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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056739
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】付加製造用の生体吸収型樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
C08F290/06 ZBP
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024010235
(22)【出願日】2024-01-26
(62)【分割の表示】P 2022517296の分割
【原出願日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】62/900,708
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/913,227
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/073,021
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515220524
【氏名又は名称】カーボン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】グゥー,シンユー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シャロン
(72)【発明者】
【氏名】ポリカストロ,ジーナ・ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ホプソン,ペイトン
(72)【発明者】
【氏名】ドナーズ,ジャッキー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンデリー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジェイソン・エル.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バイオ医学用途に適している付加製造用の樹脂を提供する。
【解決手段】(a)5または10重量パーセントから80または90重量パーセントの(メタ)アクリラート末端生体吸収性ポリエステルオリゴマー;(b)1または5重量パーセントから50または70重量パーセントの非反応性希釈剤;(c)0.1または0.2重量パーセントから2または4重量パーセントの光開始剤;(d)任意選択的に、1または5重量パーセントから40または50重量パーセントの反応性希釈剤;(e)任意選択的に、1または2重量パーセントから40または50重量パーセントの充填剤;および(f)任意選択的に、1または2重量パーセントから5または10重量パーセントの、トリメチロールプロパントリメタクリラート(TMPTMA)などの少なくとも1種の追加の架橋剤を含む、または実質的にそれらからなる樹脂である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性または弾性の生体吸収性物体の付加製造に有用な樹脂であって、
(a)5または10重量パーセントから80または90重量パーセントの(メタ)アクリ
ラート末端生体吸収性ポリエステルオリゴマー;
(b)1または5重量パーセントから50または70重量パーセントの非反応性希釈剤;
(c)0.1または0.2重量パーセントから2または4重量パーセントの光開始剤;
(d)任意選択的に、1または5重量パーセントから40または50重量パーセントの反
応性希釈剤;
(e)任意選択的に、1または2重量パーセントから40または50重量パーセントの充
填剤;および
(f)任意選択的に、1または2重量パーセントから5または10重量パーセントの、ト
リメチロールプロパントリメタクリラート(TMPTMA)などの少なくとも1種の追加
の架橋剤
を含む、または実質的にそれらからなる樹脂。
【請求項2】
前記オリゴマーが直鎖状オリゴマーを含む、請求項1に記載の樹脂。
【請求項3】
前記オリゴマーが分岐オリゴマー(すなわち、3アームオリゴマーなどの星形オリゴマ
ー)を含む、請求項1または2に記載の樹脂。
【請求項4】
前記オリゴマーが、ABAブロック、BABブロック、CBCブロック、BCBブロッ
ク、ABランダム組成物、BCランダム組成物、ホモポリマーまたは任意のそれらの組み
合わせにおける、カプロラクトン、ラクチド、グリコリド、トリメチレンカルボナート、
ジオキサノン、およびプロピレンフマラートモノマーから選択される構成要素間の分解可
能なエステル結合を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂
[式中、
A=ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(ラクチド-c
o-グリコリド)(PLGA)またはポリプロピレンフマラート(PPF)、
B=ポリカプロラクトン(PCL)、ポリトリメチレンカルボナート(PTMC)または
ポリ(カプロラクトン-co-ラクチド)(PCLLA)、
C=ポリジオキサノン(PDX)である。]。
【請求項5】
前記オリゴマーが、2または5キロダルトンから6、10、15または20キロダルト
ンの分子量(Mn)を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項6】
前記オリゴマーが、直鎖状および/もしくは分岐(例えば、星形または3アーム)形態
のABAブロック、BABブロック、CBCブロックまたはBCBブロックを含む、請求
項4または5に記載の樹脂。
【請求項7】
Aが、
(i)ポリ(ラクチド);
(ii)ポリ(グリコリド);
(iii)(i)90:10から55:45のラクチド:グリコリド(すなわち、ラクチ
ドに富む比)もしくは(ii)45:55から10:90のラクチド:グリコリド(すな
わち、グリコリドに富む比)のモル比のラクチドおよびグリコリドを含むポリ(ラクチド
-co-グリコリド);
または前述の任意の組み合わせである、請求項6に記載の樹脂。
【請求項8】
Bが、
(i)ポリカプロラクトン;
(ii)ポリトリメチレンカルボナート;
(iii)95:5~5:95のカプロラクトン:ラクチドのモル比のカプロラクトンお
よびラクチドを含むポリ(カプロラクトン-co-ラクチド);
または前述の任意の組み合わせである、請求項6または7に記載の樹脂。
【請求項9】
A(PLA、PGA、PLGA、PPFまたはその組み合わせ)が、1,000または
2,000ダルトンから4,000、6,000または10,000ダルトンまでの分子
量(Mn)を有し;
B(PCL、PTMC、PCLLAまたはその組み合わせが、1,000または1,60
0ダルトンから4,000、6,000または10,000ダルトンまでの分子量(Mn
)を有する、請求項4から6のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項10】
前記非反応性希釈剤が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピ
ロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド、環状炭酸エステル(炭酸プロピレンなどの
)、アジピン酸ジエチル、メチルエーテルケトン、エチルアルコール、アセトンおよびそ
の組み合わせからなる群から選択される、請求項1から9のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項11】
前記非反応性希釈剤が炭酸プロピレンである、請求項1から10のいずれか1項に記載
の樹脂。
【請求項12】
前記反応性希釈剤が、アクリラート、メタクリラート、スチレン、ビニルアミド、ビニ
ルエーテル、ビニルエステル、前述の任意の1つまたは複数を含むポリマー、または前述
の2つ以上の組み合わせを含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項13】
顔料、染料、活性化合物または医薬品化合物、および検出可能な化合物(例えば、蛍光
性、燐光性、放射性)、およびその組み合わせから選択される少なくとも1種の追加の成
分をさらに含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項14】
充填剤(例えば、生体吸収性ポリエステル粒子、塩化ナトリウム粒子、三リン酸カルシ
ウム粒子、糖粒子)をさらに含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項15】
(a)5または10重量パーセントから80または90重量パーセントの、ABAブロッ
ク、BABブロック、CBCブロックまたはBCBブロックにおけるモノマーの(メタ)
アクリラート末端、直鎖状または分岐の、生体吸収性ポリエステルオリゴマー
[式中、
Aは、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(ラクチド-
co-グリコリド)(PLGA)またはその組み合わせであり、前記PLGAは、90:
10~60:40のラクチド:グリコリド(すなわち、ラクチドに富む比)または40:
60~10:90のラクチド:グリコリド(すなわち、グリコリドに富む比)のいずれか
のモル比のラクチドおよびグリコリドを含み、Aは、1,000または2,000ダルト
ンから4,000または10,000ダルトンまでの分子量(Mn)を有し;
Bは、ポリカプロラクトン(PCL、PTMC、PCLLA)であり、1,000または
1,600ダルトンから4,000または10,000ダルトンまでの分子量(Mn)を
有し;
Cは、ポリジオキサノン(PDX)であり、1,000または2,000ダルトンから4
,000または10,000ダルトンまでの分子量(Mn)を有する。]
(b)1または5重量パーセントから50または70重量パーセントの炭酸プロピレン;
(c)0.1または0.2重量パーセントから2または4重量パーセントの光開始剤、
(d)任意選択的に、1または5重量パーセントから40または50重量パーセントの反
応性希釈剤;および
(e)任意選択的に、1または2重量パーセントから40または50重量パーセントの充
填剤
から実質的になる、請求項1から14のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項16】
(a)10重量パーセント~80重量パーセントの、ABAブロック、BABブロックま
たはABランダム組成物における構成要素間の分解可能なエステル結合を含む、(メタ)
アクリラート末端生体吸収性分岐ポリエステルオリゴマー[式中、Aはポリ(ラクチド)
またはポリ(ラクチド-co-グリコリド)であり、Bはポリカプロラクトンまたはポリ
(カプロラクトン-co-ラクチド)であり、前記オリゴマーは2~6キロダルトンの分
子量(Mn)を有する。];
(b)5重量パーセント~50重量パーセントの、N-メチルピロリドン(NMP)およ
び炭酸プロピレンからなる群から選択される非反応性希釈剤;
(c)0.2重量パーセント~2重量パーセントの光開始剤;
(d)任意選択的に、1重量パーセント~50重量パーセントの反応性希釈剤;
(e)任意選択的に、1重量パーセント~50重量パーセントの充填剤;および
(f)任意選択的に、1重量パーセント~10重量パーセントの追加の架橋剤
から実質的になる、請求項1に記載の樹脂。
【請求項17】
物体の形状の、請求項1から16のいずれか1項に記載の樹脂の光重合により前記物体
を製造する工程(例えばボトムアップまたはトップダウンの付加製造によってなどの付加
製造による)を含む、可撓性または弾性の生体吸収性物体を製造する方法。
【請求項18】
前記製造工程の後(ただし、好ましくは追加の光に前記物体を曝露する前記工程の前)
に、前記物体を洗浄(例えば、洗う、拭く、スピンなどによる)する工程をさらに含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記製造工程の後に、追加の光に前記物体を曝露して、その中の未重合の構成要素をさ
らに反応させる工程をさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記製造工程の後に、前記物体から残存希釈剤を抽出する工程をさらに含む、請求項1
7から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記物体を(任意選択的に、しかし好ましくは真空下で)乾燥して、抽出溶媒をそこか
ら除去する工程をさらに含む、請求項17から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
拡大形態の前記物体を製造して、前記抽出、さらなる曝露、ならびに/または洗浄工程
、および乾燥工程中に生じる前記物体の収縮を相殺する工程をさらに含む、請求項17か
ら21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
請求項17から22のいずれか1項に記載の方法によって製造された可撓性または弾性
の生体吸収性物体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生体吸収性物体の製造のための樹脂は知られており、例えば、米国特許第9,770,
241号;米国特許第10,085,745号;米国特許第10,149,753号;米
国特許第9,873,790号;および米国特許出願公開第2017/0355815号
に記載されている。しかしながら、(a)付加製造プロセスにおける印刷適性(例えば、
十分に低粘性であること)、(b)製造された物体の可撓性または弾性の機械的性質、お
よび(c)妥当なバイオ吸収/生物分解時間に対する、時には競合する必要性により、す
べてのそのような樹脂が、ステレオリソグラフィーなどの付加製造技法において使用する
のに良く適合しているとは限らない。
【0002】
1つの先行研究において、ステレオリソグラフィーを用いて生体吸収性多孔質足場を印
刷するためのポリカプロラクトンジメタクリラート系樹脂が研究された(Elomaaら
、Preparation of poly(e-caprolactone)-bas
ed tissue engineering scaffolds by stere
olithography, Acta Biomaterialia 7, 3850
-3856 (2011))。Elomaaらの樹脂の機械的性質は幾つかの移植可能な
