(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056730
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ケトヘキソキナーゼ(KHK)iRNA組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240416BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240416BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240416BHJP
C12Q 1/48 20060101ALI20240416BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240416BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240416BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20240416BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240416BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240416BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240416BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240416BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240416BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240416BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
C12N5/10 ZNA
C12Q1/06
C12Q1/48 Z
A61K31/713
A61P43/00 111
A61K47/54
A61P19/06
A61P1/16
A61P3/06
A61P3/10
A61P13/12
A61P9/00
A61P9/12
A61K45/00
A61K47/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024008864
(22)【出願日】2024-01-24
(62)【分割の表示】P 2020573233の分割
【原出願日】2019-09-17
(31)【優先権主張番号】62/732,600
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】505369158
【氏名又は名称】アルナイラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ヒンクル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子を標的とするRNAi剤を提供する。
【解決手段】ケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、該dsRNA剤は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含んでおり、センス鎖は、特定の配列を有するヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、特定の配列を有するヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む、二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤を提供する。本発明は、対象におけるKHK遺伝子発現を阻害するためのRNAi剤を使用する方法およびKHK関連疾患の治療方法または予防方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、該dsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含んでおり、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖は、配列番号:2のヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む、二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤。
【請求項2】
ケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、該dsRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖を含んでおり、該アンチセンス鎖は、表3または5に列挙したアンチセンス配列のいずれか1つと3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む相補性領域を含む、二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤。
【請求項3】
アンチセンス鎖が、AD-72506、AD-72319、AD-72502、AD-72513、AD-72499、AD-72303、AD-72500、AD-72522、AD-72512、AD-72304、AD-72514、AD-72257、AD-72295、AD-72332、AD-72507、AD-72311、AD-72501、AD-72508、AD-72293、AD-72322、AD-72264、AD-72290、AD-72338、AD-72315、AD-72272、AD-72337、AD-72298、AD-72503、AD-72327、AD-72521、AD-72309、AD-72313、AD-72517、AD-72316、AD-72335またはAD-72317からなる群から選択されるいずれか1つの二本鎖アンチセンス配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む、請求項2記載のdsRNA剤。
【請求項4】
センスおよびアンチセンス鎖が、表3または5の配列のいずれかから選択される配列を含む、請求項1~3いずれか一項記載のdsRNA剤。
【請求項5】
dsRNAが、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~4いずれか一項記載のdsRNA剤。
【請求項6】
センス鎖の全てのヌクレオチドおよびアンチセンス鎖の全てのヌクレオチドが、修飾を含む、請求項1~4いずれか一項記載のdsRNA剤。
【請求項7】
ケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、該dsRNA剤が、二本鎖領域を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含んでおり、
該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖は、配列番号:2のヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、
該センス鎖の実質的に全てのヌクレオチドおよび該アンチセンス鎖の実質的に全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドであり、
該センス鎖は、3'末端に結合したリガンドにコンジュゲートされている、
二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤。
【請求項8】
センス鎖の全てのヌクレオチドおよびアンチセンス鎖の全てのヌクレオチドが、修飾を含んでいる、請求項7記載のdsRNA剤。
【請求項9】
少なくとも1つの修飾ヌクレオチドが、デオキシ-ヌクレオチド、3'末端デオキシ-チミン(dT)ヌクレオチド、2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックヌクレオチド、アンロックヌクレオチド、立体配座的に拘束されたヌクレオチド、拘束エチルヌクレオチド、非塩基性ヌクレオチド、2'-アミノ修飾ヌクレオチド、2'-O-アリル修飾ヌクレオチド、2'-C-アルキル修飾ヌクレオチド、2'-ヒドロキシル修飾ヌクレオチド、2'-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2'-O-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミデート、非天然塩基を含むヌクレオチド、テトラヒドロピラン修飾ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトール修飾ヌクレオチド、シクロヘキセニル修飾ヌクレオチド、ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、メチルホスホネート基を含むヌクレオチド、5'-ホスフェートを含むヌクレオチドおよび5'-ホスフェート模倣体を含むヌクレオチドからなる群から選択される、請求項7記載のdsRNA剤。
【請求項10】
修飾ヌクレオチドが、3'末端デオキシ-チミンヌクレオチド(dT)の短い配列を含む、請求項9記載のdsRNA剤。
【請求項11】
相補性領域が、少なくとも17個のヌクレオチド長である、請求項2または3記載のdsRNA剤。
【請求項12】
相補性領域が、19~21個のヌクレオチド長である、請求項2または3記載のdsRNA剤。
【請求項13】
相補性領域が、19個のヌクレオチド長である、請求項12記載のdsRNA剤。
【請求項14】
各鎖が、30個のヌクレオチド長以下である、請求項1~3および7いずれか一項記載のdsRNA剤。
【請求項15】
少なくとも1つの鎖が、少なくとも1つのヌクレオチドの3'オーバーハングを含む、請求項1~3および7いずれか一項記載のdsRNA剤。
【請求項16】
少なくとも1つの鎖が、少なくとも2つのヌクレオチドの3'オーバーハングを含む、請求項1~3および7いずれか一項記載のdsRNA剤。
【請求項17】
リガンドを更に含んでいる、請求項1~3いずれか一項記載のdsRNA剤。
【請求項18】
リガンドが、dsRNA剤のセンス鎖の3'末端にコンジュゲートしている、請求項17記載のdsRNA剤。
【請求項19】
リガンドが、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)誘導体である、請求項7または17記載のdsRNA剤。
【請求項20】
リガンドが、
【化1】
である、請求項19記載のdsRNA剤。
【請求項21】
dsRNA剤が、以下のスキーム:
【化2】
(式中、Xは、OまたはSである)
に示される通りにコンジュゲートされている、請求項19記載のdsRNA剤。
【請求項22】
XがOである、請求項21記載のdsRNA剤。
【請求項23】
相補性領域が、表3または5のアンチセンス配列の一つを含んでいる、請求項2または3記載のdsRNA剤。
【請求項24】
相補性領域が、表3または5のアンチセンス配列の一つを含んでなる、請求項2または3記載のdsRNA剤。
【請求項25】
細胞内のケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、該dsRNA剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含んでおり、該アンチセンス鎖は、KHKをコードするmRNAに対する相補性領域を含んでおり、各鎖は、約14~約30個のヌクレオチド長であって、式(III):
センス:5'np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-(X'X'X')k-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-(Z'Z'Z')l-Na'-nq'5'
(III)
(式中、i、j、kおよびlは、互いに独立して、0または1であり;
p、p'、qおよびq'は、互いに独立して、0~6であり;
各NaおよびNa'は、独立して、0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、これらは、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかであり、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含み;
各NbおよびNb'は、独立して、0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、これらは、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかであり;
各々np、np'、nqおよびnq'は、存在または非存在であってもよく、これらは、独立してオーバーハングヌクレオチドを示し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'およびZ'Z'Z'の各々は、独立して、3つの連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つのモチーフを表し;
Nb上の修飾は、Y上の修飾と異なり、Nb'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり;および
該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートされている)
により示される、二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤。
【請求項26】
iが0であるか;jが0であるか;iが1であるか;jが1であるか;iおよびjの両方が0であるか;またはiおよびjの両方が1である、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項27】
kが0であるか;lが0であるか;kが1であるか;lが1であるか;kおよびlの両方が0であるか;またはkおよびlの両方が1である、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項28】
XXXがX'X'X'に相補的であり、YYYがY'Y'Y'に相補的であり、ZZZがZ'Z'Z'に相補的である、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項29】
YYYモチーフが、センス鎖の切断部位またはその近傍に存在する、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項30】
Y'Y'Y'モチーフが、アンチセンス鎖の5'末端から11、12および13位置に存在する、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項31】
Y'が、2'-O-メチルである、請求項30記載のdsRNA剤。
【請求項32】
式(III)が、式(IIIa):
センス:5'np-Na-YYY-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-Y'Y'Y'-Na'-nq'5'
(IIIa)
により示される、請求項29記載のdsRNA剤。
【請求項33】
式(III)が、式(IIIb):
センス:5'np-Na-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-Y'Y'Y'-Nb'-Z'Z'Z'-Na'-nq'5'
(IIIb)
(式中、各NbおよびNb'は、独立して、1~5つの修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示す)
により示される、請求項29記載のdsRNA剤。
【請求項34】
式(III)が、式(IIIc):
センス:5'np-Na-XXX-Nb-YYY-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-X'X'X'-Nb'-Y'Y'Y'-Na'-nq'5'
(IIIc)
(式中、各NbおよびNb'は、独立して、1~5つの修飾されたヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示す)
により示される、請求項29記載のdsRNA剤。
【請求項35】
式(III)が、式(IIId):
センス:5'np-Na-XXX-Nb-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-X'X'X'-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-Z'Z'Z'-Na'-nq'5'
(IIId)
(式中、各NbおよびNb'は、独立して、1~5つの修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、各NaおよびNa'は、独立して、2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示す)
により示される、請求項29記載のdsRNA剤。
【請求項36】
二本鎖領域が、15~30個のヌクレオチド対長である、請求項7または25記載のdsRNA剤。
【請求項37】
二本鎖領域が、17~23個のヌクレオチド対長である、請求項36記載のdsRNA剤。
【請求項38】
二本鎖領域が、17~25個のヌクレオチド対長である、請求項36記載のdsRNA剤。
【請求項39】
二本鎖領域が、23~27個のヌクレオチド対長である、請求項36記載のdsRNA剤。
【請求項40】
二本鎖領域が、19~21個のヌクレオチド対長である、請求項36記載のdsRNA剤。
【請求項41】
二本鎖領域が、21~23個のヌクレオチド対長である、請求項7または25記載のdsRNA剤。
【請求項42】
各鎖が、15~30個のヌクレオチド長である、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項43】
各鎖が、19~30個のヌクレオチド長である、請求項7、25および35いずれか一項記載のdsRNA剤。
【請求項44】
ヌクレオチド上の修飾が、LNA、HNA、CeNA、2'-メトキシエチル、2'-O-アルキル、2'-O-アリル、2'-C-アリル、2'-フルオロ、2'-デオキシ、2'-ヒドロキシルおよびその組み合わせ、からなる群から選択される、請求項7または25記載のdsRNA剤。
【請求項45】
ヌクレオチド上の修飾が、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾である、請求項44記載のdsRNA剤。
【請求項46】
リガンドが、一価、二価または三価の分枝鎖リンカーを介して結合された1以上のGalNAc誘導体である、請求項7または25記載のdsRNA剤。
【請求項47】
リガンドが、
【化3】
である、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項48】
リガンドが、センス鎖の3'末端に結合されている、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項49】
RNAi剤が、以下のスキーム:
【化4】
に示されるリガンドにコンジュゲートされている、請求項48記載のdsRNA剤。
【請求項50】
剤が、少なくとも1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間の結合をさらに含む、請求項7または25記載のdsRNA剤。
【請求項51】
ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間の結合が、1本鎖の3'末端に存在する、請求項50記載のdsRNA剤。
【請求項52】
鎖が、アンチセンス鎖である、請求項51記載のdsRNA剤。
【請求項53】
鎖が、センス鎖である、請求項51記載のdsRNA剤。
【請求項54】
ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間の結合が、1本鎖の5'末端に存在する、請求項50記載のdsRNA剤。
【請求項55】
鎖が、アンチセンス鎖である、請求項54記載のdsRNA剤。
【請求項56】
鎖が、センス鎖である、請求項54記載のdsRNA剤。
【請求項57】
ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間の結合が、1本鎖の5'末端および3'末端双方に存在する、請求項50記載のdsRNA剤。
【請求項58】
鎖が、アンチセンス鎖である、請求項57記載のdsRNA剤。
【請求項59】
2本鎖のアンチセンス鎖の5'末端の1つの位置の塩基対が、AU塩基対である、請求項7または25記載のdsRNA剤。
【請求項60】
Yヌクレオチドが、2'-フルオロ修飾を含む、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項61】
Y'ヌクレオチドが、2'-O-メチル修飾を含む、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項62】
p'>0である、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項63】
p'=2である、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項64】
q'=0であり、p=0であり、q=0であり、p'オーバーハングヌクレオチドが標的mRNAに相補的である、請求項63記載のdsRNA剤。
【請求項65】
q'=0であり、p=0であり、q=0であり、p'オーバーハングヌクレオチドが標的mRNAに対して非相補的である、請求項63記載のdsRNA剤。
【請求項66】
センス鎖が、21個のヌクレオチド全てを有しており、アンチセンス鎖が、23個のヌクレオチド全てを有している、請求項57記載のdsRNA剤。
【請求項67】
少なくとも1つのnp'が、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに結合されている、請求項62~66いずれか一項記載のdsRNA剤。
【請求項68】
全てのnp'が、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに結合されている、請求項67記載のdsRNA剤。
【請求項69】
RNAi剤が、表3または5に記載のRNAi剤の群から選択される、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項70】
センス鎖の全てのヌクレオチドおよびアンチセンス鎖の全てのヌクレオチドが、修飾を含んでいる、請求項25記載のdsRNA剤。
【請求項71】
細胞内のケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、該dsRNA剤が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含んでおり、該センス鎖が、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか一つのヌクレオチド配列の少なくとも14個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、KHKをコードしているmRNAに対する相補性領域を含んでおり、各鎖は、約14~約30個のヌクレオチド長であって、ここで該dsRNA剤は、式(III):
センス:5'np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-(X'X'X')k-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-(Z'Z'Z')l-Na'-nq'5'
(III)
(式中、
i、j、kおよびlは、互いに独立して、0または1であり;
p、p'、qおよびq'は、互いに独立して、0~6であり;
各NaおよびNa'は、独立して、0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、これらは、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかであり、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含んでおり;
各NbおよびNb'は、独立して、0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、これらは、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかであり;
各々np、np'、nqおよびnq'は、存在または非存在であってもよく、これらは、独立してオーバーハングヌクレオチドを示し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'およびZ'Z'Z'の各々は、独立して、3つの連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つのモチーフを表し、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
Nb上の修飾は、Y上の修飾と異なり、Nb'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり;および
該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートされている)
により示される、dsRNA剤。
【請求項72】
細胞内のケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、該dsRNA剤が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含んでおり、該センス鎖が、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチド配列の少なくとも14個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、KHKをコードするmRNAに対する相補性領域を含んでおり、各鎖は、約14~約30個のヌクレオチド長であって、ここで該dsRNA剤は、式(III):
センス:5'np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-(X'X'X')k-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-(Z'Z'Z')l-Na'-nq'5'
(III)
(式中、
i、j、kおよびlは、互いに独立して、0または1であり;
各々np、nqおよびnq'は、存在または非存在であってもよく、これらは独立して、オーバーハングヌクレオチドを示しており;
p、qおよびq'は、各々独立して0~6であり;
np'>0であり、かつ少なくとも1つのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに結合しており;
各NaおよびNa'は、独立して、0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、これらは、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかであり、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾されたヌクレオチドを含んでおり;
各NbおよびNb'は、独立して、0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、これらは、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかであり;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'およびZ'Z'Z'は、各々独立して、3つの連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つのモチーフを表し、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
Nb上の修飾は、Y上の修飾と異なり、Nb'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり;および
該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートされている)
により示される、二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤。
【請求項73】
細胞内のケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、該dsRNA剤が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含んでおり、該センス鎖が、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチド配列の少なくとも14個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、KHKをコードするmRNAに対する相補性領域を含んでおり、各鎖は、約14~約30個のヌクレオチド長であって、ここで該dsRNA剤は、式(III):
センス:5'np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-(X'X'X')k-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-(Z'Z'Z')l-Na'-nq'5'
(III)
(式中、i、j、kおよびlは、各々独立して、0または1であり;
各np、nqおよびnq'は、存在または非存在であってもよく、これらは、独立して、オーバーハングヌクレオチドを示し;
p、qおよびq'は、各々独立して、0~6であり;
np'>0であり、かつ少なくとも1つのnp'がホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに結合されており;
各NaおよびNa'は、独立して、0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、これらは、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかであり、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含んでおり;
各NbおよびNb'は、独立して、0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、これらは、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかであり;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'およびZ'Z'Z'は、各々独立して、3つの連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つのモチーフを表し、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
Nb上の修飾は、Y上の修飾と異なり、Nb'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり;および
該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートされており、ここで該リガンドは、一価、二価または三価の分枝鎖リンカーを介して結合された1以上のGalNAc誘導体である)
により示される、二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤。
【請求項74】
細胞内のケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、該dsRNA剤が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含んでおり、該センス鎖が、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチド配列の少なくとも14個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、KHKをコードするmRNAに対する相補性領域を含んでおり、各鎖は、約14~約30個のヌクレオチド長であって、ここで該dsRNA剤は、式(III):
センス:5'np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-(X'X'X')k-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-(Z'Z'Z')l-Na'-nq'-5'
(III)
(式中、
i、j、kおよびlは、各々独立して、0または1であり;
各々np、nqおよびnq'は、存在または非存在であってもよく、これらは、独立してオーバーハングヌクレオチドを示し;
p、qおよびq'は、各々独立して、0~6であり;
np'>0であり、かつ少なくとも1つのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに結合されており;
各NaおよびNa'は、独立して、0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、これらは、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかであり、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾のヌクレオチドを含んでおり;
各NbおよびNb'は、独立して、0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、これらは、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかであり;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'およびZ'Z'Z'は、各々独立して、3つの連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つのモチーフを表し、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
Nb上の修飾は、Y上の修飾と異なり、Nb'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり;
該センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含んでおり、該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートされており、該リガンドは、一価、二価または三価の分枝鎖リンカーを介して結合された1以上のGalNAc誘導体である)
により示される、二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤。
【請求項75】
細胞内のケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、該dsRNA剤が、センス鎖およびアンチセンス鎖を含んでおり、該センス鎖が、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチド配列の少なくとも14個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、KHKをコードするmRNAに対する相補性領域を含んでおり、各鎖は、約14~約30個のヌクレオチド長であって、ここで該dsRNA剤は、式(III):
センス:5'np-Na-YYY-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-Y'Y'Y'-Na'-nq'5'
(IIIa)
(式中、
各々np、nqおよびnq'は、存在していても、存在していなくてもよく、独立してオーバーハングヌクレオチドを示し;
p、qおよびq'は、各々独立して、0~6であり;
np'>0であり、かつ少なくとも1つのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接ヌクレオチドに結合されており;
各NaおよびNa'は、独立して、0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、これらは、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかであり、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含んでおり;
YYYおよびY'Y'Y'は、各々独立して、3つの連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つのモチーフを表し、該修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり;
該センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含んでおり;
該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートされており、該リガンドは、一価、二価または三価の分枝鎖リンカーを介して結合された1以上のGalNAc誘導体である)
により示される、二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤。
【請求項76】
細胞内のケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、該dsRNA剤が、二本鎖領域を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含んでおり、
該センス鎖が、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖が、配列番号:2の対応するヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、
該センス鎖の実質的に全てのヌクレオチドが、2'-O-メチル修飾および2'-フルオロ修飾からなる群から選択される修飾を含み;
該センス鎖は、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含んでおり;
該アンチセンス鎖の実質的に全てのヌクレオチドが、2'-O-メチル修飾および2'-フルオロ修飾からなる群から選択される修飾を含み;
該アンチセンス鎖は、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合および3'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含んでおり;および
該センス鎖は、3'末端で一価、二価または三価の分枝鎖リンカーを介して結合された1以上のGalNAc誘導体にコンジュゲートされている)
に示される、二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤。
【請求項77】
センス鎖の全てのヌクレオチドおよびアンチセンス鎖の全てのヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドである、請求項76記載のdsRNA剤。
【請求項78】
各鎖が、19~30個のヌクレオチド長である、請求項76記載のdsRNA剤。
【請求項79】
請求項1~3、7、25または70~75いずれか一項記載のdsRNA剤を含む、細胞。
【請求項80】
請求項1~3、7、24または70~75いずれか一項記載のdsRNA剤を含むケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための、医薬組成物。
【請求項81】
請求項1~3いずれか一項記載のdsRNA剤および脂質製剤を含む、医薬組成物。
【請求項82】
脂質製剤が、LNPまたはMC3を含む、請求項81記載の医薬組成物。
【請求項83】
細胞内のケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害する方法であって、
(a)細胞を、請求項1~3、7、25および71~76いずれか一項記載の二本鎖RNAi剤または請求項80~82いずれか一項記載の医薬組成物と接触させる工程;および
(b)工程(a)において生成された細胞を、KHK遺伝子のmRNA転写物の分解物を得るために十分な時間維持し、それにより細胞内のKHK遺伝子の発現を阻害する工程、
を含む、方法。
【請求項84】
細胞が、対象内にある、請求項83記載の方法。
【請求項85】
対象がヒトである、請求項84記載の方法。
【請求項86】
KHKの発現が、適切なコントロールと比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または検出限界値以下まで阻害される、請求項83~85いずれか一項記載の方法。
【請求項87】
ケトヘキソキナーゼ(KHK)の発現低下により利益を得る疾患または障害を有する対象の治療方法であって、治療上有効量の請求項1~3、7、25および71~76いずれか一項記載の二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤または請求項80~82いずれか一項記載の医薬組成物を対象に投与し、それにより対象を治療することを特徴とする、治療方法。
【請求項88】
ケトヘキソキナーゼ(KHK)の発現低下により利益を得る疾患または障害を有する対象における少なくとも1つの症状を予防する方法であって、予防上有効量の請求項1~3、7、25および71~76いずれか一項記載のdsRNA剤または請求項80~82いずれか一項記載の医薬組成物を対象に投与して、KHKの発現低下により利益を得る障害を有する対象における少なくとも1つの症状を予防することを特徴とする、方法。
【請求項89】
dsRNAを対象に投与することにより、フルクトース代謝の低下が生じる、請求項87または88記載の方法。
【請求項90】
障害が、KHK関連疾患である、請求項87または88記載の方法。
【請求項91】
KHK関連疾患が高尿酸血症を含む、請求項90記載の方法。
【請求項92】
KHK関連疾患が痛風である、請求項90記載の方法。
【請求項93】
KHK関連疾患が肝臓疾患を含む、請求項90記載の方法。
【請求項94】
肝臓疾患が、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項93記載の方法。
【請求項95】
KHK関連疾患が、脂質異常症または異常な脂質沈着または機能不全を含む、請求項90記載の方法。
【請求項96】
脂質異常症が、1以上の高脂血症、高LDLコレステロール、低HDLコレステロール、高トリグリセリド血症、食後高トリグリセリド血症、脂肪細胞機能障害、内臓脂肪沈着、肥満症およびメタボリックシンドロームを含む、請求項95記載の方法。
【請求項97】
KHK関連疾患が、血糖コントロールの障害を含む、請求項90記載の方法。
【請求項98】
血糖コントロールの障害が、インスリンに対する免疫応答に関連しない1以上のインスリン耐性、II型糖尿病およびグルコース不耐性を含む、請求項97記載の方法。
【請求項99】
KHK関連疾患が、腎臓疾患を含む、請求項90記載の方法。
【請求項100】
肝臓疾患が、少なくとも1つの急性腎臓障害、尿細管機能障害、近位尿細管の炎症性変化および慢性腎臓疾患を含む、請求項93記載の方法。
【請求項101】
KHK関連疾患が心血管疾患を含む、請求項90記載の方法。
【請求項102】
心血管疾患が、少なくとも1つの高血圧症および内皮細胞機能障害を含む、請求項101記載の方法。
【請求項103】
対象が、ヒトである、請求項87~102いずれか一項記載の方法。
【請求項104】
対象が、腎機能障害を有するか、またはその傾向がある、請求項103記載の方法。
【請求項105】
KHK関連疾患を治療するための剤を投与することをさらに含む、請求項87~104いずれか一項記載の方法。
【請求項106】
dsRNA剤が、約0.01mg/kg~約50mg/kgの用量で投与される、請求項87~105いずれか一項記載の方法。
【請求項107】
dsRNA剤が、対象に皮下投与される、請求項87~106いずれか一項記載の方法。
【請求項108】
対象におけるKHKのレベルを測定することをさらに含む、請求項87~107いずれか一項記載の方法。
【請求項109】
対象におけるフルクトース代謝のレベルを測定することをさらに含む、請求項87~108いずれか一項記載の方法。
【請求項110】
対象における尿酸レベルを測定することをさらに含む、請求項87~109いずれか一項記載の方法。
【請求項111】
対象における血清脂質レベルを測定することをさらに含む、請求項87~110いずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年9月18日に提出された米国仮出願番号62/732,600号について優先権を主張するものであり、引用によりその全体を本明細書中に組み込む。
【0002】
配列表
本願発明は、ASCIIフォーマットの電子書式により提出した配列表を含み、出典明示によりその全てが本明細書に組み込まれる。当該ASCIIのコピーは、2019年9月13日に作成し、ファイル名は121301-06020_SL.txtであり、309,325バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
疫学研究により、欧米の食生活が、現代の肥満の流行の主要な原因の1つであることが示されている。フルクトース摂取の増加は、栄養価が高い清涼飲料水や加工食品の使用に関連しており、肥満蔓延に対する主な要因であると考えられている。高フルクトースコーンシロップは、1967年までに食品業界において広く使用され始めた。グルコースおよびフルクトースは、分子当たりのカロリー値が同じであるが、これら2つの糖は、異なる代謝経路により代謝され、異なるGLUTトランスポーターを利用する。フルクトースは、グルコース代謝経路とは違い、殆どが独占的に肝臓で代謝され、またフルクトース代謝経路は、生成物によるフィードバック阻害による制御は受けない(Khaitan Z et al., (2013) J. Nutr. Metab. 2013, Article ID 682673, 1-12)。ヘキソキナーゼおよびホスホフルクトキナーゼ(PFK)は、グルコースからのグリセルアルデヒド-3-Pの産生を調節するが、一方肝臓でフルクトースのフルクトース-1-リン酸へのリン酸化を担うフルクトキナーゼまたはケトヘキソキナーゼ(KHK)は、フルクトース-1-リン酸の濃度が増加してもダウンレギュレートされない。そのため、結果として細胞内に流入する全てのフルクトースは、急速にリン酸化される(Khaitan Z et al., (2013) J. Nutr. Metab. 2013, Article ID 682673, 1-12)。フルクトースをフルクトース-1-リン酸にリン酸化するためのATPの継続的な利用により、細胞内のリン酸枯渇、ATP枯渇、AMPデアミナーゼの活性化および尿酸の形成が引き起こされる(Khaitan Z. et al., (2013) J. Nutr. Metab. Article ID 682673, 1-12)。増加した尿酸は、KHKの上方制御を更に促進し(Lanaspa M.A. et al., (2012) PLOS ONE 7(10):1-11)、内皮細胞および脂肪細胞機能障害を引き起こす。続いて、フルクトース-1-リン酸は、アルドラーゼBの作用によってグリセロアルデヒドに転化され、グリセルアルデヒド-3-リン酸へとリン酸化される。後者は下流の解糖経路へと進み、ピルビン酸を形成してクエン酸サイクルに入り、そこから、十分な供給条件下で、クエン酸塩は、ミトコンドリアからサイトゾルに移送され、脂質合成のためのアセチルコエンザイムAを提供する(
図1)。
【0004】
KHKによるフルクトースのリン酸化、その後の脂質合成の活性化により、例えば、脂肪肝、高トリグリセリド血症、脂質異常症およびインスリン耐性へと至る。腎近位尿細管細胞における炎症性変化も、KHK活性によって誘導されることが示されている(Cirillo P. et al., (2009) J. Am. Soc. Nephrol. 20: 545-553)。KHKによるフルクトースのリン酸化は、肝臓疾患(例えば、脂肪肝、脂肪性肝炎)、脂質異常症(例えば、高脂血症、高LDLコレステロール、低HDLコレステロール、高トリグリセリド血症、食後高トリグリセリド血症)、血糖コントロールの障害(例えば、インスリン耐性、II型糖尿病)、心血管疾患(例えば、高血圧、内皮細胞機能障害など)、腎臓病(例えば、急性腎障害、尿細管機能障害、近位尿細管の炎症性変化、慢性腎臓病など)、メタボリックシンドローム、脂肪細胞機能障害、内臓脂肪沈着、肥満、高尿酸血症、痛風、摂食障害および過剰な糖渇望などが挙げられる。従って、KHK活性に関連する疾患、障害および症状を治療するための組成物および方法が、当該技術分野において必要とされている。
【0005】
(発明の要約)
本発明は、ケトヘキソキナーゼ(KHK)を標的とするRNAi剤、例えば二本鎖RNAi剤を含む組成物を提供する。本発明は、KHKの発現を阻害するため、またはKHK遺伝子の発現を低下させることで利益を得る疾患、例えば肝臓疾患(例えば、脂肪肝、脂肪性肝炎、特に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、脂質異常症(例えば、高脂血症、高LDLコレステロール、低HDLコレステロール、高トリグリセリド血症、食後高トリグリセリド血症)、血糖コントロールの障害(例えば、インスリン耐性、II型糖尿病など)、心血管疾患(例えば、高血圧、内皮細胞機能障害)、腎臓疾患(例えば、急性腎障害、尿細管機能障害、近位尿細管の炎症性変化、慢性腎臓病)、メタボリックシンドローム、脂肪細胞機能障害、内臓脂肪沈着、肥満症、高尿酸血症、痛風、摂食障害および過剰な糖への渇望などを有する対象を治療するために本発明の組成物を使用する方法も提供する。
【0006】
ある側面において、本発明は、ケトヘキソキナーゼ(KHK)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤を提供するものであって、ここで該dsRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖を含んでおり、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖は、配列番号:2のヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤を提供する。
【0007】
ある実施態様において、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む。ある実施態様において、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド配列の少なくとも15個の連続するヌクレオチド、または配列番号:1のヌクレオチド配列の前記部分のうちの1つを含む。
【0008】
ある実施態様において、特定の実施態様では、センス鎖およびアンチセンス鎖は、表3または表5のヌクレオチド配列のいずれか1つからなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0009】
ある実施態様において、センス鎖またはアンチセンス鎖は、表3または表5に示されるAD-72506、AD-72319、AD-72502、AD-72513、AD-72499、AD-72303、AD-72500、AD-72522、AD-72512、AD-72304、AD-72514、AD-72257、AD-72295、AD-72332、AD-72507、AD-72311、AD-72501、AD-72508、AD-72293、AD-72322、AD-72264、AD-72290、AD-72338、AD-72315、AD-72272、AD-72337、AD-72298、AD-72503、AD-72327、AD-72521、AD-72309、AD-72313、AD-72517、AD-72316、AD-72335、AD-72317からなる群から選択される二本鎖のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。ある実施態様において、センス鎖およびアンチセンス鎖は、表3または表5に示されるAD-72506、AD-72319、AD-72502、AD-72513、AD-72499、AD-72303、AD-72500、AD-72522、AD-72512、AD-72304、AD-72514、AD-72257、AD-72295、AD-72332、AD-72507、AD-72311、AD-72501、AD-72508、AD-72293、AD-72322、AD-72264、AD-72290、AD-72338、AD-72315、AD-72272、AD-72337、AD-72298、AD-72503、AD-72327、AD-72521、AD-72309、AD-72313、AD-72517、AD-72316、AD-72335、AD-72317からなる群から選択される二本鎖のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。
【0010】
ある態様において、本発明は、ケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤を提供するものであって、ここで該dsRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖は、表3または5に記載のアンチセンス配列のうちのいずれか1つと3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む相補性領域を含む。ある実施態様においては、dsRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、該アンチセンス鎖は、AD-72506、AD-72319、AD-72502、AD-72513、AD-72499、AD-72303、AD-72500、AD-72522、AD-72512、AD-72304、AD-72514、AD-72257、AD-72295、AD-72332、AD-72507、AD-72311、AD-72501、AD-72508、AD-72293、AD-72322、AD-72264、AD-72290、AD-72338、AD-72315、AD-72272、AD-72337、AD-72298、AD-72503、AD-72327、AD-72521、AD-72309、AD-72313、AD-72517、AD-72316、AD-72335またはAD-72317からなる群から選択される二本鎖のいずれか1つのアンチセンス配列のうちのいずれか1つのアンチセンス配列とは3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む相補性領域を含む。
【0011】
ある実施態様においては、dsRNAは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。ある実施態様では、センス鎖の全てのヌクレオチドおよびアンチセンス鎖の全てのヌクレオチドが修飾を含む。
