(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056681
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】脂肪族ポリアミド組成物及び対応するモバイル電子デバイス構成部品
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240416BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240416BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240416BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240416BHJP
G21F 1/10 20060101ALI20240416BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/14
C08K3/22
C08K3/04
G21F1/10
C08K3/30
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000563
(22)【出願日】2024-01-05
(62)【分割の表示】P 2019554999の分割
【原出願日】2018-04-09
(31)【優先権主張番号】62/483,733
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17175633.1
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス, ローリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ゴータム, ケーシャブ エス.
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス, カレン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低絶縁性ガラスファイバーを含有する対応する脂肪族ポリアミド組成物に対して、同様の絶縁性能及び著しく改善された機械的性能を有する、特異的に選択されたガラスファイバーを含有する脂肪族ポリアミド組成物、及び該組成物を含むモバイル電子デバイス構成部品を提供する。
【解決手段】脂肪族ポリアミド組成物は、脂肪族ポリアミドポリマーと、ポリアミド組成物の総重量に対して約30重量%~約60重量%のガラスファイバーとを含み、ガラスファイバーは、1MHzにおいて5.1~5.5、好ましくは5.2~5.4の誘電定数と、75GPa~100GPaの引張弾性率とを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド組成物であって、
脂肪族ポリアミドポリマーと、
ポリアミド組成物の総重量に対して約30重量%~約60重量%のガラスファイバーと
を含み、ガラスファイバーは、
1MHzにおいて5.1~5.5、好ましくは5.2~5.4の誘電定数と、
75GPa~100GPaの引張弾性率と
を含む、脂肪族ポリアミド組成物。
【請求項2】
35重量%~45重量%、好ましくは40重量%~45重量%のガラスファイバーを含む、請求項1に記載の脂肪族ポリアミド組成物。
【請求項3】
ガラスファイバーは、80GPa~95GPa、好ましくは85GPa~95GPaの引張弾性率を有する、請求項1又は2に記載の脂肪族ポリアミド組成物。
【請求項4】
脂肪族ポリマー組成物は、1MHzにおいて4.0未満、好ましくは3.9未満、より好ましくは3.8未満、より好ましくは3.75未満、より好ましくは3.7未満、最も好ましくは3.6未満の誘電定数を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の脂肪族ポリアミド組成物。
【請求項5】
脂肪族ポリマー組成物は、2.4GHzにおいて3.8未満、好ましくは3.75未満、より好ましくは3.7、より好ましくは3.65未満、より好ましくは3.6未満、より好ましくは3.55未満、より好ましくは3.5未満、最も好ましくは3.45未満の誘電定数を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の脂肪族ポリアミド組成物。
【請求項6】
少なくとも10GPa、好ましくは少なくとも11GPa、最も好ましくは少なくとも13GPaの引張弾性率を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の脂肪族ポリアミド組成物。
