(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056724
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニストの結晶性多形
(51)【国際特許分類】
C07D 513/10 20060101AFI20240416BHJP
A61K 31/438 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240416BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240416BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240416BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240416BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240416BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240416BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240416BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240416BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240416BHJP
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A61P 29/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240416BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240416BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240416BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240416BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240416BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240416BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240416BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240416BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C07D513/10 CSP
A61K31/438
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/10
A61P43/00 111
A61P25/28
A61P25/16
A61P9/00
A61P25/18
A61P1/02
A61P25/20
A61P25/00
A61P25/24
A61P25/04
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P27/02
A61P25/14
A61P27/06
A61P11/00
A61P13/08
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/10
A61P37/02
A61P3/04
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P25/22
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024008595
(22)【出願日】2024-01-24
(62)【分割の表示】P 2022081233の分割
【原出願日】2017-10-05
(31)【優先権主張番号】16192494.9
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519070736
【氏名又は名称】エヌエスシー セラピューティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】バー-ナー,ニラ
(72)【発明者】
【氏名】ウィンディッシュ,マンフレット
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニストとして作用するスピロ化合物の新規な結晶性形態を調製するためのプロセスを提供する。
【解決手段】式:
の化合物Aの一水和物結晶性多形形態を調製するためのプロセスであって、
(a)化合物Aをアセトンに溶解するステップ、および
(b)化合物Aのアセトン溶液に1.3モルの脱イオン水を添加するステップ、
を含む、プロセスとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
の化合物Aの結晶性多形であって、
前記多形が、
一水和物形態IIIであって、
(i)CuK
α線を使用して測定される以下の2シータ値(±0.2):12.3、
17.3、17.5、19.9、21.6、24,6、26,3、および35.4の少な
くとも1つを含有し、10.8~11.9の範囲の2シータ値を有するピークを実質的に
含まないX線粉末回折パターンを有し、
(ii)結晶性形態の
13C固相NMRが、TMSに対してppm単位で表される以
下の化学シフト値:67.56、54.60、47.07、41.49、30.70、お
よび13.77の1つを有する少なくとも1つの共鳴を含有し、
(iii)結晶性形態の
13C固相NMRが、107.3、120.3、127.9
、133.4、144.2、または161.1の、最も大きな化学シフトを有する共鳴と
別の共鳴との化学シフトの差を含有し、
(iv)結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルが、1039、
1353、1369、1369、1388、2918、2974、および3088cm
-
1から選択される値を有する少なくとも1つの吸収ピークを含有し、
(v)結晶性形態が、示差走査熱量測定法(DSC)により測定して、58~94℃
に非常にブロードな吸熱ピーク、および133.7℃から開始し134.9℃にピークを
有する吸熱ピークを示す、形態;
無水形態IIであって、
(i)以下の単結晶X線データ:P2(1)a=8.1416(13)、(α=90
°)、b=7.9811(12)(β=90.761(2)°、c=17.878(3)
、(γ=90°)、Å、T=173(1)Kにより特徴付けられる単結晶X線を示し、
(ii)CuK
α線を使用して測定される以下の2シータ値(±0.2):9.9、
10.8、11.8、11.9、14.8、16.2、18.2、18.5、19.8、
21.3、22.4、23.9、29.2、29.7、および33.1の少なくとも1つ
を含有するX線粉末回折パターンを有し、
(iii)結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルが、1906
、1340、1447、2869、2901、2951、および3006~3012cm
-1から選択される値を有する少なくとも1つの吸収ピークを含有し、
(iv) 結晶性形態の
13C固相NMRが、TMSに対してppm単位で表される
以下の化学シフト値:175.0;65.3、64.0;45.8、45.0;49.3
、43.6;39.5.38.8;28.9、26.0;15.4、14.8の1つを有
する少なくとも1つの共鳴を含有し、
(v)結晶性形態の
13C固相NMRが、109.7もしくは111;129.2も
しくは130.0;122.7;125.7;131.4;135.5;136.2;1
46.1もしくは149.0;および159.6もしくは160.2の、最も大きな化学
シフトを有する共鳴と別の共鳴との化学シフトの差を含有し、かつ/または
(vi)結晶性形態が、DSCにより測定して、134.2℃から開始し135.4
℃±0.2℃のピークを有する吸熱ピークを有し、106℃~110℃に吸熱ピークを実
質的に有しておらず、約50℃~約120℃の範囲に吸熱ピークを欠く、形態;
一水和物形態Iであって、
(i)CuK
α線を使用して測定される以下の2シータ値(±0.2):8.8、1
2.3、17.5、19.9、21.6 23.5、24.5、26.3、28.8、3
1.6の少なくとも1つを含有するが、以下の2シータ値、17.3、17.9、21.
9、24.9、29.3、30.8、および33.4の少なくとも1つを欠き、10.8
~11.9の範囲の2シータ値を有するピークを実質的に含まないX線粉末回折パターン
を有し、
(ii)結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルが、1352、
1369、および1387cm
-1から選択される値を有する少なくとも1つの吸収ピー
クを含有し、かつ/または
(iii)結晶性形態が、示差走査熱量測定法(DSC)により測定して、107.
1℃(104.85℃から開始)および136.17℃(133.41℃から開始)に吸
熱ピークを示し、任意選択で
(iv)結晶性形態の
13C固相NMRが、TMSに対してppm単位で表される以
下の化学シフト値:67.09、54.08、46.59、40.97、30.15、お
よび13.27の1つを有する少なくとも1つの共鳴を含有し、かつ/または
(v)結晶性形態の
13C固相NMRが、107.3、120.3、127.8、1
33.4、144.2、もしくは161.1の、最も大きな化学シフトを有する共鳴と別
の共鳴との化学シフトの差を含有する、形態
からなる群から選択される、結晶性多形。
【請求項2】
多形形態IIである、請求項1に記載の結晶性多形。
【請求項3】
(a)結晶性形態が、以下のデータ:容積=1161.6(3)Å3、Z=4、F(0
00)=464、理論密度、Dc=1.226Mg/m3、吸収係数、μ=0.251m
m-1によりさらに特徴付けられ、
(b)X線粉末回折パターンが、CuKα線を使用して測定される以下の2シータ値:
9.9、10.8、11.8、11.9、14.8、16.2、18.2、18.5、1
9,8、21.3、22.4、23.9、29.2、および29.7、33.0、33.
1の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、も
しくはすべてを含有し、
(c)X線粉末回折パターンが、14.8°および19.8°からなる群から選択され
る、かつ/もしくは18.2°および18.5°からなる群から選択される回折角2θに
少なくとも1つの追加のピークを含み、
(d)結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルが、906、134
0、1447、2869、2901、2951、および3006~3012cm-1から
選択される値を有する少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、もしくはすべての吸収
ピークを含有し、
(e)結晶性形態の13C固相NMRが、TMSに対してppm単位で表される以下の
化学シフト値:175.0;65.3、64.0;45.8、45.0;49.3、43
.6、39.5;38.8;28.9、26.0;15.4、14.8の少なくとも2つ
、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、もしくはすべてを有する共鳴を含有し、
(f)X線粉末回折パターンが、以下の2シータ値:9.9、10.8、18.5、1
9.8±0.2を含有し、結晶性形態の13C固相NMRが、TMSに対してppm単位
で表される以下の化学シフト値:14.8、15.4、26.0、28.9、64.0、
65.3を有する共鳴を含有し、結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペク
トルが、1340~1362cm-1±5cm-1の範囲から選択される値を有する吸収
ピークを含有し、および/または
(g)多形形態が、毎分約3℃の加熱速度で最大約110℃の温度までの熱重量分析(
TGA)により決定して1%未満の重量喪失を示す、
請求項2に記載の結晶性多形形態II。
【請求項4】
多形形態IIIである、請求項1に記載の結晶性多形。
【請求項5】
(a)X線粉末回折パターンが、CuKα線を使用して測定される以下の2シータ値:
8.8、12.30、17.30、17.50、17.80、および23.0の少なくと
も2つ、3つ、もしくはすべてを含有し、
(b)X線粉末回折パターンが、CuKα線を使用して測定される以下の2シータ値:
12.3 19.9.21.6、24.5、26.3、および31.6の少なくとも1つ
も含有し、
(c)X線粉末回折パターンが、10.8~11.8の範囲の2シータ値を有するピー
クを実質的に含まず、
(d)X線粉末回折パターンが、CuKα線を使用して測定される以下の2シータ値:
12.2、17.3、19.9、21.6、24.5、26.3、および31.6の少な
くとも1つを含有し、前記X線粉末回折パターンが、10.8~11.8の範囲の2シー
タ値を有するピークを実質的に含まず、
(e)X線粉末回折パターンが、CuKα線を使用して測定される以下の2シータ値:
12.2、17.3、17.5.19.9、21.6、24.5、26.3、および31
.2の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、もしくはすべてを含有し、
(f)結晶性形態の13C固相NMRが、TMSに対してppm単位で表される以下の
化学シフト値:67.56、54.60、41.49、30.70、および13.77の
少なくとも2つ、3つ、4つ、もしくはすべてを有する共鳴を含有し、
(g)結晶性形態の13C固相NMRが、107.3、120.3、133.4、14
4.2、および161.1から選択される、最も大きな化学シフトを有する共鳴と別の共
鳴との化学シフトの差を、少なくとも2つ、3つ、4つ、もしくはすべて含有し、かつ/
または
(h)結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルが、1039、13
53、1369 1369、1388、2918、2974、および3088cm-1か
ら選択される値を有する少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、もしくはすべての吸
収ピークを含有する、
請求項4に記載の結晶性多形形態III。
【請求項6】
以下の2シータ値:12.3、17.3、17.5、19.9、21.6±0.2を含
有するX線粉末回折パターンを有し、結晶性形態の13C固相NMRが、TMSに対して
ppm単位で表される以下の化学シフト値:13.6、30.6、67.5を有する共鳴
を含有し、結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルが、1353、1
369、および1388±5cm-1から選択される値を有する吸収ピークを含有し、結
晶性形態が、58~94℃の非常にブロードな吸熱および133.9℃から開始する吸熱
を示す、化合物(S)-2-エチル-8-メチル-1-チア-4,8-ジアザスピロ[4
.5]デカン-3-オンの結晶性一水和物形態。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物Aの結晶性多形形態を調製するためのプロ
セスであって、
【化2】
(a)化合物Aを適切な溶媒に溶解するステップ、
(b)必要に応じて、得られた溶液を冷却するステップ、
(c)形態II結晶が析出するまで、十分な時間待機して、結晶性形態を結晶化させる
ステップ、および
(d)前記結晶性形態を濾過するステップを含み、
(i)結晶性形態が、請求項2または3に記載の多形形態IIであり、溶媒が、アセ
トン、アセトニトリル、シクロヘキサン、ヘキサン、ジオキサン、ならびにエタノールお
よびアセトニトリルの混合溶媒からなる群から選択され、
(ii)結晶性形態が、請求項4~6のいずれか一項に記載の多形形態IIIであり
、1.3モルの脱イオン水を化合物Aのアセトン溶液に添加することにより得られ、好ま
しくは、多形形態IIIが、化合物Aおよび/または多形形態IIを脱イオン水に再スラ
リー化し、濾過することにより得られ、
(iii)結晶性形態が、請求項1に記載の多形形態Iであり、微量の水を含有する
水混和性有機溶媒(エタノール、酢酸エチル、イソプロパノール、tert-ブチルメチ
ルエーテル、テトラヒドロフラン)、水から結晶化させることにより、または水もしくは
酢酸エチルのいずれかに溶解した化合物の溶液をゆっくりと蒸発させることにより得られ
、あるいは
(iv)結晶性形態が、結晶性多形形態IおよびIIの混合物であり、溶媒が、トル
エン、ジクロロメタン、1-ブタノール、またはジエチルエーテルからなる群から選択さ
れる、プロセス。
【請求項8】
多形形態IIを多形形態IIIへと変換するためのプロセスであって、請求項2または
3に記載の結晶性多形形態IIを、室温および少なくとも95%の相対湿度で、請求項4
~6のいずれか一項に記載の結晶性多形形態IIIへの変換に十分な時間にわたって維持
することを含むプロセス。
【請求項9】
多形形態Iを請求項2または3に記載の多形形態IIへと変換するためのプロセスであ
って、
(a)結晶性形態Iを、結晶性形態の融点未満の高温で、十分な時間にわたって維持し
て、結晶性形態を前記結晶性多形形態IIへと変換させること、
(b)結晶性多形形態Iを、アセトニトリル、シクロヘキサン、ヘキサン、ジオキサン
、ならびにエタノールおよびアセトニトリルの混合溶媒からなる群から選択される溶媒に
懸濁し、十分な時間にわたって待機して、請求項2または3に記載の結晶性形態を結晶化
させ、前記結晶性形態を濾過すること、ならびに
(c)結晶性多形形態Iを、その融点よりも高い温度に加熱して融解塊を形成し、融解
塊を冷却すること
のうちの1つを含むプロセス。
【請求項10】
得られた結晶性多形形態I、II、またはIIIが、CuKα線を使用して測定される
2シータ値のそのX線粉末回折パターン、ZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトル
DSCにより測定される吸熱ピーク、TGA、および/または13C固相NMRにより
測定される共鳴により多形を特定することにより選択される、請求項7~9のいずれか一
項に記載にプロセス。
【請求項11】
請求項2または3に記載の結晶性多形形態IIを安定的に維持するためのプロセスであ
って、前記結晶を、室温にて乾燥雰囲気下で維持することを含むプロセス。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶性多形および少なくとも1つの薬学的に許容
される賦形剤または担体を含む医薬組成物であって、好ましくは、多形形態IIまたはI
IIが、1mg~100mg、好ましくは10mg~50mgの量で製剤中に存在し、好
ましくは、製剤が顆粒化されている医薬組成物。
【請求項13】
化合物Aの結晶性多形の製剤に基づく医薬を調製するためのプロセスであって、
(a)結晶性多形が、経口投与に好適である請求項2もしくは3に記載の多形形態II
であり、製剤が、錠剤へと直接的に圧縮形成されるか、または
(b)結晶性多形が、経口投与に好適である請求項4~6のいずれか一項に記載の多形
形態IIIであり、それが、1つもしくは複数の賦形剤(アルファ化デンプン、微結晶性
セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸)と混合され、混合物が、1
カプセル当たり5mgもしくは10mgの多形形態IIIが提供されるように、胃腸管で
の即時放出用の経口製剤として使用することができるサイズ4の白色不透明硬質ゼラチン
二分割カプセルに充填される、プロセス。
【請求項14】
ムスカリン性受容体アゴニストによる処置、寛解、または予防に応答性である医学的状
態の処置に使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶性多形形態であっ
て、好ましくは、1日用量が、約10mgおよび50mgであり、かつ/または
状態が、コリン作動性機能障害に関連する疾患もしくは状態、コリン作動性機能が不均衡
である疾患もしくは状態、アセチルコリン受容体の活性障害に関連する疾患もしくは状態
、およびM1受容体の活性障害に関連する疾患もしくは状態を含む、結晶性多形形態。
そのような疾患および状態としては、これらに限定されないが、アルツハイマー病型の老
人性認知症;アルツハイマー病(AD);アルツハイマー病およびパーキンソン病を併発
したレビー小体認知症、;パーキンソン病;多系統萎縮症;多発梗塞性認知症(MID)
、前頭側頭認知症;血管性認知症;脳卒中/虚血、脳卒中/虚血/頭部外傷併発性のMI
D;混合型MIDおよびAD;ヒト頭部外傷;外傷性脳傷害;加齢性記憶障害;一過性全
健忘症候群;軽度認知障害(MCI);ADに至るMCI;認知機能障害(健忘症、急性
混乱障害、注意欠陥障害、集中力障害を含む);幻覚性妄想状態、感情注意障害;睡眠障
害;術後せん妄;三環系抗うつ薬の有害効果、統合失調症およびパーキンソン病の処置に
使用されるある薬物の有害効果;口内乾燥症、名称失語症、記憶喪失および/または混乱
;精神病;統合失調症、AD合併統合失調症、遅発性統合失調症、パラフレニー、統合失
調症様障害;不安、双極性障害、躁病;気分安定化;ある神経膠腫除去後の認知障害;シ
ヌクレイン症(パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症);タウオパシー(
原発性年齢関連タウオパシー;慢性外傷性エンセファロパシー;ピック病;進行性核上麻
痺;大脳皮質基底核変性症)、遅発性ジスキネジア;酸素療法中の酸化ストレス(例えば
、末熟児網膜症);失語症;脳炎後健忘症候群;敗血症関連脳症;敗血症誘導性せん妄;
AIDS関連認知症;狼瘡、多発性硬化症、シェーグレン症候群、慢性疲労症候群、およ
び線維筋痛を含む自己免疫疾患における記憶障害、脾腫、非定型うつ病または統合失調症
における記憶障害;化学療法誘導性認識欠損;アルコール認知症、バイパス手術および移
植術後の認識欠損、甲状腺機能低下症関連認知症、自閉症関連認知障害、ダウン症候群、
ニコチン、大麻、アンフェタミン、コカインを含む薬物乱用または薬物離脱による認知障
害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛、リウマチ、関節炎、および末期疾病;眼球