【0012】
ある態様において、本発明は、ケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子の発現を阻害するための二本鎖RNAi剤を提供するものであって、ここで該二本鎖RNA剤は、二本鎖領域を形成するセンス鎖とアンチセンス鎖を含んでおり、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖は、配列番号:2のヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、該センス鎖の実質的に全てのヌクレオチドおよび該アンチセンス鎖の実質的に全てのヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドであり、該センス鎖は、3'末端に結合したリガンドにコンジュゲートされている、二本鎖RNAi剤を提供する。ある実施態様において、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖は、配列番号:2のヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含んでおり、ここで該センス鎖の実質的に全てのヌクレオチドおよび該アンチセンス鎖の実質的に全てのヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドであり、該センス鎖は、3'末端に結合したリガンドにコンジュゲートしている。ある実施態様において、該センス鎖は、配列番号:1の少なくとも15個の連続するヌクレオチド、または配列番号:1のヌクレオチド配列の前記部分の内のいずれか1つ、および配列番号:2の対応する部分の少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含んでおり、該センス鎖および該アンチセンス鎖は互いに相補的である。
【0013】
ある態様において、本発明は、KHKの発現を阻害するための二本鎖RNAi剤を提供するものであって、該二本鎖RNAi剤は、二本鎖領域を形成するセンス鎖とアンチセンス鎖を含んでおり、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖は、配列番号:2のヌクレオチド配列の対応する位置から3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含んでおり、該アンチセンス鎖は、該センス鎖の3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドと相補的である。ある実施態様において、該センス鎖の実質的に全てのヌクレオチドおよび該アンチセンス鎖の実質的に全てのヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドであって、該センス鎖は、3'末端に結合したリガンドにコンジュゲートしている。
【0014】
ある実施態様において、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つの少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖は、配列番号:2のヌクレオチド配列の対応する位置から少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含んでおり、該アンチセンス鎖は、センス鎖の3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドに相補的である。ある実施態様において、該センス鎖のヌクレオチドの実質的に全てのヌクレオチドまたは該アンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドであるか、または両方の鎖の実質的に全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドであり;該センス鎖は、3'末端に結合したリガンドにコンジュゲートされている。
【0015】
ある態様において、本発明は、KHKの発現を阻害するための二本鎖RNAi剤を提供するものであって、該二本鎖RNAi剤は、二本鎖領域を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含んでおり、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つの少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖は、配列番号:2のヌクレオチド配列の対応する位置から少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、該アンチセンス鎖は、センス鎖の少なくとも15個の連続するヌクレオチドに相補的である。ある実施態様において、アンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが修飾ヌクレオチドである。ある実施態様において、両方の鎖の実質的に全てのヌクレオチドが修飾されている。好ましい実施態様において、センス鎖は、3'末端に結合したリガンドにコンジュゲートされている。
【0016】
ある実施態様において、アンチセンス鎖は、表3および5いずれかに記載されたアンチセンス配列のいずれか1つと3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む相補性領域を含む。例えば、ある実施態様において、該アンチセンス鎖は、AD-72506、AD-72319、AD-72502、AD-72513、AD-72499、AD-72303、AD-72500、AD-72522、AD-72512、AD-72304、AD-72514、AD-72257、AD-72295、AD-72332、AD-72507、AD-72311、AD-72501、AD-72508、AD-72293、AD-72322、AD-72264、AD-72290、AD-72338、AD-72315、AD-72272、AD-72337、AD-72298、AD-72503、AD-72327、AD-72521、AD-72309、AD-72313、AD-72517、AD-72316、AD-72335およびAD-72317からなる群から選択される二本鎖のうちのいずれか1つのアンチセンス配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む相補性領域を含んでいてもよい。ある実施態様において、該アンチセンス鎖は、前記二本鎖のアンチセンス配列のうちのいずれか1つの少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含む配列番号:1に相補的な領域を含んでいる。
【0017】
いくつかの実施態様においては、センス鎖の全てのヌクレオチドおよびアンチセンス鎖の全てのヌクレオチドが修飾を含んでいる。
【0018】
ある実施態様においては、修飾ヌクレオチドの少なくとも1つは、デオキシヌクレオチド、3'末端デオキシチミン(dT)ヌクレオチド、2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックヌクレオチド、アンロックヌクレオチド、立体配座的に拘束されたヌクレオチド、拘束エチルヌクレオチド、非塩基性ヌクレオチド、2'-アミノ修飾ヌクレオチド、2'-O-アリル修飾ヌクレオチド、2'-C-アルキル修飾ヌクレオチド、2'-ヒドロキシ修飾ヌクレオチド、2'-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2'-O-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミダート、非天然塩基を含むヌクレオチド、テトラヒドロピラン修飾ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトール修飾ヌクレオチド、シクロヘキセニル修飾ヌクレオチド、ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、メチルホスホネート基を含むヌクレオチド、5'-ホスフェートを含むヌクレオチドおよび5'-ホスフェート模倣体を含むヌクレオチドからなる群から選択される。別の実施態様において、修飾ヌクレオチドは、3'末端デオキシ-チミンヌクレオチド(dT)の短い配列を含む。
【0019】
ある実施態様において、センス鎖の実質的に全てのヌクレオチドは修飾されている。ある実施態様において、アンチセンス鎖の実質的に全てのヌクレオチドは修飾されている。ある実施態様において、センス鎖およびアンチセンス鎖の双方のヌクレオチドは、実質的に全て修飾されている。
【0020】
ある実施態様において、二本鎖は、表5に示される修飾アンチセンス鎖ヌクレオチド配列を含む。ある実施態様において、二本鎖は、表5に示される修飾センス鎖ヌクレオチド配列を含む。ある実施態様において、二本鎖は、表5に示される修飾二本鎖を含む。
【0021】
ある実施態様において、アンチセンス鎖と標的mRNAヌクレオチド配列との間の相補性領域は、少なくとも17個のヌクレオチド長である。例えば、アンチセンス鎖と標的との間の相補性領域は、19~21個のヌクレオチド長であり、例えば、該相補性領域は、21個のヌクレオチド長である。好ましい実施態様では、各鎖は30以下のヌクレオチド長である。
【0022】
別の実施態様において、本発明の二本鎖RNAi剤の鎖の片方または両方は、最大66個のヌクレオチド長、例えば、36~66、26~36、25~36、31~60、22~43、27~53個のヌクレオチド長であり、KHK遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的である少なくとも19個の連続するヌクレオチド領域を有する。いくつかの実施態様において、該センス鎖および該アンチセンス鎖は、18~30個の連続するヌクレオチドの二本鎖を形成する。
【0023】
一実施態様において、dsRNA剤の少なくとも1本の鎖は、少なくとも1つのヌクレオチドの3'オーバーハングを含む。ある実施態様において、少なくとも1本の鎖は、少なくとも2つのヌクレオチド、例えば、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14または15個のヌクレオチドの3'オーバーハングを含む。別の実施態様において、RNAi剤の少なくとも1本の鎖は、少なくとも1つのヌクレオチドの5'オーバーハングを含む。ある実施態様において、少なくとも1本の鎖は、少なくとも2つのヌクレオチド、例えば、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、14または15個のヌクレオチドの5'オーバーハングを含む。更に別の実施態様において、RNAi剤の一本鎖の3'末端および5'末端の両方は、少なくとも1つのヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【0024】
ある実施態様において、二本鎖RNAi剤は、さらにリガンドを含む。ある実施態様において、リガンドは、N-アセチルガラクトサミン(GalNac)である。リガンドは、一価、二価または三価の分岐鎖リンカーを介してRNAi剤に結合された1または複数のGalNAcであってもよい。リガンドは、二本鎖RNAi剤のセンス鎖の3'末端、二本鎖RNAi剤のセンス鎖の5'末端、二本鎖RNAi剤のアンチセンス鎖の3'末端または二本鎖RNAi剤のアンチセンス鎖の5'末端にコンジュゲートされていてもよい。
【0025】
いくつかの実施態様において、本発明の二本鎖RNAi剤は、複数の一価リンカーを介して二本鎖RNAi剤の複数のヌクレオチドに各々独立して結合された複数の、例えば、2、3、4、5または6つのGalNAcを含む。
【0026】
ある実施態様において、リガンドは、
【化1】
である。
【0027】
ある実施態様において、二本鎖RNAi剤は、以下の略図に示したようなリガンドにコンジュゲートされている:
【化2】
(式中、Xは、OまたはSである)。一実施態様において、XはOである。
【0028】
ある実施態様において、相補性領域は、表3または表5のアンチセンスヌクレオチド配列のいずれか1つを含む。別の実施態様において、相補性領域は、表3または表5のアンチセンスヌクレオチド配列の1つを含んでなる。
【0029】
別の態様において、本発明は、KHK遺伝子の発現を阻害するための二本鎖RNAi剤を提供するものであって、該二本鎖RNAi剤は、センス鎖を含み、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチド配列の少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含み、該センス鎖は、アンチセンス鎖に相補的であり、該アンチセンス鎖は、KHKをコードするmRNAの一部に相補的な領域を含んでおり、各鎖は、約14~約30個のヌクレオチド長であって、該dsRNA剤は、式(III):
センス:5'np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-(X'X'X')k-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-(Z'Z'Z')l-Na'-nq'5'
(III)
(式中、
i、j、kおよびlは、各々独立して、0または1であり;
p、p'、qおよびq'は、各々独立して、0~6であり;
各NaおよびNa'は、各々独立して、修飾または未修飾のいずれか、あるいはそれらの組み合わせである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを表し、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含んでおり;
各NbおよびNb'は、各々独立して、修飾または未修飾のいずれか、あるいはそれらの組み合わせである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各np、np'、nqおよびnq'は、各々独立してオーバーハングヌクレオチドを表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'およびZ'Z'Z'は、各々独立して、連続する3つのヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つのモチーフを表し;
Nb上の修飾は、Y上の修飾と異なり、Nb'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり; 該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートされている)
で表される、二本鎖RNAi剤を提供する。
【0030】
ある実施態様において、iは0であるか;jは0であるか;iは1であるか;jは1であるか;iおよびjの両方は0であるか;またはiおよびjの両方は1である。別の実施態様において、kは0であるか;lは0であるか;kは1であるか;lは1であるか;kおよびlの両方は0であるか;またはkおよびlの両方は1である。別の実施態様において、XXXはX'X'X'と相補的であり、YYYはY'Y'Y'と相補的であり、ZZZはZ'Z'Z'と相補的である。別の実施態様において、YYYモチーフは、センス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。別の実施態様において、YYYモチーフは、アンチセンス鎖の5'末端から11、12および13位に存在する。一実施態様において、Y'は2'-O-メチルである。
【0031】
例えば、式(III)は、式(IIIa):
センス:5'np-Na-YYY-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-Y'Y'Y'-Na'-nq'5' (IIIa)
により示され得る。
【0032】
別の実施態様において、式(III)は、式(IIIb):
センス:5'np-Na-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-Y'Y'Y'-Nb'-Z'Z'Z'-Na'-nq'5'
(IIIb)
(式中、各NbおよびNb'は、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を独立して示す)
により示され得る。
【0033】
あるいは、式(III)は、式(IIIc):
センス:5'np-Na-XXX-Nb-YYY-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-X'X'X'-Nb'-Y'Y'Y'-Na'-nq'5'
(IIIc)
(式中、各NbおよびNb'は、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を独立して示す)
により示され得る。
【0034】
さらに、式(III)は、式(IIId):
センス:5'np-Na-XXX-Nb-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-X'X'X'-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-Z'Z'Z'-Na'-nq'5'
(IIId)
(式中、各NbおよびNb'は、1~5個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を独立して示し、各NaおよびNa'は、2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を独立して示す)
により示され得る。
【0035】
ある実施態様において、二本鎖領域は、15~30個のヌクレオチド対長である。例えば、二本鎖領域は、17~23個のヌクレオチド対長であり得る。二本鎖領域は、長さが17~25個のヌクレオチド対であり得る。二本鎖領域は、23~27個のヌクレオチド対長であり得る。二本鎖領域は、19~21個のヌクレオチド対長であり得る。二本鎖領域は、21~23個のヌクレオチド対長であり得る。
【0036】
ある実施態様において、各鎖は、15~30個のヌクレオチドを有する。別の実施態様において、各鎖は、19~30個のヌクレオチドを有する。
【0037】
ヌクレオチド上の修飾は、LNA、HNA、CeNA、2-メトキシエチル、2'-O-アルキル、2'-O-アリル、2'-C-アリル、2'-フルオロ、2'-デオキシ、2'-ヒドロキシルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。ある実施態様において、ヌクレオチド上の修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾である。
【0038】
ある実施態様において、リガンドは、N-アセチルガラクトサミン(GalNac)である。リガンドは、一価、二価または三価の分岐鎖リンカーを介してRNAi剤に結合された1つ以上のGalNAcであってもよい。リガンドは、二本鎖RNAi剤のセンス鎖の3'末端、二本鎖RNAi剤のセンス鎖の5'末端、二本鎖RNAi剤のアンチセンス鎖の3'末端または二本鎖RNAi剤のアンチセンス鎖の5'末端にコンジュゲートされていてもよい。
【0039】
ある実施態様において、本発明の二本鎖RNAi剤は、複数の一価リンカーを介して二本鎖RNAi剤の複数のヌクレオチドに各々独立して結合された複数の、例えば2、3、4、5または6のGalNAcを含む。一実施態様において、リガンドは
【化3】
である。
【0040】
リガンドは、センス鎖の3'末端に結合され得る。
【0041】
リガンドにコンジュゲートされたdsRNAi剤の構造の例は、以下のスキームに示される:
【化4】
。
【0042】
ある実施態様において、RNAi剤は、さらに少なくとも1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合を含む。例えば、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合は、一方の鎖、即ちセンス鎖またはアンチセンス鎖の3'末端に存在し得るか;または、センス鎖およびアンチセンス鎖の両鎖の末端に存在し得る。
【0043】
ある実施態様において、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合は、片方の鎖、即ちセンス鎖またはアンチセンス鎖の5'末端;または両方の末端、即ちセンス鎖およびアンチセンス鎖の末端に存在し得る。
【0044】
ある実施態様において、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合は、片方の鎖、即ちセンス鎖またはアンチセンス鎖の5'末端および3'末端の両方にあるか;または両方の鎖、センス鎖およびアンチセンス鎖の末端に存在し得る。
【0045】
ある実施態様において、二本鎖のアンチセンス鎖の5'末端の1つの位置の塩基対は、AU塩基対である。
【0046】
ある実施態様において、Yヌクレオチドは、2'-フルオロ修飾を含む。別の実施態様において、Y'ヌクレオチドは、2'-O-メチル修飾を含む。別の実施態様において、p'>0である。ある実施態様において、p'=2である。いくつかの実施態様において、q'=0であり、p=0であり、q=0であって、p'オーバーハングヌクレオチドは標的mRNAに相補的である。いくつかの実施態様において、q'=0であり、p=0であり、q=0であって、p'オーバーハングヌクレオチドは、標的mRNAに相補的ではない。
【0047】
ある実施態様において、センス鎖は、合計21個のヌクレオチドを有しており、アンチセンス鎖は合計23個のヌクレオチドを有する。
【0048】
ある実施態様において、少なくとも1つのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合されている。他の実施態様において、全てのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合されている。
【0049】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、表3および5に記載のdsRNAi剤の群から選択される。ある実施態様において、センス鎖の全てのヌクレオチドおよびアンチセンス鎖の全てのヌクレオチドが修飾を含んでいる。
【0050】
ある態様において、本発明は、細胞におけるKHKの発現を阻害することができる二本鎖RNAi剤を提供するものであって、該dsRNAi剤は、センス鎖を含み、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つの少なくとも15個の連続するヌクレオチド部分を含み、該センス鎖は、アンチセンス鎖に相補的であって、該アンチセンス鎖は、KHKをコードするmRNAの一部に相補的な領域を含み、各鎖は、約14~約30個のヌクレオチド長であって、ここで該dsRNA剤は、式(III):
センス:5'np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-(X'X'X')k-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-(Z'Z'Z')l-Na'-nq'5'
(III)
(式中、
i、j、kおよびlは、各々独立して0または1であり;
p、p'、qおよびq'は、各々独立して0~6であり;
各NaおよびNa'は、独立して、修飾または未修飾であるか、あるいはそれらの組み合わせのいずれかである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含んでおり;
各NbおよびNb'は、各々独立して、修飾または未修飾であるか、あるいはそれらの組み合わせのいずれかである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し;
各np、np'、nqおよびnq'は、各々独立して、存在しても、存在していなくてもよいが、オーバーハングヌクレオチドを示し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'およびZ'Z'Z'は、各々独立して、3つの連続するヌクレオチド上に3つの同一修飾のうちの1つのモチーフを表し、該修飾は、2-O-メチル修飾または2'-フルオロ修飾であり;
Nb上の修飾は、Y上の修飾と異なり、Nb'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり; 該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドとコンジュゲートされている)
で表される、二本鎖RNAi剤を提供する。
【0051】
ある態様において、本発明は、細胞におけるKHKの発現を阻害することができる二本鎖RNAi剤を提供するものであって、該dsRNA剤は、センス鎖を含み、該センス鎖は、好ましくは、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つの少なくとも15個の連続するヌクレオチド部分を含んでおり、該アンチセンス鎖は、KHKをコードするmRNAの一部に相補的な領域を含み、各鎖は、約14~約30個のヌクレオチド長であって、ここで該dsRNA剤は、式(III):
センス:5'np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-(X'X'X')k-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-(Z'Z'Z')l-Na'-nq'5'
(III)
(式中、
i、j、kおよびlは、各々独立して、0または1であり;
各np、nqおよびnq'は、これら各々は、存在していても、または存在していなくてもよいが、独立して、オーバーハングヌクレオチドを示し;
p、qおよびq'は、各々独立して、0~6であり;
np'>0であり、少なくとも1つのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合されており;
各NaおよびNa'は、各々独立して、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含んでおり;
各NbおよびNb'は、独立して、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し; XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'およびZ'Z'Z'は、各々独立して、3つの連続するヌクレオチド上の3つ同一修飾のうちの1つのモチーフを示し、該修飾は、2'-O-メチル修飾または2'-フルオロ修飾であり;
Nb上の修飾は、Y上の修飾と異なり、Nb'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり;
該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドとコンジュゲートされている)
で表される、二本鎖RNAi剤を提供する。
【0052】
ある実施態様において、本発明は、細胞内においてKHKの発現を阻害することができる二本鎖RNAi剤を提供するものであって、該二本鎖RNAi剤は、センス鎖を含み、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチドの少なくとも15個の連続するヌクレオチド部分を含み、該センス鎖は、アンチセンス鎖に相補的であり、該アンチセンス鎖は、KHKをコードするmRNAの一部に相補的な領域を含んでおり、各鎖は、約14~約30個のヌクレオチド長であって、ここで該dsRNA剤は、式(III):
センス:5'np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-(X'X'X')k-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-(Z'Z'Z')l-Na'-nq'5'
(III)
(式中、
i、j、kおよびlは、各々独立して、0または1であり;
各np、nqおよびnq'は、これら各々は、存在していても、または存在していなくてもよいが、独立して、オーバーハングヌクレオチドを示し;
p、qおよびq'は、各々独立して、0~6であり;
np'>0であり、少なくとも1つのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合されており;
各NaおよびNa'は、各々独立して、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含んでおり;
各NbおよびNb'は、独立して、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示しており;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'およびZ'Z'Z'は、各々独立して、3つの連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾のうちの1つのモチーフを示し、該修飾は、2'-O-メチル修飾または2'-フルオロ修飾であり;
Nb上の修飾は、Y上の修飾と異なり、Nb'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり;
該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートしており、該リガンドは、2価または3価の分岐鎖リンカーを介して結合された1以上のGalNAc誘導体である)
で示される、二本鎖RNAi剤を提供する。
【0053】
ある実施態様において、本発明は、細胞内においてKHKの発現を阻害することができる二本鎖RNAi剤を提供するものであって、該dsRNA剤は、センス鎖を含み、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つの少なくとも15個の連続するヌクレオチド部分を含み、該センス鎖は、アンチセンス鎖に相補的であり、該アンチセンス鎖は、KHKをコードするmRNAの一部に相補的な領域を含んでおり、各鎖は、約14~約30個のヌクレオチド長であって、ここで該dsRNA剤は、式(III):
センス:5'np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-(X'X'X')k-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-(Z'Z'Z')l-Na'-nq'5'
(III)
(式中、
i、j、kおよびlは、各々独立して、0または1であり;
各np、nqおよびnq'は、これら各々は、存在していても、または存在していなくてもよいが、独立して、オーバーハングヌクレオチドを示し;
p、qおよびq'は、各々独立して、0~6であり;
np'>0であり、少なくとも1つのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合されており;
各NaおよびNa'は、各々独立して、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含んでおり;
各NbおよびNb'は、各々独立して、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかである0~10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'およびZ'Z'Z'は、各々独立して、3つの連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾のうちの1つのモチーフを表し、該修飾は2'-O-メチル修飾または2'-フルオロ修飾であり;
Nb上の修飾は、Y上の修飾と異なり、Nb'上の修飾は、Y'上の修飾と異なり;
該センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含んでおり;
該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートされており、該リガンドは、2価または3価の分岐鎖リンカーを介して結合された1または複数のGalNAc誘導体である)
で示される、二本鎖RNAi剤を提供する。
【0054】
ある態様において、本発明は、細胞内においてKHKの発現を阻害することができる二本鎖RNAi剤を提供するものであって、該dsRNA剤は、センス鎖を含み、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つの少なくとも15個の連続するヌクレオチド部分を含み、該センス鎖は、アンチセンス鎖に相補的であり、該アンチセンス鎖は、KHKをコードするmRNAの一部に相補的な領域を含んでおり、各鎖は、約14~約30ヌクレオチド長であって、ここで該dsRNA剤は、式(III):
センス:5'np-Na-YYY-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-Y'Y'Y'-Na'-nq'5'
(IIIa)
(式中、
各np、nqおよびnq'は、これら各々は、存在していても、または存在していなくてもよいが、独立して、オーバーハングヌクレオチドを示し;
p、qおよびq'は、各々独立して、0~6であり;
np'>0であり、少なくとも1つのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合されており;
各NaおよびNa'は、各々独立して、修飾または非修飾あるいはそれらの組み合わせのいずれかである0~25個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を示し、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含んでおり;
YYYおよびY'Y'Y'は、各々独立して、3つの連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾のうちの1つのモチーフを表し、該修飾は、2'-O-メチル修飾または2'-フルオロ修飾であり;
該センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含んでおり;
該センス鎖は、少なくとも1つのリガンドにコンジュゲートされており、該リガンドは、2価または3価の分岐鎖リンカーを介して結合された1以上のGalNAc誘導体である)
で示される、二本鎖RNAi剤を提供する。
【0055】
ある態様において、本発明は、KHKの発現を阻害するための二本鎖RNAi剤を提供するものであって、該二本鎖RNAi剤は、二本鎖領域を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖を含んでおり、該センス鎖は、配列番号:1のヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチド、例えば配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つのヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる15個の連続するヌクレオチドを含んでおり、該アンチセンス鎖は、配列番号:2のヌクレオチド配列と3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含んでおり、該センス鎖の実質的に全てのヌクレオチドが、2'-O-メチル修飾および2'-フルオロ修飾から選択される修飾を含んでおり、該センス鎖は、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含んでおり、該アンチセンス鎖の実質的に全てのヌクレオチドが、2'-O-メチル修飾および2'-フルオロ修飾から選択される修飾を含んでおり、該アンチセンス鎖は、5'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合および3'末端に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含んでおり、該センス鎖は、一価、あるいは分鎖枝の二価または三価のリンカーを介して結合された1以上のGalNAc誘導体にコンジュゲートされている。ある実施態様において、該センス鎖は、配列番号:1の少なくとも15個の連続するヌクレオチドまたは配列番号:1の前記の部分のいずれか1つと、配列番号:2の対応する部分の少なくとも15個の連続するヌクレオチド配列とを含んでおり、該アンチセンス鎖は、該センス鎖中の3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドと相補的である。ある実施態様において、該センス鎖および該アンチセンス鎖は、配列番号:1の少なくとも15個の連続するヌクレオチドと配列番号:2を含んでいるか、または配列番号:1の所定部分のいずれか一つと配列番号:2の対応する部分を含んでいる。
【0056】
ある実施態様において、センス鎖の全てのヌクレオチドおよびアンチセンス鎖の全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである。ある実施態様において、各鎖は、19~30個のヌクレオチドを有する。
【0057】
ある実施態様において、センス鎖の実質的に全てのヌクレオチドが修飾されている。ある実施態様において、アンチセンス鎖の実質的に全てのヌクレオチドが修飾されている。ある実施態様において、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方の実質的に全てのヌクレオチドが修飾される。
【0058】
ある態様において、本発明は、本明細書に記載のdsRNA剤を含む細胞を提供する。
【0059】
ある態様において、本発明は、dsRNA剤の少なくとも1つの鎖をコードするベクターを提供するものであって、該アンチセンス鎖は、KHKをコードするmRNAの少なくとも一部に相補的な領域を含んでおり、該dsRNAは、30塩基対以下の長さであり、該dsRNA剤は、切断のためにmRNAを標的とする。ある実施態様において、相補性領域は、少なくとも15個のヌクレオチド長である。ある実施態様において、相補性領域は、19~23個のヌクレオチド長である。
【0060】
ある態様において、本発明は、本明細書に記載のベクターを含む細胞を提供する。
【0061】
ある態様において、本発明は、本発明のdsRNA剤を含むKHK遺伝子の発現を阻害するための医薬組成物を提供する。ある実施態様において、dsRNAi剤は、非緩衝液で投与される。ある実施態様において、非緩衝溶液とは、生理食塩水または水である。別の実施態様において、dsRNAi剤は、緩衝液と共に投与される。そのような実施態様において、該緩衝溶液は、酢酸塩、クエン酸塩、プロラミン、炭酸塩、リン酸塩またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。例えば、緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であってもよい。
【0062】
ある態様において、本発明は、本発明のdsRNA剤と脂質製剤を含む医薬組成物を提供する。ある実施態様において、脂質製剤は、LNPを含む。ある実施態様において、脂質製剤は、MC3を含む。
【0063】
ある態様において、本発明は、細胞におけるKHK発現を阻害する方法を提供するものであって、この方法は、(a)細胞を本発明のdsRNA剤または本発明の医薬組成物と接触させる工程;および(b)工程(a)を行った細胞を、KHK遺伝子のmRNA転写物の分解物を得るために十分な時間維持して、それによって細胞中のKHK遺伝子の発現を阻害する工程を特徴とする。ある実施態様において、該細胞は、対象、例えば、ヒト対象、例えば、女性または男性体内に存在する。ある実施態様において、該対象は、腎機能が低下しているか、または腎機能が低下する傾向を示す。好ましい実施態様において、KHK発現は、適切なコントロールと比較して、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の割合で阻害されるか、あるいは検出限界値以下まで低下される。ある実施態様において、該センス鎖は、配列番号:1と3つ以下のミスマッチを有する少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含むか、または配列番号:1のヌクレオチド89~107、176~194、264~282、474~492、508~526、529~547、562~580、616~646、682~700、705~723、705~757、705~799、739~757、739~799、760~799、804~822、837~855、892~910、959~977、992~1010、922~1041、1013~1041、1069~1108、1169~1140、1111~1140、1155~1196、1221~1261、1267~1294または1320~1350のいずれか1つと配列番号:2の対応する部分の少なくとも15個の連続するヌクレオチドを含んでおり、該アンチセンス鎖は、該センス鎖中の3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチドに相補的である。ある実施態様において、該センス鎖および該アンチセンス鎖は、配列番号:1と配列番号:2の少なくとも15個の連続するヌクレオチド配列を含んでいるか、または配列番号:1の所定部分の1つと配列番号:2の対応する部分を含んでおり、該アンチセンス鎖は、該センス鎖中の3つ以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15個の連続するヌクレオチド配列と相補的であるものである。
【0064】
ある態様において、本発明は、KHK発現の低下により利益を得る疾患または障害に罹患している対象を治療する方法を提供するものであって、該方法は、本発明のdsRNA剤または本発明の医薬組成物の治療的上有効な量を対象に投与することで、対象を治療することを特徴とする。
【0065】
ある態様において、本発明は、KHK発現の低下により利益を得る疾患または障害に罹患している対象における少なくとも1つの症状を予防するための方法を提供するものであって、該方法は、予防上有効な量の本発明のdsRNA剤または本発明の医薬組成物を対象に投与することにより、KHK発現の低下により利益を得る障害に罹患している対象の少なくとも1つの症状を予防することを特徴とする。
【0066】
ある実施態様において、dsRNA剤を患者に投与することにより、フルクトース代謝の低下が引き起こされる。ある実施態様において、dsRNAの投与により、高いKHKを示す対象において、対象におけるKHKのレベル、特に肝臓KHK、特にKHK-Cの低下が引き起こされる。ある実施態様において、dsRNAの投与により、対象におけるフルクトース代謝の低下が引き起こされる。ある実施態様において、dsRNAの投与により、高い血清尿酸を示す対象(例えば、痛風に関連して高い血清尿酸を示す対象)における尿酸レベル(例えば、血清尿酸)のレベルが低下する。ある実施態様において、dsRNAの投与により、少なくとも1つの異常な血清脂質レベルを有する対象における、血清脂質、例えば、食後トリグリセリド、LDL、HDLまたはコレステロールを含むトリグリセリドの正常化がおこる。ある実施態様において、dsRNAの投与により、脂質沈着の正常化、例えば、肝臓における脂質沈着の低下(例えば、NAFLDまたはNASHの低下)、内臓脂肪沈着の低下、体重低下がおこる。ある実施態様において、dsRNAの投与により、インスリンに対する免疫応答に関連しない異常なインスリン応答または異常なグルコース応答を示す対象において、インスリン応答またはグルコース応答の正常化がおこる。ある実施態様において、dsRNAの投与により、腎機能の改善または腎機能の損失率の防止または低下がおこる。ある実施態様において、dsRNAは、高血圧、即ち血圧上昇を低下させる。
【0067】
ある実施態様において、KHK関連疾患は、肝臓疾患、例えば、NAFLDまたはNASHのような脂肪肝疾患である。ある実施態様において、KHK関連疾患は、脂質異常症、例えば、血清トリグリセリドの上昇、血清LDLの上昇、血清コレステロールの上昇、血清HDLの低下、食後高トリグリセリド血症である。別の実施態様では、KHK関連疾患とは、血糖コントロールの障害、例えば、インスリンに対する免疫応答に起因しないインスリン耐性、グルコース耐性、II型糖尿病である。ある実施態様において、KHK関連疾患は、心血管疾患、例えば、高血圧、内皮細胞機能障害である。ある実施態様において、KHK関連疾患は、腎臓疾患、例えば、急性腎臓障害、尿細管機能障害、近位尿細管の炎症性変化、慢性腎臓疾患である。ある実施態様において、疾患はメタボリックシンドロームである。ある実施態様において、KHK関連疾患は、脂質沈着または機能障害、例えば、内臓脂肪沈着、脂肪肝、肥満である。ある実施態様において、KHK関連疾患は、尿酸上昇に関する疾患、例えば、痛風、高尿酸血症である。ある実施態様において、KHK関連疾患は、過度の糖渇望などの摂食障害である。
【0068】
ある実施態様において、本発明は、さらに、KHK関連疾患を有する対象に追加の薬剤を投与することをさらに含む。
【0069】
ある実施態様において、様々なKHK関連疾患のための当業者には既知の治療は、本発明のRNAi剤と組み合わせて使用される。そのような治療法は、以下に検討されている。
【0070】
様々な実施態様において、dsRNAi剤は、約0.01mg/kg~約10mg/kg、または約0.5mg/kg~約50mg/kgの用量で対象に投与される。いくつかの実施態様において、dsRNA剤は、約10mg/kg~約30mg/kgの用量で対象に投与される。ある実施態様において、dsRNA剤は、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kgから選択される用量で対象に投与される。ある実施態様において、RNAi剤は、約0.1mg/kg~約5.0mg/kgの用量で、約1週間に1回、約1ヶ月に1回、約2ヶ月に1回または約四半期に1回(すなわち、約3ヶ月に1回)に1回投与される。
【0071】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、1週間に1回、対象に投与される。ある実施態様において、dsRNAi剤は、1ヵ月に1回、対象に投与される。ある実施態様において、dsRNAi剤は、対象に四半期に1回(すなわち、3ヶ月に1回)投与される。
【0072】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、対象に皮下投与される。
【0073】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、対象に筋肉内投与される。
【0074】
様々な実施態様において、本発明の方法は、対象の尿酸値、特に血清尿酸値を測定することをさらに含む。様々な実施態様において、本発明の方法は、対象における尿酸フルコトース値を測定することをさらに含む。様々な実施態様において、本発明の方法は、対象における血清脂質レベルを測定することをさらに含む。ある実施態様において、本発明の方法は、対象におけるインスリンまたはグルコース感受性を測定することをさらに含む。ある実施態様において、フルクトース代謝の発現レベルまたは活性レベルにおける低下は、KHK関連疾患が治療または予防されていることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】
図1は、フルクトースの古典的な脂質合成経路および別の脂質合成経路を示す。古典的経路において、トリグリセリド(TG)は、アルドラーゼB(Aldo B)および脂肪酸合成酵素(FAS)を含む複数の酵素作用によるフルクトース代謝の直接的な生成物である。別の経路において、フルクトースがフルクトース-1-リン酸(F-1-P)にリン酸化される間に起こるヌクレオチドのターンオーバーにより生成される尿酸は、ミトコンドリアの酸化ストレス(mtROS)を作りだし、これによりクレブス回路中のアコニターゼ(ACO
2)の活性を低下させる。その結果、ACO
2の基質であるクエン酸塩が蓄積し、サイトゾルに放出され、それがATPクエン酸リアーゼ(ACL)と脂肪酸合成酵素の活性化によりTG合成の基質として作用する。AMPD2、AMPデアミナーゼ2;IMP、イノシン一リン酸;PO
4、リン酸塩(Jonshon et. al., (2013) Diabetes.62:3307-3315)。
【
図2】
図2は、ケトヘキソキナーゼAの転写物(NM_000221.2、配列番号:3)、ケトヘキソキナーゼCの転写物(NM_006488.2、配列番号:1)および転写変異体X5の転写物(XM_005264298.1、配列番号:5)についてのヒトKHK遺伝子におけるエクソン配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明は、KHKを標的とするRNAi剤、例えば、二本鎖iRNA剤を含む組成物を提供する。本発明は、KHK発現を阻害するために本発明の組成物を使用する方法、ならびにKHK関連疾患、障害および/または症状、例えば、肝臓疾患(例えば、脂肪肝、脂肪性肝炎、NAFLD、NASH)、脂質異常症(例えば、高脂血症、高LDLコレステロール、低HDLコレステロール、高トリグリセリド血症、食後高トリグリセリド血症)、血糖コントロールの障害(例えば、インスリンに対して免疫応答に起因しないインスリン耐性、II型糖尿病)、心血管疾患(例えば、高血圧症、内皮細胞機能障害)、腎臓病(例えば、急性腎障害、尿細管機能障害、近位尿細管の炎症性変化、慢性腎臓病)、メタボリックシンドローム、脂肪細胞機能障害、内臓脂肪沈着、肥満、高尿酸血症、痛風、摂食障害および過剰な糖への渇望を治療するために本発明の組成物を使用する方法も提供する(Khaitan Z. et al., (2013) J. Nutr. Metab., Article ID 682673, 1-12;Diggle C.P. et al., (2009) J. Hisotchem. Cytochem., 57(8): 763-774;Cirillo P. et al., (2009) J. Am. Soc. Nephrol., 20: 545-553;Lanaspa M.A. et al., (2012) PLOS ONE 7(10): 1-11)。
【0077】
KHK(ケトヘキソキナーゼ)遺伝子は、染色体2p23上に位置し、フルクトキナーゼとしても知られているケトヘキソキナーゼをコードしている。KHKは、アルコールをリン酸受容体とするホスホトランスフェラーゼ酵素である。KHKは、炭水化物キナーゼのリボキナーゼファミリーに属する(Trinh et al., ACTA Cryst., D65:201-211)。ケトヘキソキナーゼの2つのアイソフォーム、KHK-AおよびKHK-Cが特定されており、これらは、完全長mRNAの選択的スプライシングにより得られる。これらのアイソフォームは、エクソン3aまたは3cいずれを含むかにより異なり、位置72~115の32個のアミノ酸が異なる(例えば、
図2を参照)。KHK-C mRNAは、主に肝臓、腎臓および小腸において高レベルで発現される。KHK-Cは、KHK-Aよりはるかに低い、フルクトース結合に対するK
mを有し、結果として、食事性フルクトースをリン酸化するのに非常に有効である。ヒトKHK-C mRNA転写物の配列は、例えば、GenBank登録番号GI:153218447(NM_006488.2;配列番号1)に見られる。ヒトKHK-A mRNA転写物の配列は、例えば、GenBank登録番号GI:153218446(NM_000221.2;配列番号3)に見られる。完全長ヒトKHK mRNAの配列は、GenBank登録番号GI:530367552(XM_005264298.1;配列番号5)で提供されており、これを使用した(
図2)。
【0078】
本発明は、KHK遺伝子の発現を調節するためのiRNA剤、組成物および方法を提供する。ある実施態様において、KHKの発現が、KHK特異的iRNA剤を用いて低下されることにより、フルクトースからフルクトース-1-リン酸へのリン酸化を低下させ、それにより尿酸値の増加および脂質合成の増加を防ぎ、フルクトース代謝経路を経る代謝へと至る。このように、本発明のiRNA組成物を用いたKHK遺伝子の発現または活性の阻害は、食事性フルクトースの脂質合成効果を低下させ、それに伴う対象中の尿酸の蓄積を防ぐための治療法として有用である。このような阻害は、肝臓疾患(例えば、脂肪肝、脂肪性肝炎、NAFLD、NASH)、脂質異常症(例えば、高脂血症、高LDLコレステロール、低HDLコレステロール、高トリグリセリド血症、食後高トリグリセリド血症)、血糖コントロールの障害(例えば、インスリン耐性、糖尿病)、心血管疾患(例えば、高血圧症、内皮細胞機能障害)、腎臓病(例えば、急性腎障害、尿細管機能障害、近位尿細管の炎症性変化、慢性腎臓病)、メタボリックシンドローム、脂肪細胞機能障害、内臓脂肪沈着、肥満、高尿酸血症、痛風、摂食障害および過剰な糖への渇望などの疾病、障害または症状を治療するために有用である。
【0079】
本発明は、ケトヘキソキナーゼ(KHK)遺伝子のRNA転写物のRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)介在性切断に影響を与えるiRNA組成物を提供する。この遺伝子は、細胞内、例えば、ヒトなどの対象の体内細胞に存在し得る。これらのiRNAを用いることにより、哺乳類において、対応遺伝子(KHK遺伝子)のmRNAを標的とした分解が可能となる。
【0080】
本発明のiRNAは、他の哺乳類のKHKオーソログに保存されている遺伝子の部分を含むヒトKHK遺伝子を標的とするように設計されている。理論によって制限されることを意図しないが、前記特性と、これらのiRNAにおける特異的な標的部位または特異的な修飾の組み合わせまたは部分的な組み合わせが、本発明のiRNAに改善された有効性、安定性、効力、耐久性および安全性を与えると考えられる。
【0081】
従って、本発明は、KHK遺伝子の発現を阻害または低下することにより利益を得る障害、例えばKHK関連疾患を有する対象を、KHK遺伝子のRNA転写物のRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)介在性切断を行うiRNA組成物を使用して治療するための方法も提供する。
【0082】
非常に少ない投与量で本発明のiRNAは、特に、RNA干渉(RNAi)を特異的かつ効率的に媒介し、その結果、対応遺伝子(KHK遺伝子)の発現を有意に阻害することができる。
【0083】
本発明のiRNAは、約30個以下のヌクレオチド長である領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)、例えば、15~30、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23または21~22個のヌクレオチド長を含んでいてもよく、この領域は、KHK遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的である。
【0084】
ある実施態様において、本発明のiRNAは、より長いヌクレオチド長、例えば最大66個のヌクレオチド、例えば36~66、26~36、25~36、31~60、22~43、27~53個のヌクレオチド長であり、KHK遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的である少なくとも19個の連続するヌクレオチドの領域を含み得るRNA鎖(アンチセンス鎖)を含む。より長いアンチセンス鎖長を有するこれらのiRNAは、好ましくは、該センス鎖と該アンチセンス鎖が、18~30個の連続するヌクレオチドの二本鎖を形成する20~60個のヌクレオチド長の第二のRNA鎖(センス鎖)を含む。