【請求項7】
脂肪族ポリアミド組成物の総重量に対して0.5重量%~5重量%の、TiO2、カーボンブラック、硫化亜鉛、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化第二鉄及びこれらの1つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される顔料、染料又は着色剤を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂肪族ポリアミド組成物。
【請求項8】
40重量%~70重量%、好ましくは50重量%~60重量%、最も好ましくは55重量%~65重量%の脂肪族ポリアミドを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の脂肪族ポリアミド組成物。
【請求項9】
脂肪族ポリアミド組成物中の各ポリマーは、異なる脂肪族ポリアミドポリマーである、請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪族ポリアミド組成物。
【請求項10】
脂肪族ポリアミド組成物は、芳香族ポリマーを含まず、且つ脂環式ポリマーを含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の脂肪族ポリアミド組成物。
【請求項11】
脂肪族ポリアミドポリマーは、0.7dL/g~1.4dL/gの固有粘度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の脂肪族ポリアミド組成物。
【請求項12】
無線アンテナ及び請求項1~11のいずれか一項に記載の脂肪族ポリアミド組成物を含むモバイル電子デバイス構成部品。
【請求項13】
無線アンテナは、WiFiアンテナ又はRFIDアンテナである、請求項12に記載のモバイル電子デバイス構成部品。
【請求項14】
アンテナハウジングである、請求項12又は13に記載のモバイル電子デバイス構成部品。
【請求項15】
携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス、カメラ、ポータブルオーディオプレーヤー、ポータブルラジオ、全地球側位システム受信機及びポータブルゲーム操作卓からなる群から選択される、請求項12又は13に記載のモバイル電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月10日に出願された米国仮特許出願第62/483733号及び2017年6月13日に出願された欧州特許出願公開第17175633.1号に対する優先権を主張し、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、高い絶縁性能及び高い機械的性能を提供する脂肪族ポリアミド組成物に関する。本発明は、脂肪族ポリアミド組成物を組み込むモバイル電子デバイス構成部品に更に関する。
【背景技術】
【0003】
その重量の低下及び高い機械的性能のため、ポリマー組成物は、モバイル電子デバイス構成部品において幅広く使用されている。特に、ガラスファイバーを含む脂肪族ポリアミドポリマー組成物は、モバイル電子デバイス用途に特に好適である。このような組成物は、適切な機械的強度、重量の低下及び設計オプションの増加を有することができるため、モバイル電子デバイス構成部品での金属代替品として魅力的である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
脂肪族ポリアミド、ガラスファイバー及び任意選択的に1種以上の添加剤を含む脂肪族ポリアミド組成物が本明細書に記載される。驚くべきことに、特異的に選択されたガラスファイバーを含有する脂肪族ポリアミド組成物は、低絶縁性ガラスファイバーを含有する対応する脂肪族ポリアミド組成物に対して同様の絶縁性能及び著しく改善された機械的性能を有することが発見された。少なくとも部分的に高い絶縁性能(低い誘電定数)及び著しく改善された機械的性能のため、脂肪族ポリアミド組成物は、モバイル電子デバイス構成部品に有利に組み込まれ得る。独自の機械特性及び誘電特性、本明細書で記載される脂肪族ポリアミド組成物は、モバイル電子デバイス構成部品に有利に組み込まれ得る。
【0005】