乾燥症、腟乾燥、皮膚乾燥;免疫機能障害;ニューロクリン障害、ならびに過食症および
食欲不振を含む食物摂取量の調節異常;肥満;先天性オルニチントランスカルバミラーゼ
欠損症;オリーブ橋小脳萎縮;アルコール離脱症状;離脱症状および補充療法を含む物質
乱用、ハンチントン舞踏病;進行性核上麻痺;ピック病;フリードライヒ運動失調;ジル
ドラトゥーレット病;ダウン症候群;プリオン病;緑内障;老眼;炎症性腸疾患、過敏性
大腸症候群、下痢、便秘、胃酸分泌、および潰瘍などの胃腸運動および機能の機能障害を
含む自律神経障害;切迫尿失禁、喘息、COPD;脳、神経系、心血管系、免疫系、ニュ
ーロクリン系、胃腸管系、もしくは内分泌および外分泌腺、目、角膜、肺、前立腺、また
はコリン作動性機能がムスカリン性受容体サブタイプにより媒介される他の器官の1つま
たは複数の機能障害であって、脳アミロイド媒介性障害;グリコーゲン合成酵素キナーゼ
(GSK3ベータ)媒介性障害;タウタンパク質過剰リン酸化媒介性損傷、機能障害、ま
たは疾患;CNSおよびPNSの高コレステロール血症および/または高脂血症媒介性損
傷、機能障害、または疾患;Wnt媒介性シグナル伝達異常;神経可逆性の障害;高血糖
症;糖尿病;内因性成長因子媒介性疾患、または追加の危険因子の組合せを含む機能障害
による中枢または末梢神経系疾患状態;あるいはアポリポタンパク質Eが関与する疾患状
態;あるいはアルツハイマー病型の老人性認知症、アルツハイマー病(AD)、AD発症
リスクのある患者でのAD症状の発症遅延、レビー小体認知症、レビー小体病、脳アミロ
イド血管症(CAA)、大脳アミロイドーシス、前頭側頭認知症、血管性認知症、高脂血
症、高コレステロール血症、多発梗塞性認知症(MID)、脳卒中虚血、脳卒中/虚血/
頭部外傷併発性のMID、混合型MIDおよびアルツハイマー病、ヒト頭部外傷、加齢性
記憶障害、軽度認知障害(MCI)、ADに至るMCI、双極性障害、躁病、統合失調症
、非感情性統合失調症、パラフレニー、免疫機能障害、ニューロクリン障害、ならびに過
食症および食欲不振を含む食物摂取量の調節異常、体重管理、肥満、ならびに炎症を含む
、コリン作動性機能障害の関与が示唆されている障害が挙げられ、炎症性障害の免疫療法
の支持に特別の関心が喚起される。
【請求項15】
好ましくは、コリンエステラーゼ阻害剤、ニコチンアゴニスト、コリン作動性前駆体お
よびコリン作動性エンハンサー、向知性薬、末梢性抗ムスカリン性作用薬、M2ムスカリ
ン性アンタゴニスト、M4アンタゴニスト、ベンゾジアゼピンインバースアゴニスト、シ
グマ-1アゴニスト、抗うつ剤、パーキンソン病(PD)またはうつ病の処置に使用され
る三環系抗うつ剤または抗ムスカリン性作用薬、抗精神病剤および抗統合失調症剤、グル
タミン酸アンタゴニストおよび修飾因子、代謝調節型グルタミン酸受容体アゴニスト、N
MDAアンタゴニスト、AMPAアゴニスト、アセチル-L-カルニチン、MAO-B阻
害剤、ペプチド、および増殖因子、コレステロール低下剤、酸化防止剤、GSK-3ベー
タ阻害剤、Wnt-リガンド、PKC活性化因子、ベータまたはガンマセクレターゼ阻害
剤、ベータアミロイド分解剤、ネプリライシン、インスリン分解酵素、またはエンドセリ
ン転換酵素の活性化因子などの、ベータアミロイドの分解に関与する酵素の活性化因子、
ベータアミロイド抗凝集剤、キレート剤、ベータアミロイド、タウタンパク質病理および
/またはアルファ-シヌクレイン病理に対する抗体および免疫療法化合物、アミロイドに
結合する化合物、シクロオキシゲナーゼ(COX)-2阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬
、エストロゲン様作用剤、エストロゲン受容体修飾因子、ステロイド性神経保護剤、なら
びにスピントラップ医薬品からなる群から選択される少なくとも1つの追加の薬理学的活
性化合物をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピロ化合物の結晶性多形、当該多形を含有する医薬組成物、およびアセチ
ルコリン媒介性疾患の処置におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コリン作動性ニューロンの変性およびコリン作動性機能低下は、アルツハイマー病(A
D)に関連する病理である。ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)は、アセ
チルコリン誘導性神経伝達を媒介し、5つのmAChRサブタイプ(M1~M5)が特定
されている。それらの中でも、M1受容体は、中枢神経系(CNS)で広く発現し、多く
の生理学的および病理学的脳機能での関与が示唆されている。加えて、M1受容体は、A
Dおよび幾つかの他の神経変性疾患の重要な治療標的であると考えられている。総説は、
例えば、Jiang et al.,Neurosci.Bull.30(2014),
295-307を参照されたい。M1およびM4に対して中程度の選択性を有するオルソ
ステリックなムスカリン性アゴニストであるキサノメリンは、AD患者の行動障害の改善
および統合失調症患者での有効性を示した最初の化合物の1つだった。一方で、M1受容
体の選択性向上を示すさらなる化合物の開発が試みられている。総説は、例えば、Mel
ancon et al.,Drug Discovery Today 18(201
3),1185-1199を参照されたい。しかしながら、すべての臨床研究において、
キサノメリンおよび他の関連ムスカリン性アゴニストは、悪心、消化器痛、下痢〔diahor
rhea〕、発汗(過度の発汗)、過流涎(過度の唾液分泌)、失神、および徐脈を含むコリ
ン作動性有害事象に関して、許容できない安全域を示している。
【0003】
したがって、M1受容体の活性を選択的に調節することが可能であり、他のムスカリン
性受容体の刺激で見られる有害効果を示さず、ヒトに対して安全および耐容性であり、現
行の製造管理および品質管理基準(cGMP)規制に準拠する薬物製造プロセスに適応す
る化合物の必要性が依然として存在する。
【0004】
この課題は、特許請求の範囲で特徴付けられており、下記にさらに記載されている実施
形態による本発明によって解決される。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、概して、(S)-2-エチル-8-メチル-1-チア-4,8-ジアザスピ
ロ[4.5]デカン-3-オン(化合物A)の新規な結晶性形態に関する。
【0006】
【化1】
ここで、上記多形は、
-
図1に示されているパターンと実質的に同じ粉末X線回折(XRPD)パターン、
それぞれ
図3Aおよび3Bに示されている曲線と実質的に同じ示差走査熱量測定(DSC
)曲線、
図9Bに示されているスペクトルと実質的に同じ固相CP/MAS
13C N
MRスペクトル、ならびに
図10Aに示されているスペクトルと実質的に同じATR F
T-IRスペクトルを示す、化合物Aの一水和物である形態I;
- それぞれ
図6Aおよび6Bに示されているパターンと実質的に同じXRPDパター
ン、それぞれ
図7Aおよび7Bに示されている曲線と実質的に同じ示差走査熱量測定(D
SC)曲線、それぞれ
図8Aおよび8Bに示されている曲線と実質的に同じ熱重量分析(
TGA)曲線、
図9Aに示されているスペクトルと実質的に同じ固相CP/MAS
13
C NMRスペクトル、ならびに
図10Aおよび10Bに示されているスペクトルと実質
的に同じATR FT-IRスペクトルを示す、化合物Aの無水形態である形態II;な
らびに
-
図2に示されているパターンと実質的に同じXRPDパターン、
図4Aおよび4B
に示されている曲線と実質的に同じDSC曲線、
図5に示されている曲線と実質的に同じ
TGA曲線、ならびに
図9Cに示されているスペクトルと実質的に同じ固相CP/MAS
13C NMRスペクトルを示す、化合物Aの一水和物である形態III
からなる群から選択される。
【0007】
上記結晶性多形形態は、様々な医薬品応用に、例えば、M1ムスカリン性受容体の刺激
に有用である。本発明は、
図1~16に示されており、本発明の主題化合物Aの結晶性多
形形態の本質的な特徴を示す、実施例で特に示されている個々の態様に関する。
【0008】
化合物A[(S)-2-エチル-8-メチル-1-チア-4,8-ジアザスピロ[4.
5]デカン-3-オン]は、選択的なM1ムスカリン性受容体アゴニストであることが公
知であり、以下の化学構造を有する「AF267B」として、米国特許第7,439,2
51号および第7,049,321号ならびに対応する国際出願公開第03/09258
0号に記載されている。
【0009】
【0010】
AF267Bは、in vitroでは、キナーゼ(例えば、PKC、MARK、およ
びGSK3β)のM1受容体媒介性調節を介して、αAPPを増加させ、Aβレベルおよ
びタウ過剰リン酸化を低下させ、Aβ誘導性神経毒性を阻止することが示されている。総
説は、例えば、Fisher,Curr.Alzheimer Res.4(2007)
,577-580およびFisher,J.Neurochem.120(2012),
22-33を参照されたい。AF267Bは、3×Tg-ADマウスにおいて空間記憶を
改善することが見出され、海馬および皮質におけるAβおよびタウ病理の低減と関連付け
られた[Caccamo et al.,Neuron.49(2006),671-6
82]。NGX-267と称される薬物として製剤化された化合物A(AF267B)は
、以前に、口内乾燥症の処置に関する第II相臨床治験、ならびにアルツハイマー病およ
び統合失調症の認識障害の処置に関する第I相臨床治験も行われたことがあった。この状
況で、臨床治験で使用されたAF267B/NGX-267の実際の製造プロセスは開示
されていなかったが、国際出願公開第03/092580号の実施例に記載されている実
験室規模のプロセスとは異なると考えられた。しかしながら、2009年の臨床治験の結
果は有望であったにも関わらず、この薬物候補の臨床研究はすべて中止され、再開される
ことはなかった。
【0011】
今や、本発明により実施された実験により、驚くべきことに、化合物Aには3つの別個
の結晶性多形、本明細書では形態Iおよび形態IIIと呼ばれる、化合物Aの2つの一水
和物、ならびに本明細書では形態IIと呼ばれる1つの無水化合物Aが存在することが見
出されたことが明らかにされた。3つの結晶性形態は、多形と呼ばれる場合がある。3つ
の多形の各々は、塩形態ではない。化合物Aの無水形態IIおよび一水和物形態IIIは
、NGX-267(「AF267B」)に関して記載されているものと実質的に類似した
活性を有することが見出された。この化合物の使用目的は、治療的活性薬物としてである
ため、化合物Aの一水和物の最も安定な薬学的に許容される形態は、非常に興味深いだろ
う。
【0012】
したがって、新規な結晶形態、特に、医薬品製造において好ましい特性を有する、化合
物A[(S)-2-エチル-8-メチル-1-チア-4,8-ジアザスピロ[4.5]デ
カン-3-オン]の無水形態IIおよび一水和物形態IIIが提供される。また、上記新
規な形態を調製するための、ならびに形態IIを結晶性形態Iまたは形態IIIへとおよ
び形態Iまたは形態IIIを形態IIへと変換するための方法だけでなく、M1ムスカリ
ン性受容体の調節に応答する疾患および障害を処置するための使用に好適な、上記新規な
結晶性形態を含有する医薬を調製するための方法が提供される。
【0013】
一実施形態では、本発明は、ある粉末回折パターンを示す、化合物Aの結晶性多形形態
を包含する。一実施形態では、結晶性多形形態は、溶媒和物を実質的に含まない。好まし
い実施形態では、こうした結晶性多形形態は、実質的に水を含まない、つまり実質的に無
水である。別の実施形態では、結晶性多形形態は、溶媒和物を含有する。好ましい実施形
態では、結晶性多形形態は、一定量の水を含有する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、溶媒和物を含有しない、化合物Aの結晶性多形形態を生産
するための方法を包含する。好ましい実施形態では、結晶性多形形態は、水を含まない(
無水である)。
【0015】
一実施形態では、本発明は、以下の単結晶X線データ:P2(1)a=8.1416(
13)、(α=90°)、b=7.9811(12)(β=90.761(2)°、c=
17.878(3)、(γ=90°)、Å、T=173(1)Kにより特徴付けられる、
溶媒を含まず、水を含まない、化合物Aの結晶性多形形態(形態II)を提供する。本発
明の一実施形態では、結晶性形態は、以下のデータ:容積=1161.6(3)Å3、Z
=4、F(000)=464、理論密度、Dc=1.226Mg/m3、吸収係数、μ=
0.251mm-1によりさらに特徴付けられる。
【0016】
別の実施形態では、本発明の方法により、溶媒和物を含有する、化合物Aの結晶性多形
形態が生産される。より好ましくは、そのような結晶性多形形態は、水を含有する。さら
により好ましくは、結晶性多形形態は、化合物Aの一水和物である。
【0017】
さらに別の実施形態では、本発明は、本発明の異なる結晶性多形を互いに変換する方法
を包含する。より好ましくは、上記方法により、本発明の無水結晶性多形および一水和物
結晶性多形が互いに変換される。
【0018】
より具体的には、上記に言及されているように、本発明は、化合物Aの3つの結晶性多
形形態:便宜的な目的で本明細書では形態IIと呼ばれることになる、無水化合物Aの1
つの新規な結晶性多形形態;および化合物Aの分子毎に1分子の水を含有する、化合物A
の2つの結晶性多形形態(形態Iおよび形態III)を提供する。
【0019】
加えて、本発明は、化合物Aの結晶性形態I、II、およびIIIを調製するための種
々の方法を包含する。
【0020】
さらに別のセットの実施形態では、本発明は、M1ムスカリン性受容体の刺激に応答性
である哺乳動物疾患または状態を処置する医薬組成物を調製および投与するための方法お
よび組成物を包含し、上記方法は、それを必要とする対象に、化合物Aの結晶性多形形態
(および/またはその薬学的に許容される塩)および薬学的に許容される担体、希釈剤、
または賦形剤を含む、M1ムスカリン性受容体の刺激に効果的な量の化合物または化合物
の混合物を投与することを含む。好ましい実施形態では、結晶性多形形態は、実質的に水
を含まない。より好ましい実施形態では、結晶性形態は、化合物Aの形態IIである。別
の好ましい実施形態では、結晶性多形形態は、化合物Aの分子毎に1分子の水を含有し、
形態IIIである。
【0021】
さらに別の実施形態は、本明細書で開示される化合物Aの結晶性多形形態、例えば、9
.9°、10.8°、および11.8°±0.2からなる群から選択される回折角2θに
少なくとも1つのピークを含むX線粉末回折パターンを示す結晶性多形形態、ならびにそ
のための薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物を包含する。
【0022】
本発明の一実施形態では、本明細書で企図される医薬組成物は、結晶性形態、溶媒和物
形態、または非晶質形態の化合物Aの追加の形態をさらに含む。特定の実施形態では、化
合物Aの追加の形態は、一水和物形態である。別の特定の実施形態では、医薬組成物は、
組成物中の化合物Aの総重量に基づいて、少なくとも70重量%の上記結晶性多形形態、
好ましくは80重量%、90重量%、95重量%、または99重量%の上記結晶性多形形
態を含む。
【0023】
本発明の実施形態は、下記の項目により特徴付けられ、添付の図および実施例により、
さらに詳細に説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、酢酸エチルから結晶化させた(A)、および水からゆっくりと蒸発させた(B)、化合物A結晶性形態IのX線粉末回折パターンを示す。
【
図2】
図2は、化合物Aの一水和物結晶性多形形態(形態III)のX線粉末回折パターンを表す。
【
図3】
図3は、酢酸エチルから結晶化させた(A)、および水からゆっくりと蒸発させた(B)、化合物Aの一水和物結晶性多形形態(形態I)の示差走査熱量測定(DSC)曲線を表す。DSCは、一方は約107℃および他方は約136.17℃の2つの吸熱ピークを示す。
【
図4】
図4は、化合物Aの一水和物結晶性多形形態(形態III)の示差走査熱量測定(DSC)曲線を表す。A)水中の再スラリーから。DSCは、一方は約77.10℃および他方は約134.87℃の2つの吸熱ピークを示す。B)アセトンおよび1.3当量の水からの結晶化により調製したcGMP医薬品有効成分(API)。DSCは、一方は約61.18℃および他方は約133.75℃の2つの吸熱ピークを示す。
【
図5】
図5は、化合物Aの一水和物結晶性多形形態(形態III、API)の熱重量分析(TGA)の結果を表す。最大約110℃の温度に加熱した場合、TGAは、7.8%の重量喪失を示す。カールフィッシャー分析による水分は、化学量論的な一水和物から予想される通り、7.7%である。
【
図6】
図6は、化合物Aの無水結晶性多形形態IIのX線粉末回折パターンを表す。A)アセトンからの再結晶化、B)cGMP API。
【
図7】
図7は、化合物Aの無水結晶性多形形態IIのDSC曲線を表す。A)アセトンからの再結晶化、B)cGMP API。A)およびB)のDSCは、それぞれ約135.35℃および134.29℃に1つの吸熱ピークしか示さない。
【
図8】
図8は、化合物Aの無水結晶性多形形態IIのTGAの結果を表す。A)アセトンからの再結晶化(TGAは、110℃未満まででは著しい重量喪失を示さなかった)、B)API(TGAは、115℃で0.73%の重量喪失を示した)。
【
図9】
図9は、化合物Aの結晶性形態IおよびIIの代表的な固相CP/MAS
13C NMRスペクトルである。形態IIIは、形態Iと同一のCP/MAS
13C NMRスペクトルを有する。
【
図10】
図10:A)化合物Aの結晶性形態I(酢酸エチルから結晶化)および形態II(ジオキサンから結晶化)の代表的なATR FT-IRスペクトル。幾つかの吸収ピークの認識可能な違いが観察された。各形態は、スペクトルの1340~1390cm
-1領域により区別され、この領域は、多形の特定に使用することができる。結晶形態Iの場合、1352、1369、および1387cm
-1の吸収ピークの相対的な形状および強度を、識別目的〔diagnostic purpose〕に使用することができる。結晶形態IIの場合、1340~1362cm
-1の吸収ピークの相対的な形状および強度を、識別目的に使用することができる。B)cGMP API結晶形態II。
【
図11】
図11は、2つの立体配座的に異なる非対称単位の分子を示す化合物A無水結晶(アセトニトリルから結晶化させた形態II)の単結晶構造、および単位格子での配置を表す。
【
図12】
図12は、化合物Aの3つのX線粉末回折パターン:A)XPREPを使用することによる単結晶形態II(
図11を参照)のシミュレーション、B)結晶性材料形態II(cGMP API)の実験XRPDパターンを表す。
【
図13】
図13は、化合物Aの3つのX線粉末回折パターン:形態I(酢酸エチルから結晶化)、形態II(cGMP API)、形態III(cGMP API)の結晶性材料の実験XRPDパターン、およびXPREPを使用することによる米国特許第7,439,251号B2に示されている単結晶形態のシミュレーションを表す。
【
図14】
図14は、酢酸エチルから結晶化させた、1分子の水を有する、化合物Aの単結晶構造(形態I)を表す。
【
図15A】
図15は、95%RHにおける、形態IIの形態IIIへの転換を表す。A)CP/MAS
13C NMR固相NMR。化合物A無水結晶:(A)乾燥、および(B)95%RHにて1週間、室温で保管した後。
【
図15B】B)化合物A無水結晶は、CP/MAS
13C固相NMR、DSC、およびTGAにより示されたように、純粋な一水和物結晶である形態IIIへと完全に変換された。
【
図16】
図16は、化合物A結晶形態I/IIIの形態IIへの転換の、90℃における時間の関数としての固相CP/MAS
13C NMRを表わす。矢印は、結晶形態IIの識別的ピーク〔diagnostic peak〕を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって、導入される際に定義されている用語
は、本明細書および特許請求の範囲の全体にわたってそれらの定義を保持する。加えて、
以下の定義は、本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって該当する。
【0026】
「結晶性形態」および「多形」という用語は、その化学化合物が溶媒和されているか否
かに関わりなく、特定の結晶性状態にある特定の化学化合物を指す。したがって、例えば
、2つの異なる非溶媒和形態および1つの溶媒和形態に結晶化されることが示される化学
化合物は、3つの異なる結晶性多性形態または多形に結晶化されると言われることになる
。さらに、「多形」は、別の結晶性形態とは異なるが、同じ化学式を共有する物質の結晶
性形態を意味する。
【0027】
「多形純度」に関して、好ましくは、化合物Aの結晶性多形形態I~IIIは、化学不
純物(例えば、多形の調製中に生成される副産物)および他の多形性結晶性形態を実質的
に含まない。本発明の目的では、化学不純物を「実質的に含まない」とは、約5w/w%
未満かまたはそれと等しい化学不純物、好ましくは約3w/w%未満かまたはそれと等し
い化学不純物、より好ましくは約2w/w%未満かまたはそれと等しい化学不純物、およ
びさらにより好ましくは約1w/w%未満かまたはそれと等しい化学不純物を意味する。
多形に関する「精製された」または「精製された形態の」という用語は、本明細書に記載
のまたは当業者に周知の1つまたは複数の精製プロセスから得られた後の、本明細書に記
載のまたは当業者に周知の標準的分析技法により十分に純粋であると特徴付けられる、上
記多形の物理的状態を指す。化合物Aの一水和物の結晶性多形形態I~IIIの精製され
た形態は、化学不純物を実質的に含まない。
【0028】
「処置または予防」という用語は、本明細書に列挙されている障害および状態に関して
使用される場合、そうした障害または状態に関連する症状および/または効果の寛解、予
防、または緩和を意味する。「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、医薬を
予防的に投与することを指す。医学分野の当業者であれば、「予防する」という用語は、
絶対的な用語ではないことを理解する。医学分野では、「予防する」という用語は、状態
の可能性または重篤度を実質的に減らすための薬物の予防的投与を指し、これが、特許請
求の範囲で意図されている意味である。「患者」には、ヒトおよび他の動物が両方とも含
まれる。「哺乳動物」には、ヒトおよび他の哺乳類動物が含まれる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」は、ヒトに投与された際に、生理