【0085】
本発明のiRNAの使用により、哺乳動物における対応遺伝子(KHK遺伝子)のmRNAの標的分解が可能となる。非常に少ない投与量にて本発明のiRNAは、特に、RNA干渉(RNAi)を特異的かつ効率的に媒介することができ、その結果、対応遺伝子(KHK遺伝子)の発現を有意に阻害することができる。インビトロおよびインビボアッセイを用いて、我々は、KHK遺伝子を標的とするiRNAがRNAiを媒介することが可能であり、その結果、KHKの発現を有意に阻害するとともに、フルクトース代謝を低下させて、KHK関連疾患に関連する1つ以上の症状を低下させることが可能であることを実証した。従って、これらのiRNAを含む方法および組成物は、KHK関連疾患に罹患している対象を治療するのに有用である。本明細書に記載の方法および組成物は、対象におけるKHK、好ましくは対象におけるKHK-C、例えば対象における肝臓のKHK-Cのレベルを低下させるのに有用である。
【0086】
以下の詳細な説明は、KHK遺伝子の発現を阻害するためのiRNAを含む組成物の製造方法および使用方法、ならびにKHK遺伝子発現の低下により利益を得る疾患および障害を有する対象を治療するための組成物、使用および方法を開示する。
【0087】
I.定義
本発明をより容易に理解できるように、いくつかの用語がまず定義される。更に、パラメーターの値または値の範囲が記載されるときは常に、記載される値の中間の値および範囲も、本発明の一部であることが意図されることに留意されたい。
【0088】
冠詞「a」および「an」は、その冠詞の文法上の目的語の1つまたは2つ以上(即ち、少なくとも1つ)を指すために本明細書において使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または2つ以上の要素、例えば、複数の要素を意味する。
【0089】
「を含む」という用語は、「を含むがこれらに限定するものではない」という語句を意味するために本明細書において使用され、かつこの語句と互換的に使用される。
【0090】
「または」という用語は、文脈上明らかに別の意味を示さない限り、「および/または」という用語を意味するために本明細書において使用され、かつこの用語と互換的に使用される。
【0091】
「約」という用語は、本明細書において、当分野における許容範囲の典型的な範囲内を意味するために使用される。例えば、「約」は、平均から約2の標準偏差であると理解され得る。ある実施態様において、「約」は、±10%を意味する。ある実施態様においては、「約」は、±5%を意味する。「約」が、一連の数値または範囲の前に存在する場合、「約」は、一連の数値または範囲内の各数値を修飾できると理解される。
【0092】
数字または一連の数値の前の用語「少なくとも」は、文脈から明らかなように、用語「少なくとも」に隣接する数、および論理的に含まれる可能性のある全ての後続する数または整数を含むと理解される。例えば、核酸分子中のヌクレオチドの数は整数でなければならない。例えば、「21個のヌクレオチドの核酸分子の少なくとも18個のヌクレオチド」は、18、19、20または21個のヌクレオチドが所定の性質を有することを意味する。「少なくとも」が、一連の数値または範囲の前に存在する場合、「少なくとも」は、一連の数値または範囲内の各数を修飾し得ることが理解される。
【0093】
本明細書で使用されるとおり、「以下」または「より少ない」は、この用語に隣接する数値および論理的に低い値または整数として、文脈からゼロまでの論理的な値として理解される。例えば、「2以下のヌクレオチド」のオーバーハングを有する二本鎖は、2、1または0個のヌクレオチドのオーバーハングを有する。「以下」が、一連の数値または範囲の前に存在する場合、「以下」とは、一連の数値または範囲内の数字の各数を修飾し得ることが理解される。
【0094】
本明細書において使用されるとおり、「ケトヘキソキナーゼ」または「KHK」は、フルクトースのフルクトース-1-リン酸への変換を触媒する酵素である。この遺伝子産物は、食事性フルクトースを異化する経路における最初の酵素である。様々なアイソフォームをコードする選択的転写変異体が同定されている。この遺伝子は、フルクトキナーゼとしても知られている。KHKに関する更なる情報は、例えば、NCBI遺伝子データベース(www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/3975)において提供されている(出願日の時点で、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0095】
本明細書で使用されるとおり、用語「KHK」と互換的に使用される「ケトヘキソキナーゼ」は、KHKタンパク質をコードする天然に存在する遺伝子を指す。ヒトKHK遺伝子の参照配列のアミノ酸および全コード配列は、例えば、GenBank登録番号GI:153218447(RefSeq登録番号NM_006488;配列番号:1;配列番号:2)、GenBank登録番号GI:153218446(RefSeq登録番号NM_000221.2;配列番号:3および4)およびGenBank登録番号767914480(RefSeq登録番号XM_005264298.2;配列番号:5および6)に存在し得る。ヒトKHK遺伝子の哺乳類のオートログは、例えば、GI:887209819(RefSeq登録番号NM_008439.4、マウス;配列番号:7および配列番号:8);GI:126432547(RefSeq登録番号NM_031855.3、ラット;配列番号:9および配列番号:10);GenBank登録番号GI:982291245(RefSeq登録番号XM_005576321、カニクイザル;配列番号:11および配列番号:12)に見い出される。
【0096】
KHKプレmRNAの選択的スプライシングにより産生される2種のKHKアイソフォームが存在する。KHK-Cは、フルクトース代謝を行う臓器、例えば肝臓、腎臓、腸に多く存在している。これは非常に活性が高く、殆どのフルクトース代謝に関与している。KHK-Aは、フルクトースに対する親和性が低く、殆どの組織で広く発現している。本明細書で提供されるiRNA剤は、1つまたは両方のKHKアイソフォームを、サイレンシングすることができる。好ましい実施態様において、iRNA剤は、少なくともKHK-Cをサイレンシングすることが可能であり、少なくともKHK-Cアイソフォームの発現が阻害される。
【0097】
天然に存在する多くのSNPが知られており、例えば、ヒトKHKにおけるSNPを提供するNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/snp_ref.cgi?locusId=3795)のSNPデータベース(出願日の時点で、参照により本明細書に組み込まれる)に見出され得る。好ましい実施態様において、そのような天然に存在する変異体は、KHK遺伝子配列の範囲内に含まれる。
【0098】
KHKmRNA配列の追加の例は、公知のデータベース、例えばGenBank、UniProtおよびOMIMを使用して容易に入手できる。
【0099】
本明細書で使用されるとおり、「標的配列」とは、KHK遺伝子の転写の間に形成されるmRNA分子、例えば一次転写産物のRNAプロセシングの産物であるmRNAのヌクレオチド配列の連続する部分を指す。配列の標的部分は、少なくとも、KHK遺伝子の転写の間に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の該当部分またはその近傍で、iRNAに特異的な切断のための基質としての役割を果たすのに十分な長さであろう。ある実施態様において、標的配列は、KHKのタンパク質コード領域内に存在する。
【0100】
標的配列は、約9~36個のヌクレオチド長、例えば、約15~30個のヌクレオチド長であり得る。例えば、標的配列は、約15~30個のヌクレオチド、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23または21~22個のヌクレオチド長であり得る。上記範囲およびその間の範囲の長さも、本発明の一部であると考えられる。
【0101】
本明細書において使用されるとおり、「配列を含む鎖」という用語は、標準的なヌクレオチドの命名法を用いて示される配列によって表されるヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを指す。
【0102】
「G」、「C」、「A」および「U」は、それぞれ一般的に、塩基としてグアニン、シトシン、アデニンおよびウラシルを含むヌクレオチドを表す。しかし、「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語は、以下に更に詳述されるように、修飾ヌクレオチドまたは代用置換部分(Surrogate replacement moiety)も指し得ることが理解されよう(例えば、表2を参照されたい)。当業者には、グアニン、シトシン、アデニンおよびウラシルが、かかる置換部分を有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対合の特性を、実質的に変化させない別の置換部分に置き換えられていてもよいことは十分に認識されよう。例えば、限定するものではないが、その塩基としてイノシンを含むヌクレオチドは、アデニン、シトシンまたはウラシルを含むヌクレオチドと塩基対合し得る。従って、ウラシル、グアニンまたはアデニンを含むヌクレオチドは、本発明に関するdsRNAのヌクレオチド配列において、例えば、イノシンを含むヌクレオチドに置き換えられてもよい。別の例では、オリゴヌクレオチド中のいずれかの箇所のアデニンおよびシトシンを、それぞれグアニンおよびウラシルで置換して、標的mRNAとのG-Uゆらぎ塩基対合を形成させることができる。このような置換部分を含有する配列は、本発明に記載の組成物および方法に好適である。
【0103】
本明細書において互換的に使用される「iRNA」、「RNAi剤」、「iRNA剤」、「RNA干渉剤」という用語は、その用語が本明細書において定義されるとおり、RNAを含有し、且つRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を介した経路によるRNA転写物の標的化された切断を媒介する剤を指す。iRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られるプロセスによってmRNA配列に特異的な分解を導く。iRNAは、細胞、例えば、哺乳類対象などの対象の細胞内でのKHK遺伝子の発現を調節する(例えば、阻害する)。
【0104】
一実施態様において、本発明のRNAi剤は、標的RNA配列、例えば、KHK標的mRNA配列と相互作用して、標的RNAの切断を導く一本鎖RNAを含む。理論に制限されることは望まないが、細胞中に導入される長い二本鎖RNAが、ダイサー(Dicer)として知られるIII型エンドヌクレアーゼによってsiRNAに分解されると考えられる(Sharp et al. (2001) Genes Dev. 15:485)。リボヌクレアーゼIII様酵素であるダイサーは、dsRNAをプロセシングして、特徴的な2つの塩基3'オーバーハングを有する19~23塩基対の短い干渉RNAにする(Bernstein, et al., (2001) Nature 409:363)。次に、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に取り込まれ、ここで1つまたは複数のヘリカーゼが、siRNA二本鎖をほどいて、相補的なアンチセンス鎖を標的の認識に導くことを可能にする(Nykanen, et al., (2001) Cell 107:309)。適切な標的mRNAに結合すると、RISC中の1つまたは複数のエンドヌクレアーゼが標的を切断して、サイレンシングを誘導する(Elbashir, et al., (2001) Genes Dev. 15:188)。すなわち、一態様において、本発明は、細胞中で生成され、かつ標的遺伝子、即ちKHK遺伝子のサイレンシングを行うRISC複合体の形成を促進する一本鎖RNA(siRNA)に関する。従って、「siRNA」という用語はまた、上記のようなiRNAを指すために本明細書において使用される。
【0105】
ある実施態様において、RNAi剤は、標的mRNAを阻害するために細胞または生物に導入される一本鎖siRNA(ssRNAi)であり得る。一本鎖RNAi剤は、RISCエンドヌクレアーゼであるArgonaute2に結合した後、標的mRNAを切断する。一本鎖siRNAは、一般に、15~30個のヌクレオチドであり、化学的に修飾される。一本鎖siRNAの設計および試験は、米国特許第8,101,348号明細書およびLima et al., (2012) Cell 150:883-894において説明されており、各内容の全てが、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるいずれのアンチセンスヌクレオチド配列も、本明細書に記載されるような一本鎖siRNAまたはLima et al., (2012) Cell 150:883-894に記載された方法により化学的に修飾された一本鎖siRNAとして使用され得る。
【0106】
ある実施態様において、本発明の組成物、使用および方法に用いるための「iRNA」は、二本鎖RNAであり、本明細書においては「二本鎖RNAi剤」、「二本鎖RNA(dsRNA)分子」、「dsRNA剤」または「dsRNA」と呼ばれる。「dsRNA」という用語は、標的RNA(即ち、KHK遺伝子)に対する「センス」および「アンチセンス」配向を有することが示される、2本の逆平行で、かつ実質的に相補的な核酸鎖を含む二本鎖構造を有するリボ核酸分子の複合体を指す。本発明のある実施態様において、二本鎖RNA(dsRNA)は、本明細書においてRNA干渉またはRNAiと呼ばれる転写後遺伝子サイレンシング機構による標的RNA(例えば、mRNA)の分解を引き起こす。
【0107】
一般に、dsRNA分子のそれぞれの鎖のヌクレオチドの大部分は、リボヌクレオチドであるが、本明細書において詳細に記載されるように、各鎖または両方の鎖は、1つまたは複数の非リボヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドも含み得る。更に、本明細書において使用されるとおり、「iRNA剤」は、化学修飾を有するリボヌクレオチドを含んでいてもよく;iRNA剤は、複数のヌクレオチドの実質的な修飾を含み得る。本明細書において使用されるとおり、「修飾ヌクレオチド」という用語は、独立して、修飾された糖部分、修飾されたヌクレオチド間結合または修飾された核酸塩基またはその組み合わせを有するヌクレオチドを指す。したがって、修飾ヌクレオチドという用語は、ヌクレオシド間結合、糖部分または核酸塩基に対する、例えば、官能基または原子の置換、付加または除去を包含する。本発明の剤に使用するのに好適な修飾は、本明細書に開示されるか、または当該技術分野において公知のあらゆるタイプの修飾を含む。siRNAタイプの分子に使用される際のこのようないずれの修飾も、本明細書および特許請求の範囲の目的のための「iRNA」または「RNAi剤」に包含される。
【0108】
dsRNA分子のそれぞれの鎖のヌクレオチドの大部分は、リボヌクレオチドであるが、本明細書において詳細に記載されるように、各鎖または両方の鎖は、1つまたは複数の非リボヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドも含み得る。更に、本明細書において使用されるとおり、「iRNA」は、化学修飾を有するリボヌクレオチドを含んでいてもよく;iRNA剤は、複数のヌクレオチドの実質的な修飾を含み得る。本明細書において使用されるとおり、「修飾ヌクレオチド」という用語は、独立して、修飾された糖部分、修飾されたヌクレオチド間結合または修飾された核酸塩基を有するヌクレオチドを指す。したがって、修飾ヌクレオチドという用語は、ヌクレオシド間結合、糖部分または核酸塩基に対する、例えば、官能基または原子の置換、付加または除去を包含する。本発明の剤に使用するのに好適な修飾は、本明細書に開示されるか、または当該技術分野において公知のあらゆるタイプの修飾を含む。siRNAタイプの分子に使用される際のこのようないずれの修飾も本明細書および特許請求の範囲の目的のための「iRNA」または「RNAi剤」に包含される。
【0109】
二本鎖領域は、RISC経路を介した所望の標的RNAの特異的な分解を可能にする任意の長さのものであってもよく、約9~36塩基対の長さ、例えば、約15~30塩基対の長さ、例えば、約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35または36塩基対の長さ、例えば、約15~30、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23または21~22塩基対の長さの範囲であり得る。上記した範囲および長さに対するその中間の範囲および長さも、本発明の一部であると考えられる。
【0110】
二本鎖構造を形成する2本の鎖は、1つの大きなRNA分子の異なる部分であってもよく、またはそれらは別のRNA分子であってもよい。2本の鎖が、1つのより大きな分子の一部分であって、二本鎖構造を形成する1本の鎖の3'末端ともう一方の鎖の5'末端との間にあるヌクレオチドの連続した鎖によって結合されている場合、この結合しているRNA鎖は、「ヘアピンループ」と呼ばれる。ヘアピンループは、少なくとも1つの不対ヌクレオチドを含み得る。ある実施態様において、ヘアピンループは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも23個またはそれ以上の不対ヌクレオチドを含み得る。ある実施態様において、ヘアピンループは、10または数個の不対ヌクレオチドであってもよい。ある実施態様において、ヘアピンループは、8または数個の不対ヌクレオチドであってもよい。ある実施態様において、ヘアピンループは、4~10個の不対ヌクレオチドであってもよい。ある実施態様において、ヘアピンループは、4~8個の不対ヌクレオチドであってもよい。
【0111】
dsRNAの2つの実質的に相補的な鎖が、別のRNA分子によって構成される場合、それらの分子は、共有結合され得るが、必ずしも共有結合される必要はない。2本の鎖が、二本鎖構造を形成する1本の鎖の3'末端とその他方の鎖の5'末端との間のヌクレオチドの連続した鎖以外の手段によって共有結合的に結合されている場合、この結合している構造は、「リンカー」と呼ばれる。RNA鎖は、同数または異なる数のヌクレオチドを有し得る。塩基対の最大数は、dsRNAの最も短い鎖のヌクレオチドの数から、二本鎖に存在するあらゆるオーバーハングを引いた数である。二本鎖構造に加えて、RNAiは、1つまたは複数のヌクレオチドオーバーハングを含み得る。
【0112】
ある実施態様において、本発明のiRNA剤は、dsRNAであって、この各鎖は19~23個のヌクレオチドを含んでおり、標的RNA配列(例えば、KHK遺伝子)と相互作用し、理論に縛られることを望まないが、細胞内に導入された長い二本鎖RNAは、ダイサーとして知られるタイプIII型エンドヌクレアーゼによってsiRNAに分解される(Sharp et al. (2001) Genes Dev. 15:485)。リボヌクレアーゼIII型酵素であるダイサーは、dsRNAをプロセシングして、特徴的な2つの塩基3'オーバーハングを有する19~23塩基対の短い干渉RNAにする(Bernstein, et al., (2001) Nature 409:363)。その後、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に取り込まれ、ここで1つまたは複数のヘリカーゼがsiRNA二本鎖をほどいて、相補的なアンチセンス鎖を、標的認識に誘導することを可能にする(Nykanen, et al., (2001) Cell 107:309)。適切な標的mRNAに結合すると、RISC内の1つまたは複数のエンドヌクレアーゼが標的を切断して、サイレンシングを誘導する(Elbashir, et al., (2001) Genes Dev. 15:188)。
【0113】
いくつかの実施態様では、本発明のiRNAは、標的RNA配列、例えばKHK標的mRNA配列と相互作用して、標的RNAの切断を行う24~30個のヌクレオチドのdsRNAである。理論に縛られることを望まないが、細胞内に導入された長い二本鎖RNAは、ダイサーとして知られるIII型エンドヌクレアーゼによってsiRNAに分解される(Sharp et al. (2001) Genes Dev. 15:485)。リボヌクレアーゼIII型酵素であるダイサーは、dsRNAをプロセシングして、特徴的な2つの塩基の3'オーバーハングを有する19~23塩基対の短い干渉RNAにする(Bernstein, et al., (2001) Nature 409:363)。その後、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に取り込まれ、ここで1または複数のヘリカーゼがsiRNA二本鎖をほどいて、相補的なアンチセンス鎖を標的認識に誘導することを可能にする(Nykanen, et al., (2001) Cell 107:309)。適切な標的mRNAに結合すると、RISC内の1つまたは複数のエンドヌクレアーゼが標的を切断して、サイレンシングを誘導する(Elbashir, et al., (2001) Genes Dev. 15:188)。
【0114】
本明細書において使用されるとおり、「ヌクレオチドオーバーハング」という用語は、二本鎖iRNAから突出する少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。例えば、dsRNAの1本の鎖の3'末端が、他方の鎖の5'末端を越えて伸びているか、またはその逆である場合、ヌクレオチドオーバーハングが存在する。dsRNAは、少なくとも1つのヌクレオチドのオーバーハングを含み得るか;あるいは、オーバーハングは、少なくとも2つのヌクレオチド、少なくとも3つのヌクレオチド、少なくとも4つのヌクレオチド、少なくとも5つのヌクレオチドまたはそれ以上を含み得る。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシヌクレオチド/ヌクレオシドを含むヌクレオチド/ヌクレオシドアナログを含み得るか、またはそれらから成り得る。オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖またはそれらの任意の組み合わせであり得る。更に、オーバーハングのヌクレオチドは、dsRNAのアンチセンス鎖またはセンス鎖のいずれかの5'末端、3'末端または両方の末端に存在し得る。
【0115】
ある実施態様において、dsRNAのアンチセンス鎖は、3'末端および/または5'末端に1~10個のヌクレオチド、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のヌクレオチドのオーバーハングを有する。該センス鎖または該アンチセンス鎖、またはその両方上のオーバーハングは、10より長いヌクレオチド、例えば1~30個のヌクレオチド、2~30個のヌクレオチド、10~30個のヌクレオチドまたは10~15個のヌクレオチドの長さを包含し得る。ある実施態様において、伸長したオーバーハングは、自己相補部分を包含し得る、即ち、該オーバーハングは、安定なヘアピン構造を形成できる、例えば少なくとも3つのヌクレオチドの二本鎖、または少なくとも4つのヌクレオチドの二本鎖を包含し得る。ある実施態様において、伸長したオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖上に存在する。ある実施態様において、伸長したオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖の3'末端上に存在する。ある実施態様において、伸長したオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖の5'末端上に存在する。ある実施態様において、伸長したオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖上に存在する。ある実施態様において、伸長したオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖の3'末端上に存在する。ある実施態様において、伸長されたオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖の5'末端に存在する。ある実施態様において、オーバーハング中のヌクレオチドの1つまたは複数が、ヌクレオシドチオリン酸で置換される。ある実施態様において、オーバーハングは、該オーバーハングが、生理条件下において安定なヘアピン構造を形成できる自己相補部分を包含する。
【0116】
「平滑な」または「平滑末端」は、二本鎖RNAi剤の該当する末端に不対ヌクレオチドが存在しない、即ち、ヌクレオチドオーバーハングが存在しないことを意味する。「平滑末端」二本鎖RNAi剤は、その全長にわたって二本鎖である、即ち、分子のいずれの末端にもヌクレオチドオーバーハングが存在しないdsRNAである。本発明のRNAi剤は、一方の末端にヌクレオチドオーバーハングが存在しないRNAi剤(即ち、1つのオーバーハングおよび1つの平滑末端を有する剤)または両方の末端にヌクレオチドオーバーハングが存在しないRNAi剤を含む。
【0117】
「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」という用語は、例えば、標的配列、例えば、KHK mRNAに実質的に相補的な領域を含むiRNA、例えば、dsRNAの鎖を指す。本明細書において使用される際、「相補性領域」という用語は、本明細書において定義されるように、配列、例えば標的配列、例えば、KHKヌクレオチド配列に実質的に相補的なアンチセンス鎖の領域を指す。相補性領域が、標的配列と完全には相補的でない場合、その分子の内部領域または末端領域にミスマッチが存在し得る。一般に、ほとんどの許容されるミスマッチは、末端領域、例えば、iRNAの5'末端および/または3'末端の5、4、3または2つのヌクレオチド中に存在する。ある実施態様において、本発明の二本鎖RNAi剤は、アンチセンス鎖中のヌクレオチドミスマッチを包含する。ある実施態様において、本発明の二本鎖RNAi剤は、センス鎖中のヌクレオチドミスマッチを包含する。ある実施態様において、ヌクレオチドミスマッチは、例えば、iRNAの3'末端から5、4、3、2または1つのヌクレオチド中に存在する。別の実施態様において、ヌクレオチドミスマッチは、例えば、iRNAの3'末端に存在する。
【0118】
本明細書において使用される際の「センス鎖」または「パッセンジャー鎖」という用語は、その用語が本明細書において定義されるように、アンチセンス鎖の領域と実質的に相補的な領域を含むiRNAの鎖を指す。
【0119】
本明細書において使用される通り、「実質的に全てのヌクレオチドが修飾される」とは、広範囲であるが全てというわけではなく修飾されており、5、4、3、2または1以下の非修飾ヌクレオチドを包含することができる。
【0120】
本明細書において使用される通り、「切断領域」という用語は、切断部位に直接隣接して位置する領域を指す。切断部位とは、切断が生じる標的上の部位である。ある実施態様において、切断領域は、切断部位のいずれかの末端で、切断部位に直接隣接した3つの塩基を含む。ある実施態様において、切断領域は、切断部位のいずれかの末端で、切断部位に直接隣接した2つの塩基を含む。ある実施態様において、切断部位は、アンチセンス鎖のヌクレオチド10および11によって結合される部位で特異的に生じ、切断領域は、ヌクレオチド11、12および13を含む。
【0121】
本明細書において使用される通り、別段の記載が無い限り、「相補的な」という用語は、当業者に理解されるように、第1のヌクレオチド配列を第2のヌクレオチド配列と関連して記載するのに使用される場合に、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、所定の条件下で、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイズし、二本鎖構造を形成する能力を指す。このような条件は、例えば、ストリンジェントな条件であることも可能で、ストリンジェントな条件には、400mMのNaCl、40mMのPIPES(pH6.4)、1mMのEDTA、50℃または70℃で12~16時間と、その後の洗浄を含み得る(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook, et al. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照)。生物の内部で起こり得る生理学的に関連した条件などの他の条件を適用することができる。当業者は、ハイブリダイズされたヌクレオチドの最終的な用途に従って、2つの配列の相補性の試験に最も適切な条件の組を決定することができるであろう。
【0122】
本明細書に記載されるiRNA中、例えば、dsRNA中の相補的な配列は、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドへの第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの、一方または両方のヌクレオチド配列の全長にわたる塩基対合を含む。このような配列は、本明細書において互いに対して「完全に相補的な」と言うことができる。しかし、第1の配列が、本明細書において第2の配列に対して「実質的に相補的な」という場合、2つの配列は、完全に相補的であり得るか、またはそれらの最終的な用途に最適な条件下で、例えば、RISC経路を介した遺伝子発現の阻害に最適な条件下でハイブリダイズする能力を保持しながら、最大で30塩基対の二本鎖に対してハイブリダイゼーションを行うと、それらは、1つまたは複数であるが、一般に5つ以下、4つ以下、3つ以下または2つ以下のミスマッチ塩基対を形成し得る。しかし、2つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーション後に1つまたは複数の一本鎖オーバーハングを形成するように設計されている場合、このようなオーバーハングは、相補性の決定に関してはミスマッチとみなされないものとする。例えば、本明細書に記載する目的のために、21ヌクレオチド長の一方のオリゴヌクレオチドと、23ヌクレオチド長の他方のオリゴヌクレオチドとを含むdsRNAは、長い方のオリゴヌクレオチドが、短い方のオリゴヌクレオチドに対して完全に相補的な21ヌクレオチドの配列を含む場合、「完全に相補的」ということができる。
【0123】
本明細書において使用される際の「相補的な」配列は、それらのハイブリダイズする能力に関連する上記の要件が満たされる限り、非ワトソン-クリック塩基対および/または非天然および修飾ヌクレオチドから形成される塩基対を含むこともでき、またはこのような塩基対から完全に形成されることも可能である。このような非ワトソン-クリック塩基対としては、限定はされないが、G:Uゆらぎ型またはフーグスティーン型塩基対が挙げられる。
【0124】
本明細書における「相補的な」、「完全に相補的な」および「実質的に相補的な」という用語は、それらを使用する状況から理解されるように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖との間で、または二本鎖RNAi剤のアンチセンス鎖と標的配列との間で、塩基対合に関して使用され得る。
【0125】
本明細書において使用される通り、メッセンジャーRNA(mRNA)「の少なくとも一部に実質的に相補的な」ポリヌクレオチドは、目的のmRNA(例えば、KHKをコードするmRNA)の連続する部分に実質的に相補的なポリヌクレオチドを指す。例えば、ポリヌクレオチドは、その配列がKHK遺伝子をコードするmRNAの連続する部分と実質的に相補的である場合、KHKmRNAの少なくとも一部に相補的である。
【0126】
従って、ある実施態様において、本明細書に開示されたアンチセンスポリヌクレオチドは、標的KHK配列と完全に相補的である。別の実施態様において、本明細書に開示されたアンチセンスポリヌクレオチドは、標的KHK配列と実質的に相補的であって、配列番号:1、3、5、7、9および11、好ましくは配列番号:1、3および5のいずれか一つのヌクレオチド配列の相当領域と、または配列番号:1、3、5、7、9および11、好ましくは配列番号:1、3および5のいずれか一つのフラグメントと、その全長にわたって、少なくとも約80%相補的、例えば少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%相補的または100%相補的である連続するヌクレオチド配列を含んでいる。
【0127】
一実施態様において、本発明のRNAi剤は、アンチセンスポリヌクレオチドに実質的に相補的であるセンス鎖を包含しており、そしてこれは、標的KHK配列に相補的であって、かつ表3または表5のいずれか1つのセンス鎖ヌクレオチド配列と、あるいは表3または表5のいずれか1つのセンス鎖の断片と、その全長にわたって、少なくとも約80%相補的、例えば約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%相補的または100%相補的である連続するヌクレオチド配列を含んでいる。
【0128】
ある実施態様において、本発明のiRNAは、標的KHK配列に実質的に相補的であるアンチセンス鎖を包含しており、表3または表5のアンチセンス鎖のいずれか一つのヌクレオチド配列の相当領域と、あるいは表3または表5のアンチセンス鎖のいずれか1つの断片と、全長にわたって、少なくとも約80%相補的、例えば約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%相補的あるいは約100%相補的である連続するヌクレオチド配列を含んでいる。
【0129】
一般に、各鎖のヌクレオチドの大部分は、リボヌクレオチドであるが、本明細書において詳細に記載されるように、各鎖または両方の鎖は、1つまたは複数の非リボヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドも含み得る。更に、「iRNA」は、化学修飾を有するリボヌクレオチドを含み得る。このような修飾は、本明細書に開示された、または当該技術分野において公知のあらゆるタイプの修飾を含み得る。dsRNA分子に使用されるような、いずれのこのような修飾も、本明細書および特許請求の範囲の目的のために「iRNA」に包含される。
【0130】
本発明のある態様において、本発明の方法および組成物に使用するための薬剤は、アンチセンス阻害機構を介して標的mRNAを阻害する一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子である。一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は、標的mRNA中の配列に相補的である。一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAに塩基対合し、翻訳メカニズムを物理的に妨害することによって、化学量論的に翻訳を阻害し得る(Dias, N.et al.,(2002) Mol Cancer Ther 1:347-355を参照)。一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は、約14~約30ヌクレオチド長であってもよく、また標的配列に相補的な配列を有し得る。例えば、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド分子は、本明細書に記載されるアンチセンス配列のいずれか1つからの少なくとも約14、15、16、17、18、19、20個またはそれ以上の連続するヌクレオチドである配列を含み得る。
【0131】
本明細書において使用される際の「細胞をiRNAと接触させる」という句は、任意の可能な手段によって細胞を接触させる工程を含む。細胞をiRNAと接触させる工程は、細胞をiRNAと細胞をインビトロで接触させる工程または細胞をiRNAと細胞をインビボで接触させる工程を含む。接触は、直接または間接的に行われ得る。したがって、例えば、iRNAは、その方法を個々に行うことによって細胞と物理的に接触されてもよく、あるいはiRNAは、それを後で細胞と接触させることが可能な状況に置いてもよい。
【0132】
細胞をインビトロで接触させる工程は、例えば、細胞をiRNAと共にインキュベートすることによって行われ得る。細胞をインビボで接触させる工程は、iRNAが接触される細胞が存在する組織に接触後に到達するように、例えば、iRNAを、細胞が存在する組織中または組織の近傍に注入することによって、またはiRNAを、別の領域、例えば、血流または皮下腔中に注入することによって行われ得る。例えば、iRNAは、目的の部位、例えば、肝臓にiRNAを動員するリガンド、例えば、GalNAc3などのGalNAcを含むか、および/またはそれに結合されてもよい。インビトロおよびインビボでの接触方法を組み合わせることも可能である。例えば、細胞は、iRNAとインビトロで接触された後に、対象に移植されてもよい。
【0133】
ある実施態様において、細胞をiRNAと接触させる工程は、細胞中への取り込みや吸収を、促進させるか、または行うことによって、「導入する」または「iRNAを細胞中に送達する」工程を含む。iRNAの吸収または取り込みは、自発拡散(unaided diffusive)または能動的な細胞プロセスによって、または補助的な薬剤またはデバイスによって行われ得る。細胞中へのiRNAの導入は、インビトロおよび/またはインビボであってもよい。例えば、インビボでの導入の場合、iRNAは、組織部位に注入されるか、または全身投与され得る。インビボでの送達は、米国特許第5,032,401号明細書および同第5,607,677号明細書および米国特許出願公開第2005/0281781号明細書に記載されるようなβ-グルカン送達系によって行うこともでき、これらの全ての内容は、参照により本明細書に援用される。細胞中へのインビトロでの導入は、エレクトロポレーションおよびリポフェクションなどの当該技術分野において公知の方法を含む。更なる手法が、本明細書において後述され、および/または当該技術分野において公知である。
【0134】
「脂質ナノ粒子」または「LNP」という用語は、核酸分子(例えば、iRNAまたはiRNAが転写されるプラスミド)などの薬学的に有効な分子を封入する脂質層を含むベシクルである。LNPは、米国特許第6,858,225号明細書、同第6,815,432号明細書、同第8,158,601号明細書および同第8,058,069号明細書に記載されており、例えば、全ての内容は参照により本明細書に援用される。
【0135】
本明細書において使用されるとおり、「対象」は、内因的または外因的に標的遺伝子を発現する、霊長類(ヒト、非ヒト霊長類、例えば、サルおよびチンパンジーなど)、非霊長類(ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウス、ウマおよびクジラなど)を含む哺乳動物または鳥類(例えば、アヒルまたはガチョウ)などの動物である。ある実施態様において、対象は、ヒト、例えば、本明細書に記載されるように、標的遺伝子を発現または複製の低下により利益を得るであろう疾患、障害または症状について治療または評価されるヒト;KHK遺伝子発現の低下により利益を得るであろう疾患、障害または症状に対するリスクのあるヒト;KHK遺伝子発現の低下により利益を得るであろう疾患、障害または症状を有するヒト;または、KHK遺伝子発現の低下により利益を得る疾患、障害または症状について治療されるヒトである。ある実施態様において、対象はヒトの女性である。別の実施態様においては、対象はヒトの男性である。
【0136】
本明細書において使用されるとおり、「治療する」または「治療」という用語は、有益な結果または所望の結果、例えば、KHK遺伝子発現またはKHKタンパク質産生、特に高いKHK遺伝子発現または高いKHKタンパク質産生に関連する1つ以上の症候または症状の緩和または改善などを含むが、これらに限定するものではない。「治療」とは、治療しない場合に予測される生存期間と比較して、生存期間を延長させることも意味し得る。
【0137】
対象における、KHK遺伝子発現またはKHKタンパク質産生のレベル、または疾患マーカーまたは症状に関する文脈上での「低下」という用語は、このようなレベルの統計的に有意な低下を指す。低下とは、例えば、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%、または検出方法の検出レベル以下であり得る。ある実施態様において、標的の発現が、標準化される、即ち、前記障害がない個人に対して正常範囲内であると認められるレベルに、例えば、体重、血圧または血清脂質レベルの正常範囲内まで低下される。本明細書で使用されるように、対象における「低下」とは、対象の細胞における遺伝子発現またはタンパク質産生の低下を指すことができるが、対象の全ての細胞または組織における発現を低下させることが必要なわけではない。例えば、本明細書で使用されるように、対象における低下とは、対象における肝臓中の遺伝子発現またはタンパク質産生の低下を含むことができる。
【0138】
用語「低下」は、疾患または症状の症候を正常化させることに関連して使用することも可能であって、即ち、KHK関連疾患に罹患している対象における範囲を、KHK関連疾患に罹患していない正常対象における範囲へ、またはKHK関連疾患に罹患していない対象における正常範囲まで、その範囲の差を低下させることを含む。例えば、正常体重が70kgの対象者の体重が、治療前に90kg(20kgの体重過剰)であり、治療後に80kg(10kgの体重過剰)であった場合、その対象の体重は、正常体重に対して50%(10/20×100%)低下している。同様に、女性のHDLレベルが、50mg/dL(低い)から57mg/dLに上昇し、正常レベルが60mg/dLである場合、対象者の治療前のレベルと正常レベルとの差が、70%低下している(対象者レベルと正常レベルとの差10mg/dLが、7mg/dLまで低下している、7/10×100%)。本明細書で使用されるように、疾患が、症状として高い値に関連している場合、「正常」とは、正常の上限値とみなされる。疾患が、症状に対して低い値と関連している場合、「正常」とは、正常の下限値であると考えられる。
【0139】
本明細書で使用されるように、「予防」または「予防すること」は、KHK遺伝子の発現またはKHKタンパク質の産生の低下により利益を得る疾患、障害または症状に対して使用される場合、対象者が、前記疾患、障害または症状に関連する症状、例えばKHK遺伝子発現、KHK活性または高いフルクトース代謝に関する症候または症状を発症する可能性の低下を意味する。メカニズムに限定されることなく、KHKにより触媒されるフルクトースのリン酸化は、フルクトース-1-リン酸を形成させて、ATPおよび細胞内リン酸の枯渇、AMPレベルの増加に至るフィードバック阻害によって制御されず、尿酸産生をもたらすことが知られている。さらに、フルクトース-1-リン酸は、グリセルアルデヒドに代謝されて、アセチルCo-A刺激脂肪酸合成の産生を増加させるクエン酸サイクルへに供給される。高い尿酸および脂肪酸の合成に関連がある疾患および症状は、例えば、肝臓疾患(例えば、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む脂肪性肝炎)、脂質異常症(例えば、高脂血症、高LDLコレステロール、低HDLコレステロール、高トリグリセリド血症、食後高トリグリセリド血症)、血糖コントロールの障害(例えば、インスリンに対する免疫応答に関連しないインスリン耐性、II型糖尿病)、心血管疾患(例えば、高血圧、内皮細胞機能障害)、腎臓病(例えば、急性腎障害、尿細管機能障害、近位尿細管の炎症性変化、慢性腎臓病)、メタボリックシンドローム、脂質沈着または機能障害の疾患(例えば、脂肪細胞機能障害、内臓脂肪沈着、肥満)、高い尿酸の疾患(例えば、高尿酸血症、痛風)および過剰な糖への渇望などの摂食障害である。疾患、障害または症状を発症しないこと、またはこのような疾患、障害または症状に関連した症状または併存疾患の発症を低下させること(例えば、疾患または障害について臨床的に認められた尺度で少なくとも約10%まで)、または症候または症状または疾患進行の出現を数日、数週間、数ヶ月または数年まで遅延することは、有効な予防であるとみなされる。
【0140】
本明細書において使用されるとおり、「ケトヘキソキナーゼに関連する疾病」または「KHK関連疾患」という用語は、KHK遺伝子発現またはKHKタンパク質産生によって引き起こされるか、またはそれに関連がある疾患または障害である。用語「KHK関連疾患」には、KHK遺伝子発現、複製またはタンパク質活性の低下により利益がある疾患、障害または症状を包含する。KHK関連疾患の非制限的な例には、例えば、肝臓疾患(例えば、脂肪肝、脂肪性肝炎、例えば非アルコール性肝炎(NASH))、脂質異常症(例えば、高脂血症、高LDLコレステロール、低LDLコレステロール、高トリグリセリド血症、食後高トリグリセリド血症)、血糖コントロールの障害(例えば、インスリンに対する免疫応答に関連しないインスリン耐性、II型糖尿病)、心血管疾患(例えば、高血圧症、内皮細胞機能障害)、腎臓疾患(例えば、急性腎障害、尿細管機能障害、近位尿細管の炎症性変化、慢性腎臓病)、メタボリックシンドローム、脂質沈着または機能障害の疾患(例えば、脂肪細胞機能障害、内臓脂肪沈着、肥満など)、尿酸上昇の疾患(高尿酸血症、痛風など)および過剰な糖への渇望などの摂食障害が挙げられる。様々な疾患または症状の症候および症候に関するさらなる詳細は、本明細書に提供され、また当分野において周知である。
【0141】
ある実施態様において、KHK関連疾患は、高い尿酸(例えば、高尿酸血症、痛風)と関連している。
【0142】
ある実施態様において、KHK関連疾患は、高い脂質レベル(例えば、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む脂肪性肝炎、脂質異常症)と関連している。
【0143】
本明細書において使用される「治療有効量」とは、KHK関連疾患に罹患している対象に投与される場合、この疾患の治療を行うのに(例えば、存在している疾患あるいは疾患またはその関連する併存症の1以上の症状を、低下、緩和または維持することによって)、十分なiRNAの量を含むことが意図される。「治療有効量」とは、iRNAが投与される方法、疾病およびその重症度、ならびに治療される対象の病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構成、KHK遺伝子発現により媒介される病態形成過程の段階、存在するならば、従前治療または併用治療のタイプおよび他の個体特性に応じて変化し得る。
【0144】
本明細書において使用される「予防的に有効な量」とは、KHK関連疾患の症状をまだ(または、現在のところ)発症していないか、または示していないが、KHK関連疾患に罹患する傾向を有する対象に投与される場合、この疾患または疾患の1つまたは複数の症状の発症または進行を予防または遅延させるのに十分なiRNAの量を含むことが意図される。「予防的に有効な量」とは、iRNAが投与される方法、疾患に罹患する危険度、ならびに治療される患者の病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構成、存在するならば、従前の治療または併用治療のタイプ、および他の個体特性に応じて変化し得る。
【0145】
「治療有効量」または「予防的に有効な量」とは、任意の治療に適用される妥当なベネフィット/リスク比である所望の局所または全身的作用をもたらすiRNAの量も含む。本発明の方法に用いられるiRNAは、このような治療に適用される妥当なベネフィット/リスク比を得るのに十分な量で投与され得る。
【0146】
「薬学的に許容され得る」という語句は、妥当な医学的判断の範囲内で、妥当なベネフィット/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、あるいは他の問題または合併症を伴わずに、ヒト対象および動物対象の組織と接触して使用するのに好適な化合物、材料、組成物または剤形を指すために本明細書において用いられる。
【0147】
本明細書において使用される「薬学的に許容され得る担体」という語句は、身体の1つの器官、または部分から、身体の別の器官、または部分へと対象に化合物を運搬または輸送するのに関与する薬学的に許容され得る材料、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、潤滑剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛またはステアリン酸)、または溶媒封入材料などを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合し、治療される対象に有害でないという意味で「許容でき」なければならない。薬学的に許容され得る担体としての機能し得る材料のいくつかの例としては:(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロース、およびその誘導体;(4)トラガカント粉末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの滑沢剤;(8)カカオ脂および坐薬用ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱性物質除去蒸留水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝液;(21)ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;(22)ポリペプチドおよびアミノ酸などの増量剤;(23)血清アルブミン、HDLおよびLDLなどの血清成分;ならびに(22)医薬製剤に用いられる他の非毒性の適合する物質が挙げられる。
【0148】
本明細書において使用される「試料」という用語は、対象から単離された類似の体液、細胞または組織、ならびに対象中に存在する体液、細胞または組織の集合体を含む。生体体液の例としては、血液、血清および漿液、血漿、脳脊髄液、眼液、リンパ液、尿、唾液などが挙げられる。組織試料は、組織、器官または局所領域から得た試料を含み得る。例えば、試料は、特定の器官、器官の部分またはそれらの器官中の体液または細胞から得られ得る。ある実施態様において、試料は、肝臓(例えば、全肝臓または肝臓の特定の部分、または肝臓中の細胞の特定のタイプ、例えば肝細胞など)から得られてもよい。ある実施態様において、「対象から得られる試料」は、対象から得られた尿を指す。ある実施態様において、「対象から得られる試料」は、対象から得られた血液(血漿または血清に容易に変換され得る)を指す。
【0149】
II.本発明のiRNA
本発明は、KHK遺伝子の発現を阻害するiRNAを提供する。好ましい実施態様において、iRNAは、KHK関連疾患に罹患し易い対象内の細胞、例えば、ヒトなどの哺乳動物内の細胞などにおいてKHK遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を含む。dsRNAi剤は、KHK遺伝子の発現中に形成されるmRNAの少なくとも一部に対して相補的である相補性領域を有するアンチセンス鎖を含む。相補性領域は、約30ヌクレオチド長以下(例えば、約30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19または18ヌクレオチド長以下)である。KHK遺伝子を発現する細胞と接触すると、iRNAは、例えば、PCRまたは分岐鎖DNA(bDNA)に基づく方法、あるいはタンパク質に基づく方法(例えば、ウエスタンブロット法またはフローサイトメトリー技術を用いた免疫蛍光分析などによる)によりアッセイした際に、少なくとも約20%、KHK遺伝子(例えば、ヒト、霊長類、非霊長類または鳥類のKHK遺伝子)の発現を阻害する。好ましい実施態様において、発現の阻害は、実施例2に示されるqPCR法、好ましくは適切な種にマッチした細胞株におけるiRNAの10nMの濃度で、本明細書において示される方法で細胞株に送達することにより決定される。
【0150】
dsRNAは、2本のRNA鎖を含んでおり、この2本のRNA鎖は、相補的であり、dsRNAが使用される条件下で二本鎖構造を形成するようにハイブリダイズする。dsRNAの1本の鎖(アンチセンス鎖)は、標的配列に対して実質的に相補的、一般には完全に相補的な相補性領域を含む。標的配列は、KHK遺伝子の発現中に形成されるmRNAの配列から得られる得る。他方の鎖(センス鎖)は、アンチセンス鎖と相補的な領域を含んでおり、そのため2本の鎖がハイブリダイズして、好適な条件下で組み合わされた際に二本鎖構造を形成する。本明細書のいずれかの箇所に記載されるとおり、また当該技術分野において公知のとおり、dsRNAの相補的配列は、別々のオリゴヌクレオチド上にあるのではなく、1つの核酸分子の自己相補性領域として含まれることも可能である。
【0151】
一般に、二本鎖構造は、15~30個の塩基対の長さ、例えば、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23または21~22塩基対の長さである。上記範囲および長さの中間の範囲および長さも、本発明の一部であると考えられる。
【0152】
同様に、標的配列の相補性領域は、15~30個のヌクレオチド長、例えば、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23または21~22ヌクレオチド長である。上記範囲および長さの中間の範囲および長さも、本発明の一部であると考えられる。
【0153】
ある実施態様において、dsRNAは、約15~約23個のヌクレオチド長、または約25~約30個のヌクレオチド長である。一般に、dsRNAは、ダイサー酵素のための基質としての役割を果たすのに十分に長い。例えば、約21~23個のヌクレオチド長より長いdsRNAがダイサーのための基質としての役割を果たし得ることは当該技術分野において周知である。当業者も認識するであろうが、切断のために標的化されたRNAの領域は、殆どの場合、より大きいRNA分子(mRNA分子であることが多い)の一部である。関連する場合、mRNA標的の「一部」は、RNAi特異的切断(即ち、RISC経路を介した切断)のための基質として存在できるほど十分な長さのmRNA標的の連続する配列である。
【0154】
二本鎖領域が、dsRNAの一次機能部分、例えば、約9~約36塩基対、例えば、約10~36、11~36、12~36、13~36、14~36、15~36、9~35、10~35、11~35、12~35、13~35、14~35、15~35、9~34、10~34、11~34、12~34、13~34、14~34、15~34、9~33、10~33、11~33、12~33、13~33、14~33、15~33、9~32、10~32、11~32、12~32、13~32、14~32、15~32、9~31、10~31、11~31、12~31、13~32、14~31、15~31、15~30、15~29、15~28、15~27、15~26、15~25、15~24、15~23、15~22、15~21、15~20、15~19、15~18、15~17、18~30、18~29、18~28、18~27、18~26、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、18~20、19~30、19~29、19~28、19~27、19~26、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~30、20~29、20~28、20~27、20~26、20~25、20~24、20~23、20~22、20~21、21~30、21~29、21~28、21~27、21~26、21~25、21~24、21~23または21~22塩基対であることも当業者は認識するであろう。そのため、一実施態様において、所望のRNAを切断のために標的とする機能性二本鎖、例えば15~30塩基対にプロセシングされる程度まで、30塩基対を超える二本鎖領域を有するRNA分子またはRNA分子複合体は、dsRNAである。したがって、当業者は、一実施態様において、miRNAがdsRNAであることを認識するであろう。別の実施態様において、dsRNAは、天然miRNAではない。別の実施態様において、KHKの発現を標的とするのに有用なiRNA剤は、より大きいdsRNAの切断によって標的細胞中で生成されない。