ポリマー組成物の誘電定数は、無線通信が存在する用途設定における材料での適合性を判断するのに重要である。例えば、モバイル電子デバイスにおいて、様々な構成部品及びハウジングを形成する材料の誘電定数は、1つ以上のアンテナを通してモバイル電子デバイスにより送信及び受信されるワイヤレス無線信号(例えば、1MHz、2.4GHz及び5.0GHzの周波数)を著しく損なう可能性がある。材料の誘電定数は、部分的に材料の電磁放射線との相互作用能力を表し、それに対応して、その材料を通して移動する電磁信号(例えば、無線信号)を破壊する。したがって、所与の周波数における材料の誘電定数が低いほど、その周波数における材料による電磁信号の破壊が少なくなる。
【0006】
従来、無線信号の喪失が低くなることが所望される用途設定における脂肪族ポリアミド組成物は、低絶縁性ガラスファイバーを組み込んでいる。一般的に、標準的なガラスファイバーを脂肪族ポリアミド組成物に組み込んで脂肪族ポリアミド組成物の機械的性能を増加させるが、これは、さもなければ、モバイル電子デバイスを含むが、これらに限定されない用途設定において望ましくないものとなる。しかし、標準的な弾性率のガラスファイバーは、比較的高い引張弾性率(E=70GPa~80GPa)を有し、したがって脂肪族ポリアミド組成物に優れた機械的特性を付与する一方、誘電定数も比較的高く(ε(1MHz)=6.0~7.0)、したがってポリアミド組成物に比較的高い誘電定数をもたらす。本明細書で使用する場合、Eは、引張弾性率であり、ε(ω)は、周波数ωにおける誘電定数である。したがって、得られるポリアミド組成物は、ワイヤレス無線信号から相当量のエネルギーを吸収する。ガラス充填ポリアミド組成物の不十分な絶縁性能の問題を解決するための従来の方法としては、低誘電定数のガラスファイバー(ε(1MHz)=4.5~5.0)を組成物に組み込むことが挙げられる。しかし、このような解決策は、絶縁性能を改善するものの、低絶縁性ガラスファイバーは、少なくとも部分的に比較的低い引張弾性率(E=60GPa~65GPa)を有するという事実のため、ポリマー組成物の機械的性能が著しく損なわれる。
【0007】
驚くべきことに、本出願人は、1MHzにおいて5.2~5.4の誘電定数及び75GPa~100GPaの引張弾性率を有するガラスファイバー(「選択されたガラスファイバー」)を含む脂肪族ポリアミド組成物が、低絶縁性ガラスファイバーを含む対応する脂肪族ポリアミド組成物の絶縁性能に実質的に同様の絶縁性能及び同時に低絶縁性ガラスファイバー又は標準的な弾性率のガラスファイバーを含む対応する脂肪族ポリアミド組成物よりも大きい機械的性能を有することを発見した。明確にするために、選択されたガラスファイバーを含む脂肪族ポリアミド組成物と、低絶縁性ガラスファイバーを含む対応する脂肪族ポリアミド組成物との違いは、対応する脂肪族ポリアミド組成物が、選択されたガラスファイバーの代わりに低絶縁性ガラスファイバーを含むことである。同様に、選択されたガラスファイバーを含む脂肪族ポリアミド組成物と、標準的な弾性率のガラスファイバーを含む対応する脂肪族ポリアミド組成物との違いは、対応する脂肪族ポリアミド組成物が、選択されたガラスファイバーの代わりに標準的な弾性率のガラスファイバーを含むことである。また更に、選択されたガラスファイバーを含む脂肪族ポリアミド組成物は、脂肪族ポリアミド組成物と、対応する脂肪族組成物とのε(1MHz)の差が、対応する脂肪族組成物に対して4%以下、3.5%以下、3%以下又は1%以下である場合、対応する脂肪族ポリアミド組成物の絶縁性能に実質的に同様の絶縁性能を有する。
【0008】
更に、選択されたガラスファイバーを含む脂肪族ポリアミド組成物は、低絶縁性ガラスファイバーを有する対応する脂肪族ポリアミド組成物に対して著しく改善された機械的特性を有するため、脂肪族ポリアミド組成物は、高濃度の低絶縁性ガラスファイバーを含む対応する脂肪族ポリアミド組成物に対してより少ない選択されたガラスファイバーを含むことができ、且つ依然として著しく改善された機械的特性及び改善された絶縁性能(より低いε(1MHz))を含むことができる。更に、選択されたガラスファイバーの量を少なくすることで、特に脂肪族ポリアミド組成物を商業スケール又は産業スケールで製造する際に大幅なコスト削減をもたらすことができる。
【0009】
脂肪族ポリアミド
脂肪族ポリアミド組成物は、脂肪族ポリアミドポリマーを含む。本明細書で使用する場合、脂肪族ポリアミドポリマーは、脂肪族ポリアミド中の繰り返し単位の総モル数に対して少なくとも50モル%の繰り返し単位(R
PA)を有する。いくつかの実施形態において、脂肪族ポリアミドは、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は少なくとも99.9モル%の繰り返し単位(R