物体には有用であるが、その分解時間(一般に2年を超える)は好ましい時間より遅い。
【0003】
別の先行の参考文献において、ポリ(D,L-ラクチド)ジメタクリラート系樹脂が研
究された(Melchelsら、Effects of the architectu
re of tissue engineering scaffolds on ce
ll seeding and culturing, Acta Biomateri
alia 6 4208-4217 (2010))。しかし、Melchelsらの硬
化樹脂は剛直で弾性がなく、移植および/または使用の間に大きい弾性変形を受ける、幾
つかの移植可能な(または他のバイオ医学の)物体の製造にはあまり好ましくない。
【0004】
したがって、バイオ医学用途に適している樹脂の新しい付加製造に対する必要性がなお
存在する。
【発明の概要】
【0005】
本開示の第1の態様は、物体を製造するために有用な樹脂である。樹脂は、(a)ボト
ムアップおよびトップダウンのステレオリソグラフィーなどの付加製造技法において使用
するのに適し、(b)生体吸収性である物体を製造し、(c)(好ましくは25℃の少な
くとも典型的な室温で、幾つかの実施形態において37℃の典型的な人体温度で)可撓性
または弾性である物体を製造する。そのような樹脂は典型的には、(a)反応性末端基を
有する生体吸収性ポリエステルオリゴマー;(b)非反応性希釈剤;(c)任意選択的に
、反応性希釈剤;および(d)光開始剤を含む。
【0006】
幾つかの態様において、樹脂は、(a)5または10重量パーセントから80または9
0重量パーセントの(メタ)アクリラート末端生体吸収性ポリエステルオリゴマー;(b
)1または5重量パーセントから50または70重量パーセントの非反応性希釈剤;(c
)0.1または0.2重量パーセントから2または4重量パーセントの光開始剤;(d)
任意選択的に、1または5重量パーセントから40または50重量パーセントの反応性希
釈剤;(e)任意選択的に、1または2重量パーセントから40または50重量パーセン
トの充填剤;および(f)任意選択的に、1または2重量パーセントから5または10重
量パーセントの、トリメチロールプロパントリメタクリラート(TMPTMA)などの少
なくとも1種の追加の架橋剤を含むか、または実質的にそれらからなる。
【0007】
幾つかの態様において、オリゴマーは直鎖状オリゴマーおよび/もしくは分岐オリゴマ
ー(すなわち、3アームオリゴマーなどの星形オリゴマー)を含んでもよい。
【0008】
幾つかの態様によるオリゴマーは、ABAブロック、BABブロック、CBCブロック
、BCBブロック、ABランダム組成物、BCランダム組成物、ホモポリマーまたはその
任意の組み合わせおける、カプロラクトン、ラクチド、グリコリド、トリメチレンカルボ
ナート、ジオキサノン、およびプロピレンフマラートモノマーから選択される構成要素間
の分解可能なエステル結合を含んでもよい[式中、A=ポリ(ラクチド)(PLA)、ポ
リ(グリコリド)(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)または
ポリプロピレンフマラート(PPF)、B=ポリカプロラクトン(PCL)、ポリトリメ
チレンカルボナート(PTMC)またはポリ(カプロラクトン-co-ラクチド)(PC
LLA)、C=ポリジオキサノン(PDX)である。]。
【0009】
幾つかの態様において、オリゴマーは、2または5キロダルトンから6、10、15ま
たは20キロダルトンの分子量を有する。
【0010】
幾つかの態様において、オリゴマーは、直鎖状および/もしくは分岐(例えば、星形ま
たは3アーム)形態のABAブロック、BABブロック、CBCブロックまたはBCBブ
ロックを含む。
【0011】
幾つかの態様において、Aは、(i)ポリ(ラクチド);(ii)ポリ(グリコリド)
;(iii)(i)90:10~55:45のラクチド:グリコリドのモル比(すなわち
、ラクチドに富む比)もしくは(ii)45:55~10:90のラクチド:グリコリド
(すなわち、グリコリドに富む比)のラクチドおよびグリコリドを含むポリ(ラクチド-
co-グリコリド);または前述の任意の組み合わせである。
【0012】
幾つかの態様において、Bは、(i)ポリカプロラクトン;(ii)ポリトリメチレン
カルボナート;(iii)95:5~5:95のカプロラクトン:ラクチドのモル比のカ
プロラクトンおよびラクチドを含むポリ(カプロラクトン-co-ラクチド);または前
述の任意の組み合わせである。
【0013】
幾つかの態様において、A(PLA、PGA、PLGA、PPF、またはその組み合わ
せ)は、1,000または2,000ダルトンから4,000、6,000または10,
000ダルトンまでの分子量を有し;および/または、B(PCL、PTMC、PCLL
Aもしくはその組み合わせ)は、1,000または1,600ダルトンから4,000、
6,000もしくは10,000ダルトンまでの分子量(Mn)を有する。
【0014】
幾つかの態様において、非反応性希釈剤は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトア
ミド、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド、環状炭酸エステル(炭
酸プロピレンなどの)、アジピン酸ジエチル、メチルエーテルケトン、エチルアルコール
、アセトン、およびその組み合わせからなる群から選択される。幾つかの態様において、
非反応性希釈剤は炭酸プロピレンである。
【0015】
幾つかの態様において、反応性希釈剤は、アクリラート、メタクリラート、スチレン、
ビニルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、前述の任意の1つまたは複数を含むポ
リマー、または前述の2つ以上の組み合わせを含む。
【0016】
幾つかの態様において、樹脂は、顔料、染料、活性化合物または医薬品化合物、および
検出可能な化合物(例えば、蛍光性、燐光性、放射性)、およびその組み合わせから選択
される少なくとも1つの追加の原料をさらに含む。
【0017】
幾つかの態様において、樹脂は、充填剤(例えば、生体吸収性ポリエステル粒子、塩化
ナトリウム粒子、三リン酸カルシウム粒子、糖粒子)をさらに含む。
【0018】
幾つかの態様において、樹脂は、実質的に、(a)5または10重量パーセントから8
0または90重量パーセントの、ABAブロック、BABブロック、CBCブロックまた
はBCBブロックにおけるモノマーの(メタ)アクリラート末端、直鎖状または分岐の生
体吸収性ポリエステルオリゴマー[式中、Aは、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グ
リコリド)(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)またはその組
み合わせであり、前記PLGAは、90:10~60:40のラクチド:グリコリド(す
なわち、ラクチドに富む比)または40:60~10:90のラクチド:グリコリド(す
なわち、グリコリドに富む比)のいずれかのモル比のラクチドおよびグリコリドを含み、
Aは、1,000または2,000ダルトンから4,000または10,000ダルトン
