選択的にルーティングも)は、PUFセルの大きさ及びインピーダンスよりも50%小さくあり得、その結果、PUFセル対基準生成器930の比率は、2:1になる。電圧生成器930内の複製回路の大きさをPUFセルの大きさよりも小さくすれば、導出された基準電圧Vrefの駆動強度を改善し、かつ基準電圧Vrefの設定時間を改善するという追加の利点が得られる。
【0076】
この例では、Vrefは、3つの基準電圧ADC_HIGH、ADC_MID及びADC_LOWを含む。ADC_HIGH及びADC_LOWは、ADC910xの変換範囲を規定し得る。例えば、ADC_HIGHは、変換されるべき最高予想アナログ値(すなわち、予想される最大のVa-Vb)を表し、ADC_LOWは、任意選択的に、誤差に対応するための何らかの追加のへッドルームを有して、変換されるべき最低予想アナログ値(すなわち、予想される最小のVa-Vb)を表し得る。ADC_MIDは、ADC_HIGHとADC_LOWとの間の電圧であり、例えば、ADC910xのサンプリング回路のコモンモード電圧を設定するため、かつ/又はADC910xのサンプリング回路の端子をプリチャージするために使用され得る。1つの非限定的な例では、ADC910xは、ADC_HIGHとADC_LOWとの間に接続された抵抗器の列を備える抵抗器DAC等のデジタル-アナログ変換器(例えば、SARコンバータであり得る)を備え得る。
【0077】
図10bに示されるように、ADC_HIGH、ADC_MID及びADC_LOWの各々が、分圧器内の好適な点でPUFセルの比率変更された複製からタップオフすることにより、供給電圧VBIAS_HIGH-VBIAS_LOWから導出され得る。タップオフする場所は、所望の基準電圧を達成するために、供給電圧VBIAS_HIGH及びVBIAS_LOW、並びにPUFセルの比率変更された複製を構成する様々な構成要素のインピーダンスを考慮して決定され得る。
【0078】
図10a及び
図10bでは、任意選択的な導電接続部1010が、3つの基準電圧ADC_HIGH、ADC_MID及びADC_LOWについてのタップポイントにおける複製Hブリッジの両側を短絡する。任意選択的な導電接続1010を含むことにより、ADC_HIGH、ADC_MID及びADC_LOWの各タップポイントにおけるより低い等価インピーダンスが達成され得る。これにより、過渡ノイズに対してのより良い耐性、より速いセトリング、及びより高い駆動強度がもたらされ得る。しかしながら、代替的な実装態様では、導電接続部1010のうちの少なくとも1つ又は全ては、省略され得、基準生成器930は、1つ以上の有用で有効な基準電圧Vrefを依然として生成する。更なる代替物では、任意選択的な導電接続1010は、基準電圧のタップポイントでHブリッジの両側を短絡するだけでなく、
図10bに示す実装態様における任意選択的な導電接続1010が複製Hブリッジの両側間に11の接続部を備えるように、全てのユニット抵抗器で複製Hブリッジの両側を短絡し得る。
【0079】
図10cは、基準生成器930の更なる例示的な実装態様を示す。これは、
図10a及び
図10bに示される実装態様に非常に類似するが、PUFセルの一部のみの複製である。詳細には、これは、PUFセルの電流経路のうちの1つだけの複製であり、すなわち、PUFセルHブリッジの分圧器のうちの1つと、PUFセルHブリッジの両方の分圧器に共通である他の構成要素及び接続(例えば、スイッチ510_ref及び520_ref)のうちの1つの複製である。したがって、
図10cの実装態様は、PUFセルのフルHブリッジのハーフブリッジ複製であることがわかる。この実装態様も、電圧VBIAS_HIGH-VBIAS_LOW、及びPUFセルの構成要素及び配線に依存する1つ以上の有用で効果的な参照Vrefを生成する。
【0080】
3つの参照を含むVrefは、1つの例示的な実装態様に過ぎない。代替的に、ADC910x(任意の好適なタイプのADCも可能)の要件に応じて、1つの基準電圧のみ、又は2つ又は4つ等の任意の数の基準電圧を備え得る。
【0081】
複製回路のこの特定の例では、電圧生成器930は、抵抗器のHブリッジ又は抵抗器のハーフブリッジを備える(その複製対象のPUFセルは、抵抗器のHブリッジを有するため)が、基準生成器930は、任意の他のタイプのPUFセルの複製を有するように構成され得る。例えば、他のタイプのPUF装置は、各々が任意の好適な方法で配置された1つ以上の構成要素(抵抗器、コンデンサ、インダクタ、トランジスタ等)を含むPUFセルを有し得る。(差動又はシングルエンドのADCのいずれかを有する)