学的に耐容性であり、典型的には、胃の不調およびめまいなどの、アレルギー反応または
同様の有害反応をもたらさない材料および組成物を指す。典型的には、本明細書で使用さ
れる場合、「薬学的に許容される」という用語は、動物およびより具体的にはヒトにおけ
る使用のために、連邦政府もしくは州政府の規制当局により認可されているか、または米
国薬局方もしくは他の一般的に認識されている薬局方に列挙されていることを意味する。
【0030】
「薬学的に許容される塩」という語句は、本明細書で使用される場合、これらに限定さ
れないが、本組成物で使用される化合物に存在していてもよい酸性基または塩基性基の塩
を含む。本組成物に含まれる性質が塩基性の化合物は、種々の無機酸および有機酸との幅
広く多様な塩を形成することが可能である。そのような塩基性化合物の薬学的に許容され
る酸付加塩を調製するために使用することができる酸は、無毒性の酸付加塩、つまり、こ
れらに限定されないが、硫酸、クエン酸、マレイン酸、酢酸、シュウ酸、塩酸塩、臭化水
素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩〔acid p
hosphate〕、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエ
ン酸塩〔acid citrate〕、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒
石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸
塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩〔glucaronate〕、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グ
ルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-
トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩[つまり、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒ
ドロキシ-3-ナフトエート)]塩を含む、薬理学的に許容される陰イオンを含有する塩
を形成するものである。本組成物に含まれる、アミノ部分を含む化合物は、上記で言及さ
れている酸に加えて、種々のアミノ酸と薬学的に許容される塩を形成することができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、固体または液
体のいずれであってもよい。固体形態調製物としては、粉末、錠剤、丸剤、カプセル剤、
カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、結合剤
、保存剤、錠剤崩壊剤、または封入材料としても作用することができる1つまたは複数の
物質であってもよい。粉末の場合、担体は、微細に分割された活性成分との混合物中に存
在する微細に分割された固形物である。錠剤の場合、1つまたは複数の活性成分は、必要
な結合特性を有する担体と好適な割合で混合され、所望の形状およびサイズに圧縮成形さ
れる。液体形態調製物としては、溶液、懸濁液、およびエマルジョン、例えば、水、水プ
ロピレングリコール溶液〔water propylene glycol solution〕が挙げられる。非経口注
射用に、液体調製物をポリエチレングリコール水溶液で溶液に製剤化することができる。
経口使用に好適な水溶液は、活性成分を水に溶解し、必要に応じて、好適な着色剤、香味
剤、安定化剤、および増粘剤を添加することにより調製することができる。経口使用に好
適な水性懸濁液は、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、ナトリウムカルボキ
シメチルセルロース、および他の周知の懸濁化剤などの、粘性材料を有する水に、微細に
分割された活性成分を分散させることにより製作することができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「結合剤」または「賦形剤」という用語は、粉末化材料に
密着特性を付与するために使用される作用剤を指す。結合剤または結合剤がそのようなも
のとして知られていることもある「造粒剤」は、錠剤製剤に密着性を付与し、それにより
錠剤が圧縮形成後に完全性を保つことが保証され、ならびに所望の硬さおよびサイズの顆
粒に製剤化することによる自由流動性の向上が保証される。結合剤として一般に使用され
る材料としては、デンプン;ゼラチン;スクロース、グルコース、デキストロース、糖蜜
、およびラクトースなどの糖;アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイルランドゴケの抽
出物、パンワールゴム〔panwar gum〕、ガティゴム、イサポール殻の粘液〔mucilage of
isapol husks〕、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリド
ン、Veegum、微結晶性セルロース、微結晶性デキストロース、アミロース、および
カラマツアラビノガラクタン〔larch arabogalactan〕などの天然または合成ゴムなどが
挙げられる。「賦形剤」は、希釈剤として使用されるかまたは製剤に形態もしくは稠度を
与えるための本質的に不活性の物質を意味する。一般的に、賦形剤は、活性物質以外の、
患者により摂取されるかまたは患者に投与される医薬品形態の成分として定義することが
できる。例えば、Annex of Directive 2001/83/ECを参照
されたい。ある賦形剤は、崩壊剤としての役目を果たすこともでき、つまり、体液に曝さ
れると固形医薬組成物の分散を支援する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」は、製剤のバルクを増加させて、錠剤を実用的
サイズに圧縮形成するために添加される不活性物質である。一般に使用される希釈剤とし
ては、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化
ナトリウム、乾燥デンプン、粉糖、およびシリカなどが挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「約」、「およそ」、「実質的に」、および「著しく」は
、当業者により理解され、それらが使用される文脈である程度まで変動するだろう。上記
用語の使用が、使用されている文脈を考慮しても当業者に明白ではない場合、「約」およ
び「およそ」は、特定の用語のプラスまたはマイナス<10%を意味することになり、「
実質的に」および「著しく」は、特定の用語のプラスまたはマイナス>10%を意味する
ことになる。
【0035】
材料を記載するためにNMRデータを使用する場合、NMRピークは、標準物質(例え
ば、テトラメチルシラン)に対する絶対化学シフト値として報告してもよく、またはその
代わりにその材料は、ピークの化学シフト値間の差として記載してもよいことが理解され
るだろう。したがって、例えば、材料は、170.0および130.0ppmのピークを
有するNMRスペクトルを有すると記載してもよく、またはその材料は、最も大きな化学
シフト値と別のピークとのppmの差が40.0ppmであるNMRスペクトルを有する
と記載してもよい。後者の報告方法は、材料の絶対化学シフト値の報告で生じる場合があ
る系統誤差により影響されないという点で有用である。また、材料を特定するためにNM
Rスペクトルを使用する場合、ピーク形状は、材料の特定を支援することができることが
理解されるだろう。したがって、例えば、同じ分子の2つの結晶性多形形態は、およそ同
じ化学シフト値にNMRピークを有する場合があるが、その材料の一方のスペクトルでは
、ピークは、他方の結晶性多形形態のスペクトルよりも幅がはるかに狭いかまたは高さが
はるかに高い場合があり、したがって一方のまたは他方の結晶性多形形態の特定が容易に
なる。同じことは、必要な変更を加えれば、他の分析方法にも当てはまる。
【0036】
これから、上記で特徴付けられている本発明の主題ならびにその種々の態様および実施
形態を、以下の図および実施例を参照して説明するものとする。別様の指示がない限り、
使用される用語は、本明細書で与えられた定義に従って理解される。
【0037】
さらに、本発明の背景における上述の記載の開示内容は、該当する限り、本発明の開示
の一部を形成する。本発明は、本明細書に記載されている特定の方法論、プロトコール、
細胞株、賦形剤、担体、および試薬それ自体に限定されないことが理解されるべきである
。また、本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を記載するためのものに過ぎず
、本発明の範囲を限定することは意図されていない。本発明の範囲は、添付の特許請求の
範囲によってのみ限定されることになる。本発明の実施形態は、以下の項目[1]~[4
0]に要約されている。したがって、その最も幅広い態様では、本発明は、以下に関する
。
[1]式:
【0038】
【化3】
の化合物Aの結晶性多形であって、
上記多形が、
一水和物形態Iであって、
(i)CuK
α線を使用して測定される以下の2シータ値(±0.2):8.8、1
2.3、17.5、19.9、21.6 23.5、24.5、26.3、28.8、3
1.6の少なくとも1つを含有するが、以下の2シータ値、17.3、17.9、21.
9、24.9、29.3、30.8、および33.4の少なくとも1つを欠くX線粉末回
折パターンを有し(
図1も参照)、
(ii)結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルが、1352、
1369、および1387cm
-1から選択される値を有する少なくとも1つの吸収ピー
クを含有し、かつ/または
(iii)結晶性形態が、示差走査熱量測定法(DSC)により測定して、107.
1℃(104.85℃から開始)および136.17℃(133.41℃から開始)に吸
熱ピークを示し(
図3も参照)、任意選択で
(iv)結晶性形態の
13C固相NMRが、TMSに対してppm単位で表される以
下の化学シフト値:67.09、54.08、46.59、40.97、30.15、お
よび13.27の1つを有する少なくとも1つの共鳴を含有し、かつ/または
(v)結晶性形態の
13C固相NMRが、107.3、120.3、127.8、1
33.4、144.2、もしくは161.1の、最も大きな化学シフトを有する共鳴と別
の共鳴との化学シフトの差を含有する、形態;
無水形態IIであって、
(i)以下の単結晶X線データ:P2(1)a=8.1416(13)、(α=90
°)、b=7.9811(12)(β=90.761(2)°、c=17.878(3)
、(γ=90°)、Å、T=173(1)Kにより特徴付けられる単結晶X線を示し(図
11も参照)、
(ii)CuK
α線を使用して測定される以下の2シータ値(±0.2):9.9、
10.8、11.8、11.9、14.8、16.2、18.2、18.5、19.8、
21.3、22.4、23.9、29.2、29.7、および33.1の少なくとも1つ
を含有するX線粉末回折パターンを有し(表1も参照)、
(iii)結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルが、1906
、1340、1447、2869、2901、2951、および3006~3012cm
-1から選択される値を有する少なくとも1つの吸収ピークを含有し、
(iv)結晶性形態の
13C固相NMRが、TMSに対してppm単位で表される以
下の化学シフト値:175.0;65.3、64.0;45.8、45.0;49.3、
43.6、39.5;38.8;28.9、26.0;15.4、14.8の1つを有す
る少なくとも1つの共鳴を含有し(表5も参照)、
(v)結晶性形態の
13C固相NMRが、109.7もしくは111;129.2も
しくは130.0;122.7;125.7;131.4;135.5;136.2;1
46.1もしくは149.0;および159.6もしくは160.2の、最も大きな化学
シフトを有する共鳴と別の共鳴との化学シフトの差を含有し、かつ/または
(vi)結晶性形態が、DSCにより測定して、134.2℃から開始し135.4
℃±0.2℃のピークを有する吸熱ピークを有し、106℃~110℃に吸熱ピークを実
質的に有しておらず、約50℃~約120℃の範囲に吸熱ピークを欠く(
図7も参照)、
形態;あるいは
一水和形態IIIであって、
(i)CuK
α線を使用して測定される以下の2シータ値(±0.2):12.3、
17.3、17.5、19.9、21.6、24,4、26,3、および35.4の少な
くとも1つを含有し、10.8~11.9の範囲の2シータ値を有するピークを実質的に
含まないX線粉末回折パターンを有し(表2も参照)、
(ii)結晶性形態の
13C固相NMRが、TMSに対してppm単位表される以下
の化学シフト値:67.56、54.60、47.97、41.49、30.70、およ
び13.77の1つを有する少なくとも1つの共鳴を含有し(表5も参照)、
(iii)結晶性形態の
13C固相NMRが、107.3、120.3、127.0
、133.4、144.2、もしくは161.1の、最も大きな化学シフトを有する共鳴
と別の共鳴との化学シフトの差を含有し、
(iv)結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルが、1039、
1353、1369、1369、1388、2918、2974、および3088cm
-
1から選択される値を有する少なくとも1つの吸収ピークを含有し、かつ/または
(v)結晶性形態が、DSCにより測定して、58~94℃に非常にブロードな吸熱
ピーク、および133.7℃から開始し134.9℃にピークを有する吸熱ピークを示す
(
図4および表3も参照)、形態
からなる群から選択される、結晶性多形。
【0039】
化合物Aは、(2S)-2-エチル-8-メチル-1-チア-4,8-ジアザスピロ[
4.5]デカン-3-オン(「AF267B」)として国際出願公開第03/09258
0号A2に開示されており、以下の化学構造を反映する。
【0040】
【0041】
また、この文献には、アセトニトリル/エタノールの85:15混合物での溶出により
、化合物AのR体およびS体をキラル分離し、その後さらにエタノールを添加し、乾燥す
るまで蒸発させて、残留アセトニトリルを除去することが記載されている。しかしながら
、国際出願公開第03/092580号および関連特許で開示されている、化合物Aを調
製するための方法は、特定の多形性結晶性形態に関して制御されておらず、したがって、
従来は化合物Aの多形性形態は未知であった。さらに、国際出願公開第03/09258
0号に開示されている方法に従って調製された化合物Aは、医薬組成物用の薬物として好
適であるとは証明されていない。したがって、一実施形態では、本発明は、米国特許第7
,439,251号および第7,049,321号ならびに対応する国際出願公開第03
/092580号に開示されている化合物Aおよびその調製方法に関するものではない。
【0042】
言及されているように、本発明の本質的な部分は、化合物Aの3つの別個の結晶性多形
、本明細書では形態IおよびIIIと呼ばれる化合物Aの2つの一水和物、および本明細
書では形態IIと呼ばれる1つの無水化合物Aが存在することが見出されたという予期せ
ぬ観察に基づく。
【0043】
医薬品有効成分は、異なる結晶性形態に、または結晶性状態の欠如に帰することができ
る多形性形態で生じることが多いことが知られている。結晶格子中の分子の秩序が異なる
結果として、化合物のそのような多形性形態は、融点、X線回折パターン、赤外線吸収フ
ィンガープリント、および固相NMRスペクトルの点で異なることになる。したがって、
これらは、同じ分子式を共有する固形物であるが、固形物を特徴付けるために一般に使用
される定量化可能な特徴が異なる。
【0044】
また、多形性は、保管安定性、圧縮形成性、および密度などの、医薬品製剤化および薬
物製品製造において重要である物理的パラメータに影響を及ぼす場合がある。例えば、1
つの形態は、別の形態と比べて1つの形態の粒子形状およびサイズ分布が異なるため、望
ましい溶媒和物もしくは望ましくない溶媒和物を形成する可能性がより高い場合があるか
、または不純物を含まないように濾過および洗浄するのが困難な場合がある。また、多形
性は、結晶格子中の分子の秩序が異なる結果として、経口活性作用剤の吸収、薬物動態、
および/または生物学的利用能を変更する場合がある、生理学的流体中の溶解速度に影響
を及ぼすことにより、直接的薬学効果を有する場合がある。最終的には、理想的な薬物有
効性を得るために必要な薬物製剤中の要求用量含量でさえ、多形が異なれば、異なる場合
がある。薬物が、生物学的利用能の異なる2つまたはそれよりも多くの結晶性形態として
結晶化する場合、最適な用量は、製剤に存在する結晶性形態に依存することになる。また
、多形性は、保管安定性、圧縮形成性、および密度などの、製剤化および製品製造におい
て重要である薬学的パラメータに影響を及ぼす場合がある。1つの形態は、別の形態と比
べて1つの形態の粒子形状およびサイズ分布が異なるため、望ましい溶媒和物もしくは望
ましくない溶媒和物を形成する可能性がより高い場合があるか、または不純物を含まない
ように濾過および洗浄するのが困難な場合がある。
【0045】
本発明は、結晶性形態、つまり化合物(S)-2-エチル-8-メチル-1-チア-4
,8-ジアザスピロ[4.5]デカン-3-オン(化合物A)の多形、それらを調製する
ためのプロセス、およびそれらの使用に関する。本発明の実施形態によると、化合物Aの
3つの結晶性形態:便宜的な目的で本明細書では形態IIと呼ばれることになる、無水化
合物Aの1つの結晶性形態;ならびに便宜的な目的で本明細書ではそれぞれ形態Iおよび
IIIと呼ばれることになる、化合物Aの分子毎に1分子の水を含有する、化合物Aの2
つの別個の結晶性形態が提供される。
【0046】
本発明によると、化合物Aの結晶性形態は、様々な様式で特徴付けることができる。例
えば、形態IIは、特に、示差走査熱量測定法(DSC)および熱重量分析(TGA)な
ど、現行技術で公知のものなどの技法を使用して、水の有無により形態IおよびIIIと
容易に区別することができる。また、形態は、これらに限定されないが、以下の技法:X
線粉末回折(XRPD)、交差分極マジック角スピニングを使用した固相炭素13核磁気
共鳴法(13C CP-MAS NMR)、全反射減衰フーリエ変換赤外分光法(ATR
-FT-IR)、DSC、およびTGAの1つまたは複数により得られる物理的パラメー
タを含む、1つの形態に存在するが他方の形態には存在しない物理的パラメータまたは物
理的パラメータの群により容易に区別することができる。
【0047】
本発明の一実施形態では、上記多形は、上記の項目[1]で特徴付けられ、それぞれ図
3、9、および10に示されている一水和物形態Iである。
【0048】
形態Iは、微量の水を含有する水混和性有機溶媒(エタノール、酢酸エチル、イソプロ
パノール、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン)または水から化合物
Aを直接的に結晶化させることにより優先的に得られる一水和物形態(実施例1~6)で
あり、DSCは、一方は約107℃および他方は136.17℃の2つの吸熱ピークを示
す(
図3)。形態Iは、そのXRPDピークにより特徴付けられる結晶性多形である(図
1)。形態Iは、物質を90℃に加熱することにより、無水形態IIへと転換することが
できる(実施例17)。形態Iは、物質を160℃に加熱し、融解塊を室温で結晶化させ
ることにより、無水形態IIへと転換することができる(実施例18)。
【0049】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、cGMPによる製造に特に好適であることが
証明された、化合物Aの結晶性多形形態に関する。つまり、本発明は、以下に関する。
[2]多形形態IIである、[1]に記載の結晶性多形。
【0050】
本発明の実施形態によると、以下の単結晶X線データ:P2(1)a=8.1416(
13)、(α=90°)、b=7.9811(12)(β=90.761(2)°、c=
17.878(3)、(γ=90°)、Å、T=173(1)Kにより特徴付けられる、
水を実質的に含まない、化合物Aの結晶性多形形態(以下、「形態II」と呼ばれる)が
提供される。本発明の実施形態では、結晶性形態は、以下のデータ:容積=1161.6
(3)Å3、Z=4、F(000)=464、理論密度、Dc=1.226Mg/m
3、
吸収係数、μ=0.251mm
-1によりさらに特徴付けられる(実施例26、
図11)
。
【0051】
無水結晶性形態IIは、アセトニトリル、アセトン、ヘキサン、ジオキサン、シクロヘ
キサン、ジエチルエーテル、好ましくは水を含まないあらゆる溶媒などの溶媒から化合物
Aを直接的に再結晶させ、ヘキサン中の懸濁化合物Aの相平衡化により得られる(実施例
7~13)。形態IIは、そのXRPDにより示される結晶性多形である(それぞれ
図6
Aおよび
図6B)。様々な溶媒を使用して、形態IIを良好な回収率で生産することがで
きる。しかしながら、こうした溶媒の多くは、最終産物、長い針状結晶がフラスコの側面
に粘着したという事実のため、大規模化には好適ではなかった。こうした粘着性固形物の
除去には、手作業による擦過が必要であった。アセトンは、フラスコ側面での固形物の喪
失が最小限である白色材料を生産した1つの溶媒であることが判明した。形態IIは、キ
ログラム範囲に大規模化可能であり、現行の製造管理および品質管理基準(cGMP)に
従って有効とされたプロセスで、アセトンから高純度および高収率(88~93%)で再
現性よく析出および結晶化させることができる。無水結晶性形態IIは、乾燥条件下で安
定であるが、室温で3か月にわたって周囲湿度に曝されると、一水和物形態Iへと転換さ
れ(実施例20a)、1週間にわたって95%の相対湿度に曝されると、形態IIIへと
転換される(実施例15)。API形態IIは、3時間にわたって90%の相対湿度に曝
された後で形態Iへと転換され(実施例20b)、室温で4か月にわたって周囲湿度に曝
されると、形態Iおよび形態IIIの混合物へと転換される(実施例20c)。API形
態IIは、十分に規定および制御された条件に従って結晶化および乾燥させると、高度な
再現性および一貫性で得ることができる。API形態IIは、乾燥保管条件下で少なくと
も2年間にわたって高度に安定であり、前臨床研究および臨床治験で試験された。さらな
る実施形態では、本発明は、以下に関する。
[4]CuK
α線を使用して測定される以下の2シータ値:9.9、10.8、11.