PA)を有する。繰り返し単位(R
PA)は、以下の式-[-Ma-Mb-]-
(式中、R
1及びR
2は、それぞれの例において、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、i及びjは、それぞれの例において、0~2の独立して選択される整数であり、nは、4~12、4~10又は6~10の整数であり、mは、6~18、又は6~14、又は6~12の整数である)
により表される。明確にするために、式(1)において、各-(CR
1
i)-及び各-(CR
2
j)-における炭素原子は、それに結合した2-i個及び2-j個の水素原子をそれぞれ有する。例えば、n単位-(CR
1
i)-の1つに関して、i=1である場合、一実施形態では、-(CR
1
i)
nは、-(CHR
1)-(CR
1
i)
n-1-により表される。類似の表記法は、本明細書における他の化学構造で使用される。更に、本明細書で使用する場合、破線結合(----)は、繰り返し単位(R
PA)と同一又は異なる別の繰り返し単位の原子への結合を示す。いくつかの実施形態において、各iは、0であるか、各jは、0であるか、又は各i及び各jは、0である。更に又は代替的に、nは、6であり得、且つmは、10であり得るか、又はnは、10であり得、且つmは、10であり得る。いくつかの実施形態において、脂肪族ポリアミドは、ポリアミド6,10(「PA6,10」)又はポリアミド10,10(「PA10,10」)である。
【0010】
脂肪族ポリアミドポリマーは、0.7デシリットル/グラム(「dL/g」)~1.4dL/gの固有粘度を有することができる。
【0011】
ポリアミド組成物
脂肪族ポリアミド組成物は、脂肪族ポリアミドポリマー、ガラスファイバー及び任意選択的に1種以上の添加剤を含む。驚くべきことに、選択されたガラスファイバーを含むポリアミド組成物は、低誘電定数ガラスファイバーを含む対応する脂肪族ポリマー組成物に対して実質的に同様の絶縁性能及び同時に改善された機械的特性を有することが発見された。
【0012】
いくつかの実施形態において、脂肪族ポリアミド組成物は、複数の異なる脂肪族ポリアミドポリマーを含み、各脂肪族ポリアミドポリマーは、上述の性能を有する。いくつかの実施形態において、脂肪族ポリアミド組成物中の各ポリマーは、脂肪族ポリアミドポリマーである。脂肪族ポリアミド組成物が1つ又は複数の脂肪族ポリアミドを含むか否かにかかわらず、いくつかの実施形態において、脂肪族ポリアミド組成物中における脂肪族ポリアミドポリマーの総濃度は、脂肪族ポリアミド組成物の総重量に対して40重量%~70重量%、50重量%~60重量%又は55重量%~65重量%である。
【0013】
いくつかの実施形態において、脂肪族ポリアミド組成物は、芳香族ポリマー及び脂環式ポリマーを含まない。本明細書で使用する場合、芳香族ポリマーは、ポリマー内の繰り返し単位の総数に対して少なくとも5モル%、少なくとも10モル%、少なくとも15モル%又は少なくとも20モル%の、芳香族部分を有する繰り返し単位を含有する。同様に、本明細書で使用する場合、脂環式ポリマーは、ポリマー内の繰り返し単位の総数に対して少なくとも10モル%、少なくとも15モル%又は少なくとも20モル%の、脂環式部分を有する繰り返し単位を含有する。一般に、繰り返し単位芳香族ポリマー内での共役電子構造により、脂肪族ポリアミドポリマーに対して、ポリマーは、絶縁性能が低下している(高い誘電定数を有する)。脂環式ポリアミドに関して、一般的に、このような材料は、非晶質であり、それに対応して、式1により表される脂肪族ポリアミドに対して低い機械的性能をもたらす。芳香族及び脂環式ポリマーを含まない脂肪族ポリアミド組成物とは、総濃度が脂肪族ポリアミド組成物の総重量に対して15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満又は0.5重量%未満である芳香族ポリマー及び脂環式ポリマーを含有する脂肪族ポリアミド組成物を意味する。
【0014】
脂肪族ポリアミド組成物は、少なくとも75GPa、少なくとも80GPa又は少なくとも85GPaの引張弾性率を有するガラスファイバーを含有する。更に、ガラスファイバーは、100GPa以下又は95GPa以下の引張弾性率を有する。更に、脂肪族ポリアミド組成物は、1MHz~10GHzの周波数において又は1MHz、2.4MHz若しくは5GHzの周波数において5.1~5.5又は5.2~5.4の誘電定数を有するガラスファイバーを含有する。ガラスファイバーの引張弾性率は、ASTM D2343に従って測定することができる。ガラスファイバーの誘電定数は、ASTM D150(1.0MHz)及びASTM D2520(2.4GHz)に従って測定することができる。