図9に示すタイプのアナログ-デジタル変換システムは、それらのPUFセルのうちの1つから出力されるアナログ値を変換するために使用され得、それに基づいて、PUF値を判定され得る。この場合、基準生成器930は、PUFセルの一部である1つ以上の構成要素の複製版を備える、PUFセルの少なくとも一部の比率変更された複製(PUFセルを通る少なくとも1つの電流経路を構成する構成要素の比率変更された複製等)を備え得る。したがって、基準生成器930は、入力電圧(PUFセルからADCに出力されるアナログ電圧を作成するためにPUFセルに使用されるのと同じ刺激電圧)を受信し、入力電圧及び複製回路から導出される1つ以上の基準電圧を出力し得る。このように、各PUFセルの構成要素及び配置にかかわらず、ADCは、入力電圧及び複製構成要素に依存する1つ以上の基準電圧を使用し得るので、入力電圧及び/又は比率変更された複製構成要素の経時的な変化がADCにより使用される基準電圧の変化を引き起こし得る。
【0082】
このようにしてPUFセルを複製することにより、基準生成器は、ADCにより測定される電圧Va及びVbに影響を与える構成要素と同じ温度、プロセス及び他の環境特性を有するはずである。結果として、刺激電圧の変化をVrefへの比例した変更によるデジタル変換において補正/補償する必要があるだけでなく、例えば、温度変化の結果として、経時的なPUFセルの構成要素(及び該当する場合、共通のセル有効化スイッチ)の変化も、基準電圧Vrefにおける対応する変更により複製されるべきである。次いで、これにより、経時的なVaとVbとの間の差の一貫したデジタル測定をもたらす態様でアナログ-デジタル変換を修正する必要がある。
【0083】
更なる代替物では、Vref及びPUFセルへの入力電圧に、完全に無関係な電圧を使用することも可能で、この場合でも入力電圧の変動に影響されないVa-Vbのデジタル測定が実現する。例えば、ADC910x(又は何らかの他のADC)は、PUFセルへの入力電圧を測定するために使用され得、その後Va-Vb又はその逆を測定する(例えば、PUFセル刺激VBIAS_HIGH-VBIAS_LOWとPUFセル出力Va-Vbとの間でADC910xへの入力を変更するために、ADC910xへの入力でマルチプレクサを使用せずに)。次いで、デジタルドメインにおけるVa-Vbの測定値に対し、電圧刺激の変化に対する補償が行われ得る。
【0084】
図8aに戻ると、その例示的な実装態様では、PUFアレイの各列に対して1つの読み出しユニット820xが存在することがわかる。結果として、アレイ(すなわち、PUFセルの列全体)のX個のPUFセルは、row_select信号線を使用して選択することができ、X個のPUF値は、X個の読み出しユニットにより並列に判定することができる。これにより、多数のPUF値を含み、各PUF値が連続して判定される場合、生成に長い時間を要し得るPUF出力を生成する速度を改善し得る。しかしながら、各列に読み出しユニットを備えると、構成要素のコスト及び判定ユニット170の全体的なサイズの両方においてコスト高になる場合がある。
【0085】
1つの代替的な実装態様においては、PUFセルアレイは、複数のグループ化された列を含むように編成され得、各グループ化された列は、2つ以上のPUFセルの列を含む。各グループ化された列について、グループ化された列内のどの列を読み出すかを選択するマルチプレクサを含む、対応する読み出しユニットがあり得る。
【0086】
図11は、グループ化された列を使用して編成されたPUFセルアレイの例を示す。この例では、アレイにZのグループ化された列があり、各グループ化された列は、3列のPUFセルを有する(ただし、各グループ化された列には任意の数の列のPUFセルが存在し得る)。また、グループ化された列ごとに1つずつで、Z個の読み出しユニット820
zも存在する。各読み出しユニット820
zは、各読み出しユニット820
zがマルチプレクサ1100
zも含むことを除いて、上述の読み出しユニット820xと同様である。各マルチプレクサ820zは、列選択線CSを使用して選択ユニット810により制御可能なように構成され、各グループ化された列内のどの列がADC910
zに結合されるかを選択し、その列内のPUFセルからPUF値を読み出すことができる。例えば、選択ユニット810が、グループ化された列2の第1の列の第3の行にあるPUFセルを選択する場合、選択ユニットは、選択信号をROW_SELECT3に印加し、列選択線CSを使用することにより、グループ化された列2の第1の列についてVa及びVbに関連付けられたスイッチを閉じることができ、グループ化された列2の他の列に関連付けられたスイッチを確実に開いたままにする。また、PUFセルのその列が有効化されるように、グループ列2の第1の列をV