【0155】
本明細書に記載されるdsRNAは、1つまたは複数の一本鎖ヌクレオチドオーバーハング、例えば、1~4、2~4、1~3、2~3、1、2、3または4つのヌクレオチドを更に含み得る。少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを有するdsRNAは、その平滑末端の同等物と比べて優れた阻害特性を有し得る。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシヌクレオチド/ヌクレオシドを含むヌクレオチド/ヌクレオシドアナログを含むか、またはそれらから構成され得る。オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖またはそれらの任意の組み合わせ上にあり得る。更に、オーバーハングのヌクレオチドは、dsRNAのアンチセンス鎖またはセンス鎖の5'末端、3'末端または両方の末端上に存在し得る。
【0156】
ある実施態様において、センス鎖またはアンチセンス鎖、またはその両方の鎖上のオーバーハングは、10個のヌクレオチドよりも伸長した長さ、例えば、10~30個のヌクレオチド、10~25個のヌクレオチド、10~20個のヌクレオチドまたは10~15個のヌクレオチドよりも伸長した長さを含むことができる。ある実施態様において、伸長されたオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖上に存在する。特定の実施態様において、伸長されたオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖の3'末端上に存在する。ある実施態様において、伸長されたオーバーハングは、二本鎖のセンス鎖の5'末端に存在する。ある実施態様において、伸長されたオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖上に存在する。ある実施態様において、伸長されたオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖の3'末端上に存在する。ある実施態様において、伸長されたオーバーハングは、二本鎖のアンチセンス鎖の5'末端上に存在する。ある実施態様において、伸長されたオーバーハング中のヌクレオチドのうちの1つ以上は、ヌクレオシドチオリン酸で置換されている。
【0157】
dsRNAは、例えば、自動DNA合成装置(例えば、Biosearch, Applied Biosystems,Inc.から市販されているものなど)を使用して、更に説明されるが当該技術分野において公知の標準方法によって合成され得る。
【0158】
本発明の二本鎖RNAi化合物は、2工程の手順を用いて製造され得る。まず、二本鎖RNA分子の個々の鎖が別々に製造される。次に、構成要素の鎖がアニーリングされる。siRNA化合物の個々の鎖は、溶液相または固相有機合成または両方を用いて調製され得る。有機合成は、非天然または修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド鎖が容易に調製され得るという利点を提供する。同様に、本発明の一本鎖オリゴヌクレオチドは、溶液相または固相有機合成または両方を用いて製造され得る。
【0159】
一態様において、本発明のdsRNAは、少なくとも2つのヌクレオチド配列、センス配列およびアンチセンス配列を含む。センス鎖は、表3および5に示される配列の群から選択され、センス鎖の対応するアンチセンス鎖は、表3および5に示される配列の群から選択される。この態様において、2つの配列の一方が2つの配列の他方に相補的であり、配列の一方が、KHK遺伝子の発現中に生成されるmRNAの配列に実質的に相補的である。したがって、この態様では、dsRNAは、2つのオリゴヌクレオチドを含むことになり、ここで1つのオリゴヌクレオチドが、表3または5のセンス鎖として表され、第2のオリゴヌクレオチドが、表3または5のセンス鎖の対応するアンチセンス鎖として表される。ある実施態様において、dsRNAの実質的に相補的な配列は、別個のオリゴヌクレオチドに含まれる。別の実施態様において、dsRNAの実質的に相補的な配列は、1つのオリゴヌクレオチドに含まれる。
【0160】
表3の配列は、修飾配列または結合配列として記載されていないが、本発明のiRNAのRNA、例えば本発明のdsRNAが、修飾またはコンジュゲートされた表3に記載された配列、または修飾またはコンジュゲートされていない表5に記載された配列のいずれか1つを含んでもよいことは理解されるであろう。言い換えれば、本発明は、本明細書に記載されているような、修飾されていない、コンジュゲートされていない、修飾および/または結合された表3および表5に記載のdsRNAを含む。
【0161】
当業者は、約20~23個の塩基対、例えば、21個の塩基対の二本鎖構造を有するdsRNAが、RNA干渉を誘導するのに特に有効であることが認められたことを十分に認識している(Elbashir et al., EMBO 2001, 20:6877-6888)。しかし、他の当業者が、より短いか、またはより長いRNA二本鎖構造も有効であり得ることを見出した(Chu and Rana (2007) RNA 14:1714-1719;Kim et al. (2005) Nat Biotech 23:222-226)。上記の実施態様において、表3および5の1つに示されるオリゴヌクレオチド配列の性質によって、本明細書に記載されるdsRNAは、最小で21ヌクレオチド長の少なくとも1本の鎖を含み得る。一端または両端におけるごくわずかな数のヌクレオチドを差し引いた表3および5の配列のうちの1つを有するより短い二本鎖が、上記のdsRNAと比較して、同様に有効であり得ることが当然予測され得る。従って、表3および5に示される配列のうちの1つから得られる、少なくとも15、16、17、18、19、20またはそれ以上の連続するヌクレオチド配列を有するdsRNAであって、KHK遺伝子の発現を阻害する能力が、完全な配列を含むdsRNAと、約5、10、15、20、25または30%以下の阻害%が異なるdsRNAが、本発明の範囲内にあるものと考えられる。
【0162】
さらに、表3および5に示されるRNAは、RISCを介した切断を受けやすいKHK転写物中の部位を特定する。したがって、本発明は、これらの部位のうちの1つ以内を標的とするiRNAを更に取り上げる。本明細書に使用されるとおり、iRNAが、その特定の部位内のいずれかの箇所で転写物の切断を促す場合、iRNAは、RNA転写物の特定の部位内を標的とするといえる。このようなiRNAは、一般に、KHK遺伝子中の選択された配列に隣接する領域から得られた更なるヌクレオチド配列に結合された、表3および5に示される配列のうちの1つからの少なくとも約15個の連続するヌクレオチドを含むであろう。
【0163】
標的配列は、一般に、約15~30個のヌクレオチド長であるが、任意の所与の標的RNAの切断を導くために、この範囲内の特定の配列の適合性は様々である。本明細書に記載される様々なソフトウェアパッケージおよび指針は、任意の所与の遺伝子標的に対して最適な標的配列を同定するための指針を提供するが、所与のサイズ(非限定的な例として、21ヌクレオチド)の「ウインドウ」または「マスク」を、標的RNA配列上に文字通りまたは比喩的に(例えば、インシリコを含む)配置して、標的配列としての役割を果たし得るサイズ範囲内に入る配列を同定するという経験的手法を取ることもできる。可能性のある配列の完全なセットが、選択された任意の所与の標的サイズについて同定されるまで、最初の標的配列位置の1つのヌクレオチドの上流または下流へと徐々に配列「ウインドウ」を移動させることによって、次の可能性のある標的配列を同定することができる。このプロセスは、最適に機能する配列を同定するために(本明細書に記載されるかまたは当該技術分野において公知のアッセイを用いて)同定した配列の系統的合成および試験とともに、iRNA剤を用いて標的化されるときに、標的遺伝子の発現の最良の阻害を仲介するRNA配列を同定することができる。したがって、同定された配列、例えば、表3および5における同定された配列が、有効な標的配列を表すが、同等またはより良好な阻害特性を有する配列を同定するために、所与の配列の1つのヌクレオチド上流または下流へと徐々に「ウインドウを移動させる」ことによって、阻害効率の更なる最適化が達成され得ると考えられる。
【0164】
さらに、例えば、表3および5において同定された任意の配列について、より長い配列またはより短い配列を生成するためにヌクレオチドを系統的に追加または除去し、より長いまたは短いサイズのウインドウをその位置から標的RNAの上方または下方に移動させることによって生成される配列を試験することによって、更なる最適化が達成され得ると考えられる。また、当該技術分野において公知のおよび/または本明細書に記載される阻害アッセイにおいて、新規な候補標的を生成するためのこの手法を、それらの標的配列に基づいたiRNAの有効性の試験と結び付けることで、阻害の効率が更に向上され得る。更にまた、このような最適化された配列は、例えば、本明細書に記載されるかまたは当該技術分野において公知の修飾ヌクレオチドの導入、オーバーハングの追加または変更、あるいは発現阻害因子として分子を更に最適化するための当該技術分野において公知のおよび/または本明細書に説明される別の修飾(例えば、血清安定性または循環半減期の増加、熱安定性の増加、膜透過送達の向上、特定の位置または細胞型への標的化、サイレンシング経路酵素との相互作用の増加、エンドソームからの放出の増加)によって調整され得る。
【0165】
本明細書に記載されるiRNAは、標的配列との1つまたは複数のミスマッチを含み得る。一実施態様において、本明細書に記載されるiRNAは、3つ以下のミスマッチを含む。iRNAのアンチセンス鎖が、標的配列とのミスマッチを含む場合、ミスマッチの領域が相補性領域の中心に位置しないのが好ましい。iRNAのアンチセンス鎖が標的配列とのミスマッチを含む場合、ミスマッチは、相補性領域の5'末端または3'末端のいずれかからの最後の5つのヌクレオチド内に存在が制限されているのが好ましい。例えば、23個のヌクレオチドのiRNA剤について、KHK遺伝子の領域に相補的な鎖は、一般に、中央の13個のヌクレオチド内にミスマッチを全く含まない。本明細書に記載される方法または当該技術分野において公知の方法を用いて、標的配列とのミスマッチを含むiRNAがKHK遺伝子の発現を阻害するのに有効であるかどうかを決定することができる。KHK遺伝子の発現を阻害する際のミスマッチを有するiRNAの有効性を考慮することは、特に、KHK遺伝子における特定の相補性領域が集団内に多型配列変異を有することが分かっている場合に重要である。
【0166】
II.本発明の修飾iRNA
ある実施態様において、本発明のiRNAのRNA、例えば、dsRNAは、修飾されておらず、例えば、当該技術分野において公知のおよび本明細書に記載される化学修飾および/またはコンジュゲートを含まない。別の実施態様において、本発明のiRNAのRNA、例えば、dsRNAは、安定性または他の有益な特性を向上させるために化学的に修飾されている。本発明のある実施態様において、本発明のiRNAのヌクレオチドの実質的に全てが修飾される。本発明の別の実施態様において、iRNAのヌクレオチドの全てが修飾されるか、またはiRNAのヌクレオチドの実質的に全てが修飾される、即ち5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下または1つ以下の非修飾ヌクレオチドが、iRNAの鎖内に存在している。
【0167】
本発明に関する核酸は、参照により本明細書に援用される"Current protocols in nucleic acid chemistry," Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されるものなどの当該技術分野において十分に確立された方法によって合成または修飾され得る。修飾としては、例えば、末端修飾、例えば、5'末端修飾(リン酸化、コンジュゲート、逆結合)または3'末端修飾(コンジュゲート、DNAヌクレオチド、逆結合など);塩基修飾、例えば、安定塩基、不安定塩基または広範なパートナーと塩基対合する塩基による置換、塩基の除去(非塩基性ヌクレオチド)またはコンジュゲート塩基;糖修飾(例えば、2'位または4'位で)または糖の置換;または骨格修飾、例えば、ホスホジエステル結合の修飾または置換などが挙げられる。本明細書に記載される実施態様に有用なiRNA化合物の具体例としては、限定はされないが、修飾された骨格を含むRNAまたは天然のヌクレオシド間結合を含まないRNAが挙げられる。修飾された骨格を有するRNAとしては、特に、骨格中にリン原子を有さないものが挙げられる。本明細書の目的のために、また当該技術分野において時折言及されるように、ヌクレオシド間骨格中にリン原子を含まない修飾RNAは、オリゴヌクレオシドであるとみなすことも可能である。ある実施態様において、修飾iRNAは、そのヌクレオシド間骨格中にリン原子を有する。
【0168】
修飾RNA骨格としては、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルホスホネートおよび他のアルキルホスホネート(例えば、3'-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネート)、ホスフィネート、ホスホロアミデート(例えば、3'-アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデート)、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、通常の3'-5'結合を有するボラノホスフェート、これらの2'-5'結合アナログならびにヌクレオシド単位の隣接する対が3'-5'~5'-3'または2'-5'~5'-2'に結合している反転極性を有するものが挙げられる。様々な塩、混合塩および遊離酸形態も含まれる。
【0169】
上記のリン含有結合の製造を教示する代表的な米国特許としては、限定はされないが、米国特許第3,687,808号明細書;同第4,469,863号明細書;同第4,476,301号明細書;同第5,023,243号明細書;同第5,177,195号明細書;同第5,188,897号明細書;同第5,264,423号明細書;同第5,276,019号明細書;同第5,278,302号明細書;同第5,286,717号明細書;同第5,321,131号明細書;同第5,399,676号明細書;同第5,405,939号明細書;同第5,453,496号明細書;同第5,455,233号明細書;同第5,466,677号明細書;同第5,476,925号明細書;同第5,519,126号明細書;同第5,536,821号明細書;同第5,541,316号明細書;同第5,550,111号明細書;同第5,563,253号明細書;同第5,571,799号明細書;同第5,587,361号明細書;同第5,625,050号明細書;同第6,028,188号明細書;同第6,124,445号明細書;同第6,160,109号明細書;同第6,169,170号明細書;同第6,172,209号明細書;同第6,239,265号明細書;同第6,277,603号明細書;同第6,326,199号明細書;同第6,346,614号明細書;同第6,444,423号明細書;同第6,531,590号明細書;同第6,534,639号明細書;同第6,608,035号明細書;同第6,683,167号明細書;同第6,858,715号明細書;同第6,867,294号明細書;同第6,878,805号明細書;同第7,015,315号明細書;同第7,041,816号明細書;同第7,273,933号明細書;同第7,321,029号明細書;および米国再発行特許第RE39464号明細書が挙げられ、これら各々の全ての内容が、援用により本明細書に組み込まれる。
【0170】
内部にリン原子を含まない修飾RNA骨格は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つまたは複数の短鎖ヘテロ原子または複素環式ヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらとしては、モルホリノ結合(一部がヌクレオシドの糖部分から形成された)を有するもの;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに混合N、O、SおよびCH2構成要素部分を有する他のものが挙げられる。
【0171】
上記のオリゴヌクレオシドの製造を教示する代表的な米国特許としては、限定はされないが、米国特許第5,034,506号明細書;同第5,166,315号明細書;同第5,185,444号明細書;同第5,214,134号明細書;同第5,216,141号明細書;同第5,235,033号明細書;同第5,64,562号明細書;同第5,264,564号明細書;同第5,405,938号明細書;同第5,434,257号明細書;同第5,466,677号明細書;同第5,470,967号明細書;同第5,489,677号明細書;同第5,541,307号明細書;同第5,561,225号明細書;同第5,596,086号明細書;同第5,602,240号明細書;同第5,608,046号明細書;同第5,610,289号明細書;同第5,618,704号明細書;同第5,623,070号明細書;同第5,663,312号明細書;同第5,633,360号明細書;5,677,437号明細書;および同第5,677,439号明細書が挙げられ、これら各々の全ての内容が、援用により本明細書に組み込まれる。
【0172】
適切なRNA模倣体が、iRNAにおける使用のために考えられ、ここで糖およびヌクレオシド間結合の両方、即ち、ヌクレオチド単位の骨格が、新規な基で置換される。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されている、このようなオリゴマー化合物の1つであるRNA模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物において、RNAの糖骨格が、アミド含有骨格、特に、アミノエチルグリシン骨格で置換される。核酸塩基は、保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合される。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許としては、限定はされないが、米国特許第5,539,082;同第5,714,331号明細書;および同第5,719,262号明細書が挙げられ、これら各々の全ての内容が、援用により本明細書に組み込まれる。本発明のiRNAに使用するのに好適な更なるPNA化合物は、例えば、Nielsen et al., Science, 1991, 254, 1497-1500に記載されている。
【0173】
本発明に取り上げられるある実施態様は、ホスホロチオエート骨格を有するRNAおよびヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオシドを含み、特に、上記米国特許第5,489,677号明細書に関する--CH2--NH--CH2-、--CH2--N(CH3)--O--CH2--[メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られている]、--CH2--O--N(CH3)--CH2--、--CH2--N(CH3)--N(CH3)--CH2--および--N(CH3)--CH2--CH2--[式中、天然のホスホジエステル骨格は、--O--P--O--CH2--として表される]、上記米国特許第5,602,240号明細書のアミド骨格を含む。ある実施態様において、本明細書に取り上げられるRNAは、上記米国特許第5,034,506号明細書のモルホリノ骨格構造を有する。
【0174】
修飾RNAは、1つまたは複数の置換された糖部分も含有し得る。本明細書に取り上げられるiRNA、例えば、dsRNAは、2'位において、OH;F;O-、S-またはN-アルキル;O-、S-またはN-アルケニル;O-、S-またはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキルのうちの1つを含むことができ、ここで該アルキル、該アルケニルおよび該アルキニルは、置換または非置換のC1~C10アルキルまたはC2~C10アルケニルおよびアルキニルであり得る。適切な修飾の例は、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2を含んでおり、式中、nおよびmが、1~約10である。別の実施態様において、dsRNAは、2'位において、C1~C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、挿入基、iRNAの薬力学的特性を改善する基またはiRNAの薬物動態特性を向上させる基、および同様の特性を有する別の置換基のうちの1つを含む。ある実施態様において、修飾は、2'-メトキシエトキシ(2'-O-(2-メトキシエチル)または2'-MOEとしても知られている2'-O--CH2CH2OCH3)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78:486-504)、即ち、アルコキシ-アルコキシ基を含む。別の修飾の例は、本明細書において以下の実施例に記載される、2'-DMAOEとしても知られている2'-ジメチルアミノオキシエトキシ、即ち、O(CH2)2ON(CH3)2基、および2'-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野において、2'-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2'-DMAEOEとしても知られている)、即ち、2'-O--CH2--O--CH2--N(CH2)2である。更なる修飾の例には、以下のものが含まれる:5'-Me-2'-Fヌクレオチド、5'-Me-2'-OMeヌクレオチド、5'-Me-2'-デオキシヌクレオチド(これらの3つのファミリーの中で、RおよびSアイソマーの両方);2'-アルコキシアルキル;および2'-NMA(N-メチルアセトアミド)。
【0175】
別の修飾は、2'-メトキシ(2'-OCH3)、2'-アミノプロポキシ(2'-OCH2CH2CH2NH2)および2'-フルオロ(2'-F)を含む。同様の修飾を、iRNAのRNAにおける他の位置、特に3'末端ヌクレオチド上または2'-5'結合dsRNA中の糖の3'位および5'末端ヌクレオチドの5'位で行うこともできる。iRNAは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体も有し得る。このような修飾された糖構造の調製を教示する代表的な米国特許としては、限定はされないが、米国特許第4,981,957号明細書;同第5,118,800号明細書;同第5,319,080号明細書;同第5,359,044号明細書;同第5,393,878号明細書;同第5,446,137号明細書;同第5,466,786号明細書;同第5,514,785号明細書;同第5,519,134号明細書;同第5,567,811号明細書;同第5,576,427号明細書;同第5,591,722号明細書;同第5,597,909号明細書;同第5,610,300号明細書;同第5,627,053号明細書;同第5,639,873号明細書;同第5,646,265号明細書;同第5,658,873号明細書;同第5,670,633号明細書;および同第5,700,920号明細書が挙げられ、これらのうちのいくつかは、本出願と権利者が同一である。これら各々の全ての内容が、援用により本明細書に組み込まれる。
【0176】
iRNAは、核酸塩基(当該技術分野において多くの場合、単に「塩基」と称される)修飾または置換も含み得る。本明細書において使用される際、「非修飾」または「天然」核酸塩基は、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、並びにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。修飾核酸塩基は、デオキシ-チミン(dT)、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニンならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンなどの別の合成および天然核酸塩基を含む。更なる核酸塩基としては、米国特許第3,687,808号明細書に開示されるもの;Modified Nucleosides in Biochemistry, Biotechnology and Medicine, Herdewijn, P. ed. Wiley-VCH, 2008に開示されるもの;The Concise Encyclopedia of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. L, ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されているもの、これらはEnglisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613に開示されている;およびSanghvi, Y S., Chapter 15, dsRNA Research and Applications, pages 289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., Ed., CRC Press, 1993に開示されるものが挙げられる。これらの核酸塩基のいくつかは、本発明に取り上げられるオリゴマー化合物の結合親和性を高めるのに特に有用である。これらとしては、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンおよびN-2、N-6および0-6置換プリンが挙げられる。5-メチルシトシン置換基は、核酸二本鎖安定性を0.6~1.2℃上昇させることが示されており(Sanghvi, Y. S., Crooke, S. T. and Lebleu, B., Eds., dsRNA Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、これは典型的な塩基置換であって、特に2'-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わされる場合は尚更である。
【0177】
上記の修飾された核酸塩基ならびに他の修飾された核酸塩基のいくつかの製造を教示する代表的な米国特許としては、限定はされないが、上記の米国特許第3,687,808号明細書、同4,845,205号明細書;同5,130,30号明細書;同5,134,066号明細書;同5,175,273号明細書;同5,367,066号明細書;同5,432,272号明細書;同5,457,187号明細書;同5,459,255号明細書;同5,484,908号明細書;同5,502,177号明細書;同5,525,711号明細書;同5,552,540号明細書;同5,587,469号明細書;同5,594,121号明細書、同5,596,091号明細書;同5,614,617号明細書;同5,681,941号明細書;同5,750,692号明細書;同6,015,886号明細書;同6,147,200号明細書;同6,166,197号明細書;同6,222,025号明細書;同6,235,887号明細書;同6,380,368号明細書;同6,528,640号明細書;同6,639,062号明細書;同6,617,438号明細書;同7,045,610号明細書;同7,427,672号明細書;および同第7,495,088号明細書が挙げられ、これら各々の全ての内容が、援用により本明細書に組み込まれる。
【0178】
iRNAのRNAは、1つまたは複数のロック核酸(LNA)を含むようにも修飾され得る。ロック核酸は、修飾されたリボース部分を有するヌクレオチドであり、リボース部分は、2'および4'炭素を結合する追加の架橋を含む。この構造は、3'末端の構造的立体配置におけるリボースを効果的に「固定する(ロックする)」。siRNAにロック核酸を加えると、血清中のsiRNA安定性が増加し、オフターゲット効果が低下することが示されている(Elmen, J. et al., (2005) Nucleic Acids Research 33(1):439-447;Mook, OR. et al., (2007) Mol Canc Ther 6(3):833-843;Grunweller, A. et al., (2003) Nucleic Acids Research 31(12):3185-3193)。
【0179】
ある実施態様において、本発明のiRNAは、UNA(アンロック核酸:unlocked nucleic acid)ヌクレオチであるヌクレオチドの1つまたは複数のモノマーを含む。UNAは、非環式のアンロック核酸であって、いずれの糖結合も除かれて、アンロック「糖」残基を形成する。一つの例において、UNAは、C1'-C4'間の結合(すなわち、C1'とC4'間の共有結合である炭素-酸素-炭素結合)が除かれたモノマーも含む。別の例において、糖のC2'-C3'結合(すなわち、C2'とC3'炭素間の共有結合である炭素-炭素結合)が除去されている(Nuc. Acids Symp. Series, 52, 133-134 (2008) and Fluiter et al., Mol. Biosyst., 2009, 10, 1039を参照されたい;出典明示により、本明細書に組み込まれる)。
【0180】
UNAの調製を教示する代表的な米国特許公報としては、限定はされないが、米国特許第8,314,227号明細書;および米国特許出願公開第2013/0096289号明細書;同第2013/0011922号明細書;および同第2011/0313020号明細書が挙げられ、これら各々の全ての内容が、援用により本明細書に組み込まれる。
【0181】
iRNAのRNAは、1つまたは複数の二環式糖部分を含むように修飾され得る。「二環式糖」は、2個の原子の架橋によって修飾されたフラノシル環である。「二環式ヌクレオシド」(「BNA」)は、糖環の2個の炭素原子を結合して、それにより二環式環系を形成する架橋を含む糖部分を有するヌクレオシドである。ある実施態様において、架橋は、糖環の4'-炭素および2'-炭素を結合する。したがって、ある実施態様において、本発明の剤は、1つまたは複数のロック核酸(LNA:locked nucleic acid)を含み得る。ロック核酸は、修飾されたリボース部分を有するヌクレオチドであり、該リボース部分は、2'および4'炭素を結合する追加の架橋を含む。言い換えると、LNAは、4'-CH2-O-2'架橋を含む二環式糖部分を含むヌクレオチドである。この構造は、3'-末端構造の立体配置におけるリボースを効果的に「固定(ロック)する」。siRNAにロック核酸を加えると、血清中のsiRNA安定性が増加し、オフターゲット効果が低下することが示されている(Elmen, J.et al., (2005) Nucleic Acids Research 33(1):439-447;Mook, OR.et al., (2007) Mol Canc Ther 6(3):833-843;Grunweller, A.et al.,(2003) Nucleic Acids Research 31(12):3185-3193)。本発明のポリヌクレオチドに使用するための二環式ヌクレオシドの例としては、限定はされないが、4'および2'リボシル環原子の間の架橋を含むヌクレオシドが挙げられる。ある実施態様において、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド剤としては、4'-2'架橋を含む1つまたは複数の二環式ヌクレオシドが挙げられる。このような4'-2'架橋二環式ヌクレオシドの例としては、限定はされないが、4'-(CH2)-O-2'(LNA);4'-(CH2)-S-2';4'-(CH2)2-O-2'(ENA);4'-CH(CH3)-O-2'(「拘束エチル」または「cEt」とも呼ばれる)および4'-CH(CH2OCH3)-O-2'(およびそのアナログ;例えば、米国特許第7,399,845合明細書を参照);4'-C(CH3)(CH3)-O-2'(およびそのアナログ;例えば、米国特許第8,278,283号明細書を参照);4'-CH2-N(OCH3)-2'(およびそのアナログ;例えば、米国特許第8,278,425号明細書を参照);4'-CH2-O-N(CH3)-2'(例えば、米国特許出願公開第2004/0171570号明細書を参照);4'-CH2-N(R)-O-2'(ここで、Rが、H、C1-C12アルキルである)または保護基(例えば、米国特許第7,427,672号明細書を参照);4'-CH2-C(H)(CH3)-2'(例えば、Chattopadhyaya et al., J.Org. Chem., 2009, 74, 118-134を参照);および4'-CH2-C(=CH2)-2'(およびそのアナログ;例えば、米国特許第8,278,426号明細書を参照されたい)が挙げられる。これら各々の全ての内容が、援用により本明細書に組み込まれる。
【0182】
ロック核酸ヌクレオチドの調製を教示する更なる代表的な米国特許および米国特許公報としては、限定はされないが、米国特許第6,268,490号明細書;同6,525,191号明細書;同6,670,461号明細書;同6,770,748号明細書;同6,794,499号明細書;同6,998,484号明細書;同7,053,207号明細書;同7,034,133号明細書;同7,084,125号明細書;同7,399,845号明細書;同7,427,672号明細書;同7,569,686号明細書;同7,741,457号明細書;同8,022,193号明細書;同8,030,467号明細書;同8,278,425号明細書;同8,278,426号明細書;同8,278,283号明細書;米国特許出願公開第2008/0039618号明細書;および米国特許出願公開第2009/0012281号明細書が挙げられ、これら各々の全ての内容が、援用により本明細書に組み込まれる。
【0183】
例えば、α-L-リボフラノースおよびβ-D-リボフラノースを含む1つまたは複数の立体化学的な糖配置を有する上記の二環式ヌクレオシドのいずれかが調製され得る(国際公開第99/14226号パンフレットを参照)。
【0184】
iRNAのRNAは、1つまたは複数の拘束エチルヌクレオチドを含むようにも修飾され得る。本明細書において使用されるとおり、「拘束エチルヌクレオチド」または「cEt」は、4'-CH(CH3)-O-2'架橋を含む二環式糖部分を含むロック核酸である。一実施態様において、拘束エチルヌクレオチドは、本明細書において「S-cEt」と呼ばれるS立体配置にある。
【0185】
本発明のiRNAは、1つまたは複数の「立体配座的に拘束されたヌクレオチド」(「CRN」)も含み得る。CRNは、リボースのC2'およびC4'炭素またはリボースのC3および-C5'炭素を結合するリンカーを有するヌクレオチドアナログである。CRNは、リボース環を安定した立体配置へと固定し、mRNAに対するハイブリダイゼーションの親和性を高める。リンカーは、酸素を安定性および親和性のために最適な位置に配置するのに十分な長さを有し、リボース環の歪み(puckering)を少なくする。
【0186】
上記のCRNのいくつかの調製を教示する代表的な公報としては、限定はされないが、米国特許出願公開第2013/0190383号明細書;およびPCT公報の国際公開第2013/036868号パンフレットが挙げられ、これら各々の全ての内容が、援用により本明細書に組み込まれる。
【0187】
RNA分子の末端に対する潜在的に安定した修飾は、N-(アセチルアミノカプロイル)-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6-NHAc)、N-(カプロイル-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6)、N-(アセチル-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-NHAc)、チミジン-2'-O-デオキシチミジン(エーテル)、N-(アミノカプロイル)-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6-アミノ)、2-ドコサノイル-ウリジン-3”-ホスフェート、逆方向塩基dT(idT)などを含み得る。この修飾の開示は、PCT公開番号国際公開第2011/005861号パンフレットに見られる。
【0188】
本発明のiRNAのヌクレオチドの他の修飾には、5'ホスフェートまたは5'ホスフェート模倣体、例えば、iRNAのアンチセンス鎖上の5'末端ホスフェートまたはホスフェート模倣体が含まれる。適切なリン酸塩模倣体は、例えば米国特許公開第2012/0157511号に開示されており、その内容の全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【0189】
A.本発明のモチーフを含む修飾iRNA
本発明のある態様において、本発明の二本鎖iRNA剤としては、例えば、WO2013/075035(この全内容が、参照により本明細書に組み込まれる)に開示される化学修飾を有する薬剤が挙げられる。WO2013/075035は、dsRNAi剤のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖中、特に、切断部位またはその近傍に、3つの連続するヌクレオチド上に3つの同じ修飾のモチーフを提供する。ある実施態様において、dsRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、あるいは完全に修飾されてもよい。これらのモチーフの導入により、存在する場合は、センス鎖またはアンチセンス鎖の修飾パターンが中断される。DsRNAi剤は、例えば、センス鎖上で、GalNAc誘導体リガンドと、所望によりコンジュゲートされていてもよい。
【0190】
より具体的には、二本鎖RNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖が、dsRNAi剤の少なくとも1つの鎖の切断部位またはその近傍に3つの連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つまたは複数のモチーフを有するように完全に修飾された場合、dsRNAi剤の遺伝子サイレンシング活性が見られた。
【0191】
従って、本発明は、標的遺伝子(即ち、KHK遺伝子)の発現をインビボで阻害できる二本鎖RNAi剤を提供する。RNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む。RNAi剤の各鎖は、独立して、12~30個のヌクレオチド長であってよい。例えば、各鎖は、独立して、14~30個のヌクレオチド長、17~30個のヌクレオチド長、25~30個のヌクレオチド長、27~30個のヌクレオチド長、17~23個のヌクレオチド長、17~21個のヌクレオチド長、17~19個のヌクレオチド長、19~25個のヌクレオチド長、19~23個のヌクレオチド長、19~21個のヌクレオチド長、21~25個のヌクレオチド長または21~23個のヌクレオチド長であり得る。
【0192】
センス鎖およびアンチセンス鎖は、通常、本明細書において「dsRNAi剤」とも呼ばれる二本鎖RNA(「dsRNA」)を形成する。dsRNAi剤の二本鎖領域は、12~30個のヌクレオチド対長であり得る。例えば、二本鎖領域は、14~30個のヌクレオチド対長、17~30個のヌクレオチド対長、27~30個のヌクレオチド対長、17~23個のヌクレオチド対長、17~21個のヌクレオチド対長、17~19個のヌクレオチド対長、19~25個のヌクレオチド対長、19~23個のヌクレオチド対長、19~21個のヌクレオチド対長、21~25個のヌクレオチド対長、または21~23個のヌクレオチド対長であり得る。別の例では、二本鎖領域は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26および27個のヌクレオチド長から選択される。
【0193】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、1つまたは両方の鎖の3'末端、5'末端、または両方の末端において1つまたは複数のオーバーハング領域またはキャッピング基を含み得る。オーバーハングは、独立して、1~6個のヌクレオチド長、例えば、2~6個のヌクレオチド長、1~5個のヌクレオチド長、2~5個のヌクレオチド長、1~4個のヌクレオチド長、2~4個のヌクレオチド長、1~3個のヌクレオチド長、2~3個のヌクレオチド長または1~2個のヌクレオチド長であり得る。ある実施態様において、オーバーハング領域は、上記に示されるような伸長されたオーバーハング領域を含むことができる。オーバーハングは、1つの鎖が他の鎖より長い結果であるか、または同じ長さの2つの鎖が互い違いになっている結果である可能性がある。オーバーハングは、標的mRNAとのミスマッチを形成し得るか、またはオーバーハングは、標的とされる遺伝子配列に相補的であり得るか、または別の配列であり得る。第1および第2の鎖もまた、例えば、ヘアピンを形成するように別の塩基によって、または他の非塩基リンカーによっても結合され得る。
【0194】
ある実施態様において、dsRNAi剤のオーバーハング領域中のヌクレオチドは、各々独立して、以下に限定するものではないが、2'-F、2'-Oメチル、チミジン(T)、2'-O-メトキシエチル-5-メチルウリジン(Teo)、2'-O-メトキシエチルアデノシン(Aeo)、2'-O-メトキシエチル-5-メチルシチジン(m5Ceo)およびそれらの任意の組み合わせなどの2'-糖修飾を含んでおり、修飾または非修飾ヌクレオチドであり得る。例えば、TTは、いずれかの鎖上のいずれかの末端のためのオーバーハング配列であり得る。オーバーハングは、標的mRNAとのミスマッチを形成し得るか、またはオーバーハングは、標的とされる遺伝子配列に相補的であり得るか、または別の配列であり得る。
【0195】
dsRNAi剤のセンス鎖、アンチセンス鎖または両方の鎖における5'-または3'-オーバーハングは、リン酸化されてもよい。ある実施態様において、オーバーハング領域は、2つのヌクレオチド間にホスホロチオエートを有する2つのヌクレオチドを含み、ここで2つのヌクレオチドは、同じかまたは異なり得る。ある実施態様において、オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖または両方の鎖の3'末端に存在する。ある実施態様において、この3'-オーバーハングは、アンチセンス鎖中に存在する。ある実施態様において、この3'-オーバーハングは、センス鎖中に存在する。
【0196】
dsRNAi剤は、その全体的安定性に影響を与えずに、RNAiの干渉活性を強化し得る1つのオーバーハングのみを含んでいてもよい。例えば、一本鎖オーバーハングは、センス鎖の3'末端またはアンチセンス鎖の3'末端に位置してもよい。RNAiは、アンチセンス鎖の5'末端(または、センス鎖の3'末端)に位置するか、またはその反対に位置する平滑末端を有していてもよい。一般に、dsRNAi剤のアンチセンス鎖は、3'末端にヌクレオチドオーバーハングを有し、かつ5'末端は平滑である。理論に制限されることは望まないが、アンチセンス鎖の5'末端およびアンチセンス鎖の3'末端オーバーハングにおける非対称の平滑末端は、RISCプロセスへのガイド鎖導入に有利に作用する。
【0197】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、19個のヌクレオチド長の二本鎖平滑末端であり、センス鎖は、5'末端から7位、8位、9位に3つの連続するヌクレオチド上の3つの2'-F修飾の少なくとも1つのモチーフを含む。アンチセンス鎖は、5'末端から11位、12位、13位の3つ連続するヌクレオチドに3つの2'-O-メチル修飾の少なくとも1つのモチーフを含む。
【0198】
別の実施態様において、dsRNAi剤は、20個のヌクレオチド長の二本鎖平滑末端であり、センス鎖は、5'末端から8位、9位、10位に3つの連続するヌクレオチド症の3つの2'-F修飾の少なくとも1つのモチーフを含む。アンチセンス鎖は、5'末端から11位、12位、13位に3つ連続するヌクレオチドに3つの2'-O-メチル修飾の少なくとも1つのモチーフを含む。
【0199】
更に別の実施態様において、dsRNAi剤は、21個のヌクレオチド長の二本鎖平滑末端であり、センス鎖は、5'末端から9位、10位、11位に3つの連続するヌクレオチド上に3つの2'-F修飾の少なくとも1つのモチーフを含む。アンチセンス鎖は、5'末端から11位、12位、13位に3つ連続するヌクレオチドにおける3つの2'-O-メチル修飾の少なくとも1つのモチーフを含む。
【0200】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、21個のヌクレオチドセンス鎖および23個のヌクレオチドアンチセンス鎖を含んでおり、センス鎖は、5'末端から9位、10位、11位に3つの連続するヌクレオチド上の3つの2'-F修飾の少なくとも1つのモチーフを含み;アンチセンス鎖は、5'末端から11位、12位、13位に3つの連続するヌクレオチド上の3つの2'-O-メチル修飾の少なくとも1つのモチーフを含み、ここでiRNA剤の一方の末端は平滑であるが、もう一方の末端は、2つのヌクレオチドオーバーハングを含んでいる。好ましくは、2つのヌクレオチドオーバーハングは、アンチセンス鎖の3'末端にある。
【0201】
2つのヌクレオチドオーバーハングが、アンチセンス鎖の3'末端にある場合、末端の3つのヌクレオチドの間に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合があり得、3つのうちの2つのヌクレオチドが、オーバーハングヌクレオチドであり、第3のヌクレオチドは、オーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドである。ある実施態様において、RNAi剤は、センス鎖の5'末端およびアンチセンス鎖の5'末端の両方における末端の3つのヌクレオチドの間に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を更に有する。ある実施態様において、モチーフの一部であるヌクレオチドを含む、dsRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖中の全てのヌクレオチドが、修飾ヌクレオチドである。ある実施態様において、各残基は、独立して、2'-O-メチルまたは3'-フルオロで修飾されている(例えば、別のモチーフ中で)。所望により、dsRNAi剤は、リガンド(好ましくは、GalNAc3)を更に含む。
【0202】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、該センス鎖は、25~30個のヌクレオチド残基長であり、5'末端ヌクレオチド(1位)を起点として、第1の鎖の1~23位が、少なくとも8つのリボヌクレオチドを含み;アンチセンス鎖は、36~66ヌクレオチド残基長であり、3'末端ヌクレオチドを起点として、センス鎖の1~23位と対合される位置において少なくとも8つのリボヌクレオチドを含んで、二本鎖を形成し;アンチセンス鎖の少なくとも3'末端ヌクレオチドが、センス鎖と対合されず、最大で6つの連続する3'末端ヌクレオチドが、センス鎖と対合されず、それによって、1~6つのヌクレオチドの3'一本鎖オーバーハングを形成し;アンチセンス鎖の5'末端は、センス鎖と対合されない10~30個の連続するヌクレオチドを含み、それによって10~30個のヌクレオチド一本鎖5'オーバーハングを形成し;少なくともセンス鎖5'末端および3'末端ヌクレオチドは、センス鎖およびアンチセンス鎖が最大の相補性のために整列される場合、アンチセンス鎖のヌクレオチドと対合される塩基であり、それによってセンス鎖とアンチセンス鎖との間に実質的に二本鎖の領域を形成し;アンチセンス鎖は、二本鎖核酸が哺乳動物細胞中に導入されたときに標的遺伝子の発現を低下させる程度に、アンチセンス鎖長の少なくとも19個のリボヌクレオチドに沿った標的RNAに対して十分相補的であり;センス鎖は、3つの連続するヌクレオチド上の3つの2'-F修飾の少なくとも1つのモチーフを含み、ここで該モチーフのうちの少なくとも1つが、切断部位またはその近傍に存在する。アンチセンス鎖は、切断部位またはその近傍に3つの連続するヌクレオチドに3つの2'-O-メチル修飾のうちの少なくとも1つのモチーフを含む。
【0203】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、ここでdsRNAi剤は、少なくとも25、かつ29以下のヌクレオチド長を有する第1の鎖と、5'末端から11位、12位、13位に3つの連続するヌクレオチドにおいて3つの2'-O-メチル修飾の少なくとも1つのモチーフを含んでいる30個以下のヌクレオチド長を有する第2の鎖を含んでおり;第1の鎖の3'末端および第2の鎖の5'末端は、平滑末端を形成し、第2の鎖は、その3'末端で第1の鎖より1~4個のヌクレオチドが長く、二本鎖領域は、少なくとも25個のヌクレオチド長であって、第2の鎖は、RNAi剤が哺乳動物細胞中に導入されたときに標的遺伝子の発現を低下させる程度に、第2の鎖長の少なくとも19個のヌクレオチドに沿って標的mRNAに対して十分相補的であり、dsRNAi剤のダイサー切断により、優先的に、第2の鎖の3'末端を含むsiRNAをもたらすことにより、哺乳動物における標的遺伝子の発現を低下させる。所望により、dsRNAi剤は、リガンドを更に含む。
【0204】
ある実施態様において、dsRNAi剤のセンス鎖は、3つの連続するヌクレオチドにおける3つの同一修飾の少なくとも1つのモチーフを含み、モチーフの1つは、センス鎖の切断部位に存在する。
【0205】
ある実施態様において、dsRNAi剤のアンチセンス鎖も、3つの連続するヌクレオチドにおける3つの同一修飾の少なくとも1つのモチーフも含むことができ、これらモチーフの1つは、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。
【0206】
17~23個のヌクレオチド長の二本鎖領域を有するdsRNAi剤では、アンチセンス鎖の切断部位は、通常、5'末端から10位、11位および12位の近傍である。したがって、3つの同一修飾のモチーフは、アンチセンス鎖の5'末端から1つ目のヌクレオチドから数え始めて、またはアンチセンス鎖の5'末端から、二本鎖領域内の1つ目の対合ヌクレオチドから数え始めて、アンチセンス鎖の9位、10位、11位;10位、11位、12位;11位、12位、13位;12位、13位、14位;または13位、14位、15位に存在し得る。アンチセンス鎖中の切断部位はまた、5'末端からのdsRNAi剤の二本鎖領域の長さに応じて変化し得る。
【0207】
dsRNAi剤のセンス鎖は、鎖の切断部位に3つの連続するヌクレオチドにおいて3つの同一修飾の少なくとも1つのモチーフを含んでいてもよく;アンチセンス鎖は、鎖の切断部位またはその近傍に3つの連続するヌクレオチドにおける3つの同一修飾の少なくとも1つのモチーフを有し得る。センス鎖およびアンチセンス鎖がdsRNA二本鎖を形成する場合、センス鎖およびアンチセンス鎖は、センス鎖における3つのヌクレオチドの1つのモチーフおよびアンチセンス鎖における3つのヌクレオチドの1つのモチーフが、少なくとも1つのヌクレオチドの重複を有し、即ち、センス鎖中のモチーフの3つのヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、アンチセンス鎖中のモチーフの3つのヌクレオチドのうちの少なくとも1つと塩基対を形成するように整列され得る。あるいは、少なくとも2つのヌクレオチドが重複してもよく、または全ての3つのヌクレオチドが重複してもよい。
【0208】
ある実施態様において、dsRNAi剤のセンス鎖は、3つの連続するヌクレオチドにおける3つの同一修飾の2つ以上のモチーフを含み得る。第1のモチーフは、鎖の切断部位またはその近傍に存在してもよく、他のモチーフは、ウイング修飾であり得る。本明細書における「ウイング修飾」という用語は、同じ鎖の切断部位またはその近傍のモチーフから離れた鎖の別の部分に存在するモチーフを指す。ウイング修飾は、第1のモチーフに隣接するか、または少なくとも1つまたは複数のヌクレオチドによって隔てられている。モチーフが、互いに直接隣接している場合、モチーフの化学構造は、互いに異なり、モチーフが、1つまたは複数のヌクレオチドによって隔てられている場合、化学構造は、同じかまたは異なり得る。2つ以上のウイング修飾が存在し得る。例えば、2つのウイング修飾が存在する場合、各ウイング修飾は、切断部位またはその近傍の第1のモチーフに対して1つの端部にまたはリードモチーフのいずれかの側に存在し得る。
【0209】
センス鎖と同様に、dsRNAi剤のアンチセンス鎖は、3つの連続するヌクレオチドにおける3つの同一修飾の2つ以上のモチーフを含んでいてもよく、モチーフの少なくとも1つが、鎖の切断部位またはその近傍に存在する。このアンチセンス鎖は、センス鎖に存在し得るウイング修飾と同様の配列に1つまたは複数のウイング修飾を含んでもよい。
【0210】
ある実施態様において、dsRNAi剤のセンス鎖またはアンチセンス鎖におけるウイング修飾は、通常、鎖の3'末端、5'末端または両方の末端に第1の1または2つの末端ヌクレオチドを含まない。
【0211】
ある実施態様において、dsRNAi剤のセンス鎖またはアンチセンス鎖におけるウイング修飾は、通常、鎖の3'末端、5'末端または両方の末端の二本鎖領域内に第1の1または2つの対合ヌクレオチドを含まない。
【0212】
dsRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖が、各々少なくとも1つのウイング修飾を含む場合、ウイング修飾は、二本鎖領域の同じ末端に位置してもよく、1つ、2つまたは3つのヌクレオチドの重複を有し得る。
【0213】
dsRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖が、各々少なくとも2つのウイング修飾を含む場合、センス鎖およびアンチセンス鎖は、1つの鎖からの2つの修飾が、各々、二本鎖領域の1つの末端に位置しており、1つ、2つまたは3つのヌクレオチドの重複を有するように;1つの鎖からの2つの修飾が、各々、二本鎖領域のもう一方の末端に位置しており、1つ、2つまたは3つのヌクレオチドの重複を有するように;1つの鎖からの2つの修飾が、リードモチーフの各側に位置しており、二本鎖領域中に1つ、2つまたは3つのヌクレオチドの重複を有するように整列され得る。
【0214】
ある実施態様において、dsRNAi剤のセンス鎖およびアンチセンス鎖中の全てのヌクレオチド、例えばモチーフの一部であるヌクレオチドが修飾されてもよい。各ヌクレオチドは、同じまたは異なる修飾で修飾されてもよく、この修飾は、非結合リン酸酸素および/または結合リン酸酸素の1つまたは複数の一方または両方の1つまたは複数の変更;リボース糖の成分、例えば、リボース糖の2'ヒドロキシルの変更;「脱リン(dephospho)」リンカーによるリン酸部分の大規模な置換;天然の塩基の修飾または置換;およびリボース-リン酸骨格の置換または修飾を含み得る。
【0215】