【0015】
脂肪族ポリマー組成物中におけるガラスファイバーの濃度は、脂肪族ポリマー組成物の総重量に対して少なくとも30重量%、少なくとも35重量%又は少なくとも40重量%である。更に、脂肪族ポリマー組成物中におけるガラスファイバーの濃度は、脂肪族ポリマー組成物の総重量に対して60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下又は45重量%以下である。いくつかの実施形態において、ガラスファイバーは、円形ガラスファイバーである。円形ガラスファイバーは、円形の断面を有する。一般に、ガラスファイバーの平均直径は、3マイクロメートル(μm)~30μm又は5μm~12μmである。
【0016】
脂肪族ポリアミド組成物は、任意選択的に1種以上の添加剤を含む。1種以上の添加剤としては、紫外線吸収剤;タルク、雲母ウォラストナイト及びカオリンを含むが、これらに限定されない無機充填剤;光及び熱安定剤;酸化防止剤;潤滑剤;加工助剤;可塑剤;流れ調整剤;難燃剤;TiO2、カーボンブラック、硫化亜鉛、硫酸バリウム、酸化亜鉛及び酸化第二鉄を含むが、これらに限定されない顔料、染料及び着色剤;静電気防止剤;増量剤;並びに金属不活性化剤が挙げられる。脂肪族ポリマー組成物中に存在する場合、1種以上の添加剤の合計濃度は、脂肪族ポリアミド組成物の総重量に対して10重量%未満、5重量%未満又は2重量%未満である。いくつかの実施形態において、顔料、染料又は着色剤の合計濃度は、0.5重量%又は1重量%~5重量%である。
【0017】
脂肪族ポリアミド組成物は、1MHzにおいて4.0未満、3.9未満、3.8未満、3.75未満、3.7未満又は3.6未満の誘電定数を有することができる。更に又は代替的に、脂肪族ポリアミド組成物は、2.4GHzにおいて3.8未満、3.75未満、3.7未満、3.65未満、3.6未満、3.55未満、3.5未満又は3.45未満の誘電定数を有することができる。更に又は代替的に、脂肪族ポリアミド組成物は、少なくとも10GPa、少なくとも11GPa、少なくとも12GPa、少なくとも13GPa、少なくとも14GPa、少なくとも15GPa、少なくとも16GPa、少なくとも17GPa、少なくとも18GPa、少なくとも19GPa又は少なくとも20GPaの引張弾性率を有することができる。脂肪族ポリアミド組成物の誘電定数及び引張弾性率は、実施例で記載のとおりに測定することができる。
【0018】
モバイル電子デバイス構成部品
本明細書に記載する脂肪族ポリアミド組成物は、モバイル電子デバイス構成部品に有利に組み込まれ得る。本明細書において使用する場合、「モバイル電子デバイス」とは、様々な場所で便利に輸送及び使用されることを意図された電子デバイスを意味する。モバイル電子デバイスとしては、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(「PDA」)、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス(例えば、スマートウォッチ、スマートグラスなど)、カメラ、ポータブルオーディオプレーヤー、ポータブルラジオ、全地球側位システム受信機及びポータブルゲーム操作卓が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書において対象のモバイル電子デバイスは、無線信号を送信又は受信するように構成された少なくとも1つの無線アンテナを含有する。無線信号を送信するために、モバイル電子デバイスは、データを無線信号に変換し、アンテナを通して無線信号を送信する。無線信号を受信するために、モバイル電子は、アンテナを通して無線信号を受信し、無線信号をデータにデコードする。一実施形態では、無線アンテナは、WiFiアンテナであり得る。いくつかの実施形態において、WiFiアンテナは、2.4GHz又は5.0GHzの周波数を有する無線信号を送信又は受信することができる。別の実施形態において、無線アンテナは、近距離無線通信(「NFC」)アンテナを含むが、これらに限定されない高周波数識別(「RFID」)アンテナであり得る。いくつかの実施形態において、RFIDアンテナは、125kHz~134kHz、13.56MHz又は856MHz~960MHzの周波数を有する無線信号を送信又は受信することができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、モバイル電子デバイスの少なくとも一部分は、モバイル電子デバイスの外部環境に暴露され得る(例えば、構成部品の少なくとも一部分がモバイル電子デバイスの外の環境と接する)。