BIAS_HIGHに結合するスイッチを閉じ得る。これは、任意選択的に、選択ユニット810からの単一の信号線を使用して、各々のグループ化された列の第1の列を選択及び有効化することができ、それにより、各々のグループ化された列の第3の行、第1の列内のPUFセルの並列読み出しを達成するように、マルチプレクサ1100zの全てにわたって複製され得る。したがって、選択ユニット810は、アレイの各グループ化された列内の特定の行及び特定の列を選択し得、それにより、Z個のPUF値が、各グループ化された列内の次の列を選択する前に、Z個の判定ユニット820
zにより並列に判定され得る。この例では、制御信号線CSは、グループ化された列内の列ごとに1つずつで、各グループ化された列内の列の数(
図11の例では、3つの信号線)に等しい数の信号線を備え得る。例えば、単一の信号線は、各々のグループ化された列の第1の列に関連付けられた3つのスイッチの状態を制御し得る。更なる信号線は、各々のグループ化された列の第2の列等に関連付けられた3つのスイッチの状態を制御し得る。結果として、一本の信号線は、各グループ化された列内の列を選択及び有効化し得る。各グループ化された列内の他の列全てに関連付けられた信号線は、それらをVBIAS_HIGHから接続解除し、かつADC
zから接続解除することにより、これらの列を無効化する状態に設定され得る。その結果、読み出される列内のPUFセルのみを有効化し、他のPUFセルを電源から接続解除することにより、消費電力が低減され得る。各マルチプレクサ1100zの各スイッチは、任意の好適な構成要素又は構成要素の組み合わせ、例えば、NMOS又はPMOSタイプのいずれかのFET等の任意の好適なトランジスタを使用して実装され得る。
【0087】
したがって、
図11は、並列PUFセル読み出しを使用して読み出しの速度を改善する一方で、アレイ内の各列にADCを設けず、常時アレイ内の全ての列に給電するわけではないことにより、コストとスペースの使用を合理的に維持することとのバランスを達成し得ることがわかる。グループ化された列の数、及び各グループ化された列の列の数は、PUF出力を生成するために必要とされるPUF値の数、並びにシステムの特定の速度及び効率の必要性に基づいて設定され得る。
【0088】
代替物では、PUFセルの列をV
BIAS_HIGHに結合するスイッチは、完全に省略されるか、又はPUFセル内に移動させて(
図5a及び
図5cに示されるように)row_select信号を使用して制御され得る。
【0089】
図12は、前述のPUFセル配置のいずれかを使用してPUF値を判定する方法の例を示す。PUFセルは、行及び列の行列で、又は任意の他の好適な構成で配置され得る。
【0090】
この方法は、上記の行及び/又は列選択プロセスのいずれかを使用して達成され得る、PUFセルを選択するステップ1210を含む。先に説明したように、PUFセルは、抵抗器のHブリッジを備え、特定のPUFセルを選択することにより、そのPUFセルは、Hブリッジ(VBIAS_HIGH-VBIAS_LOW)にわたる供給電圧により有効化され、Hブリッジの2つの測定点A及びBは、読み出しユニットに結合される。このステップでは、単一のPUFセルが選択されるか、又は2つ以上のPUFセルが並行して選択され得る。
【0091】
ステップ1220において、選択されたPUFセルのPUF値は、PUFセルの2つの測定点A及びBにおけるアナログ電圧Va及びVbに基づいて判定される。PUF値は、前述のプロセス及び構成要素/回路/デバイスのいずれかを使用して判定され得る。更に、2つ以上のPUFセルが同時に選択される場合、それらのPUFセルのうちのいずれか1つ以上のPUF値が並列に判定され得る。ステップ1220が完了した後、この方法は、読み出される次のPUFセルを選択するためにステップ1210に戻り得る。代替的に、全ての必要なPUF値がすでに取得されている場合、この方法は、判定されたPUF値の全てに基づいてPUF出力を判定するステップに進み得る。
【0092】
当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の上記の態様に様々な変更又は修正がなされ得ることを容易に理解するであろう。
【符号の説明】
【0093】
100 PUF装置
105 PUFセル
170 判定ユニット
180 レスポンスユニット
210a 第1の分圧器
210b 第2の分圧器
510 セル有効化スイッチ
520 セル有効化スイッチ
610a 第1のアドレッシングスイッチ
610b 第2のアドレッシングスイッチ
620 セル有効化スイッチ
710a 第1のアクセススイッチ
710b 第3のアクセススイッチ
720a 第2のアクセススイッチ
720b 第4のアクセススイッチ
810 選択ユニット
820 判定ユニット
910 ADC
920 デジタル測定値
930 基準生成器
1010 導電接続部
1100 マルチプレクサ
【外国語明細書】