8、11.9、14.8、16.2、18.2、18.5、19,8、21.3、22.
4、23.9、29.2、および29.7、33.0、33.1の少なくとも2個、3個
、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、またはすべてを含有するX線
粉末回折パターンを有する、[2]または[3]に記載の結晶性多形形態II。
【0052】
本発明によると、化合物Aの結晶性多形は、様々な様式で特徴付けることができる。例
えば、一実施形態では、化合物Aの結晶性多形は、9.9°、10.8°、および11.
8°±0.2からなる群から選択される回折角2θに少なくとも1つのピークを含むXR
PDパターンを示す。関連する実施形態では、化合物Aの結晶性形態は、9.9°および
10.8°の2θ値を含むXRPDパターンを示す。別の関連する実施形態では、化合物
Aの結晶性形態は、9.9°および11.8°の2θ値を含むXRPDパターンを示す。
さらに別の関連する実施形態では、化合物Aの結晶性多形は、10.8°および11.8
°の2θ値を含むXRPDパターンを示す。また別の関連する実施形態では、化合物Aの
結晶性形態は、9.9°、10.8°、および11.8°の2θ値を含むXRPDパター
ンを示す。
【0053】
本発明の一実施形態では、化合物Aの結晶性形態のX線粉末回折パターンは、14.8
°および19.8°±0.2からなる群から選択される回折角2θに少なくとも1つの追
加のピークをさらに示す。関連する実施形態では、化合物Aの結晶性形態のX線粉末回折
パターンは、14.8°および19.8°±0.2の両方の回折角2θに追加のピークを
さらに示す。
【0054】
本発明の別の実施形態では、化合物Aの結晶性形態のXRPDパターンは、18.2°
および18.5°±0.2からなる群から選択される回折角2θに少なくとも1つの追加
のピークをさらに含む。関連する実施形態では、化合物Aの結晶性多形のXRPDパター
ンは、18.2°および18.5°±0.2の両方の回折角2θに追加のピークをさらに
含む。したがって、一実施形態では、本発明は、以下に関する。
[5]そのX線粉末回折パターンが、14.8°および19.8°からなる群から選択
される、かつ/または18.2°および18.5°からなる群から選択される回折角2θ
に少なくとも1つの追加のピークを含む、[2]~[4]のいずれか一項に記載の結晶性
多形形態II。
【0055】
またさらなる実施形態では、本発明は、以下に関する。
[6]結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルが、906、134
0、1447、2869、2901、2951、および3006~3012cm-1から
選択される値を有する少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはすべての吸収ピ
ークを含有する、[2]~[5]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態II。
【0056】
[7]結晶性形態の13C固相NMRが、TMSに対してppm単位で表される以下の
化学シフト値:175.0;65.3、64.0;45.8、45.0;49.3、44
.0、39.5;38.8;28.9、26.0;15.4、14.8の少なくとも2つ
、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはすべてを有する共鳴を含有する、[2]~[6
]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態II。
【0057】
本発明のさらなる実施形態では、本発明の化合物Aの結晶性多形形態の13C固相NM
Rスペクトルは、およそ64.0、45.0、38.8、および26.0±0.2ppm
からなる群から選択される化学シフトを有する少なくとも1つのピークを含む。関連する
実施形態では、化合物Aの結晶性多形形態IIは、およそ64.0および45.0±0.
2ppmの化学シフトを有するピークを含む。別の関連する実施形態では、化合物Aの結
晶性多形形態IIは、およそ64.0および38.8±0.2ppmの化学シフトを有す
るピークを含む。さらに別の関連する実施形態では、化合物Aの結晶性多形形態IIは、
およそ64.0および26.0±0.2ppmの化学シフトを有するピークを含む。また
別の関連する実施形態では、化合物Aの結晶性多形形態IIは、およそ45.0および3
8.8±0.2ppmの化学シフトを有するピークを含む。さらなる関連する実施形態で
は、化合物Aの結晶性多形形態IIは、およそ45.0および26.0±0.2ppmの
化学シフトを有するピークを含む。さらに別の関連する実施形態では、化合物Aの結晶性
多形形態IIは、およそ38.8および26.0±0.2ppmの化学シフトを有するピ
ークを含む。
【0058】
また別の関連する実施形態では、化合物Aの結晶性多形形態IIは、およそ64.0、
45.0、および38.8±0.2ppmの化学シフトを有するピークを含む。さらに別
の関連する実施形態では、化合物Aの結晶性多形形態IIは、およそ64.0、45.0
、および26.0±0.2ppmの化学シフトを有するピークを含む。さらなる関連する
実施形態では、化合物Aの結晶性多形形態IIは、およそ64.0、38.8、および2
6.0±0.2ppmの化学シフトを有するピークを含む。さらに別の関連する実施形態
では、化合物Aの結晶性多形形態IIは、およそ45.0、38.8、および26.0±
0.2ppmの化学シフトを有するピークを含む。また別の関連する実施形態では、化合
物Aの結晶性多形形態IIは、およそ64.0、45.0、38.8、および26.0±
0.2ppmの化学シフトを有するピークを含む。特定の好ましい実施形態では、本発明
は、以下に関する。
[8]以下の2シータ値:9.9、10.8、18.5、19.8±0.2を含有する
X線粉末回折パターンを有し、結晶性形態の13C固相NMRが、TMSに対してppm
単位で表される以下の化学シフト値:14.8、15.4、26.0、28.9、64.
0、65.3を有する共鳴を含有し、結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収ス
ペクトルが、1340~1362cm-1±5cm-1の範囲から選択される値を有する
吸収ピークを含有する、[2]~[7]のいずれか一項に記載に結晶性多形形態II。
【0059】
[9]実質的に
図6に示されているようなX線粉末回折パターン、実質的に
図9に示さ
れているような固相
13C NMRスペクトル、実質的に
図10に示されているようなA
TR-FT-IRスペクトル、および実質的に
図7に示されているようなDSCパターン
の少なくとも1つを有する、[2]~[8]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態II
。
【0060】
別の実施形態では、本発明の化合物Aの結晶性多形形態の示差走査熱量測定サーモグラ
ムは、約133℃~約136℃の範囲に吸熱ピークを有するが、約50℃~約110℃の
範囲の吸熱ピークを欠く。
図7も参照されたい。特定の実施形態では、結晶性形態は、約
室温から最大約110℃まで、毎分約3℃の加熱速度での加熱に供されると、1%未満の
重量喪失をさらに示す[熱重量分析(TGA)により決定して]。
図8も参照されたい。
したがって、一実施形態では、本発明は、以下に関する。
[10]毎分約3℃の加熱速度で約110℃の温度までの熱重量分析(TGA)により
決定して1%未満の重量喪失を示す、[2]~[9]のいずれか一項に記載の結晶性多形
形態II。
【0061】
[11]多形形態IIIである、[1]に記載の結晶性多形。
【0062】
本発明の好ましい実施形態によると、化合物Aの結晶性一水和物形態(以下では「形態
III」と呼ぶ)が提供される。形態IIIは、上記に記載されているXRPD、
13C
P/MAS
13C NMR、ATR-FT-IRパターンが形態Iと類似するが、その
DSCパターンは形態Iとはまったく異なり、形態IIIでは、約60~80℃の範囲に
非常に浅くブロードな水喪失を示し、形態Iに特徴的な104℃のDSC/TCAピーク
を示さない(
図4対
図3を参照)。形態Iおよび形態IIIは、DSC/TGAにより示
される2つの異なる多形である。理論により束縛されることは望まないが、本発明者らは
、形態IおよびIIIの結晶マトリックスは同一であるが、形態I結晶では、水が水素結
合されていると考えられ(
図14を参照)、その一方で形態IIIでは、水は恐らくは結
晶細孔に物理的に吸収されていると考えられ、結晶の特異的水結合部位は、実質的に占有
されないままであると考える。
【0063】
一水和物形態IIIは、キログラム範囲に大規模化が可能であり、現行の製造管理およ
び品質管理基準(cGMP)に従って有効とされたプロセスで、形態IIまたは形態Iの
不純物が一切なく、アセトンと1.3当量の水との混合物中の化合物Aの溶液から高収率
(92%)で再現性よく析出および結晶化させることができる。実施例14。形態IIと
同様に、形態IIIは、形態Iほど粘着性ではなく、したがって以前の公知な固体化合物
Aよりも、濾過、擦過、および取り扱いが容易である。形態IIIは、種々の保管条件下
で少なくとも2年間にわたって安定であり、前臨床研究および臨床治験で試験された。
【0064】
一水和物形態IIIは、一水和物形態Iを95%相対湿度に曝すことによっては生成す
ることができず(実施例21)、そのような処置は、化合物A1分子当たり1つよりも多
くの水分子を含有する別の結晶性形態を生成することもない。したがって、この態様では
、本発明は、特に以下に関する。
[12]CuKα線を使用して測定される以下の2シータ値:8.8、12.3、17
.3、17.5、17.8、および23.0の少なくとも2つ、3つ、またはすべてを含
有するX線粉末回折パターンを有する(表2も参照)、[11]に記載の結晶性多形形態
III。
【0065】
[13]上記X線粉末回折パターンが、CuKα線を使用して測定される以下の2シー
タ値:12.3、19.9、21.6、24.6、26.3、31.6、および35.4
の少なくとも1つも含有する(表2も参照)、[11]または[12]に記載の結晶性多
形形態III。
【0066】
[14]上記X線粉末回折パターンが、10.8~11.9の範囲の2シータ値を有す
るピークを実質的に含まない、[12]~[13]のいずれか一項に記載の結晶性多形形
態III。
【0067】
[15]CuK
α線を使用して測定される以下の2シータ値:12.2、17.3、1
9.9、21.6、24.6、26.3、および31.6の少なくとも1つを含有するX
線粉末回折パターンを有し、上記X線粉末回折が、10.8~11.9の範囲の2シータ
値を有するピークを実質的に含まない(
図2も参照)、[11]~[14]のいずれか一
項に記載の結晶性多形形態III。
【0068】
[16]上記X線粉末回折パターンが、CuKα線を使用して測定される以下の2シー
タ値:12.2、17.3、17.5.19.9、21.6、24.6、26.3.31
.2、および35.4の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、またはすべてを含有する、
[11]~[15]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態III。
【0069】
[17]結晶性形態の13C固相NMRが、TMSに対してppm単位で表される以下
の化学シフト値:67.56、54.60、47.07、41.49、30.70、およ
び13.77の少なくとも2つ、3つ、4つ、またはすべてを有する共鳴を含有する、[
11]~[16]のいずれか一項に記載結晶性多形形態III。
【0070】
[18]結晶性形態の13C固相NMRが、107.3、120.3、127.9、1
33.4、144.2、および161.1から選択される、最も大きな化学シフトを有す
る共鳴と他の共鳴との化学シフトの差を、少なくとも2つ、3つ、4つ、またはすべて含
有する、[11]~[17]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態III。
【0071】
[19]結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルが、1039、1
353、1369 1369、1388、2918、2974、および3088cm-1
から選択される値を有する少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはすべての吸
収ピークを含有する、[11]~[18]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態III
。
【0072】
[20]以下の2シータ値12.3、17.3、17.5、19.9、21.6±0.