核酸が、サブユニットのポリマーであるため、例えば、塩基、またはリン酸部分、またはリン酸部分の非結合Oの修飾といった修飾の多くは、核酸内の繰り返される位置で起こる。場合によっては、修飾は、核酸中の目的の位置の全てに存在し得るが、多くの場合、そうではない。例として、修飾は、3'または5'末端位置のみに存在してもよく、末端領域、例えば、末端ヌクレオチド上の位置または鎖の最後の2、3、4、5または10個のヌクレオチドのみに存在してもよい。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域またはその両方に存在してもよい。修飾は、dsRNAi剤の二本鎖領域のみに存在していてもよく、またはdsRNAi剤の一本鎖領域のみに存在してもよい。例えば、非結合O位置でのホスホロチオエート修飾は、一方または両方の末端のみに存在していてもよく、末端領域、例えば、末端ヌクレオチド上の位置または鎖の最後の2、3、4、5または10のヌクレオチドのみに存在してもよいか、あるいは二本鎖および一本鎖領域、特に、末端に存在していてもよい。5'末端または両方の末端が、リン酸化されることもできる。
【0216】
例えば、安定性を高めること、オーバーハング中に特定の塩基を含むこと、または一本鎖オーバーハング、例えば、5'または3'オーバーハング、またはその両方に修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド代用物(surrogate)を含むことが可能であり得る。例えば、オーバーハング中にプリンヌクレオチドを含むことが望ましい可能性がある。ある実施態様において、3'または5'オーバーハング中の塩基の全てまたは一部が、例えば、本明細書に記載される修飾で修飾されてもよい。修飾は、例えば、当該技術分野において公知の修飾によるリボース糖の2'位における修飾の使用、例えば、核酸塩基のリボ糖の代わりにデオキシリボヌクレオチド、2'-デオキシ-2'-フルオロ(2'-F)または2'-O-メチル修飾の使用、およびリン酸基の修飾、例えば、ホスホロチオエート修飾を含み得る。オーバーハングは、標的配列と相同である必要はない。
【0217】
ある実施態様において、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、独立して、LNA、CRN、cET、UNA、HNA、CeNA、2'-メトキシエチル、2'-O-メチル、2'-O-アリル、2'-C-アリル、2'-デオキシ、2'-ヒドロキシルまたは2'-フルオロで修飾される。鎖は、2つ以上の修飾を含み得る。一実施態様において、センス鎖およびアンチセンス鎖の各残基は、独立して、2'-O-メチルまたは2'-フルオロで修飾される。
【0218】
少なくとも2つの異なる修飾が、通常、センス鎖およびアンチセンス鎖に存在する。それらの2つの修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾またはその他の修飾であってもよい。
【0219】
ある実施態様において、Naおよび/またはNbは、交互のパターン修飾を含む。本明細書において使用される際の「交互のモチーフ」という用語は、1つまたは複数の修飾を有するモチーフを指し、各修飾が、1つの鎖のヌクレオチドに交互に存在する。交互のヌクレオチドは、1つおきのヌクレオチドに1つまたは3つおきのヌクレオチドに1つ、または同様のパターンを指し得る。例えば、A、BおよびCがそれぞれ、ヌクレオチドに対する1つのタイプの修飾を表す場合、交互のモチーフは、「ABABABABABAB・・・」、「AABBAABBAABB・・・」、「AABAABAABAAB・・・」、「AAABAAABAAAB・・・」、「AAABBBAAABBB・・・」、または「ABCABCABCABC・・・」などであり得る。
【0220】
交互のモチーフに含まれる修飾のタイプは、同じかまたは異なり得る。例えば、A、B、C、Dが、各々、ヌクレオチド上の1つのタイプの修飾を表す場合、交互のパターン、即ち、1つおきのヌクレオチドにおける修飾は、同じであってもよいが、センス鎖またはアンチセンス鎖の各々が、「ABABAB・・・」、「ACACAC・・・」、「BDBDBD・・・」または「CDCDCD・・・」などの交互のモチーフ内の修飾のいくつかの可能性から選択され得る。
【0221】
ある実施態様において、本発明のdsRNAi剤は、アンチセンス鎖における交互のモチーフの修飾パターンに対してシフトされたセンス鎖における交互のモチーフの修飾パターンを含む。このシフトは、センス鎖のヌクレオチドの修飾基が、アンチセンス鎖のヌクレオチドの異なる修飾の基に対応するか、その逆であるようなシフトであり得る。例えば、センス鎖は、dsRNA二本鎖におけるアンチセンス鎖と対合される場合、センス鎖における交互のモチーフは、鎖の5'から3'へと「ABABAB」から開始してもよく、アンチセンス鎖における交互のモチーフは、二本鎖領域内の鎖の5'から3'へと「BABABA」から開始されてもよい。別の例として、センス鎖における交互のモチーフは、鎖の5'から3'へと「AABBAABB」から開始してもよく、アンチセンス鎖における交互のモチーフは、二本鎖領域内の鎖の5'から3'へと「BBAABBAA」から開始してもよく、それにより、センス鎖とアンチセンス鎖との間の修飾パターンの完全なまたは部分的なシフトが存在する。
【0222】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、センス鎖における2'-O-メチル修飾および2'-F修飾の交互のモチーフのパターンを含み、このパターンは、最初に、アンチセンス鎖における2'-O-メチル修飾および2'-F修飾の交互のモチーフのパターンに対するシフトを有し、即ち、センス鎖における2'-O-メチル修飾ヌクレオチドが、アンチセンス鎖における2'-F修飾ヌクレオチドと塩基対を形成し、その逆も同様である。センス鎖の1位は、2'-F修飾から開始してもよく、アンチセンス鎖の1位は、2'-O-メチル修飾から開始してもよい。
【0223】
センス鎖またはアンチセンス鎖への、3つの連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つまたは複数のモチーフの導入により、センス鎖またはアンチセンス鎖中に存在する最初の修飾パターンが中断される。センス鎖またはアンチセンス鎖に3つの連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾の1つまたは複数のモチーフを導入することによる、センス鎖またはアンチセンス鎖の修飾パターンのこの中断は、標的遺伝子の対する遺伝子サイレンシング活性を増強し得る。
【0224】
ある実施態様において、3つ連続するヌクレオチド上の3つの同一修飾のモチーフが、鎖のいずれかに導入される場合、モチーフに隣接するヌクレオチドの修飾は、モチーフの修飾と異なる修飾である。例えば、モチーフを含む配列の一部は、「...NaYYYNb...」であり、ここで、「Y」は、3つの連続するヌクレオチドにおける3つの同一修飾のモチーフの修飾を表し、「Na」および「Nb」は、Yの修飾と異なる、モチーフ「YYY」に隣接するヌクレオチドの修飾を表し、NaおよびNbは、同じかまたは異なる修飾であり得る。あるいは、NaまたはNbは、ウイング修飾が存在する場合、存在していてもまたは存在していなくてもよい。
【0225】
iRNAは、少なくとも1つのホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合を更に含み得る。ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合の修飾は、鎖のいずれかの位置の、センス鎖またはアンチセンス鎖または両方の鎖の任意のヌクレオチドに存在し得る。例えば、ヌクレオチド間結合の修飾は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖中の全てのヌクレオチドに存在していてもよく;各ヌクレオチド間結合の修飾は、センス鎖および/またはアンチセンス鎖において交互のパターンで存在してもよく;またはセンス鎖またはアンチセンス鎖は、交互のパターンで両方のヌクレオチド間結合の修飾を含み得る。センス鎖におけるヌクレオチド間結合の修飾の交互のパターンは、アンチセンス鎖と同じかまたは異なっていてもよく、またセンス鎖におけるヌクレオチド間結合の修飾の交互のパターンは、アンチセンス鎖におけるヌクレオチド間結合の修飾の交互のパターンに対するシフトを有し得る。一実施態様において、二本鎖RNAi剤は、6-8ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。ある実施態様において、アンチセンス鎖は、2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を5'末端で含み、2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を3'末端で含み、該センス鎖は、少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を5'末端または3'末端のいずれかに含む。
【0226】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、オーバーハング領域にホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合の修飾を含む。例えば、オーバーハング領域は、2つのヌクレオチド間にホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合を有する2つのヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチド間結合の修飾は、オーバーハングヌクレオチドを、二本鎖領域内の末端の対合ヌクレオチドと結合するために形成され得る。例えば、少なくとも2、3、4または全てのオーバーハングヌクレオチドが、ホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合によって結合されてもよく、任意選択で、オーバーハングヌクレオチドを、オーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドと結合する更なるホスホロチオエートまたはメチルホスホネートヌクレオチド間結合が存在していてもよい。例えば、末端の3つのヌクレオチド間に少なくとも2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合が存在してもよく、3つのヌクレオチドのうちの2つが、オーバーハングヌクレオチドであり、第3のヌクレオチドが、オーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドである。これら末端の3つのヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3'末端、センス鎖の3'末端、アンチセンス鎖の5'末端および/またはアンチセンス鎖の5'末端に存在し得る。
【0227】
ある実施態様において、2つのヌクレオチドオーバーハングは、アンチセンス鎖の3'末端にあり、末端の3つのヌクレオチド間に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合が存在しており、3つのヌクレオチドのうちの2つが、オーバーハングヌクレオチドであり、第3のヌクレオチドが、オーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドである。所望により、dsRNAi剤は、センス鎖の5'末端およびアンチセンス鎖の5'末端の両方において、末端の3つのヌクレオチド間に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を更に有し得る。
【0228】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、標的とのミスマッチ、二本鎖中のミスマッチまたはそれらの組み合わせを含む。ミスマッチは、オーバーハング領域または二本鎖領域でおこり得る。塩基対は、解離または融解(例えば、特定の対合の結合または解離の自由エネルギーに対してであり、最も簡単な手法は、個々の塩基対ごとに対を調べることであるが、類似のまたは同様の分析も使用できる)を促進する傾向に基づいて評価され得る。解離の促進に関して:A:Uが、G:Cより好ましく;G:Uが、G:Cより好ましく;I:Cが、G:Cより好ましい(I=イノシン)。ミスマッチ、例えば、非標準または標準以外の対合(本明細書の他の箇所に記載される)が、標準的な(A:T、A:U、G:C)対合より好ましく;ユニバーサル塩基を含む対合が、標準的な対合より好ましい。
【0229】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、A:U、G:U、I:Cの群から独立して選択されるアンチセンス鎖の5'末端からの二本鎖領域内の最初の1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの塩基対のうちの少なくとも1つ、および二本鎖の5'末端におけるアンチセンス鎖の解離を促進するためのミスマッチ対、例えば、非標準または標準以外の対合またはユニバーサル塩基を含む対合を含む。
【0230】
ある実施態様において、アンチセンス鎖の5'末端からの二本鎖領域内の1位におけるヌクレオチドは、A、dA、dU、UおよびdTから選択される。あるいは、アンチセンス鎖の5'末端からの二本鎖領域内の最初の1、2または3塩基対のうちの少なくとも1つは、AU塩基対である。例えば、アンチセンス鎖の5'末端からの二本鎖領域内の第1の塩基対は、AU塩基対である。
【0231】
ある実施態様において、センス鎖の3'末端のヌクレオチドはデオキシチミン(dT)であるか、またはアンチセンス鎖の3'末端のヌクレオチドはデオキシチミン(dT)である。例えば、デオキシ-チミンヌクレオチドの短い配列があり、例えば、センス鎖、アンチセンス鎖または両方の鎖の3'末端に2つのdTヌクレオチドが存在する。
【0232】
ある実施態様において、センス鎖配列は、式(I):
5'np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3' (I)
(式中、
iおよびjは、各々独立して、0または1であり;
pおよびqは、各々独立して、0~6であり;
各Naは、独立して、0~25個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾のヌクレオチドを含んでおり;
各Nbは、独立して、0~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各npおよびnqは、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
ここで、NbおよびYは、同じ修飾を有さず;
XXX、YYYおよびZZZは、各々独立して、3つ連続するヌクレオチドにおける3つの同一修飾の1つのモチーフを表す)
により示され得る。好ましくは、YYYは、全て2'-F修飾ヌクレオチドである。
【0233】
ある実施態様において、NaまたはNbは、交互のパターンの修飾を含む。
【0234】
ある実施態様において、YYYモチーフは、センス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。例えば、dsRNAi剤が、17~23ヌクレオチド長の二本鎖領域を有する場合、YYYモチーフは、5'末端から1つ目のヌクレオチドから数え始めて;または所望により、5'末端から、二本鎖領域内の1つ目の対合ヌクレオチドから数え始めて、センス鎖の切断部位またはその近傍に存在し得る(例えば:6位、7位、8位;7位、8位、9位;8位、9位、10位;9位、10位、11位;10位、11位、12位;または11位、12位、13位に存在し得る)。
【0235】
ある実施態様において、iが1であり、jが0であるか、またはiが0であり、jが1であるか、またはiおよびjの両方が1である。従って、センス鎖は、以下の式によって表され得る:
5'np-Na-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3'(Ib);
5'np-Na-XXX-Nb-YYY-Na-nq3'(Ic);または
5'np-Na-XXX-Nb-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3'(Id)。
【0236】
センス鎖が、式(Ib)によって表される場合、Nbは、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して、2~20、2~15または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
【0237】
センス鎖が、式(Ic)として表される場合、Nbは、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
【0238】
センス鎖が、式(Id)として表される場合、各Nbは、独立して、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。好ましくは、Nbは、0、1、2、3、4、5または6である。各Naは、独立して、2~20、2~15または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
【0239】
X、YおよびZの各々は、互いに同じか、または異なっていてよい。
【0240】
別の実施態様において、iが0であり、jが0であり、センス鎖は、以下の式によって表され得る:
5'np-Na-YYY-Na-nq3' (Ia)。
【0241】
センス鎖が、式(Ia)によって表される場合、各Naは、独立して、2~20、2~15または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
【0242】
一実施態様において、RNAiのアンチセンス鎖配列は、
式(II):
5'nq'-Na'-(Z'Z'Z')k-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-(X'X'X')l-N'a-np'3'
(II)
(式中、
kおよびlは、各々独立して、0または1であり;
p'およびq'は、各々独立して、0~6であり;
各Na'は、独立して、0~25個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾のヌクレオチドを含み;
各Nb'は、独立して、0~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
各np'およびnq'は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
ここで、Nb'およびY'は、同じ修飾を有さず;
X'X'X'、Y'Y'Y'およびZ'Z'Z'は、各々独立して、3つの連続するヌクレオチドに3つの同一修飾の1つのモチーフを表す)
によって表され得る。
【0243】
ある実施態様において、Na'またはNb'は、交互のパターンの修飾を含む。
【0244】
Y'Y'Y'モチーフは、アンチセンス鎖の切断部位またはその近傍に存在する。例えば、dsRNAi剤が、17~23個のヌクレオチド長の二本鎖領域を有する場合、Y'Y'Y'モチーフは、5'末端から1つ目のヌクレオチドから数えて;または所望により、5'末端から、二本鎖領域内の1つ目の対合ヌクレオチドから数えて、アンチセンス鎖の9位、10位、11位;10位、11位、12位;11位、12位、13位;12位、13位、14位;または13位、14位、15位に存在し得る。好ましくは、Y'Y'Y'モチーフは、11位、12位、13位に存在する。
【0245】
ある実施態様において、Y'Y'Y'モチーフは、全て2'-OMe修飾ヌクレオチドである。
【0246】
ある実施態様において、kが1であり、lが0であるか、またはkが0であり、lが1であるか、またはkおよびlの両方が1である。
【0247】
従って、アンチセンス鎖は、以下の式:
5'nq'-Na'-Z'Z'Z'-Nb'-Y'Y'Y'-Na'-np'3' (IIb);
5'nq'-Na'-Y'Y'Y'-Nb'-X'X'X'-np'3' (IIc);または
5'nq'-Na'-Z'Z'Z'-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-X'X'X'-Na'-np'3' (IId)
によって表され得る。
【0248】
アンチセンス鎖が、式(IIb)により表される場合、Nb'は、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na'は、独立して、2~20、2~15または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0249】
アンチセンス鎖が、式(IIc)として表される場合、Nb'は、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na'は、独立して、2~20、2~15または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0250】
アンチセンス鎖が、式(IId)として表される場合、各Nb'は、独立して、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na'は、独立して、2~20、2~15または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。好ましくは、Nbは、0、1、2、3、4、5または6である。
【0251】
別の実施態様において、kが0であり、lが0であり、アンチセンス鎖は、以下の式によって表され得る:
5'np'-Na'-Y'Y'Y'-Na'-nq'3' (Ia)。
【0252】
アンチセンス鎖が、式(IIa)として表される場合、各Na'は、独立して、2~20、2~15または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0253】
X'、Y'およびZ'の各々が、互いに同じか、または異なっていてよい。
【0254】
センス鎖およびアンチセンス鎖の各ヌクレオチドは、独立して、LNA、CRN、UNA、cEt、HNA、CeNA、2'-メトキシエチル、2'-O-メチル、2'-O-アリル、2'-C-アリル、2'-ヒドロキシルまたは2'-フルオロで修飾され得る。例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖の各ヌクレオチドは、独立して、2'-O-メチルまたは2'-フルオロで修飾される。各X、Y、Z、X'、Y'およびZ'は、特に、2'-O-メチル修飾または2'-フルオロ修飾を表し得る。
【0255】
ある実施態様において、dsRNAi剤のセンス鎖は、二本鎖領域が21個のヌクレオチドである場合、5'末端から1つ目のヌクレオチドから数え始めて;または所望により、5'末端から、二本鎖領域内の1つ目の対合ヌクレオチドから数え始めて、鎖の9位、10位および11位に存在するYYYモチーフを含んでいてもよく;Yは、2'-F修飾を表す。センス鎖は、二本鎖領域の反対側の末端にウイング修飾としてXXXモチーフまたはZZZモチーフを更に含んでいてもよく;XXXおよびZZZは、各々独立して、2'-OMe修飾または2'-F修飾を表す。
【0256】
ある実施態様において、アンチセンス鎖は、5'末端から1つ目のヌクレオチドから数え始めて;または所望により、5'末端から、二本鎖領域内の1つ目の対合ヌクレオチドから数え始めて、鎖の11位、12位、13位に存在するY'Y'Y'モチーフを含んでいてもよく;Y'は、2'-O-メチル修飾を表す。アンチセンス鎖は、二本鎖領域の反対側の末端にウイング修飾としてX'X'X'モチーフまたはZ'Z'Z'モチーフを更に含んでいてもよく;X'X'X'およびZ'Z'Z'は各々独立して、2'-OMe修飾または2'-F修飾を表す。
【0257】
上の式(Ia)、(Ib)、(Ic)、および(Id)のいずれか1つによって表されるセンス鎖はそれぞれ、式(IIa)、(IIb)、(IIc)、および(IId)のいずれか1つによって表されるアンチセンス鎖と二本鎖を形成する。
【0258】
従って、本発明の方法に使用するためのdsRNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含んでいてもよく、各鎖は、14~30個のヌクレオチドを有し、iRNA二本鎖は、式(III):
センス:5'np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3'
アンチセンス:3'np'-Na'-(X'X'X')k-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-(Z'Z'Z')l-Na'-nq'5' (III)
(式中、
i、j、kおよびlは、各々独立して、0または1であり;
p、p'、qおよびq'は、各々独立して、0~6であり;
各NaおよびNa'が、独立して、0~25個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列が、少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含み;
各NbおよびNb'が、独立して、0~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表し;
ここで、各np'、np、nq'およびnqは、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し、これら各々は、存在していても、または存在していなくてもよい;
XXX、YYY、ZZZ、X'X'X'、Y'Y'Y'およびZ'Z'Z'は、各々独立して、3つの連続するヌクレオチドにおいて3つの同一修飾の1つのモチーフを表す)
によって表される。
【0259】
ある実施態様において、iが0であり、jが0であるか;または、iが1であり、jが0であるか;または、iが0であり、jが1であるか;または、iおよびjの両方が0であるか;または、iおよびjの両方が1である。別の実施態様において、kが0であり、lが0であるか;または、kが1であり、lが0であり;kが0であり、lが1であり;またはkおよびlの両方が0であるか;または、kおよびlの両方が1である。
【0260】
iRNA二本鎖を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖の組み合わせの例示には、以下の式:
5'np-Na-YYY-Na-nq3'
3'np'-Na'-Y'Y'Y'-Na'nq'5'
(IIIa)
5'np-Na-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3'
3'np'-Na'-Y'Y'Y'-Nb'-Z'Z'Z'-Na'nq'5'
(IIIb)
5'np-Na-XXX-Nb-YYY-Na-nq3'
3'np'-Na'-X'X'X'-Nb'-Y'Y'Y'-Na'-nq'5'
(IIIc)
5'np-Na-XXX-Nb-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3'
3'np'-Na'-X'X'X'-Nb'-Y'Y'Y'-Nb'-Z'Z'Z'-Na-nq'5'
(IIId)
が挙げられる。
【0261】
dsRNAi剤が、式(IIIa)によって表される場合、各Naは、独立して、2~20、2~15または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0262】
dsRNAi剤が、式(IIIb)によって表される場合、各Nbは、独立して、1~10、1~7、1~5または1~4個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して、2~20、2~15または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0263】
dsRNAi剤が、式(IIIc)として表される場合、各Nb、Nb'は、独立して、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して、2~20、2~15または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。
【0264】
dsRNAi剤が、式(IIId)として表される場合、各Nb、Nb'は、独立して、0~10、0~7、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na、Na'は、独立して、2~20、2~15または2~10個の修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を表す。Na、Na'、NbおよびNb'のそれぞれは、独立して、交互のパターンの修飾を含む。
【0265】
式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)および(IIId)中のX、YおよびZの各々は、互いに同じか、または異なっていてもよい。
【0266】
dsRNAi剤が、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)によって表される場合、Yヌクレオチドの少なくとも1つが、Y'ヌクレオチドの1つと塩基対を形成し得る。或いは、Yヌクレオチドの少なくとも2つが、対応するY'ヌクレオチドと塩基対を形成し;またはYヌクレオチドの全ての3つが全て、対応するY'ヌクレオチドと塩基対を形成する。
【0267】
dsRNAi剤が、式(IIIb)または(IIId)によって表される場合、Zヌクレオチドの少なくとも1つが、Z'ヌクレオチドの1つと塩基対を形成し得る。あるいは、Zヌクレオチドの少なくとも2つが、対応するZ'ヌクレオチドと塩基対を形成し;またはZヌクレオチドの全ての3つが全て、対応するZ'ヌクレオチドと塩基対を形成する。
【0268】
dsRNAi剤が、式(IIIc)または(IIId)として表される場合、Xヌクレオチドの少なくとも1つが、X'ヌクレオチドの1つと塩基対を形成し得る。あるいは、Xヌクレオチドの少なくとも2つが、対応するX'ヌクレオチドと塩基対を形成し;またはXヌクレオチド全ての3つが全て、対応するX'ヌクレオチドと塩基対を形成する。
【0269】
ある実施態様において、Yヌクレオチド上の修飾は、Y'ヌクレオチド上の修飾と異なり、Zヌクレオチド上の修飾は、Z'ヌクレオチド上の修飾と異なり、またはXヌクレオチド上の修飾は、X'ヌクレオチド上の修飾と異なる。
【0270】
ある実施態様において、dsRNAi剤が、式(IIId)によって表される場合、Na修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾である。別の実施態様において、RNAi剤が、式(IIId)によって表される場合、Na修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり、np'>0であり、少なくとも1つのnp'が、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合される。さらに別の実施態様において、RNAi剤が、式(IIId)によって表される場合、Na修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり、np'>0であり、少なくとも1つのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合され、センス鎖は、二価または三価の分枝鎖リンカーを介して結合された1つまたは複数のGalNAc誘導体にコンジュゲートされる(以下に記載)。別の実施態様において、iRNA剤が、式(IIId)によって表される場合、Na修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり、np'>0であり、少なくとも1つのnp'が、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合され、センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み、センス鎖は、一価、二価または三価の分枝鎖リンカーを介して結合された1つまたは複数のGalNAc誘導体にコンジュゲートされる。
【0271】
ある実施態様において、dsRNAi剤が、式(IIIa)によって表される場合、Na修飾は、2'-O-メチルまたは2'-フルオロ修飾であり、np'>0であり、少なくとも1つのnp'は、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドに結合され、センス鎖は、少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含み、センス鎖は、二価または三価の分枝鎖リンカーを介して結合された1つまたは複数のGalNAc誘導体にコンジュゲートされる。
【0272】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)および(IIId)によって表される少なくとも2つの二本鎖を含む多量体であり、この二本鎖は、リンカーによって結合される。リンカーは、切断可能であるか、または切断不可能であり得る。所望により、多量体は、リガンドを更に含む。二本鎖のそれぞれは、同じ遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的とすることができ;または二本鎖のそれぞれは、2つの異なる標的部位において同じ遺伝子を標的とすることができる。
【0273】
ある実施態様において、dsRNAi剤は、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)および(IIId)によって表される3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上の二本鎖を含む多量体であり、この二本鎖は、リンカーによって結合される。リンカーは、切断可能であるか、または切断不可能であり得る。所望により、多量体は、リガンドを更に含む。二本鎖のそれぞれは、同じ遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的とすることができ;または二本鎖のそれぞれは、2つの異なる標的部位において同じ遺伝子を標的とすることができる。
【0274】
ある実施態様において、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)および(IIId)の少なくとも1つによって表される2つのdsRNAi剤は、5'末端、および3'末端の一方または両方で互いに結合され、所望により、リガンドにコンジュゲートされる。dsRNAi剤のそれぞれは、同じ遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的とすることができ;または該剤のそれぞれは、2つの異なる標的部位において同じ遺伝子を標的とすることができる。
【0275】
様々な刊行物に、本発明の方法に使用され得る多量体iRNAが記載されている。このような刊行物としては、国際公開第2007/091269号パンフレット、米国特許第7,858,769号明細書、国際公開第2010/141511号パンフレット、国際公開第2007/117686号パンフレット、国際公開第2009/014887号パンフレットおよび国際公開第2011/031520号パンフレットが挙げられ、それぞれの全ての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0276】
以下により詳細に説明されるとおり、iRNAに対する1つまたは複数の炭水化物部分のコンジュゲーションを含むiRNAは、iRNAの1以上の特性を最適化することができる。多くの場合、炭水化物部分は、iRNAの修飾サブユニットに結合される。例えば、iRNAの1つまたは複数のリボヌクレオチドサブユニットのリボース糖は、別の部分、例えば、炭水化物リガンドが結合される非炭水化物(好ましくは、環状の)担体で置換され得る。サブユニットのリボース糖がこのように置換されたリボヌクレオチドサブユニットは、本明細書において、リボース置換修飾サブユニット(RRMS)と呼ばれる。環状担体は、炭素環系であってもよく、即ち、全ての環原子が、炭素原子であり、または複素環系、即ち、1つまたは複数の環原子が、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、硫黄であり得る。環状担体は、単環系であってもよく、または2つ以上の環、例えば縮合環を含んでいてもよい。環状担体は、完全に飽和した環系であってもよく、または1つまたは複数の二重結合を含んでいてもよい。
【0277】
リガンドは、担体を介してポリヌクレオチドに結合され得る。担体は、(i)少なくとも1つの「骨格結合点」、好ましくは、2つの「骨格結合点」および(ii)少なくとも1つの「テザー結合点(tethering attachment point)」を含む。本明細書において使用される際の「骨格結合点」は、官能基、例えば、ヒドロキシル基を指すか、または一般的に、リボ核酸の骨格、例えば、リン酸塩または修飾リン酸塩(例えば、硫黄を含有する)骨格中への担体の組み込みに利用可能であり且つそれに適した結合を指す。「テザー結合点」(TAP)は、ある実施態様において、選択された部分を連結する環状担体の構成環原子、例えば、炭素原子またはヘテロ原子(骨格結合点を提供する原子と異なる)を指す。この部分は、例えば、炭水化物、例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖および多糖であり得る。所望により、選択された部分は、介在するテザー(intervening tether)によって環状担体に結合される。したがって、環状担体は、多くの場合、官能基、例えば、アミノ基を含むか、または一般的には、構成環への別の化学成分、例えば、リガンドの組み込みまたは連結(tethering)に適した結合を提供する。
【0278】
iRNAは、担体を介してリガンドにコンジュゲートされてもよく、この担体は、環式基または非環式基であり得る;好ましくは、環式基は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラン、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル(pyridazinonyl)、テトラヒドロフリルおよびデカリンから選択され;好ましくは、非環式基は、セリノール骨格またはジエタノールアミン骨格から選択される。
【0279】
ある特定の実施態様において、本発明の方法に使用するためのiRNAは、表3または5に列挙される薬剤の群から選択される薬剤である。これらの薬剤は、リガンドを更に含み得る。
【0280】
III.リガンドにコンジュゲートされたiRNA
本発明のiRNAのRNAの別の修飾は、iRNAの活性、細胞分布または細胞取り込み(例えば、細胞中への)を向上させる1つまたは複数のリガンド、部分またはコンジュゲートをiRNAに化学的に結合することを含む。このような部分としては、限定はされないが、コレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 1989, 86: 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1994, 4:1053-1060)、チオエーテル、例えば、ベリル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306-309;Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533-538)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J, 1991, 10:1111-1118;Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327-330;Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49-54)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチル-アンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651-3654;Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777-3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969-973)またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229-237)またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923-937)などの脂質部分が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0281】
ある実施態様において、リガンドは、それが組み込まれるiRNA剤の分布、標的化または寿命を変化させる。好ましい実施態様において、リガンドは、例えば、このようなリガンドのない種と比較して、選択された標的(例えば、分子、細胞または細胞型)、区画(例えば、細胞または器官の区画)、身体の組織、器官または領域に対する親和性の増強を提供する。好ましいリガンドは、二本鎖核酸における二本鎖の対合に関与しない。
【0282】
リガンドは、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低比重リポタンパク(LDL)またはグロブリン);炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン、N-アセチルガラクトサミンまたはヒアルロン酸);または脂質などの天然の物質を含み得る。リガンドはまた、合成ポリマー、例えば、合成ポリアミノ酸などの組み換え体または合成分子であり得る。ポリアミノ酸の例としては、ポリアミノ酸であるポリリジン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル-無水マレイン酸コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマーまたはポリホスファジンである。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬似ペプチド-ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの第四級塩またはα-へリックスペプチドが挙げられる。
【0283】
リガンドはまた、標的基、例えば、細胞または組織標的剤、例えば、レクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質、例えば、腎細胞などの特定の細胞型に結合する抗体を含み得る。標的基は、サイロトロピン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、界面活性剤タンパク質A、ムチン炭水化物、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン、多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタメート、ポリアスパルテート、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、フォレート、ビタミンB12、ビタミンA、ビオチン、RGDペプチドまたはRGDペプチド模倣体であり得る。
【0284】
リガンドの他の例としては、色素、挿入剤(例えばアクリジン)、架橋剤(例えばソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性分子(例えば、コレステロール)、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチルまたはフェノキサジン)およびペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディア(Antennapedia)ペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾールコンジュゲート、Eu3+テトラアザ大員環複合体)、ジニトロフェニル、HRPまたはAPが挙げられる。
【0285】
リガンドは、タンパク質、例えば、糖タンパク質、またはペプチド、例えば、コリガンド(co-ligand)、または抗体、例えば、肝細胞などの特定の細胞型に結合する抗体に対する特異親和性を有する分子であり得る。リガンドは、ホルモンおよびホルモン受容体を含んでもよい。リガンドはまた、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン、多価マンノースまたは多価フコースなどの非ペプチド種を含み得る。リガンドは、例えば、リポ多糖、38MAPキナーゼの活性化因子またはNF-κBの活性化因子であり得る。
【0286】
リガンドは、例えば、細胞骨格を破壊することによって、例えば、細胞の微小管、マイクロフィラメントまたは中間径フィラメントを破壊することによって、細胞中へのiRNA剤の取り込みを増加させることができる物質、例えば、薬剤であり得る。薬剤は、例えば、タクソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャスプラキノリド、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシンまたはミオセルビンであり得る。
【0287】
ある実施態様において、本明細書に記載されるiRNAに結合されたリガンドは、薬物動態学的調節剤(PK調節剤)としての役割を果たす。PK調節剤としては、親油性物質(lipophile)、胆汁酸、ステロイド、リン脂質アナログ、ペプチド、タンパク質結合剤、PEG、ビタミンなどが挙げられる。例示的なPK調節剤としては、限定はされないが、コレステロール、脂肪酸、コール酸、リトコール酸、ジアルキルグリセリド、ジアシルグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ナプロキセン、イブプロフェン、ビタミンE、ビオチンなどが挙げられる。多くのホスホロチオエート結合を含むオリゴヌクレオチドは、血清タンパク質に結合することも知られており、そのため、骨格中に複数のホスホロチオエート結合を含む短いオリゴヌクレオチド、例えば、約5塩基、10塩基、15塩基または20塩基のオリゴヌクレオチドもまた、リガンド(例えば、PK調節リガンド)として本発明に適している。更に、血清成分(例えば、血清タンパク質)に結合するアプタマーも、本明細書に記載される実施態様においてPK調節リガンドとして使用するのに好適である。
【0288】
本発明のリガンドコンジュゲートiRNAsは、オリゴヌクレオチドへの結合分子の結合から誘導されるものなどの反応性のペンダント官能基を有するオリゴヌクレオチドの使用によって合成され得る(後述される)。この反応性オリゴヌクレオチドは、市販のリガンド、様々な保護基のいずれかを有する合成されたリガンド、または結合基が結合されたリガンドと直接反応されてもよい。
【0289】
本発明のコンジュゲートに使用されるオリゴヌクレオチドは、固相合成に関する周知技術によって好都合におよび日常的に作製され得る。このような合成のための装置は、例えば、Applied Biosystems (Foster City, Calif.)を含めたいくつかの業者によって販売されている。当該技術分野において公知のこのような合成のための任意の他の手段は、追加的に、または別法として用いられてもよい。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などの他のオリゴヌクレオチドを調製するための同様の技術を使用することも公知である。
【0290】
本発明の配列特異的結合ヌクレオシドを有するリガンドコンジュゲートiRNAsおよびリガンド分子において、オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシドは、標準的なヌクレオチドまたはヌクレオシド前駆体、結合基を既に担持しているヌクレオチドまたはヌクレオシドコンジュゲート前駆体、リガンド分子を既に担持しているリガンド-ヌクレオチドまたはヌクレオシドコンジュゲート前駆体または非ヌクレオシドリガンド含有ビルディングブロックを用いて、好適なDNA合成装置において組み立てられ得る。
【0291】
結合基を既に有するヌクレオチドコンジュゲート前駆体を用いる場合、通常、配列特異的結合ヌクレオシドの合成が完了してから、リガンド分子が、結合基と反応して、リガンドコンジュゲートオリゴヌクレオチドが形成される。ある実施態様において、本発明のオリゴヌクレオチドまたは結合ヌクレオシドは、オリゴヌクレオチド合成に常法的に使用される市販の、標準的なホスホロアミダイトおよび非標準的なホスホロアミダイトに加えて、リガンド-ヌクレオシドコンジュゲートから得られるホスホロアミダイトを用いて、自動合成装置によって合成される。
【0292】
A.脂質コンジュゲート
ある実施態様において、リガンドまたはコンジュゲートは、脂質または脂質ベースの分子である。このような脂質または脂質ベースの分子は、好ましくは、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)に結合する。HSA結合リガンドは、身体の標的組織、例えば、非腎臓標的組織へのコンジュゲートの分配を可能にする。例えば、標的組織は、肝臓、例えば肝臓の実質細胞などであり得る。HSAに結合し得る他の分子も、リガンドとして使用され得る。例えば、ナプロキセンまたはアスピリンが使用され得る。脂質または脂質ベースのリガンドは、(a)コンジュゲートの分解に対する耐性を増大し、(b)標的細胞または細胞膜への標的化または輸送を増大し、または(c)血清タンパク質、例えば、HSAへの結合を調整するのに使用され得る。
【0293】
脂質ベースのリガンドを用いて、標的組織に対するコンジュゲートの結合を阻害すること、例えば、制御することができる。例えば、より強くHSAに結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、腎臓に対して標的化されにくく、そのため身体から除去される可能性が低い。より弱くHSAに結合する脂質または脂質ベースのリガンドを用いて、コンジュゲートを腎臓に対して標的化することができる。
【0294】
ある態様において、脂質ベースのリガンドは、HSAに結合する。好ましくは、脂質ベースのリガンドは、コンジュゲートが非腎臓組織に好ましく分配されるような十分な親和性でHSAに結合する。しかし、親和性は、HSA-リガンド結合が不可逆的となり得る程度に強力でないのが好ましい。
【0295】
別の実施態様において、コンジュゲートが腎臓に好ましく分配されるように、脂質ベースのリガンドは、HSAに弱く結合するか、または全く結合しない。腎細胞を標的とする別の部分も、脂質ベースのリガンドの代わりに、またはそれと共に使用され得る。
【0296】
別の態様において、リガンドは、標的細胞、例えば、増殖細胞によって取り込まれる成分、例えばビタミンである。これらは、例えば、悪性または非悪性の望ましくない細胞増殖、例えば、癌細胞を特徴とする障害を治療するのに特に有用である。例示的なビタミンは、ビタミンA、EおよびKを含む。別の例示的なビタミンは、ビタミンB、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサールまたは他のビタミン或いは肝細胞などの標的細胞によって取り込まれる栄養素を含む。HASおよび低比重リポタンパク(LDL)も含まれる。
【0297】
B.細胞透過剤
別の態様において、リガンドは、細胞透過剤、好ましくは、らせん状細胞透過剤である。好ましくは、この剤は両親媒性である。例示的な剤は、tatまたはアンテナペディアなどのペプチドである。この剤がペプチドである場合、それは、ペプチジル模倣体、逆転異性体、非ペプチドまたは擬ペプチド結合、およびD-アミノ酸の使用を含めて修飾され得る。らせん状剤は、好ましくはα-へリックス剤であり、これは、好ましくは、親油性および疎油性相を有する。
【0298】
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。ペプチド模倣体(本明細書においてオリゴペプチド模倣体とも呼ばれる)は、天然ペプチドに類似した規定の三次元構造へとフォールディングできる分子である。ペプチドおよびペプチド模倣体のiRNA剤への結合は、例えば細胞認識および吸収を強化することにより、iRNAの薬物動態分布に影響を及ぼし得る。ペプチドまたはペプチド模倣体部分は、約5~50個のアミノ酸の長さ、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50個のアミノ酸の長さであり得る。
【0299】
ペプチドまたはペプチド模倣体は、例えば、細胞透過性ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または疎水性ペプチド(例えば、主に、Tyr、TrpまたはPheからなる)であり得る。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、拘束(constrained)ペプチドまたは架橋ペプチドであり得る。別の代替法において、ペプチド部分は、疎水性膜輸送配列(MTS)を含むことができる。例示的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAP(配列番号13)を有するRFGFである。疎水性MTSを含有するRFGFアナログ(例えば、アミノ酸配列AALLPVLLAAP(配列番号14)も、標的部分であり得る。ペプチド部分は、細胞膜を介して、ペプチド、オリゴヌクレオチドおよびタンパク質を含む大きな極性分子を運搬することができる「送達」ペプチドであり得る。例えば、HIV Tatタンパク質に由来する配列(GRKKRRQRRRPPQ(配列番号15)およびショウジョウバエのアンテナペディア(Drosophila Antennapedia)タンパク質(RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号16)は、送達ペプチドとして機能することが可能であることが分かっている。ペプチドまたはペプチド模倣体は、ファージディスプレイライブラリーまたは1ビーズ-1化合物(OBOC)コンビナトリアルライブラリーから特定されたペプチドなどのDNAのランダム配列によってコードされ得る(Lam et al., Nature, 354:82-84, 1991)。細胞標的の目的のために組み込まれたモノマー単位を介してdsRNA剤に結合されたペプチドまたはペプチド模倣体の例は、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)-ペプチドまたはRGD模倣体などのペプチドである。ペプチド部分は、約5つのアミノ酸から約40個のアミノ酸の長さの範囲であり得る。ペプチド部分は、構造修飾、例えば安定性または直接立体配座特性を高める修飾を有し得る。後述される構造修飾のいずれも用いることができる。
【0300】
本発明の組成物および方法において使用するためのRGDペプチドは、直鎖状または環状であっても良く、また特定の組織に対する標的化を促進するために、修飾、例えば、グリコシル化またはメチル化されていてもよい。RGD含有ペプチドおよびペプチド模倣体は、D-アミノ酸、ならびに合成RGD模倣体を使用し得る。RGDに加えて、インテグリンリガンドを標的とする別の部分を使用することができる。このリガンドの好ましいコンジュゲートは、PECAM-1またはVEGFを標的とする。
【0301】