までの分子量(Mn)を有し;Bは、ポリカプロラクトン(PCL、PTMC、PCLL
A)であり、1,000または1,600ダルトンから4,000または10,000ダ
ルトンまでの分子量(Mn)を有し;Cは、ポリジオキサノン(PDX)であり、1,0
00または2,000ダルトンから4,000または10,000ダルトンまでの分子量
(Mn)を有する。](b)1または5重量パーセントから50または70重量パーセン
トの炭酸プロピレン;(c)0.1または0.2重量パーセントから2または4重量パー
セントの光開始剤、(d)任意選択的に、1または5重量パーセントから40または50
重量パーセントの反応性希釈剤;および(e)任意選択的に、1または2重量パーセント
から40または50重量パーセントの充填剤からなる。
【0019】
幾つかの態様において、樹脂は、実質的に、(a)10重量パーセント~80重量パー
セントの、ABAブロック、BABブロックまたはABランダム組成物における構成要素
間の分解可能なエステル結合を含む、(メタ)アクリラート末端生体吸収性分岐ポリエス
テルオリゴマー[式中、Aはポリ(ラクチド)またはポリ(ラクチド-co-グリコリド
)であり、Bはポリカプロラクトンまたはポリ(カプロラクトン-co-ラクチド)であ
り、前記オリゴマーは2~6キロダルトンの分子量(Mn)を有する。];(b)5重量
パーセント~50重量パーセントの、N-メチルピロリドン(NMP)および炭酸プロピ
レンからなる群から選択される非反応性希釈剤;(c)0.2重量パーセント~2重量パ
ーセントの光開始剤;(d)任意選択的に、1重量パーセント~50重量パーセントの反
応性希釈剤;(e)任意選択的に、1重量パーセント~50重量パーセントの充填剤;お
よび(f)任意選択的に、1重量パーセント~10重量パーセントの追加の架橋剤からな
る。
【0020】
また、物体の形状において本明細書に教示される樹脂の光重合により前記物体を製造す
る工程(例えば、ボトムアップまたはトップダウンの付加製造によって、などの付加製造
による)を含む可撓性または弾性の生体吸収性物体を製造する方法が提供される。
【0021】
幾つかの態様において、方法は、前記製造工程の後(好ましくは追加の光に前記物体を
曝露する前記工程の前)に、前記物体を洗浄する(例えば、洗う、拭く、スピンなどによ
る)工程をさらに含む。
【0022】
幾つかの態様において、方法は、前記製造工程の後に、追加の光に前記物体を曝露して
、その中の未重合の構成要素をさらに反応させる工程をさらに含む。
【0023】
幾つかの態様において、方法は、前記製造工程の後に、前記物体から残存希釈剤を抽出
する工程をさらに含む。
【0024】
幾つかの態様において、方法は前記物体を(任意選択的に、しかし好ましくは真空下で
)乾燥して、抽出溶媒をそこから除去する工程をさらに含む。
【0025】
幾つかの態様において、方法は、拡大形態の前記物体を製造して、前記抽出、さらなる
曝露、および/または洗浄工程、および乾燥工程中に生じる前記物体の収縮を相殺する工
程をさらに含む。
【0026】
また、本明細書において教示される方法によって製造された可撓性または弾性の生体吸
収性物体が提供される。
【0027】
本発明の追加の態様は、以下により詳しく説明される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明はここで以下により完全に記載される。しかしながら、本発明は、多くの異なる
形態で具現され、本明細書において述べられる実施形態に限定されるように解釈されるべ
きでなく;むしろ、本開示が完全になり、完結し、当業者に対して十分に本発明の範囲が
伝わるように、これらの実施形態は提供される。
【0029】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態のみを記載するためにあり、本発
明を限定するようには意図されない。本明細書において使用される場合、単数形「a」、
「an」および「the」は、文脈が他の方法で明白に示さなければ、複数形をも含むよ
うに意図される。さらに、本明細書において使用される場合、「を含む」または「を含む
こと」という用語は、明示された特徴、整数、工程、作業、要素成分および/もしくは群
またはその組み合わせの存在を指定するが、しかし、1つまたは複数の他の特徴、整数、
工程、作業、要素、成分および/もしくは群またはその組み合わせの存在または追加を妨
げないことは理解されよう。
【0030】
本明細書において使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙さ
れた品目の1つまたは複数のありとあらゆる可能な組み合わせ、ならびに他の選択肢にお
いて解釈される場合の組み合わせの欠如(「または」)を含む。
【0031】
他に定義されなければ、本明細書において使用される用語(科学技術用語を含む)はす
べて、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同一の意味を有する。さらに
、一般に使用される辞書に定義されるものなどの用語が、本明細書および請求項の文脈に
おけるそれらの意味と矛盾しない意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書に
おいてそのように明白に定義されるのでなければ、観念的な、または過度に形式的な意味
に解釈されるべきでないことは理解されよう。よく知られている機能または構造は、簡潔
および/または明瞭のために詳細には記載されないことがある。
【0032】
「実質的に~からなる」という移行句は、特許請求の範囲は、指定される材料または記
述される工程、およびまた、本明細書において記載される請求項の発明の基本的および新
規の特性に影響を実質的に与えない、追加の材料または工程を包含すると解釈されるべき
であることを意味する。
【0033】
本明細書において引用されたすべての特許文献の開示は、引用することにより本明細書
の一部をなすものとする。
【0034】
1. ポリマー材料および樹脂。
本発明を実行するための有用な樹脂は、一般に、
(a)5または10重量パーセントから80または90重量パーセントの(メタ)アクリ
ラート末端生体吸収性ポリエステルオリゴマー;
(b)1または5重量パーセントから50または70重量パーセントの非反応性希釈剤;
(c)0.1または0.2重量パーセントから2または4重量パーセントの光開始剤;
(d)任意選択的に、1または5重量パーセントから40または50重量パーセントの反
応性希釈剤;
(e)任意選択的に、1または2重量パーセントから40または50重量パーセントの充
填剤;および
(f)任意選択的に、0.1または1重量パーセントから10または20重量パーセント
の追加の原料、例えば、活性剤、検出可能な群、顔料または染料など
を含む、それらからなる、または実質的にそれらからなる。
【0035】
ポリマーを製造することができる樹脂用のオリゴマープレポリマーは直鎖状でも分岐し
ていてもよい(例えば、「星形」オリゴマー、3アームオリゴマー)。そのようなモノマ
ーまたはオリゴマープレポリマーに適している末端基は、これらに限定されないが、アク
リラート、メタクリラート、フマラート、ビニルカルボナート、メチルエステル、エチル
エステルなどを含む。適切な樹脂組成の非限定的な例は、以下の表1に挙げられる(各カ