2を含有するX線粉末回折パターンを有し、結晶性形態の13C固相NMRが、TMSに
対してppm単位で表される以下の化学シフト値:13.77、30.70、67.56
を有する共鳴を含有し、結晶性形態のZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルが、
1353、1369、および1388±5cm-1から選択される値を有する吸収ピーク
を含有し、結晶性形態が、58~94℃の非常にブロードな吸熱および133.9℃から
開始する吸熱を示す、化合物(S)-2-エチル-8-メチル-1-チア-4,8-ジア
ザスピロ[4.5]デカン-3-オンの結晶性一水和物形態。
【0073】
[21]
図5および15に示されているような、化合物Aの1つの分子当たり1分子の
水を含有する、[11]~[18]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態III。
【0074】
本発明の別の実施形態は、溶媒和物を実質的に含まない、化合物Aの結晶性多形を包含
する。現時点で好ましい実施形態では、結晶性形態は、実質的に水を含まない。
【0075】
本発明のまた別の実施形態では、化合物Aの結晶性多形形態は、9.9°、10.8°
、および11.8°±0.2からなる群から選択される回折角2θに少なくとも1つのピ
ークを含むXRPDパターンを示し、形態は、実質的に水を含まない。特定の実施形態で
は、形態は、約2重量%未満の水を含有する。さらなる実施形態では、本発明は、以下に
関する。
[22]いつでも実質的に純粋な形態にある、つまり不純物を含まず、1つの多形形態
のみから実質的になる、[1]~[21]のいずれか一項に記載のI~IIIのいずれか
1つの結晶性多形形態。
【0076】
また、本発明の実施形態によると、化合物Aの結晶性形態I、II、およびIIIを調
製するための方法、形態Iを形態IIへと変換するためのおよびその逆のための方法、な
らびに形態IIを形態IIIへと変換するための方法が提供される。また、本発明の実施
形態によると、結晶性形態IIまたはIII化合物Aの1つまたは複数、および薬学的に
許容される担体を含む医薬組成物が提供される。したがって、さらなる態様では、本発明
は、以下の実施形態に関する。
[23][1]~[22]のいずれか一項に記載の、化合物A:
【0077】
【化5】
の結晶性多形形態を調製するためのプロセスであって、
(a)化合物Aを適切な溶媒に溶解するステップ、
(b)必要に応じて、得られた溶液を冷却するステップ、
(c)形態II結晶が析出するまで、十分な時間待機して、結晶性形態を結晶化させ
るステップ、および
(d)上記結晶性形態を濾過するステップ
を含むプロセス。
【0078】
[24]結晶性形態が、[2]~[10]のいずれか一項に記載の多形形態IIであり
、溶媒が、アセトン、アセトニトリル、シクロヘキサン、ヘキサン、ジオキサン、ならび
にエタノールおよびアセトニトリルの混合溶媒からなる群から選択される、[23]に記
載のプロセス。
【0079】
[25]結晶性形態が、[11]~[20]のいずれか一項に記載の多形形態IIIで
あり、1.3モルの脱イオン水を、化合物Aのアセトン溶液に添加することにより得られ
る、[23]に記載のプロセス。
【0080】
[26]多形形態IIIが、化合物Aおよび/または多形形態IIを脱イオン水に再ス
ラリー化し、濾過することにより得られる、[25]に記載のプロセス。
【0081】
[27]結晶性形態が、[1]に記載の多形形態Iであり、微量の水を含有する水混和
性有機溶媒(エタノール、酢酸エチル、イソプロパノール、tert-ブチルメチルエー
テル、テトラヒドロフラン)、水から結晶化させることにより、または水もしくは酢酸エ
チルのいずれかに溶解した化合物の溶液をゆっくりと蒸発させることにより得られる、[
23]に記載のプロセス。
【0082】
[28]結晶性形態が、結晶性多形IおよびIIの混合物であり、溶媒が、トルエン、
ジクロロメタン、1-ブタノール、またはジエチルエーテルからなる群から選択される、
[23]に記載のプロセス。
【0083】
[29]多形形態IIを多形形態IIIへと変換するためのプロセスであって、[2]
~[10]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態IIを、室温および少なくとも95%
の相対湿度で、[11]~[20]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態IIIへの変
換に十分な時間にわたって維持することを含む(
図15も参照)、プロセス。
【0084】
[30]多形形態Iを、[2]~[10]のいずれか一項に記載の多形形態IIへと変
換するためのプロセスであって、
(a)結晶性形態Iを、結晶性形態の融点未満の高温で十分な時間にわたって維持し
て、結晶性形態を上記結晶性多形形態IIへと変換させること、
(b)結晶性多形形態Iを、アセトニトリル、シクロヘキサン、ヘキサン、ジオキサ
ン、ならびにエタノールおよびアセトニトリルの混合溶媒からなる群から選択される溶媒
に懸濁し、十分な時間にわたって待機して、[2]~[10]のいずれか一項に記載の結
晶性形態を結晶化させ、上記結晶性形態を濾過すること、ならびに
(c)結晶性多形形態Iを、その融点よりも高い温度に加熱して融解塊を形成し、融
解塊を冷却すること
のうちの1つを含むプロセス。
【0085】
本発明は、単結晶X線、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定法(DSC)、
熱重量分析(TGA)、および固相交差分極マジック角スピニング核磁気共鳴法(CP/
MAS 13C NMR)、ATR FT-IRなど、当技術分野で公知のものなどの技
法、ならびに今後開発される分析技法を使用して、特に、溶媒和物の存在または非存在に
より、容易に互いに区別することができる、化合物Aの幾つかの結晶性多形形態を包含す
る。したがって、一実施形態では、本発明は、以下に関する。
[31]得られた結晶性多形形態I、II、またはIIIが、CuKα線を使用して測
定される2シータ値のそのX線粉末回折パターン、ZnSe ATR-FT-IR吸収ス
ペクトル DSCにより測定される吸熱ピーク、TGA、および/または13C固相NM
Rにより測定される共鳴により多形を特定することにより選択される、[23]~[30
]のいずれか一項に記載にプロセス。
【0086】
[32][2]~[10]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態IIを安定的に維持
するためのプロセスであって、上記結晶を、室温にて乾燥雰囲気下で維持することを含む
プロセス。
【0087】
本発明の別の実施形態は、溶媒和物を実質的に含まない化合物Aの結晶性多形形態、お
よびそのための薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物を包含
する。一部の実施形態では、本明細書で企図される医薬組成物は、結晶性形態、溶媒和物
形態、または非晶質形態の、化合物Aの追加の形態をさらに含む。したがって、さらなる
実施形態では、本発明は、以下に関する。
[33][1]~[22]のいずれか一項に記載の結晶性多形、および少なくとも1つ
の薬学的に許容される賦形剤または担体を含む医薬組成物。
【0088】
特定の実施形態では、化合物Aの結晶性多形形態は、無水形態である。別の特定の実施
形態では、医薬組成物は、組成物中の化合物Aの総重量に基づいて、少なくとも70重量
%の結晶性形態II、好ましくは80重量%、90重量%、95重量%、または99重量
%の結晶性形態を含む。特定の実施形態では、化合物Aの追加の一水和物多形形態が存在
する。別の特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、組成物中の化合物Aの総重量に基
づいて、少なくとも70重量%の結晶性形態III、好ましくは80重量%、90重量%
、95重量%、または99重量%の結晶性形態を含む。
【0089】
非経口投与が意図されている本発明による医薬組成物は、無菌注射または注入溶液での
使用に好適な水性または非水性媒体に溶解または懸濁するための化合物Aの結晶性多形形
態を含んでいてもよい。化合物A多形形態を含有するそうした医薬組成物、またはそれら
の溶解または懸濁が意図されている媒体は、薬学的に許容される酸化防止剤、緩衝剤、お
よび使用準備済みの製剤を意図されているレシピエントの血液と実質的に等張性にする化
合物を含有していてもよい。また、医薬組成物は、例えば、静菌性または抗菌性化合物な
どの保存剤;可溶化剤、安定化剤、着色剤、および匂い物質〔odorant〕を含有していて
もよい。また、医薬組成物は、本発明の結晶性多形形態に加えて、1つまたは複数のアジ
ュバントおよび/または治療活性作用剤を含有していてもよい。組成物は、単位用量容器
または複数用量容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルに存在していてもよい。さら
なる実施形態では、本発明は、以下に関する。
[34]多形形態IIまたは形態IIIが、1mg~100mg、好ましくは10mg
~50mgの量で製剤中に存在し、好ましくは製剤が顆粒状である、[33]に記載の医
薬組成物。
【0090】
経口投与が意図されている医薬組成物は、カプセル剤または錠剤などの個別単位として
存在してもよく、または粉末もしくは顆粒として存在してもよい。錠剤または硬質ゼラチ
ンカプセルに好適な賦形剤としては、ラクトース、トウモロコシデンプンまたはその誘導
体、ステアリン酸またはその塩が挙げられる。軟質ゼラチンカプセルでの使用に好適な賦
形剤としては、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体または液体ポリオールなどが挙
げられる。
【0091】
本発明の一実施形態では、経口錠剤は、化合物A無水結晶性形態IIを直接的に圧縮形
成することにより製造することができる。一般的に、直接圧縮形成の利点としては、関与
する製造ステップが少ないこと、物理的安定性、ならびに熱および水分の排除が挙げられ
ることが知られている。本発明による直接圧縮形成錠剤は、加えて、当業者によく知られ
ているものなどの結合剤、崩壊剤、および着色剤を含有していてもよい。別の実施形態で
は、既製の〔pre-manufactured〕経口カプセル剤が、賦形剤と共に化合物A結晶性形態I
IIを含有する。錠剤の圧縮形成後またはカプセルの閉鎖後、活性作用剤の胃腸管での放
出特徴をさらに修飾するために、本発明のこうした調製品〔presentation〕に、薬学的に
許容されるコーティングを施してもよい。最適な放出部位の選択は、疾患のタイプ、意図
されている血漿ピーク濃度、意図されている血漿時間/濃度プロファイル、および標的部
位での意図されている時間/濃度プロファイルに依存する。さらなる実施形態では、本発
明は、以下に関する。
[35][2]~[10]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態IIの製剤に基づく
、経口投与に好適な医薬を調製するためのプロセスであって、製剤が、錠剤へと直接的に
圧縮形成されるプロセス。
【0092】
[36][11]~[22]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態IIIの製剤に基
づく、経口投与に好適な医薬を調製するためのプロセスであって、それが、1つまたは複
数の賦形剤(アルファ化デンプン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、およ
びステアリン酸)と混合され、混合物が、1カプセル当たり5mgまたは10mgの多形
形態IIIが提供されるように、胃腸管での即時放出用の経口製剤として使用することが
できるサイズ4の白色不透明硬質ゼラチン二分割カプセルに充填されるプロセス。
【0093】
本発明によると、化合物A結晶形態の1日用量は、1mg~100mgの間で様々であ
ってもよい。本発明の好ましい実施形態では、1日用量は、5mg~80mgの間で様々
であってもよい。より好ましい実施形態では、1日用量は、10mg~50mgの間で様
々であってもよい。単一用量の正確な量、化合物投与の頻度およびスケジュール、ならび
に処置の期間は、対象の年齢、状態、および大きさ、ならびに処置される症状の重症度、
および処置の観察される望ましくない効果などの要因を考慮して、主治医の判断に従って
決定されることになる。
【0094】
本発明の別の実施形態は、コリン作動性機能障害(具体的には、M1受容体の刺激過少
)に関連する疾患または状態が、処置、寛解、または予防されるようにM1ムスカリン性
アセチルコリン受容体サブタイプ1(「M1受容体」)を刺激するための医薬組成物の調
製における、化合物Aの任意の結晶性多形形態、またはそのような結晶性多形形態および
その薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の使用を包含する。したがって、さらなる実
施形態では、本発明は、以下に関する。
[37]ムスカリン性受容体アゴニストによる処置、寛解、または予防に応答性である
医学的状態の処置に使用するための、好ましくは、1日用量が約10mgおよび50mg
である、[1]~[22]のいずれか一項に記載の結晶性多形形態。
【0095】
[38]状態が、コリン作動性機能障害に関連する疾患または状態、コリン作動性機能
が不均衡である疾患または状態、アセチルコリン受容体の活性障害に関連する疾患または
状態、およびM1受容体の活性障害に関連する疾患または状態を含む、[37]による使
用のための結晶性多形形態。そのような疾患および状態としては、これらに限定されない
が、アルツハイマー病型の老人性認知症;アルツハイマー病(AD);アルツハイマー病
およびパーキンソン病を併発したレビー小体認知症、;パーキンソン病;多系統萎縮症;
多発梗塞性認知症(MID)、前頭側頭認知症;血管性認知症;脳卒中/虚血、脳卒中/
虚血/頭部外傷併発性のMID;混合型MIDおよびAD;ヒト頭部外傷;外傷性脳傷害
;加齢性記憶障害;一過性全健忘症候群;軽度認知障害(MCI);ADに至るMCI;
認知機能障害(健忘症、急性混乱障害、注意欠陥障害、集中力障害を含む);幻覚性妄想
状態、感情注意障害;睡眠障害;術後せん妄;三環系抗うつ薬の有害効果、統合失調症お
よびパーキンソン病の処置に使用されるある薬物の有害効果;口内乾燥症、名称失語症、
記憶喪失および/または混乱;精神病;統合失調症、AD合併統合失調症〔schizophreni
a comorbit with AD〕、遅発性統合失調症、パラフレニー、統合失調症様障害〔schizoph
reniforn disorders〕;不安、双極性障害、躁病;気分安定化;ある神経膠腫除去後の認
知障害;シヌクレイン症(パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症);タウ
オパシー(原発性年齢関連タウオパシー;慢性外傷性エンセファロパシー;ピック病;進
行性核上麻痺;大脳皮質基底核変性症)、遅発性ジスキネジア;酸素療法中の酸化ストレ
ス(例えば、末熟児網膜症);失語症;脳炎後健忘症候群;敗血症関連脳症;敗血症誘導
性せん妄;AIDS関連認知症;狼瘡、多発性硬化症、シェーグレン症候群、慢性疲労症
候群、および線維筋痛を含む自己免疫疾患における記憶障害、脾腫、非定型うつ病または
統合失調症における記憶障害;化学療法誘導性認識欠損;アルコール認知症、バイパス手
術および移植術後の認識欠損、甲状腺機能低下症関連認知症、自閉症関連認知障害、ダウ
ン症候群、ニコチン、大麻、アンフェタミン、コカインを含む薬物乱用または薬物離脱に
よる認知障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、疼痛、リウマチ、関節炎、および末期
疾病;眼球乾燥症〔xerophtalmia〕、腟乾燥、皮膚乾燥;免疫機能障害;ニューロクリン
障害、ならびに過食症および食欲不振を含む食物摂取量の調節異常;肥満;先天性オルニ
チントランスカルバミラーゼ欠損症;オリーブ橋小脳萎縮〔olivopontocerebral atrophy
〕;アルコール離脱症状;離脱症状および補充療法を含む物質乱用、ハンチントン舞踏病
;進行性核上麻痺;ピック病;フリードライヒ運動失調;ジルドラトゥーレット病;ダウ
ン症候群;プリオン病;緑内障;老眼;炎症性腸疾患、過敏性大腸症候群、下痢、便秘、
胃酸分泌、および潰瘍などの胃腸運動および機能の機能障害を含む自律神経障害;切迫尿
失禁、喘息、COPD;脳、神経系、心血管系、免疫系、ニューロクリン系、胃腸管系、
もしくは内分泌および外分泌腺、目、角膜、肺、前立腺、またはコリン作動性機能がムス
カリン性受容体サブタイプにより媒介される他の器官の1つまたは複数の機能障害であっ
て、脳アミロイド媒介性障害;グリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK3ベータ)媒介性
障害;タウタンパク質過剰リン酸化媒介性損傷、機能障害、または疾患;CNSおよびP
NSの高コレステロール血症および/もしくは高脂血症媒介性損傷、機能障害、もしくは
疾患;Wnt媒介性シグナル伝達異常;神経可逆性の障害;高血糖症;糖尿病;内因性成
長因子媒介性疾患、もしくは追加の危険因子の組合せを含む機能障害による中枢もしくは
末梢神経系疾患状態;またはアポリポタンパク質Eが関与する疾患状態;またはアルツハ
イマー病型の老人性認知症、アルツハイマー病(AD)、AD発症リスクのある患者での
AD症状の発症遅延、レビー小体認知症、レビー小体病、脳アミロイド血管症(CAA)
、大脳アミロイドーシス、前頭側頭認知症、血管性認知症、高脂血症、高コレステロール
血症、多発梗塞性認知症(MID)、脳卒中虚血、脳卒中/虚血/頭部外傷併発性のMI
D、混合型MIDおよびアルツハイマー病、ヒト頭部外傷、加齢性記憶障害、軽度認知障
害(MCI)、ADに至るMCI、双極性障害、躁病、統合失調症、非感情性統合失調症
〔nonaffective sychozophrenia〕、パラフレニー、免疫機能障害、ニューロクリン障害
、ならびに過食症および食欲不振を含む食物摂取量の調節異常、体重管理、肥満、ならび
に炎症を含む、コリン作動性機能障害の関与が示唆されている障害が挙げられ、炎症性障
害の免疫療法の支持に特別の関心が喚起される。
【0096】
[39]好ましくは、コリンエステラーゼ阻害剤、ニコチンアゴニスト、コリン作動性
前駆体およびコリン作動性エンハンサー、向知性薬、末梢性抗ムスカリン性作用薬〔peri
pheral antimuscarinc drug〕、M2ムスカリン性アンタゴニスト、M4アンタゴニスト
、ベンゾジアゼピンインバースアゴニスト、シグマ-1アゴニスト、抗うつ剤、パーキン
ソン病(PD)またはうつ病の処置に使用される三環系抗うつ剤または抗ムスカリン性作
用薬、抗精神病剤および抗統合失調症剤、グルタミン酸アンタゴニストおよび修飾因子、
代謝調節型グルタミン酸受容体アゴニスト、NMDAアンタゴニスト、AMPAアゴニス
ト、アセチル-L-カルニチン、MAO-B阻害剤、ペプチド、および増殖因子、コレス
テロール低下剤、酸化防止剤、GSK-3ベータ阻害剤、Wnt-リガンド、PKC活性
化因子、ベータまたはガンマセクレターゼ阻害剤、ベータアミロイド分解剤、ネプリライ
シン〔neprylisin〕、インスリン〔insuling〕分解酵素、またはエンドセリン転換酵素の
活性化因子などの、ベータアミロイドの分解に関与する酵素の活性化因子、ベータアミロ
イド抗凝集剤、キレート剤、ベータアミロイドに対する抗体および免疫療法化合物、タウ
タンパク質病理に対する抗体および免疫療法化合物、アルファ-シヌクレイン病理に対す
る抗体および免疫療法化合物、アミロイドに結合する化合物、シクロオキシゲナーゼ(C
OX)-2阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬、エストロゲン様作用剤、エストロゲン受容
体修飾因子〔estrogenic receptor modulator〕、ステロイド性神経保護剤、ならびにス
ピントラップ医薬品からなる群から選択される少なくとも1つの追加の薬理学的活性化合
物をさらに含む、[33]または[34]に記載の医薬組成物。
【0097】
本発明によると、M1ムスカリン性受容体の刺激に応答性である上記で言及されている
疾患および障害を処置または予防するために使用することができる、化合物Aの結晶性多
形に基づく医薬組成物は、様々な調製品に調製することができ、様々な投与経路を使用し
て投与することができる。種々のタイプの投与に好適な製剤に関する指針は、例えば、R
emington:The Science and Practice of Pha
rmacy(2000) by the University of Science
s in Philadelphia,ISBN 0-683-306472に見出すこ
とができる。したがって、本発明は、M1ムスカリン性受容体のアゴニスト的刺激に応答
性である疾患または状態を処置または予防するための薬物を投与する方法も提供する。し
たがって、さらなる実施形態では、本発明は、以下に関する。
[40]対象、つまり[37]または[38]で規定されている医学的状態に罹患して
いる患者を処置するための方法であって、治療有効量の、[1]~[22]のいずれか一
項に記載の結晶性多形形態または[33]、[34]、[38]、もしくは[39]に記
載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【0098】
これから、上記で特徴付けられている本発明ならびにその種々の態様および実施形態の