例えば、デバイス構成部品の少なくとも一部分は、モバイル電子デバイスの外部ハウジングの少なくとも一部分を形成することができる。いくつかのこのような実施形態では、デバイス構成部品は、モバイル電子デバイスの周辺部の周囲の全て又は一部の「フレーム」、格子造りの形態の梁又はこれらの組み合わせであり得る。別の例として、デバイス構成部品の少なくとも一部分は、入力デバイスの少なくとも一部分を形成することができる。いくつかのこのような実施形態では、電子デバイスのボタンは、デバイス構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態において、デバイス構成部品は、電子デバイスにより完全に取り囲まれ得る(例えば、デバイス構成部品は、モバイル電子デバイスの外にある観察点から見えない)。
【0021】
いくつかの実施形態において、モバイル電子デバイス構成部品は、アンテナハウジングである。いくつかのこのような実施形態では、無線アンテナの少なくとも一部分は、脂肪族ポリアミド組成物上に配置される。更に又は代替的に、無線アンテナの少なくとも一部分は、脂肪族ポリアミド組成物から50cm以下、30cm以下、15cm以下、10cm以下、5cm以下、1cm以下、10mm以下、5mm以下、1mm以下又は0.5mm以下の距離で変位され得る。いくつかの実施形態において、デバイス構成部品は、それ自体とモバイル電子デバイスの別の構成部品との間のスナップ嵌めコネクタを含むが、これに限定されない固定穴又は他の固定具を有する固定構成部品及び回路基板、マイク、スピーカー、ディスプレイ、電池、カバー、ハウジング、電気コネクタ若しくは電子コネクタ、ヒンジ、無線アンテナ、スイッチ又はスイッチパッドを含むが、これらに限定されないモバイル電子デバイスの別の構成部品であり得る。いくつかの実施形態において、モバイル電子デバイスは、入力デバイスの少なくとも一部であり得る。
【0022】
モバイル電子デバイスのデバイス構成部品は、当技術分野において周知の方法を使用して作製することができる。例えば、モバイル電子デバイス構成部品は、射出成形、ブロー成形又は押出成形を含むが、これらに限定されない方法によって作製することができる。いくつかの実施形態では、ポリアミド組成物は、射出成形を含むが、これに限定されない当技術分野において公知の方法によってペレット(例えば、実質的に円筒形の本体を2つの末端間に有する)に成形することができる。いくつかのそのような実施形態において、モバイル電子デバイス構成部品は、ペレットから製造することができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、モバイル電子デバイス構成部品は、限定されないが、真空蒸着(金属を加熱して堆積させる様々な方法を含む)、無電解メッキ、電気メッキ、化学蒸着、金属スパッタリング及び電子ビーム蒸着を含む、当技術分野で周知の方法によって金属で被覆され得る。金属は、いかなる特別な処理もなしにデバイス構成部品に十分接着し得るが、いくつかの実施形態では、当技術分野において周知の方法は、接着性を改善するために用いられ得る。そのような方法は、合成樹脂表面を粗くするための摩耗、接着促進剤の添加、化学エッチング、プラズマ及び/若しくは放射線(例えば、レーザー若しくはUV放射線)への暴露による表面の官能化又はこれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。また、いくつかの実施形態では、金属コーティング法は、モバイル電子デバイス構成部品が酸浴に浸漬される少なくとも1つの工程を含むことができる。2種以上の金属又は金属合金を、ポリアミド組成物を含有するデバイス構成部品上にメッキすることができる。例えば、1種の金属又は合金は、その良好な接着性のために合成樹脂表面上に直接メッキすることができ、別の金属又は合金は、それがより高い強度及び/又は剛性を有するため、前のメッキ層の上にメッキすることができる。有用なコーティング金属及び合金は、銅、ニッケル、鉄-ニッケル、コバルト、コバルト-ニッケル及びクロム並びに別個の層でのこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、モバイル電子デバイス構成部品の表面は、金属で完全に又は部分的に被覆することができる。いくつかの実施形態では、デバイス構成部品の表面積の約50%超又は約100%を金属被覆することができる。デバイス構成部品の異なる領域において、金属層の厚さ及び/若しくは数並びに/又は金属層の組成は、変わり得る。金属は、モバイル電子デバイス構成部品の一定の区域において1つ以上の特性を効率的に改善するためにパターンで被覆され得る。