ラムにおける構成要素は、任意の組み合わせで他のカラムの構成要素と組み合わせること
ができる。)。
【0036】
【表1】
【0037】
本明細書において記載の物体の製造で使用される組成物の特定の例は、生体吸収性ポリ
エステル連結を有するメタクリラート末端オリゴマーに基づき、生理学的温度でゴム状の
弾性挙動、機械的性質の短期的保持(幾つかの実施形態において、1か月以下)、および
長期的な完全再吸収(幾つかの実施形態においておよそ4~6か月の期間にわたって)を
提供する。
【0038】
幾つかの好ましい実施形態において使用される生体吸収性ポリエステルオリゴマーは、
一般に、メタクリラート末端基を有する生体吸収性オリゴマーである。そのようなオリゴ
マーは、典型的にはABAブロック、BABブロック、CBCブロック、BCBブロック
、ABランダム組成物、BCランダム組成物、ホモポリマー、またはその任意の組み合わ
せにおける、カプロラクトン、ラクチド、グリコリド、トリメチレンカルボナート、ジオ
キサノン、およびプロピレンフマラートモノマーから選択される分解可能なエステル結合
で構成される[式中、A=ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド(PGA)、
またはポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリプロピレンフマラート(
PPF)、B=ポリカプロラクトン(PCL)、ポリトリメチレンカルボナート(PTM
C)、ポリ(カプロラクトン-co-ラクチド)(PCLLA)、およびC=ポリジオキ
サノン(PDX)である。]。コポリマーは、直鎖状または星形の構造のいずれかにおい
て2または5キロダルトンから6、10、15または20キロダルトンの分子量(Mn)
を有していてもよい。そのようなオリゴマーを製造するのに使用されるモノマーは、任意
選択的に、弾性率を高めるために、当業界で公知のように分岐を導入してもよく、例とし
てはガンマ-メチル-イプシロン-カプロラクトンおよびガンマ-エチル-イプシロン-
カプロラクトンである。
【0039】
ラクチドは、L-ラクチド、D-ラクチド、またはその混合物(すなわち、D,L-ラ
クチド)であってもよい。PLAブロックについては、幾つかの実施形態において、より
良好な規則性およびより高い結晶性のためにL-ラクチドを使用することが好ましい。
【0040】
幾つかの実施形態において、オリゴマーは、直鎖状および/もしくは分岐(例えば、星
形または3アーム)形態のABAブロック、BABブロック、CBCブロックまたはBC
Bブロックを含む。
【0041】
幾つかの実施形態において、Aは、(i)ポリ(ラクチド);(ii)ポリ(グリコリ
ド);(iii)90:10~55:45のラクチド:グリコリド(すなわち、ラクチド
に富む比)または45:55~10:90のラクチド:グリコリド(すなわち、グリコリ
ドに富む比)のモル比のラクチドおよびグリコリドを含むポリ(ラクチド-co-グリコ
リド);またはその任意の組み合わせである。幾つかの実施形態において、AのD,L-
ラクチド混合物はPLGAランダムコポリマーの製造に使用することができる。
【0042】
幾つかの実施形態において、A(PLA、PGA、PLGA、PPFまたはその組み合
わせ)は、1,000または2,000ダルトンから4,000または10,000ダル
トンまでの分子量(Mn)を有し、B(PCL、PTMCおよびPCLLA)は、1,0
00または1,600ダルトンから4,000または10,000ダルトンまでの分子量
(Mn)を有する。
【0043】
幾つかの実施形態において、少なくとも1種の追加の架橋剤を(例えば、1または2重
量パーセントから5または10重量パーセントの量で)含むことができる。生体吸収可能
な架橋剤、吸収可能でない架橋剤、およびその組み合わせを含む任意の適切な追加の架橋
剤を使用することができる。適切な生体吸収可能な架橋剤の例は、これらに限定されない
が、ジビニルアジパート(DVA)、ポリ(カプロラクトン)トリメタクリラート(PC
LDMA、例えば、約950~2400ダルトンの分子量Mnの)などを含む。適切な吸
収可能でない架橋剤の例は、これらに限定されないが、トリメチロールプロパントリメタ
クリラート(TMPTMA)、ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリラート(PPG
DMA)、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリラート(PEGDMA)などを含む。
【0044】
特定の実施形態は、実質的に、(a)5または10重量パーセントから80または90
重量パーセントの、ABAブロック、BABブロック、CBCブロックまたはBCBブロ
ックにおけるモノマーの、(メタ)アクリラート末端である、直鎖状または分岐の生体吸
収性ポリエステルオリゴマー[式中、Aは、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコ
リド)(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)またはその組み合
わせであり、前記PLGAは、90:10~60:40のラクチド:グリコリド(すなわ
ち、ラクチドに富む比)または40:60~10:90のラクチド:グリコリド(すなわ
ち、グリコリドに富む比)のいずれかのモル比でラクチドおよびグリコリドを含み、Aは
、1,000または2,000ダルトンから4,000または10,000ダルトンまで
の分子量(Mn)を有し;Bはポリカプロラクトン(PCL、PTMCおよびPCLLA
)であり、1,000または1,600ダルトンから4,000または10,000ダル
トンまでの分子量(Mn)を有し、Cはポリジオキサノン(PDX)であり、1,000
または2,000ダルトンから4,000または10,000ダルトンまでの分子量(M
n)を有する。];(b)1または5重量パーセントから50または70重量パーセント
の炭酸プロピレン;(c)0.1または0.2重量パーセントから2または4重量パーセ
ントの光開始剤、(d)任意選択的に、1または5重量パーセントから40または50重
量パーセントの反応性希釈剤;および(e)任意選択的に、1または2重量パーセントか
ら40または50重量パーセントの充填剤からなる樹脂である。
【0045】
本発明の実行において使用することができる非反応性希釈剤は、これらに限定されない
が、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、
ジメチルスルホキシド、環状炭酸エステル(例えば、炭酸プロピレン)、アジピン酸ジエ
チル、メチルエーテルケトン、エチルアルコール、アセトン、およびその2種以上の組み
合わせを含む。
【0046】
重合性液体(樹脂)に含まれる光開始剤は、タイプIおよびタイプII光開始剤を含み
、一般に使用されるUV光開始剤を含む任意の適切な光開始剤であってよく、その例とし
ては、これらに限定されないが、アセトフェノン(例えば、ジエトキシアセトフェノン)
、ホスフィンオキシド、例えば、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホス
フィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシ
ド(PPO)、Irgacure(登録商標)369などを含む。例えば、Rollan
dらの米国特許第9,453,142号を参照のこと。
【0047】
本発明の実行に使用することができる反応性希釈剤(二および三官能性の反応性希釈剤
を含む)は、アクリラート、メタクリラート、スチレン、ビニルアミド、ビニルエーテル
、ビニルエステル、前述のいずれか1つまたは複数を含むポリマー、および前述の1つま
たは複数の組み合わせ(例えば、アクリロニトリル、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニ
ルトルエン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、(メタ)アクリ
ル酸メチル、アクリル酸イソボルニル(IBOA)、メタクリル酸イソボルニル(IBO
MA)、モノ-、ジ-またはトリエチレングリコールアクリラートまたはメタクリラート
のアルキルエーテル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの脂肪族アルコールアクリラート
またはメタクリラート、およびその混合物)を含むことができる。
【0048】
樹脂は、やはり組立てられる製品の具体的な目的に依存して、顔料、染料、希釈剤、活
性化合物または医薬品化合物、検出可能な化合物(例えば、蛍光性、燐光性、放射性)な
どを含む追加の原料をその中に有することができる。そのような追加の原料の例は、これ
らに限定されないが、タンパク質、ペプチド、siRNAなどの核酸(DNA、RNA)
、糖、小さな有機化合物(医薬および医薬のような化合物)など、およびその組み合わせ
を含む。
【0049】
充填剤。生体吸収性ポリエステル粒子、塩化ナトリウム粒子、三リン酸カルシウム粒子
、糖粒子などを、これらに限定されないが、含む任意の適切な充填剤は、本発明に関連し
て使用してもよい。
【0050】
染料/非反応性光吸収剤。幾つかの実施形態において、本発明を実行するための樹脂は
、光、特にUV光を吸収する、非反応性の顔料または染料を含む。そのような光吸収剤の
適切な例は、これらに限定されないが、(i)二酸化チタン(例えば、0.05または0
.1から1または5重量パーセントの量で含まれる)、(ii)カーボンブラック(例え
ば、0.05または0.1から1または5重量パーセントの量で含まれる)、および/ま
たは(iii)ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、オ
キサニリド、ベンゾフェノン、チオキサントン、ヒドロキシフェニルトリアジンおよび/
またはベンゾトリアゾール紫外線吸収剤などの有機紫外線吸収剤(例えば、Mayzo
BLS1326)(例えば、0.001または0.005から1、2または4重量パーセ
ントの量で含まれる)を含む。適切な有機紫外線吸収剤の例は、これらに限定されないが
、米国特許第3,213,058号;米国特許第6,916,867号;米国特許第7,
157,586号;および米国特許第7,695,643号に記載されているものを含み
、その開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0051】
2. 製造方法。
付加製造。物体を製造することができる適切な付加製造設備および方法は、例えば、H
ullの米国特許第5,236,637号、Lawtonの米国特許第5,391,07
2号および米国特許第5,529,473号、Johnの米国特許第7,438,846
号、Shkolnikの米国特許第7,892,474号、El-Siblaniの米国
特許第8,110,135号、Joyceの米国特許出願公開第2013/029286
2号ならびにChenらの米国特許出願公開第2013/0295212号に知られ記載
されているようにボトムアップおよびトップダウンの付加製造方法および設備を含む。こ
れらの特許および出願の開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0052】
幾つかの実施形態において、付加製造工程は、時には連続的液体界面製造(CLIP)
と称される方法の一群のうちの1つによって実行される。CLIPは、例えば、米国特許
第9,211,678号;米国特許第9,205,601号;米国特許第9,216,5
46号;他において;J. Tumblestonら、Continuous liqu
id interface production of 3D Objects, S
cience 347, 1349-1352 (2015)において;およびR. J
anusziewczら、Layerless fabrication with c
ontinuous liquid interface production, P
roc. Natl. Acad. Sci. USA 113, 11703-117
08 (2016)において知られており記載されている。CLIPの特定の実施形態を
実行する方法および設備の他の例は、これらに限定されないが、Batchelderら
、米国特許出願公開第2017/0129169号;SunおよびLichkus、米国
特許出願公開第2016/0288376号;Willisら、米国特許出願公開第20
15/0360419号;Linら、米国特許出願公開第2015/0331402号;
D. Castanon、米国特許出願公開第2017/0129167号、B. Fe
ller、米国特許出願公開第2018/0243976号;M. Panzerおよび
J. Tumbleston、米国特許出願公開第2018/0126630号;ならび
にK.WillisおよびB.Adzima、米国特許出願公開第2018/02903
74号を含む。
【0053】
製造後の工程。付加製造工程の後、追加の後加工工程は、洗浄(例えば、アセトン、イ
ソプロパノール、ジプロピレングリコールメチルエーテルまたはDPMなどのグリコール
エーテルなどの有機溶媒中)、拭き取り(例えば、吸収材料を用いて、圧縮ガスまたは空
気ブレードを用いる吹きつけなど)、残存樹脂の遠心分離、残存溶媒の抽出、紫外線など
を用いる過剰曝露によるなどの追加の硬化、抽出溶媒をそこから除去するための前記物体
の乾燥(任意選択的に、しかし好ましくは真空下の)、および公知技法による前述の幾つ
かまたはすべての組み合わせを含むことができる。
【0054】
3. 有用性。
本明細書において記載の樹脂は、血管内ステントなどの移植可能なデバイスを含む様々
な生体医療用具および医療扶助具を製造するのに有用である。本明細書において記載の樹
脂を用いて製造することができる物体の追加の例は、これらに限定されないが、Will
iamsら、Surgical Mesh Implants containing
poly(butylene succinate)and copolymers t
hereof、米国特許出願公開第2019/0269817号(2019年9月5日)
、およびHartwellら、Collapsible dressing for n
egative pressure wound treatment、米国特許出願公
開第2019/0240385(2019年8月8日)に述べられたものを含み、その開
示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0055】