結晶性多形形態を、以下の図および実施例を参照して説明するものとする。さらに、本発
明の背景における上述の記載の開示内容は、該当する限り、本発明の開示の一部を形成す
る。本発明は、本明細書に記載されている特定の方法論、プロトコール、細胞株、賦形剤
、担体、および試薬それ自体に限定されないことが理解されるべきである。また、本明細
書で使用される用語法は、特定の実施形態を記載するためのものに過ぎず、本発明の範囲
を限定することは意図されていないことが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付
の特許請求の範囲によってのみ限定されることになる。
【実施例0099】
以下の実施例は、本発明の実施形態の説明を支援する。本発明は、本発明の実施形態の
説明を支援するためのものである先述の記載により限定されることは意図されていないこ
とが理解されるだろう。
【0100】
方法論
材料
化合物A(m.p.134℃;HPLC(アキラル)による純度99.9%;HPLC
(キラル)による純度99.7~100%)を、結晶化研究に使用した。
水を脱イオン化し、イオン交換システムを通過させた。
溶媒および試薬はすべて、分析等級だった。
融点は、Electrothermal 9100毛細管融点測定装置で記録した。補
正はされていない。
【0101】
X線粉末回折(XRPD)の測定方法および条件
装置:Philips PW-1050/70型X線回折計
グラファイトモノクロメータ
電圧:40kv
電流:28mA
スリット:受光スリット 0.2mm、散乱スリット 1mm
最小2シータ:3.00
最大2シータ:40.00
ステップサイズ:0.05
カウント時間:0.50秒
線源:CuKα
別様の指定がない限り、2シータ値は、0.1、±0.2に端数を丸めて列挙されてい
る。
また、API結晶形態の場合、XRPDは、USP<941>に準拠して実施した。
【0102】
当業者であれば、同じ試料のXRPDパターン(同じまたは異なる機器で得られた)は
、異なる2θ値におけるピーク強度に変動を示す場合があることを理解するだろう。当業
者であれば、同じ多形の異なる試料のXRPDパターン(同じまたは異なる機器で得られ
た)も、異なる2θ値におけるピーク強度に変動を示す場合があることを理解するだろう
。XRPDパターンは、たとえ対応する2θシグナルのピーク強度が異なる場合でも、実
質的に同じパターンであり得る。
【0103】
熱分析
示差走査熱量測定法(DSC)および熱重量分析(TGA)の測定方法および条件
装置:METTLER TG50
ソフトウェア:METTLER TOLEDO STAR(登録商標)システム
範囲:30~200℃
加熱速度:5℃/分
パン:アルミニウム標準 40μl
パージガス:流速80ml/分の窒素
APIの場合、試験した結晶形態の熱的特性は、変調示差走査熱量測定〔modulated di
fferential scanning calorimetry〕(DSC Q、TA Instruments)お
よびTGA(TGA Q500、TA Instruments)でも特徴付けられ、デ
ータ分析は、熱分析器(Universal Analysis 2000、TA In
struments)で実施した。DSCの場合は、3℃/分の加熱速度および1℃/分
の変調冷却速度〔modulated cooling rate〕を、35~200℃の温度範囲にわたって使
用し、TGAの場合は、10℃/分の加熱速度を110℃まで使用し、250~360分
間にわたって保持した。API試料のTGA分析は、175℃の最終温度まで10℃/分
の加熱速度で実施し、115℃で分析した。
【0104】
ZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトルの測定方法および条件
分光計:Nicolet380
検出器:DTGS KBr
Smart付属品:Smart Multi-Bounce ZnSe HATR
試料走査回数:36回
分解能:4.000
別様の指定がない限り、IR吸収ピークは、cm-1±5cm-1の単位で列挙されて
いる。
【0105】
固相CP/MAS 13C NMRの測定方法および条件
分光計:Bruker Advance-500
スペクトルは、125.76MHzにて4mmのCP-MASプローブヘッドで測定し
た。
スペクトルはすべて、テトラメチルシラン(TMS)を基準にし、二次基準物質として
グリシンのカルボニル炭素(176.03)を使用した。
ローター周波数は、5.0kHzだった。
2パルス位相変調(TPPM)をプロトンデカップリングに使用した。
接触時間は、1000μsだった。
40msで4kのデータポイントを取得した。
リサイクル遅延は、すべての実験で5.0秒だった。
別様の指定がない限り、NMRピークは、0.1±0.1に端数が丸められている、T
MSに対するppm単位の化学シフトで列挙されている。
【0106】
単結晶X線
試験する化合物の単結晶を、エポキシ接着剤でガラス繊維に付着させ、グラファイトモ
ノクロメータを装備したBruker SMART APEX CCD X線回折計に移
した。SMARTソフトウェアパッケージ1が実行されるペンティアム(登録商標)系P
Cでシステムを制御した。データは、MoKα線(λ=0.71073Å)を使用して、
173Kで収集した。収集直後に、生データフレームを、SAINTプログラムパッケー
ジ2で統合および縮小するために第2のPCコンピューターに移した。構造は、SHEL
XTLソフトウェアパッケージ3で解明し、精密化した。
1.SMART-NT V5.6,BRUKER AXS GMBH,D-76181
Karlsruhe,Germany,2002
2.SAINT-NT V5.0,BRUKER AXS GMBH,D-76181
Karlsruhe,Germany,2002
3.SHELXTL-NT V6.1,BRUKER AXS GMBH,D-761
81 Karlsruhe,Germany,2002
【0107】
種々の結晶の顕微鏡観察は、Nikon TMS倒立光学顕微鏡を使用して行った。顕
微鏡写真は、デジタルカメラ(Nikon Japan、MDCレンズ)を使用して得た
。結晶は、スライドガラス上で画像化した。
【0108】
種々の結晶の走査型電子顕微鏡観察(SEM)は、20kVにて、×25から×300
0までの倍率範囲で評価した。
【0109】
吸湿性
APIの場合、水取込みは、動的水分取込み実験(SGA-100 Symmetri
c Vapor Sorption Analyzer、VTI Corporatio
n)で評価した。API(形態III)の動的水分取込みプロファイルは、40%から9
0%RHまで10%増分で吸着を完了させ、その後90%から10%までは10%増分で
、10%から2%までは1%増分で、2%まで離脱させた。API(形態II)の動的水
分取込みプロファイルは、40%から90%RHまで10%増分で吸着を完了させ、その
後10%まで離脱させた。
【0110】
水分
APIの水分は、Settler Toledo DL35 Karl Fische
r Titratorで決定した。
【0111】
水溶解度
水溶解度は、50mgのAPI一水和物(形態III)を、2mlの脱イオン水で調製
することにより実施した。試料を三重反復で調製し、調製物を室温で2日間にわたって回
転させた。回転させた後、混合物を3時間にわたって静置して、あらゆる未溶解APIを
沈殿させた。上清を、4mmの0.45microM PTFEフィルターを使用して、
シンチレーションバイアル内へと濾過した。25マイクロリットルをピペットして、97
5マイクロリットルの試料溶媒に移すことにより、40分の1希釈物を製作した。得られ
た希釈物を、HPLC分析用バイアルに入れた。
【0112】
[実施例1]結晶性形態I化合物A
a)化合物A(1.37g)に酢酸エチル(7ml)を添加し、混合物を加熱して化合
物を溶解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却した。肉眼で結晶性であると思われた固形材
料が、溶液中に形成された。この材料を濾過により収集し、室温にて減圧下で乾燥して、
1.06gの固形化合物Aを得た。X線粉末回折により、以下の2シータ値、d間隔、お
よび相対強度がもたらされ、この材料が結晶性であることが確認された(
図1)。
【0113】
【0114】
結晶性材料の固相CP/MAS 13C NMRは、以下の化学シフト(ppm単位の
δc、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:13.269、30.147、4
3.613、40.968、52.151、54.081、46.585、67.088
、174.360。
【0115】
ATR-FT-IRは、以下の吸収ピーク(cm
-1、端数のまま)を有するスペクト
ルをもたらした:673、724、774、808、826、945、984、1012
、1026、1070、1110、1144、1194、1278、1291、1352
、1370、1388、1426、1438、1467、1676、2685、2791
、2802、2842、2921、2941、2974、3023、3159、3429
。(
図10)
【0116】
化合物A結晶形態IのDSC(
図3A)は、結晶構造に物理的に吸蔵されていた水の放
出に対応する107.1℃(104.8℃から開始)の吸熱ピーク、および融点に対応す
る134.6℃(133.8℃から開始)の吸熱ピークを示す。融解後、熱分解が生じた
。この場合、形態IIIに特徴的な61~77℃のブロードな低温ピーク(
図4を参照)
は、観察されなかった。結晶形態Iのさらなる情報は、実施例27に記載されている。形
態IのTGAは、最大約115℃までの温度に加熱した際に5.2%の重量喪失%を示し
た。これは、化合物Aの完全な一水和物に必要な水の化学量論的パーセント未満であるこ
とを示す(化学量論的一水和物の場合、水の理論的数は、7.76%である)。
【0117】
b)形態Iは、酢酸エチルに溶解した化合物Aを25℃にてゆっくりと蒸発させること
により得ることができる。XRPDは、化合物が結晶性であり、
図1Aに示されているよ
うな形態IのXRPDパターンを有すること示し、DSCは、106.9℃(開始104
.9℃)、135.8℃(開始133.9℃)に形態Iの特徴的吸熱のみを示す。
【0118】
[実施例2]結晶性形態I化合物A
a)化合物A(1.07g)に水(25ml)を添加し、混合物を加熱して化合物を溶
解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却し、析出した結晶を濾過により収集した。得られた
結晶を乾燥して、0.82gの化合物Aを得た。m.p.は、134.7~135.2℃
。
【0119】
X線粉末回折(XRPD):[2Th、d(A)、I/I0](8.8、10.052
、6)、(9.6、9.174、4)、(12.3、7.223、73.9)、(15.
6、5.696、4.9)、(17.3、5.126、81.3)、(17.5、5.0
66、100)、(19.3、4.6、1.8)、(19.9、4.461、20.3)
、(21.6、4.106、39.8)、(23.1、3.857、5.6)、(23.
5、3.782、6.3)、(24.5、3.632、12.2)、(26.3、3.3
88、20.9)、(27.2、3.276、0.5)、(28.8、3.097、8.
4)、(30.3、2.945、3.6)、(31.2、2.865、9.8)、(31
.6、2.83、14.1)、(32.5、2.751、2.6)、(34、2.634
、3.3)、(34.5、2.597、5.9)、(35、2.564、4.8)、(3
5.4、2.533、9.3)、(36、2.493、5.9)、(37.4、2.40
5、2.4)、(38.5、2.338、4.1)、(39.4、2.285、3.8)
。
【0120】
固相CP/MAS 13C NMR化学シフト(ppm単位のδc)13.289、3
0.148、43.636、41.037、52.164、54.139、46.605
、67.082、174.406。
【0121】
ATR-FT-IR吸収ピーク(cm-1):673、724、774、808、82
6、890、944、984、1012、1026、1070、1110、1144、1
193、1278、1290、1352、1369、1388、1426、1438、1
467、1681、2685、2790、2841、2888、2920、2940、2
974、3021、3159、3424。
【0122】
DSC:105.6℃(開始104.4℃)、134.7℃(開始133.4℃)での
吸熱、75~95℃における非常にブロードなトレース。
【0123】
この多形のTGAは、最大約120℃までの温度に加熱した際に5.2%の重量喪失を
示した。これは、化合物Aの完全な一水和物に必要な水の化学量論的パーセント未満であ
ることを示す。この形態は、DSC、XRPD、CP/MAS 13C NMR、および
ATR-FT-IRに特徴的ピークがあるため、微量の形態IIIを有する形態Iと規定
される。
【0124】
b)形態Iは、水に溶解した化合物Aを50℃にてゆっくりと蒸発させることにより得
ることができる。XRPDは、化合物が結晶性であることを示し、DSCは、107.4
℃(開始104.8℃)および133.9℃(開始133.9℃)において形態Iの特徴
的な吸熱のみを示す(
図3B)。
【0125】
[実施例3]結晶性形態I化合物A
化合物A(1.0g)にイソプロパノール(3.5ml)を添加し、混合物を加熱して
化合物を溶解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却した。肉眼で結晶性であると思われた固
形材料が、溶液中に形成された。この材料を濾過により収集し、室温にて減圧下で乾燥し
て、0.5gの固形化合物Aを得た。
【0126】
結晶性材料の固相CP/MAS 13C NMRは、以下の化学シフト(ppm単位の
δc、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:13.423、30.301、4
3.729、41.122、52.289、54.237、46.739、67.222
、174.457。
【0127】
ATR-FT-IRは、以下の吸収ピーク(cm-1、端数のまま)を有するスペクト
ルをもたらした:725、775、809、827、890、945、985、1012
、1027、1071、1111、1144、1195、1278、1292、1353
、1371、1389、1427、1438、1468、1672、2845、3021
、3158、3427。
【0128】
この形態は、CP/MAS 13C NMRおよびATR-FT-IRに特徴的ピーク
があるため、形態Iと規定される。
【0129】
[実施例4]結晶性形態I化合物A
化合物A(0.18g)にテトラヒドロフラン(THF、0.5ml)を添加し、混合
物を加熱して化合物を溶解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却した。肉眼で結晶性である
と思われた固形材料が、溶液中に形成された。この材料を濾過により収集し、室温にて減
圧下で乾燥して、固形化合物Aを得た。
【0130】
結晶性材料の固相CP/MAS 13C NMRは、以下の化学シフト(ppm単位の
δc、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:13.355、30.227、4
3.679、41.090、52.225、54.170、46.678、67.153
、174.525。
【0131】
ATR-FT-IRは、以下の吸収ピーク(cm-1、端数のまま)を有するスペクト
ルをもたらした:674、726、775、809、827、985、1027、107
1、1111、1144、1195、1278、1292、1353,1371、138
8、1426、1438、1468、1676、2791、2850、2920、294
0、2974、3023、3159、3430。
【0132】
この形態は、CP/MAS 13C NMRおよびATR-FT-IRに特徴的ピーク
があるため、形態Iと規定される。
【0133】
[実施例5]結晶性形態I化合物A
化合物A(0.11g)にエタノール(0.5ml)を添加し、混合物を加熱して化合
物を溶解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却した。肉眼で結晶性であると思われた固形材
料が、溶液中に形成された。この材料を濾過により収集し、室温にて減圧下で乾燥して、
固形化合物Aを得た。
【0134】
結晶性材料の固相CP/MAS 13C NMRは、以下の化学シフト(ppm単位の
δc、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:13.304、30.191、4
3.674、40.999、52.180、54.138、46.637、67.100
、174.426。
【0135】
ATR-FT-IRは、以下の吸収ピーク(cm-1、端数のまま)を有するスペクト
ルをもたらした:673、724、774、808、826、985、1027、104
6、1070、1110、1278、1291、1353、1370、1388、142
6、1438、1467、1669、2790、2842、2887、2920、294
0、2974、3022、3161、3426。
【0136】
この形態は、CP/MAS 13C NMRおよびATR-FT-IRに特徴的ピーク
があるため、形態Iと規定される。
【0137】
[実施例6]結晶性形態I化合物A
化合物A(0.11g)にtert-ブチルメチルエーテル(1.3ml)を添加し、
混合物を加熱して化合物を溶解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却した。肉眼で結晶性で
あると思われた固形材料が、溶液中に形成された。この材料を濾過により収集し、室温に
て減圧下で乾燥して、固形化合物Aを得た。
【0138】
結晶性材料の固相CP/MAS 13C NMRは、以下の化学シフト(ppm単位の
δc、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:13.134、30.049、4
3.479、40.789、53.979、51.999、46.448、66.927
、174.217。
【0139】
ATR-FT-IRは、以下の吸収ピーク(cm-1、端数のまま)を有するスペクト
ルをもたらした:725、775、809、827、985、1027、1071、11
11、1144、1195、1278、1292、1353、1371、1388、14
27、1438、1468、1670、2790、2842、2974、3021、31
57、3430。
【0140】
この形態は、CP/MAS 13C NMRおよびATR-FT-IRに特徴的ピーク
があるため、形態Iと規定される。
【0141】
[実施例7]結晶性形態II化合物A;API
a)純粋な化合物A結晶性形態IIは、アセトンからの再結晶化により形成することが
できる(
図6~8)。形態IIのXRPDは、
図6に示されており、形態Iおよび形態I
IIのXRPD(
図1および2)とは異なる。DSCは、135.35℃に唯一の吸熱ピ
ークを示した(開始134.2℃;
図7A)。
【0142】
b)また、純粋な結晶性形態IIを、kg量のcGMP化合物として調製し、前臨床研
究および臨床研究でのAPIとして使用した。
図6BのXRPDおよび表1に示されてい
るように、このAPIは結晶性である。このAPIのDSCは、134.29℃に吸熱ピ
ークを示した(
図7B)。化合物Aの無水結晶性形態IIのTGAは、110℃未満まで
では、著しい重量喪失を示さなかった(
図8)。形態IIのさらなる情報は、実施例25
および26に記載されている。
【0143】
【0144】
c)純粋な無水結晶性形態IIは、30℃~50℃にて化合物Aをアセトンに添加する
ことにより調製された化合物Aの飽和溶液から得ることができる。これらを、アセトン/
氷浴で急速冷却して、析出を誘導した。形成された固形物を単離して、XRPDにより特
徴付けた。XRPDは、形態IIの特徴的ピークを示した。
【0145】
d)純粋な無水結晶性形態IIは、プログラムされた循環浴中でゆっくりと冷却された
、30℃および50℃にて調製した化合物Aのアセトン飽和溶液から得ることができる。
その後、形成されたスラリーを、2時間にわたって50℃に加熱し、その後2時間にわた
って25℃に冷却した。このプロセスを一晩繰り返し、固形物を、XRPDによるさらな
る分析のために単離した。XRPDは、形態IIの特徴的ピークを示した。
【0146】
[実施例8]結晶性形態II化合物A
a)化合物A(1.05g)にアセトニトリル(9ml)を添加し、混合物を加熱して
化合物を溶解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却した。肉眼で結晶性であると思われた固
形材料が、溶液中に形成された。この材料を濾過により収集し、室温にて減圧下で乾燥し
て、0.71gの固形化合物Aを得た。X線粉末回折により、以下の2シータ値、d間隔
、および相対強度がもたらされ、この材料が結晶性であることが確認された。
【0147】
【0148】
結晶性材料の固相CP/MAS 13C NMRは、以下の化学シフト(ppm単位の
δc、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:15.371、14.834、2
8.871、26.010、52.326、49.327、43.582、39.487
、38.761、45.773、44.974、65.289、64.013、175.