【0024】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例0025】
これらの実施例は、ガラス充填ポリアミド組成物の絶縁性能及び機械的性能を示す。
【0026】
絶縁性能及び機械的性能を実証するために13個のサンプルを形成した。サンプル6、11及び13は、カウンター実施例であった。各サンプルを形成するために、2軸スクリュー押出成形を用いて、切断した円形ガラスファイバーでPA6,10を化合した。サンプルによっては、着色剤として5重量%の硫化亜鉛も含んだ。使用したガラスファイバーの性質を表1に示す。ガラスファイバーI~IIIは、選択されたガラスファイバーであり、ガラスファイバーIVは、低絶縁性ガラスファイバーであり、ガラスファイバーVは、標準的なガラスファイバーである。ガラスファイバーの引張弾性率は、ASTM D2343に従って測定した。ガラスファイバーの誘電定数をASTM D150(1.0MHz)及びASTM D2520(2.4Ghz)に従って測定した。
【0027】
【0028】
サンプルの絶縁性能を、それぞれASTM D150及びASTM D2520に従ってε(1.0MHz)又はε(2.4GHz)を測定することにより試験した。ε(1.0MHz)の測定を、2インチ直径×1/8インチ厚の寸法を有する射出成形ディスクに行った。ε(2.4GHz)の測定を、2インチ×3インチ×1/8インチの寸法を有する射出成形されるプラークに行った。サンプルの機械的特性を以下のとおりに試験した。引張弾性率、引張り強度及び引張伸びを、1mm/分の試験速度及び射出成形したISO引張棒を用いるISO 527-2に従って試験した。射出成形したISO引張棒を用いるISO 180に従い、それぞれ切り欠きアイゾット衝撃試験及び非切り欠きアイゾット衝撃試験を用いて測定した。
【0029】
各サンプルについてのサンプルパラメータ並びに絶縁性能試験及び機械的性能試験の結果を以下の表2及び3に示す(サンプル6、11及び13は、カウンター実施例を表す)。表2及び3において、損失係数は、所与の無線周波数における不可逆的に失われるエネルギー量を反映している。
【0030】
【0031】
【0032】
表3を参照すると、GF IIを含むサンプルは、GF IVを含むサンプルと実質的に同様の絶縁性能並びに同時にGF IV及びGF Vを含むサンプルに対して著しく改善された機械的性能を有した。更に、GF IIを含むサンプルは、GF IVを含むサンプルと実質的に同様の絶縁性能を維持したが、GF Vを含むサンプルに対して改善した引張弾性率、引張り強度、引張伸び及び衝撃性能を有した。例えば、サンプル11に対して、1GHzにおけるサンプル12及びサンプル11の誘電定数間の差(100*(ε12(1MHz)-ε11(1MHz))/ε11(1MHz))は、1.4%であった。更に、サンプル13に対する、1GHzにおけるサンプル12及びサンプル13の誘電定数間の相対差(100*(ε12(1MHz)-ε13(1MHz))/ε13(1MHz))は、-8.8%であり、著しく改善された絶縁性能(低い誘電定数)を示す。本明細書で使用する場合、εs(ω)は、周波数ωにおけるサンプルSの誘電定数である。機械的性能に関して、サンプル11(GF IV)及びサンプル13(GF V)に対するサンプル12(GF II)の引張弾性率の相対的な増加は、それぞれ27%及び11%であった。同様に、サンプル11及びサンプル13に対するサンプル12における引張り強度の相対的な増加は、それぞれ17%及び24%であった。
【0033】
表2を参照すると、GF I~IIIを含むサンプルは、GF IVを含むサンプルに対して著しく改善された機械的性能を有したが、同時に実質的に同様の又は改善された絶縁性能を有した。例えば、サンプル6(GF IV)に対する、サンプル3~5(GF I~III)における引張弾性率の相対的な増加は、4.0%~9.5%の増加であった。同様に、サンプル6に対する、サンプル3~5における引張り強度の相対的な増加は、7.8%~18%であった。更に、サンプル6に対する、1MHzにおけるサンプル3~5及びサンプル6の誘電定数間の相対的な差は、-1.4%~3%であり、サンプル5は、改善された絶縁性能を有した。同様に、サンプル6に対する、2.4GHzにおけるサンプル3~5及びサンプル6の誘電定数間の相対的な差は、0.29%~4.4%であった。