本発明は、以下の非限定的な実施例においてより詳しく説明される。
【0056】
[実施例1~3]
二官能性メタクリラート(MA)末端ポリエステルオリゴマーの調製
これらの実施例は、二官能性メタクリラート末端ポリエステルオリゴマーの調製を記載
する。中間ブロックはPLGA-PCL-PLGAであり、分子量は6キロダルトンであ
り、PCLは合計MWの40重量%含まれる。PLGAは、ラクチド(L)およびグリコ
リド(G)のランダムコポリマーであり、1:1のL:G重量比を有する。
【0057】
次の2つの項について論じる際、1kgバッチのHO-PLGA-b-PCL-b-P
LGA-OHの合成のために使用した各試薬のモル比および質量の例について表2を参照
すること。
【0058】
【表2】
【0059】
[実施例1]
HO-PCL-OHの合成
乾燥炉で丸底フラスコを終夜乾燥し、N流下で室温に冷却した。ガラスシリンジおよ
びシリンジ針を介して丸底フラスコにカプロラクトンおよびオクタン酸スズを添加した。
反応フラスコの内容物を130℃に加熱した。その間に、ジエチレングリコールを130
℃に加熱した。予備加熱したら、反応フラスコに開始剤としてジエチレングリコールを添
加し、完全なモノマー変換まで反応させた。HNMRを使用して、モノマー変換をモニ
ターした。反応を中止し、反応の内容物を室温に冷却した。HO-PCL-OHをクロロ
ホルムから冷MeOHへ沈殿させて白い固体を得た。HNMR、DSC、FTIRおよ
びTHF GPCを、HO-PCL-OHを特性評価するのに使用した。
【0060】
[実施例2]
HO-PLGA-b-PCL-b-PLGA-OHの合成
下で丸底フラスコへ様々な量のHO-PCL-OHおよびD,L-ラクチドおよび
グリコリドを添加し、140℃に加熱し反応内容物を融解した。融解した後、120℃に
温度を下げて、オクタン酸第一スズを添加した。HNMRおよびTHF GPCを用い
てモノマー変換をモニターしつつ、反応を撹拌しながら継続した。反応が所望の分子量に
達すれば、室温に反応内容物を冷却し、クロロホルムに溶解し、冷ジエチルエーテルへ3
回沈殿させた。真空下で沈殿を乾燥した。
【0061】
[実施例3]
MA-PLGA-b-PCL-b-PLGA-MAの合成
1kgバッチのMA-PLGA-b-PCL-b-PLGA-MAを合成するために使
用した各試薬のモル比および質量の例について表3を参照すること。
【0062】
【表3】
【0063】
HO-PLGA-b-PCL-b-PLGA-OHを、N下で丸底フラスコ中の無水
DCMに溶解した。トリエチルアミンおよび少量のBHTを反応フラスコに添加し、氷水
浴中で0℃に反応フラスコを冷却した。反応フラスコに等圧化添加漏斗を装備し、メタク
リロイルクロリドを装填した。反応フラスコが0℃に達したら、メタクリロイルクロリド
を2時間かけて滴下した。反応は、0℃で12時間、次いで室温で24時間進めた。完了
したら、反応内容物を蒸留水で2回洗浄して、トリエチルアミン塩酸塩、飽和NaCO
を除去し、硫酸マグネシウムで乾燥した。集めて乾燥したDCM層を、回転式蒸発を用
いて乾燥した。THF GPC、HNMR、FTIRおよびDSCを用いて最終生成物
を特性評価した。
【0064】
[実施例4~6]
3アームMA末端ポリエステルオリゴマーの調製
これらの実施例は、3アームまたは星形状の生体吸収性ポリエステルオリゴマーの調製
を記載する。各アームはメタクリラートを用いて末端化する。各アームは2キロダルトン
の分子量を有し、ポリ(ラクチド-r-グリコリド)(PLGA)およびポリ(カプロラ
クトン)(PCL)のブロックコポリマーであり、PCLはオリゴマーのコアである。P
CLは合計MWの40重量%含まれる。PLGAは、ラクチド(L)およびグリコリド(
G)のランダムコポリマーであり、1:1のL:G重量比を有する。
【0065】
[実施例4]
PCL-3OHの合成
次の2つの項について論じる際、1kgバッチの(PLGA-b-PCL)-3OHの
合成のために使用した各試薬のモル比および質量の例について表4を参照すること。
【0066】
【表4】
【0067】
乾燥炉で丸底フラスコを終夜乾燥し、N流下で室温に冷却した。ガラスシリンジおよ
びシリンジ針を介して丸底フラスコにカプロラクトンおよびオクタン酸スズを添加した。
反応フラスコの内容物を130℃に加熱した。その間に、トリメチロールプロパン(TM
P)を130℃に加熱した。予備加熱したら、反応フラスコに開始剤としてTMPを添加
し、モノマー変換が完了するまで反応させた。HNMRを使用して、モノマー変換をモ
ニターした。反応を中止し、反応内容物を室温に冷却させた。(PCL)-3OHをクロ
ロホルムから冷MeOHへ沈殿させて白い固体を得た。H1 NMR、DSC、FTIR
およびTHF GPCを使用して(PCL)-3OHを特性評価した。
【0068】
[実施例5]
(PCL-b-PLGA)-3OHの合成
下で丸底フラスコへ(PCL)-3OH、様々な量のD,L-ラクチドおよびグリ
コリドを添加し、140℃に加熱して反応内容物を融解した。融解した後、温度は120
℃に下げ、オクタン酸第一スズを添加した。反応は、HNMRおよびTHF GPCを
用いてモノマー変換をモニターしつつ撹拌しながら継続した。反応が所望の分子量に達す
れば、反応内容物を室温に冷却し、クロロホルムに溶解し、冷ジエチルエーテルへ3回沈
殿させた。真空下で沈殿を乾燥した。
【0069】
[実施例6]
(PCL-b-PLGA)-3MAの合成
1kgバッチの(PLGA-b-PCL)-3MAを合成するために使用した各試薬の
モル比および質量の例について表5を参照すること。
【0070】
(PCL-b-PLGA)-3OHを、N2下で丸底フラスコ中の無水DCMに溶解し
た。トリエチルアミン(TEA)および400ppmのBHTを反応フラスコに添加し、
氷水浴中で0℃に反応フラスコを冷却した。反応フラスコに等圧化添加漏斗を装備し、メ
タクリロイルクロリドを装填した。反応フラスコが0℃に達したら、メタクリロイルクロ
リドを2時間かけて滴下した。反応は、0℃で12時間、次いで室温で24時間進めた。
完了したら、沈殿を真空濾過によって除去した。濾液を集めて、回転式蒸発を用いてDC
Mを除去した。結果として得られた粘性のある油をTHFに溶解し、冷メタノールへ沈殿
させた。沈殿をDCMに溶解し、水性HCL(3%、2回)、飽和重炭酸ナトリウム水溶
液、および飽和水性塩化ナトリウムで洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで乾燥した。硫
酸マグネシウムは真空濾過によって濾別し、濾液を集めた。DCMは回転式蒸発によって
除去し、固体生成物を集め、THF GPC、H1 NMR、FTIRおよびDSCを用
いて特性評価した。
【0071】
【表5】
【0072】
[実施例7]
二官能性オリゴマー樹脂配合物
付加製造用の光重合性樹脂を得るために以下の原料を以下の重量パーセントで一緒に混
合した:
(1)66.2%の、上記の実施例1~3において調製した二官能性オリゴマー;
(2)3.5%のトリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTMA)反応性希釈
剤;
(3)28.4%のN-メチルピロリドン(NMP)非反応性希釈剤;および
(4)1.89%のIrgacure(登録商標)819光開始剤。