「細胞透過性ペプチド」は、細胞、例えば、細菌または真菌細胞などの微生物細胞、あるいはヒト細胞などの哺乳動物細胞を透過することが可能である。微生物細胞透過性ペプチドは、例えば、α-へリックス直鎖状ペプチド(例えば、LL-37またはCeropin P1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えば、α-デフェンシン、β-デフェンシンまたはバクテネシン(bactenecin))、または1もしくは2つの優勢なアミノ酸のみを含有するペプチド(例えば、PR-39またはインドリシジン)であり得る。細胞透過性ペプチドは、核局在化シグナル(NLS)も含み得る。例えば、細胞透過性ペプチドは、HIV-1 gp41の融合ペプチドドメインおよびSV40大型T抗原のNLSに由来する、MPGなどの二分両親媒性ペプチドであり得る(Simeoni et al., Nucl. Acids Res. 31:2717-2724, 2003)。
【0302】
C.炭水化物コンジュゲート
本発明の組成物および方法のある実施態様において、iRNAは、炭水化物をさらに含む。炭水化物コンジュゲートiRNAは、本明細書に記載されるように、インビボでの核酸の送達に有利であり、また組成物は、インビボでの治療的使用に好適である。本明細書において使用される際、「炭水化物」は、少なくとも6個の炭素原子(直鎖状、分枝鎖状または環状であってもよい)を有し、各炭素原子に酸素、窒素または硫黄原子が結合している1つまたは複数の単糖単位から構成されている炭水化物それ自体である化合物;またはその一部として、1つまたは複数の単糖単位から構成されている炭水化物部分を有し、単糖単位の各々が、少なくとも6個の炭素原子(直鎖状、分枝鎖状または環状であってもよい)を有し、各炭素原子に酸素、窒素または硫黄原子が結合している化合物のいずれかを指す。代表的な炭水化物としては、糖(単糖、二糖、三糖および約4、5、6、7、8、または9つの単糖単位を含むオリゴ糖)、ならびにデンプン、グリコーゲン、セルロースおよび多糖ゴムなどの多糖が挙げられる。特定の単糖としては、HBV以上(例えば、HBV、C6、C7またはC8)の糖が挙げられ;二糖および三糖としては、2つまたは3つの単糖単位(例えば、HBV、C6、C7またはC8)を有する糖が挙げられる。
【0303】
ある実施態様において、本発明の組成物および方法に使用するための炭水化物コンジュゲートは、単糖である。一実施態様において、単糖は、
【化5】
などのN-アセチルガラクトサミンである。
【0304】
別の実施態様において、本発明の組成物および方法に使用するための炭水化物コンジュゲートは、下記:
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
からなる群から選択される。
【0305】
本明細書に記載される実施態様に使用するための別の代表的な炭水化物コンジュゲートとしては、
【化14】
(XまたはYの一つが、オリゴヌクレオチドである場合、もう一方は水素である)
を含むが、これに限定するものではない。
【0306】
本発明のある実施態様においては、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、一価のリンカーを介して本発明のiRNA剤に結合される。いくつかの実施態様においては、GalNacまたはGalNac誘導体は、2価のリンカーを介して本発明のiRNA剤に結合される。本発明のさらに他の実施態様においては、GalNAcまたはGalNAc誘導体は、3価のリンカーを介して本発明のiRNA剤に結合される。
【0307】
ある実施態様においては、本発明の二本鎖RNAi剤は、iRNA剤と結合した1つのGalNAcまたはGalNAc誘導体を含む。別の実施態様では、本発明の二本鎖RNAi剤は、複数(例えば、2、3、4、5または6)のGalNAcまたはGalNAc誘導体を含み、各々独立して、複数の一価のリンカーを介して二本鎖RNAi剤の複数のヌクレオチドと結合されている。
【0308】
いくつかの実施態様では、例えば、本発明のiRNA剤の2本の鎖が、一方の鎖の3'末端と、もう一方の鎖の5'末端との間の複数の不対合ヌクレオチドからなるヘアピンループを形成するヌクレオチドが途切れない鎖によって接続された1つのより大きな分子の一部である場合、ヘアピンループ内の各不対合ヌクレオチドは、独立して、1価リンカーを介して結合されたGalNAcまたはGalNAc誘導体を含んでいてもよい。
【0309】
ある実施態様において、炭水化物コンジュゲートは、限定はされないが、PK調節剤または細胞透過性ペプチドなどの上述したような1つまたは複数の別のリガンドをさらに含む。
【0310】
本発明での使用に好適な更なる炭水化物コンジュゲートには、PCT公報の国際公開第2014/179620号パンフレットおよび国際公開第2014/179627号パンフレットに記載されているものが含まれ、それぞれの全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0311】
D.リンカー
ある実施態様において、本明細書に記載されるコンジュゲートまたはリガンドは、切断可能または切断不可能であり得る様々なリンカーを用いて、iRNAオリゴヌクレオチドに結合され得る。
【0312】
「リンカー」または「結合基」という用語は、化合物の2つの部分を結合する有機部分、例えば、化合物の2つの部分を共有結合する有機部分を意味する。リンカーは、通常、直接的な結合または酸素もしくは硫黄などの原子、NR8、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NHなどの単位、または限定はされないが、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘテロシクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘテロアリール(1つまたは複数のメチレンがO、S、S(O)、SO2、N(R8)、C(O)、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換の複素環式基により中断または終端され得る)などの原子の鎖を含み;ここで、R8は、水素、アシル、脂肪族または置換された脂肪族である。一実施態様において、リンカーは、約1~24個の原子、2~24、3~24、4~24、5~24、6~24、6~18、7~18、8~18、7~17、8~17、6~16、7~16または8~16個の原子である。
【0313】
切断可能な結合基は、細胞の外部では十分安定であるが、標的細胞内に入った後、切断されて、リンカーが一緒に保持する2つの部分を放出するものである。好ましい実施態様において、切断可能な結合基は、標的細胞内または第一の参照条件(例えば、細胞内条件を模倣または表すように選択され得る)下で、対象の血液中、または第二の参照条件(例えば、血液または血清に見出される条件を模倣または表すよう選択され得る)下の少なくとも約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍または約100倍速く切断される。
【0314】
切断可能な結合基は、切断剤、例えば、pH、酸化還元電位または分解性分子の存在に感受性である。一般に、切断剤は、血清または血液中と比較して細胞内部に広く存在しており、またはより高いレベルもしくは活性にて存在する。このような分解剤の例としては、特定の基質のために選択されるか、または基質特異性を有さない酸化還元剤、例えば、還元により酸化還元切断可能な結合基を分解できるメルカプタンなどの細胞内に存在する酸化もしくは還元酵素;エステラーゼ;エンドソームまたは酸性環境を形成し得る薬剤、例えば、pHを5以下にする薬剤;一般的な酸として作用することにより、酸による切断可能な結合基を加水分解または分解できる酵素、ペプチダーゼ(基質特異的であり得る)およびホスファターゼが挙げられる。
【0315】
ジスルフィド結合などの切断可能な結合基は、pHに影響を受け易い可能性がある。ヒト血清のpHは7.4であるが、平均細胞内pHは、僅かに低く、約7.1~7.3の範囲である。エンドソームは、5.5~6.0の範囲内のより酸性のpHを有し、リソソームは、ほぼ5.0の、更により酸性のpHを有する。いくつかのリンカーは、好ましいpHで切断される切断可能な結合基を有することによって、細胞内部でリガンドからカチオン性脂質を放出し、または細胞の所望の区画内へ放出するであろう。
【0316】
リンカーは、特定の酵素により切断可能な、切断可能な結合基を含み得る。リンカーに組み込まれる切断可能な結合基のタイプは、標的とされる細胞に依って変化し得る。例えば、肝臓を標的とするリガンドは、エステル基を含むリンカーを介して、カチオン性脂質に結合され得る。肝細胞はエステラーゼを多く含んでいるため、このリンカーは、エステラーゼが多くない細胞種と比較して、肝細胞内でより効率的に切断されるであろう。エステラーゼを多く含むその他の細胞種としては、肺、腎皮質および精巣の細胞が挙げられる。
【0317】
ペプチド結合を含むリンカーは、肝細胞および滑膜細胞などのペプチダーゼを多く含む細胞種を標的とする際に使用することができる。
【0318】
一般に、切断可能な候補結合基の適切性は、分解剤(または分解条件)の候補結合基を切断する能力を試験することにより評価することができる。また、血液中で、または他の非標的組織と接触した際に、切断可能な候補結合基が、切断に抵抗する能力を試験することも望まれる。すなわち、一つには、第一の条件と第二の条件との間の切断に対する相対的な感受性を決定することができ、この第一の条件は、標的細胞内での切断を示すよう選択され、この第二の条件は、他の組織内または体液、例えば血液または血清中で切断を示すよう選択される。この評価は、無細胞系内、細胞内、細胞培養物中、器官内もしくは組織培養物中または全動物内で行うことができる。無細胞または培養条件で最初の評価を行い、全動物における更なる評価によって確認することが有用であり得る。好ましい実施態様において、有用な候補化合物は、血液または血清(または細胞外条件を模倣するよう選択されたインビトロでの条件下)と比較して、細胞内(または細胞内条件を模倣するよう選択されたインビトロでの条件下)で少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90または約100倍速く切断される。
【0319】
i.酸化還元的に切断可能な結合基
一実施態様において、切断可能な結合基は、還元または酸化後に切断される酸化還元的に切断可能な結合基である。還元的に切断可能な結合基の例は、ジスルフィド結合基(-S-S-)である。切断可能な候補結合基が、「還元的に切断可能な結合基」として好適であるかどうか、または例えば特定のiRNA部分および特定の標的化剤との使用に好適であるかどうかを決定するために、本明細書に記載される方法に注目し得る。例えば、候補は、ジチオスレイトール(DTT)または当該技術分野において公知の試薬を用いた他の還元剤とのインキュベーションによって評価することができ、これは、細胞、例えば標的細胞内で観察され得る切断の速度を模倣するものである。この候補は、血液または血清の条件を模倣するよう選択された条件下でも評価され得る。その1つにおいて、候補化合物は、血液中で約10%以下が切断される。他の実施態様において、有用な候補化合物は、血液中(または、細胞外条件を模倣するように選択されたインビトロでの条件下)と比較して、細胞内(または、細胞内条件を模倣するように選択されたインビトロでの条件下)で少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90または約100倍速く分解される。候補化合物の切断速度は、細胞内媒体を模倣するように選択された条件下での標準的な酵素反応速度アッセイを用いて決定され、細胞外媒体を模倣するように選択された条件と比較され得る。
【0320】
ii.リン酸塩ベースの切断可能な結合基
別の実施態様において、切断可能なリンカーは、リン酸塩ベースの切断可能な結合基を含む。リン酸塩ベースの切断可能な結合基は、リン酸基を分解または加水分解する薬剤によって切断される。細胞内でリン酸基を切断する薬剤の一例は、細胞内のホスファターゼなどの酵素である。リン酸塩ベースの結合基の例は、-O-P(O)(ORk)-O-、-O-P(S)(ORk)-O-、-O-P(S)(SRk)-O-、-S-P(O)(ORk)-O-、-O-P(O)(ORk)-S-、-S-P(O)(ORk)-S-、-O-P(S)(ORk)-S-、-S-P(S)(ORk)-O-、-O-P(O)(Rk)-O-、-O-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-O-、-S-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-S-、-O-P(S)(Rk)-S-である。好ましい実施態様は、-O-P(O)(OH)-O-、-O-P(S)(OH)-O-、-O-P(S)(SH)-O-、-S-P(O)(OH)-O-、-O-P(O)(OH)-S-、-S-P(O)(OH)-S-、-O-P(S)(OH)-S-、-S-P(S)(OH)-O-、-O-P(O)(H)-O-、-O-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-O、-S-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-S-および-O-P(S)(H)-S-である。好ましい実施態様は、-O-P(O)(OH)-O-である。これらの候補は、上述した方法と類似した方法を用いて評価することができる。
【0321】
iii.酸切断可能な結合基
別の実施態様において、切断可能なリンカーは、酸切断可能な結合基を含む。酸切断可能な結合基は、酸性条件下で切断される結合基である。好ましい実施態様において、酸切断可能な結合基は、約6.5以下(例えば、約6.0、5.5、5.0またはそれ以下)のpHを有する酸性環境内で、または一般的な酸として作用し得る酵素などの薬剤により、切断される。細胞内では、エンドソームおよびリソソームなどの特定の低pH小器官は、酸切断可能な結合基のための切断環境を提供し得る。酸切断可能な結合基の例には、限定はされないが、ヒドラゾン、エステルおよびアミノ酸のエステルが挙げられる。酸切断可能な基は、一般式-C=NN-、C(O)Oまたは-OC(O)で表され得る。好ましい実施態様は、エステルの酸素に結合した炭素(アルコキシ基)が、アリール基、置換アルキル基または第三級アルキル基(例えば、ジメチルペンチルまたはt-ブチルなど)である場合である。これらの候補は、上述した方法と類似した方法を用いて評価することができる。
【0322】
iv.エステルベースの結合基
別の実施態様において、切断可能なリンカーは、エステルベースの切断可能な結合基を含む。エステルベースの切断可能な結合基は、細胞内のエステラーゼおよびアミラーゼなどの酵素により切断される。エステルベースの切断可能な結合基の例としては、限定はされないが、アルキレン、アルケニレンおよびアルキニレン基のエステルが挙げられる。エステル切断可能な結合基は、一般式-C(O)O-、または-OC(O)-で表される。これらの候補は、上述した方法と類似した方法を用いて評価することができる。
【0323】
v.ペプチドベースの切断基
更に別の実施態様において、切断可能なリンカーは、ペプチドベースの切断可能な結合基を含む。ペプチドベースの切断可能な結合基は、細胞内のペプチダーゼおよびプロテアーゼなどの酵素により切断される。ペプチドベースの切断可能な基は、オリゴペプチド(例えば、ジペプチド、トリペプチドなど)およびポリペプチドを与えるような、アミノ酸間で形成されるペプチド結合である。ペプチドベースの切断可能な基は、アミド基(-C(O)NH-)を含まない。アミド基は、任意のアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンの間で形成され得る。ペプチド結合は、アミノ酸間で形成されてペプチドおよびタンパク質を与えるアミド結合の特別なタイプである。ペプチドベースの切断基は、一般に、アミノ酸間で形成されてペプチドおよびタンパク質を与えるペプチド結合(即ち、アミド結合)に限定され、アミド官能基全部は含まない。ペプチドベースの切断可能な結合基は、一般式-NHCHRAC(O)NHCHRBC(O)-で表され、式中、RAおよびRBは、隣接する2つのアミノ酸のR基である。これらの候補は、上述した方法と類似した方法を用いて評価することができる。
【0324】
ある実施態様において、本発明のiRNAは、リンカーを介して炭水化物とコンジュゲートされる。本発明の組成物および方法のリンカーとのiRNA炭水化物コンジュゲートの非限定的な例としては、限定はされないが、下記のものが挙げられる:
【化15】
【化16】
(式中、XまたはYの内の一つは、オリゴヌクレオチドであり、もう一方は水素である)。
【0325】
本発明の組成物および方法のある実施態様において、リガンドは、二価または三価の分枝鎖リンカーを介して結合された1つまたは複数の「GalNAc」(N-アセチルガラクトサミン)誘導体である。
【0326】
ある実施態様において、本発明のdsRNAは、式(XXXII)~(XXXV):
【化17】
[式中、
q2A、q2B、q3A、q3B、q4A、q4B、q5A、q5Bおよびq5Cは、各々独立して、0~20を表し、繰返し単位は、同一または異なり得る;
P
2A、P
2B、P
3A、P
3B、P
4A、P
4B、P
5A、P
5B、P
5C、T
2A、T
2B、T
3A、T
3B、T
4A、T
4B、T
4A、T
5B、T
5Cは、各々独立して、存在しないか、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NHまたはCH
2Oであり;
Q
2A、Q
2B、Q
3A、Q
3B、Q
4A、Q
4B、Q
5A、Q
5B、Q
5Cは、各々独立して、存在しないか、アルキレン、置換アルキレンであり、ここで1つまたは複数のメチレンは、1つまたは複数のO、S、S(O)、SO
2、N(R
N)、C(R')=C(R”)、C≡CまたはC(O)により中断または終端されてもよく;
R
2A、R
2B、R
3A、R
3B、R
4A、R
4B、R
5A、R
5B、R
5Cは、各々独立して、存在しないか、NH、O、S、CH
2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R
a)C(O)、-C(O)-CH(R
a)-NH-、CO、CH=N-O、
【化18】
ヘテロシクリルであり;
L
2A、L
2B、L
3A、L
3B、L
4A、L
4B、L
5A、L
5BおよびL
5Cは、リガンドを表し;即ち、各々独立して、単糖(例えば、GalNAcなど)、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖または多糖であり;
R
aは、Hまたはアミノ酸側鎖である]
のいずれかに示された構造の基から選択される二価または三価の分枝鎖リンカーにコンジュゲートされている。三価コンジュゲートGalNAc誘導体は、標的遺伝子の発現を阻害するためのRNAi剤、例えば、式(XXXV):
【化19】
(式中、L
5A、L
5BおよびL
5Cは、GalNAc誘導体などの単糖を表す)
とともに使用するために特に有用である。
【0327】
GalNAc誘導体にコンジュゲートする好適な二価および三価の分枝鎖状の結合基の例としては、限定はされないが、式II、VII、XI、XおよびXIIIとして上記した構造が挙げられる。
【0328】
RNAコンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許としては、次のものに限定しないが、米国特許第4,828,979号;4,948,882号;5,218,105号;5,525,465号;5,541,313号;5,545,730号;5,552,538号;5,578,717号;5,580,731号;5,591,584号;5,109,124号;5,118,802号;5,138,045号;5,414,077号;5,486,603号;5,512,439号;5,578,718号;5,608,046号;4,587,044号;4,605,735号;4,667,025号;4,762,779号;4,789,737号;4,824,941号;4,835,263号;4,876,335号;4,904,582号;4,958,013号;5,082,830号;5,112,963号;5,214,136号;5,082,830号;5,112,963号;5,214,136号;5,245,022号;5,254,469号;5,258,506号;5,262,536号;5,272,250号;5,292,873号;5,317,098号;5,371,241号;5,391,723号;5,416,203号;5,451,463号;5,510,475号;5,512,667号;5,514,785号;5,565,552号;5,567,810号;5,574,142号;5,585,481号;5,587,371号;5,595,726号;5,597,696号;5,599,923号;5,599,928号;5,688,941号;6,294,664号;6,320,017号;6,576,752号;6,783,931号;6,900,297号;7,037,646号;および8,106,022号が挙げられ、これらのそれぞれの全ての内容が、参照により本明細書に援用される。
【0329】
所与の化合物の全ての位置が、必ずしも均一に修飾されている必要はなく、実際には、上記の修飾のうちの2つ以上を、単一の化合物中にまたは更にはiRNA内の単一のヌクレオシドに組み込むことができる。本発明は、キメラ化合物であるiRNA化合物も含む。
【0330】
所与の化合物の全ての位置が均一に修飾されている必要はなく、実際には、上記の修飾のうちの2つ以上を、単一の化合物中にまたは更にはiRNA内の単一のヌクレオシドに組み込むことができる。本発明は、キメラ化合物であるiRNA化合物も含む。
【0331】
本明細書の文脈において、「キメラ」iRNA化合物または「キメラ」は、少なくとも1つのモノマー単位、即ち、dsRNA化合物の場合はヌクレオチドからそれぞれ構成される2つ以上の化学的に異なる領域を含むiRNA化合物、好ましくは、dsRNAi剤である。これらのiRNAは、通常、少なくとも1つの領域を含み、ここで、RNAは、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増加、細胞取り込みの増加、または標的核酸に対する結合親和性の増加をiRNAに与えるように修飾される。iRNAの更なる別の領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することが可能な酵素のための基質としての役割を果たし得る。例として、RNアーゼHは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。したがって、RNアーゼHの活性化は、RNA標的の切断をもたらし、それによって、遺伝子発現のiRNA阻害の効率を大幅に高める。その結果として、キメラdsRNAが使用される場合、同じ標的領域にハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシdsRNAと比較して、より短いiRNAによって同等の結果が得られることが多い。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動によって、および必要に応じて、当該技術分野において公知の関連する核酸ハイブリダイゼーション技術により常法的に検出され得る。
【0332】
場合によっては、iRNAのRNAは、非リガンド基によって修飾され得る。多くの非リガンド分子が、iRNAの活性、細胞分布または細胞取り込みを向上させるためにiRNAにコンジュゲートされており、このようなコンジュゲートを行うための手順は、科学文献から得られる。このような非リガンド部分は、例えばコレステロール(Kubo, T. et al., Biochem. Biophys. Res. Comm., 2007, 365(1):54-61;Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86:6553)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4:1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール (Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306;Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10:111;Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327;Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651;Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969)またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923)などの脂質部分を含んでいる。このようなRNAコンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許が上に列挙されている。典型的なコンジュゲートプロトコルは、配列の1つまたは複数の位置にアミノリンカーを有するRNAの合成を含む。次に、適切なカップリング剤または活性化試薬を用いて、アミノ基をコンジュゲートされた分子と反応させる。コンジュゲート反応は、固体担体に結合されたままのRNAを用いて、または溶液相中のRNAの切断後に行うことができる。HPLCによるRNAコンジュゲートの精製により、通常、純粋なコンジュゲートが得られる。
【0333】
IV.本発明のiRNAの送達
細胞、例えば、ヒト対象(例えば、KHK遺伝子発現に関連する疾病、障害または症状を有する対象などのiRNA剤を必要とする対象)などの対象中の細胞への本発明のiRNAの送達は、いくつかの様々な方法で行うことができる。例えば、送達は、細胞を、本発明のiRNAとインビトロまたはインビボのいずれかで接触させることによって行われ得る。インビボ送達はまた、iRNA、例えば、dsRNAを含む組成物を対象に投与することによって直接行われ得る。あるいは、インビボ送達は、iRNAの発現をコードし、それを導く1つまたは複数のベクターを投与することによって、間接的に行われ得る。これらの代替例は、以下に更に説明される。
【0334】
一般に、核酸分子を(インビトロまたはインビボで)送達する任意の方法は、本発明のiRNAとともに使用するために適合され得る(例えば、全体が参照により本明細書に援用される、Akhtar S. and Julian RL. (1992) Trends Cell. Biol. 2(5):139-144および国際公開第94/02595号パンフレットを参照)。インビボ送達の場合、iRNA分子を送達するための検討因子としては、例えば、送達される分子の生物学的安定性、非特異的効果の防止および標的組織における送達される分子の蓄積が挙げられる。iRNAの非特異的効果は、局所投与によって、例えば、組織への直接注入または移植によって、あるいは製剤を局所的に投与することによって、最小限に抑えられ得る。治療部位への局所投与は、薬剤の局所濃度を最大にして、薬剤による悪影響を受ける可能性があるか、または薬剤が分解され得る全身組織に対する剤の曝露を制限して、投与されるiRNA分子の総投与量を少なくすることができる。いくつかの研究により、dsRNAiが局所投与された場合の遺伝子産物のノックダウンの成功が示されている。例えば、カニクイザルの硝子体内注射によるVEGF dsRNAの眼内送達(Tolentino, MJ, et al (2004) Retina 24:132-138)およびマウスの網膜下注射(Reich, SJ., et al (2003) Mol. Vis. 9:210-216)は、両方とも、加齢性黄斑変性症の実験モデルにおける新血管形成を防ぐことを示した。更に、マウスにおけるdsRNAの直接腫瘍内投与が腫瘍容積を減少させ(Pille, J., et al (2005) Mol. Ther.11:267-274)、担癌マウスを延命させることができた(Kim, WJ., et al (2006) Mol. Ther. 14:343-350;Li, S., et al (2007) Mol. Ther. 15:515-523)。RNA干渉は、直接注入による中枢神経系への局所送達(Dorn, G., et al. (2004) Nucleic Acids 32:e49;Tan, PH., et al (2005) Gene Ther. 12:59-66;Makimura, H., et al (2002) BMC Neurosci. 3:18;Shishkina, GT., et al (2004) Neuroscience 129:521-528;Thakker, ER., et al (2004) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101:17270-17275;Akaneya,Y., et al (2005) J. Neurophysiol. 93:594-602)および鼻腔内投与による肺への局所送達(Howard, KA., et al (2006) Mol. Ther. 14:476-484;Zhang, X., et al (2004) J. Biol. Chem. 279:10677-10684;Bitko, V., et al (2005) Nat. Med. 11:50-55)による成功も示している。疾病の治療のためにiRNAを全身投与するために、RNAは、修飾され得るか、あるいは薬剤送達システムを用いて送達することが可能であり;両方の方法は、インビボでのエンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼによるdsRNAの急速な分解を防ぐように作用する。RNAまたは医薬担体の修飾は、標的組織へのiRNAの標的化を可能にし、望ましくないオフターゲット効果を回避することもできる。iRNA分子は、細胞取り込みを向上させて、分解を防ぐコレステロールなどの親油基への化学的結合によって修飾され得る。例えば、親油性コレステロール部分にコンジュゲートされたApoBに対するiRNAを、マウスに全身投与して、肝臓および空腸の両方においてapoB mRNAのノックダウンを得た(Soutschek, J., et al (2004) Nature 432:173-178)。アプタマーへのiRNAのコンジュゲートは、前立腺癌のマウスモデルにおける腫瘍増殖を阻害し、腫瘍退縮を仲介することが示されている(McNamara, JO, et al (2006) Nat. Biotechnol. 24:1005-1015)。別の実施態様において、iRNAは、ナノ粒子、デンドリマー、ポリマー、リポソームまたはカチオン性送達システムなどの薬剤送達システムを用いて送達され得る。正に帯電したカチオン性送達システムは、iRNA分子(負に帯電した)の結合を促進し、また、負に帯電した細胞膜での相互作用を向上させて、細胞によるiRNAを効率的に取り込むことができる。カチオン性脂質、デンドリマーまたはポリマーは、iRNAに結合され得るか、またはiRNAを包む小胞またはミセル(例えば、Kim SH, et al (2008) Journal of Controlled Release 129(2):107-116を参照)を形成するように誘導され得る。小胞またはミセルの形成は、全身投与される場合のiRNAの分解を更に防ぐ。カチオン性iRNA複合体を作製し、投与するための方法は、十分当業者の能力の範囲内である(例えば、全体が参照により本明細書に援用される、Sorensen, DR, et al (2003) J. Mol. Biol 327:761-766;Verma, UN, et al (2003) Clin. Cancer Res. 9:1291-1300;Arnold, AS et al (2007) J. Hypertens. 25:197-205を参照)。iRNAの全身送達に有用な薬剤送達システムのいくつかの非限定的な例としては、DOTAP(SSorensen, DR., et al (2003)、上記参照;Verma, UN, et al (2003)、上記を参照)、オリゴファクタミン、つまり「固体核酸脂質粒子」(Zimmermann, TS, et al (2006) Nature 441:111-114)、カルジオリピン(Chien, PY, et al (2005) Cancer Gene Ther. 12:321-328;Pal, A, et al (2005) Int J. Oncol. 26:1087-1091)、ポリエチレンイミン(Bonnet ME, et al (2008) Pharm. Res. Aug 16 Epub ahead of print;Aigner, A. (2006) J. Biomed. Biotechnol. 71659)、Arg-Gly-Asp(RGD)ペプチド(Liu, S. (2006) Mol. Pharm. 3:472-487)およびポリアミドアミン(Tomalia, DA, et al (2007) Biochem. Soc. Trans. 35:61-67;Yoo, H., et al (1999) Pharm. Res. 16:1799-1804)が挙げられる。ある実施態様において、iRNAは、全身投与のためにシクロデキストリンとともに複合体を形成する。投与のための方法およびiRNAsおよびシクロデキストリンの医薬組成物は米国特許第7,427,605号明細書に見出され、全体が参照により本明細書に援用される。
【0335】
A.ベクターでコードされた本発明のiRNA
KHK遺伝子を標的とするiRNAは、DNAまたはRNAベクターに挿入された転写単位から発現され得る(例えば、Couture, A, et al., TIG. (1996), 12:5-10;Skillern, Aらの国際PCT公開番号国際公開第00/22113号パンフレットを参照)。発現は、使用される特定の構築体および標的組織または細胞種に応じて、一時的(およそ数時間から数週間)でもあり得るし、または持続されることも可能である(数週間から数カ月またはそれ以上)。これらの導入遺伝子は、線状構築体、環状プラスミドまたはウイルスベクターとして導入することができ、これらは、組み込みベクターまたは非組み込みベクターであり得る。導入遺伝子は、染色体外プラスミドとして継承できるように構築することもできる(Gassmann, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92:1292)。
【0336】
iRNAの個々の1つまたは複数の鎖は、発現ベクターにおけるプロモーターから転写され得る。2本の別個の鎖が発現されて、例えば、dsRNAを生成する場合、2つの別個の発現ベクターが、標的細胞中に、共導入(例えば、トランスフェクションまたは感染によって)され得る。あるいは、dsRNAの各個々の鎖が、同じ発現プラスミド上に位置するこれら双方のプロモーターによって転写され得る。一実施態様において、dsRNAは、ステム・ループ構造を有するように、リンカーポリヌクレオチド配列によって接合される逆方向反復ポリヌクレオチドとして発現される。
【0337】
iRNA発現ベクターは、一般に、DNAプラスミドまたはウイルスベクターである。真核細胞と適合する発現ベクター、好ましくは、脊椎動物細胞と適合する発現ベクターを用いて、本明細書に記載されるiRNAの発現のための組み換え構築体を産生することができる。真核細胞の発現ベクターは、当該技術分野において周知であり、多くの商業的供給源から入手可能である。通常、所望の核酸セグメントを挿入するのに好都合な制限部位を含むこのようなベクターが提供される。iRNA発現ベクターの送達は、全身投与、例えば、静脈内または筋肉内投与によるか、患者から移植された標的細胞に投与した後に患者に再導入することによるか、または所望の標的細胞への導入を可能にする任意の他の手段などにより送達できる。
【0338】
本明細書に記載される方法および組成物とともに用い得るウイルスベクター系としては、限定はされないが、(a)アデノウイルスベクター;(b)レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター、モロニーマウス白血病ウイルスなどを含むが、これらに限定されない;(c)アデノ随伴ウイルスベクター;(d)単純ヘルペスウイルスベクター;(e)SV40ベクター;(f)ポリオーマウイルスベクター;(g)パピローマウイルスベクター;(h)ピコルナウイルスベクター;(i)オルソポックス(orthopox)、例えば、ワクシニアウイルスベクターまたは鳥ポックス、例えばカナリア痘または鶏痘などのポックスウイルスベクター;および(j)ヘルパー依存性または弱毒アデノウイルスが挙げられる。複製欠損性ウイルスも有利であり得る。異なるベクターが、細胞のゲノムに組み込まれるか、または組み込まれないであろう。構築体は、必要に応じて、トランスフェクションのためのウイルス配列を含み得る。あるいは、構築体は、エピソーム複製が可能なベクター、例えばEPVおよびEBVベクターに組み込まれ得る。iRNAの組み換え発現のための構築体は、一般に、標的細胞内でのiRNAの発現を確実にするために、調節エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサーなどを必要とする。ベクターおよび構築体について考慮される別の態様は、当分野では既知である。
【0339】
V.本発明の医薬組成物
本発明は、本発明のiRNAを含む医薬組成物および製剤も含む。一実施態様において、本明細書に記載されるiRNAと薬学的に許容され得る担体を含有する医薬組成物も本明細書に提供される。iRNAを含有する医薬組成物は、KHK遺伝子の発現または活性に関連する疾患または障害を治療するのに有用である。このような医薬組成物は、送達様式に基づいて製剤化される。一例は、非経口投与を介した、例えば、皮下(SC)または静脈内(IV)送達による全身投与用に製剤化される組成物である。本発明の医薬組成物は、KHK遺伝子の発現を阻害するのに十分な投与量で投与され得る。
【0340】
本発明の医薬組成物は、KHK遺伝子の発現を阻害するのに十分な投与量で投与され得る。一般的に、本発明のiRNAの適切な用量は、約0.001~約200.0mg/kg体重/日、通常、約1~50mg/体重kg/日の範囲にある。通常、本発明のiRNAの適切な用量は、約0.1mg/kg~約5.0mg/kg、好ましくは約0.3mg/kg~約3.0mg/kgの範囲である。反復投与レジメンは、定期的に、例えば、隔日または1回/年で治療量のiRNAを投与すること包含し得る。ある実施態様において、iRNAは、約1回/月~約1回/四半期(即ち、約3ヶ月に1回)にて投与される。
【0341】
最初の治療レジメンの後、治療剤は、より少ない頻度で投与され得る。例えば、毎週または隔週で3ヶ月間の投与後、投与は、月に1回、6ヶ月間または1年間またはそれ以上にわたって繰り返され得る。
【0342】
医薬組成物は、一日1回投与することができ、またはiRNAは、1日を通して適切な間隔で、2、3以上の分割用量として投与され、または更には、連続注入もしくは徐放製剤を介した送達を用いて投与されてもよい。その場合、各分割用量に含まれるiRNAは、総一日投与量を達成するよう、それに応じてより少量である必要がある。投与単位はまた、例えば数日間の期間にわたりiRNAの持続放出を提供する従来の徐放性製剤を使用して、数日間にわたり送達用に配合されてもよい。徐放性製剤は、当技術分野にて周知であり、薬剤を特定の部位に送達するのに特に有用であるため、本発明の薬剤とともに使用することができる。この実施態様において、投与単位は、一日用量の対応する倍数を含む。
【0343】
別の実施態様において、医薬組成物の単回投与は、長期継続が可能であるので、その後の用量は、3、4または5日以下の間隔、あるいは1、2、3または4週間以下の間隔で投与される。本発明のある実施態様において、本発明の医薬組成物の単回投与は、週に1回投与される。本発明の他の実施態様において、本発明の医薬組成物の単回投与は、2ヶ月に1回投与される。
【0344】
当業者は、非限定的に疾病または疾患の重症度、治療歴、対象の全体的な健康または年齢、ならびに存在する他の疾病を含む所定の因子が対象を効果的に治療するのに必要な投与量および時間に影響し得ることを認識するであろう。更に、治療的有効量の組成物による対象の治療は、単一の治療または一連の治療を含み得る。本発明により包含される個々のiRNAに関する有効な投与量、およびインビボでの半減期は、従来の方法論を用いて、または当分野では既知の適切な動物モデルを使用したインビボでの試験に基づいて概算することができる。様々な疾患および症状についての適切な動物モデルは、本明細書において提供される。
【0345】
本発明の医薬組成物は、局所的または全身的治療が必要かどうか、および治療される部位に応じて、いくつかの方法で投与され得る。投与は、局所投与(例えば、経皮パッチによる)、例えば、ネブライザーなどによる、粉末またはエアロゾルの吸入または吹送による経肺投与;気管内、鼻腔内、表皮および経皮、経口または非経口投与であり得る。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または注入;例えば、埋め込みデバイスによる皮下投与;または、例えば、実質内、髄腔内もしくは脳室内投与による頭蓋内投与が挙げられる。
【0346】
iRNAは、特定の組織(例えば、血管内皮細胞)を標的とするような様式で送達され得る。
【0347】
局所投与または経皮投与用の医薬組成物および製剤には、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、液滴、坐薬、噴霧剤、液剤および散剤が挙げられる。従来の医薬担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤などが必要であり、または所望され得る。被覆コンドーム、手袋なども有用であり得る。好適な局所製剤は、本発明を特徴付けるiRNAが、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化剤および界面活性剤などの局所送達薬剤との混合物であるものを含む。好適な脂質およびリポソームは、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰イオン性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)および陽イオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)を含む。本発明を特徴付けるiRNAは、リポソーム中に封入されることができ、またはリポソームに対して、特に陽イオン性リポソームに対して錯体を形成することができる。あるいは、iRNAは、脂質に対して、特に陽イオン性脂質に対して錯体化されてもよい。好適な脂肪酸およびエステルには、非限定的にアラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはC1~20アルキルエステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピルIPM)、モノグリセリド、ジグリセリドまたはこれらの薬学的に許容され得る塩が挙げられる)。局所製剤は、米国特許第6,747,014号明細書に詳細に記載されており、この内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0348】
A.膜分子集合体を含むiRNA製剤
本発明の組成物および方法に使用するためのiRNAは、膜分子集合体、例えば、リポソームまたはミセル中の送達用に製剤化され得る。本明細書において使用される際、「リポソーム」という用語は、少なくとも1つの二重層、例えば、1つの二重層または複数の二重層に配置された両親媒性の脂質から構成される小胞を指す。リポソームは、親油性材料および水性内部から形成される膜を有する単層および多層の小胞を含む。水性部分は、iRNAを含有する。親油性材料は、水性外部から水性内部を分離しており、通常、iRNA組成物を含まないが、場合に依り含んでいてもよい。リポソームは、作用部位への活性成分の移送および送達に有用である。リポソーム膜は生体膜と構造が類似しているため、リポソームが組織に付着すると、リポソームの二重層は細胞膜の二重層と融合する。リポソームおよび細胞の融合が進むにつれて、iRNAを含む内部の水性物質が、細胞に送達され、ここでiRNAは、標的RNAに特異的に結合することができ、RNA干渉を仲介することができる。場合によっては、リポソームはまた、例えば、iRNAを特定の細胞種に向うように、特異的に標的化される。
【0349】
iRNA剤を含有するリポソームは、様々な方法によって調製され得る。一例において、リポソームの脂質成分は、ミセルが脂質成分と共に形成されるように、洗剤に溶解される。例えば、脂質成分は、両親媒性のカチオン性脂質または脂質コンジュゲートであり得る。洗剤は、高い臨界ミセル濃度を有することができ、非イオン性であり得る。例示的な洗剤としては、コール酸塩、CHAPS、オクチルグルコシド、デオキシコール酸塩およびラウロイルサルコシンが挙げられる。次に、iRNA剤の調製物は、脂質成分を含むミセルに加えられる。脂質におけるカチオン性基は、iRNA剤と相互作用し、iRNA剤周辺で縮合して、リポソームを形成する。縮合の後、洗剤は、例えば透析によって除去されて、iRNA剤のリポソーム製剤が得られる。
【0350】
必要に応じて、縮合を補助する担体化合物は、例えば、制御添加によって、縮合反応中に加えられ得る。例えば、担体化合物は、核酸以外のポリマー(例えば、スペルミンまたはスペルミジン)であり得る。縮合を補助するために、pHを調整することも可能である。
【0351】
送達ビヒクルの構成成分としてポリヌクレオチド/カチオン性脂質複合体を組み込む安定したポリヌクレオチド送達ビヒクルを生成するための方法が、例えば本明細書に援用される国際公開第96/37194号パンフレットに更に記載されており、この全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。リポソーム形成は、Felgner, P. L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 8:7413-7417, 1987;米国特許第4,897,355号明細書;米国特許第5,171,678号明細書;Bangham, et al. M. Mol. Biol. 23:238, 1965;Olson, et al. Biochim. Biophys. Acta 557:9, 1979;Szoka, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 75: 4194, 1978;Mayhew, et al. Biochim. Biophys. Acta 775:169, 1984;Kim, et al. Biochim. Biophys. Acta 728:339, 1983;およびFukunaga, et al. Endocrinol. 115:757, 1984に記載される例示的な方法の1つまたは複数の態様も含み得る。送達ビヒクルとして使用するのに適切なサイズの脂質集合体を調製するための一般的に使用される技術としては、超音波処理ならびに凍結融解および押し出しが挙げられる(例えば、Mayer, et al. Biochim. Biophys. Acta 858:161, 1986を参照)。一貫して小さく(50~200nm)、かつ比較的均一な集合体が望まれる場合、顕微溶液化(Microfluidization)を使用することができる(Mayhew, et al. Biochim. Biophys. Acta 775:169, 1984)。これらの方法は、iRNA剤の調製物をリポソームにパッケージングするために適用し易い。
【0352】
リポソームは、大きく2つに分類される。陽イオン性リポソームは、負に帯電された核酸分子と相互作用して安定な複合体を形成する正に帯電されたリポソームである。正に帯電された核酸/リポソーム複合体は、負に帯電された細胞表面に結合し、エンドソーム内に移行される。エンドソーム内の酸性pHのために、リポソームが破れ、それらの内容物が細胞質内に放出される(Wang et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 1987, 147, 980-985)。
【0353】
pH感受性であるか、または負に帯電されたリポソームは、核酸と複合体化するのではなく、むしろ核酸を捕捉する。核酸および脂質の両方は同様に帯電されるため、複合体形成ではなく反発が起こる。それにも係わらず、いくつかの核酸はこれらのリポソームの水性内部に取り込まれる。pH感受性リポソームは、チミジンキナーゼ遺伝子をコードする核酸を培養物中の細胞単層に送達するために使用されている。外来遺伝子の発現が、標的細胞内で検出されている(Zhou et al., Journal of Controlled Release, 1992, 19, 269-274)。
【0354】
リポソーム組成物のある1つの主要タイプは、天然由来のホスファチジルコリン以外のリン脂質を含む。例えば、中性リポソーム組成物は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成され得る。陰イオン性リポソーム組成物は、一般に、ジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成されるが、陰イオン性膜融合リポソームは、主としてジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。他のタイプのリポソーム組成物は、例えば、大豆PCおよび卵PCなどのホスファチジルコリン(PC)から形成される。他のタイプは、2つ以上のリン脂質、ホスファチジルコリンおよびコレステロールの混合物から形成される。
【0355】
リポソームを細胞中にインビトロおよびインビボで導入するための他の方法の例としては、米国特許第5,283,185号明細書;米国特許第5,171,678号明細書;国際公開第94/00569号パンフレット;国際公開第93/24640号パンフレット;国際公開第91/16024号パンフレット;Felgner, J. Biol. Chem. 269:2550, 1994;Nabel, Proc. Natl. Acad. Sci. 90:11307, 1993;Nabel, Human Gene Ther. 3:649, 1992;Gershon, Biochem. 32:7143, 1993;およびStrauss EMBO J. 11:417, 1992が挙げられる。
【0356】
非イオン性リポソーム系、特に非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む系も試験されて、皮膚への薬物の送達におけるそれらの有用性が決定されている。Novasome(商標)I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome(商標)II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤を使用して、シクロスポリン-Aをマウス皮膚の真皮に送達した。結果はそのような非イオン性リポソーム系が皮膚の異なる層中へのシクロスポリン-Aの堆積を促進するのに有効であることを示した(Hu et al. S.T.P.Pharma. Sci., 1994, 4(6) 466)。
【0357】
リポソームは、「立体的に安定化された」リポソームも含み、本明細書で使用されるこの用語は、1つまたは複数の特定の脂質を含むリポソームを指し、その特定の脂質は、リポソームに組み込まれた際、そのような特定の脂質を含まないリポソームと比較して、循環寿命が増長する。立体的に安定化されたリポソームの例は、リポソームのベシクル形成脂質部分の一部が、(A)モノシアロガングリオシドGM1などの1つまたは複数の糖脂質を含むもの、または(B)ポリエチレングリコール(PEG)部分などの1つまたは複数の親水性ポリマーで誘導体化されているものである。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、当技術分野では、少なくともガングリオシド、スフィンゴミエリン、またはPEG-誘導体化脂質を含む立体的に安定化されたリポソームに関しては、これらの立体的に安定化されたリポソームの増強された循環半減期は、細網内皮系(RES)の細胞内への取り込みの低下に由来すると考えられている(Allen et al., FEBS Letters, 1987, 223, 42;Wu et al., Cancer Research, 1993, 53, 3765)。
【0358】
1つまたは複数の糖脂質を含む様々なリポソームが、当技術分野にて既知である。Papahadjopoulosら(Ann. N.Y. Acad. Sci., 1987, 507, 64)は、リポソームの血中半減期を改善するモノシアロガングリオシドGM1、硫酸ガラクトセレブロシドおよびホスファチジルイノシトールの能力を報告している。これらの知見は、Gabizonらにより詳説されている(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1988, 85, 6949)。米国特許第4,837,028号明細書および国際公開第88/04924号パンフレット(両方ともAllen et al.による)は、(1)スフィンゴミエリンおよび(2)ガングリオシドGM1または硫酸ガラクトセレブロシドエステルを含むリポソームを開示している。米国特許第5,543,152号明細書(Webb et al.)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示している。1,2-sn-ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、国際公開第97/13499号パンフレット(Lim et al)に開示されている。
【0359】
ある実施態様において、カチオン性リポソームが使用される。カチオン性リポソームには、細胞膜に融合することができるという利点がある。非カチオン性リポソームは、それほど効率的には細胞膜と融合できないが、インビボでマクロファージによって取り込まれ、iRNA剤をマクロファージに送達するのに使用され得る。
【0360】
リポソームの更なる利点としては、以下の点が挙げられる:天然のリン脂質から得られるリポソームは、生体適合性があり、かつ生分解可能であり;リポソームは、広範囲の水溶性薬剤および脂溶性薬剤を組み込むことができ;リポソームは、その内部の区画中に封入されたiRNA剤を、代謝および分解から保護することができる(Rosoff, in "Pharmaceutical Dosage Forms," Lieberman, Rieger and Banker (Eds.)。リポソーム製剤の調製における重要な考慮事項は、脂質表面電荷、小胞サイズおよびリポソームの水溶性の容積である。
【0361】
正に帯電した合成カチオン性脂質である、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)を用いて、核酸と自発的に相互作用して、組織培養細胞の細胞膜の負に帯電した脂質と融合し、iRNA剤の送達をもたらすことが可能な脂質-核酸複合体を形成する小さなリポソームを形成することができる(例えば、Felgner, P. L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 8:7413-7417, 1987;およびDOTMAおよびDNAとのその使用の説明については米国特許第4,897,355号明細書を参照)。
【0362】