005。
【0149】
ATR-FT-IRは、以下の吸収ピーク(cm-1、端数のまま)を有するスペクト
ルをもたらした:729、773、822、906、944、989、1027、106
5、1108、1147、1194、1279、1294、1340、1362、142
5、1447、1464、1667、2792、2850、2869、2901、294
0、2951、3006、3160、3428。
【0150】
DSCは、50~77℃(非常に小さくブロード。恐らくは微量の形態IIIの存在に
よる)、105.2℃(104.5℃から開始;非常に小さい。恐らくは微量の形態Iの
存在による)、および134.8℃(開始133.4℃)に吸熱を示した。
【0151】
b)純粋な無水結晶性形態IIは、乾燥アセトニトリルで得ることができる(実施例2
6および
図11を参照)。
【0152】
c)純粋な無水結晶性形態IIは、アセトニトリル中の一水和物形態IおよびIIIの
スラリーから得ることができる(実施例22を参照)。
【0153】
d)純粋な無水結晶性形態IIは、30℃~50℃にて化合物Aをアセトニトリルに添
加することにより調製された化合物Aの飽和溶液から得ることができる。これを、アセト
ン/氷浴で急速冷却して析出を誘導した。形成された固形物を単離し、XRPDにより特
徴付けたところ、形態IIの特徴的ピークを示した。
【0154】
e)純粋な無水結晶性形態IIは、プログラムされた循環浴中でゆっくりと冷却された
、30℃および50℃にて調製した化合物Aのアセトニトリル飽和溶液から得ることがで
きる。その後、形成されたスラリーを、2時間にわたって50℃に加熱し、その後2時間
にわたって25℃に冷却した。このプロセスを一晩繰り返し、固形物を、XRPDによる
さらなる分析のために単離した。XRPDは、形態IIの特徴的ピークを示した。
【0155】
[実施例9]結晶性形態II化合物A
a)化合物A(1.25g)にヘキサン(100ml)を添加し、混合物を加熱して化
合物を溶解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却した。肉眼で結晶性であると思われた固形
材料が、溶液中に形成された。この材料を濾過により収集し、室温にて減圧下で乾燥して
、1.06gの固形化合物Aを得た。X線粉末回折により、この材料が、微量の形態Iを
有する結晶性形態IIであることが確認された。この形態は、CP/MAS 13C N
MRおよびATR-FT-IRに特徴的ピークがあるため、形態IIと規定される。
【0156】
結晶性材料の固相CP/MAS 13C NMRは、以下の化学シフト(ppm単位の
δc、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:15.385、14.829、2
8.998、25.945、52.293、49.345、43.595、39.504
、45.791、45.014、65.441、64.086、174.963(表6を
参照)。
【0157】
ATR-FT-IRは、以下の吸収ピーク(cm-1、端数のまま)を有するスペクト
ルをもたらした:730、773、805、820、854、905、944*、988
*、1027*、1064、1108*、1148、1193、1278、1294、1
339、1362、1424、1446、1458、1664、2685、2723、2
771、2850、2868、2901、2940、2951、3005(*これらのピ
ークは、化合物Aの形態II中にある微量の形態Iによるものである)。
【0158】
b)純粋な無水結晶性形態IIは、50℃±1にて化合物Aのヘキサン懸濁液を相平衡
化させることより得ることができる。24時間にわたって平衡させた後、上清を濾過し、
固形物を収集し、XRPDにより分析した。X線粉末回折により、この材料が結晶性であ
ることが確認され、形態IIの2シータ値、d間隔、および相対強度の特徴的ピークがも
たらされた。
【0159】
[実施例10]結晶性形態II化合物A
化合物A(1.48g)にジオキサン(4ml)を添加し、混合物を加熱して化合物を
溶解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却した。肉眼で結晶性であると思われた固形材料が
、溶液中に形成された。この材料を濾過により収集し、室温にて減圧下で乾燥して、0.
77gの固形化合物Aを得た。X線粉末回折により、以下の2シータ値、d間隔、および
相対強度がもたらされ、この材料が結晶性であることが確認された。
【0160】
【0161】
図9(形態II)に示されているように、結晶性材料の固相CP/MAS
13C N
MRは、以下の化学シフト(ppm単位のδ
c、端数のまま)を有するスペクトルをもた
らした:15.359、14.788、28.926、25.956、52.311、4
9.342、43.462、39.543、45.806、44.960、65.557
、63.967、174.965。
【0162】
図10(形態II)に示されているように、ATR-FT-IRは、以下の吸収ピーク
(cm
-1、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:729、773、822、
906、944、988、1027、1065、1109、1148、1194、127
9、1294、1339、1362、1426、1447、1471、1671、279
3、2850、2869、2901、2941、2951、3012、3159、343
2。
【0163】
DSCは、56~66℃(非常に小さい。恐らくは残留溶媒または微量の形態III)
および134.9℃(133.7℃から開始)に吸熱を示した。
【0164】
この形態も、CP/MAS 13C NMRおよびATR-FT-IRに特徴的ピーク
があるため、形態IIと規定される。
【0165】
[実施例11]結晶性形態II化合物A
化合物A(0.19g)にジエチルエーテル(7ml)を添加し、混合物を加熱して化
合物を溶解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却した。肉眼で結晶性であると思われた固形
材料が、溶液中に形成された。この材料を濾過により収集し、室温にて減圧下で乾燥して
、固形化合物Aを得た。
【0166】
結晶性材料の固相CP/MAS 13C NMRは、以下の化学シフト(ppm単位の
δc、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:15.206、14.629、1
3.102*、28.814、25.747、52.167、49.182、43.32
6、39.323、38.529、45.610、44.756、66.827*、65
.310、63.845、174.863。(*13.102および66.827のピー
クは、微量の形態Iの存在による可能性がある)。
【0167】
ATR-FT-IRは、以下の吸収ピーク(cm-1、端数のまま)を有するスペクト
ルをもたらした:728、773、822、944、987、1027、1065、11
08、1147、1278、1293、1339、1362、1425、1445、14
59、1664、2787、2847、2869、2902、2921、2951、30
06、3147。
【0168】
この形態は、CP/MAS 13C NMRおよびATR-FT-IRに特徴的ピーク
があるため、形態IIと規定される。
【0169】
[実施例12]結晶性形態II化合物A
純粋な無水結晶性形態IIは、プログラムされた循環浴中でゆっくりと冷却された、3
0℃および50℃にて調製した化合物Aのヘキサン飽和溶液から得ることができる。その
後、形成されたスラリーを、2時間にわたって50℃に加熱し、その後2時間にわたって
25℃に冷却した。このプロセスを一晩繰り返し、固形物を、XRPDによるさらなる分
析のために単離したところ、形態IIの特徴的ピークを示した。
【0170】
[実施例13]結晶性形態II化合物A
化合物A(0.10g)にシクロヘキサン(5ml)を添加し、混合物を加熱して化合
物を溶解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却した。肉眼で結晶性であると思われた固形材
料が、溶液中に形成された。この材料を濾過により収集し、室温にて減圧下で乾燥して、
固形化合物Aを得た。
【0171】
結晶性材料の固相CP/MAS 13C NMRは、以下の化学シフト(ppm単位の
δc、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:15.356、14.775、2
9.061、25.940、52.340、49.360、43.368、39.704
38.721、45.819、44.950、65.646、64.006、175.0
93。
【0172】
ATR-FT-IRは、以下の吸収ピーク(cm-1、端数のまま)を有するスペクト
ルをもたらした:668、682、707、749、774、809、824、862、
945、988、1027、1065、1110、1146、1195、1279、12
94、1351、1448、1468、1676、2735、2792、2816、28
27、2851、2900、2922、2941。
【0173】
この形態は、CP/MAS 13C NMRおよびATR-FT-IRに特徴的ピーク
があるため、形態IIと規定される。
【0174】
[実施例14]結晶性多形形態III化合物A
結晶性形態III化合物Aは、化合物Aを脱イオン水に再スラリー化し、濾過すること
から生成することができる。X線粉末回折により、この材料が結晶性であることが確認さ
れた(
図2を参照)。
【0175】
APIを大規模cGMP結晶化するための化合物Aを再結晶化するために使用する溶媒
を特定するために試みた初期実験は、様々な溶媒を使用して、APIを良好な回収率で生
産することができることを示した。しかしながら、こうした溶媒の多くは(特に、酢酸エ
チル/ヘプタン、エタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸イソブチル、メチル
イソブチルケトン)、長い針状結晶の最終産物がフラスコの側面に粘着したという事実の
ため、大規模化に好適ではなかった。こうした粘着性固形物の除去には、手作業による擦
過が必要であった。アセトンは、白色材料を生成し、フラスコ側面での固形物の喪失が最
小限である1つの溶媒であることが判明した。この場合、アセトンからの再結晶化では、
結晶形態IIが生成された(
図6~8)。形態IIIを生成するために必要とされる最後
の要件は、最終産物の水和だった。実験作業により、化合物Aは、およそ0.5時間にわ
たって撹拌した場合、アセトン水溶液中で約1モル当量の水を吸収し得ることが示された
。したがって、化合物Aのアセトン溶液に1.3モルの脱イオン水を添加することにより
、大量のkg量の結晶性形態III化合物AをcGMP APIとして生産した。化合物
A(形態II)は水を容易に吸収し得るため、水を除去することなくアセトンを除去する
ことになる乾燥方法を開発する必要がある。オーブン乾燥実験は、これを行う非実用的様
式であることが判明した。この材料を、40℃のフルハウス減圧〔full house vacuum〕
下で一晩、ほとんど完全に乾燥させることにより、カールフィッシャー分析により示され
るように、水がすべて除去される。20~25℃でさえ、フルハウス減圧下で、分子から
水を除去することができた。後に、相対湿度が10%未満に低下すると、水が除去されて
しまうことが発見された。逆に、相対湿度が60%を超えると、産物はその水を再獲得し
、最終的には完全な水和物になった。このデータから、2つの水和方法を開発した。両方
法は、まず、1.3モルの水を均質な結晶化溶液に添加することにより水和物を形成する
こと;水和された材料を濾過すること;カールフィッシャーにより分析すること;ならび
にその材料をフィルター上にて減圧および窒素流動で乾燥させることを含む。これにより
、分子を脱水せずにアセトンが除去される。他方の方法は、周囲温度の真空オーブンを使
用してアセトンを除去し、その後、オーブン内の相対湿度を60~90%に増加させるこ
とにより材料を再水和することを含んでいてもよかった。15.1lのアセトン、1kg
の化合物Aを容器に投入し、溶液を大気還流にかけた。その後、溶液を還流で保持し、固
形物の完全な溶解を保証する。その後、溶液を35~45℃に冷却し、インラインフィル
ターに通して、あらゆる微粒子を除去する。ここで、溶液を加熱し、7.4~7.6lに
なるまで大気圧下で蒸留する。0.1lの脱イオン水を添加し、溶液を、3~4時間にわ
たって-5~-10℃に冷却する。その後、溶液を、1時間以上、-5~-10℃に保持
する。この時点で工程内対照を採取し、濾過した固形物の含水量を分析し、カールフィッ
シャー分析が7.5%よりも高い場合、プロセスを先に進める。その後、固形物を濾過し
、フィルター上にて減圧およびN
2流で最低4時間にわたって乾燥させる。結晶化により
、約1.0kgの化合物A一水和物、形態IIIが、APIとしてもたらされる(~93
%収率)(
図4B、
図5、および実施例24を参照)。
【0176】
X線粉末回折により、このようにして得られた材料が結晶性であることが確認された(
表2および
図2を参照)。
【0177】
【0178】
図4は、化合物Aの一水和物結晶性形態(形態III)の示差走査熱量測定(DSC)
曲線を表す。A)水中の再スラリーから。DSCは、一方は約77.10℃および他方は
約134.87℃の2つの吸熱ピークを示す。B)アセトンおよび1.3当量の水からの
結晶化により調製したcGMP医薬品有効成分(API)。DSCは、一方は約61.1
8℃および他方は約133.75℃の2つの吸熱ピークを示す。
【0179】
図5は、化合物Aの一水和物結晶性形態(形態III、API)の熱重量分析(TGA
)の結果を表す。最大約110℃の温度に加熱した場合、TGAは、7.8%の重量喪失
を示す。カールフィッシャー分析による水分は、化学量論的な一水和物から予想される通
り、7.7%である。
【0180】
[実施例15]形態IIの形態IIIへの転換
化合物A結晶性形態II(0.4631g;アセトニトリルから結晶化)を、95%相
対湿度の室温デシケータ(Na
2HPO
4の飽和溶液)に1週間にわたって入れた(
図1
5A)。X線粉末回折、ATR FT-IR、CP-MAS固相
13C NMR、DSC
、およびTGAによる結晶性材料の分析は、この材料が、結晶性形態I化合物Aでも形態
II化合物Aでもなく、形態IIIであることを示した(
図15Bを参照)。形態III
のX線粉末回折、ATR FT-IR、および
13C NMR特徴が、形態Iのものに類
似していることが理解されるだろう。しかしながら、DSCの検査は、58~94℃(非
常にブロード)および133.9℃(開始133.4℃)に吸熱を示し、TGA曲線は、
58℃~94℃で重量の7.3%喪失を示し、化合物Aの分子毎に1分子の水が存在する
ことを示した。これらは両方とも形態IIIの特長である(
図15)。特筆すべきことに
、比較的低温での開始を有するそのような連続脱水挙動は、形態IIIが帰属するチャネ
ル型水和物にも共通している(Mirza et al.,AAPS Pharma S
ci.5(2):2003も参照)。X線粉末回折により、このようにして得られた材料
が結晶性であることが確認された。
【0181】
【0182】
結晶性材料の固相CP/MAS 13C NMRは、以下の化学シフト(ppm単位の
δc、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:13.771、30.702、4
4.121、41.489、54.598、52.647、47.073、67.559
、174.932。
【0183】
ATR-FT-IRは、以下の吸収ピーク(cm-1、端数のまま)を有するスペクト
ルをもたらした:725,774、808、827、985、1039、1070、11
10、1144、1194、1277、1291、1353、1369、1388、14
26、1438、1467、1659、2789、2835、2918、3088、31
44、3422。
【0184】
[実施例16]形態IおよびIIの混合物
化合物A(0.12g)にジクロロメタン(0.2ml)を添加し、混合物を加熱して
化合物を溶解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却した。肉眼で結晶性であると思われた固
形材料が、溶液中に形成された。この材料を濾過により収集し、室温にて減圧下で乾燥し
て、固形化合物Aを得た。
【0185】
結晶性材料の固相CP/MAS 13C NMRは、以下の化学シフト(ppm単位の
δc、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:14.708、14.581、1
3.122、30.010、25.692、53.942、52.012、49.300
、43.437、40.832、46.449、66.949、65.522、63.8
84、174.237。
【0186】
この形態は、CP/MAS 13C NMRおよびATR-FT-IRに特徴的ピーク
があるため、形態Iおよび形態IIの混合物と規定される。
【0187】
[実施例17]形態IおよびIIの混合物
化合物A(0.12g)にトルエン(0.5ml)を添加し、混合物を加熱して化合物
を溶解した。清澄溶液を、室温で一晩冷却した。肉眼で結晶性であると思われた固形材料
が、溶液中に形成された。この材料を濾過により収集し、室温にて減圧下で乾燥して、固
形化合物Aを得た。
【0188】
結晶性材料の固相CP/MAS 13C NMRは、以下の化学シフト(ppm単位の
δc、端数のまま)を有するスペクトルをもたらした:15.331、14.724、1
3.275、30.157、29.055、25.906、54.082、52.728
、52.228、49.334、43.489、39.538、37.700、45.7
90、44.884、67.063、65.623、63.970、175.004。
【0189】
この形態は、CP/MAS 13C NMRおよびATR-FT-IRに特徴的ピーク
があるため、形態Iおよび形態IIの混合物と規定される。
【0190】
[実施例18]加熱による形態Iの形態IIへの転換
a)化合物A結晶形態I(酢酸エチルから結晶化)を90℃で加熱している間、形態I
の特徴的ピークは減少したが(固相CP/MAS 13C NMRスペクトルの領域14
~15、26~29、44~46、および63~66ppmで特に顕著)、化合物A結晶
形態IIの特徴的ピークは増加した[識別的ピーク(15.4、14.7)、(29.1
、25.9)、(64.0、65.7)ppm]。化合物A結晶形態Iは、4時間で完全
に化合物A結晶形態IIへと変換された。
【0191】
b)水から結晶化させた結晶性形態I/III化合物Aを、90℃で75分間加熱した
。産物の固相CP/MAS
13C NMRにより、結晶性形態I/IIIが、結晶性形
態IIへと転換されたことが確認された(
図16を参照)。
【0192】
c)結晶性形態II化合物Aを70℃で10時間加熱し、その後室温で一晩そのままに
しておいた。産物の固相CP/MAS 13C NMRにより、結晶性形態IIは変化し
なかったことが確認された。
【0193】
[実施例19]融解による形態Iの形態IIへの転換
a)結晶性形態I/III化合物A(水から結晶化)を160℃に加熱し、その後融解
した材料を、結晶化のために室温でそのままにしておいた。産物の固相CP/MAS 1
3C NMRにより、結晶性形態IIが得られたことが確認された。
【0194】
b)結晶性形態II化合物A(アセトニトリルから結晶化)を160℃に加熱し、その
後融解した材料を、結晶化のために室温でそのままにしておいた。産物の固相CP/MA
S 13C NMRにより、結晶性形態IIが得られたことが確認された。
【0195】
[実施例20]それぞれ周囲条件下における、形態IIの、形態Iへのまたは形態Iおよ
びIIIの混合物への転換
a)結晶性形態II化合物Aを、室温で90日間そのままにしておいた。結晶性形態I
Iが結晶性形態Iへと転換されたことが、固相CP-MAS 13C NMRにより確認
された。
【0196】
b)API形態IIは、モジュール型DSC(MDSC)により明らかなように、3時
間にわたって90%相対湿度に曝された後、形態Iへと転換される。したがって、形態I
I(MDSC=134.4℃)は、形態I(MDSC=104.0℃および133.8℃
)に変換される。
【0197】
c)API形態IIは、MDSC(等温線:62.2℃、104.2℃、および134
.1℃)により明らかなように、室温で4か月間にわたって周囲湿度に曝すと、形態Iお
よびIIIの混合物へと転換される。
【0198】
[実施例21]結晶形態Iは、高湿度では形態IIIへと変換されない
結晶性形態I化合物A(0.4149g、酢酸エチルから結晶化)を、95%相対湿度
の室温デシケーター(Na2HPO4の飽和溶液)に1週間にわたって入れた。X線粉末
回折、ATR FT-IR、CP-MAS固相13C NMR、DSC、およびTGAに
よる結晶性材料の分析により、この材料が、依然として結晶性形態Iであり、形態III
へと転換されなかったことが確認された。これは、形態Iおよび形態IIIが異なる結晶
形態であることを示す別の兆候である。
【0199】
[実施例22]スラリーでの転換
アセトニトリル(2ml)を、化合物Aの結晶性形態IおよびIIIの混合物(0.1
5g、水から結晶化)に添加し、得られたスラリーを室温で6時間にわたって撹拌し、そ
の後、残留固形物を濾過した。結晶性形態IおよびIIIの混合物が結晶性形態IIへと
転換されたことが、固相CP-MAS 13C NMRにより確認された。
【0200】
[実施例23]混合物の相平衡化
a)化合物Aの無水結晶性形態および一水和物結晶性形態の所定量を、化合物Aの無水
形態または一水和物形態のいずれかの所定量と個々に混合し、その後アセトン中で平衡化
させ、XRPDによりモニターした。両実験から、実質的に純粋な無水結晶性形態(形態
II)を得た。
【0201】
b)化合物Aの無水結晶性形態および一水和物結晶性形態の所定量を、化合物Aの無水
形態または一水和物形態のいずれかの所定量と個々に混合し、その後水中で平衡化させ、
XRPDによりモニターした。固形物は、2時間以内に実質的に純粋な一水和物形態II
Iへと完全に変換された。
【0202】
[実施例24]化合物A一水和物結晶性形態IIIの物理的特性
化合物A一水和物結晶性形態IIIの物理的特性は、表2、3、ならびに実施例14お
よび21に要約されている。
【0203】
【0204】
X線粉末回折パターンは、試料が結晶性材料であることを示す(
図2)。この試料のD
SCは、一方は約77.1℃(ブロード)および他方は約134.9℃(
図4A)を示し
、APIの場合は、61.18℃(ブロード)および133.75℃(
図4B)の2つの
DSCピークを示す。TGA結果(
図5)は、化学量論的な一水和物から予想される通り
、最大約110℃までで7.8%の重量喪失があったことを示す。融解後、熱分解が直ち
に生じ、この材料は230℃付近で完全に分解された。
【0205】
cGMP API形態IIIは、25℃/60%RHの長期条件下で高度に安定的であ
り、外見(白色粉末)に、DSC(形態IIIの特長から予想される通り、T=0、64
.2℃および133.8℃、ならびにT=12か月、64.5℃および133.8℃)に
、HPLC(アキラル)による純度100%およびHPLC(キラル)による純度99.