【0073】
[実施例8]
3アームオリゴマー樹脂配合物
付加製造用の光重合性樹脂を得るために以下の原料を以下の重量パーセントで一緒に混
合した:
(1)68.6%の、上記の実施例4~6において調製した3アームオリゴマー;
(2)29.4%のN-メチルピロリドン(NMP)非反応性希釈剤;および
(3)1.96%のIrgacure(登録商標)819光開始剤。
【0074】
[実施例9]
付加製造および後加工
上の実施例において記載のように調製した樹脂を用いて、Carbon Inc.,1
089 Mills Way,Redwood City California,94
063から利用可能なCarbon Inc.M1またはM2設備で標準技法に従って付
加製造を実行する。
【0075】
樹脂が非反応性希釈剤を含む場合、物体は、非反応性希釈剤充填量の程度によって洗浄
/抽出の際に全体的な収縮を受ける場合がある。そのため、寸法スケーリング因子をpa
rt .stlファイルまたは3MFファイルに適用して、印刷した部品を拡大し、意図
的に後加工工程の間の後続の収縮を勘案する。
【0076】
製造した部品の後加工を以下のように実行することができる:設備から構造プラットフ
ォームを取り外した後、物体のまわりの平坦面およびその側面に残ったプラットフォーム
から余剰樹脂を拭き取り、約10分間排水する。注意深くプラットフォームから物体を取
り出し、軌道型振盪機でアセトン浴中30秒間3回洗浄し、続いて各洗浄の後に5分乾燥
した。第3の洗浄後に、20分間部品を乾かし、次いで、PRIMECURE(商標)の
紫外線の過剰硬化設備で側面当たり20秒間過剰硬化させた。
【0077】
次に、残存非反応性希釈剤(例えばN-メチルピロリドン)を、アセトンに浸し室温で
終夜振盪することにより、部品から抽出する。抽出の途中(開始後およそ8時間)で溶媒
を1回交換する。次いで、物体をアセトンから取り出し、60℃で終夜真空乾燥した。次
いで、残存NMPについて部品を点検し、検出可能な残余がなければ、粘着性を点検する
。部品が粘着性である場合、次いでそれらは窒素下、LEDベースの投光ランプ(Dre
ve Group, Unna, Germanyから入手可能なPCU LED N2
投光ランプなど)で過剰硬化させる。
【0078】
[実施例10~12]
3アームMA末端ポリエステルオリゴマーの調製
これらの実施例は、3アームまたは星形状の生体吸収性ポリエステルオリゴマーの調製
を記載する。各アームはメタクリラートを用いて末端化する。各アームは、2キロダルト
ンの分子量を有し、ポリ(L-乳酸)(PLLA)およびポリ(カプロラクトン-r-L
-乳酸(PCLLA)のブロックコポリマーであり、PCLLAはオリゴマーのコアであ
る。PCLLAは合計MWの70wt%含まれ、CL:L比は60:40である。
【0079】
[実施例10]
PCLLA-3OHの合成
次の2つの項について論じる通り、1kgバッチの(PLLA-b-PCLLA)-3
OHの合成のために使用した各試薬のモル比および質量の例について表6を参照すること
【0080】
【表6】
【0081】
乾燥炉で丸底フラスコを終夜乾燥し、N流下で室温に冷却した。丸底フラスコにカプ
ロラクトン、L-ラクチドおよびオクタン酸スズを添加した。反応フラスコの内容物を1
30℃に加熱した。その間に、トリメチロールプロパン(TMP)を130℃に加熱した
。予備加熱したら、反応フラスコに開始剤としてTMPを添加し、モノマー変換が完了す
るまで反応させた。HNMRを使用して、モノマー変換をモニターした。反応を中止し
、室温に反応内容物を冷却した。(PCLLA)-3OHを、クロロホルムから冷MeO
Hへ沈殿させて白い固体を得た。H1 NMR、DSC、FTIRおよびTHF GPC
を、(PCLLA)-3OHを特性評価するのに使用した。
【0082】
[実施例11]
(PLLA-b-PCLLA)-3OHの合成
下で丸底フラスコへ(PCLLA)-3OHおよびL-ラクチドを添加し、140
℃に加熱し、反応内容物を融解した。融解した後、120℃に温度を下げて、オクタン酸
第一スズを添加した。反応は、HNMRおよびTHF GPCを用いてモノマー変換を
モニターしつつ、撹拌しながら継続した。反応が所望の分子量に達したら、室温に反応内
容物を冷却し、クロロホルムに溶解し、冷ジエチルエーテルへ3回沈殿させた。真空下で
沈殿を乾燥した。
【0083】
[実施例12]
(PLLA-b-PCLLA)-3MAの合成
1kgバッチの(PLLA-b-PCLLA)-3MAを合成するために使用した各試
薬のモル比および質量の例について表7を参照すること。
【0084】
(PLLA-b-PCLLA)-3OHを、N下で丸底フラスコ中の無水DCMに溶
解した。トリエチルアミン(TEA)および400ppmのBHTを反応フラスコに添加
し、氷水浴中で0℃に反応フラスコを冷却した。反応フラスコに等圧化添加漏斗を装備し
、メタクリロイルクロリドを装填した。反応フラスコが0℃に達したら、メタクリロイル
クロリドを2時間かけて滴下した。反応は、0℃で12時間、次いで室温で24時間進め
た。完了したら、沈殿を真空濾過によって除去した。濾液を集めて、回転式蒸発を用いて
DCMを除去した。結果として得られた粘性のある油をTHFに溶解し、冷メタノールへ
沈殿させた。DCMに沈殿を溶かし、水性HCL(3%、2回)、飽和重炭酸ナトリウム
水溶液、および飽和水性塩化ナトリウムを用いて洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで乾
燥した。硫酸マグネシウムを真空濾過によって濾別し、濾液を集めた。回転式蒸発によっ
てDCMを除去し、固体生成物を集め、THF GPC、HNMR、FTIRおよびD
SCを用いて特性評価した。
【0085】
【表7】
【0086】
[実施例13]
二官能性オリゴマー樹脂配合物
付加製造用の光重合性樹脂を提供するために、以下の原料を以下の重量パーセントで一
緒に混合した:
(1)58.82%の、上記の実施例10~11において調製した二官能性オリゴマー;
(2)39.22%の炭酸プロピレン(PC)非反応性希釈剤;および
(3)1.96%のIrgacure(登録商標)819光開始剤。
【0087】
前述のものは、本発明の例証となり、それを限定するように解釈するべきではない。本
発明は、その中に含まれる請求項の等価物を用いて以下の請求項によって定義される。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性または弾性の生体吸収性物体の付加製造に有用な樹脂であって、
(a)5または10重量パーセントから80または90重量パーセントの(メタ)アクリラート末端生体吸収性ポリエステルオリゴマー;
(b)1または5重量パーセントから50または70重量パーセントの非反応性希釈剤;
(c)0.1または0.2重量パーセントから2または4重量パーセントの光開始剤;
(d)任意選択的に、1または5重量パーセントから40または50重量パーセントの反応性希釈剤;
(e)任意選択的に、1または2重量パーセントから40または50重量パーセントの充填剤;および
(f)任意選択的に、1または2重量パーセントから5または10重量パーセントの、トリメチロールプロパントリメタクリラート(TMPTMA)などの少なくとも1種の追加の架橋剤
を含む、または実質的にそれらからなる樹脂。
【外国語明細書】