DOTMAアナログである、1,2-ビス(オレイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニア)プロパン(DOTAP)は、リン脂質と組み合わせて使用して、DNA複合小胞を形成することができる。Lipofectin(商標)(Bethesda Research Laboratories, Gaithersburg, Md.)は、負に帯電したポリヌクレオチドと自発的に相互作用して、複合体を形成する正に帯電したDOTMAリポソームを含む生体組織培養細胞中に高アニオン性の核酸を送達するための効果的な薬剤である。十分に正に帯電したリポソームが使用される場合、得られる複合体の正味電荷も正である。このように調製される正に帯電した複合体は、負に帯電した細胞表面に自発的に付着し、細胞膜と融合し、機能性核酸を、例えば、組織培養細胞中に効率的に送達する。別の市販のカチオン性脂質である、1,2-ビス(オレイルオキシ)-3,3-(トリメチルアンモニア)プロパン(「DOTAP」)(Boehringer Mannheim, Indianapolis, Indiana)は、オレオイル部分がエーテル結合ではなく、エステルによって結合された点でDOTMAとは異なる。
【0363】
その他の報告されたカチオン性脂質化合物は、様々な官能基にコンジュゲートされたもの、例えば、2種類の脂質のうちの1つにコンジュゲートされたカルボキシスペルミンを包含し、また例えば5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタオレオイルアミド(「DOGS」)(Transfectam(登録商標), Promega, Madison, Wisconsin)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン 5-カルボキシスペルミル-アミド(「DPPES」)(例えば、米国特許第5,171,678号を参照されたい)などの化合物を包含する。
【0364】
別のカチオン性脂質コンジュゲートは、DOPEと組み合わせてリポソームに製剤化されたコレステロールによる脂質の誘導体(「DC-Chol」)を含む(Gao, X. and Huang, L., Biochim. Biophys. Res. Commun. 179:280, 1991を参照)。ポリリジンをDOPEにコンジュゲートすることによって作製されるリポポリリジンは、血清の存在下におけるトランスフェクションに有効であると報告されている(Zhou, X. et al., Biochim. Biophys. Acta 1065:8, 1991)。特定の細胞株では、コンジュゲートされたカチオン性脂質を含有するこれらのリポソームは、DOTMA含有組成物よりも低い毒性を示し、より効率的なトランスフェクションを提供するとされている。他の市販のカチオン性脂質製品としては、DMRIEおよびDMRIE-HP(Vical, La Jolla, California)およびリポフェクタミン(DOSPA)(Life Technology, Inc., Gaithersburg, Maryland)が挙げられる。オリゴヌクレオチドの送達に好適な他のカチオン性脂質が、国際公開第98/39359号パンフレットおよび国際公開第96/37194号パンフレットに記載されている。
【0365】
リポソーム製剤は、局所投与に特に適しており、リポソームは、他の製剤に優るいくつかの利点を示す。このような利点としては、投与される薬剤の全身への高い吸収率に関連する副作用の低下、所望の標的における投与薬剤の蓄積の増加、およびiRNA剤を皮膚に投与する能力が挙げられる。ある実施において、iRNA剤を表皮細胞に送達するために、また真皮組織、例えば、皮膚へのiRNA剤の浸透を促進するためにもリポソームが使用される。例えば、リポソームは、局所的に適用され得る。リポソームとして製剤化される薬剤の皮膚への局所送達が報告されている(例えば、Weiner et al., Journal of Drug Targeting, 1992, vol. 2,405-410 and du Plessis et al., Antivirus Research, 18, 1992, 259-265;Mannino, R. J. and Fould-Fogerite, S., Biotechniques 6:682-690, 1988;Itani, T. et al. Gene 56:267-276. 1987;Nicolau, C. et al. Meth. Enz. 149:157-176, 1987;Straubinger, R. M. and Papahadjopoulos, D. Meth. Enz. 101:512-527, 1983;Wang, C. Y. and Huang, L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7851-7855, 1987を参照されたい)。
【0366】
非イオン性リポソーム系、特に、非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む系も、皮膚への薬剤の送達におけるそれらの有用性を決定するために試験されている。Novasome I(登録商標)(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome II(登録商標)(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤が、マウス皮膚の真皮に薬剤を送達するのに使用された。iRNA剤を含むこのような製剤は、皮膚疾患を治療するのに有用である。
【0367】
iRNAを含むリポソームは、高度な可変形体を製造できる。このような変形性は、リポソームが、リポソームの平均半径より小さい孔を透過するのを可能にし得る。例えば、トランスファーソームは、変形可能なリポソームの一種である。トランスファーソームは、表面縁の活性化因子、通常、界面活性剤を、標準的なリポソーム組成物に加えることによって作製され得る。iRNAを含むトランスファーソームは、皮膚のケラチノサイトにiRNAを送達するために、例えば、皮下感染によって送達され得る。無傷の哺乳動物皮膚を通過するために、脂質小胞は、好適な経皮勾配の影響下で、50nm未満の直径をそれぞれ有する一連の微細孔を通過しなければならない。更に、脂質特性のため、これらのトランスファーソームは、自己最適化(例えば、毛穴の形状に適応できる)、自己修復性であり得、多くの場合、破砕せずにそれらの標的に到達し、多くの場合、自己担持性(self-loading)であり得る。
【0368】
本発明に適した他の製剤が、WO2008/042973にも記載されている。
【0369】
トランスファーソームは、リポソームの更なる別の一タイプであり、薬物送達ビヒクルとして、魅力的な候補物質である高度に変形可能な脂質凝集体である。トランスファーソームは、脂質小滴として記載することもでき、この脂質小滴は、高度に変形可能であるため、小滴よりも小さい孔内を容易に透過することができる。トランスファーソームは、それらが使用される環境に適合可能であり、例えば自己最適性(皮膚内の孔の形状に適応する)であり、自己修復性であり、断片化することなくそれらの標的に多く到達し、また多くの場合自己担持性である。トランスファーソームを作製するためには、通常は界面活性剤である表面縁の活性化因子を標準的なリポソーム組成物に加えることが可能である。トランスファーソームは、皮膚に血清アルブミンを送達するのに使用されている。トランスファーソーム仲介による血清アルブミンの送達は、血清アルブミンを含む溶液の皮下注射と同様に効果的であることが示されている。
【0370】
界面活性剤は、エマルション(マイクロエマルションを含む)およびリポソームなどの製剤に広い用途を見出している。天然および合成の両方の多数の異なるタイプの界面活性剤を分類およびランキングする最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB)の使用によるものである。親水性基(「頭部」としても知られている)の性質は、製剤中に使用される異なる界面活性剤を類別する最も有用な手段を提供する(Rieger, in "Pharmaceutical Dosage Forms", Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, p. 285)。
【0371】
界面活性剤分子がイオン化されていない場合、この界面活性剤は非イオン性界面活性剤に分類される。非イオン性界面活性剤は、医薬および美容製品に広い用途を見出し、広範囲のpH値にわたって使用可能である。一般に、それらのHLB値は、それらの構造に応じて2~約18の範囲である。非イオン性界面活性剤には、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステルおよびエトキシル化エステルなどの非イオン性エステルが挙げられる。非イオン性アルカノールアミド、および脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコールおよびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーなどのエーテルも、このクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤クラスの最も人気のあるメンバーである。
【0372】
界面活性剤分子が水中に溶解または分散した際に負電荷を保有する場合、この界面活性剤は陰イオン性に分類される。陰イオン性界面活性剤には、せっけんなどのカルボキシレート、アシルラクチレート、アミノ酸のアシルアミド、アルキルスルフェートおよびエトキシル化アルキルスルフェートなどの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホネートなどのスルホネート、アシルイセチオネート、アシルタウレートおよびスルホスクシネートならびにホスフェートが挙げられる。陰イオン性界面活性剤類の最も重要なメンバーは、アルキルスルフェートおよびせっけんである。
【0373】
界面活性剤分子が水中に溶解または分散した際に正電荷を保有する場合、この界面活性剤は陽イオン性に分類される。陽イオン性界面活性剤には、第四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが挙げられる。第四級アンモニウム塩は、最も使用されているこのクラスのメンバーである。
【0374】
界面活性剤分子が正または負電荷のいずれかを保有する能力を有する場合、この界面活性剤は両性に分類される。両性界面活性剤には、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N-アルキルベタインおよびホスファチドが挙げられる。
【0375】
薬剤製品、製剤およびエマルション中での界面活性剤の使用は、概説されている(Rieger, in "Pharmaceutical Dosage Forms", Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, p. 285)。
【0376】
本発明の方法に使用するためのiRNAは、ミセル製剤として提供され得る。「ミセル」とは、分子の全ての疎水性部分が内側を向いて、親水性部分を周囲の水相と接触させるように、両親媒性分子が球体構造で配置されている特定のタイプの分子集合体として本明細書において定義される。環境が疎水性である場合、逆の配置が存在する。
【0377】
経皮膜を介した送達に好適な混合ミセル製剤は、iRNAの水溶液、アルカリ金属C8~C22アルキル硫酸塩およびミセル形成化合物を混合することによって調製され得る。例示的なミセル形成化合物としては、レシチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の薬学的に許容され得る塩、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート、モノラウレート、ルリヂサ油、月見草油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシンおよびその薬学的に許容され得る塩、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテルおよびその類似体、ポリドカノールアルキルエーテルおよびその類似体、ケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩およびそれらの混合物が挙げられる。ミセル形成化合物は、アルカリ金属アルキル硫酸塩の添加と同時にまたはその後に加えられてもよい。混合ミセルは、成分の実質的にあらゆる種類の混合により形成されるが、より小さいサイズのミセルを提供するためには激しく混合することで形成される。
【0378】
1つの方法において、RNAiおよび少なくともアルカリ金属アルキル硫酸塩を含有する第1のミセル組成物が調製される。次に、第1のミセル組成物は、少なくとも3つのミセル形成化合物と混合されて、混合ミセル組成物が形成される。別の方法において、ミセル組成物は、RNAi、アルカリ金属アルキル硫酸塩およびミセル形成化合物の少なくとも1つを混合し、その後激しく混合しながら残りのミセル形成化合物を加えることにより調製される。
【0379】
フェノールまたはm-クレゾールが、混合ミセル組成物に加えられて、製剤を安定化し、細菌増殖から保護してもよい。あるいは、フェノールまたはm-クレゾールは、ミセル形成成分とともに加えられてもよい。グリセリンなどの等張剤も、混合ミセル組成物の形成後に加えられてもよい。
【0380】
スプレーとしてミセル製剤を送達するために、製剤をエアロゾルディスペンサーに入れることが可能であり、またディスペンサーに噴射剤が充填される。加圧下にある噴射剤は、ディスペンサー中で液体形態である。成分の比率は、水相および噴射剤相が1つになるように、即ち、1つの相が存在するように調整される。2つの相が存在する場合、例えば、定量弁によって、内容物の一部を投薬する前にディスペンサーを振とうする必要がある。医薬品の投薬用量は、微細なスプレー状で定量弁から噴射される。
【0381】
噴射剤は、水素含有クロロフルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、ジメチルエーテルおよびジエチルエーテルを含み得る。特定の実施態様において、HFA 134a(1,1,1,2テトラフルオロエタン)が使用されてもよい。
【0382】
必須成分の特定の濃度は、比較的単純な実験によって決定され得る。口腔を介した吸収では、注射または胃腸管を介した投与のための投与量の、例えば、少なくとも2倍または3倍に増加させることが望ましいことが多い。
【0383】
B.脂質粒子
本発明のiRNA、例えばdsRNAi剤は、脂質製剤中、例えばLNP中に完全に封入されてもよく、または他の核酸-脂質粒子を形成してもよい。
【0384】
本明細書で使用される用語「LNP」は、安定な核酸-脂質粒子を指す。LNPは、通常、陽イオン性脂質、非陽イオン性脂質および粒子の凝集を防止する脂質(例えば、PEG-脂質コンジュゲート)を含む。LNPは、静脈内(i.v.)注射後の循環寿命が長く、かつ遠位部位(例えば、投与部位から物理的に分離された部位)に蓄積するため、全身適用に極めて有用である。LNPは「pSPLP」を含み、pSPLPは、PCT公開第国際公開第00/03683号パンフレットに示されているように、封入された縮合剤-核酸複合体を含む。本発明の粒子は、典型的には、約50nm~約150nm、より典型的には約60nm~約130nm、より典型的には約70nm~約110nm、最も典型的には約70nm~約90nmの平均粒径を有しており、かつ実質的に無毒である。加えて、核酸は、本発明の核酸-脂質粒子中に存在する場合、水性溶液中で、ヌクレアーゼによる分解に耐性である。核酸-脂質粒子、およびそれらの調製方法は、例えば米国特許第5,976,567号明細書;米国特許第5,981,501号明細書;米国特許第6,534,484号明細書;米国特許第6,586,410号明細書;米国特許第6,815,432号明細書;米国特許出願公開第2010/0324120号明細書およびPCT公開国際公開第96/40964号パンフレットに開示されている。
【0385】
一実施態様において、脂質対薬物の比(質量/質量比)(例えば、脂質対dsRNAの比)は、約1:1~約50:1、約1:1~約25:1、約3:1~約15:1、約4:1~約10:1、約5:1~約9:1または約6:1~約9:1の範囲内であろう。上記の範囲の中間の範囲も、本発明の一部であるものと考えられる。
【0386】
陽イオン性脂質は、例えば、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(I-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、N-(I-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)または3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオ(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)またはその類似体、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン(ALN100)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)、1,1'-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザネジイル)ジドデカン-2-オール(Tech G1)またはこれらの混合物であってもよい。陽イオン性脂質は、粒子中に存在する全脂質の約20mol%~約50mol%、または約40mol%からなり得る。
【0387】
ある実施態様において、化合物2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソランが、脂質-siRNAナノ粒子を調製するのに使用され得る。
【0388】
ある実施態様において、脂質-siRNA粒子は、40%の2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン:10%のDSPC:40%のコレステロール:10%のPEG-C-DOMG(モルパーセント)を含み、63.0±20nmの粒度および0.027siRNA/脂質比を有する。
【0389】
イオン性/非陽イオン性脂質は、非限定的にジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、コレステロールまたはこれらの混合物を含む陰イオン性脂質または中性脂質であり得る。非陽イオン性脂質は、コレステロールが含まれる場合、粒子中に存在する全脂質の約5mol%~約90mol%、約10mol%、または約58mol%で存在することができる。
【0390】
粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質は、例えば、非限定的にPEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)またはそれらの混合物を含むポリエチレングリコール(PEG)-脂質であり得る。PEG-DAAコンジュゲートは、例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル(Ci2)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(Ci4)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(Ci6)またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(Ci8)とすることができる。粒子の凝集を防止するコンジュゲート脂質は、粒子中に存在する全脂質の0mol%~約20mol%または2mol%で存在することができる。
【0391】
ある実施態様において、核酸-脂質粒子は更に、粒子中に存在する全脂質の例えば約10mol%~約60mol%または約48mol%のコレステロールを含む。
【0392】
一実施態様において、リピドイドND98・4HCl(MW 1487)(参照;2008年3月26日に出願された米国特許出願第12/056,230号明細書は、参照により本明細書に組み込まれる)、コレステロール(Sigma-Aldrich)およびPEG-Ceramide C16(Avanti Polar Lipids)が、脂質-dsRNAナノ粒子(即ち、LNP01粒子)を調製するのに使用され得る。エタノール中の各原液は、以下のとおりに調製され得る:ND98、133mg/ml;コレステロール、25mg/ml、PEG-Ceramide C16、100mg/ml。次に、ND98、コレステロールおよびPEG-Ceramide C16原液は、例えば、42:48:10のモル比で組み合わせられ得る。組み合わされた脂質溶液は、エタノールの終濃度が約35~45%であり、酢酸ナトリウムの終濃度が約100~300mMとなるようにdsRNA水溶液(例えば、酢酸ナトリウム中(pH5))と混合され得る。脂質-dsRNAナノ粒子は、通常、混合時に自然に形成される。所望の粒度分布に応じて、得られるナノ粒子混合物は、例えば、Lipex押出機(Northern Lipids,Inc)などのサーモバレル押出機(thermobarrel extruder)を用いて、ポリカーボネート膜(例えば、100nmのせん断)を通して押し出され得る。場合によっては、押し出し工程を省略できる。エタノール除去および同時の緩衝液交換は、例えば、透析または接線流ろ過によって達成され得る。緩衝液は、例えば、約pH7、例えば、約pH6.9、約pH7.0、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3または約pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と交換され得る。
【0393】
【0394】
LNP01製剤が、例えば、参照により本明細書に援用される国際出願公開番号国際公開第2008/042973号パンフレットに記載されている。
【0395】
更なる脂質-dsRNA製剤の例が、表1に記載される。
【表1-1】
【表1-2】
DSPC:ジステアロイルホスファチジルコリン
DPPC:ジパルミトイルホスファチジルコリン
PEG-DMG:PEG-ジジミリストイル(didimyristoyl)グリセロール(C14-PEG、またはPEG-C14)(2000の平均分子量を有するPEG)
PEG-DSG:PEG-ジスチリルグリセロール(C18-PEGまたはPEG-C18)(2000の平均分子量を有するPEG)
PEG-cDMA:PEG-カルバモイル-1,2-ジミリスチルオキシプロピルアミン(2000の平均分子量を有するPEG)
SNALP(l,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA))を含む製剤が、2009年4月15日に出願された国際公開第2009/127060号パンフレットに記載されており、これを参照により本明細書に組み込まれる。
【0396】
XTCを含む製剤は、例えば、2010年1月29日出願の国際出願第PCT/US2010/022614号明細書に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0397】
MC3を含む製剤が、例えば、2010年6月10日に出願された米国特許出願公開第2010/0324120号明細書に記載されており、この全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0398】
ALNY-100を含む製剤は、例えば、2009年11月10日出願の国際特許出願第PCT/US09/63933号明細書に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0399】
C12-200を含む製剤は、WO2010/129709に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0400】
経口投与用の組成物および製剤には、散剤または顆粒、微粒子、ナノ粒子、縣濁剤または水もしくは非水性媒体中の液剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、薬袋、錠剤または小型錠剤が挙げられる。増粘剤、風味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が、所望され得る。ある実施態様では、経口製剤は、本発明を特徴付けるdsRNAが、1種または複数種の透過促進剤界面活性剤およびキレート剤とともに投与されるものである。好適な界面活性剤には、脂肪酸もしくはエステルまたはその塩、胆汁酸および/またはその塩が挙げられる。好適な胆汁酸/塩には、ケノデオキシコール酸(CDCA)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ-24,25-ジヒドロ-フシジン酸ナトリウムおよびグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが挙げられる。好適な脂肪酸には、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、モノグリセリド、ジグリセリドまたはこれらの薬学的に許容され得る塩(例えば、ナトリウム)が挙げられる。ある実施態様において、浸透促進剤の組み合わせ、例えば胆汁酸/塩と組み合わせた脂肪酸/塩が使用される。例示的な1つの組み合わせは、ラウリン酸、カプリン酸およびUDCAのナトリウム塩である。更なる浸透促進剤には、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテルが挙げられる。本発明を特徴付けるDsRNAは、噴霧乾燥粒子、またはマイクロもしくはナノ粒子を形成するために錯体化されたものを含む顆粒形態で経口的に送達され得る。dsRNA錯体化剤には、ポリ-アミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;ポリアルキルアクリレート、ポリオキセタン、ポリアルキルシアノアクリレート;陽イオン化ゼラチン、アルブミン、スターチ、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)およびスターチ;ポリアルキルシアノアクリレート;DEAE-誘導体化ポリイミン、プルラン、セルロースおよびスターチが挙げられる。好適な錯体化剤には、キトサン、N-トリメチルキトサン、ポリ-L-リシン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えば、p-アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)、DEAE-メタクリレート、DEAE-ヘキシルアクリレート、DEAE-アクリルアミド、DEAE-アルブミンおよびDEAE-デキストラン、ポリメチルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(DL-乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、アルギン酸塩およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。dsRNA用の経口製剤およびそれらの調製物は、その各々が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,887,906号明細書、米国特許出願公開第2003/0027780号明細書および米国特許第6,747,014号明細書に記載されている。
【0401】
非経口、実質内(脳内へ)、くも膜下腔内、脳室内または肝内投与用の組成物および製剤には、無菌水性溶液を挙げることができ、その無菌水性溶液は、緩衝液、希釈剤ならびに他の好適な添加剤、例えば、これに限定しないが浸透促進剤、担体化合物および他の薬学的に許容され得る担体または賦形剤などを含み得る。
【0402】
本発明の医薬組成物は、非限定的に、液剤、乳剤およびリポソーム含有製剤を含む。これらの組成物は、非限定的に、予め形成された液剤、自己乳化型固体および自己乳化型半固体を含む多様な構成成分から生成され得る。製剤は、肝癌腫などの肝臓疾患を治療する際、肝臓を標的とするものを含む。
【0403】
単位剤形にて扱い易く存在し得る本発明の医薬製剤は、医薬産業にて周知の従来の技術に従って調製することができる。そのような技術は、活性成分を医薬担体または賦形剤と混合する工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体または微粉化固体担体または両方と、均一かつ十分に混合した後、必要であれば、その生成物を成形して製造される。
【0404】
本発明の組成物は、非限定的に、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、液体シロップ剤、ソフトゲル剤、坐薬および浣腸などの多数の可能な剤形のいずれかに処方され得る。本発明の組成物は、水性、非水性または混合媒体中の懸濁液としても処方され得る。水性懸濁液は、更に、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む懸濁液の粘度を増大させる物質を含んでもよい。懸濁液は、安定剤も含み得る。
【0405】
C.追加の製剤
i.エマルション
本発明のiRNAは、エマルションとして調製され、製剤化され得る。エマルションは、一般的に、1つの液体が、通常、直径が0.1μmを超える液滴の形態の別の液体中に分散された不均一系である(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY;Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199;Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Volume 1, p. 245;Block in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 2, p. 335;Higuchi et al., in Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p. 301)。エマルションは、多くの場合、互いに十分に混合され、かつ分散された2つの非混和性液体相を含む二層系である。一般に、エマルションは、油中水(w/o)または水中油(o/w)の種類のいずれかであり得る。水性相が微小液滴として塊の油相中に微細に分割されおよび分散された場合、得られた組成物は、油中水(w/o)エマルションと呼ばれる。あるいは、油相が微小液滴として、大量の水性相中に微細に分割され、かつ分散された場合、得られる組成物は、水中油(o/w)エマルションと呼ばれる。エマルションは、分散相および活性薬物に加えて追加の構成成分を含むことができ、その構成成分は、水性相、油相中の溶液として、またはそれ自体が別個の相として存在し得る。必要に応じて、エマルション中に乳化剤、安定剤、染料および抗酸化剤などの医薬賦形剤も存在し得る。医薬エマルションは、例えば、油中水中油型(o/w/o)および水中油中水型(w/o/w)エマルションの場合など、3つ以上の相からなる多層エマルションも可能で有る。そのような複合製剤は、多くの場合、単純な二成分エマルションが提供しない所定の利点を提供する。o/wエマルションの個々の油小滴が、小さい水小滴を囲い込む多層エマルションは、w/o/wエマルションを構成する。同様に、油の連続相中で安定化された水の小球中に囲い込まれた油小滴の系は、o/w/oエマルションを提供する。
【0406】
エマルションは、熱力学的安定性を、殆ど有さないか、または全く有さないことを特徴付とする。多くの場合、エマルションの分散または不連続相は、外部または連続相中に良好に分散され、乳化剤または製剤の粘度を用いてこの形態に維持される。エマルション相のいずれかは、エマルション型軟膏ベースおよびクリームの場合のように半固体または固体であり得る。エマルションを安定化させる他の手段には、エマルションのいずれかの相に組み込まれ得る乳化剤の使用が含まれる。乳化剤は、合成界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤および微細に分散した固体の4つのカテゴリーに大きく分類され得る(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY;Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199を参照)。
【0407】
界面活性剤としても知られている合成界面活性剤は、エマルションの製剤化に広範な適用性が見出されており、文献に概説されている(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY;Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285;Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, volume 1, p. 199)。界面活性剤は、通常、両親媒性であり、親水性部分および疎水性部分を含む。界面活性剤の疎水性に対する親水性の比率は、親水性/親油性バランス(HLB)と言われており、製剤調製の際の界面活性剤の分類および選択の際の貴重な手段である。界面活性剤は、親水性基の性質に基づいて、異なる種類、即ち、非イオン性、アニオン性、カチオン性および両性に分類され得る(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285)。
【0408】
エマルション製剤中に使用される天然に存在する乳化剤には、ラノリン、蜜蝋、ホスファチド、レシチンおよびアカシアが挙げられる。吸収性基材は、無水ラノリンおよび親水性ワセリンなどのように、水を取り込んでw/oエマルションを形成するが、それらの半固体稠度を依然として維持する親水性特性を有している。微粉化固体は、特に、界面活性剤との組み合わせにおいて、また粘稠な製剤において、良好な乳化剤として使用される。これらには、極性無機固体(例えば、重金属水酸化物など)、非膨潤粘土(例えば、ベントナイト、アタパルジャイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、コロイド状ケイ酸アルミニウムおよびコロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムなど)、顔料および非極性固体(例えば、炭素またはトリステアリン酸グリセリルなど)が挙げられる。
【0409】
非常に多様な非乳化材料もエマルション製剤中に含まれ、エマルションの特性に寄与する。それらには、脂肪、油、蝋、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、湿潤剤、親水性コロイド、保存剤および抗酸化剤が挙げられる(Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 335;Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
【0410】
親水性コロイドまたは親水コロイドには、多糖(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、カラゲナン、グアーガム、カラヤガムおよびトラガカント)などの天然に存在するゴムおよび合成ポリマー、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)および合成ポリマー(例えば、カルボマー、セルロースエーテル、およびカルボキシビニルポリマー)が挙げられる。これらは、水中に分散するか、または水中で膨潤して、分散相の小滴の周囲に強力な界面フィルムを形成することにより、また、外部相の粘度を増大させることにより、エマルションを安定化するコロイド溶液を形成する。
【0411】
エマルションは、多くの場合、微生物の増殖を容易に支持し得る炭水化物、タンパク質、ステロールおよびホスファチドなどの多数の成分を含むため、これらの製剤は、多くの場合、保存剤を組み込んでいる。製剤に含まれる、通常使用される保存剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、第四級アンモニウム塩、塩化ベンズアルコニウム、p-ヒドロキシ安息香酸のエステルおよびホウ酸が挙げられる。抗酸化剤も、通常、エマルション製剤に加えて、製剤の変質を防止する。使用される抗酸化剤は、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのフリーラジカルスカベンジャー、またはアスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤、ならびにクエン酸、酒石酸およびレシチンなどの抗酸化剤協作剤であり得る。
【0412】
皮膚、経口および非経口経路を介したエマルション製剤の適用ならびにそれらの製造方法は、文献に概説されている(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY;Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。経口送達用のエマルション製剤は、製剤化の容易性、吸収および生物学的利用能という有効性を理由として、非常に広範に使用されている(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY;Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245;Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。鉱油基剤の緩下剤、油溶性ビタミンおよび高脂肪栄養製剤が、o/w型エマルションとして一般的に経口投与されている材料に含まれる。
【0413】
ii.マイクロエマルション
本発明の一実施態様において、iRNAは、マイクロエマルションとして製剤化される。マイクロエマルションは、単一の光学的に等方性で、かつ熱力学的に安定した液体溶液である、水、油および両親媒性物質の系として定義され得る(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY;Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245を参照)。通常、マイクロエマルションは、最初に油を水性界面活性剤溶液中に分散させた後、十分な量の第四の構成成分、一般に中間鎖長のアルコールを加えて透明な系を形成することにより調製される。従って、マイクロエマルションは、表面活性分子の界面フィルムにより、安定化されている2つの非混和性液体からなる熱力学的に安定な等方性の透明な分散物として記載されている(Leung and Shah, in: Controlled Release of Drugs: Polymers and Aggregate Systems, Rosoff, M., Ed., 1989, VCH Publishers, New York, pages 185-215)。マイクロエマルションは、通常、油、水、界面活性剤、補助界面活性剤および電解質を含む3~5つの構成成分の組み合わせを用いて調製される。マイクロエマルションが油中水(w/o)タイプまたは水中油(o/w)タイプのいずれのものであるかは、使用される油および界面活性剤の特性と、界面活性剤分子の極性頭部および炭化水素尾部の構造および幾何学的充填(geometric packing)に依って変化する(Schott, in Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p. 271)。
【0414】
状態図を用いる現象論的手法が広範に研究されており、マイクロエマルションを製剤化する方法についての広範な知識を当業者に提供している(例えば、Ansel's Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Allen, LV., Popovich NG., and Ansel HC., 2004, Lippincott Williams & Wilkins (8th ed.), New York, NY; Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245; Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 33を参照)。従来のエマルションと比較して、マイクロエマルションは、自発的に形成する熱力学的に安定な小滴の製剤中で水不溶性薬物を可溶化する利点を提供する。
【0415】
マイクロエマルションの調製に使用される界面活性剤には、単独でまたは補助界面活性剤との組み合わせで、非限定的に、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、モノラウリン酸テトラグリセロール(ML310)、モノオレイン酸テトラグリセロール(MO310)、モノオレイン酸ヘキサグリセロール(PO310)、ペンタオレイン酸ヘキサグリセロール(PO500)、モノカプリン酸デカグリセロール(MCA750)、モノオレイン酸デカグリセロール(MO750)、セスキオレイン酸デカグリセロール(SO750)、デカオレイン酸デカグリセロール(DAO750)が挙げられる。通常、エタノール、1-プロパノールおよび1-ブタノールなどの短鎖アルコールである補助界面活性剤は、界面活性剤フィルム中に浸透し、その結果、界面活性剤分子間に生成された空隙空間によって不規則フィルムを形成することにより、界面流動性を増大させる役割を果たす。しかし、マイクロエマルションは、補助界面活性剤を使用することなく調製されることができ、アルコールフリー自己乳化型マイクロエマルション系は、当技術分野にて既知である。水性相は、典型的には、非限定的に、水、薬物の水性溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコールおよびエチレングリコールの誘導体とすることができる。油相は、非限定的に、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8~C12)モノ、ジおよびトリ-グリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C8~C10グリセリド、植物油およびシリコーン油などの材料を含むことができる。
【0416】
マイクロエマルションは、薬物可溶化および薬物吸収向上の観点から特に興味深い。脂質ベースのマイクロエマルション(o/wおよびw/oの両方)は、ペプチドを含む薬物の経口バイオアベイラビリティを向上させるために提案されている(例えば、米国特許第6,191,105号明細書、米国特許第7,063,860号明細書、米国特許第7,070,802号明細書、米国特許第7,157,099号明細書、Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385-1390;Ritschel, Meth. Find. Exp. Clin. Pharmacol., 1993, 13, 205を参照されたい)。マイクロエマルションは、薬物可溶化の改善、酵素加水分解からの薬物の保護、界面活性剤誘導による膜流動性および透過性の変更に起因する薬物吸収増強の可能性、調製の容易性、固体剤形以上の経口投与の容易性、臨床的効果の改善および毒性低下という利点を提供する(例えば、米国特許第6,191,105号明細書;米国特許第7,063,860号明細書;米国特許第7,070,802号明細書;米国特許第7,157,099号明細書;Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385;Ho et al., J. Pharm. Sci., 1996, 85, 138-14を参照されたい)。多くの場合、マイクロエマルションは、周囲温度にて、マイクロエマルションの構成成分が一緒にされた際に自発的に形成され得る。このことは、易熱性薬物、ペプチドまたはiRNAを処方する際に、特に有利であり得る。マイクロエマルションは、美容および医薬用途の両方において活性構成成分の経費送達にも有効である。本発明のマイクロエマルション組成物および製剤は、胃腸管からのiRNAおよび核酸の全身吸収の増大ならびにiRNAおよび核酸の局部細胞取り込みの改善を促進することが期待される。
【0417】
本発明のマイクロエマルションは、モノステアリン酸ソルビタン(Grill(登録商標) 3)、ラブラソール(登録商標)および透過促進剤などの追加の構成成分および添加剤を含んで、製剤の特性を改善し、かつ本発明のiRNAおよび核酸の吸収を向上させ得る。本発明のマイクロエマルション中で使用される浸透促進剤は、5つの広範囲のカテゴリーの1つに属するものとして分類され得る-界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤および非キレート化非界面活性剤(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p.92)。これらのクラスの各々は、上記に概説されている。
【0418】
iii.微粒子
本発明のiRNAは、粒子、例えば、微粒子に組み込まれてもよい。微粒子は、噴霧乾燥によって生成され得るが、凍結乾燥、蒸発、流体床乾燥、真空乾燥またはこれらの技術の組み合わせを含む他の方法によって生成されてもよい。
【0419】
iv.浸透促進剤
一実施態様において、本発明は、動物の皮膚への、核酸、特にiRNAの効率的な送達を行うために様々な浸透促進剤を用いる。殆どの薬剤は、イオン化および非イオン化の両方の形態で溶液中に存在する。しかし、通常、脂溶性または親油性の薬剤のみが、細胞膜を容易に通過する。通過される膜が、浸透促進剤で処理されている場合、非親油性薬剤でも細胞膜を通過できることが判っている。浸透促進剤は、細胞膜を通過する非親油性薬剤の拡散の補助に加えて、親油性薬剤の浸透性も向上させる。
【0420】
浸透促進剤は、即ち、界面活性剤、脂肪酸、胆汁塩、キレート剤および非キレート性の非界面活性剤の5つの大きいカテゴリーのうちの1つに属するものとして分類され得る(例えば、Malmsten, M. Surfactants and polymers in drug delivery, Informa Health Care, New York, NY, 2002;Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p.92を参照)。そのような化合物は、当分野において周知である。
【0421】
v.担体
本発明の所定の組成物は、製剤中に担体化合物も組み込んでいる。本明細書で使用される「担体化合物」または「担体」とは、核酸またはその類似体を指すことができ、これは、不活性(即ち、生物学的活性自体を有さない)であるが、生物学的活性を有する核酸のバイオアベイラビリティを低下させるインビボのプロセスにより、例えば、生物学的に活性な核酸を分解すること、または循環血からの核酸除去を促進することにより、核酸として認識されるものである。核酸および担体化合物の共投与は、通常、過剰量の後者の物質を用いる共投与により、おそらくは共通の受容体に対する担体化合物と核酸との競合に起因して、肝臓、腎臓または他の循環外リザーバ(extracirculatory reservoir)中で回収される核酸の量が、実質的に低下し得る。例えば、肝組織内での部分的なホスホロチオエートの回収は、それがポリイノシン酸、デキストラン硫酸塩、ポリシチジル酸または4-アセトアミド-4'イソチオシアノ-スチルベン-2,2'-ジスルホン酸と共投与された際、低下され得る(Miyao et al., DsRNA Res.Dev., 1995,5,115-121;Takakura et al., DsRNA & Nucl. Acid Drug Dev., 1996, 6, 177-183)。
【0422】
vi.賦形剤
担体化合物とは対照的に、「医薬担体」または「賦形剤」は、動物に1つまたは複数の核酸を送達するための薬学的に許容され得る溶媒、懸濁剤、または任意の他の薬理学的に不活性なビヒクルである。賦形剤は、液体または固体とすることができ、計画された投与方法を考慮に入れて、核酸および医薬組成物の他の所定の構成成分と組み合わされた際に、目的とする嵩や稠度などを提供するように選択される。典型的な医薬担体には、非限定的に、結合剤(例えば、α化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);充填剤(例えば、乳糖および他の糖、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはリン酸水素カルシウムなど);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属ステアリン酸塩、水素化植物油、トウモロコシ澱粉、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);錠剤崩壊剤(例えば、澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウムなど);および湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)が挙げられる。
【0423】
核酸と有害な反応をしない、非-非経口投与に薬学的に許容され得る好適な有機または無機賦形剤も、本発明の組成物の処方に使用され得る。薬学的に許容され得る好適な担体には、非限定的に、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0424】
核酸の局所投与用の製剤には、アルコールなどの通常の溶媒中の無菌および非無菌水性溶液、非水性溶液、または液体もしくは固体油ベース中の核酸溶液を挙げることができる。溶液は、緩衝剤、希釈剤および他の好適な添加剤も含み得る。核酸と有害な反応をしない、非-非経口投与に薬学的に許容され得る好適な有機または無機賦形剤を使用し得る。
【0425】
薬学的に許容され得る好適な賦形剤には、非限定的に、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0426】
vii.他の構成成分
本発明の組成物は更に、医薬組成物中に従来見出される他の補助構成成分も、当技術分野にて確立されたそれらの使用レベルで含有し得る。それ故、例えば、組成物は、例えば、鎮痒薬、収斂薬、局所麻酔薬もしくは抗炎症薬剤など、更なる適合可能な医薬的に活性な材料を含有することができ、または染料、風味剤、保存剤、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤および安定剤などの本発明の組成物の様々な剤形を物理的に処方するのに有用な更なる材料を含有することができる。しかし、それらの材料は、加えられた際に、本発明の組成物の構成成分の生物学的活性を必要以上に妨害するべきではない。製剤は滅菌されてもよく、また所望により、製剤の核酸と有害な相互作用をしない補助剤、例えば滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝液、着色料、調味料および芳香性物質などと混合される。
【0427】
水性懸濁液は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含む、懸濁液の粘度を増大させる物質を含み得る。懸濁液は、安定剤も含み得る。
【0428】
ある実施態様において、本発明に関する医薬組成物は、(a)1つまたは複数のiRNAと、(b)非iRNAメカニズムによって機能し、KHK関連疾患を治療するのに有用な1つまたは複数の剤とを含む。
【0429】
このような化合物の毒性および治療効果は、例えば、LD50(個体群の50%の致死量)およびED50(個体群の50%に治療に有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。毒性作用と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表され得る。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0430】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータは、ヒトに使用するためのある範囲の投与量を製剤化するのに使用され得る。本発明における本明細書に取り上げられる組成物の投与量は、一般に、殆ど、または全く毒性を伴わずにED50を含む血中濃度の範囲内である。投与量は、用いられる剤形および用いられる投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。本発明に関する方法に使用される任意の化合物では、治療に有効な用量は、細胞培養アッセイにより最初に推測され得る。用量は、細胞培養物中で測定して、IC50(即ち、症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む、化合物の、または適切な場合には、標的配列のポリペプチド産物の循環血漿濃度範囲を動物モデル内で達成する(例えば、ポリペプチド濃度の低下を達成する)ように処方され得る。そのような情報を使用して、ヒトでの有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0431】
上記に述べたそれらの投与に加えて、本発明を特徴付けるiRNAは、KHK発現により仲介される病態形成過程の治療に有効な他の既知の薬剤と組み合わせて投与されてもよい。いずれの場合でも、投与する医師は、当技術分野にて既知のまたは本明細書に記載される標準的な有効性の基準を使用して観察された結果に基づいて、iRNAの量および投与時間を調整することができる。
【0432】
VI.KHK発現を阻害するための方法
本発明は、細胞内のKHK遺伝子の発現を阻害する方法も提供する。この方法は、細胞を、細胞内のKHKの発現を阻害するのに有効な量でRNAi剤、例えば二本鎖RNAi剤と接触させて、これにより細胞内のKHKの発現を阻害することを含む。
【0433】
細胞とiRNA、例えば二本鎖RNAi剤との接触は、インビトロまたはインビボで行われ得る。インビボで細胞をiRNAと接触させることには、細胞または細胞群を、対象、例えばヒトの対象において、iRNAと接触させることが含まれる。細胞を接触させるインビトロおよびインビボ方法の組み合わせもまた可能である。細胞との接触は、上記の通りに、間接的または直接的であってもよい。更に、細胞の接触は、標的化リガンド、例えば、本明細書に記載の、または当分野では既知の任意のリガンドにより達成されてもよい。好ましい実施態様において、標的化リガンドは、炭化水素基、例えばGalNAc3リガンド、またはRNAi剤を目的の部位に導くその他のリガンドであっても良い。
【0434】
本明細書において使用される「阻害する」という用語は、「低下させる」、「サイレンシングする」、「下方制御する」、「抑制する」および他の類似語と互換的に使用され、任意のレベルの阻害を含む。
【0435】
「KHKの発現を阻害する」という語句は、任意のKHK遺伝子(例えば、マウスKHK遺伝子、ラットKHK遺伝子、サルKHK遺伝子またはヒトKHK遺伝子など)ならびにKHK遺伝子の変異体または突然変異体の発現の阻害を示すことを意図される。即ち、KHK遺伝子とは、遺伝子操作された細胞、一群の細胞または生体という文脈において、野性型KHK遺伝子、変異体KHK遺伝子または突然変異体KHK遺伝子であってもよい。
【0436】
「KHK遺伝子の発現阻害」は、KHK遺伝子の任意の阻害レベル、例えば、KHK遺伝子の発現を少なくとも部分的に抑制するレベルを包含する。KHK遺伝子の発現は、KHK遺伝子発現に関連があるあらゆる可変レベルまたはレベル変化、例えばKHKmRNAレベルまたはKHKタンパク質レベルに基づいて評価され得る。このレベルは、個々の細胞または細胞群について、例えば、対象から得られるサンプルについて、評価され得る。ある実施態様において、発現は、対象における肝臓細胞について評価され得る。
【0437】