9~100%に、含水量(7.6~8%)に、変化はない。形態IIIは、形態Iへと変
換されない。さらに、形態Iは、形態IIIへと変換されない。これは、形態Iおよび形
態IIIが、異なる、相互変換不能な結晶形態であることを示す別の兆候である。
【0206】
重要なことには、API形態IIIは、物理的に安定的であり、非吸湿性である。8~
90%の相対湿度では水は吸収されなかった。結果として、粉末パターンも変化しない。
7%よりも高い相対湿度での水脱離は、検出されなかった。形態IIIは、7%未満の相
対湿度で脱水し始め、事実上完全な水喪失は、2%の相対湿度で達成される。
【0207】
API(形態III)の水溶解度=5.3mg/ml。
【0208】
[実施例25]化合物A無水結晶性形態(形態II)の物理的特徴
化合物A無水結晶性形態IIの物理的特性は、表1および4に要約されている。
【0209】
【0210】
X線粉末回折パターン(
図6、表1)は、試料が、結晶性であり、約131.2~13
3.3℃の融点を有することを示す。DSCは、結晶性材料が、約134.2℃のT
開始
、および約135.4℃(
図7A)の、APIの場合は約134,29℃(
図7B)のT
ピークを有することを示す。TGA結果(
図8)は、110℃未満では著しい重量喪失を
示さない。融解後、熱分解が生じ、この材料は約250℃で完全に分解された。
【0211】
API形態IIは、乾燥雰囲気下で維持されれば、無水形態IIとして2年間を超えて
高度に安定的である。無水形態IIは、周囲室温および周囲湿度で保管すると、水和物形
態への変換が始まる。無水物の水和物への部分的変換の証拠は、取り扱いを繰り返した際
に観察される含水量の増加に基づく。無水形態IIが高湿度で平衡化されると、化学量論
的なモル水取込みおよび熱特性に基づいて、一水和物形態IIIへの変換が生じる。
【0212】
また、固相CP/MAS
13C NMRを使用して、結晶学的非対称単位中の分子数
を確かめることができる(Harris,Analyst 131(2006),351
-373;Harris,Solid State Sciences 6(2004)
,1025-1037)。非対称単位中に1つよりも多くの同種分子を含有する分子結晶
は、結晶学的に異なる部位に存在し、したがって、それらは異なる環境を有する。結果的
に、NMRは、それらが異なる特性を有することを示すことになり、類似の原子(例えば
、炭素)は、原理的に、それらの化学シフトが異なるだろう。一般的に、ピークが、
13
C共鳴の多重線として出現する場合、そのような多重線の成分の数は、非対称単位中の分
子数を示す。したがって、化合物A結晶形態Iの場合(
図9Bおよび表5を参照)、1セ
ットのシグナルが観察された。これは、化合物Aの1つの分子が、非対称単位に存在する
ことを示す(実施例27、
図14も参照)。その一方で、化合物A結晶形態IIの場合(
図9Aおよび表5を参照)、幾つかの共鳴ピークの二重化(特に、領域14~15、26
~29、44~46、および63~66ppmで顕著)は、化合物Aの1つよりも多くの
分子が、結晶単位に存在することを示す(実施例25、
図11も参照)。各形態のみ(そ
れぞれ、化合物A結晶形態IIおよびI)の固相CP/MAS
13C NMRスペクト
ル[
図9A、識別的ピーク(15.4、14.7)、(29.1、25.9)、(64.
0、65.7)ppm;
図9B、識別的ピーク13.3、30.2、67.1ppm]な
らびに結晶形態IおよびIIの真の混合物のスペクトル[
図9D、識別的ピーク(15.
4、14.7、13.3)、(29.1、25.9、30.2)、(64.0、65.7
、67.1)ppm]を検査すると、化合物A結晶形態IIが、検出可能な量の結晶形態
Iを含有しないことが明白に示される。さらに、化合物A結晶形態IIは、検出可能な量
の化合物A結晶形態IIIを含有しない(
図9Cおよび9D)。特筆すべきことに、形態
Iおよび形態IIIは、同じCP/MAS
13C NMRスペクトルを有する(
図9B
および9C)。
【0213】
【0214】
倒立光学顕微鏡観察では、酢酸エチル(形態I)、水、およびエタノールから得られた
結晶は、板状結晶だったが、イソプロパノールから得られた結晶は、偏平状結晶を示し、
アセトン、テトラヒドロフラン、およびtert-ブチルメチルエーテルから得られた結
晶は、針状結晶を示す。化合物Aの無水形態IIは、アセトニトリル、シクロヘキサン、
ヘキサン、およびジエチルエーテルから針状結晶として結晶化された。
【0215】
走査型電子顕微鏡観察(SEM)では、化合物Aの無水形態IIおよび一水和物形態I
IIは、長い棒状結晶である。しかしながら、形態IIIの一水和物ロットは、結晶サイ
ズの分布がより均一であるように見える。無水試料は、ほとんどがより小さな結晶中に少
数の長い結晶を有するように見える。無水形態の表面性状は、より高い倍率では、一水和
物結晶表面と比較してより滑らかであるように見える。
【0216】
[実施例26]化合物A形態II(アセトニトリルから結晶化)の単結晶X線
化合物Aの単結晶を、エポキシ接着剤でガラス繊維に付着させ、グラファイトモノクロ
メータを装備したBruker SMART APEX CCD X線回折計に移した。
データは、MoKα線(λ=0.71073Å)およびSMARTソフトウェアパッケー
ジを使用して、173Kで収集した。収集直後に、生データフレームを、統合および縮小
のためにSAINTプログラムパッケージに移した。構造は、SHELXTLソフトウェ
アパッケージで解明および精密化した(ソフトウェアはすべて、Bruker AXS
GmbH、Karlsruhe、Germanyによる)。化合物A無水結晶の単結晶X
線データは、表6~11に要約されている。
【0217】
化合物A無水結晶は、単位格子中に4つの分子を有する空間群P2(1)で結晶化され
た。P2
1キラル空間群無水物結晶の非対称単位には、2つの化合物A分子が存在する(
CP/MAS
13C NMR研究でもそのように結論付けられる)。これらの2つの分
子は、立体配座的に異なる。分子1は、五員環のねじれ型立体配座を有し、C=O結合に
よる疑似C
2軸を有する。分子2は、五員環のエンベロープ型立体配座を有し、S原子が
フラップ位置を占めている。
図11は、構造の単位格子中の分子およびそれらの位置を示
す。
【0218】
化合物Aの無水単結晶のコンピューターシミュレーション、および結晶性材料形態II
のXRPDパターンは、両方が同じ多形であることを示した(
図12)。
【0219】
【0220】
【0221】
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
【表8-6】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
[実施例27]化合物A結晶形態I(酢酸エチルから結晶化)の単結晶X線
化合物A単結晶形態Iは、単位格子中に4つの分子を有する空間群P2(1)2(1)
2(1)に結晶化された。低温[173(1)K]で測定した一水和物結晶の非対称単位
には、1つの化合物A分子が存在する。
図14は、構造の単位格子中の分子およびその位
置を示す。この分子は、五員環のねじれ型立体配座を有し、C=O結合による疑似C
2軸
を有する。化合物A結晶形態I(酢酸エチルから結晶化)には2つの強い水素結合が存在
する:アミドN(1)・・・O(1w)2.757Ang、アミドH(1)・・・O(1
w)1.947Ang、およびN(1)-H(1)・・・O(1w)172.88度;な
らびにO(1w)・・・O(1)カルボニル2.735Ang、水H(1w)・・・O(
1w)1.945Ang、O(1w)-H(1w)・・・O(1)165.38度。また
、1つの弱い水素結合が存在する:ピペリジンN(2)・・・O(1w)2.852An
g、水H(2w)・・・N(2)2.302Ang、O(1w)-H(2w)・・・N(
2)118.36度。理論により束縛されることは望まないが、本発明者らは、この水素
結合した水分子が、104℃のDSC/TGAピークの原因である水分子であると考える
。
【0227】
図13は、米国特許第7,439,251号B2に示されている単結晶形態のXPRE
Pを使用することによりシミュレーションした、それぞれ化合物A形態I、II、および
IIIの3つのX線粉末回折パターンを表す。特筆すべきことには、化合物A結晶形態I
および結晶形態IIIの実験的粉末回折パターンは類似しているが、米国特許第7,43
9,251号B2に示されている単結晶データに基づいて描写したコンピューターシミュ
レーションパターン(DBWS-9807リートベルトプログラム)と比較すると、回折
角に幾つかの違いが依然として存在する(表13を参照、
*付きピークの回折角は、>+
/-2度)。したがって、形態Iおよび形態IIIのXRPDは、米国特許第7,439
,251号B2に公開されている化合物A水和物の単結晶のXPREPと同一ではなく、
これは、形態Iおよび形態IIIが異なる未公開の新規な多形性形態であることのさらな
る確認である(表13)。さらに、多形性形態IIのXRPDは、この形態の単結晶のX
RPDシミュレーションと同一であるが(
図12)、米国特許第7,439,251号B
2で公開されている化合物A水和物の単結晶のXRPDシミュレーションとロバストに異
なり、形態Iまたは形態IIIの両方のXRPDともロバストに異なる(
図13)。
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【表16-1】
【表16-2】
【表16-3】
【表16-4】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
[実施例28]経口溶液として再構成するためのバイアルでの、形態IIおよび形態II
Iそれぞれの製剤化
化合物A形態IIおよび形態III粉末を、それぞれ8mlのアンバーガラス(I型)
バイアル(120mg/バイアル)に充填し、バイアルを、テフロン(登録商標)/ゴム
ねじ蓋で閉じる。およそ5mlの蒸留水を添加し、結晶粉末を完全に溶解すると、特に上
記に記載の疾患を処置するために使用することができる経口溶液がもたらされる。
【0237】
[実施例29]経口カプセルでの形態IIIの製剤化
化合物A形態III粉末を、1つまたは複数の賦形剤(アルファ化デンプン、微結晶性
セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸)と混合し、混合物を、1カ
プセル当たり5mgまたは10mgの化合物A形態IIIが提供されるように、サイズ4
の白色不透明硬質ゼラチン二分割カプセルに充填する。このカプセルは、胃腸管で即時放
出するための経口製剤として使用することができる。
【0238】
[実施例30]経口錠剤での形態IIの製剤化
化合物A形態II粉末を、1つまたは複数の無水賦形剤(例えば、無水リン酸水素カル
シウム)と混合し、1錠剤当たり5mg、10mg、または20mgの活性作用剤を含有
する錠剤へと直接的に圧縮形成する。
【0239】
[実施例31]API、化合物A一水和物(形態III)の長期条件および加速条件バル
ク安定性
高度に固定性のAPI:化合物A(NGX267)臨床バッチ(cGMP)は、25℃
/60%RHで保管した場合、0、3、6、9、12、18、および24か月時点で長期
条件下の仕様を満たし、外観(白色粉体)に、DSC(T=0、64.2、および133
.8℃;ならびにT=12か月、64.5および133.8℃)に、HPLC(アキラル
)による純度=100%およびHPLC(キラル)による純度(99.9~100%)に
、ならびに含水量(7.2~8%)に変化はなかった。
【0240】
製剤中で高度に固定性のAPI:化合物A(NGX267)5mg含量のカプセル薬物
製品および化合物A(NGX267)10mg含量のカプセル薬物製品は、25℃/60
%RHで保管した場合は最大18か月間、40℃/75%RHで保管した場合は最大6か
月間にわたって仕様を満たした。
【0241】
[実施例32]ヒトにおける形態IIの薬物動態
第1の第I相臨床研究では、経口投与されるAPIを、実施例29に従って、しかし追
加のより高いおよびより低い投薬量を用いて調製した。合計34人の対象が無作為化され
、治験薬(1、2.5、5、10、15、25、35、または45mgの、NGX267
と称されていた化合物A形態II;各用量でn=3)または対応プラセボ(n=10)の
いずれかの単一用量を受けた。10人の個人が最大耐容量(35mg)に達し、8人の対
象(80%)で合計31件の有害事象が報告され、2人の対象(20%)で有害事象が報
告されなかった。この用量で処置された1人よりも多くの対象で報告された処置下発生有
害事象は、流涎過多(4人の対象、40%)、発汗過多(4人の対象、40%)、冷汗(
4人の対象、40%)、腹部不快感(2人の対象、20%)、および味覚障害(2人の対
象、20%)だった。両性の健康高齢対象(65~80歳)が無作為化された別個の第I
相研究では(20人がNGX267を受け、6人がプラセボを受けた)、最大耐容経口量
は、20mgであると決定された。
【0242】
60人の健康男性志願者(18~54歳)が無作為化された二重盲検プラセボ対照反復
投与連続コホート研究では、48人が、化合物A形態II(NGX267;10、20、
30、35mg、1日1回、4日間)を受け、12人がプラセボを受けた。NGX267
およびその活性デスメチル代謝物(NGX292)の血漿中濃度は、用量比例的に増加し
た。投薬の3日目に定常状態に到達した。NGX267の見掛けの排出半減期は、用量レ
ベルにわたって同様だった。t1/2の推定平均値は、0日目では7.06~7.57時
間までの範囲であり、3日目では6.58~7.14時間だった。CL/Fの推定平均値
は、0日目では299.9~342.9ml/分までの範囲であり、3日目では335.
4~373.5ml/分だった。投薬の24時間後に尿中で回収されたNGX267の投
与用量の平均割合(NGX267またはNGX292として)は、すべての用量レベルに
わたって0.4001~0.4605までの範囲だった。
【0243】
[実施例33]シェーグレン症候群での形態IIIの安全性および予備的有効性
第II相臨床試験を実施して、一次または二次シェーグレン症候群に関連する口内乾燥
症を有する患者に投与した場合の、10mg、15mg、および20mg(実施例30に
よるカプセル剤として)の単一用量での、化合物A形態III(NGX267)の耐容性
、安全性、および有効性を、プラセボと比較して評価した。合計26人の患者が募集され
、3か所の研究センターでの4つの処置期間の4つの処置群に無作為化された。全員が研
究を完了し、分析に使用された。各研究日に、全口唾液流速を、主要パラメータとして測
定した。第2の研究パラメータとして、唾液腺機能障害の主観的測定を、8項目の視覚的
アナログ尺度〔analog scale〕を使用して、投薬の2、4、6、12、14、および24
時間後に評価した。追加の探索パラメータとして、標準的シルマー試験を、ベースライン
で、および投薬の2、12、14、および24時間後に、両側的に実施して涙液産生を評
価した。
【0244】
3つすべてのNGX267用量は、安全であり、十分に耐容性であり、口内乾燥症に関
して有効だった。投薬の6~24時間後の唾液産生および最大唾液流は、NGX267の
3つすべての用量の投与後で、プラセボ処置で観察されたものよりも有意に大きく、最初
の6時間および最初の24時間の用量と唾液産生との関係性は線形だった。主観的測定で
は、15mgおよび20mg用量で視覚的アナログ尺度により評価した8項目すべてで、
プラセボと比較して有意な改善があった。15mg用量は、涙液産生をプラセボよりも有
意に増加させたが、この探索パラメータには、全体的な処置効果はなかった。
【0245】
本記載および特許請求の範囲の全体にわたって、導入される際に定義されている用語は
、本記載および特許請求の範囲の全体にわたってそれらの定義を保持する。
【0246】
本明細書にて例示的に記載されている本発明は、本明細書では具体的に開示されていな
い任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定の非存在下で好適に実施すること
ができる。したがって、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」
、「含有する(containing)」などは、拡張的であり、限定ではないと理解されるものと
する。加えて、本明細書で使用されている用語および表現は、限定のための用語ではなく
、説明のための用語として使用されており、そのような用語および表現の使用では、図示
もしくは記載されている特徴またはそれらの部分のあらゆる等価物を除外することは意図
されておらず、むしろ、特許請求されている本発明の範囲内で種々の改変が可能であるこ
とが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態および任意選択の特徴を参照し
て具体的に開示されているが、当業者であれば、本明細書で開示され、そこで具現化され
ている発明の改変および変形が想定され、そのような改変および変形は、本発明の範囲内
であるとみなされることが理解されるべきである。
【0247】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内に示されている。
本発明は、単結晶X線、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定法(DSC)、熱重量分析(TGA)、および固相交差分極マジック角スピニング核磁気共鳴法(CP/MAS 13C NMR)、ATR FT-IRなど、当技術分野で公知のものなどの技法、ならびに今後開発される分析技法を使用して、特に、溶媒和物の存在または非存在により、容易に互いに区別することができる、化合物Aの幾つかの結晶性多形形態を包含する。したがって、一実施形態では、本発明は、以下に関する。
[31]得られた結晶性多形形態I、II、またはIIIが、CuKα線を使用して測定される2シータ値のそのX線粉末回折パターン、ZnSe ATR-FT-IR吸収スペクトル、DSCにより測定される吸熱ピーク、TGA、および/または13C固相NMRにより測定される共鳴により多形を特定することにより選択される、[23]~[30]のいずれか一項に記載にプロセス。