阻害は、コントロールレベルと比較して、KHK発現に関連する1つ以上の変数の絶対レベルまたは相対レベルの低下によって評価されてもよい。コントロールレベルは、当技術分野で利用されるあらゆるタイプのコントロールレベル、例えば、投与前のベースラインレベル、または未処理またはコントロール(例えば、緩衝剤のみのコントロールまたは不活性剤のコントロールなど)で処理された類似の対象、細胞またはサンプルから決定されたレベルであってもよい。
【0438】
KHK関連疾患の症候の進行の程度および期間は、症候により異なることは理解される。例えば、脂質に関する症候、例えば、空腹時脂質レベル、NAFLD、NASH、肥満;肝機能および腎機能に関する症候ならびにグルコースまたはインスリン反応に関する症候は、1日以内または1週間以内では臨床学的に有意に変化しない持続性のある症候である。他のマーカー、例えば、血清尿酸値およびグルコース値、尿中フルクトース値は、数日以内に変化する可能性が高い。血圧は、フルクトースに反応して一時的および持続的に上昇する可能性がある。フルクトースは、おそらく満腹感を減退させることにより、少なくとも部分的な体重増加をもたらすので、カロリー制限と組み合わせたフルクトース消費は、体重増加に至らない可能性がある。
【0439】
さらに、対象者の病状に依るが、例えば、腸内のGLUT5トランスポーターの発現変動に起因して、成人の3分の1および小児の3分の2もの人々が、フルクトースの吸収不良を起こしている(Johnson et. al., (2013) Diabetes. 62:3307-3315)。しかし、フルクトースへの反復曝露により、フルクトースの吸収は増加され得る。フルクトース代謝は、フルクトースの供給源に依存して異なること、例えば、高フルクトースコーンシロップ中のフルクトースと天然果実中のフルクトースでは異なることが実証されており、清涼飲料水として提供されるような高濃度では、グルコースは、ポリオール経路によってフルクトースに変換され得る。しかし、フルクトースは、グルコースよりも高い代謝効果を示す。体組成、例えば除脂肪体重もまた、フルクトース代謝に影響を与えることが実証されている。したがって、試験およびコントロール両方のタイミングを慎重に選択しなければならない。
【0440】
本発明の方法のいくつかの実施態様では、KHK遺伝子の発現、好ましくは肝臓におけるKHK遺伝子の発現は、適切なコントロールと比較して、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%、またはアッセイの検出レベル以下まで阻害される。さらに、発現レベルをモニタリングするために肝臓サンプルを取得することは、当分野において常法ではないことは理解されよう。従って、ある実施態様において、KHK発現のレベルは、対象に臨床的利益を提供するのに十分に、例えば、少なくともKHK関連疾患の症候または症状を治療または予防するのに十分に阻害される。
【0441】
KHK遺伝子の発現の阻害は、第1の細胞または細胞群と実質的に同一であるが、KHK遺伝子の発現が阻害されるように処理されていないかまたは処理されなかった第二の細胞または細胞群(iRNAで処理されていないか、または目的の遺伝子を標的とするiRNAで処理されていないコントロール細胞)と比較して、KHK遺伝子が転写され、かつKHK遺伝子の発現が阻害されるように処理されているか、または処理された(例えば、本発明のiRNAを、細胞または細胞に接触させることによって、または細胞が存在するかまたは存在していた対象に本発明のiRNAを投与することによって)第一の細胞または細胞群(そのような細胞は、例えば、対象に由来するサンプル中に存在してもよい)により発現されるmRNA量の低下により示され得る。好ましい実施態様において、阻害は、記載された細胞型において実施例2に記載された方法により評価され、ここでRNAi剤を、実施例2に記載された方法を用いて10nMの濃度で送達し、記載のPCR法を用いて評価した処理された細胞中のmRNAのレベルをコントロール細胞中のmRNAのレベルの%として表して、以下の式を用いて計算した:
【数1】
【0442】
別の実施態様では、KHK遺伝子の発現の阻害は、KHK遺伝子発現と機能的に関連するパラメーターの低下、例えば、KHKタンパク質発現またはフルクトース代謝の低下という点から評価されてもよい。KHK遺伝子のサイレンシングは、KHKを発現するあらゆる細胞にて、即ち発現構築体からの同種または異種細胞いずれかにて、当技術分野では既知のあらゆるアッセイにより決定され得る。
【0443】
KHKタンパク質の発現阻害は、細胞または細胞群によって発現されるKHKタンパク質レベル(例えば、対象から得たサンプル中に発現されるタンパク質のレベル)の低下により示され得る。上記に説明したとおり、mRNA抑制を評価するために、処理された細胞または細胞群におけるタンパク質発現レベルの阻害は、同様に、コントロール細胞または細胞群におけるタンパク質レベルの%として表されてもよい。
【0444】
KHK遺伝子の発現阻害を評価するために使用することができるコントロール細胞または細胞群には、まだ本発明のRNAi剤を接触させていない細胞または細胞群が含まれる。例えば、コントロール細胞または細胞群は、対象をRNAi剤で処理する前に、個々の対象(例えば、ヒトまたは動物対象)から取得してもよい。
【0445】
ある実施態様において、試料中のKHKの発現レベルは、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部、例えばKHK遺伝子のmRNAを検出することにより決定される。RNAは、例えば、酸性フェノール/グアニジンイソチオシアネート抽出(RNAzol B; Biogenesis)、RNeasy(商標登録)RNA調製キット(Qiagen(商標登録))またはPAXgene(商標登録)(PreAnalytix, Switzerland)を使用することを含むRNA抽出技術を使用して、細胞から抽出され得る。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用する一般的なアッセイ形式としては、核ラン・オンアッセイ、RT-PCR、RNase保護アッセイ、ノーザンブロット、イン・サイチュ・ハイブリダイゼーションおよびマイクロアレイ分析が挙げられる。
【0446】
ある実施態様において、KHKの発現レベルは、核酸プローブを用いて決定される。本明細書で使用されるように、「プローブ」という用語は、特定のKHKに選択的に結合することができるあらゆる分子を指す。プローブは、当業者であれば合成することができるか、または適切な生物学的製剤から得ることができる。プローブは、標識されるよう特異的に設計され得る。プローブとして利用できる分子の例としては、RNA、DNA、タンパク質、抗体および有機分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0447】
単離されたmRNAは、サザン分析またはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析およびプローブアレイを含むが、これらに限定されないハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにおいて使用することができる。mRNAレベルの決定のための1つの方法は、単離されたmRNAを、KHK mRNAにハイブリダイズすることができる核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。一実施態様では、単離したmRNAを固体表面上に固定化して、プローブと接触させる(例えば、アガロースゲル上で泳動させ、ゲルからニトロセルロースのような膜にmRNAを移して)。別の実施態様では、プローブは固体表面に固定化され、mRNAは、例えばAffymetrix(登録商標)遺伝子チップアレイ内でプローブと接触される。当業者は、KHK mRNAのレベルを決定する際に使用するための既知のmRNA検出方法を容易に適用し得る。
【0448】
サンプル中のKHKの発現レベルを決定するための別法には、例えば、サンプル中のmRNAの核酸増幅または逆転写酵素(cDNAを調製する)方法、例えば、RT-PCR(Mullis, 1987, 米国特許第4,683,202号に記載されている実験の態様)、リガーゼ連鎖反応(Barany (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189-193)、自家持続配列複製法(Guatelli et al., (1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878)、転写増幅系(Kwoh et al.,(1989)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173-1177)、Q-βレプリカーゼ(Lizardi, et al., (1988)Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル型複製(Lizardi, et al., 米国特許第5,854,033号)またはあらゆる他の核酸増幅法が挙げられ、その後当技術分野の当業者には既知の技術を用いて増幅分子を検出を行う。これらの検出スキームは、そのような分子が、極めて少ない数で存在する場合に、核酸分子を検出するのに特に有用である。本発明の特別な態様において、KHKの発現レベルは、定量的な蛍光RT-PCR(すなわち、TaqManTMシステム)によって決定される。
【0449】
KHK mRNAの発現レベルは、メンブレンブロット(例えば、ノーザン、サザン、ドットなどのハイブリダイゼーション分析に使用されるようなもの)またはマイクロウェル、サンプルチューブ、ゲル、ビーズまたはファイバー(または、結合した核酸を含むあらゆる固体支持体)を使用してモニタリングできる(米国特許第5,770,722号、第5,874,219号、第5,744,305号、第5,677,195号および第5,445,934号を参照のこと;これらは、出典明示により本明細書に組み込まれる)。KHK発現レベルの決定は、溶液中の核酸プローブを使用することも含む。
【0450】
好ましい実施態様において、mRNA発現レベルは、分岐鎖DNA(bDNA)アッセイまたはリアルタイムPCR(qPCR)を用いて評価される。本明細書に提示された実施例に記載され、例示された方法および条件を使用することが好ましい。
【0451】
KHKタンパク質発現のレベルは、タンパク質レベルの測定のために当技術分野で既知のあらゆる方法を用いて決定することができる。そのような方法としては、例えば、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超臨界クロマトグラフィー、流体またはゲル沈殿反応、吸収分光法、比色アッセイ、分光分析アッセイ、フローサイトメトリー、免疫拡散(シングルまたはダブル)、免疫電気泳動、ウェスタン・ブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、電気化学発光アッセイなどが挙げられる。
【0452】
ある実施態様において、KHK関連疾患の治療における本発明の方法の有効性は、KHKmRNAレベルまたはKHKの低下(肝生検による)により評価される。
【0453】
ある実施態様において、KHK関連疾患の治療における本発明の方法の有効性は、対象において、前述の疾患の少なくとも1つの症候または症状の正常化、例えば、血清尿酸レベルの正常化、血清脂質の正常化、体重の正常化、肝臓などの内臓における脂質沈着の正常化;グルコースまたはインスリン反応性の正常化;血糖の正常化、腎機能の正常化、肝機能の正常化、血圧の正常化について、対象を評価することによってモニタリングすることができる。これらの症状は、当技術分野で知られている任意の方法を使用して、インビトロまたはインビボで適切なコントロールと比較して評価できる。本発明の方法のいくつかの実施態様では、iRNAが対象内の特定の部位に送達されるように、iRNAを対象に投与する。KHKプレmRNAの選択的スプライシングによって産生される2つのKHKアイソフォームがある。KHK-Cは、フルクトース代謝器官、例えば、肝臓、腎臓、腸に多く存在している。それは非常に活性が高く、殆どのフルクトース代謝を担っている。KHK-Aは、フルクトースに対する親和性が低く、殆どの組織で広範囲に発現している。本明細書で提供されるiRNA剤は、KHKの1つまたは両方のアイソフォームをサイレンシングすることができる。好ましい実施態様では、iRNA剤は、少なくともKHK-Cをサイレンシングすることが可能であり、少なくともKHK-Cアイソフォームの発現は阻害される。ノックアウトマウスを用いた研究は、KHK-Cの発現を阻害することが、過剰なフルクトース消費によりもたらされる有害作用を低下させるために必要かつ十分であることを実証している(例えば、Marek et al. (2015) Diabetes.64:508-518)。KHKの発現の阻害は、対象内の特定部位の体液または組織に由来するサンプル中のKHK mRNAまたはKHKタンパク質のレベルまたは変化を測定して評価できる。
【0454】
本明細書で使用されるように、分析物のレベルを検出または決定するという用語は、タンパク質、RNAなどの物質が存在するかどうかを決定する工程を行うことを意味すると理解される。本明細書で使用される通り、検出または決定する方法は、使用した方法の検出レベル以下である分析物のレベルを検出または決定することを含む。
【0455】
VII.KHK関連疾患の治療法または予防法
本発明は、細胞内でのKHKの発現を低下させ、および/または阻害するために、本発明のiRNA剤および/または本発明のiRNA剤を含有する組成物を使用する方法も提供する。当該方法は、細胞に本発明のdsRNAを接触させ、細胞をKHK遺伝子のmRNA転写物の分解物を得るのに十分な時間維持し、それによって細胞におけるKHK遺伝子の発現を阻害することを含む。遺伝子の発現の低下は、当該技術分野において公知の任意の方法によって評価され得る。例えば、KHKの発現の低下は、当業者に周知の方法、例えば、ノーザンブロット法、qRT-PCRを用いて、例えば肝臓サンプル中のKHKのmRNA発現レベルを決定することにより;ウエスタンブロット法、免疫学的方法などの当業者に周知の方法を用いてKHKのタンパク質レベルを測定することにより決定されてもよい。KHKの発現の低下は、1以上のフルクトース代謝の指標(例えば、フルクトース代謝がない事を示す尿中のフルクトースの存在)を検出することによりフルクトース代謝の低下を測定することにより間接的に評価されてもよい。フルクトース代謝の過程は、本明細書においても説明されている。
【0456】
本発明の方法において、細胞は、インビトロまたはインビボで接触されてもよく、即ち、細胞は対象中に存在し得る。
【0457】
本発明の方法を用いた処理に好適な細胞は、KHK遺伝子、好ましくはKHK-C遺伝子を発現するあらゆる細胞であり得る。本発明の方法に使用するのに好適な細胞は、哺乳動物細胞、例えば、霊長類細胞(ヒト細胞または非ヒト霊長類細胞、例えば、サル細胞またはチンパンジー細胞など)、非霊長類細胞(ウシの細胞、ブタの細胞、ラクダの細胞、ラマの細胞、ウマの細胞、ヤギの細胞、ウサギの細胞、ヒツジの細胞、ハムスター細胞、モルモットの細胞、ネコの細胞、イヌの細胞、ラットの細胞、マウスの細胞、ライオンの細胞、トラの細胞、クマの細胞または水牛の細胞など)、鳥類の細胞(例えば、アヒルの細胞またはガチョウの細胞)またはクジラの細胞であり得る。一実施態様において、細胞は、ヒト細胞、例えばヒト肝細胞である。
【0458】
KHK発現は、細胞において、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%またはアッセイの検出レベル以下のレベルまで阻害される。
【0459】
本発明のインビボ方法は、iRNAを含有する組成物を対象に投与することを含んでいてもよく、iRNAは、処理される哺乳動物のKHK遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含む。処理される生物が、ヒトなどの哺乳類である場合、組成物は、限定はされないが、経口、腹腔内、または頭蓋内(例えば、脳室内、実質内およびくも膜下腔内)、筋肉内、経皮、気道(エアゾール)、経鼻、直腸、および局所(口腔および舌下を含む)投与を含めた非経口経路を含む当該技術分野において公知の任意の手段によって投与され得る。特定の実施態様において、組成物は、静脈内注入または注射によって投与される。ある実施態様において、組成物は、皮下注射によって投与される。
【0460】
ある実施態様において、投与は、デポー注射による。デポー注射は、長時間にわたりiRNAを継続して放出することができる。したがって、デポー注射は、所望の効果、例えば、KHKの所望の阻害、または治療または予防効果を得るのに必要な投与の頻度を低減し得る。デポー注射はまた、より一貫した血清濃度を提供することができる。デポー注射は、皮下注射または筋肉内注射を含み得る。好ましい実施態様において、デポー注射は、皮下注射である。
【0461】
ある実施態様において、投与は、ポンプによる。ポンプは、外部ポンプまたは手術により埋め込まれたポンプであってもよい。特定の実施態様において、ポンプは、皮下に埋め込まれた浸透圧ポンプである。他の実施態様において、ポンプは、注入ポンプである。注入ポンプは、静脈内、皮下、動脈内、または硬膜外注入に使用され得る。好ましい実施態様において、注入ポンプは、皮下注入ポンプである。他の実施態様において、ポンプは、iRNAを肝臓に送達する、手術により埋め込まれたポンプである。
【0462】
投与方法は、局所治療または全身治療のいずれが所望されるかに基づいて、および治療される領域に基づいて選択され得る。投与の経路および部位は、標的化を向上させるように選択され得る。
【0463】
一態様において、本発明は、哺乳類におけるKHK遺伝子の発現を阻害するための方法も提供する。本発明は、哺乳類に、哺乳動物の細胞内でのKHK遺伝子を標的とするdsRNAを含む組成物を投与すること、KHK遺伝子のmRNA転写物が分解するまで十分な時間該哺乳類への投与を維持することにより、細胞内のKHK遺伝子の発現を阻害することを含む。遺伝子の発現の低下は、当該技術分野において公知のあらゆる方法、例えば、本明細書に記載されるqRT-PCRにより評価されてもよい。タンパク質産生の低下は、当該技術分野において公知の任意の方法によって、本明細書に記載されるELISA法といった方法によって評価され得る。一実施態様において、肝穿刺生検試料は、KHK遺伝子および/またはタンパク質の発現の低下をモニタリングするための組織材料として役立つ。
【0464】
本発明は、治療が必要な対象の治療方法をさらに提供する。本発明の治療方法は、本発明のiRNAを対象に投与すること、例えばKHK発現の低下または阻害により利益を得る対象に、治療上有効量のKHK遺伝子を標的とするiRNAまたはKHK遺伝子を標的とするiRNAを含む医薬組成物を投与することを含む。
【0465】
本発明のiRNAは、「遊離iRNA」として投与されてもよい。遊離iRNAは、医薬組成物の非存在下にて投与されてもよい。それ自体で(naked)iRNAは、適切な緩衝溶液中に存在していてもよい。緩衝溶液は、酢酸塩、クエン酸塩、プロラミン、炭酸塩もしくはリン酸塩またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。一実施態様において、緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。iRNAを含有する緩衝液のpHおよび浸透圧は、対象に投与するのに適切となるよう調整され得る。
【0466】
あるいは、本発明のiRNAは、dsRNAリポソーム製剤などの医薬組成物として投与され得る。
【0467】
KHK遺伝子発現の低下または阻害に利益を得る対象は、高いKHK発現の障害を有する対象、本明細書において議論されている対象である。
【0468】
本発明は、iRNAまたはその医薬組成物を使用するための方法、例えば、KHK発現の低下または阻害により利益を得る対象(例えば、KHK関連疾患に罹患している対象)を治療するための、別の医薬組成物または別の治療方法、例えばこれらの疾患を治療するために現在用いられる方法と組み合わせて使用するための方法をさらに提供する。例えば、ある実施態様において、KHKを標的とするiRNAは、本明細書のいずれかに記載のKHK関連疾患を治療する際に有用な剤と組み合わせて投与される。投与される剤は、対象が罹患している特定のKHK関連疾患に依って変わる。
【0469】
iRNAおよび追加の治療剤は、同時に、または同一組成物にて、例えば、非経口により投与されてもよいか、または追加の治療剤は、当分野においてまたは本明細書に記載した別の方法により、別々の時点で、別々の組成物の一部として投与されてもよい。
【0470】
一実施態様において、本方法は、標的KHK遺伝子の発現が低下されるように、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、12、16、18、24時間、28、32または約36時間低下される。一実施態様において、標的KHK遺伝子の発現が、延長期間の間、例えば、少なくとも約2、3、4日またはそれ以上の期間、例えば約一週間、二週間、三週間または四週間かそれ以上で低下されるように、本明細書に関する組成物を投与する。
【0471】
好ましくは、本明細書に記載の方法および組成物のために有用なiRNAは、特異的に標的KHK遺伝子のRNA(一次またはプロセシング後)を標的とする。iRNAを用いてこれら遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法は、本明細書に記述した通りに製造および実施され得る。
【0472】
本発明の方法に関するiRNAの投与は、高いKHKの障害を有する患者における前記疾患または障害に関する、重症度、症候、症状またはマーカーを低下させ得る。本明細書における「低下」とは、かかるレベルにおける統計学的に有意な低下を意味する。低下(対象における高いレベルと正常レベルとの差の絶対値低下または低下)とは、例えば、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%、あるいは使用したアッセイの検出限界値以下であり得る。
【0473】
疾患の治療または予防の効力は、例えば、疾患の進行、疾患の寛解、重症度、痛みの低下、クオリティ・オブ・ライフ、治療効果を維持するのに必要な投薬量、疾患マーカーのレベルまたは治療や予防のための標的とする所定の疾患に適切なその他の測定可能なパラメーターを測定することにより評価され得る。前記パラメーターのいずれか一つを測定することにより治療または予防の効力をモニタリングすることは、十分に当業者の能力の範囲内であろう。本明細書に議論されるとおり、測定される特定のパラメーターは、対象が罹患しているKHK関連疾患に依って変化する。
【0474】
治療後の読み値と開始時の読み値の比較により、治療が有効であるかどうかの指標が医師に提供される。前記パラメーターのいずれか一つまたはそれらの組み合わせを測定して治療または予防の効力をモニタリングすることは、十分に当業者の能力の範囲内であろう。KHKを標的とするiRNAまたはその医薬組成物の投与に関連して、KHK関連疾患「に対して有効」とは、臨床学的に適切な手法にて投与することにより、少なくとも統計学的に有意な効果、例えば、症状の改善、治癒、疾患の低下、寿命延長、クオリティー・ライフの改善またはKHK関連障害の治療に長けた医師によって一般的に有効であると認識されるその他の効果を提供することを示す。
【0475】
治療効果または予防効果とは、疾患状態の1以上のパラメーターの統計学的に有意な改善がある場合のエビデンス、あるいは、それらが予測される症状の悪化または進行がない場合のエビデンスである。例えば、疾患の測定可能なパラメーターにおける少なくとも10%の望ましい変化、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%またはそれ以上の変化が有効な治療指標であり得る。所定のiRNA剤または薬剤の効果は、当業者には既知の疾患についての実験動物モデルを用いても判断され得る。実験動物モデルを用いて場合に、治療効力は、マーカーまたは症状において統計学的に有意な低下が観察された場合に実証される。
【0476】
あるいは、効力は、臨床学的に許容される疾患重症度の評価尺度を基準とした診断に関する当業者により決定される疾患の重症度の低下により測定され得る。あらゆるポジティブな変化、例えば、適切なスケールを用いて測定される疾患の重症度の低下は、本明細書に記載のiRNAまたはiRNA製剤を用いて十分な治療を示す。
【0477】
対象は、iRNA、例えば約0.01mg/kg~約200mg/kgの治療量が投与され得る。
【0478】
iRNAは、一定期間または定期的に静脈内点滴により投与され得る。ある実施態様において、初回治療レジメンの後、治療は、基本的には頻度を減らして投与される。iRNAの投与は、KHKレベル、例えば、患者の細胞、組織、血液、尿またはその他の器官のKHKレベルを、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%、あるいは使用されたアッセイ方法の検出レベル以下まで低下し得る。KHK-Cは肝臓内で発現されるが、この治療を肝臓中のKHK-C発現を測定することでモニタリングする可能性は低い。ある実施態様において、治療の効力は、罹患している対象からKHK関連疾患の1以上の症候または症状を測定することにより評価される。
【0479】
iRNAの全用量投与前に、患者に、より少ない量の投与量、例えば5%を投与して、輸液反応およびアレルギー反応などの薬物副作用がモニタリングされる。別の例において、患者は、望ましくない免疫刺激効果、例えば、高いサイトカイン(例えば、TNF-αまたはINF-α)レベルについてモニタリングされ得る。
【0480】
あるいは、iRNAは、皮下投与、即ち、皮下注射により投与され得る。1回以上の注射を、iRNAの望ましい一日用量を対象に使用して送達され得る。注射は、ある期間中、反復されてもよい。投与は、定期的に繰り返されてもよい。ある実施態様において、初回の治療療法の後、治療は、基本的には頻度を減らして投与される。反復投薬療法とは、定期的に、例えば隔日毎または一年に1回、治療量のiRNAを投与することを包含し得る。ある実施態様において、iRNAは、約1か月に1回~約4半期に1回(即ち、約3か月毎に1回)投与される。
【0481】
IX.KHK-関連疾患についての診断基準および治療
様々なKHK関連疾患についての診断基準、治療剤および考慮事項を下記に示す。
【0482】
A.高尿酸血症
血清尿酸レベルは、臨床検査の値として日常的には得られない。しかし、高尿酸血症(高い尿酸)は、多くの疾患および症状、例えば、痛風、NAFLD、NASH、メタボリックシンドローム、インスリン耐性(インスリンへの免疫応答をもたらさない)、心血管疾患、高血圧症およびII型糖尿病に関連がある。KHK発現の低下は、高い血清尿酸レベルに関連した1以上の症状の予防または治療において有用であり得ると考えられる。さらに、対象は、高い尿酸値と関連する1以上の明白な兆候または症状がなくても、血清尿酸レベルが正常な血清尿酸レベル、例えば、6.8mg/dl以下、好ましくは6mg/dl以下への正常化により臨床的利益を得ると考えられる。
【0483】
高尿酸血症の動物モデルが挙げられ、例えば、1以上の脂肪蓄積、例えば脂肪肝、インスリン耐性、II型糖尿病、肥満症、例えば、内臓肥満症、メタボリックシンドローム、アディポネクチン分泌の低下、腎臓の機能低下および炎症を誘導し得る、例えばラットおよびマウスにおける高フルクトース食を含む(例えば、Johnson et al. (2013) Diabates. 62:3307-3315を参照されたい)。オキソン酸、即ちウリカーゼ阻害剤の投与を用いて、高尿酸血症を誘導することができる(例えば、Mazalli et al. (2001) Hypertens. 38:1101-1106を参照されたい)。高尿酸血症の遺伝モデルには、Jackson Laboratory (/jaxmice.jax.org/strain/002223.html)から入手できる血清尿酸レベルが10倍高いレベルのB6;129S7-Uoxtm1Bay/Jマウスが挙げられる。
【0484】
高尿酸血症についての様々な治療は、当技術分野で知られている。しかし、これらの薬剤の中には、限定された集団でしか使用できないものもある。例えば、アロプリノールは、キサンチンオキシダーゼ阻害剤であり、これを使用して、多くの症状、例えば、痛風、虚血再灌流傷害、高血圧、心血管疾患(アテローム性動脈硬化症および脳卒中を含む)ならびに炎症性疾患を治療するために、血清尿酸レベルを低下させることができる(Pacher et al., (2006) Pharma. Rev. 58:87-114)。しかし、アプロプリノールの使用は、腎機能障害に罹患している対象、例えば、慢性腎臓病、甲状腺機能低下症、高インスリン血症またはインスリン耐性の対象;または腎臓病または腎機能障害の素因を有する対象、例えば、高血圧患者、代謝障害患者、糖尿病患者および高齢者には禁忌である。さらに、アロプリノールは、経口凝固剤またはプロベンシドを服用している対象、および利尿剤、特にチアジド系利尿剤または腎機能を低下させ得る薬剤または腎毒性の可能性を有する別の薬剤を服用している対象には、服用させるべきではない。
【0485】
ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、高尿酸血症を治療するための別の組成物および方法、例えば、アロプリノール、オキシプリノール、フェブキソスタットと組み合わせて使用される。ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、腎機能が低下しているか、または、例えば、年齢、共存疾患または薬物相互作用のために腎機能が低下しているか、または低下しやすい対象の治療に使用される。
【0486】
B.痛風
痛風は、成人の約40人に1人が罹患しており、最も多いのは30~60歳の男性である。痛風は、女性には余り罹患者はいない。痛風は、治療することにより、関節損傷を将来的に回避することができる数少ないタイプの関節炎の一つである。痛風は、尿酸の不十分な腎クリアランスまたは過剰な尿酸産生による高尿酸血症を理由とする関節内の尿酸結晶への炎症反応によって引き起こされる急性炎症性関節炎の再発発作を特徴とする。フルクトール関連性痛風は、腎臓、腸、肝臓で発現しているトランスポーターの亜種と関連している場合がある。痛風は、関節や皮下に尿酸一ナトリウム(MSU)の結晶である痛風結節が形成されて沈着することを特徴とする。痛風に伴う痛みは、痛風結節の大きさとは関係なく、MSU結晶に対する免疫反応の結果である。血清尿酸と痛風結節の大きさの減少率との間には、直線的な逆相関がある。例えば、非痛風結節性の痛風患者18人を対象とした1つの研究では、血清尿酸は、尿酸低下療法を開始してから3ヶ月以内に、全対象において2.7~5.4mg/dL(0.16~0.32mM)まで低下した(Pascual and Sivera (2007) Ann. Rheum. Dis. 66:1056-1058)。しかし、痛風歴が10年未満の患者では、無症状の膝関節または最初のMTP関節からMSU結晶が消失するのに12ヶ月かかったのに対し、痛風歴が10年以上の患者では18ヶ月かかった。従って、痛風の効果的な治療には、痛風結節の完全なクリアランスまたは全症状(例えば、関節痛および腫脹、炎症)の解消を求めるのではなく、単に血清尿酸値の低下に関連した痛風の少なくとも1つの徴候または症状(例えば、痛風発作の重症度または頻度の低下)の減少をめざすべきであろう。
【0487】
痛風の動物モデルには、オキソン酸誘発性の高尿酸血症が挙げられる(例えば、Jang et al. (2014) Mycobiology. 42:296-300を参照されたい)。
【0488】
痛風に対する現在利用できる治療法は、多くの対象において、禁忌であるか、または有効ではない。痛風患者における尿酸値を低下させるための一般的な第一選択薬であるアロプリノールは、上述したように、多くの患者、特に腎機能が低下している患者においては禁忌とされている。さらに、多くの対象が、アロプリノールによる治療に失敗しており、例えば、対象が治療しても痛風発作を起こすか、または対象がアロプリノールに関連した発疹または過敏症反応を起こす。
【0489】
ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、血清尿酸を減少させるために他の薬剤と組み合わせて使用される。ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、痛風の症状を治療するための薬剤、例えば、鎮痛剤または抗炎症剤、例えば、NSAIDSと組み合わせて使用される。ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、例えば、年齢、共存疾患または薬物相互作用のために、腎機能が低下しているか、または腎機能が低下しやすい対象の治療のために使用される。
【0490】
C.肝臓疾患
NAFLDは、フルクトース代謝の上昇と関連がある高尿酸血症と関連している(Xu et al. (2015) J. Hepatol. 62:1412-1419)。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の定義には、(a)画像検査または組織学的検査のいずれかによる脂肪肝のエビデンスがあり、(b)著しいアルコール摂取、脂肪症薬の使用、または遺伝性疾患などの二次的な肝脂肪蓄積の原因がないことが必要である。多くの患者においては、NAFLDは、肥満、糖尿病および脂質異常症などの代謝系リスク因子と関連している。NAFLDは、組織学的に、さらに非アルコール性脂肪肝(NAFL)と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に分類される。NAFLは、肝細胞の風船様変性という肝細胞傷害のエビデンスがない肝性脂肪症として定義される。NASHは、線維化の有無に拘わらず、肝細胞の損傷(風船様変性)を伴う肝性脂肪症および炎症の存在として定義されている(Chalasani et al.(2012) Hepatol. 55:2005-2023)。単純脂肪肝を有する患者は、組織学的に進行したとしても非常に遅く、一方でNASH罹患患者は、肝硬変期の疾患へと組織学的な進行を示す可能性があることが一般的に認められている。NAFLDとNASH患者についての長期的な予後については、いくつかの研究で報告されている。それらの知見を以下にまとめることができる:(a)NAFLD患者は、コントロール群と比較して全死亡率が増加していた;(b)NAFLD、NAFLおよびNASH患者における最も一般的な死因は、心血管疾患である;(c)NASH患者(NAFLではない)は肝臓関連の死亡率が増加する。
【0491】
NAFLDの動物モデルには、様々な高脂肪または高フルクトース飼育動物モデルが含まれる。NAFLDの遺伝子モデルには、ジャクソン研究所から入手可能なB6.129S7-Ldlrtm1Her/JおよびB6.129S4-Ptentm1Hwu/Jマウスが挙げられる。
【0492】
NAFLDの治療は、通常、NAFLD発症の原因となった症状を管理することである。例えば、脂質異常症の患者は、必要に応じて、コレステロールまたはトリグリセリドを正常化する薬剤で治療され、NAFLDのさらなる進行を治療または予防する。II型糖尿病の患者は、グルコースまたはインスリン感受性を正常にする薬剤を用いて治療される。ライフスタイルの変更、例えば食事や運動の変更も、NAFLDを治療するために用いられる。NAFLDのマウスモデルにおいて、アロプリノールによる治療は、両方の脂肪肝の発症を予防しただけでなく、マウスの確立された脂肪肝を有意に改善した(Xu et al., J. Hepatol. 62:1412-1419, 2015)。
【0493】
ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、血清尿酸を減少させるための他の薬剤と組み合わせて使用される。ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、NAFLDの症状を治療するための薬剤と組み合わせて使用される。ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、例えば、年齢、併存疾患または薬物相互作用を理由とした、腎機能が低下している対象または腎機能が低下しやすい対象を治療するために使用される。
【0494】
D.脂質異常症、血糖コントロールの障害、メタボリックシンドロームおよび肥満
脂質異常症(例えば、高脂血症、高LDLコレステロール、低HDLコレステロール、高トリグリセリド血症、食後高トリグリセリド血症)、血糖コントロールの障害(例えば、インスリン耐性、II型糖尿病)、メタボリックシンドローム、脂肪細胞機能障害、内臓脂肪沈着、肥満および過度の糖渇望は、フルクトース代謝の上昇に関連している。症状の特徴または診断基準は、以下のものが挙げられる。代謝障害の動物モデルおよび構成要素の特徴には、様々な高脂肪または高フルクトース飼料を用いた動物モデルが含まれる。遺伝子モデルには、ジャクソン研究所から入手可能な、一般的にobまたはob/obマウスとして知られているレプチン欠損B6.Cg-Lepob/Jが含まれる。
【0495】
脂質の正常空腹時レベルおよび異常空腹時レベルを、以下の表に示す。
【表A】
【0496】
食後高トリグリセリド血症は、主にトリグリセリドを多く含むリポ蛋白質(TRL)の過剰産生または異化作用の低下によって引き起こされ、肥満およびインスリン耐性などの遺伝的変異および病状の素因の結果である。
【0497】
インスリン耐性は、以下の少なくとも1つの存在により特徴づけられる:
1.2回別々に測定した空腹時血糖値が100~125mg/dLであるか;または
2.経口グルコース耐性試験がブドウ糖摂取後2時間後のグルコースレベル140~199mg/dLの結果を示す。
【0498】
本明細書で使用されるように、インスリン耐性は、インスリン依存性糖尿病、特にI型糖尿病の後期に頻繁に起こるような、投与されたインスリンに対する免疫応答の結果であるインスリンに対する応答の欠如を含まない。
II型糖尿病は、以下の少なくとも1つを特徴とする:
1.2回の異なる時点で測定した空腹時血糖値が126mg/dL以上である;
2.ヘモグロビンA1c(A1C)試験の結果が、6.5%以上であるか;または
3.経口グルコース耐性試験で、グルコース摂取後2時間の時点でのブドウ糖値>200mg/dLの結果を示す。
【0499】
II型糖尿病およびインスリン耐性のための薬物療法としては、メトホルミン(例えば、グルコファージ、グルメッツァ)、スルホニル尿素(例えば、グリブリド、グリピジド、グリメピリドなど)、メグリチニド(例えば、リパグリニド、ナテグリニドなど)、チアゾリジン系薬剤(例えば、リパグリニド、ナテグリニド)、チアゾリジン系薬剤(ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)、DPP-4阻害剤(シタグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン)、GLP-1受容体拮抗剤(エキセナチド、リラグルチド)およびSGLT2阻害剤(例えば、カナグリフロジン、ダパグリフロジン)などの血糖値を正常化する薬剤による治療が挙げられる。
【0500】
肥満とは、過剰な体脂肪の疾患として特徴づけられる。体格指数(BMI)は、体重をキログラム(kg)で割ることで計算され、身長をメートル(m)の2乗で割って計算されるが、全員ではないが殆どの人の体脂肪の合理的な推定値を提供している。一般的には、BMIが18.5未満は低体重、8.5~24.9は正常、25.0~29.9は過体重、30.0~34.9は肥満(クラスI)、35~39.9は肥満(クラスII)および40.0以上は極度の肥満(クラスIII)として特徴づけられる。
【0501】
皮下脂肪に対する内臓脂肪を評価するための方法は、例えば、Wajchenberg (2000) Subcutaneous and visceral adipose tissue: their relation to the metabolic syndrome, Endocr Rev. 21:697-738に示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0502】
メタボリックシンドロームは、以下の5つの代謝系リスク因子のうち少なくとも3つとして定義される状態の集積であることを特徴とする:
1.太いウエストライン(女性の場合は>35インチ、男性の場合は>40インチ);
2.高いトリグリセリド値(>150mg/dl);
3.低HDLコレステロール(女性は<50mg/dl、男性は<40mg/dl);
4.高血圧(>130/85)または高血圧治療薬の服用中;および
5.高い空腹時血糖値(>100mg/dl)または高血糖治療薬の服用中。
【0503】
NAFLDと同様に、メタボリックシンドロームを治療するための薬剤は、存在する特定のリスク因子に依って変わる;例えば、脂質が異常な場合には脂質を正常化し、グルコースまたはインスリンが異常な場合にはグルコースまたはインスリン感受性を正常化するもの。
【0504】
メタボリックシンドローム、インスリン耐性およびII型糖尿病は、腎機能の低下または潜在的な腎機能の低下に関連していることが多い。
【0505】
ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、脂質異常症、血糖コントロールの障害、メタボリックシンドロームおよび肥満を有する対象の治療に使用するためのものである。例えば、ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、メタボリックシンドローム、インスリン耐性またはII型糖尿病および慢性腎臓疾患に罹患している対象に使用するためのものである。ある実施態様において、心血管疾患、甲状腺機能低下症または炎症性疾患のうちの1つ以上を有するメタボリックシンドローム、インスリン耐性、またはII型糖尿病を有する対象;または高齢者(例えば、65歳以上)の対象に使用するためのものである。ある実施態様において、組成物および方法は、薬剤表示に示されるような腎機能を低下させ得る薬剤も摂取するメタボリックシンドローム、インスリン耐性またはII型糖尿病を有する対象に使用するためのものである。例えば、ある態様において、本発明の組成物および方法は、経口凝固剤またはプロベンシドで治療されているメタボリックシンドローム、インスリン耐性またはII型糖尿病を有する対象に使用するためのものである。例えば、ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、利尿剤、特にチアジド系利尿剤で治療されているメタボリックシンドローム、インスリン耐性またはII型糖尿病を有する対象に使用するためのものである。
【0506】
ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、血清尿酸を低下させるために他の薬剤と組み合わせて使用される。ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、メタボリックシンドローム、インスリン耐性またはII型糖尿病の症状を治療するための薬剤と組み合わせて使用される。ある実施態様において、対象は、例えば、血圧低下薬剤、例えば、利尿剤、β遮断剤、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断剤、カルシウムチャネル遮断剤、α遮断剤、α-2受容体拮抗剤、α-およびβ-の複合遮断剤、中枢作動薬、末梢性アドレナリン阻害剤および血管透析剤;コレステロール低下薬剤、例えば、スタチン、選択的コレステロール吸収阻害剤、樹脂または脂質低下療法;または血糖を正常化させるための薬剤、例えば、メトホルミン、スルホニル尿素、メグリチニド、チアゾリジンジオン、DPP-4阻害剤、GLP-1受容体拮抗剤およびSGLT2阻害剤などが挙げられる。
【0507】
ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、例えば、年齢、共存疾患または薬物相互作用のために、腎機能が低下しているか、または腎機能が低下しやすい対象の治療のために使用される。
【0508】
iRNAおよび追加の治療剤は、同時または同じ組み合わせにおいて、例えば非経口的に投与することができ、または追加の治療剤を、別個の組成物の一部として、または別々の時点で、または当当業者には既知または本明細書に記載されている別の方法で投与することができる。
【0509】
E.心血管系疾患
ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、心血管疾患を有する対象の治療に使用するためのものである。例えば、ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、心血管疾患および慢性腎臓病を有する対象における使用のためのものである。ある実施態様において、組成物および方法は、代謝性障害、インスリン抵抗性、高インスリン血症、糖尿病、甲状腺機能低下症または炎症性疾患のうちの1つ以上に罹患している心血管疾患を有する対象において使用するためのものである。ある実施態様において、組成物および方法は、薬剤の適応に示されるような腎機能を低下させる可能性がある薬剤を服用している心血管疾患を有する対象に使用するためのものである。例えば、ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、経口凝固剤またはプロベンシドで治療されている心血管疾患を有する対象において使用するためのものである。例えば、ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、利尿剤、特にチアジド系利尿剤で治療されている心血管疾患を有する対象において使用するためのものである。例えば、ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、アロプリノールを用いる治療に失敗した心血管疾患を有する対象に使用するためのものである。
【0510】
ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、血清尿酸を減少させるために他の薬剤と組み合わせて使用される。特定の実施態様では、本発明の組成物および方法は、心血管疾患の症状を治療するための薬剤、例えば血圧を低下させるための薬剤、例えば、利尿剤、β遮断剤、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断剤、カルシウムチャネル遮断剤、α遮断剤、α-2受容体拮抗剤、α-およびβ遮断剤の併用剤、中枢作動薬、末梢性アドレナリン阻害剤および血管拡張剤;またはコレステロール低下薬、例えば、スタチン、選択的コレステロール吸収阻害剤、樹脂または脂質低下療法剤などが挙げられる。
【0511】
F.腎臓疾患
腎臓疾患には、例えば、急性腎不全、尿細管機能障害、近位尿細管の炎症性変化および慢性腎臓病が含まれる。
【0512】
急性腎不全は、腎臓が、突然、血液中の老廃物を濾過することができなくなり、その結果、血清中に危険なレベルの老廃物が蓄積され、全身の化学的不均衡が生じるときに発症する。急性腎不全は、数時間または数日の間に急速に進行し、既に入院している患者、特に集中治療を必要とする重篤な患者に最も多くみられる。急性腎不全は、致命的な場合もあり、集中的な治療を要する。しかし、急性腎不全は可逆的な場合もある。あるいは良好な健康状態であれば、正常または正常近くまで腎機能が回復する場合もある。
【0513】
慢性腎臓疾患は、慢性腎不全とも呼ばれ、腎臓の機能が徐々に失われていく症状をいう。慢性腎臓病が進行すると、危険なレベルの体液、電解質、老廃物が体内に蓄積する。腎臓疾患の症候および症状は、吐き気、嘔吐、食欲不振、倦怠感および脱力感、睡眠障害、尿量変化、精神的鋭敏性の低下、筋肉の収縮や痙攣、しゃっくり、足や足首のむくみ、持続的なかゆみ、胸痛、心臓内膜周辺の体液滞留による息切れ、肺の体液滞留による息切れ、コントロールが難しい高血圧(高血圧)などが挙げられる。慢性腎臓病の徴候や症状は、非特異的であることが多く、徐々に進行する可能性があり、不可逆的な障害が発生するまで判らないこともある。
【0514】
腎臓病の治療は、腎臓障害の原因となっている有害物質または症状を排除すること、例えば、血圧を正常化して腎機能を改善すること、腎臓障害を誘発する薬剤による治療を終了すること、腎臓障害の原因となっている炎症を軽減すること、または腎機能をサポートするための腎支援(腎透析など)を行うことによって行われる。
【0515】
腎機能は、通常、BUN(血中尿素窒素)、クレアチニン(血液)、クレアチニン(尿)またはクレアチニンクリアランスのうちの1つ以上の常法の臨床検査を用いて決定される(例えば、www.nlm.nih.gov/medlineplus/ency/article/003435.htm)。これらの検査は、他の臓器の症状も診断するものでもある。
【0516】
一般的に、6~20mg/dLのBUNレベルは、正常であると考えられているが、正常値は検査機関により変動し得る。BUN値の上昇は、糸球体腎炎、腎盂腎炎、急性尿細管壊死などの腎臓病または腎不全を示し得る。
【0517】
血中クレアチニンの正常な結果は、男性では0.7~1.3mg/dLおよび女性では0.6~1.1mg/dL範囲である。高い血中クレアチニンは、腎臓の損傷や故障、感染症または血流低下による腎機能の低下を示し得る。
【0518】
尿クレアチニン(24時間のサンプル)の値は、500~2000mg/日の範囲である。その結果は、年齢と除脂肪体重の量により異なる。正常な結果は、男性の場合、1日あたりの体重1kgあたり14~26mgである。
【0519】
女性の場合は、1日に体重1kgあたり11~20mgである。異常な結果は、尿細管細胞の損傷、腎不全、腎臓への血流低下、腎臓感染症(腎盂腎炎)などの腎臓障害を示し得る。
【0520】
クレアチニンのクリアランス試験は、尿中のクレアチニン値と血液中のクレアチニン値を比較することで、腎機能に関する情報を得るために役立つ。クリアランスは、多くの場合、毎分ミリリットル(ml/分)で測定される。正常値は、男性で97~137ml/分、女性で88~128ml/分である。正常値よりも低いクレアチニンクリアランスは、尿細管細胞の損傷、腎不全、腎臓への血流低下または腎臓における糸球体濾過の低下などの腎損傷を示し得る。
【0521】
ある実施態様において、本発明の組成物および方法は、腎臓病の治療に使用することができる。本願の薬剤は、腎臓に損傷を与えないと考えられる。
【0522】
本発明は、限定的に解釈されるべきではないが、以下の実施例によってさらに説明される。本出願を通して、引用された全ての参考文献、特許および公開された特許出願の内容全体ならびに配列表は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0523】
実施例1.iRNA合成
試薬供給源
試薬の入手元が、別段記載されていない場合は、分子生物学用の試薬供給社から、分子生物学に用いるための基準の品質/純度で入手することが出来る。
【0524】
転写物およびsiRNA設計
ヒトKHKを標的とするdsRNA試薬セット(human NCBI refseqID: XM_005264298;NCBI GeneID: 3795)を、RとPythonのカスタムスクリプトを用いて設計した。ヒトKHK REFSEQ mRNAは、2144塩基長を有する。dsRNA剤のセットを設計するための理論的根拠と方法は、以下の通りである:位置10~位置21444までの全ての可能性のある19量体 RNAi剤の予測される有効性を、多くの脊椎動物遺伝子を標的とする2万以上の様々なdsRNA剤の設計物からのmRNAノックダウンにより得た実測値により得た線形モデルを用いて決定した。Pythonカスタムスクリプトは、10の位置から始まる標的mRNAに沿って11塩基毎に系統的にRNAi剤を選択することにより、dsRNAのセットを構築した。各々の位置で予測される有効性が、正確に全ての11番目のRNAi剤での有効性よりも優れている場合は、隣接するRNA剤(mRNAの5'末端に対して1か所、mRNAの3'末端に対して1か所)を設計物のセットと交換する。低複雑性RNAi剤、即ち、シャノンエントロピー測定値が1.35未満であるものは、そのセットから除外された。
【0525】
非修飾KHKセンスおよびアンチセンス鎖配列の詳細なリストは、表3に示される。修飾KHKセンス配列およびアンチセンス鎖配列の詳細なリストは、表5に示される。
【0526】
RNAi剤を、当業者には既知の技術を用いて合成して、アニーリングした。
【0527】
実施例2-インビトロスクリーニング
細胞培養およびトランスフェクション:
Hep3B(ATCC)細胞を、4.9μlのOpti-MEM+0.1μlのリポフェクタミン RNAiMax/ウェル(Invitrogen(登録商標), Carlsbad CA. cat # 13778-150)を、384ウェルプレート中で5μlのdsRNA Duplex/ウェルに加えてトランスフェクトして、室温で15分間インキュベートした。~5x103細胞を含有する40μlのEMEMを、次いでsiRNA混合物に加えた。細胞を、24時間インキュベートした後、RNA精製を行った。単回用量実験を、10nMの最終二本鎖濃度で行った。
【0528】
DYNABEADS mRNA単離キットを用いた全RNA単離:
DYNABEAD(Invitrogen, cat#61012)を用いて、BioTek-EL406プラットフォームにおいて自動化プロトコルを用いて、RNAを単離した。要約すると、3μlの磁性ビーズを含む50μlの溶解/結合緩衝液および25μlの溶解緩衝液を、細胞と共にプレートに加えた。プレートを、室温で10分間にわたって電磁振とう機においてインキュベートした後に、電磁ビーズを捕捉して、上清を除去した。次に、ビーズに結合したRNAを、150μlの洗浄緩衝液Aで2回、そして洗浄緩衝液Bで1回洗浄した。次に、ビーズを150μlの溶出緩衝液で洗い、再度捕捉して、上清を除去した。
【0529】
ABI高性能cDNA逆転写キット(Applied Biosystems, Foster City, CA, Cat #4368813)を用いたcDNA合成:
反応あたりに、1μl 10x緩衝液、0.4μl 25x dNTP、1μl 10x ランダムプライマー、0.5μl 逆転写酵素、0.5μl RNase阻害剤および6.6μlのH2Oを含有する10μlのマスターミックスを、上記にて単離したRNAに加えた。プレートを密閉して、混合し、電磁振とう機において室温で10分間、その後37℃で2時間インキュベートした。
【0530】
リアルタイムPCR:
2μlのcDNAを、384ウェルプレート(Roche cat # 04887301001)中で、ウェルあたり0.5μlのGAPDH TaqMan Probe(Hs99999905 m1)、0.5μl KHKプローブ(Hs00240827_m1)および5μl Lightcycler 480 プローブ・マスター・ミックス(Roche Cat # 04887301001)を含有するマスター・ミックスに加えた。リアルタイムPCRを、LightCycler 480 リアルタイムPCRシステム(Roche)にて行った。各二本鎖を、少なくとも2回試験して、データを、非標的化コントロールsiRNAを用いてトランスフェクトしたナイーブ細胞または細胞に対して正規化した。
【0531】
相対的な倍加変化を計算するために、ΔΔCt法を用いてリアルタイムデータを分析し、10nM AD-1955でトランスフェクションを行った細胞またはモックトランスフェクションを行った細胞を用いて行ったアッセイに対して正規化した。
【0532】
表2.核酸配列の表示に用いたヌクレオチドモノマーの略語。これらのモノマーは、オリゴヌクレオチド中に存在する場合、5'-3'-ホスホジエステル結合により互いに結合していることは理解されよう。
【表2-1】
【表2-2】
【0533】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【0534】
均等物
当業者は、本明細書に記載される特定の実施態様および方法の多くの均等物を認識するか、または単なる日常的な実験を用いて確認することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。